説明

QOL改善剤

【課題】本発明は、透析患者の透析および腎疾患に起因する種々の不快症状や苦痛によって低下するクオリティオブライフ(QOL)を改善する方法を提供する。
【解決手段】酸化型補酵素Q10を含有することを特徴とする、透析患者のQOL改善剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析患者の低下したクオリティオブライフ(QOL)を改善する剤に関する。
【背景技術】
【0002】
透析(腎透析)患者は、その低下した腎機能を補完するために透析の治療が生命の維持に必須である。しかし、透析は患者にとって決して快適な治療法ではない。一般に透析は、週3回行わなくてはならず、更に1回の治療時間は、標準で4〜5時間という長いものである。患者は、ほぼ2日毎に4〜5時間という長時間を透析器と共に過ごすことを余儀なくされている。しかも、透析中には、いわゆる不均衡症候群として、頭痛、吐き気、脱力感、血圧低下などの不快な症状が透析患者を苦しめている。このような症状は、通常2日間に渡って腎臓が行っている血液中の老廃物の除去を、4〜5時間という短時間で行うことによる不均衡な状態が原因と考えられており、このような症状が起こった場合、患者の不快感を減少させるため透析速度を遅くする必要があり、それによって更に透析の拘束時間が長くなるという悪循環が生じていた。このように透析は、患者の生活の質(クオリティオブライフ:Quality of Life:QOL)を激しく低下させているが、これに対する改善方法は未だ明確ではない。
【0003】
更には、透析患者では、皮膚の乾燥や痒みを訴える人が多く、また、腎性貧血、鉄欠乏性貧血などの貧血、リン、カルシウム、カリウムなどの電解質の異常、高血圧や低血圧などの血圧の異常、消化管からの出血、血管や骨の異常などの数多くの異常が発生する。
これらに対処するために、対症療法的に様々な薬剤が用いられている。例えば、腎性貧血に対して処方されるエリスロポエチン製剤(エポジンなど)は、造血作用を有するものの副作用として、動悸、掻痒感、皮疹、嘔吐、食欲不振、頭痛、めまい、発熱、関節痛といった不快な症状を呈することが知られている。このように薬剤による副作用も、患者のQOLを大いに低下させている。
【0004】
透析患者では、腎機能の回復は見込めないのが一般的であり、腎移植が唯一の有効な手段であるが、腎移植は実施の可能性が低く、透析患者は一生透析から離れられないのが現実である。このような状況で透析患者のQOLを向上させる取り組みは、皆無であるに等しい。
補酵素Q10は、健康維持に優れた効果を示す素材であり、全世界でサプリメントとして広く使用されている。透析患者が補酵素Q10を摂取することにより、腎機能が回復することをSingh等は報告しているが(非特許文献1)、対象患者の選択基準や治療中の食事や水分摂取など腎機能に大きく影響を与える因子が記載されていないため、腎機能をどの程度改善したかは明確でない。このように、透析患者の腎機能についての回復の報告はあるが、患者のQOLに関する報告は全くない。Hadj等は、心臓手術の前に補酵素Q10を摂取することで、手術後の回復が早くなることを示しているが(非特許文献2)、透析患者に対するQOLの回復効果については全く記載がない。
また補酵素Q10が透析患者の酸化ストレスおよび腎機能を改善することは開示されている(特許文献1)が、透析患者のQOL改善に関しては具体的な記載がない。
【特許文献1】特開2007−1922号公報
【非特許文献1】Singh,R.G.et al.(2003)、J.Nutritional&Environmental Medicine、13(1)、13−22
【非特許文献2】Hadj,A et al.(2006)、Heart Lung and Circulatioin、15、172−181
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、透析および腎疾患に起因する種々の不快症状や苦痛によって低下する透析患者のQOLを改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意検討を行った結果、透析患者に補酵素Q10を摂取させることで、透析中の不快事象等が軽減することを見出し、本発明を完成させた。即ち本発明は、透析中の不快事象、腎疾患に起因する異常状態および腎疾患治療剤の副作用を軽減し、透析患者のQOLを改善することに適した補酵素Q10を含有する組成物を提供するものである。
【0007】
即ち、本発明は、以下に関する。
[1]下記式(1);
【0008】
【化1】

【0009】
で表される酸化型補酵素Q10を含有することを特徴とする、透析患者のクオリティオブライフ(QOL)改善剤。
[2]QOLの改善が、透析治療中の不快事象の軽減、腎疾患治療剤に起因する副作用の軽減、および腎疾患に由来する異常状態の改善からなる群より選択される少なくとも1種である、[1]に記載の改善剤。
[3]さらに栄養補助成分および/または健康食品素材を含有する、[1]または[2]に記載の改善剤。
[4]栄養補助成分が、アミノ酸、金属イオン、糖類、蛋白質類、脂肪酸類、ビタミン類、ビタミンB誘導体、テアニン、γ−アミノ酪酸、アンセリン、大豆ペプチド、チオレドキシン、小麦グルテン加水分解物、グルタミン、ミルクペプチド、ω−3脂肪酸、ホスファチジルセリン、アスタキサンチン、ピクノジェノール、フラバンジェノール、クレアチン、カルニチン、α−リポ酸、ポリフェノール類、緑茶カテキン、サポニン、イチョウ葉エキス、セントジョーンズワート、羅布麻エキス、エゾウコギ、ワサビ、N−アセチルグルコサミンおよびリグナン類からなる群より選択される少なくとも1種である[3]に記載の改善剤。
[5]健康食品素材が、ハーブ類、生薬類およびきのこ類ならびにそれらの抽出物からなる群より選択される少なくとも1種である[3]に記載の改善剤。
[6]さらに抗酸化物質および/または抗酸化酵素を含有する、[1]〜[5]のいずれか1項に記載の改善剤。
[7]抗酸化物質がビタミンE、ビタミンE誘導体、ビタミンC、ビタミンC誘導体、リコペン、ビタミンA、カロテノイド類、ビタミンB、ビタミンB誘導体、フラボノイド類、グルタチオンおよびセレンからなる群から選択される少なくとも1種である、[6]に記載の改善剤。
[8]抗酸化酵素がスーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、グルタチオン還元酵素、カタラーゼおよびアスコルビン酸ペルオキシダーゼからなる群から選択される少なくとも1種である、[6]に記載の改善剤。
[9]食品、健康食品、栄養補助食品、サプリメント、医薬品または医薬部外品である、[1]〜[8]のいずれか1項に記載の改善剤。
[10]上記式(1)で表される酸化型補酵素Q10の有効量を、透析患者に投与する工程を含む、QOLの改善方法。
[11]QOLの改善が、透析治療中の不快事象の軽減、腎疾患治療剤に起因する副作用の軽減、または腎疾患に由来する異常状態の改善である、[10]に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、透析患者の透析中の不快事象を低減することが出来るため、不快事象に対する対症療法の軽減や、不快事象による透析時間の延長の抑制または透析時間の短縮を可能にする。さらには透析患者の腎疾患に起因する異常状態および腎疾患治療剤の副作用を軽減し、全般的に低下したQOLを改善することができる。また補酵素Q10には蓄積性が認められないことから副作用を心配することなく長期に摂取することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を詳しく説明する。
本発明の透析患者のクオリティオブライフ(QOL)改善剤は、下記式(1);
【0012】
【化2】

【0013】
で表される酸化型補酵素Q10を含有することを特徴とする(以下本発明の改善剤ということもある)。
【0014】
本発明に使用する補酵素Q10は、従来からの公知の方法、例えば、発酵法、合成法、動植物からの抽出法によって得られるものを利用することが可能であるが、酵母発酵法など、合成法以外によって得られるオールトランス構造であるものが、安全性の観点から好ましく、例えば、カネカ・コエンザイムQ10(株式会社カネカ製)が例示できる。更には、酵母あるいは細菌で培養された場合は、その培養液を乾燥させる、あるいは抽出して酵母エキスなどとして用いることも可能である。
【0015】
本発明におけるQOLの改善とは、低下したQOLを向上させる、またQOLを維持することをも含む概念である。
低下したQOLを向上させるとは、透析治療中の不快事象、透析治療のための長時間拘束、透析患者における腎疾患治療剤に起因する副作用または腎疾患に由来する異常状態などが要因となり低下した生活のレベルを、社会的にみて人間らしい生活が実現できる状態にすることを意味する。
従って本発明におけるQOLの改善は、透析治療中の不快事象の軽減、透析時間の短縮または延長の抑制、透析患者における腎疾患治療剤に起因する副作用の軽減または腎疾患に由来する異常状態の改善をいう。なかでも透析治療中の不快事象の軽減、腎疾患に由来する異常状態の改善などが望ましい。
【0016】
本発明における透析治療中の不快事象とは、例えば、人工透析治療中の、頭痛、関節などの痛み、吐き気、脱力感(ふらつき)、血圧低下などの不均衡症候群、痒み、皮膚の乾燥、透析後の疲れなどの不快な症状をいう。
【0017】
本発明における腎疾患に由来する異常状態とは、皮膚の乾燥、痒み、腎性貧血、鉄欠乏性貧血などの貧血、リン、カルシウム、カリウムなどの電解質の異常、高血圧や低血圧などの血圧の異常、消化管からの出血、血管や骨の異常、起床時の不快感、食欲の低下、疲労感、便秘などの腎疾患に由来する透析患者のQOLを低下させる不快な状態や症状をいう。
【0018】
本発明における腎疾患治療剤は、本来の腎疾患治療剤だけでなく、腎疾患に由来する異常状態ならびに透析治療中の不快事象軽減のための対症療法的薬剤を包含する。このような腎疾患治療剤としては、エリスロポエチンなどの貧血治療剤、降圧剤、昇圧剤、利尿剤、ステロイドなどのホルモン剤、リン吸着剤、カリウム吸着剤、ビタミン剤、重炭酸ナトリウム、アミノ酸製剤などが挙げられる。
【0019】
本発明における腎疾患治療剤に起因する副作用とは、動悸、掻痒感、皮疹、嘔吐、食欲不振、頭痛、めまい、発熱、関節痛、便秘、不眠などが挙げられる。
【0020】
本発明の改善剤には、補酵素Q10と上記腎疾患治療剤とを組み合わせてなるもの(即ち、併用剤)も含まれる。その場合、投与時に補酵素Q10と腎疾患治療剤とを組み合わすことができるものであればよい。従って、本発明の改善剤は、投与時に補酵素Q10と腎疾患治療剤とを組み合わすことができるものであれば、両者を同時に製剤化して得られる単一の製剤であっても、両者を別々に製剤化して得られる2種の製剤を組み合わせたものであってもよい。
【0021】
本発明の改善剤においては、補酵素Q10は、そのまま単体として摂取しても良い。脂溶性であることから一般の食用油脂に分散、溶解して摂取してもよく、公知技術によって加工された形態、例えばシクロデキストリンによる包接体、水中油型乳化物として摂取してもよい。
【0022】
本発明のQOL改善剤は、さらに他の栄養補助成分および/または健康食品素材を含む事ができる。
栄養補助成分としてはアミノ酸、金属イオン、糖類、蛋白質類、脂肪酸類、ビタミン類、ビタミンB誘導体、テアニン、γ−アミノ酪酸(GABA)、アンセリン、大豆ペプチド、チオレドキシン、小麦グルテン加水分解物、グルタミン、ミルクペプチド、ω−3脂肪酸(ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸など)、ホスファチジルセリン、アスタキサンチン、ピクノジェノール、フラバンジェノール、クレアチン、カルニチン、α−リポ酸、ポリフェノール類、緑茶カテキン、サポニン、イチョウ葉エキス、セントジョーンズワート、羅布麻エキス、エゾウコギ、ワサビ、N−アセチルグルコサミン、リグナン類(セサミンなど)などが挙げられる。これらは1種または2種類以上適宜組み合わせて用いることが出来る。
【0023】
健康食品素材としてハーブ類、生薬類、きのこ類、それらの抽出物などが挙げられる。これらは1種または2種類以上適宜組み合わせて、用いることが出来る。
【0024】
ハーブ類としては、例えばイタリアンパセリ、エリキャンペーン、オリーブ、オレガノ、カールドン、カモミール、カレープラント、キャットニップ、キャラウェイ、クリスマスローズ、クリムソンクローバ、コーンフラワー、コモンマロウ、サラダバーネット、サントリナ、シナモン、ジャスミン、ステビア、セージ、セイヨウボダイジュ、センテッドゼラニウム、セントジョーンズワート、ソープワート、ソロモンズシール、タイム、タンジー、チャービル、チャイブ、ナスタチウム、ナツメ、バジル、ハニーサックル、ヒソップ、フラックス、フェンネル、フォックスグローブ、ブラックリーホーリーホック、フレンチマリーゴールド、ベトニー、ヘリオトロープ、ベルガモット、ヘンプアグリモニー、ヘンルーダ、ポットマリーゴールド、ボリジ、ホワイトホアハウンド、マートル、マーレイン、マジョラム、ミント、ヤロウ、ラベンダー、レディースベッドストロー、レモングラス、レモンバーベナ、レモンバーム、ローズ、ローズマリー、ロケット、ワイルドストロベリー、ワイルドパンジー、ワスレナグサなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0025】
生薬類としては、例えばアカネコン、アキョウ、アケビ、アセンヤク、イカリソウ、イスイ、イチョウ、イレイセン、インチンコウ、ウイキョウ、ウコン、ウゾッコツ、ウズ、ウバイ、ウヤク、ウヨリョウ、エンゴサク、オウギ、オウゴン、オウセイ、オウバク、オウレン、オオツヅラフジ、オオバコ、オンジ、カイカ、カイキンシャ、カイゴシツ、カイトウヒ、ガイハク、ガイヨウ、カゴソウ、カシ、カシュウ、ガジュツ、カッコウ、カッコン、カッセキ、カヤ、カロコン、カロニン、カンキョウ、カンゾウ、カンレンソウ、キキョウ、キクカ、キコク、キジツ、キハダ、キバン、ギュウカク、キョウカツ、キョウニン、ギョクチク、キンオウシ、ギンギョウ、キンギンカ、キンセンソウ、キンミズヒキ、クコシ、クジン、クセキ、ケイガイ、ケイケットウ、ケイシ、ケイヒ、ケツジツ、ケツメイシ、ケンゴシ、ゲンジン、コウイ、コウカ、ゴウカンヒ、コウコウ、コウシ、コウジュ、コウブシ、コウボク、ゴオウ、ゴカヒ、ゴシツ、ゴシュウ、コショウ、コツサイホ、コトウニク、ゴバイシ、コハク、ゴボウシ、ゴマ、ゴミシ、コロハ、サイコ、サイシン、サフラン、サヨウ、サンザシ、サンジコ、サンシシ、サンシャ、サンシュユ、サンショウ、サンズコン、サンソニン、サンヤク、サンリョウ、ジオウ、シオン、シカジチョウ、シカラク、ジコッピ、シコン、ジセキ、シセキエイ、シソ、シソシ、シソヨウ、シツリシ、ジフシ、シャクセキシ、シャクヤク、ジャショウシ、シャジン、シャゼンシ、シャゼンソウ、シャチュウ、ジュウイシ、シュクシャ、ショウキョウ、ショウブコン、ショウマ、ショウモク、ジョテイシ、ジリュウ、シンイ、シンギク、ジンギョウ、ジンコウ、スイテツ、セイソウコン、セイソウシ、セイタイ、セイヒ、セキイ、セキシャク、セキショウコン、セキリュウヒ、セッケツメイ、セッコウ、センカクソウ、センキュウ、ゼンコ、センタイ、センプクカ、センレンシ、ソウカ、ソカクシ、ソウシ、ソウジシ、ソウジュツ、ソウズク、ソウハクヒ、ソウヒョウショウ、ソボク、ソヨウ、ダイオウ、タイセキシャ、ダイセイヨウ、タイソウ、ダイフクヒ、タクシャ、タクラン、タンジン、チクジョ、チクモウ、チモ、チョウトウコウ、チョレイ、チンピ、テイレキシ、テンカフン、テンジクオウ、テンナンショウ、テンマ、テンモンドウ、トウガシ、トウキ、トウシン、トウチュウカソウ、ドッカツ、トウニン、トシシ、トチュウ、ニクジュヨウ、ニクズク、ニュウコウ、ニンジン、ニンドウ、ネズミモチ、ハクガイシ、バクガ、ハクニシン、ハクズク、ハクセンピ、ハクトウオウ、ハクヘンズ、バクモントウ、ハゲキテン、ハッカ、ハマボウフウ、ハンゲ、バンコウカ、ヒカイ、ヒシ、ビャクゴウ、ビョクシ、ビャクジュツ、ビョクシ、ビャクジュツ、ビャクダン、ビャクビ、ビャクブコン、ビャッカジャゼッソウ、ビャッキュウ、ビャッキョウサン、ビンロウジ、フクボンシ、ブクリョウ、ブシ、ベッコウ、ベニバナ、ヘンチク、ボウイ、ボウコン、ボウフウ、ホオウ、ホコウエイ、ホコツシ、ボタンピ、ボレイ、マイカイカ、マオウ、マオウコン、マシニン、マンケイシ、ミツモウカ、ミロバラン、モクツウ、モクゾク、モッカ、モッコウ、ヤカン、ヤクチ、ヤクモソウ、ヤコウトウ、ユウタン、ヨクイニン、ヨモギ、ライガン、ライフクシ、ラカンカ、リュウガンニク、リュウキド、リュウコツ、リュウタン、リョウキョウ、リョクズ、レンギョウ、レンセンソウ、レンニク、ロクジョウ、ロホウボウなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0026】
きのこ類としては、マツタケ、マイタケ、シイタケ、エノキ、シメジ、エリンギ、ブナハリタケなどが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0027】
本発明のQOL改善剤には、さらに抗酸化物質および/または抗酸化酵素を含有する事ができる。
抗酸化物質としては特に限定はされないが、例えば、ビタミンE、ビタミンE誘導体
、ビタミンC、ビタミンC誘導体、プロブコール、リコペン、アスタキサンチン、ビタミンA、カロテノイド類、ビタミンB、ビタミンB誘導体、フラボノイド類、ポリフェノール類、グルタチオン、セレンなどが挙げられる。これらは1種または2種以上の混合物として使用してもよい。
【0028】
抗酸化酵素としては、特に限定はされないが、例えば、スーパーオキサイドディスムターゼ(SOD)、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、グルタチオン還元酵素、カタラーゼ、アスコルビン酸ペルオキシダーゼなどが挙げられる。これらは1種または2種以上の混合物として使用してもよい。
【0029】
本発明のQOL改善剤には、以上例示したような抗酸化物質、抗酸化酵素、健康食品素材、栄養補助成分を1種または2種類以上適宜組み合わせて用いることが出来る。
【0030】
本発明の改善剤には、更に、上記補酵素Q10の他に、薬剤学的にまたは食品として許容される他の素材を、常法により適宜添加混合してもよい。このようなものとしては特に限定されず、例えば、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、酸化防止剤、着色剤、凝集防止剤、吸収促進剤、溶解補助剤、安定化剤などが挙げられる。
【0031】
上記賦形剤としては特に限定されず、例えば、白糖、乳糖、ブドウ糖、コーンスターチ、マンニトール、結晶セルロース、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムなどが挙げられる。
上記崩壊剤としては特に限定されず、例えば、澱粉、寒天、クエン酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、デキストリン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース(カルボキシメチルセルロースカルシウムなど)、トラガントなどが挙げられる。
上記滑沢剤としては特に限定されず、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、シリカ、硬化植物油などが挙げられる。
上記結合剤としては特に限定されず、例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、トラガント、シェラック、ゼラチン、アラビアゴム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ソルビトールなどが挙げられる。
上記酸化防止剤としては特に限定されず、例えば、アスコルビン酸、トコフェロール、ビタミンA、β−カロチン、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、クエン酸などが挙げられる。
上記着色剤としては特に限定されず、例えば、医薬品に添加することが許可されているものなどを使用することができる。
上記凝集防止剤としては特に限定されず、例えばステアリン酸、タルク、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ酸などが挙げられる。
上記吸収促進剤としては特に限定されず、例えば高級アルコール類、高級脂肪酸類、グリセリン脂肪酸エステルなどの界面活性剤などが挙げられる。
上記溶解補助剤としては特に限定されず、例えばフマル酸、コハク酸、リンゴ酸などの有機酸などが挙げられる。
上記安定化剤としては特に限定されず、例えば安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸エチルなどが挙げられる。
【0032】
本発明の改善剤はそのまま、あるいはそれを含有する組成物として、食品、健康食品、栄養補助食品、サプリメント、医薬品または医薬部外品などの用途に使用できる。ここでいう健康食品とは、いわゆる健康食品の他、健康補助食品、特定保健用食品、栄養機能食品など、医薬品以外で健康維持のために摂取出来る食品形態の全てを指している。また、食品がいわゆる健康食品であるような場合には、補酵素Q10が1食あたりの摂取単位量の形態で包装された形態などが挙げられ、食品が健康ドリンクであるような場合には、該補酵素Q10が懸濁あるいは溶解したドリンクが1食あたり飲み切りの形態でビン等に入れられている形態が挙げられる。
【0033】
1食あたりの摂取単位量とは、食品の場合、摂取される有効成分量である。特に食品の場合、食品全体の摂取量は個人差があり、組成物中の有効成分の含有量として一概に規定することが困難であるので、後述する1日あたりの有効摂取量を勘案して、有効成分の1回摂取量として規定することが推奨される。当該1回摂取量は、年齢、体重、性別、ストレスの程度などによって適宜変動する量である。なお医薬品の場合、1回摂取量、すなわち1回に投与される有効成分量を含む、包装された形態や1回当たりの飲み切りの形態でビン等に入れられている形態が挙げられる。
【0034】
本発明のQOL改善剤を摂取する場合の形態は、特には限定されないが、カプセル剤、マイクロカプセル剤、ソフトカプセル剤、シームレスカプセル剤、錠剤、散剤、チュアブル製剤、シロップ、液剤など、経口的に摂取出来る形態の全ての方法を取ることが出来る。
【0035】
本発明のQOL改善剤を一般食品とする場合の形態は、特には限定されないが、食用油脂組成物、調理油類、スプレー油類、バター類、マーガリン類、ショートニング類、ホイップクリーム類、濃縮乳類、ホワイトナー類、ドレッシング類、ピックル液類、パン類、ケーキ類、パイ類、クッキー類、和菓子類、スナック菓子類、油菓子類、チョコレートおよびチョコレート菓子類、米菓類、ルウ類、ソース類、たれ類、トッピング類、氷菓類、麺類、ベーカリーミックス類、フライ食品類、加工肉製品類、水産練り製品類、冷凍アントレ類、畜産冷凍食品、農産冷凍食品などの冷凍食品類、米飯類、ジャム類、チーズ、チーズフード、チーズ様食品、ガム類、キャンデイー類、発酵乳類、缶詰類、飲料類などが挙げられる。
【0036】
本発明の改善剤に含まれる補酵素Q10の1日あたりの成人(60Kg)に対する有効摂取量は、10〜1000mg、好ましくは、50〜500mg、更に好ましくは100〜300mgである。摂取量が10mg以上では十分にQOL改善作用が得られる。但し、これらの摂取量は、製剤の剤型によって異なることも知られており、高吸収性製剤であれば、更に低い摂取量で、所定の目的を達することも期待できる。
上記摂取量は、1日に1回または数回に分けて摂取することができる。摂取期間は、特に限定はないが、通常は1週間以上、好ましくは2週間以上であり、さらには、透析療法を受けている期間中継続して摂取するのがより好ましい。
【0037】
本発明の別の態様として、上記式(1)で表される酸化型補酵素Q10の有効量を、透析患者に投与する工程を含む、QOLの改善方法が挙げられる。定義や有効量は上記に述べたとおりである。
【実施例】
【0038】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
透析患者30名に、補酵素Q10を100mg含有するソフトカプセルを1日1カプセル、夕食後に3ヶ月間継続して摂取させ、QOLに関する9項目について試験した。事前調査の結果、治験者がよくないと感じている項目を選択し、3ヶ月後にそれぞれの項目について、改善の有無を評価した。その結果を表1にまとめた。
【0039】
【表1】

【0040】
補酵素Q10摂取前に不良であった項目のうち「起床の状態」、「食欲」、「透析後の疲れ」において、摂取後に半数以上の被験者が改善を認めた。特に透析後の疲れの改善は、透析患者のQOLが改善した事を示している。
また、「疲労感」、「透析中の低血圧」、「透析後の脱力感(ふらつき)」、「関節などの痛み、頭痛」の項目では、30〜50%の被験者において改善が認められた。
「かゆみ」(24%)および「便秘」(5%)においても改善が認められた。
これらの結果、透析に起因する不快事象が補酵素Q10を摂取することにより軽減出来ることが明らかになった。
【0041】
(製剤例1) (ソフトカプセル剤)
コーン油を50℃に加温し、同温度で溶融した酸化型補酵素Q10を加えて溶解した。これを常法によりソフトカプセル化した。
酸化型補酵素Q10 50重量部
コーン油 300重量部
ビタミンE 120重量部
【0042】
(製剤例2)(錠剤)
酸化型補酵素Q10をエタノールに溶解し、これを微結晶セルロースに吸着させた後、減圧下で乾燥した。これにコーンスターチ、乳糖、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ステアリン酸マグネシウムを混合し、次いでポリビニルピロリドンの水溶液を結合剤として加えて常法により顆粒化した。これに滑沢剤としてタルクを加えて混合した後、錠剤に打錠した。
酸化型補酵素Q10 20重量部
クエン酸 10重量部
コーンスターチ 25重量部
乳糖 15重量部
カルボキシメチルセルロースカルシウム 10重量部
微結晶セルロース 40重量部
ポリビニルピロリドン 5重量部
ステアリン酸マグネシウム 3重量部
タルク 10重量部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1);
【化1】


で表される酸化型補酵素Q10を含有することを特徴とする、透析患者のクオリティオブライフ改善剤。
【請求項2】
クオリティオブライフの改善が、透析治療中の不快事象の軽減、腎疾患治療剤に起因する副作用の軽減、および腎疾患に由来する異常状態の改善からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の改善剤。
【請求項3】
さらに栄養補助成分および/または健康食品素材を含有する、請求項1または2に記載の改善剤。
【請求項4】
栄養補助成分が、アミノ酸、金属イオン、糖類、蛋白質類、脂肪酸類、ビタミン類、ビタミンB誘導体、テアニン、γ−アミノ酪酸、アンセリン、大豆ペプチド、チオレドキシン、小麦グルテン加水分解物、グルタミン、ミルクペプチド、ω−3脂肪酸、ホスファチジルセリン、アスタキサンチン、ピクノジェノール、フラバンジェノール、クレアチン、カルニチン、α−リポ酸、ポリフェノール類、緑茶カテキン、サポニン、イチョウ葉エキス、セントジョーンズワート、羅布麻エキス、エゾウコギ、ワサビ、N−アセチルグルコサミンおよびリグナン類からなる群より選択される少なくとも1種である請求項3に記載の改善剤。
【請求項5】
健康食品素材が、ハーブ類、生薬類およびきのこ類ならびにそれらの抽出物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項3に記載の改善剤。
【請求項6】
さらに抗酸化物質および/または抗酸化酵素を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の改善剤。
【請求項7】
抗酸化物質がビタミンE、ビタミンE誘導体、ビタミンC、ビタミンC誘導体、リコペン、ビタミンA、カロテノイド類、ビタミンB、ビタミンB誘導体、フラボノイド類、グルタチオンおよびセレンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の改善剤。
【請求項8】
抗酸化酵素がスーパーオキサイドディスムターゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ、グルタチオン還元酵素、カタラーゼおよびアスコルビン酸ペルオキシダーゼからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の改善剤。
【請求項9】
食品、健康食品、栄養補助食品、サプリメント、医薬品または医薬部外品である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の改善剤。
【請求項10】
下記式(1);
【化2】


で表される酸化型補酵素Q10の有効量を、透析患者に投与する工程を含む、クオリティオブライフの改善方法。
【請求項11】
クオリティオブライフの改善が、透析治療中の不快事象の軽減、腎疾患治療剤に起因する副作用の軽減、または腎疾患に由来する異常状態の改善である、請求項10に記載の方法。

【公開番号】特開2009−179592(P2009−179592A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−19707(P2008−19707)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【出願人】(507219686)静岡県公立大学法人 (63)
【Fターム(参考)】