説明

Si結合された流動層触媒の製造方法

本発明は、改善された耐摩耗性を有する、Si結合された微粒子状流動層触媒を製造するための方法に関し、当該方法は、以下の工程I〜IVを有するものである:I.ゼオライト粒子含有水性懸濁液を用意する工程、II.1種又は複数種の加水分解性シリコーン樹脂予備縮合物を含有するシリコーン樹脂混合物を添加し、前記水性懸濁液と前記シリコーン混合樹脂とを混合する工程、III.前記工程IIから得られる混合物をスプレー乾燥する工程、ここで前記混合物はスプレー乾燥前に均質化し、IV.前記工程IIIから得られるスプレー乾燥した流動層触媒をか焼する工程。本発明はさらに、この方法により製造可能なSi結合された流動層触媒、並びに当該触媒を、C1〜C4脂肪族化合物を非酸化的に脱水素芳香族化するために用いる使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された耐摩耗性を有する、Si結合された微粒子状の流動層触媒を製造するための方法に関し、当該方法は、以下の工程I〜IV:
I.ゼオライト粒子含有水性懸濁液を用意する工程、
II.1種又は複数種の加水分解性シリコーン樹脂予備縮合物を含有するシリコーン樹脂混合物を添加し、前記水性懸濁液と前記シリコーン混合樹脂とを混合する工程、
III.前記工程IIから得られる混合物をスプレー乾燥する工程、ここで前記混合物はスプレー乾燥前に均質化し、
IV.前記工程IIIから得られるスプレー乾燥した流動層触媒をか焼する工程
を有するものである。本発明はさらに、この方法により製造可能なSi結合された流動層触媒、並びに当該触媒を、C1〜C4脂肪族化合物を非酸化的に脱水素芳香族化するために用いる使用に関する。
【0002】
原料と生成物が気相に存在する多くの固体触媒反応に対して、流動化された触媒床(流動層又は流動床とも言う)で反応を行うことが、有利であると実証されている。この際に触媒は、微粒子状で存在する。流動床の利点はとりわけ、比較的容易な取り扱いと、流動化された触媒床の固体輸送性、流動化による触媒粒子の強力な混合に起因する均一な温度分布と良好な熱交換性、また触媒の粒子が小さいことによる比較的大きな気体−固体界面である。
【0003】
触媒床における触媒粒子に対して、他の触媒粒子との、及び壁面との衝突によって強力な力が作用し、この力は、触媒粒子の破壊や、小さな粒子が触媒表面から摩耗することに繋がることがある。小さな粒子は気相によって反応器から排出され、反応器排出物からコストをかけて分離しなければならない。排出により反応器から失われた触媒は、補わなければならない。小さな粒子の破壊及び摩耗は、流動床における触媒粒子の耐用期間を、明らかに低下させる。よって流動層触媒として使用される触媒は、耐摩耗性が高くなければならない。
【0004】
循環式流動床で変換を行うことは、メタン及び比較的高級な脂肪族化合物の非酸化的な脱水素芳香族化(以下、DHAMとも呼ぶ)に、特に適している。WO 2005/032713からはさらに、Si含有結合剤の存在が、DHAMに対して肯定的に作用することが公知である。
【0005】
Si含有結合剤を含む触媒粒子の耐摩耗性を向上させるため、既に様々な手法が公知である。
【0006】
WO 02/070123は、粒径が20〜120μmの球形状粒子を記載しており、この粒子は、無機のゾル、無機の粒子形状材料(金属ゾルではない)、及び耐摩耗性変性剤を含有する懸濁液をスプレー乾燥することによって製造される。耐摩耗性変性剤として好適には、球形状粒子を製造する際に生じる、流動層触媒としては不適切な粒子を用いる。無機のゾルとしては好ましくは、シリカゾルを用いる。
【0007】
US 2006/0199730によれば、平均粒径が異なる2つのシリカ粒子を有するシリカゾル混合物を用いる。大きな粒子と小さな粒子との混合物は、シリカ粒子のより良好な充填に、そしてより高い密度に役立つ。
【0008】
US 5,352,645は、粒径が1〜50μmの耐摩耗性の球形状シリカ粒子の製造に関し、この粒子はシリカゾルと、添加剤(尿素又はクエン酸アンモニウムから選択される)とから得られる懸濁液をスプレー乾燥することによって製造される。
【0009】
従来技術に記載された耐摩耗性のSi結合された流動層触媒の製造のための可能性にも拘わらず、既に公知の触媒と比べて耐摩耗性が改善された、Si結合された流動層触媒に対する需要が存在し、メタン及び比較的高級な脂肪族化合物の非酸化的な脱水素芳香族化に適した耐摩耗性の流動層触媒に対しては、特に需要がある。
【0010】
この課題は、以下の工程I〜IV:
I.ゼオライト粒子含有水性懸濁液を用意する工程、
II.1種又は複数種の加水分解性シリコーン樹脂予備縮合物を含有するシリコーン樹脂混合物を添加し、前記水性懸濁液と前記シリコーン混合樹脂とを混合する工程、
III.前記工程IIから得られる混合物をスプレー乾燥する工程、ここで前記混合物はスプレー乾燥前に均質化し、
IV.前記工程IIIから得られるスプレー乾燥した流動層触媒をか焼する工程
を有する、Si結合された流動層触媒を製造するための本発明による方法によって、また、本発明により製造可能な微粒子状のSi結合された流動層触媒によって解決される。
【0011】
本発明による方法によれば、流動層として稼働させるのに適した、平均粒径10〜200μmの触媒粒子が得られる。スプレー乾燥によって得られる触媒粒子は、ほぼ球形状であり、このことは粒子の耐摩耗性に対して肯定的に作用する。
【0012】
意外なことに本発明による触媒粒子は、他のSi含有結合剤(例えばシリカ懸濁液又はコロイド状シリカ)を用いてスプレー乾燥により製造されるゼオライト粒子よりも耐摩耗性が高い。さらに、同様に意外なことに、本発明による触媒粒子は、例えばコロイド状シリカで結合された触媒粒子とは異なり、結合剤含分が比較的低くても、結合剤含分が高い場合よりも耐摩耗性が高いことが判明した。このことによる利点はとりわけ、本発明による触媒が、改善された耐摩耗性で、触媒に有効なゼオライトの割合を、結合剤含分が多い触媒よりも多く含むことである。本発明による方法でシリコーン樹脂混合物とさらなるSi含有結合剤(例えばコロイド状シリカ)とを併用する場合にも、摩耗度が明らかに改善された触媒粒子が得られる。このように製造された触媒粒子は、結合剤としてのシリコーン樹脂混合物のみによって製造された触媒粒子の特性を上回ることができる。
【0013】
本発明により製造される触媒はとりわけ、メタンを非酸化的に脱水素芳香族化する際の使用に適しており、例えばゼオライトとしてHZSM−5を、また活性金属としてモリブデンを含有する本発明による触媒は、同様にHZSM−5とモリブデンを含有するが、別のSi含有結合剤で製造された触媒よりも、改善された収率と選択性を有する。
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明による方法の工程Iでは、ゼオライト粒子の水性懸濁液を用意する。ゼオライト粒子は、ゼオライト粒子を含有する水性懸濁液を用意する際に初めから、所望の粒径を有するが、しかしながらまた、工程Iでゼオライト含有水性懸濁液を準備する工程と、工程IIでシリコーン樹脂を添加する工程との間に、
Ia ゼオライト含有水性懸濁液の湿式粉砕
を行うことができる。
【0016】
水性懸濁液中のゼオライト粒子は好適には、D90値が≦10μm、好ましくは≦5μm、及び特に好ましくは≦3μmである(Malvern 社の装置(Malvern Mastersizer 2000)で特定)。D90値とは、粒径分布との関連での粒径をいい、これに当てはまるのは、粒子の90%が≦D90の直径を有するものである。本発明によれば、ゼオライト粒子の粒径が充分に大きく選択されており、水性懸濁液中でゼオライト粒子のフロック化を避けることができる。ゼオライト粒子はできるだけ小さいのが特に好ましいが、なお安定的な懸濁液を形成する。
【0017】
水性懸濁液中でのゼオライト粒子の濃度は通常、懸濁液の全質量に対して5〜70質量%、好ましくは40〜60質量%である。
【0018】
本発明により使用されるゼオライトとは、製造の際に通常はナトリウム形態で沈殿するアルミニウムケイ酸塩である。Na形態では、4価のSi原子と、3価のAl原子との交換が原因で結晶格子中に存在する過剰な負電荷がNaイオンによって調整されている。ナトリウムのみならず、ゼオライトは電荷平衡のためにさらなるアルカリ金属イオン及び/又はアルカリ土類金属イオンを含むこともできる。本発明によれば好ましくは、触媒中に含まれる少なくとも1つのゼオライトは、ペンタシル及びMWWの構造型から選択された構造を有し、特に好ましくは、MFI、MEL、MFIとMELとの混合構造、及びMWWの構造型から選択された構造を有する。極めて特に好ましくは、ZSM−5型、又はMCM−22型のゼオライトを使用する。ゼオライトの構造型の名称は、W. M. Meier, D. H. Olson及びCh. Baerlocher著、"Atlas of Zeolithe Structure Types", Elsevier, 第三版、アムステルダム、2001年の記載に対応している。ゼオライトの合成は当業者に公知であり、例えばアルカリ金属アルミン酸塩、アルカリ金属ケイ酸塩、及び非晶質のSiO2から出発して、熱水条件下で行うことができる。この際に、有機のテンプレート分子によって、温度やさらなる実験パラメータによって、形成される触媒システムの種類をゼオライト中で制御することができる。
【0019】
工程Iにおける水性懸濁液はさらに、ゼオライト粒子が均質に分布した安定的な懸濁液を製造するために適した助剤を含有することができる。
【0020】
本発明による方法の工程IIでは、1種又は複数種の加水分解性シリコーン樹脂予備縮合物を含有するシリコーン樹脂混合物を添加する。本発明の範囲で「加水分解性」とは、水及び/又は触媒との接触により、1つの基が脱離して1つのOH基が生成し、これはさらなるOH基により縮合反応を起こし得る。さらに進んだ加水分解、及び縮合反応により、架橋されたシリコーン樹脂の形成につながる。
【0021】
好適にはヒドロキシ官能化、及びアルコキシ官能化されたシリコーン樹脂予備縮合物を使用し、これは例えば以下の式
【化1】

を有するもの、またこの混合物であり、
前記式中、
1、R2、及びR3は、OH、C1〜C6アルコキシ、C1〜C6アルキル、及びC6〜C9アリールであり、
4は、H、C1〜C6アルキル、及びC6〜C9アリールであり、
nは、シリコーン樹脂予備縮合物の質量平均分子量が、100〜10,000g/molであるように選択する。
【0022】
本発明によれば特に好ましくは、それぞれ1〜6個のC原子を有するアルキルアルコキシシランを、極めて特に好ましくは、それぞれ1〜4個のC原子を有するアルキルアルコキシシロキサンを、特にメチルメトキシシロキサン(例えばWacker Silikonから得られるSilres(登録商標)MSE100という市販名のもの)を用いる。
【0023】
通常、シリコーン樹脂予備縮合物は、重合度と分子量が様々なシリコーン樹脂予備縮合物の混合物から成り、このためシリコーン樹脂予備縮合物はモノマー、オリゴマー、ポリマー、並びにこれらの混合物からなり得る。よってメチルメトキシシロキサンとは、本発明によればモノメチルメトキシシロキサン、オリゴメチルメトキシシロキサン、ポリメチルメトキシシロキサン、及びこれらの混合物であると理解される。
【0024】
シリコーン樹脂混合物は通常、シリコーン樹脂予備縮合物を、シリコーン樹脂混合物に対して10〜95質量%含む。
【0025】
このシリコーン樹脂混合物は、加水分解性シリコーン樹脂予備縮合物の他に、更なる成分を含むことができる。例えば、シリコーン樹脂混合物はしばしば、アルコキシ官能化されたシリコーン樹脂予備縮合物の加水分解の際に生じるアルコールを含有する(例えばメチルメトキシシランの場合にはメタノール)。さらに、このシリコーン樹脂混合物は、架橋反応のための触媒を含有することができる。
【0026】
好ましくは本発明によれば、シリコーン樹脂混合物はさらに、沸点が水より高い溶剤(例えばベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、及びこれらの混合物)を少なくとも1種含有し、特に好ましいのは、トルエンである。沸点が水より高い溶剤は、その前にスプレー乾燥の際に形成される粒子が既に形成された後で、スプレー乾燥以後に、多分初めて蒸発する。
【0027】
水より沸点が高い溶剤が遅れて蒸発することにより、スプレー乾燥の際に形成される粒子中に付加的な細孔が形成され、この細孔は触媒としての特性に肯定的に作用する。水よりも沸点が高い少なくとも1種の溶剤は、シリコーン樹脂混合物に対して好ましくは≧0.1質量%の濃度、特に好ましくは≧1質量%の濃度で、当該シリコーン樹脂混合物中に存在する。
【0028】
シリコーン樹脂混合物はさらに、当業者に公知の成分、特にさらなるSi含有結合剤、例えばコロイド状シリカ、シリカ懸濁液、及びシリカゾルを含むことができる。このさらなるSi含有結合剤は、工程IIでシリコーン樹脂混合物とは別個に、ゼオライトに添加することもでき、例えば異なる貯蔵槽から同時に、又は時間的に連続して添加することができる。本発明によれば好ましくは、工程IIで少なくとも1種のさらなるSi含有結合剤を使用し、好ましいのは、コロイド状シリカ、シリカ懸濁液、及びシリカゾルから選択されるSi結合剤である。ここで特に好ましくは、少なくとも1種のさらなるSi含有結合剤が、工程IIで使用されるシリコーン樹脂混合物中に含まれている、つまり添加の前に、シリコーン樹脂混合物と混合する。
【0029】
工程IIで1種又は数種のさらなるSi含有結合剤を用いる場合、シリコーン樹脂若しくはシリコーン予備縮合物と、さらなるSi含有結合剤との比は、シリコーン樹脂及び/又はシリコーン予備縮合物の質量と、Si含有結合剤の質量との合計に対して、
好ましくは、シリコーン樹脂/シリコーン樹脂予備縮合物5〜99質量%と、さらなるSi含有結合剤1〜95質量%、
特に好ましくは、シリコーン樹脂/シリコーン樹脂予備縮合物10〜95質量%と、さらなるSi含有結合剤5〜90質量%、
極めて特に好ましくは、シリコーン樹脂/シリコーン樹脂予備縮合物15〜90質量%と、さらなるSi含有結合剤10〜85質量%、
であり、ここではそれぞれ固体含分をベースとする。とりわけ好ましくは、シリコーン樹脂/シリコーン樹脂予備縮合物と、Si含有結合剤との比は、シリコーン樹脂/シリコーン樹脂予備縮合物75〜85質量%と、さらなるSi含有結合剤15〜25質量%である。ここで、工程IIで使用される結合剤の全量は、シリコーン樹脂/シリコーン樹脂予備縮合物について上述のように選択し、これによりシリコーン樹脂/シリコーン樹脂予備縮合物の量の代わりに、シリコーン樹脂/シリコーン樹脂予備縮合物の全量と、さらなるSi結合剤を使用することができる。
【0030】
さらなるSi含有結合剤は、シリコーン樹脂含有混合物の添加前に、シリコーン樹脂/シリコーン樹脂予備縮合物を有するゼオライトに混合することができるが、しかしながらまた、1種又は数種のさらなるSi含有結合剤を、シリコーン樹脂含有混合物とは別に、工程IIで添加することもでき、例えば同時に、また連続して添加することができる。
【0031】
シリコーン樹脂混合物を、ゼオライト粒子の水性懸濁液に添加する際、シリコーン樹脂予備縮合物に含まれるエステル基の一部が加水分解されてヒドロキシ基になり、さらなるヒドロキシ基によって縮合反応が起こる。この際に、完全に縮合されたシリコーン樹脂が生成する。工程IIからは少なくとも2相の混合物が得られ、この混合物は、ゼオライト粒子、縮合されたシリコーン樹脂、水、シリコーン樹脂予備縮合物から脱離したアルコール(例えばメトキシ官能化されたシリコーン樹脂予備縮合物の場合にはメタノール)、及びシリコーン樹脂混合物の水性懸濁液中に既に存在するさらなる成分を含有する。
【0032】
工程IIから得られる多相混合物全体を、工程IIIでスプレー乾燥させる。スプレー乾燥の場合、ゼオライト粒子とシリコーン樹脂とを含有する混合物/懸濁液を連続的にノズル、噴霧ディスク、又は他の適切な噴霧装置によって(例えばArthur Lefebvre著、"Atomisation and Sprays", Hemisphere Publishing Corporation, 1989, ISBN 0-891 16-603-3に記載のもの)、例えば熱した空気で加熱した乾燥チャンバでスプレーする。スプレー乾燥についての詳細な記載は例えば、K. Masters著、"Spray Drying Handbook", Longman Scientific & Technical, 1991 , ISBN 0-582-06266-7に開示されている。スプレーの間には、混合物に対して高い剪断力が働く。この際に、非常に小さい液滴が形成され、これらは加熱されたチャンバ内で迅速に乾燥される。使用される噴霧装置の種類、スプレー圧、懸濁液濃度、乾燥温度、及び乾燥速度によって、粒径分布、残留湿分、及び固体の形状が調整できる。乾燥温度は例えば、60〜450℃の範囲、好適には80〜350℃の範囲である。スプレー乾燥により製造される粒子は、基本的に球形である。
【0033】
工程IIから得られる混合物は、本発明によればスプレーの前に直接均質化され、これにより混合物の成分、特にゼオライト粒子及び縮合されたシリコーン樹脂が、スプレー乾燥の際にできる限り均一な分布で存在する。これは例えば、混合物の撹拌により達成できる。トルエン含有メチルメトキシシロキサンを用いると、有機相の分離によって、スプレー乾燥の前に有機相を分離しなかった触媒粒子よりも特性が悪い触媒粒子につながることが判明している。
【0034】
スプレー乾燥の後に続くのは、工程IVで本発明により、工程IIIから得られるスプレー乾燥した微粒子状流動層触媒をか焼する工程である。スプレー乾燥で得られる触媒粒子は通常、400〜1200℃の温度、好ましくは500〜1000℃、特に好ましくは700〜1200℃でか焼する。
【0035】
このか焼は、あらゆる適切なガス雰囲気で行うことができ、ここで空気及び/又は希薄な空気(Magerluft)が好ましい。さらに、このか焼は好ましくはマッフル炉、回転管、及び/又は管型か焼炉で行い、ここでか焼時間は一般的に、1時間以上、例えば1〜24時間の範囲、又は3〜12時間の範囲である。
【0036】
触媒粒子は、工程IIIによるスプレー乾燥と、工程IVでのか焼との間に、さらに別の乾燥工程(いわゆる追加乾燥)に供することができる。
【0037】
本発明の好ましい実施態様によれば、ゼオライト粒子で工程Iの前に、以下の工程i)〜iv)を有する2回のアンモニウム交換を行う:
i)NH4含有混合物を用いた処理により、アンモニウム交換する工程、
ii)ゼオライト粒子を、乾燥及びか焼する工程、
iii)NH4含有混合物を用いた処理により、二度目のアンモニウム交換を行う工程、及び
iv)ゼオライト粒子を任意で乾燥する工程、及び/又はゼオライト粒子を任意でか焼する工程。
【0038】
NH4含有混合物は通常、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、及び硫酸水素アンモニウムの群から選択されるアンモニウム塩を、好ましくは硝酸アンモニウムを含有する。NH4含有混合物として好適には、アンモニウム塩の溶液を使用する。
【0039】
工程i)及びiii)でのNH4含有混合物によるゼオライトの処理は、ゼオライトのアンモニウム交換に適した公知の方法により行う。これに該当するのは例えば、アンモニウム塩溶液によるゼオライトの浸漬、浸透、又は吹き付けであり、ここで、溶液は一般的に過剰で適用される。溶剤として好適には、水又はアルコールを用いる。この溶液は通常、使用されるNH4成分を1〜20質量%含む。NH4含有混合物による処理は通常、数時間にわたって高温で実施される。ゼオライト上にNH4含有混合物を作用させた後、過剰な混合物を除去し、ゼオライトを洗浄することができる。
【0040】
工程ii)及びiv)ではゼオライトを40〜150℃で数時間、通常は4〜20時間乾燥させる。これに引き続き、ゼオライトのか焼を300〜700℃、好ましくは350〜650℃、特に好ましくは500〜600℃の温度で行う。か焼の所要時間は通常、2〜24時間、好ましくは3〜10時間、特に好ましくは4〜6時間である。
【0041】
市販で得られるH型ゼオライトは、通常すでにNH4含有混合物による処理で第一のアンモニウム交換、及び引き続いた乾燥及びか焼を経ている、すなわち前記工程i)及びii)は、ゼオライトの製造元によって既に行われている。このため、市販で手に入るこのH型ゼオライトは、本発明による方法の工程iii)で直接使用できる。
【0042】
再度のアンモニウム交換は本発明によれば、アルカリ金属イオン及び/又はアルカリ土類金属イオンと陽子との可能な限り完全な交換を保証するために役立つだけではなく、これに加えてゼオライトの構造的な変化にも影響を与える。よってゼオライトの再度の処理は、例えばSi:Al比を高め、この比はルイス酸中心対ブレンステッド酸中心の比における変化と結びついている。Si:Al比の上昇は、ゼオライトの脱アルミニウム化によって引き起こされる。再度の処理によるゼオライトの変化の例はまた、BET比表面積の増大である。
【0043】
二度のアンモニウム交換後に得られるゼオライト粒子は、引き続き本発明による方法の工程Iで使用する。
【0044】
さらに好ましい態様によれば、工程IVの後に、以下の工程V:
V.工程IVから得られる微粒子状流動層触媒に少なくとも1種の活性金属を施与し、引き続き、任意で微粒子状流動層触媒を乾燥する工程、及び/又は任意で微粒子状流動層触媒をか焼する工程
を行う。
【0045】
この実施態様によれば、本発明による方法は、以下の工程I〜V:
I.ゼオライト粒子含有水性懸濁液を用意する工程、
II.1種又は複数種の加水分解性シリコーン樹脂予備縮合体を含有するシリコーン樹脂混合物を添加し、前記水性懸濁液と前記シリコーン混合樹脂とを混合する工程、
III.前記工程IIから得られる混合物をスプレー乾燥する工程、ここで前記混合物はスプレー乾燥前に均質化し、
IV.前記工程IIIから得られるスプレー乾燥した流動層触媒をか焼する工程、及び
V.前記工程IVから得られる流動層触媒に少なくとも1種の活性金属を施与し、引き続き、任意で流動層触媒を乾燥する工程、及び/又は任意で流動層触媒をか焼する工程
を有し、ここで任意でさらに、工程Ia、及び工程i)〜iv)を上述のように実施することができる。
【0046】
1種又は複数種の活性金属は、本発明により湿式化学的に、又は乾燥化学的に工程Vにおいて、工程IVから得られる触媒粒子に施与することができる。
【0047】
少なくとも1種の活性成分は湿式化学的に、その塩又は錯体の水溶液、有機溶液、又は有機水溶液の形態で、ゼオライトを相応する溶液で含浸することによって施与する。溶剤としてはまた、超臨界のCO2が役立ち得る。含浸は、初期濡れ性測定法(incipient-wetness-Methode)に従って行うことができ、この方法では、ゼオライトの多孔質体積を、体積がほぼ同一の含浸溶液で満たし、そして任意で熟成(Reifung)の後、担体を乾燥させる。また、溶液の過剰量で作業することもでき、この際に前記溶液の体積は、ゼオライトの多孔質体積よりも大きい。この際、ゼオライトを含浸溶液と混合し、そして充分に長く撹拌する。さらにゼオライトには、少なくとも1種の活性成分の塩溶液をスプレーすることができる。これはまた、他の当業者に公知の製造方法、例えばゼオライトへの少なくとも1種の活性成分の沈殿、少なくとも1種の活性成分の化合物を含む溶液の吹き付け、ゾル浸漬などによっても可能である。
【0048】
本発明によれば、少なくとも1種の活性成分はまた、乾式化学的な方法で施与することもでき、例えば高温で気体状の金属カルボニル(例えばMo(Co)6)を気相からゼオライト上に堆積させる。
【0049】
少なくとも1種の活性金属を、工程IVから得られる微粒子状流動層触媒に施与した後、触媒を任意で約80〜130℃で、通常は4〜20時間、真空中、又は空気で乾燥させる。
【0050】
任意で、触媒粒子を工程(V)において、一般的には350〜750℃の範囲、好ましくは350〜650℃の範囲、特に好ましくは400〜600℃の範囲の温度でか焼する。
【0051】
本発明のさらなる対象は、以下の工程I〜IVを有する、本発明による方法により製造可能な流動層触媒であり:
I.ゼオライト粒子含有水性懸濁液を用意する工程、
II.1種又は複数種の加水分解性シリコーン樹脂予備縮合体を含有するシリコーン樹脂混合物を添加し、前記水性懸濁液と前記シリコーン混合樹脂とを混合する工程、
III.前記工程IIから得られる混合物をスプレー乾燥する工程、ここで前記混合物はスプレー乾燥前に均質化し、
IV.前記工程IIIから得られるスプレー乾燥した流動層触媒をか焼する工程、
ここで任意でさらに、工程Ia、及び工程i)〜iv)を上述のように実施することができる。
【0052】
本発明によれば好ましいのは、以下の工程I〜Vを有する、本発明による方法により製造可能な流動層触媒であり:
I.ゼオライト粒子含有水性懸濁液を用意する工程、
II.1種又は複数種の加水分解性シリコーン樹脂予備縮合体を含有するシリコーン樹脂混合物を添加し、前記水性懸濁液と前記シリコーン混合樹脂とを混合する工程、
III.前記工程IIから得られる混合物をスプレー乾燥する工程、ここで前記混合物はスプレー乾燥前に均質化し、
IV.前記工程IIIから得られるスプレー乾燥した流動層触媒をか焼する工程、及び
V.前記工程IVから得られる微粒子状流動層触媒に少なくとも1種の活性金属を施与し、引き続き、任意で微粒子状流動層触媒を乾燥する工程、及び/又は任意で微粒子状流動層触媒をか焼する工程、
ここで任意でさらに、工程Ia、及び工程i)〜iv)を上述のように実施することができる。
【0053】
本発明による流動層触媒は好適には、微粒子状流動層触媒の全質量に対して、二酸化ケイ素を5〜40質量%、好ましくは10〜25質量%、ゼオライトを60〜95質量%、好ましくは75〜90質量%含有する。
【0054】
特に好ましくは、本発明による触媒は、Mo、W、Re、Ir、Ru、Rh、Pt、Pd、及びこれらの混合物から成る群から、好ましくはMo、W、Re、及びこれらの混合物から成る群から選択される活性金属を、微粒子状流動層触媒の全質量に対して0.1〜20質量%含有する。
【0055】
さらなる好ましい実施態様によれば、微粒子状流動層触媒は、少なくとも1種の活性金属の他に、W、Cu、Ni、Fe、Co、Mn、Cr、Nb、Ta、Zr、V、Zn、Ga、及びこれらの混合物から成る群から、好ましくはW、Cu、Ni、Fe、及びこれらの混合物から成る群から選択される少なくとも1種のさらなる金属を含有する。
【0056】
本発明による流動層触媒の平均粒径は、10〜200μm、好ましくは20〜180μm、特に好ましくは50〜150μmである(Malvern社の装置(Malvern Mastersizer 2000)により測定)。
【0057】
本発明による実施のさらなる対象は、Mo、W、Re、Ir、Ru、Rh、Pt、Pd、及びこれらの混合物から成る群から、好ましくはMo、W、Re、及びこれらの混合物から成る群から選択される活性金属を0.1〜20質量%、及び任意でW、Cu、Ni、Fe、Co、Mn、Cr、Nb、Ta、Zr、V、Zn、Ga、及びこれらの混合物から成る群から、好ましくはW、Cu、Ni、Fe、及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種のさらなる金属を含有する本発明による流動層触媒を、C1〜C4脂肪族化合物の非酸化性脱水素芳香族化に用いる使用である。
【0058】
本発明によれば非酸化性条件とは、原料流E中の酸化剤、例えば酸素又は窒素酸化物の濃度が、5質量%未満、好ましくは1質量%未満、特に好ましくは0.1質量%未満である。極めて特に好ましいのは、酸素不含の混合物である。同様に特に好ましくは、混合物E中の酸化剤濃度が、C1〜C4脂肪族化合物に由来する供給源中の酸化剤濃度と同程度であるか、又はそれより低い。
【0059】
本発明のさらなる対象は、C1〜C4脂肪族化合物を含有する原料流を、原料流Eを上記流動層触媒の存在下で変換することによって、脱水素芳香族化するための方法である。
【0060】
原料流Eは好ましくは、炭素数が1〜4の少なくとも1種の脂肪族炭化水素を含有する。これらの脂肪族化合物に該当するのは例えば、メタン、エタン、プロパン、n−ブタン、i−ブタン、エテン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテンなどである。本発明の実施態様において原料流Eは、C1〜C4脂肪族化合物を少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも60mol%、特に好ましくは少なくとも70mol%、非常に好ましくは少なくとも80mol%、とりわけ少なくとも90mol%含む。
【0061】
脂肪族化合物の中でも、特に好ましくは飽和アルカンを使用し、この場合、原料流Eは1〜4個のC原子を有するアルカンを、好ましくは少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも60mol%、特に好ましくは少なくとも70mol%、非常に好ましくは少なくとも80mol%、とりわけ少なくとも90mol%含む。
【0062】
アルカンの中でもメタンとエタンが好ましく、とりわけメタンが好ましい。本発明の実施態様によれば原料流Eは、メタンを好ましくは少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも60mol%、特に好ましくは少なくとも70mol%、非常に好ましくは少なくとも80mol%、とりわけ少なくとも90mol%含む。
【0063】
1〜C4脂肪族化合物の供給源として好ましくは、天然ガスを使用する。天然ガスの典型的な組成は、以下の通りである:メタン75〜99mol%、エタン0.01〜15mol%、プロパン0.01〜10mol%、ブタン及び比較的高級な炭化水素最大6mol%、二酸化炭素最大30mol%、硫化水素最大30mol%、窒素最大15mol%、及びヘリウム最大5mol%。天然ガスは、本発明による方法で使用する前に、当業者に公知の方法に従って精製し、富化することができる。精製に該当するのは例えば、場合により天然ガス中に存在する硫化水素若しくは二酸化炭素の除去、及び後続の方法で望ましくないさらなる化合物の除去である。
【0064】
原料流E中に含まれるC1〜C4脂肪族化合物はまた、他の供給源由来であってよく、例えば石油精製の際に生じるものであり得る。C1〜C4脂肪族化合物はまた、再生により(例えばバイオガス)、又は合成により(例えばフィッシャー−トロプシュ合成)製造されていてよい。
【0065】
1〜C4脂肪族化合物の供給源としてバイオガスを使用する場合、原料流Eは付加的にさらにアンモニア、低級アルコールの痕跡、及びバイオガスに典型的なさらなる添加混合物を含むことができる。
【0066】
本発明の方法によるさらなる実施態様では、原料流EとしてLPG(Liquid Petroleum Gas)を使用することができる。本発明の方法によるさらなる実施態様によれば、原料流EとしてLNG(Liquid Natural Gas)を使用することができる。
【0067】
原料流Eに対して、付加的に水素、水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、並びに1つ又は複数の希ガスを添加混合することができる。
【0068】
本発明によればC1〜C4脂肪族化合物の脱水素芳香族化は、先に記載した本発明による触媒の存在下で、400〜1000℃、好ましくは500〜900℃、特に好ましくは600〜800℃、とりわけ700〜750℃の温度で、0.5〜100bar、好ましくは1〜50bar、特に好ましくは1〜30bar、とりわけ1〜10barの圧力で行う。本発明によれば、100〜10000h-1、好適には200〜3000h-1のGHSV(Gas Hourly Space Velocity)で変換を行う。
【0069】
もちろん、本発明に従って脱水素芳香族化で使用される触媒は、活性が弱まった場合、当業者に公知の通常の方法により再生することができる。本発明によれば触媒の再生は、水素によって行うのがとりわけ好ましい。これは例えば、原料流Eに水素を添加することによって行うことができる。水素流対原料流Eの比は通常、1:1000〜1:1、好ましくは1:500〜1:5である。しかしながらまた、原料流Eと水素を交互に、触媒を経て導くことも考えられる。
【0070】
W、Cu、Ni、Fe、及びこれらの混合物の群から選択される少なくとも1種のさらなる元素を含む本発明による触媒はとりわけ、水素で良好に再生できる。
【0071】
1〜C4脂肪族化合物の脱水素芳香族化は基本的に、従来技術から公知のあらゆる反応器タイプで行うことができる。適切な反応器形態は、固定床反応器、管型反応器、又は管束型反応器である。この場合、触媒は固定床として反応管内に存在するか、または反応管の管束中に存在する。同様に、本発明による触媒は流動層、移動床、流動床として、相応するそのために適した反応器タイプで使用することができ、脱水素芳香族化するための本発明による方法は、このように存在する触媒を用いて行うことができる。
【0072】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0073】
実施例
A 微粒子状流動層触媒の製造
A1.アンモニウム交換
ゼオライトとしては、市販で得られるH−ZSM−5型のゼオライト(Zeochem社)を用いた。このゼオライトは既にH型であったため、アンモニウム交換は一回だけ行った。
【0074】
このH−ZSM−5型ゼオライト19kgを、硝酸アンモニウム19kgを水170lに入れた溶液に入れ、2時間、80℃で撹拌した。冷却後にこの懸濁液をフィルタープレスで濾過し、そして水で洗浄した。最後にこのフィルターケーキを、120℃で一晩乾燥させた。
【0075】
A2.ゼオライトの粉砕
A1から得られるゼオライトを、撹拌ミル(Buehler DCP SF 12)での湿式粉砕により、ゼオライトの水性懸濁液(50%)として粉砕し、D90値を<3μmにした。
【0076】
A3.結合剤の添加、及び混合
A2から得られる水性ゼオライト懸濁液の一部をそれぞれ撹拌し、各結合剤の相応量をゆっくりと添加した。各触媒におけるゼオライト及びシリカの質量部はそれぞれ表に記載してあり、これはスプレー乾燥させた触媒粒子か焼後のゼオライト及びSiO2から得られる全質量に対するものである。この混合物を、1時間混合した。
【0077】
A4.スプレー乾燥
スプレー乾燥はA3から得られる懸濁液を用いて、市販のNiro社の噴霧乾燥機で、噴霧ガスとしては窒素を使用して行った。2個の異なるノズル、すなわち「二成分ノズル」と「圧力ノズル」を用いた。乾燥の間の温度は、100〜280℃であった。
【0078】
A5.か焼
A4から得られるスプレー乾燥した触媒粒子は、引き続き120℃で一晩、追加乾燥し、特に記載していなければ引き続き500℃で、4時間、空気雰囲気下でか焼した。
【0079】
A6.Moの施与
A5から得られる微粒子状触媒粒子1kgを、アンモニウムヘプタンモリブデート水溶液(>99%、Aldrich社)で含浸し、これにより触媒粒子上のモリブデン量は触媒の全質量に対して6質量%となり、ここで触媒粒子の細孔含浸に必要な量の水を用いた。この触媒を、1時間混合した。
【0080】
A7.乾燥及びか焼
A6から得られる触媒を引き続き120℃で1晩乾燥させ、500℃で4時間、空気雰囲気でか焼した。実施例1〜10から得られる触媒については、工程A1〜A5を行い、実施例11及び12から得られる触媒については、工程A1〜A7を行った。
【0081】
実施例1(本発明による)
結合剤としては、シリコーン樹脂予備縮合物としてメチルメトキシシロキサンを使用し、これはSilres(登録商標)MSE 100という市販名でWacker Silikon社から手に入るものである。Silres(登録商標)MSE 100は、ポリメトキシメチルシロキサン/メチルシルセスキシロキサンを60〜100質量%、トルエンを1〜5質量%、及びメタノールを様々な量で含む。スプレー乾燥は、二成分ノズルを用いて行った。
【0082】
実施例2及び3(本発明によらない)
結合剤としては、コロイド状シリカI(水中で40%の懸濁液)を使用する(Ludox(登録商標)AS 40Aldrich社)。スプレー乾燥は、二成分ノズルを用いて行った。
【0083】
実施例4(本発明によらない)
結合剤としては、コロイド状シリカII(非晶質のコロイド状シリカ粒子を水に分散させたもの)を使用する。SiO2の濃度は、30質量%である(Nalco(登録商標)DVSZN006、Nalco Company社)。スプレー乾燥は、二成分ノズルによって行った。
【0084】
実施例5(本発明によらない)
結合剤としては、SiO2含分が34質量%であり、平均アグリゲート径が0.3μmのシリカの水性懸濁液I(AERODISP(登録商標)WS1836、Evonik社)を用いた。スプレー乾燥は、二成分ノズルを用いて行った。
【0085】
実施例6(本発明によらない)
結合剤としては、シリカ懸濁液II(熱分解法ケイ酸の水性懸濁液)を使用したのだが、これはAEROSIL(登録商標)200 という名称で、Evonik社から得られるものである。スプレー乾燥は、二成分ノズルを用いて行った。
【0086】
実施例7(本発明による)
結合剤としては、実施例1から得られるシリコーン樹脂予備縮合物を用いた。スプレー乾燥は、圧力ノズルを用いて行った。
【0087】
実施例8(本発明による)
結合剤としては、実施例1から得られるシリコーン樹脂予備縮合物を用いた。スプレー乾燥は、圧力ノズルを用いて行った。
【0088】
実施例9(本発明によらない)
結合剤としては、実施例1から得られるシリコーン樹脂予備縮合物を用いた。スプレー乾燥の際には、圧力ノズルを用いた。実施例8とは異なり、水性ゼオライト懸濁液と、シリコーン樹脂予備縮合物との混合物を、混合後に静置し、スプレー乾燥の前に均質化を行わなかった。有機相は、スプレー乾燥の前に分離した。
【0089】
実施例10(本発明による)
触媒粒子の製造の際には、実施例8と同様に行ったのだが、その相違点は、スプレー乾燥及び追加乾燥後に、実施例8のように500℃ではなく、800℃で一晩か焼したことである。
【0090】
実施例11(本発明によらない)
実施例4から得られる触媒粒子に、A6及びA7のようにMoを施与した。
【0091】
実施例12(本発明による)
実施例1から得られる触媒粒子に、A6及びA7のようにMoを施与した。
【0092】
実施例13(本発明による)
実施例1に記載のように行ったのだが、メチルメトキシシロキサンの量は、ゼオライト量が完成した触媒で71質量%であるように選択した。
【0093】
実施例14(本発明による)
結合剤としては、実施例1から得られるシリコーン樹脂予備縮合物(ポリメトキシシロキサン)と、実施例4から得られるコロイド状シリカIIとの混合物を使用した。これら2つの成分は、ゼオライトに添加する前に、60℃で混合した。ゼオライト2500gに、結合剤1000g(結合剤の固体量)を、ポリメトキシシロキサン:コロイド状シリカIIの質量比が0.25:1であるように使用した(ポリメトキシシロキサン20質量%:コロイド状シリカII80質量%に相当)。スプレー塔入口での温度は、280℃であった。
【0094】
実施例15(本発明による)
実施例13と同様に行ったのだが、ここでポリメトキシシロキサン対コロイド状シリカIIの質量比は、1:1であった(ポリメトキシシロキサン50質量%:コロイド状シリカII50質量%に相当)。
【0095】
実施例16(本発明による)
実施例14と同様に行ったのだが、か焼は800℃で行った。
【0096】
実施例17(本発明による)
実施例13と同様に行ったのだが、ここでポリメトキシシロキサン対コロイド状シリカIIの質量比は、2.3:1であった(ポリメトキシシロキサン70質量%:コロイド状シリカII30質量%に相当)。
【0097】
実施例18(本発明による)
実施例13と同様に行ったのだが、ここでポリメトキシシロキサン対コロイド状シリカIIの質量比は、4:1であった(ポリメトキシシロキサン80質量%:コロイド状シリカII20質量%に相当)。
【0098】
実施例19(本発明による)
実施例17と同様に行ったのだが、か焼は800℃で行った。
【0099】
実施例20(本発明による)
実施例17と同様に行ったのだが、ここでスプレー塔入口での温度は、155℃であった。
【0100】
実施例21(本発明による)
実施例13と同様に行ったのだが、ここでポリメトキシシロキサン対コロイド状シリカIIの質量比は、9:1であった(ポリメトキシシロキサン90質量%:コロイド状シリカII10質量%に相当)。
【0101】
実施例22(本発明による)
実施例18から得られる触媒には、処置A6及びA7のようにMoを6質量%施与し、ここでアンモニウムヘプタモリブデートによる含浸、及び120℃での乾燥の後に、硝酸ニッケル(<99%、Aldrich社)による第二の含浸を行い、これにより触媒粒子上のNi量は、触媒の全質量に対して0.5質量%となった。この触媒を再度120℃で乾燥させ、引き続き5時間、500℃でか焼した。
【0102】
B 摩耗度の特定
摩耗度の測定は、ジェット摩耗装置でASTM D5757と同様に行った。
【0103】
摩耗試験は、機械的負荷をシミュレーションし、ここでは流動体(例えば触媒)を気体/固体流動層にさらし、そして摩耗度と、固体挙動を記述する微粒子割合が得られる。摩耗装置は、ノズルトレー(穴の直径=0.5mm)から成り、このトレーはガラス管と、気密かつ液密に結合されている。ガラス管の上部には、円錐型の拡張部を有する鋼管が、同様に気密に、かつ固体が入らないように固定されている。この装置は、4barの圧縮空気ネットワークに接続されている。減圧弁は、装置の圧力を2bar(絶対圧)に低下させる。この装置に、触媒を60.0kg満たす。試験実施のための圧縮空気量は、350l/hである。この装置自体は、雰囲気条件下(1bar、20℃)で稼働させる。粒子/粒子の衝突と、粒子/壁面の衝突により、ノズルでの気体速度が高いことに基づき、粒子は摩滅及び/又は微細化する。排出された固体は、継ぎ手管を介して濾紙(細孔幅10〜15μm)製のケースへと到達する。堆積した固体(粒子<20μm)は、1時間後に秤量し(微粒子含分と定義)、また5時間後に秤量する(摩耗と定義)。摩耗度は、1時間目から6時間目の間に1時間毎に、秤量した固体量に対して排出された固体として定義される。摩耗度[g/kg h]=1時間予備負荷後、5時間での排出量/(5×秤量)。
【0104】
以下に記載する摩耗度は、Moの施与前に測定した。
【0105】
実施例1〜6から得られる触媒についての摩耗度の測定結果は、表1にまとめてある。結合剤としてシリコーン樹脂予備縮合物を用いて本発明により製造された実施例1の触媒粒子が、最良の摩耗耐性を示すことが、明らかに見て取れる。
【0106】
【表1】

【0107】
結合剤濃度の影響は実施例7及び8により、表2で示されており、これによれば少量の結合剤によってより良好な耐摩耗性が得られる。表2はさらに、実施例9についての摩耗試験結果を有しており、これは単に水相を、有機相分離後にスプレー乾燥に送ったものである。この実施例からわかるように、工程IIIで得られる混合物の均質化を、スプレー乾燥の前に省略することにより、明らかに摩耗度が悪化した触媒粒子につながる。
【0108】
【表2】

【0109】
表3には、実施例8及び10から得られる触媒についての摩耗度の測定結果、また実施例13〜20から得られる触媒についての摩耗度の測定結果が記載されている。高いか焼温度により、改善された摩耗度を有する触媒につながる。
【0110】
【表3】

【0111】
本発明によるシリコーン樹脂予備縮合物を用いることにより、特に従来結合剤として公知のコロイド状シリカを同時に用いると、完成した触媒成形体の摩耗度が明らかに改善される。このことは特に、実施例13〜20を実施例4と比較することにより明らかになる。特に良好な結果は、シリコーン予備縮合物と、コロイド状シリカとの混合物(質量比は4:1)によって得られる。
【0112】
C N2吸収測定
実施例1(本発明による)及び実施例4(本発明によらない)から得られる触媒については、窒素吸収等温性(Stickstoffabsorptionsisothermen)を測定する。この測定は、Quantachrom Autosorb 6bを用いて行った:窒素吸収は−196℃、出発温度200℃、排ガス時間14時間で行い、細孔体積の測定は、DR法で行った。
【0113】
この測定値は、表4に記載の通りである。実施例1から得られる触媒は、クラスI(IUPAC分類)の窒素吸収等温性を示すが、これに対して実施例4から得られる触媒は、クラスIVの窒素吸収等温性を示す。このことはさらに、実施例4から得られる触媒が、実施例1から得られる本発明による触媒(多くの細孔が、メソ多孔性範囲〜マクロ多孔性範囲(細孔直径>2nm)を有する)よりも、ナノメーター範囲の細孔サイズ(細孔直径<2nm)で多くのミクロ細孔を有することを示している。
【0114】
【表4】

【0115】
D メタンの非酸化性脱水素芳香族化
各触媒100gで、流動床反応器で試験を行った。流速100NL/hのメタン流を反応器に通すことによって、反応温度に達するまで、反応前に触媒を較正した。この流速は、常圧及び常温に対して算出したものである。反応は、700℃、2.5barで直ちに連続して開始し、CH4/Heの混合物(90:10)を用いて、流速20 NL/hで行った。触媒は規則的な間隔で、水素を4bar、750℃で通すことにより再生した。反応サイクルは、10時間であった。
【0116】
実施例1から得られる本発明による触媒についての結果、また本発明によらない実施例4から得られる触媒についての結果は、表5にまとめてある。XCH4とは、使用したメタンの全量に対する、変換されたメタンの割合を言う(%);SCH6H6とは、変換されたメタンの量に対するベンゼンの割合を言う(%)。Mo濃度の記載は、Moを含む触媒の全質量に対するものである。
【0117】
【表5】

【0118】
本発明によらない触媒(実施例11)についての測定は、6回目のサイクルの後に中止した。と言うのも、わずか50%という選択性は、経済的有用性の観点では意味がないからである。本発明により、結合剤としてシリコーン予備縮合物を含有する触媒が、同等のメタン反応率でベンゼンに対してより良好な選択性を有することが、明らかにわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si結合された流動層触媒の製造方法であって、
以下の工程I〜IV:
I.ゼオライト粒子含有水性懸濁液を用意する工程、
II.1種又は複数種の加水分解性シリコーン樹脂予備縮合物を含有するシリコーン樹脂混合物を添加し、前記水性懸濁液と前記シリコーン樹脂混合物とを混合する工程、
III.前記工程IIから得られる混合物をスプレー乾燥する工程、ここで前記混合物はスプレー乾燥前に均質化し、
IV.前記工程IIIから得られるスプレー乾燥した流動層触媒をか焼する工程
を有する、前記製造方法。
【請求項2】
前記工程IVの後に、以下の工程V:
V.少なくとも1種の活性金属を、前記工程IVから得られる流動層触媒に施与し、引き続き前記流動層触媒を任意で乾燥させ、かつ/又は任意でか焼する工程、
を行うことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程IとIIとの間に、
Ia ゼオライト粒子含有水性懸濁液を湿式粉砕する工程
を行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記工程Iの前に、ゼオライト粒子について以下の工程i)〜iv):
i)NH4含有混合物で処理することによりアンモニウム交換を行う工程、
ii)ゼオライト粒子を乾燥及びか焼する工程、
iii)NH4含有混合物で処理することにより、2回目のアンモニウム交換を行う工程、
iv)ゼオライト粒子を任意で乾燥させ、かつ/又は任意でか焼する工程
を行うことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記シリコーン樹脂混合物が、加水分解性のC1〜C6アルコキシ官能化されたシリコーン樹脂予備縮合物を少なくとも1種含有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記シリコーン樹脂混合物が、加水分解性のメチルメトキシシロキサン、オリゴメチルメトキシシロキサン、ポリメチルメトキシシロキサン、又はこれらの混合物を含有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記シリコーン樹脂混合物がさらに、水よりも沸点が高い溶剤を含有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記水性懸濁液中の前記ゼオライト粒子が、≦10μmのD90値を有することを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記工程IIで、少なくとも1種のさらなるSi含有結合剤を用いることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法により製造可能な微粒子状流動層触媒。
【請求項11】
前記流動層触媒が、当該流動層触媒の全質量に対して、
二酸化ケイ素5〜40質量%、及び
ゼオライト60〜95質量%
を含有する、請求項10に記載の微粒子状流動層触媒。
【請求項12】
ペンタシル構造及び/又はMWW構造を有するゼオライトを含有することを特徴とする、請求項9又は10に記載の微粒子状流動層触媒。
【請求項13】
前記微粒子状流動層触媒が、Mo、W、Re、Ir、Ru、Rh、Pt、Pd、及びこれらの混合物から成る群から選択される活性金属を、当該微粒子状流動層触媒の全質量に対して0.1〜20質量%含有する、請求項9から12までのいずれか1項に記載の微粒子状流動層触媒。
【請求項14】
W、Cu、Ni、Fe、Co、Mn、Cr、Nb、Ta、Zr、V、Zn、及びGaから成る群から選択される別の金属を、少なくとも1種含有することを特徴とする、請求項12に記載の微粒子状流動層触媒。
【請求項15】
1〜C4脂肪族化合物を非酸化的に脱水素芳香族化するための、請求項13又は14に記載の流動層触媒の使用。
【請求項16】
1〜C6脂肪族化合物を含有する原料流Eを、請求項13又は14に記載の流動層触媒の存在下で変換することによる、C1〜C4脂肪族化合物を非酸化的に脱水素芳香族化するための方法。

【公表番号】特表2013−507234(P2013−507234A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532574(P2012−532574)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064876
【国際公開番号】WO2011/042451
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】