説明

Sn被覆銅又は銅合金及びその製造方法

【課題】高温環境に放置された後の接触抵抗値上昇抑制及び変色抑制といった耐熱性に優れ、かつ表面の摩擦係数の小さいSn被覆銅又は銅合金、及び通常使用されているリフロー処理前の表面処理設備をそのまま使用でき、また工場内で通常使用されている水を使用して、液きり及び乾燥の工程を必要としないため、新たな設備投資、試薬購入、及び液管理のコストがかからない効率のよいSn被覆銅又は銅合金の製造方法の提供。
【解決手段】最表面に存在する酸素原子(O)の存在形態をESCA(X線光電子分光装置)で分析した際に、酸素原子(O)の1s軌道の結合エネルギーのピークのトップが531eV以上532eV以下にあり、Sn層の厚みが0.05μm以上0.4μm未満であるSn被覆銅又は銅合金とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、携帯電話、パソコン等の民生機器の制御基板、コネクタ、リードフレーム、リレー、スイッチに用いられる端子、バスバー材として好適な耐熱性及び低挿入力性に優れたSn被覆銅又は銅合金及びSn被覆銅又は銅合金の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車用の端子、民生用の端子、バスバー材などに用いられる銅又は銅合金には、接触信頼性、耐食性、はんだ付け性、経済性の観点から、Snが被覆されている。このようなSn被覆の方法としては電気めっきが主流であり、電気めっきの直後に、内部応力を除去してウイスカ発生を抑制する効果のあるリフロー処理(Sn溶融処理)を施しているのが一般的である。
【0003】
Snめっき後にリフロー処理を行うと、一部が素材や下地成分と拡散層を形成し、その上に柔らかい溶融凝固組織となったSn層が形成され、更にその最表面にはSn酸化物層が形成される。Sn層が厚くなると、嵌合部位を含む端子等として実使用される際に、柔らかいSn層が削れ、挿入力が大きくなり、作業者の負担となる問題が発生する。この問題の解決のために、リフローの熱量を上げて素材や下地成分との拡散層を成長させ、Sn層の厚さを薄くする手法が考えられるが、過加熱により、最表面のSn酸化物層が成長し、接触抵抗の増大、黄変色等の不良が発生する。
【0004】
このようなリフロー処理時の表面のSn酸化物成長の抑制対策として、例えば(1)リフロー炉内の厳密な雰囲気制御、(2)Snめっき後水洗した材料を、リン酸化合物、カルボン酸、硫酸、塩酸、酸系Snめっき液(硫酸系、スルファミン酸系等)、硫酸亜鉛等を所定の濃度で含む液中に浸漬もしくはスプレー等による塗布を行って表面改質を行い、その後にリフロー処理する技術が提案されている(特許文献1〜6参照)。前記(1)の手段はイニシャルコスト、管理面で不利であり、前記(2)の手段は、基本的には、Snめっき後のSnの酸化物及び水酸化物をリフロー処理前に減少させ、リフロー処理後に薄いSn酸化物のみ、又は別の酸化物(亜鉛酸化物等)の皮膜を形成するものである。
【0005】
また、前記リフロー前処理は、薬品が必要であること、濃度範囲に制限があるため管理面の負荷が増大してしまうことから、コストアップとなってしまう。また、濃度調整を失敗してしまうと、リフロー処理直後は外観上判らないが、表面の残渣物(硫酸系薬品使用時の硫黄分残留等)の影響で、経時変化により端子等として使用される頃に部分的な変色・腐食や接触抵抗値の増加といった問題が生じるおそれがある。更に、上記先行技術文献の多くは溶液付着後、水洗工程や乾燥工程を必要とし、工程が長くなり、管理面の増加が生じるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−250491号公報
【特許文献2】特開2005−139503号公報
【特許文献3】特開2008−248332号公報
【特許文献4】特開2007−56286号公報
【特許文献5】特開平5−9785号公報
【特許文献6】特開平6−10184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来における前記問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、高温環境に放置された後の接触抵抗値上昇抑制及び変色抑制といった耐熱性に優れ、かつ表面の摩擦係数の小さいSn被覆銅又は銅合金、及び通常使用されているリフロー処理前の表面処理設備をそのまま使用でき、また工場内で通常使用されている水を使用して、液きり及び乾燥の工程を必要としないため、新たな設備投資、試薬購入、及び液管理のコストがかからない効率のよいSn被覆銅又は銅合金の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 最表面に存在する酸素原子(O)の存在形態をESCA(X線光電子分光装置)で分析した際に、酸素原子(O)の1s軌道の結合エネルギーのピークのトップが531eV以上532eV以下にあり、Sn層の厚みが0.05μm以上0.4μm未満であることを特徴とするSn被覆銅又は銅合金である。
<2> 酸素原子が、最表面から深さ方向に15nm以内の範囲に存在する前記<1>に載のSn被覆銅又は銅合金である。
<3> 最表面に存在する酸素原子(O)の存在形態が、Snの水酸化物の形態である前記<1>から<2>のいずれかに記載のSn被覆銅又は銅合金である。
<4> Sn層の厚みが、0.05μm〜0.3μmである前記<1>から<3>のいずれかに記載のSn被覆銅又は銅合金である。
<5> Sn層の内側に厚み0.3μm〜1.5μmのCu−Sn拡散層を有する前記<1>から<4>のいずれかに記載のSn被覆銅又は銅合金である。
<6> Sn層の内側に厚み0.1μm〜1.0μmのNi−Sn拡散層を有する前記<1>から<4>のいずれかに記載のSn被覆銅又は銅合金である。
<7> Sn層の組織が、溶融凝固組織である前記<1>から<6>のいずれかに記載のSn被覆銅又は銅合金である。
<8> 表面の摩擦係数が0.3以下である前記<1>から<7>のいずれかに記載のSn被覆銅又は銅合金である。
<9> 銅又は銅合金に厚み0.1μm〜1.2μmのSn層を電気めっきにより被覆した後、該Sn層表面に電気伝導度が600μS/cm以下、pHが4.5〜9.5の水を付与し、該付与した水を乾燥させずにリフロー処理を行うことを特徴とするSn被覆銅又は銅合金の製造方法である。
<10> 銅又は銅合金にSn層を被覆する前に、厚み0.1μm〜1.0μmのNi及び/又はCuの下地層を被覆する前記<9>に記載のSn被覆銅又は銅合金の製造方法である。
<11> 水の付与量が、1mg/dm以上である前記<9>から<10>のいずれかに記載のSn被覆銅又は銅合金の製造方法である。
<12> リフロー処理時の被リフロー材の昇温速度が、10℃/s以上である前記<9>から<11>のいずれかに記載のSn被覆銅又は銅合金の製造方法である。
<13> 前記<1>から<8>のいずれかに記載のSn被覆銅又は銅合金を用いたことを特徴とする電気・電子部品である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における諸問題を解決でき、高温環境に放置された後の接触抵抗値上昇抑制及び変色抑制といった耐熱性に優れ、かつ表面の摩擦係数の小さいSn被覆銅又は銅合金、及び通常使用されているリフロー処理前の表面処理設備をそのまま使用でき、また工場内で通常使用されている水を使用して、液きり及び乾燥の工程を必要としないため、新たな設備投資、試薬購入、及び液管理のコストがかからない効率のよいSn被覆銅又は銅合金の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(Sn被覆銅又は銅合金)
本発明のSn被覆銅又は銅合金は、銅又は銅合金にSn層を被覆してなり、更に必要に応じてその他の層を有してなる。
【0011】
本発明においては、最表面に存在する酸素原子(O)の存在形態をESCA(X線光電子分光装置)で分析した際に、酸素原子(O)の1s軌道の結合エネルギーのピークが531eV以上532eV以下にある。これにより、最表面にSnの水酸化物の形態で存在することが分かる。
最表面の酸素原子の存在形態は、ESCA分析(X線光電子分光分析)を用いて調べることができる。例えば、X線光電子分光装置(アルバック・ファイ株式会社製、ESCA5800)を使用し、定性分析(表面から十数nmの深さまでの分析)、状態分析(表面から十数nmの深さまでの分析)、深さ方向の分析(深さはSiO換算)の結果から、酸化物か水酸化物かの判定を実施できる。
即ち、深さ方向分析により、最表層から深さ方向にどこまで酸素原子が存在するかを測定する。このままでは酸素原子が酸化物と水酸化物のいずれかまでは判定できないため、表面の状態分析も行い、酸素原子(O)の1s軌道の結合エネルギーのピークのトップが531eV以上532eV以下にある場合には水酸化物が存在すると判定することができる。同様に、酸素原子(O)の1s軌道の結合エネルギーのピークのトップが531eV未満にある場合は、酸化物と判定することができる。表面に存在する金属元素がSnであることから、上述の酸素の結合エネルギーのピークのトップで水酸化物と判定されたものはSn水酸化物、酸化物と判定されたものはSn酸化物が存在していると判定する。
酸素原子(O)の1s軌道の結合エネルギーのピークが531eV以上532eV以下(水酸化物)に存在するときは、接触抵抗値の増加を抑制することができる。更に、表面の変色を回避することについても効果があると思われる。
前記酸素原子は、最表面から深さ方向に15nm以内の範囲に存在することが好ましく、10nm以内がより好ましい。前記酸素原子が、最表面から深さ方向に15nmを超えて存在すると、接触抵抗値が増加し、使用した製品の通電機能を損ねる可能性がある。
【0012】
最表面に存在する酸素原子(O)の存在形態としては、Snの水酸化物の形態であることが、端子等の製品として使用される際の酸化膜成長抑制の点から好ましい。該Snの水酸化物の形態としては、例えばSn(OH)、Sn(OH)などが挙げられる。
【0013】
前記Sn層の組織が、Sn被覆後のリフロー処理により形成される溶融凝固組織であることが、ウイスカ抑制の点で好ましい。
ここで、前記Sn層とは、Sn酸化物、Sn水酸化物及びCu−Sn、Ni-Sn化合物層を含まない実質的にSnのみからなる層を意味し、前述のESCA分析や後述する電解式膜厚計、SIM(走査イオン顕微鏡)等で区別できる。
前記Sn層の組織が、溶融凝固組織であることは、断面SEM観察(倍率:5,000倍〜10,000倍)により結晶粒界がほとんど観察されないことから判別することができる。また、別の表現をすると、Sn層の組織が溶融凝固組織である場合、該断面SEM観察による平均結晶粒径は5μm以上である。これに対し、電気めっきなどによる電析組織(リフロー処理していない)のSn層の平均結晶粒径は0.1μm〜3μmであり、明確に区別できる。なお、結晶粒径は切断法による測定とした。
【0014】
前記Sn被覆銅又は銅合金としては、最表層にSnめっきを行った条材、線材;プレス打抜き等を行った後の最表層にSnめっきを行ったプレス後の条材、端子などが挙げられる。
前記銅又は銅合金としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純銅(C1020、C1100)、リン脱酸銅(C1220)等のCu系;丹銅、黄銅(C2600、C2680等)、Sn入り黄銅(C44250等)等のCu−Zn系;リン青銅系(C5110、C5191、C5210、C5240等)、Cu−Ni−Sn−P系(C19020、C19020、C19025等)、Cu−Ni−Si系(C7025、C64745等)、Cu−Fe系(C194、C19220、C19010、C19720等)、などが挙げられる。なお、その他の組成系の銅合金、Fe−Ni系、純Ni系、ステンレス系、Al系でも、最表層にSnめっきを施した後にリフロー処理される場合は本発明を適用することができる。
【0015】
銅又は銅合金に被覆する膜は、最表面をSnで仕上ればよく、その下地には、密着性強化、素材成分の拡散抑制によるウイスカ抑制、耐熱性向上の観点から、単純にSnを1層被覆する他に、Cu下地層を設けたり、Ni下地層を設けることができる。より耐熱性を向上させるための手段として、Ni、Cu、Snの順に被覆を行うことが好ましい。
前記Sn層の被覆方法としては、電気めっき、無電解めっき、溶融浸漬、蒸着、スパッタリングなどが挙げられる。これらの中でも、厚さの制御に優れ、コスト的にも有利である点で電気めっきが特に好ましい。また、Snめっき中に、AgやPb等を0〜10質量%の範囲で含有させても同様の効果が得られる。
【0016】
前記Sn層の厚みは、0.05μm以上0.4μm未満であり、0.05μm〜0.3μmが好ましい。前記Sn層の厚みが、0.05μm未満であると、摩擦係数や外観、接触抵抗等の所望の特性が得られないことがあり、0.4μm以上であると、端子挿入力が増大し、めっきの生産性が低下することがある。
【0017】
前記Sn層の内側に厚み0.3μm〜1.5μmのCu−Sn拡散層を有することが好ましく、0.4μm〜1.5μmがより好ましい。前記厚みが、0.3μm未満であると、拡散層の内側にある下地や素材の成分の拡散を抑制するのに十分ではなく、1.5μmを超えると、拡散層が硬いため、端子等へ成形する際に割れの起点になりやすくなることがある。なお、前記厚みが1.5μm以下であれば、曲げ加工性が向上するので、コネクタ端子等の電気・電子部品のように曲げ加工を要する用途に好ましい。
前記Cu−Sn拡散層としては、例えばCuSnからなる層などが挙げられる。
【0018】
前記Sn層の内側に厚み0.1μm〜1.0μmのNi−Sn拡散層を有することが好ましく、0.2μm〜1.0μmがより好ましい。前記厚みが、0.1μm未満であると、拡散層の内側にある下地や素材の成分の拡散を抑制するのに十分ではなく、1.0μmを超えると、拡散層が硬いため、端子等へ成形する際に割れの起点になりやすくなることがある。なお、前記厚みが1.0μm以下であれば、曲げ加工性が向上するので、コネクタ端子等の電気・電子部品のように曲げ加工を要する用途に好ましい。
前記Ni−Sn拡散層としては、例えばNiSnからなる層などが挙げられる。
【0019】
前記Sn層の内側に厚み0.1μm〜1.0μmのNi層を有することが好ましく、0.2μm〜0.7μmがより好ましい。前記厚みが、0.1μm未満であると、Ni層の内側にある下地や素材の成分の拡散を抑制するのに十分ではなく、1.0μmを超えると、Ni層が硬いため、端子等へ成形する際に割れの起点になりやすくなることがある。なお、前記厚みが0.7μm以下であれば、曲げ加工性が向上するので、コネクタ端子等の電気・電子部品のように曲げ加工を要する用途に好ましい。
【0020】
前記Sn層、Cu−Sn拡散層、及びCu層の厚みは、例えば電解式膜厚計(中央製作所製、THICKNESS TESTER TH11)を用いて測定することができる。
前記Ni層、及びNi−Sn層の厚みは、例えばFIB(集束イオンビーム)を用いてめっき断面を露出させ、SIM(走査イオン顕微鏡)で断面観察を行ってその色のコントラストの違いから各層を判別でき、厚さを測定することができる。
なお、(1)表面からSn層、Cu−Sn層、及び素材(銅又は銅合金)の順、(2)表面からSn層、Cu−Sn層、Ni層、及び素材の順、又は(3)表面からSn層、Ni−Sn層、Ni層、及び素材の順の構成になっていることが好ましい。
前記(2)の場合、Sn層が0.2μm以上0.4μm未満、Cu−Sn層が0.4〜0.7μm、Ni層が0.1〜0.6μmであることが、良好な特性とコスト面を有することから好ましい。
【0021】
本発明のSn被覆銅又は銅合金は、表面の摩擦係数が0.3以下であることが好ましい。前記摩擦係数が0.3を超えると、端子の挿入力が増大し、コネクタ装着作業者の負担が増える、また、コネクタに補助レバーの取り付けが必要となることがあり、コスト、小型化の面で問題となることがある。
前記摩擦係数は、めす端子とおす端子の嵌合時の挿入力は、端子接圧が一定の場合、表面の摩擦係数と相関があることから、摩擦係数を測定して挿入力の代用評価とすることができる。卓上プレス機を使用して内R=3mmのインデントを形成したものをめす端子側と想定し、平板をおす端子側とした。摩擦係数測定にあたっては、株式会社山崎精機研究所製電気接点シミュレーター、ステージコントローラー、ロードセル、ロードセルアンプが組み合わされた装置を使用し、ステージに固定した平板の上を負荷荷重300gf、摺動速度60mm/minでインデント形成板を5mm走査させ、摺動距離2mmから5mmまでの3mm区間でロードセルアンプにて検出された摺動時の力のデータの平均値を負荷荷重で除して摩擦係数を算出することができる。
【0022】
(Sn被覆銅又は銅合金の製造方法)
本発明のSn被覆銅又は銅合金の製造方法は、銅又は銅合金に厚み0.1μm〜1.2μmのSn層を電気めっきにより被覆した後、該Sn層表面に電気伝導度600μS/cm以下の水を付与し、該付与した水を乾燥させずにリフロー処理を行うものである。前記Sn層の厚みが、0.1μm未満であると、リフロー処理後に所望の外観や接触抵抗等の特性が得られないことがあり、1.2μmを超えると、リフロー処理後に本発明のSn被覆銅又は銅合金を例えばコネクタ端子に加工したときに端子の挿抜性が低下し、まためっきの生産性の低下、原料費が多くかかりコスト高となることがある。前記Snめっき層の厚みは、0.2μm〜1.0μmがより好ましく、0.3μm〜1.0μmが更に好ましい。
【0023】
まず、銅又は銅合金の表面にSn層を被覆する前に、0.1μm〜1.0μmの厚さのNi及び/又はCu(即ちNi、Cuの少なくとも一方)の下地層を被覆することが好ましく、厚さが0.1μm以上であればリフロー処理等加熱された場合に素材中の成分である例えばCu,Zn等が表層へ拡散してくるのを抑制でき、即ち耐熱性向上の点で好ましい。前記Ni及び/又はCuの下地層は、0.2μm〜1.0μmの厚さであることがより好ましく、0.2μm〜0.6μmが更に好ましい。
前記Ni及び/又はCuの下地層は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、電気めっきにより被覆することが、リフロー処理後においても十分な特性を有し、安価に形成できるため好ましい。NiとCuの両方を下地層にする場合は、素材側からNi、Cu、及びSnの順に被覆することが好ましい。
前記Niめっきは、例えば複塩浴、普通浴、回転浴、高硫酸塩浴、ワット浴、全塩化物浴、硫酸塩−塩化物浴、全硫酸塩浴、高質浴、ストライクニッケル浴、スルファミン酸ニッケル浴、ほうふっ化ニッケル浴などの浴で行うことが好ましい。
前記Cuめっきは、例えば硫酸銅浴、ほうふっ化銅浴、シアン化銅浴、ピロリン酸銅浴などの浴で行うことが好ましい。
なお、各めっき浴ともに光沢剤を添加してもしなくてもよいが、光沢剤を添加しない方が変色の抑制の点で好ましい。
各めっきの厚さは、電着時間により調整することができる。
【0024】
次に、厚みが0.1μm〜1.2μm(好ましくは0.2μm〜1.0μm)のSn層を電気めっきにより被覆する。
前記Snめっきは、例えばアルカリ性浴、硫酸浴、塩酸浴、スルフォン酸浴、シアン性浴、ピロリン酸浴、ほうふっ化浴などの浴で行うことが好ましい。
なお、前述の通り、Ni、Cuのめっきは目的特性に応じて省略してもよい。
【0025】
次に、電気伝導度600μS/cm以下の水をSnめっき層表面に付与し、該付与した水を乾燥させずにリフロー炉に投入してリフロー処理(加熱によるSn被覆層等の溶融凝固処理)を行う。
Sn層表面にリフロー処理前に付与する水の付与量が1mg/dm以上であることが好ましく、3mg/dm〜300mg/dmであることがより好ましく、3mg/dm〜100mg/dmであることが更に好ましく、3mg/dm〜50mg/dmであることが特に好ましい。前記水の付与量が、1mg/dm未満であると、乾燥してリフロー処理されたものと同様に過加熱となりやすく、Snの表面には水酸化物が存在せず、酸化物のみの表面となり、所望の特性が得られない。ただし、300mg/dmを超えると、水酸化物は生成するが、気化熱によって溶融する際に必要とされる熱を奪われ、生産性が低下してしまう。
以上リフロー処理によって、Snめっき層は電析(電着)組織より溶融凝固組織に変化する。
【0026】
前記水は、リフロー処理後に不純物が表面に残留して変色や腐食するのを防ぐため、電気伝導度が600μS/cm以下の水を使用することが好ましい。前記電気伝導度が600μS/cmを超える電気伝導度の高い水は金属元素等の不純物が多く、変色の原因となる虞がある。前記電気伝導度は、300μS/cm以下であることがより好ましい。
前記水のpHは、Snが両性金属で有り、酸性側、アルカリ性側でのSnの腐食を抑制するために、4.5〜9.5であることが好ましい。前記pHが4.5未満(酸性)又は9.5を超える(アルカリ性)と、水付着時に両性金属であるSn層表面の腐食が発生し、リフロー処理後のSn層の外観でムラが発生する。以上より、純水はもちろん市水(水道水、工業用水など)も本発明に適用できる。
【0027】
前記水の付与方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば水槽への浸漬、スプレー等による噴霧、水を含んだロールとの接触、ロール表面等の材料接触部に巻いた吸水性の布や紙などのシートとの接触、などが挙げられ、それぞれの量に応じて水膜の厚さを制御すればよい。この水膜の形成は、電析や試薬の化学反応等を必要としていないので、処理に要する時間が負担となることはない。
水膜形成後、必要に応じて絞りロール、乾燥ブロワーを使用してもよいが、所定の水膜をSnめっき層表面に形成したままリフロー処理に移行することが肝要である。水膜により表面の黄変色を抑制するメカニズムは、Snめっき層表面が加熱される際、水酸化物膜となり表面の酸化を抑制できているためであると推測している。
【0028】
前記リフロー処理の加熱方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば熱風循環方式、赤外線、電気ヒーター、バーナー直火、などが挙げられる。
前記リフロー処理時の被リフロー材の物温は、室温からSnの融点232℃を超えるまでの昇温速度が10℃/s以上であることがより好ましい。前記昇温速度が、10℃/s未満であると、表面の水膜が効果を発揮する前に乾燥してしまい、リフロー処理後、Snめっき層表面に水酸化物が残留せず、酸化物に覆われ黄変色の原因となる。また、大気中でのリフロー処理でも効果を発現でき、雰囲気によらず本発明の効果を発現することが可能であり、この点でも雰囲気ガスの削減、管理面のコスト削減に対して有効である。
【0029】
リフロー処理にて最高到達温度(物温)を所定の温度(240〜300℃)とし、Sn層が溶融した後は、10秒以内に100℃以下まで冷却し、表面の冷却皺の発生を抑制することが好ましい。前記冷却の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば雰囲気ガスや大気の吹き付け、10℃〜90℃の水槽への浸漬、などが挙げられる。
【0030】
本発明のSn被覆銅又は銅合金は、例えば自動車、携帯電話、パソコン等の制御基板、コネクタ、リードフレーム、リレー、スイッチ等に用いられる端子、バスバー材等の電気・電子部品として好適である。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0032】
(実施例1)
素材として、コネクタ用の端子やバスバー材として広く利用されている銅合金C19025(Cu−1.0Ni−0.9Sn−0.05P(質量%))で、ビッカース硬さが170(ミツトヨ株式会社製、ビッカース硬度計、荷重200gfで測定)、表面粗さ(Ra)が0.13μm(Kosaka Laboratory Ltd.製、接触式表面粗さ計)の範囲であり、厚み0.2mmの板状部材を使用した。
【0033】
前記板状部材を電解脱脂後、以下のようにしてSnめっきし、得られたSn層表面にスプレーイングシステムスジャパン株式会社製クイックフォッガーを使用してスプレー方式により10mg/dmの水膜形成を行った後に、以下のようにしてリフロー処理を行った。以上により、実施例1のSn被覆銅又は銅合金製品を作製した。
なお、Sn層表面の水膜の形成量は、前記スプレーの前後で板状部材の質量を電子天秤で秤量し、その差を板状部材(Sn層)の表面積で除すことにより求めた。
【0034】
−Snめっき−
Snめっきは、硫酸Snを55g/L、硫酸80g/L、クレゾールスルホン酸40g/L、及びβナフトール1g/Lを添加した浴を使用し、浴温20℃、陰極電流密度3A/dmとし、厚さ0.3μmのSnの電気めっき層を前記板状部材の全面に形成した。
【0035】
−リフロー処理−
リフロー処理は、近赤外線ヒーター(ハイベック社製)を使用し、大気雰囲気で行った。昇温速度の調整は、熱電対を取り付けたSnめっき付きの試験片(表面水付与無し)で予備試験を行い、近赤外線の出力コントローラを制御することによって行った。昇温速度60℃/s、最高到達温度は試験片の物温が280℃となるように制御しSnを溶融させた。リフロー処理後の冷却は、Sn溶融後5秒以内に40℃の水槽へ浸漬する方法を採用し、溶融後10秒以内に100℃以下まで冷却した後、ブロワー乾燥を行った。
【0036】
(実施例2〜10及び比較例1〜5)
実施例1において、表1に示すように、Sn層の厚さ、下地層の種類と厚さ、水の付与量と電気伝導度とpH、及びリフロー処理時の昇温速度、リフロー処理の最高到達温度などを変えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜10及び比較例1〜5の製品を作製した。
Snめっきの前のCu下地めっき、Ni下地めっき、又はNi下地めっきの上のCu下地めっきは以下のように形成した。
−Cuめっき−
Cuめっきは、硫酸銅200g/L、及び硫酸50g/Lを添加した浴を使用し、浴温30℃、陰極電流密度3A/dmとし、所定の厚さのCuの電気めっき層を板状部材の全面に形成した。
−Niめっき−
Niめっきは、スルファミン酸ニッケル450g/L、塩化ニッケル微量、及びホウ酸30g/Lを添加した浴を使用し、pH4.0、浴温50℃、陰極電流密度5A/dmとし、所定の厚さのNiの電気めっき層を板状部材の全面に形成した。各めっきの厚さは電着時間により調整した。
【0037】
次に、得られた各製品について、以下のようにして、各層の厚みの測定、及び各種評価試験を行った。結果を表1に示す。
【0038】
<リフロー処理後の各層の厚み>
リフロー処理後の各層の厚みは、以下のようにして測定した。
・Sn層、Cu−Sn拡散層、及びCu層の厚みは、電解式膜厚計(中央製作所製、THICKNESS TESTER TH11)を用いて測定した。
・Ni層、及びNi−Sn拡散層の厚みは、FIB(集束イオンビーム)を用いてめっき断面を露出させ、SIM(走査イオン顕微鏡)で断面観察を行って測定した。
【0039】
<Sn酸化物層又はSn水酸化物層の有無(水酸化物の有無)の判定、Sn酸化物層又はSn水酸化物層の厚さの測定>
Sn酸化物層又はSn水酸化物層の有無(水酸化物の有無)の判定、Sn酸化物層又はSn水酸化物層の厚さは、アルバック・ファイ株式会社製ESCA5800を使用して行った。
Sn酸化物層、又はSn水酸化物層の有無(水酸化物の有無)については、酸素原子の存在を定性分析で確認した後、酸素原子(O)の1s軌道の結合エネルギーの状態分析を行うことにより判定した。酸素原子(O)の1s軌道の結合エネルギーの状態分析の条件は以下の通りである。
・X線源: Al陽極線源(AlモノクロX線)、150W
・分析エリア: 直径800μm
・試料調整: 試料ホルダー上にセット
・光電子取出角: 45°
・パスエネルギー: 58.70eV
・測定時間: 6.75min
この条件でSn層表面(試料)を測定し、横軸を結合エネルギー、縦軸を光電子のカウント数c/s(カウントパーセカンド)とした図より、Oの1s軌道の結合エネルギーのピークのトップ(光電子のカウント数c/sが最大である部分、ピークの最大値)が531eV以上532eV以下にあるかどうかを判定した。酸素原子(O)の1s軌道の結合エネルギーのピークのトップが531eV以上532eV以下にある場合に水酸化物が存在すると判定した。同様に、結合エネルギーのピークのトップが531eV未満にある場合は、酸化物と判定した。なお、531.2eV〜532eVであることがより確実に水酸化物と判定できる。
また、Sn酸化物層及びSn水酸化物層の厚さは、X線源はAl陽極線源、150W、分析エリア直径800μm、試料ホルダー上に試料をセット、光電子取り出し角45°、Arスパッタエッチング速度は10nm/min(SiO換算)で行った。深さ方向分析により、最表層から深さ方向にどこまで酸素原子が存在するかにより厚さを測定した。
【0040】
<加速変色試験>
180℃で保持した恒温槽(大気雰囲気)に1時間放置し、黄変色の発生有無を判定した。Sn酸化物層の厚さが厚くなると黄変色が発生する。初期状態で変色がなくてもこの試験で黄変色が発生する場合、室温でも6ヶ月といった長期間保管において、黄変色が発生する。
〔評価基準〕
○:加速変色試験で黄変色が発生しなかった
×:黄変色が発生した
【0041】
<高温放置後の接触抵抗値の測定>
120℃で保持した恒温槽(大気雰囲気)に0時間(高温放置なし)、500時間、及び1000時間保持した後、恒温槽から取り出し、20℃に制御された測定室で表面の接触抵抗値を測定した。接触抵抗値は、株式会社山崎精機研究所製のマイクロオームメータ YMR−3を使用し、開放電圧20mV、電流10mA、直径0.5mmのU型金線プローブ、最大荷重100gf、摺動無しの条件で試験数(N=5)の測定を行い、その平均値を求めた。
なお、1000時間保持後の接触抵抗値(mΩ)は40mΩ以下が好ましく、30mΩ以下がより好ましい。
【0042】
<180°密着曲げ試験>
リフロー処理後の製品から幅10mm、長さ40mmの試験片を切り出し、中央部で折り曲げ、圧縮試験機を用いて10kNの負荷を与えて5秒間保持し、除荷後に曲げ部外側表面をマイクロスコープで100倍にして観察し、割れ部の有無を観察し、下記基準で評価した。
〔評価基準〕
○:割れがなかった
×:割れが生じた
【0043】
<摩擦係数>
めす端子とおす端子の嵌合時の挿入力は、端子接圧が一定の場合、表面の摩擦係数と相関があることから、摩擦係数を測定して挿入力の代用評価とした。卓上プレス機を使用して内R=3mmのインデントを形成した板をめす端子側と想定し、平板をおす端子側とした。摩擦係数測定にあたっては、株式会社山崎精機研究所製電気接点シミュレーター、ステージコントローラー、ロードセル、ロードセルアンプが組み合わされた装置を使用し、ステージに固定した平板の上をインデント形成板のインデントを負荷荷重300gf、摺動速度60mm/minで5mm走査させ、摺動距離2mmから5mmまでの3mm区間でロードセルアンプにて検出された摺動時の力のデータの平均値を負荷荷重で除して摩擦係数を算出した。
【0044】
<溶融凝固組織>
Sn層の断面のSEM観察(倍率5,000倍)により結晶粒界がほとんど観察されず、平均結晶粒径が5μm以上である場合に溶融凝固組織であると判断した。なお、リフロー処理前(電気めっき後)のSn層の平均結晶粒径は0.1〜3μmであった。結晶粒径はJIS H0501の切断法により測定とした。
〔評価基準〕
○:リフロー処理後、溶融凝固組織である
×:リフロー処理後、溶融凝固組織でない
【0045】
【表1−1】

【表1−2】

【0046】
表1の結果から、実施例1〜10は、いずれも電気めっきされたSn層の厚さが0.1〜1.1μmであり、Ni及び/又はCuの下地めっきを施したものはその厚さが0.1μm〜0.5μmの範囲である。これをリフロー処理した後、各層の厚さを測定
すると、Sn層が0.1μm〜0.3μmの範囲、Cu−Sn層が0.4μm〜1.4μmの範囲、Ni−Sn層が0.2〜0.9μm、Ni層が0.1〜0.2μmであり、Sn層は溶融凝固組織であることが確認された。
また、リフロー処理の昇温速度はいずれも10℃/s以上であった。
リフロー処理後のSn層の表面をESCAで分析すると酸素原子(O)の1s軌道の結合エネルギーの状態分析おいてピークのトップが531.2eV〜532eVの間に存在し、水酸化物の存在が認められ、外観は黄色変色がなく、接触抵抗値の上昇も少なく、120℃で1000時間保持した後において30mΩ以下であり良好であった。180°曲げ試験の結果は良好であり、摩擦係数は0.3以下であった。
【0047】
比較例1は、電気めっきされたSn層の厚さが1.6μmであり、これをリフロー処理した後、Sn層の厚さが0.9μm、Cu−Sn層の厚さが0.9μmであり、Sn層は溶融凝固組織であることが確認された。また、リフロー処理の昇温速度は20℃/sであった。摩擦係数は0.45であった。
比較例2は、電気めっきされたSn層の厚さが0.7μmであり、これをリフロー処理した後、Sn層の厚さが0.55μm、Cu−Sn層の厚さが0.45μmであり、Sn層は溶融凝固組織であることが確認された。また、リフロー処理の昇温速度は5℃/sであった。摩擦係数は0.35であった。
また、比較例1及び2は、リフロー処理後のSn層の表面を分析すると水酸化物の存在が認められず、1,000時間後の接触抵抗値の上昇が認められた。
比較例1は、リフロー処理前のSn層表面の水の付与量が0mg/dmであり、リフロー処理後にSn層表面に水酸化物が生成しなかったために、不具合が発生したと考えられる。
比較例2は昇温速度が10℃/s以未満であり、昇温中に表面に付与した水が乾燥しており、リフロー処理後にSn層表面に水酸化物が生成しなかったために、不具合が発生したと考えられる。
比較例3〜5は、リフロー処理後のSn層の表面を分析すると水酸化物の存在が認められず、120℃で1000時間保持後の接触抵抗値が40mΩを超えており良好でなく、また、外観は黄色変色していた。
比較例3は、リフロー前に水が表面に付与されていないため、水酸化物が生成せず接触抵抗値が劣化し、かつ外観が黄色変色となったと考えられる。
比較例4は、付与した水のpHが13であり、非常にアルカリ性が強いために水酸化物が生成せず、接触抵抗値が劣化し、かつ外観が黄色変色となったと考えられる。
比較例5は、付与した水の電気伝導度が1000μS/cmであり、非常に伝道度が高いために水酸化物が生成せず、接触抵抗値が劣化し、かつ外観が黄色変色となったと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のSn被覆銅又は銅合金は、例えば自動車、携帯電話、パソコン等の民生機器の制御基板、コネクタ、リードフレーム、リレー、スイッチに用いられる端子、バスバー材などに好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
最表面に存在する酸素原子(O)の存在形態をESCA(X線光電子分光装置)で分析した際に、酸素原子(O)の1s軌道の結合エネルギーのピークのトップが531eV以上532eV以下にあり、Sn層の厚みが0.05μm以上0.4μm未満であることを特徴とするSn被覆銅又は銅合金。
【請求項2】
酸素原子が、最表面から深さ方向に15nm以内の範囲に存在する請求項1に記載のSn被覆銅又は銅合金。
【請求項3】
最表面に存在する酸素原子(O)の存在形態が、Snの水酸化物の形態である請求項1から2のいずれかに記載のSn被覆銅又は銅合金。
【請求項4】
Sn層の厚みが、0.05μm〜0.3μmである請求項1から3のいずれかに記載のSn被覆銅又は銅合金。
【請求項5】
Sn層の内側に厚み0.3μm〜1.5μmのCu−Sn拡散層を有する請求項1から4のいずれかに記載のSn被覆銅又は銅合金。
【請求項6】
Sn層の内側に厚み0.1μm〜1.0μmのNi−Sn拡散層を有する請求項1から4のいずれかに記載のSn被覆銅又は銅合金。
【請求項7】
Sn層の組織が、溶融凝固組織である請求項1から6のいずれかに記載のSn被覆銅又は銅合金。
【請求項8】
表面の摩擦係数が0.3以下である請求項1から7のいずれかに記載のSn被覆銅又は銅合金。
【請求項9】
銅又は銅合金に厚み0.1μm〜1.2μmのSn層を電気めっきにより被覆した後、該Sn層表面に電気伝導度が600μS/cm以下、pHが4.5〜9.5の水を付与し、該付与した水を乾燥させずにリフロー処理を行うことを特徴とするSn被覆銅又は銅合金の製造方法。
【請求項10】
銅又は銅合金にSn層を被覆する前に、厚み0.1μm〜1.0μmのNi及び/又はCuの下地層を被覆する請求項9に記載のSn被覆銅又は銅合金の製造方法。
【請求項11】
水の付与量が、1mg/dm以上である請求項9から10のいずれかに記載のSn被覆銅又は銅合金の製造方法。
【請求項12】
リフロー処理時の被リフロー材の昇温速度が、10℃/s以上である請求項9から11のいずれかに記載のSn被覆銅又は銅合金の製造方法。
【請求項13】
請求項1から8のいずれかに記載のSn被覆銅又は銅合金を用いたことを特徴とする電気・電子部品。

【公開番号】特開2010−215979(P2010−215979A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−65137(P2009−65137)
【出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(506365131)DOWAメタルテック株式会社 (109)
【Fターム(参考)】