説明

O/W乳化組成物

【課題】
本発明は、オクトクリレンなどの油状有機紫外線吸収剤と固体有機紫外線吸収剤とを配合し、紫外線防御能、製剤安定性ならびに使用感に優れるO/W乳化組成物を提供する。
【解決手段】
本発明にかかる組成物は、下記成分(a)〜(c)を含み、成分(a)を含有する油相の平均粒子径が700nm以下であるO/W乳化組成物である:
(a)(a1)オクトクリレンを含む20℃で油状の有機紫外線吸収剤;
(b)(b1)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、及び(b2)メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールから選ばれる20℃で固体の有機紫外線吸収剤;
(c)下記一般式(1)又は(2)で示されるポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマー
O−(PO)m−(EO)n−H ・・・(1)
[Rは炭素数16〜18の炭化水素基、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基;POとEOとはブロック状に付加;m、nはそれぞれPO、EOの平均付加モル数で70>m>4、70>n>10、n>m]
O−(AO)p−(EO)q−R ・・・(2)
[R、Rは同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4の炭化水素基;AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基;EOはオキシエチレン基;AOとEOとはブロック状に付加;p、qはそれぞれAO、EOの平均付加モル数で1≦p≦70、1≦q≦70、且つ0.2<(q/(p+q))<0.8]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水中油型(O/W)乳化組成物、特に常温油状で油溶性の有機紫外線吸収剤と常温固体の有機紫外線吸収剤とを配合し、製剤安定性ならびに使用感に優れ、日焼け止め化粧料として好適なO/W乳化組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紫外線による皮膚への影響が広く知れられるようになり、また、美白に対するユーザーの意識向上などもあって、より高い紫外線防御能を発揮し、しかも使用感のよい化粧料が求められている。
【0003】
O/W乳化組成物は、油分を配合しながらもみずみずしくさっぱりとした使用感が得られることから、乳液、クリームなどの基礎化粧料としてはもちろん、ファンデーションや日焼け止め化粧料などの製品においても汎用される。
【0004】
化粧料において、有機紫外線吸収剤や、微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛などの無機紫外線散乱剤を配合して紫外線防御能を付与することが広く行われている。しかし、微粒子酸化チタンや微粒子酸化亜鉛などの無機紫外線遮蔽性粉体を多量に配合してUV−B〜UV−Aの広い領域にわたって高い紫外線防御能を付与しようとすると、仕上がりが白っぽくなったり、きしみ感や粉っぽさを生じることがある。
【0005】
一方、有機紫外線吸収剤は一般に高極性油であるものが多く、これは上記のような白浮きやきしみ感、粉っぽさなどの問題を生じないが、べたつきが大きく、肌へ塗布した際にO/W乳化組成物のみずみずしい使用感が損なわれ、また、乳化安定性も低くなる傾向がある。特に、有機紫外線吸収剤としてオクトクリレンとメトキシケイ皮酸エチルヘキシルとを併用した場合には、優れた紫外線防御能が発揮されるものの、乳化安定性や使用感の高いO/W乳化組成物を得ることは困難であった。
【0006】
また、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンはUV−AからUV−Bまで広い領域で紫外線吸収能を有する非常に優れた有機紫外線吸収剤であるが、本質的に常温では結晶性の固体であり、これを油相中に溶解してO/W乳化組成物に配合すると経時的に析出してしまうという問題があった。
【0007】
また、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールは、本質的に水にも油分にも不溶性の固体有機紫外線吸収剤であり、通常化粧料などの製品中で微粒子粉末の状態で分散してその紫外線防御能を発揮する。メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールはUV−AからUV−Bまで広い領域で紫外線吸収能を有する非常に優れた有機紫外線吸収剤であるが、より高い紫外線防御能のために、他の紫外線吸収剤と組み合わせて使用することが望まれる。
【0008】
しかしながら、常温で油状の有機紫外線吸収剤であるオクトクリレンを油相に含むO/W乳化組成物の水相にメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールを分散させると、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの微粒子粉末が水中で経時的に粗大化(凝集)して、紫外線防御能の低下や、ざらつきを生じるという問題があった。また、オクトクリレンは高極性で水中での安定な乳化が難しく、べたつきが大きいという問題もあった。
【0009】
特許文献1には、乳化剤を用いず、エチレン性不飽和モノマーの架橋ポリマーを用いて、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールのような不溶性紫外線吸収剤微粒子をエマルジョンに配合し、経時的安定性や耐水性を改善することが提案されている。
しかし、このような方法でも使用感や製剤安定性において十分と言えるものではなかった。
【0010】
また、特許文献2には、(ポリアクリル酸/アクリル酸アルキル)コポリマー、あるいはHLB8以上の非イオン性界面活性剤及び/又は脂肪酸石鹸を乳化剤として用いて、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの微粒子を水相中に分散させたO/W乳化組成物が記載されている。
しかし、オクトクリレンを配合した場合のメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール微粒子の粗大化・析出抑制については検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−199857号公報
【特許文献2】特開2004−107255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は前記背景技術に鑑みなされたものであり、その目的はオクトクリレンなどの油状有機紫外線吸収剤と固体有機紫外線吸収剤とを併用し、紫外線防御能、製剤安定性、ならびにべたつきがなくみずみずしい使用感に優れるO/W乳化組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討を行った結果、油状有機紫外線吸収剤を含む油相の平均粒子径を特定成分を乳化剤として用いて一定以下の乳化粒子径とすることにより、前記課題が解決できることを見出した。
例えば、オクトクリレン及びメトキシケイ皮酸エチルヘキシルを含む油相にビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを溶解し、この油相を特定成分を乳化剤として用いて一定以下の乳化粒子径とすることにより、紫外線防御能や経時的な製剤安定性に優れ、べたつきがなくみずみずしい使用感のO/W乳化組成物が得られることを見出した。
また、特定成分を乳化剤としてオクトクリレンを含有する油相を一定以下の乳化粒子径とすれば、水相中にメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの微粒子を分散させても、該微粒子の経時的な粗大化、凝集あるいは析出を生じず、また、油相の分離などもなく、製剤安定性が非常に高いO/W乳化組成物が得られること、このO/W乳化組成物はべたつきがなくみずみずしい使用感を有し、経時的な紫外線防御能の低下や使用感の悪化がないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、下記成分(a)〜(c)を含み、成分(a)を含有する油相の平均粒子径が700nm以下であることを特徴とするO/W乳化組成物を提供する。
(a)下記(a1)を含む20℃で油状の有機紫外線吸収剤:
(a1)オクトクリレン
(b)下記(b1)及び(b2)から選ばれる20℃で固体の有機紫外線吸収剤:
(b1)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
(b2)メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール
(c)下記一般式(1)又は(2)で示されるポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマー:
O−(PO)m−(EO)n−H ・・・(1)
[式中、Rは炭素数16〜18の炭化水素基、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基である。POとEOとはブロック状に付加している。m、nはそれぞれPO、EOの平均付加モル数を意味し、70>m>4、70>n>10、n>mである。]
O−(AO)p−(EO)q−R ・・・(2)
[式中、R、Rは同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4の炭化水素基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基である。AOとEOとはブロック状に付加している。p、qはそれぞれAO、EOの平均付加モル数を意味し、1≦p≦70、1≦q≦70、且つ0.2<(q/(p+q))<0.8である。]
【0015】
また、本発明は、
成分(a)がさらに成分(a2)メトキシケイ皮酸エチルヘキシルを含有し、
成分(b)が成分(b1)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを含有し、
成分(a)及び成分(b1)は油相中に溶解していることを特徴とするO/W乳化組成物を提供する。
【0016】
また、本発明は、
成分(b)が成分(b2)メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールを含有し、
成分(b2)は水相中に分散していることを特徴とするO/W乳化組成物を提供する。
【0017】
また、本発明は、成分(b2)として、アルキルポリグルコシドで微分散されたメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの水分散体を用いたことを特徴とするO/W乳化組成物を提供する。
また、本発明は、成分(b2)を0.5〜10質量%含むことを特徴とするO/W乳化組成物を提供する。
【0018】
また、本発明は、成分(a)がさらに成分(a2)メトキシケイ皮酸エチルヘキシルを含有することを特徴とするO/W乳化組成物を提供する。
また、本発明は、成分(b)が、成分(b2)メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールに加えて、さらに成分(b1)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを含有し、
成分(b1)は油相中に溶解していることを特徴とするO/W乳化組成物を提供する。
【0019】
また、本発明は、有機紫外線吸収剤を合計で8質量%以上含むことを特徴とするO/W乳化組成物を提供する。
また、本発明は、成分(c)を0.3〜3質量%含むことを特徴とするO/W乳化組成物を提供する。
また、本発明は、前記何れかに記載のO/W乳化組成物からなる日焼け止め化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、本質的に常温で油状の有機紫外線吸収剤と、本質的に常温で固体の有機紫外線吸収剤とを配合し、紫外線防御能、製剤安定性ならびに使用感に優れ、日焼け止め化粧料として好適なO/W乳化組成物が得られる。
【0021】
例えば、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンをオクトクリレン及びメトキシケイ皮酸エチルヘキシルを含む油相に溶解し、この油相を特定の乳化剤を用いて一定以下の乳化粒子径にまで微細乳化することにより、広いUV領域において高い紫外線防御能を発揮し、製剤安定性や使用感にも優れるO/W乳化組成物を得ることができる。本組成物は有機紫外線吸収剤を高配合することが可能であり、日焼け止め化粧料などに非常に有用である。
【0022】
また、オクトクリレンを含有する油相を特定の乳化剤を用いて一定以下の乳化粒子径にまで微細乳化したO/W乳化組成物の水相中に、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの微粒子を分散させることにより、製剤安定性や使用感にも優れるO/W乳化組成物を得ることができる。
本発明組成物は有機紫外線吸収剤を高配合することが可能であり、日焼け止め化粧料として非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(a)油状有機紫外線吸収剤
本発明に用いられる常温(約20℃)で油状の有機紫外線吸収剤のうち、(a1)オクトクリレン(化学名:2−エチルヘキシル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート)は、例えば「ユビヌルN539」(バスフ(BASF)社)、「パルソール340」(DSMニュートリションジャパン(株)社)等として市販されているものを簡便に使用できる。
オクトクリレンの配合量は、目的に応じて適宜設定可能であるが、紫外線防御能や固体成分の溶解性などの点から、本発明のO/W乳化組成物中においては1質量%以上、さらには2質量%以上、特に3質量%以上とすることが好ましい。一方、過剰に配合するとべたつきや油っぽさなどを生じて使用感が悪化するので、本発明のO/W乳化組成物中においては10質量%以下、さらには8質量%以下、特に6質量%以下とすることが好ましい。
【0024】
(a2)メトキシケイ皮酸エチルヘキシル(オクチルメトキシシンナメート)は、常温で油状の紫外線吸収剤であり、例えば「パルソールMCX」(DSMニュートリションジャパン(株))等として市販されているものを簡便に使用できる。
メトキシケイ皮酸エチルヘキシルの配合量は、目的に応じて適宜設定可能であるが、紫外線防御能や固体成分の溶解性などの点から、本発明のO/W乳化組成物中においては1質量%以上、さらには2質量%以上、特に4質量%以上とすることが好ましい。一方、過剰に配合するとべたつきや油っぽさなどを生じて使用感が悪化するので、本発明のO/W乳化組成物中においては7.5質量%以下、さらには7質量%以下、特に6質量%以下とすることが好ましい。
【0025】
なお、メトキシケイ皮酸エチルヘキシルも、オクトクリレンと同様に、後述する難溶性固体有機紫外線吸収剤(b2)メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールを凝集させる傾向があるが、本発明においてはオクトクリレンに加えてメトキシケイ皮酸エチルヘキシルを油相に配合しても、製剤安定性や使用感が良好なO/W乳化組成物が得られる。
【0026】
(b)固体有機紫外線吸収剤
本発明で用いられる常温(約20℃)で固体の有機紫外線吸収剤のうち、(b1)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(化学名:2,4−ビス−{[4−(2−エチルヘキシルオキシ)2−ヒドロキシ]−フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)−(1,3,5)−トリアジン))は、「チノソーブS」(チバスペシャリティケミカルズ(株)社)等として市販されているものを簡便に使用できる。
【0027】
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンの配合量は、目的に応じて適宜設定可能であるが、紫外線防御能などの点から、本発明のO/W乳化組成物中において0.5質量%以上、さらには1質量%以上、特に1.5質量%以上とすることが好ましい。一方、過剰に配合すると経時的に結晶が析出しやすくなるので、本発明のO/W乳化組成物中においては5質量%以下、さらには4質量%以下、特に3質量%以下とすることが好ましい。
【0028】
本発明のO/W乳化組成物において、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンは成分(a)を含む油相中に溶解している。
ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンは通常高極性油に溶解して用いられるが、オクトクリレンやメトキシケイ皮酸エチルヘキシルにも溶解可能である。本発明のO/W乳化組成物の油相にビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを溶解して用いた場合には、その溶解性を安定に保持することが可能である。
【0029】
(b2)メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール(化学名:2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)フェノール])としては、水相中に微細に分散された分散体を用いることができる。分散に好適な界面活性剤としては、C2n+1O(C10H[nは8〜16の整数、xはグルコシド単位の平均重合度であり1.4〜1.6の範囲である]で示されるアルキルポリグルコシドが知られている(特許文献1、特表2000−501064号公報等)。例えば、水相中に300nm以下に微粒子化された50%分散液の形態で「チノソーブM」や「チノソーブM1」(チバスペシャリティケミカルズ(株)社)として市販されており、これを簡便に使用することができる。
【0030】
メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの配合量は、目的に応じて適宜設定可能であるが、紫外線防御能などの点から、本発明のO/W乳化組成物中においては乾燥質量で0.5質量%以上、さらには1質量%以上とすることが好ましい。一方、過剰に配合すると経時的な析出の懸念を生じやすくなるので、本発明のO/W乳化組成物中においては、10質量%以下、さらには6質量%以下、特に4質量%以下とすることが好ましい。
【0031】
また、本発明のO/W乳化組成物において、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールは水相中に微粒子粉末として偏在し、例えば、その80質量%以上、さらには90質量%以上が水相中に存在し、油相中にはほとんど存在しない。その分散粒径は通常1μm以下であり、好ましくは500nm以下である。分散粒径が大きくなると、紫外線防御能の低下さらには凝集などを生じる。
【0032】
また、有機紫外線吸収剤の合計量は所望の紫外線防御能に応じて設定すればよいが、O/W乳化組成物中8質量%以上、さらには9質量%以上、特に10質量%以上であることが好ましい。本発明においては、油溶性有機紫外線吸収剤をこのように高配合した場合でも、製剤安定性や使用感に優れるO/W乳化組成物が得られる。上限は特に制限されないが、通常は30質量%以下、さらには25質量%以下である。
【0033】
(c)ポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマー
本発明では、成分(a)を含む油相の乳化剤として、下記一般式(1)又は(2)で示されるポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマーの1種以上を用いることが好適である。本乳化剤を用いれば、成分(a)を含む油相が微細化・安定化されたO/W乳化組成物を容易に製造することができる。該乳化剤で乳化される油相中には、成分(b1)などの油溶性有機紫外線吸収剤や、その他の油性成分が含まれていてよい。
【0034】
O−(PO)m−(EO)n−H ・・・(1)
【0035】
一般式(1)において、Rは炭素数16〜18の炭化水素基であり、好ましくは飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基である。例えば、パルミチル、ステアリル、イソステアリル、オレイル、リノリル等が挙げられる。
POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基である。
一般式(1)において、PO、EOはブロック状に結合していなければならない。ランダム状に結合している場合には、製剤安定性が十分に得られない。なお、プロピレンオキシドおよびエチレンオキシドの付加する順序は特に指定はない。またブロック状には2段ブロックのみならず、3段以上のブロックも含まれる。
m、nはそれぞれPO、EOの平均付加モル数を意味し、70>m>4、70>n>10、n>mである。
【0036】
一般式(1)のブロックポリマーの分子量は、好ましくは800以上、さらに好ましくは1500以上である。分子量800未満では効果が低い。また分子量の上限は特に規定できないが、分子量が大きくなっていくにつれべたつき感が生じる傾向がある。
一般式(1)で示されるブロックポリマーとしては、例えば、ニッコールPBC44(日光ケミカルズ(株))などが挙げられる。
【0037】
O−(AO)p−(EO)q−R ・・・(2)
【0038】
一般式(2)において、R、Rは同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4の炭化水素基であり、好ましくは飽和の脂肪族炭化水素基である。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルが挙げられ、より好ましくはメチル、エチルである。
AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基であり、オキシプロピル基、オキシブチル基が挙げられる。EOはオキシエチレン基である。
一般式(2)において、AO、EOはブロック状に結合している。ランダム状に結合している場合には、製剤安定性が十分に得られない。なお、エチレンオキシドおよびアルキレンオキシドの付加する順序は特に指定はない。またブロック状には2段ブロックのみならず、3段以上のブロックも含まれる。
p、qはそれぞれAO、EOの平均付加モル数を意味し、1≦p≦70、1≦q≦70、且つ0.2<(q/(p+q))<0.8である。
【0039】
一般式(2)のブロックポリマーの分子量は、好ましくは1000以上、さらに好ましくは3000以上である。分子量1000未満では効果が低い。また分子量の上限は特に規定できないが、分子量が大きくなっていくにつれべたつき感が生じる傾向がある。
一般式(2)のブロックポリマーは、公知の方法で製造することができる。例えば、水酸基を有している化合物にエチレンオキシドおよび炭素数3〜4のアルキレンオキシドを付加重合した後、ハロゲン化アルキルをアルカリ触媒存在下にエーテル反応させることによって得ることができる(例えば、特開2004−83541号公報等)。
【0040】
一般式(2)のブロックポリマーとしては、具体的にはPOE(14)POP(7)ジメチルエーテル、POE(10)POP(10)ジメチルエーテル、POE(7)POP(12)ジメチルエーテル、POE(15)POP(5)ジメチルエーテル、POE(25)POP(25)ジメチルエーテル、POE(27)POP(14)ジメチルエーテル、POE(55)POP(28)ジメチルエーテル、POE(22)POP(40)ジメチルエーテル、POE(35)POP(40)ジメチルエーテル、POE(50)POP(40)ジメチルエーテル、POE(36)POP(41)ジメチルエーテル、POE(55)POP(30)ジメチルエーテル、POE(30)POP(34)ジメチルエーテル、POE(25)POP(30)ジメチルエーテル、POE(14)POB(7)ジメチルエーテル、POE(10)POP(10)ジエチルエーテル、POE(10)POP(10)ジプロピルエーテル、POE(10)POP(10)ジブチルエーテル等が挙げられる。
なお、上記POE、POP、POBは、それぞれポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンの略であり、以下このように略して記載することがある。
【0041】
これらブロックポリマーは、少量で成分(a)を含む油相を微細・安定に乳化することができるので、界面活性剤によるべたつきを生じることなく安定なO/W乳化組成物を得ることができる。ただし、少なすぎると安定なO/W乳化組成物が得られないので、ブロックポリマーの配合量としては、組成物中0.3〜3質量%、さらには0.3〜2質量%、特に0.3〜1質量%が好ましい。
【0042】
O/W乳化組成物
本発明のO/W乳化組成物においては、油相の平均乳化粒子径を700nm以下にする。粒子径が700nmを超えると製剤安定性や使用感が悪くなる。
乳化方法は、油相を700nm以下にまで微細に乳化できる限り任意の方法を採用できる。例えば、高圧乳化法や、少量の水の存在下(あるいは非存在下)で多価アルコールなどの親水性溶媒を用いる微細乳化法(例えば特公昭57−29213号公報、特開2006−182724号公報など)などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
【0043】
成分(b)として(b1)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを用いる場合、本発明のO/W乳化組成物は、オクトクリレンとメトキシケイ皮酸エチルヘキシルとビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンとを含む平均粒子径700nm以下の油相粒子が連続相である水相中に分散し、油相はビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンが溶解した均一相であることが好適である。
【0044】
その製造方法は特に制限されないが、典型的には、(a1)オクトクリレン、(a2)メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、及び(b1)メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールを混合溶解した油相と、水相とを、(c)ポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマーを用いて、乳化することにより得ることができる。特に問題のない限り、他の成分をその相溶性や親和性に応じて油相又は水相に配合してもよい。
【0045】
また、成分(b)として(b2)メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールを用いる場合、本発明のO/W乳化組成物は、その連続相である水相中に、
(i)オクトクリレンを含有する平均粒子径700nm以下の油相粒子と、
(ii)メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの微粒子と、
がそれぞれ実質的に別々に分散しているものである。
【0046】
その製造方法は特に制限されないが、典型的には、(a1)オクトクリレンを含有する油相と、(b2)メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの微粒子が分散した水相とを、(c)ポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマーを用いて乳化することにより得ることができる。あるいは、(a1)オクトクリレンを含有する油相を、(c)ポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマーを用いて乳化してO/W乳化組成物とした後に、(b2)メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール水性分散液を添加することにより得ることもできる。特に問題のない限り、他の成分をその相溶性や親和性に応じて油相又は水相に配合してもよい。
【0047】
本発明のO/W乳化組成物においては、成分(a)を含む油相の平均乳化粒子径を700nm以下にする。粒子径が700nmを超えると使用感が悪くなり、また、製剤安定性の低下(経時的な油分の分離やクリーミングの発生等の他、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール分散微粒子の粗大化、凝集、析出など)を生じる。
【0048】
本発明のO/W乳化組成物には、上記必須成分に加えて、本発明の効果に特に影響のない限り、化粧料に配合可能な他の成分を配合してよい。例えば、粉末成分、液体油脂、固体油脂、ロウ、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、シリコーン、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤、保湿剤、水溶性高分子、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、金属イオン封鎖剤、低級アルコール、多価アルコール、糖、アミノ酸、有機アミン、高分子エマルジョン、pH調整剤、皮膚栄養剤、ビタミン、酸化防止剤、酸化防止助剤、香料、水等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0049】
本発明のO/W乳化組成物には上記以外の有機紫外線吸収剤も配合可能である。配合可能な有機紫外線吸収剤としては、化粧料に通常使用される紫外線吸収剤が挙げられる。例えば、トリアジン系紫外線吸収剤(例えば、ビスレゾルシニルトリアジン等);オクチルトリアゾン(2,4,6−トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5−トリアジン);安息香酸系紫外線吸収剤(例えば、パラアミノ安息香酸(以下、PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル等);アントラニル酸系紫外線吸収剤(例えば、ホモメンチル-N- アセチルアントラニレート等);サリチル酸系紫外線吸収剤(例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-イソプロパノールフェニルサリシレート等);桂皮酸系紫外線吸収剤(例えば、オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート) 、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等);ベンゾフェノン系紫外線吸収剤(例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'-
ジヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン、2,2'-ジヒドロキシ-4,4'-ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'-テトラヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシ-4'-メチルベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4- メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸塩、4-フェニルベンゾフェノン、2-エチルヘキシル-4'-フェニル-ベンゾフェノン-2-カルボキシレート、2-ヒドロキシ-4-n-オクトキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシ-3-カルボキシベンゾフェノン等);3-(4'-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー;2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール;2,2'-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール;2-(2'-ヒドロキシ-5'-t-オクチルフェニル) ベンゾトリアゾール;2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニルベンゾトリアゾール;ジベンザラジン;ジアニソイルメタン;4-メトキシ-4'-t-ブチルジベンゾイルメタン;5-(3,3-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン、4,4-ジアリールブタジェン等が挙げられる。
【0050】
本発明のO/W乳化組成物は、日焼け止め機能が望まれる各種化粧料に適用可能であり、乳液、クリーム、化粧下地料の他、ファンデーション、口紅などのメークアップ化粧料にも適用可能である。
【実施例】
【0051】
以下、具体例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。配合量は特に記載のない限り質量%である。なお、本発明で用いた評価方法は次の通り。
【0052】
(平均乳化粒子径)
O/W乳化組成物の製造直後の乳化粒子の粒度分布をゼータサイザー(Zetasizer Nano ZS (シスメックス株式会社))で測定した。
【0053】
(使用感)
女性パネラー20名によって、製造直後の被験試料を顔部に手で塗布してもらい、塗布中のべたつきについてアンケートを行い、以下の基準で評価した。
○:べたつかないと答えたパネラーが16名以上。
△:べたつかないと答えたパネラーが6名以上、15名以下。
×:べたつかないと答えたパネラーが5名以下。
【0054】
(乳化安定性)
被験試料を50℃で1ヵ月保存した後の外観を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
○:油浮きやクリーミングなどがない。
△:油浮きやクリーミングなどがわずかにある。
×:油浮きやクリーミングがある。
【0055】
(溶解安定性)
被験試料を0℃で1ヶ月保存した後の析出物を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
○:結晶や不溶物が析出しない。
△:結晶や不溶物が若干析出した。
×:結晶や不溶物が析出した。
【0056】
(微粒子分散安定性)
被験試料を50℃で1ヶ月保存した後の析出物を肉眼で観察し、下記の基準で評価した。
○:結晶や不溶物が析出しない。
△:結晶や不溶物が若干析出した。
×:結晶や不溶物が析出した。
【0057】
(紫外線防御能)
製造直後の被験試料の紫外線防御能をin
vitro SPECTRO PHOTOMETER U-4100(HITACHI)で測定し、下記の基準で評価した。
○:(310nmでの吸光度が基準サンプル(in
vivo測定値SPF16)よりも高い。
×:(310nmでの吸光度が基準サンプル(in
vivo測定値SPF16)よりも低い。
【0058】
試験例1 油相粒子径
表1の組成で下記製法により(b1)を配合したO/W組成物を調製した。
【0059】

【表1】

【0060】
(製法)
製法1−1
成分(1)の一部に、成分(3)〜(5)と成分(8)を加熱混合し、高圧乳化機(APV社)で乳化する。この乳化物にその他の成分を添加混合して、目的とするO/W乳化組成物を得る。
製法1−1’
成分(6)、成分(7)、成分(1)の一部、成分(8)を混合し、これに成分(3)〜(5)を混合溶解したものを添加して、ホモミキサーで乳化する。この乳化物にその他の成分を添加混合して、目的とするO/W乳化組成物を得る。
【0061】
製法1−2
成分(3)〜(5)と成分(8)とを混合溶解し、これを成分(11)を成分(1)に溶解した溶液に添加して、ホモミキサーで乳化する。この乳化物にその他の成分を添加混合して、目的とするO/W乳化組成物を得る。
【0062】
表1に示されるように、同じ組成であっても、試験例1−aのように乳化粒子径が700nmを超えていると、肌への塗布中にべたつき感があり、乳化安定性も不十分である。
【0063】
試験例2 界面活性剤量
試験例1−1において、乳化剤であるブロックポリマー[POE(20)POP(8)セチルエーテル]の配合量を変えた以外は同様にして、O/W乳化組成物を調製した。
【0064】
【表2】

【0065】
表2に示されるように、ブロックポリマーが少なすぎると乳化安定性が低下する傾向があり、過剰な使用は塗布中のべたつき感を生じる。
このようなことから、ブロックポリマーは本発明のO/W乳化組成物中0.3〜3質量%、さらには0.3〜2質量%、特に0.3〜1質量%が好適である。
本発明によれば、上記表2のように、極少量の乳化剤(例えば1質量%以下)で多量の油溶性有機紫外線吸収剤(例えば8質量%以上)を安定に乳化し、紫外線防御能、製剤安定性ならびに使用感に優れたO/W乳化組成物を提供することが可能である。
【0066】
試験例3 界面活性剤の種類
試験例1−1において、乳化剤であるブロックポリマー[POE(20)POP(8)セチルエーテル]の種類を変えた以外は同様にして、O/W乳化組成物を調製した。
【0067】
【表3】

【0068】
表3に示されるように、一般式(1)や(2)のブロックポリマーは成分(a)を含む油相を700nm以下にまで容易に乳化でき、製剤安定性、使用感に優れるO/W乳化組成物が得られたが、他の非イオン性界面活性剤では、同程度のHLBであっても、このようなO/W乳化組成物を得ることは困難であった。
【0069】
試験例4 有機紫外線吸収剤量
試験例1−1において、有機紫外線吸収剤の配合量を変えた以外は同様にしてO/W乳化組成物を調製した。
【0070】
【表4】

【0071】
試験例4−a〜4−cのように、有機紫外線吸収剤を過剰に配合するとべたつきや、乳化安定性の低下を生じる。また、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを過剰に配合した場合には、経時的な析出も生じることがある。
このようなことから、O/W乳化組成物中において、オクトクリレンは10質量%以下、メトキシケイ皮酸エチルヘキシルは7.5質量%以下、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンは5質量%以下とすることが好ましい。
ただし、試験例4−d〜4−fのように、有機紫外線吸収剤の配合量が少なすぎると紫外線防御能が低下するので、有機紫外線吸収剤の合計量を8質量%以上、さらには9質量%以上、特に10質量%以上とすることが好ましい。
【0072】
試験例5 油相粒子径
表5の組成で下記製法により(b2)を配合したO/W組成物を調製した。
【0073】
【表5】

【0074】
(製法)
製法2−1
成分(1)の一部に、成分(3)〜(4)と成分(8)を加熱混合し、高圧乳化機(APV社)で乳化する。この乳化物に成分(5)を添加し、さらにその他の成分を添加混合して、目的とするO/W乳化組成物を得る。
製法2−1’
成分(6)、成分(7)、成分(1)の一部、成分(8)を混合し、これに成分(3)〜(4)を混合溶解したものを添加して、ホモミキサーで乳化する。この乳化物に成分(5)を添加し、さらにその他の成分を添加混合して、目的とするO/W乳化組成物を得る。
【0075】
製法2−2
成分(3)〜(4)と成分(8)とを混合溶解し、これを成分(11)を成分(1)に溶解した溶液に添加して、ホモミキサーで乳化する。この乳化物に成分(5)を添加し、さらにその他の成分を添加混合して、目的とするO/W乳化組成物を得る。
【0076】
表1に示されるように、同じ組成であっても、試験例5−a〜5−bのように乳化粒子径が700nmを超えていると、肌への塗布中にべたつき感があり、乳化安定性も不十分で、さらには、製造直後は微細に分散していたメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの経時的な凝集・析出が認められる。
【0077】
試験例6 界面活性剤量
試験例5−1において、乳化剤であるブロックポリマー[POE(20)POP(8)セチルエーテル]の配合量を変えた以外は同様にして、O/W乳化組成物を調製した。
【0078】
【表6】

【0079】
表6に示されるように、ブロックポリマーが少なすぎると乳化安定性が低下する傾向があり、過剰な使用は塗布中のべたつき感を生じる。
このようなことから、ブロックポリマーは本発明のO/W乳化組成物中0.3〜3質量%、さらには0.3〜2質量%、特に0.3〜1質量%が好適である。
本発明によれば、上記表2のように、極少量の乳化剤(例えば1質量%以下)で多量の油溶性有機紫外線吸収剤(例えば8質量%以上)を安定に乳化し、紫外線防御能、製剤安定性ならびに使用感に優れたO/W乳化組成物を提供することが可能である。
【0080】
試験例7 界面活性剤の種類
試験例5−1において、乳化剤であるブロックポリマー[POE(20)POP(8)セチルエーテル]の種類を変えた以外は同様にして、O/W乳化組成物を調製した。
【0081】

【表7】

【0082】
表7に示されるように、一般式(1)や(2)のブロックポリマーは成分(a)を含む油相を700nm以下にまで容易に乳化でき、製剤安定性、使用感に優れるO/W乳化組成物が得られたが、他の非イオン性界面活性剤では、同程度のHLBであっても、このようなO/W乳化組成物を得ることは困難であった。
【0083】
試験例8 有機紫外線吸収剤量
試験例5−1において、有機紫外線吸収剤の配合量を変えた以外は同様にしてO/W乳化組成物を調製した。
【0084】
【表8】

【0085】
試験例8−a〜8−bのように、オクトクリレンを過剰に配合すると700nm以下に乳化していてもべたつきや、乳化安定性の低下を生じる。また、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールを過剰に配合した場合には、経時的な析出を生じることがある。
このようなことから、O/W乳化組成物中において、オクトクリレンは10質量%以下、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールは10質量%以下とすることが好ましい。
ただし、試験例8−c〜8−dのように、有機紫外線吸収剤の配合量が少なすぎると紫外線防御能が低下するので、有機紫外線吸収剤の合計量を8質量%以上、さらには9質量%以上、特に10質量%以上とすることが好ましい。
【0086】
試験例9 難溶性有機紫外線吸収剤の配合
表9の組成で下記製法によりO/W組成物を調製した。表9に示すように、本発明にかかるO/W乳化組成物の油相中に難溶性有機紫外線吸収剤(ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン)を配合した試験例9−1では、乳化安定性、分散安定性、使用感に優れたO/W乳化組成物を得ることができた。また、経時的なビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンの析出も認められなかった。
【0087】

【表9】

【0088】
(製法)
製法3
成分(1)の一部に、成分(3)〜(5)と成分(9)を加熱混合し、高圧乳化機(APV社)で乳化する。この乳化物に成分(6)を添加し、さらにその他の成分を添加混合して、目的とするO/W乳化組成物を得る。
製法3’
成分(7)、成分(8)、成分(1)の一部、成分(9)を混合し、これに成分(3)〜(5)を混合溶解したものを添加して、ホモミキサーで乳化する。この乳化物に、成分(6)を添加し、さらにその他の成分を添加混合して、目的とするO/W乳化組成物を得る。
【0089】
製法4
成分(3)〜(5)と成分(9)とを混合溶解し、これを成分(12)を成分(1)に溶解した溶液に添加して、ホモミキサーで乳化する。この乳化物に成分(6)を添加し、さらにその他の成分を添加混合して、目的とするO/W乳化組成物を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(a)〜(c)を含み、成分(a)を含有する油相の平均粒子径が700nm以下であることを特徴とするO/W乳化組成物。
(a)下記(a1)を含む20℃で油状の有機紫外線吸収剤:
(a1)オクトクリレン
(b)下記(b1)及び(b2)から選ばれる20℃で固体の有機紫外線吸収剤:
(b1)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン
(b2)メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール
(c)下記一般式(1)又は(2)で示されるポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテルブロックポリマー:
O−(PO)m−(EO)n−H ・・・(1)
[式中、Rは炭素数16〜18の炭化水素基、POはオキシプロピレン基、EOはオキシエチレン基である。POとEOとはブロック状に付加している。m、nはそれぞれPO、EOの平均付加モル数を意味し、70>m>4、70>n>10、n>mである。]
O−(AO)p−(EO)q−R ・・・(2)
[式中、R、Rは同一もしくは異なっていてもよく、それぞれ炭素数1〜4の炭化水素基、AOは炭素数3〜4のオキシアルキレン基、EOはオキシエチレン基である。AOとEOとはブロック状に付加している。p、qはそれぞれAO、EOの平均付加モル数を意味し、1≦p≦70、1≦q≦70、且つ0.2<(q/(p+q))<0.8である。]
【請求項2】
請求項1記載の組成物において、
成分(a)がさらに成分(a2)メトキシケイ皮酸エチルヘキシルを含有し、
成分(b)が成分(b1)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを含有し、
成分(a)及び成分(b1)は油相中に溶解していることを特徴とするO/W乳化組成物。
【請求項3】
請求項1記載の組成物において、
成分(b)が成分(b2)メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールを含有し、
成分(b2)は水相中に分散していることを特徴とするO/W乳化組成物。
【請求項4】
請求項3記載の組成物において、成分(b2)として、アルキルポリグルコシドで微分散されたメチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノールの水分散体を用いたことを特徴とするO/W乳化組成物。
【請求項5】
請求項3又は4記載の組成物において、成分(b2)を0.5〜10質量%含むことを特徴とするO/W乳化組成物。
【請求項6】
請求項3〜5の何れかに記載の組成物において、成分(a)がさらに成分(a2)メトキシケイ皮酸エチルヘキシルを含有することを特徴とするO/W乳化組成物。
【請求項7】
請求項3〜6の何れかに記載の組成物において、
成分(b)がさらに成分(b1)ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンを含有し、
成分(b1)は油相中に溶解していることを特徴とするO/W乳化組成物。
【請求項8】
請求項1〜7の何れかに記載の組成物において、有機紫外線吸収剤を合計で8質量%以上含むことを特徴とするO/W乳化組成物。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の組成物において、成分(c)を0.3〜3質量%含むことを特徴とするO/W乳化組成物。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載のO/W乳化組成物からなる日焼け止め化粧料。

【公開番号】特開2010−132647(P2010−132647A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−246417(P2009−246417)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】