説明

PI3K(デルタ)選択的阻害剤

新規なPI3K、特にPI3Kデルタイソ型選択的阻害剤を開示する。本化合物は、癌、免疫不全、心血管疾患、ウイルス感染、炎症、代謝/内分泌障害および神経障害などの異常なPI3KもしくはPI3Kδ活性に関連する疾患の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2009年9月29日に出願された米国仮特許出願第61/277,737号の優先権を主張するPCT国際出願である。上記米国仮特許出願の内容全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、新規なPI3K、特にΡΙ3Κδ(PI3Kデルタ)選択的阻害剤、PI3KもしくはPI3Kδ選択的阻害剤を含む組成物、ならびにPI3KまたはΡΙ3Κδの調節に関連する疾患および病気の治療方法でのそのような組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ホスファチジルイノシトール(以下、「PI」と略す)は、細胞膜に存在する複数のリン脂質のうちの1つである。最近では、PIは、細胞内シグナル伝達で重要な役割を担っていることが明らかになっている。1980年代後半に、PI3キナーゼ(PI3K)はホスファチジルイノシトールのイノシトール環の3位をリン酸化する酵素であることが分かった(D. Whitman et al, 1988, Nature, 332, 664)。
【0004】
当初、PI3Kは単一の酵素であると考えられていたが、現在ではPI3Kには複数のサブタイプが存在することが明らかになっている。各サブタイプは、活性を調節するための独自の機構を有する。それらの生体外での基質特異性に基づいて、3つの主なクラスのPI3Kが同定されている(B. Vanhaesebroeck, 1997, Trend in Biol. Sci, 22, 267)。クラスIのPI3Kの基質は、PI、PI4−リン酸(PI4P)およびPI4,5−二リン酸(PI(4,5)P2)である。クラスIのPI3Kは、その活性化機構の観点から、クラスIaおよびクラスIbの2つのグループにさらに分類される。クラスIaのPI3Kとしては、チロシンキナーゼ共役受容体からのシグナルを伝達するPI3Kp110α、p110βおよびp110δサブタイプが挙げられる。クラスIbのPI3Kとしては、Gタンパク質共役受容体によって活性化されるp110γサブタイプが挙げられる。PIおよびPI(4)Pは、クラスIIのPI3Kの基質として知られている。クラスIIのPI3Kとしては、C末端にC2ドメインを含むことを特徴とするPI3KC2α、C2βおよびC2γサブタイプが挙げられる。クラスIIIのPI3Kの基質はPIのみである。
【0005】
PI3Kのサブタイプの中では、これまで、クラスIaのサブタイプについて最も広く調査されている。クラスIaの3つのサブタイプは、110kDaの触媒サブユニットおよび85kDaもしくは55kDaの調節サブユニットからなるヘテロ二量体である。この調節サブユニットは、SH2ドメインを含み、チロシンキナーゼ活性を有する成長因子受容体または癌遺伝子産物によってリン酸化されたチロシン残基に結合し、それにより、その脂質基質をリン酸化するp110触媒サブユニットのPI3K活性を誘発する。従って、クラスIaのサブタイプは、細胞増殖および発癌に関連していると考えられている。
【0006】
下記式Iに示すモルホリノ誘導体がPI3K阻害剤であるということは広く公表されている:
【化1】

【0007】
式中、Cyは、不飽和もしくは芳香族の単環または縮合環である。代表的な例のいくつかが、LY294002(Vlahos et al. J. Biol. Chem. 1994, 269, 5241-5248)、Ia(国際公開第2007/129161号)、Ib(国際公開第2007/084786号)、Ic(国際公開第2007/080382号)、Id(国際公開第2007/042810号)、TGX221(国際公開第2004/016607号)およびIe(国際公開第2008/018426号)に記載されている。
【化2】

【0008】
上記例では、モルホリン基は、PI3K阻害活性にとって必要不可欠であると考えられていた。国際公開第2007/132171号では、モルホリン基は、ヘテロアリール基で置換されていた。
【0009】
最近になり、本発明者ら(米国仮特許出願第61/134,163号)および他の発明者ら(国際公開第2009/045174号、国際公開第2009/04575号)は、式IIの化合物も強力なPI3K阻害剤であることを見出した。
【化3】

【0010】
さらに、本発明者らは、式IIIの化合物が強力で選択的なΡΙ3Κδ阻害剤であり、特に、
【化4】

が、2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イルである場合に、他のクラス1のPI3Kイソ型と比べてΡΙ3Κδに対する選択性が10倍を超えるものがあることを見出した。
【化5】

【0011】
その後、本発明者らは、式IIaの化合物も、式IIの対応する化合物よりも良好な医薬特性を有する強力で選択的なPI3K、mTOR阻害剤であることをさらに見出した。同様に、2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル置換を有する化合物が強力で選択的なPI3Kデルタ阻害剤であることを見出した(米国仮特許出願第61/214,828号、国際公開第2010/056320号)。
【化6】

【0012】
単環式ヘテロアリールに2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル置換を有する化合物が、いくつかの特許(例えば、国際公開第2008032072号、国際公開第2008032027号、国際公開第2008032060号、国際公開第2008032036号、国際公開第2008032033号、国際公開第2008032089号、国際公開第2008032091号、国際公開第2008032086号、国際公開第2008032028号、国際公開第2008032064号、国際公開第2008032077号および国際公開第2008032041号を参照)に公開されている。しかし、これらの化合物は、強力で選択的なPI3δ阻害剤として開示されていなかった。実際、代表的な化合物であるZST474は、ΡΙ3Κδに対して限られた(10倍未満)の選択性を有する汎用PI3K阻害剤であると報告されていた(Yaguchi et al. Journal of the National Cancer Institute, 98 (8),
545, 2006)。
【化7】

【0013】
本発明は、式IIIに係るより強力で選択的なΡΙ3Κδ阻害剤および他のビシクロヘテロアリールに関する本発明者らの調査にまで及ぶ。驚くべきことに、本発明者らは、式IIIの特定の置換によって、異なるPI3Kキナーゼ選択性プロファイルを有する化合物が得られることを見出した。
【0014】
ΡΙ3Κδは、造血由来の細胞で優先的に発現される。PI3Kδを欠損しているか触媒的に不活性な突然変異を有するマウスでは、抗原や循環免疫グロブリン濃度の低下に応答するBCR媒介性シグナル伝達などのB細胞機能の欠如が報告されている。ΡΙ3Κδは、好中球活性化の特定のシグナル伝達経路で重要な役割を担い、抗炎症治療薬の開発にとって魅力的な標的であると思われている(Sadhu et al. Biochem. Biophys. Res. Communications 308, 764, 2003)。ΡΙ3Κδは、マウスにおける最適なIgE/Ag依存性過敏性反応にも必要であることも分かり、これが喘息などのアレルギーおよび肥満細胞関連疾患の治療標的候補になることを示唆していた(Ali et al. J. Immunology, 180, 2538, 2008;Park
et al. Respirology 13, 764, 2008)。さらに、Bリンパ系細胞でのPI3Kδの発現パターンおよびその効果により、PI3Kδ特異的阻害剤によって形質転換造血細胞の増殖および生存を抑制し得るという期待が高まっている。実際に、急性骨髄性白血病(AML)に罹患している患者の白血病細胞中に高濃度のPI3Kδが発見されており(Sujobert et al. Blood, 106, 1063, 2005)、これが白血病を治療するための標的候補にもなることが示唆されている。
【発明の概要】
【0015】
本発明は、PI3K、特にΡΙ3Κδ選択的阻害剤としての新規な化合物、本化合物を含む組成物ならびに本化合物および本化合物の組成物を用いた方法に関する。本化合物およびそれを含む組成物は、PI3KまたはΡΙ3Κδ活性によって媒介されるかそれらに関連する疾患または病徴を含む疾患または病徴を治療または予防するために有用である。
【0016】
本発明は、式IVaまたはIVbの化合物:
【化8】

あるいは、その塩、プロドラッグ、そのプロドラッグの塩、その水和物、溶媒和物または多形体を提供し、式中、XはNまたはCRであり、AおよびBはそれぞれ独立して、CH、N、NH、OまたはSであり、ここで、AおよびBはそれらが結合する炭素原子と一緒になって5員もしくは6員のアリールまたはヘテロアリールを形成し、それらは、Z、ZおよびZで任意に置換されていてもよく、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはヘテロシクロであり、それぞれが、Z、ZおよびZで任意に置換されており、
、ZおよびZはそれぞれ独立して、
(1)水素またはZ(ここで、Zは、(i)アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキル、(ii)アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルから選択される1つまたは複数の基で置換された(i)の基、または(iii)以下の基(2)〜(12)のうちの1つまたは複数で置換された(i)または(ii)の基である)であるか:
(2)−OHまたは−OZ16
(3)−SHまたは−SZ16
(4)−C(O)H、C(O)16、C(O)O−Z16、−C(O)NZ1718、−C(O)C(O)NZ1718または−O−C(O)16(式中、qは独立して1または2である)、
(5)−SOH、−S(O)16または−S(O)NZ1718
(6)ハロ、
(7)シアノ、
(8)ニトロ、
(9)−Z−NZ1718
(10)−Z−N(Z18)−Z−NZ1920
(11)オキソ、または
(12)−O−C(O)−Z16
あるいは、
(13)Z、ZおよびZのうちのいずれか2つは一緒になって、アルキレン、アルケニレン、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクロであってもよく、それらが結合する原子と一緒になって3〜8員の飽和もしくは不飽和環を形成し、
およびZはそれぞれ独立して、
(1)単結合、
(2)−Z11−S(O)−Z12−、
(3)−Z11−C(O)−Z12−、
(4)−Z11−O−Z12−、
(5)−Z11−S−Z12−、
(6)−Z11−O−C(O)−Z12−、または
(7)−Z11−C(O)−O−Z12であり、
11およびZ12はそれぞれ独立して、
(1)単結合、
(2)アルキレン、
(3)アルケニレン、または
(4)アルキニレンであり、
各Z16は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、それぞれが、以下の基のうちの1つまたは複数で任意に置換されており:
(1)水素またはアルキル、
(2)−OHまたは−OZ21
(3)−SHまたは−SZ21
(4)−C(O)H、C(O)21、−C(O)NZ1718、−C(O)C(O)NZ1718または−O−C(O)21(式中、qは独立して1または2である)、
(5)−SOH、−S(O)21または−S(O)NZ1718
(6)ハロ、
(7)シアノ、
(8)ニトロ、
(9)−Z−NZ1718
(10)−Z−N(Z18)−Z−NZ1920
(11)オキソ、または
(12)−O−C(O)−Z21
各Z17は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z18は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z19は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z20は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z21は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z22は独立して、
(1)水素、
(2)−OHまたは−OZ21
(3)−SHまたは−SZ21
(4)−C(O)H、C(O)21、−C(O)NZ2121、−C(O)C(O)NZ2121または−O−C(O)21(式中、qは1または2である)、
(5)−SOH、−S(O)21または−S(O)NZ2121
(6)ハロ、
(7)シアノ、
(8)ニトロ、
(9)−Z−NZ2121
(10)−Z−N(Z21)−Z−NZ2121
(11)オキソ、または
(12)−O−C(O)−Z21であり、
ここで、Z17、Z18、Z19またはZ20は、1、2または3つの独立したZ22で置換されていてもよく、
17およびZ18またはZ19およびZ20は、それらが結合する窒素原子と一緒になって複素環であってもよく、これは未置換であるか、1、2または3つの独立したZ22で置換されており、
18、Z19またはZ20のうちのいずれか2つは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、3〜12員の飽和もしくは不飽和の単環、二環もしくは三環式の複素環であってもよく、これは未置換であるか、1、2または3つの独立したZ22で置換されている。
【0017】
本発明は、式IVaまたはIVbの化合物:
【化9】

あるいは、その塩、プロドラッグ、そのプロドラッグの塩、その水和物、溶媒和物または多形体を提供し、式中、XはNまたはCRであり、AおよびBはそれぞれ独立して、CH、N、NH、OまたはSであり、ここで、AおよびBはそれらが結合する炭素原子と一緒になって5員もしくは6員のアリールまたはヘテロアリールを形成し、それらは、Z、ZおよびZで任意に置換されていてもよく、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはヘテロシクロであり、それぞれが、Z、ZおよびZで任意に置換されており、
、ZおよびZはそれぞれ独立して、
(1)水素またはZ(ここで、Zは、(i)アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキル、(ii)アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルから選択される1つまたは複数の基で置換された(i)の基、または(iii)以下の基(2)〜(12)のうちの1つまたは複数で置換された(i)または(ii)の基である)であるか:
(2)−OHまたは−OZ16
(3)−SHまたは−SZ16
(4)−C(O)H、C(O)16、−C(O)NZ1718、−C(O)C(O)NZ1718または−O−C(O)16(式中、qは独立して1または2である)、
(5)−SOH、−S(O)16または−S(O)NZ1718
(6)ハロ、
(7)シアノ、
(8)ニトロ、
(9)−Z−NZ1718
(10)−Z−N(Z18)−Z−NZ1920
(11)オキソ、または
(12)−O−C(O)−Z16
あるいは、
(13)Z、ZおよびZのうちのいずれか2つは一緒になって、アルキレン、アルケニレン、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクロであってもよく、それらが結合する原子と一緒になって3〜8員の飽和もしくは不飽和環を形成し、
およびZはそれぞれ独立して、
(1)単結合、
(2)−Z11−S(O)−Z12−、
(3)−Z11−C(O)−Z12−、
(4)−Z11−O−Z12−、
(5)−Z11−S−Z12−、
(6)−Z11−O−C(O)−Z12−、または
(7)−Z11−C(O)−O−Z12であり、
11およびZ12はそれぞれ独立して、
(1)単結合、
(2)アルキレン、
(3)アルケニレン、または
(4)アルキニレンであり
各Z16は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、それぞれが、以下の基のうちの1つまたは複数で任意に置換されており:
(1)水素、
(2)−OHまたは−OZ21
(3)−SHまたは−SZ21
(4)−C(O)H、C(O)21、−C(O)NZ1718、−C(O)C(O)NZ1718または−O−C(O)21(式中、qは独立して1または2である)、
(5)−SOH、−S(O)21または−S(O)NZ1718
(6)ハロ、
(7)シアノ、
(8)ニトロ、
(9)−Z−NZ1718
(10)−Z−N(Z18)−Z−NZ1920
(11)オキソ、または
(12)−O−C(O)−Z21
各Z17は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z18は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z19は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z20は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z21は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z22は独立して、
(1)水素、
(2)−OHまたは−OZ21
(3)−SHまたは−SZ21
(4)−C(O)H、C(O)21、−C(O)NZ2121、−C(O)C(O)NZ2121または−O−C(O)21(式中、qは1または2である)、
(5)−SOH、−S(O)21または−S(O)NZ2121
(6)ハロ、
(7)シアノ、
(8)ニトロ、
(9)−Z−NZ2121
(10)−Z−N(Z21)−Z−NZ2121
(11)オキソ、または
(12)−O−C(O)−Z21であり、
ここで、Z17、Z18、Z19またはZ20は、1、2または3つの独立したZ22で置換されていてもよく、
17およびZ18またはZ19およびZ20は、それらが結合する窒素原子と一緒になって複素環であってもよく、これは未置換であるか、1、2または3つの独立したZ22で置換されており、
18、Z19またはZ20のうちのいずれか2つは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、3〜12員の飽和もしくは不飽和の単環、二環もしくは三環式の複素環であってもよく、これは未置換であるか、1、2または3つの独立したZ22で置換されている。
【0018】
本発明の化合物およびそれを含む組成物は、PI3Kによって調節される疾患、障害またはその症状を治療するかその重症度を低下させるのに有用である。
【0019】
別の態様では、本発明は、治療を必要としている対象における疾患または病徴の治療方法であって、有効量の本明細書中の任意の式の化合物、その医薬用塩、溶媒和物または水和物(あるいはその組成物)を対象に投与することを含む方法に関する。この疾患または病徴は、PI3Kによって調節される任意の疾患または病徴であってもよい。この疾患または病徴は、例えば、癌、炎症または心血管疾患もしくは障害であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
【0021】
「寛解させる」および「治療する」という用語は同義で使用され、どちらも、疾患(例えば、本明細書に詳述されている疾患または障害)の発症または進行を低下、抑制、軽減、減少、停止または安定化させることを意味する。
【0022】
「疾患」とは、細胞、組織または臓器の正常な機能を損傷または妨害する任意の病気または障害を意味する。
【0023】
「マーカー」とは、疾患または障害に伴う任意の変化を意味する。例えば、「マーカー」としては、疾患または障害に伴って発現レベルまたは活性が変化する任意のタンパク質またはポリヌクレオチドが挙げられる。
【0024】
本開示では、「含む(comprises)」「含んでいる(comprising)」「含有している(containing)」および「有している(having)」などは、米国特許法に基づく意味を有することができ、「含む(include)」、「含んでいる(including)」などを意味することができ、「本質的に〜からなる(consisting essentially of)」または「本質的に〜なる(consist
essentially)」も同様に米国特許法に基づく意味を有し、その用語は非限定的であり、列挙されているその基本的もしくは新規な特性が、列挙されていないものの存在によって変更されることはないが、先行技術の実施形態を除外する限り、列挙されていないものの存在を認めるものである。
【0025】
また、本明細書に使用されている「化合物」という用語は、本明細書中の式の化合物の塩、プロドラッグおよびプロドラッグの塩を含むことが意図されている。この用語は、上記のいずれかの任意の溶媒和物、水和物および多形体も含む。本出願に記載されている本発明の特定の態様における「プロドラッグ」「プロドラッグの塩」「溶媒和物」「水和物」または「多形体」の具体的な列挙は、「化合物」という用語がこれらの他の形態を列挙せずに使用されている場合、本発明の他の態様にこれらの形態を含めないことが意図されているものと解釈されるべきでない。
【0026】
本発明の化合物の塩は、酸とアミノ官能基などの本化合物の塩基性基、あるいは塩基とカルボキシル官能基などの本化合物の酸性基から形成される。別の好ましい実施形態によれば、本化合物は、薬学的に許容される酸付加塩である。
【0027】
特に明記しない限り、本明細書に使用されている「プロドラッグ」という用語は、生物学的条件下(生体外または生体内)で加水分解または酸化されるか、あるいは他の方法で反応させて本発明の化合物を生じさせることができる化合物の誘導体を意味する。プロドラッグは、生物学的条件下でのそのような反応によってのみ活性となっても、それらの未反応形態において活性を有していてもよい。本発明で想定されるプロドラッグの例としては、アミド、エステル、カルバミン酸エステル、炭酸エステルおよびリン酸エステル類似体などの生加水分解性部分を含む本明細書に開示されている式のいずれか1つの化合物の類似体または誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。プロドラッグは通常、Burger's Medicinal Chemistry and Drug Discovery (1995) 172-178, 949-982
(Manfred E. Wolff ed., 5th ed)に記載されている方法などの周知の方法を用いて調製することができ、Goodman and Gilman's, The Pharmacological basis of Therapeutics, 8th
ed., McGraw-Hill, Int. Ed. 1992, "Biotransformation of Drugs"も参照されたい。
【0028】
特に明記しない限り、本明細書に使用されている「生加水分解性部分」という用語は、1)本化合物の生物学的活性を破壊せず、生体内で本化合物に取込み、作用時間または作用の開始などの有利な特性を付与するか、あるいは、2)それ自体は生物学的に不活性だが、生体内で生物学的に活性な化合物に変換される、官能基(例えば、アミド、エステル、カルバミン酸エステル、炭酸エステルまたはリン酸エステル)類似体を意味する。
【0029】
プロドラッグの塩は、酸とアミノ官能基などのプロドラッグの塩基性基、あるいは塩基とカルボキシル官能基などのプロドラッグの酸性基とから形成される化合物である。一実施形態では、当該プロドラッグの塩は薬学的に許容される塩である。
【0030】
特に好ましいプロドラッグおよびプロドラッグの塩は、本発明の化合物が哺乳類に投与される場合に、(例えば、経口投与される化合物をより容易に血液に吸収させることができるようにすることによって)そのような化合物の生物学的利用能を上昇させるか、親化学種と比較して、親化合物の生物学的区画(例えば、脳または中枢神経系)への送達を向上させるものである。好ましいプロドラッグとしては、水溶解度、または消化管の細胞膜(gut membrane)を介する能動輸送を向上させる基が本明細書に記載されている式の構造に付加されている誘導体が挙げられる。例えば、Alexander, J. et al. Journal of Medicinal Chemistry 1988, 31, 318-322; Bundgaard,
H. Design of Prodrugs; Elsevier: Amsterdam, 1985; pp 1-92; Bundgaard, H.; Nielsen,
N. M. Journal of Medicinal Chemistry 1987, 30, 451-454; Bundgaard, H. A
Textbook of Drug Design and Development; Harwood Academic Publ.: Switzerland,
1991; pp 113-191; Digenis, G. A. et al. Handbook of Experimental Pharmacology
1975, 28, 86-112; Friis, G. J.; Bundgaard, H. A Textbook of Drug Design and
Development; 2 ed.; Overseas Publ.: Amsterdam, 1996; pp 351-385; Pitman, I. H.
Medicinal Research Reviews 1981, 1, 189-214を参照されたい。
【0031】
本明細書に使用されている「薬学的に許容される」という用語は、過度の毒性、刺激およびアレルギー反応などを引き起こすことなく、適切な医学的判断の範囲内でヒトおよび他の哺乳類の組織に接触させて使用するのに適し、かつ妥当な利益/リスク比に見合った成分を指す。「薬学的に許容される塩」とは、レシピエントに投与されると、本発明の化合物または化合物のプロドラッグを直接的または間接的に提供することができる任意の非毒性塩を意味する。
【0032】
薬学的に許容される塩を形成するために一般に用いられる酸としては、二硫化水素、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸およびリン酸などの無機酸、ならびにパラトルエンスルホン酸、サリチル酸、酒石酸、重酒石酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ベシル酸、フマル酸、グルコン酸、グルクロン酸、ギ酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、乳酸、シュウ酸、パラブロモフェニルスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸などの有機酸、および関連の無機および有機酸が挙げられる。従って、そのような薬学的に許容される塩としては、硫酸塩、ピロ硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、酢酸塩、プロピオン酸塩、デカン酸塩、カプリル酸塩、アクリル酸塩、ギ酸塩、イソ酪酸塩、カプリン酸塩、ヘプタン酸塩、プロピオール酸塩、シュウ酸塩、マロン酸塩、コハク酸塩、スベリン酸塩、セバシン酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、ブチン−1,4−二酸塩、ヘキシン−1,6−二酸塩、安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、フタル酸塩、テレフタル酸塩、スルホン酸塩、キシレンスルホン酸塩、フェニル酢酸塩、フェニルプロピオン酸塩、フェニル酪酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、β−ヒドロキシ酪酸塩、グリコール酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、プロパンスルホン酸塩、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩、マンデル酸塩および同様の塩が挙げられる。好ましい薬学的に許容される酸付加塩としては、塩酸および臭化水素酸などの鉱酸と共に形成された塩、および特にマレイン酸などの有機酸と共に形成された塩が挙げられる。
【0033】
本発明のプロドラッグの酸性官能基と共に薬学的に許容される塩を形成するのに適した塩基としては、ナトリウム、カリウムおよびリチウムなどのアルカリ金属の水酸化物、カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物、アルミニウムおよび亜鉛などの他の金属の水酸化物、アンモニアおよび有機アミン類、例えば、未置換またはヒドロキシで置換されたモノアルキルアミン、ジアルキルアミンまたはトリアルキルアミン、ジシクロヘキシルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N−メチル,N−エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノ−、ビス−もしくはトリス−(2−ヒドロキシ−低級アルキルアミン類)(例えば、モノ−、ビス−もしくはトリス−(2−ヒドロキシエチル)アミン、2−ヒドロキシ−tert−ブチルアミンまたはトリス−(ヒドロキシメチル)メチルアミン)、N,N,−ジ低級アルキル−N−(ヒドロキシ低級アルキル)−アミン類(例えば、N,N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミンまたはトリ−(2−ヒドロキシエチル)アミン)、N−メチル−D−グルカミン、およびアルギニン、リジンなどのアミノ酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0034】
本明細書で使用されている「水和物」という用語は、非共有分子間力によって結合された化学量論量または非化学量論量の水をさらに含む化合物を意味する。
【0035】
本明細書で使用されている「溶媒和物」という用語は、非共有分子間力によって結合された化学量論量または非化学量論量の水、アセトン、エタノール、メタノール、ジクロロメタン、2−プロパノールなどの溶媒をさらに含む化合物を意味する。
【0036】
本明細書に使用されている「多形体」という用語は、例えば、X線粉末回折図形または赤外分光法などの物理的手段によって特徴付けられ得る化合物またはその複合体の固体結晶形を意味する。同じ化合物の異なる多形体は、異なる物理的、化学的および/または分光学的特性を示すことができる。異なる物理的特性としては、安定性(例えば、熱、光または水分に対する安定性)、圧縮率および密度(製剤および製品の製造において重要)、吸湿性、溶解度および溶解速度(生物学的利用能に影響を与えることができる)が挙げられるが、これらに限定されない。安定性の差異は、化学的反応性(例えば、別の多形体からなる場合よりも1つの多形体からなる場合に剤形がより急速に変色するような酸化差)または機械的特性(例えば、動力学的に好ましい多形体が熱力学的により安定な多形体に変換するにつれて貯蔵中の錠剤が砕ける)あるいは両方(例えば、1つの多形体からなる錠剤は、高湿度でより損傷しやすくなる)における変化から生じ得る。多形体の異なる物理的特性は、それらの加工に影響を与えることができる。例えば、1つの多形体は、溶媒和物を形成しやすい傾向があったり、例えば、その粒子の形状または粒径分布が原因で、別のものよりも濾過または洗浄して不純物をなくすことが困難であったりする場合がある。
【0037】
本明細書で使用されている「他の立体異性体を実質的に含まない」という用語は、25%未満の他の立体異性体、好ましくは10%未満の他の立体異性体、より好ましくは5%未満の他の立体異性体、最も好ましくは2%未満の他の立体異性体、あるいは「X」%未満(ここで、Xは0〜100の数である)の他の立体異性体が存在することを意味する。ジアステレオマーを得るまたは合成する方法は当該技術分野でよく知られており、実用的なものとして最終化合物または出発物質または中間体に応用することができる。他の実施形態では、本化合物は単離された化合物である。本明細書に使用されている「少なくともX%鏡像異性的に濃縮された」という用語は、本化合物の少なくともX%(ここで、Xは0〜100の数である)が単一の鏡像異性体の形態であることを意味する。
【0038】
本明細書で使用されている「安定な化合物」という用語は、製造を可能にするのに十分な安定性を有し、かつ本明細書に詳述されている目的(例えば、治療製品、治療用化合物の製造時に使用される中間体、単離可能もしくは貯蔵可能な中間体化合物に製剤化して、治療薬に応答する疾患または病気を治療すること)にとって有用となる十分な期間にわたって本化合物の完全性を維持する化合物を指す。
【0039】
「立体異性体」は、鏡像異性体およびジアステレオマーの両方を指す。
【0040】
本明細書で使用されている「ハロ」または「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素のうちのいずれかのラジカルを指す。
【0041】
「alk」または「アルキル」という用語は、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を有する直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素基を指す。「低級アルキル」という表現は、炭素原子数1〜4のアルキル基を指す。「アリールアルキル」という用語は、アルキルの水素原子がアリール基で置換されている部分を指す。「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合を有する炭素原子数2〜10、好ましくは2〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素基を指す。アルケニル基が窒素原子に結合されている場合、そのような基は二重結合を有する炭素を介して直接結合されていないことが好ましい。
【0042】
「アルコキシ」という用語は、−O−アルキルラジカルを指す。「アルキレンジオキソ」という用語は、−O−R−O−(式中、Rはアルキレンを表す)の構造を有する二価化学種を指す。
【0043】
「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの三重結合を有する炭素原子数2〜10、好ましくは2〜4の直鎖状もしくは分岐鎖状炭化水素基を指す。アルキニル基が窒素原子に結合されている場合、そのような基は三重結合を有する炭素を介して直接結合されていないことが好ましい。
【0044】
「アルキレン」という用語は、単結合によって結合される炭素原子数1〜5の二価の直鎖架橋基(straight chain bridge)、例えば、−(CH−(式中、xは1〜5である)を指し、これは1〜3個の低級アルキル基で置換されていてもよい。
【0045】
「アルケニレン」という用語は、単結合によって結合される1または2つの二重結合を有する炭素原子数2〜5の直鎖架橋基を指し、これは、1〜3個の低級アルキル基で置換されていてもよい。例示的なアルケニレン基は、−CH=CH−CH=CH−、−CH−CH=CH−、−CH−CH=CH−CH−、−C(CHCH=CH−および−CH(C)−CH=CH−である。
【0046】
「アルキニレン」という用語は、単結合で結合されるその中に三重結合を有する炭素原子数2〜5の直鎖架橋基を指し、これは、1〜3個の低級アルキル基で置換されていてもよい。例示的なアルキニレン基は、−C≡C−、−CH−C≡C−、−CH(CH)−C≡C−および−C≡C−CH(C)CH−である。
【0047】
本明細書で用いられている「シクロアルキル」および「シクロアルケニル」という用語はそれぞれ、3〜12個の炭素、好ましくは3〜8個の炭素、より好ましくは3〜6個の炭素を有する飽和および部分不飽和環式炭化水素基を含む。
【0048】
「Ar」または「アリール」という用語は、6〜14個の炭素原子を含む、芳香族の環式基(例えば、6員の単環、10員の二環または14員の三環系)を指す。例示的なアリール基としては、フェニル、ナフチル、ビフェニルおよびアントラセンが挙げられる。
【0049】
ヘテロアリールは、N、OまたはSから選択される1、2、3または4つの環ヘテロ原子を含む5〜12個の環原子を有し、かつ残りの環原子はCであり、さらに完全共役π電子系を有する、単環または縮合環(すなわち、隣接する一対の原子を共有する環)基を指し、ここで、各環の0、1、2、3または4つの原子は置換基で置換されていてもよい。ヘテロアリール基の例は、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、キナゾリン、イソキノリン、プリンおよびカルバゾールであるが、これらに限定されない。
【0050】
「複素環」「複素環式」または「ヘテロシクロ」という用語は、少なくとも1つの環に少なくとも1つのヘテロ原子を有する完全飽和もしくは部分不飽和の環式基、例えば、3〜7員の単環、7〜12員の二環または10〜15員の三環系を指し、ここで、各環の0、1、2または3つの原子は置換基で置換されていてもよい。ヘテロ原子を含む複素環式基の各環は、窒素原子、酸素原子および/または硫黄原子から選択される1、2、3または4つのヘテロ原子を有していてもよく、ここで、窒素および硫黄ヘテロ原子は任意に酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は任意に四級化されていてもよい。複素環式基は、環もしくは環系の任意のヘテロ原子または炭素原子に結合されていてもよい。
【0051】
「置換基」という用語は、本明細書に詳述されている任意の官能基の「置換されている」基、例えば、その基の任意の原子にあるアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリール基を指す。いくつかの態様では、本明細書に詳述されている官能基、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールは、置換基(例えば、以下に記載されている基)で置換することができる。好適な置換基としては、ハロゲン、CN、NO、OR100、SR100、S(O)OR100、NR100101、C〜Cパーフルオロアルキル、C〜Cパーフルオロアルコキシ、1,2−メチレンジオキシ、C(O)OR100、C(O)NR100101、OC(O)NR100101、NR100C(O)NR100101、C(NR101)NR100101、NR100C(NR101)NR100101、S(O)NR100101、R102、C(O)R102、NR100C(O)R102、S(O)R102、S(O)102、R101、オキソ、C(O)R101、C(O)(CH)nOH、(CH)nOR100、(CH)nC(O)NR100101、NR100S(O)102(ここで、nは独立して0〜6である)が挙げられるが、これらに限定されない。各R100は独立して、水素、C〜CアルキルまたはC〜Cシクロアルキルである。各R101は独立して、水素、アルケニル、アルキニル、C〜Cシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C〜Cアルキル、あるいはC〜Cシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールで置換されたC〜Cアルキルである。各R102は独立して、C〜Cシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、C〜Cアルキル、あるいはC〜Cシクロアルキル、アリール、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールで置換されたC〜Cアルキルである。各R100、R101およびR102中の各C〜C、シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリールおよびC〜Cアルキルは、ハロゲン、CN、C〜Cアルキル、OH、C〜Cアルコキシ、NH、C〜Cアルキルアミノ、C〜Cジアルキルアミノ、C〜Cパーフルオロアルキル、C〜Cパーフルオロアルコキシまたは1,2−メチレンジオキシで任意に置換することができる。
【0052】
「オキソ」という用語は、炭素に結合されている場合にはカルボニルを形成し、窒素に結合されている場合には窒素酸化物を形成し、硫黄に結合されている場合にはスルホキシドまたはスルホンを形成する酸素原子を指す。
【0053】
「アシル」という用語は、アルキルカルボニル、シクロアルキルカルボニル、アリールカルボニル、ヘテロシクリルカルボニルまたはヘテロアリールカルボニル置換基を指し、これらはいずれも置換基でさらに置換されていてもよい。
【0054】
本明細書中の可変部分に関する任意の定義における化学基の列挙の記載は、列挙されている基の任意の単一基または組み合わせとしてのその可変部分の定義を含む。本明細書中の可変部分に関する実施形態の記載は、任意の単一の実施形態として、あるいは任意の他の実施形態またはその部分との組み合わせでのその実施形態を含む。
【0055】
本発明の化合物は、1つまたは複数の不斉中心を含んでいる場合があるため、ラセミ体およびラセミ混合物、単一の鏡像異性体、個々のジアステレオマーおよびジアステレオマー混合物として生じ得る。これらの化合物の全てのそのような異性体は、明示的に本発明に含まれている。本発明の化合物は、複数の互変異性型で表されてもよく、そのような場合、本発明は、本明細書に記載されている化合物の全ての互変異性型を明示的に含む。そのような化合物の全てのそのような異性体は、明示的に本発明に含まれる。本明細書に記載されている化合物の全ての結晶形は、明示的に本発明に含まれる。
【0056】
本発明は、式IVaまたはIVbの化合物:
【化10】

あるいは、その塩、プロドラッグ、そのプロドラッグの塩、その水和物、溶媒和物または多形体を提供し、式中、XはNまたはCRであり、AおよびBはそれぞれ独立して、CH、N、NH、OまたはSであり、ここで、AおよびBはそれらが結合する炭素原子と一緒になって5員または6員のアリールまたはヘテロアリールを形成し、それらは、Z、ZおよびZで任意に置換されていてもよく、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはヘテロシクロであり、それぞれが、Z、ZおよびZで任意に置換されており、
【0057】
、ZおよびZはそれぞれ独立して、
(1)水素またはZ(ここで、Zは、(i)アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキル、(ii)アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルから選択される1つまたは複数の基で置換された(i)の基、または(iii)以下の基(2)〜(12)のうちの1つまたは複数で置換された(i)または(ii)の基である)であるか:
(2)−OHまたは−OZ16
(3)−SHまたは−SZ16
(4)−C(O)H、C(O)16、−C(O)NZ1718、−C(O)C(O)NZ1718または−O−C(O)16(式中、qは独立して1または2である)、
(5)−SOH、−S(O)16または−S(O)NZ1718
(6)ハロ、
(7)シアノ、
(8)ニトロ、
(9)−Z−NZ1718
(10)−Z−N(Z18)−Z−NZ1920
(11)オキソ、または
(12)−O−C(O)−Z16
あるいは、
(13)Z、ZおよびZのうちのいずれか2つは一緒になって、アルキレン、アルケニレン、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクロであってもよく、それらが結合する原子と一緒になって3〜8員の飽和もしくは不飽和環を形成し、
およびZはそれぞれ独立して、
(1)単結合、
(2)−Z11−S(O)−Z12−、
(3)−Z11−C(O)−Z12−、
(4)−Z11−O−Z12−、
(5)−Z11−S−Z12−、
(6)−Z11−O−C(O)−Z12−、または
(7)−Z11−C(O)−O−Z12であり、
11およびZ12はそれぞれ独立して、
(1)単結合、
(2)アルキレン、
(3)アルケニレン、または
(4)アルキニレンであり、
各Z16は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、それぞれが、以下の基のうちの1つまたは複数で任意に置換されており:
(1)水素、
(2)−OHまたは−OZ21
(3)−SHまたは−SZ21
(4)−C(O)H、C(O)21、−C(O)NZ1718、−C(O)C(O)NZ1718または−O−C(O)21(式中、qは独立して1または2である)、
(5)−SOH、−S(O)21または−S(O)NZ1718
(6)ハロ、
(7)シアノ、
(8)ニトロ、
(9)−Z−NZ1718
(10)−Z−N(Z18)−Z−NZ1920
(11)オキソ、または
(12)−O−C(O)−Z21
各Z17は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z18は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z19は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z20は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z21は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z22は独立して、
(1)水素、
(2)−OHまたは−OZ21
(3)−SHまたは−SZ21
(4)−C(O)H、C(O)21、−C(O)NZ2121、−C(O)C(O)NZ2121または−O−C(O)21(式中、qは1または2である)、
(5)−SOH、−S(O)21または−S(O)NZ2121
(6)ハロ、
(7)シアノ、
(8)ニトロ、
(9)−Z−NZ2121
(10)−Z−N(Z21)−Z−NZ2121
(11)オキソ、または
(12)−O−C(O)−Z21であり、
ここで、Z17、Z18、Z19またはZ20は、1、2または3つの独立したZ22で置換されていてもよく、
17およびZ18またはZ19およびZ20は、それらが結合する窒素原子と一緒になって複素環であってもよく、これは未置換であるか、1、2または3つの独立したZ22で置換されており、
18、Z19またはZ20のうちのいずれか2つは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、3〜12員の飽和もしくは不飽和の単環、二環もしくは三環式の複素環であってもよく、これは未置換であるか、1、2または3つの独立したZ22で置換されている。
【0058】
一態様では、本化合物は、式IVcの任意の化合物であり:
【化11】

式中、RおよびRは式IVaについて定義されているとおりであり、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキルまたはヘテロシクロであり、それぞれが、式IVaについて定義されているようなZ、ZおよびZで任意に置換されている。
【0059】
一態様では、本化合物は、式IVdの任意の化合物であり:
【化12】

式中、RおよびRは、式IVaについて定義されているとおりであり、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキルまたはヘテロシクロであり、それぞれが、式IVaについて定義されているようなZ、ZおよびZで任意に置換されている。
【0060】
一態様では、本化合物は、式IVeの任意の化合物であり:
【化13】

式中、RおよびRは、式IVaについて定義されているとおりであり、Rは、水素、アルキル、シクロアルキルまたはヘテロシクロであり、それぞれが、式IVaについて定義されているようなZ、ZおよびZで任意に置換されている。
【0061】
一態様では、本化合物は、式IVfの任意の化合物であり:
【化14】

式中、X、RおよびRは、式IVbについて定義されているとおりであり、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、アルキル、シクロアルキルまたはヘテロシクロであり、それぞれが、式IVbについて定義されているようなZ、ZおよびZで任意に置換されている。
【0062】
一態様では、本化合物は、式IVgの任意の化合物であり:
【化15】

式中、X、RおよびRは、式IVbについて定義されているとおりであり、Rは、水素、アルキル、シクロアルキルまたはヘテロシクロであり、それぞれが、式IVbについて定義されているようなZ、ZおよびZで任意に置換されている。
【0063】
一態様では、本化合物は、表1の化合物である。
【0064】
表1中の構造およびその中のスキームは、特定の−NH−、−NH(アミノ)および−OH(ヒドロキシル)基を含み、ここには、対応する水素原子(1つまたは複数)は明示されていないが、場合により、それらは−NH−、−NHまたは−OHとして解釈されるべきである。
【0065】
【表1】

【0066】
別の態様では、本化合物は以下の化合物のうちの1つである:
2−(2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)−6−(4−メタンスルホニル−ピペラジン−1−イルメチル)−4−モルホリン−4−イル−チエノ[3,2−d]ピリミジン、
6−(2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)−4−モルホリン−4−イル−1−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、
2−(2−ジフルオロメチル−4−メトキシ−ベンゾイミダゾール−1−イル)−6−(4−メタンスルホニル−ピペラジン−1−イルメチル)−4−モルホリン−4−イル−チエノ[3,2−d]ピリミジン、または
6−(2−ジフルオロメチル−4−メトキシ−ベンゾイミダゾール−1−イル)−4−モルホリン−4−イル−1−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン。
【0067】
別の態様では、本化合物は以下の化合物のうちの1つである:
6−(2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)−9−[2−(4−メタンスルホニル−ピペラジン−1−イル)−エチル]−2−モルホリン−4−イル−9H−プリン、
2−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾール−1−イル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}エタン−1−オール、
6−(2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)−2−モルホリン−4−イル−9−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−9H−プリン、
9−sec−ブチル−6−(2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)−2−モルホリン−4−イル−9H−プリン、
2−[6−(2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)−2−モルホリン−4−イル−プリン−9−イル]−プロパン−1−オール、
2−[6−(2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)−2−(8−オキサ−3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−プリン−9−イル]−プロパン−1−オール、
4−{1−(2H−3,4,5,6−テトラヒドロピラン−4−イル)−4[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]ピラゾロ[5,4−d]ピリミジン−6−イル}モルホリン、または
4−{4−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−6−モルホリン−4−イルピラゾロ[5,4−d]ピリミジニル}ピペリジル4−メチルピペラジニルケトン。
【0068】
さらに別の態様では、本化合物は以下の化合物のうちの1つである:
1−(2−{4−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−6−モルホリン−4−イルピラゾロ[5,4−d]ピリミジニル}エチル)−4−(メチルスルホニル)ピペラジン、
4−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピペリジル4−メチルピペラジニルケトン、
[4−[6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾール−1−イル]−2−モルホリノ−プリン−9−イル]−1−ピペリジル]−(4−フルオロフェニル)メタノン、
[4−[6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾール−1−イル]−2−モルホリノ−プリン−9−イル]−1−ピペリジル]−(4−ピリジル)メタノン、
[4−[6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾール−1−イル]−2−モルホリノ−プリン−9−イル]−1−ピペリジル]−(3−ピリジル)メタノン、
(4−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピペリジル)−N,N−ジメチルカルボキサミド、
4−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピペリジンカルボン酸メチル、
4−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}−1−(メチルスルホニル)ピペリジン、
(2R)−1−(4−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピペリジル)−2−ヒドロキシプロパン−1−オン、
4−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピペリジルピロリジニルケトン、
4−{6−[2−(ジフルオロメチル)−4−メトキシベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピペリジル−4−メチルピペラジニルケトン、
4−{6−[2−(ジフルオロメチル)−4−メトキシベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}−1−(メチルスルホニル)ピペリジン、
1−(9−(2H−3,4,5,6−テトラヒドロピラン−4−イル)−2−モルホリン−4−イルプリン−6−イル)−2−(ジフルオロメチル)−4−メトキシベンゾイミダゾール、
3−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピロリジニル)−N,N−ジメチルカルボキサミド、
4−{3−(2H−3,4,5,6−テトラヒドロピラン−4−イル)−7−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−1,2,3−トリアゾロ[5,4−d]ピリミジン−5−イル}モルホリン。
【0069】
本明細書中の式(例えば、式IV)の化合物の合成は、通常の技術を有する合成化学者であれば容易に行うことができる。例えば、関連手順および中間体は、本明細書に開示されている。本明細書で参照されている特許、特許出願および公開公報はそれぞれ、従来の定期刊行物に記載されているもの、またはインターネットからのみ入手可能なものであるかに関わらず、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
本明細書中の式(例えば、式IV)の化合物を合成するために、本明細書で引用されている参考文献に記載の他の手法を容易に適応させることができる。これらの手順の変形形態およびそれらの最適化は通常の実施者の技術の範囲内である。
【0071】
本明細書中の化学構造は、特定の−NH−、−NH(アミノ)および−OH(ヒドロキシル)基を含み、ここには、対応する水素原子(1つまたは複数)は明示されていないこともあるが、場合により、それらは−NH−、−NHまたは−OHとして解釈されるべきである。
【0072】
上に示した具体的な手法および化合物は、限定することを意図するものではない。本明細書中のスキームの化学構造は、同じ可変部分名(例えば、R、R、R、R’、Xなど)によって特定されるか否かに関わらず、本明細書中の化合物の式中の対応する位置の化学基(部分、原子など)の定義に対応させて本明細書によって定義されている可変部分を示す。別の化合物構造の合成で使用される化合物構造中の化学基の適合性は、当業者の知識の範囲内である。本明細書中の式(例えば、式IV)の化合物のさらなる合成方法、および本明細書中のスキームに明示されていない経路内の合成前駆体を含むそれらの合成前駆体は、当該技術分野における通常の技術を有する化学者の手段の範囲内である。反応条件を最適化し、必要であれば競合する副生成物を最小にする方法が当該技術分野で知られている。また、本明細書に記載されている方法は、最終的に本明細書中の化合物の合成を可能にするために、本明細書に具体的に記載されている工程の前または後のいずれかに好適な保護基を付加または除去するための工程をさらに含んでいてもよい。さらに、様々な合成工程を別の順序または順番で行なって所望の化合物を得てもよい。応用可能な化合物の合成に有用な合成化学変換および保護基手法(保護および脱保護)が当該技術分野で知られており、例えば、R. Larock,
Comprehensive Organic Transformations, VCH Publishers (1989); T.W. Greene and
P.G.M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd Ed., John
Wiley and Sons (1999); L. Fieser and M. Fieser, Fieser and Fieser's Reagents
for Organic Synthesis, John Wiley and Sons (1994)およびL.
Paquette, ed., Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis, John Wiley and
Sons (1995)ならびにこれらの改訂版に記載されているものが挙げられる。
【0073】
また、本明細書に記載されている合成方法は、最終的に本明細書に記載されている式の化合物の合成を可能にするために、いずれかのスキームに記載されているいずれかの工程の前または後に好適な保護基を付加または除去するための工程をさらに含んでいてもよい。本明細書に詳述されている方法は、1つの式の化合物を別の式の化合物に変換することも意図している。変換プロセスは、そのままで、あるいは中間体化合物の単離と共に行うことができる1つまたは複数の化学的変換を指す。この変換は、本明細書で引用されている参考文献に記載されている技術およびプロトコルを含む、当該技術分野で知られている技術およびプロトコルを用いて、出発化合物または中間体をさらなる試薬と反応させることを含むことができる。中間体は、精製して(例えば、濾過、蒸留、昇華、結晶化、粉砕、固相抽出およびクロマトグラフィ)、あるいは精製せずに使用することができる。
【0074】
本発明によって想定される置換基および可変部分の組み合わせは、結果的に安定な化合物が生成される組み合わせのみである。
【0075】
また、本発明は、有効量の本明細書中の任意の式(例えば、式IV)の化合物、あるいは適用可能であれば、前記化合物の薬学的に許容される塩、溶媒和物、水和物、多形体またはプロドラッグと、許容される担体とを含む組成物も提供する。本発明の組成物は、医薬用途(「医薬組成物」)のために製剤化することが好ましい。ここで、担体は薬学的に許容される担体である。担体(1種または複数)は、製剤の他の成分と適合可能であるという意味で「許容される」ものでなければならず、薬学的に許容される担体の場合、薬で典型的に使用される量で、そのレシピエントに有害なものであってはならない。
【0076】
本発明の医薬組成物に使用され得る薬学的に許容される担体、補助剤および賦形剤としては、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒトの血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質(例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩)、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
本発明の医薬組成物としては、経口、直腸、経鼻、局所(口腔内および舌下など)、膣内または非経口(皮下、筋肉内、静脈内および皮内など)投与に適した医薬組成物が挙げられる。特定の実施形態では、本明細書中の式の化合物は、経皮的に(例えば、経皮パッチを用いて)投与される。他の製剤は、単位剤形、例えば、錠剤および徐放性カプセル、およびリポソームに封入して提供すると好都合であり、薬学分野でよく知られている任意の方法で調製してもよい。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing
Company, Philadelphia, PA (17th ed. 1985)を参照されたい。
【0078】
そのような調製方法は、1つまたは複数の副成分を構成する担体などの成分を、投与される分子と混合する工程を含む。一般に、本組成物は、活性成分を均一かつ密接に液体担体、リポソームまたは微粉化固体担体あるいは両方と混合し、次いで、必要であればその生成物を成形することによって調製する。
【0079】
特定の好ましい実施形態では、本化合物は経口投与される。経口投与に適した本発明の組成物は、例えば、それぞれが所定量の活性成分を含有するカプセル、小袋または錠剤などの分離単位として、粉末または顆粒として、水性液体または非水性液体の溶液または懸濁液として、水中油型液体エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョンとして、あるいは、リポソームに封入して、および巨丸剤として提供され得る。ソフトゼラチンカプセルは、そのような懸濁液を入れるのに有用になり得、化合物の吸収率を有利に上昇させ得る。
【0080】
錠剤は、任意に1つまたは複数の副成分と共に、圧縮または成型によって製造してもよい。圧縮錠は、任意に、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、防腐剤、界面活性剤または分散剤と混合した粉末または顆粒などの易流動性形態の活性成分を好適な機械で圧縮して調製してもよい。湿製錠は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末状化合物の混合物を好適な機械で成型して製造してもよい。湿製錠は、任意にコーティングしたり刻み目を入れたりしてもよく、その中の活性成分を徐放または制御放出するように製剤化してもよい。薬学的に活性な成分のそのような徐放または制御放出組成物、例えば、本明細書に記載されているような組成物および当該技術分野で知られている他の化合物の製剤化方法が当該技術分野で知られており、いくつかの取得済米国特許に記載されている。そのうちのいくつかとしては、米国特許第4,369,172号および第4,842,866号、ならびにその中で引用されている参考文献が挙げられるが、これらに限定されない。コーティングは、化合物を腸に送達するために使用することができる(例えば、米国特許第6,638,534号、第5,217,720号、および第6,569,457号、第6,461,631号、第6,528,080号、第6,800,663号、ならびにその中で引用されている参考文献を参照)。本発明の化合物にとって有用な製剤は、その腸溶性層が酢酸コハク酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む腸溶性ペレットの形態である。
【0081】
経口用の錠剤の場合、通常使用される担体としてはラクトースおよびコーンスターチが挙げられる。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も典型的に添加される。カプセルの形態での経口投与にとって有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが挙げられる。水性懸濁液が経口投与される場合、活性成分は乳化剤および懸濁化剤と組み合わせられる。所望であれば、特定の甘味料および/または着香料および/または着色料を添加してもよい。
【0082】
局所投与に適した組成物としては、着香された主成分中に成分(通常は、スクロースおよびアカシアまたはトラガント)を含むトローチ剤、ならびにゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性主成分中に活性成分を含む香錠が挙げられる。
【0083】
非経口投与に適した組成物としては、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および製剤を対象のレシピエントの血液と等張させる溶質を含有し得る水性および非水性滅菌注射溶液、ならびに懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性無菌懸濁液が挙げられる。当該製剤を、単位投与または複数回投与容器(例えば、密封アンプルおよびバイアル)で提供してもよく、使用直前に注射のために無菌液体担体(例えば、水)の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)条件下に貯蔵してもよい。即席の注射溶液および懸濁液を無菌粉末、顆粒および錠剤から調製してもよい。
【0084】
そのような注射溶液は、例えば、注射可能な水性もしくは油性無菌懸濁液の形態であってもよい。この懸濁液は、好適な分散剤または湿潤剤(例えば、Tween80など)および懸濁化剤を用いて、当該技術分野で知られている技術に従って製剤化してもよい。注射可能な無菌製剤は、例えば1,3−ブタンジオール溶液のような、非経口的に許容される非毒性希釈剤または溶媒を含む注射可能な無菌溶液または懸濁液であってもよい。用いられ得る許容可能な媒体および溶媒は、マンニトール、水、リンガー液および等張の塩化ナトリウム溶液である。さらに、無菌固定油を溶媒または懸濁媒体として用いると好都合である。この目的のために、合成のモノグリセリドまたはジグリセリドなどの任意の無菌固定油を用いてもよい。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は、注射剤の調製に有用であり、天然の薬学的に許容される油、例えば、オリーブ油またはヒマシ油、特にそれらのポリオキシエチル化された形態も有用である。また、これらの油溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含んでもいてよい。
【0085】
本発明の医薬組成物を、直腸投与用坐剤の形態で投与してもよい。本発明の化合物を、室温では固体だが直腸温度では液体となるため、直腸で溶けて活性成分を放出する好適な非刺激性賦形剤と混合して、これらの組成物を調製することができる。そのような材料としては、ココアバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
本発明の医薬組成物は、経鼻エアロゾルまたは吸入によって投与してもよい。そのような組成物は、医薬製剤の分野でよく知られている技術に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の好適な防腐剤、生物学的利用能を向上させるための吸収促進剤、フルオロカーボンおよび/または当該技術分野で知られている他の可溶化剤または分散剤を用いて、生理食塩溶液として調製してもよい。
【0087】
本発明の医薬組成物の局所投与は、所望の治療が局所塗布によって容易にアクセス可能な領域または臓器に関わる場合に特に有用である。皮膚への局所塗布のために、本医薬組成物は、担体に懸濁または溶解した活性成分を含有する好適な軟膏と共に製剤化しなければならない。本発明の化合物の局所投与用担体としては、鉱油、液体石油、白色石油、プロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、本医薬組成物は、担体に懸濁または溶解した活性化合物を含有する好適なローションまたはクリームと共に製剤化することができる。好適な担体としては、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられるが、これらに限定されない。また、本発明の医薬組成物は、直腸坐薬製剤によって、あるいは好適な浣腸製剤の形態で下部腸管に局所塗布してもよい。局所経皮パッチおよびイオン導入投与も本発明に含まれる。
【0088】
特に好ましい誘導体およびプロドラッグは、本発明の化合物が哺乳類に投与される場合に、(例えば、経口投与される化合物を血液により容易に吸収させることができるようにすることによって)そのような化合物の生物学的利用能を上昇させるか、あるいは親化学種と比較して、親化合物の生物学的区画(例えば、脳または中枢神経系)への送達を向上させるものである。好ましいプロドラッグとしては、水溶解度または消化管の細胞膜を介する能動輸送を向上させる基が本明細書に記載されている式の構造に付加されている誘導体が挙げられる。例えば、Alexander, J. et al. Journal of Medicinal Chemistry 1988,
31, 318-322; Bundgaard, H. Design of Prodrugs; Elsevier: Amsterdam, 1985; pp
1-92; Bundgaard, H.; Nielsen, N. M. Journal of Medicinal Chemistry 1987, 30,
451-454; Bundgaard, H. A Textbook of Drug Design and Development; Harwood
Academic Publ.: Switzerland, 1991; pp 113-191; Digenis, G. A. et al. Handbook
of Experimental Pharmacology 1975, 28, 86-112; Friis, G. J.; Bundgaard, H. A
Textbook of Drug Design and Development; 2 ed.; Overseas Publ.: Amsterdam, 1996;
pp 351-385; Pitman, I. H. Medicinal Research Reviews 1981, 1, 189-214を参照されたい。
【0089】
主題治療薬が目的部位に投与されるように、主題治療薬の塗布は局所的であってもよい。主題組成物を目的の部位に投与するために、注射、カテーテル、外套針、噴出装置(projectile)、プルロニックゲル、ステント、薬物徐放ポリマーまたは内部アクセスを提供する他の装置の使用などの様々な技術を使用することができる。
【0090】
別の実施形態によれば、本発明は、埋め込み型薬物放出装置を含浸させる方法であって、前記薬物放出装置を本発明の化合物または組成物に接触させる工程を含む方法を提供する。埋め込み型薬物放出装置としては、生分解性ポリマーカプセルまたは薬包、非分解性拡散性ポリマーカプセルおよび生分解性ポリマーウェーハが挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
別の実施形態によれば、本発明は、本発明の化合物が治療的に活性となるように本化合物または本化合物を含む組成物でコーティグされた埋め込み型医療装置を提供する。
【0092】
別の実施形態では、本発明の組成物は、第2の治療薬をさらに含む。第2の治療薬としては、単独で、あるいは本明細書中の任意の式の化合物と併用して投与されると有利な特性を有するか有利な特性を示すことが知られている任意の化合物または治療薬が挙げられる。これらの化合物と有用に組み合わせることができる薬物としては、他のキナーゼ阻害剤および/または上述した疾患および障害を治療するための他の化学療法剤が挙げられる。
【0093】
そのような薬剤は当該技術誌に詳細に記載されている。好ましくは、第2の治療薬は、癌から選択される疾患または病気の治療または予防に有用な薬剤である。
【0094】
さらにより好ましくは、本発明の化合物と同時に製剤化される第2の治療薬は、癌、免疫異常、心血管疾患、ウイルス感染、炎症、代謝/内分泌疾患および神経障害などのPI3K媒介性疾患/障害の治療に有用な薬剤である。
【0095】
別の実施形態では、本発明は、互いに結びつけられた本発明の化合物および第2の治療薬の別個の剤形を提供する。本明細書に使用されている「互いに結びつけられた」という用語は、別個の剤形が一緒に販売されかつ一緒に(連続的または同時に互いの24時間未満に)投与されることが意図されていることが容易に明らかになるように、別個の剤形が一緒に梱包されているか、他の方法で互いに取り付けられていることを意味する。
【0096】
本発明の医薬組成物では、本発明の化合物は有効量で存在する。本明細書に使用されている「有効量」という用語は、適切な投与計画で投与される場合、治療中の疾患の重症度、持続または進行を低下または寛解させるか、治療中の疾患の進行を防止するか、治療中の疾患の寛解を引き起こすか、あるいは、別の治療の予防または治療効果を向上または改善させるのに十分である量を指す。
【0097】
動物およびヒトに関する投与量の相互関係(体表のミリグラム/平方メートルに基づく)は、Freireich et al., (1966) Cancer Chemother Rep 50: 219に記載されている。体表面積は、患者の身長および体重から概算してもよい。例えば、Scientific Tables, Geigy Pharmaceuticals, Ardley, N.Y., 1970, 537を参照されたい。本発明の化合物の有効量は、約0.001mg/kg〜約500mg/kg、より好ましくは0.01mg/kg〜約50mg/kg、より好ましくは0.1mg/kg〜約2.5mg/kgの範囲とすることができる。また、有効な投与量は、当業者によって認識されているように、治療される疾患、疾患の重症度、投与経路、患者の性別、年齢および全体的な健康状態、賦形剤の使用、他の薬剤の使用などの他の治療法の同時使用の可能性、ならびに治療している医師の判断に応じて異なるであろう。
【0098】
第2の治療薬を含む医薬組成物では、第2の治療薬の有効量は、その薬剤のみを使用する単剤療法計画で通常利用される投与量の約20%〜100%である。好ましくは、有効量は、通常の単剤療法の投与量の約70%〜100%である。これらの第2の治療薬の通常の単剤療法の投与量は、当該技術分野でよく知られている。例えば、Wells et al., eds., Pharmacotherapy Handbook, 2nd Edition, Appleton and
Lange, Stamford, Conn. (2000); PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia
2000, Deluxe Edition, Tarascon Publishing, Loma Linda, Calif. (2000)を参照されたく、それらの各参考文献の内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0099】
上で参照した第2の治療薬のいくつかは、本発明の化合物と相乗的に作用することが予想される。相乗作用が生じる場合、第2の治療薬および/または本発明の化合物の有効な投与量を、単剤療法で必要とされる投与量よりも減少させることができる。これは、第2の治療薬または本発明の化合物のいずれか一方の有毒な副作用を最小にし、有効性を相乗的に向上させ、投与または使用の容易性を向上させ、かつ/または化合物の調製または製剤化の総費用を低下させるという利点を有する。
【0100】
(治療方法)
別の実施形態によれば、本発明は、疾患もしくは障害またはその症状(例えば、本明細書に詳述されている疾患もしくは障害またはその症状)に罹患しているか罹患しやすい対象の治療方法であって、前記対象に有効量の本発明の化合物もしくは組成物を投与する工程を含む方法を提供する。そのような疾患は当該技術分野でよく知られており、本明細書にも開示されている。
【0101】
一態様では、本治療方法は、PI3Kのうちの1つまたは多くによって媒介される疾患(例えば、PI3Kδによって媒介される疾患)の治療を含む。好ましい実施形態では、本発明の方法は、Drees et al in Expert Opin. Ther. Patents (2004) 14(5):703-732で論じられているような疾患または病気に罹患しているか罹患しやすい対象を治療するために使用される。そのような疾患または病気としては、癌、免疫異常、心血管疾患、ウイルス感染、炎症、代謝/内分泌疾患および神経障害が挙げられる。代謝/内分泌疾患の例としては、糖尿病および肥満症が挙げられる。
【0102】
本化合物を使用して治療することができる癌の例としては、白血病、脳腫瘍、腎臓癌、胃癌、皮膚癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、肺癌、結腸癌、前立腺癌、卵巣癌および膵臓癌が挙げられる。従って、免疫異常、癌、心血管疾患、ウイルス感染、炎症、代謝/内分泌疾患または神経障害に罹患しているヒトまたは動物の患者は、上に定義した本発明の化合物の患者への投与を含む方法で治療され得る。当該患者の病気は、それによって改善または寛解され得る。
【0103】
本発明の方法に従って治療可能な疾患および病気としては、患者における、癌、脳卒中、糖尿病、肝腫、心血管疾患、アルツハイマー病、嚢胞性線維症、ウイルス性疾患、自己免疫疾患、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、乾癬、アレルギー性疾患、炎症、神経障害、ホルモン関連疾患、臓器移植に関連する病気、免疫不全疾患、破壊性骨障害、増殖性疾患、感染性疾患、細胞死に関連する病気、トロンビンによる血小板凝集、慢性骨髄性白血病(CML)、肝疾患、T細胞活性化を伴う病的免疫状態、および中枢神経系(CNS)障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0104】
本発明の方法に従って治療することができる癌としては、乳癌、卵巣癌、子宮頚癌、前立腺癌、精巣癌、泌尿生殖器癌、食道癌、喉頭癌、神経膠芽腫、神経芽細胞腫、胃癌、皮膚癌、角化棘細胞腫、肺癌、類表皮癌、大細胞癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、小細胞癌、肺腺癌、骨肉腫、結腸癌、腺腫内癌、膵臓癌、腺癌、甲状腺癌、濾胞腺癌、未分化癌、乳頭癌、精上皮腫、黒色腫、肉腫、膀胱癌、肝臓癌および胆道癌、腎臓癌、骨髄障害、リンパ障害、毛様細胞、口腔(buccal cavity)および咽頭(口腔(oral))癌、口唇癌、舌癌、口腔(mouth)癌、咽頭癌、小腸癌、結腸直腸(colonrectum)癌、大腸癌、直腸癌、脳腫瘍および中枢神経系癌、ホジキン病および白血病が挙げられるが、これらに限定されない。
【0105】
本発明の方法に従って治療することができる心血管疾患としては、再狭窄、心肥大、アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞および鬱血性心不全が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
本発明の方法に従って治療することができる神経変性疾患としては、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン病、脳虚血、外傷によって生じた神経変性疾患、グルタミン酸神経毒性および低酸素症が挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
本発明の方法に従って治療することができる炎症性疾患としては、関節リウマチ、乾癬、接触皮膚炎および遅延型過敏反応が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
本明細書に詳述されている方法は、当該対象を特に定められた治療を必要としているものとして特定する方法を含む。そのような治療を必要としている対象を特定することは、対象または医療の専門家の判断であってもよく、主観的(例えば、所見)または客観的(例えば、試験または診断法によって測定可能)であってもよい。
【0109】
別の実施形態では、本発明は、細胞におけるPI3Kの活性を調節する方法であって、細胞を本明細書中の任意の式の1つまたは複数の化合物に接触させることを含む方法を提供する。
【0110】
別の実施形態では、上記治療方法は、前記患者に1種または複数の第2の治療薬を同時投与するさらなる工程を含む。第2の治療薬は、本明細書中の兆候にとって有用であることが知られている任意の第2の治療薬から選択してもよい。
【0111】
本明細書に使用されている「同時投与」という用語は、第2の治療薬を、単一の剤形の一部(本発明の化合物および上記第2の治療薬を含む本発明の組成物など)として、あるいは別個の複数の剤形として、本発明の化合物と一緒に投与し得ることを意味する。あるいは、さらなる薬剤を、本発明の化合物の投与前、その投与と連続的に、あるいはその投与後に投与してもよい。そのような併用療法では、本発明の化合物および第2の治療薬(1種または複数)の両方が従来の方法で投与される。本発明の化合物および第2の治療薬の両方を含む本発明の組成物の対象への投与は、治療過程中の別の時間に同じ治療薬、任意の他の第2の治療薬または本発明の任意の化合物を前記対象に別々に投与することを除外するものではない。
【0112】
これらの第2の治療薬の有効量は当業者によく知られており、投与のための手引きは、本明細書で参照されている特許および公開特許出願、ならびにWells et al., eds., Pharmacotherapy Handbook, 2nd Edition, Appleton and
Lange, Stamford, Conn. (2000); PDR Pharmacopoeia, Tarascon Pocket Pharmacopoeia
2000, Deluxe Edition, Tarascon Publishing, Loma Linda, Calif. (2000)、および他の医学書から入手し得る。但し、第2の治療薬の最適な有効量の範囲を決定することは当業者の範囲に十分に含まれている。
【0113】
第2の治療薬が対象に投与される本発明の一実施形態では、本発明の化合物の有効量は、第2の治療薬が投与されない場合の有効量よりも少ない。別の実施形態では、第2の治療薬の有効量は、本発明の化合物が投与されない場合の有効量よりも少ない。このようにして、どちらか一方の薬剤の高投与量に伴う望ましくない副作用を最小にしてもよい。他の潜在的利点(投与計画の改善および/または薬剤費の低下が挙げられるが、これらに限定されない)は当業者には明らかであろう。
【0114】
さらに別の態様では、本発明は、薬の製造において、対象における上記疾患、障害または症状の治療または予防のために、単一の組成物または別個の剤形として、本明細書中の任意の式(例えば、式IV)の化合物の単独での使用あるいは1種または複数の上記第2の治療薬との併用を提供する。本発明の別の態様は、対象における本明細書に詳述されている疾患、障害またはその症状の治療または予防に使用される本明細書中の式の化合物である。
【0115】
他の態様では、本明細書中の方法は、治療投与に対する対象の応答を監視することをさらに含む方法を含む。そのような監視は、治療計画のマーカーまたは指標として、対象の組織、体液、試験片、細胞、タンパク質、化学マーカー、遺伝物質などを周期的にサンプリングすることを含んでいてもよい。他の方法では、そのような治療に対する適合性の関連マーカーまたは指標を評価することによって、対象をそのような治療を必要としているものとして事前選別または特定する。
【0116】
一実施形態では、本発明は、治療の進行を監視する方法を提供する。本方法は、本明細書に詳述されている疾患またはその症状に罹患しているか罹患しやすい対象における、診断マーカー(マーカー)(例えば、本明細書中の化合物によって調節される本明細書に詳述されている任意の標的または細胞型)のレベルまたは診断測定値(例えば、スクリーニング、アッセイ)を測定する工程を含み、ここでは、対象に疾患またはその症状を治療するのに十分な治療量の本明細書中の化合物が投与されている。本方法で測定されたマーカーレベルを健康な正常な対照または他の罹患患者におけるマーカーの公知のレベルと比較して対象の病態を確定することができる。好ましい実施形態では、対象におけるマーカーの第2のレベルを、第1のレベルの決定後のある時点で測定し、その2つのレベルを比較して疾患の経過または治療の有効性を監視する。特定の好ましい態様では、本発明に係る治療の開始前に、対象におけるマーカーの治療前レベルを測定する。次いで、マーカーの治療前レベルを、治療開始後の対象のマーカーレベルと比較して治療の有効性を決定することができる。
【0117】
特定の方法の実施形態では、対象におけるマーカーレベルまたはマーカー活性を、少なくとも1回測定する。例えば、同じ患者、別の患者または正常な対象から事前または事後に得られたマーカーレベルの別の測定値とのマーカーレベルの比較は、本発明に係る治療が所望の効果を有しているか否かを決定するのに有用となり得、それにより、適宜、投与量を調整することができる。マーカーレベルは、当該技術分野で知られているか本明細書に記載されている任意の好適なサンプリング/発現アッセイ法を用いて測定してもよい。好ましくは、最初に組織または体液試料を対象から採取する。好適な試料の例としては、血液、尿、組織、口または頬の細胞、および根を含む毛髪試料が挙げられる。他の好適な試料は当業者に知られているであろう。試料中のタンパク質レベルおよび/またはmRNAレベル(例えば、マーカーレベル)は、限定されるものではないが、酵素免疫測定法、ELISA、放射標識/アッセイ法、ブロット/化学発光法、リアルタイムPCRなどの当該技術分野で知られている任意の好適な技術を用いて測定することができる。
【0118】
本発明は、本明細書に詳述されている疾患、障害またはその症状を含む、疾患、障害またはその症状を治療するために使用されるキットも提供する。これらのキットは、a)本明細書中の任意の式(例えば、式IV)の化合物あるいはその塩、プロドラッグ、そのプロドラッグの塩、その水和物、溶媒和物または多形体を含む医薬組成物(ここで、前記医薬組成物は容器に入れられている)と、b)本明細書に詳述されている疾患、障害またはその症状を含む、疾患、障害またはその症状を治療するための医薬組成物の使用方法を記載した説明書とを含む。
【0119】
当該容器は、前記医薬組成物を保持することができる任意の容器または他の密閉されたもしくは密閉可能な器であってもよい。例としては、瓶、分割されたか複数のチャンバーを有する保持容器(holders bottles)(ここで、各区画またはチャンバーは、単回投与量の前記組成物を含む)、分割されたホイルパケット(ここで、各区画は、単回投与量の前記組成物を含む)、または単回投与量の前記組成物を分注するディスペンサーが挙げられる。当該容器は、薬学的に許容される材料、例えば、紙または段ボール箱で作製された当該技術分野で知られているような任意の従来の形状または形態、ガラス製もしくはプラスチック製瓶または広口瓶、(例えば、異なる容器に移すために錠剤の「リフィル」を保持するための)再密閉可能な袋、あるいは治療スケジュールに従ってパックを押し出すための個々の投与量を含むブリスターパックであってもよい。用いられる容器は、収容される正確な剤形によって決定することができ、例えば、従来の段ボール箱は、液体懸濁液を保持するために一般に使用されることはない。単回投与製剤を市販するために、1つの梱包に2つ以上の容器を一緒に入れて使用することも可能である。例えば、錠剤を、瓶に収容し、次いでこれを箱の中に入れてもよい。好ましくは、当該容器は、ブリスターパックである。
【0120】
当該キットは、医師、薬剤師または対象のための情報および/または説明書をさらに含んでもよい。そのような記憶を補助するものとしては、投与計画の日数に対応する投与量を含む各チャンバーまたは区画上に印刷された数(そのように指定された錠剤またはカプセルを摂取しなければならない)、各チャンバーまたは区画上に印刷された一週間の曜日、あるいは同じ種類の情報を含むカードが挙げられる。
【0121】
本明細書で引用される全ての参考文献は、印刷物、電子媒体、コンピュータ可読記憶媒体または他の形態のいずれであるかに関わらず、その内容全体が参照により明示的に本明細書に組み込まれ、例としては、要約書、記事、定期刊行物、出版物、教材、論文、技術データシート、インターネットウェブサイト、データベース、特許、特許出願および公開特許公報が挙げられるが、これらに限定されない。
【実施例】
【0122】
実施例1:6−(2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)−9−[2−(4−メタンスルホニル−ピペラジン−1−イル)−エチル]−2−モルホリン−4−イル−9H−プリン
【化16】

工程1:1aのDMF溶液に、氷浴下でNaHを添加した。得られた混合物を0〜5℃で15分間撹拌し、1bを添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、蒸発させて、DMFを除去した。残留物をカラムクロマトグラフィ(PE:EA=8:1)で精製して、1c(1.74g、67.4%)を得た。
工程2:1d(599mg、3.57mmol)のDMF(20mL)溶液に、氷浴下でNaH(143mg、3.57mmol)を添加した。得られた混合物を0〜5℃で15分間撹拌し、1c(1.43g、3.57mmol)を添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、蒸発させて、DMFを除去した。残留物をカラムクロマトグラフィ(PE:EA=1:2)で精製して、1e(1.13g、収率:59.5%)を得た。
工程3:1eのモルホリン(10mL)溶液を80℃で1時間加熱し、真空蒸発させて、粗製1fを得、これを、さらに精製することなく次の工程で使用した。
工程4:1fのメタノール懸濁液に、HCl/EtO(2.5N、10mL)溶液を添加した。混合物を室温で一晩撹拌した後、蒸発させて、1gを得た。
工程5:1gおよびEtNのDCM混合物に、氷浴下でMsClを添加した。混合物を室温で2時間撹拌した後、蒸発させた。残留物をメタノールで粉砕し、濾過して、1(305mg、1eから78.1%)を得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3):
δ=2.67 (t, 4H), 2.77 (s, 3H), 2.88 (t, 2H), 3.22 (t, 4H), 3.80-3.90 (m, 8H),
4.29 (t, 2H), 7.27-7.63 (m, 3H), 7.74-7.77 (m, 1H), 7.91-7.94 (m, 2H). LC-MS
[M+H]+:562.1
【0123】
実施例2:2−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾール−1−イル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}エタン−1−オール
【化17】

工程1:1a(5.67g、30mmol)、2a(2.8g、45mmol)およびPhP(11.8g、45mmol)のTHF(200mL)混合物を、窒素雰囲気下、室温で1時間撹拌した後、DIAD(9.09g、45mmol)を氷浴下で滴下した。得られた混合物を室温で2日間撹拌した。溶媒を蒸発させて、残留物をカラムクロマトグラフィ(PE:EA:DCM=1:1:0.4)で精製して、2b(5.05g、収率:72%)を得た。
工程2:2b〜2cの手順は、1c〜1eの手順と同様であり、これにより、2c(47mg、13%)を得た。
工程3:2c〜2の手順は、1e〜1fの手順と同様であり、これにより、2(52mg、98%)を得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3):
δ=3.80 (brs, 1H), 3.84-3.87 (m, 8H), 4.08 (t, 2H), 4.34 (t, 2H), 7.38-7.44 (m,
3H), 7.72-7.75 (m, 1H), 7.88-7.92 (m, 2H). LC-MS [M+H]+:416.1.
【0124】
実施例3:6−(2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)−2−モルホリン−4−イル−9−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−9H−プリン
【化18】

工程1:DIAD(2.38g、11.9mmol、1.5当量)を、3a(1.22g、11.9mmol、1.5当量)、1a(1.5g、7.94mmol、1当量)およびPPh(3.12g,11.9mmol、1.5当量)のTHF(15mL)溶液に窒素下0℃で滴下した。次いで、混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィ(PE:EA=2:1)で精製して、3b(1.3g、収率:63%)を得た。
HNMR (CDCl3, 300MHz): 8.18(s,
1H), 4.81-4.72 (m, 1H), 4.21-4.15 (m,2H), 3.67-3.58 (m ,2H), 2.27-2.11 (m,4H).
ES-MS m/z: 273 (M++1).
工程2:1d(247mg、1.47mmol、1当量)のDMF(4mL)溶液に、0〜5℃のNaH(60%、70mg、1.76mmol、1.2当量)を数回に分けて添加した。得られた混合物を室温で30分間撹拌した。次いで、混合物に3b(400mg、1.47mmol、1当量)を数回に分けて添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィ(PE:EA=4:1)で精製して、3c(360mg、収率:61%)を灰色がかった白色の固体として得た。
HNMR
(CDCl3, 300MHz): 8.28 (s, 1H), 8.01 (s, 1H), 7.96-7.84 (m,2H), 7.70-7.63
(m, 2H), 4.88 (m, 1H), 4.24-4.20 (m, 2H), 3.71-3.63 (m, 2H), 2.33-2.24 (m, 2H),
2.29-2.21 (m,2H). ES-MS m/z: 405.5 (M++1).
工程3:3c(350mg、0.866mmol、1当量)、EtN(0.18ml,1.30mmol,1.5当量)およびモルホリン(75mg、0.866mmol、1当量)のEtOH(10mL)混合物を、70℃で一晩撹拌した。得られた固体を濾過によって回収して、化合物3(231mg、純度>95%、収率:59%)を白色の固体として得た。
HNMR (CDCl3,
300MHz): 7.94-7.91 (m, 1H), 7.87 (s, 1H), 7.75-7.71 (m, 1H), 7.62-7.37 (m ,3H),
4.66-4.58 (m, 1H), 4.23-4.17 (m, 2H), 3.90-3.81 (m, 8H), 3.68-3.53 (m, 2H), 2.33-2.24
(m, 2H), 2.17-2.1l (m, 2H). ES-MS m/z: 456 (M++1).
【0125】
実施例4:9−sec−ブチル−6−(2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)−2−モルホリン−4−イル−9H−プリン
【化19】

工程1:DIAD(2.5g、13mmol、1.2当量)を、4a(1mL、11mmol、1.1当量)、1a(2g、10mmol、1当量)およびPPh(3.3g、13mmol、1.2当量)のTHF(20mL)溶液に窒素下0℃で滴下した。次いで、混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィで精製して、4b(1.5g、収率:57%)を得た。
HNMR (CDCl3,
300MHz): 8.12 (s, 1H), 4.70 (m, 1H), 2.06 (m, 2H), 1.63 (d, 3H), 0.91 (t, 3H).
工程2:1d(300mg、1.8mmol、1当量)のDMF(4mL)溶液に、0〜5℃のNaH(60%、75mg、1.8mmol、1当量)を添加した。得られた混合物を0〜5℃で30分間撹拌し、混合物に4b(459mg、1.8mmol、1当量)を数回に分けて添加した。反応混合物を室温で週末の間撹拌した。溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィ(PE:EA=4:1)で精製して、4c(330mg、収率:50%)を無色の油として得た。
ES-MS
m/z: 377 (M++1)
工程3:4c(330mg、0.85mmol)のモルホリン(4mL)溶液を、80℃まで1時間加熱した。冷却後、溶媒を除去し、残留物をカラムクロマトグラフィ(EA:PE=1:4)で精製して、化合物4(150mg、収率:41%)を白色の固体として得た。
HNMR (CDCl3,
300MHz): 7.93(m, 1H), 7.83(s, 1H), 7.77(m, 1H), 7.45(m, 3H), 4.58(m, 1H),
3.89(m, 8H), 2.09(m, 2H), 1.65(d, 3H), 0.94(t, 3H). ES-MS m/z: 428 (M++1).
【0126】
実施例5:2−[6−(2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)−2−モルホリン−4−イル−プリン−9−イル]−プロパン−1−オール
【化20】

工程1:2,6−ジクロロプリン(3.9g、20mmol、1当量)、TsOH.HO(117mg、0.61mmol)および2H−3,4−ジヒドロピラン(4.6mL、50mmol、2.5当量)の酢酸エチル混合物を50℃まで2時間加熱した。混合物を濃縮し、カラムクロマトグラフィで精製して、5a(5.0g、収率:95%)を白色の固体として得た。ES-MS m/z:
273(M+H+).
工程2:NaH(60%、1.1g、45.8mmol、1.5当量)を、0℃の化合物1d(3.4g、20.1mmol、1.1当量)のDMF(50mL)溶液に数回に分けて添加し、混合物を室温で45分間撹拌した。混合物に化合物5a(5.0g、18.3mmol、1当量)を添加した。混合物を室温で週末にわたって撹拌した。水を添加し、混合物を酢酸エチルで抽出し、有機層を水で3回洗浄し、乾燥および濃縮し、カラムクロマトグラフィで精製して、5b(3.4g、収率:45.8%)を白色の固体として得た。
1H-NMR (CDCl3,
300MHz, ppm): δ=10.23(s, 1H), 7.72(d, 1H), 7.54(d, 1H). ES-MS m/z: 321(M+H+).
工程3:5b(3g、7.43mmol、1当量)、EtN(1.54mL、1.5当量)およびモルホリン(0.78g、1.2当量)のエタノール(150mL)混合物を、70℃まで一晩加熱した。溶媒を真空除去し、水を添加し、得られた沈殿物を回収し、エタノールで洗浄して、5c(3.3g、収率:97.6%)を得た。
1H-NMR (CDCl3,
300MHz, ppm): δ=8.02 (s, 1H), 7.92 (m, 1H), 7.72 (m, 1H), 7.41 (m, 3H), 5.67(m,
1H), 4.18 (m, 1H), 3.88 (m, 12H), 2.14 (m, 4H), 1.80 (m, 4H). ES-MS m/z:
456(M+H+).
工程4:5c(3.3g、7.25mmol,1.0当量)のHCl/EA(40mL)混合物を0℃で30分間撹拌した後、室温まで1.5時間温めた。混合物を濾過し、黄色の固体をNaHCO水溶液で洗浄して、5d(2.52g、収率:93.7%)を白色の固体として得た。
1H-NMR (DMSO-d6,
300MHz, ppm): δ=8.21 (s, 1H), 7.87 (m, 1H), 7.75 (m, 1H), 7.41 (m, 3H), 3.73(m,
12H). ES-MS m/z: 372(M+H+).
工程5:5d(2.52g、6.79mmol、1当量)、KCO(2.8g、20.37mmol、3当量)、2−ブロモプロピオン酸メチル(1.7g、10.19mmol、1.5当量)、CuI(778.4mg、4.07mmol、0.6当量)のCHCN(150mL)混合物を4時間還流加熱した。冷却後、混合物を濾過し、濾液を濃縮し、カラムクロマトグラフィで精製して、5e(1.8g、収率:57.9%)を黄色の固体として得た。
ES-MS
m/z: 458(M+H+).
工程6:LiAlH(179.2mg、4.72mmol、1.2当量)のTHF(45mL)懸濁液に、0〜5℃の5e(1.8g、3.93mmol、1当量)のTHF(5mL)溶液を添加し、混合物を1時間撹拌した。溶媒を真空濃縮し、残留物に氷浴下で水を添加した。混合物を酢酸エチルで抽出し、水相を濾過し、再度、酢酸エーテルで抽出し、有機層を一緒にし、乾燥および濃縮し、カラムクロマトグラフィで精製して、化合物5(1g、収率:59.3%)を明るい赤色の固体として得た。
1H-NMR (CDCl3,
300MHz, ppm): δ=7.92 (m, 2H), 7.75-7.38 (m, 4H), 4.72 (m, 1H), 4.08 (m, 2H),
3.84 (m, 8H), 3.28 (t, 1H), 1.67 (d, 3H). ES-MS m/z: 430(M+H+).
【0127】
実施例6:2−[6−(2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)−2−(8−オキサ−3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−プリン−9−イル]−プロパン−1−オール
【化21】

工程1:5b(202mg、0.5mmol、1当量)、8−オキサ−3−アザビシクロ[3.2.1]オクタン.HCl(85mg、0.57mmol、1.14当量)およびCsCO(489mg、1.5mmol、3当量)のDMF(6mL)混合物を80℃で2時間撹拌した。混合物を氷水に入れ、得られた固体を濾過によって回収し、水で洗浄して、化合物6a(170mg、収率:70%)を白色の固体として得た。
ES-MS
m/z: 482(M+H+).
工程2:6a(80mg、0.17mmol、1.0当量)のHCl/EA(3mL)混合物を0℃で30分間撹拌した。混合物を、NaHCO水溶液でpH8〜9に調整し、EAで3回抽出した。一緒にした有機相を乾燥し、濾過および濃縮して、6b(54mg、収率:81.8%)を得た。
ES-MS
m/z: 398(M+H+)
工程3:6b(54mg、0.13mmol、1当量)、KCO(56.3mg、0.39mmol、3当量)、2−ブロモプロピオン酸メチル(34.1mg、0.20mmol、1.5当量)、CuI(15.6mg、0.08mmol、0.6当量)のCHCN(5mL)混合物を一晩還流加熱した。冷却後、混合物を濾過し、濾液を濃縮し、分取TLCで精製して、6c(29mg、収率:44.2%)を得た。
ES-MS
m/z: 484(M+H+)
工程4:LiAlH(5mg、0.12mmol、2.0当量)のTHF(5mL)懸濁液に、0〜5℃の6c(29mg、0.06mmol、1当量)のTHF(0.5mL)溶液を添加し、混合物を同じ温度で1時間撹拌した。溶媒を真空濃縮し、残留物に氷浴下で水を添加した。混合物を酢酸エチルで3回抽出し、一緒にした有機相を乾燥および濃縮し、分取TLCで精製して、化合物6(7mg、収率:26%)を得た。
1H-NMR (CDCl3, 300MHz,
ppm): δ=7.91 (m, 2H), 7.75-7.38 (m, 4H), 4.74 (m, 1H), 4.51 (m, 2H), 4.22 (m,
2H), 4.05 (m, 2H), 3.32 (m, 2H), 1.97 (m, 2H), 1.81 (m, 2H), 1.67 (d, 3H). ES-MS
m/z: 456(M+H+).
【0128】
実施例7:4−{1−(2H−3,4,5,6−テトラヒドロピラン−4−イル)−4[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]ピラゾロ[5,4−d]ピリミジン−6−イル}モルホリンの塩酸塩
【化22】

工程1:7a(2g、20mmol)および7b(2.64g、20mmol)のメタノール(75mL)溶液を室温で1.5時間撹拌した。溶媒を蒸発させて、7cを得、これを次の工程で直接使用した。
工程2:NaBHCN(1.26g、20mmol)を、上で得られた7cの50%酢酸(70mL)溶液にゆっくりと添加した。混合物を1.5時間室温で撹拌し、1NのNaOHで中和し、DCMで抽出した。抽出物を飽和NaHCOで洗浄し、乾燥および蒸発させて、7d(4.3g、約100%)を白色の固体として得た。TFA(23g、0.2mol)を7dのDCM(30mL)溶液に添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、蒸発乾固して、7e(6.8g)を得、これを次の工程で直接使用した。
工程3:7f(1.5g、7.1mmol)のEtOH(50mL)溶液に、7e(6.8g、20mmol)のEtOH(30mL)溶液、次いで、−78℃のTEA(4.46mL、32mmol)を滴下した。得られた混合物を−78℃で30分間撹拌し、0℃まで30分間温め、その後、3NのHClでpHを5〜6に調整した。固体を濾過によって回収し、水および冷エタノールで洗浄し、乾燥して、7g(1.04g、60%)を得た。
工程4:1dのDMF溶液に、氷浴下でNaHを添加した。得られた混合物を0〜5℃で15分間撹拌し、7gを添加した。反応混合物を室温で一晩撹拌し、蒸発させて、DMFを除去した。残留物をカラムクロマトグラフィ(PE:EA=1:2)で精製して、7hを得た。
工程5:7h〜7の手順は、実施例3(630mg)の手順と同様であった。
1H-NMR (300MHz, DMSO-d6):
δ=1.89-1.94 (m, 2H), 2.12-2.24 (m, 2H), 3.57 (t, 2H), 3.70-3.87 (m, 8H),
3.99-4.04 (m, 2H), 4.86-4.94 (m, 1H), 7.33-7.67 (m, 4H), 7.92-7.94 (m, 2H).
LC-MS [M+H]+: 456.1.
【0129】
実施例8:4−{4−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−6−モルホリン−4−イルピラゾロ[5,4−d]ピリミジニル}ピペリジル4−メチルピペラジニルケトン
【化23】

工程1:8a〜8eの手順は、7a〜7gの手順と同様であり、これにより、8e(6.14g、8aから75.6%)を得た。
工程2:8e〜8gの手順は、1c〜1fの手順と同様であり、これにより、8g(1.04g、70eから71%)を得た。
工程3:8g(2.08g、3.54mmol)のメタノール(200mL)およびDCM(100mL)溶液に、800mgの10%Pd/Cを添加した。混合物を窒素で3回脱気し、水素雰囲気下で一晩水素化した。濾過によってPd/Cを除去した後、反応物を蒸発させ、乾燥して、8h(800mg、100%)を得た。
工程4:8h〜8の手順は、1g〜1の手順と同様であり、これにより、8(910mg、89%)を得た。
1H-NMR (300MHz, DMSO-d6):
δ=1.95-1.98 (m, 2H), 2.11-2.16 (m, 2H), 2.76 (d, 3H), 3.00-3.12 (m, 4H),
3.21-3.42 (m, 4H), 3.66-3.87 (m, 12H), 4.86-4.89 (m, 1H), 7.33-7.67 (m, 4H),
7.91-7.95 (m, 2H), 10.87 (brs, 1H). LC-MS [M+H]+: 581.2.
【0130】
実施例9:1−(2−{4−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−6−モルホリン−4−イルピラゾロ[5,4−d]ピリミジニル}エチル)−4−(メチルスルホニル)ピペラジン
【化24】

工程1:1b(4.85g、16.5mmol)および9a(16.5g、0.33mol)のエタノール(50mL)混合物を一晩還流加熱した後、高真空下で蒸発させた。残留物をエタノールに再溶解し、得られた沈殿物を濾別した。濾液を濃縮し、乾燥して、粗製9b(4.02g、約100%)を得た。
工程2:粗製9b〜9eの手順は、7e〜7の手順と同様であり、これにより、9e(940mg、9bから10.8%)を得た。
工程3:9e〜9hの手順は、1f〜1の手順と同様であり、これにより、9h(733mg、9eから81%)を得た。
工程4:9h(733mg、1.31mmol)のメタノール(10mL)懸濁液に、HCl/EtO(20mL)溶液を添加した。混合物を5時間撹拌した後、蒸発させて、9(880mg)を得た。
1H-NMR (300MHz, DMSO-d6):
δ=3.00 (s, 3H), 3.25-3.39 (m, 4H), 3.68-3.89 (m, 14H), 4.81 (t, 2H), 7.33-7.76
(m, 4H), 7.92-7.95 (m, 2H), 11.79 (brs, 1H). LC-MS [M+H]+: 562.2.
【0131】
実施例10:4−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピペリジル4−メチルピペラジニルケトン
【化25】

工程1:粗製1a〜10dの手順は、1a〜3の手順と同様であり、これにより、10d(884mg、1aから16.1%)を得た。
工程2:10d(884mg、1.59mmol)のDCM(15mL)溶液に、TFA(1.8mL)を添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、蒸発させ、残留物をDCMに再溶解し、NaHCO飽和水溶液で洗浄した。有機層を分離し、濃縮した。残留物をEA(3mL)で粉砕し、濾過して、10e(640mg、収率:88.5%)を得た。
工程3:10e〜10の手順は、1g〜1の手順と同様であり、これにより、10(205mg、70.6%)を得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3):
δ=2.13-2.21 (m, 4H), 2.32 (s, 3H), 2.42-2.45 (m, 4H), 2.98-3.07 (m, 2H),
3.34-3.37 (t, 4H), 3.81-3.94 (m, 10H), 4.52-4.61 (m, 1H), 7.25-7.61 (m, 3H),
7.72-7.75 (m, 1H), 7.86 (s, 1H), 7.90-7.93 (m, 1H). LC-MS [M+H]+:581.3.
【0132】
実施例11:[4−[6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾール−1−イル]−2−モルホリノ−プリン−9−イル]−1−ピペリジル]−(4−フルオロフェニル)メタノン
【化26】

10e(45mg、0.099mmol)のDMF(15mL)溶液に、11a(14mg、0.099mmol)、次いで、HATU(41mg、0.109mmol)およびDIEA(25mg、0.20mmol)を添加した。室温で2時間撹拌した後、溶媒を蒸発させ、残留物をメタノール(5mL)で再処理し、濾過して、11(25.3mg、収率:44.3%)を得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3):
δ=2.18-2.28 (m, 4H), 3.05-3.22 (m, 2H), 3.80-3.90 (m, 8H), 4.15-4.25 (m, 1H),
4.61-4.72 (m, 1H), 4.85-4.97 (m, 1H), 7.11-7.17 (m, 2H), 7.24-7.61 (m, 5H),
7.71-7.75 (m, 1H), 7.86 (s, 1H), 7.91-7.94 (m, 1H). LC-MS [M+H]+:
577.2.
【0133】
実施例12:[4−[6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾール−1−イル]−2−モルホリノ−プリン−9−イル]−1−ピペリジル]−(4−ピリジル)メタノン
【化27】

10e〜12の手順は、10e〜11の手順と同様であり、これにより、12(23.5mg、収率:42.5%)を得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3):
δ=2.15-2.35 (m, 4H), 2.96-3.05 (m, 1H), 3.29-3.38 (m, 1H), 3.81-3.91 (m, 9H),
4.61-4.73 (m, 1H), 4.98-5.04 (m, 1H), 7.25-7.61 (m, 5H), 7.71-7.75 (m, 1H),
7.85 (s, 1H), 7.91-7.94 (m, 1H), 8.74-8.76 (d, 2H). LC-MS [M+H]+:
560.2.
【0134】
実施例13:[4−[6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾール−1−イル]−2−モルホリノ−プリン−9−イル]−1−ピペリジル]−(3−ピリジル)メタノン
【化28】

10e〜13の手順は、10e〜11の手順と同様であり、これにより、13(48mg、収率:86.7%)を得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3):
δ=2.05-2.37 (m, 4H), 3.08-3.39 (m, 2H), 3.82-3.88 (m, 8H), 4.01-4.15 (m, 1H),
4.62-4.73 (m, 1H), 4.88-5.04 (m, 1H), 7.25-7.61 (m, 4H), 7.71-7.75 (m, 1H),
7.81-7.86 (m, 2H), 7.90-7.94 (m, 1H), 8.71-8.74 (m, 2H). LC-MS [M+H]+:
560.2.
【0135】
実施例14:(4−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピペリジル)−N,N−ジメチルカルボキサミド
【化29】

10e〜14の手順は、10e〜10の手順と同様であり、これにより、14(275mg、79.5%)を得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3):
δ=2.13-2.21 (m, 4H), 2.89 (s, 6H), 2.95-3.05 (m, 2H), 3.80-3.92 (m, 10H),
4.52-4.58 (m, 1H), 7.25-7.61 (m, 3H), 7.72-7.75 (m, 1H), 7.90 (s, 1H),
7.91-7.93 (m, 1H). LC-MS [M+H]+:526.2.
【0136】
実施例15:4−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピペリジンカルボン酸メチル
【化30】

10e〜15の手順は、10e〜10の手順と同様であり、これにより、15(254mg、49.6%)を得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3):
δ=2.07-2.24 (m, 4H), 2.97-3.06 (m, 2H), 3.76 (s, 3H), 3.80-3.88 (m, 8H),
4.34-4.51 (m, 2H), 4.52-4.62 (m, 1H), 7.25-7.61 (m, 3H), 7.71-7.76 (m, 1H),
7.84 (s, 1H), 7.89-7.95 (m, 1H). LC-MS [M+H]+:513.2.
【0137】
実施例16:4−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}−1−(メチルスルホニル)ピペリジン
【化31】

10e〜16の手順は、10e〜10の手順と同様であり、これにより、16(73mg、78.4%)を得た。
1H-NMR (300MHz, DMSO-d6):
δ=2.13-2.32 (m, 4H), 2.96-3.05 (m, 5H), 3.72-3.82 (m, 10H), 4.55-4.63 (m, 1H),
7.39-7.71 (m, 3H), 7.71-7.76 (m, 1H), 7.86-7.91 (m, 1H), 8.51 (s, 1H). LC-MS [M+H]+:
533.2.
【0138】
実施例17:(2R)−1−(4−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピペリジル)−2−ヒドロキシプロパン−1−オン
【化32】

工程1:10e〜17bの手順は、10e〜10の手順と同様であり、これにより、粗製17bを得た。17bを、さらに精製することなく次の工程で直接使用した。
工程2:工程1からの17bのTHF(5mL)溶液に、1NのLiOH(0.3mL)を添加した。室温で2時間撹拌した後、混合物を濃縮し、残留物をフラッシュカラム(DCM:MeOH=20:1)で精製して、17(80mg、収率:86.9%)を得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3):
δ=1.32-1.43 (m, 3H), 2.17-2.31 (m, 4H), 2.83-2.96 (m, 1H), 3.23-3.36 (m, 1H),
3.81-3.88 (m, 8H), 3.89-4.04 (m, 1H), 4.49-4.68 (m, 2H), 4.83-4.96 (m, 1H),
7.25-7.61 (m, 3H), 7.71-7.75 (m, 1H), 7.83 (s, 1H), 7.91-7.94 (m, 1H). LC-MS [M+H]+:
527.2.
【0139】
実施例18:4−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピペリジルピロリジニルケトン
【化33】

10e〜18の手順は、10e〜10の手順と同様であり、これにより、18(240mg、62.2%)を得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3):
δ=1.84 (t, 4H), 2.12-2.20 (m, 4H), 2.94-3.03 (m, 2H), 3.41 (t, 4H), 3.80-3.88
(m, 8H), 3.98-4.02 (m, 2H), 4.53-4.59 (m, 1H), 7.25-7.61 (m, 3H), 7.72-7.75 (m,
1H), 7.86 (s, 1H), 7.89-7.93 (m, 1H). LC-MS [M+H]+:552.3.
【0140】
実施例19:4−{6−[2−(ジフルオロメチル)−4−メトキシベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピペリジル4−メチルピペラジニルケトン
【化34】

10b〜19の手順は、10b〜10の手順と同様であり、これにより、19(140mg、10bから14.7%)を得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3):
δ=2.15-2.19 (m, 4H), 2.36 (s, 3H), 2.47-2.55 (m, 4H), 2.96-3.09 (m, 2H),
3.38-3.42 (t, 4H), 3.79-3.94 (m, 10H), 4.05 (s, 3H), 4.51-4.62 (m, 1H),
6.78-6.81 (m, 1H), 7.13-7.49 (m, 3H), 7.85 (s, 1H). LC-MS [M+H]+:
611.3.
【0141】
実施例20:4−{6−[2−(ジフルオロメチル)−4−メトキシベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}−1−(メチルスルホニル)ピペリジン
【化35】

19d〜20の手順は、10e〜10の手順と同様であり、これにより、20(85mg、73.4%)を得た。
1H-NMR (300MHz, DMSO-d6):
δ=2.13-2.30 (m, 4H), 2.93-3.08 (m, 5H), 3.63-3.77 (m, 10H), 4.02 (s, 3H),
4.55-4.61 (m, 1H), 6.94 (d, 1H), 7.25-7.68 (m, 3H), 78.49 (s, 1H). LC-MS [M+H]+:
563.2.
【0142】
実施例21:1−(9−(2H−3,4,5,6−テトラヒドロピラン−4−イル)−2−モルホリン−4−イルプリン−6−イル)−2−(ジフルオロメチル)−4−メトキシベンゾイミダゾール
【化36】

3b〜21の手順は、3b〜3の手順と同様であり、これにより、21(70mg、15.1%)を得た。
1H-NMR (300MHz, DMSO-d6):
δ=1.98-2.01 (m, 2H), 2.16-2.26 (m, 2H), 3.47-3.55 (m, 2H), 3.71-3.75 (m, 8H),
3.97-4.03 (m, 5H), 4.59-4.70 (m, 1H), 6.91 (d, 1H), 7.23-7.66 (m, 3H), 8.43 (s,
1H). LC-MS [M+H]+:486.2.
【0143】
実施例22:(3−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピロリジニル)−N,N−ジメチルカルボキサミド
【化37】

工程1:粗製1a〜22dの手順は、1a〜3の手順と同様であり、これにより、22d(743mg、1aから48.3%)を得た。
工程2:粗製22d〜22の手順は、10d〜10の手順と同様であり、これにより、22(346mg、22dから91.8%)を得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3):
δ=2.37-2.54 (m, 2H), 2.90 (s, 6H), 3.60-3.68 (m, 2H), 3.77-3.90 (m, 9H),
4.00-4.06 (m, 1H), 5.11-5.19 (m, 1H), 7.25-7.61 (m, 3H), 7.71-7.76 (m, 1H),
7.88 (s, 1H), 7.90-7.95 (m, 1H). LC-MS [M+H]+:512.2.
【0144】
実施例23:4−{3−(2H−3,4,5,6−テトラヒドロピラン−4−イル)−7−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−1,2,3−トリアゾロ[5,4−d]ピリミジン−5−イル}モルホリン
【化38】

工程1:0〜5℃の3a(7.13g、69.9mmol)のTHF(300mL)溶液に、PhP(21.35g、81.5mmol)およびDIAD(16.46g、81.5mmol)を添加した。反応混合物を室温まで3日間温めた後、蒸発させた。残留物をフラッシュカラム(PE:EA=10:1)で精製して、23a(5.02g、収率:56.5%)を得た。
工程2:エタノール(40mL)溶液に、ナトリウム(0.905g、39.4mmol)を添加し、得られた混合物を、固体のナトリウムが消失するまで還流加熱した。室温まで冷却した後、23a(5.0g、39.4mmol)および23b(3.31g、39.4mmol)を添加した。得られた混合物を5時間還流させ、室温まで冷却し、濾過し、エタノールで洗浄して、23c(5.08g、収率:61.1%)を得た。
工程3:ナトリウムエトキシド(4.11g、60.5mmol)のエタノール溶液に、23c(5.08g、24.1mmol)およびエトキシギ酸エチル(ethyl ethoxyformate)(9.94g、84.3mmol)を室温で40分間にわたって添加した。得られた混合物を90℃まで5時間加熱した後、室温まで冷却し、濾過して、23d(5.62g、収率:83%)を得た。
工程4:23d(600mg、2.53mmol)とPhPOCl(10mL)の混合物を、140℃で一晩加熱し、180℃でさらに8時間加熱した後、室温まで冷却し、水で失活させた。混合物をDCM(30mL×3)で抽出した。一緒にした有機相を無水MgSOで乾燥し、濃縮し、フラッシュカラム(PE:EA=4:1)で精製して、23e(579mg、収率:83.5%)を得た。
工程5:23e〜23の手順は、3b〜3の手順と同様であり、これにより、23(393mg、23eから44.9%)を得た。
1H-NMR (300MHz, CDCl3):
δ=2.11-2.18 (m, 2H), 2.53-2.67 (m, 2H), 3.62-3.69 (m, 2H), 3.82 (t, 4H), 3.98
(t, 4H), 4.92-5.02 (m, 1H), 7.42-7.61 (m, 3H), 7.85-7.96 (m, 2H). LC-MS [M+H]+:457.2.
【0145】
生化学アッセイ(例)
【0146】
Fabian et al. (2005) Nature Biotechnology, vol. 23, p.329およびKaraman et al. (2008) Nature Biotechnology, vol. 26, p.127に記載されている方法でアッセイを行った。
【0147】
キナーゼアッセイ。大部分のアッセイでは、キナーゼタグをつけたT7ファージ株を、BL21株由来のE.coli宿主中で、24ウェルブロックで同時に培養した。E.coliを対数期まで培養し、凍結ストックからのT7ファージに感染させ(感染多重度:約0.1)、溶菌するまで(約90分)、32℃で振盪しながらインキュベートした。溶菌液を遠心分離し(6,000×g)、濾過して(0.2mm)、細胞残屑を除去した。残留したキナーゼをHEK−293細胞中で産生し、次いで、qPCR検出のためにDNAタグをつけた。ストレプトアビジンでコーティングした電磁ビーズを、室温で30分間ビオチン化小分子リガンドで処理して、キナーゼアッセイのための親和性樹脂を生成した。結合したビーズを過剰なビオチンでブロックし、ブロッキング緩衝液(SeaBlock(Pierce社製)、1%BSA、0.05%Tween20、1mMのDTT)で洗浄して未結合リガンドを除去し、非特異的ファージ結合を減少させた。キナーゼ、結合した親和性ビーズおよび試験化合物を1倍の結合緩衝液(20%SeaBlock、0.17倍のPBS、0.05%Tween20、6mMのDTT)中で一緒にすることによって結合反応を組み立てた。試験化合物を100%DMSO中の40倍の原液として調製し、直接希釈してアッセイ試料にした。全ての反応を0.04mlの最終体積で、ポリプロピレン製384ウェルプレートで行った。アッセイプレートを室温で1時間振盪しながらインキュベートし、親和性ビーズを洗浄緩衝液(1倍のPBS、0.05%Tween20)で洗浄した。次いで、このビーズを溶出緩衝液(1倍のPBS、0.05%Tween20、0.5mMの非ビオチン化親和性リガンド)に再懸濁し、室温で30分間振盪しながらインキュベートした。溶出液中のキナーゼ濃度をqPCRで測定した。
【0148】
Ambit Biosciences社(米国カリフォルニア州サンディエゴ)において、上記アッセイを用いて化合物を試験した。一般に、本発明の化合物は、ΡΙ3Κδに対して驚くべき程に強力で選択的な阻害を示したが(大部分の化合物のIC50は、1μΜ未満であり、それ以外では30nM未満である)、他のイソ型に対してはより低い阻害活性を示した(ΡΙ3Κα、β、γおよびmTORに対して100nM超)。実施例2は、ΡΙ3Κδに対して驚くべき程に強力で選択的な阻害を示したが(IC50が100nM未満)、他のイソ型に対してはより低い阻害活性を示した(ΡΙ3Κα、β、γおよびmTORに対して100nM超)。対照的に、メチル置換を有する対応する化合物(2d)は、最大100nMで、ΡΙ3Κδに対して有意な阻害を示さなかった。
【化39】

このアッセイでは、メトキシで置換された化合物のいくつか(例えば、#21)も、100nM超において、δだけでなく他のPI3Kイソ型(αおよびγ)の強力な阻害を示した。
【0149】
p110α、p110β、p110γおよびPI3KC2βに対するシンチレーション近接アッセイ(SPA)
【0150】
GSTタグを付けたウシp110α、GSTタグを付けたヒトp110β、Hisタグを付けたp110γ、およびGluタグを付けたPI3KC2βをSf9/バキュロウイルス系で発現させ、融合タンパク質として精製する。試験化合物をDMSO(0.5μL)に溶解し、各酵素を25μLの緩衝液(p110α、β、γアッセイ:20mMのTris−HCl(pH7.4)、160mMのNaCl、2mMのジチオスレイトール、30mMのMgCl、0.4mMのEDTA、0.4mMのEGTA、PI3KC2βアッセイ:20mMのTris−HCl(pH7.4)、160mMのNaCl、2mMのジチオスレイトール、5mMのMgCl、15mMのCaCl、0.4mMのEDTA)中で混合する。次いで、この混合物に、1μgのPI(Sigma社製)、0.125μCi[γ−33P]ATP(Amersham Pharmacia社製)、および2μMの放射標識していないATP(Sigma社製)を加えた5mMのTris−HCl(25μL)を添加して反応を開始する。反応を室温で120分間進行させた後、150μLのPBSに入れた0.2mgのコムギ胚芽凝集素でコーティングしたSPAビーズ(Amersham社製)を添加する。この混合物を5分間放置した後、300gで2分間遠心分離する。TopCount(Packard社製)を用いて放射能を測定する。
【0151】
細胞アッセイ:
【0152】
増殖アッセイ
【0153】
細胞(A375、HeLa、A549、MCF7およびMCF7 ADR-res)を10%ウシ胎仔血清およびストレプトマイシン/ペニシリンを含むDMEM中で培養する。試験化合物の溶液(1μL)を96ウェル培養皿に滴下し、次いで、細胞(1×10)/100μLを添加する。46時間のインキュベーション後、10μLのアラマーブルー試薬を各ウェルに添加する。2時間後、Fluostarを用いて544/590nmでの励起/蛍光波長を測定する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式IVaまたはIVbの化合物:
【化1】

あるいは、その塩、プロドラッグ、そのプロドラッグの塩、その水和物、溶媒和物または多形体(式中、XはNまたはCRであり、AおよびBはそれぞれ独立して、CH、N、NH、OまたはSであり、ここで、AおよびBは、それらが結合する炭素原子と一緒になって5員もしくは6員のアリールまたはヘテロアリールを形成し、それらは、Z、ZおよびZで任意に置換されていてもよく、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはヘテロシクロであり、それぞれが、Z、ZおよびZで任意に置換されており、
、ZおよびZはそれぞれ独立して、
(1)水素またはZ(ここで、Zは、(i)アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキル、(ii)アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルから選択される1つまたは複数の基で置換された(i)の基、または(iii)以下の基(2)〜(12)のうちの1つまたは複数で置換された(i)または(ii)の基である)であるか:
(2)−OHまたは−OZ16
(3)−SHまたは−SZ16
(4)−C(O)H、C(O)16、C(O)O−Z16、−C(O)NZ1718、−C(O)C(O)NZ1718または−O−C(O)16(式中、qは独立して1または2である)、
(5)−SOH、−S(O)16または−S(O)NZ1718
(6)ハロ、
(7)シアノ、
(8)ニトロ、
(9)−Z−NZ1718
(10)−Z−N(Z18)−Z−NZ1920
(11)オキソ、または
(12)−O−C(O)−Z16
あるいは、
(13)Z、ZおよびZのうちのいずれか2つは一緒になって、アルキレン、アルケニレン、アリール、ヘテロアリールまたはヘテロシクロであってもよく、それらが結合する原子と一緒になって3〜8員の飽和もしくは不飽和環を形成し、
およびZはそれぞれ独立して、
(1)単結合、
(2)−Z11−S(O)−Z12−、
(3)−Z11−C(O)−Z12−、
(4)−Z11−O−Z12−、
(5)−Z11−S−Z12−、
(6)−Z11−O−C(O)−Z12−、または
(7)−Z11−C(O)−O−Z12であり、
11およびZ12はそれぞれ独立して、
(1)単結合、
(2)アルキレン、
(3)アルケニレン、または
(4)アルキニレンであり、
各Z16は独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、それぞれが、以下の基のうちの1つまたは複数で任意に置換されており:
(1)水素またはアルキル、
(2)−OHまたは−OZ21
(3)−SHまたは−SZ21
(4)−C(O)H、C(O)21、−C(O)NZ1718、−C(O)C(O)NZ1718または−O−C(O)21(式中、qは独立して1または2である)、
(5)−SOH、−S(O)21または−S(O)NZ1718
(6)ハロ、
(7)シアノ、
(8)ニトロ、
(9)−Z−NZ1718
(10)−Z−N(Z18)−Z−NZ1920
(11)オキソ、または
(12)−O−C(O)−Z21
各Z17は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z18は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z19は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z20は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z21は独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルアリール、シクロアルキルアリール、ヘテロシクロまたはヘテロシクロアルキルであり、
各Z22は独立して、
(1)水素、
(2)−OHまたは−OZ21
(3)−SHまたは−SZ21
(4)−C(O)H、C(O)21、−C(O)NZ2121、−C(O)C(O)NZ2121または−O−C(O)21(式中、qは1または2である)、
(5)−SOH、−S(O)21または−S(O)NZ2121
(6)ハロ、
(7)シアノ、
(8)ニトロ、
(9)−Z−NZ2121
(10)−Z−N(Z21)−Z−NZ2121
(11)オキソ、または
(12)−O−C(O)−Z21であり、
ここで、Z17、Z18、Z19またはZ20は、1、2または3つの独立したZ22で置換されていてもよく、
17およびZ18またはZ19およびZ20は、それらが結合する窒素原子と一緒になって複素環であってもよく、これは未置換であるか、1、2または3つの独立したZ22で置換されており、
18、Z19またはZ20のうちのいずれか2つは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、3〜12員の飽和もしくは不飽和の単環、二環もしくは三環式の複素環であってもよく、これは未置換であるか、1、2または3つの独立したZ22で置換されている)。
【請求項2】
前記化合物が式IVcの化合物:
【化2】

(式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはヘテロシクロであり、それぞれが、Z、ZおよびZで任意に置換されている)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記化合物が式IVdの化合物:
【化3】

(式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはヘテロシクロであり、それぞれが、Z、ZおよびZで任意に置換されている)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物が式IVeの化合物:
【化4】

(式中、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはヘテロシクロであり、それぞれが、Z、ZおよびZで任意に置換されている)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記化合物が式IVfの化合物:
【化5】

(式中、XはNまたはCRであり、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはヘテロシクロであり、それぞれが、Z、ZおよびZで任意に置換されている)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物が式IVgの化合物:
【化6】

(式中、XはNまたはCRであり、R、R、RおよびRは、それぞれ独立して、水素、アルキル、アルコキシ、シクロアルキルまたはヘテロシクロであり、それぞれが、Z、ZおよびZで任意に置換されている)である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
XがNである、請求項1、5または6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】
前記化合物が以下の化合物のうちの1つである、請求項1に記載の化合物:
2−(2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)−6−(4−メタンスルホニル−ピペラジン−1−イルメチル)−4−モルホリン−4−イル−チエノ[3,2−d]ピリミジン、
6−(2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)−4−モルホリン−4−イル−1−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン、
2−(2−ジフルオロメチル−4−メトキシ−ベンゾイミダゾール−1−イル)−6−(4−メタンスルホニル−ピペラジン−1−イルメチル)−4−モルホリン−4−イル−チエノ[3,2−d]ピリミジン、または
6−(2−ジフルオロメチル−4−メトキシ−ベンゾイミダゾール−1−イル)−4−モルホリン−4−イル−1−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン。
【請求項9】
前記化合物が以下の化合物のうちの1つである、請求項1に記載の化合物:
【化7】

【請求項10】
前記化合物が以下の化合物のうちの1つである、請求項1に記載の化合物:
6−(2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)−9−[2−(4−メタンスルホニル−ピペラジン−1−イル)−エチル]−2−モルホリン−4−イル−9H−プリン、
2−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾール−1−イル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}エタン−1−オール、
6−(2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)−2−モルホリン−4−イル−9−(テトラヒドロ−ピラン−4−イル)−9H−プリン、
9−sec−ブチル−6−(2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)−2−モルホリン−4−イル−9H−プリン、
2−[6−(2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)−2−モルホリン−4−イル−プリン−9−イル]−プロパン−1−オール、
2−[6−(2−ジフルオロメチル−ベンゾイミダゾール−1−イル)−2−(8−オキサ−3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクタ−3−イル)−プリン−9−イル]−プロパン−1−オール、
4−{1−(2H−3,4,5,6−テトラヒドロピラン−4−イル)−4[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]ピラゾロ[5,4−d]ピリミジン−6−イル}モルホリン、または
4−{4−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−6−モルホリン−4−イルピラゾロ[5,4−d]ピリミジニル}ピペリジル4−メチルピペラジニルケトン。
【請求項11】
前記化合物が以下の化合物のうちの1つである、請求項1に記載の化合物:
1−(2−{4−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−6−モルホリン−4−イルピラゾロ[5,4−d]ピリミジニル}エチル)−4−(メチルスルホニル)ピペラジン、
4−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピペリジル4−メチルピペラジニルケトン、
[4−[6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾール−1−イル]−2−モルホリノ−プリン−9−イル]−1−ピペリジル]−(4−フルオロフェニル)メタノン、
[4−[6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾール−1−イル]−2−モルホリノ−プリン−9−イル]−1−ピペリジル]−(4−ピリジル)メタノン、
[4−[6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾール−1−イル]−2−モルホリノ−プリン−9−イル]−1−ピペリジル]−(3−ピリジル)メタノン、
(4−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピペリジル)−N,N−ジメチルカルボキサミド、
4−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピペリジンカルボン酸メチル、
4−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}−1−(メチルスルホニル)ピペリジン、
(2R)−1−(4−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピペリジル)−2−ヒドロキシプロパン−1−オン、
4−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピペリジルピロリジニルケトン、
4−{6−[2−(ジフルオロメチル)−4−メトキシベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピペリジル4−メチルピペラジニルケトン、
4−{6−[2−(ジフルオロメチル)−4−メトキシベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}−1−(メチルスルホニル)ピペリジン、
1−(9−(2H−3,4,5,6−テトラヒドロピラン−4−イル)−2−モルホリン−4−イルプリン−6−イル)−2−(ジフルオロメチル)−4−メトキシベンゾイミダゾール、
(3−{6−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−2−モルホリン−4−イルプリン−9−イル}ピロリジニル)−N,N−ジメチルカルボキサミド、
4−{3−(2H−3,4,5,6−テトラヒドロピラン−4−イル)−7−[2−(ジフルオロメチル)ベンゾイミダゾリル]−1,2,3−トリアゾロ[5,4−d]ピリミジン−5−イル}モルホリン。
【請求項12】
対象における疾患の治療方法であって、前記対象に請求項1に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項13】
対象における疾患の治療方法であって、前記対象に請求項1に記載の化合物を含む組成物を投与することを含む方法。
【請求項14】
前記疾患がPI3キナーゼによって媒介される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
対象における疾患の治療方法であって、前記対象に請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む方法。
【請求項16】
対象における疾患の治療方法であって、前記対象に請求項1、2、3、4、5、6、7、8、9、10または11のいずれか1項に記載の化合物を含む組成物を投与することを含む方法。
【請求項17】
前記疾患はPI3Kδによって媒介される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記疾患はPI3Kイソ型のうちの1つまたは複数によって媒介される、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記疾患は、癌、免疫異常、心血管疾患、ウイルス感染、炎症、代謝/内分泌疾患および神経障害である、請求項16に記載の方法。

【公表番号】特表2013−505965(P2013−505965A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531120(P2012−531120)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/050702
【国際公開番号】WO2011/041399
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(512077228)エックスカバリー ホールディング カンパニー エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】