説明

PTPカセット

【課題】PTP包装剤8の材質や剛性さらには端部状態の影響を受け難くて適用範囲が広く高速排出も可能なPTPカセット10を実現する。
【解決手段】PTP包装剤8を各々は横にして縦に積み重ね収納する整列収納部11と、最下のPTP包装剤8に整列収納部11の内底で作用部16を接触させて前進させる順次排出機構15〜19とを備えていて、PTP包装剤8を下から順に横送りして排出口14から前方へ排出するPTPカセット10において、排出口14から出てきたPTP包装剤8を突起部8cは避けて上下から挟んで前送りする排出ローラ対19が排出口14より前の所に設けられており、横送り初動時には作用部16が突起部8cに当接して前進することでPTP包装剤8が加速され、横送り初動後は排出ローラ対19にてPTP包装剤8が定速送りされ、作用部16の内底への復帰が突起部形成面8bの下で行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、PTP包装した薬剤またはそれと等価な薬剤(以下、PTP包装剤等と呼ぶ)を整列収納して順次排出するPTPカセットに関し、詳しくは、PTP包装剤等を積み重ねて多数保持するとともに下から順に長手方向へ横送りして排出するPTPカセットに関する。なお、PTPカセットは、一体物に纏められていることもあれば、着脱式の複数部分たとえば整列収納部と順次排出機構とに分かれていることもある。
【背景技術】
【0002】
片面8aが平坦で他面8bに薬剤を閉じ込めたポケット(突起部)8cが縦横に形成されているPTP包装剤8を対象として(図8参照)、それぞれを横向きの姿勢にしたうえで積み重ねて多数保持するとともに下から順に長手方向へ横送りして順次排出するようになったPTPカセットが、幾つか知られている(例えば特許文献1〜6参照)。
何れのPTPカセットも、収納空間を画する箱状の整列収納部と、その下に固定の又は着脱式の順次排出機構とを備えており、そのうち整列収納部は、PTP包装剤等を各々は横にしたうえで内底部材(収納空間底部材)の上面に載せて縦に積み重ねて整列収納させた状態で保持するようになっており、順次排出機構は、整列収納部に保持されているPTP包装剤等を下から順に横送りして前方へ排出するようになっている。
【0003】
整列収納部は、何れのカセットでも構成が似ており、整列状態維持のため内底部材の上の収納空間が前板と両側板で囲まれているが、PTP包装剤等の補充のため、上面が解放されている。また、必須ではないが、補充作業容易化のため後背面まで解放されたり、整列状態安定化のため収納空間の内底部材が少し前下がりに傾けられたりしている。さらに、横送り排出のため、前板のうち内底部材の前端のところが切り欠かれて、排出口が形成されており、排出確認のため排出口の下方には排出センサが置かれている。
【0004】
順次排出機構は、PTP包装剤等のうち最下のものに接触作用する可動部材と、この可動部材を運動させて最下のPTP包装剤等を前送りさせる駆動機構とを備えている点は、何れのカセットにも共通しているが、可動部材がPTP包装剤8の平坦面8aに摩擦作用する回転輪であって駆動機構がその回転輪を収納空間の内底で自転させる回転駆動機構になっている平坦面摩擦タイプと(特許文献1〜2参照)、可動部材がPTP包装剤8の後端8dに当接作用する引掛部材や押出部材であって駆動機構がその可動部材を内底部材に沿って前送りする機構になっている後端当接タイプとがある(特許文献3〜6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−75989号公報(図3)
【特許文献2】特開2008−301870号公報
【特許文献3】特開2009−131560号公報
【特許文献4】特開2009−165675号公報
【特許文献5】特開2009−297466号公報
【特許文献6】特開2010−017372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来のPTPカセットでは、タイプによって一長一短がある。具体的には、平坦面摩擦タイプは、立てておけないほど柔らかいPTP包装剤等であっても逐次排出できるという利点を持つ一方で、滑りやすいPTP包装剤等には適さないし、高速化が難しい。これに対し、後端当接タイプは、シートのカール性の大きなPTP包装剤等でも迅速に順次排出できるという利点を持つ一方で、腰のないPTP包装剤等や,端部が曲がったり潰れたりして可動部材との当り具合の悪いPTP包装剤等にはあまり適さない。このため、両者の利点を併せ持った安価なPTPカセットの開発が望まれる。
そこで、PTP包装剤等の材質や剛性さらには端部状態の影響を受け難くて適用範囲が広く高速排出も可能なPTPカセットを実現することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のPTPカセットは(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、片面が平坦で他面には突起部が形成されているPTP包装の薬剤またはそれと等価な薬剤を各々は横にしたうえで縦に積み重ねて整列収納させた状態で保持する整列収納部と、前記薬剤のうち最下のものに前記整列収納部の内底で作用部を接触させて前進させる順次排出機構とを備えていて、前記薬剤を下から順に横送りして前記整列収納部の排出口から前方へ排出するPTPカセットにおいて、前記薬剤のうち前記排出口から出てきたものを前記突起部は避けて上下から挟んで前送りする排出ローラ対が前記排出口より前の所に設けられており、前記薬剤の横送りの初動時に前記薬剤が前記収納空間の内底で前記他面を下にしていれば前記作用部が前記薬剤の前記突起部に当接して前進することにより前記薬剤が加速され、前記薬剤の横送りの初動後は前記排出ローラ対にて前記薬剤が定速送りされるようになっていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明のPTPカセットは(解決手段2)、上記解決手段1のPTPカセットであって、前記作用部が、前記薬剤の横送りの完遂前に前記内底を迂回しながら後退して、前記薬剤の前記突起部のうち最後尾のものが通過するのを待ち、通過後は直ちに前記薬剤の前記他面の下で前記内底に復帰するようになっていることを特徴とする。
【0009】
さらに、本発明のPTPカセットは(解決手段3)、上記解決手段1,2のPTPカセットであって、前記作用部が、複数設けられていて、空間および時間のうち何れか一方または双方において前記薬剤の横送りを分担し合うようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このような本発明のPTPカセットにあっては(解決手段1)、作用部が突起部に当接して薬剤を横送りするようになっているので、シートのカール性の大きなPTP包装剤等でも迅速に順次排出できるという後端当接タイプの利点が引き継がれている。しかも、当接タイプであっても、当接部位が、薄い平板状で変形しやすいシート端部でなく、端部より内寄りの所に形成されているうえ小さな立体形状で変形しにくい突起部になっているので、腰の強くないPTP包装剤等であっても逐次排出できるという平坦面摩擦タイプのものだった利点も取り込んでいる。また、平坦面を下にしたPTP包装剤等は排出しないので、そのような誤収納に起因する不所望な二枚出し等も防止される。
【0011】
さらに、薬剤が排出口から出た部分まで排出ローラ対で能動的に前送りされるので、腰のないPTP包装剤等でも安定して確実にカセット外へ送り出すことができる。しかも、上述したように排出口から出てくる薬剤が確実に一枚だけに絞り込まれているので、それを排出ローラ対で上下から挟むことに不都合はなく、PTP包装剤等を排出ローラ対で上下から挟みつつ引き込むことにより、PTP包装剤等の曲がりや捻れといった変形が抑制されるので、薬剤排出が安定かつ円滑に行われることとなる。
【0012】
そのうえ、摩擦負荷や慣性負荷の大きい横送り初動時の加速は作用部と突起部との当接による協動に委ねる一方、摩擦負荷や慣性負荷が小さくなってからはその状態が安定維持されるよう定速送りに移行するとともに、その定速送りは排出ローラ対とシート部との平坦面摩擦による協動に委ねたことにより、作用部の責任作業が軽減されて、作用部の設置個数や動作制御の自由度が増すため、より多様な形状の薬剤に対して部品交換なしで同一カセットを使用できるうえ、作用部の個数を減らすことも可能となる。
したがって、この発明によれば、PTP包装剤等の材質や剛性さらには端部状態の影響を受け難くて適用範囲が広く高速排出も可能なPTPカセットを実現することができる。
【0013】
また、本発明のPTPカセットにあっては(解決手段2)、作用部の動作制御の自由度が増したことを受けて、特に薬剤の横送りが排出ローラ対での定速送りに移行した後は作用部が横送り支援のため突起部の当接送りを継続や断続してから内底に復帰しても良くそのような横送り支援を省いて単に復帰しても良くなっていることを受けて、薬剤のシート部の後縁部に潜り込めるタイミングを見計らって内底に復帰するようになっている。すなわち、作用部が一枚の薬剤の横送りへの関与を終えた後は薬剤との干渉を避けるために内底を迂回しながら後退するが、その作用部の後退を薬剤の横送りの完遂前に行っておき、薬剤の突起部のうち最後尾のものが作用部の上を通過するのを待って、通過したら直ちに薬剤の他面下で内底に復帰することにより、薬剤後端のシート部に潜り込むのである。
【0014】
このように作用部の内底復帰が横送り中の薬剤のシート部の下でなされるようにしたことにより、次の薬剤が内底に落下して来るより前に確実に作用部が次の薬剤に対する好適な初期位置に着くことができるので、より多様な形状の薬剤に対して部品交換なしで同一カセットを使用できるという上記作用効果が高まるうえ、薬剤の横送りの速度の選択自由度も高まることとなる。
したがって、この発明によれば、PTP包装剤等の材質や剛性さらには端部状態の影響を受け難くて適用範囲がより広く高速排出も低速排出も可能なPTPカセットを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例1について、PTPカセットの構造を示し、(a)が外観斜視図、(b)が内部透視図、(c)が縦断面図である。
【図2】(a)がPTP包装剤を収納して排出態勢を整えたカセット要部の縦断面図、(b)〜(c)が何れもPTP包装剤排出時のカセット要部の縦断面図である。
【図3】(a)〜(c)が何れもPTP包装剤排出時のカセット要部の縦断面図である。
【図4】(a),(b)、何れも、誤って上下反転収納されたPTP包装剤が最下に来たときのカセット要部の縦断面図である。
【図5】本発明の実施例2について、(a)〜(e)、何れも、回転機構と作用部の斜視図である。
【図6】本発明の実施例3について、PTPカセットの構造を示し、(a)が外観斜視図、(b)が内部透視図、(c)が縦断面図である。
【図7】本発明の実施例4について、(a)〜(c)、何れも、PTP包装剤とそれを支承する条材との斜視図である。
【図8】PTP包装剤の外観を示し、(a)が突起部を上にした状態の側面図、(b)が突起部形成面の斜視図、(c)が突起部を下にした状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
このような本発明のPTPカセットについて、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜4により説明する。
図1〜4に示した実施例1は、上述した解決手段1〜3(出願当初の請求項1〜3)を総て具現化したものであり、図5に示した実施例2や、図6に示した実施例3、図7に示した実施例4は、その変形例である。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具や,ヒンジ等の連結具,電動モータ等の駆動源,ギヤ等の伝動部材,モータドライバ等の電気回路,コントローラ等の電子回路などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0017】
本発明のPTPカセットの実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)がPTPカセット10の外観斜視図、(b)が内部透視図、(c)が縦断面図である。
【0018】
このPTPカセット10は、PTP包装剤8などの薬剤を各々は横にしたうえで縦に積み重ねて整列収納させた状態で保持する箱体11(整列収納部)と、その中の薬剤を下から順に横送りして前方へ排出する順次排出機構15〜19とを具えたものであり、PTP包装剤8を横にするときに平坦面8a(片面)を上側にし薬剤収納用の突起部8c(ポケット)のある突起部形成面8b(他面)を下側にし、その横向き状態で箱体11の収納空間に収めたPTP包装剤8を逐次排出するようになっている。
【0019】
箱体11は、整列収納のため鉛直な前板と左右の鉛直な側板と水平な外底板とを具えているが、補充容易化のため上面と後背面は解放されている。箱体11の前面には、補充時の薬品確認やバーコード入力作業が容易かつ的確に行えるよう、例えばPTP包装剤8の品名や識別コードを印刷したラベル12が貼り付けられている。箱体11の前面の下部には、PTP包装剤8が順次排出されるときに通過する排出口14が開口形成されており、排出口14の上側部分には横幅のほぼ全域に亘って排出口高さを調整しうる調整板13が垂れ下がっている。なお、最下のPTP包装剤8を載せて下から支える内底部材は、箱体11そのものには無く、順次排出機構15〜19の上部が兼用している。
【0020】
順次排出機構15〜19は、回転機構15と作用部16と排出センサ17と条材18と排出ローラ対19と図示しない電動モータと伝動部材とコントローラ(制御回路,制御装置)とを具えたものであり、最も下の外底板の上に設けられて、箱体11の収納空間の下に位置し、箱体11の内底で最下のPTP包装剤8を回転機構15と条材18にて支承するとともに、作用部16を最下のPTP包装剤8の突起部8cに接触させて前進させるようになっている。
【0021】
回転機構15は、左右に延びた水平な回転軸15aと、回転軸15aから径方向に延びて作用部16を支持する旋回基部15bと、回転軸15aと同心で径は太いが左右方向・軸方向の長さが短い円板状の円板部15cとを具えたものであり、回転軸15aが、ギヤやベルトなどの適宜な伝動部材を介して電動モータの駆動によって、上側を前進させる回転方向で、軸回転させられるようになっている。また、この回転機構15は、旋回基部15bの中央から作用部16の先端までの半径と円板部15cの半径とがほぼ等しくて、回転軸15aが軸回転するとそれに随伴して作用部16が鉛直面に沿って旋回するようになっている。この例では、排出口14の後ろで排出口14の近くに一個だけ回転機構15が設けられている。
【0022】
さらに、この回転機構15では、回転軸15aと旋回基部15bと円板部15cとが一体化しているが、回転軸15aの軸回転に伴って作用部16が旋回するのであれば、分離されていても良い。また、この旋回基部15bは、細い菱形の角部を丸めた形状で、両端に一つずつ合計で二つの作用部16を支持している。さらに、そのような旋回基部15b及び作用部16,16が円板部15cの左右両側に設けられているが、この配置は、PTP包装剤8の突起部形成面8bにおいて突起部8cが横二列で配置されていることに基づいている。そのうち左右に位置する作用部16,16はPTP包装剤8の横送りを空間において分担し合うものとなっており、旋回基部15bの両端に位置する作用部16,16はPTP包装剤8の横送りを時間において分担し合うものとなっている。
【0023】
作用部16は、そのような形状と配置に基づき、突起部形成面8bを下にしてPTP包装剤8を載せると、旋回中の最上位置やその近傍では、PTP包装剤8の突起部形成面8bにおいて前後に並んだ突起部8cと突起部8cとの間隙に入りうるものとなっている。また、円板部15cは、PTP包装剤8の突起部形成面8bにおいて左右に並んだ突起部8cと突起部8cとの間隙に入るものとなっている。さらに、回転機構15の最上位置や,作用部16の旋回中の最上位置,条材18の上面,排出ローラ対19の間を前後に連ねた仮想線がこの例ではほぼ水平になっているが、この仮想線が側面視では排出口14の下に位置していて箱体11の収納空間の内底を画するものとなり、作用部16が旋回中の最上位置では箱体11の収納空間の内底で前進するものとなっている。
【0024】
排出センサ17は、例えば反射式の光学センサからなり、この例では排出口14や排出ローラ対19の斜め下方で外底板の上面に設けられて、検出方向を上に向けている。そして、上方にPTP包装剤8が有って反射光が検出されるか或いは上方にPTP包装剤8が無くて反射光が検出されないかに応じてオンオフ信号を出力するものである。この信号に基づいて図示しない上述のコントローラが、最下のPTP包装剤8が前方へ横送りされて排出口14から出てくると、その最下PTP包装剤8の排出開始を検知し、その最下PTP包装剤8が排出口14から抜け落ちて上方から前方へ去ると、排出完了を検知するようになっている。
【0025】
条材18は、丸棒を図示したが外面が円滑であれば円筒やアングル材であっても良く、外底板や支柱などに取り付けられる基端部は別として、先端部や中間部は、箱体11の収納空間の内底で、長手方向を前後に向けている。そのような条材18の先端部の上面が上述したように仮想線の後方部分と重なっているので、突起部形成面8bを下にしてPTP包装剤8を箱体11の収納空間の内底に置くと、条材18のうち先端部を含む部分がPTP包装剤8の突起部8cの間に収まって、PTP包装剤8の突起部形成面8bが条材18の上に載るので、条材18は最下のPTP包装剤8を前後方向移動可能な状態で支承するものとなっている。このように箱体11の内底のうち後寄り部分では条材18がPTP包装剤8を支承するのに対し、箱体11の内底のうち前寄り部分では回転機構15がPTP包装剤8を支承するので、順次排出機構15〜19は、回転機構15と条材18とが分担してPTP包装剤8を支承するものとなっている。
【0026】
排出ローラ対19は、排出口14より前の所に設けられており、軸方向を左右に向けた水平な上側の排出ローラ19aと下側の排出ローラ19bとからなり、何れも左右に延びた支軸が電動モータによって駆動されて軸回転することにより、排出口14から出てきたPTP包装剤8を上下から挟んで前送りするようになっている。上側の排出ローラ19aは平坦面8aに接触して摩擦力でPTP包装剤8を送るのでローラ長がカセット横幅いっぱいまで長くなっていても良いが、下側の排出ローラ19bは、突起部形成面8bに接触して摩擦力でPTP包装剤8を送るので、突起部8cとの干渉を避けるためにローラ長が短くなっており、短いローラ部が軸方向の中央に一個か又は軸方向に分散して複数個が形成されている。
【0027】
コントローラは、作用部16の旋回速度や排出ローラ対の回転速度を制御することで最下のPTP包装剤8の前方への横送り制御を遂行するが、その際、排出ローラ対19には排出動作の開始から終了まで定速回転を継続させる一方、旋回基部15bの両端のうち後方上側に来ている一方の作用部16には収納空間の内底で横送り初動時の加速動作を行わせ、旋回基部15bの両端のうち他方の作用部16には収納空間の内底を迂回する次回準備動作を行わせるようになっている。
【0028】
すなわち、横送り初動時には、PTP包装剤8が収納空間の内底で突起部形成面8bを下にしていれば、一方の作用部16がPTP包装剤8の突起部8cに当接して前進することによりPTP包装剤8が加速されるようになっている。この一方の作用部16及びPTP包装剤8の加速は、摩擦力軽減の観点からは急加速が良く、衝撃緩和の観点からは緩加速が良く、大抵は中間の適度な加速がなされるが、PTP包装剤8の前端が排出ローラ対19に達するより前に且つ一方の作用部16がPTP包装剤8の突起部8cから離れる前に、加速制御は終えて、排出ローラ対19での定速送りに対応した定速送りに速度制御が移行し、一方の作用部16がPTP包装剤8の突起部8cから離れるまで、その定速送りが維持されるようになっている。
【0029】
また、他方の作用部16の次回準備動作については、上述した横送り初動時における一方の作用部16の加速送りと定速送りの反射的な作用として、他方の作用部16が箱体11の収納空間の内底を迂回しながら下降や後退することになるが、その後は、他方の作用部16の動作制御が主になって、PTP包装剤8の横送りの完遂前に、他方の作用部16が、内底を迂回しながら更に後退して、横送り中のPTP包装剤8の突起部8cのうち最後尾のものが通過するのを待ち、通過後は直ちに横送り中のPTP包装剤8の突起部形成面8bの下で箱体11の収納空間の内底に復帰するようになっている。なお、そのときの通過待ち時間は、時間そのものを設定することができる他、突起部8cの配置情報を含むPTP包装剤8の形状情報を上位コントローラ等から取得できたときにはその情報と横送り速度などに基づいて算出し自動設定するようになっている。
【0030】
この実施例1のPTPカセット10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図2(a)は、多数のPTP包装剤8を収納して排出態勢を整えたPTPカセット10の縦断面図であり、図2(b)〜(c),図3(a)〜(c)は、最下のPTP包装剤8を排出している時のPTPカセット10の要部の縦断面図である。また、図4は、(a),(b)何れも、誤って上下反転収納されたPTP包装剤8が最下に来たときのカセット要部の縦断面図である。
【0031】
PTPカセット10を初めて使用するときや、PTP包装剤8の種類を変えるようなときには、二枚落ちを防止するために、最下のPTP包装剤8は排出口14を支障なく通過するが、下から二番目のPTP包装剤8は箱体11の前板か調整板13に突き当たって排出口14を通過しないよう、箱体11の前板に対する調整板13の取付位置を上げ下げ等することで調整板13の高さを調整しておく。また、順次排出機構15〜19を処理対象のPTP包装剤8に適合させるために、回転機構15の作用部16が最上位置かその少し後方に来て止まるよう、回転機構15や伝動部材の手動調整および/又はコントローラへのパラメータ設定などを行っておく。
【0032】
それから、PTPカセット10が空の場合は手作業でPTP包装剤8を箱体11の収納空間に解放上面や解放背面から補充する。そのとき、各々のPTP包装剤8を横にしたうえで、多数のPTP包装剤8の表裏を同じ向きに揃え、必ず突起部8c及び突起部形成面8b(ポケット側)を下にして、それらを箱体11の底の回転機構15及び条材18の上面に積み上げることで、箱体11内に多数のPTP包装剤8を収納する。それから、収納したPTP包装剤8の後端を指等で軽く押して、PTP包装剤8の列を整える。こうして、整列収納されたPTP包装剤8は、最下のPTP包装剤8の突起部8cの間に最上位置の作用部16と回転機構15の円板部15cの頂部と条材18とが収まるとともにそれらの上に突起部形成面8bが載って最下のPTP包装剤8の位置が決まり、下から二番目以上のPTP包装剤8が前端を箱体11の前板か調整板13に当てて位置が決まり、それらの順次排出の準備が整う(図2(a)参照)。
【0033】
その後、PTP包装剤8を一つずつ排出させるときには、図示しないコントローラに排出の指令や指示を与えて、PTPカセット10に排出動作を行わせる。具体的には、コントローラが、排出センサ17の反射光不検出を確認しつつ、図示しない電動モータを作動させる。そうすると、排出ローラ対19が一定速度で回転し続けて定速送りの態勢をとる一方、回転機構15が軸回転するとともにその回転速度を上げるので、それに随伴して作用部16が鉛直面に沿って加速しながら旋回し、最上位置の少し後ろで止まっていた作用部16が最上位置に向けて前進する(図2(a)参照)。その際、その作用部16が直前の突起部8cを押すので、最下のPTP包装剤8が加速しながら前進する。
【0034】
そして(図2(b)参照)、作用部16が最上位置を過ぎて更に前進すると、最下のPTP包装剤8の前端が排出口14から前方へ突き出て排出ローラ対19に達するが、それまでには、作用部16及びPTP包装剤8の加速が終わっていて、最下のPTP包装剤8が作用部16によっても排出ローラ対19によっても同じ速度で前方へ定速送りされるので、最下のPTP包装剤8に無理な力が作用したり不所望な変形が生じたりすることなく最下のPTP包装剤8が円滑に前方へ横送りされる。それから(図2(c)参照)、突起部8cを押していた作用部16が斜め下方へ前進して突起部8cから離れると、その後、最下のPTP包装剤8の横送りは、専ら排出ローラ対19によって行われる。
【0035】
しかも(図3(a)参照)、最下のPTP包装剤8を排出ローラ対19が横送りしている間に、初動時から内底を離れて下方に来ていた他方の作用部16が、後方から上昇して最下のPTP包装剤8の少し下まで来るが、突起部8cと干渉しない位置に止まって、最下のPTP包装剤8の突起部8cが最後尾のものまで総て上方を通過するのを待っている。そして(図3(b)参照)、最後尾の突起部8cが作用部16の上を通過すると、直ちに、作用部16が、最後尾の突起部8cを後追い又は後押しするかのような状態で速やかに斜め上方へ前進し、最上位置かその少し後方に来て止まる。こうして、作用部16が最下のPTP包装剤8の突起部形成面8bの下で収納空間の内底に復帰する。
【0036】
それから、最下のPTP包装剤8を排出ローラ対19が更に横送りすると、最下のPTP包装剤8が後端まで排出口14から外に出る(図3(c)参照)。最下のPTP包装剤8が排出口14から前方へ排出されると、その排出中の最下PTP包装剤8からの反射光が排出センサ17によって検出され、これに応じて適宜なタイミングで電動モータの作動が停止するので、回転機構15の軸回転動作も作用部16の旋回運動も止まる。排出ローラ対19の軸回転も止まる。それと並行して、最下のPTP包装剤8の抜けた箱体11の収納空間の内底では、下から二番目だったPTP包装剤8が回転機構15や条材18の上に下降して来て新たな最下のPTP包装剤となる。こうして、このPTPカセット10にあっては、PTP包装剤8が下から一枚ずつ排出される。
【0037】
このように、PTPカセット10にあっては、摩擦負荷や慣性負荷の大きい横送り初動時には、作用部16がPTP包装剤8の前送りの推進力の主役であり、作用部16が旋回中に突起部8cに当接して前進することでPTP包装剤8が前送りされるのであるが、初動後、摩擦負荷や慣性負荷が小さくなってからは、排出ローラ対19がPTP包装剤8の前送りを定速で行うので、回転機構15や作用部16の個数が少なくても安定かつ的確な逐次排出がなされるとともに、腰のないPTP包装剤8でも安定して確実にカセット外へ送り出すことができる。
【0038】
しかも、軸回転する排出ローラ対19が最下のPTP包装剤8を上下から挟みつつ引き込むので、摩擦送りとはいえ前送りが能動的に行われるばかりか、PTP包装剤8の前端が多少なら曲がったり傾いていても確実に引き込むことができる。また、排出中も挟みつけて前送りするので、PTP包装剤等の曲がりや捻れといった変形を抑制することができる。そのため、PTP包装剤8の排出が安定かつ円滑に行われるとともに、PTP包装剤8の不所望な変形が全部とはいかないまでも多少なら矯正されることにもなる。
【0039】
なお(図4(a)参照)、誤ってPTP包装剤8が突起部形成面8b及び突起部8cを上にした状態で箱体11に収納されてしまった場合、それが最下のPTP包装剤8になったときに、PTP包装剤8の平坦面8aが回転機構15や条材18の上面に載るため、作用部16とPTP包装剤8の平坦面8aとが滑って推力がほとんど伝達されないので、平坦面8aを下にしたPTP包装剤8は排出されることなく箱体11の中にとどまる。例え最下のPTP包装剤8が摩擦で前送りされて排出ローラ対19まで加勢した場合でも(図4(b)参照)、最下のPTP包装剤8の突起部8cが下向きでなく上向きに突き出して、その突起部8cの頂部やそれに突起部8cを噛合させた下から二番目のPTP包装剤8が調整板13に当接して前進を阻止される状態になるうえ、最下のPTP包装剤8の最前の突起部8cが調整板13に当接して前進を阻止される状態になるので、PTP包装剤8は排出されることなく箱体11の中にとどまる。一枚すら排出されないのであるから不所望な二枚落ちは確実に防止される。そして、排出センサ17での反射光検出が規定時間内に行えないため、コントローラによりタイムアウトエラーとされる。
【実施例2】
【0040】
図5(b)〜(e)に斜視図を示した本発明のPTPカセットが上述した実施例1,2のものと相違するのは、回転機構15と作用部16とが図5(a)のものから改造されている点である。
【0041】
すなわち、図5(a)に示した回転機構15と作用部16は、上述したPTPカセット10のものを再掲したものであるが、図5(b)に示した回転機構15と作用部16は、旋回基部15bを残して円板部15cを省いたものであり、図5(c)に示した回転機構15と作用部16は、円板部15cを残して旋回基部15bを省き、作用部16を棒状にして円板部15cの端面に植設したものであり、図5(d)に示した回転機構15と作用部16は、円板部15cの片面の作用部16を二本から三本に増やしたものであり、図5(e)に示した回転機構15と作用部16は、作用部16及び旋回基部15bを二組から三組に増やしたものであり、突起部形成面8bに突起部8cが三列になって形成されている図示しないPTP包装剤8に対して使用される。なお、図示は割愛したが、円板部15cの片面における作用部16は一個だけに減らしても良い。
【実施例3】
【0042】
本発明のPTPカセットの実施例3について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図6は、(a)がPTPカセット20の外観斜視図、(b)が内部透視図、(c)が縦断面図である。
【0043】
このPTPカセット20が上述したPTPカセット10と相違するのは、送り機構が回転機構15から無端ベルト25に変更された点と、作用部16が可動部材26になっている点である。
無端ベルト25は、両端をローラで支持されて前後に延びていて、電動モータの駆動によって上側を前進させるようになっており、平面視では箱体11の内底のうち前寄り部分を占め、側面視では上辺部分が排出口14の下に位置していて、箱体11の収納空間の内底部材を兼ねるものとなっている。
【0044】
可動部材26は、PTP包装剤8の突起部形成面8bにおいて前後に並んだ突起部8c,8cの間に入りうる作用部材であって、無端ベルト25の外周面に突設されている。可動部材26は、条材18との干渉を避けるために左右に分かれており、そのような組が周方向に二組設けられている。周方向の組数が一つか二つなら、無端ベルト25の上側に同時に来る可動部材26が一組以下にとどまるので、上述の制御が活用される。可動部材26の高さは突起部8cより低く、最下のPTP包装剤8が箱体11の収納空間の内底で突起部形成面8bを下にして無端ベルト25の上に載っていれば、可動部材26の前送り時には可動部材26が突起部8cに当接するようになっている。
【0045】
このようなPTPカセット20は、順次排出に際して、無端ベルト25を循環動作させることで、可動部材26を鉛直面に沿って巡回移動させ、それに突起部8cを押させて最下のPTP包装剤8を横送りするものとなっている。
そして、繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、PTPカセット20も上述のPTPカセット10と同様にして使用され、可動部材26の移動軌跡が円形か長円形かの相違は別として、ほぼ同様に動作する。
【実施例4】
【0046】
図7(a)〜(c)に斜視図を示した本発明のPTPカセットが上述した実施例1〜3のものと相違するのは、条材18が改造されている点である。
【0047】
図7(a)に示したPTPカセットは、上述したPTPカセット10,20と同様、条材18が中央の一本だけのものであるが、条材18が長くなっていて、回転機構15の後方だけでなく回転機構15の上まで延びていて、PTP包装剤8の長手方向の広い範囲で連続してPTP包装剤8を支承するようになっている。
条材18が回転機構15の上に来ると円板部15cと干渉するので、このような長い条材18は、円板部15cの無い図5(b)や図5(e)の回転機構15に適している。
【0048】
図7(b)に示したPTPカセットは、平行な二本の条材18にて両脇から突起部8cを挟むことで、PTP包装剤8の左右方向の位置決めを正確に行うものとなっている。
図7(c)に示したPTPカセットは、平行な三本の条材18にて、上述した両者の機能を併せ持つばかりか高度化したものとなっている。
なお、図示は割愛したが、突起部8cが横3列になっているウィークリーPTPシートを扱う場合、PTP包装剤8の突起部形成面8bにおける突起部8c同士の間隙が中央寄りに2列存在するので、各間隙に1本ずつ収めた合計2本の条材18で支承と位置決めを行うのが基本形となるが、1本でも支承でき更に位置決めまでできるのであれば、条材18は、どちらか1本を削除して、残りの1本だけで構成しても良い。
【0049】
[その他]
上記実施例では、箱体11の前板が鉛直であったが、箱体11の前板は多少なら前傾していても良い。また、回転機構15の最上位置を横に連ねた仮想線が水平であったが、前記仮想線も多少なら前下がり傾斜していても良い。前記仮想線は箱体11の内底を画するものでもあり、条材18は前記仮想線とほぼ平行なので、前記仮想線が前下がり傾斜している場合は、条材18も前下がり傾斜したものとなる。
上記実施例では、条材18が外底板に取り付けられていたが、箱体11の後背面の下部に背板を付設して、そこに条材18を植設しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明のPTPカセットは、PTP包装した薬剤の他、それと等価な薬剤たとえばシート状包装やカード状包装の薬剤などにも、突起部があれば、適用することができる。
また、本発明のPTPカセットは、単体で使用できる他、薬剤払出装置の一部や全部に組み込んでも良い(例えば特許文献3〜6参照)。
【符号の説明】
【0051】
8…PTP包装剤(薬剤)、8a…平坦面(片面)、
8b…突起部形成面(他面)、8c…突起部(ポケット)、8d…後端(端部)、
10…PTPカセット、
11…箱体(整列収納部)、12…ラベル、13…調整板、14…排出口、
15…回転機構、15a…回転軸、15b…旋回基部、15c…円板部、
16…作用部、17…排出センサ、18…条材、
19…排出ローラ対、19a…排出ローラ、19b…排出ローラ、
20…PTPカセット、
25…無端ベルト(送り機構)、26…可動部材(作用部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面が平坦で他面には突起部が形成されているPTP包装の薬剤またはそれと等価な薬剤を各々は横にしたうえで縦に積み重ねて整列収納させた状態で保持する整列収納部と、前記薬剤のうち最下のものに前記整列収納部の内底で作用部を接触させて前進させる順次排出機構とを備えていて、前記薬剤を下から順に横送りして前記整列収納部の排出口から前方へ排出するPTPカセットにおいて、前記薬剤のうち前記排出口から出てきたものを前記突起部は避けて上下から挟んで前送りする排出ローラ対が前記排出口より前の所に設けられており、前記薬剤の横送りの初動時に前記薬剤が前記収納空間の内底で前記他面を下にしていれば前記作用部が前記薬剤の前記突起部に当接して前進することにより前記薬剤が加速され、前記薬剤の横送りの初動後は前記排出ローラ対にて前記薬剤が定速送りされるようになっていることを特徴とするPTPカセット。
【請求項2】
前記作用部が、前記薬剤の横送りの完遂前に前記内底を迂回しながら後退して、前記薬剤の前記突起部のうち最後尾のものが通過するのを待ち、通過後は直ちに前記薬剤の前記他面の下で前記内底に復帰するようになっていることを特徴とする請求項1記載のPTPカセット。
【請求項3】
前記作用部が、複数設けられていて、空間および時間のうち何れか一方または双方において前記薬剤の横送りを分担し合うようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載されたPTPカセット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−100724(P2012−100724A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249381(P2010−249381)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000151472)株式会社トーショー (156)
【Fターム(参考)】