説明

TFT型ガスセンサーにおけるガスの測定方法及び/又は横感度を低減させる方法

FET型ガスセンサーのセンサーシグナルを感応性層での仕事関数の変化により生じさせ、その際、前記仕事関数の変化の読み出しに対して付加的に感応性層の容量の変化を評価する、FET型ガスセンサーでガスを測定する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横感度の障害となる影響を最小にするFET型ガスセンサーの選択性を改善する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
物理学的大きさとして敏感な材料の仕事関数の変化を利用しかつ測定するガスセンサーは、ここ数年において重要性が増してきている。この理由は、僅かな運転エネルギーで作動させることができる可能性(低パワー/僅かな運転出力)、並びにこの種のガスセンサーの低価格な製造技術及び構造技術(低コスト/僅かな製造コスト)、並びにこのプラットフォーム技術を用いて検出することができるガスの広範囲性(汎用性/多角性)にある。この場合、多くの異なる検出物質をこの種の構造中に組み込むことができる。構造及び運転方法は、例えば特許出願[I−IV]から公知である:この種のガスセンサーの感応性層のために多くの材料を使用することができる。
【0003】
このガスセンサーの基本構造は図2に説明されている。この図は、FET読み取り装置、特にSGFET(サスペンデッドゲート電界効果型トランジスタ、フローティングゲート電極を備えたFET)を備えた仕事関数−ガスセンサーの概略的な構造を示す。
【0004】
フローティングゲート電極の下側を被覆している感応性層では、検出すべきガスの存在時に、電位が生じ、前記電位が感応性材料の仕事関数の変化に相当する(一般に50〜100mV)。この電位は、FET構造のチャンネルに作用し、ソースドレイン電流を変化させる。この変化したソースドレイン電流が直接読み取られる。これとは別に、フローティングゲート又はトランジスターウェルに付加的な電圧を印加することによって、ソースドレイン電流の変化は元に戻される。この場合、付加的に印加された電圧が読み取りシグナルを表し、この読み取りシグナルは感応性層の仕事関数の変化と直接相関している。
【0005】
前記したタイプの全てのガスセンサーの根本的問題は、限定された選択性である。つまり、前記ガスセンサーは、場合によって標的ガスと反応するだけでなく、他のガスとも反応してしまい、これが横感度と表される。この重なり合ったガスシグナルは、この場合、いくつかの適用において、センサーシグナルから十分な信頼度で標的ガス濃度の測定を行うことができない状況が生じる、それというのも、このセンサーシグナルは横感度により受け入れられない程度に品質が低下しているためである。
【0006】
今までは、このセンサーシグナルの品質低下は受け入れなければならなかった。
【0007】
− 前記効果の部分的な除去は、この適用に応じて組み込まれたインテリジェントシグナル評価により達成することができるが、これはしかしながら多くの適用に対して著しく制限することで可能となる。
【0008】
− 他には、特に有害なガスに敏感である付加的なセンサーを使用することができ、前記付加的センサーの付加的シグナルは相応するシグナル処理において有害な影響の補償のために使用されるが、これはもちろん明らかなシステムコストの上昇の原因となる。
【0009】
【特許文献1】仕事関数−ガスセンサーの廉価な構造のためのハイブリッドフリップ−チップ構造、ドイツ国特許出願第19814857号
【特許文献2】ハイブリッドフリップ−チップ技術により実現される電界効果型トランジスタの構造、ドイツ国特許出願第19956744号
【特許文献3】仕事関数の測定原理によるガス検出、ドイツ国特許出願第19849932号
【特許文献4】ガスセンサー及びその製造方法、特にマスタ/スレーブ−構造、ドイツ国特許出願第19956806号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の根底をなす課題は、FET型ガスセンサーにおいて、横感度によるセンサーシグナルの品質低下を最小化することであった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題の解決は、請求項1の特徴の組合せによってなされる。
【0012】
有利な実施態様は、引用形式請求項から推知することができる。
【0013】
本発明の根本は、相応する制御によって仕事関数の変化(界面電位の変化)だけでなく、感応性層の容量の変化も評価するFET型ガスセンサーを使用することにより、横感度の影響が著しく低減されるという認識にある。
【0014】
このようにして、2つの物理的に独立したシグナルが、異なるガス感度を示すことができる層から読み出される。
【0015】
第1にガスとの反応の際に仕事関数の変化が生じるメカニズムと、第2に感応性層の容量の変化が生じるメカニズムとは十分に異なっている。それにより、両方の大きさは異なるガス感応性を示す。つまり、標的ガスに関する反応と、有害ガスに関する反応は区別される。この両方のガスに関する反応を知るだけで、前記シグナルへの有害ガスの影響を補償することができ、それにより標的ガスの濃度を決定することができる。これとは別に、両方のガス濃度も計算することができる。
【0016】
本発明の場合には、「2つのセンサーが1つのセンサーに」存在する、つまりこの運転法によって2つの独立したシグナルが1つのセンサー構造で生成される。これは第2のセンサー構造についてのコストを節約する。さらに、ガスセンサーは長期間の運転においてドリフト効果にさらされる。ここで、場合により2つの別個のセンサー構造は、1つのセンサー構造とは異なるドリフト現象が生じる傾向が強く、これはシグナル処理においてエラー補償を困難にしてしまう。
【0017】
他の利点は、このシステムから読み取ることができる付加的な情報にあるが、この場合一つのセンサー構造が必要とされるだけである。この方法は、「2つのセンサーを1つのセンサーにする」措置によって可能となる。
【0018】
次に、模式的な図を用いて実施例を記載するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明にとって重要なセンサー構造:
この処理方法に対しても適当なのは、図2に相応する構造を有する典型的なサスペンデッドゲートFEFガスセンサー(SGFET)でもあり、同様に容量がガス感応性層及びエアギャップにより構成され、かつ電位は導電性接続部を介して別個に設けられた読み出しFETに伝達される図1に相応するガスFET(CCFET)でもある。本発明は類似の機能性を有する全ての他の構造に対しても適している。
【0020】
容量及び界面電位の個別の読み出しの実施:
図2に相応するSGFET構造では、記載された運転の場合に、チャンネル導電率、ソースドレイン電流に関する界面電位の作用が読み出される。ゲート電極に交流電圧(一般に10〜10000Hz)を印加することによって、感応性層の容量の読み出しが行われる。感応性層の容量に応じて、チャンネル導電率に関するゲート電圧の入力結合が変化する、つまりゲートでの交流電圧により生じるソースドレイン電流の変化分が感応性層の容量に依存し、従ってこれはこの容量に対する直接的な尺度である。
【0021】
適用の特別な理由からゲート電圧を一定に保持する場合には、これとは別に交流電圧をトランジスタ自体に、つまりSiのバルク接続に又は相応する構造の場合にトランジスターウェルに印加することができる。この基本機能は、この処理方法の場合に前記したものと同様である。
【0022】
フローティングゲートの下方に設けられた、キャパシタンスウェルといわれる更なる電極が存在するCCFET構造の場合には、交流電圧は前記したように感応性層の上側の背面コンタクトを介して、並びにまたトランジスタを介して印加することもできる。特に有利に、このガスセンサーの実施態様の場合には、しかしながら交流電圧はキャパシタンスウェルとして表される電極を介して導入することもできる。この実施態様の場合には、エアギャップ中での電位割合の過度な変化並びにトランジスタへの電位の印加による悪影響も避けられる。
【0023】
これは、同様に、図2に示されたFGFETとして公知のSGFETの実施態様についても当てはまる。
【0024】
全ての実施態様について次のことが当てはまる:
− 容量読み出しのための交流電圧の適用は、同時に界面電位の読み出しも行うことができ、その際、次いでソースドレイン電流の交流分も直流分も読み出され、両方の運転法の間の切換も行うことができる。
【0025】
− ゲートでの交流電圧の使用は無条件には必要でない。
【0026】
− これとは別に、電位の急激な変化も行うことができる。ソースドレイン電流に関するこの電位変化の作用の時間的推移は、ここでは同様に感応性層の容量に依存し、同様にこの容量の測定のために用いることができる。
【0027】
− これとは別に、トランジスタ特性曲線、ゲート電圧を用いてソースドレイン電流の変化を評価することもできる。これから得られたトランジスタ勾配はエアギャップ容量によっても決定されるため、これは感応性層の容量に直接依存する。
【0028】
異なるモルホロジーのガス感応性材料の場合の適用:
この場合、多孔性、または開放気孔の材料と、コンパクトな、つまり緻密な又は独立気孔の材料との間で区別しなければならない。
【0029】
多孔性の材料の場合に、
変化する空気湿度によってしばしば強く妨害する影響が存在する。これは粒子に水分が付着することから生じ、多孔性の層の容量の著しい変化が生じる。
【0030】
この例は、開放気孔層として作成されるBaCOである。これは次のことを特徴としている。
【0031】
− COに関するセンサー材料の主感度、外側の層境界部での仕事関数により生じる電位、この電位は層厚に無関係、
【0032】
− 湿度に関する横感度、これは層の気孔中での容量変化により生じ、従って層厚に直線的に依存する。
【0033】
複合された読み出しの場合に、湿度変化は許容できないほどCOに関する有効シグナルを変化させてしまいかねない。本発明の場合に容量は別個に読み出されるので、別個に得られる湿度シグナルによって測定値の校正を行うことができる。
【0034】
比較可能な場合に、COに敏感な他の材料、例えばBaTiO又はCuOでドープされた材料バリエーション又は全ての他の多孔性のセンサー材料も有利に評価することができる。
【0035】
非多孔性材料の場合に、
この主に湿度効果によって生じるメカニズムはもちろん存在しない。しかしながら、この場合、ガス種及び検出材料に応じて、仕事関数変化及び容量に関する多様なガスの異なる作用が生じる。前者は通常ではガスの界面反応によって生じ、後者はセンサー層のバルク内でのガスの反応によって生じる。
【0036】
この前記した容量変化は、例えば感応性層の厚さの変化により及び/又は誘電率の変化によって引き起こすことができる。
【0037】
図3及び4は、FETでの本発明による複合読み出し原理の場合のガス反応を示す。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】FETガスセンサー(CCFET型)の構造原理を示す。
【図2】FET読み出し装置を備えた仕事関数ガスセンサーの模式的な構造を示す。
【図3】FETでの本発明による混合読み出し原理の場合のガス反応を示す。
【図4】FETでの本発明による混合読み出し原理の場合のガス反応を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フローティングゲート電極を備えたFET型ガスセンサーでガスを測定する際に、感応性層の容量の変化を評価することを特徴とする、ガスの測定方法。
【請求項2】
センサーシグナルを感応性層での仕事関数の変化により生じさせるFET型ガスセンサーで横感度を最少化する方法において、前記仕事関数の変化の読み出しに対して付加的に感応性層の容量の変化を評価することを特徴とする、FET型ガスセンサーで横感度を最少化する方法。
【請求項3】
感応性層の容量を読み出すためにSGFET又はCCFETのゲート電極に交流電圧を印加し、ソース/ドレイン電流は、感応性層の容量に依存する交流電圧分を示す、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
感応性層の上方の背面側のコンタクトを介して、付加的電極を介して又はトランジスタを介して交流電圧が印加される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
感応性層の容量を測定するためにソース/ドレイン電流に関する電位変化の時間経過を使用する、請求項4記載の方法。
【請求項6】
感応性層の容量を測定するためにゲート電圧を用いたソース/ドレイン電流の変化を使用する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
湿度に関する横感度が除去される、請求項1から6までのいずれか一項に記載の方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2007−533988(P2007−533988A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508853(P2007−508853)
【出願日】平成17年4月22日(2005.4.22)
【国際出願番号】PCT/EP2005/004318
【国際公開番号】WO2005/103668
【国際公開日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【出願人】(305061287)マイクロナス ゲーエムベーハー (4)
【Fターム(参考)】