説明

O/F乳化組成物

【課題】互いに相溶しないフッ素系油剤と油剤を粉体で安定化したO/F乳化組成物を提供すること。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)フッ素系油剤 30〜90重量%、
(B)成分(A)と相溶しない油剤 1〜30重量%、
(C)表面張力が20〜50mN/mの粉体を撥水撥油化処理した粉体
5〜50重量%
を含有し、成分(C)が成分(A)と成分(B)の界面に局在するO/F乳化組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素系油剤とその他の油剤を安定に含有し、フッ素系油剤による撥水撥油性が十分に発揮され、化粧崩れが起きにくく、化粧効果が長時間持続する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素系油剤は撥水撥油性、潤滑特性を有し、かつ化学的に安定なため、化粧品、塗料、医薬品など幅広い分野で用いられている。特に、化粧品においては、汗や皮脂による化粧崩れを防止する目的でフッ素系油剤が配合される場合が多い(特許文献1、2)。しかし、これらフッ素系油剤は、炭化水素油、シリコーン油、エステル油、エーテル油等の化粧用油剤との相溶性が悪いために両者を均一に配合することは難しい。そのため、多くの場合フッ素系界面活性剤、非イオン界面活性剤等を添加することにより均一な組成物を調製してきた(特許文献3〜11)。しかし、界面活性剤の添加は、フッ素系油剤の特性である撥水撥油性を低下させるため好ましくない。特に、メイクアップ化粧料においてはその影響は顕著である。
【0003】
また、界面活性剤等のかわりに粉体を添加する方法がある(非特許文献1〜7)。一般的に互いに相溶しない複数の液体相からなる組成物に粉体を添加した場合、粉体は各液体相中に分散するか、又は沈殿する。しかし、各々の液体に対して親和性を有する粉体を使用すると、該粉体は界面活性剤のように液液界面に吸着して界面張力を低下させ、その結果乳化の安定性を向上させ、時には界面活性剤を全く用いないにもかかわらず安定な乳化物を形成する場合がある。例えば、非特許文献4には、水油混合物に疎水化処理シリカ、モンモリロナイト、タルク等の粘土鉱物、魚鱗等の粉体を添加した水−中−油型、又は油−中−水型の乳化物が記載されている。これらの粉体は水にも油にもなじむ特性を有するため水油界面に吸着し、乳化系を形成したものである。このような粉体による水中油型及び油中水型乳化系形成・安定化はローション等の液状化粧料に利用されている。
【特許文献1】特開昭63−107911号公報
【特許文献2】特開平2−295912号公報
【特許文献3】特開昭62−223105号公報
【特許文献4】特開昭63−2916号公報
【特許文献5】特開平4−100534号公報
【特許文献6】特開平4−224506号公報
【特許文献7】特開平4−187617号公報
【特許文献8】特開平6−179809号公報
【特許文献9】特開平7−17831号公報
【特許文献10】特開平7−33622号公報
【特許文献11】特開平7−277927号公報
【非特許文献1】J. Chem. Soc. 1907, 9, 2001
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc. 1923, 45, 2780
【非特許文献3】J. Am. Chem. Soc. 1919, 41, 940
【非特許文献4】IFSCC VIIIth International Congress 1974, A8
【非特許文献5】Colloids Surf. 1984, 12, 271
【非特許文献6】Colloids Surf. 1989, 38, Langmuir2000, 16, 2538
【非特許文献7】Langmuir2000, 16, 8622
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしフッ素系油剤とそれと相溶しない油剤を一相化した化粧料に、疎水化処理シリカ等の粉体を添加しても、粉体の界面吸着及び乳化系形成は観察されなかった。
本発明の目的は、互いに相溶しないフッ素系油剤と油剤を粉体で安定化したO/F乳化組成物及びF/O乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、粉体表面にフッ素系油剤と親和性の高い部分と他の油剤と親和性の高い部分が混在する粉体、例えば特定の樹脂粉体や有機粉体の撥水撥油処理・撥水親油処理物をフッ素系油剤及び他の油剤からなる不均一混合物に添加するとフッ素系油剤−中−油剤型(O/F型)又は油剤−中−フッ素系油剤型(F/O型)の乳化組成物が得られることを見出した。またこれらの乳化組成物を化粧料に配合すると、フッ素系油剤による撥水撥油性が十分に発揮され、汗や皮脂による化粧崩れが起きにくく、化粧効果が長時間持続する化粧料であることを見出した。
【0006】
本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)フッ素系油剤 30〜90重量%、
(B)成分(A)と相溶しない油剤 1〜30重量%、
(C)表面張力が20〜50mN/mの粉体を撥水撥油化処理した粉体
5〜50重量%
を含有し、成分(C)が成分(A)と成分(B)との界面に局在するO/F乳化組成物を提供するものである。
【0007】
また、本発明は、次の成分(D)、(E)及び(F):
(D)フッ素系油剤 1〜30重量%、
(E)成分(D)と相溶しない油剤 10〜75重量%、
(F)表面張力が20mN/m未満の粉体を撥水親油化処理した粉体
10〜75重量%
を含有し、成分(F)が成分(D)と成分(E)との界面に局在化しているF/O乳化組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のO/F乳化組成物及びF/O乳化組成物はO相、F相の界面に粉体が局在し安定性に優れ、化粧料とすると、フッ素系油剤による撥水撥油性が十分に発揮され、汗や皮脂による化粧崩れが起きにくく、化粧効果が長時間持続する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のO/F乳化組成物とは、フッ素系油剤(F相)を分散媒とし、フッ素系油剤と相溶しない油剤(O相)を分散質とする乳化組成物をいう。また、F/O乳化組成物とは、フッ素系油剤と相溶しない油剤(O相)を分散媒とし、フッ素系油剤(F相)を分散質とする乳化組成物をいう。
【0010】
本発明のO/F乳化組成物で使用する成分(A)のフッ素系油剤としては、25℃で液体のものであって、例えばパーフルオロデカリン、パーフルオロアダマンタン、パーフルオロブチルテトラハイドロフラン、パーフルオロオクタン、パーフルオロノナン、パーフルオロペンタン、パーフルオロデカン、パーフルオロドデカンが挙げられる。また、次の一般式(1)
【0011】
【化1】

【0012】
〔式中、R1、R3、R4及びR5は同一又は異なって、フッ素原子、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロアルキルオキシ基を示し、R2はフッ素原子又はパーフルオロアルキル基を示し、s、t及びuは分子量が500〜100,000となる0以上の数を示す。ただし、s=t=u=0となることはない。また、ここでカッコ内に示される各パーフルオロ基はこの順に並んでいる必要はなく、またランダム重合でもブロック重合でもかまわない。〕
で表わされるパーフルオロポリエーテルが挙げられる。
【0013】
パーフルオロポリエーテルとしては、次の一般式(2)
【0014】
【化2】

【0015】
〔式中、f及びgは分子量が500〜100,000となる数を示し、f/gは0.2〜2である〕
で表わされるFOMBLIN HC−04(平均分子量1,500)、同HC−25(同3,200)及び同HC−R(同6,600)(以上、アウジモント社製)や、次の一般式(3)
【0016】
F-(C3F6O)h-C2F5 (3)
【0017】
〔式中、hは4〜500の数を示す〕
で表わされるデムナムS−20(重量平均分子量2,500)、同S−65(同4,500)、同S−100(同5,600)及び同S−200(同8,400)(以上、ダイキン工業社製)などの市販品が挙げられる。なお、本発明で重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(東ソー社製 HLC−GPC、標準物質ポリスチレン)で測定した値をいう。
【0018】
また、下記一般式(4)〜(7)で表わされる構造単位の1以上と、下記一般
式(8)で表わされる構造単位とを有するフッ素変性シリコーンを挙げることが
できる。
【0019】
【化3】

【0020】
〔式中、Rf及びRf'は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜20の直鎖又は分岐鎖のパーフルオロアルキル基又は次式:H(CF2b−(bは1〜20の整数を示す)で表されるω−H−パーフルオロアルキル基を示し;R6、R9及びR10は、同一又は異なっていてもよく、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基又は炭素数5〜10の脂環式若しくは芳香族炭化水素基を示し;R7は、水素原子、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基、炭素数5〜10の脂環式若しくは芳香族炭化水素基、炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基又は次式:H(CF2c−(cは1〜20の整数を示す)で表わされるω−H−パーフルオロアルキル基を示し;R8は、炭素数2〜6の2価の炭化水素基を示し;X及びYは、単結合、−CO−又は炭素数1〜6の2価の炭化水素基を示し;vは2〜16の数を示し、w及びpはそれぞれ1〜16の数を示し、qは1〜200の数を示し、zは0〜5の数を示し、aは0〜200の数を示す〕
【0021】
一般式(4)〜(8)で表わされる構造単位において、Rf及びRf'で示されるパーフルオロアルキル基としては、例えば、CF3−、C25−、C49−、C613−、C817−、C1021−、H(CF22−、H(CF24−、H(CF26−、H(CF28−、(C37)C(CF32−等を挙げることができる。また、H(CF2b−におけるbとしては、6〜20の整数が好ましい。
【0022】
6、R9及びR10で示される炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、ネオペンチル基、1−エチルプロピル基、2−エチルヘキシル基等の分岐鎖アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;フェニルナフチル基等の芳香族炭化水素基等を挙げることができる。また、R8で示される2価の炭化水素基としては、炭素数2〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキレン基が好ましく、特にエチレン基、プロピレン基が好ましい。
【0023】
このような構造単位を有するフッ素変性シリコーンとしては、例えば、下記一般式(9);
【0024】
【化4】

【0025】
〔式中、Z1及びZ2は、少なくとも一方は一般式(4)、(5)、(6)及び(7)から選ばれる構造単位を示し、残余は単結合を示し、a、R9及びR10は前記と同じ意味を示す〕
で表わされるもの、又は下記一般式(10);
【0026】
【化5】

【0027】
〔式中、Z3は、一般式(4)、(5)、(6)及び(7)から選ばれる構造単位を示し、R11は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐鎖の脂肪族炭化水素基又は炭素数5〜10の脂環式若しくは芳香族の炭化水素基を示し、dは0〜200の数を示し、a、R9及びR10は前記と同じ意味を示す〕
で表わされるものを挙げることができる。
【0028】
更に、フッ素変性シリコーンの好ましい例としては、一般式(6)及び一般式(8)で表わされる構造単位を有する、特開平5−247214号公報に記載された重合度2〜200のフッ素変性シリコーン、市販品である旭硝子社製のFSL−300、信越化学工業社製のX−22−819、X−22−820、X−22−821、X−22−822及びFL−100、東レ・ダウコーニングシリコーン社製のFS1265等を挙げることができる。
【0029】
成分(A)としては、特にパーフルオロポリエーテルが、撥水撥油性が高く、化粧崩れが起きにくい点、及び皮膚に塗布するときの使用感に優れている点で特に好ましい。
【0030】
成分(A)は、2種以上を併用してもよい。本発明のO/F乳化組成物中に、成分(A)は25〜90重量%(以下単に%と記載する)含有するが、好ましくは30〜70%、特に40〜60%含有するのが化粧効果の持続性と仕上がりの点で好ましい。
【0031】
本発明で使用する成分(B)は、成分(A)と相溶しない油剤である。ここで相溶しないとは、成分(A)と成分(B)を常温で、一見均一溶液となるよう混ぜ合わせた後、放置すると、直ぐに二相に分離し均一溶液とならないことをいう。
【0032】
成分(B)は、液体油、固体脂のいずれでもよく、固体脂の場合は溶解、溶融させて液状として用いられる。成分(B)の具体例としては、例えば油脂、ロウ、炭化水素油、エステル油、エーテル油、高級アルコール、高級脂肪酸、シリコーン油等が挙げられる。炭化水素油、エーテル油、エステル油、シリコーン油が化粧料の使用感の点で好ましい。
油脂としては、例えばヒマシ油、オリーブ油、アボガド油、パーム油、カカオ油等;ロウとしては、例えば木ロウ、ラノリン、ミツロウ、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等;炭化水素油としては、例えばペトロラタム、流動パラフィン、固形パラフィン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン等;エステル油としては、例えばステアリン酸ブチルエステル、ミリスチン酸オクチルドデシルエステル、ミリスチン酸イソプロピルエステル、ラノリン脂肪酸イソプロピルエステル、ステアリン酸ブチルエステル、ラノリン酸ヘキシルエステル、オレイン酸オレイルエステル、アジピン酸ジイソプロピルエステル、セバチン酸ジイソプロピルエステル等;エーテル油としては、ポリオキシエチレン等;高級アルコールとしては、例えばステアリルアルコール、オレイルアルコール等;高級脂肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ラノリン脂肪酸等;シリコーン油としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルハイドメロジエンポリシロキサン等が挙げられる。
【0033】
これらのうちシリコーン油が、特にジメチルポリシロキサン、メチルシクロポリシロキサンが好ましい。
【0034】
成分(B)は、2種以上を併用してもよい。本発明のO/F乳化組成物中に成分(B)は1〜30%含有するが、皮膚に塗布するときの感触及び保存安定性の点で好ましくは5〜25%、特に10〜20%含有するのが好ましい。
【0035】
本発明のO/F乳化組成物の成分(C)は、表面張力が20〜50mN/mの粉体を撥水撥油処理した粉体である。フッ素系油剤(A)が分散媒、(A)と相溶しない油剤(B)が分散質であるO/F乳化組成物においては、分散質である油剤(B)との相溶性の高い撥水親油性粉体を基材として、その表面に適度な撥水撥油処理を行い、粉体表面を(A)及び(B)両方の油剤に対して親和性の高い部分が混在させることによって、粉体(C)が(A)及び(B)界面に局在化することによって安定な乳化物が得られる。
本発明の成分(C)の基材としては、シリコーン樹脂、ナイロン樹脂、アクリル酸樹脂、ポリエチレン樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂粉体、界面活性剤多価金属塩、アミノ酸系粉体等の有機粉体等が挙げられる。
【0036】
シリコーン樹脂としては、例えば市販品として表面張力が20mN/mであるトスパール105、120、130、145、3120、200B(以上、東芝シリコーン社製)、X−52−590E(信越シリコーン社製)、トレフィルE−506(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。
【0037】
ナイロン樹脂としては、市販品として表面張力が32〜49mN/mのナイロンSP500(東レ社製)、ダイアミドT430P61、メタルカラーWNP−609B(以上、ダイセル化学社製)、ナイロンパウダーHK−5000(シオノケミカル社製)、オルガノール1002、2002(以上、エレファクトケム(elfactochem)社製)等が挙げられる。
【0038】
アクリル樹脂としては、市販品として表面張力が30〜40mN/mのマイクロスフェアM503(マツモト油脂社製)、ガンツバール(ガンツ化成社製)、テクノポリマーMB−2、モオリテックスPM−2700M(以上、積水化成社製)、MP1400(綜研化学社製)等が挙げられる。
【0039】
ポリエチレン樹脂の市販品としては、表面張力が30〜40mN/mのフロービーズ、SF−H(製鉄化学社製)等が挙げられる。
ウレタン樹脂としては、表面張力が36〜39mN/mのプラスチックパウダーD800(根本工業社製)等が挙げられる。
【0040】
界面活性剤多価金属塩の具体例としては、表面張力が30〜40mN/mのモノアルキルリン酸亜鉛塩、アルキルベンゼンスルホン酸カルシウム塩、アシルタウリンカルシウム塩、アルキル硫酸エステルカルシウム塩等(例えば、特開平4−18011、特開平3−294210)が挙げられる。
【0041】
アミノ酸系粉体の具体例としては、表面張力が30〜40mN/mのN−アシルリジン(特開昭60−67406)、α−アミノ脂肪酸(特開昭62−4211)、アミホープLL(味の素社製)等が挙げられる。
【0042】
なお、粉体の表面張力は、接触角法(日本化学会編「新実験化学講座 18 界面とコロイド」p104、丸善(株)1977年発行)にて測定されたものである。
粉体をペレット状に成形し、20℃で表面にヨウ化メチル(γ=50.8mN/m、20℃)を滴下し、接触角θを測定し(例えば、協和界面科学:CA−X型接触角測定装置)し、次式により表面張力γ(mN/m、20℃)を算出する。
【0043】
γ=12.7(1+cosθ)2
【0044】
粉体の平均粒子径は、レーザー回折/散乱法で測定し、0.01〜100μm、好ましくは0.1〜30μm、特に0.1〜10μmであるのが好ましい。
【0045】
成分(C)において、撥水撥油化処理は、ポリフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩等のパーフルオロアルキル基を有する高分子、フルオロアルキルジ(オキシエチル)アミンリン酸塩エステル、フッ素変性シリコーン(、フッ素ポリエーテル共変性シリコーン等を撥水撥油処理剤として、通常用いられる粉体処理方法によって行なわれる。
【0046】
フッ素変性シリコーンとしては、前記成分(A)で挙げられたフッ素変性シリコーンや特開平6−184312記載のものが挙げられる。
【0047】
フッ素ポリエーテル共変性シリコーンとしては、例えば特開平7−126126記載のパーフルオロアルキル基及びポリオキシアルキレン基と側鎖に持つシリコーンであって、次式
【0048】
【化6】

【0049】
(式中、r1、r2、r3は整数であって、r1=0〜500、r2=1〜500、r3=1〜500であり、R12は同種又は異種の非置換又は置換の炭素数1〜20のアルキル基又はアリール基、R13は炭素数1〜10のフッ素置換アルキル基であり、R14は−Ck−H2kO(C24O)l(C36O)m16で示されるポリオキシアルキレン基であり、R15はR12又はR13又はR14のいずれかであり、R16は水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基又はアセチル基であり、l、m、kは整数であって、l=0〜100、m=0〜100、l+mは1以上であり、k=2〜6である。)で表わされる化合物が例示される。
【0050】
これらの撥水撥油化処理剤のうち、特にポリフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩が好ましい。
【0051】
この際、粉体と撥水撥油化処理剤の重量比率は、粉体/撥水撥油化処理剤の値が、100/1〜100/7、好ましくは100/2〜100/7、特に100/3〜100/5であるのが好ましい。
【0052】
上記撥水撥油化処理した粉体としては、粉体/撥水撥油処理剤が100/5の比率でポリフルオロアルキルリン酸エステルジエタノールアミン塩で処理したシリコーン樹脂、及びナイロン樹脂が特に好ましい。
【0053】
成分(C)は、2種以上を併用してもよい。本発明のO/F乳化組成物中に成分(C)は、5〜50%含有するが、乳化物の保存安定性及び皮膚に塗布したときの使用感の点で好ましくは20〜45%、特に25〜40%含有するのが好ましい。
【0054】
次に本発明の第2の態様であるF/O乳化組成物について説明する。
本発明のF/O乳化組成物で使用する成分(D)のフッ素系油剤は、前記O/F乳化組成物の成分(A)と同じ含フッ素系油剤が使用される。
本発明のF/O乳化組成物中に成分(D)は1〜30%含有するが、皮膚に塗布するときの感触及び保存安定性の点で好ましくは5〜25%、特に10〜20%含有するのが好ましい。
【0055】
本発明のF/O乳化組成物で使用する成分(E)の成分(D)と相溶しない油剤としては、前記発明で使用する成分(B)と同じ油剤が使用される。
本発明のF/O乳化組成物中に成分(E)は10〜75%含有するが、化粧効果の持続性と仕上がりの点で20〜60%、特に30〜70%含有するのが好ましい。
【0056】
本発明のF/O乳化組成物の成分(F)は、表面張力が20mN/m未満の粉体を撥水親油処理した粉体である。F/O乳化組成物においては、フッ素系油剤と相溶しない油剤(E)が分散媒、フッ素系油剤(D)が分散質となるために、分散質である油剤(E)との相溶性の高い撥水撥油性粉体を基材としてその表面に、適度な撥水親油処理を行うことで、粉体表面を(E)及び(D)両方の油剤に対して親和性の高い部分が混在させ、粉体(F)が(E)及び(D)界面に局在化することによって安定な乳化物が得られる。
本発明の成分(F)の基材としては、フッ素系樹脂等が挙げられる。
フッ素系樹脂の市販品としては、表面張力17mN/mのルブロンL−2、10(ダイキン工業社製)等が挙げられる。
【0057】
これらの粉体としては、平均粒子径が、0.01〜100μm、好ましくは0.1〜30μm、特に0.1〜10μmであるのが好ましい。
【0058】
成分(F)で用いられる撥水親油化処理剤としては、シリコーン(特開昭45−18999、特開昭56−16404)、アルキルシリル化剤(特開昭56−81512)、親油性高分子(特開昭56−68604)、金属石鹸(特開昭60−69011)等が挙げられる。
【0059】
シリコーンとしては、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジエンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0060】
アルキルシリル化剤としては、アルキルシラン、アルキルクロロシラン、ジアルキルジクロロシランが挙げられる。
【0061】
親油性高分子としては、ポリエチレン、ポリスチレン、アクリル及びその誘導体、ポリアミド、ポリイソブチレン、純塩化ビニル樹脂、ポリビニルアセテート、エチレンビニルアセテート共重合物、芳香族炭化水素樹脂等が挙げられる。
【0062】
金属石鹸としては、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の炭素数10〜24の脂肪酸のアルミニウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛等の塩が挙げられる。
【0063】
これら撥水親油化処理剤のうち、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等が好ましい。
【0064】
表面張力が20mN/m未満の粉体の撥水親油化処理法としては、特開昭63−250311の方法が挙げられる。
この際、粉体と撥水親油化処理剤の重量比率は、粉体/撥水親油化処理剤の値が、100/1〜100/7、好ましくは100/2〜100/7、特に100/3〜100/5であるのが好ましい。
【0065】
表面張力が20mN/m未満の粉体を撥水親油化処理した粉体としては、粉体/撥水親油処理剤が100/5の比率でメチルハイドロジェンポリシロキサンで処理したフッ素系樹脂等が特に好ましい。
【0066】
成分(F)は、2種以上を併用してもよい。本発明のF/O乳化組成物中に、成分(F)は10〜75%含有するが、乳化物の保存安定性及び皮膚に塗布したときの使用感の点で好ましくは20〜45%、特に25〜40%含有するのが好ましい。
【0067】
本発明のO/F乳化組成物及びF/O乳化組成物は、特に化粧料として使用するのが好ましく、その際、これらの成分の他に、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤等の界面活性剤、無機及び有機顔料、有機染料等の色剤、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、pH調整剤、香料、紫外線吸収剤、保湿剤、血行促進剤、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤等を適宜含有させることができる。
【0068】
本発明のこれらのO/F乳化組成物及びF/O乳化組成物は、通常の乳化組成物と同様の方法に従って製造される。
この様にして製造された乳化組成物の分散質(油相)の平均粒子径は、レーザー回折/散乱法で0.1〜1000μm、特に1〜100μmのものが好ましい。
【0069】
本発明の乳化組成物を化粧料とする場合、アイシャドー、ファンデーション、化粧下地、化粧水、乳液等とすると、フッ素系油剤による撥水撥油性が充分に発揮され、汗や皮脂による化粧崩れが起きにくく、化粧効果が長時間持続する点で好ましい。
【実施例】
【0070】
実施例1、比較例1〜4
表1に示す組成のO/F乳化組成物を次法に従って調製した。
調製法:F相中に粉体を添加、ディスパーで混合した後、攪拌しながらO相成分を添加して目的物を得た。
乳化物が調製された場合○印、調製されなかった場合×印を付した。
【0071】
【表1】

【0072】
参考例1、比較例5〜8
表2に示す組成物のF/O乳化組成物を次法に従って調製した。
調製法:O相中に粉体を添加、ディスパーで混合した後、攪拌しながらF相成分を添加して目的物を得た。
乳化物が調製された場合○印、調製されなかった場合×印を付した。
【0073】
【表2】

【0074】
実施例1のO/F乳化組成物中には、顕微鏡観察で撥水撥油化処理粉体が、また、参考例1のF/O乳化組成物中には、撥水親油処理粉体が各々の界面に局在していることが確認された。
【0075】
実施例2、比較例9〜11
表3に示すアイシャドーを次法に従って調製した。
調製法:O相中に、粉体及びその他の成分を添加し、ディスパーで混合した後、撹拌しながらF相成分を添加して目的物を得た。
【0076】
【表3】

【0077】
参考例2、比較例12〜14
表4に示すアイシャドーを次法に従って調製した。
調製法:F相中に、粉体及びその他の成分を添加し、ディスパーで混合した後、撹拌しながらO相成分を添加して目的物を得た。
【0078】
【表4】

【0079】
評価法
パネル5名が、各アイシャドーを使用して、次の評価基準に従って、塗布のしやすさ、化粧持ちを判断した結果を総合評価した。
◎:良い
○:やや良い
△:どちらともいえない
×:やや悪い
××:悪い
【0080】
実施例2、参考例2は塗布のしやすさ、化粧持ちのいずれも優れていた。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】実施例1の本発明1の顕微鏡観察を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)フッ素系油剤 30〜90重量%、
(B)成分(A)と相溶しない油剤 1〜30重量%、
(C)表面張力が20〜50mN/mの粉体を撥水撥油化処理した粉体
5〜50重量%
を含有し、成分(C)が成分(A)と成分(B)との界面に局在するO/F乳化組成物。
【請求項2】
O/F乳化組成物が化粧料である請求項1記載のO/F乳化組成物。
【請求項3】
成分(A)がパーフルオロポリエーテル、成分(B)がシリコーン油及び成分(C)が樹脂粉体又は有機粉体を含フッ素化合物で表面処理した粉体である請求項1又は2記載のO/F乳化組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2009−51865(P2009−51865A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−299998(P2008−299998)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【分割の表示】特願2001−272339(P2001−272339)の分割
【原出願日】平成13年9月7日(2001.9.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】