説明

RPS2遺伝子およびその使用

【課題】病原体に対して抵抗性を有するトランスジェニック植物ないし種子を提供する。
【解決手段】シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のRps2ポリペプチドをコードする、実質的に純粋なDNA;実質的に純粋なRps2ポリペプチド;および該DNAを用いて、トランスジェニック植物に病原体に対する病害抵抗性を提供するために植物細胞や全植物体でRps2ポリペプチドを発現させる方法からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、組み換え植物の核酸およびポリペプチドに関し、また、病原体に対する抵抗性をトランスジェニック植物に付与するためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
植物は、病原体と戦うためにさまざまな防御方法を駆使する。防御反応の一つである、いわゆる過敏反応(HR)は、感染組織における速やかな局所的壊死反応を伴う。いくつかの宿主-病原体相互作用において、特定の抵抗性遺伝子をもつ宿主の中でHRを誘導する非病原性病原体の特定の非病原性(avr)遺伝子の間に遺伝子対遺伝子の関係があることが、遺伝子分析によって明らかになった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
発明の概要
本発明は、概して、以下で定義されるRpsポリペプチドをコードする、実質的に純粋なDNA(例えば、ゲノムDNA、cDNAまたは合成DNA)を特徴とする。関連する局面において、本発明はまた、Rpsポリペプチドをコードする実質的に純粋なDNAを含むベクター、細胞(例えば、植物細胞)、およびそれらのトランスジェニック植物ないし種子を特徴とする。
【0004】
好ましい態様において、RPS2遺伝子[配列番号:5]は、アラビドプシス(Arabidopsis)属の植物のRPS2遺伝子である。さまざまな好ましい態様において、細胞は、トランスジェニック植物細胞に由来する、形質転換された植物細胞である。関連する局面において、本発明は、非病原性遺伝子avrRpt2[配列番号:105]を発現する病原体、またはRpsポリペプチドによって同様に認識される非病原性シグナルを発現する病原体による感染に対して感受性を示す植物組織の中で発現されるRpsポリペプチドをコードするトランス遺伝子を含むトランスジェニック植物を特徴とする。
【0005】
第二の局面において、本発明は、非病原性遺伝子avrRpt2[配列番号:105]を発現する病原細菌による感染に対して感受性を持つ植物組織においてRPS2遺伝子[配列番号:1]を発現できるプロモーターを含む、実質的に純粋なDNAを特徴とする。
【0006】
好ましい態様において、プロモーターは、RPS遺伝子本来のプロモーターである。さらに好ましくは、転写および翻訳の制御領域も、RPS遺伝子本来のものである。
【0007】
本発明のトランスジェニック植物は、好ましくは非病原性遺伝子、好ましくは非病原性遺伝子avrRpt2[配列番号:105]を発現する病原体の感染に感受性の植物である。好ましい態様において、トランスジェニック植物は、アラビドプシス、トマト、ダイズ、インゲンマメ、トウモロコシ、コムギおよびイネからなる群より選ばれるが、これらに限定されない。
【0008】
別の局面において、本発明は、病原体に対する植物の抵抗性を提供する方法であって、(a)トランス遺伝子がトランスジェニック植物のゲノムに組み込まれ、植物細胞で発現するような位置にある、Rps2ポリペプチドをコードするトランス遺伝子を有するトランスジェニック植物細胞を作出し、(b)トランスジェニック植物細胞から、RPS2トランス遺伝子が発現するトランスジェニック植物を育成することを含む方法を特徴とする。
【0009】
別の局面において、本発明は、植物細胞における抵抗性遺伝子を検出する方法であって、(a)図2のRps2ポリペプチド[配列番号:2-5]をコードするDNA配列に約50%以上一致するDNA配列を検出できるようなハイブリダイゼーション条件の下で、18塩基数以上の長さを有するRPS2遺伝子[配列番号:1]またはその一部と、該植物細胞からのゲノムDNAの調製物とを、接触させることに関する方法を特徴とする。
【0010】
別の局面において、本発明は、Rps2ポリペプチドを産生する方法であって、(a)細胞の中で発現されるような位置にあるRps2ポリペプチドをコードするDNAで形質転換した細胞を提供し、(b)DNAを発現させる条件下で形質転換細胞を培養し、(c)Rps2ポリペプチドを単離することを含む方法を特徴とする。
【0011】
別の局面において、本発明は実質的に純粋なRPS2ポリペプチドを特徴とする。好ましくは、ポリペプチドは、図2のオープン・リーディング・フレーム「a」に示されたアミノ酸配列の50個以上と実質的に同一な、50個以上のアミノ酸配列を含む。最も好ましくは、ポリペプチドは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のRps2ポリペプチド[配列番号:2-5]である。
【0012】
別の局面において、本発明は、非病原性遺伝子avrRpt2を持たない病原体による感染に対する抵抗性を、トランスジェニック植物において提供する方法であって、(a)Rps2ポリペプチドをコードするトランス遺伝子、およびavrRpt2遺伝子産物[配列番号:106]をコードするトランス遺伝子をもつトランスジェニック植物細胞であって、トランス遺伝子がゲノムに組み込まれ植物細胞で発現するような位置にあり、avrRpt2トランス遺伝子、および望ましい場合にはRPS2遺伝子が、遺伝子の発現を制御するのに適した制御配列の調節下におかれたトランスジェニック植物細胞を作出し、(b)トランスジェニック植物細胞から、RPS2およびavrRpt2トランス遺伝子が発現するトランスジェニック植物を育成することを含む方法を特徴とする。
【0013】
別の局面において、本発明は、病原体において非病原性遺伝子の発現のない病原体による感染に対する抵抗性を、トランスジェニック植物において提供する方法であって、(a)RPS2遺伝子を構成的に発現させるプロモーターの制御下にあるRPS2遺伝子を含むトランス遺伝子をゲノム中に組み込んだトランスジェニック植物細胞を作出すること、および(b)トランスジェニック植物細胞から、RPS2トランス遺伝子が構成的に発現されるトランスジェニック植物を育成することを含む方法を特徴とする。
【0014】
別の局面において、本発明は、病原体において非病原性遺伝子の発現のない病原体による感染に対する制御可能な抵抗性を、トランスジェニック植物において提供する方法であって、(a)RPS2遺伝子を制御して発現させることができるプロモーターの制御下にあるRPS2遺伝子を含むトランス遺伝子をゲノム中に組み込んだトランスジェニック植物細胞を作出し、(b)トランスジェニック植物細胞から、RPS2トランス遺伝子が制御可能な発現をするトランスジェニック植物を育成することを含む方法を特徴とする。好ましい態様において、RPS2トランス遺伝子は、組織特異的な、または細胞型特異的なプロモーターを用いるか、化学的シグナルや化学薬品などの外部的なシグナルまたは因子を導入して活性化されるプロモーターによって発現させられる。
【0015】
「病害抵抗性遺伝子」とは、植物細胞ないし組織において、植物の防御反応を開始させることができるポリペプチドをコードする遺伝子を意味する。RPS遺伝子は、図2のRPS2配列[配列番号:1]またはその一部に50%以上の相同性をもつ病害抵抗性遺伝子である。遺伝子RPS2は、シロイヌナズナからのRps2病害抵抗性ポリペプチド[配列番号:2-5]をコードする病害抵抗性遺伝子である。
【0016】
「ポリペプチド」とは、長さや翻訳後修飾(例えば、グリコシル化やリン酸化)に関わらず、あらゆるアミノ酸鎖を意味する。
【0017】
「実質的に同一な」とは、参照するアミノ酸ないし塩基配列に対して、少なくとも50%の、より好ましくは85%の、さらに好ましくは90%の、最も好ましくは95%の相同性を示すポリペプチドないし塩基配列を意味する。ポリペプチドについて、比較する配列の長さは、一般的には16アミノ酸以上であり、好ましくは20アミノ酸以上、より好ましくは25アミノ酸以上、もっとも好ましくは35アミノ酸である。塩基配列については、比較する配列の長さは、一般的には50塩基以上であり、好ましくは60塩基以上、より好ましくは75塩基以上、もっとも好ましくは110塩基である。
【0018】
配列の相同性は、典型的には配列解析用ソフトウエア(例えば、ジェネティクス・コンピューター・グループの配列解析ソフトパッケージ、ウィスコンシン大学バイオテクノロジー・センター、ユニバーシティー・アベニュー1710、マジソン、ウィスコンシン州53705)を用いて判定する。このようなソフトウエアは、さまざまな置換や欠失、その他の修飾に対する相同性の程度を指定することによって、類似配列を比較する。保存的置換には、以下の各グループ内での置換が、典型的には含まれる。すなわち、グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、スレオニン;リジン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシンである。
【0019】
「実質的に純粋なポリペプチド」とは、自然な状態では一緒に存在する構成成分から分離されたRps2ポリペプチドを意味する。典型的には、自然状態では結合している蛋白質や天然有機分子から、重量にして60%以上分離しているときに、ポリペプチドは実質的に純粋である。好ましくは、調製物は、重量にして75%以上、さらに好ましくは90%以上、最も好ましくは99%以上がRps2ポリペプチドである。実質的に純粋なRps2ポリペプチドは、例えば天然の材料(例えば、植物細胞)から抽出したり、Rps2ポリペプチドをコードする組み換え核酸を発現させたり、または、蛋白質を化学的に合成したりすることによって得ることができる。精製度は、例えば、カラム・クロマトグラフィーやポリアクリルアミド電気泳動で解明される方法やHPLC分析などの適当な方法によって測定することができる。
【0020】
蛋白質は、自然な状態において一緒に存在する混合物から分離されたとき、自然に結合している成分から実質的に分離されたという。このように、化学的に合成されたか、その蛋白質が本来産生される細胞とは異なる細胞系で産生された蛋白質は、自然状態で結合している成分から実質的に分離されている。したがって、実質的に純粋なポリペプチドには、真核生物に由来するポリペプチドと、大腸菌や他の原核生物で合成されたポリペプチドが含まれる。
【0021】
「実質的に純粋なDNA」とは、本発明のDNAが由来する生物の、自然状態で存在するゲノムの中で、遺伝子の横にある(他の)遺伝子から分離されたDNAを意味する。このため、例えばこの語には、ベクターの中や自律複製するプラスミドやウイルスの中、原核生物や真核生物のゲノムDNAの中などに組み込まれた組み換えDNA、または、他の配列とは独立の、別個の分子(例えば、cDNAや、PCRや制限酵素消化によって作出されるゲノムDNA断片またはcDNA断片)として存在する組み換えDNAが含まれる。また、この語には、付加的ポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組み換えDNAが含まれる。
【0022】
「形質転換細胞」とは、組み換えDNA技術の手法によって、(本明細書において用いられているように)Rps2ポリペプチドをコードするDNA分子が細胞(または祖先細胞に)導入された細胞という意味である。
【0023】
「発現できるような位置にある」とは、DNA分子が、配列の転写および翻訳を指示する(すなわち、例えば、Rps2ポリペプチドや組み換え蛋白質、RNA分子などの産生を促進する)DNA配列の隣接した部位に配置されたという意味である。
【0024】
「レポーター遺伝子」とは、その発現を測定しうる遺伝子を意味する。このような遺伝子には、β-グルクロニダーゼ(GUS)、ルシフェラーゼ、クロラムフェニコール・トランスアセチラーゼ(CAT)、およびβ-ガラクトシラーゼなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
「プロモーター」とは、転写を指令するのに十分で最短の配列という意味である。また、本発明においては、細胞型特異的ないし組織特異的に制御可能な、または、外部シグナルや薬剤によって誘導可能な、プロモーター依存的な遺伝子発現を行うのに必要十分なプロモーター要素が含まれる。このような要素は、本来の遺伝子の5'または3'領域に位置しているかもしれない。
【0026】
「機能的に結合した」とは、適当な分子(例えば、転写活性化蛋白質)が制御配列に結合すると遺伝子発現が行われるように、遺伝子と制御配列が結合されているという意味である。
【0027】
「植物細胞」とは、半透膜に結合した自己増殖する細胞で、プラスチドを含むものを意味する。さらに増殖させたいのであれば、このような細胞には細胞膜も必要になる。ここで用いられる植物細胞には、藻類、シアノバクテリア、種子の懸濁培養、胚、分裂組織部位、カルス組織、葉、根、茎、配偶体、胞子体、花粉、および小胞子が含まれるがこれに限定されない。
【0028】
「トランス遺伝子」とは、人為的に細胞に挿入されたDNA断片で、その細胞から発生する生物体のゲノムの一部になるものを意味する。このようなトランス遺伝子は、遺伝子導入生物とは部分的に、または全面的に異なる(すなわち、外来の)遺伝子を含むかもしれないし、また該生物に内在する遺伝子と相同な遺伝子に相当するものかもしれない。
【0029】
「遺伝子導入体」とは、細胞に人為的に挿入されて、その細胞から発生する生物体のゲノムの一部になったDNA配列を含む細胞という意味である。ここで用いられる場合には、遺伝子導入生物は、一般的にトランスジェニック植物で、DNA(トランス遺伝子)は、核またはプラスチドのゲノムに人為的に挿入されている。
【0030】
「病原体」とは、生存能力がある植物組織の細胞に感染することによって、植物の組織において病害反応を誘導する生物を意味する。
【0031】
本発明のその他の特徴や利点は、次に説明する好ましい態様および請求の範囲から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0032】
病原体に対する抵抗性の遺伝的基礎
植物宿主と病原微生物との間の相互作用についての概観を示す。病原能力のある病原体が植物に侵入すると、以下の結果に分けられるような範囲の結果を示しうる。すなわち、病原体が宿主の中でうまく増殖して、付随する病徴を発生させるか、宿主の防御によって増殖が停止する。いくつかの植物-病原体相互作用において、積極的な防御反応の目に見える顕著な特徴は、いわゆる過敏反応つまり「HR」である。HRは、感染部位の近傍での急速な細胞の壊死反応を伴い、可視的な褐色の乾いた病斑を形成することを含む。所定の宿主でHRを誘引する病原体を、その宿主に対して非病原性であるといい、その宿主を抵抗性であるという。そして、この宿主-病原体相互作用を非親和的だという。特定の宿主で増殖して病気を引き起こす菌株は病原性であるといわれ、このような場合の宿主を感受性であるといい、また、この宿主-病原体相互作用を親和的だという。
【0033】
特定の菌類ないし細菌の病原体の一連の菌株(菌系)が、特定の宿主生物種の一連の栽培品種(または異なった野生種の登録株)に対して病原性か非病原性であるときに関する植物-病原体認識の遺伝的基礎の解明に役立つよう、「古典的な」遺伝子解析が首尾良く用いられてきた。このような場合の多くにおいて、宿主と病原体双方の遺伝子解析を行うことによって、非病原性の菌類および細菌類の菌株の多くが、宿主の「抵抗性」遺伝子に対応する非病原性(avr)遺伝子を一個またはそれ以上持っている点で、病原性の菌類および細菌類の菌株と区別されることが明らかになった。この非病原性遺伝子-抵抗性遺伝子の関係が、「遺伝子対遺伝子」モデルと名付けられた(Crute, et al.,(1985)pp 197-309 in: Mechanisms of Resistance to Plant Disease.R.S.S.Fraser,ed.; Ellingboe, (1981) Annu. Rev. Phytopathol. 19:125-143; Flor, (1971) Annu. Rev. Phytopathol.9:275-296; Keen and Staskawicsz, (1988)supra; and Keen et al.in:Application of Biotechnology of Plant Pathogen Control.I.Chet,ed.,John Wiley & Sons,1993,pp.65-88)。このモデルを単純に定式化して述べると、植物の抵抗性遺伝子は、avr遺伝子によって作られる分子シグナルに対する特異的なレセプターをコードしている。そして、シグナル伝達経路によって、このシグナルが、HRおよび他の宿主の防御を開始させる一連の標的遺伝子に運ばれる(Gabriel and Rolfe, (1990) Annu. Rev. Phytopathol. 28:365-391)。この単純な予測モデルがあるにもかかわらず、avr抵抗性遺伝子の作用の分子的基礎は、未だ分かっていない。
【0034】
さまざまな細菌のavr遺伝子をクローニングすることによって、遺伝子対遺伝子仮説の基本的な予測のひとつが、分子レベルで説得力をもって確証された(Innes, et al., (1993) J. Bacteriol. 175:4859-4869; Dong, et al., (1991) Plant Cell 3:61-72; Whelan et al., (1991) Plant Cell 3:49-59; Staskawicsz et al., (1987) J. Bacteriol.169:5789-5794; Gabriel et al., (1986) P.N.A.S.,USA 83:6415-6419; Keen and Staskawicz, (1988) Annu. Rev. Microbiol. 42:421-440; Kobayashi et al.,(1990) Mol. Plant-Microbe Interact. 3:94-102 および(1990) Mol. Plant-Microbe Interact. 3:103-111)。これらのクローン化された非病原性遺伝子の多くが、同種の宿主植物のそれぞれの抵抗性遺伝子に対応していることが示され、病原性の菌株に移入されると非病原性の表現形質を付与できることも示されている。イネス(Innes)らによって、シュードモナス・シリンゲpv.トマト(Pseudomonas syringae pv. Tomato)からavrRpt2遺伝子座が単離されて配列決定された(Innes, R. et al. (1993) J. Bacteriol. 175:4859-4869)。図3は、avrRpt2遺伝子の塩基配列[配列番号:105]と、推定アミノ酸配列である。
【0035】
病原体が感染したときに植物が反応するシグナルで知られている例には、軟腐病菌(Erwinia)(Wei et al.(1992) Science 257:85-88)とシュードモナス菌(He et al. (1993) Cell 73:1255-1266)からのハルピン(harpin);クラドスポリウム(Cladosporium)からのavr4ペプチド(Joosten et al. (1994) Nature 367:384-386)およびavr9ペプチド(van den Ackerveken et al. (1992)Plant J. 2:359-366);シュードモナス菌からのPopA1;(Arlat et al. (1994) EMBO J. 13:543-553)avrD生成リポ多糖(Midland et al. (1993) J. Org. Chem. 58:2940-2945);および、リンコスポリウム(Rhynchosporium)菌からのNIP1(Hahn et al. (1993) Mol. Plant-Microbe Interact. 6:745-754)が含まれる。
【0036】
avr遺伝子に較べると、avrを生成する特異的なシグナルに関連する、植物の抵抗性遺伝子について知られていることはかなり少ない。植物の抵抗性遺伝子RPS2(rpsはresistance to Pseudomonas syringaeから取られた)が、特異的なavr遺伝子(avrRpt2)に対応する、それまでに未同定の種類の新しい、植物の病気抵抗性遺伝子の最初のものである。RPS2のクローニングをもたらしたいくつかの研究について、「Yu et al.(1993),Molecular Plant-Microbe Interactions 6:434-443」および「Kunkel, et al.,(1993) Plant Cell 5:865-875」に述べられている。
【0037】
植物病害抵抗性遺伝子Ptoに特異的に対応する、全く別の非病原性遺伝子がトマト(Lycopersicon esculentum)から分離された(Martin et al.,(1993) Science 262:1432-1436)。Pto遺伝子を発現しているトマトの植物体は、avrPto非病原性遺伝子を発現するトマト青枯れ病(Pseudomonas syringae pv.tomato)の菌系による感染に対して抵抗性である。Pto遺伝子のDNA配列から推定されるアミノ酸配列は、セリン-スレオニン・プロテインキナーゼと強い類似性を示し、Ptoのシグナル伝達への関与を示唆している。RPS2については、トマトPto遺伝子座にも他の既知のプロテインキナーゼにも類似性が見つけられなかったため、RPS2が新しい種類の植物病害抵抗性遺伝子を代表するものであることが示唆されている。
【0038】
トウモロコシ(コーン)から、Hm1として知られる菌系特異的な抵抗性遺伝子が単離されたことが報告された(Johal and Briggs (1992) Science 258:985-987)。Hm1は、菌の毒素の分解を調節することによって菌類の病原体(Cochliobolus carbonum)の特定の菌系に対する抵抗性を付与するが、この戦略は、RPS2-avrRpt2抵抗性機構における非病原性遺伝子特異的抵抗性とは機構的に異なっている。
【0039】
本発明でクローン化されたRPS2遺伝子は、特異的な病原体に抵抗性をもつ植物の構築を容易にし、古典的な育種技術を用いた、種間での病害抵抗性遺伝子の移入ができなかったことを克服するために用いることができる(Keen et al., (1993)、supra)。以下では、シロイヌナズナのRPS2遺伝子座、RPS2ゲノムDNAおよびRPS2 cDNAのクローニングと特性検定について説明する。avrRpt2遺伝子とRPS2遺伝子、および、変異体rps2-101C、rps2-102Cおよびrps2-201C(rps2-201とも名付けられている)について述べられている(Dong et al.,(1991)Plant Cell 3;61-72;Yu,et al.,(1993),supra; Kunkel et al.,(1993),supra; Whalen et al.,(1991),supra; および、Innes et al.,(1993),supra)。rps2-101Nと名付けられた変異体も単離されている。RPS2遺伝子の同定とクローニングについて以下で説明する。
【0040】
RPS2はavrRpt2遺伝子をもつ病原体に対する感受性を克服させる
病原体の非病原性遺伝子と宿主の抵抗性遺伝子との間の遺伝的な関係を明らかにするために、まず、非病原性遺伝子を単離することが必要であった。アラビドプシス属に関連のある作用植物の病原体として知られているシュードモナス菌株をスクリーニングして、病原性の強い菌株「P. syringae pv. maculicola (Psm) ES4326」、「P. syringae pv.tomato (Pst) DC3000」および非病原性菌株Pst MM1065を同定し、野生型のシロイヌナズナの中でのそれぞれの菌株の増殖能力を解析した(Dong et al.,(1991) Plant Cell, 3:61-72; Whalen et al.,(1991) Plant Cell, 3:49-59; MM1065は「Whalen et al」においてJL1065と名付けられているものである)。Psm ES4326またはPst DC3000は、シロイヌナズナの葉で10,000倍に増殖することができ、2日間で浸潤性の病斑が表れる原因となる。Pst MM1065は、シロイヌナズナの葉で最大で10倍に増殖することができ、48時間後に僅かに黄化した乾燥病斑を引き起こす。このように、病害抵抗性は病原菌の増殖を強く阻害することと関連する。
【0041】
「Dong et al.,(1991) Plant Cell, 3:61-72」、「Whalen et al.,(1991),supra」、および「Innes et al.,(1993),supra」に述べられている標準的な技術を用いて、Pst MM1065菌株の非病原性遺伝子(avr)をクローニングした。この菌株から単離された非病原性遺伝子にavrRpt2という名前を付けた。通常、病原性菌株Psm ES4326とPst DC3000は、上述のように48時間後に病徴を生じさせる。これに対して、Psm ES4326/avrRpt2またはPst DC3000/avrRpt2は、野生型シロイヌナズナの葉で可視的壊死過敏反応(HR)を16時間以内に誘導し、Psm ES4326またはPst DC3000に較べて50分の1しか増殖しない(Dong et al.,(1993),supra; Whalen et al.,(1991),supra)。このように、野生型のシロイヌナズナにおける病害抵抗性には、一部、病原体の非病原性遺伝子または非病原性遺伝子によって生成されるシグナルが必要である。
【0042】
avrRpt2遺伝子をもつ病原体に対する病害抵抗性に必要な宿主の遺伝子を見つけるために、クローン化されたavrRpt2遺伝子を用いて、シロイヌナズナの病害抵抗性変異体が4つ単離されたことが述べられている(Yu et al.,(1993),supra; Kunkel et al., 1993),supra)。4つのシロイヌナズナ変異体は、病害抵抗能力を失った植物について予想されたように、Psm ES4326/avrRpt2またはPst DC3000/avrRpt2侵入させてもHRを発生させることができなかった。これらの変異体の一つの場合、エチルメタンスルホン酸(EMS)変異原によって作成した、5週齢から6週齢の生態型コロンビア(Col-0植物)のM2植物体約3000個体にPsm ES4326/avrRpt2を手で接種して、一個の変異体rps2-101Cが同定された(resistance to Pseudomonas syringae)(Yu et al.,(1993),supra)。
【0043】
2つ目の変異体は、HRを開始できない変異体を特異的に増加させる方法を用いて分離された(Yu et al.,(1993),supra)。ペトリ皿で育てた、10日目のシロイヌナズナの芽に、Pseudomonas syringae pv. phaseolicola (Psp) NPS3121とPsp NPS3121/avrRpt2を侵入させたところ、Psp NPS3121を侵入させた植物の約90%は生き残ったが、Psp NPS3121/avrRpt2を侵入させた植物の90%〜95%は枯れた。小さなシロイヌナズナの芽全体にPsp NPS3121/avrRpt2を真空浸透法で入れると、明らかに全身性のHRを誘導するため、大抵の芽は枯れてしまう。これに対して、Psp NPS3121はシロイヌナズナにとって弱い病原体であるために、Psp NPS3121を浸透させた芽は生き残った。二番目の病害抵抗性変異体は、4000個体のEMS変異原処理したコロンビアのM2発芽体にPsp NPS3121/avrRpt2を浸透させて単離した。200個体の生き残り個体が得られた。これらを土に移植して、植物体が成熟したところで、再び手で接種してスクリーニングした。これら200の生き残り個体の中で1個の植物体がPsm ES4326/avrRpt2を浸透させたときにHRを起こすことができなかった。この変異体にrps2-102Cという名前を付けた(Yu et al.,(1993),supra)。
【0044】
第三の変異体のrps2-201Cは、ジエポキシブタンで突然変異を起こさせたシロイヌナズナのCol-0生態型の種子に由来する約7500個のM2植物をスクリーニングして分離された(Kunkel et al.,(1993),supra)。ロゼット状の葉全体をPst DC3000/avrRpt2バクテリアと界面活性剤Silwet L-77を含んだ溶液に浸漬し(Whalen et al.,(1991),supra)、植物を人工気象培養器の中で3日から4日間インキュベートしてから、病徴の伸展を目で観察することにより、植物を接種した。このスクリーニングによって4つの変異系統(rps2-201C、rps2-202C、rps2-203Cおよびrps2-204Cという対立遺伝子)が見いだされ、主にrps2-201Cについてホモ接合の植物体をさらに検討した(Kunkel et al.,(1993),supra;および本出願)。
【0045】
第四のrps2変異体であるrps2-101Nの分離は、まだ公表されていない。この第四の分離株は、突然変異体かシロイヌナズナの感受性の生態型である。シロイヌナズナのノッセン(Nossen)生態型の種子にガンマ線を照射した後、平箱に種子を厚く播いて発芽させ、ナイロン膜を通して生育させた。植物体が5から6週齢になったとき、平箱を逆さまにして、Psm ES4326/avrRpt2の培養液を含むトレイの中に植物を部分的に沈めた。そして、真空乾燥器の中で植物に真空浸透させた。このようにして接種された植物は、24時間以内にHRを発現させる。この方法を用いて、およそ40,000個体の植物をスクリーニングし、感受性植物を1個体同定した。この後に行われたRFLP解析によると、この植物体はノッセンの変異体ではなく、むしろPsm ES4326/avrRpt2に感受性の別のシロイヌナズナの生態型であると考えられる。この植物をrps2-101Nと呼ぶことにする。rps2-101C、rps2-102C、rps2-201C、およびrps2-101Nを「rps2変異体」と総称する。
【0046】
rps2変異体はクローン化された非病原性遺伝子avrRpt2に特異的に反応することができない
非病原性遺伝子avrRpt2をもつ病原体に対する抵抗性には、RPS2遺伝子産物が特異的に必要である。Rps2ポリペプチドの機能が失われるか低下するという変異は、病原体を侵入させた際の過敏反応の消失として観察可能である。Psm ES4326/avrRpt2、Pst DC3000/avrRpt2またはPsp NPS3121/avrRpt2それぞれを浸透させたとき、rps2変異体は、病徴を示すか、または全く反応を示さなかった。特に、HR反応は誘導されなかったため、病原体はavrRpt2遺伝子をもつにも拘わらず、植物体が感受性になって、病原体に対する抵抗性をなくしたことが分かった。
【0047】
rps2変異体植物の葉における病原菌の増殖は、avrRpt2遺伝子があってもなくても同様であった。rps2変異体におけるPsm ES4326およびPsm ES4326/avrRpt2の増殖を比較すると、Psm ES4326が野生型のシロイヌナズナの葉で増殖するのと同じ速さで、rps2変異体の中でどちらも同じように増殖することが分かった。rps2変異体におけるPst DC3000とPst DC3000/avrRpt2の増殖についても同様の結果が観察された。
【0048】
別のavr遺伝子であるPsm ES4326/avrB、Pst DC3000/avrB、Psm ES4326/avrRpm1、Pst DC3000/avrRpm1をもつシュードモナス菌の病原体を侵入させると、rps2変異体はHRを示した。avrRpt2以外のavr遺伝子に対してHRを開始できたことから、avrRpt2で選抜され分離されたrps2変異体はavrRpt2に対して特異的であることが分かる。
【0049】
RPS2遺伝子のマッピングおよびクローニング
rps2変異体、rps2-101C、rps2-102C、rps2-201C、およびrps2-101Nの遺伝子解析によって、これらの遺伝子はすべて、1個のメンデル型遺伝子座に予想されるように分離する遺伝子に一致することが明らかになり、これらは4つともすべて対立遺伝子である可能性がもっとも高いことが明らかになった。この4つのrps2変異体は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づいたマーカーを用いた、標準的なRFLPマッピング方法を用いて、第IV染色体の底部にマップされた(Yu et al.,(1993),supra; Kunkel et al.,(1993),supra;Mindrinos, M.,未発表)。分離解析によって、rps2-101Cとrps2-102Cは、PCRマーカーのPG11に緊密に連鎖していることが明らかになったが、一方rps2-201C変異体の染色体上の位置を決めるためにRFLPマーカーが用いられた(図1A)(Yu et al., (1993),supra; Kunkel et al.,(1993),supra)。続いて、RPS2遺伝子は、PG11の動原体寄りの側にマップされた。
【0050】
RPS2/rps2ヘテロ接合体植物は、野生型植物とrps2/rps2ホモ接合変異体植物が示す防御反応の中間的な反応を示した(Yu et al.,(1993),supra; Kunkel et al.,(1993),supra)。ヘテロ接合体植物は、Psm ES4326/avrRpt2またはPst DC3000/avrRpt2の侵入に反応してHRを開始したが、野生型植物に較べると、反応の始まりが遅く、最少接種量も多く必要とした(Yu et al., (1993),supra; Kunkel et al., (1993),supra)。
【0051】
RPS2遺伝子の高解像度マッピングおよびRPS2 cDNAの単離
マッピングに基づいたRPS2遺伝子のクローニングを行うために、rps2-101N/rps2-101Nをランズベルグ・エレクタ(Landsberg erecta)のRPS2/RPS2と交配させた。F1世代の植物を自家受粉(「セルフ」)させ、そのF2植物165個体をセルフさせてF3集団を作成した。標準的なRFLPマッピング方法によって、rps2-101Nは、RFLPマーカーPG11の近傍の動原体寄りの側に位置することが分かった。より詳細な地図上の位置を得るために、rps2-101N/rps2-101Nを、劣性突然変異cer2とap2の2つのマーカーを持つランズベルグ・エレクタ(Landsberg erecta)系統と交配させた。cer2とap2の間の遺伝的距離は、約15 cMで、rps2遺伝子座はこの間に位置している。CER2 ap2またはcer2 AP2の遺伝子型を示したF2植物を集めてセルフさせ、各F2につき少なくとも20個体のF3植物にPsm ES4326/avrRpt2を接種してRPS2のスコアを採った。また、各F2系統について約20個体のF3植物をまとめたものからDNAを調製した。図1に示された染色体ウォーキングを行うために、CER2 ap2とcer2 AP2の組み換え体を用いた。
【0052】
図1に示されるように、RPS2は、コスミドクローンE4-4とE4-6でカバーされる28〜35kbの領域にマップされた。この領域には、検出可能な転写物を生み出す遺伝子が少なくとも6個含まれている。RNAブロッティング解析によって測定したところ、rps2変異体において、これらの転写物の大きさとその発現レベルに有意な差異は見られなかった。これらの転写物のそれぞれのcDNAクローンを単離して、それらのうちの5個について配列決定した。後に述べるように、これらの転写物の一つのcDNA-4が、RPS2遺伝子座に一致することが分かった。この実験から、生態型コロンビアの野生型植物のRPS2と一致する3個の独立したcDNAクローン(cDNA-4-4、cDNA-4-5、およびcDNA-4-11)が得られた。RNAブロッティング解析によって測定したところ、RPS2転写物の見かけの大きさは3.8 kbと3.1kbであった。
【0053】
4つ目の独立したcDNA-4クローン(cDNA-4-2453)は、別の実験でマッピングに基づくRPS2の単離を用いて得られたものである。RPS2領域の約900 kbにわたるM600領域から採ったシロイヌナズナCol-0生態型のゲノムDNAの挿入配列をもち、それが連続してオーバーラップしている酵母人工染色体(YAC)クローンを同定した。シロイヌナズナのYACライブラリーは、「J. Ecker and E. Ward,supra」、およびE.グリル(E. Grill and Somerville (1991) Mol. Gen. Genet. 226:484-490)から得た。「H」および「E」と名付けたコスミドは、YAC挿入物に由来し、RPS2の単離に用いられた(図1)。
【0054】
物理的にマップされたRFLPマーカー、RAPD(ランダムに増幅された多型DNA)マーカーおよびCAPS(切断して増幅した多型配列)マーカーを用いて、RPS2の遺伝的および物理的な位置をより正確に決定した。RPS2/RPS2遺伝子型(No-0野生型)とrps2-201/rps2-201遺伝子型(Col-0遺伝的背景)の植物を交配させてできた分離集団を遺伝子マッピングに用いた。17B7LE、PG11、M600 およびその他のマーカーを用いてRPS2遺伝子座をマップした。高解像度の遺伝子マッピングを行うために、YACおよびコスミドクローンの挿入配列の末端断片を用いて、強く連鎖したRFLPマーカーの組み合わせを作成した(図1)(Kunkel et al. (1993),supra; Konieczny and Ausubel (1993) Plant J. 4:403-410; Chang et al. (1988) PNAS USA 85:6856-6860)。次に、コスミドクローンE4-4およびE4-6を用いて、この領域から、cDNA-4-2453を含んだ発現転写物(図1FのcDNA-4、-5、-6、-7、-8と名付けた)を同定した。
【0055】
RPS2 DNAの配列解析
野生型Col-0植物および変異体rps2-101C、rps2-102C、rps2-201Cおよびrps2-101Nから得たcDNA-4のDNA配列解析によって、cDNA-4がRPS2に一致することが示された。rps2-101C、rps2-102C、およびrps2-201Cの配列解析によって、表1に示されているように野生型配列から変化が起きていることが明らかになった。表1の番号付けの仕組みは、第一メチオニンをコードする開始コドンATGから始まり、このAがヌクレオチド1になる。変異体rps2-102Cに相当するcDNA-4のDNA配列解析によって、アミノ酸残基の476番目が野生型配列とは異なっていることが分かった。さらに、rps2-101NからのcDNA-4に相当するcDNAのDNA配列解析によって、ロイシンリッチな反復配列に含まれる部位であるアミノ酸残基581で10 bpの挿入があり、そのためにRPS2の読み枠に変化がおきていることが分かった。変異体rps2-101Cには、鎖を終結させるコドンを形成させるような突然変異が含まれている。変異対立遺伝子rps2-201CのDNA配列から、ヘリックス-ループ-ヘリックスモチーフとも類似性のあるLRR領域部分中のアミノ酸が1個が変わる変異が起きていることが分かり、この座位をRPS2遺伝子と名付ける根拠をさらに提供した。DNAとアミノ酸配列が図2に示されている[それぞれ配列番号:1および配列番号:2-5]。

表1.
変異体 野生型 位置 変異における変化
rps2-101C 703 TGA 705 704 TAA終止コドン
rps2-101N 1741 GTG 1743 1741 GTGGAGTTGTATG挿入
rps2-102C 1426 AGA 1428 1427 AAAアミノ酸
476 arg lys
rps2-201C 2002 ACC 2004 2002 CCCアミノ酸
thr pro
【0056】
野生型Col-0植物のRPS2に一致するcDNA-4のDNA配列解析によって、2,751 bpの長さの読み枠(2つの終止コドンの間)があることが明らかになった。この読み枠の第一メチオニンコドンと3'側の終止コドンの間は2,727 bpで、909個の推定アミノ酸ポリペプチドに相当する(図2の読み枠「a」を参照)。このアミノ酸配列の相対分子量は104,460で、pIは6.51である。
【0057】
RPS2は新しい病害抵抗性遺伝子に分類される。Rps2ポリペプチドの構造は、これより前にクローニングされ公表されていた唯一の非病原性遺伝子特異的な病害抵抗性遺伝子で、プロテインキナーゼ・ドメインと推定されるドメインをもつPtoの産物の蛋白質の構造に類似していない。推定アミノ酸配列の上記の解析から、RPS2は、真核生物と原核生物両方に由来する他のタンパク質で保存されていることが明らかな蛋白質ドメインをいくつか含んでいる。これらのドメインには、ロイシン・リッチ・リピート(LRR)(Kobe and Deisenhofer, (1994) Nature 366:751-756)、P-ループ(Saraste et al. (1990) Trends in Biological Sciences TIBS 15:430-434)、ヘリックス-ループ-ヘリックス(Murre et al. (1989) Cell 56:777-783)、およびロイシンジッパー(Rodrigues and Park (1993) Mol. Cell Biol. 13:6711-6722)が含まれるが、これらに限られない。Rps2のアミノ酸配列は、LRRモチーフ(アミノ酸残基505からアミノ酸残基867までのLRRモチーフ)を含むが、このモチーフは既知の多くの蛋白質に存在し、蛋白質-蛋白質の相互作用に関係すると考えられている。このため、植物の病害抵抗性に関係する他の蛋白質と相互作用できるのかもしれない。Rps2ポリペプチドのN末部位のLRRは、例えば、酵母(Saccharomyces cerevisiae)のアデニル酸シクラーゼCYR1のLRRと関連している。膜貫通部位ドメインと推定されている領域(Klein et al.(1985) Biochem., Biophys. Acta 815:468-476)が、LRRのN末部位のアミノ酸残基350からアミノ酸残基365のところに位置している。ATP/GTP結合部位モチーフ(P-ループ)がアミノ酸残基177からアミノ酸残基194の間のこれらのアミノ酸を含む位置にあると推測されている。
【0058】
推定アミノ酸配列の上記の解析からすると、Rps2ポリペプチドは、N末端の細胞外領域とC末端の細胞内領域とからなる膜受容体構造を持っているのかもしれない。または、Rps2のトポロジーはこの逆で、N末端が細胞内領域で、C末端が細胞外領域になっているのかもしれない。多くの場合、LRRモチーフは細胞外にあり、Rps2のLRRは、N-グリコシル化を受けうる部位を5つ含んでいる。
【0059】
機能的相補性によるRPS2の同定
rps2-201ホモ接合体がシロイヌナズナに対応するゲノムDNAで相補されたことから、cDNA-4をコードするゲノム領域がRPS2活性をもつことが機能的に確証された。図1および図4のYAC、EW11D4、EW9C3およびYUP11F1に含まれているRPS2領域から、野生型シロイヌナズナの、オーバーラップしながら連続する配列を含むコスミドを構築した。コスミドベクターは、アグロバクテリウムが媒介する形質転換によって、挿入配列を植物ゲノムに取り込ませる配列(「バイナリーコスミド」と名付けられている)を含むpSLJ4541(イングランド(England)ノリッジ(Norwich)サンズベリ研究所(Sainsbury Institute)のJ.ジョーンズ(J. Jones)氏から入手)から構築した。「H」および「E」コスミド(図1)を用いて、シロイヌナズナのゲノムのRPS2領域からのDNAをもっているクローンを同定した。
【0060】
RPS2領域のDNA挿入を含んでいるバイナリーコスミド40個以上を用いて、アグロバクテリウム媒介による形質転換を利用して、rps2-201ホモ接合変異体の形質転換を行なった(Chang et al.(1990) p.28,Abstracts of the Fourth International Conference on Arabidopsis Research,Vienna,Austria)。感受性のまま(avrRpt2とavrRpt2なしのPsp 3121をもつP.シリンゲ pv.ファセオリコラ(P. syringae pv. phaseolicola)菌株3121に感染させた後HRが起こらないことを観察することを含む方法によって判定される)の形質転換体は、挿入DNAに機能的なRPS2が含まれていないことを示している。これらのコスミドは、図4に示された「Sus.」すなわち感受性の表現形質を持つ。avrRpt2特異的な病害抵抗性(avrRpt2をもつPsp 3121を接種したときには強い過敏反応(HR)を示すが、avrRpt2なしのPsp 3121を接種した後にはHRが起こらないことの表示を含む方法によって判定される)を獲得した形質転換体によって、図4に示した「Res.」すなわち抵抗性の表現形質を付与できる機能的なRPS2遺伝子が、挿入DNAに含まれていることが示された。pD4バイナリーコスミドを用いて得られた形質転換体は、上述したように強い抵抗性の表現形質を示した。形質転換体に挿入DNAが存在することを、古典的な遺伝子解析(病害抵抗性形質と強い遺伝的連鎖関係にあり、共形質転換した選抜マーカーによって与えられる発現されるカナマイシン抵抗性形質)とサザン解析によって確かめた。これらの結果から、RPS2は、コスミドpD4に含まれるシロイヌナズナの18 kbのゲノム領域の部分にコードされていることが示された(図4)。
【0061】
RPS2遺伝子座の位置をさらに特定し、それがrps2-201ホモ接合変異体に抵抗性の表現型を与えることができることを確認するために、部分的にオーバーラップするゲノムDNA挿入配列をもつ6個のバイナリーコスミドのセットを調べた。RPS2領域の5個のcDNAクローンに一致する転写物の位置に基づいて、オーバーラップする挿入配列pD2、pD4、pD14、pD15、pD27およびpD47を選んだ(図4)。これらの形質転換実験では、アグロバクテリウムに媒介される形質転換のために真空浸透法を利用した(Bechtold et al.,(1993) C.R. Acad. Sci.Paris 316:1194-1199)。コスミドpD2、pD14、pD15、pD39およびpD46によるアグロバクテリウム媒介の形質転換は、根の形質転換/再分化プロトコールを用いて行なった(Valveekens et al.(1988),PNAS 85:5536-5540)。これらの形質転換体におけるRPS2活性を測定する、病原菌の接種実験の結果が図4に示されている。
【0062】
補足的な形質転換実験では、cDNA-4またはcDNA-6のみにあたる、完全なコーディング領域と1 kb以上上流のゲノム配列をもつバイナリーコスミドを利用した。真空浸透形質転換法を用いて、rps2-201Cホモ接合体の遺伝的背景(図4のpAD431)の中に野生型のcDNA-6にあたるゲノム領域をもつ、3個の別々の形質転換体を得た。これらの植物で、avrRpt2依存的な病害抵抗性を示したものはなかった。rps2-201Cホモ接合変異体を、野生型のゲノムcDNA-4(p4104およびp4115、これらは各々、cDNA-4の読み枠のすべてに相当するCol-0のゲノム配列、および約1.7 kbの5'側の上流配列と停止コドンから約0.3 kb下流の3'側配列を持っている)で形質転換した。これらp4104およびp4115形質転換体は、rps2が由来した野生型のRPS2ホモ接合体と同じような病害抵抗性の表現型を示した。さらに別の変異体(rps2-101Nおよびrps2-101Cのホモ接合体)も、cDNA-4ゲノム領域で形質転換したとき、avrRpt2依存的な抵抗性を示した。
【0063】
RPS2配列によって別の抵抗性遺伝子を検出できる
RPS2のcDNAをプローブとして用いた、シロイヌナズナゲノムDNAのDNAブロット解析から、シロイヌナズナには、RPS2またはその一部にハイブリダイズするDNA配列がいくつか含まれていることが分かり、シロイヌナズナのゲノムにいくつかの関連遺伝子が存在することが示唆された。
【0064】
前記の説明と、図2に示された核酸配列[配列番号:1]から、RPS2遺伝子と約50%以上の配列同一性をもつ他の植物の病害抵抗性遺伝子を分離することができる。RPS2遺伝子またはその一部で約18塩基よりも長いものを含むオリゴヌクレオチドプローブによって、検出と単離を行うことができる。同じ構造上のドメインを持つ病害抵抗性遺伝子を単離する手段を提供するので、プローブには、Rps2ポリペプチド[配列番号:2-5]を特に構造上特徴付ける部分をコードする配列に対するものが好ましい。「Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1989))」に記載されているような標準的な技術を用いて、ハイブリダイゼーションを行なった。
【0065】
例えば、RPS2遺伝子を検出するための非常に厳密な条件では、約42℃で約50%ホルムアミドでハイブリダイゼーションを行ない、最初の洗浄は約65℃、約2×SSCおよび約1%SDSで、2回目の洗浄は約65℃、約0.1%SSCで行なう。厳密度の低い条件で、RPS2遺伝子に約50%配列が一致するRPS遺伝子を検出するには、例えば、約42℃、ホルムアミドなしでハイブリダイゼーションを行ない、最初の洗浄は約42℃、約6×SSCおよび約1%SDSで、2回目の洗滌洗浄は50℃、約6×SSCおよび約1%SDSで行なう。Rps2のLRR領域の中間部位をコードしている、およそ350ヌクレオチドのDNAプローブを、上記の実施例のプローブとして用いた。厳密度の低い条件下で、Rps2のLRRモチーフの中間部位をコードしているDNAにハイブリダイズするのに十分な配列同一性をもつ配列として、BamHI消化したシロイヌナズナのゲノムDNAの中で、最低5本のDNAバンドを検出した。LRRモチーフの外側にあり、RPS2のN末端をコードするRPS2遺伝子の300ヌクレオチドの部位を含むプローブを用いても同じ結果が得られた。
【0066】
RPS2に配列同一性をもつ遺伝子中のオリゴヌクレオチドに隣接する配列のみを増幅するよう設計されたオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、分子生物学の分野における当業者によく知られたPCR増幅技術によって、他の病害抵抗性遺伝子の単離が行われた。場合によっては、プライマーは、増幅産物を適当なベクターにクローニングできるように設計される。
【0067】
トランスジェニック植物細胞および植物体におけるRPS2の発現
Rps2ポリペプチドを発現させるRPS2遺伝子を含むDNA配列を植物体に導入することによって、avrRpt2を持っている病原菌に感受性の植物でRPS2遺伝子を発現させることができた。植物細胞の安定した形質転換やトランスジェニック植物の作製に適した多くのベクターが一般に入手可能である。このようなベクターは、例えば「Pouwels et al.,Cloning Vectors:A Laboratory Manual,1985,Supp.1987」、「Weissbach and Weissbach,Methods for Plant Molecular Biology,Academic Press,1989」、および「Gelvin et al.,Plant Molecular Biology Manual,Kluwer Academic Publishers,1990」に開示されている。典型的には、植物発現ベクターには、(1)5'および3'の制御配列による転写制御下の一個以上のクローン化された植物遺伝子、および(2)優性の選択マーカーが含まれる。このような植物発現ベクターは、また、必要であればプロモーターの制御領域(例えば、誘導性または構成性の、環境的または発生的に制御され、細胞または組織に特異的な発現)、転写開始部位、リボソーム結合部位、RNAプロセシングシグナル、転写終結部位、および/またはポリアデニル化シグナルを含んでいてもよい。
【0068】
本発明による植物の病害抵抗性遺伝子を発現させるために用いることができる、有用な植物プロモーターの例は、例えば、カリフラワー・モザイクウイルス(CaMV)の35Sプロモーターである。これらのプロモーターは、ほとんどの植物組織で高レベルの発現を可能にし、またこれらのプロモーター活性はウイルスにコードされる蛋白質に依存しない。35Sプロモーターも19Sプロモーターも、CaMVに由来している。トランスジェニック植物のほとんどの組織において、CaMVの35Sプロモーターは強いプロモーターである(「Odel et al., Nature 313:810,(1985)」参照)。また、CaMVのプロモーターは単子葉類でも高い活性をもつ(例えば「Dekeyser et al., Plant Cell 2:591,(1990)」、「Terada and Shimamoto, Mol. Gen. Genet. 220:389,(1990)」参照)。
【0069】
他の有用な植物プロモーターには、ノパリン(nopaline)合成酵素プロモーター(An et al., Plant Physiol. 88:547, (1988))、およびオクトピン(octopine)合成酵素プロモーター(Fromm et al., Plant Cell 1:977, (1989))が含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
一定の応用場面において、RPS2遺伝子産物またはavrRpt2遺伝子産物を、適当な組織において、適当なレベルで、または適当な発生段階で産生させることが望ましいかもしれない。したがって、環境、ホルモン、および/または発生上のサインに応じて制御されることが分かっている、さまざまな遺伝子プロモーターが存在し、それぞれの制御配列に具現した独自の特徴を持つ。これらは、以下の遺伝子発現に関与する遺伝子プロモーターを含む。(1)熱制御による遺伝子発現(例えば「Callis et al., Plant Physiol. 88:965, (1988)」参照)、(2)光制御による遺伝子発現(例えば「Kuhlemeier et al., Plant Cell 1:471, (1989)」に開示されているエンドウのrbcS-3A、「 Schaffner and Aheen, Plant Cell 3:997, (1991)」に開示されているトウモロコシのrbcSプロモーター、または「Simpson et al., EMBO J. 4:2723, (1985)」に開示されているエンドウで発見されたクロロフィルa/b結合蛋白質)、(3)ホルモン制御による遺伝子発現(例えば「Marcotte et al., Plant Cell 1:969, (1989)」に開示されているコムギのEm遺伝子由来のアブシジン酸応答配列)、(4)傷害誘導による遺伝子発現(例えば「Siebertz et al., Plant Cell 1:961, (1989)」に開示されているwunI)、または(5)器官特異的遺伝子発現(例えば「Roshal et al., EMBO J. 6:1155, (1987)」に開示されている腫瘍特異的貯蔵蛋白質遺伝子、「Shernthaner et al., EMBO J. 7:1249, (1988)」に開示されているトウモロコシの23-kDaのザイン遺伝子、または「Bustos et al., Plant Cell 1:839, (1989)」に開示されているインゲンマメのβ-ファセオリン遺伝子)。
【0071】
植物の発現ベクターはまた、場合によっては、例えばイントロンなどの、効率的なRNA合成と蓄積に重要であることが示されている(Callis et al., Genes and Dev. 1:1183, (1987))RNAプロセシング・シグナルを含んでいるかもしれない。RNAスプライシング配列の位置は、植物におけるトランス遺伝子の発現レベルに影響を与える。この事実を考慮すると、遺伝子発現のレベルを修正するために、トランス遺伝子の、Rps2ポリペプチドをコードする配列の上流か下流にイントロンが位置してもよい。
【0072】
前記の5'調節制御配列に加えて、発現ベクターは、植物遺伝子の3'領域に、一般的に存在する調節制御配列を含んでいてもよい(Thornburg et al.,Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 744 (1987); An et al., Plant Cell 1:115, (1989))。例えば、mRNAの安定性を増すために、発現ベクターには3'終結領域が含まれていてもよい。このような終結領域の一つは、ジャガイモのPI-II終結領域に由来するものであってもよい。さらに、普遍的に用いられる、他の終結因子は、オクトピンまたはノパリン合成酵素のシグナルに由来するものであってもよい。
【0073】
植物発現ベクターはまた、典型的には、形質転換された細胞を同定するために用いられる、優性の選抜マーカーを含んでいる。植物のシステムにとって有用な選抜マーカー遺伝子は、例えばハイグロマイシン、カナマイシン、ブレオマイシン、G418、ストレプトマイシン、またはスペクチノマイシンに対する抵抗性をコードする遺伝子のような抗生物質抵抗性遺伝子をコードする遺伝子を含む。光合成に必要な遺伝子もまた、光合成欠損系統における選抜マーカーとして用いられうる。最後に、除草剤抵抗性をコードする遺伝子が選抜マーカーとして用いられうるが、有用な除草剤抵抗性遺伝子には、広範性除草剤バスタ(Basta(登録商標)(ヘキスト AG(Hoechst AG)、フランクフルト(Frankfurt)、ドイツ(Germany))に対する抵抗性を付与する酵素ホスフィノスリチン・アセチルトランスフェラーゼをコードするbar遺伝子が含まれる。
【0074】
特定の選抜用薬剤に対する植物細胞の感受性を決定し、形質転換された細胞の全部でないにしても、そのほとんどを殺せる、この薬剤の濃度を決定することによって、選抜マーカーの効率的な利用が促進される。タバコの形質転換に対する抗生物質の有用な濃度には、例えば、75〜100μg/ml(カナマイシン)、20〜50μg/ml(ハイグロマイシン)、または5〜10μg/ml(ブレオマイシン)が含まれる。除草剤抵抗性について形質転換体を選抜するための有用な方法が、例えば、「Vasil I.K.,Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants,Vol I,II,III,Laboratory Procedures and Their Applications Academic Press,New York,1984」に述べられている。
【0075】
遺伝子発現のレベルは、プロモーターとRNAプロセシング・シグナルと終結要素との組み合わせによるだけでなく、どのようにこれらの要素を遺伝子発現のレベルを上昇させるために用いるかにもよることは、植物分子生物学の分野の当業者にとっては自明のことであろう。
【0076】
植物の形質転換
植物発現ベクターの構築にあたって、トランスジェニック植物を作製するため、組み換え遺伝物質を宿主植物に導入するための標準的な方法がいくつか知られている。これらの方法には、(1)アグロバクテリウム媒介による形質転換(A. tumefaciens or A. rhizogenes)(例えば「Lichtenstein and Fuller In: Genetic Engineering,vol.6, PWJ Rigby, ed, Lonon, Academic Press, 1987」 および「Lichtenstein, C. P., and Draper, J.,In DNA Cloning Vol II, D.M.Glover,ed,Oxford,IRI Press,1985」参照)、(2)粒子輸送システム(例えば「Gorden-Kamm et al.,Plant Cell 2:603, (1990)」または「BioRad Technical Bulletin 1687,supra」参照)、(3)マイクロインジェクション・プロトコール(例えば「Green et al.,Plant Tissue and Cell Culture,Academic Press,New York,1987」参照)、(4)ポリエチレングリコール(PEG)法(例えば「Draper et al., Plant Cell Physiol.23:451,(1982)」または例えば「Zhang and Wu,Theor.Appl.Genet.76:835,(1988)参照)、(5)リポソーム媒介のDNA導入法(例えば「Freeman et al., Plant Cell Physiol.25:1353,(1984)」参照)、(6)エレクトロポレーション法(例えば「Gelvin et al.supra; Dekeyser et al.supra」または「Fromm et al., Nature 319:791, (1986)」参照)、および(7)撹拌法(例えば「Kindle,K.,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 87:1228,(1990)」参照)。
【0077】
以下はアグロバクテリウム媒介による植物の形質転換の概要を示す実施例である。植物細胞のゲノムに導入される遺伝子を操作するための一般的な過程は、二つの段階を経る。第一は、クローニングとDNA修飾のステップはすべて大腸菌の中で行われ、目的の遺伝子構築物を含むプラスミドを、接合によってアグロバクテリウムの中に導入する。第二段階として、前の結果できたアグロバクテリウムの菌株を用いて植物細胞を形質転換する。このように、一般化した植物発現ベクターとなるために、プラスミドにはアグロバクテリウムの中での複製が可能な複製開始点および大腸菌の中で機能する多コピー数複製開始点が含まれている。このため、後で植物の中に導入するためにアグロバクテリウムへの導入を行なう前に、大腸菌の中でトランス遺伝子を簡単に産生させて調べることができる。抵抗性遺伝子をベクターに入れることができるが、一つは、例えば、ストレプトマイシンなど、バクテリアで選抜するためのもので、もう一つは、例えば、カナマイシン抵抗性や除草剤抵抗性遺伝子のように、植物で発現するものである。また、適当な調節配列および方向性をもつT-DNAの境界配列に機能的に結合した、1個以上のトランス遺伝子を付加するための制限酵素部位もある。境界配列は、アグロバクテリウムの移行機能によって認識されたとき、植物に移行する領域を定める配列である。
【0078】
別の実施例において、クローン化されたDNAを沈着させたタングステンのミクロ発射物を細胞の中に挿入して植物細胞を形質転換することができる。挿入に用いるバイオリスティック装置(バイオラド社、ハーキュリーズ、カリフォルニア州)の中で、火薬の充填(22口径のパワー・ピストン・ツール・チャージ)または圧縮空気による発射によって銃身からプラスティックのマクロ発射物を打ち出す。DNAが沈着したタングステン粒子懸濁液のアリコットをプラスティック製のマクロ発射物の前に置く。後者を、マクロ発射物が通過できない小孔が開いた、アクリル製の遮断板に向かって発射する。この結果、プラスティック製のマクロ発射物は遮断板に当たって砕け、タングステンのミクロ発射物が、遮断板の穴を通って標的に向かって進み続ける。本発明に関しては、標的はどんな植物の細胞や組織や種子や胚でもよい。細胞に導入された、ミクロ発射物上のDNAは、核または葉緑体のいずれかに取り込まれる。
【0079】
植物細胞中のトランス遺伝子の導入と発現は、今や、当業者にとっては日常的な操作になっている。これは、遺伝子発現実験を行なうための、また、農業上ないし商業上有益な、改良された植物品種を得るための主要な手段になっている。
【0080】
トランスジェニック植物の再生
植物発現ベクターで形質転換された植物細胞を、例えば、単一の細胞、カルス組織、または葉ディスクから、標準的な植物組織培養技術によって再生することができる。ほとんどすべての植物について、さまざまな細胞、組織、または器官をうまく培養して完全な植物体に再生できることは、当業者によく知られている。そのような技術については、例えば「Vasil supra」、「Green et al., supra」、「Weissbach and Weissbach, supra」、および「Gelvin et al.,supra」に記載されている。
【0081】
可能な実施例の一つとして、選抜マーカー遺伝子(例えば、カナマイシン抵抗性)、つまり、自身のプロモーターおよびターミネーターの支配下、または、必要であれば、35SのCaMVプロモーターやノパリン合成酵素のターミネーターなどの外因性制御配列の支配下でクローン化されたRPS2遺伝子を有するベクターによって、アグロバクテリウムを形質転換する。ベクターが入ったアグロバクテリウムによる葉組織の形質転換を、ホーシュら(Horsch et al.)の記述(Science 227:1229, (1985))に従って行なった。数週間後(例えば、3から5週間後)、カナマイシン(例えば、100μg/ml)を含む植物組織培養培地で、形質転換体と推定されるものを選抜する。次に、カナマイシン抵抗性の芽を、発根を開始させるホルモンを入れていない植物組織培養培地の上に置く。そして、温室で成長させるカナマイシン抵抗性植物を選抜する。必要であれば、次に、自殖させたトランスジェニック植物からの種子を土を含まない培地に播いて、温室で育てることができる。ホルモンなしでカナマイシン入りの培地に表面を殺菌した種子を播いて、カナマイシン抵抗性の後代を選抜する。標準的な技術(例えば、Ausubel et al.supra; Gelvin et al.supra)を用いて、トランス遺伝子の取り込みに関する解析を行なう。
【0082】
次に、トランス遺伝子DNAの伝達について、標準的な免疫ブロットおよびDNA/RNA検出技術によって、選抜マーカーを発現しているトランスジェニック植物をスクリーニングする。陽性のトランスジェニック植物およびそのトランスジェニック植物の後代はそれぞれ、同じトランス遺伝子を用いて作製された他のトランスジェニック植物と比較すると異なっている。トランス遺伝子DNAの植物ゲノムDNAへの取り込みは殆どの場合無作為で、取り込まれた部位がトランス遺伝子の発現のレベルならびに組織および成長パターンに大いに影響する。そのため、各トランス遺伝子について、通常は、多数のトランスジェニック系統をスクリーニングし、最も適当な発現プロフィールをもつ植物の同定および選抜を行う。
【0083】
トランス遺伝子の発現レベルについてトランスジェニック系統を評価する。発現陽性植物の同定および定量を行うために、RNAレベルでの発現をまず測定する。RNA解析のためには標準的な技術を用いる。標準的な技術には、トランス遺伝子のRNAテンプレートだけを増幅するように設計されたオリゴヌクレオチド・プライマーを用いたPCR増幅アッセイと、トランス遺伝子に特異的なプローブを用いた溶液ハイブリダイゼーションアッセイ(例えば「Ausubel et al.,supra」参照)が含まれる。次に、Rps2ポリペプチドに特異的な抗体を用いたウエスタン免疫ブロット解析を用いて、蛋白質発現についてRNA陽性植物体を解析する(例えば「Ausubel et al.,supra」参照)。さらに、トランスジェニック組織の中での発現部位の位置を決めるために、それぞれトランス遺伝子特異的なヌクレオチドプローブと抗体を用いて、標準的なプロトコールにしたがったインサイチュー・ハイブリダイゼーションおよび免疫細胞化学を行なうことができる。
【0084】
いずれかの細胞またはトランスジェニック植物でRps2ポリペプチドが発現されると(例えば、上記のように)、例えば、アフィニティー・クロマトグラフィーなどの標準的な技術を用いてRps2ポリペプチドを分離することができる。一つの実施例において、抗Rps2抗体(例えば「Ausubel et al.,supra」に述べられている通りに作成されたか、標準的な技術によって作成されたもの)をカラムに結合させ、ポリペプチドを分離するために用いてもよい。アフィニティー・クロマトグラフィーに先立ち、標準的な方法によって、Rps2産生細胞の溶解と分画を行なってもよい(例えば「Ausubel et al.,supra」参照)。一旦分離されたなら、必要があれば、例えば高性能液体クロマトグラフィー(例えば「Fisher,Laboratory Techniques In Biochemistry And Molecular Biology,Work and Burdon,eds.,Elsvier,1980」参照)によって、組み換えポリペプチドをさらに精製することができる。
【0085】
これら、ポリペプチドの発現と精製のための一般的な技術を、有用なRps2断片ないし類似体を産生および分離するために用いることもできる。
【発明の効果】
【0086】
使用
形質転換した植物細胞へのRPS2の導入は、非病原性遺伝子avrRpt2をもつ病原細菌に対する抵抗性を提供する。例えば、RPS2を発現する本発明のトランスジェニック植物を、非病原性遺伝子avrRpt2をもつ植物病原菌に対して通常感受性を有する植物の病害抵抗性を単純かつ安価に改変するために用いることができる。
【0087】
本発明はまた、宿主抵抗性の自然のメカニズムを模倣することによって、広範な病原抵抗性を提供する。まず、RPS2トランス遺伝子は、植物細胞の中で、病原菌からのシグナルがなくても植物の防御反応を構成的に開始させるのに十分な高レベルで発現している。植物の防御反応の開始に関連する発現レベルは、Dong et al.,supraに述べられているように、防御反応遺伝子の発現レベルを測定することによって決定される。次に、RPS2トランス遺伝子は、組織特異的プロモーターや細胞型特異的プロモーターなどの制御的なプロモーター、もしくは、外部的なシグナルまたは薬剤によって誘導されて防御反応の時間的および組織的な発現を制限するプロモーターによって発現される。最後に、RPS2遺伝子産物は、avrRpt2遺伝子産物とともに発現される。RPS2遺伝子は、その本来のプロモーター、CaMVの35Sプロモーターのような構成的に発現させるプロモーター、組織特異的または細胞型特異的プロモーター、もしくは、外部的なシグナルまたは薬剤によって活性化されるプロモーターによって発現される。RPS2とavrRpt2の共発現は、植物の防御反応の開始に関係した遺伝子産物の産生を模倣し、宿主と病原体において特異的な抵抗性遺伝子-非病原性遺伝子の対応する組み合わせがない場合に病原体に対する抵抗性を提供する。
【0088】
本発明はまた、図2の配列[配列番号:1]をもつ核酸の植物細胞における発現または図2の読み枠「a」のアミノ酸配列[配列番号:2-5]をコードする縮退(コドンをもつ)した変異配列の発現を提供する。
【0089】
本発明はさらに、図2の配列[配列番号:1]、またはその一部で約18塩基長よりも長い配列をプローブとして用いて、RPS2[配列番号:1]に約50%以上の配列同一性をもつ核酸配列の単離を提供する。ハイブリダイゼーション条件の厳密度を緩めて、RPS2[配列番号:1]に約50%以上の配列同一性をもつDNA配列を単離するために利用する。
【0090】
本発明は、植物、特に作用植物で、トマト、胡椒、トウモロコシ、小麦、イネ、および、大豆やインゲン豆などの豆類のように特に最も重要な作用植物、または、例えば、非病原性遺伝子avrRpt2のような非病原性遺伝子をもっている病原体に感受性の植物に病害抵抗性を提供する。このような病原体には、Pseudomonas syringae菌系が含まれるが、それに限定されない。
【0091】
本発明はまた、Rps2ポリペプチドのいかなる生物学的に活性のある断片または類似体をも含む。「生物学的に活性のある」とは、図2に示されているRps2ポリペプチド[配列番号:2-5]に特徴的なインビボ活性を持っていることを意味する。有用なRPS2断片またはRPS2類似体とは、病害抵抗性遺伝子産物の活性についての何らかの生物学的なアッセイ法において、生物学的活性を示すもので、それらのアッセイ法は、例えば「Dong et al. (1991) supra」、「Yu et al. (1993) supra」、「Kunkel et al. (1993) supra」、および「Whalen et al. (1991)」に述べられている。特に、生物学的に活性なRps2ポリペプチド断片または類似体は、非病原性遺伝子avrRpt2を有する植物病原体に対して、実質的な抵抗性を提供することができる。実質的な抵抗性とは、avrRpt2遺伝子をもっている植物病原体に対する感受性を、少なくとも部分的に低減するという意味である。
【0092】
好ましい類似体には、例えば、あるアミノ酸が似た性質を持つ別のアミノ酸に(例えば、バリンがグリシンに、アルギニンがリジンになど)置換したり、または、ポリペプチドの生物学的活性を失わせないような、1個以上の非保存的なアミノ酸置換、欠失、挿入があるなどの、保存的なアミノ酸置換があるという点だけで野生型の配列と異なった配列をもつRps2ポリペプチド(または、その生物学的活性をもつ断片)が含まれる。
【0093】
類似体は、自然に存在するRps2ポリペプチドとアミノ酸配列で異なっていても、配列に関連がない方法で修飾してもよく、その両方であってもよい。本発明の類似体は、20アミノ酸残基部分で、好ましくは40アミノ酸残基で、さらに好ましくは、自然に存在するRps2ポリペプチド配列[配列番号:2-5]と、一般的に70%以上、好ましくは80%、より好ましくは90%、最も好ましくは95%、または99%の相同性をも示す。
【0094】
元の配列の改変には、自然の遺伝的変異体も、誘導された遺伝的変異体も含まれる。また、自然に存在するL-アミノ酸以外の残基、例えば、D-アミノ酸もしくは自然には存在しない合成アミノ酸、例えば、βまたはγアミノ酸を含むものも類似体に含まれる。また、アセチル化やメチル化、リン酸化、カルボキシル化またはグリコシル化などを含む、ペプチドのインビボでの化学的修飾によって改変されたRps2ポリペプチドも本発明に含まれる。
【0095】
実質的に全長のポリペプチドに加えて、本発明には、ポリペプチドの生物学的な活性断片も含まれる。本明細書において用いられているように、「断片」というのは、ポリペプチドに対して使われるときには、通常20残基以上、より典型的には40塩基以上、また、好ましくは、60塩基以上の長さをいう。当業者に知られている方法によって、Rps2ポリペプチドの断片を作製することができる。候補断片がRps2の生物学的活性を示すことができるかは、本明細書において述べられた方法によって測定することができる。また、例えば、選択的mRNAスプライシングや選択的蛋白質プロセシングによって付加される、ペプチドの生物学的活性に必要ではない残基を含むRps2ポリペプチドも本発明に含まれる。
以下の請求の範囲には、他の態様も含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】図1A〜1Fは、RPS2遺伝子座のクローニングをもたらした物理的解析およびRFLP解析の概要図である。
【図1A】図1Aは、リスターとディーン(Lister and Dean)(1993) Plant J. 4:745-750によって公表された地図から取った、シロイヌナズナの4番染色体にある関連する部位の遺伝地図およびRFLP地図の配列を示す線図である。RFLPマーカーL11F11は、YACクローンYUP11F11の左腕を表している。
【図1B】図1Bは、RPS2遺伝子座の近傍にある、関連するYACの配列を示した図である。YUP16G5、YUP18G9およびYUP11F11と名付けられたYAC構築物は、ペンシルバニア大学のJ.エッカー(J.Ecker)によって提供されたものである。EW3H7、EW11D4、EW11E4およびEW9C3と名付けられたYAC構築物は、チバ・ガイギー社のE.ウォード(E.Ward)によって提供された。
【図1C】図1Cは、RPS2遺伝子座の近傍にあるコスミド・クローンの配列を示す図である。Hと名付けられたコスミド・クローンは、EW3H7 YACクローンに由来するクローンで、Eと名付けられたコスミド・クローンは、EW11E4 YACクローンに由来するクローンである。垂直な矢印は、生態型La-er植物体とrps2-101N植物体との間にあるRFLPマーカーの相対的な位置を示している。RFLPマーカーは、対応するコスミド・クローンの全域または一部をプローブとして用いて、50以上の制限酵素消化物を含むサザンブロットをスクリーニングして同定された。図1Cで説明されたコスミド・クローンは、J.ジロード(J.Giraudat)、C.N.R.S.、Gif-sur-Yvette、フランスによって提供された。
【図1D】図1Dと1Eは、それぞれコスミドE4-4とE4-6のEcoRI制限酵素部位を示す地図である。RPS2遺伝子座の周りにある組み換え切断部位は、4.5 kbと7.5 kbのEcoRI制限酵素断片の間に位置している。
【図1F】図1Fは、ポリA+RNAブロット解析によって同定されているRNA転写物をコードする遺伝子のおおよその位置を示す図である。転写物のサイズが各転写物の下にキロ塩基対で示されている。
【図2】図2は、RPS2遺伝子座[配列番号:1]を含むcDNA-4の完全な塩基配列である。塩基配列の下に3つの読み枠が示されている。読み枠「a」の推定アミノ酸配列[配列番号:2-5]が提示され、909アミノ酸を含む。ATG開始コドンのメチオニンを、図2の読み枠「a」に丸で囲った。ATG開始コドンのAは、図2の31番目のヌクレオチドである。
【図3】図3は、avrRpt2遺伝子[配列番号:105]の塩基配列と、その推定アミノ酸配列[配列番号:106]である。リボソーム結合可能部位を下線で示した。読み枠の3'端に、水平な矢印で逆向き反復配列を示した。読み枠の塩基配列の下に、推定アミノ酸配列が提示されている。
【図4】図4は、p4104とp4115(cDNA-4をコードする)に含まれるDNAが、以前にはRPS2病害抵抗性活性がなかったシロイヌナズナ植物に、RPS2病害抵抗性活性を付与する機能をもつことを確認できた相補性解析の概要図である。「ゲノム」の線上の短い縦線は、制限酵素EcoRI認識部位を表していて、その結果できるDNA断片ののサイズを、この線の上にキロ塩基対(kb)数で表している(図1Eも参照)。向かい側の「cDNA」は、RNA転写物に対するコーディング配列のおおよその位置であり(図1Fも参照)、矢印は、cDNA4、5および6についての転写産物の方向を示している。機能的相補性実験のために、図示されたシロイヌナズナのゲノムDNA配列によってrps2-201C/rps2-201C植物を遺伝的に形質転換した。これらの配列は、名前が示されたプラスミド(バイナリー・コスミドベクターに由来するpSLJ4541)に含まれており、アグロバクテリア仲介による形質転換法によって植物に導入された。その結果できた形質転換体が、avrRpt2を発現するP.シリンゲ(P.Syringae)を接種した後に示す病気抵抗性反応を「Sus」(感受性、抵抗性反応を示さない)または「Res」(病気抵抗性)で示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Rpsポリペプチドをコードする実質的に純粋なDNA。
【請求項2】
RPS2遺伝子[配列番号:1]を含む請求の範囲1のDNA。
【請求項3】
ゲノムDNAである請求の範囲1のDNA。
【請求項4】
cDNAである請求の範囲1のDNA。
【請求項5】
アラビドプシス属の植物のDNAである請求の範囲1のDNA。
【請求項6】
図2の配列[配列番号:1]またはその縮退変異配列を有し、図2の読み枠「a」のアミノ酸配列[配列番号:2-5]をコードする、実質的に純粋なDNA。
【請求項7】
図2のDNA配列[配列番号:1]に対して約50%以上の同一性を有する、実質的に純粋なDNA。
【請求項8】
ポリペプチドの発現のためプロモーターを含む調節配列に機能的に連結した請求の範囲1または2のDNA。
【請求項9】
プロモーターが構成性のプロモーターである請求の範囲8のDNA。
【請求項10】
プロモーターが1つ以上の外部因子によって誘導されうる、請求の範囲8のDNA。
【請求項11】
プロモーターが細胞型特異的である、請求の範囲8のDNA。
【請求項12】
請求の範囲1のDNAを含む細胞。
【請求項13】
植物細胞である、請求の範囲12の細胞。
【請求項14】
Rpsポリペプチドによって認識されるシグナルを発生する非病原性遺伝子を運搬する植物病原体により引き起こされる病気に抵抗性である、請求の範囲13の植物細胞。
【請求項15】
植物病原体がavrRpt2遺伝子を運搬する、請求の範囲14の植物細胞。
【請求項16】
アラビドプシス、トマト、大豆、インゲン豆、トウモロコシ、小麦、およびイネからなる群より選ばれる、請求の範囲14の植物細胞。
【請求項17】
植物病原体がシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)である、請求の範囲14の植物細胞。
【請求項18】
プロモーターを含む調節配列に機能的に連結されたavrRpt2遺伝子をさらに含む、請求の範囲13の植物細胞。
【請求項19】
プロモーターが構成性のプロモーターである、請求の範囲18の植物細胞。
【請求項20】
プロモーターが1つ以上の外部因子によって誘導されうる、請求の範囲18の植物細胞。
【請求項21】
プロモーターが細胞型特異的である、請求の範囲18の植物細胞。
【請求項22】
ゲノムに取り込まれた請求の範囲1のDNAを含み、該DNAが発現するトランスジェニック植物。
【請求項23】
ゲノムに取り込まれた請求の範囲8のDNAを含み、該DNAが発現するトランスジェニック植物。
【請求項24】
DNAおよびavrRpt2遺伝子が発現する、請求の範囲18の植物細胞から作出されたトランスジェニック植物。
【請求項25】
請求の範囲22のトランスジェニック植物由来の種子。
【請求項26】
請求の範囲23のトランスジェニック植物由来の種子。
【請求項27】
請求の範囲24トランスジェニックの植物由来の種子。
【請求項28】
請求の範囲22のトランスジェニック植物由来の細胞。
【請求項29】
請求の範囲23のトランスジェニック植物由来の細胞。
【請求項30】
植物中に植物病原体に対する抵抗性を提供する方法において、トランスジェニック植物細胞のゲノム中に取り込まれ植物細胞において発現できるような位置にある請求の範囲1のDNAを含むトランスジェニック植物細胞を作製し、該植物細胞から該DNAが発現しているトランスジェニック植物を生育させることを含む方法。
【請求項31】
植物細胞中の抵抗性遺伝子を検出する方法において、図2の配列[配列番号:1]に対して約50%以上の配列同一性を有するDNA配列を検出できるようなハイブリダイゼーション条件下で、約18塩基よりも長い請求の範囲1のDNAまたはその一部を該植物細胞由来のゲノムDNAの調製物と接触させることを含む方法。
【請求項32】
Rps2ポリペプチドを産生する方法であって、Rps2ポリペプチドをコードし細胞中で発現できるような位置にあるDNAで形質転換された細胞を提供し、該DNAが発現するような条件下で該形質転換細胞を培養し、該Rps2ポリペプチドを単離することを含む方法。
【請求項33】
トランスジェニック植物中に植物病原体に対する抵抗性を提供する方法において、ゲノムの中に取り込まれ植物細胞において発現できるような位置にある請求の範囲8のDNAを含むトランスジェニック植物細胞を作出し、植物細胞から該DNAが発現しているトランスジェニック植物を生育させることを含む方法。
【請求項34】
トランスジェニック植物中に植物病原体に対する抵抗性を提供する方法において、請求の範囲18の植物細胞からDNAおよびavrRpt2遺伝子が発現しているトランスジェニック植物を生育させることを含む方法。
【請求項35】
RPS2[配列番号:1]に対して配列同一性を有する植物中の病害抵抗性遺伝子またはその一部を単離する方法において、
(a)それぞれの長さが13ヌクレオチドより長く、
(b)それぞれが図2のヌクレオチド配列[配列番号:1]の領域内の反対側のDNA鎖に対して相補的な領域を有し、
(c)場合によって増幅産物の中に制限酵素切断部位を作出することができる配列を含むヌクレオチドプライマー、を用いて該病害抵抗性遺伝子またはその一部をPCRによって増幅し、該病害抵抗性遺伝子またはその一部を単離することを含む方法。
【請求項36】
実質的に純粋なRps2ポリペプチド。
【請求項37】
図2に示されているアミノ酸配列[配列番号:2-5]に実質的に同一なアミノ酸配列を含む、請求の範囲32のポリペプチド。
【請求項38】
請求の範囲1のDNAを含むベクターであって、ベクター含有細胞中で該DNAによってコードされるペプチドの発現を指令できるベクター。
【請求項39】
プロモーターを含む調節配列に機能的に連結したavrRpt2[配列番号:105]遺伝子のDNAを含むベクター。
【請求項40】
請求の範囲1のDNAと、プロモーターを含む調節配列に機能的に連結したavrRpt2[配列番号:105]遺伝子のDNAとを含むベクター。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
P-ループとLRRドメインを含むポリペプチドをコードする実質的に純粋なDNAであって、該ポリペプチドが植物において発現されたときに植物病原体に対する抵抗性を付与する、DNA
【請求項2】
配列番号:1のP-ループとLRRドメインに対してそれぞれ約50%以上の配列同一性を含むP-ループとLRRドメインを含むポリペプチドをコードする、実質的に純粋な植物のDNAであって、該ポリペプチドが植物において発現されたときに植物病原体に対する抵抗性を付与する、DNA。
【請求項3】
ゲノムDNAである請求の範囲1または2のDNA。
【請求項4】
cDNAである請求の範囲1または2のDNA。
【請求項5】
ポリペプチドの発現のためプロモーターを含む調節配列に機能的に連結した請求の範囲1または2のDNA。
【請求項6】
プロモーターが構成性のプロモーターである請求の範囲のDNA。
【請求項7】
プロモーターが1つ以上の外部因子によって誘導されうる、請求の範囲のDNA。
【請求項8】
プロモーターが細胞型特異的である、請求の範囲のDNA。
【請求項9】
請求の範囲1または2のDNAを含む細胞。
【請求項10】
植物細胞である、請求の範囲の細胞。
【請求項11】
Rpsポリペプチドによって認識されるシグナルを発生する非病原性遺伝子を運搬する植物病原体により引き起こされる病気に抵抗性である、請求の範囲10の植物細胞。
【請求項12】
植物病原体がavrRpt2遺伝子を運搬する、請求の範囲11の植物細胞。
【請求項13】
アラビドプシス、トマト、大豆、インゲン豆、トウモロコシ、小麦、およびイネからなる群より選ばれる、請求の範囲11の植物細胞。
【請求項14】
植物病原体がシュードモナス・シリンゲ(Pseudomonas syringae)である、請求の範囲11の植物細胞。
【請求項15】
プロモーターを含む調節配列に機能的に連結されたavrRpt2遺伝子をさらに含む、請求の範囲10の植物細胞。
【請求項16】
プロモーターが構成性のプロモーターである、請求の範囲15の植物細胞。
【請求項17】
プロモーターが1つ以上の外部因子によって誘導されうる、請求の範囲15の植物細胞。
【請求項18】
プロモーターが細胞型特異的である、請求の範囲15の植物細胞。
【請求項19】
ゲノムに取り込まれた請求の範囲1または2のDNAを含み、該DNAが発現するトランスジェニック植物。
【請求項20】
ゲノムに取り込まれた請求の範囲のDNAを含み、該DNAが発現するトランスジェニック植物。
【請求項21】
DNAおよびavrRpt2遺伝子が発現する、請求の範囲15の植物細胞から作出されたトランスジェニック植物。
【請求項22】
請求の範囲19のトランスジェニック植物由来の種子。
【請求項23】
請求の範囲20のトランスジェニック植物由来の種子。
【請求項24】
請求の範囲21のトランスジェニックの植物由来の種子。
【請求項25】
請求の範囲19のトランスジェニック植物由来の細胞。
【請求項26】
請求の範囲20のトランスジェニック植物由来の細胞。
【請求項27】
植物中に植物病原体に対する抵抗性を提供する方法において、トランスジェニック植物細胞のゲノム中に取り込まれ植物細胞において発現できるような位置にある請求の範囲1または2のDNAを含むトランスジェニック植物細胞を作製し、該植物細胞から該DNAが発現しているトランスジェニック植物を生育させることを含む方法。
【請求項28】
植物細胞中の抵抗性遺伝子を検出する方法において、図2の配列[配列番号:1]に対して約50%以上の配列同一性を有するDNA配列を検出できるようなハイブリダイゼーション条件下で、約18塩基よりも長い請求の範囲1または2のDNAまたはその一部を該植物細胞由来のゲノムDNAの調製物と接触させることを含む方法。
【請求項29】
トランスジェニック植物中に植物病原体に対する抵抗性を提供する方法において、ゲノムの中に取り込まれ植物細胞において発現できるような位置にある請求の範囲のDNAを含むトランスジェニック植物細胞を作出し、植物細胞から該DNAが発現しているトランスジェニック植物を生育させることを含む方法。
【請求項30】
トランスジェニック植物中に植物病原体に対する抵抗性を提供する方法において、請求の範囲15の植物細胞からDNAおよびavrRpt2遺伝子が発現しているトランスジェニック植物を生育させることを含む方法。
【請求項31】
RPS2[配列番号:1]に対して配列同一性を有する植物中の病害抵抗性遺伝子またはその一部を単離する方法において、
(a)それぞれの長さが13ヌクレオチドより長く、
(b)それぞれが図2のヌクレオチド配列[配列番号:1]の領域内の反対側のDNA鎖に対して相補的な領域を有し、
(c)場合によって増幅産物の中に制限酵素切断部位を作出することができる配列を含むオリゴヌクレオチドプライマー、を用いて該病害抵抗性遺伝子またはその一部をPCRによって増幅し、該病害抵抗性遺伝子またはその一部を単離することを含む方法。
【請求項32】
請求の範囲1または2のDNAを含むベクターであって、ベクター含有細胞中で該DNAによってコードされるペプチドの発現を指令できるベクター。
【請求項33】
ポリペプチドが過敏反応を誘引する、請求の範囲1または2のDNA。
【請求項34】
植物病原体が細菌または菌類である、請求項1または2のDNA。
【請求項35】
P-ループとLRRドメインを含むポリペプチドをコードする植物のDNAを含む、形質転換された細菌細胞であって、該ポリペプチドが植物において発現されたときに植物病原体に対する抵抗性を付与する、細菌細胞。
【請求項36】
配列番号:1のP-ループとLRRドメインに対してそれぞれ約50%以上の配列同一性を含むP-ループとLRRドメインを含むポリペプチドをコードする植物のDNAを含む、形質転換された細菌細胞であって、該ポリペプチドが植物において発現されたときに植物病原体に対する抵抗性を付与する、細菌細胞。
【請求項37】
配列番号:1に対して約50%以上の配列同一性を有し、かつP-ループとLRRドメインを含むポリペプチドをコードする植物のDNAを含む、形質転換された細菌細胞であって、該ポリペプチドが植物において発現されたときに植物病原体に対する抵抗性を付与する、細菌細胞。
【請求項38】
P-ループとLRRドメインを含むポリペプチドをコードする植物のDNAを含む、形質転換された植物細胞であって、該ポリペプチドが植物において発現されたときに植物病原体に対する抵抗性を付与する、植物細胞。

【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図2−3】
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【図2−4】
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【図2−5】
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【図2−6】
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【図2−7】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−55169(P2006−55169A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−267305(P2005−267305)
【出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【分割の表示】特願平7−527087の分割
【原出願日】平成7年4月13日(1995.4.13)
【出願人】(300052453)ザ・ジェネラル・ホスピタル・コーポレイション (24)
【出願人】(592130699)ザ・レジェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】