RFIDを利用した入退室管理システム
【課題】入室・退室者の正確な管理ができる入退室管理システムを提供することを目的とする。
【解決手段】識別信号を一定周期で繰り返し発信するアクティブ型のRFIDタグ10と、このRFIDタグ10からの前記識別信号を受信するタグデータ受信機20と、このタグデータ受信機20から前記識別信号と共に受信データを取得し、入退室データを作成するデータ受信端末30と、このデータ受信端末30が作成した前記入退室データを取得し、記憶項目として管理する入退室情報管理データベース41と、を備える入退室管理システムであって、前記タグデータ受信機20が入室検知用および退室検知用の2種類の受信機から構成され、これらの受信データに基づいて入退室状態を把握する。
【解決手段】識別信号を一定周期で繰り返し発信するアクティブ型のRFIDタグ10と、このRFIDタグ10からの前記識別信号を受信するタグデータ受信機20と、このタグデータ受信機20から前記識別信号と共に受信データを取得し、入退室データを作成するデータ受信端末30と、このデータ受信端末30が作成した前記入退室データを取得し、記憶項目として管理する入退室情報管理データベース41と、を備える入退室管理システムであって、前記タグデータ受信機20が入室検知用および退室検知用の2種類の受信機から構成され、これらの受信データに基づいて入退室状態を把握する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理対象室への入室者および管理対象室からの退室者を把握する入退室管理システムに係り、特にRFIDを利用した入退室管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
微小な無線チップにより非接触でIDコードを識別するRFID(Radio Frequency Identification)システムはIDコードを送信するRFIDタグとIDコードを受信するRFIDリーダから構成されている。このRFIDを利用し、例えばクリーンルームへの入退室管理する装置が知られている。この装置においては、クリーンルームの出入口に設置された二つの遮光センサーとRFID装置の両方から得た情報から入室・退室を判定している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−150645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来技術においては、多数の者が同時に入退室を繰り返した場合や入退室者が入口で立ち止まったり、引き返したりした場合には入退室状態を誤って判定してしまうという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は複数の管理エリアにおける入退室者の正確な把握および管理が可能な入退室管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明に係るRFIDを利用した入退室管理システムは、所持者の個人識別情報を含むタグデータを無線信号により一定周期で繰り返し発信するアクティブ型のRFIDタグと、管理対象室の出入口に通じる通路内に配置され、前記無線信号から前記タグデータを取得し、これに第1の受信機識別情報を付加した受信データを出力する第1の検知用受信機と、前記通路内で前記第1の検知用受信機より所定の距離をおいて配置され、これに第2の受信機識別情報を付加した受信データを出力する第2の検知用受信機と、前記第1および第2の検知用受信機に接続されたデータ受信端末と、このデータ受信端末に接続され、前記RFIDタグの入退室状態を記憶する入退室状態記憶手段とを備え、前記データ受信端末は、更に、前記受信データから前記個人識別情報および前記受信機識別情報を検出する検出手段と、前記検出された個人識別情報に対し、1つ前に検出された同一の個人識別情報とともに検出された受信機識別情報が同一のとき、前記受信データの個数を計数する計数手段と、この計数手段が所定の個数を計数したとき前記RFID所持者の入退室検知情報と前記入退室状態記憶手段に記憶されている入退室状態情報を比較する比較手段と、この比較結果に応じて前記入退室状態記憶手段の記憶内容を更新する更新手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、管理対象室への入退室の正確な検出と、それに基づく入退室状態の正確な把握が可能な入退室管理システムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態に係る入退室管理システムの全体構成を示す図である。この入退室管理システムは、RFIDタグ10、このRFIDタグ10から送信される無線信号を受信するタグデータ受信機20、このタグデータ受信機20に共通バスライン25を介して接続されたデータ受信端末30、入退室情報管理サーバ40、および入退室情報管理クライアント端末50から構成されている。
【0009】
RFIDタグ10は、複数の入退室管理対象者毎に1個ずつ所持され、タグ毎にRFIDタグ所持者の個人識別情報(以下タグIDという。)が割り当てられている。これらのRFIDタグ10は、一定周期、例えば0.5秒周期でこのタグIDを含むタグデータを無線信号により発信するアクティブ型の無線タグである。
【0010】
タグデータ受信機20は入室検知受信機(第1の検知用受信機)21および退室検知受信機(第2の検知用受信機)22の2種類の受信機を一対の受信機として備えている。これらの一対の受信機はそれぞれRFIDタグ10からの無線信号を受信する。タグデータ受信機20を構成する一対の入室検知受信機21および退室検知受信機22は、管理対象室の出入口に通じる通路内に併設される。ここで、入室検知受信機21は管理対象室の出入口の近くに設置され、退室検知受信機22は入室検知受信機21から所定の距離を置いて設置される。この所定の距離とは、同一のRFIDタグ10からの無線信号を同時に2つの受信機で受信するのを極力防止しうる距離を意味する。したがって、この距離はRFIDタグ10からの無線信号の強度に応じて設定する。
【0011】
タグデータ受信機20を構成する一対の入室検知受信機21および退室検知受信機22は、それぞれ受信機識別情報(以下受信機IDという。)を有しており、それぞれが受信した受信データに入室検知受信機21であるか退室検知受信機22であるかを識別する受信機IDを付加し、共通バスライン25を介してデータ受信端末30に送る。例えば、ここで入室検知受信機21であることを示す受信機ID(第1の受信機識別情報)としては「入室」あるいは「IN」を、また、退室検知受信機22であることを示す受信機ID(第2の受信機識別情報)としては「退室」あるいは「OUT」を用いるものとする。
【0012】
なお、タグデータ受信機20を構成する一対の入室検知受信機21および退室検知受信機22は、管理対象室に複数個の出入り口がある場合、あるいは管理対象室が複数個存在する場合には、各管理室の出入口毎に設置される。この場合、受信機IDは「入室」「退室」を示すIDに各管理対象室あるいはそれらの出入口を識別するための識別符号、例えばA、B、C、…等を付加したIDを用いる。
【0013】
データ受信端末30は、後述するように、入室検知受信機21および退室検知受信機22から受信した受信データを解析してRFIDタグ10の所持者(以下、「タグ所持者」という。)の管理対象室に対する入退室状態を示す入退室データを作成し、これを入退室情報管理サーバ40へ送信する。データ受信端末30はまた、タグ所持者名、入室時刻あるいは退室時刻、および入退室履歴情報等を含む入退室データを作成し、これを入退室情報管理サーバ40へ送信する。なお、データ受信端末30は各管理対象室あるいはそれらの出入口毎に1台ずつ設置しても良いし、1台でいくつかの管理対象室あるいはそれらの出入口に設置された複数台のタグデータ受信機20からのデータを並列処理しても良い。
【0014】
入退室情報管理サーバ40は、データ受信端末30から受信した入退室データを内部に備える入退室情報管理データベース41に蓄積すると共に、そのバックアップ手段を備えている。また、入退室情報管理サーバ40にはWebサーバを構築し、入退室情報管理クライアント端末50からデータベースに蓄積された入退室データを参照する手段を提供する。
【0015】
入退室情報管理クライアント端末50は、入退室情報管理サーバ40に蓄積された入退室データを参照し、あるいは権限によりこれを修正するためのパーソナルコンピュータ等により構成される端末装置である。入退室情報管理クライアント端末50は、例えば表1に示すような情報の参照および修正等の機能を備えている。
【表1】
【0016】
図2は、データ受信端末30内部におけるデータの流れおよび処理を説明する機能ブロック図である。受信部31がタグデータ受信機20から受信データを受信し、これをID検出部32に供給する。ID検出部32では、受信データ中からタグIDおよび受信機IDが検出される。検出されたタグIDおよび受信機IDは、タグID毎にID記憶部33に記憶された受信機IDと比較部34で比較される。ID記憶部33には、1個前の受信データに含まれる受信機IDが記憶されている。
【0017】
比較部34での比較の結果、両者が一致した場合には、カウンタ部35は、受信部31に受信された受信データをカウントする。そして、そのカウント値が所定の閾値、例えば5に達したとき、カウンタ出力を発生し、これを入退室状態(ステータス)判定部36に供給する。入退室ステータス判定部36では、入退室状態(ステータス)記憶部37に記憶された対応する同じタグIDを有するRFIDタグの現在の入退室ステータスデータを受信データが受信された受信機IDが表す「入室(IN)」あるいは「退室(OUT)」状態と比較する。この結果、両者が異なる場合には、入室あるいは退室の状態になったものと判定する。この結果、入退室ステータスデータ作成部38は、受信機IDが表す入退室ステータスを新たな入退室ステータスデータとして作成し、これを入退室情報管理サーバ40に送ると共に、入退室ステータス記憶部37の記憶内容を更新する。入退室ステータス判定部36での比較の結果両者が同じ場合には、入退室ステータスデータ作成部38は新たなデータを作成することはなく、入退室ステータス記憶部37の記憶内容も更新されない。
【0018】
図3は、入退室ステータス判定部36による判定方法を説明するための、受信機IDと入退室ステータス記憶部37の記憶内容との対応関係を示す表である。すなわち、同一のRFIDタグ10からの受信データを同一の受信機“IN”により5回連続して受信した場合には、入退室ステータス記憶部37の記憶内容が「入室」である場合には「入室」と判定し、入退室ステータス記憶部37の記憶内容が「退室」である場合には「入室」と判定する。また、同一のRFIDタグ10からの受信データを同一の受信機“OUT”により5回連続して受信した場合には、入退室ステータス記憶部37の記憶内容が「入室」である場合には「退室」と判定し、入退室ステータス記憶部37の記憶内容が「退室」である場合には「退室」と判定する。
【0019】
次に、上述したような構成を有する本発明の一実施形態に係る入退室管理システムの動作について図4乃至11を用いて説明する。図4は、上記入退室管理システムにおいて、RFIDタグ10からタグデータを受信した場合の入退室管理のための情報処理の流れを示すフローチャートである。また、図5乃至12は、タグ所持者10´が管理対象室11に通ずる通路12に設置された退室検知受信機22、入室検知受信機21の設置場所を順次に通過し、管理対象室11に入るまでの各状況をデータ受信端末30内の情報の変化とともに説明する図である。
【0020】
図5は、タグ所持者10´が管理対象室11に通ずる通路12内を管理対象室11に向かって移動し、退室検知受信機22に接近した状況を示す。タグ所持者10´が退室検知受信機22の受信範囲に入ると、図4に示す情報処理が開始され、所持しているRFIDタグのタグデータが受信される(ステップ4a)。このタグデータは、退室検知受信機22の受信機ID“OUT”とともに受信データとしてデータ受信端末30へ送信される。そして、データ受信端末30ではタグデータを受信した退室検知受信機22が前回そのタグデータを受信した受信機と同一か否かが判定される(ステップ4b)。図5の状況においては退室検知受信機22が初めてタグ所持者10´のタグデータを受信するものと仮定すると、ここでは異なる受信機と判定される。そして、退室検知受信機22の受信機ID“OUT”がデータ受信端末30内のID記憶部33に記憶される(ステップ4g)。そして、入退室カウンタ35が1に初期化される(ステップ4h)。
【0021】
図5の状況においては、データ受信端末30内の情報、すなわち、ID記憶部33に含まれる退室検知受信機22のID、入退室カウンタ35のカウント値および入退室状態(ステータス)記憶部37の内容である入退室ステータスは、図示のように、それぞれ、“OUT”、1、「退室」となっている。
【0022】
図6は、タグ所持者10´が退室検知受信機22の設置場所を通過中の状況を示す。退室検知受信機22にはタグ所持者10´のRFIDタグが送出する2個目のタグデータが受信され、図4の情報処理ステップが繰り返される(ステップ4a)。この2個目のタグデータは、受信機ID“OUT”とともに受信データとしてデータ受信端末30へ送信される。そして、データ受信端末30では退室検知受信機22により受信したタグデータが前回受信した受信機と同一の受信機により受信されたものか否かが判定される(ステップ4b)。同一であれば入退室カウンタの内容を1だけカウントアップして2とする(ステップ4f)。
【0023】
図6の状況においては、データ受信端末30内の情報、すなわち、ID記憶部33に含まれる退室検知受信機22のID、入退室カウンタ35のカウント値および入退室ステータス記憶部37の入退室ステータスは、図示のように、それぞれ、“OUT”、2、「退室」となっている。
【0024】
次に、図7に示すように、タグ所持者10´が退室検知受信機22の設置場所をさらに管理対象室の入口に向かって通過中、同様な処理を繰り返す。この結果、同一の退室検知受信機22が同一のRFIDタグ10から5個目の受信データを受信すると、入退室カウンタが閾値に達する。この状態は、図2のフローチャートに示すように、データ受信端末30で判定される(ステップ4c)。
【0025】
入退室カウンタが閾値に達すると、処理はステップ4dに進む。ステップ4dにおいては、退室検知受信機22のIDと入退室ステータス記憶部37の内容とが入退室ステータス判定部36により比較される。ここでは、受信機IDが“OUT”であり、入退室ステータス記憶部37の入退室ステータスも「退室」であるので、入退室ステータス判定部36はタグ所持者10´は依然として「退室」であると判定する。したがって、入退室ステータス記憶部37の入退室ステータスの更新処理は行われない。
【0026】
図8は、タグ所持者10´が入室検知受信機21に接近した場合を示す。このように、タグ所持者10´が入室検知受信機21の受信範囲に入ると、図4の処理が再度開始され、タグデータが受信される(ステップ4a)。このタグデータは、受信機ID(“IN”)と一緒に受信データとしてデータ受信端末30へ送信される。そして、タグデータを受信した受信機が前回受信した受信機と同一か否かが判定される(ステップ4b)。ここでは、受信機IDが“OUT”から“IN”に変わっているので、異なる受信機と判定される。そして、新しい受信機ID(“IN”)がデータ受信端末30内のID記憶部に記憶される(ステップ4g)。そして、入退室カウンタが1に初期化される(ステップ4h)。
【0027】
図8の状況においては、データ受信端末30内の情報、すなわち、ID記憶部33に含まれる入室検知受信機21のID、入退室カウンタ35のカウント値および入退室ステータス記憶部37の内容である入退室ステータスは、図示のように、それぞれ、“IN”、1、「退室」となる。
【0028】
図9は、タグ所持者10´が入室検知受信機21を通過中の状況を示す。図9のように、タグ所持者10´が入室検知受信機21の受信範囲を進み、2個目の受信データが受信される(ステップ4a)。そして、受信データを受信した入室検知受信機21が前回の受信データを受信した受信機と同一かどうか判定(ステップ4b)し、同一の場合、入退室カウンタが閾値に達しているか否かが判定される(ステップ4c)。カウント値が閾値5未満と判定されると、ステップ4fへ進み、入退室カウンタが加算(+1)される。以下、タグ所持者10´が入室検知受信機21の受信範囲内をさらに管理対象室の入口に向かって移動する間、タグデータが順次受信され、入退室カウンタのカウント値が加算される。
【0029】
図10は、タグ所持者10´が入室検知受信機21の設置場所を通過中に入退室カウンタが閾値に達した場合を示す。入退室カウンタが閾値に達すると、処理はステップ4dに進む。ステップ4dにおいては、入室検知受信機21のIDと入退室ステータス記憶部37の内容とが入退室ステータス判定部36により比較される。ここでは、受信機IDは“IN”であり、入退室ステータス記憶部37の内容である入退室ステータスは「退室」であるので、入退室ステータス判定部36はタグ所持者10´のRFIDタグは「入室」であると判定する。したがって、入退室ステータス記憶部の入退室ステータスを更新処理し、処理が終了する。
【0030】
図11はタグ所持者10´が入室検知受信機21と退室検知受信機22の設置位置のほぼ中間地点を通過する状況を示す図である。両受信機の設置位置が十分に離れている場合にはタグ所持者10´のRFIDタグからの信号は受信されない。しかしながら、両受信機の設置位置が十分に離れておらず受信範囲が重なる場合には、同時に2つの受信機で同じ信号を受信する可能性がある。しかし、どちらかの受信機の受信範囲から離れるにしたがって、一方の受信機では受信できず、他方の受信機では受信可能になる。本発明では、一時的に2つの受信機で同じ信号を受信する状況が生じても、入退室カウンタが所定の閾値となるまで入退室ステータスを更新しないため、入退室ステータスを誤って更新することはない。
【0031】
図12は図5乃至図10までの各状況下でのタグ所持者10´の移動に伴う受信データの受信状態とそれに基づく入退室ステータスデータの関係を示す図である。図において、退室検知受信機22および入室検知受信機21により受信される受信信号はそれぞれ5本の矢印1〜5で示されている。また、入退室ステータスは、「退室」または「入室」である。また、入退室ステータスデータは、入室検知受信機21が4個の受信信号を受信しても「退室」を表示したままであり、入室検知受信機21が5個の受信信号を受信して初めて「入室」表示に変化することを示している。
【0032】
以上の説明はタグ所持者が管理対象室に入室する場合についてのものであったが、タグ所持者が管理対象室から退室する場合もほぼ同様な情報処理が行われる。図13はタグ所持者10´が管理対象室11から退室する場合における受信データの受信状態とそれに基づく入退室ステータスデータの関係を示す図である。図において、タグ所持者10´が管理対象室11から退室し、入室検知受信機21の受信範囲を通過中は、入室検知受信機21が受信信号を受信するが、タグ所持者10´の現在の入退室ステータスは「入室」であるため更新されない。そして、タグ所持者10´が退室検知受信機22の受信範囲を通過して閾値を超える受信信号を受信すると、タグ所持者10´の現在の入退室ステータスとは異なると判定され、入退室ステータスデータが「退室」に更新される。
【0033】
このように、入室検知受信機21および退室検知受信機22との二段階の交信によってタグ所持者の移動する方向を把握し、受信機の種類と入退室カウントによって入退室状態を確定することができる。また、入退室情報管理データベース41に情報を蓄積することで、管理対象室における入室・退室者の正確なID、人数、および入退室履歴等を管理することができる。
【0034】
図14は管理対象室Aに通ずる通路12の途中に、他の管理対象室Bに通ずる分岐路13が存在し、タグ所持者10´が管理対象室11Aを退室した後、この分岐路13を通って他の管理対象室11Bに入室する場合における受信データの受信状態とそれに基づく入退室ステータスデータの関係を示す図である。
【0035】
ここでは、管理対象室11Aの出入口近傍に設置された入室検知受信機21Aの受信機IDを“A−IN”とし、管理対象室11Bの出入口近傍に設置された入室検知受信機21Bの受信機IDを“B−IN”とする。また、退室検知受信機22については2つの管理対象室11A、11Bに対して共通の受信機が用いられるものとする。
【0036】
タグ所持者10´が管理対象室11Aを退室した後、入室検知受信機21Aの受信範囲を通過する際、入室検知受信機21Aはタグ所持者10´からの受信信号を受信する。この結果、タグ所持者10´の現在の入退室ステータスデータ「A入室」と入室検知受信機21Aの受信機ID“A−IN”とを比較して、新たなステータスは現在と同じく「A入室」と判定する。
【0037】
次いで、タグ所持者10´が管理対象室11Bの出入口近傍に設置された入室検知受信機21Bの受信範囲を通過すると、入室検知受信機21Bはタグ所持者10´からの受信信号を受信する。この結果、タグ所持者10´の現在の入退室ステータスデータ「A入室」と入室検知受信機21Bの受信機ID“B−IN”とを比較し、両者が異なるため、新たなステータスは現在と異なり「B入室」と判定する。
【0038】
同様に、管理対象室Bより出て、退室検知用受信機22の受信範囲を通過すれば、管理対象範囲より退出したことが検知され、タグ所持者10´の入退室ステータスが更新される。
【0039】
本発明による入退室の管理では、入室用と退室用の検知受信機の二段階の交信によって判定するので、タグ保持者10´が管理対象室を入室または退室するまでに2つの受信機でステータスを更新できればよい。すなわち、一通路内で2つ以上の管理対象室がある場合、入室検知用受信機は管理対象室毎に設置し、退室検知用受信機は通路出口付近に一つ設置すればよい。また、管理対象室の一つの出入口から2つ以上の通路(退出路)がある場合は、管理対象室の一つの出入口に入室検知用受信機を一つ設置し、通路の出口側に退室検知用受信機をそれぞれ設置すればよい。これにより、タグ所持者の入退室状態を正確に管理することができる。
【0040】
図15乃至図17は図1に示した入退室情報管理クライアント端末50により参照される情報の具体例を示す各種表示画面例を示す図である。入退室情報管理データベース41に保存されているデータを用い、画面表示を行う。図15はCR在室人数表示であり、ここでは管理対象室としてクリーンルーム(CR)を想定している。図16はCR在室者表示であり、在室者の具体的情報が表示され、在室上限時間を超過した在室者欄は例えば赤色の背景で表示され、注意が喚起される。図17はCR入退室詳細検索結果を示す一覧表であり、CR番号、従業員(利用者)コード、氏名、入退室状態、タグデータ受信時刻、等が一覧表示されている。
【0041】
以上本発明の最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で種々変形して実施可能である。例えば、上記実施形態では一対のタグデータ受信機20に対してデータ受信端末30は一台設置されているが、複数対のタグデータ受信機20に対応する構成としても良い。この場合、入退室ステータスを部屋毎に設定することで複数の管理対象室における入退室状態を詳細に把握できる。また、複数のデータ受信端末30に一台の入退室情報管理サーバ40が管理する構成としても良い。設置コスト等を考慮して選択可能である。更に、データ受信端末30、入退室情報管理サーバ40、入退室情報管理クライアント端末50の機能を単一のハードウェアが備える構成としても良い。この場合、システムの設置や移動が容易となる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る全体構成例を示すブロック図。
【図2】本発明の実施形態に係るデータ受信端末30内部のデータの流れおよび処理を説明する機能ブロック図。
【図3】本発明の実施形態に係る受信機により入退室ステータスを判定するための対応関係を説明する表。
【図4】本発明の実施形態に係る入退室判定処理の具体例を示すフローチャート。
【図5】本発明の実施形態における入室の状況を説明する図。
【図6】本発明の実施形態における入室の状況を説明する図。
【図7】本発明の実施形態における入室の状況を説明する図。
【図8】本発明の実施形態における入室の状況を説明する図。
【図9】本発明の実施形態における入室の状況を説明する図。
【図10】本発明の実施形態における入室の状況を説明する図。
【図11】本発明の実施形態における入室の状況を説明する図。
【図12】本発明の実施形態における入室の状況を全体的に説明する図。
【図13】本発明の実施形態における退室の状況を全体的に説明する図。
【図14】本発明の実施形態における入退室の状況を説明する図。
【図15】図1に示した入退室情報管理クライアント端末50により参照される情報の具体例を示す表示画面。
【図16】図1に示した入退室情報管理クライアント端末50により参照される情報の具体例を示す表示画面。
【図17】図1に示した入退室情報管理クライアント端末50により参照される情報の具体例を示す表示画面。
【符号の説明】
【0043】
10…RFIDタグ、20…タグデータ受信機、
21…入室検知受信機、22…退室検知受信機、
25…共通バスライン、30…データ受信端末、
40…入退室情報管理サーバ、41…入退室情報管理データベース、
50…入退室情報管理クライアント端末。
【技術分野】
【0001】
本発明は、管理対象室への入室者および管理対象室からの退室者を把握する入退室管理システムに係り、特にRFIDを利用した入退室管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
微小な無線チップにより非接触でIDコードを識別するRFID(Radio Frequency Identification)システムはIDコードを送信するRFIDタグとIDコードを受信するRFIDリーダから構成されている。このRFIDを利用し、例えばクリーンルームへの入退室管理する装置が知られている。この装置においては、クリーンルームの出入口に設置された二つの遮光センサーとRFID装置の両方から得た情報から入室・退室を判定している(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−150645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来技術においては、多数の者が同時に入退室を繰り返した場合や入退室者が入口で立ち止まったり、引き返したりした場合には入退室状態を誤って判定してしまうという問題があった。
【0004】
そこで、本発明は複数の管理エリアにおける入退室者の正確な把握および管理が可能な入退室管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明に係るRFIDを利用した入退室管理システムは、所持者の個人識別情報を含むタグデータを無線信号により一定周期で繰り返し発信するアクティブ型のRFIDタグと、管理対象室の出入口に通じる通路内に配置され、前記無線信号から前記タグデータを取得し、これに第1の受信機識別情報を付加した受信データを出力する第1の検知用受信機と、前記通路内で前記第1の検知用受信機より所定の距離をおいて配置され、これに第2の受信機識別情報を付加した受信データを出力する第2の検知用受信機と、前記第1および第2の検知用受信機に接続されたデータ受信端末と、このデータ受信端末に接続され、前記RFIDタグの入退室状態を記憶する入退室状態記憶手段とを備え、前記データ受信端末は、更に、前記受信データから前記個人識別情報および前記受信機識別情報を検出する検出手段と、前記検出された個人識別情報に対し、1つ前に検出された同一の個人識別情報とともに検出された受信機識別情報が同一のとき、前記受信データの個数を計数する計数手段と、この計数手段が所定の個数を計数したとき前記RFID所持者の入退室検知情報と前記入退室状態記憶手段に記憶されている入退室状態情報を比較する比較手段と、この比較結果に応じて前記入退室状態記憶手段の記憶内容を更新する更新手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、管理対象室への入退室の正確な検出と、それに基づく入退室状態の正確な把握が可能な入退室管理システムが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態に係る入退室管理システムの全体構成を示す図である。この入退室管理システムは、RFIDタグ10、このRFIDタグ10から送信される無線信号を受信するタグデータ受信機20、このタグデータ受信機20に共通バスライン25を介して接続されたデータ受信端末30、入退室情報管理サーバ40、および入退室情報管理クライアント端末50から構成されている。
【0009】
RFIDタグ10は、複数の入退室管理対象者毎に1個ずつ所持され、タグ毎にRFIDタグ所持者の個人識別情報(以下タグIDという。)が割り当てられている。これらのRFIDタグ10は、一定周期、例えば0.5秒周期でこのタグIDを含むタグデータを無線信号により発信するアクティブ型の無線タグである。
【0010】
タグデータ受信機20は入室検知受信機(第1の検知用受信機)21および退室検知受信機(第2の検知用受信機)22の2種類の受信機を一対の受信機として備えている。これらの一対の受信機はそれぞれRFIDタグ10からの無線信号を受信する。タグデータ受信機20を構成する一対の入室検知受信機21および退室検知受信機22は、管理対象室の出入口に通じる通路内に併設される。ここで、入室検知受信機21は管理対象室の出入口の近くに設置され、退室検知受信機22は入室検知受信機21から所定の距離を置いて設置される。この所定の距離とは、同一のRFIDタグ10からの無線信号を同時に2つの受信機で受信するのを極力防止しうる距離を意味する。したがって、この距離はRFIDタグ10からの無線信号の強度に応じて設定する。
【0011】
タグデータ受信機20を構成する一対の入室検知受信機21および退室検知受信機22は、それぞれ受信機識別情報(以下受信機IDという。)を有しており、それぞれが受信した受信データに入室検知受信機21であるか退室検知受信機22であるかを識別する受信機IDを付加し、共通バスライン25を介してデータ受信端末30に送る。例えば、ここで入室検知受信機21であることを示す受信機ID(第1の受信機識別情報)としては「入室」あるいは「IN」を、また、退室検知受信機22であることを示す受信機ID(第2の受信機識別情報)としては「退室」あるいは「OUT」を用いるものとする。
【0012】
なお、タグデータ受信機20を構成する一対の入室検知受信機21および退室検知受信機22は、管理対象室に複数個の出入り口がある場合、あるいは管理対象室が複数個存在する場合には、各管理室の出入口毎に設置される。この場合、受信機IDは「入室」「退室」を示すIDに各管理対象室あるいはそれらの出入口を識別するための識別符号、例えばA、B、C、…等を付加したIDを用いる。
【0013】
データ受信端末30は、後述するように、入室検知受信機21および退室検知受信機22から受信した受信データを解析してRFIDタグ10の所持者(以下、「タグ所持者」という。)の管理対象室に対する入退室状態を示す入退室データを作成し、これを入退室情報管理サーバ40へ送信する。データ受信端末30はまた、タグ所持者名、入室時刻あるいは退室時刻、および入退室履歴情報等を含む入退室データを作成し、これを入退室情報管理サーバ40へ送信する。なお、データ受信端末30は各管理対象室あるいはそれらの出入口毎に1台ずつ設置しても良いし、1台でいくつかの管理対象室あるいはそれらの出入口に設置された複数台のタグデータ受信機20からのデータを並列処理しても良い。
【0014】
入退室情報管理サーバ40は、データ受信端末30から受信した入退室データを内部に備える入退室情報管理データベース41に蓄積すると共に、そのバックアップ手段を備えている。また、入退室情報管理サーバ40にはWebサーバを構築し、入退室情報管理クライアント端末50からデータベースに蓄積された入退室データを参照する手段を提供する。
【0015】
入退室情報管理クライアント端末50は、入退室情報管理サーバ40に蓄積された入退室データを参照し、あるいは権限によりこれを修正するためのパーソナルコンピュータ等により構成される端末装置である。入退室情報管理クライアント端末50は、例えば表1に示すような情報の参照および修正等の機能を備えている。
【表1】
【0016】
図2は、データ受信端末30内部におけるデータの流れおよび処理を説明する機能ブロック図である。受信部31がタグデータ受信機20から受信データを受信し、これをID検出部32に供給する。ID検出部32では、受信データ中からタグIDおよび受信機IDが検出される。検出されたタグIDおよび受信機IDは、タグID毎にID記憶部33に記憶された受信機IDと比較部34で比較される。ID記憶部33には、1個前の受信データに含まれる受信機IDが記憶されている。
【0017】
比較部34での比較の結果、両者が一致した場合には、カウンタ部35は、受信部31に受信された受信データをカウントする。そして、そのカウント値が所定の閾値、例えば5に達したとき、カウンタ出力を発生し、これを入退室状態(ステータス)判定部36に供給する。入退室ステータス判定部36では、入退室状態(ステータス)記憶部37に記憶された対応する同じタグIDを有するRFIDタグの現在の入退室ステータスデータを受信データが受信された受信機IDが表す「入室(IN)」あるいは「退室(OUT)」状態と比較する。この結果、両者が異なる場合には、入室あるいは退室の状態になったものと判定する。この結果、入退室ステータスデータ作成部38は、受信機IDが表す入退室ステータスを新たな入退室ステータスデータとして作成し、これを入退室情報管理サーバ40に送ると共に、入退室ステータス記憶部37の記憶内容を更新する。入退室ステータス判定部36での比較の結果両者が同じ場合には、入退室ステータスデータ作成部38は新たなデータを作成することはなく、入退室ステータス記憶部37の記憶内容も更新されない。
【0018】
図3は、入退室ステータス判定部36による判定方法を説明するための、受信機IDと入退室ステータス記憶部37の記憶内容との対応関係を示す表である。すなわち、同一のRFIDタグ10からの受信データを同一の受信機“IN”により5回連続して受信した場合には、入退室ステータス記憶部37の記憶内容が「入室」である場合には「入室」と判定し、入退室ステータス記憶部37の記憶内容が「退室」である場合には「入室」と判定する。また、同一のRFIDタグ10からの受信データを同一の受信機“OUT”により5回連続して受信した場合には、入退室ステータス記憶部37の記憶内容が「入室」である場合には「退室」と判定し、入退室ステータス記憶部37の記憶内容が「退室」である場合には「退室」と判定する。
【0019】
次に、上述したような構成を有する本発明の一実施形態に係る入退室管理システムの動作について図4乃至11を用いて説明する。図4は、上記入退室管理システムにおいて、RFIDタグ10からタグデータを受信した場合の入退室管理のための情報処理の流れを示すフローチャートである。また、図5乃至12は、タグ所持者10´が管理対象室11に通ずる通路12に設置された退室検知受信機22、入室検知受信機21の設置場所を順次に通過し、管理対象室11に入るまでの各状況をデータ受信端末30内の情報の変化とともに説明する図である。
【0020】
図5は、タグ所持者10´が管理対象室11に通ずる通路12内を管理対象室11に向かって移動し、退室検知受信機22に接近した状況を示す。タグ所持者10´が退室検知受信機22の受信範囲に入ると、図4に示す情報処理が開始され、所持しているRFIDタグのタグデータが受信される(ステップ4a)。このタグデータは、退室検知受信機22の受信機ID“OUT”とともに受信データとしてデータ受信端末30へ送信される。そして、データ受信端末30ではタグデータを受信した退室検知受信機22が前回そのタグデータを受信した受信機と同一か否かが判定される(ステップ4b)。図5の状況においては退室検知受信機22が初めてタグ所持者10´のタグデータを受信するものと仮定すると、ここでは異なる受信機と判定される。そして、退室検知受信機22の受信機ID“OUT”がデータ受信端末30内のID記憶部33に記憶される(ステップ4g)。そして、入退室カウンタ35が1に初期化される(ステップ4h)。
【0021】
図5の状況においては、データ受信端末30内の情報、すなわち、ID記憶部33に含まれる退室検知受信機22のID、入退室カウンタ35のカウント値および入退室状態(ステータス)記憶部37の内容である入退室ステータスは、図示のように、それぞれ、“OUT”、1、「退室」となっている。
【0022】
図6は、タグ所持者10´が退室検知受信機22の設置場所を通過中の状況を示す。退室検知受信機22にはタグ所持者10´のRFIDタグが送出する2個目のタグデータが受信され、図4の情報処理ステップが繰り返される(ステップ4a)。この2個目のタグデータは、受信機ID“OUT”とともに受信データとしてデータ受信端末30へ送信される。そして、データ受信端末30では退室検知受信機22により受信したタグデータが前回受信した受信機と同一の受信機により受信されたものか否かが判定される(ステップ4b)。同一であれば入退室カウンタの内容を1だけカウントアップして2とする(ステップ4f)。
【0023】
図6の状況においては、データ受信端末30内の情報、すなわち、ID記憶部33に含まれる退室検知受信機22のID、入退室カウンタ35のカウント値および入退室ステータス記憶部37の入退室ステータスは、図示のように、それぞれ、“OUT”、2、「退室」となっている。
【0024】
次に、図7に示すように、タグ所持者10´が退室検知受信機22の設置場所をさらに管理対象室の入口に向かって通過中、同様な処理を繰り返す。この結果、同一の退室検知受信機22が同一のRFIDタグ10から5個目の受信データを受信すると、入退室カウンタが閾値に達する。この状態は、図2のフローチャートに示すように、データ受信端末30で判定される(ステップ4c)。
【0025】
入退室カウンタが閾値に達すると、処理はステップ4dに進む。ステップ4dにおいては、退室検知受信機22のIDと入退室ステータス記憶部37の内容とが入退室ステータス判定部36により比較される。ここでは、受信機IDが“OUT”であり、入退室ステータス記憶部37の入退室ステータスも「退室」であるので、入退室ステータス判定部36はタグ所持者10´は依然として「退室」であると判定する。したがって、入退室ステータス記憶部37の入退室ステータスの更新処理は行われない。
【0026】
図8は、タグ所持者10´が入室検知受信機21に接近した場合を示す。このように、タグ所持者10´が入室検知受信機21の受信範囲に入ると、図4の処理が再度開始され、タグデータが受信される(ステップ4a)。このタグデータは、受信機ID(“IN”)と一緒に受信データとしてデータ受信端末30へ送信される。そして、タグデータを受信した受信機が前回受信した受信機と同一か否かが判定される(ステップ4b)。ここでは、受信機IDが“OUT”から“IN”に変わっているので、異なる受信機と判定される。そして、新しい受信機ID(“IN”)がデータ受信端末30内のID記憶部に記憶される(ステップ4g)。そして、入退室カウンタが1に初期化される(ステップ4h)。
【0027】
図8の状況においては、データ受信端末30内の情報、すなわち、ID記憶部33に含まれる入室検知受信機21のID、入退室カウンタ35のカウント値および入退室ステータス記憶部37の内容である入退室ステータスは、図示のように、それぞれ、“IN”、1、「退室」となる。
【0028】
図9は、タグ所持者10´が入室検知受信機21を通過中の状況を示す。図9のように、タグ所持者10´が入室検知受信機21の受信範囲を進み、2個目の受信データが受信される(ステップ4a)。そして、受信データを受信した入室検知受信機21が前回の受信データを受信した受信機と同一かどうか判定(ステップ4b)し、同一の場合、入退室カウンタが閾値に達しているか否かが判定される(ステップ4c)。カウント値が閾値5未満と判定されると、ステップ4fへ進み、入退室カウンタが加算(+1)される。以下、タグ所持者10´が入室検知受信機21の受信範囲内をさらに管理対象室の入口に向かって移動する間、タグデータが順次受信され、入退室カウンタのカウント値が加算される。
【0029】
図10は、タグ所持者10´が入室検知受信機21の設置場所を通過中に入退室カウンタが閾値に達した場合を示す。入退室カウンタが閾値に達すると、処理はステップ4dに進む。ステップ4dにおいては、入室検知受信機21のIDと入退室ステータス記憶部37の内容とが入退室ステータス判定部36により比較される。ここでは、受信機IDは“IN”であり、入退室ステータス記憶部37の内容である入退室ステータスは「退室」であるので、入退室ステータス判定部36はタグ所持者10´のRFIDタグは「入室」であると判定する。したがって、入退室ステータス記憶部の入退室ステータスを更新処理し、処理が終了する。
【0030】
図11はタグ所持者10´が入室検知受信機21と退室検知受信機22の設置位置のほぼ中間地点を通過する状況を示す図である。両受信機の設置位置が十分に離れている場合にはタグ所持者10´のRFIDタグからの信号は受信されない。しかしながら、両受信機の設置位置が十分に離れておらず受信範囲が重なる場合には、同時に2つの受信機で同じ信号を受信する可能性がある。しかし、どちらかの受信機の受信範囲から離れるにしたがって、一方の受信機では受信できず、他方の受信機では受信可能になる。本発明では、一時的に2つの受信機で同じ信号を受信する状況が生じても、入退室カウンタが所定の閾値となるまで入退室ステータスを更新しないため、入退室ステータスを誤って更新することはない。
【0031】
図12は図5乃至図10までの各状況下でのタグ所持者10´の移動に伴う受信データの受信状態とそれに基づく入退室ステータスデータの関係を示す図である。図において、退室検知受信機22および入室検知受信機21により受信される受信信号はそれぞれ5本の矢印1〜5で示されている。また、入退室ステータスは、「退室」または「入室」である。また、入退室ステータスデータは、入室検知受信機21が4個の受信信号を受信しても「退室」を表示したままであり、入室検知受信機21が5個の受信信号を受信して初めて「入室」表示に変化することを示している。
【0032】
以上の説明はタグ所持者が管理対象室に入室する場合についてのものであったが、タグ所持者が管理対象室から退室する場合もほぼ同様な情報処理が行われる。図13はタグ所持者10´が管理対象室11から退室する場合における受信データの受信状態とそれに基づく入退室ステータスデータの関係を示す図である。図において、タグ所持者10´が管理対象室11から退室し、入室検知受信機21の受信範囲を通過中は、入室検知受信機21が受信信号を受信するが、タグ所持者10´の現在の入退室ステータスは「入室」であるため更新されない。そして、タグ所持者10´が退室検知受信機22の受信範囲を通過して閾値を超える受信信号を受信すると、タグ所持者10´の現在の入退室ステータスとは異なると判定され、入退室ステータスデータが「退室」に更新される。
【0033】
このように、入室検知受信機21および退室検知受信機22との二段階の交信によってタグ所持者の移動する方向を把握し、受信機の種類と入退室カウントによって入退室状態を確定することができる。また、入退室情報管理データベース41に情報を蓄積することで、管理対象室における入室・退室者の正確なID、人数、および入退室履歴等を管理することができる。
【0034】
図14は管理対象室Aに通ずる通路12の途中に、他の管理対象室Bに通ずる分岐路13が存在し、タグ所持者10´が管理対象室11Aを退室した後、この分岐路13を通って他の管理対象室11Bに入室する場合における受信データの受信状態とそれに基づく入退室ステータスデータの関係を示す図である。
【0035】
ここでは、管理対象室11Aの出入口近傍に設置された入室検知受信機21Aの受信機IDを“A−IN”とし、管理対象室11Bの出入口近傍に設置された入室検知受信機21Bの受信機IDを“B−IN”とする。また、退室検知受信機22については2つの管理対象室11A、11Bに対して共通の受信機が用いられるものとする。
【0036】
タグ所持者10´が管理対象室11Aを退室した後、入室検知受信機21Aの受信範囲を通過する際、入室検知受信機21Aはタグ所持者10´からの受信信号を受信する。この結果、タグ所持者10´の現在の入退室ステータスデータ「A入室」と入室検知受信機21Aの受信機ID“A−IN”とを比較して、新たなステータスは現在と同じく「A入室」と判定する。
【0037】
次いで、タグ所持者10´が管理対象室11Bの出入口近傍に設置された入室検知受信機21Bの受信範囲を通過すると、入室検知受信機21Bはタグ所持者10´からの受信信号を受信する。この結果、タグ所持者10´の現在の入退室ステータスデータ「A入室」と入室検知受信機21Bの受信機ID“B−IN”とを比較し、両者が異なるため、新たなステータスは現在と異なり「B入室」と判定する。
【0038】
同様に、管理対象室Bより出て、退室検知用受信機22の受信範囲を通過すれば、管理対象範囲より退出したことが検知され、タグ所持者10´の入退室ステータスが更新される。
【0039】
本発明による入退室の管理では、入室用と退室用の検知受信機の二段階の交信によって判定するので、タグ保持者10´が管理対象室を入室または退室するまでに2つの受信機でステータスを更新できればよい。すなわち、一通路内で2つ以上の管理対象室がある場合、入室検知用受信機は管理対象室毎に設置し、退室検知用受信機は通路出口付近に一つ設置すればよい。また、管理対象室の一つの出入口から2つ以上の通路(退出路)がある場合は、管理対象室の一つの出入口に入室検知用受信機を一つ設置し、通路の出口側に退室検知用受信機をそれぞれ設置すればよい。これにより、タグ所持者の入退室状態を正確に管理することができる。
【0040】
図15乃至図17は図1に示した入退室情報管理クライアント端末50により参照される情報の具体例を示す各種表示画面例を示す図である。入退室情報管理データベース41に保存されているデータを用い、画面表示を行う。図15はCR在室人数表示であり、ここでは管理対象室としてクリーンルーム(CR)を想定している。図16はCR在室者表示であり、在室者の具体的情報が表示され、在室上限時間を超過した在室者欄は例えば赤色の背景で表示され、注意が喚起される。図17はCR入退室詳細検索結果を示す一覧表であり、CR番号、従業員(利用者)コード、氏名、入退室状態、タグデータ受信時刻、等が一覧表示されている。
【0041】
以上本発明の最良の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で種々変形して実施可能である。例えば、上記実施形態では一対のタグデータ受信機20に対してデータ受信端末30は一台設置されているが、複数対のタグデータ受信機20に対応する構成としても良い。この場合、入退室ステータスを部屋毎に設定することで複数の管理対象室における入退室状態を詳細に把握できる。また、複数のデータ受信端末30に一台の入退室情報管理サーバ40が管理する構成としても良い。設置コスト等を考慮して選択可能である。更に、データ受信端末30、入退室情報管理サーバ40、入退室情報管理クライアント端末50の機能を単一のハードウェアが備える構成としても良い。この場合、システムの設置や移動が容易となる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の実施形態に係る全体構成例を示すブロック図。
【図2】本発明の実施形態に係るデータ受信端末30内部のデータの流れおよび処理を説明する機能ブロック図。
【図3】本発明の実施形態に係る受信機により入退室ステータスを判定するための対応関係を説明する表。
【図4】本発明の実施形態に係る入退室判定処理の具体例を示すフローチャート。
【図5】本発明の実施形態における入室の状況を説明する図。
【図6】本発明の実施形態における入室の状況を説明する図。
【図7】本発明の実施形態における入室の状況を説明する図。
【図8】本発明の実施形態における入室の状況を説明する図。
【図9】本発明の実施形態における入室の状況を説明する図。
【図10】本発明の実施形態における入室の状況を説明する図。
【図11】本発明の実施形態における入室の状況を説明する図。
【図12】本発明の実施形態における入室の状況を全体的に説明する図。
【図13】本発明の実施形態における退室の状況を全体的に説明する図。
【図14】本発明の実施形態における入退室の状況を説明する図。
【図15】図1に示した入退室情報管理クライアント端末50により参照される情報の具体例を示す表示画面。
【図16】図1に示した入退室情報管理クライアント端末50により参照される情報の具体例を示す表示画面。
【図17】図1に示した入退室情報管理クライアント端末50により参照される情報の具体例を示す表示画面。
【符号の説明】
【0043】
10…RFIDタグ、20…タグデータ受信機、
21…入室検知受信機、22…退室検知受信機、
25…共通バスライン、30…データ受信端末、
40…入退室情報管理サーバ、41…入退室情報管理データベース、
50…入退室情報管理クライアント端末。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所持者の個人識別情報を含むタグデータを無線信号により一定周期で繰り返し発信するアクティブ型のRFIDタグと、
管理対象室の出入口に通じる通路内に配置され、前記無線信号から前記タグデータを取得し、これに第1の受信機識別情報を付加した受信データを出力する第1の検知用受信機と、
前記通路内で前記第1の検知用受信機より所定の距離をおいて配置され、これに第2の受信機識別情報を付加した受信データを出力する第2の検知用受信機と、
前記第1および第2の検知用受信機に接続されたデータ受信端末と、
このデータ受信端末に接続され、前記RFIDタグの入退室状態を記憶する入退室状態記憶手段とを備え、
前記データ受信端末は、更に、
前記受信データから前記個人識別情報および前記受信機識別情報を検出する検出手段と、
前記検出された個人識別情報に対し、1つ前に検出された同一の個人識別情報とともに検出された受信機識別情報が同一のとき、前記受信データの個数を計数する計数手段と、
この計数手段が所定の個数を計数したとき前記RFID所持者の入退室検知情報と前記入退室状態記憶手段に記憶されている入退室状態情報を比較する比較手段と、
この比較結果に応じて前記入退室状態記憶手段の記憶内容を更新する更新手段とを備えることを特徴とするRFIDを利用した入退室管理システム。
【請求項2】
前記更新手段は、前記比較手段での比較結果が同一の場合には前記入退室状態記憶手段の記憶内容を更新せず、前記比較結果が異なる場合には前記入退室状態記憶手段の記憶内容を更新することを特徴とする請求項1に記載のRFIDを利用した入退室管理システム。
【請求項3】
前記RFID所持者の入退室検知情報は、前記所定回数の受信データを受信した受信機識別情報により決定することを特徴とする請求項2に記載のRFIDを利用した入退室管理システム。
【請求項4】
前記入退室状態記憶手段は、前記RFID所持者の入退室状態情報を複数の管理対象室毎に記憶していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のRFIDを利用した入退室管理システム。
【請求項5】
前記データ受信端末に接続され、複数の前記RFID所持者それぞれの個人識別情報、入退室状態情報およびその他の属性情報を記憶するデータベースを有する入退室情報管理サーバを更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のRFIDを利用した入退室管理システム。
【請求項1】
所持者の個人識別情報を含むタグデータを無線信号により一定周期で繰り返し発信するアクティブ型のRFIDタグと、
管理対象室の出入口に通じる通路内に配置され、前記無線信号から前記タグデータを取得し、これに第1の受信機識別情報を付加した受信データを出力する第1の検知用受信機と、
前記通路内で前記第1の検知用受信機より所定の距離をおいて配置され、これに第2の受信機識別情報を付加した受信データを出力する第2の検知用受信機と、
前記第1および第2の検知用受信機に接続されたデータ受信端末と、
このデータ受信端末に接続され、前記RFIDタグの入退室状態を記憶する入退室状態記憶手段とを備え、
前記データ受信端末は、更に、
前記受信データから前記個人識別情報および前記受信機識別情報を検出する検出手段と、
前記検出された個人識別情報に対し、1つ前に検出された同一の個人識別情報とともに検出された受信機識別情報が同一のとき、前記受信データの個数を計数する計数手段と、
この計数手段が所定の個数を計数したとき前記RFID所持者の入退室検知情報と前記入退室状態記憶手段に記憶されている入退室状態情報を比較する比較手段と、
この比較結果に応じて前記入退室状態記憶手段の記憶内容を更新する更新手段とを備えることを特徴とするRFIDを利用した入退室管理システム。
【請求項2】
前記更新手段は、前記比較手段での比較結果が同一の場合には前記入退室状態記憶手段の記憶内容を更新せず、前記比較結果が異なる場合には前記入退室状態記憶手段の記憶内容を更新することを特徴とする請求項1に記載のRFIDを利用した入退室管理システム。
【請求項3】
前記RFID所持者の入退室検知情報は、前記所定回数の受信データを受信した受信機識別情報により決定することを特徴とする請求項2に記載のRFIDを利用した入退室管理システム。
【請求項4】
前記入退室状態記憶手段は、前記RFID所持者の入退室状態情報を複数の管理対象室毎に記憶していることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のRFIDを利用した入退室管理システム。
【請求項5】
前記データ受信端末に接続され、複数の前記RFID所持者それぞれの個人識別情報、入退室状態情報およびその他の属性情報を記憶するデータベースを有する入退室情報管理サーバを更に備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のRFIDを利用した入退室管理システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−70957(P2008−70957A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−246840(P2006−246840)
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月12日(2006.9.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【Fターム(参考)】
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