説明

RF通信システムおよび方法

本発明は、無線RF通信を介したユーザ装置の制御のためのRF通信システムおよび方法に関する。柔軟な使用および複数の異なる応用例を提供するため、特にユーザ装置を前もって訓練する必要性、ならびにパッシブ・データ・キャリアに通信されたユーザ設定および/またはコマンドの実際の意味を知る必要性を回避するために、読み出されユーザ設定および/またはコマンドに従ってユーザ装置(6、12)を制御するための制御装置(64)と、ユーザ装置(6、7、11、12、13)の実際のユーザ設定および/またはコマンドで無線RF通信を介してパッシブ・データ・キャリア(3、4、5、21、15、22)を自動的にプログラムするためのプログラム・ユニット(65)とを含む、無線RF通信を介して前記パッシブ・データ・キャリア(3、4、5、21、22)からユーザ設定および/またはコマンドを読み出すためのユーザ装置(6、7、11、12、13)と、ユーザ設定および/またはコマンドを格納するためのメモリ(31)を含む受動的であり、無線RF通信を介してプログラマブルで読み出し可能なデータ・キャリア(3、4、5、21、22)とを備えるRF通信システムが提案される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RF通信システム、および無線RF通信を介したユーザ装置の制御のための対応する方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、無線RF通信を介してパッシブ・データ・キャリアからユーザ設定および/またはコマンドを読み出すためのユーザ装置、ならびに受動的であり、無線RF通信を介してプログラマブルで読み出し可能なデータ・キャリアに関する。
【背景技術】
【0003】
無線周波数識別(RFID:Radio frequency identification)タグは知られており、物体または位置を識別するために広く使用されている。リーダを含む装置の状態は、特定のタグの検出によって決まる。こうしたRFIDタグの応用例は、たとえば携帯電話の使用が(飛行機や病院内などの)極めて重要なシステムの動作に害を及ぼし、または他人を苛立たせる環境下で携帯電話を動作不能にするためのシステムを開示している米国特許第2002/0039896 A1号に記載されている。そのシステムは、制御された区域の入口に位置するRFビーコン(アクティブRFIDタグ)の対を含む。電話は、ビーコン出力に敏感な受信機を有し、ビーコンを通ってある方向に向かうときにはシャットダウンして待機モードになり、もう一方の方向に向かうときには再びアクティブ化するように自動的に適応される。したがって、アクテイブRFIDタグの使用により、タグ内に格納された特定のコマンド識別が電話に送信されて、電話を特定の操作モードへと切り換える。
【0004】
米国特許第2002/0039896 A1号から知られる応用例に関する問題は、RFIDタグからのコマンドを検出/受信するための検出器または受信機を含む装置が、特定のRFIDタグ、より一般には無線RF通信を介してプログラムされ読み出されることができる特定のデータ・キャリアから検出されまたは受信された信号をどのように判断すべきかを前もって知っている必要があることである。この装置はデータ・キャリアを知っている必要があり、そのデータ・キャリアに関連する設定について知らされなければならず、すなわち各装置は望まれる機能を見せる前に訓練される必要がある。
【0005】
別のシステムは、モバイル・コンピューティング装置からのユーザの嗜好を機器に自動的に適用するためのシステムを開示している米国2003/0073411 A1から知られている。携帯情報端末(PDA:personal digital assistant)などのモバイル・コンピューティング装置は、電話、ラジオ、プリンタなどの機器を制御する。その制御は、音量レベル、お気に入りの番組などの嗜好を機器に適用することや、単なるアクティブ化または非アクティブ化を含めて複数の形態を取り得る。したがってモバイル・コンピューティング装置は、その環境内の機器のマスタになり、内容およびユーザの嗜好を制御する。
【0006】
米国2003/0073411 A1によるシステムの問題は、モバイル・コンピューティング装置にユーザ設定を含む機器に送信されるメッセージの内容が分かっていなければならず、すなわち音量レベル「大きい」や好ましい番組の番号のような既知の意味が存在する必要がある。したがって、音量レベルを設定するためのコマンドがそれぞれ異なる装置に対して同じ効果を有するように、すべての装置に共通のプロトコルが存在しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、それぞれ異なるユーザ装置の大量の訓練が回避され得るRF通信システムおよび方法を提供することである。さらに、こうしたRF通信システム内で使用するのに適したユーザ装置およびパッシブ・データ・キャリアが提供されるべきである。
【0008】
本発明のさらなる目的は、ユーザ装置だけが通信されたユーザ設定および/またはコマンドの実際の意味を知っている必要があり、前記パッシブ・データ・キャリアはその内容の実際の意味を知らなくてもよい、それぞれ異なるタイプのユーザ装置の制御のためのRF通信システムおよび方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらの目的は、請求項1に記載のRF通信システムであって、
読み出されたユーザ設定および/またはコマンドに従ってユーザ装置を制御するための制御装置と、RF無線通信を介してユーザ装置の実際のユーザ設定および/またはコマンドでパッシブ・データ・キャリアを自動的にプログラムするためのプログラム・ユニットとを含む、無線RF通信を介して前記パッシブ・データ・キャリアからのユーザ設定および/またはコマンドを読み出すためのユーザ装置と、
ユーザ設定および/またはコマンドを格納するためのメモリを含む、受動的であり、無線RF通信を介してプログラマブルで読み出し可能なデータ・キャリアとを備えるRF通信システムによって本発明に従って達成される。
【0010】
対応するRF通信方法が請求項12に記載されており、
無線RF通信を介してユーザ装置の実際のユーザ設定および/またはコマンドでパッシブ・データ・キャリアを自動的にプログラムするステップであって、前記パッシブ・データ・キャリアが前記ユーザ設定および/またはコマンドを格納するためのメモリを含むステップと、
無線RF通信を介して前記パッシブ・データ・キャリアからユーザ設定および/またはコマンドを読み出すステップと、
読み出されたユーザ設定および/またはコマンドに従ってユーザ装置を制御するステップとを備える。
【0011】
また前記パッシブ・データ・キャリアを自動的にプログラムするステップは第1のステップとなるのではなく、ユーザ設定および/またはコマンド読出しステップならびにユーザ装置制御ステップの後に実施されてもよいことに留意すべきである。
【0012】
本発明によるRF通信システム内で使用するのに適したユーザ装置が請求項13に記載されており、
RF信号を発するためのRF送信機と、
前記RF信号を介してユーザ装置の実際のユーザ設定および/またはコマンドで前記パッシブ・データ・キャリアを自動的にプログラムするためのプログラム・ユニットと、
RF信号、または前記データ・キャリアから発せられたRF信号のRF信号変調を検出するための検出器と、
検出されたRF信号またはRF信号変調を処理し、その中に組み込まれたユーザ設定および/またはコマンドを導出するためのプロセッサと、
読み出されたユーザ設定および/またはコマンドに従ってユーザ装置を制御するための制御装置とを備える。
【0013】
本発明による受動的であり無線RF通信を介してプログラマブルで読み出し可能なデータ・キャリアが請求項14に記載されており、
ユーザ設定および/またはコマンドを格納するためのメモリと、
RF信号を受信するための受信手段と、
前記受信されたRF信号の中に組み込まれたユーザ設定および/またはコマンドを取得するために前記受信されたRF信号を処理し、かつ/または格納されたユーザ設定および/またはコマンドを出力RF信号、または前記受信されたRF信号のRF信号変調内に組み込むための処理手段と、
前記出力RF信号またはRF信号変調を出力するための出力手段とを備える。
【0014】
本発明は、ユーザ設定および/またはコマンドをパッシブ・データ・キャリア内に格納する考えに基づく。次いでパッシブ・データ・キャリアは、格納されたコマンドおよび/または設定をその制御エリア内に存在するユーザ装置に通信し、次いでこの装置はコマンドを実行し、または読み出されたユーザ設定に従って制御される。データ・キャリアはたとえば環境内で組み込まれ、たとえば壁の中に封入されることができ、ユーザ装置は一般に携帯電話、カメラ、オーディオまたはビデオ装置、あるいは家庭機器用の他の任意の装置などの任意のポータブルまたはモバイル装置であり得る。またデータ・キャリアはモバイル装置であってもよく、ユーザ装置はユーザによって制御されてもよい任意の装置であり得る。
【0015】
パッシブ・データ・キャリアをユーザ設定および/またはコマンドによってプログラムすることはたとえば、パッシブ・データ・キャリアおよびユーザ装置が制御範囲内に入って来ており、またはその状態を変化させつつあるときにオーディオ装置の音量レベルおよび選局された無線局などの現在の状態をパッシブ・データ・キャリアに通信することによって自動的かつ暗黙的に行われる。同じ装置(または同じタイプの装置)が次に制御範囲に入るときに、次いでこれらのユーザ設定および/またはコマンドはユーザ装置によって読み出され、次いでこのユーザ装置は同じ状態に入るように自動的に制御される。
【0016】
送信されたコマンドおよび/またはユーザ設定の選択的な実行は、特定のパッシブ・データ・キャリアの検出に依存して行われ得る。したがって、コマンドおよび/またはユーザ設定は特定のユーザ装置を対象とすることができ、たとえば設定および/またはコマンドは、ユーザ設定および/またはコマンドを離れたユーザ装置、あるいは特定の装置群、たとえば特定のユーザのすべての装置または特定のタイプのすべての装置にだけ適用される。
【0017】
したがって本発明によっては、ユーザ装置が特定のパッシブ・データ・キャリアの制御域内に入るときに実行されるべき特定のコマンドによってすべてのユーザ装置を事前にプログラムすることは必要とされない。そうではなく、ユーザ設定および/またはコマンドが事前にプログラムされ、または使用中にデータ・キャリア内にプログラムされ、ユーザ装置はそのユーザ装置を対象とするこうしたユーザ設定および/またはコマンドに従って制御されるように適応される。
【0018】
本発明は、ユーザ装置の制御のために個人的なユーザ設定および/またはコマンドを、このデータがユーザに関連するパッシブ・データ・キャリアから制御範囲内のユーザ装置に送信されるように、ユーザが携帯することを可能とし、したがってユーザ装置はユーザが好む状態へと制御される。
【0019】
本発明の好ましい実施形態が独立クレームに記載されている。パッシブ・データ・キャリアを明示的にプログラムすることを可能とするために、ユーザ設定および/またはコマンドを入力するための入力手段を備える別個のプログラム装置が、好ましい実施形態に従って提供される。さらに、またユーザがユーザ装置を介してパッシブ・データ・キャリアを明示的にプログラムすることを可能とするために、こうした入力装置を含んでもよい。
【0020】
パッシブ・データ・キャリアは一般に、無線RF通信を介してプログラマブルで読み出し可能な任意のデータ・キャリアであり得る。データ・キャリアは好ましくは、
RF信号を受信するための受信手段と、
前記受信されたRF信号をその中に組み込まれた前記ユーザ設定および/またはコマンドを取得するために処理し、かつ/または格納されたユーザ設定および/またはコマンドを出力RF信号、または前記受信されたRF信号のRF信号変調に組み込むための処理手段と、
前記出力RF信号またはRF信号変調を出力するための出力手段とを備える。
【0021】
好ましくはパッシブRFIDタグが、前記パッシブ・データ・キャリアとして使用される。こうしたパッシブRFIDタグは、別個の外部電力源なしに動作し、リーダから生成される動作電力を取得する。したがってパッシブRFIDタグはアクティブ・タグより遥かに軽量で安価であり、事実上無制限の動作寿命を提供する。一般に読出し範囲、すなわちこうしたパッシブRFIDタグによって制御される制御域は数メートル、たとえば10mである。こうしたパッシブRFIDタグの一般的なレイアウトおよび機能は当技術分野では一般に知られており、ここでさらに説明されるべきでない。
【0022】
前記パッシブ・データ・キャリアは、モバイル・ユーザ機器、特に携帯電話、トランスポンダ、スマートカードまたはPDA内に組み込まれる。ユーザは一般に、少なくとも1つのこうした機器を持ち運び、したがってその機器もまた、本発明に従ってパッシブ・データ・キャリアとして使用され得る。ユーザが前記パッシブ・データ・キャリア内に格納された個人的なユーザ設定に従ってユーザ装置を制御することが、そのデータの意味が前記データ・キャリアに明示的に知られていない場合でも可能である。後述の内容でタグについて言及されている場合、これはモバイル・ユーザ装置内に組み込まれたパッシブ・データ・キャリアをも含む。
【0023】
前記パッシブ・データ・キャリア、特にこうしたRFIDタグで使用するように特に適応されたユーザ装置は、
RF信号を発するためのRF送信機と、
RF信号、または発せられたRF信号のRF信号変調を検出するための検出器と、
検出されたRF信号またはRF信号変調を処理し、その中に組み込まれたユーザ設定および/またはコマンドを導出するためのプロセッサとを備える。
【0024】
既に述べたように、1つの特定のコマンドまたはユーザ設定だけでなく、ユーザ装置のそれぞれ異なるタイプ、グループまたはアイテムの制御ために提供されるそれぞれ異なるセットもパッシブ・データ・キャリア内に格納され得る。1人のユーザだけに関連するコマンドまたはユーザ設定だけを、前記1人のユーザに関連するパッシブ・データ・キャリア内に格納することも可能である。これは、複数の異なる応用例のために本発明が広く使用されることを可能とする。
【0025】
前記ユーザ装置はさらに、前記ユーザ装置および/または前記ユーザ装置のタイプを識別する識別情報を前記RF送信機によって発せられるRF信号に組み込むための識別手段を含んでもよい。したがって、発せられるRF信号は、特定のユーザ装置に関する情報、またはRF信号がそこから発せられるユーザ装置の特定のタイプの情報を備える。
【0026】
前記パッシブ・データ・キャリアの処理手段は、前記ユーザ装置および/または前記ユーザ装置のタイプを識別する識別情報を取得するために前記受信されたRF信号を処理するための識別子手段を備え得る。処理手段はさらに、前記処理手段によって前記出力RF信号、または前記受信されたRF信号の前記RF信号変調内に組み込まれるべき前記タイプまたは前記ユーザ装置に関連する格納されたユーザ設定および/またはコマンドを選択するための選択手段を備え得る。前記識別子手段と前記選択手段とを備える前記処理手段は、異なる組のデータがこのデータ間の干渉なしに存在してもよいように、それぞれ異なるユーザ装置またはユーザ装置のタイプが本発明のRF通信システム内に組み込まれることを可能とする。したがって、たとえば無線受信機に関連するユーザ設定はコーヒー自動販売機には送信されない。
【0027】
好ましい応用例では、格納されたユーザ設定および/またはコマンドに従ってそれぞれ異なる位置のまわりの個々の制御域内に存在するユーザ装置の制御のために前記それぞれ異なる位置に置かれた複数のパッシブ・データ・キャリアが提供される。たとえば、複数のこうしたパッシブ・データ・キャリア、たとえばRFIDタグは部屋の壁に位置することができ、すべてが同じユーザ設定および/またはコマンドを格納し、別の部屋に位置するすべてのデータ・キャリアは異なる1組のユーザ設定および/またはコマンドを格納する。
【0028】
別の好ましい応用例では複数のパッシブ・データ・キャリアは、格納されたユーザ設定および/またはコマンドによるユーザ装置の制御のために、それぞれ異なるユーザに関連付けられる。
【0029】
本発明について、次に図面を参照してより詳しく説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1は、本発明の使用のための第1の実施形態を概略的に示している。一例として2つの部屋1、2が示されており、その両方に1つまたは複数のRFIDタグ3、4、5が設けられている。RFIDタグ3、4、5の読取り範囲すなわち制御域は、完全な部屋1がタグ3の制御域内にあり、完全な部屋2がタグ4および5の制御域内にあるように適応される。さらに、2つのユーザ装置、特に携帯電話6およびオーディオ装置7が例示されている。タグ3、4、5を明示的にプログラムするために、プログラム装置8が提供されている。タグ3、4、5および装置6、7、8の詳細については、図2から4を参照して以下で説明される。タグ3またはユーザ装置6の図2および3のブロック図が例としてそれぞれ示されているが、他のタグ4、5または他のユーザ装置7はそれぞれ、同じまたは類似の構造を有する。
【0031】
本発明によれば、ユーザ設定および/またはコマンドはタグ3の記憶ユニット31(図2参照)内に格納される。記憶ユニット31は、ユーザ装置のそれぞれ異なるタイプ、グループまたはアイテムのために提供されるそれぞれ異なる組のユーザ設定および/またはコマンドを格納するためのサブユニットに分割され得る。たとえば、携帯電話用のユーザ設定および/またはコマンドを格納するサブユニット、ならびにオーディオ装置用のユーザ設定および/またはコマンドを格納するための異なるサブユニットがあり得る。さらにサブユニットは、特定のユーザの特定のユーザ装置用のユーザ設定および/またはコマンドを格納するために提供され得る。あるいは、タグは安価であると考えられるので、それぞれ異なるタグが、それぞれ異なる装置、装置タイプ、装置群、ユーザ、ユーザ・タイプ、ユーザ群のために使用される。
【0032】
ユーザ装置、たとえば図1に示されるように携帯電話6が部屋1、すなわちタグ3の制御域に入るとき、タグ3の受信機32は装置6のRF送信機61によって発せられるRF信号を受信する。たとえば送信機61はRF搬送正弦波を連続的に生成し、このRF搬送正弦波は、パッシブRFIDタグにエネルギーを送信し、パッシブRFIDタグからデータを取り出すために使用される。これらの正弦波は、受信機32、一般には巻かれたまたはプリントされたコイル内に誘導される。タグ3は、正確に動作するのに十分なほどのエネルギーを受信すると、搬送波を分周し(divide down)、メモリ31内に格納されたそのデータを出力装置33、一般にはコイル入力を横断して通常接続される出力トランジスタに同期させクロックし始める。タグの出力トランジスタは、メモリ31から同期されて出て来るデータに順次対応するコイルを分岐させ、それによって搬送波の瞬間的な変動(減衰)を生じさせ、この変動は搬送波の振幅のわずかな変化と見なされ、すなわちRF信号変調が好ましくは実行される。
【0033】
ユーザ装置6の検出器62は、振幅変調されたデータをピーク検出することができ、次いでこの振幅変調データは処理装置63によって処理され得る。特に、特定のユーザ装置6による使用を対象とする検出されたRF信号変調内に組み込まれたユーザ設定および/またはコマンドは、このRF信号変調から取り出され、ユーザ装置6の制御のために制御装置64に提供される。
【0034】
たとえば、タグ3のメモリ31内に格納されたデータは、たとえば美術館の展示室や教会であるこの部屋1内ではどんな雑音もが防止されるべきなので、タグ3の制御域内に存在するいずれの携帯電話6もが通常の着信音モードではなく振動モードに切り換えられるべきであることを命じるコマンドを含んでもよい。制御装置64は、携帯電話6がタグ3の制御域を離れるとき、すなわち部屋1を離れるときには携帯電話6が前の操作モードに戻るようにさらに適用され得る。
【0035】
ユーザ装置6はさらに、タグをプログラムするためのプログラム・ユニット65と、ユーザ装置6の制御のためのユーザ設定および/またはコマンドを入力するための入力ユニット66とを備える。たとえば、携帯電話6のユーザは、部屋1に入るときまたは既に部屋1内にいるときには電話6を振動モードに切り換え、または携帯電話の端末を使用することにより手動で電話6の電源を完全に切ってもよい。次いでこの状態は、プログラム・ユニット65を使用することによって、特に送信機61によりRF信号を送信することによってタグ3内に自動的にプログラムされる。これらのRF信号は、受信機32によって検出され、メモリ31内に格納されるためタグ3の処理ユニット34によって処理され得る適切な情報を運ぶ。次いで携帯電話6は、部屋1から移動され、別の位置で別の状態にされてもよく、たとえば部屋2内で携帯電話6は再び電源投入され、または通常の操作モードに切り換えられる。携帯電話6が部屋1に再び戻ると、メモリ31内にまだ格納されている携帯電話6の最後の状態が検出され、携帯電話6にプログラムされたこの部屋1の設定に戻させ、すなわち携帯電話6はそれぞれ、再び自動的に電源が切られまたは振動モードに切り換えられる。
【0036】
また、別の類似の装置、すなわち別の携帯電話が部屋1内に持ち込まれる場合、この装置はプログラムされたタグの検出を、タグ3内の前の携帯電話6が離れた状態に入るよう命じるコマンドとして解釈する。
【0037】
別のシナリオでは、寝室であってもよいたとえば部屋2内で、タグ4、5は最大の音量コマンドを設定するようプログラムされてもよい。各ユーザ装置、たとえばオーディオ装置7は部屋2に入ると、次いでタグ4、5(またはタグのうちの少なくとも1つ、同じデータを格納する両方)を読み出し、最大音量コマンドはオーディオ装置7に、音量を格納された最大レベルまで下げさせる。
【0038】
別の実施形態では教会の入口のタグは、携帯電話の規格/仕様内に消音コマンドとして定義されている特別なシリアル番号を備えてもよい。教会に入る人の各携帯電話は、シリアル番号を読み出し、出口の壁に封入されたタグの特別なシリアル番号が携帯電話を通常のモードに再び戻すまでマナー・モードに変化する。
【0039】
最後の2つの実施例から明らかなように、ユーザまたはユーザ装置によって変更され得るタグのメモリ内に格納されたデータの一部が存在し、他の部分(たとえば最大音量コマンドまたはマナー・モード・コマンド)は変更され得ない。
【0040】
ユーザ装置6および7に加えて、ユーザ装置6内のものと類似しており、またそれと同じ機能を有する送信機81とプロセッサ82と入力ユニット83とを備える別個のプログラム装置8が設けられてもよい。こうしたプログラム装置8によって特定のユーザ設定またはコマンド、たとえば最後の実施例中のマナー・モード・コマンドが特定のタグ内に明示的にプログラムされ得る。
【0041】
図5は、本発明の使用のための別の実施形態を概略的に示している。一例として、それぞれ異なるユーザに関連する異なるユーザ装置11、12、13および異なるパッシブ・データ・キャリア21、22を含む部屋10が示されている。ユーザ装置11、12、13およびパッシブ・データ・キャリア21、22の詳細については、図6および7を参照して以下で説明される。ユーザ装置11またはパッシブ・データ・キャリア21の図6および7のブロック図がそれぞれ実施例として示されているが、他のユーザ装置12、13またはパッシブ・データ・キャリア22はそれぞれ同じまたは類似の構造を有する。
【0042】
ユーザ装置が図5に示す実施形態に従って制御されるやり方は図1から4を参照して上述したものと実質的に同じであり、またユーザ装置およびパッシブ・データ・キャリアは対応する特徴を有する。上記説明との主な違いは、図5に示される実施形態のパッシブ・データ・キャリアが固定位置を有するのではなく移動体であることである。
【0043】
各パッシブ・データ・キャリア21、22のまわりに制御域23、24がある。パッシブ・データ・キャリア21、22を備えるユーザがユーザ装置11、12、13に近づくと、パッシブ・データ・キャリア22およびユーザ装置12で示されるように、ユーザ装置11、12、13は制御域内にある。制御域23、24はサイズが異なっていてもよい。
【0044】
ユーザ装置12がパッシブ・データ・キャリア22の制御範囲24内にある場合、図1〜3を参照して上述したものと類似の通信が行われる。ユーザ装置6の手段に加えてユーザ装置12はさらに、前記ユーザ装置12および/または前記ユーザ装置12のタイプを識別するための識別情報を前記RF信号に組み込むための識別手段121を備える。これらの信号は、さらに識別子手段221と選択手段222とを備える、図2を参照して上述したものに類似の前記パッシブ・データ・キャリア22によって受信される。受信された信号は、前記識別情報を取得するために識別子手段221によって処理される。次いで、識別されたユーザ装置12に関連する格納されたユーザ設定および/またはコマンドは、メモリ31から選択手段222によって選択され、前記パッシブ・データ・キャリア22によって前記ユーザ装置12に出力される。また、識別されたユーザ装置12に関連しており、ユーザ装置12からパッシブ・データ・キャリア22に送信されたユーザ設定および/またはコマンドは、ユーザ装置12またはユーザ装置12のタイプに関連するサブユニットのメモリ31内に格納されてもよい。
【0045】
たとえばユーザ装置11はコーヒー自動販売機であってもよく、ユーザ装置12はタイプAのTVセットであってもよく、ユーザ装置13はID BXYZを有するタイプBのTVセットであってもよい。これらのすべてのユーザ装置11、12、13を制御するためのユーザ設定および/またはコマンドを格納するために提供されたパッシブ・データ・キャリア22は、図8に示されるようにコーヒー自動販売機およびTVセット用のサブユニット223、224を有する。TVセット用のサブユニット224は、タイプAおよびBのTVセット用のサブユニット225、226にさらに分割される。またサブユニット226のサブユニットであってもよいID BXYZを有するTVセット用の別のサブユニット227がある。
【0046】
パッシブ・データ・キャリア22の制御域内に任意のタイプのTVセットが存在する場合、そのTVセットは一般にTVセット用に格納されたユーザ設定および/またはコマンドに従って制御される。このユーザ装置13がたとえばタイプBのTVセットとして認識される場合、ユーザ装置13は、一般にTVセット用のユーザ設定および/またはコマンドに加えてタイプB用に格納されたユーザ設定および/またはコマンドをさらに受信する。ID BXYZによって示されるように特別なTVセット用に格納されたユーザ設定および/またはコマンドがある場合、それぞれのIDを有するTVセットだけが、それぞれ格納されたユーザ設定および/またはコマンドに従って制御される。さらに、ユーザ装置11、12、13が、ユーザ設定および/またはコマンドが共有されるユーザ装置のタイプに応じて異なるサブユニット224、225、226内にユーザ設定および/またはコマンドを格納しながら、パッシブ・データ・キャリア22をプログラムする可能性がある。
【0047】
パッシブ・データ・キャリア21、22は、そのユーザ装置またはタイプに最初に遭遇した後に、その総メモリを、新しいユーザ装置またはユーザ装置の新しいタイプに関連する新しいサブユニットに分割し得ることが好ましい。
【0048】
本発明の使用のための他の実施例には、同期ゾーンの設定が含まれる。タグによって通信されるコマンドは、同期手順を開始するために使用されてもよい。こうした設定は、同期の機会を検出するためにユーザ装置によって環境を連続的にスキャンすることに比べて複雑でなく、より小さい電力を使用すると見込まれる。代替法は、ユーザが常に自身で同期を開始することである。この実施形態は多分識別子をコマンドに添付することによって同期手順の選択的な開始をも行い、たとえば特定の携帯電話は、同期コマンドとの組合せで割り当てられた特定の識別子を検出する場合にだけ同期を開始する。
【0049】
パッシブ・データ・キャリア、特にRFIDタグをプログラムすることの提案された発明は、柔軟な使用および幅広い応用例を提供する。所望のユーザ設定および/またはコマンドが指定され、タグ、ならびにタグを読むことができるすべての他のユーザ装置、情報を格納した1つのユーザ装置だけでなく、それが対象とする他のすべてのユーザ装置内に格納されてもよい。装置の他のタイプまたはインスタンスのためのコマンドまたはユーザ設定はそのままにされることができ、タグに応答する必要があるユーザ装置には、特定の識別子への応答を組み込む必要はない。特にユーザ装置の大量の訓練は、本発明によれば必要とされない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の使用のための第1の実施形態を示す図である。
【図2】第1の実施形態で使用される本発明によるパッシブ・データ・キャリアのブロック図である。
【図3】第1の実施形態で使用される本発明によるユーザ装置のブロック図である
【図4】本発明によるプログラム装置のブロック図である。
【図5】本発明の使用のための第2の実施形態を示す図である。
【図6】第2の実施形態で使用される本発明によるパッシブ・データ・キャリアのブロック図である
【図7】第2の実施形態で使用される本発明によるユーザ装置のブロック図である
【図8】本発明によるパッシブ・データ・キャリアのメモリのブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線RF通信を介してユーザ装置を制御するためのRF通信システムであって、
読み出されユーザ設定および/またはコマンドに従って前記ユーザ装置を制御するための制御装置と、無線RF通信を介して前記ユーザ装置の実際のユーザ設定および/またはコマンドでパッシブ・データ・キャリアを自動的にプログラムするためのプログラム・ユニットとを含む、無線RF通信を介して前記パッシブ・データ・キャリアからユーザ設定および/またはコマンドを読み出すためのユーザ装置と、
ユーザ設定および/またはコマンドを格納するためのメモリを含む受動的であり無線RF通信を介してプログラマブルで読み出し可能なデータ・キャリアをと備えるRF通信システム。
【請求項2】
前記パッシブ・データ・キャリアを明示的にプログラムするためのユーザ設定および/またはコマンドを入力するための入力手段を有するプログラム装置をさらに備える請求項1に記載のRF通信システム。
【請求項3】
前記パッシブ・データ・キャリアがさらに、
RF信号を受信するための受信手段と、
その中に組み込まれた前記ユーザ設定および/またはコマンドを取得するために前記受信されたRF信号を処理し、かつ/または格納されたユーザ設定および/またはコマンドを出力RF信号、または前記受信されたRF信号のRF信号変調内に組み込むための処理手段と、
前記出力RF信号またはRF信号変調を出力するための出力手段とを備える請求項1に記載のRF通信システム。
【請求項4】
前記パッシブ・データ・キャリアがパッシブRFIDタグである請求項3に記載のRF通信システム。
【請求項5】
前記パッシブ・データ・キャリアがモバイル・ユーザ機器、特に携帯電話、トランスポンダ、スマートカードまたはPDAに組み込まれる請求項3に記載のRF通信システム。
【請求項6】
前記ユーザ装置がさらに、
RF信号を発するためのRF送信機と、
RF信号、または発せられたRF信号のRF信号変調を検出するための検出器と、
前記検出されたRF信号またはRF信号変調を処理し、その中に組み込まれたユーザ設定および/またはコマンドを導出するためのプロセッサとを備える請求項3に記載のRF通信システム。
【請求項7】
前記パッシブ・データ・キャリアが、それぞれ異なるタイプのまたは選択されたユーザ装置を制御するための複数の異なる組のユーザ設定および/またはコマンドを格納するように適応される請求項1に記載のRF通信システム。
【請求項8】
前記ユーザ装置がさらに、前記ユーザ装置および/または前記ユーザ装置のタイプを識別する識別情報を前記RF送信機によって発せられるRF信号内に組み込むための識別手段を備える請求項6に記載のRF通信システム。
【請求項9】
前記パッシブ・データ・キャリアの前記処理手段がさらに、
前記ユーザ装置および/または前記ユーザ装置のタイプを識別する識別情報を取得するために前記受信されたRF信号を処理するための識別子手段と、
前記処理手段によって前記出力RF信号、または前記受信されたRF信号の前記RF信号変調内に組み込まれるべき前記タイプまたは前記ユーザ装置に関連する格納されたユーザ設定および/またはコマンドを選択するための選択手段とを備える請求項6に記載のRF通信システム。
【請求項10】
格納されたユーザ設定および/またはコマンドに従ってそれぞれ異なる位置のまわりの個々の制御域内に存在するユーザ装置を制御するために前記それぞれ異なる位置に置かれた複数のパッシブ・データ・キャリアを備える請求項1に記載のRF通信システム。
【請求項11】
格納されたユーザ設定および/またはコマンドによるユーザ装置の制御のためのそれぞれ異なるユーザに関連する複数のパッシブ・データ・キャリアを備える請求項1に記載のRF通信システム。
【請求項12】
無線RF通信を介したユーザ装置の制御のためのRF通信方法であって、
無線RF通信を介してユーザ装置の実際のユーザ設定および/またはコマンドでパッシブ・データ・キャリアを自動的にプログラムするステップであって、前記パッシブ・データ・キャリアが前記ユーザ設定および/またはコマンドを格納するためのメモリを含むステップと、
無線RF通信を介して前記パッシブ・データ・キャリアからユーザ設定および/またはコマンドを読み出すステップと、
読み出されたユーザ設定および/またはコマンドに従って前記ユーザ装置を制御するステップとを備えるRF通信方法。
【請求項13】
無線RF通信を介してパッシブ・データ・キャリアからユーザ設定および/またはコマンドを読み出すための請求項1に記載のRF通信システムで使用するためのユーザ装置であって、
RF信号を発するためのRF送信機と、
前記RF信号を介して前記ユーザ装置の実際のユーザ設定および/またはコマンドで前記パッシブ・データ・キャリアを自動的にプログラムするためのプログラム・ユニットと、
RF信号、または前記データ・キャリアから発せられたRF信号のRF信号変調を検出するための検出器と、
検出されたRF信号またはRF信号変調を処理し、その中に組み込まれたユーザ設定および/またはコマンドを導出するためのプロセッサと、
読み出されたユーザ設定および/またはコマンドに従って前記ユーザ装置を制御するための制御装置とを備えるユーザ装置。
【請求項14】
請求項1に記載のRF通信システムで使用するための受動的であり、無線RF通信を介してプログラマブルで読み出し可能なデータ・キャリアであって、
ユーザ設定および/またはコマンドを格納するためのメモリと、
RF信号を受信するための受信手段と、
その中に組み込まれたユーザ設定および/またはコマンドを取得するために前記受信されたRF信号を処理し、かつ/または格納されたユーザ設定および/またはコマンドを出力RF信号、または前記受信されたRF信号のRF信号変調内に組み込むための処理手段と、
前記出力RF信号またはRF信号変調を出力するための出力手段とを備えるデータ・キャリア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−522719(P2007−522719A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550414(P2006−550414)
【出願日】平成17年1月19日(2005.1.19)
【国際出願番号】PCT/IB2005/050217
【国際公開番号】WO2005/071996
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】