説明

PD(II)及びNI(II)複合物の粘土による活性化

Pd(II)又はNi(II)に配位したフォスフィノベンゼンスルホネート配位子を有する金属複合物と、該金属複合物に結合した粘土とを含む、粘土担持複合体。粘土担持複合体は、中性であるか、又は、荷電している。粘土担持複合体は、極性及び非極性のアルファ−オレフィンを含むオレフィンの単独重合及び共重合において活性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照することにより本明細書に援用される、2008年6月19日に提出された仮特許出願No.61/132,479の利益を主張する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、オレフィン重合及びオレフィン共重合のための担持された触媒に関する。
【背景技術】
【0003】
技術者は、硬度、接着性、表面特性(塗装性及び印刷性)、溶剤耐性、他の高分子化合物との混和性、及びレオロジー特性などの重要な材料特性を改善すべく研究をしている(非特許文献1)。前周期遷移金属であるチーグラー・ナッタ、及び、メタロセン型複合物は、α−オレフィンの単独重合のために広く用いられている(非特許文献2、3)。Ti、Zr、及びCrに基づく複合物の高い親オキソ性は、官能基を有する大抵のビニルモノマー、特に、アクリレート、メタクリレート、及び酢酸ビニルのような商業的に有用な極性モノマーによって、その複合物に触媒毒を引き起こす(非特許文献1)。
【0004】
極性官能基を有するモノマーに適合できるオレフィン重合触媒を進歩させることは、極性モノマーと触媒との間における強い相互作用が反応抑制を引き起こすことから、容易なものではない。カチオン性Ni(II)及びPd(II)ジイミン複合物を用いるエチレン及びメチルアクリレート(MA)の組み込み共重合を最初に実証したBrookhartら(非特許文献4)によって大きな進歩が遂げられた。結果として得られた高分子化合物は、分岐鎖の末端にのみ偏在するアクリレート単位を備えた分岐状のものであった(非特許文献5−8)。より近年、直鎖状ポリエチレンにアクリレートモノマーをランダムに混入させることがDrentら(非特許文献9)によって報告されており、彼らは、ビス(オルト−メトキシフェニル)フォスフィノベンゼン−スルホネート配位子とPd(dba)2(dba=ジベンジリデンアセトン)とを組み合わせた反応によって調製されたin situ(インサイチュー)触媒を使って、2〜17モル%のアクリレートモノマーを混入し、比較的小さい分子量(Mn=2,000〜20,000)になることを報告している(特許文献1、2)。これら触媒による“鎖−移動”がないのは、ブルックハートシステムに比較してβ水素脱離がより強く妨げられていることによるものと理論上の研究は提言している(非特許文献10〜12)。
【0005】
共重合には、金属中心の適当な求電子性が必要とされることが提言されている。求電子性が高すぎると、安定なキレートの活性部位へ極性官能基が意図しない配位を起こす結果となり、一方、求電子性が低すぎると、オレフィンへ挿入する活性が低くなるという結果になる(非特許文献13)。Pughら(非特許文献9)の業績の後、複数のグループが、Pd(II)フォスフィノベンゼン−スルホネート系の化学的性質と、エチレン/アクリレート及びエチレン/CO共重合におけるその性能とを研究した(特許文献3〜7、非特許文献14〜16)。さらに、酢酸ビニル/CO(非特許文献17)、エチレン/ノルボルネン(非特許文献18)、エチレン/官能基含有ノルボルネン(非特許文献19)、エチレン/アクリロニトリル(非特許文献20)、及びエチレン/ビニルエーテル共重合(非特許文献21、22)などの他の共重合においてこれらのシステムが触媒作用をし、直鎖状共重合体を作ることが見出された。直鎖状ポリエチレン鎖にアクリロニトリル単位を混入させることは、中性ルチジンに基づくPd(II)複合物を用いても達成されている。この反応は、遅いが触媒的な様式で起こる(非特許文献20)。メトキシ基が金属中心と弱く断続的に反応することが、ルイス塩基性コノモマーの調整された置換を促進し得るという示唆がなされている(非特許文献23、特許文献8)。
【0006】
シェル高級オレフィンプロセス(SHOP)(非特許文献24)のために、触媒としての中性酸素含有NiキレートがKeimらによって何年も前に開発されており、該プロセスにおいて、[P,O]Ni触媒によるエテンオリゴマー反応が官能基に対して高い耐性を有することが示されている(非特許文献25)。Grubbsらは、官能基を有するノルボルネンをエチレンと共重合させることができる、サリチルアルジミン配位子に基づく[N,O]Ni触媒の一群を開発した(非特許文献26)。しかしながら、これらの触媒は、直接的にC−C結合へ付着することで極性官能基を有する極性モノマーを組み入れるものではない。その後、Carliniらは、インサイチュー(in situ)で形成されるニッケルサリチルアルジミン触媒を紹介しており、この触媒は、エチレンとメチルメタクリレート(MMA)とを共重合させ、高分子量直鎖状共重合体を作るとされている(非特許文献27)。しかしながら、単独重合体の混合物の構造を同様に調査することは、行われなかった。Gibsonらは、[P,O]Ni触媒を採用し、低分子量の、末端にメチルメタクリレートを有するポリエチレンを製造した(非特許文献28)。フォスフィノベンゼンスルホネート配位子に基づくNi触媒がRiegerらによって合成され、その特性が明らかにされ、そして、(実に極性モノマーの存在下における)エチレン単独重合の活性が報告されたが、共重合の活性は観測されなかった(非特許文献29)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第589527B1号
【特許文献2】国際公開第00/106615号パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願第1760086号
【特許文献4】欧州特許出願第1760097号
【特許文献5】米国特許出願第049712号
【特許文献6】欧州特許出願第1762572号
【特許文献7】カナダ国特許出願第2556356号
【特許文献8】欧州特許第296687B1号
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】L. S. Boffa, B. M. Novak, Chem. Rev. 2000, 100, 1479-1493.
【非特許文献2】J. Zhang, X. Wang, G. X. Jin, Coord Chem. Rev. 2006, 250, 95-109.
【非特許文献3】H. G. Alt, A. Koppl, Chem. Rev. 2000, 100, 1205-1221.
【非特許文献4】L. K. Johnson, C. M. Killian, M. Brookhart, J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 6414-6415.
【非特許文献5】S. D. Ittel, L. K. Johnson, M. Brookhart, Chem. Rev. 2000, 100, 1169-1203.
【非特許文献6】L. K. Johnson, S. Mecking, M. Brookhart, J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 267-268.
【非特許文献7】S. Mecking, Coord Chem. Rev. 2000, 203, 325-351.
【非特許文献8】S. Mecking, L. K. Johnson, L. Wang, M. Brookhart, J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 888-899.
【非特許文献9】E. Drent, R. van Dijk, R. van Ginkel, B. van Oort, R. I. Pugh, Chem. Commun. 2002, 744-745.
【非特許文献10】A, Haras, G. D. W. Anderson, A. Michalak, B. Rieger, T. Ziegler, Organometallics 2006, 25, 4491-4497.
【非特許文献11】M. J. Szabo, N. M. Galea, A. Michalak, S. Y. Yang, L. F. Groux, W. E. Piers, T. Ziegler, J. Am. Chem. Soc. 2005, 127, 14692-14703.
【非特許文献12】S. Tomasi, H. Weiss, T. Ziegler, Organometallics 2006, 25, 3619-3630.
【非特許文献13】M. J. Szabo, R. F. Jordan, A. Michalak, W. E. Piers, T. Weiss, S. Y. Yang, T. Ziegler, Organometallics 2004, 23, 5565-5572.
【非特許文献14】A. K. Hearley, R. A. J. Nowack, B. Rieger, Organometallics 2005, 24] 2755-2763.
【非特許文献15】T. Kochi, K. Yoshimura, K. Nozaki, Dalton Trans. 2006, 25-27.
【非特許文献16】D. K. Newsham, S. Borkar, A. Sen, D. M. Conner, B. L. Goodall, Organometallics 2007, 26, 3636-3638.
【非特許文献17】T. Kochi, A. Nakamura, H. Ida, K. Nozaki, J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 7770- 7771.
【非特許文献18】K. M. Skupov, P. R. Marella, J. L. Hobbs, L. H. Mclntosh, B. L. Goodall, J. P. Claverie, Macromolecules 2006, 39, 4279-4281.
【非特許文献19】S. Liu, S. Borkar, D. Newsham, H. Yennawar, A. Sen, Organometallics 2007, 26, 210-216.
【非特許文献20】T. Kochi, S. Noda, K. Yoshimura, K. Nozaki, J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 8948- 8949.
【非特許文献21】S. Luo, J. Vela, G. R. Lief, R. F. Jordan, J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 8946-8947.
【非特許文献22】W. Weng, Z. Shen, R. F. Jordan, J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 15450-15451.
【非特許文献23】J. Vela, G. R. Lief, Z. L. Shen, R, F. Jordan, Organometallics 2007, 26, 6624-6635.
【非特許文献24】W. Keim, F. H. Kowaldt, R. Goddard, C. Kruger, Angew. Chem., Int. Ed Engl. 1978, 17, 466-467.
【非特許文献25】U. Klabunde, S. D. Ittel, J. MoI. Catal. 1987, 41, 123-134.
【非特許文献26】T. R. Younkin, E. F. Conner, J. I. Henderson, S. K. Friedrich, R. H. Grubbs, D. A. Bansleben, Science 2000, 287, 460-462.
【非特許文献27】C. Carlini, M. Martinelli, A. M. R. Galletti, G. Sbrana, Macromol. Chem. Phys. 2002, 203, 1606-1613.
【非特許文献28】V. C. Gibson, A. Tomov, Chem. Commun. 2001, 1964-1965.
【非特許文献29】R. J. Nowack, A. K. Hearley, B. Rieger, Z. Anorg. AtIg. Chem. 2005, 631, 2775-2781.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
容易に入手可能な極性官能基を有するモノマーと相性のよいオレフィン重合用触媒が開発されると、高圧のフリーラジカル重合によって現状製造されている広範な官能基含有共重合体に、低圧及び低温の合成経路が提供され得る。これらのフリーラジカルプロセスは、高い圧力を要し、結果として資本投資及び製造コストが大きくなり、そして、極性官能基の混入が制御できないものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、1つの側面では、オレフィンモノマー及びコモノマーを重合させるように作用しうる、粘土担持複合体が提供される。
粘土担持複合体は、Pd(II)又はNi(II)に配位したフォスフィノベンゼンスルホネート配位子を含む金属複合物と、金属複合物に結合した粘土とを含む。ある態様では、フォスフィノベンゼンスルホネート配位子がPd(II)に配位し、一方、他の態様では、フォスフィノベンゼンスルホネート配位子がNi(II)に配位している。金属複合物は、下記に示す式(I)又は(II)の金属化合物に由来し得るものであり、下記に示す式(III)のフェニル基を有し得る。金属複合物のいずれの態様を伴っても、粘土は、粘土鉱物、又はイオン交換性層状ケイ酸塩であり得るものであり、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ステベンサイト、バーミキュライト、マイカ、イライト、セリサイト、グロコナイト、アタパルジャイト、セピオライト、タエニオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、クロライト、及びカオリナイトであり得る。
【0011】
他の側面では、単独重合の方法が提供される。該方法は、様々な態様の粘土担持複合体の存在下においてオレフィンモノマーを重合することを含む。該モノマーとしては、式R1CH=CH2のオレフィンであって、R1が水素、又は、1〜30の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状アルキル基のもの、又は、スチレン、官能基含有スチレン、ノルボルネン、若しくは官能基含有ノルボルネンが挙げられる。
【0012】
共重合の方法も提供される。該方法は、様々な態様の粘土担持触媒複合体の存在下において2種又はそれ以上の異なるモノマーを重合することを含む。当該方法のある態様では、2種又はそれ以上の異なるモノマーは、それぞれ独立して、式R2CH=CH2のオレフィンであって、R2が水素、又は、1〜30の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状アルキル基のもの、若しくは、スチレン、官能基含有スチレン、ノルボルネン、若しくは官能基含有ノルボルネンのいずれかであり、又は、式H2C=CR3Xの極性モノマーであって、R3が水素、又は、1〜30の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、若しくはアルコキシ基であり、且つXが極性基のものである。
【0013】
さらなる側面では、Pd(II)又はNi(II)に配位したフォスフィノベンゼンホスホネート配位子を含む金属複合物と、前記金属複合物に結合した粘土とを含む粘土担持複合体が提供される。フォスフィノベンゼンホスホネート配位子は、公知の方法によって調製され、また、金属複合物は、フォスフィノベンゼンスルホネート含有粘土複合体に含まれる金属複合物が調製される方法と同様な方法で調製することができる。フォスフィノベンゼンホスホネートに基づく粘土担持複合体の存在下において少なくとも1種のモノマーが重合される、単独重合又は共重合の方法も提供される。
【0014】
他の側面では、粘土担持複合体と、粘土担持複合体を用いた単独重合によって製造された生成物とを含む混合材料が提供される。
【0015】
また、粘土担持複合体と、粘土担持複合体を用いた共重合によって製造された生成物とを含む混合材料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】金属化合物のリスト。
【図2】単独重合における粘土(LiMMT)の作用を示す表。
【図3】重合における粘土の作用を示す表。
【図4】単独重合における触媒配位子の作用を示す表。
【図5】エチレン及びメチルアクリレートの共重合におけるPd複合物の活性を示す表。
【図6】エチレン及びエチルアクリレートの共重合におけるPd複合物の活性を示す表。
【図7】粘土に担持された触媒2a−dによって製造されたエチレン−メチルアクリレート共重合体のFTIRスペクトル(オフセット)であり(7A)、また、エステルの振動を示す拡大領域である(7B)。
【図8】粘土に担持された触媒2a−dによって製造されたエチレン−エチルアクリレート共重合体のFTIRスペクトル(オフセット)であり(8A)、また、エステルの振動を示す拡大領域である(8B)。
【図9】図9は、粘土に担持された触媒2c(9A)及び2d(9B)によって製造されたエチレン−メチルアクリレート共重合体のGPCにおける比較であり、両者とも100℃にて1時間で調製されている。
【図10】エチレン−メチルアクリレート共重合体の特性を示す表。
【図11】エチレン−エチルアクリレート共重合体の特性を示す表。
【図12】均一系2d(12A)、及び、粘土に担持された2d(12B)によって製造されたエチレン−メチルアクリレート共重合体の1H NMRスペクトルの比較。
【図13】均一系触媒2d(13A)、及び、粘土に担持された2d(13B)によって製造されたエチレン−メチルアクリレート共重合体の13C NMRスペクトルの比較。
【図14】均一系2c(14A)、及び、粘土に担持された2c(14B)によって製造されたエチレン−エチルアクリレート共重合体の1H NMRスペクトルの比較。
【図15】均一系触媒2c(15A)、及び、粘土に担持された2c(15B)によって製造されたエチレン−エチルアクリレート共重合体の13C NMRスペクトルの比較。
【図16】触媒3aを用いた共重合を示す表。
【図17】粘土に担持されたニッケル触媒3aによって製造されたエチレン−メチルアクリレート共重合体のIRスペクトル。
【図18】粘土に担持された3aを用いて製造されたエチレン−メチルアクリレート共重合体の13C(18A)及び1H NMR(18B)スペクトル。
【図19】図19は、粘土担持複合体2aの31P MAS NMRスペクトルであり、“*”は、スピニングサイドバンドを示す。
【図20】図20は、LiMMT担持複合体2cの31P MAS NMRスペクトルであり、スピン速度は10kHz、*はスピニングサイドバンドを示す。
【図21】図21は、LiMMT担持分子複合体2e(21A)及び複合物(21B)の31P MAS NMRスペクトルであり、スピン速度は10kHz、“*”はスピニングサイドバンドを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のより詳細な理解のため、添付の図面と関連させて、以下の説明において言及をする。
【0018】
1つの側面では、フォスフィノベンゼンスルホネート配位子に基づく、粘土担持Pd(II)及びNi(II)複合体が提供され、該複合体は、その均一系(非担持)様式のものと比較して重合における活性が高い。粘土担持Pd(II)複合体であっても、粘土担持Ni(II)複合体であっても、それらの様々な実施形態は、極性モノマーを許容し、例えばアクリレートを高分子化合物中に混入させることを可能にする。一実施形態では、粘土担持Pd(II)複合体を用いた単独重合の方法が提供される。別の実施形態では、粘土担持Pd(II)複合体又はNi(II)複合体を用いたアクリレートとの共重合の方法が提供される。好ましい実施形態では、複合物を担持する粘土がモンモリロナイト粘土である。別の好ましい実施形態では、高分子化合物の前駆体がエチレンである。さらに別の実施形態では、メチルアクリレートが共重合においてエチレンと共に用いられる。モンモリロナイト粘土の代わりに、2006年6月12日出願の米国特許出願番号第11/451,199号、「粘土−ポリオレフィン剥離ナノ複合材料の製造方法」を参照することにより援用される開示内容である層状材料が用いられ得る。高分子化合物の前駆体としてのエチレンの代わりに、ある実施形態では、プロピレン、1−ヘキセン、又はスチレンが用いられ得る。メチルアクリレート又はエチルエクリレートの代わりに、ある実施形態では、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、酢酸ビニル、シアン化ビニル、又はアクリロニトリルが用いられ得る。
【0019】
本発明に係る粘土担持複合体は、Pd(II)又はNi(II)に配位したフォスフィノベンゼンスルホネート配位子を含有する金属複合物を含んでいる。ある実施形態では、金属複合物は、次の式(I)又は(II)の金属化合物から得られるか、又は、該金属化合物を粘土と組み合わせることによって調製される。
【0020】
【化1】

【0021】
これらの式において、Mは、Pd又はNiであり、
TnのそれぞれのTは、他のTとそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、又は1〜30の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、ヒドロカルビル基は、1又はそれ以上のケイ素原子を含み得るものであり、それぞれのTは、環状であり得るものであり、n=0〜4である。
Xは、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、又は1〜30の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、ヒドロカルビル基は、1又はそれ以上のケイ素原子を含み得るものであり、Xは、環状であり得るものである。
それぞれのRは、他のRと独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、1〜30の炭素原子を有するヒドロカルビル基、又は、1若しくはそれ以上の官能基で置換され1〜30の炭素数を有するアリール基である。
Yは、1〜20の炭素原子を有し、且つ、Mに配位する酸素原子、窒素原子、リン原子、及び/又は硫黄原子の1種又はそれ以上を含む化合物である。
Zは、水素原子、1〜20の炭素原子を有するヒドロカルビル基、ハロゲン原子、又は、トリフルオロメタンスルホニル基である。
それぞれのR’は、他のR’と独立して、1〜20の炭素原子を有するヒドロカルビル基、1〜20の炭素原子を有するアルコキシ基、又は、1〜20の炭素原子を有するアリールオキシ基であり、1又はそれ以上の酸素原子を含み得る。
【0022】
ある実施形態では、それぞれのRは、他のRと独立して、1又はそれ以上の置換基Qを有し得る式(III)のフェニル基である。
【0023】
【化2】

【0024】
これら実施形態では、Qnの各Qは、他のQと独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、1〜24の炭素原子を有するヒドロカルビル基、1〜24の炭素原子を有するアルコキシ基、1〜24の炭素原子を有するアリールオキシ基、又は、1〜24の炭素原子を有する置換されたアリール基であり、前記ヒドロカルビル基、前記アルコキシ基、前記アリールオキシ基、又は前記置換されたアリール基は、1又はそれ以上のケイ素原子、又は、アルコキシ基、又はそれらが組み合わされたものを含み、n=0〜5である。ある実施形態では、1つの又は両方のR基が、酸素原子を有する1つ又は2つの置換基をオルト位置に有する。好ましい実施形態では、1つの又は両方のR基が、2−メトキシフェニル基であるか、又は、2−(2’,6’−ジメトキシフェニル)フェニル基である。
【0025】
ある実施形態においては、式(I)又は式(II)のフォスフィノベンゼンスルホネート配位子がPd(II)に配位し、一方、別の実施形態では、フォスフィノベンゼンスルホネート配位子がNi(II)に配位する。これら実施形態のいずれにおいても、両方のR基は、同じものであり得る。
【0026】
式(I)又は(II)の一実施形態では、Xが1から6の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、メチル基又はフェニル基であり得る。式(I)又は(II)の一実施形態では、Zがハロゲン原子である。式(I)又は(II)の一実施形態では、Yが置換されたピリジル基又はトリフェニルホスフィン(PPh3)基である。ピリジル基又は他のヒドロカルビル基に関する“置換された”との用語は、炭素原子に結合した少なくとも1つの水素原子が、置換基の非水素原子への結合に置き換わったピリジル基又はヒドロカルビル基のことを示す。非水素原子の例としては、限定されないが、炭素、酸素、窒素、リン、硫黄、セレン、ヒ素、塩素、臭素、ケイ素、及びフッ素が挙げられる。置換基の例としては、ハロ基、トリフルオロメチル基のようなパーハロ基、ヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、カルボキシル基、メルカプト基、シアノ基、ニトロ基、エステル基、エーテル基、チオエーテル基、トリアルキルシリル基、アミド基、及びヒドロカルビル基が挙げられる。
【0027】
粘土担持複合体の好ましい実施形態における金属複合物は、図1に示される複合物からなる群より選択され得る。
【0028】
様々な実施形態においては、粘土がPd(II)又はNi(II)金属複合物と結合している。“粘土”との用語は、粘土鉱物及びイオン交換された層状ケイ酸塩を含むものである。イオン交換性層状ケイ酸塩は、結晶構造を有するケイ酸塩化合物であり、大部分が共有結合によって形成されている表面が平行に積層されており、含有されている層間カチオンが交換可能である。天然のイオン交換性層状ケイ酸塩のほとんどは、粘土鉱物の主成分として主に産生され、イオン交換性層状成分以外の不純物(石英など)が多くの場合含まれている。
【0029】
粘土担持複合体のいずれの実施形態においても、粘土は、イオン交換性層状ケイ酸塩であり、天然物又は合成物であり、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ステベンサイト、バーミキュライト、マイカ、イライト、セリサイト、グロコナイト、アタパルジャイト、セピオライト、タエニオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、クロライト、及びカオリナイトから選ばれ得る。クロライトは、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト、ペナンタイトであり得る。好ましい実施形態では、ケイ酸塩が、モンモリロナイト、ヘクトライト、マイカ、タエニオライト、又はベントナイトである。より好ましくは、ケイ酸塩は、主成分としてのモンモリロナイトである。
【0030】
粘土は、いずれの実施形態においても前処理なしで用いられ得る。しかしながら、いずれかの実施形態においては、金属複合物と組み合わせる前に、酸、塩などの化学的処理剤の1種又はそれ以上によって化学的に処理された粘土が採用され得る。化学的処理は、用いられる化学的処理剤によって、イオン交換性層状ケイ酸塩の層間カチオン交換や粘土表面の安定化といった様々な作用をもたらす。
【0031】
例えば、酸処理は、結晶構造に混入しているAl、Fe、若しくはMgなどの元素の一部を溶出させることができ、粘土表面の不純物を取り除くことができる。前記酸としては、硫酸、塩酸、硝酸などの無機酸が挙げられる。特に好ましい実施形態では、酸は、硫酸であり得る。
【0032】
塩処理は、層間に存在するカチオンを交換することができる。前記塩は、アニオン部分に無機のブレンステッド酸又はハロゲンを含み、カチオン部分にLi、Mg、又はZnを含む化合物であり得る。特に好ましい実施形態では、前記塩は、LiCl、Li2SO4、MgCl2、MgSO4、ZnCl2、ZnSO4、又はZn(NO32であり得る。
【0033】
いずれの実施形態においても、化学的処理剤は、単独で、又は2種若しくはそれ以上が組み合わされて用いられ得る。さらに、化学的処理は、1回を超えて数回にわたって例えば同じ化学的処理剤を用いて行われ得る。又は、異なる化学的処理剤を連続的に用いて行われ得る。このように、酸処理された粘土、塩処理された粘土、又は、酸及び塩で処理された粘土は、いずれの実施形態においても用いられ得る。
【0034】
さらに、どの実施形態においても、粘土は、粉砕若しくは粒状化され、及び/又は、粘土の形状、粒子径、及び強度を調整するために分級され得る。また、粘土は、触媒製造の前に乾燥され得る。加えて、粘土表面を安定化すべく、アルキルアルミニウムなどのアルキル金属化合物が、触媒の沈着の前に粘土に付加され得る。
【0035】
触媒は、不活性(N2)雰囲気下で、乾燥箱中において調製することができる。フォスフィノベンゼンスルホネート配位子は、一般的に知られた方法によって調製することができる。例えば、配位子としての2−(ビス(アリール)フォスフィノ)ベンゼン−2−スルホン酸は、上記のごとく(参考文献1、2)調製することができる。PdやNi金属の複合物は、発行されている文献の手順に従って合成することができる。例えば、Pd(II)前駆体複合物(PdMeCl(cod)など)、又は、Ni(II)前駆体複合物(トランス−NiCl(Ph)(PPh32など))は、フォスフィノベンゼンスルホネート配位子と混合することにより、Pd(II)又はNi(II)金属複合物として得ることができる。
【0036】
粘土担持触媒は、グローブボックス内の窒素雰囲気下で、重合直前に製造することができる。室温で、又は、約−50℃〜150℃、約0℃〜100℃、約5℃〜60℃、若しくは約−77℃〜50℃の温度範囲で、金属化合物の溶液を粘土の懸濁液に加えることができる。撹拌後、混合物を静置し、そして次に上澄み液を取り除くことができる。固体状物は、溶媒によって1回又はそれ以上洗浄される。重合反応のために、固体状物は、溶媒中に再度懸濁され、反応器中に投入される。好ましい例では、5.0gのCH2Cl2の金属化合物溶液(8.0mg、0.010mmmol)が、室温において、5.0gの乾燥トルエンにあるリチウム交換モンモリロナイト(LiMMT)(120mg)に加えられる。5分間撹拌した後、混合物が静置され、上澄み液が取り除かれ、固体状物が乾燥トルエンによって5回洗浄される。固体状物は、重合のために、トルエン中に再度懸濁される。
【0037】
単独重合反応は、300mLオートクレーブ(Parr Instrument社、モリーン、イリノイ州、米国)などの反応器中において、該反応器の内径より小さい約4mmの直径のガラス製挿入部品を用いて行うことができる。触媒は、N2で満たされたグローブボックス中で重合用反応器に移動させることができる。トルエンのような溶媒の少量を、接触時の熱的な問題を改善するために挿入部品及び反応壁の間に置いておくことができる。典型的な手順においては、粘土担持金属複合体の懸濁液は、挿入部品に注がれ、そして、トルエン(例えば40.0g)が加えられる。反応器は、密閉され、グローブボックスから取り出され、そして、90℃に加熱され、100psiのエチレンが充填される。当然のごとく、異なる反応器温度及び圧力が、含まれる特定の反応成分に基づいて採用され得る。特定の反応成分によって、単独重合反応は、約50℃〜120℃及び約50psi〜500psi、約0℃〜150℃及び約1psi〜1000psi、約15℃〜130℃及び約10psi〜700psi、又は約35℃〜110℃及び約50psi〜500psiの温度範囲及び圧力範囲で起こり得る。一実施形態では、反応は、約90℃及び100psiで行われる。エチレンなどのモノマーは、所定の又は既定の時間、連続的に供給され、そして、反応器は、密閉状態が解除され、室温に冷却される。反応器から回収された固体状物は、濾過され、また、メタノールなどの溶媒によって洗浄され、そして、計量前に真空中で乾燥される。高分子化合物量は、粘土量を取り去った後に計測する。均一系(非担持)触媒による重合のために、粘土を除き、また、トルエン中の金属複合物の懸濁液を反応器に直接入れることにより、同様な手順を行うことができる。
【0038】
ここで、本明細書における“均一系”との用語は、粘土に担持されていない触媒を示す。触媒を含む、粘土担持複合体の存在下で行った重合工程と、均一系の様式で同じ触媒の存在下で行った重合工程とを比較することにより、重合工程における粘土への担持作用を明らかにすることができる。本明細書において、触媒は、粘土に担持されていても均一系であっても、重合において活性を有する金属複合物又は金属化合物を示す。例えば、図1に示される金属化合物、及び、該金属化合物と粘土とを組み合わせて調製した金属複合物は、触媒であるとみなされる。
【0039】
共重合は、300mL又は1.0LのParr社製オートクレーブなどの反応器内で、同様な様式により行うことができる。1.0L反応器での典型的な手順においては、トルエン(480mL)及びコモノマー(例えば、12mLのメチルアクリレート)が窒素下で反応器に最初に加えられる。トルエン(例えば6mL)中に懸濁された、触媒単独(例えば、0.10g、0.15mmol)又は粘土に担持された触媒(例えば、粘土1.0gに対して0.10g)が、エチレンの圧力を利用して破裂弁を通してオートクレーブ中へ注入される。同様な手順が300mL反応器において採用され得るが、より小さい容器サイズに応じて、例えば、トルエン(100mL)、コモノマー(メチルアクリレート3.7mL)、触媒(0.030g、0.050mol)、又は粘土に担持された触媒(粘土300mgに対して0.030g)というように成分量が調整される。どちらの反応器でも、95℃及び200psiのエチレン条件下で触媒を反応器に注入することができる。そして、発熱反応により温度が100℃に上げられる間にエチレン圧力が430psiに上がり、また、エチレンが所定の又は既定の時間連続的に供給される。当然ながら、含まれる特定の反応成分に基づいて異なる反応温度及び異なる圧力を採用することができる。特定の反応成分によって、共重合反応は、約50℃〜150℃及び約200psi〜800psi、約0℃〜150℃及び約1psi〜1000psi、約15℃〜130℃及び約10psi〜700psi、又は約35℃〜110℃及び約50psi〜500psiの温度範囲及び圧力範囲で起こり得る。一実施形態では、反応は、約100℃及び428psiで行われる。合成された高分子化合物は、反応器から取り出し、酸性メタノールなどの溶媒とともに撹拌(1時間)することができる。固形物は、濾過され、微量に生成し得る極性単独重合物を除去するために溶媒によって洗浄され得る(例えば、5回)。
【0040】
様々な実施形態において、単独重合工程では、式R1CH=CH2のオレフィンを用いることができ、ここでR1は、水素、又は、1〜30の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状若しくは環状アルキル基のいずれかである。ある実施形態においては、R1が1〜20の炭素原子を有するアルキル基である。好ましい実施形態においては、モノマーがエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのアルファ−オレフィン、又は10〜16の炭素数を有するアルファ−オレフィンであり得る。モノマーとしては、スチレン、官能基を有するスチレン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン、又は官能基を有するノルボルネンも挙げられる。
【0041】
共重合工程においては、2種又はそれ以上の異なるモノマーのそれぞれが式R2CH=CH2のオレフィンであり得る。ここでR2は、水素、又は、1〜30の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状若しくは環状アルキル基のいずれかである。ある実施形態においては、R2が1〜20の炭素原子を有するアルキル基である。好ましい実施形態においては、各モノマーがエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのアルファ−オレフィン、又は10〜16の炭素数を有するアルファ−オレフィンであり得る。各モノマーとしては、スチレン、官能基を有するスチレン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン、又は官能基を有するノルボルネンも挙げられる。ある実施形態においては、モノマーの少なくとも1種は、式H2C=CR3Xの極性モノマーであり、ここでR3が、水素、又は1〜30の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基であり、Xが極性基である。好ましい実施形態においては、R3が、1〜20の炭素数を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基である。Xの例としては、Cl、Br、Fなどのハロゲン;−CN;−C65N;−CONR45;−OR4;−COOR4;−OCOR4;−COR4;−C65OR4、及び/又は、−C65NR45が挙げられ、ここで、R4及びR5は、それぞれ独立して、ハロゲン、又は、C1−30のアルキル基、アラルキル基若しくはアリール基である。好ましい実施形態においては、少なくとも1種のモノマーが、アルキルアクリレート(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート)、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、ハロゲン化ビニル(例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル)、アルキルビニルエーテル、官能基を有するノルボルネン(例えば、ノルボルネニルアルコール、ノルボルネニルアセテート)、N−ビニル−ピロリドン、N−アルキルアクリルアミド、ビニルケトン、酢酸ビニル、シアン化ビニル、又は官能基を有するスチレンなどの極性オレフィンであり得る。
【0042】
“官能基を有する”モノマーは、ハロ、エステル、ケト(オキソ)、アミノ、イミノ、ヒドロキシ、カルボン酸、ホスファイト、ホスホナイト、ホスフィン、チオエーテル、アミド、ニトリル、又はエーテルなどの官能基を有する。
【0043】
単独重合工程は、非極性又は低極性のオレフィンモノマーを用いて行うことができる。低極性オレフィンモノマーの例としては、式R1CH=CH2の低極性オレフィンが挙げられ、ここで、R1は、1〜30の炭素原子を有する、一実施形態では1〜20の炭素原子を有する、直鎖状、分岐鎖状、又は環状のアルキル基である。非極性オレフィンモノマーの例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、又は、10〜16の炭素原子を有するアルファ−オレフィン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネンが挙げられる。
【0044】
共重合工程は、本明細書中に記載されたオレフィン、アルファ−オレフィン、及び極性オレフィンのいずれも含む、非極性オレフィン、低極性オレフィン、及び/又は極性オレフィンを組み合わせて用いることにより行うことができる。例えば、ある実施形態では、共重合反応が、2種の非極性オレフィン、2種の低極性オレフィン、1種の非極性オレフィン及び1種の低極性オレフィン、1種の非極性オレフィン及び1種の極性オレフィン、1種の低極性オレフィン及び1種の極性オレフィン、又は、非極性、低極性、極性オレフィンのモノマーの3種又はそれ以上を組み合わせたものを含む。このように、共重合反応は、本明細書に記載された2種、3種、又は3種を超えるいずれのモノマーを含む。極性オレフィンモノマーの例としては、式H2C=CR3Xのオレフィンが挙げられ、ここで、R3は、水素、又は、1〜30の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、又はアルコキシ基であり、Xは、極性基である。好ましい実施形態においては、R3が、1〜20の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、アルコキシ基である。Xの例としては、Cl、Br、Fなどのハロゲン;−CN;−C65N;−CONR45;−OR4;−COOR4;−OCOR4;−COR4;−C65OR4、及び/又は、−C65NR45が挙げられ、ここで、R4及びR5は、それぞれ独立して、ハロゲン、又は、C1−30のアルキル基、アラルキル基若しくはアリール基である。好ましい実施形態においては、少なくとも1種のモノマーが、アルキルアクリレート(例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート)、メチルメタクリレート、アクリロニトリル、ハロゲン化ビニル(例えば、塩化ビニル、フッ化ビニル)、アルキルビニルエーテル、官能基を有するノルボルネン(例えば、ノルボルネニルアルコール、ノルボルネニルアセテート)、N−ビニル−ピロリドン、N−アルキルアクリルアミド、ビニルケトン、酢酸ビニル、シアン化ビニル、又は官能基を有するスチレン(例えば、パラ−メトキシスチレン)などの極性オレフィンであり得る。
【0045】
好ましい実施形態においては、共重合工程における異なるモノマーの少なくとも1種が式R2CH=CH2のオレフィンであり、ここでR2は、水素、又は、1〜30の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状アルキル基のいずれかである。好ましい実施形態では、オレフィンは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどのアルファ−オレフィン、又は、10〜16の炭素原子を有するアルファ−オレフィンであり得る。オレフィンは、スチレン、官能基を有するスチレン、ビニルシクロヘキサン、ノルボルネン、又は官能基を有するノルボルネンであり得る。
【0046】
様々な実施形態において、粘土に担持されたPd(II)又はNi(II)複合体は、対応する均一系の触媒と比較して、良好な粒子形態及び高いかさ密度を得ることができる。一実施形態では、粘土に担持されたPd(II)又はNi(II)複合体は、対応する均一系の触媒と比較して、重合においてより活性を有することができ、対応する均一系の触媒により製造された高分子化合物より大きい分子量の高分子化合物を製造することができ、及び/又は、対応する均一系の触媒により製造された高分子化合物より高い結晶性を有する高分子化合物を製造することができる。ある実施形態において、粘土に担持されたPd(II)又はNi(II)複合体は、重合において活性を有し、一方、対応する均一系の触媒は、重合において活性を有さない。
【0047】
本発明は、添付の具体例を参照することによってより詳しく理解されるが、具体例は、詳細な説明の目的のみを意図するものであり、いかなる意味においても、本明細書に添付された特許請求の範囲により定められた発明の範囲を限定するものとして解釈されてはならない。
【実施例】
【0048】
(試験例1) 全般的手順
触媒は、不活性(N2)雰囲気下で乾燥箱中において製造した。配位子前駆体の2−(ビス(アリール)フォスフィノ)ベンゼン−2−スルホン酸と、それのPd及びNi複合物は、発行された文献の手順に従って合成した。トリイソブチルアルミニウム(ヘキサン中1.0M、アルドリッチ社)は、そのまま用いた。
【0049】
日本の水澤化学工業社の天然モンモリロナイトを脱イオン水によって洗浄し、篩によって平均粒子径0.28mmとした。酸処理されリチウム交換されたモンモリロナイト(LiMMT)は、天然モンモリロナイトを6M H2SO4/1M Li2SO4溶液中で100℃にて6時間撹拌し、続いて、脱イオン水で洗浄、及び200℃にて2時間乾燥させることによって調製した。有機金属複合物との反応の前に、LiMMTを真空下(10-2Torr)において室温にて終夜、ある程度乾燥させ、N2中にて保管した。トリイソブチルアルミニウム(TIBA)によって改質された粘土は、トルエン10.0g中の0.30又は0.12gのLiMMTに、0.29又は0.96gのTIBA(ヘキサン中1.0M)を加えることにより、使用する前にそれぞれ新たに用意した。懸濁液を5分間撹拌し、上澄み溶液を取り除き、そして、固体状物を5.0gの乾燥トルエンにて2回洗浄した。
【0050】
粘土に担持された触媒は、重合直前にグローブボックス内にてN2中で調製した。典型的な実験手法においては、室温にて、5.0gCH2Cl2中の有機金属複合物(8.0mg、0.010mmol)の溶液を、5.0gの乾燥トルエン中のLiMMT(120mg)の懸濁液に加えた。溶解性の有機金属複合物の黄色は、ほぼ完全に溶液から粘土へと移った。5分間の撹拌の後、混合物を静置し、上澄み液を取り除いた。固体状物は、乾燥トルエンによって5回洗浄した。重合実験においては、固体状物を再度トルエン中に懸濁させ、グローブボックス内にある反応器に投入した。
【0051】
(試験例2) 単独重合
エチレン単独重合、並びに、メチル及びエチルアクリレートとエチレンとの共重合は、フォスフィノベンゼンスルホネート配位子に基づくPd(II)複合物及びNi(II)複合物を用いることにより試験された。酸処理されLi交換されたモンモリロナイト粘土(LiMMT)にこれらの複合物を担持させることによる効果は、均一系触媒及び不均一系触媒の重合活性を比較し、また、製造された高分子化合物を比較することにより評価した。
【0052】
これらの試験において、触媒は以下の通りである。
【0053】
【化3】

【0054】
【化4】

【0055】
【化5】

【0056】
【化6】

【0057】
【化7】

【0058】
【化8】

【0059】
【化9】

【0060】
(粘土の活性化の効果)
均一系触媒2a−dは、90℃でのエチレン単独重合において活性を有する一方で、粘土に担持された対応する2a−b触媒は、より顕著な活性を有する。1.5時間後、粘土に担持された触媒の全体的な活性は、均一系触媒の約2倍である(図2、表1、No.2及び6)。重合時間が10分間に減少すると、活性は、5〜6倍高い(図2、表1、No.4及び8)。このことは、粘土に担持された2dにおいても認められ、この場合には、活性が均一系触媒より4倍高い(図2、表1、No.15及び16)。粘土の活性化効果は、このように短時間の反応で非常に明確に示されており、初期の触媒活性をより大きく促進している。一方、より長い時間における結果は、粘土が触媒の速い不活性化を促進することをも示唆している。粘土に担持された2a及び2dにより製造されたポリエチレンでは、分子量がより高いが、高分子化合物の結晶性がより低い。
【0061】
(粘土の前処理の効果)
重合活性は、粘土の前処理を変えることにより高まり得る。粘土表面におけるヒドロキシ基の少なくともいくつかは、ブレンステッド酸性が強く、触媒の分解を促進し得る。粘土表面を安定化するために、触媒を沈着させる前にLiMMTにアルキルアルミニウム(TIBA)が加えられる。処理された粘土に担持された2aの活性は、担持されていない2aより3倍高い(図3、表2、No.17)。分子量も大きくなった。触媒活性化担持物として非処理モンモリロナイト(MMT)を採用したエチレンの重合は、TIBA処理されたLiMMTを採用したときよりかなり高い活性を示した。活性は、粘土量を増やすことによりさらに高まった(図3、表2)。融点は、非処理粘土を用いるとより高かったが、分子量は、酸処理されたLiMMTで得られたものと同様であった。
【0062】
(ルチジンの効果)
LiMMT、MMT、又はLiMMT/TIBAに担持されたアニオン性塩化Pd複合物2a及び2bは、均一系様式のものより高い活性を示す。これは、おそらく、粘土が塩素配位子の引き抜きを促すことによる。塩素がルチジンのようなより不安定な配位子に置き換わると、引き抜きがより容易に起こり、結果として触媒活性がより高くなるであろう。このように、均一系触媒2cは、均一系2aより10〜16倍高い活性を示す。その促進は、短い反応時間(0.16時間)においてより大きいものであり、均一系ルチジン複合物が反応条件下でより安定性の低いものであることを示している。LiMMT/TIBAに担持された2cは、結果として1.5時間後において全体的により低い活性を示すが、より短い反応時間においてより高い活性を示す(図4、表3、No.21)。これらの条件下で、粘土により活性化された2cは、担持されていない2cより60%活性化されている。
【0063】
(試験例3) エチレンとメチルアクリレート及びエチルアクリレートとの共重合
エチレンとメチルアクリレート及びエチルアクリレートとの共重合は、均一系触媒2a−d、また、それに対応する粘土に担持された様式のものを用いて試験を行った。これらの共重合は、1Lのオートクレーブ(MCRCにて)又は300mLのParr製卓上型反応器(UCSB)のいずれかにおいて行った。
【0064】
(メチルアクリレートとの共重合活性)
粘土に担持された触媒2a−dの全ては、100℃にて1時間後に高分子化合物を得ることができた一方で、均一系複合物2a及び2cは、文献(非特許文献15)において不活性であると報告されている。均一系触媒2b及び粘土に担持された2bの活性は、同様のものである(図5、表4、No.22及び23)一方で、粘土に担持された2dは、その均一系様式のものより活性が低い(No.24及び25)。
【0065】
粘土に担持された2cは、粘土に担持された2a、2b、又は2dのいずれのものより活性が高い。その活性は、フェニル環にo−メトキシ置換基を有する、均一系で最も活性のある触媒2dに匹敵する。明らかに、フェニル環にo−メトキシ置換基を有するときにより活性がある塩素含有複合物に対して、ルチジンは、置換基のないフェニル環があるときに活性部位の形成を促す。粘土処理の効果は、2bにおいても試験された。非処理のMMTが採用されたとき、その活性は、酸処理LiMMTを用いたときよりわずかに低いだけであった(図5、表4、No.30)。
【0066】
(エチルアクリレートとの共重合の活性)
触媒2a−d及び粘土に担持された触媒2a−dの全ては、100℃にて1時間後に高分子化合物を得ることができた。均一系触媒2a−dの活性は、粘土に担持された系の活性より高い。中性の複合物2c及び2dは、アニオン性複合物より活性があり、2cが最も活性があり、2dがそれに続く(図6、表5、No.31−38)。これらの複合物は、メチルアクリレートよりエチルアクリレートに対してより活性がある。
【0067】
粘土に担持された2cは、粘土に担持された2a、2b、及び2dのどれよりも活性が高い。この系は、最も高い活性(168gmmol-1-1)を与え、メチルアクリレートを用いて得られたもの(157gmmol-1-1)より活性が高い。2a/LiMMTは、両方の極性モノマーに同様な活性を与える。粘土に担持された2b及び2dの系は、エチルアクリレートに対して活性を有するものでもあったが、それらの活性は、メチルアクリレートを用いて得られたものと比較して低いものであった。
【0068】
(高分子化合物の特性)
エチレンーメチルアクリレート共重合体及びエチレンーエチルアクリレート共重合体の両方を、IR、DSC、GPC、1H及び13C NMR分光法によって分析した。触媒2a−d及びその粘土担持様式のものを用いて得られた共重合の全てのIRスペクトルは、1745cm-1にメチルアクレート基本単位、及び、1745cm-1にエチルアクレート基本単位に特徴的なν(C=O)ピークを示し、また、エチレン基本単位の振動に対応する1480及び690cm-1におけるピークを示す(図7A、7B、8A、及び8B)。
【0069】
粘土に担持された2a及び2cを用いて得られたエチレン−メチルアクリレート共重合体は、それぞれ11900及び10100の重量平均分子量(Mw)を有する。より大きい分子量が観察されたのは、オルト−メトキシ置換基を有し粘土に担持された触媒2b(15700)及び2d(15500)を用いて作られたもの、また、非処理粘土に担持された2b(15900)を用いたものであった。しかしながら、粘土に担持された2b及び2d触媒は、粘土に担持された、置換基のないフェニル基を有する触媒2a及び2cにおいて観察されないオリゴマーも作り出す(図9A、9B、及び10)。
【0070】
粘土に担持された2a、2c、及び2dを用いて得られたエチレン−エチルアクリレート共重合体は、同様な10000の重量平均分子量(Mw)を有するが、粘土に担持された2bでは非常に小さい分子量が観察された。高分子化合物の結晶性は、粘土に担持された2a−dにおいて低下し、粘土に担持された2bにおいて最も低い結晶性であり、続いて、粘土に担持された2aにおいて低かった(図11)。
【0071】
メチルアクリレート及びエチルアクリレートのポリエチレンへの混入が、1H及び13C NMR分光法によってさらに研究された。1H及び13C NMRスペクトルは、500MHz(1H周波数)、13C(126MHz)にて操作して、Varian社又はBruker社の分光器において記録された。NMR測定は、溶媒として1,2,4−トリクロロベンゼン/C66(2:1)を用いて90℃において行った。全てのサンプルの濃度は、約200mg共重合体/mLであった。
【0072】
均一系触媒2b及び2dを用いて得られたエチレン−メチルアクリレート共重合体において、コモノマーの官能基に対応するシグナルは、ポリエチレンに対応するシグナルとともに存在した。均一系2dを用いて得られた共重合体の1H NMRスペクトルを図12A及び12Bに示す。δ3.20ppmにおけるポリエチレンの共鳴に加え、δ3.61及び2.28ppmにおける共鳴が、それぞれメチルアクリレート(MA)単位のメトキシ及びメチレンのプロトンに起因し得る。13C NMRスペクトルにおけるδ176.8、51.0、及び45.7ppmの共鳴(図13A及び13B)は、MA単位の存在を確かなものにする。共重合体の=O基から生じるシグナルの分裂はなく、Drentら(非特許文献9)によって報告されているように、統計学的にMA単位が共重合体の主鎖に混入していることが示唆される。δ3.61ppmにおけるメトキシ基及び1.22ppmにおけるメチレン基のシグナルを積分することにより、1H NMRスペクトルに基づいてメチルアクリレートの混入量(6mol%)を計算した。粘土に担持された触媒を用いて作られた共重合体においても同様なスペクトルが記録された。粘土の存在は、混入比に影響しない。
【0073】
同様な方法によって、エチレン−エチルアクリレート共重合体を分析した。13C NMRスペクトルにおけるδ171.5、55.2、及び45.3ppmの共鳴は、EA単位の存在を確かなものにする。δ3.68ppmにおけるカルボニル基に隣接するメチレン基のシグナル、及び、1.48ppmにおけるメチレン基のシグナルを積分することにより、1H NMRスペクトルに基づいてメチルアクリレートの混入量(〜4−6mol%)を計算した(図14A、14B、15A、及び15B)。最も高い混入量(〜6mol%)は、2b−d及び粘土に担持された2cにおいて観察され、2a、及び粘土に担持された2a−b、及び2d系がそれに続いて、〜4mol%であった。
【0074】
(試験例4) ニッケル複合物の共重合活性
共重合は、100℃において1時間、エチレン圧力(430psi)により行った。これらの条件下で、均一系複合物3cは不活性であり、一方、粘土に担持された対応する触媒は活性を有していた。粘土に担持された3aの活性は、粘土に担持されたPd触媒の活性に比べて低い(24gmmol-1-1)。しかしながら、今回は、この型のNi複合物の活性についての最初の報告である。より長い反応時間においては、活性も上がり、高分子生成量も上がる。高分子の結晶性は、わずかに影響を受け、Pd系を用いて作られたものと同様な分子量が観察される(図16、表8、No.41)。
【0075】
共重合体のIR特性は、メチルアクリレートの存在を確かなものにする。IRは、1745cm-1においてメチルアクリレートの特徴的なν(C=O)ピークを示し、また、1480及び690cm-1においてエチレン基本単位の振動に対応するピークを示す(図17)。
【0076】
ポリエチレンへのメチルアクリレートの混入は、1H及び13C NMR分光法によって決定した。3a/LiMMT/TIBAを用いて得られた共重合体において、コモノマーの官能基に対応するシグナル、加えて、ポリエチレンに対応するシグナルが存在した。3a/LiMMT/TIBAを用いて得られた共重合体の1H NMRスペクトルを図18に示す。δ1.50ppmにおけるポリエチレンの共鳴に加えて、δ3.68及び2.60ppmにおける共鳴が、それぞれメチルアクリレート(MA)単位のメトキシ及びメチレンのプロトンに起因し得る。13C NMRスペクトルにおけるδ175.8、49.7、及び44.7ppmの共鳴は、MA単位の存在を確かなものにする(図18)。共重合体の=O基から生じるシグナルの分裂はなく、Pd触媒を用いて得られた共重合体について上述したように、統計学的にMA単位が共重合体の主鎖に混入していることが示唆される。δ3.68ppmにおけるメトキシ基及び1.50ppmにおけるメチレン基のシグナルを積分することにより、1H NMRスペクトルに基づいてメチルアクリレートの混入量(4mol%)を計算した。
【0077】
(試験例5) 粘土−触媒反応のNMR特性
粘土に担持された2a−d系は、エチレンの単独重合においても、メチル及びエチルアクリレートとの共重合においても活性がある。これらの結果から、粘土は触媒の作用に影響を与えるということが示され、それゆえ、これら複合物がどのように粘土と反応するのかということ、即ち、固定化の様式、及び、そのままの又は再構成された複合物の活性原理を理解することが興味深いことである。
【0078】
31P MAS NMR分光法によって予備試験が行われた。粘土担持複合体2a−dは、グローブボックス内にて(N2中で)、室温において、トルエン中の2a−d(16mg、0.020mmol)溶液を、5gの乾燥トルエン中の粘土(240mg)の懸濁液に加えることにより調製した。溶解性のパラジウム複合物の初期の黄色は、溶液から粘土へと完全に移った。5分間撹拌した後、混合物を静置し、上澄み液を取り除いた。固体状物は、乾燥トルエンによって5回洗浄され、真空下で乾燥された。窒素で充填されたグローブボックス内においてサンプルを4mmのジルコニア回転子に入れた。31P MAS NMRスペクトルは、製品名Bruker Avance NMR分光器(1H 周波数300MHz;31P 周波数121.440MHz)により、回転速度10kHzにおいて室温で得た。化学シフトは、H3PO4を参照した。
【0079】
粘土担持複合物のスペクトルは、δ=27.7ppmにおける等方性の1ピークで構成されるものである(図19)。ちなみに、溶媒(CDCl3)中の純粋な複合物の31P NMRスペクトルは、δ=27.6ppmにおける1つの一重項ピークのみを示す。これらの化学シフトは、非常に似ているため、複合物2aの構造は、粘土の活性においておそらくそのまま維持されている。31P MAS NMRスペクトルにおいては、より多い粘土量(500mg)又はより高い温度で何の変化も観察されなかった。このことから、高温であっても、吸着された触媒の構造がエチレンの非存在下で維持されることが示唆される。
【0080】
同様な試験が粘土に担持された2cを用いて行われた。溶媒(CDCl3)中の純粋複合物の31P NMRスペクトルは、δ=24.60ppmにおいて1つの一重項のみを示す。LiMMT(120mg)における2cのスペクトルは、δ=31.8ppmにおける1つの一重項ピークで構成されている(図20)。化学シフトのダウンフィールド変化は、複合物の残部に作用することなく、粘土がルチジン配位子を抽出することを示唆している。
【0081】
フォスフィノホスホネートPd複合物2eに基づく触媒系は、ホスホネート基と粘土表面との間の直接的な結合があり得ることから、粘土−触媒反応の特性化においてより有用だと判明するかもしれない。配位子の合成は、Riegerら(参考文献3)によって報告された合成手順に沿って行い、また、Pd複合物は、Nozakiら(非特許文献15)によって報告された手順と同様にして調製した。粘土に担持された2e系は、粘土に担持された2a−dにおいて記載された手順に沿って調製した。
【0082】
2eの31P MAS NMRスペクトルは、2つの鋭いピークを有している(図21A)。27.6ppmにおけるシグナルは、Pdに直接配位するPPh2に対応する。7.4ppmにおけるシグナルは、酸素を介してPdに配位するホスホネートに対応する。2eが酸処理された粘土に担持されていても、31P MAS NMRスペクトルにおいて2つのシグナルが観察される(図21B)。両方とも、均一系複合体のスペクトルに対してダウンフィールドのシフトをしている。PPh2のシグナルが29.0ppmに現れる一方で、ホスホネートのシグナルが10.1ppmに現れる。複合物の構造は、保たれているようであるが、粘土表面へのホスホネート配位子の結合は、両性イオン表面複合物の構成と一致して、両方のリン原子の反遮へいを引き起こす。
【0083】
これらのNMR試験により、Pd複合物の構造が、吸着においてそのまま保たれていることが示唆される。粘土によって塩素配位子又はルチジン配位子が抽出されることが、複合物の残部に作用することなく起こり得る。
【0084】
(試験例6) 重合方法
(エチレン重合手順)
典型的な手順においては、粘土担持パラジウム複合体2a−dは、室温において、10g乾燥トルエン中の粘土(LiMMT、酸処理モンモリロナイト、120mg、注記がなければMCRCから供給)の懸濁液に、トルエン(5mL)中の2a−d溶液(8mg、0.01mmol)を加えることにより、グローブボックス内(N2下)で調製した。溶解性のパラジウム複合物の初期の黄色は、溶液から粘土へと完全に移った。この懸濁液は、ろ過し、300mLのParr製卓上型反応器中へ直接投入する前に、乾燥トルエンによって3回洗浄した。40gのトルエンを加えた後、反応器を密閉し、グローブボックスから取り出した。そして、90℃において所定の時間をかけ、連続的に供給される100psiのエチレンで反応器を充填させた。粘土を除き、また、触媒2a−cの溶液を反応器に直接入れることにより、均一系の重合試験において同様な手順を採用した。
【0085】
(1L反応器を用いた共重合手順)
均一系触媒2b及び2dを用いる共重合を1Lの反応器において行った。トルエン(480mL)の添加に続いて、極性モノマー(メチルアクリレート、12mL)の添加をN2下において行った。トルエン(6mL)中に懸濁した触媒、2b又は2d(0.10g、0.15mmmol)を、破裂弁を介してエチレンの圧力を利用してオートクレーブ中に投入した。粘土担持パラジウム複合体2a−dにおける手順と同様な手順を続けた。粘土に担持された触媒は、0.10gの触媒を4mLのCH2Cl2に溶解させることにより調製した。この触媒溶液を、5mLトルエン中の1.0gLiMMTの懸濁液に加えた。得られた混合物を、乾燥トルエンによって3回洗浄する前に室温にて1時間撹拌した。共重合は、100℃にて1時間行った。高分子化合物の生成物は、ろ過し、酸性メタノール及びアセトンにより洗浄し、乾燥した。
【0086】
(300mL反応器を用いた共重合手順)
粘土担持パラジウム複合体2a−dのそれぞれは、室温において、10g乾燥トルエン中の粘土(300mg)の懸濁液に、トルエン(5mL)中の2a−d溶液(30mg、0.05mmol)を加えることにより、グローブボックス内(N2下)で調製した。溶解性のパラジウム複合物の黄色は、溶液から粘土へと完全に移った。この懸濁液は、1時間撹拌し、そして溶媒を取り除き、固体状物は、乾燥トルエンによって3回洗浄した。粘土に担持された触媒は、トルエン(4mL)中に懸濁され、触媒添加のために取り付けられた圧力バルブへ移された。一方側をアルミニウム箔で塞いだ。そして、触媒添加装置を、圧力バルブを介して反応器に接続した。コモノマー、メチルアクリレート(3.7mL)は、300mLParr製卓上型反応器のガラス製挿入部品に注入した。100gトルエンを添加した後、反応器を密閉し、グローブボックスから取り出した。触媒は、95℃、200psiエチレンにより反応器中に注入した。そして、反応器は、100℃において所定の時間をかけて連続的に供給される430psiのエチレンで充填させた。そのようにして得られた高分子化合物は、酸性メタノールを用いて1時間撹拌した。固体状物は、ろ過し、酸性メタノールによって5回洗浄し、生成し得るメチルアクリレートの単独重合体を取り除いた。
【0087】
(結果)
a.Pd触媒によるエチレン単独重合
均一系Pd複合物2a−dは、エチレン重合において活性があり、2dにおいて933gmmol-1-1の最も高い活性を記録した。酸処理モンモリロナイトに担持されると、それぞれの複合物の単独重合活性は、顕著に高くなり、例えば、2c/LiMMT−TIBAにおいて812gmmol-1-1である。
【0088】
単独重合の活性は、粘土の量に伴って高まる。TIBAにより処理されたLiMMTに担持された2aの活性は、均一系2aの3倍高いものである(93対31 gmmol-1-1)。ポリエチレンの結晶性及び分子量は、担持された触媒によって製造された材料においてより高い。
【0089】
非処理モンモリロナイトは、酸処理モンモリロナイトよりも、より効果的な触媒担持用活性体である。
【0090】
塩素配位子がルチジンに置き換わった触媒は、エチレン単独重合においてより活性がある。このように均一系の活性は、アニオン性の2aから中性の2cまで16倍に高まる(それぞれ35対562 gmmol-1-1)。中性複合物2cがLiMMT/TIBAに担持されると、まさにより高い活性が認められる(812 gmmol-1-1)。
【0091】
b.エチレンとメチルアクリレートとの共重合におけるPd複合物
モンモリロナイト粘土が触媒を活性化する担持物として用いられると、Pd複合物2a−dは、エチレンとメチルアクリレートとの共重合において活性がある。均一系複合物2aは、非常に低い活性であると報告されており、均一系2cにおいて活性があることは、報告されていない。粘土に担持された2dは、均一系様式より低い活性を示し(57対243 gmmol-1-1)、一方、2bの活性は、モンモリロナイト粘土が採用されたときと本質的に変化がないままである(108対97 gmmol-1-1)。これらの粘土に担持された2a−d系は、エチルアクリレートのような他の極性モノマーを混入することもできる。粘土に担持された2cは、メチルアクリレートで147gmmol-1-1、エチルアクリレートで168gmmol-1-1の活性を有し、最も活性のある触媒組成であることがわかった。極性モノマーが混入されたことは、IR、1H、及び13C NMR分光法によって確認され、典型的な混入比は、6mol%に達する。
【0092】
c.エチレンとメチルアクリレートとの共重合におけるNi複合物
モンモリロナイト粘土担持Ni複合体3aは、エチレンとメチルアクリレートとの共重合において活性があり(4.80gmmol-1-1)、一方、均一系複合物3aは、活性がない。極性モノマーの混入は、IR、1H、及び13C NMR分光法によって示され、混入比は、4mol%に達する。
【0093】
d.粘土−触媒の反応
31P MAS NMR分光法は、金属複合物が粘土と反応する経路に関わる情報を提供する。これらの試験により、Pd複合物の構造が吸着においてそのままの状態で維持されていることが示唆される。粘土による塩素又はルチジンの抽出は、複合物の残部に作用することなく起こり得る。
【0094】
(試験例7)
(エチレン単独重合)
2で満たされたグローブボックスにおいて、空気に影響を受けやすい触媒2f、LPd(Me)(NC55)、ここで、L=2−[ビス(2’,6’−ジメトキシ−ビフェニル−2−イル)フォスファニル]ベンゼンスルホン酸(5.0gトルエン中の8.0mg)を、5gトルエン中に懸濁した120mgのLiMMT懸濁液と、室温において5分間混合した。混合物は、静置し、上澄み液を取り除いた。固体状物は、5mLのトルエンによって3回洗浄した。固体状物は、80mLトルエンに再度懸濁させ、300mLのバッチ式重合反応器中に入れた。反応器は、80℃に加熱し、そして、100psiのC24により加圧した。重合は、10分間進行させた。該反応により1.1gのポリエチレンが産生され、活性が690gPE(mmol Pd)-1-1であった。
【0095】
(エチレン−メチルアクリレート共重合)
トルエン(100mL)及びメチルアクリレート(3.8mL)を300mLParr製反応器にN2下で加えた。粘土に担持された触媒2f(0.050mmol対300mgLiMMT)は、トルエン(10mL)に懸濁し、破裂弁を介してエチレン圧力を利用してオートクレーブ中に注入した。触媒は、95℃において200psiのエチレンで反応器中に投入した。そして、発熱反応により温度が100℃に上げられる間にエチレン圧力が430psiに上がり、エチレンが連続的に10分間供給された。エチレンは、密閉が解除され、反応器は、室温に冷却した。高分子化合物は、反応器から回収し、HClにより酸性化されたメタノールによって1時間撹拌した。固体状物は、ろ過し、生成し得る極性モノマーの単独重合物の不純物を取り除くために酸性メタノールによって5回洗浄した。24時間の洗浄後、反応により24.9gの高分子化合物が生成し、活性が2986gPE(mmol Pd)-1-1であった。共重合体のIRスペクトルは、1745cm-1においてメチルアクリレート基本単位の特徴的なν(C=O)ピークを示し、エチレン基本単位の振動に対応する約2900、1480、及び690cm-1におけるピークも示す。
【0096】
本発明は、好ましい実施形態に関して説明されたが、本発明の原理や範囲から外れることなく、当業者が容易に理解できるように、改良や変形が適用され得る。従って、そのような改良が、続く特許請求の範囲の範囲内において行われ得る。
【0097】
下記の参考文献が参照により本明細書に含まれる。
1.T. Schultz, A. Pfaltz, Synthesis 2005, 1005-1011.
2.E. Drent, R. van Dijk, R. van Ginkel, B. van Oort, R. I. Pugh, Chem. Commun. 2002, 964-965.
3.C. M. Reisinger, R. A. J. Nowack, D. Volkmer, B. Rieger, Dalton Trans. 2007, 272- 278.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pd(II)又はNi(II)に配位したフォスフィノベンゼンスルホネート配位子を有する金属複合物と、該金属複合物に結合した粘土とを含む、粘土担持複合体。
【請求項2】
前記フォスフィノベンゼンスルホネート配位子がPd(II)に配位している請求項1記載の粘土担持複合体。
【請求項3】
前記フォスフィノベンゼンスルホネート配位子がNi(II)に配位している請求項1記載の粘土担持複合体。
【請求項4】
前記金属複合物が式(I)又は(II)の金属化合物に由来するものである請求項1記載の粘土担持複合体。

(ここで、Mは、Pd又はNiであり、
TnのそれぞれのTは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、又は1〜30の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、ヒドロカルビル基は、1又はそれ以上のケイ素原子を含み得るものであり、それぞれのTは、環状であり得るものであり、n=0〜4であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、又は1〜30の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、ヒドロカルビル基は、1又はそれ以上のケイ素原子を含み得るものであり、Xは、環状であり得るものであり、
それぞれのRは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、1〜30の炭素原子を有するヒドロカルビル基、又は、1若しくはそれ以上の官能基で置換され且つ1〜30の炭素数を有するアリール基であり、
Yは、1〜20の炭素原子を有し、且つ、Mに配位する酸素原子、窒素原子、リン原子、及び/又は硫黄原子の1種又はそれ以上を有する化合物であり、
Zは、水素原子、1〜20の炭素原子を有するヒドロカルビル基、ハロゲン原子、又は、トリフルオロメタンスルホニル基であり、
それぞれのR’は、独立して、1〜20の炭素原子を有するヒドロカルビル基、1〜20の炭素原子を有するアルコキシ基、又は、1〜20の炭素原子を有するアリールオキシ基であり、1又はそれ以上の酸素原子を含み得る。)
【請求項5】
それぞれのRが、独立して、式(III)のフェニル基である請求項4記載の粘土担持複合体。

(ここで、Qnの各Qは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、1〜24の炭素原子を有するヒドロカルビル基、1〜24の炭素原子を有するアルコキシ基、1〜24の炭素原子を有するアリールオキシ基、又は、1〜24の炭素原子を有する置換されたアリール基であり、前記ヒドロカルビル基、前記アルコキシ基、前記アリールオキシ基、又は前記置換されたアリール基は、1又はそれ以上のケイ素原子、又は、アルコキシ基、又はそれらが組み合わされたものを含み、n=0〜5である。)
【請求項6】
前記粘土が粘土鉱物又はイオン交換性層状ケイ酸塩である請求項1記載の粘土担持複合体。
【請求項7】
前記ケイ酸塩が、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ステベンサイト、バーミキュライト、マイカ、イライト、セリサイト、グロコナイト、アタパルジャイト、セピオライト、タエニオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、クロライト、及びカオリナイトからなる群より選ばれたものである請求項6記載の粘土担持複合体。
【請求項8】
Pd(II)又はNi(II)に配位したフォスフィノベンゼンスルホネート配位子を有する金属複合物と、該金属複合物に結合した粘土とを含む粘土担持触媒複合体の存在下にてオレフィンモノマーを重合することを有する単独重合の方法。
【請求項9】
前記フォスフィノベンゼンスルホネート配位子がPd(II)に配位している請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記フォスフィノベンゼンスルホネート配位子がNi(II)に配位している請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記金属複合物が式(I)又は(II)の金属化合物に由来するものである請求項8記載の方法。

(ここで、Mは、Pd又はNiであり、
TnのそれぞれのTは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、又は1〜30の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、ヒドロカルビル基は、1又はそれ以上のケイ素原子を含み得るものであり、それぞれのTは、環状であり得るものであり、n=0〜4であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、又は1〜30の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、ヒドロカルビル基は、1又はそれ以上のケイ素原子を含み得るものであり、Xは、環状であり得るものであり、
それぞれのRは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、1〜30の炭素原子を有するヒドロカルビル基、又は、1若しくはそれ以上の官能基で置換され且つ1〜30の炭素数を有するアリール基であり、
Yは、1〜20の炭素原子を有し、且つ、Mに配位する酸素原子、窒素原子、リン原子、及び/又は硫黄原子の1種又はそれ以上を有する化合物であり、
Zは、水素原子、1〜20の炭素原子を有するヒドロカルビル基、ハロゲン原子、又は、トリフルオロメタンスルホニル基であり、
それぞれのR’は、独立して、1〜20の炭素原子を有するヒドロカルビル基、1〜20の炭素原子を有するアルコキシ基、又は、1〜20の炭素原子を有するアリールオキシ基であり、1又はそれ以上の酸素原子を含み得る。)
【請求項12】
それぞれのRが、独立して、式(III)のフェニル基である請求項11に記載の粘土担持複合体。

(ここで、Qnの各Qは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、1〜24の炭素原子を有するヒドロカルビル基、1〜24の炭素原子を有するアルコキシ基、1〜24の炭素原子を有するアリールオキシ基、又は、1〜24の炭素原子を有する置換されたアリール基であり、前記ヒドロカルビル基、前記アルコキシ基、前記アリールオキシ基、又は前記置換されたアリール基は、1又はそれ以上のケイ素原子、又は、アルコキシ基、又はそれらが組み合わされたものを含み、n=0〜5である。)
【請求項13】
前記粘土が粘土鉱物又はイオン交換性層状ケイ酸塩である請求項8記載の方法。
【請求項14】
前記ケイ酸塩が、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ステベンサイト、バーミキュライト、マイカ、イライト、セリサイト、グロコナイト、アタパルジャイト、セピオライト、タエニオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、クロライト、及びカオリナイトからなる群より選ばれたものである請求項13に記載の粘土担持複合体。
【請求項15】
前記モノマーは、式R1CH=CH2のオレフィンであって、R1が水素、若しくは、1〜30の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状アルキル基のもの、又は、スチレン、官能基含有スチレン、ノルボルネン、若しくは官能基含有ノルボルネンである請求項8記載の方法。
【請求項16】
Pd(II)又はNi(II)に配位したフォスフィノベンゼンスルホネート配位子を有する金属複合物と、該金属複合物に結合した粘土とを含む粘土担持触媒複合体の存在下にて2種又はそれ以上の異なるモノマーを重合することを有する共重合の方法。
【請求項17】
前記フォスフィノベンゼンスルホネート配位子がPd(II)に配位している請求項16の方法。
【請求項18】
前記フォスフィノベンゼンスルホネート配位子がNi(II)に配位している請求項16の方法。
【請求項19】
前記金属複合物が式(I)又は(II)の金属化合物に由来するものである請求項16の方法。

(ここで、Mは、Pd又はNiであり、
TnのそれぞれのTは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、又は1〜30の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、ヒドロカルビル基は、1又はそれ以上のケイ素原子を含み得るものであり、それぞれのTは、環状であり得るものであり、n=0〜4であり、
Xは、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、又は1〜30の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、ヒドロカルビル基は、1又はそれ以上のケイ素原子を含み得るものであり、Xは、環状であり得るものであり、
それぞれのRは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、リン原子、1〜30の炭素原子を有するヒドロカルビル基、又は、1若しくはそれ以上の官能基で置換され且つ1〜30の炭素数を有するアリール基であり、
Yは、1〜20の炭素原子を有し、且つ、Mに配位する酸素原子、窒素原子、リン原子、及び/又は硫黄原子の1種又はそれ以上を有する化合物であり、
Zは、水素原子、1〜20の炭素原子を有するヒドロカルビル基、ハロゲン原子、又は、トリフルオロメタンスルホニル基であり、
それぞれのR’は、独立して、1〜20の炭素原子を有するヒドロカルビル基、1〜20の炭素原子を有するアルコキシ基、又は、1〜20の炭素原子を有するアリールオキシ基であり、1又はそれ以上の酸素原子を含み得る。)
【請求項20】
それぞれのRが、独立して、式(III)のフェニル基である請求項19に記載の粘土担持複合体。

(ここで、Qnの各Qは、独立して、水素原子、ハロゲン原子、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子、1〜24の炭素原子を有するヒドロカルビル基、1〜24の炭素原子を有するアルコキシ基、1〜24の炭素原子を有するアリールオキシ基、又は、1〜24の炭素原子を有する置換されたアリール基であり、前記ヒドロカルビル基、前記アルコキシ基、前記アリールオキシ基、又は前記置換されたアリール基は、1又はそれ以上のケイ素原子、又は、アルコキシ基、又はそれらが組み合わされたものを含み、n=0〜5である。)
【請求項21】
前記粘土が粘土鉱物又はイオン交換性層状ケイ酸塩である請求項16記載の方法。
【請求項22】
前記ケイ酸塩が、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ステベンサイト、バーミキュライト、マイカ、イライト、セリサイト、グロコナイト、アタパルジャイト、セピオライト、タエニオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、クロライト、及びカオリナイトからなる群より選ばれたものである請求項21に記載の粘土担持複合体。
【請求項23】
前記2種又はそれ以上の異なるモノマーは、それぞれ独立して、式R2CH=CH2のオレフィンであって、R2が水素、又は1〜30の炭素原子を有する直鎖状、分岐鎖状、若しくは環状アルキル基のもの、又は、スチレン、官能基含有スチレン、ノルボルネン、官能基含有ノルボルネンのいずれかであり、
又は、式H2C=CR3Xの極性モノマーであって、R3が水素、又は1〜30の炭素原子を有するアルキル基、アリール基、若しくはアルコキシ基であり、且つXが極性基のものである請求項16記載の方法。
【請求項24】
Pd(II)又はNi(II)に配位したフォスフィノベンゼンホスホネート配位子を有する金属複合物と、該金属複合物に結合した粘土とを含む粘土担持複合体。
【請求項25】
請求項24に記載の粘土担持複合体の存在下にて少なくとも1種のモノマーを重合することを有する重合又は共重合の方法。
【請求項26】
請求項8に記載の方法によって製造された、粘土担持複合体と請求項8の単独重合の生成物とを含む混合材料。
【請求項27】
請求項16に記載の方法によって製造された、粘土担持複合体と請求項16の共重合の生成物とを含む混合材料。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公表番号】特表2011−525211(P2011−525211A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514837(P2011−514837)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/047943
【国際公開番号】WO2009/155509
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】