S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型結晶塩
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインのII型結晶性マレエート塩を開示する。II型結晶性塩は約77.69℃の融点を有するチャンネル水和物である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は疾患の治療において有用な新しい化合物、そしてより詳細には、酸化窒素シンターゼの誘導性アイソフォームからの酸化窒素の不適切な発現が関与する状態の治療のための、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの新しい塩、そして更に詳細には結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの新しい結晶状態(II型)、および、その医薬組成物を包含する。
【0002】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインは参照により本明細書に組み込まれる、同一出願人による米国特許6,403,830に記載され特許請求されている。
【背景技術】
【0003】
酸化窒素(NO)は酵素酸化窒素シンターゼ(NOS)の数種のアイソフォームの何れか1つにより生産される生物活性フリーラジカルガスである。後にNOとして同定されたものの生理学的活性は1980年代初頭に最初に発見され、このとき、アセチルコリンにより誘発される血管の弛緩は血管内皮の存在に依存していることがわかった。内皮から誘導され、次にこのような血管弛緩を媒介する内皮誘導弛緩因子(EDRF)と称されるようになった因子は、現在ではNOSの1つのアイソフォームにより血管内皮内で生じたNOであることが知られている。血管弛緩剤としてのNOの活性は100年以上もの間、知られている。更にNOは知られたニトロ血管弛緩剤、例えば亜硝酸アミルおよびニトログリセリンから誘導された活性物質種である。酸化窒素はまた可溶性のグアニレートサイクラーゼ(cGMP)の内因性刺激剤であり、即ち、cGMPの生産を刺激する。NOSがN−モノメチルアルギニン(L−NMMA)により抑制されるとcGMPの生成は完全に防止される。内皮依存性弛緩に加えて、NOは食細胞の細胞毒性および中枢神経系における細胞から細胞への連絡を含む生物学的作用の多くに関与していることがわかっている。
【0004】
NOとしてのEDRFの発見は、酵素NOシンターゼによりアミノ酸L−アルギニンからNOが合成される生化学的経路の発見と一致していた。以下に示す少なくとも3種のNOシンターゼが存在する。
(i)受容体または物理的刺激に応答してNOを放出する脳に存在する構成性Ca++/カルモジュリン依存性酵素;
(ii)内毒素およびサイトカインによる血管平滑筋、マクロファージ、内皮細胞および多くの他の細胞の活性化の後に誘導されるCa++非依存性酵素(130kDタンパク質);および、
(iii)受容体または物理的刺激に応答してNOを放出する内皮細胞に存在する構成性Ca++/カルモジュリン依存性酵素。
【0005】
発現された後、誘導性酸化窒素シンターゼ(以降「iNOS」と称する)は長期間に渡り持続的にNOを発生する。臨床試験によれば、NOの生産およびiNOSの発現は種々の慢性炎症性疾患、例えば慢性関節リューマチおよび骨関節炎(例えばMcInnes I.B.et al.,J.Exp.Med.184:1519(1996)参照)、炎症性腸疾患(例えばLundberg J.O.N.et al.,Lancet 344:1673(1994)参照)および喘息(例えばHamid,Q.et.al.,Lancet 342:1510(1993)参照)において増大し、そしてiNOSはこれらの慢性炎症性疾患における主要な病原性因子とされている。
【0006】
即ちiNOSによる過剰なNO生産の抑制は抗炎症性であると考えられる。しかしながら、eNOSおよびnNOSからのNOの生産は正常な生理機能にかかわっているため、炎症の治療に使用されるいずれのNOS阻害剤も、eNOS生成NOによる血圧の正常な生理学的調節およびnNOS生成NOによる非アドレナリン作用性、非コリン作用性の神経伝達が影響を受けない状態であり続けるように、iNOSに対して選択的であることが望ましい。
【0007】
全ての医薬品の化合物および組成物において、薬剤化合物の化学的および物理的安定性は薬剤物質の商業的開発において重要である。このような安定性には、周囲条件において特に水分に対して、そして、保存条件下における安定性が包含される。保存の種々の条件における向上した安定性は、市販品の寿命の間の種々の可能な保存条件を予測するために必要である。安定な薬剤は特殊な保存条件の使用ならびに頻繁な在庫交換を回避する。均一な粒径および表面積を有する薬剤物質を得るためには、薬剤のミリングを必要とする場合が多い製造工程の間も薬剤化合物は安定でなければならない。不安定な物質は多形の変化を起こす場合が多い。従って、安定性の特性を向上させる薬剤物質のいずれかの修飾は安定性がより低い物質よりも重要な利益をもたらす。
【0008】
例えば同一出願人による米国特許6,403,830に記載され特許請求されているS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインのような数種のiNOS阻害剤が報告されている。しかしながらその化合物は不定形の固体である。従って、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインのようなiNOS阻害剤の結晶固体形態を提供することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの新しい結晶塩、医薬組成物、新しい塩化合物の製造方法、医薬組成物の製造方法、および、酸化窒素シンターゼの構成性アイソフォームよりも酸化窒素シンターゼの誘導性アイソフォームを優先的に抑制またはモジュレートする化合物の塩を投与することによって、酸化窒素の合成を抑制またはモジュレートすることを必要とする対象においてこのような抑制またはモジュレートのための新しいII型結晶塩化合物および組成物を用いる方法に関する。本発明の塩化合物は有用な酸化窒素シンターゼ抑制活性を有し、そして酸化窒素の合成または過剰合成が寄与的部分を形成する疾患または状態の治療または予防において有用であることが期待される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
化学量論的には、新しい塩の単位格子はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの1分子およびマレイン酸の1分子である。
【0011】
新しい結晶性II型塩は以下の物理的測定値、即ち、元素分析(例えば燃焼分析による)、融点および融解熱(示差走査熱量分析および熱重量分析)、屈折率(偏光顕微鏡)、X線粉末回折パターンおよび水分吸着(例えばDVS水分バランス)の一部または全てにより特性化される。
【0012】
本発明の新しい塩は関節炎のような特定の状態において生じる軟骨の変性が関与する疾患を治療するために使用できる。従って、L−アルギニンからのNO生産を抑制することが好都合となる状態は、関節の状態、例えば慢性関節リューマチ、骨関節炎、通風性関節炎、若年性関節炎、敗血症性関節炎、脊椎関節炎、急性関節リューマチ、腸疾患に基づく関節炎(enteropathic arthritis)、神経障害性関節炎および化膿性関節炎を包含する。更にまた、軟骨細胞吸引のNO誘導低下は関節炎、特に骨関節炎におけるマトリックスの損失および二次的な軟骨の石灰化をモジュレートする。
【0013】
本発明の塩が有用であるその他の状態は、慢性または炎症性の腸疾患、心臓血管虚血、糖尿病、鬱血性心不全、心筋炎、アテローム性動脈硬化症、偏頭痛、緑内障、大動脈瘤、逆流性食道炎、下痢、過敏性腸症候群、嚢胞性線維症、気腫、喘息、気管支拡張症、痛覚過敏、脳虚血、血栓性卒中、全虚血(global ischemia)(心停止に二次的なもの)、多発性硬化症およびNOにより媒介される他の中枢神経系の障害、例えばパーキンソン病およびアルツハイマー病を包含する。NO抑制が有用である別の神経変性障害は低酸素症、低血糖症、癲癇のような疾患における、そして、外傷(例えば脊髄および頭部の傷害)における神経変性および/または神経壊死、高圧酸素痙攣および毒性、痴呆症、例えば前老年性痴呆症、および、AIDS関連痴呆症、シドナム舞踏病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、コルサコフ病、脳血管障害に関わる精神遅滞、睡眠障害、統合失調症、うつ病、月経前症候群(PMS)に関連するうつ病または他の症状、不安症および敗血症性ショックを包含する。
【0014】
本発明の塩はまた、身体原性の(侵害受容または神経病性の)急性および慢性の両方のものを含む疼痛のようなものの治療において酸化窒素の抑制が役割を果たす場合にも使用してよい。本発明の化合物は一般的なNSAIDまたはオピオイド鎮痛剤が伝統的に投与されている何れかの状況において使用できる。
【0015】
更にまた、本発明の塩によるNO生産の抑制により治療できる別の障害には長期間オピエート鎮痛剤を必要とする患者におけるオピエート耐性、および、ベンゾジアゼピン使用患者におけるベンゾジアゼピン耐性および他の中毒挙動、例えばニコチンおよび摂食障害が包含される。本発明の化合物はまた抗菌剤としても使用してよい。
【0016】
L−アルギニンからのNO生産を抑制するために本発明の塩を使用してよい別の状態は、種々の因子により誘導される敗血症性および/または毒性のショックに関連する全身低血圧を包含し;TNF、IL−1およびIL−2のようなサイトカインを用いた治療において;および移植療法における短期間の免疫抑制に対するアジュバントとして使用してよい。
【0017】
本発明の塩はまた眼の状態(例えば高眼圧症、網膜炎、ブドウ膜炎)、全身性エリテマトーデス(SLE)、糸球体腎炎、再狭窄、ウィルス感染の炎症性続発症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、酸素誘導肺傷害、癌患者等におけるIL2治療、悪液質、移植療法等における免疫抑制、胃腸運動性の障害、日焼け、湿疹、乾癬、歯肉炎、膵臓炎、感染症が原因の胃腸管の損傷、嚢胞性線維症、臓器移植療法における短期の免疫抑制のアジュバントのような機能不全免疫系の治療、分娩誘発、腺腫様ポリープ、腫瘍成育の制御、化学療法、化学予防および気管支炎においても有用である。
【0018】
本発明はまた、治療有効量の結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型を薬学的に許容される担体、希釈剤またはベヒクルと共に含有する医薬組成物であって、疼痛、喘息および他の気道の障害、癌、関節炎、網膜症および緑内障を含む眼の障害、炎症関連障害、例えば過敏性腸症候群、および酸化窒素の過剰な生産が役割を果たしている他の障害の治療のための医薬組成物に関する。
【0019】
ヒトの治療に有用であるほか、この型は愛玩動物、外来種動物および家畜、例えば哺乳類、げっ歯類等の獣医科の治療にも有用である。より好ましい動物はウマ、イヌおよびネコを包含する。
【0020】
定義
「治療する」、「治療している」および「治療」という用語は本明細書においては、予防療法、待期療法または回復療法を包含する。
「有効量」という用語は治療を行える用量を意味する。有効量は単回用量で、またはある期間に渡り分割用量において投与してよい。
「ACE」という用語はアセトンを意味する。
「ACN」という用語はアセトニトリルを意味する。
【0021】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインに適用する場合「不定形」という用語は、本明細書においては、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン分子が無秩序の配列において存在し、識別可能な結晶格子または単位格子を形成しない固体状態を意味する。X線粉末回折に付す場合は、不定形のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインは如何なる特徴的な結晶ピークも示さない。
【0022】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインに適用する場合「結晶型」という用語は、本明細書においては、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン分子が配列して(i)識別可能な単位格子を含み、そして(ii)X線照射に付した場合に回折ピークを生じるような、識別可能な結晶格子を形成する固体状態の形態を指す。
【0023】
「S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートI型」、「S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインI型」および「I型」という用語は全て、本明細書においてより詳細に記載する、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩I型を意味する。
【0024】
「S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型」、「S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインII型」および「II型」という用語は全て、本明細書においてより詳細に記載する、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型を意味する。
【0025】
「結晶化」という用語は本明細書においては、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン出発原料の製造に関わる適用可能な状況に応じた結晶化および/または再結晶化を指す。
「DMF」という用語はN,N−ジメチルホルムアミドを意味する。
「D/W/A」」という用語はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、水およびアセトニトリルの3元溶媒系を指す。
【0026】
「S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン薬剤物質」という用語は本明細書においては、その用語を使用する文脈により明確化されるS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン自体であり、未製剤のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインまたは医薬組成物の成分として存在するS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインを指す。
【0027】
「DSC」という用語は示差走査熱量測定を意味する。
「HPLC」という用語は高速液体クロマトグラフィーを意味する。
「IR」という用語は赤外線を意味する。
「NMR」という用語は核磁気共鳴を意味し、核磁気共鳴スペクトル分析に適用してよい。
「ml」という用語はミリリットルを意味する。
「mg」という用語はミリグラムを意味する。
「μg」という用語はマイクログラムを意味する。
「μl」という用語はマイクロリットルを意味する。
「核形成」という用語は本明細書においては溶液中の結晶の形成を意味する。
【0028】
「純度」という用語は本明細書においては特段の記載が無い限り、従来のHPLC試験によるS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの化学純度を意味する。
「PXRD」という用語は粉末X線回折を意味する。
「rpm」という用語は分当たり回転数を意味する。
「結晶種添加」という用語は、本明細書においては、核形成を開始または促進する目的のための溶液中への結晶の添加を意味する。
「TGA」という用語は熱重量分析を意味する。
「Tm」という用語は融点を意味する。
「遊離の両性イオン」という用語は実質電荷がゼロ値となるように正電荷および負電荷の両方を担持した分子を指す。
【0029】
薬学的使用
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は、対象において特に炎症を治療するため、または、他の酸化窒素シンターゼ媒介障害の治療のため、例えば疼痛および頭痛の治療における鎮痛剤として、または、発熱の治療のための解熱剤として有用である。例えば、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は関節炎、例えば慢性関節リューマチ、脊髄関節症、痛風性関節炎、骨関節炎、全身性エリテマトーデス、若年性関節炎、急性関節リューマチ、腸疾患に基づく関節炎、神経障害性関節炎、乾癬性関節炎および化膿性関節炎の治療に有用であるが、これらに限定されない。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型がL−アルギニンからのNO生産の抑制において好都合である状態は関節炎の状態を包含する。
【0030】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は更に、喘息、気管支炎、月経痛(例えば月経困難)、早産、腱炎、滑液包炎、皮膚関連状態、例えば乾癬、湿疹、熱傷、日焼け、皮膚炎、膵臓炎、肝炎、および、術後炎症に起因するもの、例えば眼科手術に起因するもの、例えば白内障手術および屈折矯正手術に起因するものの治療において有用である。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた炎症性腸疾患、クローン病、胃炎、過敏性腸症候群および潰瘍性結腸炎のような胃腸状態の治療にも有用である。
【0031】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は癌、例えば結腸直腸癌および乳癌、肺癌、前立腺癌、膀胱癌、子宮癌および皮膚がんの予防または治療のために有用である。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は血管疾患、偏頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、硬皮症(sclerodoma)、リューマチ熱、I型糖尿病、神経筋接合部疾患、例えば重症筋無力症、白質症、例えば多発性硬化症、サルコイドーシス、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、多発性筋炎、歯肉炎、腎炎、過敏症、傷害後の浮腫、心筋虚血等のような疾患における炎症および組織損傷の治療に有用である。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた眼科疾患、例えば緑内障、網膜炎、網膜症、ブドウ膜炎、眼光恐怖症および眼部組織への急性損傷に関連する炎症および疼痛の治療においても有用である。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型の用途のうち特に興味深いものは、特に、緑内障の症状が酸化窒素媒介神経損傷の場合のように酸化窒素の生成により誘発されたものである緑内障の治療である。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた肺の炎症、例えばウィルス感染に伴うもの、および嚢胞性線維症の治療においても有用である。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた特定の中枢神経系の障害、例えば皮質痴呆、例えばアルツハイマー病、および卒中、虚血および外傷に起因する中枢神経系の損傷の治療のためにも有用である。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は抗炎症剤、例えば関節炎の治療用のもの等としても有用であり、有害な副作用が顕著に低減されているという別の利点も伴う。
【0032】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまたアレルギー性鼻炎、呼吸窮迫症候群、内毒素ショック症候群およびアテローム性動脈硬化症の治療においても有用である。
【0033】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた疼痛、例えば術後疼痛、歯痛、筋肉痛、および癌に起因する疼痛の治療においても有用であるが、これらに限定されない。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はアルツハイマー病のような痴呆症の予防のために有用である。
【0034】
ヒトの治療のほかに、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は愛玩動物、外来種動物および家畜、例えば哺乳類、げっ歯類等の獣医科の治療にも有用である。より好ましい動物はウマ、イヌおよびネコを包含する。
【0035】
本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた、他の従来の抗炎症療法の部分的または完全な代替法である共療法(co-therapies)において、例えばステロイド、NSAID、COX−2選択的阻害剤、5−リポキシゲナーゼ阻害剤、LTB4拮抗剤およびLTA4ヒドロラーゼ阻害剤と共に使用してよい。
【0036】
本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型がNO生産の抑制において好都合である他の状態は、心臓血管虚血、糖尿病(I型またはII型)、鬱血性心不全、心筋炎、アテローム性動脈硬化症、偏頭痛、緑内障、大動脈瘤、逆流性食道炎、下痢、過敏性腸症候群、嚢胞性線維症、気腫、喘息、気管支拡張症、痛覚過敏(異痛)、脳虚血(局所的虚血、血栓性卒中および全虚血(例えば心停止に二次的なもの)の双方)、多発性硬化症およびNOにより媒介される他の中枢神経系の障害、例えばパーキンソン病を包含する。NO抑制が有用である別の神経変性障害は低酸素症、低血糖症、癲癇のような疾患における、そして、中枢神経系(CNS)外傷(例えば脊髄および頭部の傷害)の場合における、神経変性および/または神経壊死、高圧酸素痙攣および毒性、痴呆症、例えば前老年性痴呆症、および、AIDS関連痴呆症、シドナム舞踏病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、コルサコフ病、脳血管障害に関わる精神遅滞、睡眠障害、統合失調症、うつ病、月経前症候群(PMS)に関連するうつ病または他の症状、不安症および敗血症性ショックを包含する。
【0037】
本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた身体原性の(侵害受容または神経病性の)急性および慢性の両方のものを含む疼痛の治療において有用である。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた一般的なNSAIDまたはオピオイド鎮痛剤が伝統的に投与されている神経病性の疼痛を含む何れかの状況において使用できる。
【0038】
本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型により好都合に治療される更に別の障害または状態は、長期間オピエート鎮痛剤を必要とする患者におけるオピエート耐性、および、ベンゾジアゼピン使用患者におけるベンゾジアゼピン耐性および他の中毒挙動、例えばニコチン中毒、アルコール中毒および摂食障害が包含される。
【0039】
本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまたオピエート、アルコールまたはタバコ中毒からの禁断症状の治療または予防のような、薬物禁断症状の治療または予防に有用である。
【0040】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた抗菌剤または抗ウィルス剤と治療上組み合わせた場合に組織の損傷を予防するために有用である。
【0041】
本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまたL−アルギニンからのNO生産の抑制において、例えば種々の因子により誘導される敗血症性および/または毒性出血性ショックに関連する全身低血圧に有用であり;TNF、IL−1およびIL−2のようなサイトカインを用いた治療に有用であり;そして、移植療法において短期間の免疫抑制剤に対するアジュバントとして有用である。
【0042】
本発明は更に新生物の治療および予防のための本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型の使用に関する。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型および方法により治療可能または予防可能である新生物は脳の癌、骨の癌、白血病、リンパ腫、上皮細胞誘導新生物(上皮癌腫)、例えば基底細胞癌、腺癌、胃腸の癌、例えば口唇の癌、口腔の癌、食道癌、小腸の癌および胃癌、結腸癌、肝臓癌、膀胱癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮癌、肺癌、乳癌および皮膚がん、例えば扁平上皮癌および基底細胞癌、前立腺癌、腎細胞癌およびその他の全身に渡る上皮細胞に関わる既知の癌を包含する。好ましくは、治療すべき新生物は胃腸の癌、肝臓癌、膀胱癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮癌、肺癌、乳癌および皮膚癌、例えば扁平上皮および基底細胞の癌から選択される。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型および本発明の方法はまた放射線療法により起こる線維症を治療するために使用できる。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型および方法は家族性大腸腺腫症(FAP)の対象を含む腺腫様ポリープを有する対象の治療に使用できる。更に、本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型および方法はFAPの危険性のある患者におけるポリープ形成を予防するために使用できる。
【0043】
別の抗新生物剤との本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型の複合治療は相乗作用をもたらすか、または、治療効果のために必要とされる副作用誘発薬剤の治療用量を低減するかもしくは副作用誘発薬剤により誘発される毒性の副作用の症状を直接低減することにより化学療法に伴う毒性の副作用を軽減する。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は更に副作用を低減するかまたは薬効を増強するための放射線療法の補助として有用である。
【0044】
本発明においては、本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型と治療上組み合わせることができる別の薬剤は酵素シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)を阻害できる何れかの治療薬を包含する。好ましくは、このようなCOX−2阻害剤は酵素シクロオキシゲナーゼ−1(COX−1)と比較してCOX−2を選択的に阻害する。このようなCOX−2阻害剤は「COX−2選択的阻害剤」として知られている。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型と治療上組み合わせて使用するCOX−2選択的阻害剤は、セレコキシブ、バルデコキシブ、デラコキシブ、エトリコキシブ、ロフェコキシブ、ABT−963(2−(3,4−ジフルロフェニル)−4−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブトキシ)−5−[4−(メチルスルホニル)フェニル−3(2H)−ピリダジノン;PCT出願WO00/24719記載)、またはメロキシカムを包含する。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまたCOX−2選択的阻害剤のプロドラッグ、例えばパレコキシブと治療上組み合わせて好都合に使用できる。
【0045】
本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型と組み合わせて使用する別の化学療法剤は、例えば以下の非包括的および非限定的なリストから選択できる。
【0046】
アルファ−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)、5−FU−フィブリノーゲン、アカンチホリック酸(acanthifolic acid)、アミノチアジアゾール、ブレキナールナトリウム(brequinar sodium)、カルモフール、Ciba−Geigy CGP−30694、シクロペンチルシトシン、シタラビンホスフェートステアレート、シタラビンコンジュゲート、Lilly DATHF、Merrel Dow DDFC、デザグアニン、ジデオキシシチジン、ジデオキシグアノシン、ジドックス、Yoshitomi DMDC、ドキシフルリジン、Wellcome EHNA、Merck&Co.EX−015、ファザラビン、フロクスウリジン、フルダラビンホスフェート、5−フルオロウラシル、N−(2’−フラニジル)−5−フルオロウラシル、Daiichi Seiyaku FO−152、イソプロピルピロリジン、Lilly LY−188011、Lilly LY−264618、メトベンザプリン、メトトレキセート、Wellcome MZPES、ノルスペルミジン、NCI NSC−127716、NCI NSC−264880、NCI NSC−39661、NCI NSC−61267、Warner−Lambert PALA、ペントスタチン、ピリトレキシム、プリカマイシン、Asahi Chemical PL−AC、Takeda TAC−788、チオグアニン、チアゾフリン、Erbamont TIF、トリメトレキセート、チロシンキナーゼ阻害剤、チロシン蛋白質キナーゼ阻害剤、Taiho UFT、ウリシチン、Shionogi 245−S、アルド−ホスファミド類縁体、アルトレタミン、アナキシロン(anaxirone)、Boehringer Mannheim BBR−2207、ベストラブシル、ブドチタン、Wakunaga CA−102、カルボプラチン、カルムスチン、Chinoin−139、Chinoin−153、クロラムブシル、シスプラシン、シクロホスファミド、American Cyanamid CL−286558、Sanofi CY−233、シプラテート、Degussa D−19−384、Sumimoto DACHP(Myr)2、ジフェニルスピロムスチン、細胞増殖抑制ジ白金(diplatinum cytostatic)、Erbaジスタマイシン誘導体、Chugai DWA−2114R、ITI E09、エルムスチン、ErbamontFCE−24517、エストラムスチンホスフェートナトリウム、フォテムスチン、Unimed G−6−M、Chinoin GYKI−17230、ヘプスル−ファム(hepsul−fam)、イフォスファミド、イプロプラチン、ロムスチン、マホスファミド、ミトラクトール、Nippon Kayaku NK−121、NCI NSC−264395、NCI NSC−342215、オキサリプラチン、Upjohn PCNU、プレドニムスチン、Proter PTT−119、ラニムスチン、セムスチン、SmithKline SK&F−101772、Yakult Honsha SN−22、スピロムス−チン、Tanabe Seiyaku TA−077、タウロムスチン、テモゾロミド、テロキシロン、テトラプラチン、トリメラモール、Taiho 4181−A、アクラルビシン、アクチノマイシンD、アクチノプラノン、Erbamont ADR−456、アエロプリシニン誘導体、Ajinomoto AN−201−II、Ajinomoto AN−3、Nippon Sodaアニソマイシン、アントラサイクリン、アジノマイシン−A、ビスカベリン、Bristol−Myers BL−6859、Bristol−Myers BMY−25067、Bristol−Myers BMY−25551、Bristol−Myers BMY−26605、Bristol−Myers BMY−27557、Bristol−Myers BMY−28438、ブレオマイシンスルフェート、ブリオスタチン−1、Taiho C−1027、カリケマイシン、クロモキシマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、Kyowa Hakko DC−102、Kyowa Hakko DC−79、Kyowa Hakko DC−88A、Kyowa Hakko DC89−A1、Kyowa Hakko DC92−B、ジトリサルビシンB、Shionogi DOB−41、ドキソルビシン、ドキソルビシン−フィブリノーゲン、エルサミシン−A、エピルビシン、エルブスタチン、エソルビシン、エスペラミシン−A1、エスペラミシン−A1b、Erbamont FCE−21954、Fujisawa FK−973、フォストリエシン、Fujisawa FR−900482、グリドバクチン、グレガチン−A、グリンカマイシン、ヘルビマイシン、イダルビシン、イルジンス(illudins)、カズサマイシン、ケサリロジンス、Kyowa Hakko KM−5539、Kirin Brewery KRN−8602、Kyowa Hakko KT−5432、Kyowa Hakko KT−5594、Kyowa Hakko KT−6149、American Cyanamid LL−D49194、Meiji Seika ME2303、メノガリル、マイトマイシン、ミトザントロン、SmithKline M−TAG、ネオエナクチン、Nippon Kayaku NK−313、Nippon Kayaku NKT−01、SRI International NSC−357704、オキサリシン、オキサウノマイシン、ペプロマイシン、ピラチン、ピラルビシン、ポロスラマイシン、ピリンダマイシンA、Tobishi RA−I、ラパマイシン、リゾキシン、ロドルビシン、シバノミシン、シエノマイシン(siwenmycin)、Sumitomo SM−5887、Snow Brand SN−706、Snow Brand SN−07、ソランギシン−A、スパルソマイシン、SS Pharmaceutical SS−21020、SS Pharmaceutical SS−7313B、SS Pharmaceutical SS−9816B、ステフィマイシンB、Taiho 4181−2、タリソマイシン、Takeda TAN−868A、テルペンテシン、スラジン、トリクロザリンA、Upjohn U−73975、Kyowa Hakko UCN−10028A、Fujisawa WF−3405、Yoshitomi Y−25024ゾルビシン、アルファ−カロテン、アルファ−ジフルオロメチル−アルギニン、アシトレチン、Biotec AD−5、Kyorin AHC−52、アルストニン、アモナフィド、アンフェチニル、アムサクリン、Angiostat、アンキノマイシン、アンチネオプラストンA10、アンチネオプラストンA2、アンチネオプラストンA3、アンチネオプラストンA5、アンチネオプラストンAS2−1、Henkel APD、アフィジコリングリシネート、アスパラギナーゼ、Avarol、バッカリン、バトラシリン、ベンフルロン、ベンゾトリプト、Ipsen−Beaufour BIM−23015、ビサントレン、Bristo−Myers BMY−40481、Vestar ボロン−10、ブロモホスファミド、Wellcome BW−502、Wellcome BW−773、カラセミド、カルメチゾール塩酸塩、Ajinomoto CDAF,クロルスルファキノキサロン、Chemex CHX−2053、Chemex CHX−100、Warner−Lambert CI−921、Warner−Lambert CI−937、Warner−Lambert CI−941、Warner−Lambert CI−958、クランフェヌール(clanfenur)、クラビリデノン、ICN化合物1259、ICN化合物4711、Contracan、Yakult Honsha CPT−11、クリスナトール、クラダーム(curaderm)、サイトカラシンB、シタラビン、シトシチン、Merz D−609、DABISマレエート、ダカルバジン、ダテリプチニウム(datelliptinium)、ジデムニン−B、ジヘマトポルフィリンエーテル、ジヒドロレンペロン、ジナリン、ジスタマイシン、Toyo Pharmar DM−341、Toyo Pharmar DM−75、Daiich Seiyaku DN−9693、エリプラビン、エリプチニウムアセテート、Tsumura EPMTC、エルゴタミン、エトポシド、エトレチネート、フェンレチニド、Fujisawa FR−57704、硝酸ガリウム、ゲンクワダフニン(genkwadaphnin)、Chugai GLA−43、Glaxo GR−63178、グリフォランNMF−5N、ヘキサデシルホスホコリン、Green Cross HO−221、ホモハリングトニン、ヒドロキシ尿素、BTG ICRF−187、イルモフォシン、イソグルタミン、イソトレチノイン、Otsuka JI−36、Ramot K−477、Otsuka K−76COONa、Kureha Chemical K−AM、MECT Corp KI−8110、American Cyanamid L−623、ロイコレグリン、ロニダミン、Lundbeck LU−23−112、Lilly LY−186641、NCI(US)MAP、マリシン、Merrel Dow MDL−27048、Medco MEDR−340、メルバロン、メロシアニン誘導体、メチルアニリノアクリジン、Molecular Genetics MGI−136、ミナクチビン、ミトナフィド、ミトキドン、モピダモール、モトレチニド、Zenyaku Kogyo MST−16、N−(レチノイル)アミノ酸、Nissin Flour Millig N−021、N−アシル化−デヒドロアラニン、ナファザトロム、Taisho NCU−190、ノコダゾール誘導体、Normosang、NCI NSC−145813、NCI NSC−361456、NCI NSC−604782、NCI NSC−95580、オクトレオチド、Ono ONO−112、オキザノシン、Akzo Org−10172、パンクレアチスタチン、パゼリプチン、Warner−Lumbert PD−111707、Warner−Lumbert PD−115934、Warner−Lumbert PD−131141、Pierre Fabre PE−1001、ICRTペプチドD、ピロキサントロン、ポリヘマトポルフィリン、ポリプレイック酸(polypreic acid)、Efamolポルフィリン、プロビマン、プロカルバジン、プログルミド、InvitronプロテアーゼネキシンI、Tobishi RA−700、ラゾキサン、Sapporo Breweries RBS、レストリクチン−P、レテリプチン、レチノイン酸、Rhone−Poulenc RP−49532、Rhone−Poulenc RP−56976、SmithKline SK&F−104864、Sumitomo SM−108、Kuraray SMANCS、SeaPharm SP−10094、スパトール、スピロシクロプロパン誘導体、スピロゲルマニウム、Unimed、SS Pharmaceutical SS−554、ストリポルジノン、Stypoldione、Suntory SUN 0237、Suntory SUN 2071、スーパオキシドジスムターゼ、Toyama T−506、Toyama T−680、タキソール、Teijin TEI−0303、テニポシド、タリブラスチン、Eastman Kodak TJB−29、トコトリエノール、Topostin、Teijin TT−82、Kyowa Hakko UCN−01、Kyowa Hakko UCN−1028、ウクライン、Eastoma Kodak USB−006、硫酸ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンストラミド、ビノレルビン、ビン
トリプトール、ビンゾリジン、ウィザノリド、Yamanouchi YM−534、ウログアニリン、コンブレタスタチン、ドラスタチン、イダルビシン、エピルビシン、エストラムスチン、シクロホスファミド、9−アミノ−2−(S)−カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン(Camptosar)、エクセメスタン、デカペプチル(トリプトレリン)またはオメガ−3−脂肪酸。
【0047】
本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型との組み合わせ療法に使用してよい放射線保護剤の例はAD−5、アドクノン、アミホスチン類縁体、デトックス、ジメスナ、1−102、MM−159、N−アシル化−デヒドロアラニン、TGF−Genentech、チプロチモド、アミホスチン、WR−151327、FUT−187、ケトプロフェン経皮用、ナブメトン、スーパーオキシドジスムターゼ(Chiron)およびスーパーオキシドジスムターゼEnzonを包含する。
【0048】
本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた血管形成関連の障害または状態、例えば腫瘍生育、転移、黄斑変性およびアテローム性動脈硬化症の治療または予防においても有用である。
【0049】
別の実施形態においては、眼科の障害または状態、例えば緑内障の治療または予防のための治療組み合わせが提供される。例えば本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は緑内障に罹患している患者の眼圧を低減する薬剤との治療組み合わせ中に有利に使用される。このような眼圧低下剤にはラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロストまたはウノプロストールが包含される。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型+眼圧低下剤の治療組み合わせは、各々がその作用を異なる機序に作用させることにより達成すると考えられているため、有用である。
【0050】
本発明の別の組み合わせにおいて、本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は抗高脂血剤またはコレステロール低下剤、例えばベンゾチエピンまたはベンゾチアゼピン抗高脂血剤との治療組み合わせ中に使用できる。本発明の治療組み合わせにおいて有用なベンゾチエピン抗高脂血剤の例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許5,994,391に記載されている。ベンゾチアゼピン抗高脂血剤の一部はWO93/16055に記載されている。あるいは、本発明の化合物との組み合わせにおいて有用な抗高脂血剤またはコレステロール低下剤はHMG Co−A還元酵素阻害剤であることができる。本発明の治療組み合わせにおいて有用なHMG CO−A還元剤阻害剤の例は、個々に、ベンフルオレクス、フルバスタチン、ロバスタチン、プロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、ベルバスタチン、ZD−9720(PCT出願WO97/06802記載)、ZD−4522(カルシウム塩はCAS No.147098−20−2;ナトリウム塩はCAS No.147098−18−8;欧州特許EP521471に記載)、BMS180431(CAS No.129829−03−4)またはNK−104(CAS No.141750−63−2)を包含する。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型+抗高脂血剤またはコレステロール低下剤の治療組み合わせは例えば血管内のアテローム性動脈硬化性の病変の形成の危険性を低減する場合に有用である。例えばアテローム性動脈硬化性の病変は血管の炎症部位から生じる場合が多い。抗高脂血剤またはコレステロール低下剤は血中の脂質濃度を低下させることによりアテローム性動脈硬化性の病変の形成の危険性を低減する。単一の作用機序に本発明を限定しないが、本発明の組み合わせのS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型の1つの態様は、協調して作用し、例えば血中脂質濃度の低下と同調した血管の炎症の低減によって、アテローム性動脈硬化性の病変の進歩した制御をもたらすと考えられる。
【0051】
本発明の別の実施形態においては、本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は中枢神経の状態または障害、例えば偏頭痛の治療のための他の化合物または治療法と組み合わせて使用できる。例えば、本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はカフェイン、5−HT−1B/1Dアゴニスト(例えばトリプタン、例えばスマトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタン、リザトリプタン、アルモトリプタンまたはフロバトリプタン)、ドーパミンD4拮抗剤(例えばソネピプラゾール)、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ナプロキセンナトリウム、イソメテプテン、ジクロラルフェナゾン、ブタルビタール、麦角アルカロイド(例えばエルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、ブロモクリプチン、エルゴノビン、または、メチルエルゴノビン)、3環系抗欝剤(例えばアミトリプチリンまたはノルトリプチリン)、セロトニン拮抗剤(例えばメチセルギドまたはシプロヘプタジン)、ベータ−アドレナリン拮抗剤(例えばプロプラノロール、チモロール、アテノロール、ナドロールまたはメトプロロール)またはモノアミンオキシダーゼ阻害剤(例えばフェネルジンまたはイソカルボキサジド)との治療組み合わせ中に使用できる。
【0052】
別の実施形態は本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型とオピオイド化合物の治療組み合わせを提供する。この組み合わせに有用なオピオイド化合物は、例えば、モルヒネ、メタドン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、レボルファノール、レバロルファン、コデイン、ジヒドロコデイン、ジヒドロヒドロキシコデイノン、ペンタゾシン、ヒドロコドン、オキシコドン、ナルメフェン、エトルフィン、レボルファノール、フェンタニル、スフェンタニル、DAMGO、ブトルファノール、ブプレノルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、CTOP、ジプレノルフィン、ベータ−フナルトレキサミン、ナロキソナジン、ナロルフィン、ペンタゾシン、ナルブフィン、ナロキソンベンゾイルヒドラゾン、ブレマゾシン、エチルケトサイクラゾシン、U50,488、U69,593、スピラドリン、ノル−ビナルトルフィミン、ナルトリンドール、DPDPE、[D−la2,glu4]デルトルフィン、DSLET、メト−エンケファリン、ロイ−エンケファリン、ベータ−エンドルフィン、ダイノルフィンA、ダイノルフィンBおよびαネオエンドルフィンを包含する。オピオイド化合物との本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型の組み合わせの好都合な点は、本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型がオピオイド化合物の用量を低減し、これにより、オピオイド中毒のようなオピオイドの副作用の危険性や重症度を低減できる点である。
【0053】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン2塩酸塩の製造方法は参照により本明細書に組み込まれる、同一出願人による米国特許6,403,830に記載されている。
【0054】
慨すればS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン2塩酸塩の合成は以下の実施例1に記載する通り実施してよい。
【0055】
実施例1
【化1】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン、2塩酸塩
【0056】
実施例−1A)N−Boc−システアミン
【化2】
3L容の4口RBフラスコを20分間窒素パージし、次に順次、2−アミノエタンチオール塩酸塩(113.6g、1モル)、ジ−t−ブチル−ジカーボネート(218.3g、1モル)およびトルエン500mlを添加した。混合物を氷水バスで冷却し、10分間窒素パージした。水酸化ナトリウム(2.5N、880ml、2.2モル)を0℃〜11℃で約1.5時間内に攪拌混合物に添加した。水酸化ナトリウムの添加が終了した後、冷却バスを除去し、得られた反応混合物を室温に戻し、一夜周囲温度で攪拌した。これにより表題化合物の溶液を得た。
【0057】
実施例−1B)
【化3】
実施例−1Aの生成物溶液を氷水バス中で冷却した。クロロアセトン(101.8g、1.1モル)の試料を8℃〜11℃で約50分かけて激しく攪拌した反応混合物に添加した。クロロアセトンの添加が終了した後、冷却バスをはずし、得られた反応混合物を一夜室温で攪拌した。トルエン層を分離し、水(250ml)で洗浄し、ハウス真空下、次いで高真空下に85℃でロータリーエバポレーター上で濃縮し、粗製の表題化合物(225.7g、96.7%)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ 4.95 (bs, 1H), 3.20 (m, 4H), 2.54 (t, 2H), 2.20 (s, 3H), 1.35 (s, 9H)。
【0058】
実施例−1C)[2−[[(4−メチル−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル)メチル]チオ]エチル]カルバミン酸、1,1−ジメチルエチルエステル
【化4】
オーバーヘッド攪拌機、熱電対および空フラスコと苛性アルカリトラップに連結したコンデンサーを備えた3L容の4口RBフラスコに、実施例−1Bの生成物(70g、0.3モル)、無水エタノール(80ml)、シアン化ナトリウム(19.1g、0.39モル)、炭酸アンモニウム(43.3g、0.45モル)および水(720ml)をこの順序で添加した。4つ目の口を蓋で閉鎖した。得られた反応混合物を6時間67〜68℃に加熱した。その後ほぼ透明な茶色溶液を室温に冷却した。冷却により固体が形成し始め、そして非均質な混合物を一夜室温で攪拌した。次に反応混合物を−2℃〜2℃で約1時間、pH2にまで12%塩酸で酸性化した。冷反応混合物を更に30分間pH2で攪拌し、次に濾過した。フラスコを蒸留水(2x250ml)ですすぎ、各すすぎ液を用いて固体ケーキを洗浄した。固体を再度蒸留水(2x250ml)で洗浄し、次に4日間風乾した。乾燥した固体を0.5時間トルエン200mlで磨砕した。スラリーを濾過した。固体を順次、トルエン(50ml)およびトルエン/ヘキサンの1:4比(100ml)ですすぎ、次に一夜室温で風乾して表題化合物を83.1%収率で得た。融点134〜136℃。
1H NMR(DMSOd6, 400MHz) δ 10.62 (s,1H), 7.85 (s, 1H), 6.83 (m, 0.9H), 6.48 (bs,0.1H), 3.29 (s, 2H), 2.99 (m, 2H), 2.71 (s, 2H), 2.95 (m, 2H), 1.32 (s, 9H), 1.24 (s, 3H);13C NMR(DMSOd6, 400MHz)δ 178.1, 157.1, 156.1, 78.4, 63.7, 40.7, 39.4, 33.2, 28.9, 23.8。
C12H21N3O4Sについての分析:
計算値:C,47.51;H,6.98;N,13.85;S,10.57
測定値:C,47.76;H,6.88;N,13.77;S,10.75
【0059】
実施例−1D)RおよびS−[2−[[(4−メチル−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル)メチル]チオ]エチル]カルバミン酸、1,1−ジメチルエチルエステル
【化5】
実施例−1Cの反応生成物をメタノールを溶離剤としてChiralpak(R) ADカラム上でそのRおよびSエナンチオマーに分離した。S異性体が最初に溶出する異性体であり、その後、Rエナンチオマーが得られた。両方の異性体を用いてその後の変換を行った。
Sエナンチオマー:
25℃、MeOH中の[α]=+43.0(365nm)。
1HNMR : (400mHz, CD3OD)δ1.49(s, 9H), 2.05 (s, 3H), 2.65 (t, 2H), 2.9(q, 2H, d), 3.20 (m, 2H)。IR:λcm-1=1772,1709。
C12H21N3O4S(分子量:303.38)についての分析:
計算値:C,47.51;H,6.98;N,13.85
測定値:C,47.39;H,6.62;N,13.83
M+H=304
Rエナンチオマー:
25℃、MeOH中の[α]=−46.3(365nm)。
1HNMR : (400mHz, CD3OD) δ 1.48 (s, 9H), 2.05 (s, 3H), 2.65 (t, 2H), 2.85 (q, 2H, d), 3.18 (m, 2H)。IR:λcm-1=1770,1711。
C12H21N3O4S(分子量:303.38)についての分析:
計算値:C,47.51;H,6.98;N,13.85
測定値:C,48.15;H,7.04;N,14.37
M+H=304
【0060】
実施例−1E)S−(2−アミノエチル)−2−メチル−L−システイン
【化6】
【0061】
酸加水分解法:
蒸留コンデンサー付の500ml容の3口丸底フラスコに実施例−1DのR異性体生成物(45.8g、150.9ミリモル)を添加し、そして攪拌しながら室温で48%水性HBr(160ml)で少しずつ処理した。ガス発生が停止した後、マントルヒーターを用いてポット温度が126℃に達するまで混合物を加熱し、その間、揮発性の臭化t−ブチル(沸点72〜74℃)、次いで少量の水性HBr(約15ml)を留去した。蒸留コンデンサーを還流コンデンサーと交換し、そして混合物を30時間還流下に加熱した。溶液を濃縮し、残留物を水(250ml)に溶解し、そして、Dowex(R)50WX4−200イオン交換樹脂(8.5x11cm)にロードし、水(2L)、次いで希水酸化アンモニア水溶液(28〜30%の水酸化アンモニウム30mlを水で1000mlに希釈、3L)で溶離した。所望の生成物を含有する画分を合わせ、濃縮し、2時間75〜80℃で真空下に乾燥し、白色固体として表題化合物S−(2−アミノエチル)−2−メチル−L−システイン22.1g(82%)を得た。プロトン及びC−13NMRスペクトルは、表題化合物と一致した。融点157℃。
1H NMR(400 MHZ, D2O) δ 1.19 (3H, s), 2.53(1H, d, J=13.6Hz), 2.57−2.72(2H, m), 2.92(1H, d, J=13.6Hz), 2.92 (2H, t, J=6.8Hz);13C NMR (100MHz, D2O)
δ24.7, 31.3, 38.9, 40.9, 59.6, 180.7。
C6H14N2O2S+0.1H2Oについての分析:
計算値:C,40.02;H,7.95;N,15.56;S,17.81
測定値:C,39.93;H,7.98;N,15.38;S,17.70
【0062】
塩基加水分解法:
攪拌機を装着したステンレス製のオートクレーブに実施例−1DのR異性体生成物24.2g(0.08モル)を添加した。装置を窒素パージした後、10%苛性ソーダ128g(0.32モル)を添加して溶液とした。オートクレーブを密封し、30時間120℃に加熱した。室温に冷却した後、オートクレーブを排気して表題化合物のナトリウム塩の水溶液142ml(151g)を得た。H1NMR(試料をHClで酸性化し、D2Oで希釈、400MHz):H1NMR (試料をHClで酸性化し、D2Oで希釈, 400MHz):δ 1.47 (s, 3H), 2.75 (m, 2H), 2.90 (d, 1H, J=14.8Hz), 3.06 (t, 2H, J=6.4Hz), 3.14 (d, 1H, J=14.8Hz)。C13 NMR (試料をHClで酸性化し、D2Oで希釈, 100MHz):δ 172.9, 60.8, 39.1, 39.0, 30.4, 22.2。MS(MS/CI−LC) M+1 179。
【0063】
DBU(218μL;1.46ミリモル)およびエチルアセトイミデート塩酸塩(171mg;1.34ミリモル)を室温(〜20℃)で25ml容の1口丸底フラスコ中エタノール(6ml)に溶解した。実施例−1Eの表題化合物(200mg;1.12ミリモル)をこの溶液に1回で添加した。実施例−1Eの表題化合物が消費されるまで(1〜2時間)混合物を攪拌した。混合物をアイスバス中で冷却し、次に6MHCl(830μL)で処理した。1HNMR分析によれば化学収率は95モル%以上であった。溶媒を蒸発させ、実施例−1の表題化合物を逆相またはイオン交換クロマトグラフィーにより精製した。
【0064】
塩基加水分解反応産物の実施例−1Eの表題化合物約20gを含有する溶液210gmを500ml容の3口丸底フラスコ内に投入した。装置にメカニカルスターラー、Dean−Stark装置(20ml容、コック付)、コンデンサーおよび温度コントローラーを装着した。混合物から水(140ml)を留去した。1−ブタノール(150ml)をポットに添加し、残余の水(37ml)を共沸蒸留した。ポット温度が117℃になるまで蒸留により更に1−ブタノール(13ml)を除去した。ブタノールスラリーを室温に冷却し、セライトパッドで濾過した。塩を1−ブタノール(2x20ml)で洗浄した。DBU(21.8μL;146ミリモル)およびエチルアセトイミデート塩酸塩(17.1mg;134ミリモル)を室温で500mL容の3口丸底フラスコ中の1−ブタノール(40ml)に溶解した。装置にメカニカルスターラー、添加漏斗および温度プローブを装着した。実施例−1Eの表題化合物/1−ブタノール溶液を添加漏斗に入れ、ポット温度を25℃未満に維持しながらエチルアセトイミデート/DBUの溶液に添加した。出発物質が消費されるまで(2〜3時間)混合物を攪拌した。濃塩酸(94ml)および水(100ml)の溶液を1Lの3口丸底フラスコにいれ、0℃に冷却した。装置にメカニカルスターラー、添加漏斗および温度プローブを装着した。反応混合物を添加漏斗に入れた。反応混合物をHCl水溶液に添加し、その間、温度を25℃未満に維持した。酢酸エチル(100ml)を溶液に添加し、層を分離させた。水層を再度酢酸エチル(100ml)で洗浄した。1HNMR分析によれば化学収率は95モル%以上であった。実施例−1のこの表題化合物を逆相、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、またはそれらの組み合わせにより精製した。
1HNMR (400MHz, D2O) δ 1.49 (3H, s), 2.08 (3H, s), 2.74 (2H, m), 2.91(1H, d), 3.17(1H,d), 3.35 (2H, t)。
【0065】
実施例2:両性イオンの調製
本発明の1つの実施形態において、過剰な酸はアニオン交換樹脂を用いてS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン2塩酸塩から除去してよい。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインのモノヒドロクロロ、遊離の両性イオンまたは他の部分的酸誘導体がアニオン交換樹脂を用いて調製できることが更に発見された。アニオン交換法はその単純性のため、1塩酸塩および遊離の両性イオンを調製するために好適である。0.5当量未満の酸および低過剰の塩を有するS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインは別の塩の形態の医薬の製造のために特に有用である。
【0066】
図1は化合物滴定曲線の略図である。親のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン分子は3つイオン化可能な基を有し、そして、4つのイオン化状態で存在できる。
【0067】
低pHにおいては、分子は+2荷電の遊離の酸として存在し、カルボン酸、アミンおよびアミジン部分はプロトン化されている。これは2塩酸塩のイオン化状態である。
【0068】
pHが上昇するに従い、カルボン酸基は脱プロトン化される最初の基となり、そしてこれにより+1の分子上の実質電荷がもたらされる。pHの上昇がS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインへの水酸化ナトリウムの添加により生じる場合は、ナトリウムの2塩酸塩が形成される。他の塩基はその相当する塩の形態を形成する。pHの上昇がアニオン交換過程によるクロリドイオンの除去による場合は、生成物は、ナトリウムまたは他の対イオンを有さない1塩酸塩である。
【0069】
pHが更に上昇するに従い、アミン基は脱プロトン化(約pKa=8.4)して分子の中性の両性イオン形態を生じる。正電荷はアミジン上になお残存し、負電荷はカルボキシル基上になお残存する。一方、このような物質が2塩酸塩への水酸化ナトリウムの添加により形成される場合は、得られる生成物は塩化ナトリウム1当量と混合されたモノヒドロクロロナトリウム塩である。アニオン交換樹脂法により製造された物質は遊離の両性イオンである。
【0070】
更にpHが上昇すると、アミジンイオンの脱プロトン化が起こる(pKa〜12.5)。このpH範囲の分子は遊離の塩基および酸の塩である。負荷電された分子はアニオン交換樹脂に結合するため、遊離の塩基は好ましくはアニオン交換法では製造しない。
【0071】
実施例3:遊離の両性イオンの調製
Amberlite IRA400(OH)樹脂60gを4.7%(重量)の水酸化アンモニウム(28%水酸化アンモニウム50ml、脱イオン水250ml)で洗浄し、次いで、脱イオン水で十分洗浄した。最終電導度は6.1μSであった。
【0072】
HCl/水の溶液142ml中S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン2塩酸塩約0.9gを含む試料を60℃でロータリーエバポレーターで濃縮して油状物とした。脱イオン水で60mlに希釈したこの油状物に、攪拌しながら洗浄されたアニオン交換樹脂のアリコート0.5gを添加した。樹脂の各アリコートを添加した5分後、溶液のpHを測定し、試料をシリンジフィルターを介して採取した。合計で9gのアニオン交換樹脂を添加した。最終pHは10.8であった。樹脂を濾去し、濾液をロータリーエバポレーターで60℃で濃縮して油状物とし、固体の形成はなかった。出発物質、最終濾液および全ての中間的な試料をHPLCおよびクロリドに関するイオンクロマトグラフィーにより試験した。
【0073】
図2はpHを調節するためにアニオン交換樹脂を用いた水中のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの擬似滴定曲線を示す。ひし形(実線)はpHであり、四角(破線)はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン(初期値のパーセント、イオンクロマトグラフィーによる)である。図3はpHを調節するためにアニオン交換樹脂を用いた水中のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの擬似滴定曲線を示す。ひし形(実線)はpHであり、三角(破線)はクロリド(イオンクロマトグラフィーによる)である。
【0074】
これらの曲線は、試料が反応の進行中に採取されたため、そして、樹脂の漸増量を添加する前には真の平衡は達成されていなかったため、真の滴定曲線ではない。しかしなお、図2および図3のグラフは予測された傾向を示していた。樹脂をS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン溶液に添加するに従い、pHは上昇し、pH2、9および11近傍の傾きが変化していた。より遅いpH上昇はそれぞれ、カルボン酸、アミンおよびアミジン官能基のpKを表す。pH10以上ではS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの溶液中の濃度は低下する。この時点でS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインは実質の負電荷を獲得しており、樹脂に結合している。クロリドの結果は試料間のある程度の変動を示しているが、全般的にはpH上昇に伴うクロリド含量の低下の傾向を示している。最終クロリド含量は約0.04モル当量である。試料のHPLC試験は分解を示さなかった。
【0075】
実施例4:酸当量を調節するための過剰のHClの除去
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン2塩酸塩約305mg/mlおよび0.23当量の過剰のHClを含有する試料3.3gに、脱イオン水16.7gを添加した。pHは1.04であった。この溶液14mlに、予め洗浄したAmberlite400(OH)樹脂を添加し、pH2.5とした。アニオン交換処理により溶液の色は明黄色〜透明に明色化した。樹脂を濾去し、出発物質および濾液の生成物をクロリド滴定およびHPLCにより分析した。
出発物質および生成物のHPLCによる定性分析では新しいピークは観察されず、不純物の増加はなかった。滴定によるクロリド分析の結果は、クロリドが2.18当量から約1.14当量まで減少したことを示している。ここでは明示しないが、クロリドはHCl添加により所望の目標値に調整できる。
【0076】
実施例5:遊離の両性イオンの調製
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン2塩酸塩約1gを含有する試料3.3gを20gに希釈した。予備洗浄したAmberlite IRA400(OH)樹脂のアリコートを溶液に添加し、試料を定期的にシリンジフィルターを介して採取した。溶液中の樹脂を濾去し、次に濾液に新しい樹脂を添加し続けることにより、pH7.1および8.8で中間樹脂の濾過を実施した。これはクロリドの除去の平衡を促進し、生成物の吸着を最小限とするために実施した。11.2の最終pHが得られた後、樹脂を濾去した。出発物質、中間試料および最終濾液を分析した。
得られた試料をHPLCで分析した。出発物質と数時間以内のpH11での生成物のHPLC結果の間には差はなかった。しかしながら、約10日間室温で保存した後の高pH試料では、ある程度の分解ピークが約2〜3%のピーク面積で観察された。
【0077】
実施例6:遊離の両性イオンの調製
AmberliteIRA400(Cl)樹脂を3MHCl、水、次いで3MNaOHですすいだ。アリコートは樹脂10g当たり100mlとした。この操作を3回反復することにより樹脂を清浄化し、OH型を形成した。水による最終のすすぎは、溶離した水の導電性が2μSとなるまで行った。次に樹脂を用いてS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン2塩酸塩の50mg/ml溶液40mlを滴定した。濃度を両性イオンの当量について表示した。滴定の間にわたりアリコートを採取し、濾過し、HPLCで分析した。アリコートの部分試料を温存して第2のHPLC分析用とし、滴定の1週間後に実施して試料の安定性を評価した。更に別のアリコートを採取してイオン選択性電極を用いたCl分析に付した。pHもまた滴定の間を通してモニタリングした。
【0078】
この実施例で観察された結果は実施例3で観察された結果を反映していた。ここで使用したクロリド特異的な電極はCl含量を測定するものであり、データのノイズははるかに小さかった(図4参照)。データはCl98%の除去においてpH〜10.85が達成されることを示している。より多くのClを除去できるが、それにより樹脂への化合物の結合が多大となる(図5参照)。樹脂結合に起因する化合物のこの損失は滴定の終わり頃に樹脂を濾過し、少量の新しい樹脂で交換することにより最小限にできる。この操作によりクロリドの除去の平衡が促進され、結合による化合物の損失に使用される部位を最小限にできる。
【0079】
図4はIRA−400アニオン交換樹脂(Rohm&Haas Amberlite,Rhom&Haas,Philadelphia,Pennsylvaniaより入手可能)を用いた水中のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの滴定曲線を示す。図5はpH上昇に伴う関連する結合データを示す。
【0080】
HPLC分析はイオン対形成勾配法を用いて実施した。方法はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインを塩基性とした場合に予測される分解生成物の存在を検出することがわかっている。以下の表1からわかるとおり、データは分解は即時的に起っているのではなく、むしろ数日間の期間に渡り起こっていることを示している。
【0081】
【表1】
【0082】
HPLC法
ポンプA:20mMKH2PO4、10mMペンタンスルホン酸、リン酸でpH=3に調製ポンプB:アセトニトリル
勾配:0分には0%B、15分には26%B、15.1分には0%B
カラム:YMC ODS−AQ120A、5μm、2.6x150mm
波長=205nm
【0083】
実施例7:過剰なHClの除去/モノヒドロクロロ[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの製造
これらの実施例において、クロリドの除去の工程はバッチ系において樹脂を攪拌することにより行ったが、これはプラント系においてもS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン2塩酸塩の溶液をアニオン交換樹脂カラムまたはアニオン交換膜に付して再循環させることにより容易に行える。pHが偶発的に所望範囲を超えて上昇した場合は、適切な量のHClを添加することにより容易に戻すことができる。この目的のための大規模なアニオン交換工程を設計することは等業者の知るとおりである。
【0084】
実施例8:S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートI型の結晶化
「OH」型のAmberlite IRA−400樹脂で滴定することにより水溶液から両性イオンを得た。溶液のpHが約pH11にまで上昇するに従い、アニオン交換樹脂は塩酸塩を排除した。焼結ガラス漏斗を通した濾過により両性イオンの溶液から樹脂が除去された。この溶液を液体窒素で凍結し、凍結乾燥してガラス状の不定形の生成物を得た。乾燥ガラス状物の元素分析によれば、典型的に0.3%未満のクロリドが示されていた。
【0085】
マレエート塩の初期の結晶化は、90マイクロリットル(μl)の最終容量となるようにHPLC等級の水で乾燥両性イオン30gを溶解することにより行った。マレイン酸の溶液は、マレイン酸1.055グラムを用いて10ml容のメスフラスコ中でN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)で定容まで希釈することにより作成した。DMF中のマレイン酸300μlを両性イオンの水溶液に攪拌しながら添加した。これは両性イオンの各当量に対しマレイン酸2当量であった。モレキュラーシーブ上で乾燥したアセトニトリルを溶液が濁るまで攪拌しながら滴加し、次に更に2〜3滴のアセトニトリルを添加した。溶液を週末を通じて攪拌した。得られたスラリーを偏光光学顕微鏡で検査した。正の伸長を示す複屈折の針状の結晶が観察された。固体を5.0μmのMilliporeLSフィルター上に収集し、40℃で真空下に乾燥し、結晶性の生成物28mgを得た。わずか1当量のマレイン酸を用いた場合の相当する溶液はゲル状であった。
【0086】
実施例9:S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートI型の別の結晶化
その後の小規模の実験によれば、許容できる大規模化の条件が示された。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン両性イオン1.215グラムを水約3mlに溶解した。マレイン酸1.283グラムおよびDMF12mlを攪拌しながら添加した。透明な溶液が急速に得られた。アセトニトリル100Mlを添加し、この時点で白濁している溶液に結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの結晶種を添加した。1時間後、更にアセトニトリル13mlを添加した。スラリーを更に2時間攪拌し、次に結晶を数個のMillipore5μmLSフィルター上に収集した。極めて微小な粒径の濾過のため、比較的緩徐であった。固体をMilliporeフィルター上でアセトニトリル少量を用いて洗浄した。これらの固体をビーカーに移し、40℃で一夜真空乾燥した。
【0087】
合計で5つの別の実施例を結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートに対して提示する。実施例は全て3元溶媒系(DMF/水/アセトニトリル)において実施した。1モル過剰のマレイン酸を使用し、そしてDMF対水の比は約3:1の一定に維持した。結晶種添加の効率もまた一部の実施例において評価した。
【0088】
実施例10:S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートI型の別の結晶化
凍結乾燥したS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン1.0g、溶解したマレイン酸1.05gを含むDMF10mlおよび水3.0mlを125ml容のジャケット付反応容器に添加し、125rpmで攪拌して透明な溶液とした。アセトニトリル100mlをすぐに透明な溶液に添加し、その際、アリコートの添加により起こる白濁の大部分が次のアリコートの添加の前に治まるようにした。白濁した溶液の光学顕微鏡観察によれば、白濁は液相の分離(乳化)によるものであり、結晶核形成ではなかった。添加終了時にも溶液は白濁していた。溶液を一夜攪拌した。一夜保持する間に溶液は沈殿したが、スラリーの光学顕微鏡観察によれば固体は不定形であった。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶種(30mg)をスラリーに添加し、固体から結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートへの相変換を促進し、系を更に24時間攪拌した。次にスラリーを約−10℃に冷却し、更に24時間攪拌することにより濾液中の生成物の損失を低減した。合計72時間の後、スラリーを微小フリット焼結ガラス漏斗上で濾過し、ケーキをアセトニトリル4mlで洗浄した。濾液はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン濃度約0.5重量%を有していた。固体を1時間風乾し、次に24時間50℃で真空オーブン中に入れた。固体は粉末X線回折およびDSCの両方により結晶性のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートであったが、前者は最終固体中かなりの量の不定形の含量を示していた。
【0089】
実施例11:S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートI型の別の結晶化
実施例11は同じ溶媒組成および両性イオンのロード量で実施したが、アセトニトリルおよび結晶種の添加方法および保持時間は不定形の含量および処理時間を低減するために適正化した。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン500mg、マレイン酸502mg、DMF5mlおよび水1.5mlを125ml容のジャケット付反応容器に添加し、攪拌して透明な溶液とした。アセトニトリル31ml(合計添加量の63%)を実施例10で使用した方法で間歇的に溶液に添加した。ほぼ全ての白濁が最初のアセトニトリル添加の終了後の攪拌1時間以内に治まった。次に溶液に15mgのS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶を結晶種として添加し、そして、2時間攪拌した後、残余の18ml(37%)のアセトニトリルを添加した。スラリーを24時間攪拌し、次に約−10℃に冷却し、更に24時間攪拌し、その後150ml容の微小フリット焼結ガラス漏斗上に排出した。ケーキをアセトニトリル4mlで洗浄し、30分間風乾し、次に50℃で24時間真空オーブン中に入れた。濾液中のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの濃度は0.55重量%であり、固体はPXRDによれば結晶性のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートであり、ベースラインのハローは一部不定形のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの存在を示していた。しかしながらハローは実施例10の生成物の場合より顕著ではなかった。
【0090】
実施例12:S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートI型の別の結晶化
実施例12の目的はアセトニトリルの量を低減することにより工程のスループットを向上できる可能性について調べることである。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン0.9グラム、マレイン酸0.93グラム、DMF9mlおよび水2.7mlを125ml容量のジャケット付反応容器に添加し、透明な溶液が生じるまで攪拌した。アセトニトリル56mlを他の実施例と同様の方法で溶液に間歇的に添加した。アセトニトリルの添加の終了後に白濁全体が治まった時点でS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶種23mgを添加した。系を175rpmで24時間攪拌し、次にスラリーを150mlの微小フリット焼結ガラス漏斗上に排出した。ケーキをアセトニトリル5mlで洗浄し、40分間風乾し、次に24時間50℃の真空オーブン中に入れた。生成物約600mgを乾燥後に回収した。濾液中のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの濃度は約1.0重量%であった。生成物のPXRD分析によれば不定形物質の含量は極めて低値であった。溶液のNMRによれば生成物は0.1モル当量もの捕獲DMFを有していた。濾過の前およびオーブン乾燥後の光学顕微鏡によるスラリー中の固体の比較によれば、顕著な形態学的相違があった。
【0091】
実施例13:S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートI型の別の結晶化
実施例13は核形成を誘導するための補助として結晶種添加を排除できるかどうか調べるために実施した。この実験の操作法の残りの部分は実施例12と同様である。生成物における濾液の濃度および固体状態の属性は結晶種を使用しなくても同等の性能が得られることを示していた。
【0092】
実施例14:S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートI型の別の結晶化
実施例14は、実験3および4において使用した操作法の収率を、固体の大部分がすでに沈殿した後で冷却し、アセトニトリルを追加添加することにより改善できる可能性を調べるために実施した。操作では、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン1.0g、マレイン酸1.03g、DMF10mlおよび水3.0mlを125ml容のジャケット付反応容器に添加し、攪拌して透明な溶液を形成した。アセトニトリル56mlを上記実施例と同様にして溶液に間歇的に添加した。アセトニトリル添加終了後、白濁が実質的に全て治まった後にS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶種28mgを添加した。結晶種添加後最初の2時間以内に顕著な沈殿が起こり、スラリーはジャケット上で約−10℃に冷却した。この温度で24時間スラリーを攪拌した。
【0093】
冷却中および保持期間の上澄みの分析によれば、濃度低下は僅かであり、従って、アセトニトリル25mlを添加することにより、逆溶媒(anti−solvent)添加が収率を改善するかどうか調べた。更にアセトニトリルを添加した後、スラリーを25℃に戻し、更に24時間攪拌した後に150mlの微小フリット焼結ガラス漏斗上で排出した。ケーキはアセトニトリル5mlで洗浄した。
【0094】
以前に観察されたいずれのケーキとも異なり、本実施例のケーキは粘着性がありフィルター上で2時間風乾した後でさえも極めて湿潤していた。これらの固体を4時間加熱することなく真空オーブン中に入れ、余分な溶媒を除去した。その後24時間真空オーブン中50℃で乾燥した。濾液の濃縮によっても逆溶媒を更に添加することの有意な利点は観察されなかった。乾燥直後のこの実施例の固体のPXRD分析によれば、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶と混合された不定形の固体が一部存在していた。
【0095】
実施例15:II型の結晶の操作法
水、ジメチルホルムアミド(DMF)およびアセトニトリル(ACN)を含む3元溶媒系はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインのマレエート塩の結晶化のためのもっとも効果的な溶媒系であることがわかった。
元の3元溶媒系の新しい変形例を発見し、II型を発見する工程において開発した。この操作法は、結晶核形成を誘導するための結晶種添加の必要性を排除することにより操作性を改善できるように更に検討した。II型を作成する経路の説明は以下の通りである。
【0096】
第1の操作法において、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン200ミリグラムおよびマレイン酸206ミリグラムをDMF0.86mlおよび水0.3mlの混合物に溶解した。磁気ビーズを用いて攪拌することにより透明な溶液が得られた後で、ACN5mlを攪拌しながら間歇的に添加した。ACN〜0.5mlの各アリコートの添加の後、白濁が治まるまで十分な時間を置いた。ACN添加終了後に透明な溶液が得られた。I型結晶種10ミリグラムを添加して溶液の核形成を誘導した。スラリーを24時間室温で攪拌した。これを30mlの微小フリット焼結ガラス漏斗で濾過した。ケーキをACN2mlで洗浄し、次に10分間風乾した。風乾した固体の一部を28インチHg真空下60℃で真空オーブン中乾燥した。風乾した固体はオーブン乾燥中に脱水したため、30分未満の時間内にオーブンから取り出してII型に水和した。I型(結晶化誘導のため使用)は単離生成物中に検出されなかったという事実は、これらの結晶化条件下ではII型はI型よりも安定であることを示している。この操作法の収率は重量で約65%と推定された。一次核形成の誘導時間はグラム未満のスケールでは約30分であった。
【0097】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートI型の特性化
偏光顕微鏡観察によれば正の伸長を示す複屈折の針状の結晶が、濾過による採取の前のスラリーにおいて、そして、40℃で真空乾燥した後の単離生成物において観察された。
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩I型は90%RHおよび25℃において水分吸収量は1重量%未満であり、123℃で融解する。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩I型は230mgml-1超の水溶性を有する。
【0098】
表2はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩I型の元素分析ならびに1.5%の水分含量の理論的組成を示す。
【表2】
【0099】
プロトンNMRはS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン両性イオンおよびマレイン酸の1:1の組み合わせの構造および化学量論的特徴と合致していた。プロトンNMRもまた実施例8における0.2当量(3〜3.5%)のDMFを示し、これは予測元素分析値を大きく変化させず、±0.4であった。
【0100】
図6はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの試料(実施例9)の粉末X線パターンである。図7はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの試料(実施例8)の粉末X線パターンである。実施例8および実施例9は共に結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートを特徴付ける際に有用な特徴的ピークを示している。
【0101】
図8はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの試料(10.046mg、実施例9)の示差走査熱量試験のグラフである。図9はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの試料(6.2130mg、実施例8)の示差走査熱量試験のグラフである。
【0102】
図10はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの試料(4.7680mg、実施例9)の熱重量分析プロットである。図11はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの試料(実施例8)の熱重量分析プロットである。
【0103】
図12はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの水分吸収試験のプロットである。
【0104】
図13は結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートのラマンスペクトルを示す。慨すれば、ラマンスペクトルは分子または複合体系の振動の特徴である。その起源は分子と光線を含む光の粒子である光子との間の非弾性的な衝突にある。分子と光子の衝突はエネルギーの交換をもたらし、その結果エネルギーが変化し、これにより光子の波長が変化する。即ち、ラマンスペクトルは入射光により照射されるときに対象分子から発せられる極めて狭いスペクトルの線のセットである。各スペクトル線の幅は入射光のスペクトルの幅により大きく影響され、従って厳密に1色の光源、例えばレーザーを使用する。各ラマン線の波長は入射光からの波数シフトにより表示され、これはラマン線と入射光の波長の逆数の間の差である。吸収波長ではなく波数シフトはラマン線では分子内の特定の原子基に特異的である。ラマンスペクトルは分子の振動状態を測定するものであり、これはその分子構造により決定される。
【0105】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型の特性化
数種の大型結晶を、3週間に渡って70/30v/vのACN/水の溶媒混合物中5℃におけるI型およびII型の混合物をスラリー化することにより実施した相安定性試験から単離した。単位格子の化学量論的特徴は、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインとマレイン酸の各分子に対して水21/2分子であることがわかっている。結晶構造は単結晶X線回折により解明されている。図14はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型の単位格子を示す。空間群はP21(単斜晶系)であり、単位格子パラメーターはa=8.7002、b=19.0009、c=8.562Å、α=90、β=34.439、γ=90°であった。構造はチャンネル水和物のものであり、水分子は短c軸に沿って伸びるチャンネル中に位置している。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートについて単結晶構造から計算されたX線粉末パターンはII型について観察されたパターンに匹敵するものであった(図15および図16参照)。
【0106】
固体のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型は偏光顕微鏡によれば高度な結晶性を示し、結晶のサイズは20マイクロメートルのオーダーであった。粒子は棒状であった。物理的方法により実施したS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型の元素分析によれば、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートのモル当たり水2.5モルの水和物に関する理論と極めて一致していた(表II参照)。カールフィッシャーの水分測定では水分10.97%であったのに対し、2.5水和物の理論値は11.84%であった。
【0107】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型結晶塩の溶解度を5℃および25℃において70/30および90/10v/vのアセトニトリル/エタノール3A混合物中で測定した。過剰な固体を19日間適切な温度(振とう機バス中)においてこれらの溶媒中で平衡化させた。上澄みの試料を採取し、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの濃度についてHPLCで分析した。表4は結果をまとめたものである。溶媒系に存在するアセトニトリルの量が増大するに従って溶解度は顕著に低下したが、温度による作用は20°の範囲ではほぼ無視できるものであった。
【0108】
【表3】
【0109】
過剰な(1モル当量)マレイン酸の存在下および非存在下の70/30v/vアセトニトリル/水中、および、1モル当量過剰マレイン酸存在下の90/10v/vアセトニトリル/水中における5℃でのS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型結晶塩の溶解度を調べるために試験を試みた。3本全ての実験バイアルは、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩約90mgおよびマレイン酸30mgを二元溶媒約300mgに添加することにより調製した。次にこれらのバイアルを5℃の振とう機バスに入れた。4日間の平衡化の後にバイアルを観察したところ、系は、単一の液相中の固体の懸濁液から懸濁固体を含まない2相の液体に変化していた。3バイアルの各々の2層を、水分含量(カールフィッシャー分析による)および化合物濃度に関して分析した。表4に結果をまとめる。アセトニトリルリッチ(上部)の層における化合物の濃度のみがKF分析に基づいて計算された組成を有する溶媒系中のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート塩の真の溶解度を表していた。上層の測定濃度を導く厳密な条件は過剰のマレイン酸の分配が2層の間で確立された場合にのみ確立されるということが重要である。下層(水リッチ)は過剰な固体が残存していなかったことから、飽和未満であった可能性が高い。この可能性は、濃度が全ての実験にわたり極めて同様であることがわかった下層に関する溶解度のデータにより裏付けられる。過剰のマレイン酸の存在下の70/30アセトニトリル/水のバイアルは19日後においても2層のままであったのに対し、過剰のマレイン酸の非存在下の70/30アセトニトリル/水は5日後には極めて大型の結晶がなお2層のままと思われる溶液中に浮遊していた。この実験を終了し、固体を単離して特性化したところ、II型であることがわかった。これらの結晶を用いて結晶学的データを得た。5℃で19日間平衡化した後、過剰なマレイン酸存在下の90/10アセトニトリル/水のバイアルは単一の液相の固体のスラリーに戻っていた。固体を単離し、II型であることがわかり、そして溶液相中の濃度を測定したところ、0.613重量%のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインであった。過剰なマレイン酸存在下の70/30バイアルが2相のままであり、そしてより重要な点として再結晶した固体がなかったという事実は、過剰なマレイン酸(過剰なマレイン酸非存在下の70/30バイアルと比較)および高値の水分含量(過剰なマレイン酸存在下の90/10バイアルと比較)に起因する高値の溶解度が原因であると思われる。同じく興味深い点は、2相溶媒系からの結晶化が起こった2つのバイアルは単離の時点ではその内部にII型結晶を有していた点である。この観察結果は水分活性水和状態の相のダイアグラムから期待されるものと合致しており、過剰のマレイン酸は固体形態の安定性に影響しないと推測される。
【0110】
【表4】
【0111】
溶解度試験の最終セットはジメチルホルムアミド(DMF)/水/アセトニトリル(ACN)の3元溶媒系において実施した。この系を試験した理由は、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート塩を結晶化することの早期の成功例の大部分がこの溶媒混合物中であったためである。実験は全て1モル当量過剰量のマレイン酸を使用し、選択した溶媒組成は15/15/70、5/5/90、20/10/70、6.6/3.4/90、22.5/7.5/70、7.5/2.5/90v/vDMF/水/ACNとした。実験は25℃においてこれらの組成の最後の4つについてのみ実施したが、データは5℃における組成に関して収集した。上澄みは4日後および19日後に分析した。平衡化した固体もまた、大部分の実験では19日後に単離して特性化した(表5参照)。固体を単離した溶媒形における70%ACNを用いた実験の全ては19日の間にI型からII型への完全な変換がもたらされたのに対し、溶媒系中で90%ACNを用いた数実験は平衡化期間の後に固体状態として元のI型を保持していた。後者はDMFの添加によりこれらの組成物の水分活性が更に低下したことに起因するものと考えられ、系は、I型がより安定である状態に向かう傾向を有していた。しかしながら7.5/2.5/90DMF/水/ACN系の固体状態のデータはこの傾向を欠いており、入手できる情報が限定されているため説明が困難である。表5は4日および19日の平衡化の後の、5℃及び25℃における全ての実験から得たS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの重量%における濃度データを示している。もっとも顕著な傾向は、系のACN含量が90%から70%に低下した場合に溶解度が大きく上昇する点である。全ての実験にわたり、溶解度についてはある程度の温度依存性もあった。固定されたACN含量でデータを分析した場合、溶解度は初期は低下し、その後は、系のDMF含量が水の消費により上昇するに従って、上昇すると考えられる。この傾向は70および90%ACNの両方について維持されていると考えられる。最も安定な形態への完全な相変換はこれらの実験の全てにおいて起こったかもしれないが、表5で報告した溶解度の値は平衡にはなっていないと考えられ、これは、超飽和から常時緩徐に達成される(IIを形成する変換が起こった全ての実験の場合と同様)。総括すれば、本溶媒系は複雑であるが、特にII型のための結晶化工程の設計につながる溶媒組成の範囲を与えている。
【0112】
【表5】
【0113】
【表6】
【0114】
図17に示す通り、示差走査熱量分析(DSC)は単一の共融点(水)を77.69℃に示した。熱重量分析(TGA)によれば、重量損失は45と85℃との間では8.8%であった。TG−IRは重量の損失は全て水分の損失に起因することを示していた(図18参照)。8.8%の損失はKFで測定した水の値より低値であるが、これはこの性質の水和物については合理的に近似している。
【0115】
プロトンNMR分析をS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(II型)に対して実施することにより、この形態が結晶化過程においてDMFを捕獲したかどうかを調べた。データは結晶中に検出可能なDMFが存在しないことを示している。
【0116】
図19に示す通り、DVS水分バランスによれば25℃におけるS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(II型)の水分吸収は、水和物は総体湿度(RH)を0%に低下させることにより比較的容易に脱水されることを示していた。しかしながら、固体は10%より高いRHに曝露されると、等しく容易に再水和する。実験は10〜70%RHで〜2.5%(水0.5モル)の水分増加を示していた。70〜90%RHでは、増加量は〜4.5%(水1モル)であった。吸着と脱着サイクルを反復することで結晶性のヒステリシスまたは損失は全く示されなかった。この実験の間のII型の挙動は高度に結晶性のチャンネル水和物/溶媒和物に典型的なものであった。
【0117】
医薬組成物
本発明に更に包含されるものは、1つまたはそれ以上の、非毒性の薬学的に許容される担体および/または希釈剤および/またはアジュバント(総称して本明細書においては「担体」物質と称する)、および、所望により、他の活性成分と共に結晶性のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型を含む医薬組成物のクラスである。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの結晶性II型は何れかの適当な経路で、好ましくはその経路に適合した医薬組成物の形態で、そして、意図する治療のために有効な用量で投与してよい。活性なS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型および組成物は、例えば経口、血管内、腹腔内、皮下、筋肉内または局所に投与してよい。
【0118】
経口投与の場合は、医薬組成物は例えば錠剤、カプセル、懸濁液または液体の形態であってよい。医薬組成物は好ましくは活性成分の特定の量を含有する用量単位の形態で製造する。このような用量単位の例は錠剤またはカプセルである。活性成分はまた、例えば食塩水、デキストロースまたは水を適当な担体として使用してよい組成物として注射により投与してよい。
【0119】
投与される治療的に活性な化合物の量および本発明の化合物および/または組成物により疾患状態を治療するための用法は多くの要因、例えば対象の年齢、体重、性別および病状、疾患の重症度、投与の経路および頻度、および、使用する特定の化合物により異なり、従って、大きく変動する。医薬組成物は活性成分を約0.1〜2000mgの範囲、好ましくは約0.5〜500mgの範囲、最も好ましくは約1〜100mg含有してよい。約0.01〜100mg/kg体重、好ましくは約0.5〜約20mg/kg体重、そして最も好ましくは約0.1〜10mg/kg体重の一日当たり用量が適切である。一日当たり用量は一日当たり1〜4回で投与してよい。
【0120】
結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型はまた経皮装置により投与できる。好ましくは経皮投与はリザーバおよび多孔性膜の型または固体マトリックス種の何れかであるパッチを用いて行う。いずれの場合においても、活性剤はレシピエントの皮膚または粘膜に接触している活性剤透過性の接着剤内に膜を経由してリザーバーまたはマイクロカプセルから継続的に送達される。活性剤が皮膚を経由して吸収される場合は、活性剤の制御され予め決定された流量がレシピエントに投与される。マイクロカプセルの場合はカプセル化剤はまた膜として機能してもよい。
【0121】
本発明のエマルジョンの油相は既知の態様において既知の成分から構築してよい。相は乳化剤のみを含んでもよいが、脂肪または油と、または、脂肪と油の両方と少なくとも1つの乳化剤との混合物を含んでもよい。好ましくは親水性乳化剤は、安定化剤として機能する親油性の乳化剤と共に含有される。油および脂肪の両方を含有することも好ましい。全体として、乳化剤は安定化剤の存在下または非存在下でいわゆる乳化ワックスと称されるものを形成し、そしてワックスは油および脂肪と一緒になっていわゆる乳化軟膏基剤と称されるものを形成し、これがクリーム製剤の油性の分散相を形成する。本発明の製剤において使用するのに適する乳化剤および乳化安定剤はTween60、Span80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、グリセリルモノステアレートおよびラウリル硫酸ナトリウム等である。
【0122】
医薬エマルジョン製剤中で使用され得る大部分の油中の活性化合物の溶解度は極めて低値であるため、製剤用の適当な油または脂肪の選択は所望の審美的特性を達成することに基づく。即ち、クリームは好ましくは、チューブや他の容器からの漏出を回避するために、適当なコンシステンシーを有する非グリース性(non−greasy)、非染色性および洗浄可能な製品である。直鎖または分枝鎖の、1または2塩基性のアルキルエステル、例えば、ジイソアジペート、イソセチルステアレート、ココナツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、イソプロピルミリステート、デシルオレエート、イソプロピルパルミテート、ブチルステアレート、2−エチルヘキシルパルミテートまたは分枝鎖エステルのブレンド物を使用してよい。これらは所望の性質に応じて単独または組み合わせて使用してよい。或は、高融点の脂質、例えば白色軟質パラフィンおよび/または流動パラフィンまたは他の鉱物油を使用することもできる。
【0123】
眼への局所投与に適する製剤は、活性成分が適当な担体、特に活性成分のための水性溶媒に溶解または懸濁されている点眼剤も包含する。活性成分は好ましくはそのような製剤中0.5から20%、好都合には0.5〜10%、特に約1.5重量%の濃度で存在する。
【0124】
治療目的のためには、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートは通常は望ましい投与経路に適切な、1つまたはそれ以上のアジュバントと組み合わせる。経口投与する場合は、化合物は乳糖、スクロース、澱粉、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウムおよびカルシウム塩、ゼラチン、アカシアガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、および/または、ポリビニルアルコールと混合し、次に好都合な投与のために錠剤化またはカプセル化してよい。このようなカプセルまたは錠剤はヒドロキシプロピルメチルセルロース中の活性化合物の分散物として提供され得る、放出制御型製剤を含んでよい。非経口投与のための製剤は水性または非水性の等張性の滅菌された注射用の溶液または懸濁液の形態であってよい。これらの溶液および懸濁液は、経口投与のための製剤における使用のために例示される、1つまたはそれ以上の担体または希釈剤を有する滅菌された粉末または顆粒から調製してよい。結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートは水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、コーン油、綿実油、ピーナツ油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、および/または、種々の緩衝液に溶解してよい。他のアジュバントおよび投与様式は薬学分野でよく知られるとおりである。
【0125】
以上説明した本発明は多くの態様に変更できることは明らかである。このような変更は本発明の精神および範囲から外れないものであり、当業者に自明な全てのこのような変型および等価物は以下の特許請求の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】全てのイオン化状態を示しているS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの滴定曲線の図である。
【図2】IRA−400(OH)アニオン交換樹脂を用いた場合の水中のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの滴定曲線のグラフ表示である。ひし形はpH、四角(破線)はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン(%初期値、イオンクロマトグラフィーによる)を示す。
【図3】IRA−400(OH)アニオン交換樹脂を用いた場合の水中のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの滴定曲線のグラフ表示である。ひし形はpH、三角(破線)はクロリド(イオンクロマトグラフィーによる)を示す。
【図4】IRA−400アニオン交換樹脂を用いた場合の水中のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの滴定曲線を示す。
【図5】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの両性イオンのpHを上昇させた場合の関連する結合データを示す。
【図6】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(I型)の試料(実施例12)の粉末X線パターンである。
【図7】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(I型)の試料(実施例11)の粉末X線パターンである。
【図8】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(I型)の試料(10.046mg、実施例12)の示差走査熱量測定試験のグラフである。
【図9】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(I型)の試料(6.2130mg、実施例11)の示差走査熱量測定試験のグラフである。
【図10】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(I型)の試料(4.7680mg、実施例12)の熱重量分析プロットである。
【図11】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(I型)の試料(実施例11)の熱重量分析プロットである。
【図12】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(I型)の水分吸着試験のプロットである。
【図13】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(I型)の試料のラマンスペクトルである。
【図14】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(II型)の単位格子の表示である。
【図15】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(II型)の試料の粉末X線パターンである。
【図16】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(II型)の試料の模擬の、および、観察された粉末X線パターンの比較である。
【図17】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(II型)の試料の示差走査熱量分析試験のグラフである。
【図18】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(II型)の試料(3.7520mg)の熱重量分析プロットである。
【図19】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(II型)の水分吸着試験のプロットである。
【技術分野】
【0001】
本発明は疾患の治療において有用な新しい化合物、そしてより詳細には、酸化窒素シンターゼの誘導性アイソフォームからの酸化窒素の不適切な発現が関与する状態の治療のための、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの新しい塩、そして更に詳細には結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの新しい結晶状態(II型)、および、その医薬組成物を包含する。
【0002】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインは参照により本明細書に組み込まれる、同一出願人による米国特許6,403,830に記載され特許請求されている。
【背景技術】
【0003】
酸化窒素(NO)は酵素酸化窒素シンターゼ(NOS)の数種のアイソフォームの何れか1つにより生産される生物活性フリーラジカルガスである。後にNOとして同定されたものの生理学的活性は1980年代初頭に最初に発見され、このとき、アセチルコリンにより誘発される血管の弛緩は血管内皮の存在に依存していることがわかった。内皮から誘導され、次にこのような血管弛緩を媒介する内皮誘導弛緩因子(EDRF)と称されるようになった因子は、現在ではNOSの1つのアイソフォームにより血管内皮内で生じたNOであることが知られている。血管弛緩剤としてのNOの活性は100年以上もの間、知られている。更にNOは知られたニトロ血管弛緩剤、例えば亜硝酸アミルおよびニトログリセリンから誘導された活性物質種である。酸化窒素はまた可溶性のグアニレートサイクラーゼ(cGMP)の内因性刺激剤であり、即ち、cGMPの生産を刺激する。NOSがN−モノメチルアルギニン(L−NMMA)により抑制されるとcGMPの生成は完全に防止される。内皮依存性弛緩に加えて、NOは食細胞の細胞毒性および中枢神経系における細胞から細胞への連絡を含む生物学的作用の多くに関与していることがわかっている。
【0004】
NOとしてのEDRFの発見は、酵素NOシンターゼによりアミノ酸L−アルギニンからNOが合成される生化学的経路の発見と一致していた。以下に示す少なくとも3種のNOシンターゼが存在する。
(i)受容体または物理的刺激に応答してNOを放出する脳に存在する構成性Ca++/カルモジュリン依存性酵素;
(ii)内毒素およびサイトカインによる血管平滑筋、マクロファージ、内皮細胞および多くの他の細胞の活性化の後に誘導されるCa++非依存性酵素(130kDタンパク質);および、
(iii)受容体または物理的刺激に応答してNOを放出する内皮細胞に存在する構成性Ca++/カルモジュリン依存性酵素。
【0005】
発現された後、誘導性酸化窒素シンターゼ(以降「iNOS」と称する)は長期間に渡り持続的にNOを発生する。臨床試験によれば、NOの生産およびiNOSの発現は種々の慢性炎症性疾患、例えば慢性関節リューマチおよび骨関節炎(例えばMcInnes I.B.et al.,J.Exp.Med.184:1519(1996)参照)、炎症性腸疾患(例えばLundberg J.O.N.et al.,Lancet 344:1673(1994)参照)および喘息(例えばHamid,Q.et.al.,Lancet 342:1510(1993)参照)において増大し、そしてiNOSはこれらの慢性炎症性疾患における主要な病原性因子とされている。
【0006】
即ちiNOSによる過剰なNO生産の抑制は抗炎症性であると考えられる。しかしながら、eNOSおよびnNOSからのNOの生産は正常な生理機能にかかわっているため、炎症の治療に使用されるいずれのNOS阻害剤も、eNOS生成NOによる血圧の正常な生理学的調節およびnNOS生成NOによる非アドレナリン作用性、非コリン作用性の神経伝達が影響を受けない状態であり続けるように、iNOSに対して選択的であることが望ましい。
【0007】
全ての医薬品の化合物および組成物において、薬剤化合物の化学的および物理的安定性は薬剤物質の商業的開発において重要である。このような安定性には、周囲条件において特に水分に対して、そして、保存条件下における安定性が包含される。保存の種々の条件における向上した安定性は、市販品の寿命の間の種々の可能な保存条件を予測するために必要である。安定な薬剤は特殊な保存条件の使用ならびに頻繁な在庫交換を回避する。均一な粒径および表面積を有する薬剤物質を得るためには、薬剤のミリングを必要とする場合が多い製造工程の間も薬剤化合物は安定でなければならない。不安定な物質は多形の変化を起こす場合が多い。従って、安定性の特性を向上させる薬剤物質のいずれかの修飾は安定性がより低い物質よりも重要な利益をもたらす。
【0008】
例えば同一出願人による米国特許6,403,830に記載され特許請求されているS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインのような数種のiNOS阻害剤が報告されている。しかしながらその化合物は不定形の固体である。従って、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインのようなiNOS阻害剤の結晶固体形態を提供することが望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの新しい結晶塩、医薬組成物、新しい塩化合物の製造方法、医薬組成物の製造方法、および、酸化窒素シンターゼの構成性アイソフォームよりも酸化窒素シンターゼの誘導性アイソフォームを優先的に抑制またはモジュレートする化合物の塩を投与することによって、酸化窒素の合成を抑制またはモジュレートすることを必要とする対象においてこのような抑制またはモジュレートのための新しいII型結晶塩化合物および組成物を用いる方法に関する。本発明の塩化合物は有用な酸化窒素シンターゼ抑制活性を有し、そして酸化窒素の合成または過剰合成が寄与的部分を形成する疾患または状態の治療または予防において有用であることが期待される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
化学量論的には、新しい塩の単位格子はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの1分子およびマレイン酸の1分子である。
【0011】
新しい結晶性II型塩は以下の物理的測定値、即ち、元素分析(例えば燃焼分析による)、融点および融解熱(示差走査熱量分析および熱重量分析)、屈折率(偏光顕微鏡)、X線粉末回折パターンおよび水分吸着(例えばDVS水分バランス)の一部または全てにより特性化される。
【0012】
本発明の新しい塩は関節炎のような特定の状態において生じる軟骨の変性が関与する疾患を治療するために使用できる。従って、L−アルギニンからのNO生産を抑制することが好都合となる状態は、関節の状態、例えば慢性関節リューマチ、骨関節炎、通風性関節炎、若年性関節炎、敗血症性関節炎、脊椎関節炎、急性関節リューマチ、腸疾患に基づく関節炎(enteropathic arthritis)、神経障害性関節炎および化膿性関節炎を包含する。更にまた、軟骨細胞吸引のNO誘導低下は関節炎、特に骨関節炎におけるマトリックスの損失および二次的な軟骨の石灰化をモジュレートする。
【0013】
本発明の塩が有用であるその他の状態は、慢性または炎症性の腸疾患、心臓血管虚血、糖尿病、鬱血性心不全、心筋炎、アテローム性動脈硬化症、偏頭痛、緑内障、大動脈瘤、逆流性食道炎、下痢、過敏性腸症候群、嚢胞性線維症、気腫、喘息、気管支拡張症、痛覚過敏、脳虚血、血栓性卒中、全虚血(global ischemia)(心停止に二次的なもの)、多発性硬化症およびNOにより媒介される他の中枢神経系の障害、例えばパーキンソン病およびアルツハイマー病を包含する。NO抑制が有用である別の神経変性障害は低酸素症、低血糖症、癲癇のような疾患における、そして、外傷(例えば脊髄および頭部の傷害)における神経変性および/または神経壊死、高圧酸素痙攣および毒性、痴呆症、例えば前老年性痴呆症、および、AIDS関連痴呆症、シドナム舞踏病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、コルサコフ病、脳血管障害に関わる精神遅滞、睡眠障害、統合失調症、うつ病、月経前症候群(PMS)に関連するうつ病または他の症状、不安症および敗血症性ショックを包含する。
【0014】
本発明の塩はまた、身体原性の(侵害受容または神経病性の)急性および慢性の両方のものを含む疼痛のようなものの治療において酸化窒素の抑制が役割を果たす場合にも使用してよい。本発明の化合物は一般的なNSAIDまたはオピオイド鎮痛剤が伝統的に投与されている何れかの状況において使用できる。
【0015】
更にまた、本発明の塩によるNO生産の抑制により治療できる別の障害には長期間オピエート鎮痛剤を必要とする患者におけるオピエート耐性、および、ベンゾジアゼピン使用患者におけるベンゾジアゼピン耐性および他の中毒挙動、例えばニコチンおよび摂食障害が包含される。本発明の化合物はまた抗菌剤としても使用してよい。
【0016】
L−アルギニンからのNO生産を抑制するために本発明の塩を使用してよい別の状態は、種々の因子により誘導される敗血症性および/または毒性のショックに関連する全身低血圧を包含し;TNF、IL−1およびIL−2のようなサイトカインを用いた治療において;および移植療法における短期間の免疫抑制に対するアジュバントとして使用してよい。
【0017】
本発明の塩はまた眼の状態(例えば高眼圧症、網膜炎、ブドウ膜炎)、全身性エリテマトーデス(SLE)、糸球体腎炎、再狭窄、ウィルス感染の炎症性続発症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、酸素誘導肺傷害、癌患者等におけるIL2治療、悪液質、移植療法等における免疫抑制、胃腸運動性の障害、日焼け、湿疹、乾癬、歯肉炎、膵臓炎、感染症が原因の胃腸管の損傷、嚢胞性線維症、臓器移植療法における短期の免疫抑制のアジュバントのような機能不全免疫系の治療、分娩誘発、腺腫様ポリープ、腫瘍成育の制御、化学療法、化学予防および気管支炎においても有用である。
【0018】
本発明はまた、治療有効量の結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型を薬学的に許容される担体、希釈剤またはベヒクルと共に含有する医薬組成物であって、疼痛、喘息および他の気道の障害、癌、関節炎、網膜症および緑内障を含む眼の障害、炎症関連障害、例えば過敏性腸症候群、および酸化窒素の過剰な生産が役割を果たしている他の障害の治療のための医薬組成物に関する。
【0019】
ヒトの治療に有用であるほか、この型は愛玩動物、外来種動物および家畜、例えば哺乳類、げっ歯類等の獣医科の治療にも有用である。より好ましい動物はウマ、イヌおよびネコを包含する。
【0020】
定義
「治療する」、「治療している」および「治療」という用語は本明細書においては、予防療法、待期療法または回復療法を包含する。
「有効量」という用語は治療を行える用量を意味する。有効量は単回用量で、またはある期間に渡り分割用量において投与してよい。
「ACE」という用語はアセトンを意味する。
「ACN」という用語はアセトニトリルを意味する。
【0021】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインに適用する場合「不定形」という用語は、本明細書においては、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン分子が無秩序の配列において存在し、識別可能な結晶格子または単位格子を形成しない固体状態を意味する。X線粉末回折に付す場合は、不定形のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインは如何なる特徴的な結晶ピークも示さない。
【0022】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインに適用する場合「結晶型」という用語は、本明細書においては、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン分子が配列して(i)識別可能な単位格子を含み、そして(ii)X線照射に付した場合に回折ピークを生じるような、識別可能な結晶格子を形成する固体状態の形態を指す。
【0023】
「S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートI型」、「S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインI型」および「I型」という用語は全て、本明細書においてより詳細に記載する、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩I型を意味する。
【0024】
「S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型」、「S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインII型」および「II型」という用語は全て、本明細書においてより詳細に記載する、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型を意味する。
【0025】
「結晶化」という用語は本明細書においては、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン出発原料の製造に関わる適用可能な状況に応じた結晶化および/または再結晶化を指す。
「DMF」という用語はN,N−ジメチルホルムアミドを意味する。
「D/W/A」」という用語はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、水およびアセトニトリルの3元溶媒系を指す。
【0026】
「S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン薬剤物質」という用語は本明細書においては、その用語を使用する文脈により明確化されるS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン自体であり、未製剤のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインまたは医薬組成物の成分として存在するS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインを指す。
【0027】
「DSC」という用語は示差走査熱量測定を意味する。
「HPLC」という用語は高速液体クロマトグラフィーを意味する。
「IR」という用語は赤外線を意味する。
「NMR」という用語は核磁気共鳴を意味し、核磁気共鳴スペクトル分析に適用してよい。
「ml」という用語はミリリットルを意味する。
「mg」という用語はミリグラムを意味する。
「μg」という用語はマイクログラムを意味する。
「μl」という用語はマイクロリットルを意味する。
「核形成」という用語は本明細書においては溶液中の結晶の形成を意味する。
【0028】
「純度」という用語は本明細書においては特段の記載が無い限り、従来のHPLC試験によるS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの化学純度を意味する。
「PXRD」という用語は粉末X線回折を意味する。
「rpm」という用語は分当たり回転数を意味する。
「結晶種添加」という用語は、本明細書においては、核形成を開始または促進する目的のための溶液中への結晶の添加を意味する。
「TGA」という用語は熱重量分析を意味する。
「Tm」という用語は融点を意味する。
「遊離の両性イオン」という用語は実質電荷がゼロ値となるように正電荷および負電荷の両方を担持した分子を指す。
【0029】
薬学的使用
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は、対象において特に炎症を治療するため、または、他の酸化窒素シンターゼ媒介障害の治療のため、例えば疼痛および頭痛の治療における鎮痛剤として、または、発熱の治療のための解熱剤として有用である。例えば、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は関節炎、例えば慢性関節リューマチ、脊髄関節症、痛風性関節炎、骨関節炎、全身性エリテマトーデス、若年性関節炎、急性関節リューマチ、腸疾患に基づく関節炎、神経障害性関節炎、乾癬性関節炎および化膿性関節炎の治療に有用であるが、これらに限定されない。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型がL−アルギニンからのNO生産の抑制において好都合である状態は関節炎の状態を包含する。
【0030】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は更に、喘息、気管支炎、月経痛(例えば月経困難)、早産、腱炎、滑液包炎、皮膚関連状態、例えば乾癬、湿疹、熱傷、日焼け、皮膚炎、膵臓炎、肝炎、および、術後炎症に起因するもの、例えば眼科手術に起因するもの、例えば白内障手術および屈折矯正手術に起因するものの治療において有用である。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた炎症性腸疾患、クローン病、胃炎、過敏性腸症候群および潰瘍性結腸炎のような胃腸状態の治療にも有用である。
【0031】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は癌、例えば結腸直腸癌および乳癌、肺癌、前立腺癌、膀胱癌、子宮癌および皮膚がんの予防または治療のために有用である。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は血管疾患、偏頭痛、結節性動脈周囲炎、甲状腺炎、再生不良性貧血、ホジキン病、硬皮症(sclerodoma)、リューマチ熱、I型糖尿病、神経筋接合部疾患、例えば重症筋無力症、白質症、例えば多発性硬化症、サルコイドーシス、ネフローゼ症候群、ベーチェット症候群、多発性筋炎、歯肉炎、腎炎、過敏症、傷害後の浮腫、心筋虚血等のような疾患における炎症および組織損傷の治療に有用である。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた眼科疾患、例えば緑内障、網膜炎、網膜症、ブドウ膜炎、眼光恐怖症および眼部組織への急性損傷に関連する炎症および疼痛の治療においても有用である。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型の用途のうち特に興味深いものは、特に、緑内障の症状が酸化窒素媒介神経損傷の場合のように酸化窒素の生成により誘発されたものである緑内障の治療である。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた肺の炎症、例えばウィルス感染に伴うもの、および嚢胞性線維症の治療においても有用である。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた特定の中枢神経系の障害、例えば皮質痴呆、例えばアルツハイマー病、および卒中、虚血および外傷に起因する中枢神経系の損傷の治療のためにも有用である。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は抗炎症剤、例えば関節炎の治療用のもの等としても有用であり、有害な副作用が顕著に低減されているという別の利点も伴う。
【0032】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまたアレルギー性鼻炎、呼吸窮迫症候群、内毒素ショック症候群およびアテローム性動脈硬化症の治療においても有用である。
【0033】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた疼痛、例えば術後疼痛、歯痛、筋肉痛、および癌に起因する疼痛の治療においても有用であるが、これらに限定されない。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はアルツハイマー病のような痴呆症の予防のために有用である。
【0034】
ヒトの治療のほかに、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は愛玩動物、外来種動物および家畜、例えば哺乳類、げっ歯類等の獣医科の治療にも有用である。より好ましい動物はウマ、イヌおよびネコを包含する。
【0035】
本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた、他の従来の抗炎症療法の部分的または完全な代替法である共療法(co-therapies)において、例えばステロイド、NSAID、COX−2選択的阻害剤、5−リポキシゲナーゼ阻害剤、LTB4拮抗剤およびLTA4ヒドロラーゼ阻害剤と共に使用してよい。
【0036】
本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型がNO生産の抑制において好都合である他の状態は、心臓血管虚血、糖尿病(I型またはII型)、鬱血性心不全、心筋炎、アテローム性動脈硬化症、偏頭痛、緑内障、大動脈瘤、逆流性食道炎、下痢、過敏性腸症候群、嚢胞性線維症、気腫、喘息、気管支拡張症、痛覚過敏(異痛)、脳虚血(局所的虚血、血栓性卒中および全虚血(例えば心停止に二次的なもの)の双方)、多発性硬化症およびNOにより媒介される他の中枢神経系の障害、例えばパーキンソン病を包含する。NO抑制が有用である別の神経変性障害は低酸素症、低血糖症、癲癇のような疾患における、そして、中枢神経系(CNS)外傷(例えば脊髄および頭部の傷害)の場合における、神経変性および/または神経壊死、高圧酸素痙攣および毒性、痴呆症、例えば前老年性痴呆症、および、AIDS関連痴呆症、シドナム舞踏病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、コルサコフ病、脳血管障害に関わる精神遅滞、睡眠障害、統合失調症、うつ病、月経前症候群(PMS)に関連するうつ病または他の症状、不安症および敗血症性ショックを包含する。
【0037】
本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた身体原性の(侵害受容または神経病性の)急性および慢性の両方のものを含む疼痛の治療において有用である。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた一般的なNSAIDまたはオピオイド鎮痛剤が伝統的に投与されている神経病性の疼痛を含む何れかの状況において使用できる。
【0038】
本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型により好都合に治療される更に別の障害または状態は、長期間オピエート鎮痛剤を必要とする患者におけるオピエート耐性、および、ベンゾジアゼピン使用患者におけるベンゾジアゼピン耐性および他の中毒挙動、例えばニコチン中毒、アルコール中毒および摂食障害が包含される。
【0039】
本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまたオピエート、アルコールまたはタバコ中毒からの禁断症状の治療または予防のような、薬物禁断症状の治療または予防に有用である。
【0040】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた抗菌剤または抗ウィルス剤と治療上組み合わせた場合に組織の損傷を予防するために有用である。
【0041】
本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまたL−アルギニンからのNO生産の抑制において、例えば種々の因子により誘導される敗血症性および/または毒性出血性ショックに関連する全身低血圧に有用であり;TNF、IL−1およびIL−2のようなサイトカインを用いた治療に有用であり;そして、移植療法において短期間の免疫抑制剤に対するアジュバントとして有用である。
【0042】
本発明は更に新生物の治療および予防のための本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型の使用に関する。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型および方法により治療可能または予防可能である新生物は脳の癌、骨の癌、白血病、リンパ腫、上皮細胞誘導新生物(上皮癌腫)、例えば基底細胞癌、腺癌、胃腸の癌、例えば口唇の癌、口腔の癌、食道癌、小腸の癌および胃癌、結腸癌、肝臓癌、膀胱癌、膵臓癌、卵巣癌、子宮癌、肺癌、乳癌および皮膚がん、例えば扁平上皮癌および基底細胞癌、前立腺癌、腎細胞癌およびその他の全身に渡る上皮細胞に関わる既知の癌を包含する。好ましくは、治療すべき新生物は胃腸の癌、肝臓癌、膀胱癌、膵臓癌、卵巣癌、前立腺癌、子宮癌、肺癌、乳癌および皮膚癌、例えば扁平上皮および基底細胞の癌から選択される。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型および本発明の方法はまた放射線療法により起こる線維症を治療するために使用できる。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型および方法は家族性大腸腺腫症(FAP)の対象を含む腺腫様ポリープを有する対象の治療に使用できる。更に、本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型および方法はFAPの危険性のある患者におけるポリープ形成を予防するために使用できる。
【0043】
別の抗新生物剤との本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型の複合治療は相乗作用をもたらすか、または、治療効果のために必要とされる副作用誘発薬剤の治療用量を低減するかもしくは副作用誘発薬剤により誘発される毒性の副作用の症状を直接低減することにより化学療法に伴う毒性の副作用を軽減する。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は更に副作用を低減するかまたは薬効を増強するための放射線療法の補助として有用である。
【0044】
本発明においては、本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型と治療上組み合わせることができる別の薬剤は酵素シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)を阻害できる何れかの治療薬を包含する。好ましくは、このようなCOX−2阻害剤は酵素シクロオキシゲナーゼ−1(COX−1)と比較してCOX−2を選択的に阻害する。このようなCOX−2阻害剤は「COX−2選択的阻害剤」として知られている。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型と治療上組み合わせて使用するCOX−2選択的阻害剤は、セレコキシブ、バルデコキシブ、デラコキシブ、エトリコキシブ、ロフェコキシブ、ABT−963(2−(3,4−ジフルロフェニル)−4−(3−ヒドロキシ−3−メチル−1−ブトキシ)−5−[4−(メチルスルホニル)フェニル−3(2H)−ピリダジノン;PCT出願WO00/24719記載)、またはメロキシカムを包含する。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまたCOX−2選択的阻害剤のプロドラッグ、例えばパレコキシブと治療上組み合わせて好都合に使用できる。
【0045】
本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型と組み合わせて使用する別の化学療法剤は、例えば以下の非包括的および非限定的なリストから選択できる。
【0046】
アルファ−ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)、5−FU−フィブリノーゲン、アカンチホリック酸(acanthifolic acid)、アミノチアジアゾール、ブレキナールナトリウム(brequinar sodium)、カルモフール、Ciba−Geigy CGP−30694、シクロペンチルシトシン、シタラビンホスフェートステアレート、シタラビンコンジュゲート、Lilly DATHF、Merrel Dow DDFC、デザグアニン、ジデオキシシチジン、ジデオキシグアノシン、ジドックス、Yoshitomi DMDC、ドキシフルリジン、Wellcome EHNA、Merck&Co.EX−015、ファザラビン、フロクスウリジン、フルダラビンホスフェート、5−フルオロウラシル、N−(2’−フラニジル)−5−フルオロウラシル、Daiichi Seiyaku FO−152、イソプロピルピロリジン、Lilly LY−188011、Lilly LY−264618、メトベンザプリン、メトトレキセート、Wellcome MZPES、ノルスペルミジン、NCI NSC−127716、NCI NSC−264880、NCI NSC−39661、NCI NSC−61267、Warner−Lambert PALA、ペントスタチン、ピリトレキシム、プリカマイシン、Asahi Chemical PL−AC、Takeda TAC−788、チオグアニン、チアゾフリン、Erbamont TIF、トリメトレキセート、チロシンキナーゼ阻害剤、チロシン蛋白質キナーゼ阻害剤、Taiho UFT、ウリシチン、Shionogi 245−S、アルド−ホスファミド類縁体、アルトレタミン、アナキシロン(anaxirone)、Boehringer Mannheim BBR−2207、ベストラブシル、ブドチタン、Wakunaga CA−102、カルボプラチン、カルムスチン、Chinoin−139、Chinoin−153、クロラムブシル、シスプラシン、シクロホスファミド、American Cyanamid CL−286558、Sanofi CY−233、シプラテート、Degussa D−19−384、Sumimoto DACHP(Myr)2、ジフェニルスピロムスチン、細胞増殖抑制ジ白金(diplatinum cytostatic)、Erbaジスタマイシン誘導体、Chugai DWA−2114R、ITI E09、エルムスチン、ErbamontFCE−24517、エストラムスチンホスフェートナトリウム、フォテムスチン、Unimed G−6−M、Chinoin GYKI−17230、ヘプスル−ファム(hepsul−fam)、イフォスファミド、イプロプラチン、ロムスチン、マホスファミド、ミトラクトール、Nippon Kayaku NK−121、NCI NSC−264395、NCI NSC−342215、オキサリプラチン、Upjohn PCNU、プレドニムスチン、Proter PTT−119、ラニムスチン、セムスチン、SmithKline SK&F−101772、Yakult Honsha SN−22、スピロムス−チン、Tanabe Seiyaku TA−077、タウロムスチン、テモゾロミド、テロキシロン、テトラプラチン、トリメラモール、Taiho 4181−A、アクラルビシン、アクチノマイシンD、アクチノプラノン、Erbamont ADR−456、アエロプリシニン誘導体、Ajinomoto AN−201−II、Ajinomoto AN−3、Nippon Sodaアニソマイシン、アントラサイクリン、アジノマイシン−A、ビスカベリン、Bristol−Myers BL−6859、Bristol−Myers BMY−25067、Bristol−Myers BMY−25551、Bristol−Myers BMY−26605、Bristol−Myers BMY−27557、Bristol−Myers BMY−28438、ブレオマイシンスルフェート、ブリオスタチン−1、Taiho C−1027、カリケマイシン、クロモキシマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、Kyowa Hakko DC−102、Kyowa Hakko DC−79、Kyowa Hakko DC−88A、Kyowa Hakko DC89−A1、Kyowa Hakko DC92−B、ジトリサルビシンB、Shionogi DOB−41、ドキソルビシン、ドキソルビシン−フィブリノーゲン、エルサミシン−A、エピルビシン、エルブスタチン、エソルビシン、エスペラミシン−A1、エスペラミシン−A1b、Erbamont FCE−21954、Fujisawa FK−973、フォストリエシン、Fujisawa FR−900482、グリドバクチン、グレガチン−A、グリンカマイシン、ヘルビマイシン、イダルビシン、イルジンス(illudins)、カズサマイシン、ケサリロジンス、Kyowa Hakko KM−5539、Kirin Brewery KRN−8602、Kyowa Hakko KT−5432、Kyowa Hakko KT−5594、Kyowa Hakko KT−6149、American Cyanamid LL−D49194、Meiji Seika ME2303、メノガリル、マイトマイシン、ミトザントロン、SmithKline M−TAG、ネオエナクチン、Nippon Kayaku NK−313、Nippon Kayaku NKT−01、SRI International NSC−357704、オキサリシン、オキサウノマイシン、ペプロマイシン、ピラチン、ピラルビシン、ポロスラマイシン、ピリンダマイシンA、Tobishi RA−I、ラパマイシン、リゾキシン、ロドルビシン、シバノミシン、シエノマイシン(siwenmycin)、Sumitomo SM−5887、Snow Brand SN−706、Snow Brand SN−07、ソランギシン−A、スパルソマイシン、SS Pharmaceutical SS−21020、SS Pharmaceutical SS−7313B、SS Pharmaceutical SS−9816B、ステフィマイシンB、Taiho 4181−2、タリソマイシン、Takeda TAN−868A、テルペンテシン、スラジン、トリクロザリンA、Upjohn U−73975、Kyowa Hakko UCN−10028A、Fujisawa WF−3405、Yoshitomi Y−25024ゾルビシン、アルファ−カロテン、アルファ−ジフルオロメチル−アルギニン、アシトレチン、Biotec AD−5、Kyorin AHC−52、アルストニン、アモナフィド、アンフェチニル、アムサクリン、Angiostat、アンキノマイシン、アンチネオプラストンA10、アンチネオプラストンA2、アンチネオプラストンA3、アンチネオプラストンA5、アンチネオプラストンAS2−1、Henkel APD、アフィジコリングリシネート、アスパラギナーゼ、Avarol、バッカリン、バトラシリン、ベンフルロン、ベンゾトリプト、Ipsen−Beaufour BIM−23015、ビサントレン、Bristo−Myers BMY−40481、Vestar ボロン−10、ブロモホスファミド、Wellcome BW−502、Wellcome BW−773、カラセミド、カルメチゾール塩酸塩、Ajinomoto CDAF,クロルスルファキノキサロン、Chemex CHX−2053、Chemex CHX−100、Warner−Lambert CI−921、Warner−Lambert CI−937、Warner−Lambert CI−941、Warner−Lambert CI−958、クランフェヌール(clanfenur)、クラビリデノン、ICN化合物1259、ICN化合物4711、Contracan、Yakult Honsha CPT−11、クリスナトール、クラダーム(curaderm)、サイトカラシンB、シタラビン、シトシチン、Merz D−609、DABISマレエート、ダカルバジン、ダテリプチニウム(datelliptinium)、ジデムニン−B、ジヘマトポルフィリンエーテル、ジヒドロレンペロン、ジナリン、ジスタマイシン、Toyo Pharmar DM−341、Toyo Pharmar DM−75、Daiich Seiyaku DN−9693、エリプラビン、エリプチニウムアセテート、Tsumura EPMTC、エルゴタミン、エトポシド、エトレチネート、フェンレチニド、Fujisawa FR−57704、硝酸ガリウム、ゲンクワダフニン(genkwadaphnin)、Chugai GLA−43、Glaxo GR−63178、グリフォランNMF−5N、ヘキサデシルホスホコリン、Green Cross HO−221、ホモハリングトニン、ヒドロキシ尿素、BTG ICRF−187、イルモフォシン、イソグルタミン、イソトレチノイン、Otsuka JI−36、Ramot K−477、Otsuka K−76COONa、Kureha Chemical K−AM、MECT Corp KI−8110、American Cyanamid L−623、ロイコレグリン、ロニダミン、Lundbeck LU−23−112、Lilly LY−186641、NCI(US)MAP、マリシン、Merrel Dow MDL−27048、Medco MEDR−340、メルバロン、メロシアニン誘導体、メチルアニリノアクリジン、Molecular Genetics MGI−136、ミナクチビン、ミトナフィド、ミトキドン、モピダモール、モトレチニド、Zenyaku Kogyo MST−16、N−(レチノイル)アミノ酸、Nissin Flour Millig N−021、N−アシル化−デヒドロアラニン、ナファザトロム、Taisho NCU−190、ノコダゾール誘導体、Normosang、NCI NSC−145813、NCI NSC−361456、NCI NSC−604782、NCI NSC−95580、オクトレオチド、Ono ONO−112、オキザノシン、Akzo Org−10172、パンクレアチスタチン、パゼリプチン、Warner−Lumbert PD−111707、Warner−Lumbert PD−115934、Warner−Lumbert PD−131141、Pierre Fabre PE−1001、ICRTペプチドD、ピロキサントロン、ポリヘマトポルフィリン、ポリプレイック酸(polypreic acid)、Efamolポルフィリン、プロビマン、プロカルバジン、プログルミド、InvitronプロテアーゼネキシンI、Tobishi RA−700、ラゾキサン、Sapporo Breweries RBS、レストリクチン−P、レテリプチン、レチノイン酸、Rhone−Poulenc RP−49532、Rhone−Poulenc RP−56976、SmithKline SK&F−104864、Sumitomo SM−108、Kuraray SMANCS、SeaPharm SP−10094、スパトール、スピロシクロプロパン誘導体、スピロゲルマニウム、Unimed、SS Pharmaceutical SS−554、ストリポルジノン、Stypoldione、Suntory SUN 0237、Suntory SUN 2071、スーパオキシドジスムターゼ、Toyama T−506、Toyama T−680、タキソール、Teijin TEI−0303、テニポシド、タリブラスチン、Eastman Kodak TJB−29、トコトリエノール、Topostin、Teijin TT−82、Kyowa Hakko UCN−01、Kyowa Hakko UCN−1028、ウクライン、Eastoma Kodak USB−006、硫酸ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンストラミド、ビノレルビン、ビン
トリプトール、ビンゾリジン、ウィザノリド、Yamanouchi YM−534、ウログアニリン、コンブレタスタチン、ドラスタチン、イダルビシン、エピルビシン、エストラムスチン、シクロホスファミド、9−アミノ−2−(S)−カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン(Camptosar)、エクセメスタン、デカペプチル(トリプトレリン)またはオメガ−3−脂肪酸。
【0047】
本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型との組み合わせ療法に使用してよい放射線保護剤の例はAD−5、アドクノン、アミホスチン類縁体、デトックス、ジメスナ、1−102、MM−159、N−アシル化−デヒドロアラニン、TGF−Genentech、チプロチモド、アミホスチン、WR−151327、FUT−187、ケトプロフェン経皮用、ナブメトン、スーパーオキシドジスムターゼ(Chiron)およびスーパーオキシドジスムターゼEnzonを包含する。
【0048】
本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はまた血管形成関連の障害または状態、例えば腫瘍生育、転移、黄斑変性およびアテローム性動脈硬化症の治療または予防においても有用である。
【0049】
別の実施形態においては、眼科の障害または状態、例えば緑内障の治療または予防のための治療組み合わせが提供される。例えば本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は緑内障に罹患している患者の眼圧を低減する薬剤との治療組み合わせ中に有利に使用される。このような眼圧低下剤にはラタノプロスト、トラボプロスト、ビマトプロストまたはウノプロストールが包含される。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型+眼圧低下剤の治療組み合わせは、各々がその作用を異なる機序に作用させることにより達成すると考えられているため、有用である。
【0050】
本発明の別の組み合わせにおいて、本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は抗高脂血剤またはコレステロール低下剤、例えばベンゾチエピンまたはベンゾチアゼピン抗高脂血剤との治療組み合わせ中に使用できる。本発明の治療組み合わせにおいて有用なベンゾチエピン抗高脂血剤の例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許5,994,391に記載されている。ベンゾチアゼピン抗高脂血剤の一部はWO93/16055に記載されている。あるいは、本発明の化合物との組み合わせにおいて有用な抗高脂血剤またはコレステロール低下剤はHMG Co−A還元酵素阻害剤であることができる。本発明の治療組み合わせにおいて有用なHMG CO−A還元剤阻害剤の例は、個々に、ベンフルオレクス、フルバスタチン、ロバスタチン、プロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、ベルバスタチン、ZD−9720(PCT出願WO97/06802記載)、ZD−4522(カルシウム塩はCAS No.147098−20−2;ナトリウム塩はCAS No.147098−18−8;欧州特許EP521471に記載)、BMS180431(CAS No.129829−03−4)またはNK−104(CAS No.141750−63−2)を包含する。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型+抗高脂血剤またはコレステロール低下剤の治療組み合わせは例えば血管内のアテローム性動脈硬化性の病変の形成の危険性を低減する場合に有用である。例えばアテローム性動脈硬化性の病変は血管の炎症部位から生じる場合が多い。抗高脂血剤またはコレステロール低下剤は血中の脂質濃度を低下させることによりアテローム性動脈硬化性の病変の形成の危険性を低減する。単一の作用機序に本発明を限定しないが、本発明の組み合わせのS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型の1つの態様は、協調して作用し、例えば血中脂質濃度の低下と同調した血管の炎症の低減によって、アテローム性動脈硬化性の病変の進歩した制御をもたらすと考えられる。
【0051】
本発明の別の実施形態においては、本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型は中枢神経の状態または障害、例えば偏頭痛の治療のための他の化合物または治療法と組み合わせて使用できる。例えば、本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型はカフェイン、5−HT−1B/1Dアゴニスト(例えばトリプタン、例えばスマトリプタン、ナラトリプタン、ゾルミトリプタン、リザトリプタン、アルモトリプタンまたはフロバトリプタン)、ドーパミンD4拮抗剤(例えばソネピプラゾール)、アスピリン、アセトアミノフェン、イブプロフェン、インドメタシン、ナプロキセンナトリウム、イソメテプテン、ジクロラルフェナゾン、ブタルビタール、麦角アルカロイド(例えばエルゴタミン、ジヒドロエルゴタミン、ブロモクリプチン、エルゴノビン、または、メチルエルゴノビン)、3環系抗欝剤(例えばアミトリプチリンまたはノルトリプチリン)、セロトニン拮抗剤(例えばメチセルギドまたはシプロヘプタジン)、ベータ−アドレナリン拮抗剤(例えばプロプラノロール、チモロール、アテノロール、ナドロールまたはメトプロロール)またはモノアミンオキシダーゼ阻害剤(例えばフェネルジンまたはイソカルボキサジド)との治療組み合わせ中に使用できる。
【0052】
別の実施形態は本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型とオピオイド化合物の治療組み合わせを提供する。この組み合わせに有用なオピオイド化合物は、例えば、モルヒネ、メタドン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、レボルファノール、レバロルファン、コデイン、ジヒドロコデイン、ジヒドロヒドロキシコデイノン、ペンタゾシン、ヒドロコドン、オキシコドン、ナルメフェン、エトルフィン、レボルファノール、フェンタニル、スフェンタニル、DAMGO、ブトルファノール、ブプレノルフィン、ナロキソン、ナルトレキソン、CTOP、ジプレノルフィン、ベータ−フナルトレキサミン、ナロキソナジン、ナロルフィン、ペンタゾシン、ナルブフィン、ナロキソンベンゾイルヒドラゾン、ブレマゾシン、エチルケトサイクラゾシン、U50,488、U69,593、スピラドリン、ノル−ビナルトルフィミン、ナルトリンドール、DPDPE、[D−la2,glu4]デルトルフィン、DSLET、メト−エンケファリン、ロイ−エンケファリン、ベータ−エンドルフィン、ダイノルフィンA、ダイノルフィンBおよびαネオエンドルフィンを包含する。オピオイド化合物との本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型の組み合わせの好都合な点は、本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩II型がオピオイド化合物の用量を低減し、これにより、オピオイド中毒のようなオピオイドの副作用の危険性や重症度を低減できる点である。
【0053】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン2塩酸塩の製造方法は参照により本明細書に組み込まれる、同一出願人による米国特許6,403,830に記載されている。
【0054】
慨すればS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン2塩酸塩の合成は以下の実施例1に記載する通り実施してよい。
【0055】
実施例1
【化1】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン、2塩酸塩
【0056】
実施例−1A)N−Boc−システアミン
【化2】
3L容の4口RBフラスコを20分間窒素パージし、次に順次、2−アミノエタンチオール塩酸塩(113.6g、1モル)、ジ−t−ブチル−ジカーボネート(218.3g、1モル)およびトルエン500mlを添加した。混合物を氷水バスで冷却し、10分間窒素パージした。水酸化ナトリウム(2.5N、880ml、2.2モル)を0℃〜11℃で約1.5時間内に攪拌混合物に添加した。水酸化ナトリウムの添加が終了した後、冷却バスを除去し、得られた反応混合物を室温に戻し、一夜周囲温度で攪拌した。これにより表題化合物の溶液を得た。
【0057】
実施例−1B)
【化3】
実施例−1Aの生成物溶液を氷水バス中で冷却した。クロロアセトン(101.8g、1.1モル)の試料を8℃〜11℃で約50分かけて激しく攪拌した反応混合物に添加した。クロロアセトンの添加が終了した後、冷却バスをはずし、得られた反応混合物を一夜室温で攪拌した。トルエン層を分離し、水(250ml)で洗浄し、ハウス真空下、次いで高真空下に85℃でロータリーエバポレーター上で濃縮し、粗製の表題化合物(225.7g、96.7%)を得た。
1H NMR (CDCl3, 400MHz) δ 4.95 (bs, 1H), 3.20 (m, 4H), 2.54 (t, 2H), 2.20 (s, 3H), 1.35 (s, 9H)。
【0058】
実施例−1C)[2−[[(4−メチル−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル)メチル]チオ]エチル]カルバミン酸、1,1−ジメチルエチルエステル
【化4】
オーバーヘッド攪拌機、熱電対および空フラスコと苛性アルカリトラップに連結したコンデンサーを備えた3L容の4口RBフラスコに、実施例−1Bの生成物(70g、0.3モル)、無水エタノール(80ml)、シアン化ナトリウム(19.1g、0.39モル)、炭酸アンモニウム(43.3g、0.45モル)および水(720ml)をこの順序で添加した。4つ目の口を蓋で閉鎖した。得られた反応混合物を6時間67〜68℃に加熱した。その後ほぼ透明な茶色溶液を室温に冷却した。冷却により固体が形成し始め、そして非均質な混合物を一夜室温で攪拌した。次に反応混合物を−2℃〜2℃で約1時間、pH2にまで12%塩酸で酸性化した。冷反応混合物を更に30分間pH2で攪拌し、次に濾過した。フラスコを蒸留水(2x250ml)ですすぎ、各すすぎ液を用いて固体ケーキを洗浄した。固体を再度蒸留水(2x250ml)で洗浄し、次に4日間風乾した。乾燥した固体を0.5時間トルエン200mlで磨砕した。スラリーを濾過した。固体を順次、トルエン(50ml)およびトルエン/ヘキサンの1:4比(100ml)ですすぎ、次に一夜室温で風乾して表題化合物を83.1%収率で得た。融点134〜136℃。
1H NMR(DMSOd6, 400MHz) δ 10.62 (s,1H), 7.85 (s, 1H), 6.83 (m, 0.9H), 6.48 (bs,0.1H), 3.29 (s, 2H), 2.99 (m, 2H), 2.71 (s, 2H), 2.95 (m, 2H), 1.32 (s, 9H), 1.24 (s, 3H);13C NMR(DMSOd6, 400MHz)δ 178.1, 157.1, 156.1, 78.4, 63.7, 40.7, 39.4, 33.2, 28.9, 23.8。
C12H21N3O4Sについての分析:
計算値:C,47.51;H,6.98;N,13.85;S,10.57
測定値:C,47.76;H,6.88;N,13.77;S,10.75
【0059】
実施例−1D)RおよびS−[2−[[(4−メチル−2,5−ジオキソ−4−イミダゾリジニル)メチル]チオ]エチル]カルバミン酸、1,1−ジメチルエチルエステル
【化5】
実施例−1Cの反応生成物をメタノールを溶離剤としてChiralpak(R) ADカラム上でそのRおよびSエナンチオマーに分離した。S異性体が最初に溶出する異性体であり、その後、Rエナンチオマーが得られた。両方の異性体を用いてその後の変換を行った。
Sエナンチオマー:
25℃、MeOH中の[α]=+43.0(365nm)。
1HNMR : (400mHz, CD3OD)δ1.49(s, 9H), 2.05 (s, 3H), 2.65 (t, 2H), 2.9(q, 2H, d), 3.20 (m, 2H)。IR:λcm-1=1772,1709。
C12H21N3O4S(分子量:303.38)についての分析:
計算値:C,47.51;H,6.98;N,13.85
測定値:C,47.39;H,6.62;N,13.83
M+H=304
Rエナンチオマー:
25℃、MeOH中の[α]=−46.3(365nm)。
1HNMR : (400mHz, CD3OD) δ 1.48 (s, 9H), 2.05 (s, 3H), 2.65 (t, 2H), 2.85 (q, 2H, d), 3.18 (m, 2H)。IR:λcm-1=1770,1711。
C12H21N3O4S(分子量:303.38)についての分析:
計算値:C,47.51;H,6.98;N,13.85
測定値:C,48.15;H,7.04;N,14.37
M+H=304
【0060】
実施例−1E)S−(2−アミノエチル)−2−メチル−L−システイン
【化6】
【0061】
酸加水分解法:
蒸留コンデンサー付の500ml容の3口丸底フラスコに実施例−1DのR異性体生成物(45.8g、150.9ミリモル)を添加し、そして攪拌しながら室温で48%水性HBr(160ml)で少しずつ処理した。ガス発生が停止した後、マントルヒーターを用いてポット温度が126℃に達するまで混合物を加熱し、その間、揮発性の臭化t−ブチル(沸点72〜74℃)、次いで少量の水性HBr(約15ml)を留去した。蒸留コンデンサーを還流コンデンサーと交換し、そして混合物を30時間還流下に加熱した。溶液を濃縮し、残留物を水(250ml)に溶解し、そして、Dowex(R)50WX4−200イオン交換樹脂(8.5x11cm)にロードし、水(2L)、次いで希水酸化アンモニア水溶液(28〜30%の水酸化アンモニウム30mlを水で1000mlに希釈、3L)で溶離した。所望の生成物を含有する画分を合わせ、濃縮し、2時間75〜80℃で真空下に乾燥し、白色固体として表題化合物S−(2−アミノエチル)−2−メチル−L−システイン22.1g(82%)を得た。プロトン及びC−13NMRスペクトルは、表題化合物と一致した。融点157℃。
1H NMR(400 MHZ, D2O) δ 1.19 (3H, s), 2.53(1H, d, J=13.6Hz), 2.57−2.72(2H, m), 2.92(1H, d, J=13.6Hz), 2.92 (2H, t, J=6.8Hz);13C NMR (100MHz, D2O)
δ24.7, 31.3, 38.9, 40.9, 59.6, 180.7。
C6H14N2O2S+0.1H2Oについての分析:
計算値:C,40.02;H,7.95;N,15.56;S,17.81
測定値:C,39.93;H,7.98;N,15.38;S,17.70
【0062】
塩基加水分解法:
攪拌機を装着したステンレス製のオートクレーブに実施例−1DのR異性体生成物24.2g(0.08モル)を添加した。装置を窒素パージした後、10%苛性ソーダ128g(0.32モル)を添加して溶液とした。オートクレーブを密封し、30時間120℃に加熱した。室温に冷却した後、オートクレーブを排気して表題化合物のナトリウム塩の水溶液142ml(151g)を得た。H1NMR(試料をHClで酸性化し、D2Oで希釈、400MHz):H1NMR (試料をHClで酸性化し、D2Oで希釈, 400MHz):δ 1.47 (s, 3H), 2.75 (m, 2H), 2.90 (d, 1H, J=14.8Hz), 3.06 (t, 2H, J=6.4Hz), 3.14 (d, 1H, J=14.8Hz)。C13 NMR (試料をHClで酸性化し、D2Oで希釈, 100MHz):δ 172.9, 60.8, 39.1, 39.0, 30.4, 22.2。MS(MS/CI−LC) M+1 179。
【0063】
DBU(218μL;1.46ミリモル)およびエチルアセトイミデート塩酸塩(171mg;1.34ミリモル)を室温(〜20℃)で25ml容の1口丸底フラスコ中エタノール(6ml)に溶解した。実施例−1Eの表題化合物(200mg;1.12ミリモル)をこの溶液に1回で添加した。実施例−1Eの表題化合物が消費されるまで(1〜2時間)混合物を攪拌した。混合物をアイスバス中で冷却し、次に6MHCl(830μL)で処理した。1HNMR分析によれば化学収率は95モル%以上であった。溶媒を蒸発させ、実施例−1の表題化合物を逆相またはイオン交換クロマトグラフィーにより精製した。
【0064】
塩基加水分解反応産物の実施例−1Eの表題化合物約20gを含有する溶液210gmを500ml容の3口丸底フラスコ内に投入した。装置にメカニカルスターラー、Dean−Stark装置(20ml容、コック付)、コンデンサーおよび温度コントローラーを装着した。混合物から水(140ml)を留去した。1−ブタノール(150ml)をポットに添加し、残余の水(37ml)を共沸蒸留した。ポット温度が117℃になるまで蒸留により更に1−ブタノール(13ml)を除去した。ブタノールスラリーを室温に冷却し、セライトパッドで濾過した。塩を1−ブタノール(2x20ml)で洗浄した。DBU(21.8μL;146ミリモル)およびエチルアセトイミデート塩酸塩(17.1mg;134ミリモル)を室温で500mL容の3口丸底フラスコ中の1−ブタノール(40ml)に溶解した。装置にメカニカルスターラー、添加漏斗および温度プローブを装着した。実施例−1Eの表題化合物/1−ブタノール溶液を添加漏斗に入れ、ポット温度を25℃未満に維持しながらエチルアセトイミデート/DBUの溶液に添加した。出発物質が消費されるまで(2〜3時間)混合物を攪拌した。濃塩酸(94ml)および水(100ml)の溶液を1Lの3口丸底フラスコにいれ、0℃に冷却した。装置にメカニカルスターラー、添加漏斗および温度プローブを装着した。反応混合物を添加漏斗に入れた。反応混合物をHCl水溶液に添加し、その間、温度を25℃未満に維持した。酢酸エチル(100ml)を溶液に添加し、層を分離させた。水層を再度酢酸エチル(100ml)で洗浄した。1HNMR分析によれば化学収率は95モル%以上であった。実施例−1のこの表題化合物を逆相、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、またはそれらの組み合わせにより精製した。
1HNMR (400MHz, D2O) δ 1.49 (3H, s), 2.08 (3H, s), 2.74 (2H, m), 2.91(1H, d), 3.17(1H,d), 3.35 (2H, t)。
【0065】
実施例2:両性イオンの調製
本発明の1つの実施形態において、過剰な酸はアニオン交換樹脂を用いてS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン2塩酸塩から除去してよい。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインのモノヒドロクロロ、遊離の両性イオンまたは他の部分的酸誘導体がアニオン交換樹脂を用いて調製できることが更に発見された。アニオン交換法はその単純性のため、1塩酸塩および遊離の両性イオンを調製するために好適である。0.5当量未満の酸および低過剰の塩を有するS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインは別の塩の形態の医薬の製造のために特に有用である。
【0066】
図1は化合物滴定曲線の略図である。親のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン分子は3つイオン化可能な基を有し、そして、4つのイオン化状態で存在できる。
【0067】
低pHにおいては、分子は+2荷電の遊離の酸として存在し、カルボン酸、アミンおよびアミジン部分はプロトン化されている。これは2塩酸塩のイオン化状態である。
【0068】
pHが上昇するに従い、カルボン酸基は脱プロトン化される最初の基となり、そしてこれにより+1の分子上の実質電荷がもたらされる。pHの上昇がS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインへの水酸化ナトリウムの添加により生じる場合は、ナトリウムの2塩酸塩が形成される。他の塩基はその相当する塩の形態を形成する。pHの上昇がアニオン交換過程によるクロリドイオンの除去による場合は、生成物は、ナトリウムまたは他の対イオンを有さない1塩酸塩である。
【0069】
pHが更に上昇するに従い、アミン基は脱プロトン化(約pKa=8.4)して分子の中性の両性イオン形態を生じる。正電荷はアミジン上になお残存し、負電荷はカルボキシル基上になお残存する。一方、このような物質が2塩酸塩への水酸化ナトリウムの添加により形成される場合は、得られる生成物は塩化ナトリウム1当量と混合されたモノヒドロクロロナトリウム塩である。アニオン交換樹脂法により製造された物質は遊離の両性イオンである。
【0070】
更にpHが上昇すると、アミジンイオンの脱プロトン化が起こる(pKa〜12.5)。このpH範囲の分子は遊離の塩基および酸の塩である。負荷電された分子はアニオン交換樹脂に結合するため、遊離の塩基は好ましくはアニオン交換法では製造しない。
【0071】
実施例3:遊離の両性イオンの調製
Amberlite IRA400(OH)樹脂60gを4.7%(重量)の水酸化アンモニウム(28%水酸化アンモニウム50ml、脱イオン水250ml)で洗浄し、次いで、脱イオン水で十分洗浄した。最終電導度は6.1μSであった。
【0072】
HCl/水の溶液142ml中S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン2塩酸塩約0.9gを含む試料を60℃でロータリーエバポレーターで濃縮して油状物とした。脱イオン水で60mlに希釈したこの油状物に、攪拌しながら洗浄されたアニオン交換樹脂のアリコート0.5gを添加した。樹脂の各アリコートを添加した5分後、溶液のpHを測定し、試料をシリンジフィルターを介して採取した。合計で9gのアニオン交換樹脂を添加した。最終pHは10.8であった。樹脂を濾去し、濾液をロータリーエバポレーターで60℃で濃縮して油状物とし、固体の形成はなかった。出発物質、最終濾液および全ての中間的な試料をHPLCおよびクロリドに関するイオンクロマトグラフィーにより試験した。
【0073】
図2はpHを調節するためにアニオン交換樹脂を用いた水中のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの擬似滴定曲線を示す。ひし形(実線)はpHであり、四角(破線)はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン(初期値のパーセント、イオンクロマトグラフィーによる)である。図3はpHを調節するためにアニオン交換樹脂を用いた水中のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの擬似滴定曲線を示す。ひし形(実線)はpHであり、三角(破線)はクロリド(イオンクロマトグラフィーによる)である。
【0074】
これらの曲線は、試料が反応の進行中に採取されたため、そして、樹脂の漸増量を添加する前には真の平衡は達成されていなかったため、真の滴定曲線ではない。しかしなお、図2および図3のグラフは予測された傾向を示していた。樹脂をS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン溶液に添加するに従い、pHは上昇し、pH2、9および11近傍の傾きが変化していた。より遅いpH上昇はそれぞれ、カルボン酸、アミンおよびアミジン官能基のpKを表す。pH10以上ではS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの溶液中の濃度は低下する。この時点でS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインは実質の負電荷を獲得しており、樹脂に結合している。クロリドの結果は試料間のある程度の変動を示しているが、全般的にはpH上昇に伴うクロリド含量の低下の傾向を示している。最終クロリド含量は約0.04モル当量である。試料のHPLC試験は分解を示さなかった。
【0075】
実施例4:酸当量を調節するための過剰のHClの除去
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン2塩酸塩約305mg/mlおよび0.23当量の過剰のHClを含有する試料3.3gに、脱イオン水16.7gを添加した。pHは1.04であった。この溶液14mlに、予め洗浄したAmberlite400(OH)樹脂を添加し、pH2.5とした。アニオン交換処理により溶液の色は明黄色〜透明に明色化した。樹脂を濾去し、出発物質および濾液の生成物をクロリド滴定およびHPLCにより分析した。
出発物質および生成物のHPLCによる定性分析では新しいピークは観察されず、不純物の増加はなかった。滴定によるクロリド分析の結果は、クロリドが2.18当量から約1.14当量まで減少したことを示している。ここでは明示しないが、クロリドはHCl添加により所望の目標値に調整できる。
【0076】
実施例5:遊離の両性イオンの調製
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン2塩酸塩約1gを含有する試料3.3gを20gに希釈した。予備洗浄したAmberlite IRA400(OH)樹脂のアリコートを溶液に添加し、試料を定期的にシリンジフィルターを介して採取した。溶液中の樹脂を濾去し、次に濾液に新しい樹脂を添加し続けることにより、pH7.1および8.8で中間樹脂の濾過を実施した。これはクロリドの除去の平衡を促進し、生成物の吸着を最小限とするために実施した。11.2の最終pHが得られた後、樹脂を濾去した。出発物質、中間試料および最終濾液を分析した。
得られた試料をHPLCで分析した。出発物質と数時間以内のpH11での生成物のHPLC結果の間には差はなかった。しかしながら、約10日間室温で保存した後の高pH試料では、ある程度の分解ピークが約2〜3%のピーク面積で観察された。
【0077】
実施例6:遊離の両性イオンの調製
AmberliteIRA400(Cl)樹脂を3MHCl、水、次いで3MNaOHですすいだ。アリコートは樹脂10g当たり100mlとした。この操作を3回反復することにより樹脂を清浄化し、OH型を形成した。水による最終のすすぎは、溶離した水の導電性が2μSとなるまで行った。次に樹脂を用いてS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン2塩酸塩の50mg/ml溶液40mlを滴定した。濃度を両性イオンの当量について表示した。滴定の間にわたりアリコートを採取し、濾過し、HPLCで分析した。アリコートの部分試料を温存して第2のHPLC分析用とし、滴定の1週間後に実施して試料の安定性を評価した。更に別のアリコートを採取してイオン選択性電極を用いたCl分析に付した。pHもまた滴定の間を通してモニタリングした。
【0078】
この実施例で観察された結果は実施例3で観察された結果を反映していた。ここで使用したクロリド特異的な電極はCl含量を測定するものであり、データのノイズははるかに小さかった(図4参照)。データはCl98%の除去においてpH〜10.85が達成されることを示している。より多くのClを除去できるが、それにより樹脂への化合物の結合が多大となる(図5参照)。樹脂結合に起因する化合物のこの損失は滴定の終わり頃に樹脂を濾過し、少量の新しい樹脂で交換することにより最小限にできる。この操作によりクロリドの除去の平衡が促進され、結合による化合物の損失に使用される部位を最小限にできる。
【0079】
図4はIRA−400アニオン交換樹脂(Rohm&Haas Amberlite,Rhom&Haas,Philadelphia,Pennsylvaniaより入手可能)を用いた水中のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの滴定曲線を示す。図5はpH上昇に伴う関連する結合データを示す。
【0080】
HPLC分析はイオン対形成勾配法を用いて実施した。方法はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインを塩基性とした場合に予測される分解生成物の存在を検出することがわかっている。以下の表1からわかるとおり、データは分解は即時的に起っているのではなく、むしろ数日間の期間に渡り起こっていることを示している。
【0081】
【表1】
【0082】
HPLC法
ポンプA:20mMKH2PO4、10mMペンタンスルホン酸、リン酸でpH=3に調製ポンプB:アセトニトリル
勾配:0分には0%B、15分には26%B、15.1分には0%B
カラム:YMC ODS−AQ120A、5μm、2.6x150mm
波長=205nm
【0083】
実施例7:過剰なHClの除去/モノヒドロクロロ[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの製造
これらの実施例において、クロリドの除去の工程はバッチ系において樹脂を攪拌することにより行ったが、これはプラント系においてもS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン2塩酸塩の溶液をアニオン交換樹脂カラムまたはアニオン交換膜に付して再循環させることにより容易に行える。pHが偶発的に所望範囲を超えて上昇した場合は、適切な量のHClを添加することにより容易に戻すことができる。この目的のための大規模なアニオン交換工程を設計することは等業者の知るとおりである。
【0084】
実施例8:S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートI型の結晶化
「OH」型のAmberlite IRA−400樹脂で滴定することにより水溶液から両性イオンを得た。溶液のpHが約pH11にまで上昇するに従い、アニオン交換樹脂は塩酸塩を排除した。焼結ガラス漏斗を通した濾過により両性イオンの溶液から樹脂が除去された。この溶液を液体窒素で凍結し、凍結乾燥してガラス状の不定形の生成物を得た。乾燥ガラス状物の元素分析によれば、典型的に0.3%未満のクロリドが示されていた。
【0085】
マレエート塩の初期の結晶化は、90マイクロリットル(μl)の最終容量となるようにHPLC等級の水で乾燥両性イオン30gを溶解することにより行った。マレイン酸の溶液は、マレイン酸1.055グラムを用いて10ml容のメスフラスコ中でN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)で定容まで希釈することにより作成した。DMF中のマレイン酸300μlを両性イオンの水溶液に攪拌しながら添加した。これは両性イオンの各当量に対しマレイン酸2当量であった。モレキュラーシーブ上で乾燥したアセトニトリルを溶液が濁るまで攪拌しながら滴加し、次に更に2〜3滴のアセトニトリルを添加した。溶液を週末を通じて攪拌した。得られたスラリーを偏光光学顕微鏡で検査した。正の伸長を示す複屈折の針状の結晶が観察された。固体を5.0μmのMilliporeLSフィルター上に収集し、40℃で真空下に乾燥し、結晶性の生成物28mgを得た。わずか1当量のマレイン酸を用いた場合の相当する溶液はゲル状であった。
【0086】
実施例9:S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートI型の別の結晶化
その後の小規模の実験によれば、許容できる大規模化の条件が示された。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン両性イオン1.215グラムを水約3mlに溶解した。マレイン酸1.283グラムおよびDMF12mlを攪拌しながら添加した。透明な溶液が急速に得られた。アセトニトリル100Mlを添加し、この時点で白濁している溶液に結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの結晶種を添加した。1時間後、更にアセトニトリル13mlを添加した。スラリーを更に2時間攪拌し、次に結晶を数個のMillipore5μmLSフィルター上に収集した。極めて微小な粒径の濾過のため、比較的緩徐であった。固体をMilliporeフィルター上でアセトニトリル少量を用いて洗浄した。これらの固体をビーカーに移し、40℃で一夜真空乾燥した。
【0087】
合計で5つの別の実施例を結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートに対して提示する。実施例は全て3元溶媒系(DMF/水/アセトニトリル)において実施した。1モル過剰のマレイン酸を使用し、そしてDMF対水の比は約3:1の一定に維持した。結晶種添加の効率もまた一部の実施例において評価した。
【0088】
実施例10:S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートI型の別の結晶化
凍結乾燥したS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン1.0g、溶解したマレイン酸1.05gを含むDMF10mlおよび水3.0mlを125ml容のジャケット付反応容器に添加し、125rpmで攪拌して透明な溶液とした。アセトニトリル100mlをすぐに透明な溶液に添加し、その際、アリコートの添加により起こる白濁の大部分が次のアリコートの添加の前に治まるようにした。白濁した溶液の光学顕微鏡観察によれば、白濁は液相の分離(乳化)によるものであり、結晶核形成ではなかった。添加終了時にも溶液は白濁していた。溶液を一夜攪拌した。一夜保持する間に溶液は沈殿したが、スラリーの光学顕微鏡観察によれば固体は不定形であった。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶種(30mg)をスラリーに添加し、固体から結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートへの相変換を促進し、系を更に24時間攪拌した。次にスラリーを約−10℃に冷却し、更に24時間攪拌することにより濾液中の生成物の損失を低減した。合計72時間の後、スラリーを微小フリット焼結ガラス漏斗上で濾過し、ケーキをアセトニトリル4mlで洗浄した。濾液はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン濃度約0.5重量%を有していた。固体を1時間風乾し、次に24時間50℃で真空オーブン中に入れた。固体は粉末X線回折およびDSCの両方により結晶性のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートであったが、前者は最終固体中かなりの量の不定形の含量を示していた。
【0089】
実施例11:S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートI型の別の結晶化
実施例11は同じ溶媒組成および両性イオンのロード量で実施したが、アセトニトリルおよび結晶種の添加方法および保持時間は不定形の含量および処理時間を低減するために適正化した。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン500mg、マレイン酸502mg、DMF5mlおよび水1.5mlを125ml容のジャケット付反応容器に添加し、攪拌して透明な溶液とした。アセトニトリル31ml(合計添加量の63%)を実施例10で使用した方法で間歇的に溶液に添加した。ほぼ全ての白濁が最初のアセトニトリル添加の終了後の攪拌1時間以内に治まった。次に溶液に15mgのS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶を結晶種として添加し、そして、2時間攪拌した後、残余の18ml(37%)のアセトニトリルを添加した。スラリーを24時間攪拌し、次に約−10℃に冷却し、更に24時間攪拌し、その後150ml容の微小フリット焼結ガラス漏斗上に排出した。ケーキをアセトニトリル4mlで洗浄し、30分間風乾し、次に50℃で24時間真空オーブン中に入れた。濾液中のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの濃度は0.55重量%であり、固体はPXRDによれば結晶性のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートであり、ベースラインのハローは一部不定形のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの存在を示していた。しかしながらハローは実施例10の生成物の場合より顕著ではなかった。
【0090】
実施例12:S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートI型の別の結晶化
実施例12の目的はアセトニトリルの量を低減することにより工程のスループットを向上できる可能性について調べることである。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン0.9グラム、マレイン酸0.93グラム、DMF9mlおよび水2.7mlを125ml容量のジャケット付反応容器に添加し、透明な溶液が生じるまで攪拌した。アセトニトリル56mlを他の実施例と同様の方法で溶液に間歇的に添加した。アセトニトリルの添加の終了後に白濁全体が治まった時点でS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶種23mgを添加した。系を175rpmで24時間攪拌し、次にスラリーを150mlの微小フリット焼結ガラス漏斗上に排出した。ケーキをアセトニトリル5mlで洗浄し、40分間風乾し、次に24時間50℃の真空オーブン中に入れた。生成物約600mgを乾燥後に回収した。濾液中のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの濃度は約1.0重量%であった。生成物のPXRD分析によれば不定形物質の含量は極めて低値であった。溶液のNMRによれば生成物は0.1モル当量もの捕獲DMFを有していた。濾過の前およびオーブン乾燥後の光学顕微鏡によるスラリー中の固体の比較によれば、顕著な形態学的相違があった。
【0091】
実施例13:S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートI型の別の結晶化
実施例13は核形成を誘導するための補助として結晶種添加を排除できるかどうか調べるために実施した。この実験の操作法の残りの部分は実施例12と同様である。生成物における濾液の濃度および固体状態の属性は結晶種を使用しなくても同等の性能が得られることを示していた。
【0092】
実施例14:S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートI型の別の結晶化
実施例14は、実験3および4において使用した操作法の収率を、固体の大部分がすでに沈殿した後で冷却し、アセトニトリルを追加添加することにより改善できる可能性を調べるために実施した。操作では、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン1.0g、マレイン酸1.03g、DMF10mlおよび水3.0mlを125ml容のジャケット付反応容器に添加し、攪拌して透明な溶液を形成した。アセトニトリル56mlを上記実施例と同様にして溶液に間歇的に添加した。アセトニトリル添加終了後、白濁が実質的に全て治まった後にS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶種28mgを添加した。結晶種添加後最初の2時間以内に顕著な沈殿が起こり、スラリーはジャケット上で約−10℃に冷却した。この温度で24時間スラリーを攪拌した。
【0093】
冷却中および保持期間の上澄みの分析によれば、濃度低下は僅かであり、従って、アセトニトリル25mlを添加することにより、逆溶媒(anti−solvent)添加が収率を改善するかどうか調べた。更にアセトニトリルを添加した後、スラリーを25℃に戻し、更に24時間攪拌した後に150mlの微小フリット焼結ガラス漏斗上で排出した。ケーキはアセトニトリル5mlで洗浄した。
【0094】
以前に観察されたいずれのケーキとも異なり、本実施例のケーキは粘着性がありフィルター上で2時間風乾した後でさえも極めて湿潤していた。これらの固体を4時間加熱することなく真空オーブン中に入れ、余分な溶媒を除去した。その後24時間真空オーブン中50℃で乾燥した。濾液の濃縮によっても逆溶媒を更に添加することの有意な利点は観察されなかった。乾燥直後のこの実施例の固体のPXRD分析によれば、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶と混合された不定形の固体が一部存在していた。
【0095】
実施例15:II型の結晶の操作法
水、ジメチルホルムアミド(DMF)およびアセトニトリル(ACN)を含む3元溶媒系はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインのマレエート塩の結晶化のためのもっとも効果的な溶媒系であることがわかった。
元の3元溶媒系の新しい変形例を発見し、II型を発見する工程において開発した。この操作法は、結晶核形成を誘導するための結晶種添加の必要性を排除することにより操作性を改善できるように更に検討した。II型を作成する経路の説明は以下の通りである。
【0096】
第1の操作法において、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン200ミリグラムおよびマレイン酸206ミリグラムをDMF0.86mlおよび水0.3mlの混合物に溶解した。磁気ビーズを用いて攪拌することにより透明な溶液が得られた後で、ACN5mlを攪拌しながら間歇的に添加した。ACN〜0.5mlの各アリコートの添加の後、白濁が治まるまで十分な時間を置いた。ACN添加終了後に透明な溶液が得られた。I型結晶種10ミリグラムを添加して溶液の核形成を誘導した。スラリーを24時間室温で攪拌した。これを30mlの微小フリット焼結ガラス漏斗で濾過した。ケーキをACN2mlで洗浄し、次に10分間風乾した。風乾した固体の一部を28インチHg真空下60℃で真空オーブン中乾燥した。風乾した固体はオーブン乾燥中に脱水したため、30分未満の時間内にオーブンから取り出してII型に水和した。I型(結晶化誘導のため使用)は単離生成物中に検出されなかったという事実は、これらの結晶化条件下ではII型はI型よりも安定であることを示している。この操作法の収率は重量で約65%と推定された。一次核形成の誘導時間はグラム未満のスケールでは約30分であった。
【0097】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートI型の特性化
偏光顕微鏡観察によれば正の伸長を示す複屈折の針状の結晶が、濾過による採取の前のスラリーにおいて、そして、40℃で真空乾燥した後の単離生成物において観察された。
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩I型は90%RHおよび25℃において水分吸収量は1重量%未満であり、123℃で融解する。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩I型は230mgml-1超の水溶性を有する。
【0098】
表2はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩I型の元素分析ならびに1.5%の水分含量の理論的組成を示す。
【表2】
【0099】
プロトンNMRはS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン両性イオンおよびマレイン酸の1:1の組み合わせの構造および化学量論的特徴と合致していた。プロトンNMRもまた実施例8における0.2当量(3〜3.5%)のDMFを示し、これは予測元素分析値を大きく変化させず、±0.4であった。
【0100】
図6はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの試料(実施例9)の粉末X線パターンである。図7はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの試料(実施例8)の粉末X線パターンである。実施例8および実施例9は共に結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートを特徴付ける際に有用な特徴的ピークを示している。
【0101】
図8はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの試料(10.046mg、実施例9)の示差走査熱量試験のグラフである。図9はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの試料(6.2130mg、実施例8)の示差走査熱量試験のグラフである。
【0102】
図10はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの試料(4.7680mg、実施例9)の熱重量分析プロットである。図11はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの試料(実施例8)の熱重量分析プロットである。
【0103】
図12はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの水分吸収試験のプロットである。
【0104】
図13は結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートのラマンスペクトルを示す。慨すれば、ラマンスペクトルは分子または複合体系の振動の特徴である。その起源は分子と光線を含む光の粒子である光子との間の非弾性的な衝突にある。分子と光子の衝突はエネルギーの交換をもたらし、その結果エネルギーが変化し、これにより光子の波長が変化する。即ち、ラマンスペクトルは入射光により照射されるときに対象分子から発せられる極めて狭いスペクトルの線のセットである。各スペクトル線の幅は入射光のスペクトルの幅により大きく影響され、従って厳密に1色の光源、例えばレーザーを使用する。各ラマン線の波長は入射光からの波数シフトにより表示され、これはラマン線と入射光の波長の逆数の間の差である。吸収波長ではなく波数シフトはラマン線では分子内の特定の原子基に特異的である。ラマンスペクトルは分子の振動状態を測定するものであり、これはその分子構造により決定される。
【0105】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型の特性化
数種の大型結晶を、3週間に渡って70/30v/vのACN/水の溶媒混合物中5℃におけるI型およびII型の混合物をスラリー化することにより実施した相安定性試験から単離した。単位格子の化学量論的特徴は、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインとマレイン酸の各分子に対して水21/2分子であることがわかっている。結晶構造は単結晶X線回折により解明されている。図14はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型の単位格子を示す。空間群はP21(単斜晶系)であり、単位格子パラメーターはa=8.7002、b=19.0009、c=8.562Å、α=90、β=34.439、γ=90°であった。構造はチャンネル水和物のものであり、水分子は短c軸に沿って伸びるチャンネル中に位置している。S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートについて単結晶構造から計算されたX線粉末パターンはII型について観察されたパターンに匹敵するものであった(図15および図16参照)。
【0106】
固体のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型は偏光顕微鏡によれば高度な結晶性を示し、結晶のサイズは20マイクロメートルのオーダーであった。粒子は棒状であった。物理的方法により実施したS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型の元素分析によれば、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートのモル当たり水2.5モルの水和物に関する理論と極めて一致していた(表II参照)。カールフィッシャーの水分測定では水分10.97%であったのに対し、2.5水和物の理論値は11.84%であった。
【0107】
S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型結晶塩の溶解度を5℃および25℃において70/30および90/10v/vのアセトニトリル/エタノール3A混合物中で測定した。過剰な固体を19日間適切な温度(振とう機バス中)においてこれらの溶媒中で平衡化させた。上澄みの試料を採取し、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの濃度についてHPLCで分析した。表4は結果をまとめたものである。溶媒系に存在するアセトニトリルの量が増大するに従って溶解度は顕著に低下したが、温度による作用は20°の範囲ではほぼ無視できるものであった。
【0108】
【表3】
【0109】
過剰な(1モル当量)マレイン酸の存在下および非存在下の70/30v/vアセトニトリル/水中、および、1モル当量過剰マレイン酸存在下の90/10v/vアセトニトリル/水中における5℃でのS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型結晶塩の溶解度を調べるために試験を試みた。3本全ての実験バイアルは、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート結晶塩約90mgおよびマレイン酸30mgを二元溶媒約300mgに添加することにより調製した。次にこれらのバイアルを5℃の振とう機バスに入れた。4日間の平衡化の後にバイアルを観察したところ、系は、単一の液相中の固体の懸濁液から懸濁固体を含まない2相の液体に変化していた。3バイアルの各々の2層を、水分含量(カールフィッシャー分析による)および化合物濃度に関して分析した。表4に結果をまとめる。アセトニトリルリッチ(上部)の層における化合物の濃度のみがKF分析に基づいて計算された組成を有する溶媒系中のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート塩の真の溶解度を表していた。上層の測定濃度を導く厳密な条件は過剰のマレイン酸の分配が2層の間で確立された場合にのみ確立されるということが重要である。下層(水リッチ)は過剰な固体が残存していなかったことから、飽和未満であった可能性が高い。この可能性は、濃度が全ての実験にわたり極めて同様であることがわかった下層に関する溶解度のデータにより裏付けられる。過剰のマレイン酸の存在下の70/30アセトニトリル/水のバイアルは19日後においても2層のままであったのに対し、過剰のマレイン酸の非存在下の70/30アセトニトリル/水は5日後には極めて大型の結晶がなお2層のままと思われる溶液中に浮遊していた。この実験を終了し、固体を単離して特性化したところ、II型であることがわかった。これらの結晶を用いて結晶学的データを得た。5℃で19日間平衡化した後、過剰なマレイン酸存在下の90/10アセトニトリル/水のバイアルは単一の液相の固体のスラリーに戻っていた。固体を単離し、II型であることがわかり、そして溶液相中の濃度を測定したところ、0.613重量%のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインであった。過剰なマレイン酸存在下の70/30バイアルが2相のままであり、そしてより重要な点として再結晶した固体がなかったという事実は、過剰なマレイン酸(過剰なマレイン酸非存在下の70/30バイアルと比較)および高値の水分含量(過剰なマレイン酸存在下の90/10バイアルと比較)に起因する高値の溶解度が原因であると思われる。同じく興味深い点は、2相溶媒系からの結晶化が起こった2つのバイアルは単離の時点ではその内部にII型結晶を有していた点である。この観察結果は水分活性水和状態の相のダイアグラムから期待されるものと合致しており、過剰のマレイン酸は固体形態の安定性に影響しないと推測される。
【0110】
【表4】
【0111】
溶解度試験の最終セットはジメチルホルムアミド(DMF)/水/アセトニトリル(ACN)の3元溶媒系において実施した。この系を試験した理由は、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート塩を結晶化することの早期の成功例の大部分がこの溶媒混合物中であったためである。実験は全て1モル当量過剰量のマレイン酸を使用し、選択した溶媒組成は15/15/70、5/5/90、20/10/70、6.6/3.4/90、22.5/7.5/70、7.5/2.5/90v/vDMF/水/ACNとした。実験は25℃においてこれらの組成の最後の4つについてのみ実施したが、データは5℃における組成に関して収集した。上澄みは4日後および19日後に分析した。平衡化した固体もまた、大部分の実験では19日後に単離して特性化した(表5参照)。固体を単離した溶媒形における70%ACNを用いた実験の全ては19日の間にI型からII型への完全な変換がもたらされたのに対し、溶媒系中で90%ACNを用いた数実験は平衡化期間の後に固体状態として元のI型を保持していた。後者はDMFの添加によりこれらの組成物の水分活性が更に低下したことに起因するものと考えられ、系は、I型がより安定である状態に向かう傾向を有していた。しかしながら7.5/2.5/90DMF/水/ACN系の固体状態のデータはこの傾向を欠いており、入手できる情報が限定されているため説明が困難である。表5は4日および19日の平衡化の後の、5℃及び25℃における全ての実験から得たS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの重量%における濃度データを示している。もっとも顕著な傾向は、系のACN含量が90%から70%に低下した場合に溶解度が大きく上昇する点である。全ての実験にわたり、溶解度についてはある程度の温度依存性もあった。固定されたACN含量でデータを分析した場合、溶解度は初期は低下し、その後は、系のDMF含量が水の消費により上昇するに従って、上昇すると考えられる。この傾向は70および90%ACNの両方について維持されていると考えられる。最も安定な形態への完全な相変換はこれらの実験の全てにおいて起こったかもしれないが、表5で報告した溶解度の値は平衡にはなっていないと考えられ、これは、超飽和から常時緩徐に達成される(IIを形成する変換が起こった全ての実験の場合と同様)。総括すれば、本溶媒系は複雑であるが、特にII型のための結晶化工程の設計につながる溶媒組成の範囲を与えている。
【0112】
【表5】
【0113】
【表6】
【0114】
図17に示す通り、示差走査熱量分析(DSC)は単一の共融点(水)を77.69℃に示した。熱重量分析(TGA)によれば、重量損失は45と85℃との間では8.8%であった。TG−IRは重量の損失は全て水分の損失に起因することを示していた(図18参照)。8.8%の損失はKFで測定した水の値より低値であるが、これはこの性質の水和物については合理的に近似している。
【0115】
プロトンNMR分析をS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(II型)に対して実施することにより、この形態が結晶化過程においてDMFを捕獲したかどうかを調べた。データは結晶中に検出可能なDMFが存在しないことを示している。
【0116】
図19に示す通り、DVS水分バランスによれば25℃におけるS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(II型)の水分吸収は、水和物は総体湿度(RH)を0%に低下させることにより比較的容易に脱水されることを示していた。しかしながら、固体は10%より高いRHに曝露されると、等しく容易に再水和する。実験は10〜70%RHで〜2.5%(水0.5モル)の水分増加を示していた。70〜90%RHでは、増加量は〜4.5%(水1モル)であった。吸着と脱着サイクルを反復することで結晶性のヒステリシスまたは損失は全く示されなかった。この実験の間のII型の挙動は高度に結晶性のチャンネル水和物/溶媒和物に典型的なものであった。
【0117】
医薬組成物
本発明に更に包含されるものは、1つまたはそれ以上の、非毒性の薬学的に許容される担体および/または希釈剤および/またはアジュバント(総称して本明細書においては「担体」物質と称する)、および、所望により、他の活性成分と共に結晶性のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型を含む医薬組成物のクラスである。本発明のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートの結晶性II型は何れかの適当な経路で、好ましくはその経路に適合した医薬組成物の形態で、そして、意図する治療のために有効な用量で投与してよい。活性なS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型および組成物は、例えば経口、血管内、腹腔内、皮下、筋肉内または局所に投与してよい。
【0118】
経口投与の場合は、医薬組成物は例えば錠剤、カプセル、懸濁液または液体の形態であってよい。医薬組成物は好ましくは活性成分の特定の量を含有する用量単位の形態で製造する。このような用量単位の例は錠剤またはカプセルである。活性成分はまた、例えば食塩水、デキストロースまたは水を適当な担体として使用してよい組成物として注射により投与してよい。
【0119】
投与される治療的に活性な化合物の量および本発明の化合物および/または組成物により疾患状態を治療するための用法は多くの要因、例えば対象の年齢、体重、性別および病状、疾患の重症度、投与の経路および頻度、および、使用する特定の化合物により異なり、従って、大きく変動する。医薬組成物は活性成分を約0.1〜2000mgの範囲、好ましくは約0.5〜500mgの範囲、最も好ましくは約1〜100mg含有してよい。約0.01〜100mg/kg体重、好ましくは約0.5〜約20mg/kg体重、そして最も好ましくは約0.1〜10mg/kg体重の一日当たり用量が適切である。一日当たり用量は一日当たり1〜4回で投与してよい。
【0120】
結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型はまた経皮装置により投与できる。好ましくは経皮投与はリザーバおよび多孔性膜の型または固体マトリックス種の何れかであるパッチを用いて行う。いずれの場合においても、活性剤はレシピエントの皮膚または粘膜に接触している活性剤透過性の接着剤内に膜を経由してリザーバーまたはマイクロカプセルから継続的に送達される。活性剤が皮膚を経由して吸収される場合は、活性剤の制御され予め決定された流量がレシピエントに投与される。マイクロカプセルの場合はカプセル化剤はまた膜として機能してもよい。
【0121】
本発明のエマルジョンの油相は既知の態様において既知の成分から構築してよい。相は乳化剤のみを含んでもよいが、脂肪または油と、または、脂肪と油の両方と少なくとも1つの乳化剤との混合物を含んでもよい。好ましくは親水性乳化剤は、安定化剤として機能する親油性の乳化剤と共に含有される。油および脂肪の両方を含有することも好ましい。全体として、乳化剤は安定化剤の存在下または非存在下でいわゆる乳化ワックスと称されるものを形成し、そしてワックスは油および脂肪と一緒になっていわゆる乳化軟膏基剤と称されるものを形成し、これがクリーム製剤の油性の分散相を形成する。本発明の製剤において使用するのに適する乳化剤および乳化安定剤はTween60、Span80、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、グリセリルモノステアレートおよびラウリル硫酸ナトリウム等である。
【0122】
医薬エマルジョン製剤中で使用され得る大部分の油中の活性化合物の溶解度は極めて低値であるため、製剤用の適当な油または脂肪の選択は所望の審美的特性を達成することに基づく。即ち、クリームは好ましくは、チューブや他の容器からの漏出を回避するために、適当なコンシステンシーを有する非グリース性(non−greasy)、非染色性および洗浄可能な製品である。直鎖または分枝鎖の、1または2塩基性のアルキルエステル、例えば、ジイソアジペート、イソセチルステアレート、ココナツ脂肪酸のプロピレングリコールジエステル、イソプロピルミリステート、デシルオレエート、イソプロピルパルミテート、ブチルステアレート、2−エチルヘキシルパルミテートまたは分枝鎖エステルのブレンド物を使用してよい。これらは所望の性質に応じて単独または組み合わせて使用してよい。或は、高融点の脂質、例えば白色軟質パラフィンおよび/または流動パラフィンまたは他の鉱物油を使用することもできる。
【0123】
眼への局所投与に適する製剤は、活性成分が適当な担体、特に活性成分のための水性溶媒に溶解または懸濁されている点眼剤も包含する。活性成分は好ましくはそのような製剤中0.5から20%、好都合には0.5〜10%、特に約1.5重量%の濃度で存在する。
【0124】
治療目的のためには、S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートは通常は望ましい投与経路に適切な、1つまたはそれ以上のアジュバントと組み合わせる。経口投与する場合は、化合物は乳糖、スクロース、澱粉、アルカン酸のセルロースエステル、セルロースアルキルエステル、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、リン酸および硫酸のナトリウムおよびカルシウム塩、ゼラチン、アカシアガム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、および/または、ポリビニルアルコールと混合し、次に好都合な投与のために錠剤化またはカプセル化してよい。このようなカプセルまたは錠剤はヒドロキシプロピルメチルセルロース中の活性化合物の分散物として提供され得る、放出制御型製剤を含んでよい。非経口投与のための製剤は水性または非水性の等張性の滅菌された注射用の溶液または懸濁液の形態であってよい。これらの溶液および懸濁液は、経口投与のための製剤における使用のために例示される、1つまたはそれ以上の担体または希釈剤を有する滅菌された粉末または顆粒から調製してよい。結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートは水、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、エタノール、コーン油、綿実油、ピーナツ油、ゴマ油、ベンジルアルコール、塩化ナトリウム、および/または、種々の緩衝液に溶解してよい。他のアジュバントおよび投与様式は薬学分野でよく知られるとおりである。
【0125】
以上説明した本発明は多くの態様に変更できることは明らかである。このような変更は本発明の精神および範囲から外れないものであり、当業者に自明な全てのこのような変型および等価物は以下の特許請求の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】全てのイオン化状態を示しているS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの滴定曲線の図である。
【図2】IRA−400(OH)アニオン交換樹脂を用いた場合の水中のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの滴定曲線のグラフ表示である。ひし形はpH、四角(破線)はS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システイン(%初期値、イオンクロマトグラフィーによる)を示す。
【図3】IRA−400(OH)アニオン交換樹脂を用いた場合の水中のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの滴定曲線のグラフ表示である。ひし形はpH、三角(破線)はクロリド(イオンクロマトグラフィーによる)を示す。
【図4】IRA−400アニオン交換樹脂を用いた場合の水中のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの滴定曲線を示す。
【図5】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインの両性イオンのpHを上昇させた場合の関連する結合データを示す。
【図6】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(I型)の試料(実施例12)の粉末X線パターンである。
【図7】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(I型)の試料(実施例11)の粉末X線パターンである。
【図8】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(I型)の試料(10.046mg、実施例12)の示差走査熱量測定試験のグラフである。
【図9】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(I型)の試料(6.2130mg、実施例11)の示差走査熱量測定試験のグラフである。
【図10】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(I型)の試料(4.7680mg、実施例12)の熱重量分析プロットである。
【図11】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(I型)の試料(実施例11)の熱重量分析プロットである。
【図12】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(I型)の水分吸着試験のプロットである。
【図13】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(I型)の試料のラマンスペクトルである。
【図14】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(II型)の単位格子の表示である。
【図15】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(II型)の試料の粉末X線パターンである。
【図16】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(II型)の試料の模擬の、および、観察された粉末X線パターンの比較である。
【図17】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(II型)の試料の示差走査熱量分析試験のグラフである。
【図18】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(II型)の試料(3.7520mg)の熱重量分析プロットである。
【図19】S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート(II型)の水分吸着試験のプロットである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約77.69℃の融点;実質的に図15に示すX線粉末パターン;実質的に図16に示すX線粉末パターン;図14に示す単位格子;および実質的に表7に示す元素分析値の少なくとも1つを特徴とする、結晶形態のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート。
【請求項2】
薬学的に許容される担体と共に請求項1記載の結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型を含む医薬組成物。
【請求項3】
請求項1の結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型の有効量を病理学的に高い生成量が部分を構成する状態の治療が必要な対象に投与することを含む、該対象における該状態の治療方法。
【請求項4】
請求項1の結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型の有効量を対象に投与することを含む、対象における酸化窒素生産を低減する方法。
【請求項1】
約77.69℃の融点;実質的に図15に示すX線粉末パターン;実質的に図16に示すX線粉末パターン;図14に示す単位格子;および実質的に表7に示す元素分析値の少なくとも1つを特徴とする、結晶形態のS−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエート。
【請求項2】
薬学的に許容される担体と共に請求項1記載の結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型を含む医薬組成物。
【請求項3】
請求項1の結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型の有効量を病理学的に高い生成量が部分を構成する状態の治療が必要な対象に投与することを含む、該対象における該状態の治療方法。
【請求項4】
請求項1の結晶性S−[2−[(1−イミノエチル)アミノ]エチル]−2−メチル−L−システインマレエートII型の有効量を対象に投与することを含む、対象における酸化窒素生産を低減する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公表番号】特表2006−519839(P2006−519839A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506328(P2006−506328)
【出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000697
【国際公開番号】WO2004/080954
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(502427323)ファルマシア・コーポレーション (67)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際出願番号】PCT/IB2004/000697
【国際公開番号】WO2004/080954
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(502427323)ファルマシア・コーポレーション (67)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]