説明

Streptococcuspneumoniaeの抗原およびワクチン

【課題】Streptococcusの検出のため、およびStreptococcusによって引き起こされる疾患の予防または減弱化のための新規のStreptococcus pneumoniae抗原の提供、S. pneumoniaeの抗原性ポリペプチドをコードする単離された核酸分子の提供。抗原性ポリペプチドの提供。ベクター、宿主細胞およびそれらを作製するための組換え方法の提供。
【解決手段】以下からなる群から選択される配列に少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含有する、単離された核酸分子:(a)特定のポリペプチドの任意のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;または(b) (a)の任意のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、Streptococcusの検出のため、およびStreptococcusによって引き起こされる疾患の予防または減弱化のための新規のStreptococcus pneumoniae抗原に関する。本発明はさらに、S. pneumoniaeの抗原性ポリペプチドをコードする単離された核酸分子に関する。抗原性ポリペプチドもまた提供され、ベクター、宿主細胞およびそれらを作製するための組換え方法が提供される。本発明はさらに、Streptococcus遺伝子発現を検出するための診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
Streptococcus pneumoniaeは、1881年に最初に単離されてから、最も広範に研究された微生物の1つである。多くの調査の目的は、重要な科学的発見を導くことであった。1928年、Griffithは、熱で死滅させた莢膜化pneumococcus、およびいかなる莢膜をも構成的に欠失した生存株を、マウスに同時に注射した場合に、非莢膜化株は、熱で死滅させた株と同じ莢膜型を有する莢膜化pneumococcusに変換され得たことを観察した。後に、この「形質転換原理」、または遺伝情報のキャリアの本質は、DNAであることが示された (Avery, O.Tら、J.Exp.Med., 79:137-157 (1944))。
【0003】
S.pneumoniaeに関する多数の刊行物にも関わらず、その病原性に関する多くの問題はいまだ答えられておらず、そしてこの病原体は、重篤なヒト疾患(特に、地域社会獲得性肺炎)の主要な原因因子のままである(Johnston, R.B.ら、Rev.Infect.Dids. 13(補遺6): S509-517 (1991))。さらに、開発国において、pneumococcusは、肺炎球菌性(Pneumococcal)肺炎由来の5歳未満の多数の子供の死亡原因である。肺炎球菌性の疾患の発生率は、2歳未満の乳児および60歳より上の人々において最も高い。pneumococcusは、子供における細菌性髄膜炎および中耳炎の2番目に最も頻度な原因(Haemophilus influenzae b型の次)である。H.influenzae b型に対する結合体ワクチンの最近の導入により、肺炎球菌性髄膜炎は、ますます顕著になりそうである。S.pneumoniaeは、成人における最も重要な地域社会獲得性肺炎の病因学的因子であり、そしてNeisseria meningitidisの次の2番目に最も一般的な細菌性髄膜炎の原因である。
【0004】
S.pneumoniaeを処置するために一般に処方される抗生物質は、ベンジルペニシリンであるが、この抗生物質および他の抗生物質に対する耐性が時折見出される。ペニシリンに対するpneumococcusの耐性は、そのペニシリン結合タンパク質における変異から生じる。感受性株によって引き起こされる無併発性の肺炎球菌性肺炎において、ペニシリンでの処置は、開始が遅すぎない限り、通常は上首尾である。エリスロマイシンまたはクリンダマイシンは、ペニシリンに対して過敏症である患者における肺炎を処置するために使用され得るが、これらの薬物に対して耐性である株が存在する。広範囲の抗生物質(例えば、テトラサイクリン)もまた効果的あり得るが、テトラサイクリン耐性株は希ではない。抗生物質の利用可能性にも関わらず、過去40年におけるpneumococcus細菌の致死率は、25%と29%との間で安定したままである(Gillespie, S.H.ら、J.Med.Microbiol. 28:237-248 (1989))。
【0005】
S.pneumoniaeは、多くの健康な個体によって上気道において保有される。pneumococcusの付着が、ヒト咽頭上皮細胞に存在する、フィブロネクチンにおけるジサッカライドレセプターによって媒介されることが示唆されている(Anderson, B.J.ら、J.Immunol. 142:2464-2468 (1989))。pneumococcusが鼻咽頭から肺に転位し、それによって肺炎を引き起こすか、または血液に移動して、菌血症または敗血症を生じる機構は、ほとんど理解されていない(Johnston, R.B.ら、Rev.Infect.Dis. 13 (補遺6):S509-517 (1991))。
【0006】
種々のタンパク質がS.pneumoniaeの病原性に関与することが示唆されているが、それらの内のわずかしか毒性因子として実際に確認されていない。pneumococcusは、粘膜表面で宿主防御にを妨害し得るIgA1プロテアーゼを産生する(Kornfield, S.J.ら、Rev.Inf.Dis. 3:521-534 (1981))。S.pneumoniaeはまた、ノイラミニダーゼ(宿主糖脂質およびガングリオシドに由来するシアル酸を切断することによって上皮細胞への付着を促進し得る酵素)を産生する。部分的に精製されたノイラミニダーゼが、マウスにおいて髄膜炎様症状を誘導することが観察された;しかし、この知見の信頼性は疑問視された。なぜなら、使用されたノイラミニダーゼ調製物が、おそらく細胞壁産物を混入していたからである。ノイラミニダーゼ以外の他のpneumococcusのタンパク質は、pneumococcusの上皮および内皮細胞への付着に関与する。これらのpneumococcusタンパク質は、いまだ同定されていない。最近、Cundellらは、ペプチド透過酵素が上皮および内皮細胞へのpneumococcusの付着を調整し得ることを報告した。しかし、これらの透過酵素が付着物として直接機能するか、またはそれらがpneumococcusの付着物の発現を調整することによって付着を増強するかは、不明であった(DeVelasco, E.A.ら、Micro.Rev. 59:591-603 (1995))。その病原性を決定する毒性因子のより良好な理解が、ヒトにおける肺炎球菌性疾患の破壊的効果に対処するために発達される必要がある。
【0007】
皮肉なことに、DNAの発見におけるS.pneumoniaeの顕著な役割にも関わらず、この生物の分子遺伝学に関してはほとんどわかっていない。S.pneumoniaeゲノムは、1つの環状の共有結合的に封鎖された二本鎖DNAおよびいわゆる可変性アクセサリーエレメントの集合(例えば、プロファージ、プラスミド、トランスポゾンなど)からなる。S.pneumoniaeのほとんどの物理的特徴およびほとんど全ての遺伝子が不明である。同定されたわずかなものの内のほとんどが物理的にマッピングされていないし、詳細に特徴付けられてもいない。この生物の2、3の遺伝子だけが配列決定されている(例えば、現在版のGENBANKおよび他の核酸データベース、および本明細書中の他所に示されたもののようなS.pneumoniaeのゲノムに関連する参考文献を参照のこと)。インビボ発現され、そして広範に保護的である、S.pneumoniaeの抗原の同定は、捕らえられないままであった。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明によって以下が提供される:
(1)以下からなる群から選択される配列に少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含有する、単離された核酸分子:
(a)表1に示されるポリペプチドの任意のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;または
(b) (a)の任意のヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列。
(2)項目1に記載の(a)または(b)のヌクレオチド配列と同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドに、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子であって、ハイブリダイズする該ポリヌクレオチドが、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、A残基のみまたはT残基のみからなるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドにはハイブリダイズしない、単離された核酸分子。
(3)項目1に記載の(a)のアミノ酸配列を有するポリペプチドのエピトープ保有部分のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含む、単離された核酸分子。
(4)前記ポリペプチドのエピトープ保有部分が表2に列挙されるアミノ酸配列を有する、項目3に記載の単離された核酸分子。
(5)項目1に記載の単離された核酸分子をベクターに挿入する工程を包含する、組換えベクターを作製するための方法。
(6)項目5に記載の方法によって産生される、組換えベクター。
(7)項目6に記載の組換えベクターを宿主細胞に導入する工程を包含する、組換え宿主細胞を作製する方法。
(8)項目7に記載の方法によって産生される、組換え宿主細胞。
(9)異種ポリペプチドを発現することを指示する条件下で項目8に記載の宿主細胞を培養する工程を包含する、項目1に記載の核酸分子によってコードされるポリペプチドを産生するための方法。
(10)項目9に記載の方法によって産生されるポリペプチド。
(11) 表1に記載される任意のポリペプチドのアミノ酸配列からなる群から選択される配列と少なくとも70%同一なアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド。
(12) 表2に示されるS)pneumoniaeエピトープのアミノ酸配列を含む、単離されたポリペプチド抗原。
(13) 項目9に記載のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含む、単離された核酸分子。
(14)項目11に記載のポリペプチドに特異的に結合する、単離された抗体。
(15) 項目14に記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
(16) (1) 表1に同定されるアミノ酸配列、またはそのフラグメントを含むポリペプチドからなる群から選択される1以上のS)pnuemoniaeポリペプチド;および
(2) 薬学的に受容可能な希釈剤、キャリア、または賦形剤:
を含むワクチンであって、該ポリペプチドが、Streptococcus属のメンバーに対する動物における保護的抗体を誘発するのに有効な量で存在する、ワクチン。
(17) 動物においてStreptococcus属のメンバーによって引き起こされる感染を予防または減弱化する方法であって、該動物に項目11に記載のポリペプチドを投与する工程を含み、該ポリペプチドが、該感染を予防または減弱化するのに有効な量で投与される、方法。
(18) サンプル中のStreptococcusポリペプチドをコードする1以上の核酸配列についてアッセイすることを含む、動物から得られた生物学的サンプル中のStreptococcus核酸を検出する方法であって:
(a) ハイブリダイゼーションが生じるような条件下で、該サンプルと1以上の該核酸プローブとを接触する工程、および
(b) 1以上の該プローブの該生物学的サンプル中に存在する1以上の該Streptococcus核酸配列へのハイブリダイゼーションを検出する工程、
を包含する、方法。
(19) 動物から得られる生物学的サンプル中のStreptococcus核酸を検出する方法であって:
(a) ポリメラーゼ連鎖反応を用いて該サンプル中の1以上のStreptococcus核酸配列を増幅する工程、および
(b) 該増幅されたStreptococcus核酸を検出する工程、
を包含する、方法。
(20) 動物から得られる生物学的サンプル中のStreptococcus抗体を検出するためのキットであって:
(a) 固相支持体に付着した項目12に記載のポリペプチド;および
(b) 検出手段、
を含む、キット。
(21) 動物から得られた生物学的サンプル中のStreptococcus抗体を検出する方法であって:
(a) 該サンプルと項目12に記載のポリペプチドとを接触させる工程;および
(b) 抗体-抗原複合体を検出する工程、
を包含する、方法。
【0009】
発明の要旨
本発明は、表1に記載されたS.pneumoniaeポリペプチドをコードするポリヌクレオチドおよび配列番号2、配列番号4、配列番号6以下同様に〜配列番号226に示されるアミノ酸配列を有するポリヌクレオチドを含有する単離された核酸分子を提供する。従って、本発明の1つの局面は、以下からなる群から選択されるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子を提供する:(a)表1に示されるポリペプチドのアミノ酸配列のいずれかをコードするヌクレオチド配列;および(b)(a)のヌクレオチド配列のいずれかに相補的なヌクレオチド配列。
【0010】
本発明のさらなる実施態様は、上記の(a)または(b)のヌクレオチド配列のいずれかに少なくとも90%同一であり、そしてより好ましくは、少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド、または上記の(a)または(b)のポリヌクレオチドにストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子を含む。このハイブリダイズするポリヌクレオチドは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、A残基のみまたはT残基のみからなるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドにハイブリダイズしない。本発明のさらなる核酸の実施態様は、上記の(a)のアミノ酸配列を有するS.pneumoniaeポリペプチドのエピトープ保有部分のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドを含有する単離された核酸分子に関する。
【0011】
本発明はまた、本発明の単離された核酸分子を含む組換えベクター、および組換えベクターを含む宿主細胞、ならびにそのようなベクターおよび宿主細胞を作製するための方法、ならびに組換え技術によりS.pneumoniaeポリペプチドまたはペプチドの産生のためにこれらのベクターを使用する方法に関する。
【0012】
本発明はさらに、表1に記載されるポリペプチドのいずれかのアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する単離されたS.pneumoniaeポリペプチドを提供する。
【0013】
本発明のポリペプチドはまた、表1に記載されるものと少なくとも70%の類似性、およびより好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の類似性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチド、ならびに上記のものに少なくとも70%同一、より好ましくは少なくとも75%同一、そしてさらにより好ましくは80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一なアミノ酸配列を有するポリペプチド;ならびにこのようなポリペプチドをコードする単離された核酸分子を含む。
【0014】
本発明はさらに、ワクチン、好ましくは、薬学的に受容可能な希釈剤、キャリア、または賦形剤とともに、表1に記載される1以上のS.pneumoniaeポリヌクレオチドまたはポリペプチド、またはそのフラグメントを含有する多成分ワクチンを提供する。ここで、S.pneumoniaeポリペプチドは、動物においてStreptococcus属のメンバーに対して免疫応答を誘発するのに有効な量で存在する。本発明のS.pneumoniaeポリペプチドはさらに、1以上の他のstreptococcusまたは非streptococcusの生物の1以上の免疫原と組み合わされて、Streptococcus属、および必要に応じて、1以上の非streptococcus生物のメンバーに対して免疫学的応答を誘発することが意図される多成分ワクチンを産生し得る。
【0015】
本発明のワクチンは、DNA形態(例えば、「裸の」DNA)で投与され得る。ここで、DNAは、1以上のstreptococcusポリペプチドをコードし、そして必要に応じて、非streptococcus生物の1以上のポリペプチドをコードする。1以上のポリペプチドをコードするDNAは、これらのポリペプチドが融合タンパク質として発現されるように構築され得る。
【0016】
本発明のワクチンはまた、遺伝子操作された生物の成分として投与され得る。したがって、1以上のS.pneumoniaeポリペプチドを発現する遺伝子操作された生物が動物に投与され得る。例えば、このような遺伝子操作された生物は、1以上の本発明のS.pneumoniaeポリペプチドを細胞内に、その細胞表面に、またはその細胞膜周辺質に含み得る。さらに、このような遺伝子操作された生物は、1以上のS.pneumoniaeポリペプチドを分泌し得る。
【0017】
本発明のワクチンは、免疫系モジュレーター(例えば、CD86およびGM-CSF)とともに動物に同時投与され得る。
【0018】
本発明はまた、Streptococcus属の1以上のメンバー、好ましくはS.pneumoniae属の1以上の単離物に対して動物において免疫学的応答を誘導する方法を提供する。この方法は、動物に上記のワクチンを投与する工程を含む。
【0019】
本発明はさらに、Streptococcus属のメンバー、好ましくは少なくともS.pneumoniaeによる感染を予防または減弱化するのに十分な、動物における保護的免疫応答を誘導する方法を提供する。この方法は、表1に記載されるポリヌクレオチドまたはポリペプチド、またはそれらのフラグメントの1以上を含有する組成物を動物に投与する工程を含む。さらに、これらのポリペプチド、またはそのフラグメントは、別の免疫原と複合体化され、そして/またはアジュバントと混合されて投与され得る。
【0020】
本発明はさらに、1以上の本発明のS.pneumoniaeポリペプチドの投与により動物において誘発される抗体、およびそのような抗体を産生する方法に関する。
【0021】
本発明はまた、動物においてStreptococcus属のメンバーの遺伝子の発現を検出するための診断方法を提供する。1つのこのような方法は、動物由来のサンプル中のS.pneumoniaeペプチドをコードする遺伝子の発現についてアッセイすることを含む。この発現は、直接的(例えば、表1に記載されるアミノ酸配列に応答して誘発される抗体を用いてポリペプチドレベルをアッセイすることによって)または間接的(例えば、表1に記載されるアミノ酸配列に対する特異性を有する抗体についてアッセイすることによって)にアッセイされ得る。このような方法の例は、Streptococcus核酸配列を増幅および検出するためのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用を含む。
【0022】
本発明はまた、表1に記載されるヌクレオチド配列(配列番号1、配列番号3、配列番号5以下同様に〜配列番号225として示される)の全てまたは一部を有する核酸プローブに関する。これは、Streptococcus核酸にストリンジェントな条件下でハイブリダイズし得る。本発明はさらに、動物から得られた生物学的サンプル中の1以上のStreptococus核酸(この1以上の核酸はStreptococcusポリペプチドをコードする)を検出するための方法に関する。この方法は以下を含む:(a)ハイブリダイゼーションが生じるような条件下で、サンプルと上記の1以上の核酸プローブとを接触させる工程、および(b)生物学的サンプル中に存在するStreptococcus核酸へのこの1以上のプローブのハイブリダイゼーションを検出する工程。
【0023】
本発明はまた、イムノアッセイを含み、これは、Streptococcus、好ましくは少なくともS.pneunoniae属の単離物を検出するためのイムノアッセイを含み、これは、抗原-抗体複合体の形成を許容する条件下で検出されるべき、S.pneumoniaeの抗原/エピトープに対して指向されるプローブ抗体とのサンプル(これは、Streptococcusに感染していることが疑われている)のインキュベーション;およびプローブ抗体を含む抗原-抗体複合体を検出する工程を含む。Streptococcus抗原に対して指向される抗体の検出のためのイムノアッセイは、プローブエピトープ含有抗原を含む抗原-抗体複合体の形成を許容する条件下で、S.pneunoniaeのエピトープを含有するプローブポリペプチドとのサンプル(Streptococcusに感染していることが疑われている哺乳動物由来の抗体を含有する)のインキュベーションを含む。
【0024】
キットに関する本発明のいくつの局面は、適切な容器中で、表1から選択されたヌクレオチド配列または約15以上のヌクレオチドのそのフラグメントを含むポリヌクレオチドを含むStreptococcusに由来するポリヌクレオチドの存在についてサンプルを調査するため;適切な容器中で、ポリペプチド中に存在するS.pneumoniaeエピトープを含むポリペプチドからなるStreptococcus抗原に指向する抗体の存在についてサンプルを分析するため;および適切な容器中で、抗S.pneumoniae抗体からなるStreptococcus抗原の存在についてサンプルを分析するためのキットである。
【0025】
詳細な説明
本発明は、組換え抗原性S.pneumoniaeポリペプチドおよびそのフラグメントに関する。本発明はまた、免疫学的応答を産生するため、およびStreptococcus属のメンバー、少なくともS.pneumoniae属の単離物によって引き起こされる疾患に対する免疫学的保護を付与するためにこれらのポリペプチドを用いるための方法に関する。本発明はさらに、抗原性S.pneumoniaeポリペプチドをコードする核酸配列および生物学的サンプル中のS.pneumoniae核酸およびポリペプチドを検出するための方法に関する。本発明は、S.pneumoniae特異的抗体および宿主動物中に産生されるこのような抗体を検出するための方法に関する。
【0026】
定義
以下の定義は、本発明者らが本発明であると見なす主題を明確にするために提供される。
【0027】
本明細書中で使用される場合、句「病原性因子」は、動物において疾患状態または苦痛を引き起こす因子を意味する。この定義内に含まれるのは、疾患状態を生じるか、またはこのような生物に感染した動物を疾患状態に罹り易くする(例えば、二次感染)、例えば、細菌、原生動物、真菌、ウイルスおよび後生動物の寄生体である。動物において疾患状態を生じるStreptococcus属の種および株もさらに含まれる。
【0028】
本明細書中で使用される場合、用語「生物」は、それが病原性因子であるかどうかには関係なく、ウイルスを含む任意の生存する生物学的系を意味する。
【0029】
本明細書中で使用される場合、用語「Streptococcus」は、Streptococcus属のメンバーである細菌の任意の種または株を意味する。このよな種および株は、当業者に公知であり、そして病原性であるものおよびそうでないものを含む。
【0030】
本明細書中に使用される場合、句「本発明の1以上のS.pneumoniaeポリペプチド」は、表1に記載され、そして配列番号2、配列番号4、配列番号6以下同様〜配列番号226として開示されるS.pneumoniaeポリペプチドの1以上のアミノ酸配列を含むポリペプチドを意味する。これらのポリペプチドは、融合タンパク質として発現され得、ここで、本発明のS.pneumoniaeポリペプチドは、 streptococcus起源または非streptococcus起源であり得るさらなるアミノ酸に連結される。この句はさらに、本発明のS.pneumoniaeポリペプチドのフラグメントを含むポリペプチドを含む。
【0031】
さらなる定義が本明細書を通して提供される。
【0032】
表1の説明
以下の表1は、本発明のS. pneumoniaeの潜在的抗原性ポリペプチドをコードする113のオープンリーディングフレーム(ORF)を記載する情報を提供する。表は、文字SP(これは、S. pneumoniaeを示す)からなるORF識別名(identifier)、直後に3つの数字コード(これは、本発明のS. pneumoniaeの潜在的抗原性ポリペプチド、ならびに各ORFのヌクレオチドまたはアミノ酸配列およびコードされたポリペプチドに任意に番号を付ける)を列挙する。表はさらに、配列同定番号(配列番号)とORF識別名とを関連付ける。各ORF識別名の実際のヌクレオチドまたはアミノ酸配列はまた、対応する配列番号の下の配列表に示される。
【0033】
従って、例えば、名称「SP126」は、本発明のS. pneumoniaeポリペプチド番号126のヌクレオチドおよびアミノ酸配列の両方をいう。さらに、「SP126」は、表1において記載されるように、配列番号223として示されるヌクレオチド配列および配列番号224として示されるアミノ酸配列と関連する。
【0034】
各「ORF」内のオープンリーディングフレームは、示される第2のヌクレオチドで始まる。従って、示される各ヌクレオチド配列についての第1のコドンは2〜4塩基、第2は5〜7、第3は8〜10などである。
【0035】
表2の説明
表2は、本発明者らによって予測される、表1に記載のS. pneumoniaeポリペプチドのそれぞれにおいて存在する抗原性エピトープを列挙する。表1に示される各S. pneumoniaeポリペプチドは、表2に記載される1つ以上の抗原性エピトープを有する。抗原決定基を予測するために用いた分析基準に依存して、決定基の正確な位置はわずかに変化し得ることが理解される。抗原決定基の正確な位置は、用いた基準に依存して約1〜5残基、より可能性があるのは1〜2残基で変化し得る。従って、表2に記載されるSP001の第1の抗原決定基「Lys-1〜Ile-10」は、配列番号2の1位にリジンを含み、そして配列番号2の10位にイソロイシンを含むペプチドを含むが、10より多いまたは少ない残基を含み得る。一般的にいえば、アミノ酸は、その活性に影響を及ぼすことなしに抗原性エピトープを含むペプチドまたはポリペプチドのいずれかの末端に付加され得るが、一方抗原決定基のみを含むペプチドまたはポリペプチドから残基を除去することは、かなりより高い可能性で活性を破壊するようであることもまた、理解される。表2に記載される残基および位置は、表1および配列表に示される各ORFについてのアミノ酸配列に対応することが理解される。
【0036】
表3の説明
表3は、実施例1の方法による、本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの増幅のための、本発明者らによって設計されたPCRプライマーを示す。PCRプライマー設計は当該分野において日常的であり、そして表3において示されるプライマーは、当業者の簡便さのためにのみ提供される。他のプライマーは、同等の成功を伴って使用され得ることが理解される。
【0037】
各プライマーについて、表は、表1からの対応するORF名称、および続く「A」または「B」のいずれかを列挙する。「A」プライマーは5'プライマーであり、そして「B]プライマーは3'プライマーである。制限酵素部位を、各プライマー中に構築し、クローニングを容易にした。各プライマー内の配列を認識し、そして切断する制限酵素を表3、ならびに制限酵素を示す見出し「RE」の下に示す。最終的に、配列表との容易な相関のために、各プライマーについて配列識別名を表3に示す。
【0038】
抗原性S. pneumoniaeポリペプチドをコードする核酸配列の選択
本発明は、保護性免疫応答を生じるために有用であることが判明し得るS. pneumoniaeゲノムのフラグメントに提示されるもの由来のORFの選択番号を提供する。配列決定したS. pneumoniaeゲノムDNAを、S. pneumoniae株7/87 14.8.91の継代培養した単離物から得た(これは、当業者に簡便なように、アメリカンタイプカルチャーコレクションに寄託されている)。S. pneumoniae単離物は、1996年10月10日に、ATCC, 12301 Park Lawn Drive, Rockville, Maryland 20852に寄託され、そして受託番号55840を与えられた。S. pneumoniae単離物から単離したDNAから構築したゲノムライブラリーもまた、1996年10月11日にATCCに寄託され、そしてATCC受託番号97755を与えられた。S. pneumoniaeゲノムから得られた配列のより完全な表は、1996年10月31日に出願された同時係属米国特許分割出願番号60/029,960において見出され得、その全体が本明細書中において参考として援用される。本明細書中に開示されるS. pneumoniaeゲノムのフラグメントのサブセットに含まれるいくつかのORFは、以下に詳述される多くのスクリーニング基準の使用を介して誘導された。
【0039】
選択されたORFは、完全なORFからなっていない。完全なORFを示すポリペプチドは、生物に対する天然のタンパク質の最も密接に近似であり得るが、異種系において完全なORFを発現することが好ましいとは限らない。一般的な実験室方法によって非常に疎水性のタンパク質を発現および精製することは、困難であり得る。従って、本明細書中に記載されるポリペプチドワクチン候補は、組換えタンパク質の産生を簡単にするためにわずかに改変され得る。例えば、アミノ末端シグナル配列に見出されるような高疎水性ドメインをコードするヌクレオチド配列は、ポリペプチドのインビトロ発現のために使用されるいくつかの構築物から除去されている。さらに、カルボキシ末端に生じる任意の高疎水性アミノ酸配列もまた、組換え発現構築物から除去されている。従って、1つの実施態様において、短縮型または改変型ORFを示すポリペプチドは、抗原として使用され得る。
【0040】
潜在的免疫原性ポリペプチドを選択するための多くの方法が、当該分野において公知であるが、本明細書中で開示される多くのORFを、潜在的免疫原性のいくつかの局面についてすべての理論的なS. pneumoniae ORFのスクリーニングに基づいて選択した。選択基準の1つのセットは以下の通りである:
1.I型シグナル配列:アミノ末端I型シグナル配列は、一般に、血漿および外膜を通る新生タンパク質を、細菌細胞の外部に指向させる。Escherichia coliに関する研究から得られた実験証拠は、代表的なI型シグナル配列が以下の生化学的および物理学的特性からなることを示す(Izard, J. W.およびKendall, D. A. Mol. Microbiol. 13: 765-773 (1994))。I型シグナル配列の長さは、極アミノ末端において正味の正電荷を有する、約15〜25の主に疎水性のアミノ酸残基である。さらに、シグナル配列の中心領域は、疎水性環境においてαヘリックスコンホメーションを選択する。最終的に、実際の切断部位を囲む領域は、理想的には6残基長く、-1および-3位において小側鎖アミノ酸を有する。
【0041】
2.IV型シグナル配列:IV型シグナル配列は、既に詳述のI型シグナル配列に加えて存在する機能的シグナル配列のいくつかの型の例である。機能的に関連するが、IV型シグナル配列は、独特のセットの生化学的および物理学的特性を有する(Strom, M.S.およびLory, S., J. Bacteriol. 174: 7345-7351 (1992))。これらは、代表的には、正味の基本電荷(basic charge)を有する6〜8アミノ酸、続くさらなる16〜30の主に疎水性の残基である。IV型シグナル配列の切断部位は、代表的には、極アミノ末端での最初の6〜8アミノ酸の後である。さらに、IV型シグナル配列は、一般に、切断部位に対して+1位にフェニルアラニン残基を含む。
【0042】
3.リポタンパク質:26細菌リポタンパク質前駆体の切断部位の研究は、リポタンパク質切断についてのコンセンサスアミノ酸配列の規定を可能にする。試験された細菌リポタンパク質前駆体のほぼ4分の3は、切断の点と比較して-3〜+1位にて配列L-(A,S)-(G,A)-Cを含んだ(Hayashi, S. およびWu, H. C., J. Bioenerg. Biomembr. 22: 451-471 (1990))。
【0043】
4.LPXTGモチーフ:グラム陽性細菌の表面上で見出されるほとんどのアンカータンパク質は、高度に保存性のカルボキシ末端配列を有することが実験的に決定されている。生物(例えば、S. pyogenes, S. mutans, E. faecalis, S. pneumoniae, および他の生物)由来の50を越えるのこのようなタンパク質は、それらの細胞外位置およびカルボキシ末端アミノ酸配列に基づいて同定されている(Fischetti, V.A., ASM News 62: 405-410 (1996))。保存性領域は、膜貫通ドメインとして機能すると推定される15〜20の疎水性アミノ酸に結合した、極カルボキシ末端での6つの荷電したアミノ酸からなる。試験したほぼすべてのタンパク質において保存される6アミノ酸配列は、膜貫通ドメインにすぐ隣接する。この領域のアミノ酸配列はL-P-X-T-G-Xであり、ここでXは、任意のアミノ酸である。
【0044】
前述の基準を含む、抗原性かつ免疫原性S. pneumoniaeポリペプチドを選択するためのアルゴリズムが開発された。免疫学的に有用なS. pneumoniaeポリペプチドを選択するための、本発明者らによるアルゴリズムの使用は、多くの開示されたORFの選択を生じた。この群において同定されたポリペプチドを含むポリペプチドは、当該分野において標準的な技術によって、そして本明細書中においてさらに記載されるように生成され得る。
【0045】
核酸分子
本発明は、表1において記載され、そして配列番号2、配列番号4;配列番号6など〜配列番号226として示されるアミノ酸配列を有するS. pneumoniaeポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子(これは、S. pneumoniaeのゲノムを配列決定することによって決定され、そして推定免疫原として選択された)を提供する。
【0046】
他に示されない限り、本明細書中でDNA分子を配列決定することによって決定されたすべてのヌクレオチド配列は、自動化DNA配列決定機(例えば、Applied Biosystems, Inc.からのModel 373)を用いて決定され、そして本明細書中で決定されるDNA分子によってコードされるポリペプチドのすべてのアミノ酸配列は、上記のように決定されるDNA配列の翻訳によって予想された。従って、この自動化アプローチによって決定された任意のDNA配列について当該分野において公知のように、本明細書中で決定される任意のヌクレオチド配列はいくつかの誤りを含み得る。自動化によって決定されるヌクレオチド配列は、配列決定されるDNA分子の実際のヌクレオチド配列に対して、代表的には少なくとも約90%の同一、より代表的には少なくとも約95%〜少なくとも約99.9%の同一である。実際の配列は、当該分野において周知の手動DNA配列決定方法を含む他のアプローチによってより正確に決定され得る。当該分野においてまた公知のように、実際の配列と比較した、決定されるヌクレオチド配列における単一の挿入または欠失は、ヌクレオチド配列の翻訳におけるフレームシフトを引き起こし、その結果、決定されるヌクレオチド配列によってコードされると予想されるアミノ酸配列は、挿入または欠失のような点にて始まる配列決定されるDNA分子によって実際にコードされるアミノ酸配列とは完全に異なる。
【0047】
他に示されない限り、本明細書中に示される各「ヌクレオチド配列」は、デオキシリボヌクレオチド(A, G, C, およびTと省略される)の配列として示される。しかし、核酸分子またはポリヌクレオチドの「核酸配列」によって、DNA分子またはポリヌクレオチドにはデオキシリボヌクレオチド配列が、そしてRNA分子またはポリヌクレオチドにはリボヌクレオチド(A, G, C, およびU)の対応する配列(ここで特定されるデオキシヌクレオチド配列における各チミジンデオキシヌクレオチド(T)は、リボヌクレオチドのウリジン(U)によって置き換えられる)が意図される。例えば、デオキシリボヌクレオチドの略語を用いて示される表1において記載される配列を有するRNA分子への言及は、表1の各デオキシヌクレオチドA, GまたはCが、対応するリボヌクレオチドA, G, またはCによって置き換えられ、そして各デオキシヌクレオチドTが、リボヌクレオチドUによって置き換えられた配列を有するRNA分子を示すことが意図される。
【0048】
本発明の核酸分子は、RNA(例えば、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、cDNA、およびクローニングによって得られるか、または合成的に生成されるゲノムDNAを含む)であり得る。DNAは、二本鎖または一本鎖であり得る。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)であり得るか、またはそれは、非コード鎖(アンチセンス鎖としても知られる)であり得る。
【0049】
「単離された」核酸分子によって、天然の環境から取り出された核酸分子(DNAまたはRNA)が意図される。例えば、ベクター中に含まれる組換えDNA分子は、本発明の目的のために単離されることが意図される。単離されたDNA分子のさらなる例は、異種の宿主細胞において維持される組換えDNA分子、または溶液中の(部分的または実質的に)精製されたDNA分子を含む。単離されたRNA分子は、本発明のDNA分子のインビボまたはインビトロでのRNA転写物を含む。本発明に従って単離された核酸分子は、合成的に生成されるような分子をさらに含む。
【0050】
本発明の単離された核酸分子は、表1に記載され、配列番号1、配列番号3、配列番号5など〜配列番号225として示されるヌクレオチド配列を含むDNA分子;表1において記載され、そして配列番号2、配列番号4、配列番号6など〜配列番号226として示されるポリペプチドのコード配列を含むDNA分子;そして上記の配列とは実質的に異なるが、遺伝コードの縮重に起因して、表1において記載されるS. pneumoniaeポリペプチドをなおコードする配列を含むDNA分子を含む。当然のことながら、遺伝コードは当該分野において周知である。従って、上記のような縮重した変異体を生成することは、当業者にとって日常的である。
【0051】
本発明はまた、表1において記載されるものうちのいずれか1つに相補的な配列を有する核酸分子を提供する。そのような単離された分子、特にDNA分子は、例えばノーザンブロット分析またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によってStreptococcal遺伝子を発現するためのプローブとして有用である。
【0052】
本発明はさらに、本明細書中で記載される単離した核酸分子のフラグメントに関する。表1に記載されるヌクレオチド配列を有する単離された核酸分子のフラグメントによって、本明細書中で考察されるように、診断的プローブおよびプライマーとして有用である、長さが、少なくとも約15nt、そしてより好ましくは少なくとも約17nt、さらにより好ましくは少なくとも約20nt、そしてさらにより好ましくは少なくとも約25ntが意図される。当然のことながら、長さがより大きなフラグメント50〜100ntもまた、表1において記載されるようなヌクレオチド配列のすべてではなくともほとんどに対応するフラグメントのように、本発明に従って有用である。例えば、長さが少なくとも20ntのフラグメントによって、表1に記載されるようなヌクレオチド配列からの20以上の連続した塩基を含むフラグメントが意図される。表1において同定されるヌクレオチド配列が、配列番号1、配列番号3、配列番号5など〜配列番号225として提供されるので、そのようなDNAフラグメントを生成することは、当業者にとって日常的である。例えば、そのようなフラグメントは、合成的に生成され得る。
【0053】
本発明の好ましい核酸フラグメントはまた、表1において同定されるS. pneumoniaeのエピトープ保有部分をコードする核酸配列を含む核酸分子を含む。本発明のこのような核酸フラグメントは、例えば、表2において示される各フラグメントのほぼアミノ末端残基〜ほぼカルボキシ末端残基を含むポリペプチドフラグメントをコードするヌクレオチド配列を含む。上記ポリペプチドフラグメントは、表1において同定されるS. pneumoniaeポリペプチドの抗原性領域である。
【0054】
別の局面において、本発明は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、上記の本発明の核酸分子(例えば、表1において同定される核酸分子)中のポリヌクレオチドの一部にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む単離した核酸分子を提供する。「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」によって、以下を含む溶液における42℃での一晩のインキュベーション:50%ホルムアミド、5×SSC(150mMのNaCl、15mMのクエン酸三ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハート液、10%硫酸デキストラン、および20μg/mlの変性剪断サケ精子DNA、続く約65℃にて0.1×SSCにおいてフィルターを洗浄することが意図される。
【0055】
ポリヌクレオチドの「一部」にハイブリダイズするポリヌクレオチドによって、参照のポリヌクレオチドの少なくとも約15ヌクレオチド(nt)、そしてより好ましくは少なくとも約17nt、さらにより好ましくは少なくとも約20nt、そしてさらにより好ましくは約25〜70ntにハイブリダイズするポリヌクレオチド(DNAまたはRNAのいずれか)が意図される。これらは、以上、および以下でより詳細に考察されるような診断用プローブおよびプライマーとして有用である。
【0056】
当然のことながら、参照のポリヌクレオチドのより大きな部分(例えば、長さが50〜100ntの部分)、または参照のポリヌクレオチドの完全長とまでもハイブリダイズするポリヌクレオチドはまた、表1において同定されるようなヌクレオチド配列のすべてではなくともほとんどに対応するポリヌクレオチドのように、本発明に従ったプローブとして有用である。例えば、「長さが少なくとも20nt」のポリヌクレオチドの部分によって、参照のポリヌクレオチドのヌクレオチド配列(例えば、表1に記載されるようなヌクレオチド配列)からの20以上の連続したヌクレオチドが意図される。示されるように、そのような部分は、従来のDNAハイブリダイゼーション技術に従ったプローブとして、または文献(例えば、 Molecular Cloning, A Laboratory Manual, 第2版、Sambrook, J.、Fritsch,E.F.およびManiatis,T.編、 Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor, N.Y.(1989)(その全開示は、本明細書中において参考として援用される))に記載されるようなPCRによる標的配列の増幅のためのプライマーとしてのいずれかで診断的に有用である。
【0057】
本発明のS. pnerumoniaeポリペプチドをコードする核酸配列は、表1において同定され、そして配列番号1、配列番号3、配列番号5、など〜配列番号225として提供されるために、これらの配列の一部にハイブリダイズするポリヌクレオチドを生成することは、当業者にとって日常的である。例えば、本発明のハイブリダイズするポリヌクレオチドは、公知の技術によって合成的に生成され得る。
【0058】
示されるように、本発明のS. pneumoniaeポリペプチドをコードする本発明の核酸分子は、以下を含み得るが、それらに限定されない:それ自体によって、ポリペプチドのアミノ酸配列をコードする核酸分子;およびさらなる機能性を提供するようなさらなるアミノ酸をコードするさらなるコード配列。従って、これらのポリペプチドをコードする配列は、マーカー配列(例えば、融合されたポリペプチドの精製を容易にするペプチドをコードする配列)に融合され得る。本発明のこの局面の特定の好ましい実施態様において、マーカーアミノ酸配列は、とりわけヘキサ-ヒスチジンペプチド(例えば、pQEベクター(Qiagen, Inc.)において提供されるタグ)であり、それらの多くは、商業的に入手可能である。例えば、Gentzおよび共同研究者(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86: 821-824 (1989))によって記載されるように、ヘキサヒスチジンは、得られる融合タンパク質の簡便な精製を提供する。
【0059】
従って、本発明はまた、表1に同定されるS. pneumoniae核酸配列が、融合タンパク質を産生するために、さらなる核酸配列に連結された遺伝子融合物を含む。これらの融合タンパク質は、増大した免疫原性を有するタンパク質を産生するように設計された連鎖球菌または非連鎖球菌起源のエピトープを含み得る。さらに、本発明の融合タンパク質は、ヘルパーT細胞刺激を提供することが公知である抗原決定基、免疫原性を増大する翻訳後修飾(例えば、アシル化)の部位をコードするペプチド、精製を容易にするペプチド(例えば、ヒスチジン「タグ」)、または融合タンパク質を所望の位置に標的化するアミノ酸配列(例えば、異種リーダー配列)を含み得る。
【0060】
細菌発現の全ての場合において、N末端メチオニン残基が添加される。しかし、多くの場合、N末端メチオニン残基は、翻訳後に切断される。従って、本発明は、表1に示されるポリぺプチドを、N末端メチオニンを伴って、および伴わずに含む。
【0061】
従って、本発明は、翻訳後改変が免疫原性を増大させることを可能にするアミノ酸配列に融合した本発明の1つ以上のS. pneumoniaeポリぺプチドを含む融合タンパク質をコードする核酸分子および配列を含む。この翻訳後改変は、インビボでか、または融合タンパク質がインビボで発現される場合、宿主細胞においてのいずれかで起こり得る。このような改変の例には、脂質部分の接着を生じるアミノ酸配列の導入がある。
【0062】
従って、上記のように、本発明は、表1で同定されたS.pneumoniae核酸配列が、別のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列に連結された遺伝子融合物を含む。これらの他のアミノ酸配列は、連鎖球菌起源(例えば、表1から選択される別の配列)または非連鎖球菌起源であり得る。
【0063】
本発明は、さらに、表1に記載されるS.pneumoniaeポリぺプチドの一部、アナログ、または誘導体をコードする、本発明の核酸分子の変異体に関する。変異体は、天然の対立遺伝子変異体のように、天然に生じ得る。「対立遺伝子変異体」によって、生物の染色体上の所定の遺伝子座を占める遺伝子のいくつかの代替の形態の1つが意図される(Genes II、 Lewin, B編、John Wiley & Sons, New York (1985))。天然に存在しない変異体は、当該分野で公知の変異誘発技術を用いて生成され得る。
【0064】
そのような変異体は、ヌクレオチドの置換、欠失、または添加によって生成される変異体を含む。置換、欠失、または付加は、1つ以上のヌクレオチドを含み得る。これらの変異体は、コード領域、非コード領域、またはその両方において変化され得る。コード領域における変化は、保存的もしくは非保存的なアミノ酸置換、欠失、または付加を生成し得る。これらの中で特に好ましいものは、サイレントな置換、付加、および欠失であり、これらは、本明細書中で開示されるS.Pneumoniaeポリぺプチドまたはその一部の特性および活性を変化させない。サイレント置換は、非エピトープ領域で行われる可能性が最も高い。エピトープを含有する領域に関する指針は、本明細書中で、例えば、表2に提供される。またこの点に関して特に好ましいのは、保存的置換である。
【0065】
本発明のさらなる実施態様は、(a)表1に同定されるポリぺプチドの任意のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列;および(b)上記(a)のヌクレオチド配列のいずれかに相補的なヌクレオチド配列と、少なくとも90%同一であるヌクレオチド配列、そしてより好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを含む単離された核酸分子を含む。
【0066】
表1に記載されるS. pneumoniaeポリぺプチドをコードする参照ヌクレオチド配列と、例えば、少なくとも95%「同一」なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドにより、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は、そのポリヌクレオチド配列が主題のS. pneumoniaeポリぺプチドをコードする参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチドあたり5つまでの点変異を含み得ることを除いて、参照配列と同一であることが意図される。換言すれば、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るためには、参照配列中のヌクレオチドの5%までが、欠失され得るかもしくは別のヌクレオチドで置換され得、または参照配列中の全ヌクレオチドの5%までの数のヌクレオチドが、参照配列中に挿入され得る。参照配列のこれらの変異は、参照ヌクレオチド配列の5'または3'末端位で、またはこれらの末端位の間の任意の位置で、参照配列中のヌクレオチドの間に個々に、もしくは参照配列内の1つ以上の連続群で点在して起こり得る。
【0067】
表1に示すいくつかの核酸配列内の特定のヌクレオチドは、配列決定の際に一義的ではなかった。全く未知の配列は、「N」として示される。他の未解明のヌクレオチドは、「R」として示されるプリンか、または「Y」として示されるピリミジンのいずれかであることが判明している。従って、2つのヌクレオチド配列間の同一性を決定する場合、同一性は、任意のヌクレオチド(「R」、「Y」、または「N」を含む)が試験配列において、そして(表1からの)参照配列中の対応する位置において見出される場合に満たされる。同様に、試験配列におけるA、G、または「R」は、参照配列中の「R」と同一であり;そして試験配列中のT、C、または「Y」は、参照配列中の「Y」と同一である。
【0068】
実際には、任意の特定の核酸分子が、例えば、表1に記載されるヌクレオチド配列と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるかどうかは、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix(登録商標), Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, WI 53711)のような公知のコンピュータープログラムを用いて従来通りに決定され得る。Bestfitは、SmithおよびWaterman(Advances Applied Mathematics 2:482-489 (1981))の局所的相同性アルゴリズムを用いて、2つの配列間の相同性の最適のセグメントを見出す。Bestfitまたは任意の他の配列整列プログラムを使用して、特定の配列が、本発明による参照配列に、例えば95%同一であるか否かを決定する場合、パラメーターは、もちろん、同一性の割合が、参照ヌクレオチド配列の全長にわたって計算されるように、そして参照配列の総ヌクレオチド数の5%までの相同性にギャップが許容されるように、設定される。
【0069】
本出願は、表1に記載される核酸配列に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である核酸分子に関する。当業者は、例えば、ハイブリダイゼーションプローブまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーとして、核酸分子を使用する方法をなお知る。本発明の核酸分子の使用には、特に(1)ゲノムまたはcDNAライブラリーのいずれかから、Streptococcusの遺伝子またはその対立遺伝子変異体を単離すること、および(2)StreptococcusのmRNA発現を検出するためのノーザンブロットまたはPCR分析が含まれる。
【0070】
当然に、遺伝子コードの縮重により、当業者は、表1に同定される核酸配列に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一である配列を有する多数の核酸分子が、同一のポリペプチドをコードすることを即座に認識する。実際、これらのヌクレオチド配列の縮重変異体は、すべて同一のポリぺプチドをコードするので、これは上記の比較アッセイを行うことさえなく当業者に明らかである。
【0071】
縮重変異体でない核酸分子について、合理的な数がまた、本発明のS.pneumoniaeポリぺプチドの抗原性エピトープを有するタンパク質をコードすることが当該分野においてさらに認識される。これは、当業者が、ポリぺプチドの抗原性に有意に影響する可能性は低いかまたはないかのいずれかであるアミノ酸置換(例えば、抗原性エピトープを形成すると考えられない領域でのアミノ酸の置換)を十分に認識しているからである。例えば、6アミノ酸程度を含有する抗原性エピトープが同定されている(Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1988)、76頁を参照)ので、ポリぺプチドが複数の抗原性エピトープを有する場合、いくつかのアミノ酸残基の変更は、そのポリぺプチドの抗原性エピトープの全てを消去するとはしばしば予期されない。これは、変更が抗原性エピトープを構成しないと考えられている領域である場合に特にそうである。
【0072】
ベクターおよび宿主細胞
本発明はまた、本発明の単離されたDNA分子を含むベクター、組換えベクターで遺伝子操作された宿主細胞、および組換え技術によるS.pneumoniaeポリペプチドまたはそのフラグメントの産生に関する。
【0073】
組換え構築物は、感染、形質導入、トランスフェクション、トランスベクション(transvection)、エレクトロポレーション、および形質転換のような周知の技術を用いて宿主細胞に導入され得る。ベクターは、例えば、ファージベクター、プラスミドベクター、ウイルスベクター、またはレトロウイルスベクターであり得る。レトロウイルスベクターは、複製可能かまたは複製欠損であり得る。後者の場合、ウイルスの増殖は、一般的に、補完する宿主細胞においてのみ生じる。
【0074】
ポリヌクレオチドは、宿主における増殖のための選択マーカーを含むベクターに結合され得る。一般的に、プラスミドベクターは、リン酸カルシウム沈殿物のような沈殿物中か、または荷電された脂質との複合体中で導入される。ベクターがウイルスである場合、ベクターは、適切なパッケージング細胞株を用いてインビトロでパッケージングされ得、次いで宿主細胞に形質導入され得る。
【0075】
目的のポリヌクレオチドに対するシス作用性制御領域を含むベクターが好ましい。適切なトランス作用性因子は、宿主によって供給される得るか、補完ベクターによって供給され得るか、または宿主への導入の際にベクター自体によって供給され得る。
【0076】
この事に関する特定の好ましい実施態様において、ベクターは、誘導性および/または細胞型特異的であり得る特異的な発現を提供する。このようなベクターの中で特に好ましいベクターは、温度および栄養添加物のような操作することが容易である環境因子によって誘導性のベクターである。
【0077】
本発明において有用な発現ベクターとしては、染色体ベクター、エピソームベクター、およびウイルス由来ベクター(例えば、細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体エレメント、ウイルス(例えば、バキュロウイルス、パポバウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、トリポックスウイルス、仮性狂犬病ウイルス、およびレトロウイルス)に由来するベクター、ならびにそれらの組合せに由来するベクター(例えば、コスミドおよびファージミド)が挙げられる。
【0078】
DNAインサートは、適切なプロモーター(例えば、少し名を挙げると、ファージλPLプロモーター、E.coli lacプロモーター、trpプロモーター、およびtacプロモーター、SV40初期プロモーターおよび後期プロモーター、ならびにレトロウイルスLTRのプロモーター)に作動可能に連結されるべきである。他の適切なプロモーターは、当業者に公知である。発現構築物は、さらに、転写開始、転写終結のための部位、および、転写領域中に翻訳のためのリボソーム結合部位を含む。構築物によって発現される成熟転写物のコード部分は、好ましくは、翻訳されるべきポリペプチドの始めに翻訳開始部位を含み、そして終わりに適切に位置される終止コドン(UAA、UGA、またはUAG)を含む。
【0079】
示されるように、発現ベクターは、好ましくは少なくとも1つの選択マーカーを含む。このようなマーカーとしては、真核生物細胞培養についてはジヒドロ葉酸レダクターゼまたはネオマイシン耐性、およびE.coliおよび他の細菌における培養についてはテトラサイクリン耐性遺伝子またはアンピシリン耐性遺伝子が挙げられる。適切な宿主の代表的な例としては、細菌細胞(例えば、E.coli細胞、Streptomyces細胞、およびSalmonella typhimurium細胞);真菌細胞(例えば酵母細胞);昆虫細胞(例えば、Drosophila S2細胞およびSpodoptera Sf9細胞);動物細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、およびBowes黒色腫細胞);ならびに植物細胞が挙げられるがこれらに限定されない。上記の宿主細胞のための適切な培養培地および条件は当該分野で公知である。
【0080】
細菌における使用に好ましいベクターの中には、pQE70、pQE60、およびpQE-9(Qiagenから入手可能);pBSベクター、Phagescriptベクター、Bluescriptベクター、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Stratageneから入手可能);pETシリーズのベクター(Novagenから入手可能);ならびにptrc99a、pKK223-3、pKK233-3、pDR540、pRIT5(Pharmaciaから入手可能)が含まれる。好ましい真核生物ベクターの中には、pWLNEO、pSV2CAT、pOG44、pXT1、およびpSG(Stratageneから入手可能);ならびにpSVK3、pBPV、pMSG、およびpSVL(Pharmaciaから入手可能)がある。他の適切なベクターは、当業者に容易に明らかである。
【0081】
本発明における使用に適した公知の細菌プロモーターの中には、E.coli lacIおよびlacZプロモーター、T3プロモーターおよびT7プロモーター、gptプロモーター、λPRプロモーターおよびλPLプロモーター、ならびにtrpプロモーターが含まれる。適切な真核生物プロモーターとしては、CMV即時プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期SV40プロモーターおよび後期SV40プロモーター、レトロウイルスLTRのプロモーター(例えば、ラウス肉腫ウイルス(RSV)のプロモーター)、ならびにメタロチオネインプロモーター(例えば、マウスメタロチオネインIプロモーター)が挙げられる。
【0082】
宿主細胞への構築物の導入は、リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAEデキストラン媒介トランスフェクション、カチオン性脂質媒介トランスフェクション、エレクトロポレーション、形質導入、感染または他の方法によってもたらされ得る。このような方法は、多くの標準的研究室マニュアル(例えば、Davisら, Basic Methods In Molecular Biology(1986))に記載されている。
【0083】
本発明のポリぺプチドをコードするDNAの高等真核生物による転写は、エンハンサー配列をベクター中に挿入することによって増大され得る。エンハンサーは、DNAのcis作用エレメントであり、通常約10〜300bpであり、所定の宿主細胞型におけるプロモーターの転写活性を増大するように作用する。エンハンサーの例には、複製起点の後期側100〜270bpに位置するSV40エンハンサー、サイトメガロウイルス初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーが含まれる。
【0084】
翻訳されたポリぺプチドの小胞体の管腔中への、細胞膜周辺腔への、または細胞外環境への分泌のために、適切な分泌シグナルが、発現されたポリぺプチド中に組み込まれ得る。シグナルは、ポリぺプチドに対して内因性であり得るか、またはこれらは異種シグナルであり得る。
【0085】
ポリペプチドは、融合タンパク質のような改変された形態で発現され得、そして分泌シグナルだけでなく、付加的な異種の機能的領域も含み得る。例えば、付加的なアミノ酸、特に荷電アミノ酸の領域が、宿主細胞内での、精製の間の、または続く取り扱いおよび保存の間の、安定性および残存性を改善するために、ポリペプチドのN末端に付加され得る。また、ペプチド部分が、精製を容易にするためにポリペプチドへ付加され得る。そのような領域は、ポリペプチドの最終調製の前に除去され得る。とりわけ、分泌または排出を生じるため、安定性を改善するため、および精製を容易にするためのペプチド部分のポリペプチドへの付加は、当該分野でよく知られた日常的な技術である。好ましい融合タンパク質は、タンパク質の可溶化に有用な免疫グロブリン由来の異種領域を含む。例えば、EP A 0 464 533(また、カナダ国対応出願2045869)は、別のヒトタンパク質またはその一部とともに免疫グロブリン分子の定常領域の種々の部分を含む融合タンパク質を開示する。多くの場合、融合タンパク質中のFc部分は、治療および診断における使用に十分に有利であり、従って、例えば改善された薬物動態特性を生じる(EP A 0232 262)。一方、いくつかの使用について、融合タンパク質が、記載される有利な様式で、発現され、検出され、そして精製された後にFc部分が削除され得ることが望ましい。これは、Fc部分が、治療および診断における使用の妨げになると判明する場合(例えば、融合タンパク質が免疫のための抗原として使用される場合)である。薬物探索において、例えばhIL5-レセプターのようなヒトタンパク質は、hIL-5のアンタゴニストを同定するための高処理能力スクリーニングアッセイの目的でFc部分と融合されている。Bennett D.ら, J. Molec. Recogn. 8:52-58(1995)、およびJohanson K.ら, J. Biol. Chem. 270,(16) 9459-9471(1995)を参照のこと。
【0086】
S.pneumoniaeポリぺプチドは、硫安沈殿またはエタノール沈殿、酸抽出、陰イオンまたは陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、レクチンクロマトグラフィー、および高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)を含む周知の方法によって組換え細胞培養物から回収され、そして精製され得る。最も好ましくは、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)が精製のために用いられる。本発明のポリペプチドは、天然の精製産物、化学合成手順の産物、および原核生物宿主または真核生物宿主(例えば、細菌細胞、酵母細胞、高等植物細胞、昆虫細胞、および哺乳動物細胞を含む)から組換え技術によって産生された産物を含む。
【0087】
ポリぺプチドおよびフラグメント
本発明はさらに、表1に記載され、そして配列番号2、配列番号4、配列番号6などと配列番号226まで示されるアミノ酸配列を有する単離されたポリペプチド、および上記ポリペプチドの一部を含むペプチドもしくはポリペプチドを提供する。用語「ペプチド」および「オリゴペプチド」は、(通常認識されるように)同義語と考えられ、そして各用語は、文脈がペプチド結合によって結合された少なくとも2つのアミノ酸の鎖を示すことを必要とする場合、交換可能に使用され得る。用語「ポリペプチド」は、10より多いアミノ酸残基を含む鎖に対して本明細書中で使用される。本明細書中の全てのオリゴペプチドおよびポリペプチドの式または配列は、左から右へ、そしてアミノ末端からカルボキシ末端の方向に書かれる。
【0088】
表1に記載されるS.pneumoniaeポリぺプチドのいくつかのアミノ酸配列は、ポリぺプチドの抗原性に有意に影響することなく変化し得る。配列におけるこのような差異が意図される場合、抗原性を決定するポリぺプチド上の重要な領域が存在することが思い起こされるべきである。一般に、ポリぺプチドの抗原性に有意に影響を与えることなく、抗原性エピトープの一部を形成しない残基を置換することが可能である。このような変更のための指針は、各ポリぺプチドについてのエピトープが記載される表2に与えられる。
【0089】
本発明のポリペプチドは、好ましくは単離された形態で提供される。「単離されたポリペプチド」により、その天然の環境から取り出されたポリペプチドを意図する。従って、組換え宿主細胞内で生成されるかおよび/または含まれるポリペプチドは、本発明の目的のために単離されたとみなされる。また、「単離されたポリペプチド」は、組換え宿主細胞から部分的または実質的に精製されたポリペプチドも意図する。例えば、表1に記載されるS.pneumoniaeポリペプチドの組換え生成した型は、SmithおよびJohnson(Gene 67: 31-40 (1988))により記載される一工程の方法によって、実質的に精製され得る。
【0090】
本発明のポリペプチドは、以下を含む:(a)表1に記載されるポリペプチドのいずれかのアミノ酸配列;および(b)(a)のポリペプチドのいずれか1つのエピトープ保有部分のアミノ酸配列;ならびに上記の(a)または(b)に記載されるアミノ酸配列と少なくとも70%の類似性、そしてより好ましくは少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%の類似性を有するポリペプチド、ならびに上記のアミノ酸配列に少なくとも70%の同一、より好ましくは少なくとも75%の同一、そしてなおより好ましくは80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。
【0091】
2つのポリペプチドについての「%類似性」によって、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Unix(登録商標)用バージョン8, Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, WI 53711)および類似性を決定するための初期設定(default setting)を用いて2つのポリペプチドのアミノ酸配列を比較することによって生じる類似性のスコアが意図される。Bestfitは、SmithおよびWaterman(Advances in Applied Mathematics 2:482-489 (1981))の局所的な相同性アルゴリズムを、2つの配列間の類似性の最適のセグメントを見出すために使用する。
【0092】
S. pneumoniaeポリペプチドの参照アミノ酸配列に少なくとも、例えば、95%「同一な」アミノ酸配列を有するポリペプチドにより、ポリペプチド配列が参照アミノ酸配列の各100アミノ酸毎に5つまでのアミノ酸変化を含み得ることを除いて、ポリペプチドのアミノ酸配列は参照配列と同一であることが意図される。言い換えれば、参照アミノ酸配列に少なくとも95%同一なアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るために、参照配列において5%までのアミノ酸残基が、欠失されるかもしくは別のアミノ酸で置換され得、または参照配列における総アミノ酸残基の5%までの多数のアミノ酸が参照配列に挿入され得る。これらの参照配列の改変は、参照アミノ酸配列のアミノ末端位置もしくはカルボキシ末端位置で、または参照配列の残基間で個々に、もしくは参照配列内で1つ以上の連続したグループ内のいずれかで末端位置の間のどこかで、起こり得る。
【0093】
表1において示すアミノ酸配列は、1つ以上の「X」残基を有し得る。「X」は未知であることを示す。従って、同一性を規定するために、Xが示される参照アミノ酸配列(表1に示す)において、任意のアミノ酸が同じ位置に存在する場合、2つの配列がその位置で同一であることを示す。
【0094】
実際の様式では、任意の特定のポリペプチドが、例えば、図1に示されるアミノ酸配列に対して、少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるかどうかは、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Unix(登録商標)用バージョン8、Genetics Computer Group, University Research Park, 575 Science Drive, Madison, WI 53711)のような公知のコンピュータープログラムを使用して慣習的に決定され得る。特定の配列が、例えば、本発明による参照配列に95%同一であるかどうかを決定するために、Bestfitまたは任意の他の配列アラインメントプログラムを使用する場合、当然、同一性の百分率が参照アミノ酸配列の全長にわたって計算され、そして参照配列内のアミノ酸残基の総数の5%までの相同性におけるギャップが許容されるようなパラメーターが設定される。
【0095】
下記に記載するように、本発明のポリペプチドはまた、Streptococcalタンパク質発現を検出するためのアッセイに有用である、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を惹起するために使用され得る。
【0096】
別の局面において、本発明は、本発明のS. pneumoniaeポリペプチドのエピトープ保有部分を含む、ペプチドおよびポリペプチドを提供する。これらのエピトープは、本発明のポリペプチドの免疫原性または抗原性エピトープである。「免疫原性エピトープ」は、タンパク質全体またはポリペプチドが免疫原である場合、抗体応答を誘発するタンパク質の一部として定義される。これらの免疫原性エピトープは、分子上のいくつかの位置に制限されると考えられている。一方では、抗体が結合し得るタンパク質分子の領域は、「抗原決定基」または「抗原性エピトープ」と定義され得る。タンパク質の免疫原性エピトープの数は、一般には、抗原性エピトープの数よりも少ない(Geysenら, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:3998-4002(1983))。推定抗原性エピトープは、以下の表2に示される。
【0097】
抗原性エピトープを保有するペプチドまたはポリペプチド(すなわち、抗体が結合し得るタンパク質分子の領域を含む)の選択に関して、タンパク質配列の一部を模倣する比較的短い合成ペプチドが、部分的に模倣されたタンパク質と反応する抗血清を日常的に誘発し得ることが当該分野で周知である(例えば、Sutcliffe,J.ら, Science 219:660-666(1983))。タンパク質反応性血清を誘発し得るペプチドは、しばしばタンパク質の一次配列で頻繁に示され、そして単純な化学的法則のセットにより特徴付けられ得、そしてインタクトなタンパク質の免疫優性領域(すなわち、免疫原性エピトープ)にも、アミノ末端またはカルボキシル末端にも、制限されない。極度に疎水性であるペプチドおよび6以下の残基のペプチドは、一般には、模倣タンパク質に結合する抗体の誘導に効果がなく;より長いペプチド、特にプロリン残基を含むペプチドは、通常は有効である(Sutcliffeら、前出、661頁)。例えば、これらのガイドラインに従って設計された20のペプチドのうち18(インフルエンザウイルス赤血球凝集素HA1ポリペプチド鎖の配列の75%を覆う8-39残基を含む)は、 HA1タンパク質またはインタクトなウイルスと反応する抗体を誘導した;そしてMuLVポリメラーゼからの12/12ペプチドおよび狂犬病糖タンパク質からの18/18はそれぞれのタンパク質を沈澱する抗体を誘導した。
【0098】
本発明の抗原性エピトープ保有ペプチドおよびポリペプチドは、それゆえ、本発明のポリペプチドに特異的に結合するモノクローナル抗体を含む抗体を惹起するのに有用である。従って、抗原エピトープ保有ペプチドで免疫化されたドナーからの脾臓細胞の融合により得られる高い比率のハイブリドーマは、一般に天然のタンパク質と反応性がある抗体を分泌する(Sutcliffeら、前出、663頁)。抗原性エピトープ保有ペプチドまたはポリペプチドにより惹起された抗体は、模倣タンパク質を検出するのに有用であり、そして異なるペプチドに対する抗体が、翻訳後プロセシングを受けるタンパク質前駆体の種々の領域の末路を追跡するために使用され得る。免疫沈降アッセイにおいて、短いペプチド(例えば、約9アミノ酸)でさえ、より長いペプチドに結合しそして置換し得ることが示されているので、ペプチドおよび抗ペプチド抗体は、模倣タンパク質についての種々の定性的または定量的アッセイ、例えば、競合的アッセイにおいて使用され得る(例えば、Wilsonら, Cell 37:767-778(1984) 777頁)。本発明の抗ペプチド抗体もまた、模倣タンパク質の精製(例えば、当該分野で周知の方法を使用して、吸着クロマトグラフィーにより)に有用である。
【0099】
上記のガイドラインに従って設計された本発明の抗原性エピトープ保有ペプチドおよびポリペプチドは、好ましくは本発明のポリペプチドのアミノ酸配列内に含まれる少なくとも7、より好ましくは少なくとも9、そして最も好ましくは約15〜約30の間のアミノ酸の配列を含む。しかし、本発明のポリペプチドの約30〜約50アミノ酸または全体のアミノ酸配列までの任意の長さおよび全体を含む、本発明のポリペプチドのアミノ酸配列のより大きな部分を含むペプチドまたはポリペプチドもまた、本発明のエピトープ保有ペプチドまたはポリペプチドであると考えられ、そしてまた模倣タンパク質と反応する抗体を誘導するのに有用である。好ましくは、エピトープ保有ペプチドのアミノ酸配列は、水性溶媒中で実質的な溶解性を提供するように選択され(すなわち、その配列は、比較的親水性の残基を含み、そして高度に疎水性の配列は好ましくは回避される);そしてプロリン残基を含む配列が特に好ましい。
【0100】
Streptococcal特異的抗体を産生するために使用され得る抗原性ポリペプチドまたはペプチドの非限定的な例には、表1に同定されるアミノ酸配列の一部が挙げられる。より詳細には、表2は、本発明のポリペプチドの抗原性フラグメントを開示し、この抗原性フラグメントは、各々のフラグメントの示されたほぼ最初のアミノ酸残基から示されたほぼ最後のアミノ酸残基までのアミノ酸配列を含む。表2に開示されるポリペプチドフラグメントは、表1に記載されるS. pneumoniaeポリペプチドの抗原性領域であると考えられる。従って、本発明はさらに、表2に示されるエピトープのアミノ酸配列を含む単離されたペプチドおよびポリペプチド、ならびにこのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む。
【0101】
本発明のエピトープ保有ペプチドおよびポリペプチドは、本発明の核酸分子を使用する組換え手段を含むペプチドまたはポリペプチドを作製するための任意の従来の手段により産生され得る。例えば、本発明のエピトープ保有アミノ酸配列は、組換え体産生および精製の間、ならびに抗ペプチド抗体を産生するための免疫化の間、キャリアとして作用するより大きなポリペプチドに融合され得る。エピトープ保有ペプチドはまた、化学合成の公知の方法を使用して合成され得る。例えば、Houghtenは、4週間未満で、調製されそして(ELISA-タイプ結合研究により)特徴付けられたHA1ポリペプチドのセグメントの単一アミノ酸改変体を示す10〜20mgの248の異なる13残基ペプチドのような多数のペプチドの合成のための簡単な方法を記載している(Houghten, R.A. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:5131-5135(1985))。この「同時複数ペプチド合成(Simultaneous Multiple Peptide Synthesis)(SMPS)」プロセスは、さらにHoughtenおよび共同研究者(1986)の米国特許第4,631,211号に記載される。この手順において、種々のペプチドの固相合成のための個々の樹脂は、別々の溶媒透過性パケットに含まれ、固相法に関連する多くの同一の反復工程の最適な使用を可能にする。完全なマニュアル手順は、500〜1000以上の合成が同時に行われるのを可能にする(Houghtenら、前出、5134頁)。
【0102】
本発明のエピトープ保有ペプチドおよびポリペプチドは、当該分野に周知の方法によって抗体を誘導するために使用される(例えば、Sutcliffeら、前出;Wilsonら、前出;Chow, M.ら, Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:910-914;およびBittle, F.J.ら, J.Gen.Virol. 66:2347-2354 (1985))。一般には、動物は遊離ペプチドで免疫化され得る;しかし、抗ペプチド抗体力価はペプチドを高分子キャリア(例えば、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)または破傷風トキソイド)にカップリングすることにより追加免疫され得る。例えば、システインを含有するペプチドは、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS)のようなリンカーを使用してキャリアにカップリングされ得、一方、他のペプチドは、グルタルアルデヒドのようなより一般的な連結剤を使用してキャリアにカップリングされ得る。ウサギ、ラット、およびマウスのような動物は、遊離またはキャリア-カップリングペプチドのいずれかで、例えば、約100μgのペプチドまたはキャリアタンパク質およびFreundのアジュバントを含むエマルジョンの腹腔内および/または皮内注射により免疫化される。いくつかの追加免疫注射が、例えば、固体表面に吸着された遊離ペプチドを使用してELISAアッセイにより検出され得る有用な力価の抗ペプチド抗体を提供するために、例えば、約2週間の間隔で必要とされ得る。免疫化動物からの血清における抗ペプチド抗体の力価は、抗ペプチド抗体の選択により、例えば、当該分野で周知の方法による固体支持体上のペプチドへの吸着および選択された抗体の溶出により増加され得る。
【0103】
本発明の免疫原性エピトープ保有ペプチド、すなわち、全体のタンパク質が免疫原である場合、抗体応答を惹起するタンパク質の部分は、当該分野で公知の方法により同定される。例えば、Geysenら前出は、酵素-結合免疫吸着アッセイにおいて反応するために十分に純粋な何百というペプチドの固体支持体上の迅速な同時合成の手順を開示する。合成ペプチドの抗体との相互作用は、次いで、それらを支持体から除去することなく容易に検出される。この様式において、所望のタンパク質の免疫原性エピトープを保有するペプチドは、当業者により日常的に同定され得る。例えば、口蹄疫ウイルスのコートタンパク質における免疫学的に重要なエピトープは、タンパク質の213のアミノ酸配列全体を覆う全ての208の可能なヘキサペプチドの重複セットの合成により、7アミノ酸の分解能でGeysenら、前出によって位置付けされた。次いで、全ての20アミノ酸が順にエピトープ内の各位置で置換されたペプチドの完全な置換セットが合成され、そして抗
体との反応のための特異性を与える特定のアミノ酸が決定された。従って、本発明のエピトープ保有ペプチドのペプチドアナログは、この方法により日常的に作製され得る。Geysen(1987)の米国特許第4,708,781号は、所望のタンパク質の免疫原性エピトープを保有するペプチドを同定するこの方法をさらに記載している。
【0104】
さらになお、Geysen(1990)の米国特許第5,194,392号は、目的の抗体の特定のパラトープ(抗原結合部位)に相補的であるエピトープの位相幾何学的等価物(すなわち、「ミモトープ」)であるモノマー(アミノ酸または他の化合物)の配列を検出または決定する一般的な方法を記載する。より一般的には、Geysen(1989)の米国特許第4,433,092号はまた、目的の特定のレセプターのリガンド結合部位に相補的であるリガンドの位相等価であるモノマーの配列を検出または決定する方法を記載する。同様に、Houghten, R. A.ら(1996)の米国特許第5,480,971号は、線状C1-C7-アルキル過アルキル化(peralkylated)オリゴペプチドおよびセットおよびこのようなペプチドのライブラリー、ならびに目的のアクセプター分子に優先的に結合する過アルキル化オリゴペプチドの配列を決定するためにこのようなオリゴペプチドセットおよびライブラリーを使用する方法を開示する。従って、本発明のエピトープ保有ペプチドの非ペプチドアナログはまた、これらの方法により日常的に作製され得る。
【0105】
「ポリペプチドおよびフラグメント」のこの節に引用される各文書の全体の開示は、これにより参考として本明細書中に援用される。
【0106】
当業者が理解するように、本発明のポリペプチドおよび上記のそのエピトープ保有フラグメントは、免疫グロブリン(IgG)の定常ドメインの一部と合わされ得、キメラポリペプチドを生じる。これらの融合タンパク質は、精製を容易にし、そしてインビボで増加した半減期を示す。これは、例えば、ヒトCD4-ポリペプチドの最初の2つのドメインおよび哺乳動物免疫グロブリンの重鎖または軽鎖の定常領域の種々のドメインからなるキメラタンパク質について示されている(EPA 0,394,827;Trauneckerら、Nature 331:84-86(1988))。IgG部分によるジスルフィド結合ダイマー構造を有する融合タンパク質はまた、他の分子の結合および中和において、モノマーS.pneumoniaeポリペプチドまたはそのフラグメント単独よりも効率的であり得る(Fountoulakisら、J. Biochem. 270:3958-3964(1995))。
【0107】
診断アッセイ
本発明はさらに、Streptococcalポリペプチド(例えば、表1に記載されるポリペプチド)をコードする遺伝子の発現の検出を介して動物におけるStreptococcal感染についてアッセイする方法に関する。この方法は、動物からの組織または体液を、Streptococcus特異的抗体またはStreptococcal核酸もしくはタンパク質について分析することを含む。Streptococcusに特異的な核酸の分析は、ハイブリダイゼーションプローブまたはプライマーのいずれかとして本発明の核酸配列を用いるPCRまたはハイブリダイゼーション技術(Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版, Sambrook, Fritsch,およびManiatis編, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989; PCR増幅したDNAの制限断片長多型の分析により斑点熱群Rickettsiae種間の区別を記載する、Eremeevaら, J. Clin. Microbiol. 32:803-810 (1994)を参照のこと)により行われ得る。PCRを介するB.burgdorferi核酸を検出するための方法は、例えば、Chenら, J. Clin. Microbiol. 32:589-595 (1994)に記載される。
【0108】
Streptococcusでの感染に関連した疾患状態の分析が既に行われている場合、本発明は、疾患状態の進行または後退をモニタリングするために有用であり、これにより、増強されたStreptococcus遺伝子発現を示す患者は、これらの遺伝子をより低いレベルで発現する患者と比較してより悪化した臨床的結果を経験する。
【0109】
「動物におけるStreptococcal感染について、Streptococcalポリペプチドをコードする遺伝子の検出を介してアッセイすること」により、直接的(例えば、絶対的なタンパク質のレベルまたは核酸のレベルを決定または評価することにより)または相対的(例えば、第2の生物学的サンプルにおけるStreptococcusポリペプチドレベルまたはmRNAレベルを比較することにより)のいずれかに第1の生物学的サンプル中の1つ以上のStreptococcusポリペプチドのレベルまたはStreptococcusポリペプチドをコードする核酸のレベルを定性的または定量的に測定または評価することを意図する。相対的比較のために用いられる第2のサンプルにおけるStreptococcusポリペプチドレベルまたは核酸レベルは、Streptococcusに感染していない動物から得られた場合は、検出不可能であり得る。疾患状態の進行または後退をモニタリングする場合、Streptococcusポリペプチドレベルまたは核酸レベルは、Streptococcusに感染した動物または第1のサンプルを得たのと同じ動物のいずれかから得たが第1のサンプルとは異なる時点で動物から採取した第2のサンプルと比較され得る。当該分野で認識されるように、一旦、Streptococcus感染の特定の段階に対応する標準的なStreptococcusポリペプチドレベルまたは核酸レベルが公知になれば、これは、比較のための標準として繰り返し使用され得る。
【0110】
「生物学的サンプル」によって、Streptococcusnoポリペプチド、mRNA、もしくはDNAを含む動物、細胞株、組織培養物、または他の供給源から得られる任意の生物学的サンプルが意図される。生物学的サンプルは、Streptococcusポリペプチドを含む体液(例えば、血漿および滑液)、および筋肉、皮膚、ならびに軟骨組織を含む。組織生検および体液を得るための方法は当該分野で周知である。
【0111】
本発明は、哺乳動物におけるStreptococcus感染に関連する疾患の検出に有用である。好ましい哺乳動物として、サル(monkey)、サル(ape)、ネコ、イヌ、ウシ、ブタ、ウマ、ウサギ、およびヒトが挙げられる。特に好ましいのはヒトである。
【0112】
全RNAは、任意の適切な技術(例えば、ChomczynskiおよびSacchi, Anal. Biochem. 162:156-159 (1987)に記載されている一工程のグアニジン-チオシアネート-フェノール-クロロホルム法)を使用して生物学的サンプルから単離され得る。次いで、表1に同定される核酸配列に十分に相同性を有し、相補配列間でのハイブリダイゼーションを可能にするStreptococcusポリペプチドをコードするmRNAを、任意の適切な方法を用いてアッセイする。これらは、ノーザンブロット分析、S1ヌクレアーゼマッピング、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ポリメラーゼ連鎖反応と組み合わせた逆転写(RT-PCR)、およびリガーゼ連鎖反応と組み合わせた逆転写(RT-LCR)を含む。
【0113】
ノーザンブロット分析は、Haradaら、Cell 63:303-312 (1990)に記載されているように行われ得る。簡潔には、全RNAが上記のように生物学的サンプルから調製される。ノーザンブロットについては、RNAは適切な緩衝液(例えば、グリオキサール/ジメチルスルホキシド/リン酸ナトリウム緩衝液)中で変性され、アガロースゲル電気泳動に供され、そしてニトロセルロースフィルターに転写される。RNAがUVリンカーによってフィルターに結合された後、フィルターは、ホルムアミド、SSC、デンハルト溶液、変性させたサケ精子、SDS、およびリン酸ナトリウム緩衝液を含有する溶液中で予備ハイブリダイゼーションされる。任意の適切な方法(例えば、32PマルチプライムDNA標識システム(Amersham))に従って標識された表1に示されるS. pneumoniaeポリペプチドDNA配列が、プローブとして使用される。一晩のハイブリダイゼーション後、フィルターは洗浄され、そしてX線フィルムに曝される。本発明に従うプローブとしての使用のためのDNAは、上記の節に記載されており、そして少なくとも15bpの長さが好ましい。
【0114】
S1マッピングは、Fujitaら、Cell 49:357-367 (1987)に記載されているように行われ得る。S1マッピングでの使用のためのプローブDNAを調製するために、本発明の上記のS. pneumoniae DNA配列のセンス鎖がテンプレートとして使用され、標識されたアンチセンスDNAが合成される。次いで、アンチセンスDNAは、適切な制限エンドヌクレアーゼを使用して消化され、所望の長さのさらなるDNAプローブが生成され得る。このようなアンチセンスプローブは、標的mRNA(すなわち、StreptococcusポリペプチドをコードするmRNA)に対応する保護されたバンドを可視化するために有用である。
【0115】
好ましくは、StreptococcusポリペプチドをコードするmRNAのレベルは、Makinoら、Technique 2:295-301 (1990) に記載されるようなRT-PCR法を使用してアッセイされる。この方法により、ポリアクリルアミドゲルバンド中の「アンプリコン」の放射活性は、標的mRNAの初期濃度に直線的に相関する。簡潔には、この方法は、RTプライマーおよび適切な緩衝液を含む反応混合物中の生物学的サンプルから単離された全RNAを添加する工程を包含する。プライマーのアニーリングのためのインキュベーション後、混合物はRT緩衝液、dNTP、DTT、RNaseインヒビター、および逆転写酵素を補充され得る。RNAの逆転写を達成するためのインキュベーション後、次いで、RT産物は標識されたプライマーを使用するPCRに供される。あるいは、標識されたプライマーではなく、標識されたdNTPがPCR反応混合物中に含まれ得る。PCR増幅は、従来技術に従ってDNAサーマルサイクラー中で行われ得る。増幅を達成するための適切な数のラウンド後、PCR反応混合物はポリアクリルアミドゲル上で電気泳動される。ゲルの乾燥後、適切なバンド(StreptococcusポリペプチドをコードするmRNAに対応する)の放射活性は、画像解析機を使用して定量される。RTおよびPCR反応の成分および条件、試薬およびゲル濃度、ならびに標識方法は、当該分野で周知である。RT-PCR法の変法は当業者に明らかである。
【0116】
生物学的サンプル中のStreptococcusポリペプチドレベルのアッセイは、任意の当該分野で公知の方法を使用して行われ得る。抗体に基づく技術が、生物学的サンプル中のStreptococcusポリペプチドレベルをアッセイするために好ましい。例えば、組織中でのStreptococcusポリペプチドの発現は、伝統的な免疫組織学的方法で研究され得る。これらの場合、特異的認識は一次抗体(ポリクローナルまたはモノクローナル)によって提供されるが、二次検出系は、蛍光、酵素、または他の結合された二次抗体を利用し得る。結果として、病理学試験のための組織切片の免疫組織学的染色が得られる。組織はまた、ウェスタンブロットまたはドット/スロットアッセイ(Jalkanen, M.ら、J. Cell. Biol. 101:976-985 (1985);Jalkanen, Mら、J. Cell. Biol. 105:3087-3096 (1987))のためのStreptococcusポリペプチドの遊離のために、例えば、尿素および中性の界面活性剤を用いて抽出され得る。陽イオン性固相の使用に基づくこの技術において、Streptococcusポリペプチドの定量は、単離されたStreptococcusポリペプチドを標準として使用して達成され得る。この技術はまた、体液にも適用され得る。
【0117】
Streptococcusポリペプチド遺伝子発現を検出するために有用な他の抗体に基づく方法は、イムノアッセイ(例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびラジオイムノアッセイ(RIA))を含む。例えば、Streptococcusポリペプチド特異的モノクローナル抗体は、Streptococcusポリペプチドを検出および定量するための、免疫吸着剤としておよび酵素標識プローブとしての両方に使用され得る。サンプル中に存在するStreptococcusポリペプチドの量は、直線回帰コンピューターアルゴリズムを使用して、標準的な調製物中に存在する量との比較によって算出され得る。腫瘍抗原を検出するためのこのようなELISAは、Iacobelliら、Breast Cancer Research and Treatment 11:19-30 (1988) に記載されている。別のELISAアッセイにおいては、2つの異なる特異的なモノクローナル抗体が、体液中のStreptococcusポリペプチドを検出するために使用され得る。このアッセイにおいて、一方の抗体が免疫吸着剤として使用され、そして他方が酵素標識プローブとして使用される。
【0118】
上記の技術は、本質的に、「一工程」または「二工程」アッセイとして行われ得る。「一工程」アッセイは、固定化抗体とStreptococcusポリペプチドとを接触させる工程を包含し、そして洗浄する工程、標識された抗体と混合物とを接触させる工程は含まない。「二工程」アッセイは、洗浄する工程を標識された抗体と混合物とを接触させる工程の前に包含する。他の従来の方法もまた、適切に使用され得る。通常、支持体上にアッセイ系の1つの成分を固定することが所望され、それによって系の他の成分は、その成分との接触およびサンプルからの容易な除去を生じることが可能となる。
【0119】
本発明での使用のためのStreptococcusポリペプチド特異的抗体は、完全なS. pneumoizeポリペプチドまたはそのフラグメントに対して惹起され得る。これらのポリペプチドおよびフラグメントは、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)と共に、またはそれが充分に長い(少なくとも約25アミノ酸)場合はキャリアを伴わずに、動物(例えば、ウサギまたはマウス)に投与され得る。
【0120】
本明細書中で使用される場合、用語「抗体」(Ab)または「モノクローナル抗体」(Mab)は、Streptococcusポリペプチドに特異的に結合し得る完全な分子および抗体フラグメント(例えば、FabおよびF(ab')2フラグメントのような)を含むことを意味する。FabおよびF(ab')2フラグメントは完全な抗体のFcフラグメントを欠いており、循環からより迅速に除去され、そして完全な抗体の非特異的組織結合をほとんど有し得ない(Wahlら、J. Nucl. Med. 24:316-325 (1983))。従って、これらのフラグメントが好ましい。
【0121】
本発明の抗体は、任意の種々の方法によって調製され得る。例えば、表1において同定されるS. pneumoniaeポリペプチドまたはそのフラグメントは、ポリクローナル抗体を含む血清の産生を誘導するために動物に投与され得る。好ましい方法において、本発明のS. pneumoniaeポリペプチドの調製物は、それが天然の混入物を実質的に含まないように、上記のように調製および精製される。次いで、このような調製物は、より高い特異的活性のポリクローナル抗血清を産生するために動物に導入される。
【0122】
最も好ましい方法において、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。このようなモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ技術(Kohlerら、Nature 256:495 (1975);Kohlerら、Eur. J. Immunol. 6:511 (1976);Kohlerら、Eur. J. Immunol. 6:292 (1976);Hammerlingら:Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas, Elsevier, N.Y., (1981)563-681頁)を用いて調製され得る。一般に、このような手順は、本発明のS. pneumoniaeポリペプチド抗原で動物(好ましくは、マウス)を免疫する工程を包含する。適切な細胞は、抗Streptococcusポリペプチド抗体に結合するそれらの能力によって認識され得る。このような細胞は、任意の適切な組織培養培地中で培養され得る;しかし、10%ウシ胎児血清(約56℃で不活化した)を補充し、約10g/lの非必須アミノ酸、約1,000U/mlのペニシリン、および約100μg/mlのストレプトマイシンを補充したEarle改変イーグル培地中で細胞を培養することが好ましい。このようなマウスの脾細胞が抽出され、そして適切な骨髄腫細胞株と融合される。任意の適切な骨髄腫細胞株が、本発明に従って使用され得る;しかし、アメリカンタイプカルチャーコレクション,Rockville, Marylandから入手可能な親骨髄腫細胞株(SP2O)を使用することが好ましい。融合後、得られたハイブリドーマ細胞はHAT培地中で選択的に維持され、次いでWandsら(Gastroenterology 80:225-232 (1981))に記載されているような限界希釈によってクローニングされる。次いで、このような選択によって得られたハイブリドーマ細胞は、免疫された動物に投与されたStreptococcusポリペプチド抗原に結合し得る抗体を分泌するクローンを同定するためにアッセイされる。
【0123】
あるいは、Streptococcusポリペプチド抗原に結合され得るさらなる抗体が、抗イディオタイプ抗体の使用を通じて二工程手順で産生され得る。このような方法は、抗体はそれ自体が抗原であるという事実を用い、従って、二次抗体に結合する抗体を得ることが可能である。この方法に従って、Streptococcusポリペプチド特異的抗体は、動物(好ましくは、マウス)を免疫するために使用される。次いで、このような動物の脾細胞はハイブリドーマ細胞を産生するために使用され、そしてハイブリドーマ細胞は、Streptococcusポリペプチド特異的抗体に結合する能力が、Streptococcusポリペプチド抗原によってブロックされ得る抗体を産生するクローンを同定するためにスクリーニングされる。このような抗体は、Streptococcusポリペプチド特異的抗体に対する抗イディオタイプ抗体を含み、そしてさらなるStreptococcusポリペプチド特異的抗体の形成を誘導するために動物を免疫するために使用され得る。
【0124】
本発明の抗体のFabフラグメントおよびF(ab')フラグメントならびに他のフラグメントが、本明細書中に開示される方法に従って用いられ得ることが理解される。このようなフラグメントは、代表的には、パパイン(Fabフラグメントを生成するため)またはペプシン(F(ab')フラグメントを生成するため)のような酵素を用いるタンパク質分解切断により生成される。あるいは、Streptococcusポリペプチド結合フラグメントは、組換えDNA技術の適用を通して、または合成化学を通して生成され得る。
【0125】
本発明の特別の目的は、組換えまたは他の技術によって、ヒトにおいて産生されるか、または「ヒト化」される(すなわち、ヒトにおいて非免疫原性)Streptococcusポリペプチド抗原に対する抗体である。ヒト化抗体は、例えば、抗体の免疫原性部分を、対応するが非免疫原性の部分(すなわち、キメラ抗体)で抗体の免疫原性部分を置換することによって産生され得る(Robinson, R.R.ら、国際特許出願PCT/US/86/02269;Akira, K.ら、欧州特許出願第184,187号;Taniguchi, M.,欧州特許出願第171,496号;Morrison, S.L.ら、欧州特許出願第173,494号;Neuberger, M.S.ら、PCT出願WO 86/01533;Cabilly, S.ら、欧州特許出願第125,023号;Better, M.ら、Science 240:1041-1043(1988);Liu, A.Yら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:3439-3443(1987);Liu, A.Y.ら、J. Immunol. 139:3521-3526(1987);Sun, L.K.ら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:214-218(1987);Nishimura, Y.ら、Canc. Res. 47:999-1005(1987);Wood, C.R.ら、Nature 314:446-449(1985);Shawら、J. Natl. Cancer Inst. 80:1553-1559(1988))。「ヒト化」キメラ抗体の一般的な総説は、Norrison, S.L.(Science, 229:1202-1207(1985))およびOi, V.T.ら(BioTechniques 4:214(1986)によって提供される。適切な「ヒト化」抗体は、CDRまたはCEA置換によって代替的に賛成され得る(Jones, P.T.ら、Nature 321:552-525(1986);Verhoeyanら、Science 239:1534(1988);Beidler, C.B.ら、J. Immunol. 141:4053-4060(1988))。
【0126】
適切な酵素標識には、例えば、基質との反応によって過酸化水素の産生を触媒するオキシダーゼ由来の標識が含まれる。グルコースオキシダーゼは、それが良好な安定性を有する場合、およびその基質(グルコース)が容易に入手可能である場合、特に好ましい。オキシダーゼ標識の活性は、酵素標識抗体/基質反応によって形成される過酸化水素の濃度を測定することによってアッセイされ得る。そのうえ、他の適切な標識には、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(112In)、およびテクネチウム(99mTc)のような放射性同位体、ならびに蛍光標識(例えば、フルオレセインおよびローダミン)、ならびにビオチンが含まれる。
【0127】
本発明のStreptococcusポリペプチド特異的抗体にさらに適切な標識は、以下に提供される。適切な酵素標識の例は、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、スタフィロコッカスヌクレアーゼ、Δ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母アルコールデヒドロゲナーゼ、α-グリセロールリン酸デヒドロゲナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、およびアセチルコリンエステラーゼを含む。
【0128】
適切な放射性同位体標識の例は、H、111In、125I、131I、32P、35S、14C、51Cr、57To、58Co、59Fe、75Se、152Eu、90Y、67Cu、217Ci、211At、212Pb、47Sc、109Pdなどを含む。111Inは、インビボでのイメージングが用いられる場合に好ましい同位体である。なぜなら、これは、125Iまたは131Iで標識したモノクローナル抗体の肝臓による脱ハロゲン化の問題を回避するからである。さらに、この放射性核種(radionucleotide)は、イメージングのためにより好ましいγ放出エネルギーを有する(Perkinsら, Eur. J. Nucl. Med. 10:296-301 (1985); Carasquilloら, J. Nucl. Med. 28:281-287 (1987))。例えば、1-(p-イソチオシアネートベンジル)-DPTAを用いてモノクローナル抗体にカップリングした111Inは、非腫瘍性組織(特に肝臓)における取り込みをほとんど示さなかった。それゆえ、腫瘍局在化の特異性を増強する(Estebanら, J. Nucl. Med. 28:861-870 (1987))。
【0129】
適切な非放射性同位体標識の例は、157Gd、55Mn、162Dy、52Tr、および56Feを含む。
【0130】
適切な蛍光標識の例は、152Eu標識、フルオレセイン標識、イソチオシアネート標識、ローダミン標識、フィコエリトリン標識、フィコシアニン標識、アロフィコシアニン標識、o-フタルアルデヒド(o-phthaldehyde)標識、およびフルオレサミン標識を含む。
【0131】
適切な毒素標識の例は、ジフテリア毒素、リシン、およびコレラ毒素を含む。
【0132】
化学発光標識の例は、ルミナール標識、イソルミナール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、シュウ酸エステル標識、ルシフェリン標識、ルシフェラーゼ標識、およびエクオリン標識を含む。
【0133】
核磁気共鳴コントラスト剤の例は、Gd、Mn、および鉄のような重金属原子核を含む。
【0134】
上記の標識を抗体に結合するための代表的な技術は、Kennedyら, Clin. Chim. Acta 70:1-31 (1976)およびSchursら, Clin. Chim. Acta 81:1-40 (1977)により提供される。後者において言及されるカップリング技術は、グルタルアルデヒド方法、過ヨウ素酸方法、ジマレイミド方法、m-マレイミドベンジル-N-ヒドロキシ-スクシンイミドエステル方法であり、これらの方法は全て本明細書中に参考として援用される。
【0135】
関連した局面において、本発明は、S. pneumoniae感染に対して特異的な抗体を含む血清のスクリーニングにおける使用のための診断キットを含む。このようなキットには、少なくとも1つの抗S. pneumoniae抗体と特異的に免疫反応性であるエピトープを含む、単離されたS. pneumoniae抗原が含まれ得る。このようなキットにはまた、上記の抗体の抗原に対する結合を検出するための手段が含まれる。特異的な実施態様において、キットには、組換え的に産生されたかまたは科学的に合成された、ペプチド抗原またはポリペプチド抗原が含まれ得る。このペプチド抗原またはポリペプチド抗原は、固体支持体に結合し得る。
【0136】
より特異的な実施態様において、上記キットの検出手段には、上記ペプチド抗原またはポリペプチド抗原が結合した固体支持体が含まれる。このようなキットにはまた、非結合レポーター標識抗ヒト抗体が含まれる。この実施態様において、S. pneumoniae抗原への抗体の結合は、抗S. pneumoniae抗体へのレポーター標識抗体の結合によって検出され得る。
【0137】
関連した局面において、本発明は、被験体においてS. pneumoniae感染を検出する方法を含む。この検出方法には、被験体由来の体液(好ましくは血清)を、単離されたS. pneumoniae抗原と反応させる工程、および結合した抗体の存在について抗原を試験する工程を包含する。特定の実施態様において、この方法は、固体支持体に結合したポリペプチド抗原を含み、そして血清を支持体と反応させる。続いて、支持体をレポーター標識抗ヒト抗体と反応させる。次いで支持体を、レポーター標識抗体の存在について試験する。
【0138】
上記のアッセイおよびキットにおいて使用される固体表面試薬は、固体支持物質(例えば、ポリマービーズ、ディップスティック、96ウェルプレート、またはフィルター物質)へのタンパク質材料を結合するための公知の技術によって調製される。これらの結合方法には、一般的に、タンパク質の支持体への非特異的な吸着、または固体支持体上の科学的な反応基(例えば、活性化カルボキシル基、ヒドロキシル基、またはアルデヒド基)へのタンパク質の共有結合(代表的には、遊離アミノ基を介して)が含まれる。あるいは、ストレプトアビジンコートプレートを、ビオチニル化抗原との結合において使用し得る。
【0139】
治療および投与方法
本発明はまた、本発明の1つ以上のポリペプチドを含むワクチンを提供する。ワクチンの組成物中の異成分は、本発明のS. pneumoniaeポリペプチドを合わせることによって提供され得る。この型の多成分ワクチンは、複数の種およびStreptococcus属の株に対する保護免疫応答を誘発することにおいて、単一のポリペプチドワクチンよりも効果的なようであるので、所望である。従って、下記で議論されるように、本発明の多成分ワクチンには、1つ以上、好ましくは2〜約20、より好ましくは2〜約15、そして最も好ましくは3〜約8の、表1に同定されるS. pneumoniaeポリペプチド、またはそのフラグメントが含まれ得る。
【0140】
多数の免疫原性成分に対して抗体を誘発するための多成分ワクチンは、当該分野で公知である。Decker, M.およびEdwards, K., J. Infect. Dis. 174:S270-275(1996)。さらに、B型肝炎ワクチン、ジフテリアワクチン、破傷風ワクチン、百日咳四価ワクチンは、近年、ヒト胎児において全ての4つの病原性因子に対する保護レベルの抗体を誘発することが実証されている。Aristegui, J.ら、Vaccine 15:7-9(1997)。
【0141】
従って、本発明はまた、多成分ワクチンを含む。これらのワクチンは、1つより多いポリペプチド、免疫原、または抗原を含む。このような多成分ワクチンの例は、表1に記載される1つより多いS.pneumoniaeポリペプチドを含むワクチンである。第二の例は、表1に同定される1つ以上(例えば、2〜10個)のS.pneumoniaeポリペプチドおよび1つ以上(例えば、2〜10個)のStreptococcus起源かまたはStreptococcus起源でないかのいずれかのさらなるポリペプチドを含むワクチンである。従って、Streptococcus感染および別の病原体による感染の両方に対する保護的免疫を付与する多成分ワクチンもまた、本発明の範囲内である。
【0142】
上記のように、本発明のワクチンは、そのATCCで寄託されたS.pneumoniae以外の株のStreptococcusの種および株によって生じる感染に対する保護免疫応答を誘発することが予想される。
【0143】
細胞全体およびウイルスワクチン全体が、本発明の範囲内にさらに含まれる。このようなワクチンは、組換え的に産生され得、そしてこれは表1に記載される1つ以上のS.pneumoniaeポリペプチドの発現を含む。例えば、本発明のS.pneumoniaeポリペプチドは、分泌され得るか、または細胞内、細胞表面、もしくは細胞膜周辺腔に局在化され得る。さらに、組換えウイルスが使用される場合、本発明のS.pneumoniaeポリペプチドは、例えば、ウイルスエンベロープ、キャプシドの表面、またはキャプシドの内部に局在化され得る。異種タンパク質を発現する細胞を使用する細胞ワクチン全体は、当該分野で公知である。例えば、Robinson, K.ら、Nature Biotech.15:653-657(1997);Sirard, J.ら、Infect.Immun.65:2029-2033(1997);Chabalgoity,J.ら、Infect.Immun.65:2402-2412(1997)を参照のこと。これらの細胞は、生きたまま投与され得るか、または投与前に殺傷され得る。例えば、Chabalgoity,J.ら、前出は、その細胞表面上に融合タンパク質として扁形動物脂肪酸結合タンパク質の一部を発現する生弱毒化Salmonellaワクチン株のマウスにおける首尾良い使用を報告する。
【0144】
多成分ワクチンはまた、当該分野で公知の技術を用いて、1つ以上の本発明のS.pneumoniaeポリペプチド、またはそのフラグメントと、さらなる非Streptococcus成分(例えば、ジフテリア毒素または破傷風毒素、および/または他の免疫応答を誘発することが知られている化合物)とを組み合わせることにより調製され得る。このようなワクチンは、Streptococcus属および非streptococcus病原体の両方のメンバーに対する保護免疫応答を誘発するのに有用である。
【0145】
本発明のワクチンはまた、DNAワクチンを含む。DNAワクチンは、現在、多数の感染疾患に対して開発されている。Boyer、J.ら、Nat.Med. 3:526-532(1997);Spier,R.,Vaccine 14:1285-1288(1996)に概説される。このようなDNAワクチンは、目的のポリペプチドの発現を可能にする様式に指向された本発明の1つ以上のS.pneumoniaeポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む。B.burgdorgeri OspAをコードするプラスミドDNAの直接投与がborrelia投与に対するマウスにおける保護免疫を誘発することが示されている。Luke,C.ら、J.Infect.Dis.175:91-97(1997)。
【0146】
本発明はまた、免疫応答を調節し得る分子とともに同時投与されるワクチン投与に関する。例えば、Kim,J.ら、Nature Biotech.15:641-646(1997)は、免疫応答を刺激する分子をコードするDNA配列が同時投与される場合のDNA免疫化によって生じる免疫応答の増強を報告する。同様の様式で、本発明のワクチンは、免疫モジュレーターをコードする核酸または免疫モジュレーター自身のいずれかと同時投与され得る。これらの免疫モジュレーターは、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)およびCD86を含む。
【0147】
本発明のワクチンを使用して、受動的免疫または能動的免疫のいずれかによってstreptococcus感染に対する耐性を付与し得る。本発明のワクチンが、能動免疫によってstreptococcus感染に対する耐性を付与するために使用される場合、本発明のワクチンは、streptococcus感染を予防するかまたは減弱するかのいずれかである保護免疫応答を誘発するために動物に投与される。本発明のワクチンが受動免疫によってstreptococcus感染に対する耐性を付与するために使用される場合、ワクチンは宿主動物(例えば、ヒト、イヌ、またはマウス)に提供され、そしてこの抗血清によって誘発された抗血清を回収し、そしてStreptococcus属のメンバーによって生じた感染を有すると疑われるレシピエントに直接提供される。
【0148】
抗体、または抗体のフラグメントを、毒素分子で標識する能力は、受動免疫が実施される場合、streptococcus感染を処置するためのさらなる方法を提供する。この実施態様において、本明細書中で開示されたS.pneumoniaeポリペプチド、またはそのフラグメント、ならびに他のStreptococcusタンパク質を認識し得る抗体、または抗体のフラグメントは、患者への投与前に毒素分子で標識される。このような毒素誘導体化抗体がStreptococcus細胞に結合する場合、毒素部分は、これらの細胞に局在化し、そしてそれらに死をもたらす。
【0149】
従って、本発明は、本発明のポリペプチドに応答して産生された抗血清によって認識されそして結合される抗原を有する生物から得られたstreptococcus感染を予防または減弱するための手段に関し、そしてこれを提供する。本明細書中で使用されるように、ワクチンは、その動物への投与が、この疾患の症状もしくは状態の全部または部分的な減弱(すなわち、抑制)のいずれか、あるいは疾患に対する動物の全部または部分的な免疫のいずれかをもたらす場合、疾患を予防または減弱するといわれる。
【0150】
ワクチン(または、それが誘発する抗血清)の投与は、「予防的」または「治療的」のいずれかの目的であり得る。予防的に提供される場合、化合物は、streptococcus感染の任意の症状に先んじて提供される。化合物の予防的投与は、任意の引き続く感染を予防または減弱するのに役立つ。治療的に提供される場合、化合物は、動物がStreptococcus属のメンバーに感染し得ることを示す症状の検出時またはその後に提供される。化合物の治療的投与では、任意の実際の感染を減弱するのに役立つ。従って、本発明のS.pneumoniaeポリペプチド、およびそのフラグメントは、感染の発症の前(予期される感染を予防するかまたは減弱するため)または実際の感染の開始後のいずれかに提供され得る。
【0151】
本発明のポリペプチドは、天然のタンパク質の一部をコードしようとその機能的誘導体をコードしようと、純粋形態で投与され得るか、または高分子キャリアと結合され得る。このようなキャリアの例は、タンパク質および炭水化物である。本発明のポリペプチドの免疫原性を増強するための高分子キャリアとして作用する適切なタンパク質は、キーホールリンペットヘマシアニン(KLH)、破傷風トキソイド、百日咳毒素、ウシ血清アルブミン、およびオボアルブミン含む。本発明のポリペプチドをこのような高分子キャリアに結合する方法は、Harlowら、Antibodies:A Laboratory Manual、第二版;Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、New York(1988)に開示され、この開示の全体が本明細書中で参考として援用される。
【0152】
組成物は、その投与がレシピエント動物に寛容であり、そしてそうでなければその動物への投与が適切である場合に「薬理学的に受容可能な」であるといわれる。このような薬剤は、投与量が生理学的に有意である場合に、「治療有効量」で投与されるといわれる。薬剤は、その存在がレシピエント患者の生理における検出可能な変化を生じる場合に、生理的に有意である。
【0153】
すべての場合において本発明のワクチンは、薬理学的に受容可能な化合物として投与される一方、当業者は、薬理学的に受容可能な化合物の組成は投与される動物によって変化することを認識する。例えば、ヒトへの使用について意図されるワクチンは、一般に、フロイントのアジュバントと共に同時投与されない。さらに、本発明のS.pneumoniaeポリペプチドの純度のレベルは、通常、非ヒト動物へ投与される場合よりもヒトに投与される場合により高い。
【0154】
当業者に理解されるように、本発明のワクチンが動物に提供される場合、塩、緩衝剤、アジュバント、または組成物の効力を改良するために所望される他の物質を含み得る組成物中に存在し得る。アジュバントは、特異的免疫反応を特異的に増強するのに使用され得る物質である。これらの物質は、一般に、2つの機能を発揮する:(1)これらは、投与後の迅速な代謝から抗原を保護する、および(2)これらは、非特異的に免疫応答を刺激する。
【0155】
通常、アジュバントおよび組成物は、免疫系への提示前に混合されるか、または別個ではあるが免疫される動物の同一部位に提示される。アジュバントは、それらの組成物に基づいていくつかの群に大まかに分類され得る。これらの群は、油アジュバント(例えば、フロイントの完全または不完全アジュバント)、無機塩(例えば、AlK(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH4(SO4)、シリカ、カオリン、および炭素)、ポリヌクレオチド(例えば、ポリICおよびポリAU酸)、および特定の天然物質(例えば、Mycobacterium tuberculosis由来のワックスD、ならびにCorynebacterium parvumまたはBordetella pertussisおよびBrucella属のメンバーに見い出される物質)を含む。アジュバントとして有用な他の物質は、サポニン(例えば、Quil A(Superfos A/S、Denmark))である。本発明における使用に好ましいアジュバントは、アルミニウム塩(例えば、AlK(SO4)2、AlNa(SO4)2、AlNH4(SO4))を含む。ワクチン組成物における使用に適した物質の例は、Remington's Pharmaceutical Sciences(Osol、A編、Mack Publishing Co、Easton、PA、1324〜1341頁(1980)に提供され、そしてこの参考文献は参考として本明細書中で援用される。
【0156】
本発明の治療組成物は、注射、迅速な注入、食道吸収(食道内吸収)、皮膚吸収非経口的によって、または経口によって投与され得る。組成物はまた、筋肉内、または静脈内に投与され得る。非経口投与のための組成物は、滅菌水性または非水性の溶液、懸濁液、または乳濁液を含む。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えば、オリーブ油)、および注入可能な有機エステル(例えば、オレイン酸エチル)を含む。キャリアまたは密封包帯は、皮膚透過性を増大させ、そして抗原吸収を増強するために使用され得る。経口投与のための液体剤形は、一般に、液体剤形を含むリポソーム溶液を含む。リポソームを懸濁するのに適切な形態は、当該分野で通常使用される不活性希釈剤(例えば、精製水)を含む、乳濁液、懸濁液、溶液、シロップ、およびエリキシルを含む。不活性希釈剤のほかに、このような組成物はまた、アジュバント、湿潤化剤、乳化剤、および懸濁剤、あるいは甘味料、風味料、または香料を含み得る。
【0157】
本発明の治療的組成物はまた、カプセル形態で投与され得る。例えば、ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)からなる生分解性ミクロスフェアにカプセル化されたワクチンを使用するBordetella pertussis感染に対するマウスの鼻孔内免疫化は、保護免疫応答を刺激することが示された。Shahin、R.ら、Infect.Immun. 63:1195〜1200(1995)。同様に、経口投与されたカプセル化Salmonella typhimurium抗原はまた、マウスにおける保護免疫を誘発することが示されている。Allaoui-Attarki、K.ら、Infect.Immun.65:853-857(1997)。本発明のカプセル化ワクチンは、種々の経路(粘膜とワクチンとを接触させることを含む経路(例えば、鼻孔内、結腸内、十二指腸内))により投与され得る。
【0158】
複数の投与措置が利用される場合の免疫化のタイミングについての多くの異なる技術が存在する。本発明の組成物を二回以上使用して、免疫化動物によって発現されるイムノグロブリンレパートリーの発現のレベルおよび多様性を増加させることも可能である。代表的に、複数の免疫が与えられる場合、それらは、1〜2ヶ月離して与えられる。
【0159】
本発明によれば、治療組成物の「有効量」は、所望の生物学的効果を達成するに充分な量である。一般に、組成物の有効量を提供するに必要とされる投薬量は、動物またはヒトの年齢、状態、性別、および疾患の程度、もし存在すれば他の変数のような因子に依存する。投薬量は、当業者によって調整され得る。
【0160】
本発明の抗原性調製物は、有効量の単回投薬または複数投薬によって投与され得る。本発明の組成物の有効量は、一用量あたり0.01〜1,000μg/ml、より好ましくは、一用量あたり0.1〜500μg/ml、そして最も好ましくは一用量あたり10〜300μg/mlと変化し得る。
【0161】
本発明を今や一般的に記載したので、本発明は、以下の実施例を参照することによって容易に理解される。実施例は例示の目的で提供され、そして特定しない限り本発明を限定することは意図しない。
【実施例】
【0162】
実施例1:S.pneumoniaeポリペプチドのE.coliにおける発現および精製
細菌発現ベクターpQE10(QIAGEN,Inc.,9259 Eton Avenue, Chatsworth, CA, 91311)を、本実施例で、表1に示されるヌクレオチド配列のクローニングのため、および表1で同定されたポリペプチドを発現させるために使用する。pQE10プラスミドの成分は、本発明のポリペプチドをコードする挿入されたDNA配列が、アミノ末端に共有結合された6つのHis残基(すなわち、「6×Hisタグ」)を有するポリペプチドを発現するように配置される。
【0163】
表1のポリペプチドの所望の部分をコードするDNA配列を、S.pneumoniae(例えば、便宜のために本発明者らによってATCCに寄託された寄託物、ATCC受託番号 97755)から構築されたDNAライブラリー、またはATCCに受託番号55840として寄託されたS,pneunomiae株のような同一の生物から単離されたDNAのいずれかから構築されたライブラリー由来のPCRオリゴヌクレオチドプライマーを使用して増幅する。この目的のために使用され得るPCRプライマーのリストは、以下の表3に提供される。PCRプライマーは、表1のポリペプチドの所望の部分のアミノ末端およびカルボキシ末端の両方のアミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列とアニールする。pQE10ベクターにおいてクローニングを容易にするための制限部位を含むさらなるヌクレオチドを、それぞれ、5'プライマーおよび3'プライマーの配列に付加した。このような制限部位は、その各々のプライマーについて、表3に列挙する。各々の場合、プライマーは、アニーリングプロセスの間の「揺らぎ」を予防するための、5’末端から4つのランダムヌクレオチド、制限部位(表3に示す)、およびS.pneumoniae ORF配列の約15ヌクレオチド(各クローニングプライマーの完全配列は、配列番号227〜配列番号452として示される)を含む。
【0164】
表1のポリペプチドをクローニングするために、5’プライマーおよび3’プライマーを選択して、それぞれのヌクレオチドコード配列を増幅した。当業者は、5’プライマーが始まるタンパク質コード配列における点を変更して表1に記載される完全アミノ酸配列の任意の所望の部分をコードするDNAセグメントを増幅し得ることを理解する。同様に、当業者は、3’プライマーが始まるタンパク質コード配列における点を変更して表1に記載される完全アミノ酸配列の任意の所望の部分をコードするDNAセグメントもまた増幅し得ることをさらに理解する。
【0165】
増幅されたDNAフラグメントおよびpQE10ベクターを適切な制限酵素で消化し、次に消化されたDNAを一緒に連結する。連結混合物を、コンピテントなE.coli細胞に、Sambrookら、Molecular Cloning:a Laboratory Manual、第2版;Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor、N.Y.(1989)に記載される手順のような標準的な手順を用いて形質転換する。形質転換体は、LBプレート上で選択圧力下で増殖するそれらの能力によって同定する。プラスミドDNAを、耐性コロニーから単離し、そしてクローン化DNAの同一性を制限分析、PCR、およびDNA配列決定によって検証する。
【0166】
所望の構築物を含むクローンを、一晩(「o/n」)、液体培養で選択下で増殖する。o/n培養物を使用して、大量培養に、約1:25〜1:250の希釈で接種する。細胞を600nmでの光学濃度(「OD600」)を0.4〜0.6の間にまで増殖させる。次いで、イソプロピル-b-D-チオガラクトピラノシド)「IPTG」)を、1mMの最終濃度で添加して、lacIリプレッサーを不活化することによりlacIリプレッサー感受性プロモーターからの転写を誘導する。続いて、細胞を3〜4時間さらにインキュベートする。次いで、細胞を遠心分離により採集する。
【0167】
細胞を、6M グアニジン-HCl(pH8)中で4℃で3〜4時間撹拌する。細胞残渣を、遠心分離により除去し、そして目的のタンパク質を含む上清をニッケル−ニトリロ−トリ−酢酸(「NiNTA」)アフィニティー樹脂カラム(QIAGEN、Inc.,前出から入手可能)にロードする。6×Hisタグを有するタンパク質は、NI-NTA樹脂に高い親和性で結合し、そして単純な一段階手順で精製され得る(詳細については、The QIAexpressionist、1995、QIAGEN、Inc.,前出を参照のこと)。手短には、上清を6Mグアニジン-HCl(pH 8)中でカラムにロードし、このカラムをまず、10容量の6M グアニジン-HCl(pH 8)で洗浄し、次いで、10容量の6M グアニジン-Hcl(pH 6)で洗浄し、そして最後に、ポリペプチドを6M グアニジン-HCl(pH 5.0)で溶出する。
【0168】
次いで、精製タンパク質をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)または200mM NaClを含む50mM酢酸ナトリウム(pH 6)緩衝液に対して透析することにより、再生した。あるいは、タンパク質は、Ni-NTAカラム上で固定化される間に首尾良く再折り畳みされ得る。推奨される条件は、以下の通りである:プロテアーゼインヒビターを含む500mM NaCl、20%グリセロール、20mM Tris/HCl(pH7.4)中で6M〜1M尿素の直線勾配を使用して再生する。再生は、1.5時間以上の時間にわたって実施されるべきである。再生後、タンパク質を、250mMイミダゾールの添加により溶出し得る。イミダゾールは、最後のPBSまたは200mM NaClを含む50mM酢酸ナトリウム(pH 6)緩衝液に対する最終透析工程により除去される。精製タンパク質を、4℃で保存するか、または-80℃で凍結する。
【0169】
表1のアミノ酸配列をコードするDNA配列もまたクローニングされ、そして上記に直接的に記載されたものと類似のプロトコル(ここで、pET-32b(+)ベクター(Novagen, 601 Science Drive, Madison, WI 53711)が、pQE10の代わりに優先的に使用される)によって融合タンパク質として発現され得る。
【0170】
表1に示される各ポリヌクレオチドを、表3に示されるPCRプライマーを用いて上記のように首尾良く増幅し、そしてpQE10にサブクローン化した。表1のDNAを含む(SP023、SP042、SP054、SP063、SP081、SP092、SP114、SP122、SP123、SP126、およびSP127を除く)これらのpQE10プラスミドを、当業者に都合良いようにプールされた寄託物として、ATCCによって寄託した。このプールされた寄託物を、1997年10月16日に寄託し、そしてATCC寄託番号209369を得た。当業者は、プールされた寄託物から個々のプラスミドを単離することが、本明細書中に記載の情報および試薬が提供される限りささいなことであることを認識する。各寄託クローンが、S.pneumoniaeポリペプチドをコードするクローンを発現することが可能である。
【0171】
実施例2:免疫化および免疫応答の検出
方法
細菌接種物の増殖、マウスの免疫化、およびS pneumoniaeでの抗原投与
S.pneumoniaeの増殖および保存、ならびにS.pneumoniaeによる抗原投与を、本質的にAaberge, I.S.ら,Virulence of Streptococcus pneumoniae in mice: a standardized method for preparation and frozen storage of the experimental bacterial inoculum, Microbial Pathogenesis, 18:141(1995)(本明細書中に参考として援用される)に記載の様に行う。
【0172】
簡単には、17%FCSを含むTodd Hewitt(TH)培地(Difco laboratories, Detroit, MI)、およびウマ血液寒天プレートを、細菌の培養のために使用する。培地および血液プレートの両方を、5% CO2雰囲気下、37℃でインキュベートする。血液プレートを、18時間インキュベートする。培養培地を、室温に保たれたTH培地において、規則正しく10倍の連続希釈をし、そして細菌懸濁物をマウスの投与まで室温に保存した。
【0173】
能動免疫について、C3H/HeJマウス(The Jackson Laboratory, Bar Harbor, ME)を、0週で20gの組換えstreptococcusタンパク質、またはリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)を腹腔内に注射(i.p.)し、フロイント完全アジュバント(CFA)で乳化し、4週でフロイント不完全アジュバント(IFA)で同様に追加免疫し、そして6週めで抗原投与した。抗原投与されたS.pneumoniaeについて、対数増殖培養物からTH培地において希釈し、そしてマウスを0.1mlのこれらの希釈物(連続希釈を、中間の感染用量を見出すために使用する)を用いて尾の付け根で皮下注射(S.C.)する。投与のために使用したStreptococcusを、インビトロで6回以下で継代する。感染を評価するために、血液サンプルを、外側大腿血管の末端部分から、ヘパリン処理した毛細管中へ得る。25ul血液サンプルを、TH培地において連続的に10倍希釈し、そして25ulの希釈された、および希釈されない血液を、血液寒天プレートへプレーティングする。プレートを18時間インキュベートし、そしてコロニーを計数する。
【0174】
他の方法が当該分野で公知であり、例えばLangermann,S.ら., J.Exp.Med., 180:2277(1994)(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。
【0175】
イムノアッセイ
いくつかのイムノアッセイ形式を使用して、streptococcus特異的抗体のレベルを定量し(ELISAおよびイムノブロット)、そしてこれらの抗体の機能的特性を評価する(成長阻害アッセイ)。ELISAおよびイムノブロットアッセイをまた使用して、特定のstreptococcus抗原と反応するstreptococcus感染に応じて惹起された抗体を検出および定量する。特定のstreptococcus抗原に対する抗体が感染によって惹起される場合、これは問題のstreptococcusタンパク質がインビボで発現される証拠となる。streptococcus投与後の感染由来抗体(抗体陽転)の非存在は、感染が阻害されるかまたは抑制されることの証拠である。イムノブロットアッセイをまた使用して、組換えstreptococcus抗原に対して惹起された抗体が、streptococcus全体の抽出物中で類似の大きさのタンパク質を認識するか否かを確かめる。天然のタンパク質が、免疫ブロットアッセイにおいて組換え型の同じタンパク質と類似の大きさか、同一の大きさである場合、これは、組換えタンパク質が、対応する遺伝子の完全長クローンの産物であることの証拠である。
【0176】
酵素結合免疫測定法(ELISA)
ELISAを使用して、これらのstreptococcus抗原での免疫化に応じて惹起されたstreptococcus抗原と反応する抗体のレベルを定量する。96ウェルマイクロタイタープレート(Immunlon 4, Dynatech, Chantilly, Virginiaまたは等価物)を、適切な緩衝液(代表的には、0.1M炭酸ナトリウム緩衝液(pH 9.6))中の50lの1g/mlタンパク質抗原溶液でインキュベートすることによって抗原をコーティングした。非結合抗原をデカントした後、さらなる結合部位を、洗浄緩衝液(PBS、0.2% Tween 20、pH7.4)中の100 lの3%無脂肪ミルクとインキュベートすることによってブロックする。洗浄後、PBS、Tween 20、1%ウシ胎児血清における血清の二連の連続2倍希釈物を、1時間インキュベートし、除去し、ウェルを3回洗浄し、そして西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgGとインキュベートする。3回の洗浄後、結合した抗体を、H2O2および2,2'-アジノ-ジ-(3-エチルベンズチアゾリンスルホン酸)(Schwan, T.G.ら, Proc.Natl. Acad.Sci. USA 92:2909-2913(1985)(ABTS(登録商標), Kirkegaard & Perry Labs., Gaithersburg, MD)で検出し、そしてA405をMolecular Devices, Corp.(Menlo Park, California)VmaxTMプレートリーダーで定量する。天然のマウス由来の血清におけるバックグラウンドレベルの2倍のIgGレベルを、1:100の最小タイターと設定する。
【0177】
ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)および免疫ブロッティング
単一ウェル形式を用いて、全streptococcusタンパク質抽出物または組換えstreptococcus抗原を、3%アクリルアミド濃縮ゲル、およびより高いアクリルアミド濃度(代表的には10〜15%アクリルアミドモノマー)の分離ゲルを介する電気泳動の前に、SDS/2-MEサンプル緩衝液中で煮沸する。ゲルを、ニトロセルロース膜へ電気的ブロッティングし、そしてレーンを特定のstreptococcus抗原での反応性について試験すべき抗体の希釈物、次いで適切な二次抗体酵素(西洋ワサビペルオキシダーゼ)結合体でプローブする。タンパク質が電気的ブロッティングによって転写されたことを確認することを所望する場合、膜をPonceau Sで染色する。結合抗体からのイムノブロットシグナルを、ECLTM試薬(Amersham Corp., Arlington Heights, Illinois)を用いる化学蛍光としてx線フィルム上に検出する。
【0178】
実施例3:streptococcus mRNA発現の検出
ノーザンブロット分析を、動物組織中での本発明のS.pneumoniae核酸配列の発現を検出するために、とりわけSambrookら(前出)に記載の方法を用いて行う。表1に示される完全ヌクレオチド配列を含むcDNAプローブを、rediprimeTMDNA標識システム(Amersham Life Science)を用いて、製造者の説明書に従って、32Pで標識する。標識後、プローブをCHROMA SPIN-100TMカラム(Clontech Laboratories, Inc.)を用いて、製造者のプロトコル番号PT1200-1に従って精製する。次いで、精製された標識プローブを用いて、動物組織サンプルにおけるStreptococcus mRNAの発現を検出する。
【0179】
動物組織(例えば、血液および脊髄液)を、ExpressHybTM Hybridization Solution(Clontech)を用いて、製造業者のプロトコル番号PT1190-1に従って標識プローブで試験した。ハイブリダイゼーションおよび洗浄に続いて、ブロットを取り付け、そして-70℃にて一晩フィルムに暴露し、そして標準的な手順に従ってフィルムを現像した。
【0180】
本発明が、前述の説明および実施例に詳細に記載される以外に実施され得ることは明白である。
【0181】
本発明の多数の改変および変更が、上記の教示に照らして可能であり、それゆえ添付の請求項の範囲内である。
【0182】
本明細書中に援用される全ての刊行物(特許、特許明細書、学術誌の記事、研究室マニュアル、書籍、または他の文献)の開示の全体が、本明細書で参考として援用される。
【0183】
【表1−1−1】

【0184】
【表1−1−2】

【0185】
【表1−2】

【0186】
【表1−3】

【0187】
【表1−4】

【0188】
【表1−5】

【0189】
【表1−6】

【0190】
【表1−7】

【0191】
【表1−8】

【0192】
【表1−9】

【0193】
【表1−10】

【0194】
【表1−11】

【0195】
【表1−12】

【0196】
【表1−13】

【0197】
【表1−14】

【0198】
【表1−15】

【0199】
【表1−16】

【0200】
【表1−17】

【0201】
【表1−18】

【0202】
【表1−19】

【0203】
【表1−20】

【0204】
【表1−21】

【0205】
【表1−22】

【0206】
【表1−23】

【0207】
【表1−24】

【0208】
【表1−25】

【0209】
【表1−26】

【0210】
【表1−27】

【0211】
【表1−28】

【0212】
【表1−29】

【0213】
【表1−30】

【0214】
【表1−31】

【0215】
【表1−32】

【0216】
【表1−33】

【0217】
【表1−34】

【0218】
【表1−35】

【0219】
【表1−36】

【0220】
【表1−37】

【0221】
【表1−38】

【0222】
【表1−39】

【0223】
【表1−40】

【0224】
【表1−41】

【0225】
【表1−42】

【0226】
【表1−43】

【0227】
【表1−44】

【0228】
【表1−45】

【0229】
【表1−46】

【0230】
【表1−47】

【0231】
【表2−1】

【0232】
【表2−2】

【0233】
【表2−3】

【0234】
【表2−4】

【0235】
【表2−5】

【0236】
【表2−6】

【0237】
【表2−7】

【0238】
【表2−8】

【0239】
【表2−9】

【0240】
【表2−10】

【0241】
【表3−1】

【0242】
【表3−2】

【0243】
【表3−3】

【0244】
【表3−4】

【0245】
【表3−5】

【0246】
【表3−6】

【0247】
(シンガポール)
出願人は、微生物の試料の分譲は、専門家に対してのみ行うことを要求できる。その旨の請求は、国際出願の公開のための技術的な準備が完了する前に、出願人により国際事務局へ提出されなければならない。
【0248】
(ノルウェー)
出願人はここにおいて、出願が(ノルウェー特許庁により)公開に付されるかあるいは公開を経ずにノルウェー特許庁による決定を受けるまでは、サンプルの供与は当該技術の専門家に対してのみ行われる旨を、請求する。この旨の請求は、ノルウェー特許法第22条および第33条(3)に基づき出願が公に利用可能にされる時点以前に、出願人によりノルウェー特許庁に対してなされるものとする。そのような請求が出願人によりなされた場合は、第三者によるサンプルの供与のいかなる請求においても、利用される専門家を表示するものとする。専門家は、ノルウェー特許庁により作成された公認専門家のリスト(list of recognized experts)に記載された任意の者か、あるいは、個々の場合において出願人により承認された任意の者であり得る。
【0249】
(オーストラリア)
出願人はここにおいて、微生物のサンプルの供与は、特許の付与前において、あるいは出願の放棄(lapsing)、拒絶あるいは取り下げ前において、発明に対し利害関係を有さない当業者である対象者(skilled addressee)に対してのみ行われる旨を、告知するものである(オーストラリア国特許法第3.25(3)号規定)。
【0250】
(フィンランド)
出願人はここにおいて、出願が(特許および統制委員会(National Board of Patents and Regulations)により)公開に付されるかあるいは公開を経ずに国立特許および法規委員会による決定を受けるまでは、サンプルの供与は当該技術の専門家に対してのみ行われる旨を、請求する。
【0251】
(アイスランド)
出願人は、(アイスランド特許庁により)出願公開されるまで、または公開されることなくアイスランド特許庁により最終決定がされるまでは、試料の分譲は、当該技術に対してのみ行うことを要求することができる。
【0252】
(デンマーク)
出願人はここにおいて、出願が(デンマーク特許庁により)公開に付されるかあるいは公開を経ずにデンマーク特許庁による決定を受けるまでは、サンプルの供与は当該技術の専門家に対してのみ行われる旨を、請求する。この旨の請求は、デンマーク特許法第22条および第33条(3)に基づき出願が公に利用可能にされる時点以前に、出願人によりデンマーク特許庁に対してなされるものとする。そのような請求が出願人によりなされた場合は、第三者によるサンプルの供与のいかなる請求においても、利用される専門家を表示するものとする。専門家は、デンマーク特許庁により作成された公認専門家のリスト(list of recognized experts)に記載された任意の者か、あるいは、個々の場合において出願人により承認された任意の者であり得る。
【0253】
(スウェーデン)
出願人はここにおいて、出願が(スウェーデン特許庁により)公開に付されるかあるいは公開を経ずにスウェーデン特許庁による決定を受けるまでは、サンプルの供与は当該技術の専門家に対してのみ行われる旨を、請求する。この旨の請求は、優先日から16ヶ月が経過するよりも前に、出願人により国際事務局に対してなされるものとする(好ましくはPCT Applicant’s GuideのVolume Iのannex Zに記載された書式PCT/RO/134による)。そのような請求が出願人によりなされた場合は、第三者によるサンプルの供与のいかなる請求においても、利用される専門家を表示するものとする。専門家は、スウェーデン特許庁により作成された公認専門家のリスト(list of recognized experts)に記載された任意の者か、あるいは、個々の場合において出願人により承認された任意の者であり得る。
【0254】
(英国)
出願人はここにおいて、微生物のサンプルの供与は専門家に対してのみ利用可能にされる旨を、請求する。この旨の請求は、出願の国際公表のための規則上の準備が完了する前に、出願人により国際事務局に対してなされなければならない。
【0255】
(オランダ)
出願人はここにおいて、オランダ特許の発行日まで、あるいは出願が拒絶、取り下げあるいは放棄(lapsed)される日までは、特許法31F(1)の規定に基づき、微生物は専門家へのサンプル供与の形でのみ行われる旨を、請求する。この旨の請求は、オランダ王国特許法の第22C条または第25条に基づき出願が公に利用可能にされる日のうちいずれか早い方の日付よりも前に、出願人によりオランダ工業所有権局に対して提出されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下からなる群から選択されるポリヌクレオチドまたは該ポリヌクレオチドの相補鎖:
(a)配列番号56に示す推定アミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(b)該ポリペプチドをコードする配列番号55に示すコード配列を含む、ポリヌクレオチド;
(c)配列番号55に示すコード配列または配列番号56に示すアミノ酸配列をコードする配列に少なくとも95%同一である、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号56に示すアミノ酸配列または配列番号55に示すコード配列に少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(e)Arg−10〜Arg−17;Lys−29〜Ser−39;Ser140〜Ala−153;Arg−158〜Tyr−169;Asp−175〜Ala−183;Gly−216〜Asn−236;Ala−261〜Leu−270;Arg−282〜Phe−291;Thr−297〜Ala−305;Pro−342〜Gln−362;Phe−455〜Asp−463;His−497〜Thr−511;Ala−521〜Gly−529;Ile−537〜Val−546;Ile−556〜Ala−568;Pro−581〜Ser−595;Glu−670〜Ala−685;Ser−696〜Ala−705;Leu−782〜Ser−791からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドのエピトープ保有部分をコードする、ポリヌクレオチド:および
(f)(a)〜(d)のうちのいずれかのポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの少なくとも50個の連続したアミノ酸を含むフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド。
【請求項2】
DNAである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項3】
RNAである、請求項1に記載のポリヌクレオチド。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドをベクターに挿入する工程を包含する、組換えベクターを作製するための方法。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む組換えベクターまたは請求項4に記載の方法によって産生される組換えベクター。
【請求項6】
前記ポリヌクレオチドが、原核生物宿主細胞または真核生物宿主細胞における発現を可能にする発現制御配列に作動可能に連結される、請求項5に記載のベクター。
【請求項7】
請求項5または6に記載のベクターを宿主細胞に導入する工程を包含する、組換え宿主細胞を作製する方法。
【請求項8】
請求項5または6に記載のベクターで形質転換した宿主細胞または請求項7に記載の方法によって産生される宿主細胞。
【請求項9】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを産生するための方法であって、請求項8に記載の宿主細胞を培養する工程、および培養物から該ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドを回収する工程を包含する、方法。
【請求項10】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたは請求項9に記載の方法によって入手可能なポリペプチド。
【請求項11】
(e)Arg−10〜Arg−17;Lys−29〜Ser−39;Ser140〜Ala−153;Arg−158〜Tyr−169;Asp−175〜Ala−183;Gly−216〜Asn−236;Ala−261〜Leu−270;Arg−282〜Phe−291;Thr−297〜Ala−305;Pro−342〜Gln−362;Phe−455〜Asp−463;His−497〜Thr−511;Ala−521〜Gly−529;Ile−537〜Val−546;Ile−556〜Ala−568;Pro−581〜Ser−595;Glu−670〜Ala−685;Ser−696〜Ala−705;Leu−782〜Ser−791からなる群から選択される請求項1のエピトープ保有部分のアミノ酸配列を含む、ポリペプチド抗原。
【請求項12】
N末端メチオニンを欠失した請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドによってコードされる、タンパク質。
【請求項13】
請求項10に記載のポリペプチドおよび異種ポリペプチド配列を含む、融合タンパク質。
【請求項14】
請求項10に記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体。
【請求項15】
請求項14に記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
【請求項16】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、請求項10に記載のポリペプチドまたは該ポリペプチドをコードしかつインビボで該ポリペプチドを発現することが可能なDNA、あるいは請求項14に記載の抗体と、必要に応じて、薬学的に受容可能なキャリア、希釈剤または賦形剤とを含有する、薬学的組成物。
【請求項17】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドまたは請求項14に記載の抗体を含有する、診断用組成物。
【請求項18】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、請求項10に記載のポリペプチド、または請求項14に記載の抗体を含有する、Streptococcus属のメンバーによって引き起こされる感染を予防または減弱化するための組成物。
【請求項19】
宿主由来のサンプルにおける請求項10に記載のポリペプチドの存在を分析する工程を包含する、診断手順。
【請求項20】
動物から得られた生物学的サンプル中のStreptococcus核酸を検出する方法であって:
(a)ハイブリダイゼーションが生じるような条件下で、該サンプルと、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む1以上の核酸プローブとを接触する工程、および
(b)1以上の該プローブの該生物学的サンプル中に存在する1以上の該Streptococcus核酸配列へのハイブリダイゼーションを検出する工程、
を包含する、方法。
【請求項21】
動物から得られる生物学的サンプル中のStreptococcus核酸を検出する方法であって:
(a)請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドとポリメラーゼ連鎖反応とを用いて該サンプル中の1以上のStreptococcus核酸配列を増幅する工程、および
(b)該増幅されたStreptococcus核酸を検出する工程、
を包含する、方法。
【請求項22】
動物から得られる生物学的サンプル中のStreptococcus抗体を検出するためのキットであって:
(a)固相支持体に付着した請求項10に記載のポリペプチド;および
(b)検出手段、
を含む、キット。
【請求項23】
動物から得られた生物学的サンプル中のStreptococcus抗体を検出する方法であって:
(a)該サンプルと請求項10に記載のポリペプチドとを接触させる工程;および
(b)抗体-抗原複合体を検出する工程、
を包含する、方法。
【請求項24】
実施例に従ってヒトを治療する方法。

【公開番号】特開2008−22854(P2008−22854A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195256(P2007−195256)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【分割の表示】特願平10−520667の分割
【原出願日】平成9年10月30日(1997.10.30)
【出願人】(597018381)ヒューマン ジノーム サイエンシーズ, インコーポレイテッド (44)
【氏名又は名称原語表記】Human Genome Sciences, Inc.
【住所又は居所原語表記】9410 Key West Avenue, Rockville, Maryland 20850, United States of America
【Fターム(参考)】