説明

RFIDタグの動き追跡技術

【課題】RFIDタグの動きを追跡する技術を提供することを目的とする。
【解決手段】
信号強度情報を使用してRFIDタグの動きを追跡する技術である。移動中のRFIDタグから読み取り値の系列を取得するために、RFIDリーダの単一のアンテナが使用されてもよい。信号強度インジケータ(例えば、受信信号強度インジケータ(RSSI))は、読み取り値毎に判定される。RSSIの系列は、RFIDタグの動きの経路と、その経路に沿ったRFIDタグの動きの方向を推定するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施例は、無線認証(RFID:radio frequency identification)技術又は無線ICタグ技術に関し、特に信号強度情報を使用してRFIDタグの動きを追跡(トラッキング)する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、RFID技術は広く使用されてきている。物体に取り付けられたRFIDタグは、関連付けられた物体の位置を識別して追跡するために、ますます使用されてきている。RFIDタグは、タグへの物理的接触又は直接の見通し線を必要とせずにリーダにより読み取られることが可能である。RFID技術の進歩により、RFIDタグが読み取られ得る距離も、時間と共にますます増加している。以前は、タグを読み取ることができるためには、リーダはRFIDタグから数インチ内に存在しなければならなかったが、現在では、タグは、十メートル以上もの距離で読み取られることが可能になっている。その結果、RFIDタグの使用又は用途を増加させている。
【0003】
一般的に、RFIDタグは、タグが関連付けられた物体に関する情報及び/又は識別情報を格納するために使用され得るメモリを有する。RFIDタグにより格納された情報は、RFIDリーダにより読み取られ得る。アクティブタグ(能動タグ)、パッシブタグ(受動タグ)、セミアクティブタグ等を含み、様々な種類のRFIDタグが存在する。アクティブタグは、タグに電源(例えば、バッテリ)を有し、自律的に無線信号を送信することができる。他方、パッシブRFIDタグは、タグに電源を有さず、信号送信を引き起こすために外部供給源を必要とする。一般的に、パッシブRFIDタグは、RFIDリーダから無線信号を受信したときに活性化され、活性化に応じて信号を送信する。アクティブタグであれ、パッシブタグであれ、RFIDタグにより送信された信号は、RFIDリーダにより読み取られる。また、この信号は、RFIDタグのメモリに格納された情報を有してもよい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
最近、RFIDタグにより格納された情報を読み取ることに加えて、リーダはまた、RFIDタグから読み取られた信号の受信信号強度インジケータ(RSSI:received signal strength indicator)を判定することができる。RSSIメトリックは、(アクティブであれ、パッシブであれ)RFIDタグから受信した無線信号の信号強度を示す。理論的には、RSSIは、RSSIメトリックを生成するリーダからのタグの距離に正比例する。しかし、実際のシステムでは、RSSIは、必ずしもリーダへの距離の増加と共に線形的には減少しない。更に、RSSIはまた、信号受信と干渉し得る物体(例えば、金属物質)の存在のような環境要因により影響を受ける。単一のRFIDタグのRSSIは、リーダが読み取る毎に変化することすらあり得る。その結果、RFIDタグの位置は、RSSIのみに基づいて正確に判定することはできない。
【0005】
本発明は、RFIDタグの動きを追跡する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施例は、信号強度情報を使用してRFIDタグの動きを追跡する技術を提供する。一実施例では、移動中のRFIDタグから読み取り値の系列を取得するために、RFIDリーダの単一のアンテナが使用されてもよい。信号強度インジケータ(受信信号強度インジケータ(RSSI)とも呼ばれる)は、読み取り値毎に判定される。RSSIの系列は、RFIDタグの動きの経路と、その経路に沿ったRFIDタグの動きの方向とを推定するために使用される。
【0007】
一実施例では、単一のRFIDアンテナは、無線認証(RFID)タグから読み取り値の系列を取得するために使用されてもよい。受信信号強度インジケータ(RSSI)は、読み取り値の系列における読み取り値毎に判定されてもよい。従って、RSSIの系列は、読み取り値の系列に基づいて判定される。動きに関する情報は、RFIDタグについてRSSIの系列に基づいて判定されてもよい。動きに関する情報は、RFIDタグの動きの経路を示す情報と、その動きに沿ったRFIDタグの動きの方向を示す情報とを有してもよい。RFIDアンテナは据え置き型でもよい(静止してもよい)。
【0008】
一実施例では、動きに関する情報は、基準情報を使用して判定される。基準情報は、訓練段階中に取得されてもよい。基準情報を取得するために、様々な異なる技術が使用されてもよい。一実施例では、基準情報は、隠れマルコフモデル(HMM:Hidden Markov Model)処理を使用して取得されてもよい。HMM処理を使用して取得された基準情報は、複数の位置を識別する情報と、位置毎にその位置に関連するRSSIとを有してもよい。
【0009】
更に他の実施例では、動きに関する情報を判定するために、K近傍分析(K-nearest neighbor analysis)が使用されてもよい。この実施例では、基準情報は複数のベクトルを有し、各ベクトルはRSSIの系列を有してもよい。動きの経路及び動きの方向を示す情報を有する各ベクトルに、情報(例えば、ラベル)が関連付けられてもよい。1つの技術を使用して、複数のベクトルから、動きが追跡されるRFIDタグから取得された読み取り値に対応するRSSIの系列への最小ユークリッド距離を有するベクトルが判定されてもよい。判定されたベクトルに関連する動きの経路及び動きの方向の情報は、RFIDタグの動きの経路及び動きの方向として出力されてもよい。他の技術を使用して、複数のベクトルから、RFIDタグから取得された読み取り値に対応するRSSIの系列への最小ユークリッド距離を有する一式の複数のベクトルが判定されてもよい。一式のベクトルの中で最も多くのベクトルに関連付けられたラベルが判定されてもよい。判定されたラベルにより示される動きの経路及び動きの方向の情報は、RFIDタグの動きの経路及び動きの方向として出力されてもよい。
【0010】
動きが追跡されているRFIDタグは、物体に取り付けられてもよい。従って、RFIDタグの動きを追跡することにより、物体の動きも追跡可能である。物体の動きの経路及び動きの方向は、RFIDタグについて判定された動きの経路及び動きの方向から判定されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の実施例によれば、RFIDタグの動きを追跡することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例を実現し得る動き検出システム(MDS)の概略図
【図2A】本発明の実施例に従った動きに関する情報の例
【図2B】本発明の実施例に従った動きに関する情報の例
【図3】本発明の実施例に従ってRFIDタグの動きに関する情報を判定するハイレベルな方法を記載した概略フローチャート
【図4】本発明の実施例を実施するために使用され得るモジュールの概略ブロック図
【図5】本発明の実施例を実施するために使用され得る隠れ状態及び観測状態のマルコフ連鎖
【図6】隠れマルコフモデル(HMM)を使用した本発明の実施例の訓練段階中に取得される情報の例
【図7】K近傍分類技術を使用した本発明の実施例の訓練段階中に使用され得る動きの例
【図8A】K近傍分類技術を使用した本発明の実施例の訓練段階中に取得される情報の例
【図8B】K近傍分類技術を使用した本発明の実施例の訓練段階中に取得される情報の例
【図9】本発明の実施例を実施するために使用され得るコンピュータシステムの概略ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
前述の特徴及び他の特徴、並びに実施例は、詳細な説明、特許請求の範囲、添付図面を参照することにより明らかになる。
【0014】
以下の説明では、本発明の実施例の完全な理解を提供するために、説明の目的で特定の詳細が示されている。しかし、本発明がこれらの特定の詳細なしに実施され得ることは明らかである。
【0015】
本発明の実施例は、信号強度情報を使用してRFIDタグの動きを追跡する技術を提供する。一実施例では、移動中のRFIDタグから読み取り値の系列を取得するために、RFIDリーダの単一のアンテナが使用されてもよい。信号強度インジケータ(受信信号強度インジケータ(RSSI)とも呼ばれる)は、読み取り値毎に判定される。読み取り値のRSSIは、その読み取り値の受信信号強度を示す。RSSIの系列は、RFIDタグの動きの経路と、その経路に沿ったRFIDタグの動きの方向とを推定するために使用される。
【0016】
図1は、本発明の実施例を実現し得る動き検出システム(MDS:motion detection system)100の概略図である。図1に示すように、MDS100は、RFIDリーダ102と、データ処理システム106とを有する。RFIDリーダ102は、1つ以上のRFIDタグから読み取り値を取得するように構成される。RFIDリーダ102は、RFIDタグから読み取られる無線信号を受信するために使用される単一のアンテナ104を有する。別の実施例では、タグリーダ104は、複数のアンテナを有してもよく、複数のアンテナのうち1つ以上がRFIDタグの動きを追跡するために使用されてもよい。しかし、以下に記載するように、RFIDタグの動きの追跡は、単一のアンテナを使用して実現可能であり、複数のアンテナを必要としない。一実施例では、RFIDリーダ102及びそのアンテナ104は、静止してもよく、据え置き型でもよい。RFIDリーダ102は、リーダ102がRFIDタグから無線信号を受信することができる受信ゾーン103(2次元又は3次元空間)を有する。受信ゾーン103は、リーダ102がRFIDタグを読み取ることができる空間の領域を示す。受信ゾーンの範囲は、使用されているリーダ及びアンテナの種類、読み取られているRFIDタグの種類、読み取り値が取得される環境のような様々な要因に依存し得る。
【0017】
RFIDリーダ102は、タグから無線信号を受信すると、RFIDタグを読み取る。リーダ102により読み取られるタグは、アクティブタグでもよく、パッシブタグでもよい。RFIDリーダ102は、アクティブタグにより送信された無線信号を受信することにより、アクティブタグを読み取る。アクティブタグは、定期的に又はランダムに、自律的に無線信号を送信してもよい。パッシブタグの場合、リーダ102は、呼び掛け信号(interrogation signal)/活性化信号をパッシブタグに送信し、パッシブタグから応答無線信号を受信することにより、パッシブタグを読み取る。一実施例では、パッシブタグは、呼び掛け信号/活性化信号からパッシブタグにより引き出されたエネルギーを使用して、応答信号を送信する。アクティブタグであれ、パッシブタグであれ、RFIDタグからリーダ102により受信される信号は、タグにより格納された情報を符号化してもよい。例えば、タグから受信した無線信号は、典型的には、読み取られているタグを一意に識別する情報(例えば、タグID)を符号化する。一般的に、RFIDタグ(場合によってはRFIDセンサと呼ばれる)は、リーダにより読み取られることができる無線信号を送信可能な如何なるデバイスを示してもよい。
【0018】
RFIDリーダ102は、1つ以上のRFIDタグを読み取ることができる。図1には1つのみのRFIDタグ110が示されているが、これは、本発明の実施例の範囲を限定することを意図するのではない。例えば、一実施例では、リーダ102は、30個以上のRFIDタグを同時に読み取ることができる。複数のタグが読み取られる場合、各タグに関連付けられてリーダ102により読み取られたタグIDは、読み取られたタグを一意に識別するために使用されてもよい。RFIDリーダ102の例は、米国マサチューセッツ州ケンブリッジのThinkMagic Inc.により提供されるMercury5E(M5E)RFIDリーダである。M5Eは、衝突防止及びDRM機能を備えたEPCglobal Gen 2(ISO 18000-6C)タグプロトコルのサポートを提供する埋め込み式UHF RFIDリーダである。
【0019】
RFIDタグ110の動きを追跡するために、リーダ102は、タグ110の読み取り値の系列を取得するように構成される。読み取り値は、タグ110が移動中の間に取得されてもよい。使用されているリーダに応じて、読み取り値は異なるレートで取得されてもよい。例えば、一実施例では、リーダ102は、毎秒5回のレートで、タグ110から読み取り値を取得する。RFIDタグ110は、2次元(2-D)又は3次元(3-D)で移動してもよい。図1では、一例として、RFIDタグ110は、位置B及びCを介して位置Aから位置Dに動かされる。リーダ102は、位置AからDへの移動中に、タグ110の読み取り値の系列を取得してもよい。例えば、RFID110が位置Aから位置Dに動かされると、リーダ102により取得された読み取り値の系列は、位置Aで取得された読み取り値、位置Bで取得された他の読み取り値、位置Cで取得された他の読み取り値、及び位置Dで取得された他の読み取り値を含んでもよい。それぞれの読み取り値は、RFIDタグ110を一意に識別する情報を含むことが好ましい。
【0020】
リーダ102は、タグ110から取得された読み取り値の系列における読み取り値毎に信号強度を判定するように構成される。一実施例では、読み取り値毎の信号強度は、信号強度インジケータ(RSSI)として表現されてもよい。読み取り値のRSSIメトリック(db単位で測定されてもよい)は、その読み取り値についてタグからリーダ102により受信された無線信号の信号強度を示す。
【0021】
リーダ102は、更なる処理のため、読み取り値及び関連するRSSIをデータ処理システム106に通信するように構成される。一実施例では、それぞれの読み取り値は、読み取り値が取得されたRFIDタグを一意に識別する情報(例えば、タグID)を有してもよい。タグIDを使用して、読み取り値に関連するRSSIは、特定のRFIDタグにマッピング可能である。情報は、有線リンク若しくは無線リンク又はこれらの組み合わせを介して、リーダ102からデータ処理システム106に通信されてもよい。
【0022】
データ処理システム106は、リーダ102から受信したRSSIの系列に基づいてRFIDタグの動きを追跡する処理を実行するように構成される。データ処理システム106は、RFIDタグの動きに関する情報を判定するように構成される。動きに関する情報は、RFIDタグの動きの経路の推定と、その経路に沿った動きの方向とを含む。一実施例では、データ処理システム106は、リーダ102から受信した信号強度値に基づいて信号強度値の系列を生成する。データ処理システム106は、RSSIの系列と、データ処理システム106にとってアクセス可能な基準情報108とに基づいて、RFIDタグの動きに関する情報を判定する。
【0023】
基準情報108は、RFIDタグの動きに関する情報を推定するために使用される情報を格納する。動きの方向を推定するために様々な異なるモデルが使用されてもよい。その例は、隠れマルコフモデル(HMM:Hidden Markov Model)、近傍分類モデル(nearest neighbor classification model)等を含む。基準情報108の内容は、動きの推定に使用される特定のモデルに依存する。基準情報108は、処理中にデータ処理システム106にとってアクセス可能な(又はアクセス可能にされる)不揮発性メモリ媒体に格納されてもよく、或いは、データ処理システム106の一部でもよい。
【0024】
RFIDタグの動きの経路及びその経路に沿った動きの方向を推定する情報を含み、データ処理システム106により判定された動きに関する情報が出力されてもよい。動きに関する情報を出力するために、様々な異なる出力モデルが使用されてもよい。例えば、動きに関する情報は、画面に表示されてもよく、オーディオ出力デバイスを介してオーディオ情報として出力されてもよく、紙媒体に印刷される等の処理が行われてもよく、これらの組み合わせが行われてもよい。
【0025】
更に、動きに関する情報は、異なる技術を使用して表現されてもよい。例えば、一実施例では、動きの経路とその経路に沿った動きの方向とを伝達するために、グラフィックが使用されてもよい。例えば、図1の位置Aから位置DへのRFIDタグ110の動きについて、図2Aに示すように、動きの経路及び方向を示す矢印202が画面200上に表示されてもよい。図2Aでは、動きの方向は、矢印204により示されている。動きに関する情報はまた、テキスト記述を使用して表現されてもよい。例えば、図1のタグ110の動きについて、テキスト記述は、「タグ110が北西(NW)から南東(SE)への方向に直線的に動かされている」ことを示してもよい。更に他の実施例では、動きに関する情報は、(x,y)(2次元の動きの場合)又は(x,y,z)(3次元の動きの場合)のような空間座標を使用して表現されてもよい。動きに関する情報はまた、他の技術を使用して表現されてもよい。一実施例では、出力モードと、動きに関する情報を表現するために使用される技術との双方は、ユーザ設定可能/選択可能である。
【0026】
動きに関する情報は、タグの動きに関する更なる情報を判定するために、更なる分析を受けてもよい。例えば、動きに関する情報は、タグが特定の領域又はゾーンを離れたか否か(例えば、タグが部屋を出たか否か)を判定するために使用されてもよい。他の例として、動きに関する情報は、タグが物体に向かって動いているか、物体から離れているかのように、他の物体に関するタグの動きを判定するために使用されてもよい。この更なる情報は、出力される動きに関する情報の一部として含まれてもよい。
【0027】
図2Aに示す動きの経路は、直線に沿っており、動きの方向は一方向である。別の実施例では、更に複雑な動きのパターンが追跡されてもよい。例えば、図2Bに示すように、動きの経路は、複数の部分経路を含み、動きの方向は、部分経路毎に判定されてもよい。
【0028】
前述のように、MDS100は、RFIDタグからRFIDリーダにより取得された無線信号読み取り値の系列と、読み取り値について判定されたRSSIの系列とに基づいて、動きの経路及び動きの方向の情報を含むRFIDタグの動きに関する情報を判定するように構成される。RFIDタグの動きに関する情報は、単にRFIDリーダの単一のアンテナにより取得された読み取り値に基づいて判定され得る点に留意すべきである。リーダ及びアンテナは静止してもよく、据え置き型でもよい。
【0029】
図1に示すMDS100は、本発明の教示を実現する実施例の単なる例であり、特許請求の範囲に記載の本発明の範囲を限定することを意図するのではない。他の実施例では、様々な他の構成も可能である。例えば、一実施例では、リーダ102は、データ処理システム106の一部でもよい。他の実施例では、データ処理システム106は、複数のシステムの間に分散されてもよい。
【0030】
図3は、本発明の実施例に従ってRFIDタグの動きに関する情報を判定するハイレベルな方法を記載した概略フローチャート300を示している。図3に示す処理は、プロセッサ(例えば、図1に示すデータ処理システム106のプロセッサ)により実行されるソフトウェア(例えば、プログラム、コード、命令)により実行されてもよく、ハードウェアにより実行されてもよく、これらの組み合わせにより実行されてもよい。ソフトウェアは、持続性のコンピュータ可読記憶媒体に格納されてもよい。図3に示す処理ステップの特定の系列は、特許請求の範囲に記載の本発明の実施例を限定することを意図するのではない。
【0031】
図3に示すように、処理は、RFIDタグの動きの追跡を開始するために信号を受信することで始まってもよい(ステップ302)。302で受信した情報は、動きの方向が追跡される特定のRFIDタグを識別する情報を有してもよい。例えば、特定のRFIDタグは、タグの識別情報(例えば、タグID)を使用して識別されてもよい。これは、RFIDリーダにより読み取られることができる複数のRFIDタグが存在し得る環境で有用である。
【0032】
様々な異なる状況が、302で受信する信号を引き起こしてもよい。一実施例では、信号は、RFIDタグの動きの追跡を開始するユーザからの要求に応じて引き起こされてもよい。例えば、ユーザは、図1のMDS100に対して、RFIDタグの動きを追跡する命令を発行してもよい。他の実施例では、302の信号は、RFIDタグが移動中であることを検出したことに応じて自動的に生成されてもよい。例えば、信号は、前に静止していたRFIDタグが現在移動中であることを検出したことに応じて生成されてもよい。
【0033】
読み取り値の系列は、追跡されているRFIDタグからRFIDリーダにより取得される(ステップ304)。前述のように、RFIDタグは、アクティブタグでもよく、パッシブタグでもよい。例えば、図1のRFIDタグ110が地点B及びCを介して地点Aから地点Bに動かされると、RFIDタグから取得された読み取り値の系列は、位置A、B、C及びDで取得された読み取り値を含んでもよい。
【0034】
信号強度インジケータ(例えば、RSSI)は、304で取得された読み取り値毎に判定される(ステップ306)。例えば、図1の地点Aから地点DへのRFIDタグ110の動きの場合、RSSIは、位置A、B、C及びDで取得された読み取り値毎に判定されてもよい。信号強度の系列は、306で判定された信号強度に基づいて判定される(ステップ307)。一実施例では、系列は、信号強度に対応する読み取り値の時系列に基づいて生成される。例えば、図1のAからDへのRFIDタグ110の動きの場合、以下のRSSIの系列が生成されてもよい。すなわち、RSSI(A)、RSSI(B)、RSSI(C)、RSSI(D)である。ベクトルVは、以下のように時系列に沿って判定されたRSSIに基づいて構成されてもよい。
V={RSSI(A),RSSI(B),RSSI(C),RSSI(D)}
タグの動きに関する情報は、306で判定されたRSSIの系列と基準情報とに基づいて判定される(ステップ308)。動きに関する情報は、RFIDタグの動きの経路を示す情報を含み、また、判定された経路に沿ったRFIDタグの動きの方向を示す情報を含む。例えば、地点Aから地点DへのRFIDタグ110の動きについて判定されたベクトルVは、タグ110の動きの経路と、その経路に沿った動きの方向とを推定するために、基準情報と共に使用されてもよい。
【0035】
308で判定された動きに関する情報は、出力されてもよい(ステップ310)。前述のように、動きの方向を表すために、異なる出力モードが使用されてもよい。更に、動きの方向は、様々な異なる技術を使用して表現されてもよい。
【0036】
一実施例では、307で判定されたRSSIの系列に関する情報は、後の分析のために格納されてもよい(ステップ312)。RSSI毎に、格納される情報は、RSSIに対応する読み取り値の時間を示すタイミング情報を含んでもよい。この格納される情報により、過去に生じた動きについて、動きに関する情報が判定可能になる。例えば、ユーザは過去の期間の間のRFIDタグの動きの経路及び方向を判定する要求をMDS100に送信してもよい。MDS100は、格納された情報にアクセスし、指定された過去の期間に対応するRSSIの格納された系列に基づいて、動きの経路とその経路に沿ったRFIDタグの動きの方向とを判定してもよい。このように、動きに関する分析は、過去に生じた動きについて実行されてもよい。
【0037】
前述のように、304において、リーダ102は、時系列に沿ってタグ読み取り値の系列を取得する。読み取り値が取得される期間は、MDS100の動作モードに依存してもよい。一実施例では、MDS100は、タグの2つの静止位置の間のRFIDタグの動きの方向を追跡するように構成されてもよい。この実施例では、MDS100は、前に静止していたタグが移動中であることを検出した場合にタグの動きの方向の追跡を開始し、タグが再び静止した場合に動きの方向の追跡を停止するように構成されてもよい。この実施例では、タグの動きの方向は、初めの静止位置から終わりの静止位置に追跡される。例えば、図1では、RFIDタグ110は、位置Aから位置Dに動かされてもよい。位置Aが初めの静止位置であり、位置Dが終わりの静止位置であり、動きの方向は、これらの2つの静止位置の間で追跡される。しかし、初めの位置及び/又は終わりの位置は、MDS100がタグの動きの方向を追跡するのに静止している必要はない。
【0038】
一実施例では、RFIDタグの動きの方向の追跡は、MDS100が動きの方向の監視を始める命令を受信した場合に開始してもよく、動きの方向の追跡は、追跡を停止する他の命令を受信した場合に終了してもよい。他の実施例では、MDS100は、追跡を始める命令を受信した場合にタグの動きの方向の追跡を開始するように構成されてもよく、開始時間の後の一定の期間の間に追跡を継続するように構成されてもよい。この期間は、ユーザ設定可能でもよい。更に他の実施例では、動きの方向の追跡の開始及び終了時間は、MDS100に提供されてもよく、MDS100は、開始時間と終了時間との間に動きの方向の追跡を実行するように構成されてもよい。
【0039】
図4は、本発明の実施例を実装するために使用され得るモジュールの概略ブロック図である。図4に示す実施例では、モジュールは、信号受信モジュール402と、信号強度モジュール404と、識別モジュール406と、出力モジュール408とを含む。図4に示すモジュールは、(1つ以上のプロセッサにより実行される)ソフトウェア、ハードウェア又はこれらの組み合わせで実装されてもよい。図4に示すモジュールは、限定的であることを意図するのではない。別の実施例では、他のモジュール又はこれらの組み合わせも提供されてもよい。
【0040】
信号受信モジュール402は、移動中に動きが追跡されているRFIDタグから読み取り値の系列を取得するように構成される。信号受信モジュール402は、読み取り値を信号強度モジュール404に通信してもよい。信号強度モジュール404は、信号受信モジュール402から受信した読み取り値毎に信号強度(例えば、RSSI)を判定するように構成される。信号強度モジュール404は、RSSIに対応するタグ読み取り値が取得された時間に基づいて、信号強度のベクトル(例えば、RSSIのベクトル)を形成するように構成される。例えば、図1のRFIDタグ110が地点Aから地点Dに動かされた場合に取得された読み取り値について、V={RSSI(A),RSSI(B),RSSI(C),RSSI(D)}のようなベクトルが生成されてもよい。信号強度モジュール404は、更なる分析のために、信号強度のベクトルを識別モジュール406に通信してもよい。一実施例では、信号受信モジュール402及び信号強度モジュール404は、図1に示すリーダ102の一部として実装されてもよい。
【0041】
識別モジュール406は、信号強度モジュール404から受信した信号強度のベクトルに基づいて、追跡されているタグの動きに関する情報を判定するように構成される。識別モジュール406は、RSSIのベクトルに基づいて動きに関する情報を推定するために、基準情報108を使用するように構成される。以下に詳細に説明するように、識別モジュール406を実装するために様々な異なる技術/モデルが使用されてもよい。動きの経路とその経路に沿った動きの方向とを示す情報を含む動きに関する情報は、出力モジュール408に転送されてもよい。
【0042】
出力モジュール408は、分類器(識別モジュール)406から受信した動きに関する情報を出力するように構成される。この情報は、画面上の情報の表示、オーディオ出力デバイスを介した情報の出力、紙媒体への情報の印刷等、又はこれらの組み合わせのような異なる出力モードを使用して出力されてもよい。更に、情報自体が、異なる技術を使用して表現されてもよい。
【0043】
様々な異なるモデル又は技術は、RFIDタグの動きを推定するために使用されてもよい。典型的には、各モデルは、そのモデルの基準情報108が構築される訓練段階と、訓練段階中に判定された基準情報が、移動中のタグから取得された読み取り値について判定された信号強度のベクトルに基づいて、RFIDタグの動きに関する情報を推定するために使用される識別段階とを有する。使用され得るモデルの例は、隠れマルコフモデル(HMM)、近傍分類モデル等を含む。
【0044】
<隠れマルコフモデル>
一実施例では、RFIDタグの動きの経路及び動きの方向を推定するために使用される基準情報をモデル化するために、隠れマルコフモデル(HMM)が使用される。HMMの実施例では、識別モジュール406は、HMM復号器として実装される。信号強度モジュール404により生成された信号強度のベクトルは、RFIDタグの動きに関する情報の推定のために、HMM復号器に送信される。一実施例では、HMM復号器は、動きに関する情報を判定するために、ビタビ(Viterbi)アルゴリズムを使用する。
【0045】
HMMを使用して、隠れマルコフ連鎖は、図5に示す隠れ状態(hidden state)Ln及びこれらに関連する観測状態(observed state)Snの系列を有する。HMMの隠れ状態は、(2次元であれ、3次元であれ)RFIDタグの実際の位置である。観測状態は、様々な位置の受信信号強度インジケータ(RSSI)である。RSSIは、訓練段階と識別段階との双方について利用可能である。従って、観測イベントは、特定の時間(T)に位置(X)でRFIDタグから読み取られた信号について判定された信号強度である。すなわち、観測イベントは、時間TにおけるRSSI(X)である。隠れイベントは、時間TにおけるRFIDタグの位置(X)である。訓練段階中に、隠れイベント及び観測イベントは時系列に並べられ、観測されたRSSI毎に位置Xが存在する。時間Tにおける隠れ状態は、時間Tにおける観測イベントと、時間T-1における最も可能性の高い隠れ系列とにのみ依存する。これは、信号強度の分布がマルコフ確率場であるという仮定に基づく。1つの地点での信号強度は、近隣の地点での信号強度にのみ依存する。
【0046】
HMMを使用した訓練段階の間に、目的は、リーダの受信ゾーン内の様々な位置と、これらの位置でRFIDリーダにより取得された読み取り値について判定されたRSSIとの間の相関関係又はマッピングを形成することである。訓練段階中に、RFIDリーダがタグの位置でタグから取得された読み取り値のRSSIを記録する間に、受信ゾーン内のタグの位置(2次元の場合は(x,y)又は3次元の場合は(x,y,z))を取得するために、RFIDリーダに結合されたカメラが使用されてもよい。位置(隠れ状態)は、RSSI(観測状態)の系列に対する1対1のマッピングを有する。
【0047】
訓練段階中に、RFIDタグは、リーダの受信ゾーン内の複数の位置を通過してもよく、更に、1つの位置を複数回通過してもよい。タグが位置を通過する毎に、対応するタグ読み取り値についてRSSIが記録される。従って、訓練段階中に1つの位置について複数のRSSIが判定されてもよい。1つの位置について判定された複数のRSSIは、毎回変化してもよいが、特定の範囲内で変化する。例えば、図6に示すように、訓練段階中に、タグ602は、RFIDリーダ604の受信ゾーン600内の位置S1、S2、S3及びS4を複数回通過してもよい。従って、それぞれの位置は、その位置に関連する複数のRSSIを有してもよい。一実施例では、これらの値は、ヒストグラムにより表されてもよい。例えば、図6に示すように、それぞれの位置S1、S2、S3及びS4は、その位置に関連するRSSIのヒストグラム606を有する。
【0048】
観測密度は、位置と関連するヒストグラムとの間のこのマッピングを使用して計算される。例えば、位置L1=(X1,Y1,Z1)では、
P(St=40|Lt=(X1,Y1,Z1))=0.1・・・(A)
である。この式は、位置(X1,Y1,Z1)での時間tにおけるRSSIの確率密度関数を示している。この確率密度関数はまた、図6のヒストグラムとして示されている。所与の時間に所与の位置において、観測されたRSSIは、非常に多くの値を有することになり、全てのこれらの異なる値の確率は合計で1になる。この確率密度関数は、タグが訓練段階中に同じ位置を複数回通過すると学習される。
P(St=50|Lt=(X1,Y1,Z1))=0.3・・・(B)
P(St=60|Lt=(X1,Y1,Z1))=0.4・・・(C)
P(St=70|Lt=(X1,Y1,Z1))=0.2・・・(D)
ただし、
【0049】
【数1】

である。従って、訓練段階の後に、訓練段階中に横切った位置の観測密度が取得される。
【0050】
前述のように、訓練段階中に、タグは、同じ位置を複数回通過してもよい。例えば、タグが位置(X1,Y1,Z1)を100回通過した場合、前述の式は、これらの100回のうち10回のRSSIは40であり、30回のRSSIは50であり、40回のRSSIは60であり、20回のRSSIは70であることを示している。
【0051】
ここで、識別段階中の動きの推定は、最適化問題になる。隠れマルコフ連鎖のビタビ復号を使用すると、以下のようになる。
【0052】
【数2】

この式は、反復ビタビ復号により解くことができる。
【0053】
【数3】

ビタビ復号の後に、隠れマルコフ連鎖の最大尤度の経路が推定された動きである。このアルゴリズムは、観測されたRSSI(S1,S2,...,St)に基づいて位置(L0,L1,...,Lt)の条件付確率を最大化する。マルコフの特性は、時間tにおける位置が時間t-1における位置にのみ関係することを保証する。このため、最大化は、動的計画アルゴリズムの式(2)(すなわち、ビタビ復号)を使用して解くことができる。ビタビ復号の部分P(St|Lt)は、訓練段階で学習された前述の式(A)、(B)、(C)及び(D)により記述される確率密度関数である。
【0054】
<近傍又はK近傍を使用したタグの動きの分類>
近傍分類は、動きにおける状態を区別しない。この実施例では、識別モジュール406は、近傍分類器として実装されてもよい。生成されるRSSI系列は、専ら分類器に入力されるベクトルとして取り扱われる。訓練段階の間に、目的は、受信ゾーン内の複数の動きの経路について、それぞれ動きの特定の方向と共に、RSSIの複数のベクトルを取得することである。従って、訓練段階中に、受信ゾーン内の1つの位置から他の位置への動きは、複数回繰り返され、生成されたRSSI系列は、基準情報としてデータベースに格納される。図7は、訓練段階中に使用され得る2つのこのような動きを示している。すなわち、AからBへのRFIDタグの動きと、CからDへのRFIDタグの動きである。図7に示すそれぞれの動きは、異なる実際の経路を通過してもよく、経路毎に異なるRSSI系列を生成してもよい。図8Aは、AからBへの動きについて取得されたこのようなRSSI系列の例を示している。図8A(及び図8B)では、X軸は時系列を表し、Y軸は観測されたRSSI値を表す。1つの動きが複数回繰り返され、図8Aに示すRSSIの複数の連続又は系列が記録される(図8Aのそれぞれのグラフの曲線はRSSIの連続を表す)。記録されたRSSIは毎回異なってもよいが、60次元空間での曲線は互いに近くなる。RSSIベクトル(各ベクトルはRSSIの系列を有する)は、基準情報として格納され、各ベクトルは、A→Bとしてラベル付けされる。同様に、図8Bは、CからDへの動きについて取得されたRSSI系列の例を示している(図8Bのそれぞれのグラフの曲線はRSSIの連続を表す)。RSSIベクトル(各ベクトルはRSSIの系列を有する)は、基準情報として格納され、各ベクトルは、C→Dとしてラベル付けされる。動きの方向は、生成されたRSSIのベクトルに影響を与える点に留意すべきである。従って、AからBへの動きの結果として生成されたベクトルは、BからAへの動きについて生成されたベクトルと異なってもよい。その結果、動きの方向は、RSSIの生成された系列に影響を与える。このように、訓練段階の結果として、RSSIの複数のベクトルは基準情報として格納され、各ベクトルは、そのベクトルを生成した動きの経路及び動きの方向を示すラベルに関連付けられる。
【0055】
識別段階において、追跡されているRFIDタグからの読み取り値から取得されたRSSIの系列を表すベクトルは、基準情報に格納されたRSSI系列のベクトルに対して比較される。一実施例では、格納されたベクトルから、追跡されているRFIDタグに対応するベクトルへの最小ユークリッド距離を有するベクトルが検出される。検出されたベクトルに関連付けられたラベルは、追跡されているRFIDタグの動きの経路及び動きの方向を提供する。
【0056】
K近傍(K-NN:K-nearest neighbor)アルゴリズムを使用した実施例では、RSSIの入力ベクトルへの最小ユークリッド距離を有する初めのK個の格納されたRSSI系列が基準情報から検出される。これらのK個のベクトルの中で最も関連するラベルが識別結果であり、RFIDタグの動きの経路及び動きの方向を示す。
【0057】
近傍及びK近傍分類は、訓練段階でラベル付けされている限り、如何なる種類の動きも識別することができる。NN及びK-NN技術は、経路の変化に対してロバスト性がある。この理由は、複数の経路が全て訓練段階で収集されるからである。しかし、これらの技術は、訓練段階でラベル付けされた動きしか識別することができない。これに対して、HMM復号を使用した実施例は、事前に知られていない経路及び方向に沿った動きに関する情報を判定することができる。HMMを使用した実施例は、経路の変化に対してロバスト性が低い。
【0058】
前述のように、単一のアンテナを備えた単一のリーダを有するMDS100は、RFIDタグからRFIDリーダにより取得された読み取り値について判定された信号強度情報に基づいて、動きの経路と、その経路に沿ったRFIDタグの動きの方向とを判定することができる。実際の用途では、典型的にはRFIDタグは、物体に関連付けられる、或いは取り付けられる。物体が動かされると、RFIDタグは、その物体と共に移動する。このような実施例では、RFIDタグの動きの経路及び方向の追跡は、物体自体の動きの経路及び動きの方向の追跡になる。従って、物体の動きの経路及びその経路に沿った物体の動きの方向は、物体に取り付けられたRFIDタグからの読み取り値について記録された信号強度系列に基づいて追跡可能である。
【0059】
図9は、本発明の実施例を実施するために使用され得るコンピュータシステムの概略ブロック図である。様々な実施例において、コンピュータシステム900は、図1に示して前述したデータ処理システム106を実装するために使用されてもよい。図9に示すように、コンピュータシステム900は、バスサブシステム904を介して複数の周辺サブシステムと通信するプロセッサ902を含む。これらの周辺サブシステムは、メモリサブシステム908及びファイル記憶サブシステム910を有する記憶サブシステム906と、ユーザインタフェース入力デバイス912と、ユーザインタフェース出力デバイス914と、ネットワークインタフェースサブシステム916とを含んでもよい。
【0060】
バスサブシステム904は、コンピュータシステム900の様々な構成要素及びサブシステムが意図したとおりに互いに通信することを可能にする機構を提供する。バスサブシステム904は単一のバスとして概略的に示されているが、バスサブシステムの別の実施例は、複数のバスを利用してもよい。
【0061】
ネットワークインタフェースサブシステム916は、他のコンピュータシステム及びネットワークへのインタフェースを提供する。ネットワークインタフェースサブシステム916は、他のサブシステムからデータを受信し、コンピュータシステム900から他のサブシステムにデータを送信するインタフェースとしての役目をする。例えば、ネットワークインタフェースサブシステム916は、ユーザコンピュータがインターネットに接続可能にし、インターネットを使用してRFIDタグの動きに関する情報の通信を容易にしてもよい。
【0062】
ユーザインタフェース入力デバイス912は、キーボードと、マウス、トラックボール、タッチパッド又はグラフィックタブレットのようなポインティングデバイスと、スキャナと、バーコードスキャナと、ディスプレイに内蔵されたタッチスクリーンと、音声認識システム、マイクロフォンのようなオーディオ入力デバイスと、他の種類の入力デバイスとを含んでもよい。一般的に、「入力デバイス」という用語の使用は、コンピュータシステム900に情報を入力する全ての可能な種類のデバイス及び機構を含むことを意図する。ユーザは、RFIDタグの追跡を制御するためにユーザインタフェース入力デバイスを使用してもよい。例えば、RFIDタグの追跡の開始/終了に関する命令は、ユーザインタフェース入力デバイスを使用して提供されてもよい。
【0063】
ユーザインタフェース出力デバイス914は、ディスプレイサブシステム、プリンタ、ファクシミリ機、又はオーディオ出力デバイスのような非視覚的表示等を含んでもよい。ディスプレイサブシステムは、陰極線管(CRT:cathode ray tube)、液晶ディスプレイ(LCD:liquid crystal display)のようなフラットパネルディスプレイ、又は投影デバイスでもよい。一般的に、「出力デバイス」という用語の使用は、コンピュータシステム90から情報を出力する全ての可能な種類のデバイス及び機構を含むことを意図する。追跡されているRFIDタグの動きに関する情報は、ユーザインタフェース出力デバイスを使用して出力されてもよい。
【0064】
記憶サブシステム906は、本発明の機能を提供する基本プログラミング及びデータ構造を格納するコンピュータ可読記憶媒体を提供する。プロセッサにより実行された場合に本発明の機能を提供するソフトウェア(プログラム、コードモジュール、命令)は、記憶サブシステム906に格納されてもよい。これらのソフトウェアモジュール又は命令は、プロセッサ902により実行されてもよい。記憶サブシステム906はまた、基準情報108のような本発明に従って使用されるデータを格納するリポジトリ(保管場所)を提供してもよい。記憶サブシステム906は、メモリサブシステム908と、ファイル/ディスク記憶サブシステム910とを有してもよい。
【0065】
メモリサブシステム908は、プログラム実行中に命令及びデータを格納するための主ランダムアクセスメモリ(RAM)918と、固定の命令が格納された読み取り専用メモリ(ROM)とを含む複数のメモリを含んでもよい。ファイル記憶サブシステム910は、プログラム及びデータファイルのための持続性の永続的な(不揮発性)記憶装置を提供し、ハードディスクドライブと、関連する取り外し可能媒体と一緒のフロッピー(登録商標)ディスクドライブと、CD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)ドライブと、光学ドライブと、取り外し可能媒体カートリッジと、他の同様の記憶媒体とを含んでもよい。
【0066】
コンピュータシステム900は、パーソナルコンピュータ、電話、ポータブルコンピュータ、ワークステーション、ネットワークコンピュータ、メインフレーム、キオスク(kiosk)、サーバ又は他のデータ処理システムを含み、様々な種類のものでもよい。コンピュータ及びネットワークの絶え間なく変わる性質のため、図9に示すコンピュータシステム900の説明は、コンピュータシステムの好ましい実施例を示す目的で、特定の例としてのみ示されている。図9に示すシステムより多くの構成要素又は少ない構成要素を有する多くの他の構成が可能である。
【0067】
本発明の特定の実施例について説明したが、様々な変更、変形、代わりの構成、及び均等物も本発明の範囲内に含まれる。本発明の実施例は、特定のデータ処理環境内での動作に制限されず、自由に複数のデータ処理環境内で動作できる。更に、特定のトランザクション及びステップの系列を使用して本発明の実施例について説明したが、これは、本発明の実施例の範囲を限定することを意図するものではない。
【0068】
更に、ハードウェア及びソフトウェアの特定の組み合わせを使用して本発明の実施例について説明したが、ハードウェア及びソフトウェアの他の組み合わせも本発明の範囲内にあることが分かる。本発明の実施例は、ハードウェアのみで実施されてもよく、ソフトウェアのみで実施されてもよく、これらの組み合わせを使用して実施されてもよい。
【0069】
従って、明細書及び図面は、限定的な意味ではなく、例示的な意味としてみなされるべきである。本発明の広い要旨及び範囲を逸脱することなく、追加、除去、削除及び他の変更及び変形が行われてもよいことが明らかである。
【符号の説明】
【0070】
100 動き検出システム
102 RFIDリーダ
103 受信ゾーン
104 アンテナ
106 データ処理システム
108 基準情報
110 RFIDタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを使用して、無線認証(RFID)タグから読み取り値の系列を取得するステップと、
前記読み取り値の系列における読み取り値毎に受信信号強度インジケータ(RSSI)を判定するステップと、
前記読み取り値の系列について判定されたRSSIに基づいて、RSSIの系列を生成するステップと、
前記RSSIの系列に基づいて、前記RFIDタグの動きに関する情報を判定するステップと、
を有し、
前記動きに関する情報は、前記RFIDタグの動きの経路を示す情報と、当該経路に沿った前記RFIDタグの動きの方向を示す情報とを有する方法。
【請求項2】
前記動きに関する情報を判定するステップは、前記動きに関する情報を判定するために、基準情報と前記RSSIの系列とを使用することを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基準情報は、隠れマルコフモデル(HMM)処理を使用して取得された情報を有し、
前記基準情報は、複数の位置を識別する情報と、位置毎に当該位置に関連するRSSIとを有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記基準情報は、複数のベクトルを有し、
それぞれのベクトルは、RSSIの系列を有し、それぞれのベクトルは、動きの経路及び動きの方向を示す情報に関連付けられる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記動きに関する情報を判定するステップは、隠れマルコフモデル(HMM)を使用することを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記動きに関する情報を判定するステップは、K近傍分析を実行することを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記アンテナは据え置き型である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記RFIDタグは、物体に取り付けられ、
前記方法は、
前記RFIDタグについて判定された前記動きの経路及び前記動きの方向に基づいて、前記物体について動きの経路及び動きの方向を判定するステップを更に有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
アンテナを有するリーダと、
前記リーダに通信可能に結合されたデータ処理システムと、
を有し、
前記リーダは、アンテナを使用して、無線認証(RFID)タグから読み取り値の系列を取得し、前記読み取り値の系列における読み取り値毎に受信信号強度インジケータ(RSSI)を判定するように構成され、
前記データ処理システムは、前記読み取り値の系列について判定されたRSSIに基づいて、RSSIの系列を生成し、前記RSSIの系列に基づいて、前記RFIDタグの動きに関する情報を判定するように構成され、
前記動きに関する情報は、前記RFIDタグの動きの経路を示す情報と、当該経路に沿った前記RFIDタグの動きの方向を示す情報とを有するシステム。
【請求項10】
前記データ処理システムは、基準情報と前記RSSIの系列とを使用して、前記動きに関する情報を判定するように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記基準情報は、隠れマルコフモデル(HMM)処理を使用して取得された情報を有し、
前記基準情報は、複数の位置を識別する情報と、位置毎に当該位置に関連するRSSIとを有する、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記基準情報は、複数のベクトルを有し、
それぞれのベクトルは、RSSIの系列を有し、それぞれのベクトルは、動きの経路及び動きの方向を示す情報に関連付けられる、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記データ処理システムは、隠れマルコフモデル(HMM)を使用して前記動きに関する情報を判定するように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項14】
前記データ処理システムは、K近傍分析を実行することにより、前記動きに関する情報を判定するように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
前記アンテナは据え置き型である、請求項9に記載のシステム。
【請求項16】
前記RFIDタグは、物体に取り付けられ、
前記データ処理システムは、前記RFIDタグについて判定された前記動きの経路及び前記動きの方向に基づいて、前記物体について動きの経路及び動きの方向を判定するように構成される、請求項9に記載のシステム。
【請求項17】
無線認証(RFID)タグから取得された読み取り値の系列に対応する信号強度インジケータ(RSSI)の系列を格納するように構成されたメモリと、
前記メモリに結合され、前記RSSIの系列に基づいて前記RFIDタグの動きに関する情報を判定するように構成されたプロセッサと、
を有し、
前記動きに関する情報は、前記RFIDタグの動きの経路を示す情報と、当該経路に沿った前記RFIDタグの動きの方向を示す情報とを有するシステム。
【請求項18】
前記メモリは、隠れマルコフモデル(HMM)処理を使用して取得された基準情報を格納するように構成され、
前記基準情報は、複数の位置を識別する情報と、位置毎に当該位置に関連するRSSIとを有し、
前記プロセッサは、前記基準情報を使用して前記動きに関する情報を判定するように構成される、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記メモリは、複数のRSSIベクトルを有する基準情報を格納するように構成され、
それぞれのベクトルは、RSSIの系列を有し、それぞれのベクトルは、動きの経路及び動きの方向を示す情報に関連付けられ、
前記プロセッサは、前記複数のベクトルから、前記RFIDタグから取得された読み取り値の系列に対応するRSSIの系列への最小ユークリッド距離を有するベクトルを判定し、前記RFIDタグの前記動きの経路及び動きの方向として、前記判定されたベクトルに関連付けられた動きの経路及び動きの方向の情報を出力する、請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記メモリは、複数のRSSIベクトルを有する基準情報を格納するように構成され、
それぞれのベクトルは、RSSIの系列を有し、それぞれのベクトルは、動きの経路及び動きの方向を示すラベルに関連付けられ、
前記プロセッサは、前記複数のベクトルから、前記RFIDタグから取得された読み取り値の系列に対応するRSSIの系列への最小ユークリッド距離を有する一式の複数のベクトルを判定し、前記一式のベクトルに関連付けられたラベルから、前記一式のベクトルの中で最も多くのベクトルに関連付けられたラベルを判定し、前記RFIDタグの前記動きの経路及び動きの方向として、前記判定されたラベルにより示される動きの経路及び動きの方向の情報を出力する、請求項17に記載のシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図6】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2012−58248(P2012−58248A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198536(P2011−198536)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】