PYYアゴニストおよびその使用
本発明は、PYY3−36変異体およびそのPEG化誘導体、ならびにNPY Y2受容体アゴニストによって調節される状態の治療に有用な組成物および方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、PYYアゴニスト、より詳細には、PYY3−36変異体、そしてPYY3−36およびPYY3−36変異体のPEG化誘導体、こうしたアゴニストを含有する組成物、こうしたPYYアゴニストをコードする単離核酸、ならびに肥満およびその併存疾患の治療におけるこうしたアゴニストまたは組成物の使用、あるいは哺乳動物において、食欲、食物摂取またはカロリー摂取を減少させるためのこうしたアゴニストまたは組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
肥満は、患者数が増加しつつあり、そして関連する健康上のリスクがあることから、大きな公衆衛生上の懸念である。さらに、肥満は、運動性が制限され、そして肉体の耐久力が減少することを通じて、それとともに社会的に、アカデミックで、そして職業で差別があることを通じて、人の生活の質を侵しうる。
【0003】
肥満および過剰体重であることは、一般的に、体格指数(BMI)によって定義され、これは総体脂肪と相関し、そして特定の疾患のリスクの測定値として働く。BMIは、メートルで表した身長の二乗によって、キログラムで表した体重を割ることにより、計算される(kg/m2)。過剰体重は、典型的には、25〜29.9kg/m2のBMIと定義され、そして肥満は、典型的には、30kg/m2以上のBMIとして定義される。例えば、National Heart, Lung, and Blood Institute, Clinical Guidelines on the Identification, Evaluation, and Treatment of Overweight and Obesity in Adults, The Evidence Report, Washington, DC: U.S. Department of Health and Human Services, NIH publication no. 98−4083(1998)を参照されたい。
【0004】
最近の研究によって、肥満およびそれに関連する健康上のリスクは、成人に限定されず、驚くべき度合いまで、小児および青年を侵していることが見出された。米国疾病管理センターによると、過剰体重と定義される小児および青年の割合は、1970年代初期以降2倍以上になってきており、そして約15%の小児および青年が、現在、過剰体重である。高コレステロールおよび高血圧などの心臓疾患のリスク要因は、類似の年齢の正常体重被験者に比較して、過剰体重の小児および青年では、増加した頻度で発生する。また、以前は成人病と見なされていた2型糖尿病が、小児および青年で劇的に増加してきている。過剰体重状態および肥満は、2型糖尿病と緊密に関連している。過剰体重の青年は、過剰体重または肥満の成人になる70%の可能性を有すると、近年、概算されている。少なくとも一方の親が過剰体重または肥満であると、可能性は、約80%に増加する。過剰体重であることの最も差し迫った結果は、子ども達自身が認識するように、社会的差別である。
【0005】
過剰体重または肥満の個体は、高血圧、異常脂質血症、2型(非インスリン依存性)糖尿病、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、高インスリン血症、冠動脈心疾患、狭心症、うっ血性心不全、脳卒中、胆石、胆嚢炎、胆石症、通風、変形性関節症、閉塞性睡眠時無呼吸および呼吸困難、胆嚢疾患、特定の型の癌(例えば子宮内膜癌、乳癌、前立腺癌、および結腸癌)および精神障害(抑うつ、摂食障害、歪んだ身体イメージおよび低い自尊心など)などの病気のリスクが増加している。肥満は健康に負の影響をもたらすため、肥満は、米国において、予防可能な死亡のうち、2番目に多い原因となっており、そして社会に対して大きな経済的および心理社会的影響を与える。McGinnis M, Foege WH., “Actual Causes of Death in the United States,” JAMA 270:2207−12, 1993を参照されたい。
【0006】
肥満は、現在、それに関連する健康上のリスクを減少させる治療を必要とする、慢性疾患として認識されている。体重減少は、重要な治療の所産であるが、肥満管理の主なゴールの1つは、心臓血管値および代謝値を改善して、肥満に関連する罹患率および死亡率を減少させることである。5〜10%の体重減少は、血液グルコース、血圧、および脂質濃度などの代謝値を実質的に改善しうることが示されてきている。したがって、体重の5〜10%の減少は、罹患率および死亡率を減少させうると考えられる。
【0007】
肥満を管理するため、現在利用可能な処方薬剤は、一般的に、オーリスタットの場合のように、食餌脂肪吸収を減少させることによって、あるいはシブトラミンで見られるように、食物摂取を減少させることにより、そして/またはエネルギー消費を増加させることにより、エネルギー欠損を生成することによって、体重を減少させる。現在入手可能な抗肥満剤の代替物の検索には、いくつかの道が取られてきており、このうちの1つは、ペプチドYY(PYY)などの、飽満の調節に関連付けられてきている、特定の腸ペプチドに重点を置いてきている。
【0008】
PYYは、ホルモンの膵臓ポリペプチド(PP)ファミリーのメンバーである(PPおよびニューロペプチドY(NPY)とともに)。他のファミリーメンバーと同様、PYYは、C末端がアミド化された36アミノ酸ペプチドである。該ペプチドは、腸管内分泌ペプチドであり、元来、ブタの腸から単離され(TatemotoおよびMutt, Nature 285:417−418, 1980)そして続いて、末梢投与後、ラットにおいて、高脂肪食摂取を減少させ(Okadaら, Endocrinology Supplement 180, 1993)、そして末梢投与後、マウスにおいて、体重減少を引き起こす(MorleyおよびFlood, Life Sciences 41:2157−2165, 1987)と報告された。PYYの多数の貯蔵分子型および循環分子型が存在することが知られる(Chenら, Gastroenterology 87:1332−1338, 1984;およびRoddyら, Regul Pept 18:201−212, 1987)。1つのこうした型、PYY3−36は、ヒト結腸粘膜抽出物から単離され(Eberleinら, Peptides 10:797−803, 1989)、そしてヒト食後血漿における主なPYYの型であることが見出された(Grandtら, Regul. Pept. 51:151−159, 1994)。PYY3−36は、高親和性NPY Y2受容体(Y2R)選択的アゴニストであることが報告されている(Keireら, Am. J. Physiol. Gasrointest. Liver Physiol. 279:G126−G131, 2000)。PYY3−36を末梢投与すると、ラットでは食物摂取および体重増加が顕著に減少し、ヒトでは食欲および食物摂取が減少し、そしてマウスでは食物摂取が減少するが、Y2Rヌルマウスでは減少しないことが報告されており、食物摂取効果がY2Rを必要とすることが示唆されると述べられた。ヒトの研究において、PYY3−36を注入すると、食欲が有意に減少し、そして食物摂取が24時間に渡って33%減少することが見出された。PYY3−36の通常の食後循環濃度まで該ペプチドを注入すると、15分以内にPYY3−36のピーク血清レベルに到達し、その後、30分以内に基底レベルに迅速に減少した。PYY3−36注入後12時間の期間には、食物摂取の有意な阻害があったが、12時間〜24時間の期間には、食物摂取に本質的に影響はなかった。ラットの研究において、PYY3−36をIPで反復投与すると(毎日2回7日間の注射)、累積食物摂取が減少した(Batterhamら, Nature 418:650−654, 2002)。
【0009】
ポリペプチドに基づく薬剤は、しばしば、in vivoでの半減期を延長させるため、ポリエチレングリコールなどのポリマーに共有結合される。しかし、これはしばしば、生物学的活性または薬理学的活性の大幅な損失を導く(Shechterら, FEBS Letters 579:2439−2444, 2005; FuertegesおよびAbuchowski, J. Control Release 11:139−148, 1990; Katre, Adv. Drug Del. Sys. 10:91−114, 1993; BailonおよびBerthold, Pharm. Sci. Technol. Today 1:352−356, 1996; Nucciら, Adv. Drug Delivery Rev. 6, 1991; Delgado, Critical Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 9:249−304, 1992; Fungら, Polym. Preprints 38:565−566, 1997; Reddy, Ann. Pharmacother. 34:915−923, 2000; Veronese, Biomaterials 22:405−417, 2001)。例えば、Shechterら、上記は、安定な結合の形成を通じた標準的化学反応によるPYY3−36の40kD PEG化(40kD PEG−PYY3−36)が、マウスを用いた食物摂取研究において、その完全な不活性化を導いたことを報告した。(s.c.注射)。しかし、彼らはまた、PYY3−36の可逆的PEG化(40kD PEG−FMS−PYY3−36)が、機能的半減期の8倍の増加を生じた(24時間対3時間)こともまた報告した。PCT特許出願第WO 2004/089279号および第WO 03/026591号もまた、参照されたい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は、PYY3−36の変異体であるPYYアゴニストに関する。
本発明の1つの側面において、PYYアゴニストは、残基10(グルタミン酸)または残基11(アスパラギン酸)が、システイン、リジン、セリン、スレオニン、チロシン、およびポリエチレングリコール(PEG)などの親水性ポリマーとコンジュゲート化可能な官能性、例えばケト、チオール、ヒドロキシル、カルボキシル、または未結合(free)アミノ官能性を有する非天然アミノ酸からなる群より選択されるアミノ酸「X」で置換されている、哺乳動物PPY3−36の変異体であり、こうした変異体は、それぞれ、(E10X)PYY3−36または(D11X)PYY3−36と名付けられる。
【0011】
残基「X」は、好ましくはシステインであり、そしてしたがって対応する変異体は、(E10C)PYY3−36および(D11C)PYY3−36である。
本発明の好ましい態様において、PYYアゴニストは、ヒトPYY3−36(hPYY3−36)、イヌPYY3−36、ネコPYY3−36またはウマPYY3−36であり、より好ましくはhPYY3−36である。
【0012】
本発明の好ましい態様において、PYYアゴニストは、アミノ酸配列IKPEAPGCDASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY−NH2[配列番号3]を有するポリペプチド(E10C)hPYY3−36、またはその薬学的に許容しうる塩である。
【0013】
さらなる好ましい態様において、PYYアゴニストは、アミノ酸配列IKPEAPGECASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY−NH2[配列番号4]を有するポリペプチド(D11C)hPYY3−36、またはその薬学的に許容しうる塩である。
【0014】
最も好ましくは、アゴニストは、(E10C)hPYY3−36である。
本発明のPYYアゴニストは、好ましくは、親水性ポリマー、好ましくはPEGとコンジュゲート化される。アゴニストは、好ましくはモノPEG化され、すなわちPEGに対するアゴニストの比は約1:1であり、PEGは、(E10X)PYY3−36および(D11X)PYY3−36中の「X」のケト、チオール、ヒドロキシル、カルボキシル、または未結合アミノ官能性などのコンジュゲート化可能官能性で付着している。PEGは、直鎖、分枝鎖、またはペンダントであってもよく;より好ましくは、直鎖または分枝鎖であり;最も好ましくは、直鎖である。
【0015】
直鎖PEGにおいて、PEGの一方の末端は、PEGをアゴニストにカップリングする条件下で不活性な基、例えばエーテル基、好ましくはメトキシ基によってキャップ化されている。この方式で(メトキシ基で)末端処理されたPEGは、一般的にmPEGと称される。他方の末端は、PYYアゴニストとのカップリングのために活性化されている。同様に、本発明で有用な分枝鎖PEGは、1つを除いてすべての末端がエーテル・キャップ化されており、そして非エーテル・キャップ化末端は、カップリングのために活性化されている。1つの態様において、(E10X)PYY3−36または(D11X)PYY3−36中のアミノ酸Xのコンジュゲート化可能な官能性と反応性である官能基にPEGを連結するリンカー部分(「L」)で、PEGの非エーテル・キャップ化末端をキャップ化して、Xのコンジュゲート化可能な官能性に共有結合しているPEGを有するコンジュゲートを産生する。さらなる態様において、PEGは、リンカー部分を包含せずに、直接、反応基に付着する。こうしたPEGは、しばしば、「リンカーレス」PEGと呼ばれる。
【0016】
(E10C)PYY3−36および(D11C)PYY3−36ポリペプチドに関しては、PEGの非エーテル・キャップ化末端は、好ましくは、システイン残基のチオールと反応するであろうマレイミドまたは他の基にPEGを連結するリンカーに付着して、システイン・チオール基に共有結合したPEGを有するコンジュゲートを産生する。
【0017】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36とともに使用するのに適した反応性PEGには、式
【0018】
【化1】
【0019】
のPEGが含まれる。
好ましくは、PEGは、リンカー部分−L−が含まれる、上に示すmPEGマレイミドである。リンカーレスPEGマレイミドもまた、本発明で、特に、(E10C)hPYY3−36または(D11C)PYY3−36とともに使用するのに適している。こうしたリンカーレスPEGマレイミドは、GoodsonおよびKatre, Bio/Technology 8:343−346, 1990に記載されるように調製可能である。
【0020】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)PYY3−36ポリペプチドと、上に示すmPEGのカップリングから生じるコンジュゲートを、以下の式に示し、式中、−SRは、(E10C)hPYY3−36または(D11C)PYY3−36ポリペプチドであり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である:
【0021】
【化2】
【0022】
リンカー−L−は、単に、PEGを反応性官能基に連結するように働き、そしてしたがって、特に限定されるわけではないが、好ましくは、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、カーボネート結合、または第2級アミノ基を含有するアルキレン基が含まれる。
【0023】
好ましい態様において、特に直鎖PEGに関して、リンカーは、式
−O(CH2)pNHC(O)(CH2)r−
の基であり、ここでpは、1〜6の整数、好ましくは1〜3、より好ましくは2または3、最も好ましくは3であり、そしてrは、1〜6の整数、好ましくは1〜3、より好ましくは2または3、最も好ましくは2である。
【0024】
好ましいリンカーは、−CH2CH2CH2NHCOCH2CH2−基である。
別の好ましい態様において、特に分枝鎖PEGに関して、リンカーは、式
−NHC(O)(CH2)s−
の基であり、ここでsは、1〜6の整数、好ましくは1〜3、より好ましくは2または3、最も好ましくは2である。
【0025】
好ましいリンカーは、−NHC(O)CH2CH2−基である。
PEGは、直鎖あるいは非直鎖、例えば分枝鎖またはペンダントであってもよい。好ましくは、PEGは直鎖または分枝鎖、好ましくは直鎖または分枝鎖mPEGマレイミドである。グリセロール分枝鎖mPEGマレイミドが、好ましい分枝鎖PEGである。好ましくは、PEGは直鎖mPEGマレイミドである。PEGは、約1kD〜約50kDの範囲内の平均分子量を持たなければならない。好ましくは、平均分子量は、約5kD〜約45kDの範囲内;より好ましくは、約10〜12kDから約40〜45kD、または約20kDから約40〜45kDの範囲内である。特に関心が持たれるのは、式1に示すような、約20または約30kDの平均分子量を有する直鎖mPEGである。式2のグリセロール分枝mPEGもまた関心が持たれ、そしてこれは、好ましくは約20kDまたは約43kDの平均分子量を有する。
【0026】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)PYY3−36のシステイン・チオール基とのコンジュゲート化のために適切に活性化されている、好ましいPEGは、式1および2の化合物である。式1の直鎖mPEGにおいて、nは、約175〜800の範囲内の整数であり;好ましくは、約375〜525または約600〜750、あるいは約425〜475または約650〜700、あるいは約437〜463または675〜700の範囲内の整数である。式2のグリセロール分枝鎖mPEGにおいて、各mは、およそ同じであり、そして約150〜500の範囲内の整数であり;好ましくは、約160〜285または約400〜525、あるいは約200〜250または450〜500の範囲内の整数である。
【0027】
【化3】
【0028】
ペプチドアミノ酸側鎖におけるターゲット官能性、例えばケト、チオール、ヒドロキシル、カルボキシル、または未結合アミノ官能性とのコンジュゲート化のために適切に活性化されている、非常に多様なPEGが、いくつかの供給者から、例えばNOF社、日本・東京、またはNektar Therapeutics社、アラバマ州ハンツビルから商業的に入手可能である。
【0029】
本発明の別の側面は、本PYY3−36変異体およびポリエチレングリコールのコンジュゲートに関する。
1つの態様において、コンジュゲートは、式3
【0030】
【化4】
【0031】
式中、mPEG部分は直鎖または分枝鎖であり、そして約1kD〜50kD、好ましくは5kD〜約45kD、より好ましくは約10kDまたは12kD〜約40または45kD、あるいは約20kD〜約40kDまたは45kDの範囲内の平均分子量を有し、
Lは、式
−O(CH2)pNHC(O)(CH2)r−
の基であり、ここでpは、1〜6の整数;好ましくは1〜3;より好ましくは2または3;最も好ましくは3であり;(以下の式4に示すとおり);そしてrは、1〜6の整数;好ましくは1〜3;より好ましくは2または3、最も好ましくは2であるか;
あるいはLは、式
−NHC(O)(CH2)s−
の基であり、ここでsは、1〜6の整数;好ましくは1〜3;より好ましくは2または3;最も好ましくは2である;そして
−SRは、ポリペプチド(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36であり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
の化合物である。
【0032】
本発明の好ましい態様は、式4
【0033】
【化5】
【0034】
式中、nは、約175〜800の範囲内の整数であり;好ましくは、約375〜525または約600〜750、あるいは約437〜463または約675〜700の範囲内の整数であり;そして−SRはポリペプチド(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36であり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
の直鎖mPEG−PYY3−36変異体コンジュゲート;あるいはその薬学的に許容しうる塩である。好ましくは、(CH2CH2O)n部分は、約20kDまたは30kDの平均分子量を有する。−SRがポリペプチド(E10C)hPYY3−36であるコンジュゲートに特に関心が持たれる。
【0035】
本発明のさらなる側面は、PEG部分が分枝鎖であるコンジュゲートに関する。このカテゴリーの好ましいコンジュゲートは、グリセロール分枝鎖PEG部分を含む。特に興味深いのは、式5
【0036】
【化6】
【0037】
式中、各mはほぼ同じであり、そして約150〜550の範囲内の整数であり;好ましくは、約160〜285または約400〜525、あるいは約200〜250または約450〜500の範囲内の整数であり、そして−SRは(E10C)hPYY3−36または(E10C)hPYY3−36ポリペプチドであり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
のコンジュゲート;あるいはその薬学的に許容しうる塩である。好ましくは、各(CH2CH2O)m部分は、約9〜11kDまたは約20〜22kDの範囲内の平均分子量を有する。好ましくは、(CH2CH2O)m部分を合わせた平均分子量は、約20kDまたは約43kDである。−SRがポリペプチド(E10C)hPYY3−36であるコンジュゲートに特に関心が持たれる。
【0038】
本発明はまた、配列番号3または配列番号4に示すようなアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体も提供する。本発明のこの側面の1つの態様において、ポリペプチドは、システイン残基でPEG化されている。
【0039】
さらに、本発明は、本発明のポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列を提供し、好ましくは、これらは、配列番号3および配列番号4をコードする。
本発明の別の態様において、本発明のPYYアゴニストおよび薬学的に許容しうるキャリアーを含む、薬剤組成物を提供する。さらなる態様において、組成物はまた、組成物の主な適応症または主な適応症の併存疾患の治療において有用な剤でありうる、少なくとも1つのさらなる薬学的剤も含む。さらなる薬学的剤は、好ましくは抗肥満剤である。組成物は、好ましくは、療法的有効量の本発明のPYYアゴニスト、または療法的有効量の本発明のPYYアゴニストおよびさらなる薬学的剤の組み合わせを含む。
【0040】
やはり提供するのは、哺乳動物において、Y2Rアゴニストによって調節される疾患、状態または障害を治療する方法であって、こうした治療が必要な哺乳動物に、療法的有効量の本発明のPYYアゴニストを末梢投与することを含む、前記方法である。本発明のPYYアゴニストは、単独で、あるいは疾患、状態もしくは障害、または疾患、状態もしくは障害の併存疾患の治療に有用な少なくとも1つのさらなる薬学的剤と組み合わせて使用可能である。哺乳動物において、Y2Rアゴニストによって調節される疾患、状態、または障害には、肥満および過剰体重が含まれる。こうした疾患、状態、または障害の併存疾患は、こうした疾患、状態、または障害の治療によって、偶発的に改善する可能性が高い。さらに提供するのは、肥満の治療が必要な哺乳動物において、肥満を治療する方法であって、療法的有効量の本発明のPYYアゴニストを哺乳動物に末梢投与することを含む、前記方法である。
【0041】
やはり提供するのは、哺乳動物において、体重を減少させるかまたは体重損失を促進する(体重増加を予防するかまたは阻害することを含む)方法であって、体重を管理するかまたは体重を減少させる量の本発明のPYYアゴニストを哺乳動物に末梢投与することを含む、前記方法である。
【0042】
やはり提供するのは、哺乳動物において、食物摂取を減少させる方法であって、食物摂取を減少させる量の本発明のPYYアゴニストを哺乳動物に末梢投与することを含む、前記方法である。
【0043】
やはり提供するのは、哺乳動物において、飽満を誘導する方法であって、飽満を誘導する量の本発明のPYYアゴニストを哺乳動物に末梢投与することを含む、前記方法である。
【0044】
やはり提供するのは、哺乳動物において、カロリー摂取を減少させる方法であって、カロリー摂取を減少させる量の本発明のPYYアゴニストを哺乳動物に末梢投与することを含む、前記方法である。PYYアゴニストを、単独で、または少なくとも1つのさらなる薬学的剤、好ましくは抗肥満剤と組み合わせて投与可能である。
【0045】
本明細書および付随する請求項記載の方法各々において、PYYアゴニストを、単独で、または少なくとも1つのさらなる薬学的剤、好ましくは抗肥満剤と組み合わせて使用可能である。
【0046】
本PYYアゴニストおよび該アゴニストを含有する組成物はまた、本明細書に言及する療法的適用のための薬剤製造にも有用である。
定義および略語
句「薬学的に許容しうる」は、物質または組成物が、配合物を構成する他の成分、および/または該配合物で治療されている哺乳動物と、化学的および/または毒物学的に適合していなければならないことを意味する。
【0047】
用語「PYYアゴニスト」は、in vivoまたはin vitroで、PYY、好ましくはPYY3−36によって誘発される効果の1以上を誘発する、任意の化合物を意味する。
【0048】
句「療法的有効量」は、治療前にまたはビヒクル治療群において決定された適切な対照値に対して、カロリー摂取を減少させ、体重を減少させ、そして/または体脂肪を減少させる、本発明のPYYアゴニストの量を意味する。
【0049】
用語「哺乳動物」は、ヒト、ならびに哺乳動物綱中のホメオスタシス機構を所持する動物界の他の温血動物メンバーすべて、例えば、コンパニオン哺乳動物、動物園の哺乳動物および食料源哺乳動物を意味する。コンパニオン哺乳動物のいくつかの例は、イヌ科動物(例えばイヌ)、ネコ科動物(例えばネコ)およびウマであり;食料源哺乳動物のいくつかの例は、ブタ、ウシ、ヒツジ等である。好ましくは、哺乳動物は、ヒトまたはコンパニオン哺乳動物である。最も好ましくは、哺乳動物は、男性または女性のヒトである。
【0050】
用語「治療すること」、「治療する」、または「治療」は、防止的、すなわち予防的および緩和的治療の両方を含む。
用語「末梢投与」は、中枢神経系外部の投与を意味する。末梢投与には、脳への直接投与は含まれない。末梢投与には、限定されるわけではないが、静脈内、筋内、皮下、吸入、経口、舌下、溶腸、直腸、経皮、または鼻内投与が含まれる。
【0051】
本発明で使用するのに適した非天然アミノ酸は、典型的には、20の天然存在アミノ酸以外の、以下の式を有する任意のアミノ酸であり(CantorおよびShimmel, Biophysical Chemistry, Part 1, WH Freeman & Sons, サンフランシスコ, 42−43, 1980)、式中、R1は、ケト、チオール、カルボキシル、ヒドロキシル、または本明細書にその全体が援用される米国特許公報第2005/0208536号に開示されるものなどの未結合アミノ官能性を含む、任意の置換基である。
【0052】
【化7】
【0053】
こうした非天然アミノ酸には、例えば、チオチロシン、オルニチン、3−メルカプトフェニルアラニン、3−または4−アミノフェニルアラニン、3−または4−アセチルフェニルアラニン、2−または3−ヒドロキシフェニルアラニン(o−またはm−チロシン)、ヒドロキシメチルグリシン、アミノエチルグリシン、1−メチル−1−メルカプトエチルグリシン、アミノエチルチオエチルグリシンおよびメルカプトエチルグリシンが含まれる。本発明で有用な非天然アミノ酸の多くは、商業的に入手可能である。他のものは、当該技術分野に知られる方法によって調製可能である。例えば、チオチロシンは、本明細書に援用される、Luら, J. Am. Chem. Soc. 119:7173−7180, 1997に記載される方法によって調製可能である。
【0054】
用語「ヒトPYY」または「hPYY」は、以下のアミノ酸配列:
YPIKPEAPGEDASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY−NH2 [配列番号1]
を有する36アミノ酸のC末端アミド化ポリペプチドを意味する。
【0055】
用語「hPYY3−36」は、以下のアミノ酸配列:
IKPEAPGEDASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY−NH2 [配列番号2]
を有するC末端34量体hPYYを意味する。
【0056】
用語「(E10C)hPYY3−36」は、hPYYの残基10のグルタミン酸がシステイン残基で置換されており、そして以下のアミノ酸配列:
IKPEAPGCDASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY−NH2 [配列番号3]
を有する、C末端34量体hPYYを意味する。
【0057】
用語「(D11C)hPYY3−36」は、hPYYの残基11のアスパラギン酸がシステイン残基で置換されており、そして以下のアミノ酸配列:
IKPEAPGECASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY−NH2 [配列番号4]
を有する、C末端34量体hPYYを意味する。
発明の詳細な説明
本発明は、PYY3−36の変異体およびそのPEG化コンジュゲートであるPYYアゴニストであって、限定されるわけではないが、クリアランス速度の減少、血漿存在期間の増加、in vivo活性の延長、強度の増加、安定性の増加、可溶性の改善、および抗原性の減少から選択される、少なくとも1つの改善された化学的または生理学的特性を有しうる、前記PYYアゴニストに関する。
【0058】
本発明の好ましいPYY3−36変異体は、(E10C)hPYY3−36である。別の好ましい変異体は、(D11C)hPYY3−36である。本発明のこれらおよび他の変異体を、以下にそして本明細書中の実施例に記載するように、合成的に、そして組換えおよび他の手段によって、または類似の方法によって、産生してもよい。
【0059】
上に列挙する置換(例えばE10CおよびD11C)に加えて、本発明のPYYアゴニストにはまた、他のアミノ酸位での1以上の保存的アミノ酸置換もまた含まれてもよい。例えば、以下の表にしたがって、保存的置換を行ってもよい。脂肪族非極性、極性非荷電、および極性荷電アミノ酸を、それぞれ、非極性、極性非荷電、または極性荷電アミノ酸である別の脂肪族アミノ酸に対して置換してもよい。好ましくは、こうした置換は、以下の表の第3列の同じ行のアミノ酸間で起こる。保存的アミノ酸置換はまた、以下の表に列挙するような芳香族アミノ酸間で行われてもよい。
【0060】
【表1】
【0061】
合成的産生
当該技術分野で知られる標準的ペプチド合成技術を用いて、例えばtBocまたはFmoc化学を用い、自動的ペプチド合成装置(例えばモデル433A;Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)を用いて行われる固相ペプチド合成によって、本発明のPYY3−36変異体、例えば(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36を調製してもよい。利用可能な多くのペプチド合成技術の要約は、Solid Phase Peptide Synthesis 第2版(Stewart, J.M.およびYoung, J.D., Pierce Chemical Company, イリノイ州ロックフォード, 1984)に見出されうる。また、書籍、Solid−phase Organic Synthesis(Burgess, K., John Wiley & Sons, ニューヨーク州ニューヨーク, 2000)および文献、Engelsら, Angew. Chem. Intl. Ed. 28:716−34, 1989もまた参照されたい。上記参考文献はすべて、本明細書に援用される。
【0062】
好ましくは、本発明のPYY3−36変異体をPEGとコンジュゲート化する。PEG化反応と呼ばれるコンジュゲート化反応は、歴史的に、ポリマーのモル過剰で、そしてポリマーがタンパク質に付着する場所にかかわらず、溶液中で行われた。しかし、こうした一般的技術は、典型的には、十分な生物活性を保持しながら、非抗原性ポリマーに生物活性タンパク質をコンジュゲート化するのに不適切であることが立証されてきている。PEG化後、PYY3−36アゴニスト変異体の生物活性を維持する1つの方法は、カップリング・プロセスにおいて、ターゲット受容体へのアゴニストの結合と関連する、変異体のいかなる反応性の基のコンジュゲート化も実質的に回避することである。本発明の側面は、高レベルの活性を保持するため、受容体結合部位(単数または複数)に実質的に干渉しない、特定の反応性部位で、本発明のPYY3−36変異体アゴニストにポリエチレングリコールをコンジュゲート化するプロセスを提供することである。本発明の別の側面は、PYY3−36内に反応性残基を挿入して、活性改変が限られている、ポリエチレングリコールとのコンジュゲート化用のアゴニスト変異体を提供することである。
【0063】
活性化されたPEGと生物学的活性物質のコンジュゲート化反応において、一般的に採用されるいかなる適切な条件下で、共有結合を通じた化学修飾を行ってもよい。比較的穏やかな条件下で、コンジュゲート化反応を行って、PYY3−36変異体アゴニストの不活性化を回避する。穏やかな条件には、約3〜10の範囲内の反応溶液のpH、および約0℃〜40℃の範囲内の反応温度を維持することが含まれる。PEG化条件下で、活性化されたPEGと反応性であるPYY3−36変異体中の非ターゲット官能性は、好ましくは、ターゲット官能性でのPEG化後に除去可能な適切な保護基で保護される。PEGアルデヒドまたはPEGスクシンイミドなどの試薬を用いた未結合アミノ基のPEG化において、約3〜10、好ましくは約4〜7.5の範囲内のpHが、典型的には維持される。好ましくは、適切な緩衝液(pH3〜10)、例えば、リン酸、MES、クエン酸、酢酸、コハク酸またはHEPES緩衝液中、約4℃〜40℃の範囲内の温度で、約1〜48時間、カップリング反応を行う。PEGマレイミド、PEGビニルスルホンまたはPEGオルトピリジルジスルフィドなどの試薬を用いて、チオール基をPEG化する際、好ましくは、約4〜8の範囲内のpHが維持される。PEGアミンは、例えばp−アセチルフェニルアラニンにおける、ケト基のPEG化の際に有用であり、そしてPillaiら, J. Org. Chem. 45:5364−5370, 1980に記載されるように調製可能である。
【0064】
本発明のコンジュゲート化反応は、典型的には、所望のモノPEG化PYY3−36変異体ならびに反応していないPYY3−36変異体ペプチド、反応していないPEGを含有し、そして通常は高分子量種を約20%未満含有し、これには、1より多いPEG鎖および/または凝集した種を含有するコンジュゲートが含まれていてもよい。反応していない種および高分子量種を取り除いた後、主としてモノPEG化されたPYY3−36変異体を含有する組成物を回収する。コンジュゲートにはしばしば単一ポリマー鎖が含まれることを考慮すると、コンジュゲートは実質的に均質である。
【0065】
透析、塩析、限外ろ過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、ゲルクロマトグラフィーおよび電気泳動などの、タンパク質精製に典型的に用いられる慣用法によって、反応混合物から、所望のPEG−PYY3−36変異体コンジュゲートを精製してもよい。反応していないPEGまたは反応していないPYY3−36変異体のいずれを取り除く際でも、イオン交換クロマトグラフィーが特に有効である。脱アミド化を回避するため、約4〜約10、好ましくは8未満のpHを有する緩衝溶液中に、混合された種を含有する反応混合物を入れることによって、所望のPEG−変異体コンジュゲートの分離を達成してもよい。緩衝溶液は、好ましくは、限定されるわけではないが、KCl、NaCl、K2HPO4、KH2PO4、Na2HPO4、NaH2PO4、NaHCO3、NaBO4およびCH3CO2Naから選択される1以上の緩衝塩を含有する。
【0066】
PEG化反応で用いられる緩衝系が分離プロセスで用いられるものと異なる場合、PEG化反応混合物を緩衝剤交換/ダイアフィルトレーションに供するか、または十分な量の初期分離緩衝液で希釈する。
【0067】
好ましくは、イオン交換クロマトグラフィー媒体を用いてコンジュゲートを分画して、所望の種を含有するプールにする。こうした媒体は、幾分予測可能な方式で変化する、荷電の相違を介して、PEG−PYY3−36変異体コンジュゲートに選択的に結合可能である。例えば、PEGの存在によって損なわれないカラム支持体との相互作用のために利用可能な、ペプチド表面上の利用可能な荷電基の数によって、PYY3−36変異体の表面荷電が決定される。これらの荷電基は、典型的には、PEGポリマーの潜在的付着点として働く。したがって、PEG−PYY3−36変異体コンジュゲートは、存在する他の種とは異なる荷電を有し、選択的単離が可能になるであろう。
【0068】
イオン交換樹脂は、本発明のPEG−PYY3−36変異体コンジュゲートの精製に特に好ましい。本発明の精製法において、スルホプロピル樹脂などの陽イオン交換樹脂を用いる。本発明とともに用いるのに適している、陽イオン交換樹脂の限定されないリストには、SP−hitrap(登録商標)、SP Sepharose HP(登録商標)およびSP Sepharose(登録商標)ファーストフローが含まれる。他の適切な陽イオン交換樹脂、例えばSおよびCM樹脂もまた、使用可能である。
【0069】
好ましくは、陽イオン交換樹脂をカラム内に充填し、そして慣用的手段によって平衡化する。PEGコンジュゲート化PYY3−36変異体の溶液と同じpHおよび浸透圧を有する緩衝液を用いる。溶出緩衝液は、好ましくは、限定されるわけではないが、CH3CO2Na、HEPES、KCl、NaCl、K2HPO4、KH2PO4、Na2HPO4、NaH2PO4、NaHCO3、NaBO4、および(NH4)2CO3から選択される1以上の塩を含有する。次いで、コンジュゲート含有溶液をカラム上に吸着させると、未反応PEGおよびいくつかの高分子量種は保持されない。装填完了後、塩濃度を増加させる溶出緩衝液の勾配フローをカラムに適用して、PEGコンジュゲート化PYY3−36変異体の所望の分画を溶出させる。溶出され、プールされる分画は、好ましくは、陽イオン交換分離工程後の均質なポリマーコンジュゲートに限られる。次いで、慣用的技術によって、コンジュゲート化されていないPYY3−36変異体種をカラムから洗浄してもよい。所望の場合、モノPEG化および多PEG化PYY3−36変異体種ならびにより高分子量の種を、さらなるイオン交換クロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィーを介して、互いに、さらに分離してもよい。
【0070】
直線勾配の代わりに、濃度が増加する多重アイソクラチック工程を利用する技術を用いてもよい。濃度が増加する多重アイソクラチック溶出工程は、多重PEG化/凝集コンジュゲートの連続溶出、および次いでモノPEG化PYY3−36変異体コンジュゲートを生じるであろう。pH勾配に基づく溶出技術もまた、使用可能である。溶出の温度範囲は、一般的に、約4℃〜約25℃の間である。280nmのUV吸光によって、PEG−PYY3−36変異体の溶出を監視する。単純な時間溶出プロフィールを通じて、分画収集を達成してもよい。
組換え発現
核酸分子
(E10C)hPYY3−36ポリペプチドをコードする核酸分子は、以下の核酸配列の1つを含んでもよい(E10C置換のためのコドン突然変異を下線で示す):
atcaaacccgaggctcccggctgtgacgcctcgccggaggagctgaaccgctactacgcctccctgcgccactacctcaacctggtcacccggcagcggtat(配列番号5);または
atcaaacccgaggctcccggctgcgacgcctcgccggaggagctgaaccgctactacgcctccctgcgccactacctcaacctggtcacccggcagcggtat(配列番号6)。
【0071】
(D11C)hPYY3−36ポリペプチドをコードする核酸分子は、以下の核酸配列の1つを含んでもよい(D11C置換のためのコドン突然変異を下線で示す):
atcaaacccgaggctcccggcgaatgtgcctcgccggaggagctgaaccgctactacgcctccctgcgccactacctcaacctggtcacccggcagcggtat(配列番号7);または
atcaaacccgaggctcccggcgaatgcgcctcgccggaggagctgaaccgctactacgcctccctgcgccactacctcaacctggtcacccggcagcggtat(配列番号8)。
【0072】
これらの配列にはまた、C末端に停止コドン(例えばtga、taa、tag)も含まれてもよいし、そして限定なしに、化学的合成、cDNAまたはゲノムライブラリースクリーニングから得られる野生型hPYYポリヌクレオチド配列の遺伝子突然変異、発現ライブラリースクリーニング、および/またはcDNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を含む多様な方法で、これらの配列を容易に得ることも可能である。プライマー(単数または複数)が望ましい点突然変異を有する、部位特異的突然変異誘発、PCR増幅、または他の適切な方法を用いて、(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36変異体をコードする核酸分子を産生してもよい。本明細書記載の組換えDNA法および突然変異誘発法は、一般的に、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)およびCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら監修, Green Publishers Inc.およびWiley and Sons 1994)に示されるものである。別の非天然存在アミノ酸が、E10またはD11を置換することが望ましい場合、例えば、本明細書に援用される米国特許出願公報第2005/0208536号に開示されるような方法を用いて、こうしたペプチドを組換え的に発現してもよい。
【0073】
発現されたタンパク質の特性に基づく陽性クローンの検出を使用する発現クローニングによって、hPYYのアミノ酸配列をコードする核酸ポリヌクレオチドを同定してもよい。典型的には、宿主細胞表面上に発現され、そしてディスプレイされる、クローニングされたタンパク質に対する、抗体または他の結合性パートナー(例えば受容体またはリガンド)の結合によって核酸ライブラリーをスクリーニングする。抗体または結合性パートナーを検出可能標識で修飾して、所望のクローンを発現している細胞を同定する。
【0074】
以下に示す説明にしたがって行う組換え発現技術にしたがって、(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36をコードするポリヌクレオチドを産生して、そしてコードされるポリペプチドを発現してもよい。例えば、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36変異体のアミノ酸配列をコードする核酸配列を、適切なベクター内に挿入することによって、当業者は、容易に、所望のヌクレオチド配列を多量に産生可能である。次いで、該配列を用いて、検出プローブまたは増幅プライマーを生成してもよい。あるいは、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを、発現ベクターに挿入してもよい。発現ベクターを適切な宿主に導入することによって、コードされる(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36変異体を多量に産生可能である。
【0075】
適切な核酸配列を得るための別な方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。この方法において、酵素、逆転写酵素を用いて、ポリ(A)+RNAまたは総RNAから、cDNAを調製する。次いで、典型的には、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36変異体のアミノ酸配列をコードするcDNAの2つの離れた領域に相補的である、2つのプライマーを、Taqポリメラーゼなどのポリメラーゼと一緒に、cDNAに添加し、そして該ポリメラーゼが2つのプライマー間のcDNA領域を増幅する。
【0076】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36変異体のアミノ酸配列をコードする核酸分子を調製する別の手段は、Engelsら, Angew. Chem. Intl. Ed. 28:716−34, 1989に記載されるものなど、当業者に周知の方法を用いた化学合成である。これらの方法には、核酸合成のための、ホスホトリエステル法、ホスホロアミダイト法、およびH−ホスホネート法が含まれる。こうした化学合成のための好ましい方法は、標準的ホスホロアミダイト化学を用いた、ポリマーが補助する合成である。典型的には、(E10C)hPYY3−36のアミノ酸配列をコードするDNAは、長さ約100ヌクレオチドであろう。約100ヌクレオチドより大きい核酸を、これらの方法を用いて、いくつかの断片として合成可能である。次いで、断片を一緒に連結して、(E10C)hPYY3−36遺伝子の全長ヌクレオチド配列を形成してもよい。
【0077】
ポリペプチドのアミノ末端をコードするDNA断片は、ATGを有してもよく、ATGはメチオニン残基をコードする。このメチオニンは、宿主細胞において産生されるポリペプチドが、その細胞から分泌されるように設計されているかどうかに応じて、(E10C)hPYY3−36または(DIIC)LP443−36の成熟型上に存在しても、またはしなくてもよい。イソロイシンをコードするコドンもまた、出発部位として使用可能である。当業者に知られる他の方法もまた、使用可能である。特定の態様において、所定の宿主細胞において、核酸変異体は、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36の最適な発現のために改変されているコドンを含有する。特定のコドン改変は、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36、および発現のために選択した宿主細胞に応じるであろう。多様な方法によって、例えば、所定の宿主細胞において、高発現される遺伝子で使用が好まれるコドンを選択することによって、こうした「コドン最適化」を行ってもよい。高発現される細菌遺伝子のコドン優先性に関する、「Eco_high.Cod」などのコドン頻度表を取り込むコンピュータアルゴリズムが使用可能であり、そしてこうしたアルゴリズムは、ウィスコンシン大学パッケージ、バージョン9.0(Genetics Computer Group、ウィスコンシン州マディソン)によって提供される。他の有用なコドン頻度表には、「Celegans_high.cod」、「Celegans_low.cod」、「Drosophila_high.cod」、「Human_high.cod」、「Maize_high.cod」、および「Yeast_high.cod」が含まれる。
【0078】
ベクターおよび宿主細胞
標準的連結技術を用いて、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36のアミノ酸配列をコードする核酸分子を、適切な発現ベクター内に挿入する。典型的には、使用する特定の宿主細胞において機能するように、ベクターを選択する(すなわち、遺伝子の増幅および/または遺伝子の発現が起こりうるように、ベクターが宿主細胞機構と適合する)。(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36のアミノ酸配列をコードする核酸分子を、原核、酵母、昆虫(バキュロウイルス系)および/または真核宿主細胞において、増幅/発現してもよい。発現ベクターの概説に関しては、Meth. Enz., vol. 185(D. V. Goeddel監修, Academic Press, 1990)を参照されたい。
【0079】
典型的には、いかなる宿主細胞で用いられる発現ベクターも、プラスミドを維持するための配列、ならびに外因性ヌクレオチド配列のクローニングおよび発現のための配列を含有するであろう。こうした配列は、特定の態様において、集合的に「隣接配列」と呼ばれ、典型的には、以下のヌクレオチド配列:プロモーター、1以上のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、ドナーおよびアクセプター・スプライス部位を含有する完全イントロン配列、ポリペプチド分泌のためのリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現しようとするポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、ならびに選択可能マーカー要素の1以上を含むであろう。これらの配列各々を以下に論じる。
【0080】
場合によって、ベクターは、「タグ」コード配列;すなわち(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36コード配列の5’端または3’端に位置するオリゴヌクレオチド分子を含有してもよく;オリゴヌクレオチド配列は、ポリHis(ヘキサHisなど)、あるいは商業的に入手可能な抗体が存在する、FLAG、HA(インフルエンザウイルス赤血球凝集素)、またはmycなどの別の「タグ」をコードする。典型的には、ポリペプチドの発現に際して、このタグをポリペプチドに融合し、そしてこのタグは、宿主細胞からの(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36のアフィニティー精製のための手段として働きうる。例えば、アフィニティーマトリックスとして、タグに対する抗体を用いるカラム・クロマトグラフィーによって、アフィニティー精製を達成してもよい。場合によって、続いて、切断のための特定のペプチダーゼ、例えば配列番号3〜4に示すようなアミノ酸配列の1つの上流であるFLAGタグ配列の3’のエンテロキナーゼ消化を用いるなどの多様な手段によって、精製(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36から、タグを除去してもよい。
【0081】
隣接配列は同種(すなわち、宿主細胞と同じ種および/または株由来)、異種(すなわち宿主細胞種または株以外の種由来)、ハイブリッド(すなわち1より多い供給源由来の隣接配列の組み合わせ)、または合成であってもよいし、あるいは隣接配列は、通常、hPYY3−36発現を制御するように機能する天然配列であってもよい。隣接配列供給源は、隣接配列が宿主細胞機構において機能し、そして該機構によって活性化可能である限り、いかなる原核または真核生物、いかなる脊椎または無脊椎生物、またはいかなる植物であってもよい。
【0082】
当該技術分野に周知のいくつかの方法のいずれかによって、有用な隣接配列を得てもよい。典型的には、PYY遺伝子隣接配列以外の、本明細書で有用な隣接配列は、マッピングによって、そして/または制限エンドヌクレアーゼ消化によって、先に同定されてきているであろうし、そしてしたがって、適切な制限エンドヌクレアーゼを用いて、適切な組織供給源から単離可能である。いくつかの場合、隣接配列の全長ヌクレオチド配列が既知でありうる。この場合、核酸合成またはクローニングのため、本明細書記載の方法を用いて、隣接配列を合成してもよい。
【0083】
隣接配列のすべてまたは一部のみが既知である場合、PCRを用いて、そして/または適切なオリゴヌクレオチドおよび/または同じ種もしくは別の種の隣接配列断片でゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって、隣接配列を得てもよい。隣接配列が未知である場合、例えばコード配列または別の単数もしくは複数の遺伝子さえ含有してもよい、DNAのより大きいピースから、隣接配列を含有するDNA断片を単離してもよい。制限エンドヌクレアーゼ消化で、適切なDNA断片を産生して、その後、アガロースゲル精製、Qiagen(登録商標)カラム・クロマトグラフィー(カリフォルニア州チャツワース)、または当業者に知られる他の方法を用いた単離によって単離を達成してもよい。この目的を達成するのに適した酵素の選択は、当業者には容易に明らかであろう。
【0084】
複製起点は、典型的には、商業的に購入した原核発現ベクターの一部であり、そして起点は、宿主細胞におけるベクターの増幅を援助する。ベクターの特定のコピー数への増幅は、いくつかの場合、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36の最適な発現に重要でありうる。選択したベクターが、複製起点部位を含有しない場合、既知の配列に基づいて化学的に合成し、そしてベクター内に連結してもよい。例えば、プラスミドpBR322(New England Biolabs、マサチューセッツ州ビバリー)由来の複製起点は、大部分のグラム陰性細菌に適しており、そして哺乳動物細胞におけるクローニングベクターには、多様な起点(例えばSV40、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、またはHPVもしくはBPVなどのパピローマウイルス)が有用である。一般的に、複製起点構成要素は、哺乳動物発現ベクターには必要ではない(例えば、SV40起点は、しばしば、ただ、初期プロモーターを含有するために用いられる)。
【0085】
転写終結配列は、典型的には、ポリペプチドコード領域の3’端に位置し、そして転写を終結させるように働く。通常、原核細胞における転写終結配列は、G−Cリッチ断片に続いて、ポリT配列である。配列はライブラリーから容易にクローニングされるか、またはベクターの一部として商業的に購入されさえするが、また、本明細書記載のものなどの核酸合成法を用いて、容易に合成可能でもある。
【0086】
選択可能マーカー遺伝子要素は、選択培地中で増殖する宿主細胞の生存および増殖に必要なタンパク質をコードする。典型的な選択マーカー遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えばアンピシリン、テトラサイクリン、またはカナマイシンに対する耐性を、原核宿主細胞に与えるか;(b)細胞の栄養要求欠損を補完するか;あるいは(c)複合培地から入手可能でない必須栄養素を供給する、タンパク質をコードする。好ましい選択可能マーカーは、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、およびテトラサイクリン耐性遺伝子である。原核および真核宿主細胞における選択のため、ネオマイシン耐性遺伝子もまた使用可能である。
【0087】
他の選択遺伝子を用いて、発現しようとする遺伝子を増幅してもよい。増幅は、増殖に必須のタンパク質の産生のためにより大きい需要がある遺伝子が、組換え細胞の続く世代の染色体内でタンデムに反復されるプロセスである。哺乳動物細胞に適した選択可能マーカーの例には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)およびチミジンキナーゼが含まれる。哺乳動物細胞形質転換体を選択圧下に置き、この選択圧下では、ベクターに存在する選択遺伝子のおかげで、形質転換体のみが生存するようユニークに適応している。培地中の選択剤の濃度が連続して変化する条件下で形質転換細胞を培養することによって、選択圧を課し、それによって、選択遺伝子、および(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36をコードするDNAの両方の増幅を導く。その結果、増幅されたDNAから、増加した量の(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36が合成される。
【0088】
リボソーム結合部位は、通常、mRNAの翻訳開始に必要であり、そしてシャイン−ダルガノ配列(原核生物)またはコザック配列(真核生物)によって特徴付けられる。この要素は、典型的にはプロモーターの3’に、そして発現しようとする(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36のコード配列の5’に位置する。シャイン−ダルガノ配列は、多様であるが、典型的にはポリプリン(すなわちA−Gを高含量で有する)である。多くのシャイン−ダルガノ配列が同定されてきており、その各々が、本明細書に示す方法を用いて容易に合成可能であり、そして原核ベクター中で使用可能である。
【0089】
リーダー配列、またはシグナル配列を用いて、宿主細胞外に(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36を導くことも可能である。典型的には、シグナル配列をコードするヌクレオチド配列を、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36核酸分子のコード領域内に配置するか、あるいは(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36コード領域の5’端に直接配置する。多くのシグナル配列が同定されてきており、そして選択した宿主細胞で機能するもののいずれを、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36核酸分子と組み合わせて使用してもよい。したがって、シグナル配列は、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36核酸分子に対して同種(天然存在)であってもまたは異種であってもよい。さらに、本明細書記載の方法を用いて、シグナル配列を化学的に合成してもよい。大部分の場合、シグナルペプチドの存在を介した、宿主細胞からの(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36の分泌は、分泌された(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36からのシグナルペプチドの除去を生じるであろう。シグナル配列は、ベクターの構成要素であってもよいし、あるいはベクターに挿入された(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36核酸分子の一部であってもよい。
【0090】
天然hPYY3−36シグナル配列をコードするヌクレオチド配列を、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36コード領域に連結するか、あるいは異種シグナル配列をコードするヌクレオチド配列を、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36コード領域に連結してもよい。選択する異種シグナル配列は、宿主細胞によって認識され、そしてプロセシングされる、すなわちシグナルペプチダーゼによって切断されるものでなければならない。天然hPYYシグナル配列を認識せず、そしてプロセシングしない原核宿主細胞の場合は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、または熱安定性内毒素IIリーダーの群から選択した原核シグナル配列によって、シグナル配列を置換する。酵素分泌の場合、酵素インベルターゼ、アルファ因子、または酸ホスファターゼ・リーダーによって、天然hPYYシグナル配列を置換してもよい。哺乳動物細胞発現においては、天然シグナル配列で十分であるが、他の哺乳動物シグナル配列が適切でありうる。
【0091】
多くの場合、核酸分子の転写は、ベクター中の1以上のイントロンの存在によって増加し;これは、真核宿主細胞、特に哺乳動物宿主細胞でポリペプチドを産生する場合、特に当てはまる。用いるイントロンは、用いる遺伝子が全長ゲノム配列またはその断片である場合は特に、hPYY遺伝子内に天然に存在するものであってもよい。(大部分のcDNAの場合のように)イントロンが遺伝子内に天然に存在しない場合、イントロンを別の供給源から得てもよい。イントロンは有効であるためには転写されなければならないため、一般的に、隣接配列およびhPYY遺伝子に対するイントロンの位置が重要である。したがって、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36をコードするcDNA分子が転写される際、イントロンの好ましい位置は、転写開始部位の3’であり、そしてポリA転写終結配列の5’である。好ましくは、単数または複数のイントロンは、イントロンがコード配列を中断しないように、cDNAの一方の側または他方の側(すなわち5’または3’)に位置するであろう。挿入しようとする宿主細胞に適合するという条件で、ウイルス、原核および真核(植物または動物)生物を含む、いかなる供給源由来のいかなるイントロンを用いてもよい。本明細書にやはり含まれるのは合成イントロンである。場合によって、ベクター中で、1より多いイントロンを用いてもよい。
【0092】
発現およびクローニングベクターは、典型的には、宿主生物によって認識され、そして(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36をコードする分子に機能可能であるように連結されたプロモーターを含有するであろう。プロモーターは、構造遺伝子(一般的に約100〜1000bp以内)の開始コドンの上流(すなわち5’)に位置する転写されない配列であり、構造遺伝子の転写を制御する。プロモーターは、慣用的には、2つの種類:誘導性プロモーターおよび構成的プロモーターの一方に分類される。誘導性プロモーターは、栄養素の存在または非存在、あるいは温度の変化などの培養条件の何らかの変化に応じて、制御下にあるDNAからの転写レベル増加を開始する。一方、構成的プロモーターは、継続的な遺伝子産物産生を開始し;すなわち遺伝子発現に対してはほとんどまたはまったく制御がない。多様な潜在的宿主細胞によって認識される、多数のプロモーターが周知である。制限酵素消化によって供給源DNAからプロモーターを除去し、そしてベクター内に所望のプロモーター配列を挿入することによって、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36をコードするDNAに、適切なプロモーターを機能可能であるように連結する。天然hPYY3−36プロモーター配列を用いて、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36核酸分子の増幅および/または発現を指示してもよい。しかし、異種プロモーターが、天然プロモーターに比較して、より多い転写を可能にし、そしてより高収率の発現タンパク質を可能にするならば、そして使用のために選択されている宿主細胞系と適合するならば、異種プロモーターが好ましい。
【0093】
原核宿主での使用に適したプロモーターには、ベータ−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系;大腸菌(E. coli)T7誘導性RNAポリメラーゼ;アルカリホスファターゼ;トリプトファン(trp)プロモーター系;およびtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが含まれる。他の既知の細菌プロモーターもまた適切である。それらの配列は公開されており、そのため、必要に応じて、リンカーまたはアダプターを用いて任意の有用な制限部位を供給し、当業者がこれらの配列を連結して所望のDNA配列にすることが可能である。
【0094】
酵母宿主で使用するのに適したプロモーターもまた、当該技術分野に周知である。酵母エンハンサーは、酵母プロモーターとともに好適に用いられる。哺乳動物宿主細胞で使用するのに適したプロモーターが周知であり、そしてこれらには、限定されるわけではないが、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2など)、ウシ・パピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよび最も好ましくはサルウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるものが含まれる。他の適切な哺乳動物プロモーターには、異種哺乳動物プロモーター、例えば熱ショックプロモーターおよびアクチンプロモーターが含まれる。
【0095】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36の発現を制御する際に関心が持たれうる、さらなるプロモーターには、限定されるわけではないが:SV40初期プロモーター領域(BemoistおよびChambon, Nature 290:304−10, 1981);CMVプロモーター;ラウス肉腫ウイルスの3’末端反復配列に含有されるプロモーター(Yamamotoら, Cell 22:787−97, 1980);ヘルペス・チミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1444−45, 1981);メタロチオネイン遺伝子の制御配列(Brinsterら, Nature 296:39−42, 1982);ベータ−ラクタマーゼプロモーターなどの原核発現ベクター(Villa−Kamaroffら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 75:3727−31, 1978);またはtacプロモーター(DeBoerら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 80:21−25, 1983)が含まれる。
【0096】
エンハンサー配列をベクター内に挿入して、より高次の真核生物における(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36をコードするDNAの転写を増加させてもよい。エンハンサーは、DNAのシス作用要素であり、通常、長さ約10〜300bpで、プロモーターに対して転写を増加させるように作用する。エンハンサーは、比較的、配向および位置独立性である。エンハンサーは、転写単位に対して、5’および3’で見出されている。哺乳動物遺伝子から入手可能ないくつかのエンハンサー配列が知られる(例えばグロビン、エラスターゼ、アルブミン、アルファ−フェトプロテインおよびインスリン)。しかし、典型的には、ウイルス由来のエンハンサーを用いるであろう。SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーは、真核生物プロモーターの活性化のための例示的な増進要素である。エンハンサーを、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36コード核酸分子の5’または3’の位で、ベクター内にスプライシングしてもよいが、典型的には、エンハンサーはプロモーターの5’の部位に位置する。
【0097】
商業的に入手可能なベクターなどの出発ベクターから、発現ベクターを構築してもよい。こうしたベクターは、所望の隣接配列をすべて含有してもまたしなくてもよい。本明細書記載の隣接配列の1以上が、すでにベクターに存在しているのではない場合、これらを個々に得て、そしてベクター内に連結してもよい。各隣接配列を得るための方法は、当業者に周知である。
【0098】
好ましいベクターは、細菌、昆虫、および哺乳動物宿主細胞と適合するものである。こうしたベクターには、とりわけ、pCRII、pCR3、およびpcDNA3.1(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)、pBSII(Stratagene、カリフォルニア州ラホヤ)、pET15(Novagen、ウィスコンシン州マディソン)、pGEX(Pharmacia Biotech、ニュージャージー州ピスカタウェイ)、pEGFP−N2(Clontech、カリフォルニア州パロアルト)、pETL(BlueBacII、Invitrogen)、pDSR−アルファ(PCT出願公報第WO 90/14363号)ならびにpFastBacDual(Gibco−BRL、ニューヨーク州グランドアイランド)が含まれる。
【0099】
さらなる適切なベクターには、限定されるわけではないが、コスミド、プラスミド、または修飾ウイルスが含まれるが、ベクター系が、選択した宿主細胞と適合しなければならないことが認識されるであろう。こうしたベクターには、限定されるわけではないが、Bluescript(登録商標)プラスミド誘導体(ColE1に基づく高コピー数ファージミド、Stratagene)、Taq増幅されたPCR産物をクローニングするために設計されたPCRクローニングプラスミド(例えばTOPO(登録商標)TAクローニング(登録商標)キット、PCR2.1(登録商標)プラスミド誘導体、Invitrogen)などのプラスミド、およびバキュロウイルス発現系(pBacPAKプラスミド誘導体、Clontech)などの哺乳動物、酵母またはウイルスベクターが含まれる。
【0100】
ベクターが構築され、そして(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドをコードする核酸分子がベクターの適切な部位内に挿入された後、増幅および/またはポリペプチド発現のため、完成したベクターを適切な宿主細胞内に挿入してもよい。トランスフェクション、感染、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、DEAE−デキストラン法、または他の既知の技術などの方法を含む、周知の方法によって、選択した宿主細胞内への(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドの発現ベクターの形質転換を達成してもよい。選択する方法は、部分的に、用いようとする宿主細胞の種類に関連するであろう。これらの方法および他の適切な方法が当業者に周知であり、そして例えば、Sambrookら、上記に示される。
【0101】
宿主細胞は、原核宿主細胞(大腸菌など)または真核宿主細胞(酵母、昆虫、または脊椎動物細胞など)であってもよい。宿主細胞を、適切な条件下で培養すると、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドが合成され、これを続いて、培地から収集する(宿主細胞がポリペプチドを培地内に分泌する場合)か、またはポリペプチドを産生する宿主細胞から直接収集してもよい(ポリペプチドが分泌されない場合)。適切な宿主細胞の選択は、所望の発現レベル、活性のために望ましいかまたは必要であるポリペプチド修飾(グリコシル化またはリン酸化など)および生物学的活性分子へのフォールディングの容易さなどの多様な要因に応じるであろう。
【0102】
いくつかの適切な宿主細胞が当該技術分野に知られ、そして多くが、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)、バージニア州マナサスから入手可能である。例には、限定されるわけではないが、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、CHO DHFR(−)細胞(Urlaubら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97:4216−20, 1980)、ヒト胚性腎(HEK)293または293T細胞、あるいは3T3細胞が含まれる。形質転換、培養、増幅、スクリーニング、産物産生、および精製に適した哺乳動物宿主細胞および方法の選択が、当該技術分野に知られる。他の適切な哺乳動物細胞株はサルCOS−1およびCOS−7細胞株、ならびにCV−1細胞株である。さらなる例示的な哺乳動物宿主細胞には、形質転換された細胞株を含む、霊長類細胞株およびげっ歯類細胞株が含まれる。正常二倍体細胞、初代組織のin vitro培養由来の細胞株ならびに初代外植片もまた、適切である。候補細胞は、選択遺伝子において、遺伝型的に欠損していてもよいし、または優性に作用する選択遺伝子を含有してもよい。他の適切な哺乳動物細胞株には、限定されるわけではないが、マウス神経芽細胞腫N2A細胞、HeLa、マウスL−929細胞、Swiss、Balb−cまたはNIHマウス由来の3T3株、BHKまたはHaKハムスター細胞株が含まれる。これらの細胞株は各々、タンパク質発現の当業者によって知られ、そしてこうした当業者に対して入手可能である。
【0103】
適切な宿主細胞として同様に有用なのは、細菌細胞である。例えば、大腸菌の多様な株(例えばHB101、DH5α、DH10、およびMC1061)が、バイオテクノロジー分野において、宿主細胞として周知である。枯草菌(B. subtilis)、シュードモナス属(Pseudomonas)種、他のバチルス属(Bacillus)種、およびストレプトミセス属(Streptomyces)種の多様な株もまた、本方法で使用可能である。
【0104】
当業者に知られる酵母細胞の多くの株もまた、(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36ポリペプチドの発現のための宿主細胞として、利用可能である。好ましい酵母細胞には、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerivisae)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)が含まれる。
【0105】
さらに、望ましい場合、(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36の発現のために、昆虫細胞系を利用してもよい。こうした系は、例えば、Kittsら, 1993, Biotechniques 14:810−17;Lucklow, Curr. Opin. Biotechnol. 4:564−72, 1993;およびLucklowら, J. Virol., 67:4566−79, 1993に記載される。好ましい昆虫細胞は、Sf−9およびHi5(Invitrogen)である。
【0106】
(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36ポリペプチド産生
当業者に周知の標準的培地を用いて、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36発現ベクターを含む宿主細胞株を培養してもよい。培地は通常、細胞の増殖および生存に必要なすべての栄養素を含有するであろう。大腸菌細胞を培養するのに適した培地には、例えばルリア・ブロス(LB)および/またはテリフィック・ブロス(TB)が含まれる。真核細胞を培養するのに適した培地には、Roswell Park Memorial Institute培地1640(RPMI 1640)、最小必須培地(MEM)および/またはダルベッコの修飾イーグル培地(DMEM)が含まれ、これらにはすべて、培養中の特定の細胞株の必要に応じて、血清および/または増殖因子を補ってもよい。昆虫培養に適した培地は、必要に応じて、イーストレート、ラクトアルブミン加水分解物、および/またはウシ胎児血清を補ったグレース培地である。
【0107】
典型的には、トランスフェクションまたは形質転換された細胞の選択的増殖に有用な抗生物質または他の化合物を、補充物として培地に添加する。用いるべき化合物は、宿主細胞を形質転換するプラスミド上に存在する選択可能マーカー要素によって決定されるであろう。例えば、選択可能マーカー要素がカナマイシン耐性である場合、培地に添加される化合物は、カナマイシンであろう。選択的増殖のための他の化合物には、アンピシリン、テトラサイクリン、およびネオマイシンが含まれる。
【0108】
当該技術分野に知られる標準法を用いて、宿主細胞によって産生される(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドの量を評価してもよい。こうした方法には、限定なしに、ウェスタンブロット分析、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、非変性ゲル電気泳動、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)分離、免疫沈降、および/またはDNA結合ゲルシフトアッセイなどの活性アッセイが含まれる。
【0109】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36が、宿主細胞株から分泌されるように設計されている場合、ポリペプチドの大部分は、細胞培地中に見られうる。しかし、ポリペプチドが宿主細胞から分泌されない場合、ポリペプチドは細胞質および/または核(真核宿主細胞の場合)に、あるいは細胞質ゾル(グラム陰性細菌宿主細胞の場合)に存在するであろう。
【0110】
宿主細胞細胞質および/または核(真核宿主細胞の場合)に、あるいは細胞質ゾル(細菌宿主細胞の場合)に位置した(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36の場合、当業者に知られるいかなる標準的技術を用いて、宿主細胞から細胞内物質(グラム陰性細菌の場合の封入体を含む)を抽出してもよい。例えば、フレンチプレス、ホモジナイズ、および/または超音波処理によって、宿主細胞を溶解して、周辺質/細胞質の内容物を放出させて、その後、遠心分離してもよい。
【0111】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36が、細胞質中で封入体を形成している場合、封入体は、しばしば、細胞膜の内側および/または外側に結合可能であり、そしてしたがって、遠心分離後のペレット物質中に、主に見られるであろう。次いで、ペレット物質を、極端なpHで、あるいは、アルカリpHではジチオスレイトール、または酸性pHではトリスカルボキシメチルホスフィンなどの還元剤の存在下で、界面活性剤、グアニジン、グアニジン誘導体、尿素または尿素誘導体などのカオトロピック剤で処理してもよい。次いで、ゲル電気泳動、免疫沈降などを用いて、可溶化された(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36を分析してもよい。ポリペプチドを単離することが望ましい場合、本明細書に、そしてMarstonら, Meth. Enz. 182:264−75, 1990に記載されるものなどの標準法を用いて、単離を達成してもよい。
【0112】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36の発現に際して、封入体が、有意な度合いに形成されない場合、ポリペプチドは、細胞ホモジネートの遠心分離後、主に上清中に見られるであろう。本明細書記載のものなどの方法を用いて、上清からポリペプチドをさらに単離してもよい。
【0113】
多様な技術を用いて、溶液からの(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36の精製を達成してもよい。カルボキシル末端またはアミノ末端いずれかで、ヘキサヒスチジン9などのタグ、あるいはFLAG(Eastman Kodak Co.、コネチカット州ニューヘブン)またはmyc(Invitrogen)などの他の小ペプチドを含有するように、ポリペプチドが合成されている場合、カラムマトリックスがタグに対して高い親和性を有する、アフィニティーカラムを通じて溶液を通過させることによって、1工程プロセスでポリペプチドを精製可能である。
【0114】
例えば、ポリヒスチジンは、高親和性および特異性でニッケルに結合する。したがって、精製にニッケルのアフィニティーカラム(Qiagen(登録商標)ニッケルカラムなど)を用いてもよい。例えば、Current Protocols in Molecular Biology §10.11.8(Ausubelら監修, Green Publishers Inc.およびWiley and Sons, 1993)を参照されたい。
【0115】
さらに、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドを特異的に認識し、そして該ポリペプチドに結合可能なモノクローナル抗体の使用を通じて、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドを精製してもよい。
【0116】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドが部分的にまたは実質的に混入物質を含まないように、該ポリペプチドを部分的にまたは完全に精製することが好ましい状況において、当業者に知られる標準法を用いてもよい。こうした方法には、限定なしに、電気泳動による分離後の電気溶出、多様な種類のクロマトグラフィー(アフィニティー、イムノアフィニティー、分子ふるい、およびイオン交換)、HPLC、および分取用等電点電気泳動(「Isoprime」装置/技術、Hoefer Scientific、カリフォルニア州サンフランシスコ)が含まれる。いくつかの場合、2以上の精製技術を組み合わせて、純度増加を達成してもよい。
【0117】
ポリペプチドを産生するためのいくつかのさらなる方法が当該技術分野に知られ、そしてこの方法を用いて、(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36ポリペプチドを産生してもよい。例えば、mRNAおよびコードされるペプチドの間の融合タンパク質の産生を記載する、Robertsら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:12297−303, 1997を参照されたい。また、Roberts, Curr. Opin. Chem. Biol. 3:268−73, 1999も参照されたい。
【0118】
ペプチドまたはポリペプチドを産生するためのプロセスはまた、米国特許第5,763,192号;第5,814,476号;第5,723,323号;および第5,817,483号に記載される。該プロセスは、確率論的(stochastic)遺伝子またはその断片を産生し、そして次いで、宿主細胞内に、これらの遺伝子を導入して、この細胞が、該確率論的遺伝子にコードされる1以上のタンパク質を産生することを伴う。次いで、宿主細胞をスクリーニングして、所望の活性を有するペプチドまたはポリペプチドを産生するクローンを同定する。組換えペプチド発現のための他のプロセスが、米国特許第6,103,495号、第6,210,925号、第6,627,438号、および第6,737,250号に開示される。該プロセスは、大腸菌および大腸菌の一般的な分泌経路を利用する。ペプチドはシグナル配列に融合されて;こうしてペプチドが分泌のためにターゲティングされる。
【0119】
ペプチドまたはポリペプチドを産生するための別の方法が、PCT特許出願公報第WO 99/15650号に記載される。遺伝子発見のための遺伝子発現のランダム活性化と称される、公表されたプロセスは、in situ組換え法による、内因性遺伝子発現の活性化または遺伝子の過剰発現を伴う。例えば、非相同的組換えまたは非正統的組換えによって、遺伝子の発現を活性化することが可能な、ターゲット細胞内への制御配列の組込みによって、内因性遺伝子の発現を活性化するかまたは増加させる。ターゲットDNAをまず、放射線に供し、そして遺伝子プロモーターを挿入する。プロモーターは、最終的に、遺伝子の最前部にブレークを配置し、遺伝子の転写を開始する。これは、所望のペプチドまたはポリペプチドの発現を生じる。
アミド化
ペプチジル−グリシン・アルファ−アミド化モノオキシゲナーゼ(PAM)と呼ばれる酵素によって、合成的または組換え的のいずれかで産生されたペプチドのアミド化を達成する。細菌発現系を用いて(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ペプチドを組換え的に産生する場合、組換えPAM酵素を用いたin vitro反応によって、ペプチドをC末端アミド化することができる。PAM酵素供給源、その産生および精製法、ならびに(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ペプチドをアミド化するために使用可能な方法は、例えば、米国特許第4,708,934号、第5,789,234号、および第6,319,685号に記載される。
選択的(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36抗体
システイン置換部位でのPEG化を伴うまたは伴わない(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドに特異的に結合するが、天然hPYY3−36に選択的に結合しない抗体および抗体断片が、本発明の範囲内にある。抗体は、単一特異的ポリクローナルを含むポリクローナル;モノクローナル;組換え;キメラ;CDR移植などのヒト化;ヒト;一本鎖;および/または二重特異性;ならびにその断片;変異体;または誘導体であってもよい。抗体断片には、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチド上のエピトープに結合する抗体部分が含まれる。こうした断片の例には、全長抗体の酵素的切断によって生成されるFabおよびF(ab’)断片が含まれる。他の結合断片には、抗体可変領域をコードする核酸配列を含有する組換えプラスミドの発現など、組換えDNA技術によって生成されるものが含まれる。
【0120】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドに向けられるポリクローナル抗体は、一般的に、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドおよびアジュバントの多数回のSCまたはIP注射によって、動物(例えばウサギまたはマウス)において産生される。免疫しようとする種において免疫原性であるキャリアータンパク質、例えばキーホール・リンペット(keyhole limpet)・ヘモシアニン、血清アルブミン、ウシ・サイログロブリン、またはダイズ・トリプシン阻害因子に、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドをコンジュゲート化することが有用でありうる。また、ミョウバンなどの凝集剤を用いて、免疫応答を増進する。免疫後、動物から採血し、そして抗(E10C)hPYY3−36または抗(D11C)hPYY3−36抗体力価に関して血清をアッセイする。
【0121】
培養中の連続細胞株によって、抗体分子の産生を提供する方法いずれかを用いて、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドに向けられるモノクローナル抗体を産生する。モノクローナル抗体を調製するのに適した方法の例には、Kohlerら, Nature 256:495−97, 1975のハイブリドーマ法、およびヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor, J. Immunol. 133:3001, 1984; Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, 51−63(Marcel Dekker, Inc., 1987)が含まれる。やはり本発明が提供するのは、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドと反応性であるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株である。
【0122】
競合的阻害によって、モノクローナル抗体特異性および親和性を決定するのに好ましい方法は、HarlowおよびLane, Antibodies: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratories, 1989); Current Protocols in Immunology (Colliganら監修, Greene Publishing Assoc.およびWiley Interscience, 1993);およびMuller, Meth. Enzymol. 92:589−601, 1988に見出されうる。
【0123】
本発明のキメラ抗体は、個々のHおよび/またはL免疫グロブリン鎖を含んでもよい。好ましいキメラH鎖は、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドに特異的な非ヒト抗体のH鎖由来の抗原結合性領域を含み、該領域がCH1またはCH2などのヒトH鎖C領域(CH)の少なくとも一部に連結している。好ましいキメラL鎖は、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドに特異的な非ヒト抗体のL鎖由来の抗原結合性領域を含み、該領域がヒトL鎖C領域(CL)の少なくとも一部に連結している。キメラ抗体およびその産生法が当該技術分野に知られる。Cabillyら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:3273−77, 1984; Morrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:6851−55, 1984; Boulianneら, Nature 312:643−46, 1984; Neubergerら, Nature 314:268−70, 1985; Liuら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:3439−43, 1987;ならびにHarlowおよびLane、上記を参照されたい。
【0124】
同じかまたは異なる可変領域結合特異性のキメラH鎖およびL鎖を有する選択的結合剤もまた、当該技術分野に知られる方法にしたがって、個々のポリペプチド鎖の適切な会合によって、調製可能である。例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら監修, Green Publishers Inc.およびWiley and Sons, 1994)ならびにHarlowおよびLane、上記を参照されたい。このアプローチを用いて、キメラH鎖(またはその誘導体)を発現する宿主細胞を、キメラL鎖(またはその誘導体)を発現する宿主細胞と別個に培養し、そして免疫グロブリン鎖を別個に回収して、そして次いで会合させる。あるいは、宿主細胞を共培養して、そして培地中で鎖を自発的に会合させて、その後、集合した免疫グロブリンを回収する。
【0125】
別の態様において、本発明のモノクローナル抗体は、「ヒト化」抗体である。非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該技術分野に周知である。米国特許第5,585,089号および第5,693,762号を参照されたい。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1以上のアミノ酸残基を有する。例えば、当該技術分野に記載される方法(Jonesら, 1986, Nature 321:522−25; Riechmannら, 1998, Nature 332:323−27; Verhoeyenら, 1988, Science 239:1534−36)を用いて、げっ歯類の相補性決定領域(CDR)の少なくとも一部で、ヒト抗体の対応する領域を置換することによって、ヒト化を行ってもよい。
【0126】
モノクローナル抗体の生成をバイパスする、抗体分子の抗原結合性領域(すなわちFabまたは可変領域断片)の組換えDNAバージョンを生成するための技術が、本発明の範囲内に含まれる。この技術において、免疫動物より採取した免疫系細胞から、抗体特異的メッセンジャーRNA分子を抽出し、そしてcDNAに転写してもよい。次いで、cDNAを細菌発現系にクローニングする。本発明の実施に適した、こうした技術の一例は、発現されたFabタンパク質を周辺質腔(細菌細胞膜および細胞壁の間)に移動させるかまたは分泌させるリーダー配列を有するバクテリオファージ・ラムダ・ベクター系を用いる。多数の機能性Fab断片を迅速に生成し、そして抗原に結合するものに関してスクリーニングすることも可能である。こうした(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36結合性分子((E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドに対する特異性を持つFab断片)は、本明細書において、用語「抗体」内に特に含まれる。
【0127】
やはり本発明の範囲内にあるのは、適切な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子を、適切な生物学的活性(ヒト補体を活性化し、そして抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を仲介する能力など)のヒト抗体分子由来の遺伝子と一緒にスプライシングすることによる、キメラ抗体の産生のために開発された技術である。Morrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:6851−55, 1984; Neubergerら, Nature, 312:604−08, 1984。この技術によって産生された抗体などの選択的結合剤が、本発明の範囲内である。
【0128】
本発明が、マウスまたはラットのモノクローナル抗体に限定されないことが認識されるであろう;実際、ヒト抗体を用いてもよい。ヒト・ハイブリドーマを用いることによって、こうした抗体を得てもよい。(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドに結合する完全ヒト抗体は、したがって、本発明に含まれる。内因性免疫グロブリン産生の非存在下で、ヒト抗体のレパートリーを産生可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)を、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36抗原(場合によってキャリアーにコンジュゲート化される)で免疫することによって、こうした抗体を産生する。例えば、Jakobovitsら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:2551−55, 1993; Jakobovitsら, Nature 362:255−58, 1993; Bruggemannら, Year in Immuno. 7:33−40, 1993を参照されたい。
【0129】
やはり本発明に含まれるのは、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドに結合するヒト抗体である。内因性免疫グロブリン産生の非存在下で、ヒト抗体のレパートリーを産生可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)を用いると、場合によってキャリアーにコンジュゲート化された、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチド抗原(すなわち少なくとも6つの隣接アミノ酸を有する)で免疫することによって、こうした抗体が産生される。例えば、Jakobovitsら, 1993 上記; Jakobovitsら, Nature 362:255−58, 1993; Bruggermannら, 1993、上記を参照されたい。1つの方法において、重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードする内因性遺伝子座を無能力化し、そしてそのゲノム内にヒト重鎖および軽鎖タンパク質をコードする遺伝子座を挿入することによって、こうしたトランスジェニック動物を産生する。次いで、部分的に修飾された動物、すなわち、完全装備の修飾より少ない修飾を有する動物を交雑させて、所望の免疫系修飾すべてを有する動物を得る。免疫原を投与した際、これらのトランスジェニック動物は、これらの抗原に対して免疫特異的である可変領域を含めて、(例えばネズミではなく)ヒト・アミノ酸配列を持つ抗体を産生する。PCT特許出願公報第WO 96/33735号および第WO 94/02602号を参照されたい。さらなる方法が、米国特許第5,545,807号、PCT特許出願公報第WO 91/10741号および第WO 90/04036号に、そしてEP特許第0 546 073 B1号およびPCT特許出願公報第WO 92/03918号に記載される。また、本明細書に記載するように、宿主細胞における組換えDNAの発現によって、またはハイブリドーマ細胞における発現によって、ヒト抗体を産生してもよい。
【0130】
別の態様において、また、ヒト抗体をファージ・ディスプレイ・ライブラリーから産生してもよい(Hoogenboomら, J. Mol. Biol. 227:381, 1991; Marksら, J. Mol. Biol. 222:581, 1991)。これらのプロセスは、線維性バクテリオファージ表面上に抗体レパートリーをディスプレイさせ、そして続いて、選択した抗原への結合によって、ファージを選択することを通じて、免疫選択を模倣する。1つのこうした技術が、PCT特許出願公報第WO 99/10494号に記載され、これはこうしたアプローチを用いた、MPL−およびmsk−受容体に対する、高親和性および機能性のアゴニスト性抗体の単離を記載する。
【0131】
キメラ、CDR移植、およびヒト化抗体は、典型的には組換え法によって産生される。本明細書に記載しそして当該技術分野に知られる材料および方法を用いて、抗体をコードする核酸を宿主細胞内に導入し、そして発現する。好ましい態様において、CHO細胞などの哺乳動物宿主細胞において、抗体を産生する。本明細書に記載するように、宿主細胞における組換えDNAの発現によって、またはハイブリドーマ細胞における発現によって、モノクローナル(例えばヒト)抗体を産生してもよい。
【0132】
(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36ポリペプチドの検出および定量化のため、ならびにポリペプチド精製のため、競合的結合アッセイ、直接および間接的サンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイ(Sola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, 147−158(CRC Press, Inc., 1987))などのいかなる既知のアッセイ法で、本発明の抗(E10C)hPYY3−36および抗(D11C)hPYY3−36抗体を使用してもよい。抗体は、使用しているアッセイ法に適した親和性で、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドに結合するであろう。
【0133】
本発明の方法側面で使用するため、本発明のPYYアゴニストを、薬学的に許容しうる酸付加塩の形で提供してもよい。本化合物の薬学的に許容しうる代表的な酸付加塩には、塩酸塩、臭化水素酸、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンティシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカラート塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、パモ酸塩、パルミチン酸塩、マロン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリル酸塩、リンゴ酸塩、ホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ナフチル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩等が含まれる。非PEG化変異体がPEG−PYY3−36変異体コンジュゲートの調製において、中間体として使用される予定である場合、該変異体の塩は薬学的に許容可能でなくてもよい。
【0134】
本発明のPYYアゴニストは、一般的に、薬剤組成物の形で投与されるであろう。薬剤組成物は、例えば、経口投与(例えば錠剤、カプセル、丸剤、粉末、溶液、懸濁物)、非経口注射(例えば無菌溶液、懸濁物またはエマルジョン)、鼻内投与(例えばエアロゾル滴など)、結腸投与(例えば座薬)または経皮投与(例えばパッチ)に適した型であってもよい。薬剤組成物は、正確な投薬量の単回投与に適した単位投薬型であってもよい。薬剤組成物には、慣用的な薬学的キャリアーおよび活性成分としての本発明のPYYアゴニストが含まれるであろう。さらに、他の薬学的剤、アジュバント等が含まれてもよい。
【0135】
生物活性ペプチドの多様な薬剤組成物を調製する方法が、薬剤科学業に周知である。例えば、米国特許出願公報第2005/0009748号(経口投与に関する);ならびに第2004/0157777号、第2005/0002927号および第2005/0215475号(経粘膜投与、例えば鼻内または頬側投与に関する)を参照されたい。また、Remington: The Practice of Pharmacy, Lippincott Williams and Wilkins, メリーランド州ボルチモア, 第20版 2000も参照されたい。
【0136】
本発明のPYYアゴニストを、本明細書記載の疾患状態または状態の治療のための他の薬学的剤と組み合わせて用いてもよい。したがって、本発明の化合物を、他の薬学的剤と組み合わせて投与することを含む治療法もまた、本発明によって提供される。
【0137】
本発明のPYYアゴニストと組み合わせて使用してもよい、適切な薬学的剤には、カンナビノイド−1(CB−1)アンタゴニスト(リモナバントなど)、11β−ヒドロキシステロイド脱水素酵素−1(1型11β−HSD)阻害剤、MCR−4アゴニスト、コレシストキニン−A(CCK−A)アゴニスト、モノアミン再取り込み阻害剤(シブトラミンなど)、交感神経刺激剤、β3アドレナリン受容体アゴニスト、ドーパミン受容体アゴニスト(ブロモクリプチンなど)、メラニン形成細胞刺激ホルモン受容体類似体、5HT2c受容体アゴニスト、メラニン濃縮ホルモンアンタゴニスト、レプチン、レプチン類似体、レプチン受容体アゴニスト、ガラニン・アンタゴニスト、リパーゼ阻害剤(テトラヒドロリプスタチン、すなわちオーリスタットなど)、食欲低下剤(ボンベシン・アゴニストなど)、ニューロペプチド−Y受容体アンタゴニスト(例えばNPY Y5受容体アンタゴニスト)、甲状腺ホルモン様剤、デヒドロエピアンドロステロンまたはその類似体、グルココルチコイド受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、オレキシン受容体アンタゴニスト、グルカゴン様ペプチド−1受容体アゴニスト、毛様体神経栄養因子(Regeneron Pharmaceuticals, Inc., ニューヨーク州タリータウンおよびProcter & Gamble Company, オハイオ州シンシナティから入手可能なAxokineTMなど)、ヒト・アグーチ関連タンパク質(AGRP)阻害剤、グレリン受容体アンタゴニスト、ヒスタミン3受容体アンタゴニストまたは逆作用剤、ニューロメジンU受容体アゴニスト、MTP/アポB阻害剤(例えばダーロタピド(dirlotapide)などの腸選択的MTP阻害剤)等などの、他の抗肥満剤が含まれる。
【0138】
本発明のPYYアゴニストと組み合わせて使用するのに好ましい抗肥満剤には、CB−1受容体アンタゴニスト、腸選択的MTP阻害剤、CCKaアゴニスト、5HT2c受容体アゴニスト、NPY Y5受容体アンタゴニスト、オーリスタット、およびシブトラミンが含まれる。本発明の方法で使用するのに好ましいCB−1受容体アンタゴニストには:Sanofi−Synthelaboから入手可能であるし、また米国特許第5,624,941号に記載されるように調製可能なリモナバント(商品名AcompliaTMの下でも知られるSR141716A);TocrisTM、ミズーリ州エリスビルから入手可能である、N−(ピペリジン−1−イル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(4−ヨードフェニル)−4−メチル−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド(AM251);米国特許第6,645,985号に記載されるように調製可能な[5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロ−フェニル)−4−エチル−N−(1−ピペリジニル)−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド](SR147778);PCT特許出願公報第WO 03/075660号に記載されるように調製可能なN−(ピペリジン−1−イル)−4,5−ジフェニル−1−メチルイミダゾール−2−カルボキサミド、N−(ピペリジン−1−イル)−4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(4−クロロフェニル)−1−メチルイミダゾール−2−カルボキサミド、N−(ピペリジン−1−イル)−4,5−ジ−(4−メチルフェニル)−1−メチルイミダゾール−2−カルボキサミド、N−シクロヘキシル−4,5−ジ−(4−メチルフェニル)−1−メチルイミダゾール−2−カルボキサミド、N−(シクロヘキシル)−4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(4−クロロフェニル)−1−メチルイミダゾール−2−カルボキサミド、およびN−(フェニル)−4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(4−クロロフェニル)−1−メチルイミダゾール−2−カルボキサミド;米国特許出願公報第2004/0092520号に記載されるように調製可能な1−[9−(4−クロロ−フェニル)−8−(2−クロロ−フェニル)−9H−プリン−6−イル]−4−エチルアミノ−ピペリジン−4−カルボン酸アミドの塩酸塩、メシル酸塩およびベシル酸塩;米国特許出願公報第2004/0157839号に記載されるように調製可能な1−[7−(2−クロロ−フェニル)−8−(4−クロロ−フェニル)−2−メチル−ピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イル]−3−エチルアミノ−アゼチジン−3−カルボン酸アミドおよび1−[7−(2−クロロ−フェニル)−8−(4−クロロ−フェニル)−2−メチル−ピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イル]−3−メチルアミノ−アゼチジン−3−カルボン酸アミド;米国特許出願公報第2004/0214855号に記載されるように調製可能な3−(4−クロロ−フェニル)−2−(2−クロロ−フェニル)−6−(2,2−ジフルオロ−プロピル)−2,4,5,6−テトラヒドロ−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン−7−オン;米国特許出願公報第2005/0101592号に記載されるように調製可能な3−(4−クロロ−フェニル)−2−(2−クロロ−フェニル)−7−(2,2−ジフルオロ−プロピル)−6,7−ジヒドロ−2H,5H−4−オキサ−1,2,7−トリアザ−アズレン−8−オン;米国特許出願公報第2004/0214838号に記載されるように調製可能な2−(2−クロロ−フェニル)−6−(2,2,2−トリフルオロ−エチル)−3−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−2,6−ジヒドロ−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン;PCT特許出願公報第WO 02/076949号に記載されるように調製可能な(S)−4−クロロ−N−{[3−(4−クロロ−フェニル)−4−フェニル−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル]−メチルアミノ−メチレン}−ベンゼンスルホンアミド(SLV−319)および(S)−N−{[3−(4−クロロ−フェニル)−4−フェニル−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル]−メチルアミノ−メチレン}−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(SLV−326);米国特許第6,432,984号に記載されるように調製可能なN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミド;米国特許第6,518,264号に記載されるように調製可能な1−[ビス−(4−クロロ−フェニル)−メチル]−3−[(3,5−ジフルオロ−フェニル)−メタンスルホニル−メチレン]−アゼチジン;PCT特許出願公報第WO 04/048317号に記載されるように調製可能な2−(5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルオキシ)−N−(4−(4−クロロフェニル)−3−(3−シアノフェニル)ブタン−2−イル)−2−メチルプロパンアミド;米国特許第5,747,524号に記載されるように調製可能な4−{[6−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−1−ベンゾフラン−3−イル]カルボニル}ベンゾニトリル(LY−320135);第WO 04/013120号に記載されるように調製可能な1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(4−フルオロフェニル)−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−スルホニル]−ピペリジン;ならびにPCT特許出願公報第WO 04/012671号に記載されるように調製可能な[3−アミノ−5−(4−クロロフェニル)−6−(2,4−ジクロロフェニル)−フロ[2,3−b]ピリジン−2−イル]−フェニル−メタノンが含まれる。
【0139】
本発明の組み合わせ、薬剤組成物、および方法で使用するのに好ましい腸作用性MTP阻害剤には、どちらも米国特許第6,720,351号に記載される方法を用いて調製可能なダーロタピド(dirlotapide)((S)−N−{2−[ベンジル(メチル)アミノ]−2−オキソ−1−フェニルエチル}−1−メチル−5−[4’−(トリフルオロメチル)[1,1’−ビフェニル]−2−カルボキサミド]−1H−インドール−2−カルボキサミド)および1−メチル−5−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−1H−インドール−2−カルボン酸(カルバモイル−フェニル−メチル)−アミド;すべて米国特許出願公報第2005/0234099A1号に記載されるように調製可能な(S)−2−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸(ペンチルカルバモイル−フェニル−メチル)−アミド、(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸{[(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−カルバモイル]−フェニル−メチル}−アミド、および(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸[(4−フルオロ−ベンジルカルバモイル)−フェニル−メチル]−アミド、米国特許第5,521,186号および第5,929,075号に記載されるように調製可能な(−)−4−[4−[4−[4−[[(2S,4R)−2−(4−クロロフェニル)−2−[[(4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)スルファニル]メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル]メトキシ]フェニル]ピペラジン−1−イル]フェニル]−2−(1R)−1−メチルプロピル]−2,4−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾール−3−オン(ミトラタピド(Mitratapide)またはR103757としてもまた知られる);ならびに米国特許第6,265,431号に記載されるように調製可能なインプリタピド(implitapide)(BAY 13−9952)が含まれる。最も好ましいのは、ダーロタピド、ミトラタピド、(S)−2−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸(ペンチルカルバモイル−フェニル−メチル)−アミド、(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸{[(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−カルバモイル]−フェニル−メチル}−アミド、または(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸[(4−フルオロ−ベンジルカルバモイル)−フェニル−メチル]−アミドである。好ましいNPY Y5受容体アンタゴニストには:米国特許出願公報第2002/0151456号に記載されるように調製可能な2−オキソ−N−(5−フェニルピラジニル)スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),4’−ピペリジン]−1’−カルボキサミド;ならびにすべてPCT特許出願公報第WO 03/082190号に記載されるように調製可能な3−オキソ−N−(5−フェニル−2−ピラジニル)−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),4’−ピペリジン]−1’−カルボキサミド;3−オキソ−N−(7−トリフルオロメチルピリド[3,2−b]ピリジン−2−イル)−スピロ−[イソベンゾフラン−1(3H),4’−ピペリジン]−1’−カルボキサミド;N−[5−(3−フルオロフェニル)−2−ピリミジニル]−3−オキソスピロ−[イソベンゾフラン−1(3H),[4’−ピペリジン]−1’−カルボキサミド;トランス−3’−オキソ−N−(5−フェニル−2−ピリミジニル)]スピロ[シクロヘキサン−1,1’(3’H)−イソベンゾフラン]−4−カルボキサミド;トランス−3’−オキソ−N−[1−(3−キノリル)−4−イミダゾリル]スピロ[シクロヘキサン−1,1’(3’H)−イソベンゾフラン]−4−カルボキサミド;トランス−3−オキソ−N−(5−フェニル−2−ピラジニル)スピロ[4−アザイソ−ベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−カルボキサミド;トランス−N−[5−(3−フルオロフェニル)−2−ピリミジニル]−3−オキソスピロ[5−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−カルボキサミド;トランス−N−[5−(2−フルオロフェニル)−2−ピリミジニル]−3−オキソスピロ[5−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−カルボキサミド;トランス−N−[1−(3,5−ジフルオロフェニル)−4−イミダゾリル]−3−オキソスピロ[7−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−カルボキサミド;トランス−3−オキソ−N−(1−フェニル−4−ピラゾリル)スピロ[4−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−カルボキサミド;トランス−N−[1−(2−フルオロフェニル)−3−ピラゾリル]−3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−カルボキサミド;トランス−3−オキソ−N−(l−フェニル−3−ピラゾリル)スピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−カルボキサミド;およびトランス−3−オキソ−N−(2−フェニル−1,2,3−トリアゾール−4−イル)スピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−カルボキサミド;ならびに薬学的に許容しうる塩およびエステルが含まれる。上に列挙する米国特許および公報は、引用により本明細書に援用される。
【0140】
本発明の方法側面において、本発明のPYYアゴニストは、単独でまたは1以上の他の薬学的剤と組み合わせて、当該技術分野に知られる末梢投与の任意の慣用法と別個にまたは一緒に、被験者に末梢投与される。したがって、PYYアゴニストまたは組み合わせを、被験者に非経口的に(例えば静脈内、腹腔内、筋内または皮下)、鼻内、経口、舌下、頬側で、吸入によって(例えばエアロゾルによって)、直腸(例えば座薬によって)または経皮で投与してもよい。非経口投与が好ましい投与法であり、そして皮下投与が好ましい非経口投与法である。
【0141】
非経口注射に適した組成物には、一般的に、薬学的に許容しうる無菌水性または非水性溶液、分散物、懸濁物、またはエマルジョン、および無菌注射可能溶液または分散物にする再構成用の無菌粉末が含まれる。適切な水性および非水性キャリアーまたは希釈剤(溶媒およびビヒクルを含む)の例には、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール等)、その適切な混合物、オリーブ油などの植物油を含むトリグリセリド、およびオレイン酸エチルなどの注射可能有機エステルが含まれる。
【0142】
非経口注射のためのこれらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、可溶化剤、乳化剤、および分散剤などの賦形剤も含有する。多様な抗細菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等で、組成物の微生物混入の防止を達成してもよい。例えば、糖、塩化ナトリウム等の等張剤を含むことが望ましい可能性もある。吸収を遅延させることが可能な剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によって、注射可能薬剤組成物の延長された吸収を引き起こしてもよい。
【0143】
本発明のPYYアゴニストは、投与様式、被験者の年齢および体重、治療中の疾患、状態または障害の重症度、および投与しているPYYアゴニストの薬理学的活性を含む、いくつかの要因に応じて、多様な投薬量で、被験者に投与されるであろう。特定の患者に関する投薬量範囲および最適投薬量の決定は、十分に、当該技術分野の通常の技術の範囲内である。
【0144】
非経口投与のため、非PEG化変異体に基づく投薬措置において、約0.01μg/kg〜約10mg/kg/用量の範囲内の投薬量レベルで、本発明のPYYアゴニストをヒト被験者に投与してもよい。例えば、30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36に関しては、非経口投薬レベルは、(E10C)hPYY3−36に基づく投薬措置において、約0.01μg/kg〜約10mg/kg/用量の範囲内、好ましくは約0.05mg/kg〜約1.0mg/kg/用量の範囲内、あるいは約0.05または0.1mg/kg〜約1.0mg/kg/用量、あるいは約0.05または0.1mg/kg〜約0.3または0.5mg/kg/用量の範囲内であろう。例えば、約34024Da(30kDa PEGに加えて、非PEG化ペプチドの分子量4024)の分子量を有する30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36 の85mgの用量は、非PEG化(E10C)hPYY3−36に基づいた際の10mgと同等である。投薬措置は、毎日1以上の用量であってもよく、好ましくは食前であり、あるいは特に30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36または20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36を用いると、毎週2または3回、あるいは週1回、あるいは10〜14日ごとに1回の投薬措置が好ましい。
【0145】
本発明の態様は、以下の実施例に例示される。しかし、一般の当業者には、その他の変形が知られるか、または本開示および付随する請求項に鑑みて明らかであろうため、本発明の態様は、これらの実施例の特定の詳細に限定されないことが理解されるものとする。本明細書に引用するすべての参考文献は、本明細書に援用される。
【実施例】
【0146】
実施例
実施例1
直鎖30Kおよび20K mPEGおよび20Kマレイミド(E10C)hPYY3−36
本実施例は、残基10に付着したmPEG(30Kまたは20K)を伴う実質的に均質なモノPEG化(E10C)hPYY3−36の調製を提供する。
(a)(E10C)hPYY3−36の調製
自動化ペプチド合成装置(モデル433A;Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)を用い、2−(1H−ベンゾトリゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)活性化(Fastmoc、0.15mmolサイクル)でのFmoc戦略を用いた固相法によって、(E10C)PYY3−36を合成した。用いた側鎖保護基は、Asn、Gln、CysおよびHisにはTrt;Ser、Thr、およびTyrにはtBu;LysにはBoc;AspおよびGluにはOtBu;そしてArgにはPbfであった。9mlのトリフルオロ酢酸(TFA)、0.5gのフェノール、0.5mlのH2O、0.5mlのチオアニソールおよび0.25mlの1,2エタンジチオールの混合物を用いて、室温で4時間、ペプチド−樹脂の切断を完了した。氷冷エチルエーテル中でペプチドを沈殿させ、そしてエチルエーテルで洗浄し、DMSO中で溶解して、そして流速80ml/分で、30分間の100%溶媒A:0%溶媒Bから70%溶媒A:30%溶媒Bの直線勾配を用いて、Waters Deltapak C18、15um、100A、50x300mmIDカラム(カタログ番号WAT011801、Waters、マサチューセッツ州ミルフォード)上、逆相HPLCによって精製した。溶媒Aは、0.1% TFA(トリフルオロ酢酸)水溶液である。溶媒Bは、アセトニトリル中の0.1% TFA溶液である。ESI−MSによって精製ペプチドの分子量を確認し(M平均=4024)、そして逆相HPLCによって純度を評価した(図1)。
(b)直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の調製
およそ30,000MWの直鎖mPEGマレイミド試薬(Sunbright ME−300MA、NOF社、日本・東京)を、(E10C)hPYY3−36に、残基10のシステインのスルフヒドリル基上で選択的にカップリングした。20mM HEPES(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)pH7.0、あるいは20mM酢酸ナトリウム(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)pH4.5中に溶解した直鎖30K mPEGマレイミドに、(E10C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(E10C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させた。暗所中、室温で0.5〜24時間、反応を行った。陽イオン交換クロマトグラフィー上で直ちに精製するため、20mM酢酸ナトリウムpH4.5中に希釈することによって、HEPES pH7.0中の反応を停止した。20mM酢酸ナトリウム、pH4.5中の反応は陽イオン交換クロマトグラフィー上に直接装填した。SEC−HPLCによって反応産物を評価した(図2)。
(c)直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の精製
単回イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、反応混合物から>95%に、PEG化(E10C)hPYY3−36種を精製した。陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、非修飾(E10C)hPYY3−36およびより大きい分子量種からモノPEG化(E10C)hPYY3−36を精製した。上述のような、典型的な直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36反応混合物(10mgタンパク質)を、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5(緩衝液A)中で平衡化したSP−Sepharose Hitrapカラム(5ml)(Amersham Pharmacia Biotech、GE Healthcare、ニュージャージー州ピスカタウェイ)上で分画した。反応混合物を緩衝液Aで7倍希釈し、そして流速2.5ml/分でカラム上に装填した。5〜10カラム体積の緩衝液Aでカラムを洗浄した。続いて、20カラム体積の0〜100mMの直線NaCl勾配で、カラムから、多様な(E10C)hPYY3−36種を溶出させた。280nmの吸光度(A280)によって、溶離液を監視し、そして適切なサイズの分画を収集した。(登録商標)SDS−PAGEによって評価した際のPEG化の度合いに応じて分画をプールした(図3)。次いで、Centriprep 3濃縮装置(Amicon Technology社、マサチューセッツ州ノースボロー)中、あるいはVivaspin 10K濃縮装置(Vivascience Sartorius Group、ドイツ・ハノーバー)を用いて、精製プールを0.5〜5mg/mlに濃縮した。RP HPLCピーク面積をPYY3−36標準曲線(未提示)に比較することによって、精製プールのタンパク質濃度を決定するか、あるいは実験的に得た消光係数を用いて、280nmの吸光度によって、精製プールの濃度を決定した。図6に示すように、SEC−HPLCを用いて、PEG化(E10C)hPYY3−36の精製プールのプロフィールを描いた。
(d)直鎖20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の調製
およそ20,000MWの直鎖mPEGマレイミド試薬(Sunbright ME−200MA、NOF社)を、(E10C)hPYY3−36に、残基10のシステインのスルフヒドリル基上で選択的にカップリングした。20mM酢酸ナトリウム(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)pH4.5中に溶解した直鎖20K mPEGマレイミドに、(E10C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1.3:1の相対的mPEG:(E10C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させた。暗所中、室温で60分間、その後、4℃で16時間、反応を行った。20mM酢酸ナトリウム、pH4.5中の反応を陽イオン交換クロマトグラフィー上に直接装填した。SEC−HPLCによって反応産物を評価した。
(e)直鎖20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の精製
単回イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、反応混合物から>95%に、PEG化(E10C)hPYY3−36種を精製した。陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、未結合PEG、非修飾(E10C)hPYY3−36およびより大きい分子量種からモノPEG化(E10C)hPYY3−36を分離した。上述のような、典型的な直鎖20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36反応混合物(20mgタンパク質)を、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5(緩衝液A)中で平衡化したSP−Sepharose Hitrapカラム(5ml)(Amersham Pharmacia Biotech、GE Healthcare)上で分画した。反応混合物を流速1.0ml/分でカラム上に装填した。流速2.5ml/分、4カラム体積の緩衝液Aでカラムを洗浄した。続いて、流速2.5ml/分、25カラム体積の0〜200mMの直線NaCl勾配で、カラムから、多様な(E10C)hPYY3−36種を溶出させた。280nmの吸光度(A280)によって、溶離液を監視し、そして適切なサイズの分画を収集した。SEC−HPLCによって評価した際のPEG化の度合いに応じて分画をプールした。次いで、Vivaspin 10K濃縮装置(Vivascience Sartorius Group)を用いて、精製プールを0.5〜5mg/mlに濃縮した。実験的に得た消光係数を用いて、280nmの吸光度によって、精製プールのタンパク質濃度を決定した。精製モノ20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の総プロセス収率は、38%であった。SEC−HPLCを用いて、モノ20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の精製プールが96%純粋であると決定された。
【0147】
実施例2
直鎖30K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36
本実施例は、残基11に付着したmPEGを伴う実質的に均質なモノPEG化(D11C)hPYY3−36の調製を示す。
(a)(D11C)hPYY3−36の調製
自動化ペプチド合成装置(モデル433A;Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)を用い、2−(1H−ベンゾトリゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)活性化(Fastmoc、0.15mmolサイクル)でのFmoc戦略を用いた固相法によって、(D11C)PYY3−36を合成した。用いた側鎖保護基は、Asn、Gln、CysおよびHisにはTrt;Ser、Thr、およびTyrにはtBu;LysにはBoc;AspおよびGluにはOtBu;そしてArgにはPbfであった。9mlのトリフルオロ酢酸(TFA)、0.5gのフェノール、0.5mlのH2O、0.5mlのチオアニソールおよび0.25mlの1,2エタンジチオールの混合物を用いて、室温で4時間、ペプチド−樹脂の切断を完了した。氷冷エチルエーテル中でペプチドを沈殿させ、そしてエチルエーテルで洗浄し、DMSO中で溶解して、そして流速80ml/分で、30分間の100%溶媒A:0%溶媒Bから70%溶媒A:30%溶媒Bの直線勾配を用いて、Waters Deltapak C18、15um、100A、50x300mmIDカラム(カタログ番号WAT011801、Waters、マサチューセッツ州ミルフォード)上、逆相HPLCによって精製した。溶媒Aは、0.1% TFA(トリフルオロ酢酸)水溶液である。溶媒Bは、アセトニトリル中の0.1% TFA溶液である。ESI−MSによって精製ペプチドの分子量を確認し(M平均=4038)、そして逆相HPLCによって純度を評価した(図4)。
(b)直鎖30K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の調製
およそ30,000MWの直鎖mPEGマレイミド試薬(Sunbright ME−300MA、NOF社、日本・東京)を、(D11C)hPYY3−36に、残基11のシステインのスルフヒドリル基上で選択的にカップリングした。20mM HEPES(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)pH7.0中に溶解した直鎖30K mPEGマレイミドに、(D11C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(D11C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させた。暗所中、室温で0.5〜24時間、反応を行った。陽イオン交換クロマトグラフィー上で直ちに精製するため、20mM酢酸ナトリウムpH4.5中に希釈することによって、反応を停止した。SEC−HPLCによって反応産物を評価した(図5)。
【0148】
あるいは、上述のように直鎖30K mPEGマレイミドをHEPES中に溶解する代わりに、20mM酢酸ナトリウム(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)、pH4.5中に溶解し、そして、(D11C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(D11C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させる。暗所中、室温で0.5〜24時間、反応を行う。反応を直接、陽イオン交換クロマトグラフィー上に装填する。反応産物をSEC−HPLCによって評価する。
(c)直鎖30K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の精製
単回イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、反応混合物から>95%に、PEG化(D11C)hPYY3−36種を精製した。陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、非修飾(D11C)hPYY3−36およびより大きい分子量種からモノPEG化(D11C)hPYY3−36を精製した。上述のような、典型的な直鎖30K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36反応混合物(10mgタンパク質)を、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5(緩衝液A)中で平衡化したSP−Sepharose Hitrapカラム(5ml)(Amersham Pharmacia Biotech、GE Healthcare、ニュージャージー州ピスカタウェイ)上で分画した。pH7.0の反応混合物を緩衝液Aで7倍希釈し、そして流速2.5ml/分でカラム上に装填した。5〜10カラム体積の緩衝液Aでカラムを洗浄した。続いて、20カラム体積の0〜100mMの直線NaCl勾配で、カラムから、多様な(D11C)hPYY3−36種を溶出させた。280nmの吸光度(A280)によって、溶離液を監視し、そして適切なサイズの分画を収集した。SEC HPLCによって評価した際のPEG化の度合いに応じて分画をプールした。次いで、Vivaspin 10K濃縮装置(Vivascience Sartorius Group)中で、精製プールを0.5〜5mg/mlに濃縮した。RP HPLCピーク面積をPYY3−36標準曲線(未提示)に比較することによって、精製プールのタンパク質濃度を決定した。図7に示すように、SEC−HPLCを用いて、PEG化(D11C)hPYY3−36の精製プールのプロフィールを描いた。
【0149】
あるいは、上記(b)からのpH4.5の反応物を、流速2.5ml/分で、カラム上に直接装填して、そして実験的に得た消光係数を用いて、280nmの吸光度によって、精製プールの濃度を決定する。
【0150】
実施例3
分枝鎖43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36
本実施例は、残基10に付着したmPEGを伴う実質的に均質なモノPEG化(E10C)hPYY3−36の調製を示す。
(a)分枝鎖43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の調製
およそ43,000MWの分枝鎖mPEGマレイミド試薬(Sunbright GL2−400MA、NOF社、日本・東京)を、実施例1(a)に記載するように調製した(E10C)hPYY3−36に、残基10のシステインのスルフヒドリル基上で選択的にカップリングした。
【0151】
20mM HEPES(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)、pH7.0中に溶解した分枝鎖43K mPEGマレイミドに、(E10C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(E10C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させた。暗所中、室温で0.5〜24時間、反応を行った。陽イオン交換クロマトグラフィー上で直ちに精製するため、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5中に希釈することによって、HEPES、pH7.0中の反応を停止した。SEC−HPLCによって反応産物を評価した(図8)。
【0152】
あるいは、分枝鎖43K mPEGマレイミドを20mM酢酸ナトリウム(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)、pH4.5中に溶解し、そして、(E10C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(E10C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させる。反応を直接、陽イオン交換クロマトグラフィー上に装填する。
(b)モノPEG化分枝鎖43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の精製
単回陽イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、非修飾(E10C)hPYY3−36およびより大きい分子量種からモノPEG化分枝鎖43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36種を分離した。上述のような、典型的な分枝鎖43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36反応混合物(10mgタンパク質)を、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5(緩衝液A)中で平衡化したSP−Sepharose Hitrapカラム(5ml)(Amersham Pharmacia Biotech、GE Healthcare)上で分画した。pH7.0の反応混合物を緩衝液Aで10倍希釈し、そして流速2.5ml/分でカラム上に装填した。5〜10カラム体積の緩衝液Aでカラムを洗浄した。続いて、20カラム体積の0〜100mMの直線NaCl勾配で、カラムから、多様な(E10C)hPYY3−36種を溶出させた。280nmの吸光度(A280)によって、溶離液を監視し、そして適切なサイズの分画を収集した。SEC−HPLCによって評価した際のPEG化の度合いに応じて分画をプールした。次いで、Centriprep 3濃縮装置(Amicon Technology社)中、あるいはVivaspin 10K濃縮装置(Vivascience Sartorius Group)を用いて、精製プールを0.5〜5mg/mlに濃縮した。アミノ酸分析によって、精製プールのタンパク質濃度を定量化した。図9に示すように、SEC−HPLCを用いて、モノPEG化分枝鎖43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の精製プールのプロフィールを描いた。
【0153】
あるいは、RP HPLCピーク面積をPYY3−36標準曲線(未提示)に比較することによって、タンパク質濃度を決定するか、あるいは実験的に得た消光係数を用いて、280nmの吸光度によって、タンパク質濃度を決定する。
【0154】
実施例4
本実施例は、残基10で付着した直鎖12kD mPEGまたは分枝鎖20kD mPEGを伴う、実質的に均質なモノPEG化(E10C)hPYY3−36の調製、ならびに残基11で付着した直鎖20kD mPEG、直鎖12kD mPEG、または分枝鎖20kD mPEGを伴う、実質的に均質なモノPEG化(D11C)hPYY3−36の意図される調製を意図する。
(a)直鎖12K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の調製
およそ12,000MW)の直鎖mPEGマレイミド試薬(Sunbright ME−120MA、NOF社を、(E10C)hPYY3−36に、残基10のシステインのスルフヒドリル基上で選択的にカップリングする。20mM酢酸ナトリウム(Sigma Chemical)pH4.5中に溶解した、直鎖12K mPEGマレイミドに、(E10C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(E10C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させる。暗所中、室温で0.5〜24時間、反応を行う。20mM酢酸ナトリウム、pH4.5中の反応を陽イオン交換クロマトグラフィー上に直接装填する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEによって反応産物を評価する。
(b)直鎖12K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の精製
単回イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、反応混合物から>95%に、PEG化(E10C)hPYY3−36種を精製する。陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、未結合PEG、非修飾(E10C)hPYY3−36およびより大きい分子量種からモノPEG化(E10C)hPYY3−36を分離する。上述のような、典型的な直鎖12K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36反応混合物(10mgタンパク質)を、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5(緩衝液A)中で平衡化したSP−Sepharose Hitrapカラム(5ml)(Amersham Pharmacia Biotech、GE Healthcare)上で分画する。反応混合物を流速1.0ml/分でカラム上に装填する。流速2.5ml/分、4カラム体積の緩衝液Aでカラムを洗浄する。続いて、流速2.5ml/分、25カラム体積の0〜200mMの直線NaCl勾配で、カラムから、多様な(E10C)hPYY3−36種を溶出させる。280nmの吸光度(A280)によって、溶離液を監視し、そして適切なサイズの分画を収集する。SEC−HPLCによって評価した際のPEG化の度合いに応じて分画をプールする。次いで、Vivaspin 10K濃縮装置(Vivascience Sartorius Group)を用いて、精製プールを0.5〜5mg/mlに濃縮する。実験的に得た消光係数を用いて、280nmの吸光度によって、精製プールのタンパク質濃度を決定する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEを用いて、12K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の精製プールのプロフィールを描く。
(c)分枝鎖20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の調製
およそ20,000MWの分枝鎖mPEGマレイミド試薬(Sunbright GL2−200MA、NOF社)を、(E10C)hPYY3−36に、残基10のシステインのスルフヒドリル基上で選択的にカップリングする。20mM酢酸ナトリウム(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)pH4.5中に溶解した分枝鎖20K mPEGマレイミドに、(E10C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(E10C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させる。暗所中、室温で0.5〜24時間、反応を行う。20mM酢酸ナトリウム、pH4.5中の反応を陽イオン交換クロマトグラフィー上に直接装填する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEによって反応産物を評価する。
(d)分枝鎖20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の精製
単回イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、反応混合物から>95%に、PEG化(E10C)hPYY3−36種を精製する。陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、未結合PEG、非修飾(E10C)hPYY3−36およびより大きい分子量種からモノPEG化(E10C)hPYY3−36を分離する。上述のような、典型的な分枝鎖20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36反応混合物(10mgタンパク質)を、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5(緩衝液A)中で平衡化したSP−Sepharose Hitrapカラム(5ml)(Amersham Pharmacia Biotech、GE Healthcare)上で分画する。反応混合物を流速1.0ml/分でカラム上に装填する。流速2.5ml/分、4カラム体積の緩衝液Aでカラムを洗浄する。続いて、流速2.5ml/分、25カラム体積の0〜200mMの直線NaCl勾配で、カラムから、多様な(E10C)hPYY3−36種を溶出させる。280nmの吸光度(A280)によって、溶離液を監視し、そして適切なサイズの分画を収集する。SEC−HPLCによって評価した際のPEG化の度合いに応じて分画をプールする。次いで、Vivaspin 10K濃縮装置(Vivascience Sartorius Group)を用いて、精製プールを0.5〜5mg/mlに濃縮する。実験的に得た消光係数を用いて、280nmの吸光度によって、精製プールのタンパク質濃度を決定する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEを用いて、分枝鎖20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の精製プールのプロフィールを描く。
(e)直鎖20K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の調製
およそ20,000MWの直鎖mPEGマレイミド試薬(Sunbright ME−200MA、NOF社)を、(D11C)hPYY3−36に、残基11のシステインのスルフヒドリル基上で選択的にカップリングする。20mM酢酸ナトリウム(Sigma Chemical)pH4.5中に溶解した、直鎖20K mPEGマレイミドに、(D11C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(D11C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させる。暗所中、室温で0.5〜24時間、反応を行う。20mM酢酸ナトリウム、pH4.5中の反応を陽イオン交換クロマトグラフィー上に直接装填する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEによって反応産物を評価する。
(f)直鎖20K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の精製
単回イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、反応混合物から>95%に、PEG化(D11C)hPYY3−36種を精製する。陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、未結合PEG、非修飾(D11C)hPYY3−36およびより大きい分子量種からモノPEG化(D11C)hPYY3−36を分離する。上述のような、典型的な直鎖20K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36反応混合物(10mgタンパク質)を、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5(緩衝液A)中で平衡化したSP−Sepharose Hitrapカラム(5ml)(Amersham Pharmacia Biotech、GE Healthcare)上で分画する。反応混合物を流速1.0ml/分でカラム上に装填する。流速2.5ml/分、4カラム体積の緩衝液Aでカラムを洗浄する。続いて、流速2.5ml/分、25カラム体積の0〜200mMの直線NaCl勾配で、カラムから、多様な(D11C)hPYY3−36種を溶出させる。280nmの吸光度(A280)によって、溶離液を監視し、そして適切なサイズの分画を収集する。SEC−HPLCによって評価した際のPEG化の度合いに応じて分画をプールする。次いで、Vivaspin 10K濃縮装置(Vivascience Sartorius Group)を用いて、精製プールを0.5〜5mg/mlに濃縮する。実験的に得た消光係数を用いて、280nmの吸光度によって、精製プールのタンパク質濃度を決定する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEを用いて、20K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の精製プールのプロフィールを描く。
(g)直鎖12K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の調製
およそ12,000MW)の直鎖mPEGマレイミド試薬(Sunbright ME−120MA、NOF社を、(D11C)hPYY3−36に、残基10のシステインのスルフヒドリル基上で選択的にカップリングする。20mM酢酸ナトリウム(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)pH4.5中に溶解した直鎖12K mPEGマレイミドに、(D11C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(D11C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させる。暗所中、室温で0.5〜24時間、反応を行う。20mM酢酸ナトリウム、pH4.5中の反応を陽イオン交換クロマトグラフィー上に直接装填する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEによって反応産物を評価する。
(h)直鎖12K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の精製
単回イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、反応混合物から>95%に、PEG化(D11C)hPYY3−36種を精製する。陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、未結合PEG、非修飾(D11C)hPYY3−36およびより大きい分子量種からモノPEG化(D11C)hPYY3−36を分離する。上述のような、典型的な直鎖12K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36反応混合物(10mgタンパク質)を、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5(緩衝液A)中で平衡化したSP−Sepharose Hitrapカラム(5ml)(Amersham Pharmacia Biotech、GE Healthcare)上で分画する。反応混合物を流速1.0ml/分でカラム上に装填する。流速2.5ml/分、4カラム体積の緩衝液Aでカラムを洗浄する。続いて、流速2.5ml/分、25カラム体積の0〜200mMの直線NaCl勾配で、カラムから、多様な(D11C)hPYY3−36種を溶出させる。280nmの吸光度(A280)によって、溶離液を監視し、そして適切なサイズの分画を収集する。SEC−HPLCによって評価した際のPEG化の度合いに応じて分画をプールする。次いで、Vivaspin 10K濃縮装置(Vivascience Sartorius Group)を用いて、精製プールを0.5〜5mg/mlに濃縮する。実験的に得た消光係数を用いて、280nmの吸光度によって、精製プールのタンパク質濃度を決定する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEを用いて、12K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の精製プールのプロフィールを描く。
(i)分枝鎖20K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の調製
およそ20,000MWの分枝鎖mPEGマレイミド試薬(Sunbright GL2−200MA、NOF社)を、(D11C)hPYY3−36に、残基10のシステインのスルフヒドリル基上で選択的にカップリングする。20mM酢酸ナトリウム(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)pH4.5中に溶解した分枝鎖20K mPEGマレイミドに、(D11C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(D11C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させる。暗所中、室温で0.5〜24時間、反応を行う。20mM酢酸ナトリウム、pH4.5中の反応を陽イオン交換クロマトグラフィー上に直接装填する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEによって反応産物を評価する。
(j)分枝鎖20K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の精製
単回イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、反応混合物から>95%に、PEG化(D11C)hPYY3−36種を精製する。陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、未結合PEG、非修飾(D11C)hPYY3−36およびより大きい分子量種からモノPEG化(D11C)hPYY3−36を分離する。上述のような、典型的な分枝鎖20K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36反応混合物(10mgタンパク質)を、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5(緩衝液A)中で平衡化したSP−Sepharose Hitrapカラム(5ml)(Amersham Pharmacia Biotech、GE Healthcare)上で分画する。反応混合物を流速1.0ml/分でカラム上に装填する。流速2.5ml/分、4カラム体積の緩衝液Aでカラムを洗浄する。続いて、流速2.5ml/分、25カラム体積の0〜200mMの直線NaCl勾配で、カラムから、多様な(D11C)hPYY3−36種を溶出させる。280nmの吸光度(A280)によって、溶離液を監視し、そして適切なサイズの分画を収集する。SEC−HPLCによって評価した際のPEG化の度合いに応じて分画をプールする。次いで、Vivaspin 10K濃縮装置(Vivascience Sartorius Group)を用いて、精製プールを0.5〜5mg/mlに濃縮する。実験的に得た消光係数を用いて、280nmの吸光度によって、精製プールのタンパク質濃度を決定する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEを用いて、分枝鎖20K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の精製プールのプロフィールを描く。
【0155】
実施例5
生化学的性質決定
エレクトロスプレー質量分析(ESI−MS)、SDS−PAGE、およびSEC HPLCおよびRP HPLCを含む多様な生化学的方法によって、(E10C)hPYY3−36、(D11C)hPYY3−36、ならびに(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36のPEG化型を、それぞれ、性質決定した。
【0156】
(A)ポジティブモードの1100シリーズのLC/MSDエレクトロスプレー質量分析装置(Agilent Technologies、カリフォルニア州パロアルト)上、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)を行った(実施例1(a)、2(a))。
【0157】
(B)3分間の100%溶媒A、0%溶媒Bから95%溶媒A、5%溶媒B、次いで、12分間の95%溶媒A、5%溶媒Bから50%溶媒A、50%溶媒Bへの直線勾配を用い、1.5ml/分の速度で、ZORBAX Eclipse XDB−C8、4.6x150mm、5mmカラム(カタログ番号993967−906、Agilent Technologies、カリフォルニア州パロアルト)上で、(E10C)hPYY3−36ペプチドの分析のため、逆相クロマトグラフィーを行った(図1および4)(実施例1(a))。溶媒Aは、0.1% TFA水溶液である。溶媒Bは、アセトニトリル中の0.1% TFA溶液である。
【0158】
48分間の80%溶媒A、20%溶媒Bから40%溶媒A、60%溶媒Bの直線勾配を用い、0.2ml/分の流速で、Vydac C18(2.1x250mm)カラム(カタログ番号218MS552、Vydac、カリフォルニア州ヘスペリア)上、PEG化(E10C)hPYY3−36および(D11C)PYY3−36(未提示)の定量化のための逆相クロマトグラフィーを行った。(実施例1C、2C)。溶媒Aは、0.1% TFA水溶液である。溶媒Bは、アセトニトリル中の0.085% TFA溶液である。
【0159】
(C)サイズ排除高性能液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)
非変性SEC−HPLCを用いて、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36いずれかと、直鎖30Kまたは分枝鎖43K mPEGの反応混合物、その陽イオン交換精製プール、および最終精製産物を評価した(実施例1(b)および(c)、2(b)および(c))。Shodex KW804またはTSK G4000PWXL(Tosohaas)を用い、20mMリン酸、pH7.4、150mM NaCl中、流速1.0ml/分で、分析的非変性SEC−HPLCを行った(場合によって、Superdex 200 7.8mmX30cm、Amersham Bioscience、ニュージャージー州ピスカタウェイ)。PEG化は、タンパク質の流体力学的体積を非常に増加させ、より早い保持時間へのシフトを生じた。30K mPEGマレイミドに(E10C)hPYY3−36を加えた反応混合物では、残渣非修飾(E10C)hPYY3−36に対応する小さいピークが観察されるとともに、PEG化ペプチド種に対応する新規ピークが観察された(図2)。30K mPEG(D11C)hPYY3−36および分枝鎖43K mPEG(E10C)hPYY3−36反応混合物中に、新規種が観察され、非修飾(D11C)hPYY3−36または(E10C)hPYY3−36は、非常にわずかしか残っていなかった(図5および8)。SP−Sepharoseクロマトグラフィーによって、これらのPEG化および非PEG化種を分画し、そして続いて、生じた精製モノmPEG(E10C)hPYY3−36およびmPEG(D11C)hPYY3−36種が、非変性SEC上の単一ピークとして、>95%純度で溶出したことが示された(図6、7および9)。SP−Sepharoseクロマトグラフィー工程は、未結合mPEG、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36およびより大きい分子量の種を、モノPEG化直鎖30Kおよび分枝鎖43K mPEG(E10C)hPYY3−36またはmPEG(D11C)hPYY3−36から効果的に取り除いた。
【0160】
(D)SDS PAGE
SDS−PAGE(実施例1(c))もまた用いて、反応物、陽イオン交換精製分画(図3)、および最終精製産物を評価した。還元条件下および非還元条件下で、1mm厚の10−NuPAGEゲル(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)上、SDS−PAGEを行い、そしてNovex Colloidal CoomassieTM G−250染色キット(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)を用いて染色した。
【0161】
生物学的アッセイ
慣用的アッセイにおいて、そして以下に記載するin vitroおよびin vivoアッセイにおいて、アゴニストの活性によって、哺乳動物(特にヒト)の体重増加の減少および肥満治療における、薬学的活性剤としての本発明のPYYアゴニストの有用性を立証してもよい。こうしたアッセイはまた、本発明のPYYアゴニストの活性を、既知の化合物の活性と比較しうる手段も提供する。
【0162】
食物摂取(Food Intake)研究
絶食が誘導する再摂食アッセイ:C57BL/6J雄マウス(The Jackson Laboratory、メイン州バーハーバー)を、ケージあたり2匹ずつ飼育した。12:12明期:暗期の周期(5:00AM点灯、5:00PM消灯)で飼育し、ペレットRMH3000 Purinaげっ歯類飼料(Research Diets, Inc.ニュージャージー州ニューブルンスウィック)を与え、そして自由に水を飲ませた。マウスは、7〜8週齢で到着し、そして研究前に最低10日間順応させた。研究当日、マウスは9〜12週齢であった。研究開始前日、新鮮な寝床で、そして食物がないが、水には自由にアクセスできるケージにマウスを入れた。マウスを一晩(20〜24時間)絶食させた。研究当日、マウスにIP注射を投与し(用量体積=5ml/kg)、ケージに戻し、そしてあらかじめ重量を測定した食物を、ケージに直ちに入れた。用いた投薬ビヒクルは、20mM酢酸Na、pH4.5、50mM NaClであり、そしてPEG化を伴わない活性PYY実体に関して、用量を計算した。ビヒクル対照、3つの用量(0.1mg/kg、0.3mg/kg、および1.0mg/kg)の天然PYY、30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36、および43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36を試験した。投薬2時間後、4時間後、6時間後、および24時間後に、食物の重量を再度測定した。こぼれたものに関して寝床をチェックし、この重量を測定し、そして計算に含めた。出発食物重量から各時点の食物重量を減じることによって、累積食物摂取を計算した。(FI処置−FIビヒクル)/FIビヒクル*100によって、阻害パーセント(%)を計算した。
【0163】
図10は、天然PYY3−36(図10A)および30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36(図10B)の3つの用量をIP注射した後の、6時間の累積摂取を示す。天然PYY3−36および30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36はどちらも、6時間の経過に渡って、累積食物摂取の用量依存性減少を示した。
【0164】
43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36もまた、6時間(図11A)および24時間(図11B)の累積食物摂取の用量依存性減少を生じた。しかし43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36が累積食物摂取を減少させる効果は、6時間後および24時間後の両方で、同じ用量(0.1mg/kg)の30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36によって示されるものほど大きくはなかった。
【0165】
また、0.1mg/kg(SC)の注射後、絶食が誘導する再摂食に対する30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の効果を、30Kマレイミド(D11C)hPYY3−36の効果にも比較した。30K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36ポリペプチドは、以下の表に示すように、24時間の時間経過全体で、累積食物摂取(FI)減少を引き起こしたが、効果は、30Kマレイミド(E10C)hPYY3−36に関して観察されたものほど大きくはなかった。
【0166】
【表2】
【0167】
直鎖20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の効果を、30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36に比較した(どちらも実施例1)。0.1mg/kg(IP)の用量を雄マウスに注射する1つの研究において、結果は、以下の表におけるとおりである。
【0168】
【表3】
【0169】
同様に、0.1mg/kg用量(SC)後、直鎖20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36と30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の摂食効果を比較する第二の研究において、結果は、以下の表におけるとおりである。
【0170】
【表4】
【0171】
SC注射後の血漿PYY濃度は以下のとおりであった。
【0172】
【表5】
【0173】
自発的食物摂取アッセイ:C57BL/6J雄マウス(The Jackson Laboratory)を個々に飼育し、そして研究前に2週間順応させた。これらを12/12明期/暗期の周期に維持し、粉末飼料を自由に摂食させ、そして水に自由にアクセスさせた。投薬前日、マウスを食物摂取チャンバーにいれ、そして1日順応させた。翌日、消灯直前(4:00PM)、マウスにIPまたは皮下(SC)注射を投与した。全時間経過に渡って、食物摂取を10分間隔で自動的に監視し、そして体重を毎日測定した。天然PYY3−36および30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36のIP注射に関して(図12)、そして天然PYY3−36および30K PEGマレイミド(E10C)hPYY3−36のSC注射に関して(図13)、結果を示す。天然PYY3−36および30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36両方が、ビヒクル処置マウスに比較した際、累積食物摂取の即時減少を生じたが、30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36によって引き起こされた食物摂取減少効果は、天然PYY3−36によって引き起こされた効果より、はるかにより長い期間であった。より長く続く食物摂取効果と合わせて、30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36はまた、単回注射(0.1mg/kg、IP)後、持続する血漿曝露も示した(図14)。天然PYY3−36が、16ml/分/kgのクリアランス速度および38nMのCmaxを有する一方、30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36は、0.2ml/分/kgのクリアランス速度および267nMのCmaxを有した。hPYYラジオイムノアッセイキット(Linco Research, Inc.、ミズーリ州セントルイス)を用いて、マウスにおける血漿PYY値を測定した。
【0174】
ob/obマウスでのミニポンプアッセイ:8〜9週齢の雄ob/obマウス(The Jackson Laboratory)(n=26)を正常飼料で飼育し、そしてビヒクル(生理食塩水)、PYY3−36(0.1mg/kg/日)、または30K PEGマレイミド(E10C)hPYY3−36(0.03mg/kg/日)のいずれかを投与する、14日間の浸透圧ミニポンプ(Alza社、カリフォルニア州マウンテンビュー)を移植した。食物重量および体重を毎日測定した。体脂肪組成を第0日および第13日に決定した。研究終了時に血液試料を採取した。これらの群に関して、食物摂取、体重、または体脂肪組成に有意な相違はなかった。先に記載されるようなラジオイムノアッセイによって、研究終了時に血漿PYYを測定した。天然PYY3−36処置群において、血漿PYYレベルは15±2ng/mlと測定され;30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36処置群では、血漿PYYレベルは132±22ng/mlであった。
【0175】
In vitro結合研究
リガンド結合に関するSPA:
リガンド結合に関するSPAは、Y2受容体からの放射標識PYYの競合的置換を測定し、そしてAmersham Biosciences(カタログ番号RPNQ 0085)から得られるレクチン、小麦胚芽凝集素(WGA)でコーティングされた、シンチラント含有微小球体(SPAビーズ)を利用する。50mM Hepes緩衝液(pH7.4)、145mM NaCl、2.5mM CaCl2、1mM MgCl2、10mMグルコース、0.1% BSA、5% DMSOおよびRocheプロテアーゼ阻害剤で構成される細胞採取緩衝液を用いて、表面上にY2受容体を発現するKAN−TSヒト神経芽細胞腫細胞(Fuhlendorfら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:182−186, 1990)を調製した。50mM Hepes緩衝液、pH7.4、1mM MgCl2、2.5mM CaCl2、0.1%(w/v)BSA、0.025%(w/v)バシトラシンおよび0.025%アジ化ナトリウムで構成されるアッセイ緩衝液中、50,000細胞/ウェル、125I−PYY(40,000cpm/ウェル)およびSPAビーズ(0.5mg/ウェル)を用い、96ウェル形式中、3つ組で、SPAアッセイを行った。多様な濃度(0.032〜500nM)の試験リガンドをアッセイ混合物に添加し、次いでこれを振盪しながら、室温で16〜24時間インキュベーションした。プレートを1時間放置し、そして次いでMicroBeta(登録商標)Trilux検出装置(Perkin Elmer、マサチューセッツ州ボストン)を用いて計測した。実施例1のhPYY3−36および30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36に関する結果を図15に示す。
NPY Y2R受容体でのGTPγ[35S]結合アッセイ
機能アッセイは、NEN Flashplates(96ウェル形式)で行うGTPγ[35S]結合アッセイである。Bassら, Mol. Pharm. 50:709−715, 1990に記載されるように、KAN−TS細胞から膜を調製した。50mM Tris Hcl、pH7.4、3mM MgCl2、pH7.4、10mM MgCl2、20mM EGTA、100mM NaCl、5μM GDP、0.1%ウシ血清アルブミン、および以下のプロテアーゼ阻害剤:100μg/mlのバシトラシン、100μg/mlのベンズアミジン、5μg/mlのアプロチニン、5μg/mlのロイペプチンで構成されるアッセイ緩衝液中、100pM GTPγ[35S]およびウェルあたり10μgの膜を用いて、2つ組で、96ウェルFlashPlateTM形式において、GTPγ[35S]結合アッセイを行った。次いで、アッセイ混合物を、増加する濃度の試験化合物(6点濃度曲線;10−12M〜10−5Mの範囲内のlog希釈)と30℃で60分間インキュベーションした。次いで、FlashPlatesTMを、2000Xgで10分間遠心分離した。次いで、MicrobetaTM検出装置を用いて、GTPγ[35S]結合刺激を定量化した。GraphpadによるPrismを用いて、EC50および固有活性計算を行った。実施例1のhPYY3−36および30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36に関する結果を図16に示す。実施例1の30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36および20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36のEC50値は匹敵した(例えば、同じアッセイで測定した際、4.3nMおよび4.6nM)。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】図1は、Zorbax Eclipse XDB−C8カラム上の精製(E10C)hPYY3−36ペプチドの逆相HPLC出力記録である。
【図2】図2は、Shodex 804 SECカラム上の、直鎖30K mPEGマレイミドに(E10C)hPYY3−36を加えた反応混合物のサイズ排除HPLC出力記録である。
【図3】図3は、直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36のSP Hitrap精製由来の分画のSDS PAGEの写真である。MW=分子量標準;L=カラム装填物;FT=フロースルー;4〜23=溶出分画。
【図4】図4は、Zorbax Eclipse XDB−C8カラム上の精製(D11C)hPYY3−36ペプチドの逆相HPLC出力記録である。
【図5】図5は、Shodex 804 SECカラム上の、直鎖30K mPEGマレイミドに(D11C)hPYY3−36を加えた反応混合物のサイズ排除HPLC出力記録である。
【図6】図6は、Shodex 804 SECカラム上の精製直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36産物の溶出プロフィールを示す、サイズ排除HPLC出力記録である。
【図7】図7は、Shodex 804 SECカラム上の精製直鎖30K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36産物の溶出プロフィールを示す、サイズ排除HPLC出力記録である。
【図8】図8は、Shodex 804 SECカラム上の、グリセロール分枝鎖43K mPEGマレイミドに(E10C)hPYY3−36を加えた反応混合物のサイズ排除HPLC出力記録である。
【図9】図9は、Shodex 804 SECカラム上の精製グリセロール分枝鎖43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36産物の溶出プロフィールを示す、サイズ排除HPLC出力記録である。
【図10】図10は、腹腔内(IP)注射後の絶食マウスにおける累積食物摂取の阻害のグラフである。図10Aは、ビヒクル群に比較した際の、天然PYY3−36の用量効果を示す。図10Bは、直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の用量効果を示す。
【図11】図11は、ビヒクルおよび直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)PYY3−36に比較した際の、グリセロール分枝鎖43K mPEGマレイミド(E10C)PYY3−36の、絶食マウスにおけるIP注射の食物摂取効果を示す。図11Aは、注射後6時間に渡る反応を示す線グラフである。図11Bは、注射後24時間に渡る効果を比較する棒グラフである。
【図12】図12は、ビヒクル、PYY3−36、および直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)PYY3−36のIP注射の、自発的に給餌させたマウスに対する効果を示す。図12Aは、食物摂取に対する効果を示し、そして図12Bは、体重に対する効果を示す。
【図13】図13は、ビヒクル、PYY3−36、および直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の皮下(SC)注射の、自発的に給餌させたマウスに対する効果を示す。図13Aは、食物摂取に対する効果を示し、そして図13Bは、体重に対する効果を示す。
【図14】図14は、0.1mg/kg IP注射後のマウスにおける、PYYに対する血漿曝露を示す。図14Aは、hPYY3−36の注射後の血漿PYYレベルを示し、そして図14Bは、直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の注射後の血漿PYYレベルを示す。
【図15】図15は、シンチレーション近接アッセイ(SPA)由来のPYY3−36または直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)PYY3−36に関する濃度反応曲線のグラフであり、この中で、リガンドは、KAN−TS細胞上に発現されたY2Rへの結合に関して、125I−PYY1−36と競合する。
【図16】図16は、KAN−TS膜上に発現されたY2RとのGTPガンマ[35S]の結合アッセイに由来するPYY3−36または直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)PYY3−36に関する濃度反応曲線のグラフである。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、PYYアゴニスト、より詳細には、PYY3−36変異体、そしてPYY3−36およびPYY3−36変異体のPEG化誘導体、こうしたアゴニストを含有する組成物、こうしたPYYアゴニストをコードする単離核酸、ならびに肥満およびその併存疾患の治療におけるこうしたアゴニストまたは組成物の使用、あるいは哺乳動物において、食欲、食物摂取またはカロリー摂取を減少させるためのこうしたアゴニストまたは組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
肥満は、患者数が増加しつつあり、そして関連する健康上のリスクがあることから、大きな公衆衛生上の懸念である。さらに、肥満は、運動性が制限され、そして肉体の耐久力が減少することを通じて、それとともに社会的に、アカデミックで、そして職業で差別があることを通じて、人の生活の質を侵しうる。
【0003】
肥満および過剰体重であることは、一般的に、体格指数(BMI)によって定義され、これは総体脂肪と相関し、そして特定の疾患のリスクの測定値として働く。BMIは、メートルで表した身長の二乗によって、キログラムで表した体重を割ることにより、計算される(kg/m2)。過剰体重は、典型的には、25〜29.9kg/m2のBMIと定義され、そして肥満は、典型的には、30kg/m2以上のBMIとして定義される。例えば、National Heart, Lung, and Blood Institute, Clinical Guidelines on the Identification, Evaluation, and Treatment of Overweight and Obesity in Adults, The Evidence Report, Washington, DC: U.S. Department of Health and Human Services, NIH publication no. 98−4083(1998)を参照されたい。
【0004】
最近の研究によって、肥満およびそれに関連する健康上のリスクは、成人に限定されず、驚くべき度合いまで、小児および青年を侵していることが見出された。米国疾病管理センターによると、過剰体重と定義される小児および青年の割合は、1970年代初期以降2倍以上になってきており、そして約15%の小児および青年が、現在、過剰体重である。高コレステロールおよび高血圧などの心臓疾患のリスク要因は、類似の年齢の正常体重被験者に比較して、過剰体重の小児および青年では、増加した頻度で発生する。また、以前は成人病と見なされていた2型糖尿病が、小児および青年で劇的に増加してきている。過剰体重状態および肥満は、2型糖尿病と緊密に関連している。過剰体重の青年は、過剰体重または肥満の成人になる70%の可能性を有すると、近年、概算されている。少なくとも一方の親が過剰体重または肥満であると、可能性は、約80%に増加する。過剰体重であることの最も差し迫った結果は、子ども達自身が認識するように、社会的差別である。
【0005】
過剰体重または肥満の個体は、高血圧、異常脂質血症、2型(非インスリン依存性)糖尿病、インスリン抵抗性、グルコース不耐性、高インスリン血症、冠動脈心疾患、狭心症、うっ血性心不全、脳卒中、胆石、胆嚢炎、胆石症、通風、変形性関節症、閉塞性睡眠時無呼吸および呼吸困難、胆嚢疾患、特定の型の癌(例えば子宮内膜癌、乳癌、前立腺癌、および結腸癌)および精神障害(抑うつ、摂食障害、歪んだ身体イメージおよび低い自尊心など)などの病気のリスクが増加している。肥満は健康に負の影響をもたらすため、肥満は、米国において、予防可能な死亡のうち、2番目に多い原因となっており、そして社会に対して大きな経済的および心理社会的影響を与える。McGinnis M, Foege WH., “Actual Causes of Death in the United States,” JAMA 270:2207−12, 1993を参照されたい。
【0006】
肥満は、現在、それに関連する健康上のリスクを減少させる治療を必要とする、慢性疾患として認識されている。体重減少は、重要な治療の所産であるが、肥満管理の主なゴールの1つは、心臓血管値および代謝値を改善して、肥満に関連する罹患率および死亡率を減少させることである。5〜10%の体重減少は、血液グルコース、血圧、および脂質濃度などの代謝値を実質的に改善しうることが示されてきている。したがって、体重の5〜10%の減少は、罹患率および死亡率を減少させうると考えられる。
【0007】
肥満を管理するため、現在利用可能な処方薬剤は、一般的に、オーリスタットの場合のように、食餌脂肪吸収を減少させることによって、あるいはシブトラミンで見られるように、食物摂取を減少させることにより、そして/またはエネルギー消費を増加させることにより、エネルギー欠損を生成することによって、体重を減少させる。現在入手可能な抗肥満剤の代替物の検索には、いくつかの道が取られてきており、このうちの1つは、ペプチドYY(PYY)などの、飽満の調節に関連付けられてきている、特定の腸ペプチドに重点を置いてきている。
【0008】
PYYは、ホルモンの膵臓ポリペプチド(PP)ファミリーのメンバーである(PPおよびニューロペプチドY(NPY)とともに)。他のファミリーメンバーと同様、PYYは、C末端がアミド化された36アミノ酸ペプチドである。該ペプチドは、腸管内分泌ペプチドであり、元来、ブタの腸から単離され(TatemotoおよびMutt, Nature 285:417−418, 1980)そして続いて、末梢投与後、ラットにおいて、高脂肪食摂取を減少させ(Okadaら, Endocrinology Supplement 180, 1993)、そして末梢投与後、マウスにおいて、体重減少を引き起こす(MorleyおよびFlood, Life Sciences 41:2157−2165, 1987)と報告された。PYYの多数の貯蔵分子型および循環分子型が存在することが知られる(Chenら, Gastroenterology 87:1332−1338, 1984;およびRoddyら, Regul Pept 18:201−212, 1987)。1つのこうした型、PYY3−36は、ヒト結腸粘膜抽出物から単離され(Eberleinら, Peptides 10:797−803, 1989)、そしてヒト食後血漿における主なPYYの型であることが見出された(Grandtら, Regul. Pept. 51:151−159, 1994)。PYY3−36は、高親和性NPY Y2受容体(Y2R)選択的アゴニストであることが報告されている(Keireら, Am. J. Physiol. Gasrointest. Liver Physiol. 279:G126−G131, 2000)。PYY3−36を末梢投与すると、ラットでは食物摂取および体重増加が顕著に減少し、ヒトでは食欲および食物摂取が減少し、そしてマウスでは食物摂取が減少するが、Y2Rヌルマウスでは減少しないことが報告されており、食物摂取効果がY2Rを必要とすることが示唆されると述べられた。ヒトの研究において、PYY3−36を注入すると、食欲が有意に減少し、そして食物摂取が24時間に渡って33%減少することが見出された。PYY3−36の通常の食後循環濃度まで該ペプチドを注入すると、15分以内にPYY3−36のピーク血清レベルに到達し、その後、30分以内に基底レベルに迅速に減少した。PYY3−36注入後12時間の期間には、食物摂取の有意な阻害があったが、12時間〜24時間の期間には、食物摂取に本質的に影響はなかった。ラットの研究において、PYY3−36をIPで反復投与すると(毎日2回7日間の注射)、累積食物摂取が減少した(Batterhamら, Nature 418:650−654, 2002)。
【0009】
ポリペプチドに基づく薬剤は、しばしば、in vivoでの半減期を延長させるため、ポリエチレングリコールなどのポリマーに共有結合される。しかし、これはしばしば、生物学的活性または薬理学的活性の大幅な損失を導く(Shechterら, FEBS Letters 579:2439−2444, 2005; FuertegesおよびAbuchowski, J. Control Release 11:139−148, 1990; Katre, Adv. Drug Del. Sys. 10:91−114, 1993; BailonおよびBerthold, Pharm. Sci. Technol. Today 1:352−356, 1996; Nucciら, Adv. Drug Delivery Rev. 6, 1991; Delgado, Critical Rev. Ther. Drug Carrier Syst. 9:249−304, 1992; Fungら, Polym. Preprints 38:565−566, 1997; Reddy, Ann. Pharmacother. 34:915−923, 2000; Veronese, Biomaterials 22:405−417, 2001)。例えば、Shechterら、上記は、安定な結合の形成を通じた標準的化学反応によるPYY3−36の40kD PEG化(40kD PEG−PYY3−36)が、マウスを用いた食物摂取研究において、その完全な不活性化を導いたことを報告した。(s.c.注射)。しかし、彼らはまた、PYY3−36の可逆的PEG化(40kD PEG−FMS−PYY3−36)が、機能的半減期の8倍の増加を生じた(24時間対3時間)こともまた報告した。PCT特許出願第WO 2004/089279号および第WO 03/026591号もまた、参照されたい。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概要
本発明は、PYY3−36の変異体であるPYYアゴニストに関する。
本発明の1つの側面において、PYYアゴニストは、残基10(グルタミン酸)または残基11(アスパラギン酸)が、システイン、リジン、セリン、スレオニン、チロシン、およびポリエチレングリコール(PEG)などの親水性ポリマーとコンジュゲート化可能な官能性、例えばケト、チオール、ヒドロキシル、カルボキシル、または未結合(free)アミノ官能性を有する非天然アミノ酸からなる群より選択されるアミノ酸「X」で置換されている、哺乳動物PPY3−36の変異体であり、こうした変異体は、それぞれ、(E10X)PYY3−36または(D11X)PYY3−36と名付けられる。
【0011】
残基「X」は、好ましくはシステインであり、そしてしたがって対応する変異体は、(E10C)PYY3−36および(D11C)PYY3−36である。
本発明の好ましい態様において、PYYアゴニストは、ヒトPYY3−36(hPYY3−36)、イヌPYY3−36、ネコPYY3−36またはウマPYY3−36であり、より好ましくはhPYY3−36である。
【0012】
本発明の好ましい態様において、PYYアゴニストは、アミノ酸配列IKPEAPGCDASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY−NH2[配列番号3]を有するポリペプチド(E10C)hPYY3−36、またはその薬学的に許容しうる塩である。
【0013】
さらなる好ましい態様において、PYYアゴニストは、アミノ酸配列IKPEAPGECASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY−NH2[配列番号4]を有するポリペプチド(D11C)hPYY3−36、またはその薬学的に許容しうる塩である。
【0014】
最も好ましくは、アゴニストは、(E10C)hPYY3−36である。
本発明のPYYアゴニストは、好ましくは、親水性ポリマー、好ましくはPEGとコンジュゲート化される。アゴニストは、好ましくはモノPEG化され、すなわちPEGに対するアゴニストの比は約1:1であり、PEGは、(E10X)PYY3−36および(D11X)PYY3−36中の「X」のケト、チオール、ヒドロキシル、カルボキシル、または未結合アミノ官能性などのコンジュゲート化可能官能性で付着している。PEGは、直鎖、分枝鎖、またはペンダントであってもよく;より好ましくは、直鎖または分枝鎖であり;最も好ましくは、直鎖である。
【0015】
直鎖PEGにおいて、PEGの一方の末端は、PEGをアゴニストにカップリングする条件下で不活性な基、例えばエーテル基、好ましくはメトキシ基によってキャップ化されている。この方式で(メトキシ基で)末端処理されたPEGは、一般的にmPEGと称される。他方の末端は、PYYアゴニストとのカップリングのために活性化されている。同様に、本発明で有用な分枝鎖PEGは、1つを除いてすべての末端がエーテル・キャップ化されており、そして非エーテル・キャップ化末端は、カップリングのために活性化されている。1つの態様において、(E10X)PYY3−36または(D11X)PYY3−36中のアミノ酸Xのコンジュゲート化可能な官能性と反応性である官能基にPEGを連結するリンカー部分(「L」)で、PEGの非エーテル・キャップ化末端をキャップ化して、Xのコンジュゲート化可能な官能性に共有結合しているPEGを有するコンジュゲートを産生する。さらなる態様において、PEGは、リンカー部分を包含せずに、直接、反応基に付着する。こうしたPEGは、しばしば、「リンカーレス」PEGと呼ばれる。
【0016】
(E10C)PYY3−36および(D11C)PYY3−36ポリペプチドに関しては、PEGの非エーテル・キャップ化末端は、好ましくは、システイン残基のチオールと反応するであろうマレイミドまたは他の基にPEGを連結するリンカーに付着して、システイン・チオール基に共有結合したPEGを有するコンジュゲートを産生する。
【0017】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36とともに使用するのに適した反応性PEGには、式
【0018】
【化1】
【0019】
のPEGが含まれる。
好ましくは、PEGは、リンカー部分−L−が含まれる、上に示すmPEGマレイミドである。リンカーレスPEGマレイミドもまた、本発明で、特に、(E10C)hPYY3−36または(D11C)PYY3−36とともに使用するのに適している。こうしたリンカーレスPEGマレイミドは、GoodsonおよびKatre, Bio/Technology 8:343−346, 1990に記載されるように調製可能である。
【0020】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)PYY3−36ポリペプチドと、上に示すmPEGのカップリングから生じるコンジュゲートを、以下の式に示し、式中、−SRは、(E10C)hPYY3−36または(D11C)PYY3−36ポリペプチドであり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である:
【0021】
【化2】
【0022】
リンカー−L−は、単に、PEGを反応性官能基に連結するように働き、そしてしたがって、特に限定されるわけではないが、好ましくは、エステル結合、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、カーボネート結合、または第2級アミノ基を含有するアルキレン基が含まれる。
【0023】
好ましい態様において、特に直鎖PEGに関して、リンカーは、式
−O(CH2)pNHC(O)(CH2)r−
の基であり、ここでpは、1〜6の整数、好ましくは1〜3、より好ましくは2または3、最も好ましくは3であり、そしてrは、1〜6の整数、好ましくは1〜3、より好ましくは2または3、最も好ましくは2である。
【0024】
好ましいリンカーは、−CH2CH2CH2NHCOCH2CH2−基である。
別の好ましい態様において、特に分枝鎖PEGに関して、リンカーは、式
−NHC(O)(CH2)s−
の基であり、ここでsは、1〜6の整数、好ましくは1〜3、より好ましくは2または3、最も好ましくは2である。
【0025】
好ましいリンカーは、−NHC(O)CH2CH2−基である。
PEGは、直鎖あるいは非直鎖、例えば分枝鎖またはペンダントであってもよい。好ましくは、PEGは直鎖または分枝鎖、好ましくは直鎖または分枝鎖mPEGマレイミドである。グリセロール分枝鎖mPEGマレイミドが、好ましい分枝鎖PEGである。好ましくは、PEGは直鎖mPEGマレイミドである。PEGは、約1kD〜約50kDの範囲内の平均分子量を持たなければならない。好ましくは、平均分子量は、約5kD〜約45kDの範囲内;より好ましくは、約10〜12kDから約40〜45kD、または約20kDから約40〜45kDの範囲内である。特に関心が持たれるのは、式1に示すような、約20または約30kDの平均分子量を有する直鎖mPEGである。式2のグリセロール分枝mPEGもまた関心が持たれ、そしてこれは、好ましくは約20kDまたは約43kDの平均分子量を有する。
【0026】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)PYY3−36のシステイン・チオール基とのコンジュゲート化のために適切に活性化されている、好ましいPEGは、式1および2の化合物である。式1の直鎖mPEGにおいて、nは、約175〜800の範囲内の整数であり;好ましくは、約375〜525または約600〜750、あるいは約425〜475または約650〜700、あるいは約437〜463または675〜700の範囲内の整数である。式2のグリセロール分枝鎖mPEGにおいて、各mは、およそ同じであり、そして約150〜500の範囲内の整数であり;好ましくは、約160〜285または約400〜525、あるいは約200〜250または450〜500の範囲内の整数である。
【0027】
【化3】
【0028】
ペプチドアミノ酸側鎖におけるターゲット官能性、例えばケト、チオール、ヒドロキシル、カルボキシル、または未結合アミノ官能性とのコンジュゲート化のために適切に活性化されている、非常に多様なPEGが、いくつかの供給者から、例えばNOF社、日本・東京、またはNektar Therapeutics社、アラバマ州ハンツビルから商業的に入手可能である。
【0029】
本発明の別の側面は、本PYY3−36変異体およびポリエチレングリコールのコンジュゲートに関する。
1つの態様において、コンジュゲートは、式3
【0030】
【化4】
【0031】
式中、mPEG部分は直鎖または分枝鎖であり、そして約1kD〜50kD、好ましくは5kD〜約45kD、より好ましくは約10kDまたは12kD〜約40または45kD、あるいは約20kD〜約40kDまたは45kDの範囲内の平均分子量を有し、
Lは、式
−O(CH2)pNHC(O)(CH2)r−
の基であり、ここでpは、1〜6の整数;好ましくは1〜3;より好ましくは2または3;最も好ましくは3であり;(以下の式4に示すとおり);そしてrは、1〜6の整数;好ましくは1〜3;より好ましくは2または3、最も好ましくは2であるか;
あるいはLは、式
−NHC(O)(CH2)s−
の基であり、ここでsは、1〜6の整数;好ましくは1〜3;より好ましくは2または3;最も好ましくは2である;そして
−SRは、ポリペプチド(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36であり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
の化合物である。
【0032】
本発明の好ましい態様は、式4
【0033】
【化5】
【0034】
式中、nは、約175〜800の範囲内の整数であり;好ましくは、約375〜525または約600〜750、あるいは約437〜463または約675〜700の範囲内の整数であり;そして−SRはポリペプチド(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36であり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
の直鎖mPEG−PYY3−36変異体コンジュゲート;あるいはその薬学的に許容しうる塩である。好ましくは、(CH2CH2O)n部分は、約20kDまたは30kDの平均分子量を有する。−SRがポリペプチド(E10C)hPYY3−36であるコンジュゲートに特に関心が持たれる。
【0035】
本発明のさらなる側面は、PEG部分が分枝鎖であるコンジュゲートに関する。このカテゴリーの好ましいコンジュゲートは、グリセロール分枝鎖PEG部分を含む。特に興味深いのは、式5
【0036】
【化6】
【0037】
式中、各mはほぼ同じであり、そして約150〜550の範囲内の整数であり;好ましくは、約160〜285または約400〜525、あるいは約200〜250または約450〜500の範囲内の整数であり、そして−SRは(E10C)hPYY3−36または(E10C)hPYY3−36ポリペプチドであり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
のコンジュゲート;あるいはその薬学的に許容しうる塩である。好ましくは、各(CH2CH2O)m部分は、約9〜11kDまたは約20〜22kDの範囲内の平均分子量を有する。好ましくは、(CH2CH2O)m部分を合わせた平均分子量は、約20kDまたは約43kDである。−SRがポリペプチド(E10C)hPYY3−36であるコンジュゲートに特に関心が持たれる。
【0038】
本発明はまた、配列番号3または配列番号4に示すようなアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体も提供する。本発明のこの側面の1つの態様において、ポリペプチドは、システイン残基でPEG化されている。
【0039】
さらに、本発明は、本発明のポリペプチド配列をコードするポリヌクレオチド配列を提供し、好ましくは、これらは、配列番号3および配列番号4をコードする。
本発明の別の態様において、本発明のPYYアゴニストおよび薬学的に許容しうるキャリアーを含む、薬剤組成物を提供する。さらなる態様において、組成物はまた、組成物の主な適応症または主な適応症の併存疾患の治療において有用な剤でありうる、少なくとも1つのさらなる薬学的剤も含む。さらなる薬学的剤は、好ましくは抗肥満剤である。組成物は、好ましくは、療法的有効量の本発明のPYYアゴニスト、または療法的有効量の本発明のPYYアゴニストおよびさらなる薬学的剤の組み合わせを含む。
【0040】
やはり提供するのは、哺乳動物において、Y2Rアゴニストによって調節される疾患、状態または障害を治療する方法であって、こうした治療が必要な哺乳動物に、療法的有効量の本発明のPYYアゴニストを末梢投与することを含む、前記方法である。本発明のPYYアゴニストは、単独で、あるいは疾患、状態もしくは障害、または疾患、状態もしくは障害の併存疾患の治療に有用な少なくとも1つのさらなる薬学的剤と組み合わせて使用可能である。哺乳動物において、Y2Rアゴニストによって調節される疾患、状態、または障害には、肥満および過剰体重が含まれる。こうした疾患、状態、または障害の併存疾患は、こうした疾患、状態、または障害の治療によって、偶発的に改善する可能性が高い。さらに提供するのは、肥満の治療が必要な哺乳動物において、肥満を治療する方法であって、療法的有効量の本発明のPYYアゴニストを哺乳動物に末梢投与することを含む、前記方法である。
【0041】
やはり提供するのは、哺乳動物において、体重を減少させるかまたは体重損失を促進する(体重増加を予防するかまたは阻害することを含む)方法であって、体重を管理するかまたは体重を減少させる量の本発明のPYYアゴニストを哺乳動物に末梢投与することを含む、前記方法である。
【0042】
やはり提供するのは、哺乳動物において、食物摂取を減少させる方法であって、食物摂取を減少させる量の本発明のPYYアゴニストを哺乳動物に末梢投与することを含む、前記方法である。
【0043】
やはり提供するのは、哺乳動物において、飽満を誘導する方法であって、飽満を誘導する量の本発明のPYYアゴニストを哺乳動物に末梢投与することを含む、前記方法である。
【0044】
やはり提供するのは、哺乳動物において、カロリー摂取を減少させる方法であって、カロリー摂取を減少させる量の本発明のPYYアゴニストを哺乳動物に末梢投与することを含む、前記方法である。PYYアゴニストを、単独で、または少なくとも1つのさらなる薬学的剤、好ましくは抗肥満剤と組み合わせて投与可能である。
【0045】
本明細書および付随する請求項記載の方法各々において、PYYアゴニストを、単独で、または少なくとも1つのさらなる薬学的剤、好ましくは抗肥満剤と組み合わせて使用可能である。
【0046】
本PYYアゴニストおよび該アゴニストを含有する組成物はまた、本明細書に言及する療法的適用のための薬剤製造にも有用である。
定義および略語
句「薬学的に許容しうる」は、物質または組成物が、配合物を構成する他の成分、および/または該配合物で治療されている哺乳動物と、化学的および/または毒物学的に適合していなければならないことを意味する。
【0047】
用語「PYYアゴニスト」は、in vivoまたはin vitroで、PYY、好ましくはPYY3−36によって誘発される効果の1以上を誘発する、任意の化合物を意味する。
【0048】
句「療法的有効量」は、治療前にまたはビヒクル治療群において決定された適切な対照値に対して、カロリー摂取を減少させ、体重を減少させ、そして/または体脂肪を減少させる、本発明のPYYアゴニストの量を意味する。
【0049】
用語「哺乳動物」は、ヒト、ならびに哺乳動物綱中のホメオスタシス機構を所持する動物界の他の温血動物メンバーすべて、例えば、コンパニオン哺乳動物、動物園の哺乳動物および食料源哺乳動物を意味する。コンパニオン哺乳動物のいくつかの例は、イヌ科動物(例えばイヌ)、ネコ科動物(例えばネコ)およびウマであり;食料源哺乳動物のいくつかの例は、ブタ、ウシ、ヒツジ等である。好ましくは、哺乳動物は、ヒトまたはコンパニオン哺乳動物である。最も好ましくは、哺乳動物は、男性または女性のヒトである。
【0050】
用語「治療すること」、「治療する」、または「治療」は、防止的、すなわち予防的および緩和的治療の両方を含む。
用語「末梢投与」は、中枢神経系外部の投与を意味する。末梢投与には、脳への直接投与は含まれない。末梢投与には、限定されるわけではないが、静脈内、筋内、皮下、吸入、経口、舌下、溶腸、直腸、経皮、または鼻内投与が含まれる。
【0051】
本発明で使用するのに適した非天然アミノ酸は、典型的には、20の天然存在アミノ酸以外の、以下の式を有する任意のアミノ酸であり(CantorおよびShimmel, Biophysical Chemistry, Part 1, WH Freeman & Sons, サンフランシスコ, 42−43, 1980)、式中、R1は、ケト、チオール、カルボキシル、ヒドロキシル、または本明細書にその全体が援用される米国特許公報第2005/0208536号に開示されるものなどの未結合アミノ官能性を含む、任意の置換基である。
【0052】
【化7】
【0053】
こうした非天然アミノ酸には、例えば、チオチロシン、オルニチン、3−メルカプトフェニルアラニン、3−または4−アミノフェニルアラニン、3−または4−アセチルフェニルアラニン、2−または3−ヒドロキシフェニルアラニン(o−またはm−チロシン)、ヒドロキシメチルグリシン、アミノエチルグリシン、1−メチル−1−メルカプトエチルグリシン、アミノエチルチオエチルグリシンおよびメルカプトエチルグリシンが含まれる。本発明で有用な非天然アミノ酸の多くは、商業的に入手可能である。他のものは、当該技術分野に知られる方法によって調製可能である。例えば、チオチロシンは、本明細書に援用される、Luら, J. Am. Chem. Soc. 119:7173−7180, 1997に記載される方法によって調製可能である。
【0054】
用語「ヒトPYY」または「hPYY」は、以下のアミノ酸配列:
YPIKPEAPGEDASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY−NH2 [配列番号1]
を有する36アミノ酸のC末端アミド化ポリペプチドを意味する。
【0055】
用語「hPYY3−36」は、以下のアミノ酸配列:
IKPEAPGEDASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY−NH2 [配列番号2]
を有するC末端34量体hPYYを意味する。
【0056】
用語「(E10C)hPYY3−36」は、hPYYの残基10のグルタミン酸がシステイン残基で置換されており、そして以下のアミノ酸配列:
IKPEAPGCDASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY−NH2 [配列番号3]
を有する、C末端34量体hPYYを意味する。
【0057】
用語「(D11C)hPYY3−36」は、hPYYの残基11のアスパラギン酸がシステイン残基で置換されており、そして以下のアミノ酸配列:
IKPEAPGECASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY−NH2 [配列番号4]
を有する、C末端34量体hPYYを意味する。
発明の詳細な説明
本発明は、PYY3−36の変異体およびそのPEG化コンジュゲートであるPYYアゴニストであって、限定されるわけではないが、クリアランス速度の減少、血漿存在期間の増加、in vivo活性の延長、強度の増加、安定性の増加、可溶性の改善、および抗原性の減少から選択される、少なくとも1つの改善された化学的または生理学的特性を有しうる、前記PYYアゴニストに関する。
【0058】
本発明の好ましいPYY3−36変異体は、(E10C)hPYY3−36である。別の好ましい変異体は、(D11C)hPYY3−36である。本発明のこれらおよび他の変異体を、以下にそして本明細書中の実施例に記載するように、合成的に、そして組換えおよび他の手段によって、または類似の方法によって、産生してもよい。
【0059】
上に列挙する置換(例えばE10CおよびD11C)に加えて、本発明のPYYアゴニストにはまた、他のアミノ酸位での1以上の保存的アミノ酸置換もまた含まれてもよい。例えば、以下の表にしたがって、保存的置換を行ってもよい。脂肪族非極性、極性非荷電、および極性荷電アミノ酸を、それぞれ、非極性、極性非荷電、または極性荷電アミノ酸である別の脂肪族アミノ酸に対して置換してもよい。好ましくは、こうした置換は、以下の表の第3列の同じ行のアミノ酸間で起こる。保存的アミノ酸置換はまた、以下の表に列挙するような芳香族アミノ酸間で行われてもよい。
【0060】
【表1】
【0061】
合成的産生
当該技術分野で知られる標準的ペプチド合成技術を用いて、例えばtBocまたはFmoc化学を用い、自動的ペプチド合成装置(例えばモデル433A;Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)を用いて行われる固相ペプチド合成によって、本発明のPYY3−36変異体、例えば(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36を調製してもよい。利用可能な多くのペプチド合成技術の要約は、Solid Phase Peptide Synthesis 第2版(Stewart, J.M.およびYoung, J.D., Pierce Chemical Company, イリノイ州ロックフォード, 1984)に見出されうる。また、書籍、Solid−phase Organic Synthesis(Burgess, K., John Wiley & Sons, ニューヨーク州ニューヨーク, 2000)および文献、Engelsら, Angew. Chem. Intl. Ed. 28:716−34, 1989もまた参照されたい。上記参考文献はすべて、本明細書に援用される。
【0062】
好ましくは、本発明のPYY3−36変異体をPEGとコンジュゲート化する。PEG化反応と呼ばれるコンジュゲート化反応は、歴史的に、ポリマーのモル過剰で、そしてポリマーがタンパク質に付着する場所にかかわらず、溶液中で行われた。しかし、こうした一般的技術は、典型的には、十分な生物活性を保持しながら、非抗原性ポリマーに生物活性タンパク質をコンジュゲート化するのに不適切であることが立証されてきている。PEG化後、PYY3−36アゴニスト変異体の生物活性を維持する1つの方法は、カップリング・プロセスにおいて、ターゲット受容体へのアゴニストの結合と関連する、変異体のいかなる反応性の基のコンジュゲート化も実質的に回避することである。本発明の側面は、高レベルの活性を保持するため、受容体結合部位(単数または複数)に実質的に干渉しない、特定の反応性部位で、本発明のPYY3−36変異体アゴニストにポリエチレングリコールをコンジュゲート化するプロセスを提供することである。本発明の別の側面は、PYY3−36内に反応性残基を挿入して、活性改変が限られている、ポリエチレングリコールとのコンジュゲート化用のアゴニスト変異体を提供することである。
【0063】
活性化されたPEGと生物学的活性物質のコンジュゲート化反応において、一般的に採用されるいかなる適切な条件下で、共有結合を通じた化学修飾を行ってもよい。比較的穏やかな条件下で、コンジュゲート化反応を行って、PYY3−36変異体アゴニストの不活性化を回避する。穏やかな条件には、約3〜10の範囲内の反応溶液のpH、および約0℃〜40℃の範囲内の反応温度を維持することが含まれる。PEG化条件下で、活性化されたPEGと反応性であるPYY3−36変異体中の非ターゲット官能性は、好ましくは、ターゲット官能性でのPEG化後に除去可能な適切な保護基で保護される。PEGアルデヒドまたはPEGスクシンイミドなどの試薬を用いた未結合アミノ基のPEG化において、約3〜10、好ましくは約4〜7.5の範囲内のpHが、典型的には維持される。好ましくは、適切な緩衝液(pH3〜10)、例えば、リン酸、MES、クエン酸、酢酸、コハク酸またはHEPES緩衝液中、約4℃〜40℃の範囲内の温度で、約1〜48時間、カップリング反応を行う。PEGマレイミド、PEGビニルスルホンまたはPEGオルトピリジルジスルフィドなどの試薬を用いて、チオール基をPEG化する際、好ましくは、約4〜8の範囲内のpHが維持される。PEGアミンは、例えばp−アセチルフェニルアラニンにおける、ケト基のPEG化の際に有用であり、そしてPillaiら, J. Org. Chem. 45:5364−5370, 1980に記載されるように調製可能である。
【0064】
本発明のコンジュゲート化反応は、典型的には、所望のモノPEG化PYY3−36変異体ならびに反応していないPYY3−36変異体ペプチド、反応していないPEGを含有し、そして通常は高分子量種を約20%未満含有し、これには、1より多いPEG鎖および/または凝集した種を含有するコンジュゲートが含まれていてもよい。反応していない種および高分子量種を取り除いた後、主としてモノPEG化されたPYY3−36変異体を含有する組成物を回収する。コンジュゲートにはしばしば単一ポリマー鎖が含まれることを考慮すると、コンジュゲートは実質的に均質である。
【0065】
透析、塩析、限外ろ過、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、ゲルクロマトグラフィーおよび電気泳動などの、タンパク質精製に典型的に用いられる慣用法によって、反応混合物から、所望のPEG−PYY3−36変異体コンジュゲートを精製してもよい。反応していないPEGまたは反応していないPYY3−36変異体のいずれを取り除く際でも、イオン交換クロマトグラフィーが特に有効である。脱アミド化を回避するため、約4〜約10、好ましくは8未満のpHを有する緩衝溶液中に、混合された種を含有する反応混合物を入れることによって、所望のPEG−変異体コンジュゲートの分離を達成してもよい。緩衝溶液は、好ましくは、限定されるわけではないが、KCl、NaCl、K2HPO4、KH2PO4、Na2HPO4、NaH2PO4、NaHCO3、NaBO4およびCH3CO2Naから選択される1以上の緩衝塩を含有する。
【0066】
PEG化反応で用いられる緩衝系が分離プロセスで用いられるものと異なる場合、PEG化反応混合物を緩衝剤交換/ダイアフィルトレーションに供するか、または十分な量の初期分離緩衝液で希釈する。
【0067】
好ましくは、イオン交換クロマトグラフィー媒体を用いてコンジュゲートを分画して、所望の種を含有するプールにする。こうした媒体は、幾分予測可能な方式で変化する、荷電の相違を介して、PEG−PYY3−36変異体コンジュゲートに選択的に結合可能である。例えば、PEGの存在によって損なわれないカラム支持体との相互作用のために利用可能な、ペプチド表面上の利用可能な荷電基の数によって、PYY3−36変異体の表面荷電が決定される。これらの荷電基は、典型的には、PEGポリマーの潜在的付着点として働く。したがって、PEG−PYY3−36変異体コンジュゲートは、存在する他の種とは異なる荷電を有し、選択的単離が可能になるであろう。
【0068】
イオン交換樹脂は、本発明のPEG−PYY3−36変異体コンジュゲートの精製に特に好ましい。本発明の精製法において、スルホプロピル樹脂などの陽イオン交換樹脂を用いる。本発明とともに用いるのに適している、陽イオン交換樹脂の限定されないリストには、SP−hitrap(登録商標)、SP Sepharose HP(登録商標)およびSP Sepharose(登録商標)ファーストフローが含まれる。他の適切な陽イオン交換樹脂、例えばSおよびCM樹脂もまた、使用可能である。
【0069】
好ましくは、陽イオン交換樹脂をカラム内に充填し、そして慣用的手段によって平衡化する。PEGコンジュゲート化PYY3−36変異体の溶液と同じpHおよび浸透圧を有する緩衝液を用いる。溶出緩衝液は、好ましくは、限定されるわけではないが、CH3CO2Na、HEPES、KCl、NaCl、K2HPO4、KH2PO4、Na2HPO4、NaH2PO4、NaHCO3、NaBO4、および(NH4)2CO3から選択される1以上の塩を含有する。次いで、コンジュゲート含有溶液をカラム上に吸着させると、未反応PEGおよびいくつかの高分子量種は保持されない。装填完了後、塩濃度を増加させる溶出緩衝液の勾配フローをカラムに適用して、PEGコンジュゲート化PYY3−36変異体の所望の分画を溶出させる。溶出され、プールされる分画は、好ましくは、陽イオン交換分離工程後の均質なポリマーコンジュゲートに限られる。次いで、慣用的技術によって、コンジュゲート化されていないPYY3−36変異体種をカラムから洗浄してもよい。所望の場合、モノPEG化および多PEG化PYY3−36変異体種ならびにより高分子量の種を、さらなるイオン交換クロマトグラフィーまたはサイズ排除クロマトグラフィーを介して、互いに、さらに分離してもよい。
【0070】
直線勾配の代わりに、濃度が増加する多重アイソクラチック工程を利用する技術を用いてもよい。濃度が増加する多重アイソクラチック溶出工程は、多重PEG化/凝集コンジュゲートの連続溶出、および次いでモノPEG化PYY3−36変異体コンジュゲートを生じるであろう。pH勾配に基づく溶出技術もまた、使用可能である。溶出の温度範囲は、一般的に、約4℃〜約25℃の間である。280nmのUV吸光によって、PEG−PYY3−36変異体の溶出を監視する。単純な時間溶出プロフィールを通じて、分画収集を達成してもよい。
組換え発現
核酸分子
(E10C)hPYY3−36ポリペプチドをコードする核酸分子は、以下の核酸配列の1つを含んでもよい(E10C置換のためのコドン突然変異を下線で示す):
atcaaacccgaggctcccggctgtgacgcctcgccggaggagctgaaccgctactacgcctccctgcgccactacctcaacctggtcacccggcagcggtat(配列番号5);または
atcaaacccgaggctcccggctgcgacgcctcgccggaggagctgaaccgctactacgcctccctgcgccactacctcaacctggtcacccggcagcggtat(配列番号6)。
【0071】
(D11C)hPYY3−36ポリペプチドをコードする核酸分子は、以下の核酸配列の1つを含んでもよい(D11C置換のためのコドン突然変異を下線で示す):
atcaaacccgaggctcccggcgaatgtgcctcgccggaggagctgaaccgctactacgcctccctgcgccactacctcaacctggtcacccggcagcggtat(配列番号7);または
atcaaacccgaggctcccggcgaatgcgcctcgccggaggagctgaaccgctactacgcctccctgcgccactacctcaacctggtcacccggcagcggtat(配列番号8)。
【0072】
これらの配列にはまた、C末端に停止コドン(例えばtga、taa、tag)も含まれてもよいし、そして限定なしに、化学的合成、cDNAまたはゲノムライブラリースクリーニングから得られる野生型hPYYポリヌクレオチド配列の遺伝子突然変異、発現ライブラリースクリーニング、および/またはcDNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅を含む多様な方法で、これらの配列を容易に得ることも可能である。プライマー(単数または複数)が望ましい点突然変異を有する、部位特異的突然変異誘発、PCR増幅、または他の適切な方法を用いて、(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36変異体をコードする核酸分子を産生してもよい。本明細書記載の組換えDNA法および突然変異誘発法は、一般的に、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)およびCurrent Protocols in Molecular Biology(Ausubelら監修, Green Publishers Inc.およびWiley and Sons 1994)に示されるものである。別の非天然存在アミノ酸が、E10またはD11を置換することが望ましい場合、例えば、本明細書に援用される米国特許出願公報第2005/0208536号に開示されるような方法を用いて、こうしたペプチドを組換え的に発現してもよい。
【0073】
発現されたタンパク質の特性に基づく陽性クローンの検出を使用する発現クローニングによって、hPYYのアミノ酸配列をコードする核酸ポリヌクレオチドを同定してもよい。典型的には、宿主細胞表面上に発現され、そしてディスプレイされる、クローニングされたタンパク質に対する、抗体または他の結合性パートナー(例えば受容体またはリガンド)の結合によって核酸ライブラリーをスクリーニングする。抗体または結合性パートナーを検出可能標識で修飾して、所望のクローンを発現している細胞を同定する。
【0074】
以下に示す説明にしたがって行う組換え発現技術にしたがって、(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36をコードするポリヌクレオチドを産生して、そしてコードされるポリペプチドを発現してもよい。例えば、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36変異体のアミノ酸配列をコードする核酸配列を、適切なベクター内に挿入することによって、当業者は、容易に、所望のヌクレオチド配列を多量に産生可能である。次いで、該配列を用いて、検出プローブまたは増幅プライマーを生成してもよい。あるいは、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドのアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを、発現ベクターに挿入してもよい。発現ベクターを適切な宿主に導入することによって、コードされる(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36変異体を多量に産生可能である。
【0075】
適切な核酸配列を得るための別な方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)である。この方法において、酵素、逆転写酵素を用いて、ポリ(A)+RNAまたは総RNAから、cDNAを調製する。次いで、典型的には、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36変異体のアミノ酸配列をコードするcDNAの2つの離れた領域に相補的である、2つのプライマーを、Taqポリメラーゼなどのポリメラーゼと一緒に、cDNAに添加し、そして該ポリメラーゼが2つのプライマー間のcDNA領域を増幅する。
【0076】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36変異体のアミノ酸配列をコードする核酸分子を調製する別の手段は、Engelsら, Angew. Chem. Intl. Ed. 28:716−34, 1989に記載されるものなど、当業者に周知の方法を用いた化学合成である。これらの方法には、核酸合成のための、ホスホトリエステル法、ホスホロアミダイト法、およびH−ホスホネート法が含まれる。こうした化学合成のための好ましい方法は、標準的ホスホロアミダイト化学を用いた、ポリマーが補助する合成である。典型的には、(E10C)hPYY3−36のアミノ酸配列をコードするDNAは、長さ約100ヌクレオチドであろう。約100ヌクレオチドより大きい核酸を、これらの方法を用いて、いくつかの断片として合成可能である。次いで、断片を一緒に連結して、(E10C)hPYY3−36遺伝子の全長ヌクレオチド配列を形成してもよい。
【0077】
ポリペプチドのアミノ末端をコードするDNA断片は、ATGを有してもよく、ATGはメチオニン残基をコードする。このメチオニンは、宿主細胞において産生されるポリペプチドが、その細胞から分泌されるように設計されているかどうかに応じて、(E10C)hPYY3−36または(DIIC)LP443−36の成熟型上に存在しても、またはしなくてもよい。イソロイシンをコードするコドンもまた、出発部位として使用可能である。当業者に知られる他の方法もまた、使用可能である。特定の態様において、所定の宿主細胞において、核酸変異体は、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36の最適な発現のために改変されているコドンを含有する。特定のコドン改変は、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36、および発現のために選択した宿主細胞に応じるであろう。多様な方法によって、例えば、所定の宿主細胞において、高発現される遺伝子で使用が好まれるコドンを選択することによって、こうした「コドン最適化」を行ってもよい。高発現される細菌遺伝子のコドン優先性に関する、「Eco_high.Cod」などのコドン頻度表を取り込むコンピュータアルゴリズムが使用可能であり、そしてこうしたアルゴリズムは、ウィスコンシン大学パッケージ、バージョン9.0(Genetics Computer Group、ウィスコンシン州マディソン)によって提供される。他の有用なコドン頻度表には、「Celegans_high.cod」、「Celegans_low.cod」、「Drosophila_high.cod」、「Human_high.cod」、「Maize_high.cod」、および「Yeast_high.cod」が含まれる。
【0078】
ベクターおよび宿主細胞
標準的連結技術を用いて、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36のアミノ酸配列をコードする核酸分子を、適切な発現ベクター内に挿入する。典型的には、使用する特定の宿主細胞において機能するように、ベクターを選択する(すなわち、遺伝子の増幅および/または遺伝子の発現が起こりうるように、ベクターが宿主細胞機構と適合する)。(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36のアミノ酸配列をコードする核酸分子を、原核、酵母、昆虫(バキュロウイルス系)および/または真核宿主細胞において、増幅/発現してもよい。発現ベクターの概説に関しては、Meth. Enz., vol. 185(D. V. Goeddel監修, Academic Press, 1990)を参照されたい。
【0079】
典型的には、いかなる宿主細胞で用いられる発現ベクターも、プラスミドを維持するための配列、ならびに外因性ヌクレオチド配列のクローニングおよび発現のための配列を含有するであろう。こうした配列は、特定の態様において、集合的に「隣接配列」と呼ばれ、典型的には、以下のヌクレオチド配列:プロモーター、1以上のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、ドナーおよびアクセプター・スプライス部位を含有する完全イントロン配列、ポリペプチド分泌のためのリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現しようとするポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、ならびに選択可能マーカー要素の1以上を含むであろう。これらの配列各々を以下に論じる。
【0080】
場合によって、ベクターは、「タグ」コード配列;すなわち(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36コード配列の5’端または3’端に位置するオリゴヌクレオチド分子を含有してもよく;オリゴヌクレオチド配列は、ポリHis(ヘキサHisなど)、あるいは商業的に入手可能な抗体が存在する、FLAG、HA(インフルエンザウイルス赤血球凝集素)、またはmycなどの別の「タグ」をコードする。典型的には、ポリペプチドの発現に際して、このタグをポリペプチドに融合し、そしてこのタグは、宿主細胞からの(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36のアフィニティー精製のための手段として働きうる。例えば、アフィニティーマトリックスとして、タグに対する抗体を用いるカラム・クロマトグラフィーによって、アフィニティー精製を達成してもよい。場合によって、続いて、切断のための特定のペプチダーゼ、例えば配列番号3〜4に示すようなアミノ酸配列の1つの上流であるFLAGタグ配列の3’のエンテロキナーゼ消化を用いるなどの多様な手段によって、精製(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36から、タグを除去してもよい。
【0081】
隣接配列は同種(すなわち、宿主細胞と同じ種および/または株由来)、異種(すなわち宿主細胞種または株以外の種由来)、ハイブリッド(すなわち1より多い供給源由来の隣接配列の組み合わせ)、または合成であってもよいし、あるいは隣接配列は、通常、hPYY3−36発現を制御するように機能する天然配列であってもよい。隣接配列供給源は、隣接配列が宿主細胞機構において機能し、そして該機構によって活性化可能である限り、いかなる原核または真核生物、いかなる脊椎または無脊椎生物、またはいかなる植物であってもよい。
【0082】
当該技術分野に周知のいくつかの方法のいずれかによって、有用な隣接配列を得てもよい。典型的には、PYY遺伝子隣接配列以外の、本明細書で有用な隣接配列は、マッピングによって、そして/または制限エンドヌクレアーゼ消化によって、先に同定されてきているであろうし、そしてしたがって、適切な制限エンドヌクレアーゼを用いて、適切な組織供給源から単離可能である。いくつかの場合、隣接配列の全長ヌクレオチド配列が既知でありうる。この場合、核酸合成またはクローニングのため、本明細書記載の方法を用いて、隣接配列を合成してもよい。
【0083】
隣接配列のすべてまたは一部のみが既知である場合、PCRを用いて、そして/または適切なオリゴヌクレオチドおよび/または同じ種もしくは別の種の隣接配列断片でゲノムライブラリーをスクリーニングすることによって、隣接配列を得てもよい。隣接配列が未知である場合、例えばコード配列または別の単数もしくは複数の遺伝子さえ含有してもよい、DNAのより大きいピースから、隣接配列を含有するDNA断片を単離してもよい。制限エンドヌクレアーゼ消化で、適切なDNA断片を産生して、その後、アガロースゲル精製、Qiagen(登録商標)カラム・クロマトグラフィー(カリフォルニア州チャツワース)、または当業者に知られる他の方法を用いた単離によって単離を達成してもよい。この目的を達成するのに適した酵素の選択は、当業者には容易に明らかであろう。
【0084】
複製起点は、典型的には、商業的に購入した原核発現ベクターの一部であり、そして起点は、宿主細胞におけるベクターの増幅を援助する。ベクターの特定のコピー数への増幅は、いくつかの場合、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36の最適な発現に重要でありうる。選択したベクターが、複製起点部位を含有しない場合、既知の配列に基づいて化学的に合成し、そしてベクター内に連結してもよい。例えば、プラスミドpBR322(New England Biolabs、マサチューセッツ州ビバリー)由来の複製起点は、大部分のグラム陰性細菌に適しており、そして哺乳動物細胞におけるクローニングベクターには、多様な起点(例えばSV40、ポリオーマ、アデノウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、またはHPVもしくはBPVなどのパピローマウイルス)が有用である。一般的に、複製起点構成要素は、哺乳動物発現ベクターには必要ではない(例えば、SV40起点は、しばしば、ただ、初期プロモーターを含有するために用いられる)。
【0085】
転写終結配列は、典型的には、ポリペプチドコード領域の3’端に位置し、そして転写を終結させるように働く。通常、原核細胞における転写終結配列は、G−Cリッチ断片に続いて、ポリT配列である。配列はライブラリーから容易にクローニングされるか、またはベクターの一部として商業的に購入されさえするが、また、本明細書記載のものなどの核酸合成法を用いて、容易に合成可能でもある。
【0086】
選択可能マーカー遺伝子要素は、選択培地中で増殖する宿主細胞の生存および増殖に必要なタンパク質をコードする。典型的な選択マーカー遺伝子は、(a)抗生物質または他の毒素、例えばアンピシリン、テトラサイクリン、またはカナマイシンに対する耐性を、原核宿主細胞に与えるか;(b)細胞の栄養要求欠損を補完するか;あるいは(c)複合培地から入手可能でない必須栄養素を供給する、タンパク質をコードする。好ましい選択可能マーカーは、カナマイシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、およびテトラサイクリン耐性遺伝子である。原核および真核宿主細胞における選択のため、ネオマイシン耐性遺伝子もまた使用可能である。
【0087】
他の選択遺伝子を用いて、発現しようとする遺伝子を増幅してもよい。増幅は、増殖に必須のタンパク質の産生のためにより大きい需要がある遺伝子が、組換え細胞の続く世代の染色体内でタンデムに反復されるプロセスである。哺乳動物細胞に適した選択可能マーカーの例には、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)およびチミジンキナーゼが含まれる。哺乳動物細胞形質転換体を選択圧下に置き、この選択圧下では、ベクターに存在する選択遺伝子のおかげで、形質転換体のみが生存するようユニークに適応している。培地中の選択剤の濃度が連続して変化する条件下で形質転換細胞を培養することによって、選択圧を課し、それによって、選択遺伝子、および(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36をコードするDNAの両方の増幅を導く。その結果、増幅されたDNAから、増加した量の(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36が合成される。
【0088】
リボソーム結合部位は、通常、mRNAの翻訳開始に必要であり、そしてシャイン−ダルガノ配列(原核生物)またはコザック配列(真核生物)によって特徴付けられる。この要素は、典型的にはプロモーターの3’に、そして発現しようとする(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36のコード配列の5’に位置する。シャイン−ダルガノ配列は、多様であるが、典型的にはポリプリン(すなわちA−Gを高含量で有する)である。多くのシャイン−ダルガノ配列が同定されてきており、その各々が、本明細書に示す方法を用いて容易に合成可能であり、そして原核ベクター中で使用可能である。
【0089】
リーダー配列、またはシグナル配列を用いて、宿主細胞外に(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36を導くことも可能である。典型的には、シグナル配列をコードするヌクレオチド配列を、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36核酸分子のコード領域内に配置するか、あるいは(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36コード領域の5’端に直接配置する。多くのシグナル配列が同定されてきており、そして選択した宿主細胞で機能するもののいずれを、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36核酸分子と組み合わせて使用してもよい。したがって、シグナル配列は、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36核酸分子に対して同種(天然存在)であってもまたは異種であってもよい。さらに、本明細書記載の方法を用いて、シグナル配列を化学的に合成してもよい。大部分の場合、シグナルペプチドの存在を介した、宿主細胞からの(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36の分泌は、分泌された(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36からのシグナルペプチドの除去を生じるであろう。シグナル配列は、ベクターの構成要素であってもよいし、あるいはベクターに挿入された(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36核酸分子の一部であってもよい。
【0090】
天然hPYY3−36シグナル配列をコードするヌクレオチド配列を、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36コード領域に連結するか、あるいは異種シグナル配列をコードするヌクレオチド配列を、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36コード領域に連結してもよい。選択する異種シグナル配列は、宿主細胞によって認識され、そしてプロセシングされる、すなわちシグナルペプチダーゼによって切断されるものでなければならない。天然hPYYシグナル配列を認識せず、そしてプロセシングしない原核宿主細胞の場合は、例えば、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、または熱安定性内毒素IIリーダーの群から選択した原核シグナル配列によって、シグナル配列を置換する。酵素分泌の場合、酵素インベルターゼ、アルファ因子、または酸ホスファターゼ・リーダーによって、天然hPYYシグナル配列を置換してもよい。哺乳動物細胞発現においては、天然シグナル配列で十分であるが、他の哺乳動物シグナル配列が適切でありうる。
【0091】
多くの場合、核酸分子の転写は、ベクター中の1以上のイントロンの存在によって増加し;これは、真核宿主細胞、特に哺乳動物宿主細胞でポリペプチドを産生する場合、特に当てはまる。用いるイントロンは、用いる遺伝子が全長ゲノム配列またはその断片である場合は特に、hPYY遺伝子内に天然に存在するものであってもよい。(大部分のcDNAの場合のように)イントロンが遺伝子内に天然に存在しない場合、イントロンを別の供給源から得てもよい。イントロンは有効であるためには転写されなければならないため、一般的に、隣接配列およびhPYY遺伝子に対するイントロンの位置が重要である。したがって、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36をコードするcDNA分子が転写される際、イントロンの好ましい位置は、転写開始部位の3’であり、そしてポリA転写終結配列の5’である。好ましくは、単数または複数のイントロンは、イントロンがコード配列を中断しないように、cDNAの一方の側または他方の側(すなわち5’または3’)に位置するであろう。挿入しようとする宿主細胞に適合するという条件で、ウイルス、原核および真核(植物または動物)生物を含む、いかなる供給源由来のいかなるイントロンを用いてもよい。本明細書にやはり含まれるのは合成イントロンである。場合によって、ベクター中で、1より多いイントロンを用いてもよい。
【0092】
発現およびクローニングベクターは、典型的には、宿主生物によって認識され、そして(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36をコードする分子に機能可能であるように連結されたプロモーターを含有するであろう。プロモーターは、構造遺伝子(一般的に約100〜1000bp以内)の開始コドンの上流(すなわち5’)に位置する転写されない配列であり、構造遺伝子の転写を制御する。プロモーターは、慣用的には、2つの種類:誘導性プロモーターおよび構成的プロモーターの一方に分類される。誘導性プロモーターは、栄養素の存在または非存在、あるいは温度の変化などの培養条件の何らかの変化に応じて、制御下にあるDNAからの転写レベル増加を開始する。一方、構成的プロモーターは、継続的な遺伝子産物産生を開始し;すなわち遺伝子発現に対してはほとんどまたはまったく制御がない。多様な潜在的宿主細胞によって認識される、多数のプロモーターが周知である。制限酵素消化によって供給源DNAからプロモーターを除去し、そしてベクター内に所望のプロモーター配列を挿入することによって、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36をコードするDNAに、適切なプロモーターを機能可能であるように連結する。天然hPYY3−36プロモーター配列を用いて、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36核酸分子の増幅および/または発現を指示してもよい。しかし、異種プロモーターが、天然プロモーターに比較して、より多い転写を可能にし、そしてより高収率の発現タンパク質を可能にするならば、そして使用のために選択されている宿主細胞系と適合するならば、異種プロモーターが好ましい。
【0093】
原核宿主での使用に適したプロモーターには、ベータ−ラクタマーゼおよびラクトースプロモーター系;大腸菌(E. coli)T7誘導性RNAポリメラーゼ;アルカリホスファターゼ;トリプトファン(trp)プロモーター系;およびtacプロモーターなどのハイブリッドプロモーターが含まれる。他の既知の細菌プロモーターもまた適切である。それらの配列は公開されており、そのため、必要に応じて、リンカーまたはアダプターを用いて任意の有用な制限部位を供給し、当業者がこれらの配列を連結して所望のDNA配列にすることが可能である。
【0094】
酵母宿主で使用するのに適したプロモーターもまた、当該技術分野に周知である。酵母エンハンサーは、酵母プロモーターとともに好適に用いられる。哺乳動物宿主細胞で使用するのに適したプロモーターが周知であり、そしてこれらには、限定されるわけではないが、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス(アデノウイルス2など)、ウシ・パピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルスおよび最も好ましくはサルウイルス40(SV40)などのウイルスのゲノムから得られるものが含まれる。他の適切な哺乳動物プロモーターには、異種哺乳動物プロモーター、例えば熱ショックプロモーターおよびアクチンプロモーターが含まれる。
【0095】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36の発現を制御する際に関心が持たれうる、さらなるプロモーターには、限定されるわけではないが:SV40初期プロモーター領域(BemoistおよびChambon, Nature 290:304−10, 1981);CMVプロモーター;ラウス肉腫ウイルスの3’末端反復配列に含有されるプロモーター(Yamamotoら, Cell 22:787−97, 1980);ヘルペス・チミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 78:1444−45, 1981);メタロチオネイン遺伝子の制御配列(Brinsterら, Nature 296:39−42, 1982);ベータ−ラクタマーゼプロモーターなどの原核発現ベクター(Villa−Kamaroffら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 75:3727−31, 1978);またはtacプロモーター(DeBoerら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 80:21−25, 1983)が含まれる。
【0096】
エンハンサー配列をベクター内に挿入して、より高次の真核生物における(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36をコードするDNAの転写を増加させてもよい。エンハンサーは、DNAのシス作用要素であり、通常、長さ約10〜300bpで、プロモーターに対して転写を増加させるように作用する。エンハンサーは、比較的、配向および位置独立性である。エンハンサーは、転写単位に対して、5’および3’で見出されている。哺乳動物遺伝子から入手可能ないくつかのエンハンサー配列が知られる(例えばグロビン、エラスターゼ、アルブミン、アルファ−フェトプロテインおよびインスリン)。しかし、典型的には、ウイルス由来のエンハンサーを用いるであろう。SV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、ポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーは、真核生物プロモーターの活性化のための例示的な増進要素である。エンハンサーを、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36コード核酸分子の5’または3’の位で、ベクター内にスプライシングしてもよいが、典型的には、エンハンサーはプロモーターの5’の部位に位置する。
【0097】
商業的に入手可能なベクターなどの出発ベクターから、発現ベクターを構築してもよい。こうしたベクターは、所望の隣接配列をすべて含有してもまたしなくてもよい。本明細書記載の隣接配列の1以上が、すでにベクターに存在しているのではない場合、これらを個々に得て、そしてベクター内に連結してもよい。各隣接配列を得るための方法は、当業者に周知である。
【0098】
好ましいベクターは、細菌、昆虫、および哺乳動物宿主細胞と適合するものである。こうしたベクターには、とりわけ、pCRII、pCR3、およびpcDNA3.1(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)、pBSII(Stratagene、カリフォルニア州ラホヤ)、pET15(Novagen、ウィスコンシン州マディソン)、pGEX(Pharmacia Biotech、ニュージャージー州ピスカタウェイ)、pEGFP−N2(Clontech、カリフォルニア州パロアルト)、pETL(BlueBacII、Invitrogen)、pDSR−アルファ(PCT出願公報第WO 90/14363号)ならびにpFastBacDual(Gibco−BRL、ニューヨーク州グランドアイランド)が含まれる。
【0099】
さらなる適切なベクターには、限定されるわけではないが、コスミド、プラスミド、または修飾ウイルスが含まれるが、ベクター系が、選択した宿主細胞と適合しなければならないことが認識されるであろう。こうしたベクターには、限定されるわけではないが、Bluescript(登録商標)プラスミド誘導体(ColE1に基づく高コピー数ファージミド、Stratagene)、Taq増幅されたPCR産物をクローニングするために設計されたPCRクローニングプラスミド(例えばTOPO(登録商標)TAクローニング(登録商標)キット、PCR2.1(登録商標)プラスミド誘導体、Invitrogen)などのプラスミド、およびバキュロウイルス発現系(pBacPAKプラスミド誘導体、Clontech)などの哺乳動物、酵母またはウイルスベクターが含まれる。
【0100】
ベクターが構築され、そして(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドをコードする核酸分子がベクターの適切な部位内に挿入された後、増幅および/またはポリペプチド発現のため、完成したベクターを適切な宿主細胞内に挿入してもよい。トランスフェクション、感染、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、DEAE−デキストラン法、または他の既知の技術などの方法を含む、周知の方法によって、選択した宿主細胞内への(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドの発現ベクターの形質転換を達成してもよい。選択する方法は、部分的に、用いようとする宿主細胞の種類に関連するであろう。これらの方法および他の適切な方法が当業者に周知であり、そして例えば、Sambrookら、上記に示される。
【0101】
宿主細胞は、原核宿主細胞(大腸菌など)または真核宿主細胞(酵母、昆虫、または脊椎動物細胞など)であってもよい。宿主細胞を、適切な条件下で培養すると、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドが合成され、これを続いて、培地から収集する(宿主細胞がポリペプチドを培地内に分泌する場合)か、またはポリペプチドを産生する宿主細胞から直接収集してもよい(ポリペプチドが分泌されない場合)。適切な宿主細胞の選択は、所望の発現レベル、活性のために望ましいかまたは必要であるポリペプチド修飾(グリコシル化またはリン酸化など)および生物学的活性分子へのフォールディングの容易さなどの多様な要因に応じるであろう。
【0102】
いくつかの適切な宿主細胞が当該技術分野に知られ、そして多くが、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)、バージニア州マナサスから入手可能である。例には、限定されるわけではないが、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、CHO DHFR(−)細胞(Urlaubら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 97:4216−20, 1980)、ヒト胚性腎(HEK)293または293T細胞、あるいは3T3細胞が含まれる。形質転換、培養、増幅、スクリーニング、産物産生、および精製に適した哺乳動物宿主細胞および方法の選択が、当該技術分野に知られる。他の適切な哺乳動物細胞株はサルCOS−1およびCOS−7細胞株、ならびにCV−1細胞株である。さらなる例示的な哺乳動物宿主細胞には、形質転換された細胞株を含む、霊長類細胞株およびげっ歯類細胞株が含まれる。正常二倍体細胞、初代組織のin vitro培養由来の細胞株ならびに初代外植片もまた、適切である。候補細胞は、選択遺伝子において、遺伝型的に欠損していてもよいし、または優性に作用する選択遺伝子を含有してもよい。他の適切な哺乳動物細胞株には、限定されるわけではないが、マウス神経芽細胞腫N2A細胞、HeLa、マウスL−929細胞、Swiss、Balb−cまたはNIHマウス由来の3T3株、BHKまたはHaKハムスター細胞株が含まれる。これらの細胞株は各々、タンパク質発現の当業者によって知られ、そしてこうした当業者に対して入手可能である。
【0103】
適切な宿主細胞として同様に有用なのは、細菌細胞である。例えば、大腸菌の多様な株(例えばHB101、DH5α、DH10、およびMC1061)が、バイオテクノロジー分野において、宿主細胞として周知である。枯草菌(B. subtilis)、シュードモナス属(Pseudomonas)種、他のバチルス属(Bacillus)種、およびストレプトミセス属(Streptomyces)種の多様な株もまた、本方法で使用可能である。
【0104】
当業者に知られる酵母細胞の多くの株もまた、(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36ポリペプチドの発現のための宿主細胞として、利用可能である。好ましい酵母細胞には、例えば、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerivisae)およびピキア・パストリス(Pichia pastoris)が含まれる。
【0105】
さらに、望ましい場合、(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36の発現のために、昆虫細胞系を利用してもよい。こうした系は、例えば、Kittsら, 1993, Biotechniques 14:810−17;Lucklow, Curr. Opin. Biotechnol. 4:564−72, 1993;およびLucklowら, J. Virol., 67:4566−79, 1993に記載される。好ましい昆虫細胞は、Sf−9およびHi5(Invitrogen)である。
【0106】
(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36ポリペプチド産生
当業者に周知の標準的培地を用いて、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36発現ベクターを含む宿主細胞株を培養してもよい。培地は通常、細胞の増殖および生存に必要なすべての栄養素を含有するであろう。大腸菌細胞を培養するのに適した培地には、例えばルリア・ブロス(LB)および/またはテリフィック・ブロス(TB)が含まれる。真核細胞を培養するのに適した培地には、Roswell Park Memorial Institute培地1640(RPMI 1640)、最小必須培地(MEM)および/またはダルベッコの修飾イーグル培地(DMEM)が含まれ、これらにはすべて、培養中の特定の細胞株の必要に応じて、血清および/または増殖因子を補ってもよい。昆虫培養に適した培地は、必要に応じて、イーストレート、ラクトアルブミン加水分解物、および/またはウシ胎児血清を補ったグレース培地である。
【0107】
典型的には、トランスフェクションまたは形質転換された細胞の選択的増殖に有用な抗生物質または他の化合物を、補充物として培地に添加する。用いるべき化合物は、宿主細胞を形質転換するプラスミド上に存在する選択可能マーカー要素によって決定されるであろう。例えば、選択可能マーカー要素がカナマイシン耐性である場合、培地に添加される化合物は、カナマイシンであろう。選択的増殖のための他の化合物には、アンピシリン、テトラサイクリン、およびネオマイシンが含まれる。
【0108】
当該技術分野に知られる標準法を用いて、宿主細胞によって産生される(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドの量を評価してもよい。こうした方法には、限定なしに、ウェスタンブロット分析、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、非変性ゲル電気泳動、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)分離、免疫沈降、および/またはDNA結合ゲルシフトアッセイなどの活性アッセイが含まれる。
【0109】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36が、宿主細胞株から分泌されるように設計されている場合、ポリペプチドの大部分は、細胞培地中に見られうる。しかし、ポリペプチドが宿主細胞から分泌されない場合、ポリペプチドは細胞質および/または核(真核宿主細胞の場合)に、あるいは細胞質ゾル(グラム陰性細菌宿主細胞の場合)に存在するであろう。
【0110】
宿主細胞細胞質および/または核(真核宿主細胞の場合)に、あるいは細胞質ゾル(細菌宿主細胞の場合)に位置した(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36の場合、当業者に知られるいかなる標準的技術を用いて、宿主細胞から細胞内物質(グラム陰性細菌の場合の封入体を含む)を抽出してもよい。例えば、フレンチプレス、ホモジナイズ、および/または超音波処理によって、宿主細胞を溶解して、周辺質/細胞質の内容物を放出させて、その後、遠心分離してもよい。
【0111】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36が、細胞質中で封入体を形成している場合、封入体は、しばしば、細胞膜の内側および/または外側に結合可能であり、そしてしたがって、遠心分離後のペレット物質中に、主に見られるであろう。次いで、ペレット物質を、極端なpHで、あるいは、アルカリpHではジチオスレイトール、または酸性pHではトリスカルボキシメチルホスフィンなどの還元剤の存在下で、界面活性剤、グアニジン、グアニジン誘導体、尿素または尿素誘導体などのカオトロピック剤で処理してもよい。次いで、ゲル電気泳動、免疫沈降などを用いて、可溶化された(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36を分析してもよい。ポリペプチドを単離することが望ましい場合、本明細書に、そしてMarstonら, Meth. Enz. 182:264−75, 1990に記載されるものなどの標準法を用いて、単離を達成してもよい。
【0112】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36の発現に際して、封入体が、有意な度合いに形成されない場合、ポリペプチドは、細胞ホモジネートの遠心分離後、主に上清中に見られるであろう。本明細書記載のものなどの方法を用いて、上清からポリペプチドをさらに単離してもよい。
【0113】
多様な技術を用いて、溶液からの(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36の精製を達成してもよい。カルボキシル末端またはアミノ末端いずれかで、ヘキサヒスチジン9などのタグ、あるいはFLAG(Eastman Kodak Co.、コネチカット州ニューヘブン)またはmyc(Invitrogen)などの他の小ペプチドを含有するように、ポリペプチドが合成されている場合、カラムマトリックスがタグに対して高い親和性を有する、アフィニティーカラムを通じて溶液を通過させることによって、1工程プロセスでポリペプチドを精製可能である。
【0114】
例えば、ポリヒスチジンは、高親和性および特異性でニッケルに結合する。したがって、精製にニッケルのアフィニティーカラム(Qiagen(登録商標)ニッケルカラムなど)を用いてもよい。例えば、Current Protocols in Molecular Biology §10.11.8(Ausubelら監修, Green Publishers Inc.およびWiley and Sons, 1993)を参照されたい。
【0115】
さらに、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドを特異的に認識し、そして該ポリペプチドに結合可能なモノクローナル抗体の使用を通じて、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドを精製してもよい。
【0116】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドが部分的にまたは実質的に混入物質を含まないように、該ポリペプチドを部分的にまたは完全に精製することが好ましい状況において、当業者に知られる標準法を用いてもよい。こうした方法には、限定なしに、電気泳動による分離後の電気溶出、多様な種類のクロマトグラフィー(アフィニティー、イムノアフィニティー、分子ふるい、およびイオン交換)、HPLC、および分取用等電点電気泳動(「Isoprime」装置/技術、Hoefer Scientific、カリフォルニア州サンフランシスコ)が含まれる。いくつかの場合、2以上の精製技術を組み合わせて、純度増加を達成してもよい。
【0117】
ポリペプチドを産生するためのいくつかのさらなる方法が当該技術分野に知られ、そしてこの方法を用いて、(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36ポリペプチドを産生してもよい。例えば、mRNAおよびコードされるペプチドの間の融合タンパク質の産生を記載する、Robertsら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:12297−303, 1997を参照されたい。また、Roberts, Curr. Opin. Chem. Biol. 3:268−73, 1999も参照されたい。
【0118】
ペプチドまたはポリペプチドを産生するためのプロセスはまた、米国特許第5,763,192号;第5,814,476号;第5,723,323号;および第5,817,483号に記載される。該プロセスは、確率論的(stochastic)遺伝子またはその断片を産生し、そして次いで、宿主細胞内に、これらの遺伝子を導入して、この細胞が、該確率論的遺伝子にコードされる1以上のタンパク質を産生することを伴う。次いで、宿主細胞をスクリーニングして、所望の活性を有するペプチドまたはポリペプチドを産生するクローンを同定する。組換えペプチド発現のための他のプロセスが、米国特許第6,103,495号、第6,210,925号、第6,627,438号、および第6,737,250号に開示される。該プロセスは、大腸菌および大腸菌の一般的な分泌経路を利用する。ペプチドはシグナル配列に融合されて;こうしてペプチドが分泌のためにターゲティングされる。
【0119】
ペプチドまたはポリペプチドを産生するための別の方法が、PCT特許出願公報第WO 99/15650号に記載される。遺伝子発見のための遺伝子発現のランダム活性化と称される、公表されたプロセスは、in situ組換え法による、内因性遺伝子発現の活性化または遺伝子の過剰発現を伴う。例えば、非相同的組換えまたは非正統的組換えによって、遺伝子の発現を活性化することが可能な、ターゲット細胞内への制御配列の組込みによって、内因性遺伝子の発現を活性化するかまたは増加させる。ターゲットDNAをまず、放射線に供し、そして遺伝子プロモーターを挿入する。プロモーターは、最終的に、遺伝子の最前部にブレークを配置し、遺伝子の転写を開始する。これは、所望のペプチドまたはポリペプチドの発現を生じる。
アミド化
ペプチジル−グリシン・アルファ−アミド化モノオキシゲナーゼ(PAM)と呼ばれる酵素によって、合成的または組換え的のいずれかで産生されたペプチドのアミド化を達成する。細菌発現系を用いて(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ペプチドを組換え的に産生する場合、組換えPAM酵素を用いたin vitro反応によって、ペプチドをC末端アミド化することができる。PAM酵素供給源、その産生および精製法、ならびに(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ペプチドをアミド化するために使用可能な方法は、例えば、米国特許第4,708,934号、第5,789,234号、および第6,319,685号に記載される。
選択的(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36抗体
システイン置換部位でのPEG化を伴うまたは伴わない(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドに特異的に結合するが、天然hPYY3−36に選択的に結合しない抗体および抗体断片が、本発明の範囲内にある。抗体は、単一特異的ポリクローナルを含むポリクローナル;モノクローナル;組換え;キメラ;CDR移植などのヒト化;ヒト;一本鎖;および/または二重特異性;ならびにその断片;変異体;または誘導体であってもよい。抗体断片には、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチド上のエピトープに結合する抗体部分が含まれる。こうした断片の例には、全長抗体の酵素的切断によって生成されるFabおよびF(ab’)断片が含まれる。他の結合断片には、抗体可変領域をコードする核酸配列を含有する組換えプラスミドの発現など、組換えDNA技術によって生成されるものが含まれる。
【0120】
(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドに向けられるポリクローナル抗体は、一般的に、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドおよびアジュバントの多数回のSCまたはIP注射によって、動物(例えばウサギまたはマウス)において産生される。免疫しようとする種において免疫原性であるキャリアータンパク質、例えばキーホール・リンペット(keyhole limpet)・ヘモシアニン、血清アルブミン、ウシ・サイログロブリン、またはダイズ・トリプシン阻害因子に、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドをコンジュゲート化することが有用でありうる。また、ミョウバンなどの凝集剤を用いて、免疫応答を増進する。免疫後、動物から採血し、そして抗(E10C)hPYY3−36または抗(D11C)hPYY3−36抗体力価に関して血清をアッセイする。
【0121】
培養中の連続細胞株によって、抗体分子の産生を提供する方法いずれかを用いて、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドに向けられるモノクローナル抗体を産生する。モノクローナル抗体を調製するのに適した方法の例には、Kohlerら, Nature 256:495−97, 1975のハイブリドーマ法、およびヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor, J. Immunol. 133:3001, 1984; Brodeurら, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, 51−63(Marcel Dekker, Inc., 1987)が含まれる。やはり本発明が提供するのは、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドと反応性であるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株である。
【0122】
競合的阻害によって、モノクローナル抗体特異性および親和性を決定するのに好ましい方法は、HarlowおよびLane, Antibodies: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratories, 1989); Current Protocols in Immunology (Colliganら監修, Greene Publishing Assoc.およびWiley Interscience, 1993);およびMuller, Meth. Enzymol. 92:589−601, 1988に見出されうる。
【0123】
本発明のキメラ抗体は、個々のHおよび/またはL免疫グロブリン鎖を含んでもよい。好ましいキメラH鎖は、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドに特異的な非ヒト抗体のH鎖由来の抗原結合性領域を含み、該領域がCH1またはCH2などのヒトH鎖C領域(CH)の少なくとも一部に連結している。好ましいキメラL鎖は、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドに特異的な非ヒト抗体のL鎖由来の抗原結合性領域を含み、該領域がヒトL鎖C領域(CL)の少なくとも一部に連結している。キメラ抗体およびその産生法が当該技術分野に知られる。Cabillyら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:3273−77, 1984; Morrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:6851−55, 1984; Boulianneら, Nature 312:643−46, 1984; Neubergerら, Nature 314:268−70, 1985; Liuら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 84:3439−43, 1987;ならびにHarlowおよびLane、上記を参照されたい。
【0124】
同じかまたは異なる可変領域結合特異性のキメラH鎖およびL鎖を有する選択的結合剤もまた、当該技術分野に知られる方法にしたがって、個々のポリペプチド鎖の適切な会合によって、調製可能である。例えば、Current Protocols in Molecular Biology(Ausubelら監修, Green Publishers Inc.およびWiley and Sons, 1994)ならびにHarlowおよびLane、上記を参照されたい。このアプローチを用いて、キメラH鎖(またはその誘導体)を発現する宿主細胞を、キメラL鎖(またはその誘導体)を発現する宿主細胞と別個に培養し、そして免疫グロブリン鎖を別個に回収して、そして次いで会合させる。あるいは、宿主細胞を共培養して、そして培地中で鎖を自発的に会合させて、その後、集合した免疫グロブリンを回収する。
【0125】
別の態様において、本発明のモノクローナル抗体は、「ヒト化」抗体である。非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該技術分野に周知である。米国特許第5,585,089号および第5,693,762号を参照されたい。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源から導入された1以上のアミノ酸残基を有する。例えば、当該技術分野に記載される方法(Jonesら, 1986, Nature 321:522−25; Riechmannら, 1998, Nature 332:323−27; Verhoeyenら, 1988, Science 239:1534−36)を用いて、げっ歯類の相補性決定領域(CDR)の少なくとも一部で、ヒト抗体の対応する領域を置換することによって、ヒト化を行ってもよい。
【0126】
モノクローナル抗体の生成をバイパスする、抗体分子の抗原結合性領域(すなわちFabまたは可変領域断片)の組換えDNAバージョンを生成するための技術が、本発明の範囲内に含まれる。この技術において、免疫動物より採取した免疫系細胞から、抗体特異的メッセンジャーRNA分子を抽出し、そしてcDNAに転写してもよい。次いで、cDNAを細菌発現系にクローニングする。本発明の実施に適した、こうした技術の一例は、発現されたFabタンパク質を周辺質腔(細菌細胞膜および細胞壁の間)に移動させるかまたは分泌させるリーダー配列を有するバクテリオファージ・ラムダ・ベクター系を用いる。多数の機能性Fab断片を迅速に生成し、そして抗原に結合するものに関してスクリーニングすることも可能である。こうした(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36結合性分子((E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドに対する特異性を持つFab断片)は、本明細書において、用語「抗体」内に特に含まれる。
【0127】
やはり本発明の範囲内にあるのは、適切な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子を、適切な生物学的活性(ヒト補体を活性化し、そして抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を仲介する能力など)のヒト抗体分子由来の遺伝子と一緒にスプライシングすることによる、キメラ抗体の産生のために開発された技術である。Morrisonら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 81:6851−55, 1984; Neubergerら, Nature, 312:604−08, 1984。この技術によって産生された抗体などの選択的結合剤が、本発明の範囲内である。
【0128】
本発明が、マウスまたはラットのモノクローナル抗体に限定されないことが認識されるであろう;実際、ヒト抗体を用いてもよい。ヒト・ハイブリドーマを用いることによって、こうした抗体を得てもよい。(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドに結合する完全ヒト抗体は、したがって、本発明に含まれる。内因性免疫グロブリン産生の非存在下で、ヒト抗体のレパートリーを産生可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)を、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36抗原(場合によってキャリアーにコンジュゲート化される)で免疫することによって、こうした抗体を産生する。例えば、Jakobovitsら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:2551−55, 1993; Jakobovitsら, Nature 362:255−58, 1993; Bruggemannら, Year in Immuno. 7:33−40, 1993を参照されたい。
【0129】
やはり本発明に含まれるのは、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドに結合するヒト抗体である。内因性免疫グロブリン産生の非存在下で、ヒト抗体のレパートリーを産生可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)を用いると、場合によってキャリアーにコンジュゲート化された、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチド抗原(すなわち少なくとも6つの隣接アミノ酸を有する)で免疫することによって、こうした抗体が産生される。例えば、Jakobovitsら, 1993 上記; Jakobovitsら, Nature 362:255−58, 1993; Bruggermannら, 1993、上記を参照されたい。1つの方法において、重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードする内因性遺伝子座を無能力化し、そしてそのゲノム内にヒト重鎖および軽鎖タンパク質をコードする遺伝子座を挿入することによって、こうしたトランスジェニック動物を産生する。次いで、部分的に修飾された動物、すなわち、完全装備の修飾より少ない修飾を有する動物を交雑させて、所望の免疫系修飾すべてを有する動物を得る。免疫原を投与した際、これらのトランスジェニック動物は、これらの抗原に対して免疫特異的である可変領域を含めて、(例えばネズミではなく)ヒト・アミノ酸配列を持つ抗体を産生する。PCT特許出願公報第WO 96/33735号および第WO 94/02602号を参照されたい。さらなる方法が、米国特許第5,545,807号、PCT特許出願公報第WO 91/10741号および第WO 90/04036号に、そしてEP特許第0 546 073 B1号およびPCT特許出願公報第WO 92/03918号に記載される。また、本明細書に記載するように、宿主細胞における組換えDNAの発現によって、またはハイブリドーマ細胞における発現によって、ヒト抗体を産生してもよい。
【0130】
別の態様において、また、ヒト抗体をファージ・ディスプレイ・ライブラリーから産生してもよい(Hoogenboomら, J. Mol. Biol. 227:381, 1991; Marksら, J. Mol. Biol. 222:581, 1991)。これらのプロセスは、線維性バクテリオファージ表面上に抗体レパートリーをディスプレイさせ、そして続いて、選択した抗原への結合によって、ファージを選択することを通じて、免疫選択を模倣する。1つのこうした技術が、PCT特許出願公報第WO 99/10494号に記載され、これはこうしたアプローチを用いた、MPL−およびmsk−受容体に対する、高親和性および機能性のアゴニスト性抗体の単離を記載する。
【0131】
キメラ、CDR移植、およびヒト化抗体は、典型的には組換え法によって産生される。本明細書に記載しそして当該技術分野に知られる材料および方法を用いて、抗体をコードする核酸を宿主細胞内に導入し、そして発現する。好ましい態様において、CHO細胞などの哺乳動物宿主細胞において、抗体を産生する。本明細書に記載するように、宿主細胞における組換えDNAの発現によって、またはハイブリドーマ細胞における発現によって、モノクローナル(例えばヒト)抗体を産生してもよい。
【0132】
(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36ポリペプチドの検出および定量化のため、ならびにポリペプチド精製のため、競合的結合アッセイ、直接および間接的サンドイッチアッセイ、ならびに免疫沈降アッセイ(Sola, Monoclonal Antibodies: A Manual of Techniques, 147−158(CRC Press, Inc., 1987))などのいかなる既知のアッセイ法で、本発明の抗(E10C)hPYY3−36および抗(D11C)hPYY3−36抗体を使用してもよい。抗体は、使用しているアッセイ法に適した親和性で、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36ポリペプチドに結合するであろう。
【0133】
本発明の方法側面で使用するため、本発明のPYYアゴニストを、薬学的に許容しうる酸付加塩の形で提供してもよい。本化合物の薬学的に許容しうる代表的な酸付加塩には、塩酸塩、臭化水素酸、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、過リン酸塩、イソニコチン酸塩、酢酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、ゲンティシン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、サッカラート塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、パモ酸塩、パルミチン酸塩、マロン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリル酸塩、リンゴ酸塩、ホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ナフチル酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、およびラウリルスルホン酸塩等が含まれる。非PEG化変異体がPEG−PYY3−36変異体コンジュゲートの調製において、中間体として使用される予定である場合、該変異体の塩は薬学的に許容可能でなくてもよい。
【0134】
本発明のPYYアゴニストは、一般的に、薬剤組成物の形で投与されるであろう。薬剤組成物は、例えば、経口投与(例えば錠剤、カプセル、丸剤、粉末、溶液、懸濁物)、非経口注射(例えば無菌溶液、懸濁物またはエマルジョン)、鼻内投与(例えばエアロゾル滴など)、結腸投与(例えば座薬)または経皮投与(例えばパッチ)に適した型であってもよい。薬剤組成物は、正確な投薬量の単回投与に適した単位投薬型であってもよい。薬剤組成物には、慣用的な薬学的キャリアーおよび活性成分としての本発明のPYYアゴニストが含まれるであろう。さらに、他の薬学的剤、アジュバント等が含まれてもよい。
【0135】
生物活性ペプチドの多様な薬剤組成物を調製する方法が、薬剤科学業に周知である。例えば、米国特許出願公報第2005/0009748号(経口投与に関する);ならびに第2004/0157777号、第2005/0002927号および第2005/0215475号(経粘膜投与、例えば鼻内または頬側投与に関する)を参照されたい。また、Remington: The Practice of Pharmacy, Lippincott Williams and Wilkins, メリーランド州ボルチモア, 第20版 2000も参照されたい。
【0136】
本発明のPYYアゴニストを、本明細書記載の疾患状態または状態の治療のための他の薬学的剤と組み合わせて用いてもよい。したがって、本発明の化合物を、他の薬学的剤と組み合わせて投与することを含む治療法もまた、本発明によって提供される。
【0137】
本発明のPYYアゴニストと組み合わせて使用してもよい、適切な薬学的剤には、カンナビノイド−1(CB−1)アンタゴニスト(リモナバントなど)、11β−ヒドロキシステロイド脱水素酵素−1(1型11β−HSD)阻害剤、MCR−4アゴニスト、コレシストキニン−A(CCK−A)アゴニスト、モノアミン再取り込み阻害剤(シブトラミンなど)、交感神経刺激剤、β3アドレナリン受容体アゴニスト、ドーパミン受容体アゴニスト(ブロモクリプチンなど)、メラニン形成細胞刺激ホルモン受容体類似体、5HT2c受容体アゴニスト、メラニン濃縮ホルモンアンタゴニスト、レプチン、レプチン類似体、レプチン受容体アゴニスト、ガラニン・アンタゴニスト、リパーゼ阻害剤(テトラヒドロリプスタチン、すなわちオーリスタットなど)、食欲低下剤(ボンベシン・アゴニストなど)、ニューロペプチド−Y受容体アンタゴニスト(例えばNPY Y5受容体アンタゴニスト)、甲状腺ホルモン様剤、デヒドロエピアンドロステロンまたはその類似体、グルココルチコイド受容体アゴニストまたはアンタゴニスト、オレキシン受容体アンタゴニスト、グルカゴン様ペプチド−1受容体アゴニスト、毛様体神経栄養因子(Regeneron Pharmaceuticals, Inc., ニューヨーク州タリータウンおよびProcter & Gamble Company, オハイオ州シンシナティから入手可能なAxokineTMなど)、ヒト・アグーチ関連タンパク質(AGRP)阻害剤、グレリン受容体アンタゴニスト、ヒスタミン3受容体アンタゴニストまたは逆作用剤、ニューロメジンU受容体アゴニスト、MTP/アポB阻害剤(例えばダーロタピド(dirlotapide)などの腸選択的MTP阻害剤)等などの、他の抗肥満剤が含まれる。
【0138】
本発明のPYYアゴニストと組み合わせて使用するのに好ましい抗肥満剤には、CB−1受容体アンタゴニスト、腸選択的MTP阻害剤、CCKaアゴニスト、5HT2c受容体アゴニスト、NPY Y5受容体アンタゴニスト、オーリスタット、およびシブトラミンが含まれる。本発明の方法で使用するのに好ましいCB−1受容体アンタゴニストには:Sanofi−Synthelaboから入手可能であるし、また米国特許第5,624,941号に記載されるように調製可能なリモナバント(商品名AcompliaTMの下でも知られるSR141716A);TocrisTM、ミズーリ州エリスビルから入手可能である、N−(ピペリジン−1−イル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(4−ヨードフェニル)−4−メチル−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド(AM251);米国特許第6,645,985号に記載されるように調製可能な[5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロ−フェニル)−4−エチル−N−(1−ピペリジニル)−1H−ピラゾール−3−カルボキサミド](SR147778);PCT特許出願公報第WO 03/075660号に記載されるように調製可能なN−(ピペリジン−1−イル)−4,5−ジフェニル−1−メチルイミダゾール−2−カルボキサミド、N−(ピペリジン−1−イル)−4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(4−クロロフェニル)−1−メチルイミダゾール−2−カルボキサミド、N−(ピペリジン−1−イル)−4,5−ジ−(4−メチルフェニル)−1−メチルイミダゾール−2−カルボキサミド、N−シクロヘキシル−4,5−ジ−(4−メチルフェニル)−1−メチルイミダゾール−2−カルボキサミド、N−(シクロヘキシル)−4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(4−クロロフェニル)−1−メチルイミダゾール−2−カルボキサミド、およびN−(フェニル)−4−(2,4−ジクロロフェニル)−5−(4−クロロフェニル)−1−メチルイミダゾール−2−カルボキサミド;米国特許出願公報第2004/0092520号に記載されるように調製可能な1−[9−(4−クロロ−フェニル)−8−(2−クロロ−フェニル)−9H−プリン−6−イル]−4−エチルアミノ−ピペリジン−4−カルボン酸アミドの塩酸塩、メシル酸塩およびベシル酸塩;米国特許出願公報第2004/0157839号に記載されるように調製可能な1−[7−(2−クロロ−フェニル)−8−(4−クロロ−フェニル)−2−メチル−ピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イル]−3−エチルアミノ−アゼチジン−3−カルボン酸アミドおよび1−[7−(2−クロロ−フェニル)−8−(4−クロロ−フェニル)−2−メチル−ピラゾロ[1,5−a][1,3,5]トリアジン−4−イル]−3−メチルアミノ−アゼチジン−3−カルボン酸アミド;米国特許出願公報第2004/0214855号に記載されるように調製可能な3−(4−クロロ−フェニル)−2−(2−クロロ−フェニル)−6−(2,2−ジフルオロ−プロピル)−2,4,5,6−テトラヒドロ−ピラゾロ[3,4−c]ピリジン−7−オン;米国特許出願公報第2005/0101592号に記載されるように調製可能な3−(4−クロロ−フェニル)−2−(2−クロロ−フェニル)−7−(2,2−ジフルオロ−プロピル)−6,7−ジヒドロ−2H,5H−4−オキサ−1,2,7−トリアザ−アズレン−8−オン;米国特許出願公報第2004/0214838号に記載されるように調製可能な2−(2−クロロ−フェニル)−6−(2,2,2−トリフルオロ−エチル)−3−(4−トリフルオロメチル−フェニル)−2,6−ジヒドロ−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−7−オン;PCT特許出願公報第WO 02/076949号に記載されるように調製可能な(S)−4−クロロ−N−{[3−(4−クロロ−フェニル)−4−フェニル−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル]−メチルアミノ−メチレン}−ベンゼンスルホンアミド(SLV−319)および(S)−N−{[3−(4−クロロ−フェニル)−4−フェニル−4,5−ジヒドロ−ピラゾール−1−イル]−メチルアミノ−メチレン}−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(SLV−326);米国特許第6,432,984号に記載されるように調製可能なN−ピペリジノ−5−(4−ブロモフェニル)−1−(2,4−ジクロロフェニル)−4−エチルピラゾール−3−カルボキサミド;米国特許第6,518,264号に記載されるように調製可能な1−[ビス−(4−クロロ−フェニル)−メチル]−3−[(3,5−ジフルオロ−フェニル)−メタンスルホニル−メチレン]−アゼチジン;PCT特許出願公報第WO 04/048317号に記載されるように調製可能な2−(5−(トリフルオロメチル)ピリジン−2−イルオキシ)−N−(4−(4−クロロフェニル)−3−(3−シアノフェニル)ブタン−2−イル)−2−メチルプロパンアミド;米国特許第5,747,524号に記載されるように調製可能な4−{[6−メトキシ−2−(4−メトキシフェニル)−1−ベンゾフラン−3−イル]カルボニル}ベンゾニトリル(LY−320135);第WO 04/013120号に記載されるように調製可能な1−[2−(2,4−ジクロロフェニル)−2−(4−フルオロフェニル)−ベンゾ[1,3]ジオキソール−5−スルホニル]−ピペリジン;ならびにPCT特許出願公報第WO 04/012671号に記載されるように調製可能な[3−アミノ−5−(4−クロロフェニル)−6−(2,4−ジクロロフェニル)−フロ[2,3−b]ピリジン−2−イル]−フェニル−メタノンが含まれる。
【0139】
本発明の組み合わせ、薬剤組成物、および方法で使用するのに好ましい腸作用性MTP阻害剤には、どちらも米国特許第6,720,351号に記載される方法を用いて調製可能なダーロタピド(dirlotapide)((S)−N−{2−[ベンジル(メチル)アミノ]−2−オキソ−1−フェニルエチル}−1−メチル−5−[4’−(トリフルオロメチル)[1,1’−ビフェニル]−2−カルボキサミド]−1H−インドール−2−カルボキサミド)および1−メチル−5−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−1H−インドール−2−カルボン酸(カルバモイル−フェニル−メチル)−アミド;すべて米国特許出願公報第2005/0234099A1号に記載されるように調製可能な(S)−2−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸(ペンチルカルバモイル−フェニル−メチル)−アミド、(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸{[(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−カルバモイル]−フェニル−メチル}−アミド、および(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸[(4−フルオロ−ベンジルカルバモイル)−フェニル−メチル]−アミド、米国特許第5,521,186号および第5,929,075号に記載されるように調製可能な(−)−4−[4−[4−[4−[[(2S,4R)−2−(4−クロロフェニル)−2−[[(4−メチル−4H−1,2,4−トリアゾール−3−イル)スルファニル]メチル−1,3−ジオキソラン−4−イル]メトキシ]フェニル]ピペラジン−1−イル]フェニル]−2−(1R)−1−メチルプロピル]−2,4−ジヒドロ−3H−1,2,4−トリアゾール−3−オン(ミトラタピド(Mitratapide)またはR103757としてもまた知られる);ならびに米国特許第6,265,431号に記載されるように調製可能なインプリタピド(implitapide)(BAY 13−9952)が含まれる。最も好ましいのは、ダーロタピド、ミトラタピド、(S)−2−[(4’−トリフルオロメチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸(ペンチルカルバモイル−フェニル−メチル)−アミド、(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸{[(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−カルバモイル]−フェニル−メチル}−アミド、または(S)−2−[(4’−tert−ブチル−ビフェニル−2−カルボニル)−アミノ]−キノリン−6−カルボン酸[(4−フルオロ−ベンジルカルバモイル)−フェニル−メチル]−アミドである。好ましいNPY Y5受容体アンタゴニストには:米国特許出願公報第2002/0151456号に記載されるように調製可能な2−オキソ−N−(5−フェニルピラジニル)スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),4’−ピペリジン]−1’−カルボキサミド;ならびにすべてPCT特許出願公報第WO 03/082190号に記載されるように調製可能な3−オキソ−N−(5−フェニル−2−ピラジニル)−スピロ[イソベンゾフラン−1(3H),4’−ピペリジン]−1’−カルボキサミド;3−オキソ−N−(7−トリフルオロメチルピリド[3,2−b]ピリジン−2−イル)−スピロ−[イソベンゾフラン−1(3H),4’−ピペリジン]−1’−カルボキサミド;N−[5−(3−フルオロフェニル)−2−ピリミジニル]−3−オキソスピロ−[イソベンゾフラン−1(3H),[4’−ピペリジン]−1’−カルボキサミド;トランス−3’−オキソ−N−(5−フェニル−2−ピリミジニル)]スピロ[シクロヘキサン−1,1’(3’H)−イソベンゾフラン]−4−カルボキサミド;トランス−3’−オキソ−N−[1−(3−キノリル)−4−イミダゾリル]スピロ[シクロヘキサン−1,1’(3’H)−イソベンゾフラン]−4−カルボキサミド;トランス−3−オキソ−N−(5−フェニル−2−ピラジニル)スピロ[4−アザイソ−ベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−カルボキサミド;トランス−N−[5−(3−フルオロフェニル)−2−ピリミジニル]−3−オキソスピロ[5−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−カルボキサミド;トランス−N−[5−(2−フルオロフェニル)−2−ピリミジニル]−3−オキソスピロ[5−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−カルボキサミド;トランス−N−[1−(3,5−ジフルオロフェニル)−4−イミダゾリル]−3−オキソスピロ[7−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−カルボキサミド;トランス−3−オキソ−N−(1−フェニル−4−ピラゾリル)スピロ[4−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−カルボキサミド;トランス−N−[1−(2−フルオロフェニル)−3−ピラゾリル]−3−オキソスピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−カルボキサミド;トランス−3−オキソ−N−(l−フェニル−3−ピラゾリル)スピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−カルボキサミド;およびトランス−3−オキソ−N−(2−フェニル−1,2,3−トリアゾール−4−イル)スピロ[6−アザイソベンゾフラン−1(3H),1’−シクロヘキサン]−4’−カルボキサミド;ならびに薬学的に許容しうる塩およびエステルが含まれる。上に列挙する米国特許および公報は、引用により本明細書に援用される。
【0140】
本発明の方法側面において、本発明のPYYアゴニストは、単独でまたは1以上の他の薬学的剤と組み合わせて、当該技術分野に知られる末梢投与の任意の慣用法と別個にまたは一緒に、被験者に末梢投与される。したがって、PYYアゴニストまたは組み合わせを、被験者に非経口的に(例えば静脈内、腹腔内、筋内または皮下)、鼻内、経口、舌下、頬側で、吸入によって(例えばエアロゾルによって)、直腸(例えば座薬によって)または経皮で投与してもよい。非経口投与が好ましい投与法であり、そして皮下投与が好ましい非経口投与法である。
【0141】
非経口注射に適した組成物には、一般的に、薬学的に許容しうる無菌水性または非水性溶液、分散物、懸濁物、またはエマルジョン、および無菌注射可能溶液または分散物にする再構成用の無菌粉末が含まれる。適切な水性および非水性キャリアーまたは希釈剤(溶媒およびビヒクルを含む)の例には、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール等)、その適切な混合物、オリーブ油などの植物油を含むトリグリセリド、およびオレイン酸エチルなどの注射可能有機エステルが含まれる。
【0142】
非経口注射のためのこれらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、可溶化剤、乳化剤、および分散剤などの賦形剤も含有する。多様な抗細菌および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等で、組成物の微生物混入の防止を達成してもよい。例えば、糖、塩化ナトリウム等の等張剤を含むことが望ましい可能性もある。吸収を遅延させることが可能な剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの使用によって、注射可能薬剤組成物の延長された吸収を引き起こしてもよい。
【0143】
本発明のPYYアゴニストは、投与様式、被験者の年齢および体重、治療中の疾患、状態または障害の重症度、および投与しているPYYアゴニストの薬理学的活性を含む、いくつかの要因に応じて、多様な投薬量で、被験者に投与されるであろう。特定の患者に関する投薬量範囲および最適投薬量の決定は、十分に、当該技術分野の通常の技術の範囲内である。
【0144】
非経口投与のため、非PEG化変異体に基づく投薬措置において、約0.01μg/kg〜約10mg/kg/用量の範囲内の投薬量レベルで、本発明のPYYアゴニストをヒト被験者に投与してもよい。例えば、30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36に関しては、非経口投薬レベルは、(E10C)hPYY3−36に基づく投薬措置において、約0.01μg/kg〜約10mg/kg/用量の範囲内、好ましくは約0.05mg/kg〜約1.0mg/kg/用量の範囲内、あるいは約0.05または0.1mg/kg〜約1.0mg/kg/用量、あるいは約0.05または0.1mg/kg〜約0.3または0.5mg/kg/用量の範囲内であろう。例えば、約34024Da(30kDa PEGに加えて、非PEG化ペプチドの分子量4024)の分子量を有する30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36 の85mgの用量は、非PEG化(E10C)hPYY3−36に基づいた際の10mgと同等である。投薬措置は、毎日1以上の用量であってもよく、好ましくは食前であり、あるいは特に30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36または20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36を用いると、毎週2または3回、あるいは週1回、あるいは10〜14日ごとに1回の投薬措置が好ましい。
【0145】
本発明の態様は、以下の実施例に例示される。しかし、一般の当業者には、その他の変形が知られるか、または本開示および付随する請求項に鑑みて明らかであろうため、本発明の態様は、これらの実施例の特定の詳細に限定されないことが理解されるものとする。本明細書に引用するすべての参考文献は、本明細書に援用される。
【実施例】
【0146】
実施例
実施例1
直鎖30Kおよび20K mPEGおよび20Kマレイミド(E10C)hPYY3−36
本実施例は、残基10に付着したmPEG(30Kまたは20K)を伴う実質的に均質なモノPEG化(E10C)hPYY3−36の調製を提供する。
(a)(E10C)hPYY3−36の調製
自動化ペプチド合成装置(モデル433A;Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)を用い、2−(1H−ベンゾトリゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)活性化(Fastmoc、0.15mmolサイクル)でのFmoc戦略を用いた固相法によって、(E10C)PYY3−36を合成した。用いた側鎖保護基は、Asn、Gln、CysおよびHisにはTrt;Ser、Thr、およびTyrにはtBu;LysにはBoc;AspおよびGluにはOtBu;そしてArgにはPbfであった。9mlのトリフルオロ酢酸(TFA)、0.5gのフェノール、0.5mlのH2O、0.5mlのチオアニソールおよび0.25mlの1,2エタンジチオールの混合物を用いて、室温で4時間、ペプチド−樹脂の切断を完了した。氷冷エチルエーテル中でペプチドを沈殿させ、そしてエチルエーテルで洗浄し、DMSO中で溶解して、そして流速80ml/分で、30分間の100%溶媒A:0%溶媒Bから70%溶媒A:30%溶媒Bの直線勾配を用いて、Waters Deltapak C18、15um、100A、50x300mmIDカラム(カタログ番号WAT011801、Waters、マサチューセッツ州ミルフォード)上、逆相HPLCによって精製した。溶媒Aは、0.1% TFA(トリフルオロ酢酸)水溶液である。溶媒Bは、アセトニトリル中の0.1% TFA溶液である。ESI−MSによって精製ペプチドの分子量を確認し(M平均=4024)、そして逆相HPLCによって純度を評価した(図1)。
(b)直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の調製
およそ30,000MWの直鎖mPEGマレイミド試薬(Sunbright ME−300MA、NOF社、日本・東京)を、(E10C)hPYY3−36に、残基10のシステインのスルフヒドリル基上で選択的にカップリングした。20mM HEPES(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)pH7.0、あるいは20mM酢酸ナトリウム(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)pH4.5中に溶解した直鎖30K mPEGマレイミドに、(E10C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(E10C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させた。暗所中、室温で0.5〜24時間、反応を行った。陽イオン交換クロマトグラフィー上で直ちに精製するため、20mM酢酸ナトリウムpH4.5中に希釈することによって、HEPES pH7.0中の反応を停止した。20mM酢酸ナトリウム、pH4.5中の反応は陽イオン交換クロマトグラフィー上に直接装填した。SEC−HPLCによって反応産物を評価した(図2)。
(c)直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の精製
単回イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、反応混合物から>95%に、PEG化(E10C)hPYY3−36種を精製した。陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、非修飾(E10C)hPYY3−36およびより大きい分子量種からモノPEG化(E10C)hPYY3−36を精製した。上述のような、典型的な直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36反応混合物(10mgタンパク質)を、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5(緩衝液A)中で平衡化したSP−Sepharose Hitrapカラム(5ml)(Amersham Pharmacia Biotech、GE Healthcare、ニュージャージー州ピスカタウェイ)上で分画した。反応混合物を緩衝液Aで7倍希釈し、そして流速2.5ml/分でカラム上に装填した。5〜10カラム体積の緩衝液Aでカラムを洗浄した。続いて、20カラム体積の0〜100mMの直線NaCl勾配で、カラムから、多様な(E10C)hPYY3−36種を溶出させた。280nmの吸光度(A280)によって、溶離液を監視し、そして適切なサイズの分画を収集した。(登録商標)SDS−PAGEによって評価した際のPEG化の度合いに応じて分画をプールした(図3)。次いで、Centriprep 3濃縮装置(Amicon Technology社、マサチューセッツ州ノースボロー)中、あるいはVivaspin 10K濃縮装置(Vivascience Sartorius Group、ドイツ・ハノーバー)を用いて、精製プールを0.5〜5mg/mlに濃縮した。RP HPLCピーク面積をPYY3−36標準曲線(未提示)に比較することによって、精製プールのタンパク質濃度を決定するか、あるいは実験的に得た消光係数を用いて、280nmの吸光度によって、精製プールの濃度を決定した。図6に示すように、SEC−HPLCを用いて、PEG化(E10C)hPYY3−36の精製プールのプロフィールを描いた。
(d)直鎖20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の調製
およそ20,000MWの直鎖mPEGマレイミド試薬(Sunbright ME−200MA、NOF社)を、(E10C)hPYY3−36に、残基10のシステインのスルフヒドリル基上で選択的にカップリングした。20mM酢酸ナトリウム(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)pH4.5中に溶解した直鎖20K mPEGマレイミドに、(E10C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1.3:1の相対的mPEG:(E10C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させた。暗所中、室温で60分間、その後、4℃で16時間、反応を行った。20mM酢酸ナトリウム、pH4.5中の反応を陽イオン交換クロマトグラフィー上に直接装填した。SEC−HPLCによって反応産物を評価した。
(e)直鎖20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の精製
単回イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、反応混合物から>95%に、PEG化(E10C)hPYY3−36種を精製した。陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、未結合PEG、非修飾(E10C)hPYY3−36およびより大きい分子量種からモノPEG化(E10C)hPYY3−36を分離した。上述のような、典型的な直鎖20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36反応混合物(20mgタンパク質)を、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5(緩衝液A)中で平衡化したSP−Sepharose Hitrapカラム(5ml)(Amersham Pharmacia Biotech、GE Healthcare)上で分画した。反応混合物を流速1.0ml/分でカラム上に装填した。流速2.5ml/分、4カラム体積の緩衝液Aでカラムを洗浄した。続いて、流速2.5ml/分、25カラム体積の0〜200mMの直線NaCl勾配で、カラムから、多様な(E10C)hPYY3−36種を溶出させた。280nmの吸光度(A280)によって、溶離液を監視し、そして適切なサイズの分画を収集した。SEC−HPLCによって評価した際のPEG化の度合いに応じて分画をプールした。次いで、Vivaspin 10K濃縮装置(Vivascience Sartorius Group)を用いて、精製プールを0.5〜5mg/mlに濃縮した。実験的に得た消光係数を用いて、280nmの吸光度によって、精製プールのタンパク質濃度を決定した。精製モノ20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の総プロセス収率は、38%であった。SEC−HPLCを用いて、モノ20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の精製プールが96%純粋であると決定された。
【0147】
実施例2
直鎖30K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36
本実施例は、残基11に付着したmPEGを伴う実質的に均質なモノPEG化(D11C)hPYY3−36の調製を示す。
(a)(D11C)hPYY3−36の調製
自動化ペプチド合成装置(モデル433A;Applied Biosystems、カリフォルニア州フォスターシティ)を用い、2−(1H−ベンゾトリゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)活性化(Fastmoc、0.15mmolサイクル)でのFmoc戦略を用いた固相法によって、(D11C)PYY3−36を合成した。用いた側鎖保護基は、Asn、Gln、CysおよびHisにはTrt;Ser、Thr、およびTyrにはtBu;LysにはBoc;AspおよびGluにはOtBu;そしてArgにはPbfであった。9mlのトリフルオロ酢酸(TFA)、0.5gのフェノール、0.5mlのH2O、0.5mlのチオアニソールおよび0.25mlの1,2エタンジチオールの混合物を用いて、室温で4時間、ペプチド−樹脂の切断を完了した。氷冷エチルエーテル中でペプチドを沈殿させ、そしてエチルエーテルで洗浄し、DMSO中で溶解して、そして流速80ml/分で、30分間の100%溶媒A:0%溶媒Bから70%溶媒A:30%溶媒Bの直線勾配を用いて、Waters Deltapak C18、15um、100A、50x300mmIDカラム(カタログ番号WAT011801、Waters、マサチューセッツ州ミルフォード)上、逆相HPLCによって精製した。溶媒Aは、0.1% TFA(トリフルオロ酢酸)水溶液である。溶媒Bは、アセトニトリル中の0.1% TFA溶液である。ESI−MSによって精製ペプチドの分子量を確認し(M平均=4038)、そして逆相HPLCによって純度を評価した(図4)。
(b)直鎖30K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の調製
およそ30,000MWの直鎖mPEGマレイミド試薬(Sunbright ME−300MA、NOF社、日本・東京)を、(D11C)hPYY3−36に、残基11のシステインのスルフヒドリル基上で選択的にカップリングした。20mM HEPES(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)pH7.0中に溶解した直鎖30K mPEGマレイミドに、(D11C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(D11C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させた。暗所中、室温で0.5〜24時間、反応を行った。陽イオン交換クロマトグラフィー上で直ちに精製するため、20mM酢酸ナトリウムpH4.5中に希釈することによって、反応を停止した。SEC−HPLCによって反応産物を評価した(図5)。
【0148】
あるいは、上述のように直鎖30K mPEGマレイミドをHEPES中に溶解する代わりに、20mM酢酸ナトリウム(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)、pH4.5中に溶解し、そして、(D11C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(D11C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させる。暗所中、室温で0.5〜24時間、反応を行う。反応を直接、陽イオン交換クロマトグラフィー上に装填する。反応産物をSEC−HPLCによって評価する。
(c)直鎖30K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の精製
単回イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、反応混合物から>95%に、PEG化(D11C)hPYY3−36種を精製した。陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、非修飾(D11C)hPYY3−36およびより大きい分子量種からモノPEG化(D11C)hPYY3−36を精製した。上述のような、典型的な直鎖30K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36反応混合物(10mgタンパク質)を、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5(緩衝液A)中で平衡化したSP−Sepharose Hitrapカラム(5ml)(Amersham Pharmacia Biotech、GE Healthcare、ニュージャージー州ピスカタウェイ)上で分画した。pH7.0の反応混合物を緩衝液Aで7倍希釈し、そして流速2.5ml/分でカラム上に装填した。5〜10カラム体積の緩衝液Aでカラムを洗浄した。続いて、20カラム体積の0〜100mMの直線NaCl勾配で、カラムから、多様な(D11C)hPYY3−36種を溶出させた。280nmの吸光度(A280)によって、溶離液を監視し、そして適切なサイズの分画を収集した。SEC HPLCによって評価した際のPEG化の度合いに応じて分画をプールした。次いで、Vivaspin 10K濃縮装置(Vivascience Sartorius Group)中で、精製プールを0.5〜5mg/mlに濃縮した。RP HPLCピーク面積をPYY3−36標準曲線(未提示)に比較することによって、精製プールのタンパク質濃度を決定した。図7に示すように、SEC−HPLCを用いて、PEG化(D11C)hPYY3−36の精製プールのプロフィールを描いた。
【0149】
あるいは、上記(b)からのpH4.5の反応物を、流速2.5ml/分で、カラム上に直接装填して、そして実験的に得た消光係数を用いて、280nmの吸光度によって、精製プールの濃度を決定する。
【0150】
実施例3
分枝鎖43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36
本実施例は、残基10に付着したmPEGを伴う実質的に均質なモノPEG化(E10C)hPYY3−36の調製を示す。
(a)分枝鎖43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の調製
およそ43,000MWの分枝鎖mPEGマレイミド試薬(Sunbright GL2−400MA、NOF社、日本・東京)を、実施例1(a)に記載するように調製した(E10C)hPYY3−36に、残基10のシステインのスルフヒドリル基上で選択的にカップリングした。
【0151】
20mM HEPES(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)、pH7.0中に溶解した分枝鎖43K mPEGマレイミドに、(E10C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(E10C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させた。暗所中、室温で0.5〜24時間、反応を行った。陽イオン交換クロマトグラフィー上で直ちに精製するため、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5中に希釈することによって、HEPES、pH7.0中の反応を停止した。SEC−HPLCによって反応産物を評価した(図8)。
【0152】
あるいは、分枝鎖43K mPEGマレイミドを20mM酢酸ナトリウム(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)、pH4.5中に溶解し、そして、(E10C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(E10C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させる。反応を直接、陽イオン交換クロマトグラフィー上に装填する。
(b)モノPEG化分枝鎖43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の精製
単回陽イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、非修飾(E10C)hPYY3−36およびより大きい分子量種からモノPEG化分枝鎖43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36種を分離した。上述のような、典型的な分枝鎖43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36反応混合物(10mgタンパク質)を、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5(緩衝液A)中で平衡化したSP−Sepharose Hitrapカラム(5ml)(Amersham Pharmacia Biotech、GE Healthcare)上で分画した。pH7.0の反応混合物を緩衝液Aで10倍希釈し、そして流速2.5ml/分でカラム上に装填した。5〜10カラム体積の緩衝液Aでカラムを洗浄した。続いて、20カラム体積の0〜100mMの直線NaCl勾配で、カラムから、多様な(E10C)hPYY3−36種を溶出させた。280nmの吸光度(A280)によって、溶離液を監視し、そして適切なサイズの分画を収集した。SEC−HPLCによって評価した際のPEG化の度合いに応じて分画をプールした。次いで、Centriprep 3濃縮装置(Amicon Technology社)中、あるいはVivaspin 10K濃縮装置(Vivascience Sartorius Group)を用いて、精製プールを0.5〜5mg/mlに濃縮した。アミノ酸分析によって、精製プールのタンパク質濃度を定量化した。図9に示すように、SEC−HPLCを用いて、モノPEG化分枝鎖43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の精製プールのプロフィールを描いた。
【0153】
あるいは、RP HPLCピーク面積をPYY3−36標準曲線(未提示)に比較することによって、タンパク質濃度を決定するか、あるいは実験的に得た消光係数を用いて、280nmの吸光度によって、タンパク質濃度を決定する。
【0154】
実施例4
本実施例は、残基10で付着した直鎖12kD mPEGまたは分枝鎖20kD mPEGを伴う、実質的に均質なモノPEG化(E10C)hPYY3−36の調製、ならびに残基11で付着した直鎖20kD mPEG、直鎖12kD mPEG、または分枝鎖20kD mPEGを伴う、実質的に均質なモノPEG化(D11C)hPYY3−36の意図される調製を意図する。
(a)直鎖12K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の調製
およそ12,000MW)の直鎖mPEGマレイミド試薬(Sunbright ME−120MA、NOF社を、(E10C)hPYY3−36に、残基10のシステインのスルフヒドリル基上で選択的にカップリングする。20mM酢酸ナトリウム(Sigma Chemical)pH4.5中に溶解した、直鎖12K mPEGマレイミドに、(E10C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(E10C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させる。暗所中、室温で0.5〜24時間、反応を行う。20mM酢酸ナトリウム、pH4.5中の反応を陽イオン交換クロマトグラフィー上に直接装填する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEによって反応産物を評価する。
(b)直鎖12K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の精製
単回イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、反応混合物から>95%に、PEG化(E10C)hPYY3−36種を精製する。陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、未結合PEG、非修飾(E10C)hPYY3−36およびより大きい分子量種からモノPEG化(E10C)hPYY3−36を分離する。上述のような、典型的な直鎖12K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36反応混合物(10mgタンパク質)を、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5(緩衝液A)中で平衡化したSP−Sepharose Hitrapカラム(5ml)(Amersham Pharmacia Biotech、GE Healthcare)上で分画する。反応混合物を流速1.0ml/分でカラム上に装填する。流速2.5ml/分、4カラム体積の緩衝液Aでカラムを洗浄する。続いて、流速2.5ml/分、25カラム体積の0〜200mMの直線NaCl勾配で、カラムから、多様な(E10C)hPYY3−36種を溶出させる。280nmの吸光度(A280)によって、溶離液を監視し、そして適切なサイズの分画を収集する。SEC−HPLCによって評価した際のPEG化の度合いに応じて分画をプールする。次いで、Vivaspin 10K濃縮装置(Vivascience Sartorius Group)を用いて、精製プールを0.5〜5mg/mlに濃縮する。実験的に得た消光係数を用いて、280nmの吸光度によって、精製プールのタンパク質濃度を決定する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEを用いて、12K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の精製プールのプロフィールを描く。
(c)分枝鎖20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の調製
およそ20,000MWの分枝鎖mPEGマレイミド試薬(Sunbright GL2−200MA、NOF社)を、(E10C)hPYY3−36に、残基10のシステインのスルフヒドリル基上で選択的にカップリングする。20mM酢酸ナトリウム(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)pH4.5中に溶解した分枝鎖20K mPEGマレイミドに、(E10C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(E10C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させる。暗所中、室温で0.5〜24時間、反応を行う。20mM酢酸ナトリウム、pH4.5中の反応を陽イオン交換クロマトグラフィー上に直接装填する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEによって反応産物を評価する。
(d)分枝鎖20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の精製
単回イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、反応混合物から>95%に、PEG化(E10C)hPYY3−36種を精製する。陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、未結合PEG、非修飾(E10C)hPYY3−36およびより大きい分子量種からモノPEG化(E10C)hPYY3−36を分離する。上述のような、典型的な分枝鎖20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36反応混合物(10mgタンパク質)を、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5(緩衝液A)中で平衡化したSP−Sepharose Hitrapカラム(5ml)(Amersham Pharmacia Biotech、GE Healthcare)上で分画する。反応混合物を流速1.0ml/分でカラム上に装填する。流速2.5ml/分、4カラム体積の緩衝液Aでカラムを洗浄する。続いて、流速2.5ml/分、25カラム体積の0〜200mMの直線NaCl勾配で、カラムから、多様な(E10C)hPYY3−36種を溶出させる。280nmの吸光度(A280)によって、溶離液を監視し、そして適切なサイズの分画を収集する。SEC−HPLCによって評価した際のPEG化の度合いに応じて分画をプールする。次いで、Vivaspin 10K濃縮装置(Vivascience Sartorius Group)を用いて、精製プールを0.5〜5mg/mlに濃縮する。実験的に得た消光係数を用いて、280nmの吸光度によって、精製プールのタンパク質濃度を決定する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEを用いて、分枝鎖20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の精製プールのプロフィールを描く。
(e)直鎖20K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の調製
およそ20,000MWの直鎖mPEGマレイミド試薬(Sunbright ME−200MA、NOF社)を、(D11C)hPYY3−36に、残基11のシステインのスルフヒドリル基上で選択的にカップリングする。20mM酢酸ナトリウム(Sigma Chemical)pH4.5中に溶解した、直鎖20K mPEGマレイミドに、(D11C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(D11C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させる。暗所中、室温で0.5〜24時間、反応を行う。20mM酢酸ナトリウム、pH4.5中の反応を陽イオン交換クロマトグラフィー上に直接装填する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEによって反応産物を評価する。
(f)直鎖20K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の精製
単回イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、反応混合物から>95%に、PEG化(D11C)hPYY3−36種を精製する。陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、未結合PEG、非修飾(D11C)hPYY3−36およびより大きい分子量種からモノPEG化(D11C)hPYY3−36を分離する。上述のような、典型的な直鎖20K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36反応混合物(10mgタンパク質)を、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5(緩衝液A)中で平衡化したSP−Sepharose Hitrapカラム(5ml)(Amersham Pharmacia Biotech、GE Healthcare)上で分画する。反応混合物を流速1.0ml/分でカラム上に装填する。流速2.5ml/分、4カラム体積の緩衝液Aでカラムを洗浄する。続いて、流速2.5ml/分、25カラム体積の0〜200mMの直線NaCl勾配で、カラムから、多様な(D11C)hPYY3−36種を溶出させる。280nmの吸光度(A280)によって、溶離液を監視し、そして適切なサイズの分画を収集する。SEC−HPLCによって評価した際のPEG化の度合いに応じて分画をプールする。次いで、Vivaspin 10K濃縮装置(Vivascience Sartorius Group)を用いて、精製プールを0.5〜5mg/mlに濃縮する。実験的に得た消光係数を用いて、280nmの吸光度によって、精製プールのタンパク質濃度を決定する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEを用いて、20K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の精製プールのプロフィールを描く。
(g)直鎖12K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の調製
およそ12,000MW)の直鎖mPEGマレイミド試薬(Sunbright ME−120MA、NOF社を、(D11C)hPYY3−36に、残基10のシステインのスルフヒドリル基上で選択的にカップリングする。20mM酢酸ナトリウム(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)pH4.5中に溶解した直鎖12K mPEGマレイミドに、(D11C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(D11C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させる。暗所中、室温で0.5〜24時間、反応を行う。20mM酢酸ナトリウム、pH4.5中の反応を陽イオン交換クロマトグラフィー上に直接装填する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEによって反応産物を評価する。
(h)直鎖12K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の精製
単回イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、反応混合物から>95%に、PEG化(D11C)hPYY3−36種を精製する。陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、未結合PEG、非修飾(D11C)hPYY3−36およびより大きい分子量種からモノPEG化(D11C)hPYY3−36を分離する。上述のような、典型的な直鎖12K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36反応混合物(10mgタンパク質)を、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5(緩衝液A)中で平衡化したSP−Sepharose Hitrapカラム(5ml)(Amersham Pharmacia Biotech、GE Healthcare)上で分画する。反応混合物を流速1.0ml/分でカラム上に装填する。流速2.5ml/分、4カラム体積の緩衝液Aでカラムを洗浄する。続いて、流速2.5ml/分、25カラム体積の0〜200mMの直線NaCl勾配で、カラムから、多様な(D11C)hPYY3−36種を溶出させる。280nmの吸光度(A280)によって、溶離液を監視し、そして適切なサイズの分画を収集する。SEC−HPLCによって評価した際のPEG化の度合いに応じて分画をプールする。次いで、Vivaspin 10K濃縮装置(Vivascience Sartorius Group)を用いて、精製プールを0.5〜5mg/mlに濃縮する。実験的に得た消光係数を用いて、280nmの吸光度によって、精製プールのタンパク質濃度を決定する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEを用いて、12K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の精製プールのプロフィールを描く。
(i)分枝鎖20K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の調製
およそ20,000MWの分枝鎖mPEGマレイミド試薬(Sunbright GL2−200MA、NOF社)を、(D11C)hPYY3−36に、残基10のシステインのスルフヒドリル基上で選択的にカップリングする。20mM酢酸ナトリウム(Sigma Chemical、ミズーリ州セントルイス)pH4.5中に溶解した分枝鎖20K mPEGマレイミドに、(D11C)hPYY3−36ペプチドを直接添加して、1mg/mlペプチド濃度および約1:1の相対的mPEG:(D11C)hPYY3−36モル比を生じることによって、該マレイミドを該ペプチドと直ちに反応させる。暗所中、室温で0.5〜24時間、反応を行う。20mM酢酸ナトリウム、pH4.5中の反応を陽イオン交換クロマトグラフィー上に直接装填する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEによって反応産物を評価する。
(j)分枝鎖20K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の精製
単回イオン交換クロマトグラフィー工程を用いて、反応混合物から>95%に、PEG化(D11C)hPYY3−36種を精製する。陽イオン交換クロマトグラフィーを用いて、未結合PEG、非修飾(D11C)hPYY3−36およびより大きい分子量種からモノPEG化(D11C)hPYY3−36を分離する。上述のような、典型的な分枝鎖20K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36反応混合物(10mgタンパク質)を、20mM酢酸ナトリウム、pH4.5(緩衝液A)中で平衡化したSP−Sepharose Hitrapカラム(5ml)(Amersham Pharmacia Biotech、GE Healthcare)上で分画する。反応混合物を流速1.0ml/分でカラム上に装填する。流速2.5ml/分、4カラム体積の緩衝液Aでカラムを洗浄する。続いて、流速2.5ml/分、25カラム体積の0〜200mMの直線NaCl勾配で、カラムから、多様な(D11C)hPYY3−36種を溶出させる。280nmの吸光度(A280)によって、溶離液を監視し、そして適切なサイズの分画を収集する。SEC−HPLCによって評価した際のPEG化の度合いに応じて分画をプールする。次いで、Vivaspin 10K濃縮装置(Vivascience Sartorius Group)を用いて、精製プールを0.5〜5mg/mlに濃縮する。実験的に得た消光係数を用いて、280nmの吸光度によって、精製プールのタンパク質濃度を決定する。SEC−HPLCまたはSDS−PAGEを用いて、分枝鎖20K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36の精製プールのプロフィールを描く。
【0155】
実施例5
生化学的性質決定
エレクトロスプレー質量分析(ESI−MS)、SDS−PAGE、およびSEC HPLCおよびRP HPLCを含む多様な生化学的方法によって、(E10C)hPYY3−36、(D11C)hPYY3−36、ならびに(E10C)hPYY3−36および(D11C)hPYY3−36のPEG化型を、それぞれ、性質決定した。
【0156】
(A)ポジティブモードの1100シリーズのLC/MSDエレクトロスプレー質量分析装置(Agilent Technologies、カリフォルニア州パロアルト)上、エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)を行った(実施例1(a)、2(a))。
【0157】
(B)3分間の100%溶媒A、0%溶媒Bから95%溶媒A、5%溶媒B、次いで、12分間の95%溶媒A、5%溶媒Bから50%溶媒A、50%溶媒Bへの直線勾配を用い、1.5ml/分の速度で、ZORBAX Eclipse XDB−C8、4.6x150mm、5mmカラム(カタログ番号993967−906、Agilent Technologies、カリフォルニア州パロアルト)上で、(E10C)hPYY3−36ペプチドの分析のため、逆相クロマトグラフィーを行った(図1および4)(実施例1(a))。溶媒Aは、0.1% TFA水溶液である。溶媒Bは、アセトニトリル中の0.1% TFA溶液である。
【0158】
48分間の80%溶媒A、20%溶媒Bから40%溶媒A、60%溶媒Bの直線勾配を用い、0.2ml/分の流速で、Vydac C18(2.1x250mm)カラム(カタログ番号218MS552、Vydac、カリフォルニア州ヘスペリア)上、PEG化(E10C)hPYY3−36および(D11C)PYY3−36(未提示)の定量化のための逆相クロマトグラフィーを行った。(実施例1C、2C)。溶媒Aは、0.1% TFA水溶液である。溶媒Bは、アセトニトリル中の0.085% TFA溶液である。
【0159】
(C)サイズ排除高性能液体クロマトグラフィー(SEC−HPLC)
非変性SEC−HPLCを用いて、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36いずれかと、直鎖30Kまたは分枝鎖43K mPEGの反応混合物、その陽イオン交換精製プール、および最終精製産物を評価した(実施例1(b)および(c)、2(b)および(c))。Shodex KW804またはTSK G4000PWXL(Tosohaas)を用い、20mMリン酸、pH7.4、150mM NaCl中、流速1.0ml/分で、分析的非変性SEC−HPLCを行った(場合によって、Superdex 200 7.8mmX30cm、Amersham Bioscience、ニュージャージー州ピスカタウェイ)。PEG化は、タンパク質の流体力学的体積を非常に増加させ、より早い保持時間へのシフトを生じた。30K mPEGマレイミドに(E10C)hPYY3−36を加えた反応混合物では、残渣非修飾(E10C)hPYY3−36に対応する小さいピークが観察されるとともに、PEG化ペプチド種に対応する新規ピークが観察された(図2)。30K mPEG(D11C)hPYY3−36および分枝鎖43K mPEG(E10C)hPYY3−36反応混合物中に、新規種が観察され、非修飾(D11C)hPYY3−36または(E10C)hPYY3−36は、非常にわずかしか残っていなかった(図5および8)。SP−Sepharoseクロマトグラフィーによって、これらのPEG化および非PEG化種を分画し、そして続いて、生じた精製モノmPEG(E10C)hPYY3−36およびmPEG(D11C)hPYY3−36種が、非変性SEC上の単一ピークとして、>95%純度で溶出したことが示された(図6、7および9)。SP−Sepharoseクロマトグラフィー工程は、未結合mPEG、(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36およびより大きい分子量の種を、モノPEG化直鎖30Kおよび分枝鎖43K mPEG(E10C)hPYY3−36またはmPEG(D11C)hPYY3−36から効果的に取り除いた。
【0160】
(D)SDS PAGE
SDS−PAGE(実施例1(c))もまた用いて、反応物、陽イオン交換精製分画(図3)、および最終精製産物を評価した。還元条件下および非還元条件下で、1mm厚の10−NuPAGEゲル(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)上、SDS−PAGEを行い、そしてNovex Colloidal CoomassieTM G−250染色キット(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)を用いて染色した。
【0161】
生物学的アッセイ
慣用的アッセイにおいて、そして以下に記載するin vitroおよびin vivoアッセイにおいて、アゴニストの活性によって、哺乳動物(特にヒト)の体重増加の減少および肥満治療における、薬学的活性剤としての本発明のPYYアゴニストの有用性を立証してもよい。こうしたアッセイはまた、本発明のPYYアゴニストの活性を、既知の化合物の活性と比較しうる手段も提供する。
【0162】
食物摂取(Food Intake)研究
絶食が誘導する再摂食アッセイ:C57BL/6J雄マウス(The Jackson Laboratory、メイン州バーハーバー)を、ケージあたり2匹ずつ飼育した。12:12明期:暗期の周期(5:00AM点灯、5:00PM消灯)で飼育し、ペレットRMH3000 Purinaげっ歯類飼料(Research Diets, Inc.ニュージャージー州ニューブルンスウィック)を与え、そして自由に水を飲ませた。マウスは、7〜8週齢で到着し、そして研究前に最低10日間順応させた。研究当日、マウスは9〜12週齢であった。研究開始前日、新鮮な寝床で、そして食物がないが、水には自由にアクセスできるケージにマウスを入れた。マウスを一晩(20〜24時間)絶食させた。研究当日、マウスにIP注射を投与し(用量体積=5ml/kg)、ケージに戻し、そしてあらかじめ重量を測定した食物を、ケージに直ちに入れた。用いた投薬ビヒクルは、20mM酢酸Na、pH4.5、50mM NaClであり、そしてPEG化を伴わない活性PYY実体に関して、用量を計算した。ビヒクル対照、3つの用量(0.1mg/kg、0.3mg/kg、および1.0mg/kg)の天然PYY、30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36、および43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36を試験した。投薬2時間後、4時間後、6時間後、および24時間後に、食物の重量を再度測定した。こぼれたものに関して寝床をチェックし、この重量を測定し、そして計算に含めた。出発食物重量から各時点の食物重量を減じることによって、累積食物摂取を計算した。(FI処置−FIビヒクル)/FIビヒクル*100によって、阻害パーセント(%)を計算した。
【0163】
図10は、天然PYY3−36(図10A)および30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36(図10B)の3つの用量をIP注射した後の、6時間の累積摂取を示す。天然PYY3−36および30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36はどちらも、6時間の経過に渡って、累積食物摂取の用量依存性減少を示した。
【0164】
43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36もまた、6時間(図11A)および24時間(図11B)の累積食物摂取の用量依存性減少を生じた。しかし43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36が累積食物摂取を減少させる効果は、6時間後および24時間後の両方で、同じ用量(0.1mg/kg)の30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36によって示されるものほど大きくはなかった。
【0165】
また、0.1mg/kg(SC)の注射後、絶食が誘導する再摂食に対する30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の効果を、30Kマレイミド(D11C)hPYY3−36の効果にも比較した。30K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36ポリペプチドは、以下の表に示すように、24時間の時間経過全体で、累積食物摂取(FI)減少を引き起こしたが、効果は、30Kマレイミド(E10C)hPYY3−36に関して観察されたものほど大きくはなかった。
【0166】
【表2】
【0167】
直鎖20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の効果を、30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36に比較した(どちらも実施例1)。0.1mg/kg(IP)の用量を雄マウスに注射する1つの研究において、結果は、以下の表におけるとおりである。
【0168】
【表3】
【0169】
同様に、0.1mg/kg用量(SC)後、直鎖20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36と30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の摂食効果を比較する第二の研究において、結果は、以下の表におけるとおりである。
【0170】
【表4】
【0171】
SC注射後の血漿PYY濃度は以下のとおりであった。
【0172】
【表5】
【0173】
自発的食物摂取アッセイ:C57BL/6J雄マウス(The Jackson Laboratory)を個々に飼育し、そして研究前に2週間順応させた。これらを12/12明期/暗期の周期に維持し、粉末飼料を自由に摂食させ、そして水に自由にアクセスさせた。投薬前日、マウスを食物摂取チャンバーにいれ、そして1日順応させた。翌日、消灯直前(4:00PM)、マウスにIPまたは皮下(SC)注射を投与した。全時間経過に渡って、食物摂取を10分間隔で自動的に監視し、そして体重を毎日測定した。天然PYY3−36および30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36のIP注射に関して(図12)、そして天然PYY3−36および30K PEGマレイミド(E10C)hPYY3−36のSC注射に関して(図13)、結果を示す。天然PYY3−36および30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36両方が、ビヒクル処置マウスに比較した際、累積食物摂取の即時減少を生じたが、30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36によって引き起こされた食物摂取減少効果は、天然PYY3−36によって引き起こされた効果より、はるかにより長い期間であった。より長く続く食物摂取効果と合わせて、30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36はまた、単回注射(0.1mg/kg、IP)後、持続する血漿曝露も示した(図14)。天然PYY3−36が、16ml/分/kgのクリアランス速度および38nMのCmaxを有する一方、30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36は、0.2ml/分/kgのクリアランス速度および267nMのCmaxを有した。hPYYラジオイムノアッセイキット(Linco Research, Inc.、ミズーリ州セントルイス)を用いて、マウスにおける血漿PYY値を測定した。
【0174】
ob/obマウスでのミニポンプアッセイ:8〜9週齢の雄ob/obマウス(The Jackson Laboratory)(n=26)を正常飼料で飼育し、そしてビヒクル(生理食塩水)、PYY3−36(0.1mg/kg/日)、または30K PEGマレイミド(E10C)hPYY3−36(0.03mg/kg/日)のいずれかを投与する、14日間の浸透圧ミニポンプ(Alza社、カリフォルニア州マウンテンビュー)を移植した。食物重量および体重を毎日測定した。体脂肪組成を第0日および第13日に決定した。研究終了時に血液試料を採取した。これらの群に関して、食物摂取、体重、または体脂肪組成に有意な相違はなかった。先に記載されるようなラジオイムノアッセイによって、研究終了時に血漿PYYを測定した。天然PYY3−36処置群において、血漿PYYレベルは15±2ng/mlと測定され;30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36処置群では、血漿PYYレベルは132±22ng/mlであった。
【0175】
In vitro結合研究
リガンド結合に関するSPA:
リガンド結合に関するSPAは、Y2受容体からの放射標識PYYの競合的置換を測定し、そしてAmersham Biosciences(カタログ番号RPNQ 0085)から得られるレクチン、小麦胚芽凝集素(WGA)でコーティングされた、シンチラント含有微小球体(SPAビーズ)を利用する。50mM Hepes緩衝液(pH7.4)、145mM NaCl、2.5mM CaCl2、1mM MgCl2、10mMグルコース、0.1% BSA、5% DMSOおよびRocheプロテアーゼ阻害剤で構成される細胞採取緩衝液を用いて、表面上にY2受容体を発現するKAN−TSヒト神経芽細胞腫細胞(Fuhlendorfら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87:182−186, 1990)を調製した。50mM Hepes緩衝液、pH7.4、1mM MgCl2、2.5mM CaCl2、0.1%(w/v)BSA、0.025%(w/v)バシトラシンおよび0.025%アジ化ナトリウムで構成されるアッセイ緩衝液中、50,000細胞/ウェル、125I−PYY(40,000cpm/ウェル)およびSPAビーズ(0.5mg/ウェル)を用い、96ウェル形式中、3つ組で、SPAアッセイを行った。多様な濃度(0.032〜500nM)の試験リガンドをアッセイ混合物に添加し、次いでこれを振盪しながら、室温で16〜24時間インキュベーションした。プレートを1時間放置し、そして次いでMicroBeta(登録商標)Trilux検出装置(Perkin Elmer、マサチューセッツ州ボストン)を用いて計測した。実施例1のhPYY3−36および30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36に関する結果を図15に示す。
NPY Y2R受容体でのGTPγ[35S]結合アッセイ
機能アッセイは、NEN Flashplates(96ウェル形式)で行うGTPγ[35S]結合アッセイである。Bassら, Mol. Pharm. 50:709−715, 1990に記載されるように、KAN−TS細胞から膜を調製した。50mM Tris Hcl、pH7.4、3mM MgCl2、pH7.4、10mM MgCl2、20mM EGTA、100mM NaCl、5μM GDP、0.1%ウシ血清アルブミン、および以下のプロテアーゼ阻害剤:100μg/mlのバシトラシン、100μg/mlのベンズアミジン、5μg/mlのアプロチニン、5μg/mlのロイペプチンで構成されるアッセイ緩衝液中、100pM GTPγ[35S]およびウェルあたり10μgの膜を用いて、2つ組で、96ウェルFlashPlateTM形式において、GTPγ[35S]結合アッセイを行った。次いで、アッセイ混合物を、増加する濃度の試験化合物(6点濃度曲線;10−12M〜10−5Mの範囲内のlog希釈)と30℃で60分間インキュベーションした。次いで、FlashPlatesTMを、2000Xgで10分間遠心分離した。次いで、MicrobetaTM検出装置を用いて、GTPγ[35S]結合刺激を定量化した。GraphpadによるPrismを用いて、EC50および固有活性計算を行った。実施例1のhPYY3−36および30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36に関する結果を図16に示す。実施例1の30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36および20K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36のEC50値は匹敵した(例えば、同じアッセイで測定した際、4.3nMおよび4.6nM)。
【図面の簡単な説明】
【0176】
【図1】図1は、Zorbax Eclipse XDB−C8カラム上の精製(E10C)hPYY3−36ペプチドの逆相HPLC出力記録である。
【図2】図2は、Shodex 804 SECカラム上の、直鎖30K mPEGマレイミドに(E10C)hPYY3−36を加えた反応混合物のサイズ排除HPLC出力記録である。
【図3】図3は、直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36のSP Hitrap精製由来の分画のSDS PAGEの写真である。MW=分子量標準;L=カラム装填物;FT=フロースルー;4〜23=溶出分画。
【図4】図4は、Zorbax Eclipse XDB−C8カラム上の精製(D11C)hPYY3−36ペプチドの逆相HPLC出力記録である。
【図5】図5は、Shodex 804 SECカラム上の、直鎖30K mPEGマレイミドに(D11C)hPYY3−36を加えた反応混合物のサイズ排除HPLC出力記録である。
【図6】図6は、Shodex 804 SECカラム上の精製直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36産物の溶出プロフィールを示す、サイズ排除HPLC出力記録である。
【図7】図7は、Shodex 804 SECカラム上の精製直鎖30K mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36産物の溶出プロフィールを示す、サイズ排除HPLC出力記録である。
【図8】図8は、Shodex 804 SECカラム上の、グリセロール分枝鎖43K mPEGマレイミドに(E10C)hPYY3−36を加えた反応混合物のサイズ排除HPLC出力記録である。
【図9】図9は、Shodex 804 SECカラム上の精製グリセロール分枝鎖43K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36産物の溶出プロフィールを示す、サイズ排除HPLC出力記録である。
【図10】図10は、腹腔内(IP)注射後の絶食マウスにおける累積食物摂取の阻害のグラフである。図10Aは、ビヒクル群に比較した際の、天然PYY3−36の用量効果を示す。図10Bは、直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の用量効果を示す。
【図11】図11は、ビヒクルおよび直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)PYY3−36に比較した際の、グリセロール分枝鎖43K mPEGマレイミド(E10C)PYY3−36の、絶食マウスにおけるIP注射の食物摂取効果を示す。図11Aは、注射後6時間に渡る反応を示す線グラフである。図11Bは、注射後24時間に渡る効果を比較する棒グラフである。
【図12】図12は、ビヒクル、PYY3−36、および直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)PYY3−36のIP注射の、自発的に給餌させたマウスに対する効果を示す。図12Aは、食物摂取に対する効果を示し、そして図12Bは、体重に対する効果を示す。
【図13】図13は、ビヒクル、PYY3−36、および直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の皮下(SC)注射の、自発的に給餌させたマウスに対する効果を示す。図13Aは、食物摂取に対する効果を示し、そして図13Bは、体重に対する効果を示す。
【図14】図14は、0.1mg/kg IP注射後のマウスにおける、PYYに対する血漿曝露を示す。図14Aは、hPYY3−36の注射後の血漿PYYレベルを示し、そして図14Bは、直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36の注射後の血漿PYYレベルを示す。
【図15】図15は、シンチレーション近接アッセイ(SPA)由来のPYY3−36または直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)PYY3−36に関する濃度反応曲線のグラフであり、この中で、リガンドは、KAN−TS細胞上に発現されたY2Rへの結合に関して、125I−PYY1−36と競合する。
【図16】図16は、KAN−TS膜上に発現されたY2RとのGTPガンマ[35S]の結合アッセイに由来するPYY3−36または直鎖30K mPEGマレイミド(E10C)PYY3−36に関する濃度反応曲線のグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列IKPEAPGCDASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY−NH2[配列番号3]を有するポリペプチド(E10C)hPYY3−36またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
アミノ酸配列IKPEAPGECASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY−NH2[配列番号4]を有するポリペプチド(D11C)hPYY3−36またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項3】
ポリエチレングリコール(PEG)およびポリペプチド(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36を含むコンジュゲート。
【請求項4】
式3
【化1】
式中、PEGはメトキシPEGであり、そして直鎖または分枝鎖であり、そして約1kD〜50kDの範囲内の平均分子量を有し、
Lは、式
−O(CH2)pNHC(O)(CH2)r−
の基であり、ここで各pおよびrは、独立に1〜6の整数であるか、
またはLは、式
−NHC(O)(CH2)s−
の基であり、ここでsは1〜6の整数である、そして
−SRは、ポリペプチド(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36であり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
を有する、請求項3のコンジュゲート。
【請求項5】
mPEGが直鎖である、請求項4のコンジュゲート。
【請求項6】
式4
【化2】
式中、nは約600〜750の範囲内の整数であり、そして−SRはポリペプチド(E10C)hPYY3−36であり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
を有する、請求項5のコンジュゲート。
【請求項7】
(OCH2CH2)n部分が、約30kDの平均分子量を有する、請求項6のコンジュゲート。
【請求項8】
式4
【化3】
式中、nは約375〜525の範囲内の整数であり、そして−SRはポリペプチド(E10C)hPYY3−36であり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
を有する、請求項5のコンジュゲート。
【請求項9】
(OCH2CH2)n部分が、約20kDの平均分子量を有する、請求項8のコンジュゲート。
【請求項10】
式4
【化4】
式中、nは約600〜750の範囲内の整数であり、そして−SRはポリペプチド(D11C)hPYY3−36であり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
を有する、請求項5のコンジュゲート。
【請求項11】
(OCH2CH2)n部分が、約30kDの平均分子量を有する、請求項10のコンジュゲート。
【請求項12】
mPEGが分枝鎖である、請求項4のコンジュゲート。
【請求項13】
mPEGがグリセロール分枝鎖である、請求項12のコンジュゲート。
【請求項14】
式5
【化5】
式中、各mはほぼ同じであり、そして約450〜500の範囲内の整数であり、そして−SRは(E10C)hPYY3−36ポリペプチドであり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
を有する、請求項13のコンジュゲート。
【請求項15】
各(OCH2CH2)m部分が、約20kD〜22kDの範囲内の平均分子量を有する、請求項14のコンジュゲート。
【請求項16】
式5
【化6】
式中、各mは同じであり、そして約450〜500の範囲内の整数であり、そして−SRは(D11C)hPYY3−36ポリペプチドであり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
を有する、請求項13のコンジュゲート。
【請求項17】
各(OCH2CH2)m部分が、約20kD〜22kDの範囲内の平均分子量を有する、請求項16のコンジュゲート。
【請求項18】
式5
【化7】
式中、各mはほぼ同じであり、そして−SRは(E10C)hPYY3−36ポリペプチドであり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
を有する、グリセロール分枝鎖43k mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36コンジュゲート、またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項19】
式5
【化8】
式中、各mはほぼ同じであり、そして−SRは(D11C)hPYY3−36ポリペプチドであり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
を有する、グリセロール分枝鎖43k mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36コンジュゲート、またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項20】
請求項1もしくは2のポリペプチドまたは請求項3〜19のいずれか1項のコンジュゲート、あるいはその薬学的に許容しうる塩、および薬学的に許容しうるキャリアーを含む、薬剤組成物。
【請求項21】
抗肥満剤である第二の剤をさらに含む、請求項20の薬剤組成物。
【請求項22】
肥満または過剰体重である状態を治療する必要がある哺乳動物において、肥満または過剰体重である状態を治療する方法であって、請求項1もしくは2のポリペプチドまたは請求項3〜19のいずれか1項のコンジュゲート、あるいはその薬学的に許容しうる塩の療法的有効量を哺乳動物に末梢投与することを含む、前記方法。
【請求項23】
哺乳動物において、体重増加を阻害するか、食物摂取を減少させるかまたはカロリー摂取を減少させる方法であって、請求項1もしくは2のポリペプチドまたは請求項3〜19のいずれか1項のコンジュゲート、あるいはその薬学的に許容しうる塩の療法的有効量を哺乳動物に末梢投与することを含む、前記方法。
【請求項24】
ポリペプチド、コンジュゲートまたは塩を、抗肥満剤である第二の剤と組み合わせて投与する、請求項22または23の方法。
【請求項25】
哺乳動物において、肥満または過剰体重である状態を治療するか、あるいは哺乳動物において、体重増加を阻害するか、食物摂取を減少させるかまたはカロリー摂取を減少させるための薬剤製造における、請求項1もしくは2のポリペプチドまたは請求項3〜19のいずれか1項のコンジュゲート、あるいはその薬学的に許容しうる塩の使用。
【請求項26】
請求項1または2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項27】
配列番号3または配列番号4に示すようなアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する、モノクローナル抗体。
【請求項28】
前記ポリペプチドがシステイン残基でPEG化されている、請求項27のモノクローナル抗体。
【請求項1】
アミノ酸配列IKPEAPGCDASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY−NH2[配列番号3]を有するポリペプチド(E10C)hPYY3−36またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】
アミノ酸配列IKPEAPGECASPEELNRYYASLRHYLNLVTRQRY−NH2[配列番号4]を有するポリペプチド(D11C)hPYY3−36またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項3】
ポリエチレングリコール(PEG)およびポリペプチド(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36を含むコンジュゲート。
【請求項4】
式3
【化1】
式中、PEGはメトキシPEGであり、そして直鎖または分枝鎖であり、そして約1kD〜50kDの範囲内の平均分子量を有し、
Lは、式
−O(CH2)pNHC(O)(CH2)r−
の基であり、ここで各pおよびrは、独立に1〜6の整数であるか、
またはLは、式
−NHC(O)(CH2)s−
の基であり、ここでsは1〜6の整数である、そして
−SRは、ポリペプチド(E10C)hPYY3−36または(D11C)hPYY3−36であり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
を有する、請求項3のコンジュゲート。
【請求項5】
mPEGが直鎖である、請求項4のコンジュゲート。
【請求項6】
式4
【化2】
式中、nは約600〜750の範囲内の整数であり、そして−SRはポリペプチド(E10C)hPYY3−36であり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
を有する、請求項5のコンジュゲート。
【請求項7】
(OCH2CH2)n部分が、約30kDの平均分子量を有する、請求項6のコンジュゲート。
【請求項8】
式4
【化3】
式中、nは約375〜525の範囲内の整数であり、そして−SRはポリペプチド(E10C)hPYY3−36であり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
を有する、請求項5のコンジュゲート。
【請求項9】
(OCH2CH2)n部分が、約20kDの平均分子量を有する、請求項8のコンジュゲート。
【請求項10】
式4
【化4】
式中、nは約600〜750の範囲内の整数であり、そして−SRはポリペプチド(D11C)hPYY3−36であり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
を有する、請求項5のコンジュゲート。
【請求項11】
(OCH2CH2)n部分が、約30kDの平均分子量を有する、請求項10のコンジュゲート。
【請求項12】
mPEGが分枝鎖である、請求項4のコンジュゲート。
【請求項13】
mPEGがグリセロール分枝鎖である、請求項12のコンジュゲート。
【請求項14】
式5
【化5】
式中、各mはほぼ同じであり、そして約450〜500の範囲内の整数であり、そして−SRは(E10C)hPYY3−36ポリペプチドであり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
を有する、請求項13のコンジュゲート。
【請求項15】
各(OCH2CH2)m部分が、約20kD〜22kDの範囲内の平均分子量を有する、請求項14のコンジュゲート。
【請求項16】
式5
【化6】
式中、各mは同じであり、そして約450〜500の範囲内の整数であり、そして−SRは(D11C)hPYY3−36ポリペプチドであり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
を有する、請求項13のコンジュゲート。
【請求項17】
各(OCH2CH2)m部分が、約20kD〜22kDの範囲内の平均分子量を有する、請求項16のコンジュゲート。
【請求項18】
式5
【化7】
式中、各mはほぼ同じであり、そして−SRは(E10C)hPYY3−36ポリペプチドであり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
を有する、グリセロール分枝鎖43k mPEGマレイミド(E10C)hPYY3−36コンジュゲート、またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項19】
式5
【化8】
式中、各mはほぼ同じであり、そして−SRは(D11C)hPYY3−36ポリペプチドであり、ここでSはシステイン・チオール基のイオウ原子である
を有する、グリセロール分枝鎖43k mPEGマレイミド(D11C)hPYY3−36コンジュゲート、またはその薬学的に許容しうる塩。
【請求項20】
請求項1もしくは2のポリペプチドまたは請求項3〜19のいずれか1項のコンジュゲート、あるいはその薬学的に許容しうる塩、および薬学的に許容しうるキャリアーを含む、薬剤組成物。
【請求項21】
抗肥満剤である第二の剤をさらに含む、請求項20の薬剤組成物。
【請求項22】
肥満または過剰体重である状態を治療する必要がある哺乳動物において、肥満または過剰体重である状態を治療する方法であって、請求項1もしくは2のポリペプチドまたは請求項3〜19のいずれか1項のコンジュゲート、あるいはその薬学的に許容しうる塩の療法的有効量を哺乳動物に末梢投与することを含む、前記方法。
【請求項23】
哺乳動物において、体重増加を阻害するか、食物摂取を減少させるかまたはカロリー摂取を減少させる方法であって、請求項1もしくは2のポリペプチドまたは請求項3〜19のいずれか1項のコンジュゲート、あるいはその薬学的に許容しうる塩の療法的有効量を哺乳動物に末梢投与することを含む、前記方法。
【請求項24】
ポリペプチド、コンジュゲートまたは塩を、抗肥満剤である第二の剤と組み合わせて投与する、請求項22または23の方法。
【請求項25】
哺乳動物において、肥満または過剰体重である状態を治療するか、あるいは哺乳動物において、体重増加を阻害するか、食物摂取を減少させるかまたはカロリー摂取を減少させるための薬剤製造における、請求項1もしくは2のポリペプチドまたは請求項3〜19のいずれか1項のコンジュゲート、あるいはその薬学的に許容しうる塩の使用。
【請求項26】
請求項1または2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項27】
配列番号3または配列番号4に示すようなアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する、モノクローナル抗体。
【請求項28】
前記ポリペプチドがシステイン残基でPEG化されている、請求項27のモノクローナル抗体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2008−528050(P2008−528050A)
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553737(P2007−553737)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【国際出願番号】PCT/IB2006/000270
【国際公開番号】WO2006/082517
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【国際出願番号】PCT/IB2006/000270
【国際公開番号】WO2006/082517
【国際公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【出願人】(397067152)ファイザー・プロダクツ・インク (504)
【Fターム(参考)】
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