説明

SiC単結晶の昇華成長方法

SiC昇華結晶成長において、坩堝は、間隔を隔ててSiC原料とSiC種結晶とが充填され、邪魔板は、成長坩堝内の種結晶の周囲に配置されている。成長坩堝内の邪魔板の第1側面は、SiC種結晶上にSiC単結晶を成長する成長領域を画定する。成長坩堝内の邪魔板の第2側面は、SiC単結晶の周囲の気化ガス捕獲トラップを画定する。SiC原料を昇華させて、SiC種結晶上へ気化ガスを析出することにより、SiC結晶を成長する成長領域に移送する気化ガスを形成するような成長温度に坩堝は加熱される。この気化ガスの一部は、SiC結晶の成長中に成長領域から取り除かれる気化ガス捕獲トラップに入る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は、SiC単結晶の物理的気相輸送(Physical Vapor Transport)成長に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
4H及び6Hの結晶多形の炭化珪素ウエハは、SiC系及びGaN系のパワーデバイス及びRFデバイスのための半導体デバイスの製造のために用いられるSiC及びGaNのエピタキシャル層を成長させるための格子整合基板としての機能を果たす。
【0003】
大きな工業規模のSiC単結晶は、通称物理的気相輸送(PVT)である昇華技術により成長されている。PVT成長は、通常グラファイト製の坩堝の中で実施され、坩堝は、典型的には坩堝の底部に配置された固体のSiC昇華原料と、典型的には坩堝の頂部に配置されたSiC種単結晶とを含む。昇華原料は、通常、別に合成された多結晶のSiC粒である。負荷が加えられた坩堝は、炉内に配置され、一般的には2000℃〜2400℃の成長温度まで加熱される。成長中、原料の温度は、種結晶の温度よりも10℃〜200℃高くなるように保持される。
【0004】
適した高温に達すると、昇華源は気化し、Si、Si2C、及び/またはSiC2のような気化ガス種で坩堝の内部を満たす。昇華源と種結晶との温度差により、種結晶上に気化ガス種が移動及び析出し、これにより種結晶上にSiC単結晶を成長させる。成長速度を制御し、これにより良好な結晶品質を製造するために、典型的には1Torr〜100Torrの低圧の不活性ガスの存在下でPVT成長が行われる。
【0005】
一般的に、基本的なPVT配置を用いて成長されたSiC結晶は、介在物(inclusions)、マイクロパイプ、転位などの構造的な欠陥の問題がある。カーボン、シリコン、及び異質な結晶多形の介在物は、通常Si:Cの原子比で表される、気相での化学量論からはずれることによって生じると、一般的には考えられている。気相中のSi:Cの原子比が1よりも大きくなるようにSiCが昇華することがよく知られている。SiC原料の状態(粒の構造、大きさ、結晶多形の組成物、化学量論、温度など)によって、昇華原料からの気化ガス中のSi:Cの割合は、1.5以上にもなる場合がある。気化ガス中のSi:Cの割合が非常に高い場合には、成長しているSiC結晶中にシリコン介在物が形成される。逆に言えば、気化ガス中のSi:Cの原子比が非常に低い場合には、成長しているSiC結晶中にカーボン介在物が形成される。
【0006】
六方晶系の4H及び6Hの結晶多形のSiC結晶15の安定した成長は、カーボンリッチの気相を必要とし、15Rのような異質な結晶外形の介在物は、気相の化学量論からはずれることにより生じると考えられている。
【0007】
SiC昇華原料が金属炭化物を含有している場合には、金属炭化物の介在物はSiC単結晶の成長中に見られる。
【0008】
PVT成長されたSiC単結晶中の介在物により局所的な応力が加えられ、介在物は転位及びマイクロパイプの発生、増加、及び移動により取り除かれる。SiC単結晶ウエハはGaNまたはSiCのエピタキシーの基板として用いられ、基板中の介在物、マイクロパイプ、転位の存在は、エピ層の品質及び前記エピ層上に形成された半導体デバイスの性能に有害である。
【0009】
PVT成長技術が始まってから、成長された結晶の品質を向上し、かつ欠陥密度を低減するために、多くのプロセスの変更がなされてきた。
【0010】
例えば、ハンター(Hunter)の米国特許第5,858,086号明細書(以降、「‘086特許」と言う)は、昇華法によるAlN(窒化アルミニウム)結晶の成長のためのシステムを開示している。ハンターの‘086特許において開示されたシステムの回路図は図1に示されている。図1において、AlN原料4からの気化ガス2はAlN種結晶8の前の空間6に入り、前記種結晶8上に析出し、AlN結晶10を成長させる。AlN結晶10の成長が進むと、成長している結晶10を取り囲む気化ガス2は停滞し、汚染され、概して高品質のAlN結晶10の成長に不適切になる。この不備を避けるために、穴が開けられた邪魔板12がAlN種結晶8及びAlN結晶10が成長する空間の周囲に配置されている。図1に示すように、邪魔板12はAlN源4に向けて延在する。矢印18に示されるように、穴が開けられた邪魔板12を通る気化ガス2の一部が、ベント19の1以上の穴を介して、成長坩堝14の内部から、成長坩堝14の外側の空間に逃げることができる隙間(gap)16が画定されるように、邪魔板12を取り囲む成長坩堝14の部分は構成されている。
【0011】
バラクリッシュナ(Balakrishna)などの米国特許第5,985,024号明細書は高純度のSiC単結晶の成長のためのシステムを開示している。バラクリッシュナなどの特許に開示されたシステムの回路図は図2に示されている。図2において、Si昇華原料22からのシリコン気化ガス20は、外部から供給されるカーボンを含有するガス26と混合されて、SiC種結晶24に向けて上昇する。Si及びCを含有する気化ガス間の反応の結果として生成されるSiC気化ガス28は、SiC種結晶24に到達し、その上で析出し、これによりSiC種結晶24上にSiC単結晶を成長させる。使用済みのSiC気化ガス28、ガス及びガス状の汚染要因物は、好ましくは高純度の炭化珪素または炭化タンタルからなる保護ライナー36とSiC結晶30との間の隙間34、及び成長坩堝32の頂部の1以上の穴またはベント38を介して、成長坩堝32の内部から成長坩堝32の外部の空間へ逃げる。多孔質の壁40は、保護ライナー36を成長坩堝32内の適切な位置で支持する。
【0012】
ハンター(Hunter)の米国特許第6,045,613号明細書(以降、「‘613特許」と言う)は、図3に示されたSiC結晶成長システムを開示している。図3において、CまたはNに加えて、Si昇華原料50からのSi気化ガス48が、SiCまたはSiN単結晶種54に向けて上昇し、SiCまたはSiN結晶56のそれぞれを成長させる(図3に示される成長システムはAlN結晶を成長するためにも利用され得る)。‘086特許(図1)と同様に、使用済みまたは汚染されたガス及び気化ガス48、52は、成長坩堝59の頂部に設けられた1以上のベントまたは穴58を介して、成長坩堝59に逃がされる。成長坩堝59の外部に排出されると、逃がされた気化ガス48、52は、成長坩堝の外部の専用のゲッタリング炉(図示せず)で処理される。
【0013】
ハンター(Hunter)の米国特許第6,086,672号明細書は、上述したハンターの‘086特許(図1)に開示されている成長システムと同様のAlN−SiC結晶合金の成長システムを開示している。
【0014】
ツベトコブ(Tsvetkov)の米国特許第7,323,052号は、点欠陥密度が低減されたSiC単結晶の昇華成長を開示している。このような欠陥の原因は、気化ガス種がシリコンを多く含有していることと考えられている。この特許に開示された装置の回路図は、図4に示されている。図4において、グラファイト製の成長坩堝60は、チャンバ62の底部のSiC原料64と、チャンバ62の頂部のホルダー68に配置されたSiC種結晶66とを有する昇華チャンバ62を画定する。種結晶66上のSiC結晶70の成長中、気化ガスの化学量論を最適化するために、成長坩堝60の内部から、成長坩堝60の頂部の1以上の排出口を介して、成長坩堝60の外部のチャンバまたは空間76に、SiC気化ガス74の一部は排出される。チャンバ76は、成長坩堝60の外部と、炉チャンバの外壁78の内部との間に画定されている。適切な断熱材80は、典型的にはチャンバ76内に存在する。
【0015】
一般的に、高密度で、小さい粒のグラファイトからなる坩堝は、SiC昇華結晶成長に利用される。ここで、高密度または隙間のないグラファイトは、1.70〜1.85g/cm3の密度、数μm〜数十μmの粒径、及び約10%の多孔率を有するグラファイトである。このようなグラファイトは、N2、Ar、He、CO、CO2、HClなどのような一般的なガスに対して高い透過性を有することを当業者は認識している。しかしながら、高密度のグラファイトは、SiCの昇華の結果形成された気化ガス(Si、Si2C及びSiC2)に対して非常に低い透過性を示す。SiCの昇華成長中に受ける高密度のグラファイトからなる閉鎖性の坩堝からの気化ガスの損失は、数グラムを超えないので、坩堝から十分にまたは望ましい気化ガスの除去を十分に提供できない。このSiを有する気化ガスに対する高密度グラファイトの低い透過性は、排出の目的のために上述した従来技術の成長坩堝中に特別な穴またはベントが作製される主な理由である。
【0016】
低密度の多孔性グラファイトは、SiC昇華の結果形成されるSiを含有する気化ガスに対して高い透過性を示すことが知られている。ここで、低密度グラファイトは、0.8〜1.6g/cm3の密度、30〜60%の多孔率、及び1〜100μmの細孔径を有するグラファイトである。このような低密度グラファイトの特性は、ツベトコブなどの米国特許第7,323,052号で利用されており、図4に示される排出口72の代わりに、坩堝60の1以上の部分が、特にシリコン気化ガス原子に対して透過性のある低密度グラファイトからなる。前記低密度グラファイトを介してチャンバ76に拡散することにより、成長坩堝60の内部からSi原子は抜け、これによりSiC結晶70が成長するチャンバ62の領域に、気化ガス74のSi含有量を低減することができる。
【0017】
要するに、前述の従来技術は、例えば、チャンバ、及び、典型的には断熱材が存在する炉チャンバの外壁と成長坩堝との間に形成された空間のように、成長坩堝の内部から成長坩堝の外部の空間に前記気化ガスを排出することによって、成長する結晶を取り囲む空間から部分的に気化ガスを除去することを教示している。
【0018】
しかしながら、チャンバから気化ガスを排出することは、問題を有する。具体的には、成長坩堝を取り囲むチャンバまたは空間は、通常、純化され、軽量の繊維状グラファイトからなる断熱材で塞がれている。Siを含有する気化ガスは、グラファイト、特に軽量のグラファイトに対して非常に反応性が高い。気化ガスにより生じる断熱材の分解により、坩堝、それ故に原料及び結晶の温度変化を制御できない。これは、成長プロセス及び結晶品質に悪影響を及ぼす。
【0019】
坩堝からチャンバへの気化ガスの逃げ道の別の影響は、高価な断熱材のサービス時間を低減することにある。逃がした気化ガスの処理のための専用のゲッタリング炉の利用は、‘613特許で教示されているように、成長システムを複雑にし、費用がかかる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明の概要
本発明は、2”、3”、100mm、125mm及び150mmの直径を含む工業規模の基板の製造に適した高品質のSiC単結晶の成長のための改良されたSiC昇華結晶成長のプロセス及び装置である。結晶成長の坩堝は、封止されたグラファイト製の坩堝内に間隔を隔てて配置されたSiC原料の粒及びSiC種結晶を含む。成長中、SiC原料は、Si、Si2C、及びSiC2のような揮発性気化ガス種に蒸発する。坩堝の内部に温度勾配を形成すれば、これらの気化ガス種が種結晶に移動及び析出し、これにより種結晶上にSiC単結晶を成長させる。
【0021】
SiC結晶成長の坩堝は、成長坩堝内の種結晶の周囲に配置された邪魔板を含み、前記邪魔板は、前記成長坩堝においてSiC単結晶が種結晶上に成長する成長領域を第1側面で画定し、前記邪魔板は、前記成長坩堝において種結晶の周囲の気化ガス捕獲トラップ(vapor-capture trap)を第2側面で画定する。該気化ガス捕獲トラップは、成長坩堝において、種結晶上へのSiC単結晶の成長中に、種結晶よりも温度が低い場所に位置付けられていてもよい。気化ガスを捕獲するトラップ内の温度は、種結晶の温度よりも3℃〜20℃低くてもよい。坩堝は、気化ガス捕獲トラップに向けて気化ガスを移動させ、その中に入ることが可能な経路を含むように設計される。
【0022】
気化ガス捕獲トラップに到達すると、Siを有する気化ガスは過冷却され、気化ガス捕獲トラップ内では固形状の多結晶のSiCの堆積物を形成するように析出する。このプロセスの結果として、成長しているSiC単結晶の近辺から気化ガスの一部が取り除かれる。つまり、SiC単結晶の成長界面の近辺から気化ガスが取り除かれる。同時に、結晶の品質に有害で不要な気化ガスの成分も取り除かれる。これらの有害な成分は、揮発性の汚染物と同様に、過度のSiまたはCを含有する気化ガスを含む。
【0023】
SiC結晶の成長坩堝は、気化ガス捕獲トラップ内に配置され、種結晶上へのSiC単結晶の成長中に生成される気化ガスを吸収する働きをする、多孔質の気化ガス吸収部材をさらに含んでいてもよい。
【0024】
多孔質の気化ガス吸収部材は、気化ガス捕獲トラップにおいて、種結晶上へのSiC単結晶の成長中の種結晶の温度よりも低い温度になる場所に配置されてもよい。種結晶上へのSiC単結晶の成長中の気化ガス吸収部材の温度は、種結晶の温度よりも3℃〜20℃低くてもよい。坩堝は、多孔質の気化ガスを吸収部材に向けて気化ガスを移動させ、析出させ、反応させることが可能な径路を含むように設計されることが好ましい。
【0025】
気化ガスが気化ガス吸収部材に到達すると、気化ガスは気化ガス吸収部材の孔に広がり、部材の材料と化学的に反応し、固体の生成物を形成する。このプロセスの結果、成長しているSiC単結晶の近辺から気化ガスの一部が取り除かれる。同時に、結晶品質に有害な不要な気化ガスの成分も取り除かれる。これらの有害な成分は、揮発性の汚染物と同様に、過度のSiまたはCを含有する気化ガスを含む。
【0026】
一実施形態では、気化ガス吸収部材は、好ましくは0.8〜1.6g/cm3の密度、好ましくは30%〜60%の多孔率、好ましくは1μm〜100μmの細孔径を有する純化された多孔質のグラファイトからなる。
【0027】
成長坩堝の内部の気化ガス吸収部材の使用は、介在物、マイクロパイプ及び転位のような欠陥密度を低減したSiC単結晶ブール(boules)の成長を促進する。
【0028】
より具体的には、本発明は、SiC単結晶の昇華成長のための装置であり、間隔を隔てた原料及び種結晶を受け、種結晶上へのSiC単結晶の昇華成長中に生成される気化ガスの前記成長坩堝内部からの逃げ道を実質的に防止する働きをする成長坩堝と、成長坩堝内の種結晶の周囲に配置された邪魔板とを含み、前記邪魔板は、前記成長坩堝において種結晶上にSiC単結晶を成長する成長領域を第1側面で画定し、前記邪魔板は、前記成長坩堝において種結晶の周囲に気化ガスを捕獲する空間(以降、「気化ガス捕獲トラップ」と言う)を第2側面で画定する。
【0029】
種結晶上へのSiC単結晶の昇華成長中に生成される気化ガスの逃げ道を実質的に防止するためには、前記成長坩堝は、種結晶上へのSiC単結晶の昇華成長中に生成される気化ガスの経路に対して実質的に不浸透である材料からなっていてもよく、成長坩堝の内部から外部において、種結晶上へのSiC単結晶の昇華成長中に生成される気化ガスを逃がすための意図的な経路または孔を含まなくてもよい。
【0030】
気化ガス捕獲トラップは、種結晶上へのSiC単結晶の昇華成長中の単結晶の温度よりも成長坩堝において低い場所に位置付けられてもよい。
【0031】
装置は、気化ガス捕獲トラップ内に、種結晶上へのSiC単結晶の昇華成長中に生成される気化ガスを吸収する働きをする気化ガス吸収部材をさらに含んでいてもよい。
【0032】
気化ガス吸収部材は、気化ガス捕獲トラップにおいて、種結晶上へのSiC単結晶の成長中の種結晶の温度よりも気化ガス吸収部材が低い温度となる場所に配置されてもよい。
【0033】
種結晶上へのSiC単結晶の成長中の気化ガス吸収部材の温度は、種結晶の温度よりも3℃〜20℃低くてもよい。
【0034】
気化ガス吸収部材は、0.8〜1.6g/cm3の密度、30%〜60%の多孔率、及び1〜100μmの細孔径を有する多孔質のグラファイトからなっていてもよい。
【0035】
邪魔板は、気化ガスが気化ガス捕獲トラップへ流れるように前記成長坩堝内の経路を画定してもよい。
【0036】
成長坩堝は、その頂部と原料とに介在し、種結晶を支持する台座を含んでいてもよい。台座は、5mm〜25mmの高さを有していてもよい。経路は、邪魔板の内径と、台座の外径との間の隙間を備えていてもよい。隙間は、1mm〜8mmの幅を有していてもよい。経路は、邪魔板中の1以上の孔を備えていてもよい。
【0037】
本発明は、SiC昇華成長方法でもあり、(a)間隔を隔てた原料と種結晶で満たされた成長坩堝と、成長坩堝において種結晶の周囲に配置され、種結晶上への単結晶を成長する成長領域を第1側面で画定し、種結晶の周囲の気化ガス捕獲トラップを第2側面で画定する邪魔板とを提供する工程と、(b)原料を昇華させて、種結晶上への気化ガスの析出によって単結晶を成長させる成長坩堝の成長領域に温度勾配によって移送される気化ガスを形成させるように、成長チャンバ内に温度勾配を形成するような成長温度にステップ(a)の成長坩堝を加熱する工程とを備え、気化ガスの一部は気化ガス捕獲トラップに入る。
【0038】
気化ガス捕獲トラップに入る気化ガスは、結晶の成長中に、気化ガス捕獲トラップに堆積物を形成することにより成長領域から取り除かれてもよい。原料、種結晶、及び単結晶の少なくとも1つは、SiCであってもよい。
【0039】
気化ガス捕獲トラップは、成長坩堝において、種結晶上への単結晶の成長中の種結晶の温度よりも低い温度の場所に位置付けられていてもよい。
【0040】
気化ガス吸収部材は、気化ガス捕獲トラップの内部に配置されていてもよい。気化ガス捕獲トラップに入る気化ガスは、結晶の成長中に、限定されないが、気化ガス吸収部材と化学的に反応し、堆積物を形成することにより、成長領域から取り除かれてもよい。
【0041】
気化ガス吸収部材は、単結晶の成長中の種結晶よりも低い温度であってもよい。
【0042】
気化ガス吸収部材は、0.8〜1.6g/cm3の密度、30%〜60%の多孔率、及び1〜100μmの細孔径を有する多孔質のグラファイトからなっていてもよい。
【0043】
気化ガス捕獲トラップに形成される堆積物の重量は、成長された結晶の重量の5%〜20%であってもよい。異なる言い方をすれば、気化ガス吸収部材により吸収された気化ガスの重量は、成長された結晶の5%〜20%であってもよい。
【0044】
邪魔板は、気化ガスが気化ガス捕獲トラップに流れる経路を画定してもよい。ステップ(a)の成長坩堝は、その頂部と原料とに介在し、種結晶を支持する台座をさらに含んでいてもよい。経路は、邪魔板の内径と、台座の外形との間の隙間を備えていてもよい。
【0045】
経路は、邪魔板の壁において少なくとも1つの穿孔を備えていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図面簡単な説明
【図1】従来技術の昇華法による結晶の成長のシステムを示す。
【図2】従来技術の昇華法による結晶の成長のシステムを示す。
【図3】従来技術の昇華法による結晶の成長のシステムを示す。
【図4】従来技術の昇華法による結晶の成長のシステムを示す。
【0047】
【図5】本発明にしたがった昇華法による結晶、特にSiC結晶の成長のシステムを示す。
【図6】本発明にしたがった昇華法による結晶、特にSiC結晶の成長のシステムを示す。
【図7】本発明にしたがった昇華法による結晶、特にSiC結晶の成長のシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本発明の詳細な説明
本発明は、対応する要素には同様の参照符号を付した図5〜7を参照して、説明される。
【0049】
図5を参照して、SiC、好ましくはSiC単結晶のPVT成長は、間隔を隔てたSiC原料104の粒及びSiC種結晶106を含むグラファイト製の坩堝102内で実施される。好ましくは、原料104は、坩堝102の底部に配置され、種結晶106は坩堝102の頂部に配置される。種結晶106は、例えば坩堝102の蓋108に取り付けられる。好ましい昇華成長温度に達すると、SiC原料104は昇華し、坩堝102の内部に、Si、Si2C、及びSiC2のような揮発性分子種のようなSiリッチの気化ガス種110で充填される。
【0050】
坩堝102の内部に鉛直の温度勾配を設けると、気化ガス110は種結晶106に向けた軸方向に移動し、種結晶106上で析出し、その上にSiC単結晶が成長する。成長しているSiC結晶112は、成長しているSiC結晶112に隣接する空間116を区切る邪魔板114により取り囲まれている。空間116は「成長領域」としても知られている。成長中、成長領域116は、気化ガスの析出、結晶成長、及びグラファイトの腐食の結果として現れる揮発性の副生成物で充填される。これらの副生成物は、過度のシリコンまたはカーボンと同様に不純物を含んでいてもよい。成長領域116中の気相の組成物におけるこのような不要な変化は、成長しているSiC結晶112の品質に悪影響を及ぼす。
【0051】
好ましくは、坩堝102は、坩堝102内部からの気化ガス110の逃げ道を「実質的に防止する」高密度のグラファイトで形成されている。坩堝102内部からの気化ガス110の逃げ道を「実質的に防止する」ために、坩堝102を形成する高密度のグラファイトは、気化ガス110に対して「実質的に不浸透」であり、坩堝102は、坩堝102の内部から気化ガス110の逃げ道のための意図的な穴またはベントを含まない。ここで、気化ガス110に対して「実質的に不浸透」である高密度のグラファイトからなる坩堝102の内部からの気化ガス110の逃げ道を「実質的に防止する」ことは、種結晶106上へのSiC単結晶112の成長中に坩堝102の内部からの気化ガス110のこのような損失が、坩堝102の壁及び蓋108を通る気化ガス110の拡散を介して生じ、種結晶106上へのSiC単結晶112の成長中の坩堝102の内部からの気化ガス110のこのような損失の合計が、最初のSiC原料104の重量の1%〜5%であることを意味する。
【0052】
成長領域内に気化ガス相組成物における上述した不要な変化を低減するために、気化ガス捕獲トラップ117は坩堝102の内部に設けられる。気化ガス捕獲トラップ117が坩堝内部で最も低い温度になるように、坩堝内の温度場は調整される。特に、気化ガス捕獲トラップ117は種106の温度よりも低いことが好ましい。SiC成長坩堝の内部の温度場を調整するための一般的なやり方は、有限要素熱モデルを用いることである。温度及び圧力の勾配を設けることで、気化ガス110は坩堝の頂部に向けて移動し、気化ガス捕獲トラップ117に到達し、限定されないが、例えば、蓋108に隣接する坩堝102の壁の内側表面上や、坩堝102の壁に隣接した蓋108の内側表面上など、気化ガス捕獲トラップ117内に析出して、固形の多結晶SiC堆積物126を形成する。固形の多結晶のSiC堆積物126の形成の結果として、気化ガスの一部は成長領域116から取り除かれる。図5における気化ガス捕獲トラップ117の形状は図示の目的のためのみであり、本発明を限定するように理解されず、この空間は、適切な及び/または好ましい如何なる形状を有していてもよい。
【0053】
気化ガスを吸収し、多孔質材料からなる気化ガス捕獲部材117a(図5において透視で示されている)は、成長領域116内の気相の組成物における不要な変化の低減を助けるために、坩堝102の内部に任意に配置されてもよく、好ましくは気化ガス捕獲トラップ117内に配置される。部材117aに到達した気化ガスは孔に浸透し、部材117aの材料と化学的に反応し、部材117aの上または中に固形の多結晶のSiC堆積物128を形成する。
【0054】
2つの考えられる気化ガスの流れは、成長領域116から、気化ガス捕獲トラップ117、提供される場合には部材117aに向けて流れ、図5において矢印118、120で示される。矢印118は、邪魔板114、例えば邪魔板114中の1以上の穿孔を通る、気化ガスの流れを示す。矢印120は、例えば邪魔板114と種結晶106の間に形成された隙間122、種結晶106、成長している結晶112、及び/または種結晶106がその上に搭載される種の台座124を通る、邪魔板114の周囲の気化ガスの流れを示す。邪魔板114は図5に示され、種結晶106、成長している結晶112、隙間122で画定される円錐の狭い開口部と、原料104に対向する円錐の広い開口部とを有する円錐形状を有する。しかしながら、円錐形状を有するような邪魔板114の図示は本発明を限定するように理解されず、邪魔板114が適切な及び/または好ましい如何なる形状を有することも想定される。
【0055】
好ましくは、気化ガス吸収部材117aは、純化されたグラファイトからなり、グラファイトは、好ましくは0.8〜1.6g/cm3の密度、好ましくは30%〜60%の多孔率、好ましくは1〜100μmの細孔径を有する、例えば低密度グラファイトである。気化ガス110と部材117aのカーボンとの化学反応により、部材117aの孔の上または中に固形の多結晶のSiC堆積物128を形成する。この反応及びSiC堆積物128の形成の結果、気化ガス110の一部は成長領域116から取り除かれる。同時に、揮発性汚染物と同様に、過度のSiまたはCを含有する気化ガスも、成長領域116から取り除かれる。
【0056】
続けて図5を参照し、気化ガス捕獲トラップ117は、成長領域116に背を向ける邪魔板114の側面、邪魔板144上の蓋108の一部、及び、蓋108と邪魔板144の低い方の端部との間の坩堝102の内壁の一部によって境界となる空間の全部または一部を備えていてもよい。提供される場合には、部材117aは、この空間内において適した及び/または好ましい如何なる場所に位置付けられていてもよい。好ましくは、気化ガス捕獲トラップ117は、坩堝102の内部の上部外側に隣接する空間136(図5において透視で示されている)を備えている。図5において、蓋108及び蓋108に隣接する坩堝102の内壁は、空間136の2つの境界で画定される。しかしながら、これは本発明を限定するように理解されない。提供される場合には、部材117aは、図5において透視で示されるように、空間136において適切な及び/または好ましい如何なる場所に位置付けられてもよい。
【0057】
気化ガス捕獲トラップ117、提供される場合には、気化ガス捕獲トラップ117中の気化ガス吸収部材117aがSiC結晶112の成長及び成長したSiC結晶112の品質を有益にするために、2つの極端なことを避けることが好ましい。一つの極端なこととして、気化ガスの非常に多くが成長領域116から取り除かれると、SiC結晶112の成長速度が非常に遅くなる。別の極端なこととして、成長領域116からほとんど気化ガスが取り除かれない場合、坩堝102内において、気化ガス捕獲トラップ117、提供される場合には気化ガス吸収部材117aの存在は、成長されたSiC結晶112の品質に有益な効果をもたらさない。
【0058】
気化ガス捕獲トラップ117、提供される場合には気化ガス捕獲トラップ117内の気化ガス吸収部材117aの有益な効果を実現するために、気化ガス捕獲トラップ117、提供される場合には気化ガス吸収部材117aにおけるSiC堆積物126または128の重量のそれぞれは、成長されたSiC単結晶112の重量の5%〜20%であることが好ましいことが実験結果から示される。例えば、気化ガス捕獲トラップ117のみがある場合(すなわち、気化ガス吸収部材117aがない場合)、気化ガス捕獲トラップ117中に形成されるSiC堆積物126の重量は、成長されたSiC単結晶112の重量の5%〜20%であることが好ましい。一方、気化ガス吸収部材117aが気化ガス捕獲トラップ117中に含まれる場合には、気化ガス吸収部材117a内に形成されたSiC堆積物128の重量は、成長されたSiC単結晶112の重量の5%〜20%であることが好ましい。
【0059】
気化ガス吸収部材117aが気化ガス捕獲トラップ117内に含まれているとき、SiC堆積物126の一部は、空間136に隣接する坩堝102の壁、蓋108の内面、あるいはその両方上にも形成されるかもしれないことは想定される。しかしながら、SiC堆積物126、128の合計は、成長されたSiC単結晶112の重量の5%〜20%であることが好ましいことが想定される。
【0060】
好ましくは、気化ガス捕獲トラップ117、提供される場合には気化ガス捕獲トラップ117中の気化ガス吸収部材117aで吸収された気化ガス110の量の制御は、気化ガス捕獲トラップ117、提供される場合には気化ガス捕獲トラップ中の気化ガス吸収部材117aの温度を制御することによって、及び、成長領域116から気化ガス捕獲トラップ117、提供される場合には気化ガス捕獲トラップ117中の気化ガス吸収部材117aに気化ガス110が流れるように所望の横断面、長さ及び配置の経路118及び/または120を提供することによって、達成される。
【0061】
気化ガス捕獲トラップ117、提供される場合には気化ガス捕獲トラップ117中の気化ガス吸収部材117aの内部にSiC堆積物を確実に形成するためには、気化ガス捕獲トラップ117、提供される場合には気化ガス捕獲トラップ117中の気化ガス吸収部材117aの温度は、SiC結晶112の成長中の坩堝102の内部において最も低いことが好ましい。より具体的には、気化ガス捕獲トラップ117、提供される場合には気化ガス捕獲トラップ117中の気化ガス吸収部材117aの温度は、種結晶106の温度よりも低いことが好ましい。一実施形態において、気化ガス捕獲トラップ、提供される場合には気化ガス捕獲トラップ117中の気化ガス吸収部材117aは、種結晶106の温度よりも3℃〜20℃低いことが好ましい。
【0062】
気化ガス捕獲トラップ117、提供される場合には気化ガス捕獲トラップ117中の気化ガス吸収部材117aと、種結晶106との温度差は、いくつかの方法により把握できる。一実施形態において、種結晶106と気化ガス捕獲トラップ117中の気化ガス吸収部材117aとの温度差は、以下の組み合わせにより達成される。すなわち、(i)図6に示すように、吸収部材117a(気化ガス捕獲トラップ117内に含まれる)は、短いシリンダー、円錐台あるいはその組み合わせのように成形される、(ii)気化ガス吸収部材117aは、例えば坩堝102の上端部または頂部に隣接するように、上端に配置される、(iii)図5に示すように、坩堝102内に配置された種結晶106が、坩堝102の頂部または蓋108から離れて配置され、台座上に配置される、(iv)台座124の高さHが好ましくは5〜25mmである。
【0063】
気化ガス捕獲トラップ117、提供される場合には気化ガス捕獲トラップ中の気化ガス吸収部材117aに気化ガスが横断して到達するような気化ガスの経路の形状、具体的には気化ガスの経路の長さ及び横断面は、取り除かれる気化ガス110の量を制御するために用いることができる別の要因である。2つの例示的な気化ガスの経路は、図6及び7に概略的に示されている。これらの2つの気化ガスの経路は、成長しているSiC結晶112の品質に有害な影響を与えず、容易に実施することができる。
【0064】
図6において、坩堝102は、台座124の下部、種結晶106、及びSiC結晶112が成長する空間を取り囲む高密度のグラファイトからなる邪魔板114’を含む。環状の隙間130は、邪魔板114’と台座124との間に存在する。隙間130は、気化ガス捕獲トラップ117’、提供される場合には気化ガス捕獲トラップ117’中の気化ガス吸収部材117a’に気化ガス110が流れるための経路を形成する。図7において、種結晶106とSiC結晶が成長する空間とを取り囲む邪魔板114”は、穴があけられている。すなわち、気化ガス捕獲トラップ117”、提供される場合には気化ガス捕獲トラップ117”中の気化ガス吸収部材17a”に気化ガス110が流れるための経路を形成する複数の開口部132を邪魔板114”は含む。
【0065】
気化ガス捕獲トラップ117’に配置された気化ガス吸収部材117a’に気化ガスが到達すると、気化ガス110はそれを透過し、バルクを通って拡散し、前記部材117a’を形成するカーボンと反応する。このような反応の結果、部材117a’の上及び/または前記部材117a’の最も温度の低い部分の内部に、多結晶のSiC堆積物134’が形成される。SiC堆積物134’の一部は、気化ガス捕獲トラップ117’の壁上に形成されることも想定される。
【0066】
利口に、気化ガス捕獲トラップ117”中の気化ガス吸収部材117a”に到達すると、気化ガス117a”はそれを透過し、バルクを通って拡散し、前記部材117a”を形成するカーボンと反応する。このような反応の結果、部材117a”の上及び/または前記部材117a”の最も温度の低い部分の内部に、多結晶のSiC堆積物134”が形成される。SiC堆積物134”の一部は、気化ガス捕獲トラップ117”の壁上に形成されることも想定される。
【0067】
図6における気化ガス捕獲トラップ117’が気化ガス吸収部材117a’を含まないとき、SiC堆積物134’は最も温度の低い気化ガス捕獲トラップ117’の壁上に形成される。同様に、図7における気化ガス捕獲トラップ117”が気化ガス吸収部材117a”を含まないとき、SiC堆積物134”は最も温度の低い気化ガス捕獲トラップ117”の壁上に形成される。
【0068】
実施例1. 直径3”の半絶縁性の6HSiC結晶の成長
【0069】
この成長運転は、図6に示されるような配置の坩堝、邪魔板、気化ガス吸収部材117a’を有する成長炉で実施された。この成長運転において、高密度で平衡にモールドされたグラファイトからなる結晶成長坩堝102が準備され、ハロゲンを含有する雰囲気で高温処理により純化された。高純度SiC昇華原料104、すなわち大きさが0.5〜2mmのSiC粒は、SiC結晶112の成長に先立って、分離した合成プロセスにおいて合成された。600gのSiC原料104は、坩堝102の底部に配置され、固形のSiC昇華原料として、SiC結晶112の成長中に供給された。半絶縁性のSiC結晶112を製造するために、原料104は補償するドーパントとしてのバナジウムを含んでいた。バナジウムの量及びバナジウムのドーピングの詳細は従来技術にしたがった。
【0070】
結晶多形が6Hで、直径が3.25”のSiCウエハが種結晶106として用いられた。このウエハは軸上、つまりc面に平行な面を有していた。SiC結晶112の成長に先立って、SiC結晶112が成長するウエハの表面は、傷及び表面のダメージを除去するために、化学機械的研磨技術(CMP)を用いて磨かれた。種結晶106は、高温カーボン接着剤を用いて坩堝の蓋108の台座124に取り付けられた。台座124は12.5mmの高さHを有していた。
【0071】
邪魔板114’は、高密度で平衡にモールドされ、ハロゲンで純化されたグラファイトから加工され、3mmの厚みの壁を有していた。台座124と邪魔板114’との間に2mmの幅の環状の隙間130を形成するために、邪魔板114’の内径は、台座124の外径よりも大きかった。
【0072】
図6におけるシリンダー形状に形成された気化ガス吸収部材117a’は、1.0g/cm3の密度、50%の多孔率、及び20〜80μmの範囲の細孔径のハロゲンで純化された多孔質のグラファイトから加工された。気化ガス部材117a’は、図6に示すような気化ガス捕獲トラップ117’内に配置されていた。[0068]従来技術において知られた態様でRFのサセプタとして振舞い、坩堝102を誘導加熱するために用いられるRF外コイルと、石英ガラスからなる外壁とを有する成長炉の水冷式チャンバに坩堝102は収容された。繊維状の軽量のグラファイト発泡体からなる断熱材は、坩堝102の周囲の成長チャンバに配置された。成長炉、つまり坩堝102の内部は、1×10-6Torrの圧力まで減圧され、吸収されたガス及び水分を除去するために99.9999%の純アルゴンで数回流した。その後、成長炉の内部、つまり坩堝102の内部は、500Torrのアルゴンで埋め戻され、坩堝102の温度を6時間で2100℃まで上昇させるためにRFコイルで誘導加熱するようにRFにパワーを加えた。坩堝102のガスに対する多孔性のために、坩堝102の内部のガス圧力は、成長チャンバの内部のガス圧力とすぐに同様になる。
【0073】
これに次いで、RFコイルの位置及びRFのパワーは、原料104が2120℃の温度で、種結晶106が2090℃の温度に達するように調整された。Ar圧力は10Torrまで減圧され、SiC結晶112ブールの昇華成長が始まった。運転が完了すると、成長炉は、12時間にわたって室温まで冷却された。
【0074】
成長された6HのSiC結晶112ブールは、300gの重量であった。気化ガス吸収部材117’の内部に形成された多結晶のSiC堆積物134の重量は約20gであった。成長されたSiC結晶112のブールは、カーボンパーティクル、Siドロップレット、及び異質な結晶外形の介在物も含んでいなかった。このSiC結晶112のブールのマイクロパイプ密度は、約0.9cm-2で、転位密度は1×104cm-2であった。
【0075】
SiC結晶112のブールは標準的な直径が3”で厚さが400μmの25のウエハに製造され、それらの抵抗率は非接触式抵抗率測定具(Corema)を用いて測定され、マッピングされた。すべてのウエハの抵抗率はほとんど1×1011Ohm−cmであり、標準偏差は10%を下回っていた。
【0076】
実施例2. 直径100mmの半絶縁性の6HSiC結晶の成長
【0077】
この成長運転は、図7に示されるような配置の坩堝、邪魔板、及び気化ガス吸収部材117a”を有する成長炉で実施された。成長坩堝102は、高密度で平衡にモールドされ、ハロゲンで純化されたグラファイトからなっていた。高純度SiC昇華原料104、すなわち大きさが0.5〜2mmのSiC粒は、成長に先立って、分離した合成プロセスにおいて合成された。900gのSiC原料104粒は、坩堝102の底部に配置され、固形の昇華原料として、成長中に供給された。
【0078】
結晶多形が6Hで、直径が110mmで、軸上に配向したSiCウエハが種結晶106として用いられた。成長に先立って、SiC結晶112が成長するウエハの表面は、CMP研磨された。種結晶106は、高温接着剤を用いて坩堝の蓋108の台座124に取り付けられた。台座124は10mmの高さHを有していた。
【0079】
この運転で用いられた邪魔板114”は、図7に示される形状を有していた。邪魔板114”の壁厚は3mmであった。邪魔板114”は、その壁に直径2mmの24の穴がドリルで開けられ、邪魔板114”の外周に8つの穴が3列に均一に形成されていた。しかしながら、穿孔の数は4〜40であってもよく、各々の穴の直径は1〜3mmであってもよい。
【0080】
気化ガス吸収部材117”は、図7に示される形状、すなわち、シリンダー形状(頂部)及び円錐台(底部)の組み合わせの形状を有していた。気化ガス吸収部材117”は、1.0g/cm3の密度、50%の多孔率、及び20〜80μmの細孔径のハロゲンで純化された多孔質のグラファイトから加工された。
【0081】
成長条件は以下の通りであった。原料104の温度は2150℃であった、種結晶106の温度は2100℃であった。挿入ガス(Ar)の圧力は20Torrであった。
【0082】
成長された6HのSiC結晶112ブールは、380gの重量であった。気化ガス吸収部材117”の内部に形成された多結晶のSiC堆積物134の重量は約35gであった。検査した結果、このブールのバルクには、介在物が検出されなかった。このブールのマイクロパイプ密度は、0.3cm-2を下回っており、転位密度は9×103cm-2であった。
【0083】
SiC結晶112のブールは標準的な直径が100mmで厚さが400μmの23のウエハに製造された。すべてのウエハの抵抗率はほとんど1×1011Ohm−cmであり、標準偏差は10%を下回っていた。
【0084】
以上のように、本発明にしたがったSiC単結晶の昇華成長は、異質な結晶外形、シリコンドロップレット及びカーボンパーティクルのような介在物の密度を低減したSiCブールを製造する。本発明は、マイクロパイプ及び転位密度を低減することもできる。
【0085】
本発明は好ましい実施形態を参照して説明された。上述のような詳細な説明を読み、そして理解することで、他の者は、自明な修正及び代替を生じさせるであろう。本発明は、添付されたクレームまたはその均等物の範囲内において、そのような変更及び代替を全て含んでいるものと解釈されることを意図するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiC単結晶の昇華成長の装置であって、
成長坩堝を備え、前記成長坩堝は、間隔を隔てて原料と種結晶とを受ける働きをし、該種結晶上へのSiC単結晶の昇華成長中に生成される気化ガスの前記成長坩堝内部からの逃げ道を実質的に防止し、
前記成長坩堝内の該種結晶の周囲に配置された邪魔板をさらに備え、前記邪魔板は、前記成長坩堝において該SiC単結晶が該種結晶上に成長する成長領域を第1側面で画定し、前記邪魔板は、前記成長坩堝において該種結晶の周囲の気化ガス捕獲トラップを第2側面で画定する、装置。
【請求項2】
該種結晶上へのSiC単結晶の昇華成長中に生成される気化ガスの該逃げ道を防止するために、前記成長坩堝は、
該種結晶上へのSiC単結晶の昇華成長中に生成される該気化ガスの経路に対して実質的に不浸透な材料からなり、
該種結晶上へのSiC単結晶の昇華成長中に生成される該気化ガスの該成長坩堝の内部から外部への逃げ道のための意図的な経路及び穴を含まない、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
該気化ガス捕獲トラップは、該成長坩堝において、該種結晶上へのSiC単結晶の成長中の該種結晶の温度よりも低い場所に位置付けられる、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
該気化ガス捕獲トラップ内に配置され、該種結晶上へのSiC単結晶の昇華成長中に生成される気化ガスを吸収する働きをする気化ガス吸収部材をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
該気化ガス吸収部材は、該気化ガス捕獲トラップにおいて、該気化ガス吸収部材の温度が該種結晶上への該SiC単結晶の成長中の該種結晶の温度よりも低い場所に配置される、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
該種結晶上への該SiC単結晶の成長中の該気化ガス吸収部材の温度は、該種結晶の温度よりも3℃〜20℃低い、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
該気化ガス吸収部材は、0.8〜1.6g/cm3の密度、30%〜60%の多孔率、及び1〜100μmの細孔径を有する、請求項4に記載の装置。
【請求項8】
該邪魔板は、該気化ガスが該気化ガス捕獲トラップに流れるように前記成長坩堝の内部の経路を画定する、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記成長坩堝は、該成長坩堝の頂部及び該原料の間にある該種結晶を支持する台座を含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
該台座は、5mm〜25mmの高さを有する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
該経路は、該邪魔板の内径と、該台座の外径との間の隙間を備える、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
該ギャップは、1mm〜8mmの幅である、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
該経路は、該邪魔板内に1以上の穴を備える、請求項8に記載の装置。
【請求項14】
SiC昇華結晶成長の方法であって、
(a)間隔を隔てて原料と種結晶とが充填された成長坩堝と、該成長坩堝内の該種結晶の周囲に配置された邪魔板とを提供する工程を備え、前記邪魔板は、前記成長坩堝において該SiC単結晶が該種結晶上に成長する成長領域を第1側面で画定し、前記邪魔板は、前記成長坩堝において該種結晶の周囲の気化ガス捕獲トラップを第2側面で画定し、
(b)該原料を昇華させて、該種結晶上への気化ガスの析出によって該単結晶を成長させる該成長坩堝の該成長領域に温度勾配によって移送される該気化ガスを形成させるように、成長チャンバ内に該温度勾配を形成するような成長温度にステップ(a)の該成長坩堝を加熱する工程(b)をさらに備え、
該気化ガスの一部は該気化ガス捕獲トラップに入る、方法。
【請求項15】
該気化ガス捕獲トラップに入る該気化ガスは、その中に堆積物を形成する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
該原料、該種結晶、及び該単結晶の少なくとも1つは、SiCである、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
該気化ガス捕獲トラップは、該成長坩堝において、該種結晶上への該単結晶の成長中の該種結晶の温度よりも低い場所に位置付けられている、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
該気化ガス捕獲トラップ内の気化ガス吸収部材をさらに含み、
該気化ガス捕獲トラップに入る該気化ガスは、該結晶の成長中に該気化ガス吸収部材と化学反応してその中に堆積物を形成することにより、該成長領域から取り除かれる、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
該気化ガス吸収部材は、該単結晶の成長中の該種結晶の温度よりも低い、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
該気化ガス吸収部材は、密度が0.8〜1.6g/cm3で、多孔率が30%〜60%で、細孔径が1〜100μmである多孔質グラファイトからなる、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
該堆積物の重量は、該成長された結晶の重量の5%〜20%である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記邪魔板は、該気化ガスが該気化ガス捕獲トラップへ流れる経路を画定する、請求項14に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(a)の該成長坩堝は、該成長坩堝と該原料との間にある該種結晶を支持する台座をさらに含み、
該経路は、該邪魔板の内径と該台座の外径との間に形成される隙間を備える、請求項22の方法。
【請求項24】
前記経路は、前記邪魔板の壁に1以上の穿孔を備える、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−504513(P2013−504513A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−529848(P2012−529848)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2010/048765
【国際公開番号】WO2011/034850
【国際公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(502334032)トゥー‐シックス・インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】