RFタグ通信用アンテナ装置およびRFタグリーダライタ
【課題】1つまたは複数の不特定のRFタグとの一括通信が可能であるとともに、1つまたは複数の特定のRFタグとの選択通信において、当該RFタグとより確実に通信を行うことができるRFタグ通信用アンテナ技術を提供する。
【解決手段】平板状の放射素子と、前記放射素子を収容し、前記放射素子にて発生する電界の電界強度が最も高くなる領域に対応する位置に標識部を有するアンテナ筐体と、を備える。
【解決手段】平板状の放射素子と、前記放射素子を収容し、前記放射素子にて発生する電界の電界強度が最も高くなる領域に対応する位置に標識部を有するアンテナ筐体と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触でRFタグと通信する、RFタグリーダライタおよびそのアンテナに関し、特に、不特定のRFタグとの一括的な通信および特定のRFタグとの選択的な通信を行うことができるRFタグ通信用アンテナ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)システムが注目され、例えば流通分野などにおいて導入が進んでいる。RFIDシステムは、ICチップとアンテナから成り、物品に付されるRFタグ(無線タグ、RFIDタグとも称される)と、該RFタグのICチップ内のメモリに記憶されている情報を非接触で読み取るとともに、該RFタグのICチップ内のメモリに情報を非接触で書込むRFタグリーダライタ(以下、単にリーダライタとも称す)とから構成される。
【0003】
RFIDシステムにおける処理としては、例えば、店舗などでの棚卸業務における、複数のRFタグからの一括での情報読取処理が挙げられる(以下、一括読取と称す)。このとき、リーダライタは、数mの距離が離れた範囲に電波を放射し、複数の商品にそれぞれ付された不特定のRFタグと通信を実行して、各RFタグに記憶されている情報を一括的に読み取る。また、RFIDシステムにおける他の処理としては、1つまたは複数の特定のRFタグに対する読み取り、および書込み処理が挙げられる(以下、選択読取、および選択書込みと称す。また、これらを総称して選択通信と称す)。このとき、リーダライタは、特定のRFタグから選択的に情報を読み取り、または該RFタグに対し、選択的に情報の書込みを実施する。
【0004】
ここで、店舗などにおいては、周辺にRFタグが付された商品が多数存在する環境での選択書込み処理等が行われる場合がある。そして、このような環境においては、周辺のRFタグとの間で誤って通信が行われた結果、使用者の所望するRFタグとは異なるRFタグに情報が書込まれるなどの事態が生じ得る。よって、従来において、使用者は、一括的読み取り用のリーダライタと、該一括読取用リーダライタよりも電波の送信出力が小さく、指向性の範囲も狭い選択通信用リーダライタとを、業務に応じて使い分ける必要があった。また、選択通信を行う場合には、使用者は、リーダライタのアンテナ装置周辺から、通信対象でないRFタグを遠ざけるなどの処置を講じる必要があった。
【0005】
そのため、周囲のRFタグとの一括通信(一括読取のほか、不特定のRFタグに対し、一括的に情報を書込む場合も含む)が可能であるとともに、選択通信を実施する場合にあっては使用者の所望する特定のRFタグと通信可能とするための技術が提案されている(例えば特許文献1)。具体的には、特許文献1では、リーダライタが備えるアンテナ装置において、一括通信用と選択通信用の、指向性の異なる2つのアンテナを備える構成とすることが提案されている。また、特許文献1では、通信の態様に応じて、アンテナの角度を調整して放射される電波の指向性を変化させるとともに、該アンテナ角度の変化に応じて電波の送信出力を変化させることも提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術による場合でも、使用者はアンテナ装置周辺から通信対象でないRFタグを遠ざける必要があるが、例えば作業の迅速性が求められる場合には当該処置は必ずしもとれないことがある。また、UHF帯や2.4GHz帯などの電波方式が用いられている場合には、周辺の環境や信号の変動により、アンテナ装置から一定の距離を空けたとしても通信対象でないRFタグとの通信が行われることがあった。
【0007】
また、以上のような原因から読取や書込みに失敗した場合、使用者はその処理をやり直す必要があるが、誤って読取や書込みを行ったRFタグを特定するのは容易ではない。特に、書込みが行われる前のRFタグは、一般に製造メーカーで暫定で同じIDが付与されており、やり直し作業にはさらに手間が掛かる。
【0008】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、1つまたは複数の不特定のRFタグとの一括通信が可能であるとともに、1つまたは複数の特定のRFタグとの選択通信において、当該RFタグとより確実に通信を行うことができるRFタグ通信用アンテナ技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、平板状の放射素子と、前記放射素子を収容し、前記放射素子にて発生する電界の電界強度が最も高くなる領域に対応する位置に標識部を有するアンテナ筐体と、を備えるRFタグ通信用アンテナ装置に関する。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記RFタグ通信用アンテナ装置と、放射素子から放射される電波の送信出力を制御する送信出力制御部と、を備えるRFタグリーダライタに関する。
【発明の効果】
【0011】
以上に詳述したように、本発明によれば、1つまたは複数の不特定のRFタグとの一括通信が可能であるとともに、1つまたは複数の特定のRFタグとの選択通信において当該RFタグとより確実に通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態のRFタグリーダライタの斜視図である。
【図2】第1の実施形態のRFタグリーダライタのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態のRFタグリーダライタが有する無線部の回路構成図である。
【図4】図1のA−A’線におけるアンテナ装置の断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る放射素子および給電点の平面図である。
【図6】第1の実施形態における、電界強度の分布を示すためのグラフである。
【図7】第1の実施形態における電界強度の分布を示すためのグラフである。
【図8】第1の実施形態における、RFタグとの通信に係る処理フローを示すための図である。
【図9】第1の実施形態における、処理指定画面の例示図である。
【図10】第1の実施形態における、結果通知画面の例示図である。
【図11】第1の実施形態における、RFタグ配置指定画面の例示図である。
【図12】第1の実施形態における、結果通知画面の例示図である。
【図13】第1の実施形態における、結果通知画面の例示図である。
【図14】第2の実施形態に係る、制限部材が装着されたアンテナ装置の斜視図である。
【図15】他の実施形態に係る、アンテナ装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、RFタグから読取、またはRFタグに書込みされる情報として、識別IDを例に挙げて説明する。また、一括通信として、例えば棚卸などの業務で利用される一括読取を例に挙げて説明する。
【0014】
図1は、第1の実施形態による、RFタグリーダライタ100の概要を示す斜視図である。第1の実施形態のリーダライタ100は、アンテナ装置1と、リーダライタ本体30とから構成されている。アンテナ装置1とリーダライタ本体30とは、同軸ケーブル40で接続されている。また、アンテナ装置10は、アンテナ筐体12と、筐体内部に収容されるパッチアンテナ14とを備える。リーダライタ100は、パッチアンテナから放射される電波を介して、RFタグ(不図示)と通信を行う。
【0015】
また、第1の実施形態において、アンテナ装置の筐体12の外面には、標識部16が設けられている。そして、第1の実施形態においては、リーダライタ100は、標識部16が示す領域でのみRFタグとの通信が可能である、選択読取または選択書込みに係る通信モードと、第1の通信モードよりも広い範囲でRFタグとの通信が可能な一括読取に係る通信モードとを有する。
【0016】
まず、リーダライタ本体30が備えるハードウェア構成について説明する。図2に示すように、リーダライタ本体30は、制御部31と、無線部33と、入力部35と、表示部37と、インターフェース部39と、を有する。また、バッテリおよびその充放電を制御する図1に示す電源部32により、各ハードウェアおよびアンテナ装置10へ電流が供給される。したがって、第1の実施形態のリーダライタ100は、携帯型リーダライタとして構成されている。
【0017】
制御部31は、使用者からの入力に基づき、RFタグとの通信や、ネットワークを通じてのPC(Personal Computer, 不図示)などの外部機器との通信など、後述する記憶部311に記憶されているプログラムを実行することにより、リーダライタ100における各種処理を行う役割を有している。例えば、後述するインターフェース部39を介してPCから取得されたり、使用者から後述する入力部35を介して入力された識別IDがアンテナ装置10から電波を介してRFタグに送出されるように、通信プロトコルに従って無線部33を制御する。また、制御部31は、以下に説明する記憶部311と、送信出力制御部315とを有する。
【0018】
記憶部311は、取得した識別IDや、該識別IDを電波を介して送信したりするための通信プロトコル(例えば、ISO18000−6に準拠したRFタグの通信プロトコル)のほか、後述する送信出力制御部311が用いる、一括読取、選択読取、選択書込みのいずれかの処理の形態に対応した送信出力の大きさについての情報である、出力情報が記憶されている。
【0019】
送信出力制御部315は、記憶部311に記憶されている送信出力情報に基づき、該送信出力が示す送信出力でアンテナ装置から電波が放射されるように、後述する無線部33を制御する。
【0020】
ここで、第1の実施形態において、送信出力制御部315は、選択読取および選択書込みに係る出力情報(選択読取出力情報および選択書込み出力情報)に基づき後述する無線部33を制御するときは、アンテナ筐体12に設けられた標識部16が示す領域に位置するRFタグとのみ通信可能である送信出力での電波をアンテナ装置10から放射させる。また、一括読取に係る一括読取出力情報に基づき無線部33を制御するとき、送信出力制御部311は、選択読取または選択書込みのときよりも大きい送信出力の電波をアンテナ装置10から放射させる。
【0021】
すなわち、第1の実施形態においては、送信出力制御部311が、選択読取および選択書込みに係る通信モードと、一括読取に係る通信モードとの切り換えを実施している。言い換えれば、送信出力制御部は、標識部が示す領域に位置するRFタグとのみ通信可能である送信出力での電波を放射させる第1の出力モードと、第1の出力モードよりも大きな送信出力での電波を放射させる第2の出力モードとを切り替え実行可能である。
【0022】
なお、第1の実施形態においておける制御部31は、具体的には、リーダライタ本体30に実装されるCPU、RAM、ROMにより構成することができる。
【0023】
また、送信出力の好適な値は、一括読取や選択通信などの処理の態様のほか、RFタグの種類、処理を行う場所の通信環境(例えば、壁の材質、RFタグが載置されている棚の材質、RFタグが付された物品の材質、RFタグの密集度など)に応じて変化する。そのため、送信出力が各処理に対して予め設定されている場合には、第1の実施形態のように、1つの処理に対して複数の出力情報を記憶されていることが、より好適な送信出力の設定が可能となるため、好ましい。第1の実施形態においては、一括読取を例に挙げて説明すると、一括読取出力情報A、B,およびCの、異なる送信出力を示す3種類の出力情報が記憶されている。
【0024】
無線部33は、アンテナ装置10を介してRFタグと通信するための機能を備えているハードウェアである。無線部33の詳細な回路構成図を図3に示す。
【0025】
ここで、RFタグがバッテリを持たないパッシブタグの場合には、無線部33は、先ず、無変調キャリアをパワーアンプ331で増幅して、方向性結合器332を介してアンテナから電磁波を出力し、RFタグを起動させる。RFタグにデータを送信する場合には、通信プロトコルに従い符号化した信号について振幅変調器333にて振幅変調を行った後にパワーアンプ331で増幅し、次いで方向性結合器332を介してアンテナから電磁波を出力することにより、送信する。また、RFタグから信号を受信する時には、リーダライタ100から無変調キャリアを送信している状態で、RFタグがアンテナ端のインピーダンスを制御(バックスキャッタ)し、これによって反射状態が変わり、これをリーダライタ100のアンテナ装置で検出する。受信した電磁波信号は、方向性結合器332を介して直交復調され、同期クロック生成部I(334)およびQ(335)にて同期クロックを生成し、プリアンブル検出部I(336)およびQ(337)にて予め決められたプリアンブルを検出することによりデータの先頭を検出し、複合部I(338)およびQ(339)にて復号して受信データを得る。また、誤り検出符号によって、エラー検出部I(341)およびQ(342)にて誤りの有無を検出するようになっている。図3の場合には、直交復調の同相成分での復調と直交成分での復調のどちらかで誤りがなければ正しくデータを受信したと判定する構成である。また、制御部31の送信出力制御部からの制御(具体的には、送信出力を設定するための送信出力設定信号の送出)により、パワーアンプ331にて送信出力が処理の形態に合わせて設定できるように構成されている。
【0026】
入力部35は、該入力部35を用いて使用者がリーダライタ100に指示を入力するためのハードウェアであり、具体的には押下により指示の入力が可能なボタン(キー)や、タッチパッドなどで構成することができる。
【0027】
表示部(ディスプレイ)37は、使用者にRFタグとの通信結果を示したり、指示入力を促すために用いることができるハードウェアであり、具体的にはLCD(Liquid crystal display)等とすることができる。なお、表示部37をタッチパネルセンサを搭載したグラフィカルディスプレイとして構成し、入力部35と表示部37とを一体化させてもよい。
【0028】
インターフェース部39は、ネットワークを介し、識別IDが記憶されているPCなどの外部機器と通信を行うためのハードウェアである。
【0029】
次に、本実施形態のアンテナ装置10について説明する。
【0030】
図1に示すように、アンテナ装置10は、略矩形のアンテナ筐体12と、該アンテナ筐体12に収容されるパッチアンテナ14とを備える。なお、第1の実施形態においてはアンテナ筐体12には把持部材19が設けられており、使用者が携帯しながらリーダライタ100を使用する際に、アンテナ装置10を把持しやすいように構成されている。しかしながら、当該把持部19を設けない構成とすることも、もちろん可能である。
【0031】
第1の実施形態において、パッチアンテナ14は、公知の手法に従い構成することができ、後述するようにアンテナ筐体12の標識部16でのみRFタグの通信が可能であるとともに、送信出力を調整することで、例えば数m離れた距離に放射された電波が届くようなアンテナ利得を有するように構成される。
【0032】
ここで、第1の実施形態のパッチアンテナ14の構成の理解をより容易とするために、図4に、図1のAA’線に沿ったアンテナ装置10の断面図を示す。図4に示すように、アンテナ筐体12に収容されるパッチアンテナ14は、誘電体層141と、誘電体層141の一方の主面に対向する平板状の地導体143と、誘電体層143の他方の側の主面に対向する、平板状の放射素子145とを備える。地導体143および放射素子145は、例えばアルミニウムや銅などの任意の導電性材料を用いて形成することができ、また、誘電体層141は、例えばセラミックスなどの誘電性材料を用いて形成することができるほか、空気層とすることもできる。
【0033】
また、図4に示すように、地導体143および誘電体層141においては貫通穴42が形成されており、リーダライタ本体30に繋がる同軸ケーブル40が該貫通穴42に挿通されている。この同軸ケーブル40の外部導体(GND)は地導体143と接続し、また、内部導体(真線)は放射素子145の誘電体層141と対向する面において該放射素子145と電気的に接続されている。そして、該放射素子141との接触点において給電点44が形成され、該給電点44を介して放射素子145に電流が供給されている。
【0034】
ここで、第1の実施形態においては、図5に示すように、放射素子145は平面視にて矩形状の形状を有しており、該矩形状の平板の一辺に、中央に向かって凹むように切り欠き部15(スリット)が形成されている。また、給電点44は、平板上の切り欠き部15が延びる方向における略中央に位置し且つ平板上の切り欠き部15が延びる方向と直交する方向において平板の中央位置M0とは異なる位置に配置されている。
【0035】
このように切り欠き部15と給電点44を配置することにより、電波の送信出力を調整すれば、切り欠き部の先端近傍(切り欠き部の所定箇所)において、電界強度が所定の閾値tを越える領域、言い換えれば電界強度が極大となる領域を生じさせることができる。当該領域は、従来の選択通信に用いられていた電波の伝播する領域よりも小さく、したがって当該領域にてRFタグとの通信を行うとすることにより、より確実なRFタグとの選択通信が可能となる。
【0036】
パッチアンテナにおいては、給電点44を平面視における放射素子の中心軸(例えば、図5におけるX0−X0’線、およびY0−Y0’線の放射素子上の部分が相当)上の中央位置M0とは異なる位置に形成すると、該中心軸と平行な外周近傍で電流が多く流れることが知られている。また、該外周において放射素子中央に向かって切り欠き部を設けると、該切り欠き部の放射素子中央に最も近接する端部(以下単に切り欠き部先端という)近傍で電流が多く流れることが知られている。以上の作用効果は、このようなパッチアンテナの特性を利用し、送信出力を変化させることでRFタグとの通信可能な範囲を調節することにより、得られている。
【0037】
第1の実施形態においては、図5に示すように、一方の中心軸に相当するX0−X0’線に沿って中央に向かうように1辺に切り欠き部15を形成し、また、他方の中心軸に相当するY0−Y0’線上の、中央位置とは異なる位置に給電点44を設けている。第1の実施形態におけるX0−X0’線およびY1−Y1’線に沿った電界強度分布を、図6および図7に示す。図5、図6および図7から理解されるように、切り欠き部15および給電点44を以上説明した配置で設けたことにより、第1の実施形態においては、切り欠き部15先端近傍において、電界強度が所定の閾値t以上となっている。さらに、X0−X0’線およびY1−Y1’線の交点M1上において、電界強度が最大となっている。
【0038】
なお、第1の実施形態においては、給電点44および切り欠き部15を図5に示す位置に設けているが、これらの位置は、以上説明した理由から当業者が公知技術に基づき適宜設定可能である。すなわち、切り欠き部15と給電点44の位置は図5で示す位置に限定されず、他の位置とすることができる。また、同様に、切り欠き部15の数や大きさ(寸法)についても、公知技術に基づき、当業者が適宜設定できる。
【0039】
また、電界強度の閾値tについては、使用されるRFタグの種類等の応じて、当業者が適宜設定可能である。
【0040】
次に、アンテナ筐体12について説明する。第1の実施形態において、アンテナ筐体12は、パッチアンテナ14を収容するのに十分な容積を有する、矩形状の成型体として構成されている。また、アンテナ筐体12にはその外面に楕円形上の標識部が設けられており、該楕円は、内部に収容されるパッチアンテナ14の放射素子145に設けられている、切り欠き部15の先端近傍に対応している。言い換えれば、標識部16は、切り欠き部15の先端近傍に対応する位置を示している。
【0041】
ここで、上述のとおり、第1の実施形態においては、電波の送信出力を調整することにより、切り欠き部15先端近傍のみにて電界強度が所定の閾値以上となるようにすることができ、その結果、該先端近傍のみにてRFタグとの通信が可能であるようにすることができる。よって、切り欠き部15先端部近傍に対応する位置を示す標識部16をアンテナ筐体12に設けることで、使用者は、選択通信の際のRFタグとの通信可能な領域を容易に認識することができる。
【0042】
次に、第1の実施形態のリーダライタ100による、一括読取、選択読取、または選択書込みに係る、RFタグとの通信の処理フローを、図8を用いて説明する。なお、以下の説明においては、各処理における送信出力の大きさ(すなわち、各処理において送信出力制御部311がいずれの出力情報に基づき送信出力を制御するか)、および選択通信の際に通信を実行することになっているRFタグの数については、リーダライタ本体30に予め設定されているものとする。
【0043】
まず、Act101において、制御部31は、実行する処理が一括読取、選択読取、または選択書込みのいずれであるかを示す処理指定情報を、使用者からの入力に基づき、取得する。具体的には、制御部31は、図9に示すような処理指定画面51を構成し、表示部37に表示させる。使用者は、表示部37に表示された処理指定画面51に基づき、所望する処理を入力部35を介して指定する。制御部31は、当該入力部35を介した使用者からの指定により、処理指定情報を取得する。
【0044】
次に、Act102において、制御部31は、取得した処理指定情報が一括読取を指定しているか、判定する。一括読取を指定している場合、Act103において、制御部31の送信出力制御部315は、記憶部311に記憶されている一括読取出力情報に基づき、無線部33に対し送信出力の設定を実施する。
【0045】
次に、Act103において、制御部31は、無線部33を制御してアンテナ装置10から一括読取に係る電波を放射させて一括読取を実施し、RFタグにて保持されている情報(識別ID)を取得する。そして、Act105において、制御部31は、処理が完了したことを通知する処理結果画面53(図10)を構成して表示部37に表示させ、Act101に戻る。なお、実行された処理が当該一括読取、および後述の選択読取である場合には、制御部31は、処理の完了とともに取得した識別IDを処理結果画面にて表示し、使用者に通知する。また、識別IDが取得できなかった場合は、図10に示した内容に代えて、RFタグとの通信に失敗したことを処理結果画面53にて表示して、使用者に通知する。
【0046】
一方、Act102において、処理指定情報が一括読取を指定していないと判定される場合、Act106に進み、制御部31は、処理指定情報が選択読取を指定しているか、判定する。選択読取を指定している場合、Act107に進み、制御部31の送信出力設定部は、記憶部315に記憶されている選択読取出力情報に基づき、無線部33に対し送信出力の設定を実施する。
【0047】
次に、Act108において、制御部31は、RFタグの標識部16が示す領域への移動を促すとともに読取開始に関する使用者からの指示を取得するための図11に示すような処理開始画面55を構成して表示部37に表示させる。次に、Act109に進み、制御部31は、読取開始に関する情報を取得したか否か、判定する。使用者がRFタグをアンテナ筐体上の標識部16が示す領域(本実施形態においては、楕円内部)に配置し、読取開始の指示を入力部35を介して入力したとき、制御部31は、読取開始に関する指示を取得し、Act110に進む。Act110において、制御部31は、無線部33を介してアンテナ装置10から選択読取に係る電波を放射させ、選択読取処理を実施し、RFタグに保持されている識別IDを取得する。そして、Act111において、制御部31は、処理完了の通知とともに取得した識別IDを通知する処理結果画面53を表示部37に表示させ(図10)、Act101に戻る。
【0048】
ここで、選択読取を実行した結果、使用者が予め設定したRFタグの数よりも少ない、または多い数のRFタグからの読取が行われる場合がある。このとき、制御部31は、設定したときよりも読取が行われたRFタグの数が少ないときは図12に示すような処理結果画面57を構成して表示部37に表示させ、RFタグの移動または送信出力設定を大きくすることを使用者に促す。一方、制御部31は、設定したときよりも読取が行われたRFタグの数が多いときは図13に示すような処理結果画面59を構成して表示部37に表示させ、送信出力設定を小さくすることを使用者に促す。
【0049】
また、Act106において、処理指定情報が選択読取を指定しないと判定されるとき、制御部31は、処理指定情報が選択書込みを指定していると判定する。そして、Act112に進み、制御部31の送信出力設定部315は、記憶部311に記憶されている選択読取出力情報に基づき、無線部33に対し送信出力の設定を実施する。
【0050】
次に、Act113において、制御部31は、RFタグの標識部16が示す領域への移動を促すとともに読取開始に関する使用者からの指示を取得するための図11に示すような処理開始画面を構成して表示部37に表示させる。次に、Act114に進み、制御部31は、読取開始に関する指示を取得したか否か、判定する。使用者がRFタグをアンテナ筐体上の標識部16が示す領域に配置し、読取開始指示を入力部35を介して入力したとき、制御部31は、読取開始に関する指示を取得してAct115に進む。Act115において、制御部31は、無線部33を介してアンテナ装置10から選択書込みに係る電波を放射させ、選択書込みを実施し、RFタグに識別IDを付与する。そして、Act116において、制御部31は、書込みが完了したことをRFタグからのレスポンスに基づき確認し、読取処理の場合と同様に処理結果画面53を構成して表示部37に表示させる。
【0051】
ここで、選択書込みを実行した結果、処理指定情報指定の際に使用者が設定したRFタグの数よりも少ない、または多い数のRFタグに対し書込みが行われる場合がある。このとき、制御部31は、設定した数よりも少ないRFタグに書込みが行われたときは図12に示すような処理結果画面57を構成して表示部37に表示させ、RFタグの移動または送信出力設定を大きくすることを使用者に促す。一方、制御部31は、設定した数より多くのRFタグに書込みが行われたときには、図13に示すような処理結果画面59を構成して表示部37に表示させ、送信出力設定を小さくすることを使用者に促す。
【0052】
以上、第1の実施形態のリーダライタ100は、アンテナ装置10から放射される電波の送信出力を変化させることにより、一括読取と、選択通信の両方の処理を行うことができる。また、送信出力を制御することにより、電界強度が所定の閾値以上になる領域を標識部が示す領域(放射素子に設けられたスリット先端の近傍)とすることができるため、選択通信の際に、使用者が所望するRFタグとの通信をより確実に実行することができる。
【0053】
(第2の実施形態)
第2の実施形態において、リーダライタ100は、第1の実施形態にて説明した構成に加えて、図14に示すようにアンテナ装置10に装着して用いる、制限部材60を備える。該制限部材60をアンテナ装置10に装着することにより、標識部16が示す領域以外の領域からの電波の筐体外への放射を、標識部16が示す領域からの電波の筐体外への放射よりも制限することができる。当該制限部材60は、例えば、図14に示すように、金属を材料として構成し、標識部16が示す位置近傍に開口部62を設けた成型体とすることができる。また、他の態様とすることももちろん可能であり、例えば装着時にアンテナ筐体外面と対向する面が電波吸収処理(例えば電波吸収材の貼付)が施されたプラスチックを材料として構成し、標識部16が示す位置近傍に対応する位置のみ開口部を設けるか、未処理のプラスチックで構成する成型体とすることができる。
【0054】
第2の実施形態において、制限部材60は、アンテナ装置10(アンテナ筐体12)の外面から離脱させることにより、標識部16が示す領域以外の領域からの筐体12外への電波の放射を制限する位置から制限しない位置に退避可能である構成としている。しかしながらアンテナ装置10からの制限部材60の退避については、アンテナ筐体表面からの脱離に限定されず、他の態様とすることも可能である。例えば、制限部材60をヒンジを介してアンテナ筐体12に連結させ、電波放射を制限する位置から制限しない位置に移動可能とする構成としてもよい(本明細書において、退避とは、位置の移動も含む概念である)。
【0055】
(その他の実施形態)
以上、本発明について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の実施形態とすることも可能である。
【0056】
例えば、第1の実施形態において、アンテナ装置10の放射素子145は矩形であるが、その輪郭線の一部が中央に向けて凹むように延びる切り欠き部が形成されている平板状である限り特に限定されず、他の形状とすることもできる。この場合、給電点44は、切り欠き部15先端の近傍にて電流が多く流れる位置、言い換えれば送信出力を調整したときに切り欠き部15先端近傍にて電界強度が所定の閾値以上とすることができる位置に配置される。
【0057】
また、第1の実施形態において、標識部16は、アンテナ筐体12の外面に印刷された楕円形の模様としているがこれに限定されるものではない。例えば、筐体12外面にくぼみや突起を形成させたり、シールを貼り付けたりすることにより設けることができる。また、その形状も特に限定されず、例えば図15に示すように矢印とすることができる。図15においては、破線で表した部分が切り欠き部15先端近傍に対応した位置となる。なお、この場合、矢印が示す領域において電界強度が閾値t以上となっていればよく、矢印自体の部分の領域においては電波が閾値以上となっていなくともよい。
【0058】
さらに、第1の実施形態において、送信出力を制御するための出力情報は、リーダライタ本体30内のROMやRAMにより構成される記憶部311に記憶されている。しかしながら、これに限定されず、外部機器の記憶部に記憶され、必要に応じてインターフェース部39を介して制御部31が取得するようにしてもよい。
【0059】
さらにまた、第1の実施形態において、アンテナ装置10(アンテナ筐体12)とリーダライタ本体30とは分離して構成されているが、2つの筐体(アンテナ筐体12と、リーダライタ本体30の筐体)が連結されたり、1つの筐体内部のそれぞれの区画に、パッチアンテナ14とリーダライタ本体30のハードウェアとが収納されたりするようにして、一体化されていてもよい。
【0060】
さらにまた、第1の実施形態においては、予め記憶されている出力情報に基づき送信出力を設定しているが、使用者が入力部35を介して送信出力を設定するようにしてもよい。
【0061】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0062】
10 アンテナ装置、12 アンテナ筐体、14 パッチアンテナ、15 切り欠き部、16 標識部、19保持部材、30 リーダライタ本体、31 制御部、33 無線部、35 入力部、37 表示部、40 同軸ケーブル、44 給電点、60 制限部材、100 RFタグリーダライタ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開2007−110611号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触でRFタグと通信する、RFタグリーダライタおよびそのアンテナに関し、特に、不特定のRFタグとの一括的な通信および特定のRFタグとの選択的な通信を行うことができるRFタグ通信用アンテナ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID(Radio Frequency Identification)システムが注目され、例えば流通分野などにおいて導入が進んでいる。RFIDシステムは、ICチップとアンテナから成り、物品に付されるRFタグ(無線タグ、RFIDタグとも称される)と、該RFタグのICチップ内のメモリに記憶されている情報を非接触で読み取るとともに、該RFタグのICチップ内のメモリに情報を非接触で書込むRFタグリーダライタ(以下、単にリーダライタとも称す)とから構成される。
【0003】
RFIDシステムにおける処理としては、例えば、店舗などでの棚卸業務における、複数のRFタグからの一括での情報読取処理が挙げられる(以下、一括読取と称す)。このとき、リーダライタは、数mの距離が離れた範囲に電波を放射し、複数の商品にそれぞれ付された不特定のRFタグと通信を実行して、各RFタグに記憶されている情報を一括的に読み取る。また、RFIDシステムにおける他の処理としては、1つまたは複数の特定のRFタグに対する読み取り、および書込み処理が挙げられる(以下、選択読取、および選択書込みと称す。また、これらを総称して選択通信と称す)。このとき、リーダライタは、特定のRFタグから選択的に情報を読み取り、または該RFタグに対し、選択的に情報の書込みを実施する。
【0004】
ここで、店舗などにおいては、周辺にRFタグが付された商品が多数存在する環境での選択書込み処理等が行われる場合がある。そして、このような環境においては、周辺のRFタグとの間で誤って通信が行われた結果、使用者の所望するRFタグとは異なるRFタグに情報が書込まれるなどの事態が生じ得る。よって、従来において、使用者は、一括的読み取り用のリーダライタと、該一括読取用リーダライタよりも電波の送信出力が小さく、指向性の範囲も狭い選択通信用リーダライタとを、業務に応じて使い分ける必要があった。また、選択通信を行う場合には、使用者は、リーダライタのアンテナ装置周辺から、通信対象でないRFタグを遠ざけるなどの処置を講じる必要があった。
【0005】
そのため、周囲のRFタグとの一括通信(一括読取のほか、不特定のRFタグに対し、一括的に情報を書込む場合も含む)が可能であるとともに、選択通信を実施する場合にあっては使用者の所望する特定のRFタグと通信可能とするための技術が提案されている(例えば特許文献1)。具体的には、特許文献1では、リーダライタが備えるアンテナ装置において、一括通信用と選択通信用の、指向性の異なる2つのアンテナを備える構成とすることが提案されている。また、特許文献1では、通信の態様に応じて、アンテナの角度を調整して放射される電波の指向性を変化させるとともに、該アンテナ角度の変化に応じて電波の送信出力を変化させることも提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術による場合でも、使用者はアンテナ装置周辺から通信対象でないRFタグを遠ざける必要があるが、例えば作業の迅速性が求められる場合には当該処置は必ずしもとれないことがある。また、UHF帯や2.4GHz帯などの電波方式が用いられている場合には、周辺の環境や信号の変動により、アンテナ装置から一定の距離を空けたとしても通信対象でないRFタグとの通信が行われることがあった。
【0007】
また、以上のような原因から読取や書込みに失敗した場合、使用者はその処理をやり直す必要があるが、誤って読取や書込みを行ったRFタグを特定するのは容易ではない。特に、書込みが行われる前のRFタグは、一般に製造メーカーで暫定で同じIDが付与されており、やり直し作業にはさらに手間が掛かる。
【0008】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、1つまたは複数の不特定のRFタグとの一括通信が可能であるとともに、1つまたは複数の特定のRFタグとの選択通信において、当該RFタグとより確実に通信を行うことができるRFタグ通信用アンテナ技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様は、平板状の放射素子と、前記放射素子を収容し、前記放射素子にて発生する電界の電界強度が最も高くなる領域に対応する位置に標識部を有するアンテナ筐体と、を備えるRFタグ通信用アンテナ装置に関する。
【0010】
また、本発明の一態様は、上記RFタグ通信用アンテナ装置と、放射素子から放射される電波の送信出力を制御する送信出力制御部と、を備えるRFタグリーダライタに関する。
【発明の効果】
【0011】
以上に詳述したように、本発明によれば、1つまたは複数の不特定のRFタグとの一括通信が可能であるとともに、1つまたは複数の特定のRFタグとの選択通信において当該RFタグとより確実に通信を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第1の実施形態のRFタグリーダライタの斜視図である。
【図2】第1の実施形態のRFタグリーダライタのハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態のRFタグリーダライタが有する無線部の回路構成図である。
【図4】図1のA−A’線におけるアンテナ装置の断面図である。
【図5】第1の実施形態に係る放射素子および給電点の平面図である。
【図6】第1の実施形態における、電界強度の分布を示すためのグラフである。
【図7】第1の実施形態における電界強度の分布を示すためのグラフである。
【図8】第1の実施形態における、RFタグとの通信に係る処理フローを示すための図である。
【図9】第1の実施形態における、処理指定画面の例示図である。
【図10】第1の実施形態における、結果通知画面の例示図である。
【図11】第1の実施形態における、RFタグ配置指定画面の例示図である。
【図12】第1の実施形態における、結果通知画面の例示図である。
【図13】第1の実施形態における、結果通知画面の例示図である。
【図14】第2の実施形態に係る、制限部材が装着されたアンテナ装置の斜視図である。
【図15】他の実施形態に係る、アンテナ装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明では、RFタグから読取、またはRFタグに書込みされる情報として、識別IDを例に挙げて説明する。また、一括通信として、例えば棚卸などの業務で利用される一括読取を例に挙げて説明する。
【0014】
図1は、第1の実施形態による、RFタグリーダライタ100の概要を示す斜視図である。第1の実施形態のリーダライタ100は、アンテナ装置1と、リーダライタ本体30とから構成されている。アンテナ装置1とリーダライタ本体30とは、同軸ケーブル40で接続されている。また、アンテナ装置10は、アンテナ筐体12と、筐体内部に収容されるパッチアンテナ14とを備える。リーダライタ100は、パッチアンテナから放射される電波を介して、RFタグ(不図示)と通信を行う。
【0015】
また、第1の実施形態において、アンテナ装置の筐体12の外面には、標識部16が設けられている。そして、第1の実施形態においては、リーダライタ100は、標識部16が示す領域でのみRFタグとの通信が可能である、選択読取または選択書込みに係る通信モードと、第1の通信モードよりも広い範囲でRFタグとの通信が可能な一括読取に係る通信モードとを有する。
【0016】
まず、リーダライタ本体30が備えるハードウェア構成について説明する。図2に示すように、リーダライタ本体30は、制御部31と、無線部33と、入力部35と、表示部37と、インターフェース部39と、を有する。また、バッテリおよびその充放電を制御する図1に示す電源部32により、各ハードウェアおよびアンテナ装置10へ電流が供給される。したがって、第1の実施形態のリーダライタ100は、携帯型リーダライタとして構成されている。
【0017】
制御部31は、使用者からの入力に基づき、RFタグとの通信や、ネットワークを通じてのPC(Personal Computer, 不図示)などの外部機器との通信など、後述する記憶部311に記憶されているプログラムを実行することにより、リーダライタ100における各種処理を行う役割を有している。例えば、後述するインターフェース部39を介してPCから取得されたり、使用者から後述する入力部35を介して入力された識別IDがアンテナ装置10から電波を介してRFタグに送出されるように、通信プロトコルに従って無線部33を制御する。また、制御部31は、以下に説明する記憶部311と、送信出力制御部315とを有する。
【0018】
記憶部311は、取得した識別IDや、該識別IDを電波を介して送信したりするための通信プロトコル(例えば、ISO18000−6に準拠したRFタグの通信プロトコル)のほか、後述する送信出力制御部311が用いる、一括読取、選択読取、選択書込みのいずれかの処理の形態に対応した送信出力の大きさについての情報である、出力情報が記憶されている。
【0019】
送信出力制御部315は、記憶部311に記憶されている送信出力情報に基づき、該送信出力が示す送信出力でアンテナ装置から電波が放射されるように、後述する無線部33を制御する。
【0020】
ここで、第1の実施形態において、送信出力制御部315は、選択読取および選択書込みに係る出力情報(選択読取出力情報および選択書込み出力情報)に基づき後述する無線部33を制御するときは、アンテナ筐体12に設けられた標識部16が示す領域に位置するRFタグとのみ通信可能である送信出力での電波をアンテナ装置10から放射させる。また、一括読取に係る一括読取出力情報に基づき無線部33を制御するとき、送信出力制御部311は、選択読取または選択書込みのときよりも大きい送信出力の電波をアンテナ装置10から放射させる。
【0021】
すなわち、第1の実施形態においては、送信出力制御部311が、選択読取および選択書込みに係る通信モードと、一括読取に係る通信モードとの切り換えを実施している。言い換えれば、送信出力制御部は、標識部が示す領域に位置するRFタグとのみ通信可能である送信出力での電波を放射させる第1の出力モードと、第1の出力モードよりも大きな送信出力での電波を放射させる第2の出力モードとを切り替え実行可能である。
【0022】
なお、第1の実施形態においておける制御部31は、具体的には、リーダライタ本体30に実装されるCPU、RAM、ROMにより構成することができる。
【0023】
また、送信出力の好適な値は、一括読取や選択通信などの処理の態様のほか、RFタグの種類、処理を行う場所の通信環境(例えば、壁の材質、RFタグが載置されている棚の材質、RFタグが付された物品の材質、RFタグの密集度など)に応じて変化する。そのため、送信出力が各処理に対して予め設定されている場合には、第1の実施形態のように、1つの処理に対して複数の出力情報を記憶されていることが、より好適な送信出力の設定が可能となるため、好ましい。第1の実施形態においては、一括読取を例に挙げて説明すると、一括読取出力情報A、B,およびCの、異なる送信出力を示す3種類の出力情報が記憶されている。
【0024】
無線部33は、アンテナ装置10を介してRFタグと通信するための機能を備えているハードウェアである。無線部33の詳細な回路構成図を図3に示す。
【0025】
ここで、RFタグがバッテリを持たないパッシブタグの場合には、無線部33は、先ず、無変調キャリアをパワーアンプ331で増幅して、方向性結合器332を介してアンテナから電磁波を出力し、RFタグを起動させる。RFタグにデータを送信する場合には、通信プロトコルに従い符号化した信号について振幅変調器333にて振幅変調を行った後にパワーアンプ331で増幅し、次いで方向性結合器332を介してアンテナから電磁波を出力することにより、送信する。また、RFタグから信号を受信する時には、リーダライタ100から無変調キャリアを送信している状態で、RFタグがアンテナ端のインピーダンスを制御(バックスキャッタ)し、これによって反射状態が変わり、これをリーダライタ100のアンテナ装置で検出する。受信した電磁波信号は、方向性結合器332を介して直交復調され、同期クロック生成部I(334)およびQ(335)にて同期クロックを生成し、プリアンブル検出部I(336)およびQ(337)にて予め決められたプリアンブルを検出することによりデータの先頭を検出し、複合部I(338)およびQ(339)にて復号して受信データを得る。また、誤り検出符号によって、エラー検出部I(341)およびQ(342)にて誤りの有無を検出するようになっている。図3の場合には、直交復調の同相成分での復調と直交成分での復調のどちらかで誤りがなければ正しくデータを受信したと判定する構成である。また、制御部31の送信出力制御部からの制御(具体的には、送信出力を設定するための送信出力設定信号の送出)により、パワーアンプ331にて送信出力が処理の形態に合わせて設定できるように構成されている。
【0026】
入力部35は、該入力部35を用いて使用者がリーダライタ100に指示を入力するためのハードウェアであり、具体的には押下により指示の入力が可能なボタン(キー)や、タッチパッドなどで構成することができる。
【0027】
表示部(ディスプレイ)37は、使用者にRFタグとの通信結果を示したり、指示入力を促すために用いることができるハードウェアであり、具体的にはLCD(Liquid crystal display)等とすることができる。なお、表示部37をタッチパネルセンサを搭載したグラフィカルディスプレイとして構成し、入力部35と表示部37とを一体化させてもよい。
【0028】
インターフェース部39は、ネットワークを介し、識別IDが記憶されているPCなどの外部機器と通信を行うためのハードウェアである。
【0029】
次に、本実施形態のアンテナ装置10について説明する。
【0030】
図1に示すように、アンテナ装置10は、略矩形のアンテナ筐体12と、該アンテナ筐体12に収容されるパッチアンテナ14とを備える。なお、第1の実施形態においてはアンテナ筐体12には把持部材19が設けられており、使用者が携帯しながらリーダライタ100を使用する際に、アンテナ装置10を把持しやすいように構成されている。しかしながら、当該把持部19を設けない構成とすることも、もちろん可能である。
【0031】
第1の実施形態において、パッチアンテナ14は、公知の手法に従い構成することができ、後述するようにアンテナ筐体12の標識部16でのみRFタグの通信が可能であるとともに、送信出力を調整することで、例えば数m離れた距離に放射された電波が届くようなアンテナ利得を有するように構成される。
【0032】
ここで、第1の実施形態のパッチアンテナ14の構成の理解をより容易とするために、図4に、図1のAA’線に沿ったアンテナ装置10の断面図を示す。図4に示すように、アンテナ筐体12に収容されるパッチアンテナ14は、誘電体層141と、誘電体層141の一方の主面に対向する平板状の地導体143と、誘電体層143の他方の側の主面に対向する、平板状の放射素子145とを備える。地導体143および放射素子145は、例えばアルミニウムや銅などの任意の導電性材料を用いて形成することができ、また、誘電体層141は、例えばセラミックスなどの誘電性材料を用いて形成することができるほか、空気層とすることもできる。
【0033】
また、図4に示すように、地導体143および誘電体層141においては貫通穴42が形成されており、リーダライタ本体30に繋がる同軸ケーブル40が該貫通穴42に挿通されている。この同軸ケーブル40の外部導体(GND)は地導体143と接続し、また、内部導体(真線)は放射素子145の誘電体層141と対向する面において該放射素子145と電気的に接続されている。そして、該放射素子141との接触点において給電点44が形成され、該給電点44を介して放射素子145に電流が供給されている。
【0034】
ここで、第1の実施形態においては、図5に示すように、放射素子145は平面視にて矩形状の形状を有しており、該矩形状の平板の一辺に、中央に向かって凹むように切り欠き部15(スリット)が形成されている。また、給電点44は、平板上の切り欠き部15が延びる方向における略中央に位置し且つ平板上の切り欠き部15が延びる方向と直交する方向において平板の中央位置M0とは異なる位置に配置されている。
【0035】
このように切り欠き部15と給電点44を配置することにより、電波の送信出力を調整すれば、切り欠き部の先端近傍(切り欠き部の所定箇所)において、電界強度が所定の閾値tを越える領域、言い換えれば電界強度が極大となる領域を生じさせることができる。当該領域は、従来の選択通信に用いられていた電波の伝播する領域よりも小さく、したがって当該領域にてRFタグとの通信を行うとすることにより、より確実なRFタグとの選択通信が可能となる。
【0036】
パッチアンテナにおいては、給電点44を平面視における放射素子の中心軸(例えば、図5におけるX0−X0’線、およびY0−Y0’線の放射素子上の部分が相当)上の中央位置M0とは異なる位置に形成すると、該中心軸と平行な外周近傍で電流が多く流れることが知られている。また、該外周において放射素子中央に向かって切り欠き部を設けると、該切り欠き部の放射素子中央に最も近接する端部(以下単に切り欠き部先端という)近傍で電流が多く流れることが知られている。以上の作用効果は、このようなパッチアンテナの特性を利用し、送信出力を変化させることでRFタグとの通信可能な範囲を調節することにより、得られている。
【0037】
第1の実施形態においては、図5に示すように、一方の中心軸に相当するX0−X0’線に沿って中央に向かうように1辺に切り欠き部15を形成し、また、他方の中心軸に相当するY0−Y0’線上の、中央位置とは異なる位置に給電点44を設けている。第1の実施形態におけるX0−X0’線およびY1−Y1’線に沿った電界強度分布を、図6および図7に示す。図5、図6および図7から理解されるように、切り欠き部15および給電点44を以上説明した配置で設けたことにより、第1の実施形態においては、切り欠き部15先端近傍において、電界強度が所定の閾値t以上となっている。さらに、X0−X0’線およびY1−Y1’線の交点M1上において、電界強度が最大となっている。
【0038】
なお、第1の実施形態においては、給電点44および切り欠き部15を図5に示す位置に設けているが、これらの位置は、以上説明した理由から当業者が公知技術に基づき適宜設定可能である。すなわち、切り欠き部15と給電点44の位置は図5で示す位置に限定されず、他の位置とすることができる。また、同様に、切り欠き部15の数や大きさ(寸法)についても、公知技術に基づき、当業者が適宜設定できる。
【0039】
また、電界強度の閾値tについては、使用されるRFタグの種類等の応じて、当業者が適宜設定可能である。
【0040】
次に、アンテナ筐体12について説明する。第1の実施形態において、アンテナ筐体12は、パッチアンテナ14を収容するのに十分な容積を有する、矩形状の成型体として構成されている。また、アンテナ筐体12にはその外面に楕円形上の標識部が設けられており、該楕円は、内部に収容されるパッチアンテナ14の放射素子145に設けられている、切り欠き部15の先端近傍に対応している。言い換えれば、標識部16は、切り欠き部15の先端近傍に対応する位置を示している。
【0041】
ここで、上述のとおり、第1の実施形態においては、電波の送信出力を調整することにより、切り欠き部15先端近傍のみにて電界強度が所定の閾値以上となるようにすることができ、その結果、該先端近傍のみにてRFタグとの通信が可能であるようにすることができる。よって、切り欠き部15先端部近傍に対応する位置を示す標識部16をアンテナ筐体12に設けることで、使用者は、選択通信の際のRFタグとの通信可能な領域を容易に認識することができる。
【0042】
次に、第1の実施形態のリーダライタ100による、一括読取、選択読取、または選択書込みに係る、RFタグとの通信の処理フローを、図8を用いて説明する。なお、以下の説明においては、各処理における送信出力の大きさ(すなわち、各処理において送信出力制御部311がいずれの出力情報に基づき送信出力を制御するか)、および選択通信の際に通信を実行することになっているRFタグの数については、リーダライタ本体30に予め設定されているものとする。
【0043】
まず、Act101において、制御部31は、実行する処理が一括読取、選択読取、または選択書込みのいずれであるかを示す処理指定情報を、使用者からの入力に基づき、取得する。具体的には、制御部31は、図9に示すような処理指定画面51を構成し、表示部37に表示させる。使用者は、表示部37に表示された処理指定画面51に基づき、所望する処理を入力部35を介して指定する。制御部31は、当該入力部35を介した使用者からの指定により、処理指定情報を取得する。
【0044】
次に、Act102において、制御部31は、取得した処理指定情報が一括読取を指定しているか、判定する。一括読取を指定している場合、Act103において、制御部31の送信出力制御部315は、記憶部311に記憶されている一括読取出力情報に基づき、無線部33に対し送信出力の設定を実施する。
【0045】
次に、Act103において、制御部31は、無線部33を制御してアンテナ装置10から一括読取に係る電波を放射させて一括読取を実施し、RFタグにて保持されている情報(識別ID)を取得する。そして、Act105において、制御部31は、処理が完了したことを通知する処理結果画面53(図10)を構成して表示部37に表示させ、Act101に戻る。なお、実行された処理が当該一括読取、および後述の選択読取である場合には、制御部31は、処理の完了とともに取得した識別IDを処理結果画面にて表示し、使用者に通知する。また、識別IDが取得できなかった場合は、図10に示した内容に代えて、RFタグとの通信に失敗したことを処理結果画面53にて表示して、使用者に通知する。
【0046】
一方、Act102において、処理指定情報が一括読取を指定していないと判定される場合、Act106に進み、制御部31は、処理指定情報が選択読取を指定しているか、判定する。選択読取を指定している場合、Act107に進み、制御部31の送信出力設定部は、記憶部315に記憶されている選択読取出力情報に基づき、無線部33に対し送信出力の設定を実施する。
【0047】
次に、Act108において、制御部31は、RFタグの標識部16が示す領域への移動を促すとともに読取開始に関する使用者からの指示を取得するための図11に示すような処理開始画面55を構成して表示部37に表示させる。次に、Act109に進み、制御部31は、読取開始に関する情報を取得したか否か、判定する。使用者がRFタグをアンテナ筐体上の標識部16が示す領域(本実施形態においては、楕円内部)に配置し、読取開始の指示を入力部35を介して入力したとき、制御部31は、読取開始に関する指示を取得し、Act110に進む。Act110において、制御部31は、無線部33を介してアンテナ装置10から選択読取に係る電波を放射させ、選択読取処理を実施し、RFタグに保持されている識別IDを取得する。そして、Act111において、制御部31は、処理完了の通知とともに取得した識別IDを通知する処理結果画面53を表示部37に表示させ(図10)、Act101に戻る。
【0048】
ここで、選択読取を実行した結果、使用者が予め設定したRFタグの数よりも少ない、または多い数のRFタグからの読取が行われる場合がある。このとき、制御部31は、設定したときよりも読取が行われたRFタグの数が少ないときは図12に示すような処理結果画面57を構成して表示部37に表示させ、RFタグの移動または送信出力設定を大きくすることを使用者に促す。一方、制御部31は、設定したときよりも読取が行われたRFタグの数が多いときは図13に示すような処理結果画面59を構成して表示部37に表示させ、送信出力設定を小さくすることを使用者に促す。
【0049】
また、Act106において、処理指定情報が選択読取を指定しないと判定されるとき、制御部31は、処理指定情報が選択書込みを指定していると判定する。そして、Act112に進み、制御部31の送信出力設定部315は、記憶部311に記憶されている選択読取出力情報に基づき、無線部33に対し送信出力の設定を実施する。
【0050】
次に、Act113において、制御部31は、RFタグの標識部16が示す領域への移動を促すとともに読取開始に関する使用者からの指示を取得するための図11に示すような処理開始画面を構成して表示部37に表示させる。次に、Act114に進み、制御部31は、読取開始に関する指示を取得したか否か、判定する。使用者がRFタグをアンテナ筐体上の標識部16が示す領域に配置し、読取開始指示を入力部35を介して入力したとき、制御部31は、読取開始に関する指示を取得してAct115に進む。Act115において、制御部31は、無線部33を介してアンテナ装置10から選択書込みに係る電波を放射させ、選択書込みを実施し、RFタグに識別IDを付与する。そして、Act116において、制御部31は、書込みが完了したことをRFタグからのレスポンスに基づき確認し、読取処理の場合と同様に処理結果画面53を構成して表示部37に表示させる。
【0051】
ここで、選択書込みを実行した結果、処理指定情報指定の際に使用者が設定したRFタグの数よりも少ない、または多い数のRFタグに対し書込みが行われる場合がある。このとき、制御部31は、設定した数よりも少ないRFタグに書込みが行われたときは図12に示すような処理結果画面57を構成して表示部37に表示させ、RFタグの移動または送信出力設定を大きくすることを使用者に促す。一方、制御部31は、設定した数より多くのRFタグに書込みが行われたときには、図13に示すような処理結果画面59を構成して表示部37に表示させ、送信出力設定を小さくすることを使用者に促す。
【0052】
以上、第1の実施形態のリーダライタ100は、アンテナ装置10から放射される電波の送信出力を変化させることにより、一括読取と、選択通信の両方の処理を行うことができる。また、送信出力を制御することにより、電界強度が所定の閾値以上になる領域を標識部が示す領域(放射素子に設けられたスリット先端の近傍)とすることができるため、選択通信の際に、使用者が所望するRFタグとの通信をより確実に実行することができる。
【0053】
(第2の実施形態)
第2の実施形態において、リーダライタ100は、第1の実施形態にて説明した構成に加えて、図14に示すようにアンテナ装置10に装着して用いる、制限部材60を備える。該制限部材60をアンテナ装置10に装着することにより、標識部16が示す領域以外の領域からの電波の筐体外への放射を、標識部16が示す領域からの電波の筐体外への放射よりも制限することができる。当該制限部材60は、例えば、図14に示すように、金属を材料として構成し、標識部16が示す位置近傍に開口部62を設けた成型体とすることができる。また、他の態様とすることももちろん可能であり、例えば装着時にアンテナ筐体外面と対向する面が電波吸収処理(例えば電波吸収材の貼付)が施されたプラスチックを材料として構成し、標識部16が示す位置近傍に対応する位置のみ開口部を設けるか、未処理のプラスチックで構成する成型体とすることができる。
【0054】
第2の実施形態において、制限部材60は、アンテナ装置10(アンテナ筐体12)の外面から離脱させることにより、標識部16が示す領域以外の領域からの筐体12外への電波の放射を制限する位置から制限しない位置に退避可能である構成としている。しかしながらアンテナ装置10からの制限部材60の退避については、アンテナ筐体表面からの脱離に限定されず、他の態様とすることも可能である。例えば、制限部材60をヒンジを介してアンテナ筐体12に連結させ、電波放射を制限する位置から制限しない位置に移動可能とする構成としてもよい(本明細書において、退避とは、位置の移動も含む概念である)。
【0055】
(その他の実施形態)
以上、本発明について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の実施形態とすることも可能である。
【0056】
例えば、第1の実施形態において、アンテナ装置10の放射素子145は矩形であるが、その輪郭線の一部が中央に向けて凹むように延びる切り欠き部が形成されている平板状である限り特に限定されず、他の形状とすることもできる。この場合、給電点44は、切り欠き部15先端の近傍にて電流が多く流れる位置、言い換えれば送信出力を調整したときに切り欠き部15先端近傍にて電界強度が所定の閾値以上とすることができる位置に配置される。
【0057】
また、第1の実施形態において、標識部16は、アンテナ筐体12の外面に印刷された楕円形の模様としているがこれに限定されるものではない。例えば、筐体12外面にくぼみや突起を形成させたり、シールを貼り付けたりすることにより設けることができる。また、その形状も特に限定されず、例えば図15に示すように矢印とすることができる。図15においては、破線で表した部分が切り欠き部15先端近傍に対応した位置となる。なお、この場合、矢印が示す領域において電界強度が閾値t以上となっていればよく、矢印自体の部分の領域においては電波が閾値以上となっていなくともよい。
【0058】
さらに、第1の実施形態において、送信出力を制御するための出力情報は、リーダライタ本体30内のROMやRAMにより構成される記憶部311に記憶されている。しかしながら、これに限定されず、外部機器の記憶部に記憶され、必要に応じてインターフェース部39を介して制御部31が取得するようにしてもよい。
【0059】
さらにまた、第1の実施形態において、アンテナ装置10(アンテナ筐体12)とリーダライタ本体30とは分離して構成されているが、2つの筐体(アンテナ筐体12と、リーダライタ本体30の筐体)が連結されたり、1つの筐体内部のそれぞれの区画に、パッチアンテナ14とリーダライタ本体30のハードウェアとが収納されたりするようにして、一体化されていてもよい。
【0060】
さらにまた、第1の実施形態においては、予め記憶されている出力情報に基づき送信出力を設定しているが、使用者が入力部35を介して送信出力を設定するようにしてもよい。
【0061】
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施の形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、すべて本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0062】
10 アンテナ装置、12 アンテナ筐体、14 パッチアンテナ、15 切り欠き部、16 標識部、19保持部材、30 リーダライタ本体、31 制御部、33 無線部、35 入力部、37 表示部、40 同軸ケーブル、44 給電点、60 制限部材、100 RFタグリーダライタ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0063】
【特許文献1】特開2007−110611号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状の放射素子と、
前記放射素子を収容し、前記放射素子にて発生する電界の電界強度が最も高くなる領域に対応する位置に標識部を有するアンテナ筐体と、
を備えるRFタグ通信用アンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のRFタグ通信用アンテナ装置において、
前記放射素子には、所定形状の切り欠き部が形成されており、
前記放射素子にて発生する電界の電界強度が最も高くなる領域は、前記放射素子に形成されている前記切り欠き部の所定箇所に対応する領域であるRFタグ通信用アンテナ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のRFタグ通信用アンテナ装置において、
前記切り欠き部は、前記放射素子の輪郭線の一部を中央に向けて凹ませるように延びるスリットであるRFタグ通信用アンテナ装置。
【請求項4】
請求項3のRFタグ通信用アンテナ装置において、
前記放射素子は、矩形状の平板の一辺に前記切り欠き部を形成したものであり、前記平板上の前記切り欠き部が延びる方向における略中央に位置し且つ前記平板上の前記切り欠き部が延びる方向と直交する方向において前記平板の中央位置とは異なる位置に位置する給電点を介して給電されるRFタグ通信用アンテナ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のRFタグ通信用アンテナ装置と、
前記放射素子から放射される電波の送信出力を制御する送信出力制御部と、
を備えるRFタグリーダライタ。
【請求項6】
請求項5に記載のRFタグリーダライタにおいて、
前記送信出力制御部は、前記標識部が示す領域に位置するRFタグとのみ通信可能である送信出力での電波を放射させる第1の出力モードと、前記第1の出力モードよりも大きな送信出力での電波を放射させる第2の出力モードとを切り替え実行可能であるRFタグリーダライタ。
【請求項7】
請求項5または6に記載のRFタグリーダライタにおいて、
前記放射素子における前記標識部が示す領域以外の領域からの電波の前記筐体外への放射を、前記放射素子における前記標識部が示す領域からの電波の前記筐体外への放射よりも制限するとともに、前記標識部が示す領域以外の領域からの電波の前記筐体外への放射を制限する位置から制限しない位置に退避可能である制限部材をさらに備えるRFタグリーダライタ。
【請求項1】
平板状の放射素子と、
前記放射素子を収容し、前記放射素子にて発生する電界の電界強度が最も高くなる領域に対応する位置に標識部を有するアンテナ筐体と、
を備えるRFタグ通信用アンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のRFタグ通信用アンテナ装置において、
前記放射素子には、所定形状の切り欠き部が形成されており、
前記放射素子にて発生する電界の電界強度が最も高くなる領域は、前記放射素子に形成されている前記切り欠き部の所定箇所に対応する領域であるRFタグ通信用アンテナ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のRFタグ通信用アンテナ装置において、
前記切り欠き部は、前記放射素子の輪郭線の一部を中央に向けて凹ませるように延びるスリットであるRFタグ通信用アンテナ装置。
【請求項4】
請求項3のRFタグ通信用アンテナ装置において、
前記放射素子は、矩形状の平板の一辺に前記切り欠き部を形成したものであり、前記平板上の前記切り欠き部が延びる方向における略中央に位置し且つ前記平板上の前記切り欠き部が延びる方向と直交する方向において前記平板の中央位置とは異なる位置に位置する給電点を介して給電されるRFタグ通信用アンテナ装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のRFタグ通信用アンテナ装置と、
前記放射素子から放射される電波の送信出力を制御する送信出力制御部と、
を備えるRFタグリーダライタ。
【請求項6】
請求項5に記載のRFタグリーダライタにおいて、
前記送信出力制御部は、前記標識部が示す領域に位置するRFタグとのみ通信可能である送信出力での電波を放射させる第1の出力モードと、前記第1の出力モードよりも大きな送信出力での電波を放射させる第2の出力モードとを切り替え実行可能であるRFタグリーダライタ。
【請求項7】
請求項5または6に記載のRFタグリーダライタにおいて、
前記放射素子における前記標識部が示す領域以外の領域からの電波の前記筐体外への放射を、前記放射素子における前記標識部が示す領域からの電波の前記筐体外への放射よりも制限するとともに、前記標識部が示す領域以外の領域からの電波の前記筐体外への放射を制限する位置から制限しない位置に退避可能である制限部材をさらに備えるRFタグリーダライタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−66494(P2011−66494A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213086(P2009−213086)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】
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