説明

Nox1ポリペプチドに対する抗体、Nox1遺伝子を利用したガン診断方法、及びガン増殖抑制物質のスクリーニング方法

(課題) 突然変異Rasガン遺伝子と関連するNox1遺伝子を利用したガン診断方法、ガン増殖抑制物質のスクリーニング方法、及びガン治療に用いる医薬組成物を提供する。(解決手段) Nox1遺伝子がコードするポリペプチド、そのホモログ、及びこれらのペプチド断片を含む、抗体製造用組成物、Nox1遺伝子がコードするポリペプチドに対する抗体、これらの抗体、又はNox1を発現したmRNAを検出する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、ガン関連遺伝子、及び該遺伝子にコードされたポリペプチドに基づく、ガン診断方法、ガン増殖抑制物質のスクリーニング方法、及び医薬組成物に関するものである。さらに詳細に述べると、突然変異Rasガン遺伝子と関連するNox1遺伝子、該遺伝子にコードされたポリペプチド、及び該ポリペプチド特異的抗体を用いるガン診断方法、ガン増殖抑制物質のスクリーニング方法、及びガン治療に用いる医薬組成物に関するものである。
【背景技術】
従来から、突然変異Rasガン遺伝子は、哺乳動物細胞のガン化、及びその進行に大きな影響を与えることが知られている(非特許文献1)。例えば、突然変異Rasガン遺伝子は、その主要な下流経路の1つであるRaf−MAPKK−MAPK経路を介して、動物細胞をガン化し、進行させると考えられている(非特許文献2)。
そして、このような知見に基づき、N−ras腫瘍サプレッサーが欠損しているガン細胞を対象として、p94RBをコードする遺伝子を含む発現ベクター遺伝子を投与する腫瘍抑制遺伝子治療法(特許文献1)や、H−ras、K−ras及びN−rasの発ガン遺伝子を利用して腫瘍抑制遺伝子を同定する方法(特許文献2)などが開発されてきた。
近年の研究により、突然変異Ras遺伝子により形質転換された細胞で、スーパーオキシド、Hなどの活性酸素種(ROS)が生成されることが報告された(非特許文献3)。そして、細胞内の低レベルROSは、増殖因子で誘導される細胞増殖において、シグナル分子としての役割を演じていることから(非特許文献4及び5)、突然変異Ras遺伝子に関連したROS生成の上昇は、動物細胞の異常増殖の原因になると考えられるようになった。
しかし、突然変異Ras遺伝子によるガン化、ガンの進行促進などに関与する、活性酸素産生酵素はこれまで知られていなかった。
【特許文献1】特表平08−508166号公報
【特許文献2】特表平10−504448号公報
【非特許文献1】Lowy,D.R.Annu.Rev.Biochem.62,851−891(1993)
【非特許文献2】McCormick,F.TCB.9,M53−M56(1999)
【非特許文献3】Irani,K.et al.Science 275,1649−1652(1997)
【非特許文献4】Sundaresan,M.et al.Science.270,296−299(1995)
【非特許文献5】Bae,Y.S.et al.J.Biol.Chem.272,217−221(1997)
【発明の開示】
本発明は、突然変異Rasガン遺伝子と関連するNox1遺伝子、該遺伝子にコードされたポリペプチド、及び該ポリペプチド特異的抗体を用いるガン診断方法、ガン増殖抑制物質のスクリーニング方法、及びガン治療に用いる医薬組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、研究の結果、突然変異Rasガン遺伝子が、MAPKK−MAPK経路において、スーパーオキシドを生成するNADPH酸化酵素の触媒サブユニットのホモログNox1(1、2及び3)の発現を著しく上昇させ、かつ該Nox1遺伝子のsiRNAが、細胞接着依存性の増殖、その形態変化、無胸腺マウスにおける腫瘍の形成など、突然変異Ras遺伝子の表現型を効果的に抑えるという知見を得た。本発明者らは、当該知見に基づき前記課題を解決し、本発明を達成した。
したがって、本発明は、(1)配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド;(2)配列番号2のアミノ酸配列から、アミノ酸残基1以上の置換、欠失、付加及び/又は挿入によって変異したアミノ酸配列を有し、前記配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的な抗体の産生を誘導する、ポリペプチド;又は(3)(1)又は(2)のポリペプチドの部分配列を有し、前記配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的な抗体の産生を誘導する、ポリペプチド断片を含む、抗体製造用組成物を提供する。
また、本発明は、前記抗体製造用組成物を、哺乳類に投与することを含む、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的な抗体の製造方法を提供する。
さらに、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的な抗体を提供する。
さらに、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的な抗体を、生物試料と接触させることを含む、ガンの診断方法を提供する。
さらに、本発明は、前記抗体を含む、ガン診断用組成物、及びガン治療用医薬組成物を提供する。
さらに、本発明は、配列番号1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片を検出することを特徴とする、ガン診断方法を提供する。該検出は、ポリメラーゼ連鎖反応、又はリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応により該ポリヌクレオチド、又はその断片を検出することにより行うのが好ましい。
さらに、本発明は、配列番号1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に対応する、siRNAを提供する。
さらに、本発明は、配列番号1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に対応する、siRNA;又は配列番号1の71位〜1615位のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に対応する、siRNAを含む、ガン治療用医薬組成物を提供する。
さらに、本発明は、配列番号1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に対応する、siRNA;又は配列番号1の71位〜1615位のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に対応する、siRNAによって形質転換された細胞を含む、ガン治療用医薬組成物を提供する。
さらに、本発明は、Nox1遺伝子を標的とするガン細胞増殖抑制物質のスクリーニング方法であって、(1)Nox1遺伝子でトランスフェクションし、該形質転換細胞をスクリーニング対象物質と接触させた後、Nox1活性の不活化を検出(1次スクリーニング)し、かつ(2)そのNox1を不活化する物質が、がん細胞増殖を抑制するか否かを調べることにより(2次スクリーニング)、Nox1遺伝子の発現、及びNox1活性の不活化を検出することを含む、該スクリーニング方法を提供する。
(定義)
本明細書における「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸配列の一次構造、該一次構造のポリペプチド断片、立体構造を伴う生物活性を有するポリペプチド、又はタンパク質を意味する。
本明細書における「Nox1ポリペプチド」とは、Nox1遺伝子にコードされているポリペプチドをいい、全長ポリペプチド、及びポリペプチド断片の双方を含む。
本明細書における「ホモログ」という用語は、特定のアミノ酸配列を有するポリペプチド、又はタンパク質と、アミノ酸配列が相同性を有し、かつ共通の生物活性又は抗原性を有するポリペプチドをいう。
本明細書における「siRNA」という用語は、特定の遺伝子の発現を抑制する短RNA断片、又は該RNA断片とその相補鎖からなる二本鎖RNA分子を意味する。
本明細書における「突然変異Ras遺伝子」とは、腫瘍の形成に関与する状態に突然変異したヒトRas遺伝子をいう。例えば、ヒト膵臓ガンで多いK−Rasの12番目のグリシンからアスパラギン酸への突然変異、又はバリンやアルギニンへの突然変異、さらに肺ガンで見られる12番目、その他13番目、61番目に起きる変異を有するヒトRas遺伝子である。
本明細書における、ポリペプチドの「アミノ酸配列の部分配列」とは、該アミノ酸配列に含まれる、少なくとも8個以上の連続するアミノ酸残基を含む配列をいう。
本明細書における「オリゴヌクレオチド」とは、通常、塩基を100個未満、好ましくは6〜99個を含むヌクレオチドをいう。
【図面の簡単な説明】
図1(a)は、実施例1におけるリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応により遺伝子発現の解析を行った結果を示すグラフである。
図1(b)、(c)及び(中は、実施例2において、実施例1と同じ方法でリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応を行い、Nox1の発現を検出した結果を示す。
図2は、実施例4において、RNAi(1)、RNAi(3)、RNAi(5)を持続的にトランスフェクトされた細胞株における、形質転換の結果を、M13F及び3.0RevをプライマーとしてPCRで確認した電気泳動像である。
図3は、実施例4における、Nox1遺伝子が関与する細胞の形態の変化を比較した写真を示す。
図4は、実施例4において、細胞の形質転換を、足場非依存性の増殖能により調べるため、ソフトアガー培養において示された細胞株の接着依存的細胞増殖を測定し、その結果を示したグラフである。
図5は、実施例4において、K−Ras−NRK/neg−1(neg−1)、K−Ras−NRK/RNAi(1)−7(i(1)−7)、K−Ras−NRK/RNAi(3)−19(i(3)−19)、及びK−Ras−NRK/RNAi(5)−7(i(5)−7)の各細胞の数を液体倍地中で計測した、その増殖曲線を示すグラフである。
図6は、実施例5において、処理された細胞を可溶化し、510nmにおける吸光度を測定してNBTの減少を定量した結果を示すグラフである。
図7は、実施例6において、GFPとratNox1の融合ポリペプチドが産生されたこと、そしてRNAi(1)、RNAi(3)、RNAi(5)の共発現は、これらのベクターの量依存的にGFP−ratNox1融合蛋白質の生産を抑えること(左パネル)、また該RNAiコンストラクトは,標的遺伝子に対する特異性が高いこと(右パネル)を示すグラフである。
図8は、実施例6において、内在性のNox1のmRNA発現が、各細胞において、K−Ras−NRK、及びK−Ras−NRK/neg−1に比べて抑制されていることを、RT−PCRにより確認した電気泳動像である。
図9は、実施例7において、使用したsiRNAがGFP、またはGFP−humanNox1の発現を抑制しないことを、実施例6と同様の手法によりイムノブロッティングすることにより示した像である。
図10は、実施例7において、siRNAにより一度抑制されたNox1を回復することによる細胞への影響をK−Ras−NRK細胞の形状変化により示す写真である。
図11は、siRNAにより一度抑制されたNox1を回復することによる細胞への影響を、細胞の増殖速度により示すグラフである。
図12は、siRNAにより一度抑制されたNox1を回復することによる細胞への影響を、足場非依存性増殖能により調べるため、ソフトアガー培養法を用いて細胞の接着依存的増殖能を検討した結果を示すグラフである。
図13は、実施例9における、突然変異Rasの形質転換に対するNox1遺伝子の発現の影響の検討で、細胞の形態変化を観察した結果を示すグラフである。
図14は、実施例9における、突然変異Rasによる腫瘍形成に対するsiRNAの影響を、ヌードマウスの腫瘍形成を1ヶ月間に渡り観察し、かつ腫瘍の体積を測定することにより示したグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
本発明の抗体製造用組成物は、(1)配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド;(2)配列番号2のアミノ酸配列から、アミノ酸残基1以上の置換、欠失、付加及び/又は挿入によって変異したアミノ酸配列を有し、前記配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的な抗体の産生を誘導する、ポリペプチド;又は(3)(1)又は(2)のポリペプチドの部分配列を有し、前記配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的な抗体の産生を誘導する、ポリペプチド断片を含むものである。
なお、本発明の抗体製造用組成物は、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは90%、特に好ましくは95%の相同性を有するポリペプチドを含んでいてもよい。本明細書におけるアミノ酸配列の相同性とは、一線上に並べた場合における、基準となるアミノ酸配列と比較されるアミノ酸配列との同一性(%)をいう。該相同性は、塩基配列やアミノ酸配列の相同性検索を行うための標準のプログラムである、BLAST(J.Mol.Biol.,215,403(1990))やFASTA(Methods in Enzymology,183,63−69)等の解析ソフトで、デフォルト(初期設定)のパラメータを用いて計算することができる。
配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドは、Nox1遺伝子にコードされたポリペプチドであり、該ポリペプチドの産生を検出することにより、検査対象の組織のガン化、及びガンの進行をスクリーニングできる。なお、該組成物で製造された抗体は、ヒトNox1ポリペプチドに特異的であるが、さらに非ヒト動物が産生する該ポリペプチドのホモログにも特異性を有する場合、非ヒト動物のガン化、及びガン進行のスクリーニングにも使用できる。したがって、該抗体製造用組成物は、ヒトガン細胞検出用抗体、及びヒトNox1ポリペプチドのホモログを産生し得る哺乳類のガン化、及びガン進行のスクリーニング用抗体の製造にも使用することができる。
また、配列番号2のアミノ酸配列の部分配列とは、該アミノ酸配列に含まれる、少なくとも8個以上の連続するアミノ酸配列をであって、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的な抗体の産生を誘導するエピトープとなるものをいう。なお、該部分配列をエピトープとして用いる場合、適当なキャリアータンパク質を組み合わせて用いることができる。
また、本発明のポリペプチド断片は、前記ポリペプチド(1)及び(2)の断片であって、前記配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的な抗体の産生を誘導するものである。
また該ペプチド断片の長さは、特に限定されるものではないが、通常20個〜200個、好ましくは20個〜100個、さらに好ましくは20〜70個のアミノ酸残基長である。
本明細書において、ポリペプチド、該ホモログ及び該ポリペプチドの断片(以下、必要な場合はポリペプチドと略す。)は、標準的標記法に従い、左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。該ポリペプチド等は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH)又はエステル(−COOR)とすることもできる。このエステルの側鎖Rの例を挙げると、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルなどのC1−6アルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基、又はα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのアルキル基などがある。
また、本発明のポリペプチド等は、N末端のアミノ酸残基のアミノ基が、ホルミル基、アセチル基などの保護基、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基で保護されたもの、又は糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
また、本発明のポリペプチド等は、生理学的に許容し得る無機又は有機酸付加塩として用いることができる。該無機酸付加塩の例を挙げると、塩酸、リン酸、臭化水素酸、及び硫酸の塩があり、また有機酸付加塩の例を挙げると、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、及びベンゼンスルホン酸などの塩がある。
すなわち、本発明の抗体製造用組成物は、前記ポリペプチド、そのホモログ、これらのペプチド断片、又はこれらの酸付加塩を含むものである。また、必要に応じて、該組成物はベヒクル、希釈剤、アジュバンドなどの成分を含んでいてもよい。
本発明では、前記抗体製造用組成物を用いて、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド、そのホモログ、又は該ペプチド断片に特異的な抗体を製造する方法を提供する。
本発明の方法で製造する抗体は、本発明の目的に応じて使用できるものであれば特に制限されないが、例を挙げると、ヒト/マウスキメラ抗体、ヒト化抗体、又はヒト抗体などがある。ここで、ヒト化抗体(Humanized Antibody)とは、全抗体中に数%のマウス由来抗体を含むものをいい、ヒト抗体とは100%ヒト由来の抗体からなるものをいい、キメラ・ヒト抗体とは、マウス由来抗体を10〜20%含むものをいう。また、該抗体は、ポリクローナル抗体、又はモノクローナル抗体のいずれであってもよい。
本発明のモノクローナル抗体は、次の方法で製造することができる。まず、前記抗体製造用組成物を非ヒト哺乳動物に投与する。抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行う。該非ヒト哺乳動物の例を挙げると、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、及びニワトリがあり、一般に好ましいのはマウス、又はラットである。
前記組成物で免疫した非ヒト哺乳動物から抗体産生が認められた個体を選択し、最終免疫の2〜5日後に脾臓、又はリンパ節に含まれる抗体産生細胞採取し、同種、又は異種動物の骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを作製する。抗血清中の抗体価の測定は、標識化タンパク質と抗血清とを反応させ、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行う。また細胞融合は、ケーラーとミルスタインの方法(Nature,256,495,1975)などの常法で行うことができる。融合促進剤として、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどを用いることができる。
また、骨髄腫細胞の例を挙げると、NS−1、P3U1、SP2/O、及びAP−1などの非ヒト哺乳動物の骨髄腫細胞があり、特にP3U1が好ましい。融合に用いる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20程度であり、PEG、好ましくはPEG1000〜PEG6000を10〜80%度の濃度で添加し、20〜40℃、好ましくは30〜37℃で1〜10分間インキュベートすることにより細胞融合を実施できる。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングは、種々の方法で行うことができる。例えば、抗原を直接、又は担体とともに吸着させた固相(例えば、マイクロプレート)と、ハイブリドーマ培養上清を接触させ、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体を含む溶液を接触させ、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体などを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を接触させ、次いで放射性物質や酵素などで標識したタンパク質の溶液と接触させ、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などがある。
モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの選別は常法で行うことができる。例えば、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地に、10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))、又はハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は20〜40℃、培養時間は、通常5日〜3週間で、培養は、通常5%炭酸ガス存在下で行う。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
また、得られたモノクローナル抗体の分離精製は、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、及び電気泳動法などの免疫グロブリンの分離精製法、イオン交換体(DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相、又はプロテインA活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法などの常法で行うことができる。
また、本発明のポリクローナル抗体は、免疫抗原である前記ポリペプチド等、又は該そのペプチド断片とキャリアータンパク質との複合体で、非ヒト哺乳動物を免疫し、その後、血清などの抗体含有成分を採取して、抗体の分離精製を行うことにより製造することができる。
該免疫抗原とキャリアータンパク質との混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率よく産生されるように決定する。例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合で用いることができる。また、ハプテンとキャリアーのカップリングには、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等を用いることができる。
該複合体抗原は、単独で、又は担体、希釈剤、さらに抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントとともに投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回行う。該ポリクローナル抗体は、免疫された哺乳動物の血液、腹水、卵黄などから採取する。抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。また、ポリクローナル抗体の分離精製は、前記モノクローナル抗体の分離精製と同様に行うことができる。
本発明のガン診断用キットは、このようにして得られたポリクローナル、又はモノクローナル抗体を含む。また、該診断用キットは、必要に応じて、免疫反応用ウェル、染色剤、検出用の酵素標識抗体、洗浄液、抗体希釈液、検体希釈液、酵素基質、酵素基質液希釈液、その他の試薬を含むものである。
本発明の抗体を含む医薬組成物は、Nox1遺伝子にコードされている特異的タンパク質の発現を抑制するものであるから、ガン化の予防、進行遅延、及び治療に使用することができる。
該抗体は、経口的に、又は非経口的に投与することができ、さらに該非経口的投与は、組織への局所的な投与を含む。
本発明の医薬組成物を経口投与する場合、汎用されている担体などの製剤用成分、例えば、充填剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、緩衝剤、等張化剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、コーティング剤、界面活性剤、吸収促進剤、保湿剤、湿潤剤、吸着剤、滑沢剤及び賦形剤などを用いることができる。また、必要に応じて着色剤、保存剤、香料、風味剤、甘味剤などの添加剤を用いてもよい。
製薬用成分の具体的な例を挙げると、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、尿素、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、結晶セルロース、ケイ酸などの賦形剤、水、エタノール、単シロツプ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン溶液、カルボキシメチルセルロース、セラツク、メチルセルロース、リン酸カリウム、ポリビニルピロリドンなどの結合剤、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、ラミナラン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、デンプン、乳糖などの崩壊剤、白糖、ステアリン酸、カカオバター、水素添加油などの崩壊抑制剤、第4級アンモニウム塩、ラウリル硫酸ナトリウムなどの吸収促進剤、グリセリン、デンプンなどの保湿剤、デンプン、乳糖、カオリン、ベントナイト、コロイド状ケイ酸等の吸着剤、精製タルク、ステアリン酸塩等の滑沢剤などである。さらに必要に応じて、上記の各剤形について公知のドラッグデリバリーシステムの技術を採用し徐放化、局所適用化(トローチ、バッカル剤、舌下錠等)、薬物放出制御、腸溶性化、胃溶性化などを施すことができる。
また、非経口投与する場合、点滴、静脈注射、皮下注射、筋肉注射などの注射による投与、油脂製坐剤、水溶性坐剤、座剤による直腸投与などの形態とすることができる。該調剤は、製薬分野における通常の担体を用い、常法により容易に行うことができる。
本発明の抗体を含む医薬組成物は、例えば、ヒト、その他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。その投与量は、対象の状態、投与ルートなどにより適宜変わるが、例えば、経口投与する場合、一般的に、体重60kgの成人患者においては、一日につき約10〜4000mg、好ましくは約20〜2000mg、より好ましくは約50〜500mg投与する。非経口的に投与する場合は、該siRNAの1回投与量は投与対象、肝臓ガンの状況などによっても異なるが、例えば、注射剤の形で体重60kgの成人患者においては、一日につき約10〜2000mg程度、好ましくは約20〜1000mg程度、より好ましくは約50〜500mg程度を静脈から投与するのが好ましい。
また、本発明の抗体を、生物試料と接触させることを含む、免疫化学的測定法によって、生体組織や体液中のNox1遺伝子の検出・定量を行い、ガンを診断することができる。
この免疫化学的測定法を行う場合、本発明の抗体を担体に保持する。該測定方法で用いる担体の例を挙げると、アガロースゲル(セファロース4B、及びセファロース6B(ファルマシア・ファインケミカル社))、デキストランゲル(セファデックスG−75、セファデックスG−100、及びセファデックスG−200(ファルマシア・ファインケミカル社))、ポリアクリルアミドゲル(バイオゲルP−30、バイオゲルP−60、及びバイオゲルP−100(バイオラッド・ラボラトリーズ社))、セルロース粒子(アビセル(旭化成))などのゲル粒子、ジエチルアミノエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのイオン交換セルロース、ガラス、シリコン片、ステンレス系樹脂などの物質的吸着剤、イムノアッセイ用プレート(ヌンク社)、弱塩基性陰イオン交換樹脂(アンバーライトIR−4B、ダウエックス3(ダウケミカル社))などがある。
担体に抗体を保持させるには、ブロムシアン法、及びグルタルアルデヒド法などの常法による行うことができる。また、より簡便な方法として物理的に抗体表面に吸着させてもよい。標識剤を結合させた抗体における標識剤としては、放射性同位元素、酵素、螢光物質、発光物質などが挙げられるが、酵素を用いるのが好ましい。
該酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼを用いることができ、特にペルオキシダーゼが好ましい。
本発明の免疫化学的測定系における被検試料としては、尿、血清、血漿、髄液等の体液、又は、動物細胞やその培養上清がある。本発明の免疫化学的測定方法を行う場合、担体に保持された抗体に、測定すべきNox1ポリペプチドなど分析対象物を加えて抗原抗体反応を行った後、標識剤と抗Nox1抗体との結合物を加えて反応させる。得られた反応生成物に標識剤、例えば酵素の基質を加え、生じた物質の吸光度もしくは蛍光強度を測定することにより該反応生成物の酵素活性を知ることができる。これを既知量の標識剤、例えば酵素の標準溶液に対してあらかじめ行い、Nox1ポリペプチドなどとの吸光度、又は蛍光強度との関係を標準曲線として作成しておき、未知量のNox1ポリペプチドを含む分析対象物(被検試料)について得られた吸光度もしくは蛍光強度を標準曲線と比較し、分析対象物中のNox1ポリペプチド等の量を測定する。
また、本発明は、配列番号1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片を検出することを特徴とする、ガン診断方法を提供する。該ポリヌクレオチド、又はその断片の検出は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、又はリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応により常法で行うことができる。
該ポリメラーゼ連鎖反応、又はリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応において、配列番号1のヌクレオチド配列に対するセンス鎖断片をフォワードプライマーとして、アンチセンス鎖断片をリバースプライマーとして用いる。該フォワードプライマーの長さは、特に制限する必要はないが、通常14〜60ベースであり、かつリバースプライマーの長さも特に制限する必要はないが、通常14〜60ベースとするのが好ましい。また、本発明のガン診断方法で用いるフォワードプライマー、及びリバースプライマーの例を挙げると下記のものがある。

また、前記リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応により検出を行う場合に用いる、フォワードプライマー、リバースプライマー、及びTaqManプローブの例を挙げると下記のものがある。

本発明における、配列番号1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に対応する、siRNA、又はsiRNAは、Nox1遺伝子の発現を抑制し、Nox1ポリペプチドの産生を低下させる。したがって、該siRNA又はオリゴヌクレオチドを用いることにより、突然変異Ras遺伝子に誘導される細胞のガン化、又はガンの進行を抑制することができるであろう。
なお、本発明のsiRNA、又はオリゴヌクレオチドとは、配列番号1の連続するヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に相補的なヌクレオチド、又はオリゴヌクレオチドをいう。
本発明のsiRNAは、また、配列番号1の71位〜1615位のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に対応するものであってもよい。また、該siRNAの長さは、100bp未満、好ましくは8〜99bp、特に好ましくは10〜30bpである。また、好ましいssiの例を挙げると下記のものがある。


また、本発明のsiRNAは、治療対象に直接投与するか、治療対象から細胞を取り出した後、インフェクションさせて該細胞を治療対象に戻すか、又は発現ベクターに組み込んだ後、該ベクターを治療対象に投与して発現させることにより使用することができる。
したがって、本発明では、配列番号1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に対応する、siRNA;又は配列番号1の71位〜1615位のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に対応する、siRNAを含む、ガン治療用医薬組成物を提供する。
該医薬組成物は、先に記載した抗体を含む医薬組成物と同じく、従来使用されている医薬用の材料を使用し、かつ常法で製剤することができる。また、本発明のsiRNAを含む医薬組成物は、例えば、ヒト、その他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。その投与量は、対象の状態、投与ルートなどにより適宜変わるが、例えば、経口投与する場合、一般的に、体重60kgの成人患者においては、一日につき約10〜4000mg、好ましくは約20〜2000mg、より好ましくは約50〜500mg投与する。非経口的に投与する場合は、該siRNAの1回投与量は投与対象、対象ガンの状況などによっても異なるが、例えば、注射剤の形で体重60kgの成人患者においては、一日につき約10〜2000mg程度、好ましくは約20〜1000mg程度、より好ましくは約50〜500mg程度を静脈から投与するのが好ましい。
また、本発明は、配列番号1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に対応する、siRNA;又は配列番号1の71位〜1615位のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に対応する、siRNAによって形質転換された細胞を含む、ガン治療用医薬組成物を提供する。
ここで該形質転換される細胞は、第三者から提供を受けた細胞であっても、治療対象の患者から取り出された細胞であってもよい。また、該形質転換した細胞をガン治療用細胞として使用することができる。
また、本発明は、配列番号1のヌクレオチド配列の部分配列、又は該部分配列の少なくとも1塩基が付加、欠失、又は置換された変異ヌクレオチド配列からなり、かつ、ヒト細胞のNox1ポリペプチドの発現を抑制するRNA分子を提供する。該RNA分子(siRNA)は、公知の方法(例、Nature、411巻、494頁、2001年)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列をもとに設計することができる。
なお、本発明のRNA分子をIn vivo又はIn vitroで使用する場合、該RNA分子とその相補的RNAからなる2本鎖RNA分子とする。この場合、該二本鎖RNA分子が細胞内で分解しないよう、又は一本鎖に解離しないよう処理するのが好ましい。例えば、該RNA分子の3’−末端に水酸基付加する、二本鎖の両末端をチオホスホリル基によって化学結合させる、又各鎖の間に紫外線、ビス(2−クロロメチル)アミン、4−チオウラシル、ソラレンなどの二官能基により化学結合を誘導するなどの方法で処理することである。本発明の該RNA分子は、突然変異Ras遺伝子による形質転換に伴うNox1遺伝子の発現を抑制するものであるから、細胞のガン化防止、ガンの進行抑制、治療用の医薬組成物として使用することができる。
また、本発明は、Nox1遺伝子を標的とするガン細胞増殖抑制物質のスクリーニング方法を提供する。該スクリーニング方法において、突然変異Ras遺伝子を有する細胞や、Nox1遺伝子でトランスフェクションした正常細胞を、スクリーニング対象物質と接触させた後、Nox1遺伝子の発現とその酵素活性の不活化を検出する。次に、該形質転換細胞を、スクリーニング対象物質とともに培養して増殖抑制能を調べる。
また、スクリーニング対象化合物によるNox1遺伝子発現への影響は、リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応によるmRNA発現増減の検出、抗体によるNox1遺伝子にコードされたポリペプチド、又はそのペプチド断片の検出、又はその形質転換細胞の形態変化を観察することで行うことができる。
該スクリーニング方法で使用する、突然変異Ras遺伝子を有する細胞は特に制限されないが、例えば、H−Ras−NIH3T3細胞、K−Ras−NRK細胞、又は膵臓癌細胞などを使用することができる。また、Nox1遺伝子の導入に用いるベクターとして、例えば、pEGFP−C1(コントロール)、pEGFP−C1−Nox1などを用いることができ、さらに、siRNAを発現させるベクターとして、例えばpSilencerを用いることができる。
なお、NIH3T3細胞、又はNRK細胞にpEGF−C1−Nox1ベクターをリポフェクタミン法を用いて持続的にトランスフェクトして、Nox1を高発現する細胞株を樹立することができる。あるいは、突然変異Ras遺伝子を有する膵臓癌細胞を利用することもできる。該膵臓癌細胞は、ヒト膵臓癌患者より、分離・樹立したものを用いるのが好ましい。これらの細胞を、CO5%の存在下、標準培養液(Dulbeco’s modified Eagle medium(DMEM)、牛胎仔血清(FBS)10%含有)中で培養する。スクリーニングは、マルチプレート(96穴、48穴)に細胞を培養して、スクリーニング対象物質を加え、大量、迅速に処理することができる。
【実施例1】
突然変異Ras遺伝子によるNox1遺伝子の発現上昇の確認
本発明者らは、NIH3T3細胞におけるNox1遺伝子の過剰発現が、スーパーオキシドの生成と細胞増殖を上昇させることから(1及び2)、Nox1が特定のがん遺伝子の形質発現と関連すると考えた。そこで、K−Ras Val12ガン遺伝子で形質転換した細胞を用いて、Rasガン遺伝子によるNox1遺伝子発現の上昇を確認した。
まず、ラット腎臓細胞(NRK)及びK−Ras−NRK細胞(Kirstein murine sarcoma virus transformed NRK cells)を準備した。なお、K−Ras−NRKは、ATCCから購入した。
まず、ラット腎臓細胞(NRK)及びK−Ras−NRK細胞におけるNox1の発現の有無を、リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応により検出した。該リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応では、配列番号15のフォワードプライマー、及び配列番号16のリバースプライマー、及び配列番号17のTaqManMGBプローブを使用した。


なお、該リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応は、ABI Prism 7700(アプライド・バイオシステムズ)を用い、反応条件はデオフォルト設定で行った。解析値の標準化にはrRNA18Sを用いた。
該リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応により遺伝子発現の解析を行った結果、図1(a)のグラフに示されているように、K−Rasガン遺伝子で形質転換したK−Ras−NRK細胞において、Nox1遺伝子の発現は上昇していた。
【実施例2】
突然変異Ras遺伝子による一過的トランスフェクションによるNox1遺伝子の発現上昇の確認
突然変異Ras遺伝子の一過性のトランスフェクションによる影響を解析するため、pcDNA3.1ベクター(空ベクター)、及びpcDNA3.1担持Ras Val12ベクター(pcDNA3.1 carrying Ras Val12 vectors)を使用して、NRK細胞に一過的にトランスフェクションし、48時間後、Nox1の発現を検出するため、実施例1と同じ方法でリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応を行った。その結果、図1(b)に示すように、コントロールベクターを用いた場合の発現と比較して、H−Ras Val12を一過的にトランスフェクションしたNRK細胞においても、Nox1遺伝子の発現は、増加していた。なお、トランスフェクションしたRas V12の発現は、ウサギ抗Ras抗体を用いるイムノブロッティング(IB)で確認した。
なお、該イムノブロッティングは、試料細胞1×10個を、2×サンプルバッファー(0.1M トリスCl、pH6.8、グリセロール20%、SDS4%、DTT3.1%、BPB0.001%)で可溶化し、該ポリペプチドをSDSゲル電気泳動により分離し、続いてイムノブロッティングにより解析した。
タンパク質をトランスファーバッファー(25mM トリスCl pH8.3、92mMグリシン、メタノール20%)中で電気的にニトロセルロース膜に移し、抗−Ras抗体(1次抗体)と、HRP−結合抗ウサギ−IgG抗体に反応させ、化学発行(ECL)法で検出した。
このように実施例1及び2の結果から、Nox1遺伝子発現の上昇は突然変異Rasガン遺伝子の働きによることが示された。
なお、無血清状態で一晩培養したNIH3T3細胞を、血清(30%)又は上皮増殖因子(epidermal growth factor:EGF)50ng/mlで促進処理を行ったのち、リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応により解析した。その結果、図1(c)、及び(d)に示すように培養開始から12時間以内にNox1遺伝子の発現が6〜20倍に上昇した。つまり、Nox1遺伝子の発現は、細胞増殖を促進する因子と関連しており、これは、血小板由来増殖因子(platelet−derived growth factor:PDGF)とアンジオテンシンIIの両方がスーパーオキシド形成、及び血管平滑筋細胞のNox1遺伝子の発現を誘導するという報告と一致している(1、4)。
【実施例3】
突然変異Ras遺伝子によるNox1遺伝子発現を起こすシグナル経路の解析
突然変異Ras遺伝子によるNox1遺伝子の発現上昇を起こす、Rasシグナル経路の下流を解析するため、一連の実験を行った。実施例1および2において、細胞にMAPKKの阻害剤であるPD98059(PD:20μM、100μM)を12時間処理し、K−Ras−NRK細胞におけるNox−1の発現、血清、EGFによるNox1の発現誘導をリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応により解析した。
その結果、K−Ras−NRK細胞におけるNox−1の発現はPD98059により濃度依存性に抑制された(図1(a))。また、血清、EGFによるNox1の発現誘導もそれぞれPD98059 20μMで抑制された(図1(c)及び(d))。
一方、コントロールの実験において、PI3キナーゼの阻害剤であるウォルトマニン(wortmanin:100nM)は、H−Ras−NIH3T3細胞におけるNox1の発現上昇を阻害しなかった(データ示さず)。これらの結果から、突然変異Ras遺伝子とその増殖因子のシグナルが、PI3Kを介する経路ではなく、Ras−MAPKK−MAPKを介してNox1の発現を誘導していることが示された。
【実施例4】
突然変異Ras遺伝子による形質転換に対する、Nox1遺伝子の関与
オリゴヌクレオチド1−S、1−ASをアニーリングさせ、pSilencer hygro,H1−promoter(Ambion社)にサブクローニングし、RNAi(1)とした。同様にオリゴヌクレオチド3−S、3−ASをアニーリングさせ、pSilencer hygro,H1−promoter(Ambion社)にサブクローニングし、RNAi(3)とした。さらにオリゴヌクレオチド5−S、5−ASをアニーリングさせ、pSilencer hygro,H1−promoter(Ambion社)にサブクローニングし、RNAi(5)とした。また、コントロールベクターとして、pSilencer hygro Negative Control plasmid(Ambion社)を使用した。
RNAi(1)は、配列番号3の223位から241位を標的とするsiRNAコンストラクションである。RNAi(3)は、配列番号3の578位から596位を標的とするsiRNAコンストラクションである。RNAi(5)は、配列番号3の1224位から1242位を標的とするsiRNAコンストラクションである。
なお、各オリゴヌクレオチドの配列は以下のとおりである。


該RNAi(1)、RNAi(3)、RNAi(5)、およびpSilencer hygro Negative Control plasmid各4μgを、リポフェクタミン(Lipofectamine:Gibco−BRL社)を用いて、K−Ras−NRK細胞1×10個にそれぞれトランスフェクションした。トランスフェクションした細胞は、選択を行うため、ウシ胎児血清(FBS)10%とHygromycinBを400μg/mlとなるように加えたDMEM培地を用い、CO5%の湿潤環境下において37℃で2〜3週間培養した。培養後、生き残ったコロニーを単離した。
RNAi(1)、RNAi(3)、RNAi(5)を持続的にトランスフェクトされた細胞株それぞれ3クローンずつ(K−Ras−NRK/RNAi(1)−7,K−Ras−NRK/RNAi(1)−12,K−Ras−NRK/RNAi(1)−15;K−Ras−NRK/RNAi(3)−17,K−Ras−NRK/RNAi(3)−19,K−Ras−NRK/RNAi(3)−96;K−Ras−NRK/RNAi(5)−2,K−Ras−NRK/RNAi(5)−3,K−Ras−NRK/RNAi(5)−7)、pSilencer hygro Negative Control plasmidを持続的にトランスフェクトされた細胞を2クローン(K−Ras−NRK/neg−1、K−Ras−NRK/neg−2)選択した。これらのコンストラクションのトランスフェクションは、M13F及び3.0RevをプライマーとしてPCRで確認した(図2)。PCRの温度条件は、94℃2分、(94℃1分、60℃1分、72℃1分)を30サイクル、72℃10分、とし、サーマルサイクラー装置はTakara Thermal Cycler SP(宝酒造株式会社)を用いた。

次に、Nox1遺伝子が関与する細胞の形態の変化を比較した。その結果、図3に示すように、RNAi(1)−(3)をトランスフェクトされたK−Ras−NRK細胞が伸張したのに対し、pSilencer hygro NegativeコントロールプラスミドをトランスフェクトされたK−Ras−NRK細胞は、導入前の細胞で観察されたように、形態は丸いままだった。
次に、細胞の形質転換を、足場非依存性の増殖能を見ることにより調べるため、軟寒天培地アッセイを行った。細胞増殖に必要な栄養素を含んだ寒天0.53%を含むアガーロースレイヤーを直径6cmの培養皿に入れて固め、その上に寒天0.3%とFBS10%を含んだDMEM倍地に懸濁した細胞を、培養皿一枚当たりの細胞最終濃度が1.5×10個になるように重層した。次いで、CO5%の湿潤環境下、37℃で培養し、細胞コロニーの出現を3週間にわたり観察した。ソフトアガー培養において示された細胞株の接着依存的細胞増殖を測定し、その3回の+/−平均の標準誤差(s.e.m.)を図4に示した。その結果、K−Ras−NRK細胞およびpSilencer hygro Negativeコントロールプラスミド(neg−1とneg−2)のトランスフェクションでは、多くのコロニー形成が見られたが、RNAi(1)−(5)のトランスフェクションではコロニー形成が著明に抑制された。
さらに、K−Ras−NRK/neg−1(neg−1)、K−Ras−NRK/RNAi(1)−7(i(1)−7)、K−Ras−NRK/RNAi(3)−19(i(3)−19)、及びK−Ras−NRK/i(5)−7(i(5)−7)の各細胞を、培養皿から10個ずつ、培養液に移し、CO5%存在下、標準培養液(DMEM、FBS(10%))中で6日間、液体培養した。次いで、液体倍地中の細胞数を計測して、その増殖曲線を図5に示した。その結果、K−Ras−NRK/RNAi(1)−7、K−Ras−NRK/RNAi(3)19、及びK−Ras−NRK/RNAi(5)−7の各細胞は、液体培養でも増殖率が減少したが、対照的に、K−Ras−NRK/neg−1では増殖阻害効果は確認できなかった。
【実施例5】
Nox1遺伝子がコードするNADPH酸化酵素によるスーパーオキシド産生の確認
本発明者らは、突然変異Rasが誘導するスーパーオキシド産生におけるNox1の役割を評価するため、実施例4の形質転換細胞を用いて、スーパーオキシドの産生をNBT還元解析で測定した。本実施例では、NBT(Nitroblue Tetrazolium)解析にSuhらの方法を用いた(1)。すなわち、NBT0.25%を含むハンクス(Hanks)溶液0.2mlに、活性酸素を消化する酵素、スーパーオキシドディスミュターゼ(SOD)を40単位加えた溶液と加えない溶液を用意し、2×10個の細胞を懸濁し37℃で8分間処理した。処理された細胞を低速度遠心で分離し、ピリジン0.5mlを加えて可溶化し、510nmにおける吸光度を測定してNBTの減少を定量した(extinction coefficient of 11,000/M/cm)。得られたデータは、図6に3回の+/−s.e.m.で示した。
該解析の結果、K−Ras−NRKおよびK−Ras−NRK/neg−1は、NBTの還元を増加させ、これはスーパーオキシドジスムターゼ処理により、NRKと比較し阻害された。対照的に、K−Ras−NRK/RNAi(1)−7、K−Ras−NRK/RNAi(3)−19、K−Ras−NRK/RNAi(5)−7は、K−Rasがん遺伝子のROS生産刺激効果をNRK細胞レベルまで低下させ(図6)、Nox1が、突然変異Ras形質転換細胞における、スーパーオキシド生産の上昇に関与することが示された。
【実施例6】
RNAi(1)、RNAi(3)、RNAi(5)による、Nox1発現の減少の確認
本発明者らは、RNAi(1)、RNAi(3)、RNAi(5)によりNox1発現が減少することを確認するため、次の手順で解析を行った。すなわち、GFP−ratNox1の発現におけるRNAi(1)、RNAi(3)、RNAi(5)の阻害効果を評価するために、GFP−ratNox1を、RNAi(1)−(5)それぞれとともに、共トランスフェクションし、実施例2と同様にイムノブロッティング解析を行った。図7左のパネルに示されるように、予想されるGFPとratNox1の融合ポリペプチドが産生されたこと、そしてRNAi(1)、RNAi(3)、RNAi(5)の共発現は、これらのベクターの量依存的にGFP−ratNox1融合蛋白質の生産を抑えることを明らかにした。なお、図7左のパネルにおけるGFP−Nox1の発現は、抗GFP抗体を用いたイムノブロッティングにより定量的に決定したものであり、図7左のパネルの数字はトランスフェクションしたDNAの量(μg)を示している。また、RNAi(1)、RNAi(5)は、どれもラットのNox1をターゲットとしている。図7左のパネルと同様の手法を用いて、RNAi(1)、RNAi(5)がヒトのNox1を抑制しない、すなわち、該RNAiコンストラクションは、標的遺伝子に対する特異性が高いことを図7右のパネルに示す。
また、内在性のNox1のmRNA発現が、K−Ras−NRK/RNAi(1)−7、K−Ras−NRK/RNAi(1)−12、K−Ras−NRK/RNAi(3)−19、K−Ras−NRK/RNAi(3)−96、K−Ras−NRK/RNAi(5)−2、K−Ras−NRK/RNAi(5)−7の各細胞において、K−Ras−NRK、及びK−Ras−NRK/neg−1に比べて確かに抑制されていることを、RT−PCRによりで示した。その結果を図8に示す。
実施例6で用いたPCR用プライマーの配列

本実施例における結果は、細胞骨格と接着蛋白質の構成変化による形態変化と同様に、Nox1遺伝子の発現率の上昇と突然変異Rasによる形質転換が関連していることを示している。
【実施例7】
siRNAにより一度抑制されたNox1を回復することによる細胞への影響
K−Ras−NRK/RNAi(1)−7、K−Ras−NRK/RNAi(5)−7に、実施例4と同一手法によってpEGFP−C1(GFP)、pEGFP−humanNox1(GFP−Nox1)をそれぞれトランスフェクトし、実施例6と同様の手法によりイムノブロッティングした(図9)。実施例6、図7右のパネルで示したように、RNAi(1)およびRNAi(5)はどちらもヒトNox1の発現を抑制しない。そのため、K−Ras−NRK/RNAi(1)−7、K−Ras−NRK/RNAi(5)−7細胞にpEGFP−humanNox1をトランスフェクトしても、これがsiRNAによって抑制されることはない。
図10に示したように、K−Ras−NRK/RNAi(1)−7にコントロールベクターを入れただけ(i(1)−7+GFP)ではsiRNAを解除できず細胞は扁平だが、pEGFP−humanNox1をトランスフェクトすることにより(i(1)−7+GFP−Nox1−3)、形態は、以前のK−Ras−NRK細胞に近い窮状の形態に戻った(図10)。
実施例4と同手法による増殖曲線でも、K−Ras−NRK/RNAi(1)−7にコントロールベクターを入れたもの(GFP−59)やK−Ras−NRK/RNAi(5)−7にコントロールベクターを入れたもの(GFP−78)に比べ、K−Ras−NRK/RNAi(1)−7にpEGFP−humanNox1を入れたもの(GFP−Nox1−3)やK−Ras−NRK/RNAi(5)−7にpEGFP−humanNox1を入れたもの(GFP−Nox1−11)では、増殖が早くなった(図11)。また、実施例4と同様の軟寒天培地アッセイでも、K−Ras−NRK/RNAi(1)−7にコントロールベクターを入れたもの(i(1)−7+GFP−59、i(1)−7+GFP−60)にくらべ、K−Ras−NRK/RNAi(1)−7にpEGFP−humanNox1を入れたもの(GFP−Nox1−2、GFP−Nox1−3)では、もとのK−Ras−NRK細胞と同程度までコロニー形成が回復した(図12)。
【実施例8】
突然変異Rasの形質転換に対するNox1遺伝子の発現の影響
Nox1の阻害剤であるジフェニレンヨードニウム(Diphenylene iodonium:DPI)を用いて、Nox1遺伝子の発現による、突然変異Rasによる形質転換細胞の形態に及ぼす影響を調べた。すなわち、K−Ras−NRK細胞、及びNRK細胞を、DPI20μM又はPD98059 30μMを含む培地中で、CO5%を含む湿潤環境下において37℃で一晩培養し、形態変化を観察した。図13に細胞形態を記録した写真を示す。
図13に示すように、K−Ras−NRK細胞を、フラボタンパク質阻害剤であるDPI、又は抗酸化剤n−アセチルシステイン(n−acetyl cysteine)10mM(データ示さず)で、一晩処理した場合、該細胞が一過的に平たい形態を帯び、NRK細胞に近い形態になった。さらに、図13に示すように、PD98059で処理されたK−Ras−NRK細胞においても、このような形態の変化が観察された。したがって、Nox1遺伝子発現の上昇が、Ras−MAPKK−MAPK経路による突然変異Rasの形質転換促進に必須であることが示された。
【実施例9】
突然変異Rasによる腫瘍形成に対する、siRNAの影響
K−Ras−NRK/neg−1、K−Ras−NRK/RNAi(1)−7、K−Ras−NRK/RNAi(1)−12、K−Ras−NRK/RNAi(3)−19、K−Ras−NRK/RNAi(3)−96およびK−Ras−NRK/RNAi(5)−2を無胸腺マウスに移植し、腫瘍形成を観察した。すなわち該細胞10個をPBS0.2mlに懸濁した後、ヌードマウス(無胸腺:Nu/Nu)の皮下に移植した。その後、該全ヌードマウスの腫瘍形成を1ヶ月間に渡り観察し、かつ腫瘍の体積を測定した。その結果を図14に示した。図14において、黒塗りのバーは腫瘍の体積であり、誤差のバーは、s.e.m.を示し、また分数は使用した全マウスに対する、腫瘍を許容したマウスの割合(腫瘍/合計)を示している。
図14に示すように、K−Ras−NRK/neg−1は、2週間以内に活発な腫瘍を形成した。対照的に、K−Ras−NRK/RNAi(1)−7、K−Ras−NRK/RNAi(1)−12、K−Ras−NRK/RNAi(3)−19、K−Ras−NRK/RNAi(3)−96は、腫瘍の増殖が著しく抑えられていた。解剖により組織学的観察すると、K−Ras−NRK/neg−1で形成された腫瘍は、血管が増加していた。これは、Nox1遺伝子が、血管内皮増殖因子の産生増加による血管新生を誘導する可能性と一致している(1)。また、K−Ras−NRK/RNAi(1)−7、K−Ras−NRK/RNAi(1)−12、K−Ras−NRK/RNAi(3)−19、K−Ras−NRK/RNAi(3)−96で形成された、小さな腫瘍では、大部分の細胞でネクローシスの兆候が示されていた(データ示さず)。
これまでの実験結果から、突然変異Ras(ガン遺伝子)は、分裂促進性酸化酵素Nox1をMAPKK−MAPK経路を介して上昇させ、一方、Nox1遺伝子の発現は、該Rasによる細胞の形質転換、ガン形成、及びその進行に必須である。すなわち、本発明者らの研究により、突然変異Rasによる形質転換において、Nox1ポリペプチドがレドックスシグナル分子として必須の役割を果たしているという分子機構が明らかになった。
Gp91phoxのホモログであるNoxファミリータンパク質Nox1〜5は、非貪食細胞から同定され、それぞれ様々な細胞プロセスにおいて特異的な機能を果たしていると報告されている(1及び5−9)。それらの中で、Nox1遺伝子は増殖因子(1及び4)やガン遺伝子による、分裂促進性シグナルを仲介する、膜貫通型酸化酵素をコードしている点で特異である。
ROSが腫瘍の増殖促進に関係すること、及び悪性ガン細胞においてROS産生がROS生産酵素を誘導する可能性を考慮すると(7)、Nox1遺伝子及びそのポリペプチドは、ガン進行を抑制し、その治療を可能にする標的分子にできると考えられる。
本明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
(配列番号:1) ヒトNox1遺伝子から転写されたmRNA又はcDNAのヌクレオチド配列を示す。
(配列番号:2) ヒトNox1遺伝子にコードされたポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
(配列番号:3) ラットNox1遺伝子から転写されたmRNA又はcDNAのヌクレオチド配列を示す。
(配列番号:4) ラットNox1遺伝子にコードされたポリペプチドのアミノ酸配列を示す。
(配列番号:5) ヒトガン診断方法で用いるNox1遺伝子に対するフォワードプライマーの塩基配列を示す。
(配列番号:6) ヒトガン診断方法で用いるNox1遺伝子に対するリバースプライマーの塩基配列を示す。
(配列番号:7) ヒトのNox1遺伝子をリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応により検出を行う場合に用いるフォワードプライマーの配列を示す。
(配列番号:8) ヒトのNox1遺伝子をリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応により検出を行う場合に用いるリバースプライマーの配列を示す。
(配列番号:9) ヒトのNox1遺伝子をリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応により検出を行う場合に用いるTaqManプローブの配列を示す。
(配列番号:10) 本発明のヒトNox1遺伝子に対するsiRNAの塩基配列を示す。
(配列番号:11) 本発明のヒトNox1遺伝子に対するsiRNAの塩基配列を示す。
(配列番号:12) 本発明のラットNox1遺伝子に対するsiRNAの塩基配列を示す。
(配列番号:13) 本発明のラットNox1遺伝子に対するsiRNAの塩基配列を示す。
(配列番号:14) 本発明のラットNox1遺伝子に対するsiRNAの塩基配列を示す。
(配列番号:15) 実施例1において、Nox1の発現の有無を、リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応により検出するために用いたフォワードプライマーのヌクレオチド配列である。
(配列番号:16) 実施例1において、Nox1の発現の有無を、リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応により検出するために用いたリバースプライマーのヌクレオチド配列である。
(配列番号:17) 実施例1において、Nox1の発現の有無を、リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応により検出するために用いたTaqManMGBプローブのヌクレオチド配列である。
(配列番号:18) 実施例4において、突然変異Ras遺伝子による形質転換に対する、Nox1遺伝子の関与を調べるために用いたsiRNAコンストラクションを構成するオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列である。
(配列番号:19) 実施例4において、突然変異Ras遺伝子による形質転換に対する、Nox1遺伝子の関与を調べるために用いたsiRNAコンストラクションを構成するオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列である。
(配列番号:20) 実施例4において、突然変異Ras遺伝子による形質転換に対する、Nox1遺伝子の関与を調べるために用いたsiRNAコンストラクションを構成するオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列である。
(配列番号:21) 実施例4において、突然変異Ras遺伝子による形質転換に対する、Nox1遺伝子の関与を調べるために用いたsiRNAコンストラクションを構成するオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列である。
(配列番号:22) 実施例4において、突然変異Ras遺伝子による形質転換に対する、Nox1遺伝子の関与を調べるために用いたsiRNAコンストラクションを構成するオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列である。
(配列番号:23) 実施例4において、突然変異Ras遺伝子による形質転換に対する、Nox1遺伝子の関与を調べるために用いたsiRNAコンストラクションを構成するオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列である。
(配列番号:24) 実施例4における、Nox1遺伝子に対するsiRNAのコンストラクションのトランスフェクションを確認するために用いたM13プライマーのヌクレオチド配列である。
(配列番号:25) 実施例4における、Nox1遺伝子に対するsiRNAのコンストラクションのトランスフェクションを確認するために用いた3.0Revプライマーのヌクレオチド配列である。
(配列番号:26) 実施例6において、Nox1発現の減少を確認するために用いたフォワードプライマーのヌクレオチド配列を示す。
(配列番号:27) 実施例6において、Nox1発現の減少を確認するために用いたリバースプライマーのヌクレオチド配列を示す。
(参考文献)

【配列表】





















【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチド;(2)配列番号2のアミノ酸配列から、アミノ酸残基1以上の置換、欠失、付加及び/又は挿入によって変異したアミノ酸配列を有し、前記配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的な抗体の産生を誘導する、ポリペプチド;又は(3)(1)又は(2)のポリペプチドの部分配列を有し、前記配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的な抗体の産生を誘導する、ポリペプチド断片を含む、抗体製造用組成物。
【請求項2】
該抗体が、ヒトガン細胞検出用抗体である請求項1記載の該組成物。
【請求項3】
配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、請求項1記載の該組成物。
【請求項4】
配列番号2のアミノ酸配列の部分配列を有し、前記配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的な抗体の産生を誘導する、ポリペプチドを含む、請求項1記載の該組成物。
【請求項5】
配列番号2のアミノ酸配列の部分配列を有し、前記配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的な抗体の産生を誘導する、ポリペプチド断片を含む、請求項1記載の該組成物。
【請求項6】
請求項1記載の組成物を、哺乳類に投与することを含む、配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的な抗体の製造方法。
【請求項7】
配列番号2のアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的な抗体。
【請求項8】
該抗体が、ヒト/マウスキメラ抗体、ヒト型抗体、又はヒト抗体である、請求項7記載の該抗体。
【請求項9】
該抗体が、ポリクローナル抗体、又はモノクローナル抗体である、請求項7記載の該抗体。
【請求項10】
請求項7記載の抗体を、生物試料と接触させることを含む、ガンの診断方法。
【請求項11】
請求項7記載の抗体を含む、ガン診断用キット。
【請求項12】
請求項7記載の抗体を含む、ガン治療用医薬組成物。
【請求項13】
該抗体が、ヒト/マウスキメラ抗体、ヒト型抗体、又はヒト抗体である、請求項12記載の該ガン治療用医薬組成物。
【請求項14】
該抗体が、ポリクローナル抗体、又はモノクローナル抗体である、請求項12記載の該ガン治療用医薬組成物。
【請求項15】
さらに適当なキャリアーを含む、請求項12記載の医薬組成物。
【請求項16】
配列番号1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片を検出することを特徴とする、ガン診断方法。
【請求項17】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、又はリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応により該ポリヌクレオチド、又はその断片を検出する、請求項16記載のガン診断方法。
【請求項18】
配列番号1のヌクレオチド配列に対するセンス鎖断片をフォワードプライマーとして、配列番号1のアンチセンス鎖断片をリバースプライマーとして用いPCRにより検出を行う、請求項17記載のガン診断方法。
【請求項19】
前記フォワードプライマーの長さが14〜60ベースであり、かつ前記リバースプライマーの長さが14〜60ベースである、請求項18記載のガン診断方法。
【請求項20】
下記フォワードプライマー、及びリバースプライマーを用いる、請求項18記載のガン診断方法:

【請求項21】
配列番号1のヌクレオチド配列に対するセンス鎖断片をフォワードプライマーとして、配列番号1のアンチセンス鎖断片をリバースプライマーとして用いリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応により検出を行う、請求項17記載のガン診断方法。
【請求項22】
下記フォワードプライマー、リバースプライマー、及びTaqManプローブを用いる、請求項21記載のガン診断方法:


【請求項23】
配列番号1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に対応する、siRNA。
【請求項24】
配列番号1の71位〜1615位のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に対応する、請求項23記載の該siRNA。
【請求項25】
ヌクレオチド配列の長さが8〜30bpである、請求項23記載の該siRNA。
【請求項26】
下記配列番号10〜14のヌクレオチド配列からなる群から選ばれた、ヌクレオチド配列からなる、請求項23記載のsiRNA:

及び

【請求項27】
配列番号1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に対応する、siRNA;及び配列番号1の71位〜1615位のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に対応する、siRNAを含む、ガン治療用医薬組成物。
【請求項28】
配列番号1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に対応する、siRNA;及び配列番号1の71位〜1615位のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に対応する、siRNAによって形質転換された細胞を含む、ガン治療用医薬組成物。
【請求項29】
該形質転換される細胞が、治療対象の患者から取り出された細胞である、請求項28記載の該ガン治療用医薬組成物。
【請求項30】
ヒト細胞を準備し、かつ配列番号1のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に対応する、siRNA;又は配列番号1の71位〜1615位のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド、又はその断片に対応する、siRNAによって形質転換することを含む、ガン治療用細胞の製造方法。
【請求項31】
該ヒト細胞が、治療対象の患者から取り出された細胞である、請求項30の該製造方法。
【請求項32】
Nox1遺伝子を標的とするガン細胞増殖抑制物質のスクリーニング方法であって、突然変異Ras遺伝子を有する細胞を、Nox1遺伝子でトランスフェクションし、該形質転換細胞をスクリーニング対象物質と接触させた後、Nox1遺伝子の発現及びNox1活性の不活化を検出することを含む、該スクリーニング方法。
【請求項33】
該形質転換細胞を、スクリーニング対象物質とともに培養することを含む、請求項32記載の該スクリーニング方法。
【請求項34】
Nox1遺伝子の発現を、リアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応によるmRNAの検出、又は抗体によるNox1遺伝子にコードされたポリペプチド、又はそのペプチド断片の検出により行う、請求項32記載の該スクリーニング方法。
【請求項35】
Nox1遺伝子の発現を、その形質転換細胞の形態変化を観察することにより行う、請求項32記載の該スクリーニング方法。
【請求項36】
該突然変異Ras遺伝子を有する細胞が、H−Ras−NIH3T3細胞、又はK−Ras−NRK細胞である、請求項32記載の該スクリーニング方法。
【請求項37】
pEGFP−C1(K−Ras−NRK/GFP)、又はpEGFP−C1−Nox1(K−Ras−NRK/GFP−Nox1)を用いてNox1遺伝子のトランスフェクションを行う、請求項32記載の該スクリーニング方法。
【請求項38】
Nox1遺伝子でトランスフェクションされた、突然変異Ras遺伝子を有する細胞。

【国際公開番号】WO2005/021739
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【発行日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513418(P2005−513418)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011673
【国際出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【出願人】(503317050)
【出願人】(503317061)
【Fターム(参考)】