説明

SMC成形方法

モールディングコンパウンドを開示する。このモールディングコンパウンドは、好ましくはモールディングコンパウンドの成形の間に、それ自体、第二の化合物又は他の大環状オリゴエステルと反応する大環状オリゴエステルを含む。代表的第二の化合物は環式エステル、ジヒドロキシル官能化ポリマーなどを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートモールディングコンパウンドのようなモールディングコンパウンドに関する。
【背景技術】
【0002】
長年に亘って、工業界は、改良されたモールディングコンパウンド、特にこのようなモールディングコンパウンドを適用することができる多くの用途のためにシートモールディングコンパウンドを設計することを求めてきた。典型的に、シートモールディングコンパウンドには、ポリエステル樹脂、充填材、強化材料及び他の配合物のような成分が含有されている。シートモールディングコンパウンドは、1種又はそれ以上の他の試薬、例えば反応性モノマー、架橋剤、共重合剤又は開始剤を含んでいてもよい。更に、ある種のシートモールディングコンパウンドは、1種又はそれ以上の添加剤、例えばレオロジー改良剤、離型剤、寸法安定剤、安定剤、酸化防止剤又は低収縮剤を含んでいてもよい。
【0003】
モールディングコンパウンドに於ける改良が達成されてきたが、多くの基本的コンパウンドは、未だプロセス上の制限を示している。例えば、従来のシートモールディングコンパウンドは、コンパウンドを部品又はコンポーネントに形成する前に、コンパウンドを熟成し、増粘するための熟成プロセスを受ける必要がある。この熟成プロセスは、通常、3日〜5日の期間行われ、それによって生産を遅らせる。熟成後でも、多くの従来のシートモールディングコンパウンドは、典型的に、比較的短い貯蔵寿命を有し、これによって、モールディングコンパウンドを迅速に部品又はコンポーネントに成形しなくてはならないことが必要になる。更に、貯蔵寿命が相対的に短いことは、シートモールディングコンパウンドに輸送上の制約を課す。更に、従来のシートモールディングコンパウンドは、しばしば、1枚又はそれ以上のバリヤーフィルムと共に供給され、このバリヤーフィルムは、コンパウンドの成形の前に取り除かなくてはならず、そしてこのようなフィルムは典型的に廃棄しなくてはならず、それによって労働力及び廃棄物処理の問題を増大させる。
【0004】
モールディングコンパウンドの種々の面を改良するための継続する努力が, 特許文献1〜7(これらの全てを、引用により全ての目的のために、本明細書に含める)に例示されている。これらの努力にもかかわらず、i)より短いプロセス時間、ii)より少ないプロセス工程、iii)必要なプロセス装置及び廃棄物の減少、iv)延長された貯蔵寿命並びにv)他の化学的成分との相溶性から選択された、少なくとも1個、更に好ましくは少なくとも2個又はそれ以上の(従来のコンパウンドと比較したときの)有利な構成の組合せを達成する、モールディングコンパウンド、更に詳しくはシートモールディングコンパウンド(SMC)についてのニーズが存在している。
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,552,478号明細書
【特許文献2】米国特許第5,756,554号明細書
【特許文献3】米国特許第5,756,644号明細書
【特許文献4】米国特許第5,795,423号明細書
【特許文献5】米国特許第5,932,666号明細書
【特許文献6】米国特許第6,369,157B1号明細書
【特許文献7】米国特許第6,498,651号明細書
【発明の開示】
【0006】
本発明は、上記ニーズをかなえ、モールディングコンパウンドで使用される従来のポリエステルと組み合わせて若しくは更に好ましくは従来のポリエステルの置換体として使用するための改良された樹脂又は特に大環状オリゴエステル(例えば、限定するものではないが、環式ブチレンテレフタレート)を含むここで使用するための好ましい樹脂の発見に基づくものである。これらは、改良されたモールディングコンパウンドを形成するために、特に(必須ではないが)これらを、1種又はそれ以上の第二の化合物、例えば環式エステル、ジヒドロキシル官能化ポリマー又はこれらの組合せと組合せるとき、特に有効である。従って、本発明は、改良されたモールディングコンパウンド、それから製造された物品及びこれらの製造方法又は使用方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、モールディングコンパウンドの形成を前提とする。このモールディングコンパウンドは、シートモールディングコンパウンドとして特に有用であることを見出した。本発明に於いて、しばしばシートモールディングコンパウンドとして参照するが、本発明は、シートモールディングコンパウンドのみに限定されず、他のモールディングコンパウンド、例えば予備成形したモールディングコンパウンド、バルクモールディングコンパウンドなども意図するものである。
【0008】
モールディングコンパウンドは、好ましくは、下記のもの、即ち、
(a)少なくとも1種の大環状オリゴエステル、
(b)少なくとも1種のモールディングコンパウンド触媒、
(c)少なくとも1種の、強化材料、充填材又はこれらの組合せから選択された成分
の1種又はそれ以上を含む。
【0009】
追加の好ましい態様に於いて、モールディングコンパウンドは、更に、材料の性能を特別の応用に適合させるための、1種又はそれ以上の追加の成分を含む。
【0010】
シートモールディングコンパウンドは、樹脂又はその他のものとして供給することができる種々の材料を含むことができるが、このコンパウンドは、好ましくは、1種又はそれ以上の大環状オリゴエステル及び1種又はそれ以上の第二の化合物、例えば環式エステル又はジヒドロキシル官能化ポリマーを含む。このような環式エステル、大環状エステル及びジヒドロキシル官能化ポリマーの例は、米国特許第6,420,048B1号明細書(発明の名称「大環状オリゴエステル及び環式エステルからの高分子量コポリエステル」)及び米国特許第6,436,549B1号明細書(発明の名称「大環状オリゴエステル及びジヒドロキシル官能化ポリマーからのブロックコポリマー」)(これらの両方を、引用することにより、全ての目的のために、本明細書に明示的に含める)中で検討されている。更に、このようなコンパウンドの形成及び他のプロセスは、このようなコンパウンドの追加の形態と共に、米国特許第6,420,047B2号明細書(発明の名称「大環状ポリエステルオリゴマー及びその重合方法」)及び米国特許第6,436,548B1号明細書(発明の名称「大環状ポリエステルオリゴマーに於ける種変性及びそれによって製造された組成物」)(これらの全てを、引用により、全ての目的のために、本明細書に明示的に含める)中で検討されている。好ましいシートモールディングコンパウンドに於いて、大環状オリゴエステル又は第二の化合物は、シートモールディングコンパウンド中に、シートモールディングコンパウンドの50重量%以上のように高い、そしてシートモールディングコンパウンドの0.1重量%以下のように低い量で存在してよい。好ましくは、大環状オリゴエステル又は第二の化合物は、シートモールディングコンパウンド中に、このコンパウンドの約1重量%〜約30重量%の量で、更に好ましくは、このコンパウンドの約5重量%〜約20重量%の量で存在する。
【0011】
オリゴエステルを含むホモポリマーの生成も、本発明に於いて意図するが、好ましい態様に於いて、シートモールディングコンパウンドの成形の間に、大環状オリゴエステル及び第二の化合物は、好ましくは適切な触媒の存在下に、更に好ましくは適切なエステル交換反応触媒を使用するエステル交換反応により、高分子量のコポリマーを形成する。このようにして製造されたコポリマーは、前駆体としての大環状オリゴエステルから製造されたポリマーの他の望ましい特性を残しながら、好ましい結晶化度及び延性を示す。
【0012】
従って、一つの面に於いて、このシートモールディングコンパウンドは、大環状オリゴエステルと大環状オリゴエステル又はジヒドロキシル官能化ポリマー以外の環式エステルから選択された第二の化合物から得られる。大環状オリゴエステル及び第二の化合物を、エステル交換反応触媒の存在下に、高温度で(例えば、成形の間に)互いに接触させて、コポリエステルのようなブロックコポリマーを製造する。好ましくは大環状オリゴエステルは、式(I):
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、Rはアルキレン、シクロアルキレン又はモノ−若しくはポリオキシアルキレン基であり、そしてAは二価の芳香族又は脂環式基である)
の構造繰り返し単位を有する。好ましいエステルの例は、大環状ポリ(アルキレンジカルボキシレート)であり、他の例には、1,4−ブチレンテレフタレート、1,3−プロピレンテレフタレート、1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、エチレンテレフタレート及び1,2−エチレン2,6−ナフタレンジカルボキシレートの大環状オリゴエステル並びに2個又はそれ以上の上記の構造繰り返し単位からなる大環状コ−オリゴエステルが含まれる。
【0015】
他の面に於いて、シートモールディングコンパウンドの成形の間に、大環状オリゴエステルは、高温度でエステル交換反応触媒と接触して、第一のポリマーセグメントを形成する。続いて、この第一のポリマーセグメントは、高温度で第二の化合物及びエステル交換反応触媒と接触し、それによって第二のポリマーセグメントを形成する。次いで、上記の工程を、所望の回数連続的に繰り返して、付加的な第一及び第二のポリマーセグメントを有するブロックコポリマーを形成する。
【0016】
他の態様に於いて、シートモールディングコンパウンドの成形は、上記のブロックコポリマーの製造方法の変形になる。特に、第一のポリマーセグメントは、第二の化合物とエステル交換反応触媒とを高温度で接触させることによって形成される。続いて、第一のポリマーセグメントを大環状オリゴエステル及びエステル交換反応触媒と高温度で接触させ、それによって第二のポリマーセグメントを形成させる。次いで、上記の工程を、所望の回数連続的に繰り返して、付加的な第一及び第二のポリマーセグメントを有するブロックコポリマーを形成する。
【0017】
更に他の面に於いて、シートモールディングコンパウンドを、そのポリマー性主鎖内に、少なくとも1個の式(I)(前記定の通り)の構造単位及び少なくとも1個の式(II):
−R1−Q−C(O)−R2 (II)
(式中、R1及びR2は、独立に、有機部分(moiety)であるが、R2が−B′−C(O)−である場合、R1は−O−A′−ではない。A′は、アルキレン、シクロアルキレン又はモノ−若しくはポリオキシアルキレン基である。B′は、二価の芳香族又は脂環式基である。)
の構造単位を含有するブロックコポリマー(例えばコポリエステル)を有する部分に成形することができる。
【0018】
更に他の面に於いて、シートモールディングコンパウンドを成形して、ブロックコポリマー(例えば、ポリエステルの)を形成することができる。このコポリマーの第一のブロック単位は、そのポリマー主鎖内に、少なくとも1個の式(I)(前記定義の通り)の第一構造単位を有する。第二ブロック単位は、そのポリマー主鎖内に、少なくとも1個の式(II)(前記定義の通り)の第二の構造単位を有する。
【0019】
大環状オリゴエステルの合成は、種々の方法及びプロトコルに従って達成できる。要するに、一つの好ましい方法は、少なくとも1種の式HO−R−OHのジオールを、少なくとも1種の二酸塩化物と、少なくとも1種の、塩基性窒素原子の周りに立体障害を実質的に有しないアミンの存在下で接触させることを含む。このようなアミンの一つの具体例は、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)である。この反応は、通常、塩化メチレンのような実質的に水非混和性の有機溶媒中で、実質的に無水条件下で行われる。この反応の温度は、典型的に、約−25℃〜約25℃の範囲内である。Brunelleらに付与された米国特許第5,039,783号明細書(引用により本明細書に含める)参照。
【0020】
大環状オリゴエステルは、また、二酸塩化物と少なくとも1種のビス(ヒドロキシアルキル)エステル、例えばビス(4−ヒドロキシブチル)テレフタレートとの、高度に障害を受けていないアミン又は少なくとも1種の他の第三級アミン、例えばトリエチルアミンとのこれらの混合物の存在下での縮合によって製造することができる。この縮合反応は、実質的に不活性の有機溶媒、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン又はこれらの混合物中で行われる。例えばBrunelleらに付与された米国特許第5,231,161号明細書(引用により本明細書に含める)参照。
【0021】
大環状オリゴエステル又は大環状コ−オリゴエステルを製造する他の方法は、有機スズ又はチタネート化合物の存在下での、線状ポリエステルポリマーの解重合である。この方法に於いて、線状ポリエステルは、線状ポリエステル、有機溶媒及びエステル交換反応触媒、例えばスズ又はチタン化合物の混合物を加熱することによって、大環状オリゴエステルに転化される。使用される溶媒、例えばo−キシレン及びo−ジクロロベンゼンは、通常、酸素及び水を実質的に含有していない。例えば、Brunelleらに付与された米国特許第5,407,984号明細書及びBrunelleらに付与された米国特許第5,668,186号明細書(引用により本明細書に含める)参照。
【0022】
ブロックコポリマーを製造するために大環状コ−オリゴエステルを使用することも本発明の範囲内である。従って、本明細書中に他の方法で記載しない限り、大環状オリゴエステルに対する記載には、また、大環状コ−オリゴエステルを使用する態様が含まれる。
【0023】
本発明の種々の態様に於いて使用されるジヒドロキシル官能化ポリマーは、大環状オリゴエステルと反応して、エステル交換反応条件下でブロックコポリマーを形成する、任意のジヒドロキシル官能化ポリマーを含む。ジヒドロキシル官能化ポリマーの種類の具体例には、ポリエチレンエーテルグリコール、ポリプロピレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリオレフィンジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリペルフルオロエーテルジオール及びポリシロキサンジオールが含まれる。ジヒドロキシル官能化ポリマーの具体例には、ジヒドロキシル官能化ポリエチレンテレフタレート及びジヒドロキシル官能化ポリブチレンテレフタレートが含まれる。使用されるジヒドロキシル官能化ポリマーの分子量は、これに限定されないが、約500〜約100,000であってよい。一つの態様に於いて、使用されるジヒドロキシル官能化ポリマーの分子量は、約500〜約50,000の範囲内である。他の態様に於いて、使用されるジヒドロキシル官能化ポリマーの分子量は、約500〜約10,000の範囲内である。
【0024】
本発明の種々の態様に於いて使用される環式エステル(例えば大環状オリゴエステル以外の環式エステル)には、大環状オリゴエステルと反応して、エステル交換反応条件下でコポリマー(例えばコポリエステル)を形成する、任意の環式エステルが含まれる。環式エステルにはラクトンが含まれる。このラクトンは、如何なる員の環の環式エステルであってもよい。一つの態様に於いて、5〜10員環のラクトンが使用される。このラクトンは、置換されていなくても又は置換されていてもよい。ラクトン構造内の1個又はそれ以上の水素原子は、O、N又はSのようなヘテロ原子によって置換されていてよい。基本的ラクトン構造内の1個又はそれ以上の水素原子は、ハロゲン原子(例えばF、Cl、Br又はI)又はアルキル基(例えばメチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、ヒドロキシ基、アルコキシ基、シアノ基、アミノ基及び芳香族基を含む他の官能基によって置換されていてよい。このラクトンには、1個又はそれ以上の追加の環が含有されていてよい。ラクトンの具体例には、ラクチド、グリコリド、ジオキサノン、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、テトラメチルグリコリド、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン及びピバロラクトンが含まれる。
【0025】
本発明に於いて環式エステルを製造するために使用される触媒は、好ましくは、大環状オリゴエステルと、大環状オリゴエステル又はジヒドロキシル官能化ポリマー以外の環式エステルのような第二の化合物とのエステル交換反応重合に触媒作用することができるものである。1種又はそれ以上の触媒を、一緒に又は逐次的に使用することができる。大環状オリゴエステルを重合する最新技術のプロセスに関して、有機スズ及び有機チタネート化合物が好ましい触媒であるが、他の触媒を使用することができる。
【0026】
本発明に於いて使用することができるスズ化合物の具体例には、モノアルキルスズ(IV)ヒドロキシドオキシド、モノアルキルスズ(IV)クロリドジヒドロキシド、ジアルキルスズ(IV)オキシド、ビストリアルキルスズ(IV)オキシド、モノアルキルスズ(IV)トリスアルコキシド、ジアルキルスズ(IV)ジアルコキシド、トリアルキルスズ(IV)アルコキシドなどが含まれる。本発明に於いて使用することができる有機スズの具体例には、ジブチルスズジオキシド、1,1,6,6−テトラ−n−ブチル−1,6−ジスタンナ−2,5,7,10−テトラオキサシクロデカン、n−ブチルスズ(IV)クロリドジヒドロキシド、ジ−n−ブチルスズ(IV)オキシド、ジブチルスズジオキシド、ジ−n−オクチルスズオキシド、n−ブチルスズトリ−n−ブトキシド、ジ−n−ブチルスズ(IV)ジ−n−ブトキシド、2,2−ジ−n−ブチル−2−スタンナ−1,3−ジオキサシクロヘプタン及びトリブチルスズエトキシドが含まれる。例えば、Pearceらに付与された米国特許第5,348,985号明細書(引用により本明細書に含める)参照。更に、本件特許出願人の米国特許出願第09/754,943号明細書(引用により本明細書に含める)に記載されているスズ触媒を、この重合反応で使用することができる。
【0027】
本発明で使用することができるチタネート化合物には、本件特許出願人の米国特許出願第09/754,943号明細書(引用により本明細書に含める)に記載されているチタネート化合物が含まれる。具体例には、テトラアルキルチタネート(例えばテトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトライソプロピルチタネート及びテトラブチルチタネート)、イソプロピルチタネート、チタネートテトラアルコキシドが含まれる。
【0028】
第二の化合物の大環状オリゴエステルに対する重量比は約0.01から10まで変化させることができる。一つの態様に於いて、第二の化合物の大環状オリゴエステルに対するモル比は約0.01〜約0.1である。他の態様に於いて、第二の化合物の大環状オリゴエステルに対するモル比は約0.1〜約1.0である。更に他の態様に於いて、第二の化合物の大環状オリゴエステルに対するモル比は約1.0〜約5.0である。更に他の態様に於いて、第二の化合物の大環状オリゴエステルに対するモル比は約5.0〜約10である。
【0029】
エステル交換反応触媒の大環状オリゴエステルに対するモル比は約0.01〜約10モル%の範囲であってよい。一つの態様に於いて、この触媒の大環状オリゴエステルに対するモル比は、約0.01〜約0.1モル%である。他の態様に於いて、この触媒の大環状オリゴエステルに対するモル比は、約0.1〜約1モル%である。更に他の態様に於いて、この触媒の大環状オリゴエステルに対するモル比は、約1〜約10モル%である。
【0030】
幾つかのシートモールディングコンパウンドについて、大環状オリゴエステル及び第二の化合物の両方を含有することが好ましいが、大環状オリゴエステルのための幾つかの例に於いて、それ自体と反応させる(例えば重合させる)こと、異なった大環状オリゴエステルと反応させること、ジエポキシドのような連結剤と反応させる(例えば重合させる)こと、これらの組合せなども好ましいであろう。このような場合に、ブロックコポリマーがなお好ましく形成されるが、これは必要ではない。大環状オリゴエステルが、他の大環状オリゴエステルと、例えばそれ自体と(即ち、同じ若しくは実質的に同じ化学式を有する大環状オリゴエステルと)又は他の異なる大環状オリゴエステルと反応する場合に、本明細書に記載した任意の触媒が、反応を助けるために典型的に使用される。例として、大環状オリゴエステルは、触媒の存在下でそれ自体と反応して、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステルを形成する。勿論、第二モノマー、例えばスチレン又はビニルエステルが、(必ずしも必要ではないが)存在していてよく、そしてこのモノマーは別個に重合して、共−連続相又は別個の相を作ることができる。
【0031】
一つの代表的代替に於いて、1種又はそれ以上の化合物を重合(例えば共重合)させて、ネットワーク又はマトリックスを形成させ、そして大環状オリゴエステルを、反応又は他の方法によってこのネットワーク又はマトリックスの中に一体化させることができる。例えば、一つの態様に於いて、スチレン、メタクリル酸メチル及びビニルエステル樹脂を共重合させて、架橋したマトリックスを作る。次いで、大環状オリゴエステル(例えば環式ブチレンテレフタレート)を別個に重合させ、そして架橋したマトリックス中に反応させるか又は反応させないことができる。従って、相互浸透したネットワークとして又は2個の別個の相として、その中に埋め込まれた大環状オリゴエステルを有する架橋したマトリックスを有することが可能である。しかしながら、反応剤又は連結剤、例えばメタクリル酸グリシジルを使用して、大環状オリゴエステルをマトリックスの中に導入(例えば反応)させることも可能である。
【0032】
可能な樹脂変性
上記の樹脂は、他のモールディングコンパウンド成分と混合する前に、変性又は他の方法で更に処理することが可能である。例えば、一つの面に於いて、この樹脂のオリゴエステルを、例えば他の成分との共重合によって、他の成分と反応させることができる。例示のために、エステルを、炭酸プロピレン、ポリヒドロキシエチレン、ポリエーテルポリオールなどの1種又はこれらの組合せと共重合させることを意図する。好ましくは、それによって得られるエステルコポリマーの分子量は、エステル自体に対して、増大する。有利には、これらの追加の材料は、成形の間の改良されたレオロジー、モールディングコンパウンドで形成された部品のためのより良い機械的特性を有するシートモールディングコンパウンドを提供することができ、そしてより低い温度でのシートモールディングコンパウンドの配合を可能にできる。
【0033】
前記のように、好ましい樹脂はモールディングコンパウンドに使用され、それ故好ましくは、ある種の他の成分、例えばモールディングコンパウンド触媒、充填材又は強化材を含有する。
【0034】
触媒
本発明のシートモールディングコンパウンドは、エステル交換反応触媒に加えて、任意の必要な熟成、硬化、架橋又は他の反応に於いて助けになるために、1種又はそれ以上のモールディングコンパウンド触媒を含有していてよい。例えば、代替の又は追加の触媒には、フリーラジカル開始剤、有機金属化合物(例えば金属酸化物)などが含まれてよく、そして好ましくは、酸化物触媒、過酸化物触媒、多価開始剤(polyhydric initiators)などから選択される。使用する場合には、触媒は、モールディングコンパウンドの約0.01〜約10%、更に好ましくは約0.1〜3%の量で存在する。
【0035】
強化材料
本発明のシートモールディングコンパウンド又は樹脂は、また、シートモールディングコンパウンドに強化(例えば、強度、剛性など)を与えるための、1種又はそれ以上の異なった材料が含有していてよい。適当な任意の強化材料を本発明に於いて使用できることを意図する。
【0036】
このような繊維の例は、限定するものではないが、ポリマー繊維、金属繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、セラミック繊維又はこれらの組合せを含む。具体例には、限定するものではないが、ポリアミド(例えばナイロン、芳香族ポリアミド及びポリアミドイミド)繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ガラス繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チタン繊維、スチール繊維、炭素繊維及びグラファイト繊維などが含まれる。また、上記の繊維を、異なった形態、例えばチョップトファイバー、粒子、フォーム、織布、不織布、マット、コードなどで使用して、強化を与えることを意図する。勿論、非繊維状材料を本発明に於いて使用できることも意図する。任意に、この強化は、予備成形形状として与えることができる。使用するときには、強化材は、モールディングコンパウンド中に、約1〜60%、更に好ましくは約20〜40%の範囲内の量で存在している。ある種の応用で、強化材を適当な繊維と互換的に使用することができることも、本明細書に於ける別の検討から認められるであろう。
【0037】
他の成分
追加の成分の1種又は組合せを、モールディングコンパウンドの1個又はそれ以上の特性、例えば強度、靱性、耐崩壊性、剛性、可撓性、硬度、熱サイクル、美観特性、例えば平滑性、形状など又は加工性特性、例えば流動性、硬化速度、毒性、成形適正などを改良又は制御することを助けるために、本発明に於いて使用することができる。シートモールディングコンパウンド中にそれらの技術開示された量で一般的に使用することができる、このような成分又は試薬の例には、粘度調節剤、低収縮又は収縮防止剤、腐食防止剤、可撓性調節剤、離型剤、相安定剤、UV安定剤、可塑剤、難燃剤、滑剤、酸化防止剤及び離型剤が含まれる。
【0038】
シートモールディングコンパウンドは、コンパウンドの可撓性を増加又は減少させるための可撓性調節剤を含んでいてよいことも意図される。可撓性を増加させるために、1種又はそれ以上の比較的柔軟なポリマー、例えばエラストマーを、シートモールディングコンパウンドに含有させることができる。適当なエラストマーの例には、ニトリル、ブタジエン、EPDM、ハロゲン化エラストマー(例えばクロロ−及びフルオロ−エラストマー)、シリコーンエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ラテックス、熱可塑性エラストマー、オレフィン性エラストマー及び天然ゴムが含まれる。可撓性を減少させるか又は剛性を増加させるために、1種又はそれ以上の、架橋剤、ポリマー強化剤(例えばナノコンポジットポリマー)などのような試薬を使用することができる。
【0039】
他の好ましい機能性試薬を、同様にシートモールディングコンパウンド中に使用することができる。代表的増粘剤には、金属酸化物又は水酸化物、例えば酸化マグネシウム又は水酸化マグネシウムが含まれる。代表的離型剤には、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、有機リン酸エステル、これらの組合せなどが含まれる。代表的相安定剤には、脂肪酸、ダイマー酸、トリマー酸、ポリエステルポリオール、これらの組合せなどが含まれる。
【0040】
モールディングコンパウンドに於ける種々の成分及びそれらの使用は、例示的な米国特許第5,268,400号明細書及び米国特許第5,431,995号明細書(これらの全てを引用により本明細書に含める)の概説から学ぶことができる。
【0041】
本発明のシートモールディングコンパウンドは、シートモールディングコンパウンド中で形成されたポリマー鎖(例えばブロックコポリマー又はブロックコポリエステル)と反応し、これらを結び付ける、1種又はそれ以上の連結剤(例えば、連鎖延長剤、架橋剤など)を含むことができる。有利には、これらの連結剤は、レオロジー調節、より大きい強度、より大きい分子量などのような特性を、シートモールディングコンパウンド又はシートモールディングコンパウンドから形成された部品に与えることができる。
【0042】
充填材
本発明のモールディングコンパウンドは、典型的に、1種又はそれ以上の充填材を含むことができる。本発明で使用する充填材は、好ましくは粒状化されているが、繊維状又は粘土、炭酸塩、繊維状材料などのような幾つかの他の適当な形態であってもよい。充填材は、シートモールディングコンパウンド中に含有されて、所望の特徴又は特性を達成する。例えば充填材の目的は、安定性(例えば化学的、熱的又は光安定性)、強度、加工性などを与えることである。充填材は、また、色を合わせ、特定の密度を得るために重量若しくは嵩を与え、耐燃性を与え(即ち、難燃性である)、より高価な材料のための代替物であり、加工を容易にし又は幾つかの他の所望の目的を達成することができる。
【0043】
前記充填材の具体例は、とりわけ、ヒュームドシリカ、二酸化チタン、炭酸カルシウム、チョップトファイバー、フライアッシュ、ガラス微小球、ミクロバルーン、破砕石、ナノクレイ、線状ポリマー、モノマー、ガラス又はプラスチック微小球、シリカ材料、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウムである。典型的に、強化材料の添加の前に、モールディングコンパウンドを形成するために使用される、後で更に説明するような反応性混合物(例えばペースト)には、95重量%以下又はそれより多い充填材が含有されていてよい。好ましくは、この反応性混合物には、約20重量%〜約90重量%、更に好ましくは約30重量%〜約80重量%、なお更に好ましくは約40重量%〜約70重量%の充填材が含有されている。
【0044】
有利には、本発明のシートモールディングコンパウンドを形成するために使用される反応性混合物は、強い部品を形成するための能力を維持しながら、比較的高い重量%の充填材を含有できることが見出された。このような態様に於いて、この反応性混合物は、約30重量%よりも多い充填材、約40重量%よりも多い充填材、約50重量%又は60重量%よりも多い充填材、しかし典型的に約90重量%よりも少ない充填材を含むことができる。前記の種々の充填材の何れも、このシートモールディングコンパウンド中に含有されていてよいが、比較的高い重量%の炭酸カルシウム(CaCO3)が、部品の強度を維持するために特によく性能を発揮した。如何なる理論にも結び付けられることなく、本発明のシートモールディングコンパウンドの、より高い分子量ポリマーは、部品強度を維持することの少なくとも部分的な原因であること及びCaCO3が、このような高分子量ポリマーの形成を妨害しないと思われる。
【0045】
一つの好ましい態様に於いて、モールディングコンパウンドが低収縮剤の機能を組み入れるように、変性された充填材を使用する。1種のこのような変性された充填材を形成するために、クレイのような充填材が、好ましくは変性された充填材をシートモールディングコンパウンドの他の成分と組合せる前に、充填材に1種又はそれ以上の大環状オリゴエステルを挿入することによって変性される。シートモールディングコンパウンドの成形の間の加熱又は他の適切な活性化により、挿入された大環状オリゴエステルは重合して、変性された充填材を表層剥離させる。次いで、変性された充填材の表層剥離は、好ましくは得られる成形物品の任意の収縮を相殺する、コンパウンドの装入物に於ける体積増加を起こす。有利には、この相殺効果は、金型の表面を一層忠実に模倣する部品を提供することができ、そしてまた、得られる部品内の改良された長期及び短期歪み(例えば波打ち)を示す表面を有する部品を提供することもできる。
【0046】
非常に好ましい態様に於いて、1個又はそれ以上の多官能性(例えば二官能性又は三官能性)化合物が、ポリマー鎖、特に、大環状オリゴエステルを重合させることによって得られるブロックコポリマー又はコポリエステルと反応し、これらを結び付けるための、シートモールディングコンパウンド中の連結剤(linking agent)として用意される。このような二官能性化合物の例には、限定されることなく、ジエポキシ樹脂、ジエポキシド、トリエポキシド、ジイソシアナート、ジエステル、これらの組合せなどが含まれる。これらを使用するとき、これらは約1〜30%の量で存在する。
【0047】
他の好ましい態様に従って、1種又はそれ以上の反応性モノマーを、シートモールディングコンパウンド中の連結剤として用意することができる。代表的反応性モノマーは、スチレン、メタクリル酸メチル、ビニルモノマーを重合させる過酸化物、不飽和モノマー(例えば不飽和酸、無水物、例えば無水マレイン酸、不飽和ポリエステル、不飽和ビニルエステル)、これらの組合せなどを含む。このような反応性モノマーは、シートモールディングコンパウンド又はそれから形成された部品の、レオロジー調節を改良する際、寸法調節を改良する際、金型装入の間の一層容易な取り扱いを促進する際、コポリマーの分子量を増加させる際などで助けになり得る。これらを使用するとき、これらは約1〜30%の量で存在する。
【0048】
シートモールディングコンパウンドに添加することができる他の連結剤は、ポリオールとして用意することができ、そして低収縮剤として作用することができる、末端閉塞飽和ポリエステルである。末端閉塞飽和ポリエステルは、本発明のシートモールディングコンパウンドとのミクロゲル生成を助け得ることを見出した。次いで、このモールディングコンパウンドから成形された部品の寸法安定性は、成形後により大きい寸法安定性を維持することができる。飽和ポリエステルの末端閉塞は、ウレタン又は他の化合物によるポリエステルの停止を起こし得る。例として、適切なウレタン停止ポリエステルポリオールには、限定するものではないが、フェニルイソシアネートによって停止されたポリカプロラクトン、フェニルイソシアネートによって停止されたジエチレングリコールアジペートポリオールが含まれる。これらを使用するときには、これらは約1〜30%の量で存在する。
【0049】
本発明のシートモールディングコンパウンドは、また、その樹脂中に1種又はそれ以上の追加の材料を含むことができ、この追加の材料は、ポリマー性材料樹脂又は他の材料であってよい。モールディングコンパウンドのために適しているポリマー性材料は、限定するものではないが、プラスチック、熱可塑性物質、エラストマー、プラストマー、油、これらの組合せなどを含む。本発明に於いてポリマー性材料には、ポリマー、コポリマーなどが含まれてよく又はこれらはブレンド、コンポジットなどの一部であってよく又はこれらは任意の他の適切な形態で用意することができる。樹脂は、熱硬化性樹脂などであってよい。代表的樹脂には、限定するものではないが、マトリックス樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリオール樹脂(例えばポリエステル及びポリエーテルポリオール樹脂)、熱硬化性樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フタル酸ジアリル樹脂及び熱可塑性樹脂、例えばポリアミド、飽和又は不飽和ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ABS、これらの組合せなどが含まれる。
【0050】
モールディングコンパウンド形成
シートモールディングコンパウンドの種々の成分を、適当な任意の方法により、適当な任意の順序で、互いと混合し、一緒にすることが意図される。例えば、この樹脂は、他の成分(例えば添加剤、機能性試薬など)を樹脂と混合する前又は混合した後で、充填材と混合することができる。その代わりに、樹脂成分の一部のみを種々の他の成分と混合し、続いて残りの樹脂成分を添加することができる。当業者は、本発明に従ったシートモールディングコンパウンドを形成するための無数の混合順序及び技術を想像することができることが認められるであろう。
【0051】
一つの好ましい態様に従って、1種又はそれ以上の成分、例えば樹脂、充填材、強化材料、機能性試薬、添加物又は本明細書に記載した任意の他の成分を、モールディングコンパウンドの形成で補助するための、1個又はそれ以上の混合機、例えばハーク(Haake)ミキサー、ドレイス(Drais)ミキサー、押出機など内で混合することができる。必要ではないが、このような混合は、好ましくは高温度で行なう。
【0052】
本発明のシートモールディングコンパウンドは、種々の形状、例えば種々の形、厚さ、密度などに製造することができることも意図する。シートモールディングコンパウンドは、内部的に連続又は不連続(例えば多孔性)であってよい。シートモールディングコンパウンドは、単一の部分若しくは層として(例えばバッチとして)又はその代わりに、複数の部分若しくは層として提供することができ、そしてこの部分又は層は組成的に同じか又は異なっていてよい。
【0053】
更に、シートモールディングコンパウンドは、フィルム付きで又はフィルム無しで提供することができる。一つの態様に於いて、シートモールディングコンパウンドは、1枚又はそれ以上のフィルムに隣接させて配置された(例えばフィルムの間にサンドイッチされた)層として提供される。コンパウンドをフィルムに適用する前、間又は後に、強化材料をシートモールディングコンパウンド中に含有させる(例えば一体化する)ことができる。コンパウンドによる水分吸収を回避するために、1枚又はそれ以上のフィルムを、シートモールディングコンパウンドの周りでシールできることも意図する。
【0054】
一つの好ましい態様に於いて、シートモールディングコンパウンドの種々の成分(即ち大環状オリゴエステル、環式エステル、ジヒドロキシル官能化ポリマー、充填材、触媒、添加剤、機能性試薬又は他の成分)が、それ自体モールディングコンパウンドであると考えられ、加熱できるか又は加熱できない、反応性混合物(例えばポリマーペースト)の中に形成される。その後、シートモールディングコンパウンドを完結するために、強化材料がこの混合物の中に一体化される。
【0055】
強化材料は、種々の技術に従って、反応性混合物と一体化させることができる。例えば強化材料を第一のフィルム及び第二のフィルムの片方又は両方に適用し、続いて反応性混合物の第一の層及び第二の層の片方又は両方を、第一のフィルム及び第二のフィルムの片方又は両方に適用する。その代わりに、反応性混合物の第一の層及び第二の層の片方又は両方を、フィルムに適用し、続いて強化材料を第一の層及び第二の層の片方又は両方に適用する。他の代替として、強化材料を、第一のフィルム、第二のフィルム、第一の反応性混合物層、第二の反応性混合物層に適用することの組合せを使用することができる。強化材料を反応性混合物と一体化する方法に関係なく、反応性混合物の第一の層及び第二の層の片方又は両方について、フィルムの間にサンドイッチし、一緒に圧縮して、強化材料を樹脂中に一体化し、そしてシートモールディングコンパウンドを形成することが好ましい。
【0056】
シートモールディングコンパウンドを圧縮するために、モールディングコンパウンド及びフィルムをローラのシステムに供給し、ローラのシステムは、モールディングコンパウンド及びフィルムに圧力を適用し、それによって強化材料をポリマー性樹脂材料で濡らし、そして強化材料を樹脂と一層完全に一体化する際の助けになる。任意に、ローラを加熱して、強化材料の濡れ及び一体化の際の更なる助けにすることができる。
【0057】
強化材料のシートモールディングコンパウンドの中への一体化方法の何れについても、反応性混合物の元の層と同じか又は異なった組成を有してよい反応性混合物の補充量を、シートモールディングコンパウンドをフィルムの間にサンドイッチする前に、強化材料上に適用することができる。一つの好ましいプロトコルに従って、反応性混合物の追加量は、シートモールディングコンパウンドをフィルムの間にサンドイッチする前に、強化材料の上に液状でスプレーする。有利には、このような補充反応性混合物は、コンパウンドの中に含有させるために強化材料を濡らす際に助けになり得る。一つの態様に於いて、補充反応性混合物は、反応性混合物及び強化材料の層をフィルムの間にサンドイッチする間に、強化材料を静止状態に保持することも助ける。
【0058】
シートモールディングコンパウンドを好ましく支持する1枚又はそれ以上のフィルムは、種々の材料から形成することができる。好ましくは、このフィルムは、プラスチック、エラストマー、プラストマー、熱可塑性物質又はこれらの組合せのような材料から形成されたポリマーフィルムである。更に詳しくは、このフィルムは、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリオレフィン、ポリプロピレン)などから形成することができる。一つの好ましい態様に於いて、1枚又はそれ以上のフィルムは、更に以下に説明するようなシートモールディングコンパウンドと相溶性であり、そして反応性でさえある材料から形成できる。
【0059】
本発明の好ましい面に従って、シートモールディングコンパウンドを形成した後、このコンパウンドを、部品に成形することができ、任意的に、非常に長い熟成プロセスを受ける必要はない。従って、一つの好ましい態様に於いて、本発明に従ったモールディングコンパウンドは、モールディングコンパウンドの成分を混合した後、シートモールディングコンパウンドの冷却から得られる粘稠な増粘の結果で、部品に成形される。従って、本発明の好ましい態様に於いて、このモールディングコンパウンドは、それらの成分を組合せて72時間以内に、更に好ましくは48時間以内に、なお更に好ましくは24時間以内に、なお更に好ましくは12時間以内に、金型の中に装入し、そして部品に成形する。従って、成分を一緒に組合せた時から、1日未満経過させることができ、同じ日に、コンパウンドの形成と同じ製造施設で又は離れた異なった施設で部品に成形することさえ可能である。
【0060】
勿論、このような迅速な加工は強制的ではない。他の態様に於いて、本発明の材料を、成分を組み合わせた後の長い期間、貯蔵することができる。有利には、本発明の面は、従来のモールディングコンパウンド貯蔵寿命(これは通常、約5〜10日である)よりも長い貯蔵寿命を可能にする。従って、本発明の好ましい態様に於いて、シートモールディングコンパウンドは、形成後少なくとも10日間、更に好ましくは形成後少なくとも14日間、なお更に好ましくは形成後少なくとも21日間、なお更に、形成後少なくとも30、40、50又は60日間経過した後でさえ、部品に成形することができる。
【0061】
シートモールディングコンパウンド形成とシートコンパウンドの実際の成形との間の、これらの相対的に短い及び相対的に長い期間は、コンパウンド及び部品の加工に於ける柔軟度を可能にすることが認められるべきである。例えば、本発明のモールディングコンパウンドは実質的な熟成を必要としないので、シートモールディングコンパウンドを熟成するために、より少ない貯蔵空間取り扱い装置及び労働力が必要であろう。他の例として、より長い貯蔵寿命は、シートモールディングコンパウンドを、期限切れにしたり又は劣化することがほとんどないので、一つの施設で製造されたシートモールディングコンパウンドは、一層容易に包装でき、部品を形成するための第二の施設に移送することができる。従って、本発明は、第一の施設でモールディングコンパウンドを製造し、そしてこのモールディングコンパウンドを、所望の物品に成形するための第二の施設に輸送する方法を意図する。このような輸送は、温度調節されているか又は実質的に温度調節されていない媒体内で可能である。第二の施設への輸送は、コンパウンド配合して12時間以内又はそれ以上で行うことができる。
【0062】
シートモールディングコンパウンドの成形
形成されると、このモールディングコンパウンドを、コンパウンドのための所望の形状を達成するための種々の技術を使用して、成形又は他の方法で加工することができる。例えば、このコンパウンドは、部品を形成するために、圧縮成形、射出成形、引抜成形などすることができる。一般的に、コンパウンドの成形には、コンパウンドを金型の中に入れ、続いて高温度、高圧力又は両方を金型内に適用して、シートモールディングコンパウンドが金型の形状を帯びるようにすることが含まれる。
【0063】
シートモールディングコンパウンドの成形の間に、大環状ポリエステルオリゴマーと第二の化合物(例えば環式エステル、ジヒドロキシル官能化ポリマー又は両方)との間の共重合反応が、典型的に数分以内に完結して、コポリマー(例えばコポリエステル)を形成する。モールディングコンパウンド中の共重合反応の期間は、大環状オリゴエステルの第二の化合物に対するモル比、触媒の大環状オリゴエステル及び第二の化合物に対するモル比、共重合反応が行われる温度、得られるブロックコポリマーの所望の分子量並びに溶媒及び他の反応条件の選択を含む多数の要因に依存し得る。シートモールディングコンパウンドの成形は、好ましくは、実質的に不活性の環境下で、例えば窒素若しくはアルゴン下で又は真空下で行われる。
【0064】
共重合反応を実施するためのシートモールディングコンパウンドの成形は、典型的に、高温度で実施する。一つの態様に於いて、この成形を行う温度は、約130℃〜約300℃の範囲内である。他の態様に於いて、この成形を行う温度は、約130℃〜約300℃の範囲内である。更に他の態様に於いて、この成形を行う温度は、約150℃〜約260℃の範囲内である。更に他の態様に於いて、この成形を行う温度は、約170℃〜約210℃の範囲内である。更に他の態様に於いて、この成形を行う温度は、約180℃〜約190℃の範囲内である。
【0065】
シートモールディングコンパウンド中のブロックコポリマーの収率は、他の要因の中で、使用する前駆体大環状オリゴエステル(群)、使用する第二の化合物、使用する触媒(群)、反応時間、反応条件、連結剤(群)の存在又は不存在及び作業手順に依存する。典型的な収率は、使用する大環状オリゴエステルの約90%〜約98%の範囲内である。一つの態様に於いて、収率は約92%〜約95%の範囲内である。
【0066】
シートモールディングコンパウンド中のブロックコポリマーは、所望の弾性、結晶化度及び/又は延性を達成するように、本発明の方法に従って設計し、そして製造することができる。高い重量%のジヒドロキシル官能化ポリマー含有物(例えばポリテトラメチレンエーテルグリコール)を有するブロックコポリマーは、例えば、増加した靱性を示し、エラストマー性になる。低い重量%のジヒドロキシル官能化ポリマー含有物を有する同様のブロックコポリマーは、増大した弾性を示す。
【0067】
シートモールディングコンパウンド中で形成される、得られる高分子量ブロックコポリマーは、約10,000〜300,000の範囲内の分子量を有することができる。一つの態様に於いて、このブロックコポリマーの分子量は、約10,000〜約70,000の範囲内である。他の態様に於いて、このブロックコポリマーの分子量は、約70,000〜約150,000の範囲内である。更に他の態様に於いて、このブロックコポリマーの分子量は、約150,000〜約300,000の範囲内である。有利には、これらの分子量は、本明細書で検討した連結剤又は他の分子量増加技術を使用するとき、5%まで又はそれ以上、更に好ましくは10%以上、なお更に好ましくは15%又は20%以上増加させることができる。有利には、これらの高分子量は、優れた機械的特性を有する成形部品になる。
【0068】
シートモールディングコンパウンドが、1枚又はそれ以上のフィルムによって支持されるか又はフィルムの上に層状に重ねられる場合、この1枚又はそれ以上のフィルムを、シートモールディングコンパウンドの成形の前に取り除くことができる。しかしながら、一つの好ましい態様に従って、この1枚又はそれ以上のフィルムを、フィルムをシートモールディングコンパウンドと共に成形できるように、シートモールディングコンパウンドと相溶性であり、そしてこのコンパウンドと反応性でさえある材料で形成することができる。
【0069】
成形の間のフィルムとコンパウンドとの相溶性に依存して、種々のフィルムを、種々のシートモールディングコンパウンドと共に使用できることが意図される。一つの好ましい態様に従って、この1枚又はそれ以上のフィルムが、ポリエステル樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート又はポリブチレンテレフタレートで形成される。
【0070】
有利には、層状に重ねるフィルムと一緒にシートモールディングコンパウンドを成形することによって、成形の前にフィルムを除去するために使用される労働力を減少させることによって、コストを減少させることができる。更に、フィルムは、成形の間に如何なる追加の廃棄物も作り出す必要がない。驚くべきことに、特に上記の好ましい態様に於いて、シートモールディングコンパウンドと共にフィルムを成形することによって、増加した強度を示す積層部品を製造できることが見出された。
【0071】
本発明のシートモールディングコンパウンドは、種々のサイズ及び形状の物品を製造するために使用することができる。このコンパウンドを成形することによって製造することができる代表的物品には、限定されることなく、自動車構造的又は装飾的コンポーネント並びにボディパネル及びシャシコンポーネント、バンパビーム、ボート船体、航空機ウイングスキン(aircraft wing skin)、風車羽根、流体貯蔵タンク、鉄道車両、輸送コンテナー、旅行鞄、棚材料、床材、壁、トラクターフェンダー、テニスラケット、電器ハウジング、ゴルフシャフト、帆柱、玩具、ロッド、チューブ、バースストック(bars stock)、自転車フォーク及び機械ハウジングが含まれる。
【0072】
前記の検討は、本発明の代表的態様を単に開示し、説明する。当業者は、このような検討から並びに添付する図面及び特許請求の範囲から、種々の変更、修正及び変化を、前記の特許請求の範囲に定義された通りの本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、その中で行うことができることを容易に認めるであろう。特に、前記説明したコンポーネント、アセンブリ、デバイス、組成物などによって発揮される種々の機能に関して、このような項目を説明するために使用した用語は、他の方法で示さない限り、必ずしも開示した構造物と構造的に均等ではないが、説明した項目の特定された機能を実施する任意の項目に対応することが意図される。更に、本発明の特別の構成を、態様の一つのみに関して前述したが、このような構成は、他の例示する態様の1個又はそれ以上の他の構成と組合せることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大環状オリゴエステルと、他の大環状オリゴエステル又は第二の化合物から選択される反応性化合物をエステル交換反応触媒と組合せることによって反応性混合物を形成せしめる工程、
前記反応性混合物を強化材料と組合せて、シートモールディングコンパウンドを形成せしめる工程並びに
前記シートモールディングコンパウンドを高温度で成形する工程を含んでなり、
i)前記大環状オリゴエステルが、エステル交換反応触媒の存在下に反応性化合物と反応して、ブロックコポリマーを生成する、
シートモールディングコンパウンドの成形方法。
【請求項2】
前記シートモールディングコンパウンドが、シートモールディングコンパウンドの分子量、物理的特性又は両方を増加させる反応剤を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記強化材料を組合せる工程が、また、連結剤を反応性混合物と組合せることを含み、その連結剤がブロックコポリマーの鎖を一緒に結合し、それによってブロックコポリマーの分子量を増加させる請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記連結剤がジエポキシ樹脂、ジエポキシド、ジイソシアナート、ジエステル又はこれらの組合せから選択された反応剤である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記連結剤がスチレン、メタクリル酸メチル又は過酸化物から選択された反応性モノマーである請求項3に記載の方法。
【請求項6】
より大きい寸法安定性の維持を補助するために、フェニルイソシアナートによって停止されたポリカプロラクトン及びフェニルイソシアナートによって停止されたジエチレングリコールアジペートポリオールから選択された末端閉塞飽和ポリエステルが存在する請求項1、2、3、4又は5に記載の方法。
【請求項7】
充填材を反応性混合物と組合せる工程を更に含み、充填材及び強化材料が、シートモールディングコンパウンドの少なくとも約50重量%存在する請求項1、2、3、4、5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記充填材が炭酸カルシウムである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記大環状エステル、第二の化合物又は両方が約1重量%〜約30重量%の量でシートモールディングコンパウンド中に存在する請求項1〜8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記シートモールディングコンパウンドを1枚又はそれ以上のプラスチックフィルムに適用する工程を更に含み、そのプラスチックフィルムが少なくとも部分的にポリエステル樹脂で形成され、成形の際に、シートモールディングコンパウンドが、1個又はそれ以上の部品中で、1枚又はそれ以上のプラスチックフィルムと一体化される請求項1〜9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記モールディングコンパウンドの中に、大環状オリゴエステルが挿入されたクレイを含有する低収縮剤を混合する工程を更に含み、その大環状オリゴエステルの重合の間のこのクレイの表層剥離が収縮を相殺するために体積を増加する請求項1〜10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記シートモールディングコンパウンドを成形する工程が、混合物を形成して24時間以内又は混合物を形成した後10日以上から選択された期間内に起こる請求項1〜11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記大環状オリゴエステルが、式:
【化1】

(式中、Rはアルキレン、シクロアルキレン又はモノ−若しくはポリオキシアルキレン基であり、そしてAは二価の芳香族又は脂環族基である)
の構造繰り返し単位を有する請求項1〜12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記大環状オリゴエステルを反応性化合物と組合せる工程が、大環状オリゴエステルと第二の化合物とを組合せて、ブロックコポリマーがポリエステル及び第二の化合物で形成されるような反応性混合物を形成することを含む請求項1〜13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記混合物を強化材料と組合せる工程及びシートモールディングコンパウンドを1枚又はそれ以上のプラスチックフィルムに適用する工程が少なくとも部分的に同時に起こる請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記反応性混合物を、
i)強化材料を1枚又はそれ以上のプラスチックフィルムに適用し、1枚又はそれ以上のフィルム及び強化材料を、液状の補充反応性混合物で被覆し、そして反応性混合物を1枚又はそれ以上のフィルムに適用する技術、
ii)反応性混合物を1枚又はそれ以上のプラスチックフィルムに適用し、強化材料をこの混合物に適用し、そして反応性混合物及び強化材料を、液状の補充反応性混合物で被覆すること又は
iii)これらの組合せ
から選択された技術に従って強化材料と組合せる請求項1〜15の何れか1項に記載のシートモールディングコンパウンドの成形方法。
【請求項17】
前記成形工程がシートモールディングコンパウンドを自動車用の1個又はそれ以上の部品を成形することを含む請求項1〜16の何れか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2007−521341(P2007−521341A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−565140(P2004−565140)
【出願日】平成15年11月26日(2003.11.26)
【国際出願番号】PCT/US2003/037983
【国際公開番号】WO2004/060640
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【出願人】(591123001)ユニオン・カーバイド・ケミカルズ・アンド・プラスティックス・テクノロジー・コーポレイション (85)
【Fターム(参考)】