説明

VAMシェル触媒、その製造方法及び使用方法

本発明は、本発明は、酢酸ビニルモノマー(VAM)の合成のためのシェル触媒に関し、天然層状珪酸塩、特に、酸処理されたか焼ベントナイトをベースとした多孔質触媒担体を備え、前記触媒担体は、パラジウム及び金を備え且つ成形体として形成されてなる。
VAMを構成するためのシェル触媒を提供するために、このシェル触媒は比較的高いVAM選択性とまた高い活性を特徴としているが、前記触媒担体が130m2/g未満の比表面積を有していることが提案されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酢酸ビニルモノマー(VAM)の合成のためのシェル触媒であって、天然層状珪酸塩(sheet−silicate)、特に、酸処理されたか焼ベントナイトをベースとする多孔質触媒担体を含有し、前記触媒担体は、パラジウム及び金を担持し且つ成形体として形成されてなる。
【0002】
VAMは、プラスティックポリマーの合成における重要なモノマー構成単位である。
VAMを使用する主な分野は、特に、ポリビニル酢酸、ポリビニルアルコール、およびポリビニルアセタールの合成、そしてまた、例えば、エチレン、塩化ビニル、アクリレート、マレイネート、フマレート、ビニルラウレートといった他のモノマーとの共重合および三元重合である。
【0003】
VAMは、主に、ガス雰囲気下で、酢酸とエチレンとから酸化反応によって合成される。
この合成のためには触媒が使用されるが、この触媒は、好ましくは、活性金属として、およびプロモーターとしてのアルカリ金属成分として、Pd(パラジウム)とAu(金)を含有しており、好ましくは酢酸塩の形のカリウムを含んでいる。この触媒のPd/Auの組織(system)の中で、この活性金属のPdとAuは、純粋な粒子の存在がありえないわけではないが、それぞれ純金属粒子の形ではなく、おそらく異なる組成のPd/Au合金粒子の形であると推測される。
Auの代替として、例えばCd又はBaが、第二活性金属成分として、使用できるかもしれない。
【0004】
現在、VAMはいわゆるシェル触媒を使用して合成されているが、そのシェル触媒中の触媒活性金属は、成形体として形成された触媒担体に完全には浸透しておらず、触媒担体成形体のより大きいまたは狭い幅の表面領域(シェル)にのみ含まれている。(特許文献1〜4参照のこと。)さらに奥の領域には、ほとんど貴金属が存在しない。
シェル触媒によって、触媒活性金属がコア中に含浸されている(impregnated through)担体をもつ触媒よりも、多くの場合より選択的な反応を進めることが可能となる。
【0005】
先行技術にて知られているVAMの合成方法におけるシェル触媒は、例えば、シリコン酸化物、アルミニウム酸化物、アルミノケイ酸塩、チタン酸化物、またはジルコニウム酸化物をベースとする触媒担体を持つものがある(特許文献5〜7を参照のこと)。
しかしながら、チタン酸化物、またはジルコニウム酸化物をベースとする触媒担体は、これらの触媒担体は長期間酢酸耐性がなく比較的高価であるため、近年はほとんど使用されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開 EP565952号 明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開 EP634214号 明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開 EP634209号 明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開 EP634208号 明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開 EP 839 793 A1
【特許文献6】欧州特許出願公開 WO 98/018553 A1,
【特許文献7】WO 2000/058008 A1
【特許文献8】WO 2005/061107 A1
【特許文献9】US 5,066,365 A
【特許文献10】DE 29 45 913 A1
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「Lehrbuch der anorganiscen Chemie」,Hollemann Wiberg、de Gruyter、102nd edition,2007(ISBN 978-3-11-017770-1)
【非特許文献2】「Rompp(oはウムラウト) Lexikon Chemie」,10th edition,Georg Thueme Verlag
【0008】
現在、VAMの合成に使用されているほとんどの触媒は、天然の層状珪酸塩(sheet-silicates, )をベースとした多孔質でアモルファスで球状のアルミナケイ酸塩の担体上に、特に、プロモーターとして酢酸カリウムが全体に含浸されている酸処理され、か焼された天然ベントナイト上に、Pd/Auシェルを備えたシェル触媒である。
【0009】
このようなVAMシェル触媒は、通常、所謂化学的製法で合成されるが、その方法では触媒担体には、対応する金属前駆体化合物溶液が含浸される。
例えば、溶液中に浸すことで、或いは、IW法(細孔含浸プロセス(pore-filling process)によって、担体には担体の細孔容積(pore volume)に対応する量の溶液が浸漬によって含浸される。
触媒のPd/Auシェルは、例えば次のような方法で製造可能である。
第一ステップに於いて、まず触媒担体成形体にNa2PdCl4溶液などを含浸させ、第二ステップに於いて、パラジウム成分をPd水酸化化合物の形で触媒担体上へ固定するために、NaOH溶液を使用する。
さらに続く独立した第三ステップでは、触媒担体は、それからNaAuCl4溶液が含浸され、そして、金成分は、NaOHを使用して同様に固定される。触媒担体のアウターシェルへの貴金属成分の固定化の後、含浸された触媒担体は、塩化物とナトリウムイオンがほぼない状態に洗浄され、乾燥されて、最後に、150℃のエチレンによって還元される。
形成されたPd/Auシェルは通常、約100μm〜500μmの厚みを有する。
【0010】
固定及び/または還元ステップの後、貴金属が担持された触媒担体は、通常、酢酸カリウムが担持されており、ここにおいて、貴金属が担持されたアウターシェルにおいてのみならず触媒担体においても酢酸カリウムの担持が生じ、触媒担体は完全にプロモーターで含浸される。
この触媒担体として、天然層状珪酸塩としての酸処理されか焼された天然ベントナイトをベースとしたSud-Chemie AG製「KA-160」といわれる球状の触媒担体が、主に使用されており、これは、約160m2/gのBET比表面積を有している。
【0011】
先行技術として知られている、活性金属としてのPdとAuと触媒担体としての「KA−160」とをベースとしたシェル触媒によって達成されるVAMの選択率は、エチレン供給量に対して約90モル%であり、反応生成物の残りの10モル%は、実質的にCO2であり、そのCO2は、有機抽出物/生成物の完全酸化によって形成されたものである。
【0012】
原材料ロスのコストを減少させるために、また、簡単に製造し且つそれによって反応生成物たるVAMの準備をより安価とするために、VAM選択性の増加は、望ましいことである。
【0013】
そこで、本発明の目的は、比較的高いVAM選択性とまた高い活性を有することを特徴とする、VAMの合成のためのシェル触媒を提供することである。
【0014】
一般的なタイプのシェル触媒からスタートして、この目的は、触媒担体が130 m2/g未満の比表面積を有することにより達成される。
【0015】
そこで、本発明は、天然の層状珪酸塩を備えたシェル触媒に関し、特に、金属の形態のPdとAuを含むアウターシェルを有し、130 m2/g未満のBET比表面積を有する酸処理されか焼されたベントナイトを備えた触媒担体成形体に関する。
【0016】
シェル触媒は、活性種が内部に浸透されるアウターシェルを有する担体を備えており、従来技術において"エッグシェル"シェル触媒と言われている。
【0017】
驚くべきことに、本発明に係るシェル触媒は、VAM選択性が、VAM合成用として従来技術において知られている対応触媒のそれよりも少なくとも1モル%高いという特徴を有することが見出された。選択性の増加は、本質的に、CO2を生成する酢酸、エチレン、そしてVAMの望ましくない酸化のトータル量の低減に起因するのかもしれない。
【0018】
本発明に係る触媒は、VAM合成のための従来技術において知られた相当する触媒に対して、少なくとも同等の高い活性を有している。更に、本発明に係る触媒の活性は、Pd/Auシェルの厚みの増加により、VAM選択性の目に見えるロスもなくかなり増加されることが見出された。従来公知の相当する触媒では、シェルの厚みの増加は、VAM選択性のかなりの減少につながる。
【0019】
更に、比較的小さな表面積に関わらず、言い換えれば、比較的大きな孔容積にかかわらず、本発明に係る触媒は、優れた機械的安定性を有し、また、使用される試薬や製品に対する高い化学的抵抗性と、VAM合成に於いて使用される温度に対して高い熱抵抗性を示す。
【0020】
もし、本発明の触媒の工業的使用における反応条件が、従来技術の対応するシェル触媒に比較して変わらないままであれば、リアクター容積当たり若しくは単位時間当たり、より多くのVAMを合成することができ、それは、性能と付加的な消費の増加と同等であるとみなされる。更に、合成ガスにおけるVAM含有量が高くなることから、生の酢酸ビニルとすることが簡便となり、このことは、VAMの仕上げに於いてエネルギーの削減につながる。安定した仕上げ方法が、例えば特許文献9、10に開示されている。
【0021】
一方、もし、本発明の触媒が充填された設備のVAM合成能力が、対応する公知のシェル触媒のレベルに変わりないままであれば、それは、本発明の触媒を使用した時における反応温度を低くできるのである。その結果として、上述した利点と伴に、VAM選択性におけるさらなる増加が得られる。この場合、複製生物であり除去されるCO2の量は少なくなり、この除去に結びついて、巻き込まれたエチレンのロスも同様に少なくなる。
更に、対応する設備でこの方法を実行すると、低温に起因して触媒の延命につながる。
【0022】
"天然多層珪酸塩をベースとする"という表現は、ここにおいては、触媒担体成形体が天然多層珪酸塩を備えているということ意味すると理解されており、天然多層珪酸塩は、処理済み又は未処理の触媒担体に含まれうる。担体材料として使用されるに先立って天然多層珪酸塩に施される典型的な処理は、例えば、酸処理及び/またはか焼である。本発明に於いて、"天然多層珪酸塩"たる用語は、天然資源を起源とする珪酸塩材料であって、一般的に[Si2O5]2−型である層中において全ての珪酸塩の構造上の基本単位型であるSiO4四面体が互いに架橋している珪酸塩材料を意味するものと理解されている。四面体のこれらの層は、所謂八面体の層と交互になっており、ここで、カチオン、特にAlやMgは、八面体の形でOH及び/又はOに囲まれる。例えば、2層の層状珪酸塩と3層の層状珪酸塩とは、識別が可能である。
【0023】
本発明において好ましい層状珪酸塩は、クレー鉱物、特に、カオリナイト、バルデライト、ヘクトライト、サポナイト、ノントロナイト、マイカ、ヴァーミキュライト及びスメクタイトであり、特に好ましくは、スメクタイト、特にモンモリロナイトである。
ドイツでの"層状珪酸塩"たる用語の定義は、例えば、非特許文献1において、又は、非特許文献2の"Sheet−Sikikat"の項目下において認められる。本発明に於いて特に好ましい天然層状珪酸塩の一つは、ベントナイトである。ベントナイトは、単語の本当の意味での天然層状珪酸塩ではないが、その代わり、層状珪酸塩を含むクレー鉱物を主とする複合物である。そういうわけで、ここで天然層状ケイ酸塩がベントナイトであるという場合、触媒担体の天然層状珪酸塩が、ベントナイトの形で、又はベントナイトの構成成分として現れているものと理解される。
【0024】
本発明の触媒において、触媒担体の表面積の低減とVAM選択性は、見出されている。更に、VAM選択性の目に見えるロスが結果として起こらないように、触媒担体の表面積の低減とPd/Auシェルの厚さの増大が大きくなるように選択されている。
本発明の好ましい実施形態によれば、触媒担体の比表面積は、125m2/g未満、好ましくは120m2/g未満、より好ましくは100m2/g未満、更に好ましくは80m2/g未満、特に好ましくは65m2/g未満である。本発明に於いて、触媒担体の"比表面積"とは、担体のBET比表面積を意味するものと理解され、それは、DIN66132による窒素吸収によって求められる。
【0025】
本発明の触媒の好ましい他の実施形態に於いては、触媒担体は、130〜40m2/gの比表面積を有し、好ましくは、128〜50m2/gの比表面積を有し、より好ましくは、126〜50m2/gの比表面積を有し、更に好ましくは125〜50m2/gの比表面積を有し、更により好ましくは120〜50m2/gの比表面積を有し、そして最も好ましくは100〜60m2/gの比表面積を有している。
【0026】
触媒担体は、成形体として形成されてなり、天然層状珪酸塩をベースとしており、特に、酸処理され且つか焼されたベントナイトをベースとしており、ここで、触媒担体は、130m2/gの比表面積を有し、好ましくは、130〜40m2/gの比表面積であり、例えば、層状珪酸塩としての酸処理された(未か焼の)ベントナイトと水を含む成形混合物をモールドし、当業者に周知の装置(例えば、エクストルダーやタブレット圧縮機)を使用して成形体を形作るために、圧縮し、そして、安定した成形体を形成するため、未か焼の成形体がか焼されて製造されうる。ここで、触媒担体の特別な比表面積の大きさは、特に、使用される生のベントナイトの質、使用されるベントナイトの酸処理方法、即ち、例えば、型及び量(ベントナイトについての)及び使用される無機酸の濃度、酸処理の時間と温度、圧縮の力、及びか焼の時間と温度とか焼の雰囲気に依存している。略100m2/gの比表面積を有する適当な触媒担体は、"KA−0"という名称でSUD-Chemie AGより販売されている。
【0027】
酸処理されたベントナイトは、強酸、例えば、硫酸、リン酸又は塩酸でベントナイトを処理することにより得られる。本発明に於いても適用されるベントナイトたる用語のドイツでの定義は、「Rompp, Lexikon Chemie, 10th edition, Georg Thieme Verlag」によってなされている。本発明において特に好ましいベントナイトは、主たる鉱物として(スメクタイトとしての)モンモリロナイトを含む天然のアルミニウム含有層状ケイ酸塩である。酸処理後、ベントナイトは通常水で洗浄され、乾燥されてそして、粉末に粉砕される。
【0028】
触媒担体の酸性度は、酢酸とエチレンとからのVAMの気相合成において、本発明の触媒の活性に有利に影響する。本発明の触媒の好ましい他の実施形態に於いては、その触媒担体は、酸性度が1〜150μeq/g、好ましくは、酸性度が5〜130μeq/g、より好ましくは、酸性度が10〜100μeq/g、そして、特に好ましくは10〜60μeq/gである。触媒担体の酸性度は、次のようにして求められる。
最終的に、粉砕された触媒担体1gを100mlの水(pHはブランク値)に混合し、攪拌しつつ15分間抽出する。0.01nの水酸化ナトリウム溶液を用いて少なくともpH7.0となるまで滴定を実施する。滴定は段階滴におこなわれ、具体的には、まず最初に、水酸化ナトリウム溶液1mlを抽出物に滴下し(1滴/1分)、それから2分待つ。pHを読み取り、それからもう1mlの水酸化ナトリウムを滴下する。以下同様。使用される水のブランク値が求められ、それに応じて酸性度算出が補正される。
【0029】
滴定曲線(pHに対する0.01水酸化ナトリウムml)がプロットされ、pH7での滴定曲線の交点が求められる。モル当量は、pH7での交点の水酸化ナトリウム消費量から結果として得られ、担体に対して10-6 eq/g で算出される。
トータル酸量: (10*ml 0.01 n NaOH)/1 support = eq/g
【0030】
低い孔拡散性の範囲に関しては、本発明の触媒の好ましい他の実施形態によって提供され、触媒担体は、平均孔径が8〜50nmであり、好ましくは、10〜35nmであり、より好ましくは11〜30nmである。
【0031】
本発明の触媒は、通常、多数の触媒担体成形体を"バッチ"法に供することにより製造され、各段階に於いて、例えば攪拌混合具によって適用される比較的高い機械的付加を、成形体は受ける。更に、本発明の触媒は、反応装置に充填されている際にかなりの機械的ストレスを受けるかもしれない。それは、望ましくない粉末の生成と触媒担体(特に、外側に位置する触媒活性シェル)へのダメージをもたらすかもしれない。特に、合理的な範囲で本発明の触媒の摩耗の維持の目的で、触媒は、硬度が20N以上、好ましくは25N以上、より好ましくは35N以上、最も好ましくは40N以上である。
この硬度は、「Dr. Schleuniger Pharmatron AG」製のタブレット硬度テスター8Mを使用して、130℃で2時間乾燥させた後の99以上のシェル触媒の平均値として求められ、装置のセッティングは、次の通りである。
硬度 N
形体からの距離 5.00mm
遅延時間 0.80s
アドバンスタイプ 6D
速度 0.60mm/s
【0032】
触媒若しくは触媒担体の硬度は、例えば、その製造方法において変化するあるパラメータによって影響を受けるかもしれない。例えば、層状珪酸塩の選定、適切な担体混合物から形成された未か焼成形体のか焼時間及び/又はか焼温度、又は例えばメチルセルロースやステアリン酸マグネシウムのようなある添加物によって影響を受けるかもしれない。
【0033】
本発明に係る触媒は、成形体として形成され、天然の層状珪酸塩、特に酸処理されか焼されたベントナイトをベースとした触媒体を含有する。本発明に於いて、"ベースとした"との表現は、触媒が天然の層状珪酸塩を含有していることを意味する。触媒担体における天然層状珪酸塩、特に、酸処理されか焼されたベントナイトの含有量は、触媒担体の重量に対して、50重量%以上であることが好ましく、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、更により好ましくは90重量%以上、そして最も好ましくは95重量%以上である。
【0034】
本発明の触媒におけるVAM選択性は、触媒担体の細孔容積に依存している。触媒担体は、BJH法による細孔容積が0.25〜0.7ml/gであることが好ましく、好ましくは0.3〜0.6ml/g、より好ましくは0.35〜0.5mg/gである。ここで、触媒担体における細孔容積は、BJH法に基づいた窒素吸着の方法によて求められる。触媒担体の比表面積とその細孔容積とは、それぞれBET法及びBJH法によって求められる。BET比表面積は、DIN66131に従ったBET法に基づいて求められ、そのBET法は、また「J.Am.Chem.Soc.60,309(1938)」によって公開されている。触媒担体又は触媒における比表面積及び細孔容積を求めるために、例えば、吸脱着等温線が記録されるマイクロメリティックス社製全自動窒素ポロシメーター、タイプ ASAP2010を使用してサンプルの測定が行われる。
【0035】
BET理論に従って、触媒担体又は触媒の比表面積と気孔率とを求めるために、DIN66131に基づいてデータが評価される。細孔容積は、BJH法(E.P. Barret, L.G. Joiner, P.P. Haienda, J. Am. Chem. Soc. 73 (1951, 373))を使用した測定値から求められる。また、この方法は毛管凝縮の影響を考慮に入れている。ある孔サイズ範囲の孔容積は、BJH法に基づいた吸着等温線の評価から得られる増加する孔容積を合計することによって求められる。BJH法に基づいた細孔容積は、径が1.7〜300nmである孔について適合する。
【0036】
本発明に係る触媒の好ましい他の実施形態に於いては、触媒担体の吸水度は、40〜75%であることが好ましく、好ましくは50〜70%であり、吸水による重量増加として計測される。この吸水度は、もはや担体サンプルから気泡が生じないようになるまで、担体サンプル10gに30分間かけて純水を染み込ませることにより求められる。それから、過剰の水は注ぎ出され、染み込まされたサンプルは、サンプルから付着した水滴を取り除くため面クロスで軽くたたかれる。それから、水を含んだ担体は、重量測定され、次の通り吸水度が算出される。
(最終重量(g)−初期重量(g))×10=吸水度(%)
【0037】
本発明に係る触媒の好ましい他の実施形態に於いては、BJH法に基づく触媒担体の孔総容積における少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%が、メソ細孔とマクロ細孔によって形成されていることが好ましい。これにより、特に、Pd/Auシェルが比較的大きな厚さを有している場合において、拡散制限(diffusion limitasion)によって引き起こされる本発明の触媒の活性の減少に歯止がかけられる。ここで、ミクロ細孔、メソ細孔及びマクロ細孔たる用語は、それぞれ孔径が2nm未満、2〜50nmそして50nmを越える孔を意味するものと理解されている。
【0038】
本発明に係る触媒の触媒担体は、カサ密度が0.3g/ml以上、好ましくは0.35g/ml以上、更に好ましくは0.35〜0.6g/mlであるかもしれない。
【0039】
本発明に係る触媒に於いて、十分な化学耐性を保証するために、担体に含まれる天然層状珪酸塩は、層状珪酸塩の重量に対して少なくとも65重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは95〜99.5重量%のSiO2を含有している。
【0040】
酢酸とエチレンからのVAMの気相合成においては、層状珪酸塩におけるAl23含有量が比較的低くとも悪影響がほとんど無い一方で、高いAl23含有量の場合には、著しい硬さの低下を計算に入れなければならない。それ故、本発明の好ましい実施形態に於いては、層状珪酸塩は、層状珪酸塩の重量に対してAl23を10重量%未満、好ましくは0.1〜3重量%、より好ましくは0.3〜1.0重量%含有している。
【0041】
本発明に係る触媒の触媒担体は、成形体として形成されている。触媒担体は、適合する貴金属シェルを適用できるように、原則として、幾何学体の形状となっている。しかしながら、触媒担体は、球状、円筒状(曲面の端縁を有する)、孔の空いた円筒状(曲面の端縁を有する)、三葉状、"キャップされたタブレット"、四葉状、リング状、ドーナツ状、星状、車輪状、"逆"車輪状("inverse" cartwheel)若しくは糸状に形成されており、好ましくはうねのあるらせん状若しくは星形らせん状に形成されており、好ましくは球状に形成されている。
【0042】
本発明に係る触媒の触媒担体についての直径及び/又は長さそして厚さは、好ましくは2〜9mmであり、触媒が使用されるリアクターチューブの構成に依存している。もし、触媒担体が球状に形成されている場合に於いては、触媒担体は、好ましくは2mm以上、好ましくは3mm以上、より好ましくは4〜9mmの直径を有している。
【0043】
本発明に係る触媒の活性を増大させるために、触媒担体に於いては、Zr、Hf、Ti、Nb、Ta、W、Mg、Re、Y及びFeからなる群から選ばれた少なくとも1つの金属酸化物、好ましくはZrO2、HfO2又はFe23がドープされていることが提供されうる。触媒担体におけるドープされた酸化物の含有量が、触媒担体の重量に対して0.01〜20重量%、好ましくは1.0〜10重量%、より好ましくは3〜8重量%であることが好ましい。ドープされる酸化物の量は、まず第一に、使用される酸化物のタイプに依存している。
【0044】
一般に、Pd/Auシェルの厚さが小さければ、本発明の触媒におけるVAM選択性は高いものとなる。それ故、本発明に係る触媒の好ましい他の実施形態に於いては、触媒の前記シェルの厚みが、300μm未満であり、好ましくは200μm未満であり、より好ましくは150μm未満であり、更に好ましくは100μm未満であり、更により好ましくは80μm未満である。前記シェルの厚さは、顕微鏡を使用することにより光学的に測定される。特に、貴金属が導入された領域は黒くなり、一方、貴金属のない領域は白くなる。貴金属を含む領域と含まない領域との境界線は、極めて明確でありはっきり視認できる。もし、前記境界線が明確でなく且つはっきりと視認できないならば、前記Pd/Auシェルの厚さはシェルの厚さに一致しており、触媒担体の外表面から測定され、担体に導入された貴金属の95%を含んでいる。
【0045】
しかしながら、本発明の触媒に於いては、Pd/Auシェル(支持体におけるBET比表面積に機能するものとして)は、本発明の触媒のVAM選択性における大きな減少をもたらすことなく、触媒を高活性にする比較的大きな厚さで形成されうる。この場合、貴金属シェルの厚さは、触媒担体のBET比表面積に略反比例して、増加する。本発明の触媒の好ましい他の実施形態に於いては、触媒のシェルは、触媒のシェルの厚みが、200〜2000μm、好ましくは250〜1800μm、より好ましくは300〜1500μm、更に好ましくは400〜1200μmである。
【0046】
本発明に係る触媒の十分な活性を確保するために、貴金属の導入された触媒担体の重量に対して、触媒のPdの含有量は、0.6重量%から2.5重量%、好ましくは0.7〜2.3重量%、より好ましくは0.8〜2重量%である。
【0047】
更に、本発明に係る触媒に於いて、Pd含有量が1〜20g/lであり、好ましくは、2〜15g/lであり、より好ましくは3〜10g/lであるのが好ましい。
【0048】
同様に、本発明に係る触媒の十分な活性と選択性を確保するために、前記触媒のAu/Pd の原子比率は、0〜1.2がよく、好ましくは0.1〜1、より好ましくは0.3〜0.9、更に好ましくは0.4〜0.8である。
【0049】
更に、本発明に係る触媒のAu含有量は、1〜20g/lであり、好ましくは1〜15g/lであり、より好ましくは2〜10g/lである。
【0050】
本発明に係る触媒に於いて、前記Pd/Auシェルの厚さ方向に渡って大体均一な活性を確保するために、貴金属の濃度は、シェルの厚さ方向に渡って比較的少ししか変化しない。言い換えれば、シェル厚さの90%の領域であって、それぞれシェル厚の5%に制限されているアウターシェルとインナーシェルから区画される領域に及んでいる触媒の貴金属濃度の概要は、この領域の平均貴金属濃度から最大で+/−20%、好ましくは最大で+/−15%、より好ましくは最大で+/−10%しか異なっていない。
【0051】
塩化物は、本発明の触媒を汚染し、それゆえ非活性化させる。そこで、本発明に係る触媒の好ましい他の実施形態に於いては、塩化物濃度が250ppm未満であり、好ましくは150ppm未満である。
【0052】
上記した添加する酸化物に加えて又は代えて、本発明に係る触媒は、更なる促進剤として、少なくとも1種のアルカリ金属化合物、好ましくはカリウム、ナトリウム、セシウム又はルビジウムの化合物、より好ましくは、カリウム化合物を含んでいても良い。適当で且つ特に好ましいカリウム化合物は、酢酸カリウム KOAc、炭酸カリウム K2CO3、蟻酸カリウム KFA、炭酸水素カリウム KHCO3及び水酸化カリウム KOHであり、そしてまた、それぞれVAM合成の反応条件下に、酢酸カリウム KOAcに変化する全てのカリウム化合物である。カリウム化合物は、金属Pd及びAuを形成させるために金属成分を還元させる前又は後に、触媒担体に添加されてもよい。本発明に係る触媒の好ましい他の実施形態に於いては、この触媒は、酢酸アルカリ金属、好ましくは酢酸カリウムを含む。この場合、十分な促進活性を確保するために、触媒における酢酸アルカリ金属の濃度は、0.1〜0.7モル/l、好ましくは0.3〜0.5モル/lが特に好適である。
【0053】
本発明に係る触媒の好ましい他の実施形態に於いては、アルカリ金属/Pdの原子比率が、1〜12、好ましくは2〜10、より好ましくは4〜9である。好ましくは、触媒担体の比表面積が小さくなれば、アルカリ金属/Pdの原子比率が低くなる。
【0054】
本発明は、また、シェル触媒、特に本発明に係るシェル触媒の第一の製造方法に関するものであり、次のステップを備えている。
(a)天然層状珪酸塩、特に酸処理されたか焼ベントナイトをベースとした多孔質触媒担体で、成形体として形成されてなるものであって、130m2/g未満の比表面積を有している触媒担体を供給するステップ;
(b) 前記触媒担体にPd前駆体化合物の溶液を添加するステップ;
(c) 前記触媒担体にAu前駆体化合物の溶液を添加するステップ;
(d) 前記Pd前駆体化合物のPd成分を金属の型へ変換するステップ;
(e) 前記Au前駆体化合物のAu成分を金属の型へ変換するステップ。
【0055】
原則として、使用されるPd及びAu前駆体化合物は、金属の高い分散度を達成することが可能であれば何れのPd又はAu化合物でもありうる。ここで、"高い分散度"たる用語は、金属/合金粒子の全金属原子のトータル数に対し、支持された金属触媒の全金属/合金粒子の表面金属原子の数の割合を意味するものと理解されている。
一般的に、分散度が比較的高い数値に対応する場合が好ましく、すなわち、この場合には多くの金属原子が触媒反応のために自由に利用可能であるからである。
言い換えれば、支持された金属触媒の相対的に高い分散度によって、相対的に少ない金属使用量によって、所定の触媒活性を達成できる。本発明に係る触媒の好ましい他の実施形態においては、パラジウムの分散度は1〜30%である。
【0056】
PdおよびAu前駆体化合物が、これらの金属のハロゲン化合物(特に塩化物)、酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩、蟻酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、水酸化化合物、炭酸水素塩、アミノ錯体または有機錯体(例えば、トリフェニルリンホスフィン錯体またはアセチルアセトネート錯体)から選択されていることが好ましい。
【0057】
好ましいPd前駆体化合物の例は、水溶性のPd塩である。本発明に係る方法の特に好ましい実施形態に於いては、Pd前駆体化合物が、Pd(NH3)4(OH)2、Pd(NH3)4(OAc)2、H2PdCl4、Pd(NH3)4(HCO3)2、Pd(NH3)4(HPO4)、Pd(NH3)4Cl2、シュウ酸Pd(NH3)4 、シュウ酸Pd、Pd(NO3)2、Pd(NH3)4(NO3)2、K2Pd(OAc)2(OH)2、Na2Pd(OAc)2(OH)2,、Pd(NH3)2(NO2)2、K2Pd(NO2)4、Na2Pd(NO2)4、Pd(OAc)2、 K2PdCl4、 (NH4)2PdCl4、 PdCl2及びNa2PdCl4からなる群から選択されるものであり、上記塩の2以上の混合物を使用することも可能である。配位子としてのNH3の代わりに、エチレンアミン、エタノールアミンも配位子として使用しうる。Pd(OAc)2に加えて、他のカルボン酸パラジウム、好ましくは、炭素数3〜5のモノカルボン酸の塩、例えば、プロピオン酸塩又は酪酸塩である。
【0058】
本発明に係る方法の好ましい他の実施形態に於いては、亜硝酸Pd前駆体化合物がまた好ましく、亜硝酸Pd前駆体化合物は、例えば、NaNO2溶液にPd(OAc)2を溶解させることにより得られるものがある。
【0059】
好ましいAu前駆体化合物の例は、水溶性のAu塩である。本発明に係る方法の好ましい一実施形態に於いては、Au前駆体化合物が、KAuO2、HAuCl4、KAu(NO2)4、NaAu(NO2)4、AuCl3、NaAuCl4、KAuCl4、KAu(OAc)3(OH)、HAu(NO3)4、NaAuO2、NMe4AuO2、RbAuO2、CsAuO2、NaAu(OAc)3(OH)、RbAu(OAc)3OH、CsAu(OAc)3OH、NMe4Au(OAc)3OH及びAu(OAc)3からなる群から選択されるものである。
Au(OAc)3またはKAuO2は、水酸化金(III)溶液から酸化物/水酸化物を沈殿させ、洗浄し沈殿物を分離し、酢酸またはKOH中で取り上げることによって、フレッシュなものを適切なところで生成することが推奨される。
【0060】
前駆体化合物に適している溶媒は、該当する前駆体化合物が溶解し且つ触媒担体に使用した後乾燥によって容易にそこから除去できる純溶媒又は混合溶媒である。前駆体化合物としての金属酢酸塩についての好ましい溶媒の例は、特に非置換カルボン酸(特に酢酸)又はアセトンであり、金属塩化物については、特に水又は希塩酸である。
【0061】
もし、前駆体化合物が、酢酸、水又は希塩酸又はこれらの混合液で十分に溶解しない場合には、他の溶媒がまた上記溶媒に代えて若しくは加えて使用される。ここで好ましく言及される他の溶媒は、不活性であり酢酸又は水に混ざるものである。酢酸に加えられるものとして適する好ましい溶媒としては、ケトン(例えば、アセトン又はアセチルアセトン)、またエーテル(例えば、テトラヒドロフラン又はジオクサン)、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、及び、例えばベンゼンなどの炭化水素をベースとする溶媒が挙げられる。
【0062】
水に添加されるものとして適している好ましい溶媒又は添加剤としては、ケトン(例えばアセトン)、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール又はメトキシエタノール)、アルカリ溶液(例えば、KOH水溶液又はNaOH水溶液)、有機酸(例えば、酢酸、蟻酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリオキシル酸、グリコール酸、シュウ酸、ピルビン酸、オキサミド酸、乳酸)又はアミノ酸(例えばグリシン)が挙げられる。
【0063】
塩素化合物が前駆体化合物として使用されると、塩素は触媒を汚染することから、本発明に係る方法によって製造された触媒を使用する前に塩素イオンは許容される残量まで低減されていることが保証されていなければならない。この目的を達成するために、Pd及びAu前駆体化合物のPd及びAu成分が触媒担体に付着された後、通常、触媒担体は水でふんだんに洗われる。斯かる操作は、アルカリ溶液を使用してPd及びAu成分の水酸化物の析出によって固定した後、又は、貴金属成分を還元してそれぞれ金属/合金にした後に、直ちに実施される。
【0064】
しかしながら、本発明に係る方法の好ましい一実施形態に於いては、触媒中の塩素含有量をできるだけ少なくし且つ随時費やされる塩素除去のための洗浄を回避するために、無塩素Pd及びAu前駆体化合物が無塩素溶媒と共に使用される。この場合、使用される前駆体化合物は、好ましくは対応する酢酸塩、水酸化物、亜硝酸塩又は炭酸水素塩の化合物であり、これらは、ほんの限られた程度でのみ触媒担体を塩素で汚染するからである。
【0065】
Pd及びAu前駆体化合物における触媒担体のアウターシェルの領域での触媒担体上の沈着は、それ自体公知の方法によって達成されうる。例えば、含浸により、前駆体溶液に担体を浸漬することにより、若しくはIW法(the incipient wetness method)に基づいて前駆体溶液を染み込ませることにより、前駆体溶液は導入されうる。それから、塩基、例えば、水酸化ナトリウム溶液又は水酸化カリウム溶液は、触媒担体に加えられ、その結果、貴金属成分は、水酸化物の形で担体上に析出する。また、例えば、最初にアルカリ溶液を担体に染み込ませておき、それから、このように前処理された担体に前駆体化合物を加えることも可能である。
【0066】
本発明に係る方法の好ましい他の実施形態に於いては、触媒担体にPd前駆体化合物の溶液を染み込ませ、そして、Au前駆体化合物を染み込ませることにより、又は、Pd前駆体化合物及びAu前駆体化合物の双方を含む溶液を染み込ませることにより、Pd及びAu前駆体化合物が触媒担体に加えられる。
【0067】
先端技術によれば、担体のシェルのエリアにおける塩化物から出発される活性金属PdおよびAuは、含浸によって担体のシェル領域の奥へ添加される。
しかしながら、この技術では、最小のシェル厚と最大のAu導入という点に関して、限界に到着している。対応する公知のVAM触媒の最小厚さはせいぜい100μm位であり、含浸法でより薄いシェルが得られることは予想できない。更に、含浸法によって所望のシェル内により高いAuを導入することは、非常に限られた範囲のみにおいて達成でき、Au前駆体化合物は、そのシェルから触媒担体成形体の内側領域に拡散する傾向にあることから、ある領域ではAuが殆ど含まれないAuの広がったシェルとなってしまう。
【0068】
活性金属又はその前駆体化合物が、例えば、所謂物理的方法によって、また担体に加えられうる。このために、本発明によれば、担体は、好ましくは前駆体化合物の溶液が噴霧され、溶媒が速やかに揮発するように、その触媒担体は熱風がブローされたコーティングドラム内に移動される。
【0069】
しかしながら、本発明に係る方法の特に好ましい一実施形態に於いては、Pd前駆体化合物の溶液とAu前駆体化合物の溶液は、触媒担体の流動床上にスプレーすることにより触媒担体に加えられ、好ましくは噴霧法により触媒担体に加えられる。流動床では、好ましくは成形体が楕円状又はトロイダル状のコースを循環する。そのような流動床で成形体がどのように移動するのかと言う点について考えを述べると、楕円状循環の場合では、流動床内での触媒担体成形体は、主となる回転軸と副となる回転軸を変えながら楕円状コースに乗って垂直面内で移動すると言える。トロイダル状循環の場合、流動床内での触媒担体成形体は、主となる回転軸と副となる回転軸を変えながら楕円状コースに乗って垂直面内で移動し且つ半径を変えながら円形コースに乗って水平面内を移動する。概して、"楕円循環"の場合、成形体は楕円状コースに乗って垂直面内で移動し、"トロイダル循環"の場合、トロイダル状コースに乗って移動する。このことは、成形体は、楕円の垂直断面において、トーラス表面を螺旋状に移動することを意味する。その結果、シェルの厚さは、例えば2mmまでスムーズに調整され最適化される。しかしながら、100μm未満の非常に薄いシェルもまた可能である。
【0070】
本発明に係る方法の上記実施形態は、流動床システムを使用することにより実施される。特に、エアスリップ層によって制御された流動床が好ましい。一方では、触媒担体成形体は、制御されたエアスリップ層によって十分に攪拌され、同時に自転する。その結果、それらはプロセスエアによって均一に乾燥される。他方では、制御されたエアスリップ層によって引き起こされた成形体の環状の移動の結果により、触媒担体成形体はスプレー工程(前駆体化合物の添加)をほぼ一定の速度で通過する。この結果、成形体の処理されたバッチを通して、だいたい均一なシェル厚となる。このことは、また、シェル厚中の比較的大きな領域にわたって貴金属の濃度が非常に僅かしか変化しないこと、言い換えれば、シェル厚中の比較的大きな領域にわたる貴金属の濃度が外側の高い金属濃度と内側のいくぶん低い金属濃度によってほぼ曲がった方形波関数を描写していることを意味し、その結果、Pd/Auシェルの厚さにわたって、得られた触媒がだいたい均一な活性を有することが保証される。
【0071】
好ましい実施形態に従って本発明の方法を実施する適当なコーティングドラムと流動床システムは、従来技術として知られており、例えば、Heinrich Brucks GmbH (Alfeld, Germany), ERWEK GmbH (Heusenstamm, Germany), Stechel (Germany), DRIAM Anlagenbau GmbH (Eriskirch, Germany), Glatt GmbH (Binzen, Germany), G.S. Divisione Verniciatura (Osteria, Italy), HOFER-Pharma Maschinen GmbH (Weil am Rhein, Germany), L. B. Bohle Maschinen + Verfahren GmbH (Enningerloh, Germany), L dige Maschinenbau GmbH (Paderborn, Germany), Manesty (Merseyside, United Kingdom), Vector Corporation (Marion, IA, USA), Aeromatic-Fielder AG (Bubendorf, Switzerland), GEA Process Engineering (Hampshire, United Kingdom), Fluid Air Inc. (Aurora, Illinois, USA), Heinen Systems GmbH (Varel, Germany), H ttlin GmbH (Steinen, Germany), Umang Pharmatech Pvt. Ltd. (Marharashtra, India)及びInnojet Technologies (L rrach, Germany)たる会社から販売されている。特に「Innojet bearing」社から販売されている流動床装置、商品名「 Innojet(登録商標) Aircoater」や商品名「Innojet(登録商標) Ventilus」が好ましい。
【0072】
本発明に係る方法の好ましい他の実施形態に於いては、触媒担体は、例えば、加熱されたプロセスエアによって、溶液添加の間加熱される。添加された貴金属前駆体化合物の溶液の乾燥速度は、触媒担体の加熱の程度によって決定される。
例えば、比較的低い温度では、乾燥速度も比較的低く、そのため、適量が添加された場合には、溶媒の存在によって生成された前駆体化合物の拡散によって比較的厚いシェルが形成される。
例えば、比較的高い温度では、乾燥速度も比較的速く、そのため、成形体と接触させている前駆体化合物溶液がほとんどすぐに乾燥し、したがって、触媒担体に添加された溶液は深い箇所まで浸透できない。比較的高い温度においては、従って、高貴金属担持の比較的薄い厚みのシェルが得られる。
【0073】
先行技術に記載のPdおよびAuをベースとしたVAMシェル触媒の製造についての方法においては、商業的使用可能な前駆体化合物の溶液としてはNa2PdCl4、NaAuCl4、または、HAuCl4のようなものが使用できる。
これらの前駆体化合物は基本的には溶液中で反応するが、一方、従来の塩化物、硝酸塩、および酢酸塩の前駆体化合物はすべて酸性に溶液中で反応する。
【0074】
触媒担体へ前駆体化合物を添加するために、通常好ましくはNa2PdCl4およびNaAuCl3 溶液が使用できる。
これらの金属塩溶液は通常室温で担体に添加され、そして金属化合物は不溶性PdまたはAu水酸化物としてNaOHで固定される。担持された単体はそこで通常水で塩化物がなくなるまで洗浄される。
金の固定は、特に、塩基を安定したAuテトラクロロ錯体の沈殿物へ塩基を導入する反応時間を長くすることや金の保持力の欠落などの不利益を持つ。
【0075】
本発明の方法の他のさらに好ましい実施形態によれば、以下のステップを含む方法である。
a)Pd および/またはAu前駆体化合物の第一溶液が供給されるステップ。
b)Pd および/またはAu前駆体化合物の第二溶液が供給されるステップ。
第一溶液は第二溶液の前駆体化合物の貴金属化合物の沈殿を起し、逆も同様であるステップ。
c)第一溶液と第二溶液は触媒担体上に添加されるステップ。
【0076】
この本発明の実施形態では二つの異なる前駆体溶液を使用したが、これは例えば、ひとつがPdを、もう一つがAu前駆体化合物を含む。
一般的に、溶液のひとつは塩基性のpHを有し、またもう一つは酸性のpHを有することが好ましい。
溶液は、通常、まず担体への最初の第一液の含浸によって、そして続くステップで 上述したような第二液の浸漬によって、溶液は触媒担体に添加される。
第二液が添加された場合、二つの溶液は担体上で結合され、その結果、溶液のpHは変化し、それぞれの前駆体化合物のPdまたはAu化合物は担体上に沈殿されるが、これは担体へ添加されることが必要な通常の従来技術におけるNaOHまたはKOHのような補助的な塩基なしに行われる。
【0077】
前記本発明の方法の実施形態では、従って、触媒担体を、二つの互いに不相溶な液であるPdおよび/またはAu化合物の第一液と、Pdおよび/またはAu化合物の第二液に含浸することをベースとしており、これが第一液が第二液の前駆体化合物の貴金属の沈殿を引き起こし、逆も同様であり、そのため、二つの溶液の接触する領域において、予備的含浸されたPd/Au化合物と事後的含浸されたPd/Au化合物がほとんど同時に沈殿し、Pd/Auの混合を通じて密な混合に導かれる。
乾燥は二つの含浸ステップの間に選択的に行われうる。
【0078】
不相溶な溶液とともに含浸するためのPd前駆体化合物の適切な水溶液は表1に例示される。
【0079】
【表1】

【0080】
NH3が過剰な還元反応をする場合、パラジウムアミン錯体のかわりに、リガンドとしてのエチレンジアミンとともに対応するジアミン錯体が、または対応するエタノールアミン錯体も使用しうる。
【0081】
不相溶な溶液とともに含浸するためのAu前駆体化合物の適切な水溶液は表2に例示される。
【0082】
【表2】

【0083】
貴金属化合物の塩基がない沈殿のための適切な不相溶な溶液の組み合わせは、例えば、PdCl2 溶液および KAuO2 溶液、Pd(NO32 および KAuO2 溶液、Pd(NH34(OH)2 および AuCl3またはHAuCl4溶液である。
【0084】
本発明の方法の他のさらに好ましい実施形態によれば、Pdは不相溶なPd溶液と、および同様にAuは不相溶なAu溶液と、例えば、PdCl2溶液はPd(NH34(OH)2溶液と接触させ、またはHAuCl4はKAuO2溶液と接触させることによって、共に沈殿しうる。
このような方法で高濃度Pdおよび/またはAu成分が、高濃度溶液を使用することなくシェルに沈殿する。
【0085】
本発明の方法のさらなる実施形態によれば、互いに相溶性のある液からなる、貴金属の沈殿のための混合液が使用され、混合液と不相溶な溶液と接触をもたらす。
混合液の例としては、PdCl2とAuCl3含有液であってその貴金属成分がKAuO2溶液で沈殿されうるもの、または、Pd(NH34(OH)2とKAuO2含含有溶液であって、その貴金属成分が、PdCl2およびHAuCl4含有溶液で沈殿されうるものがある。さらなる混合溶液の例はHAuCl4 とKAuO2 の組み合わせである。
【0086】
不相溶な溶液との含浸は、好ましくは、浸漬あるいはスプレー含浸によって行われ、そのスプレー含浸は、不相溶な溶液が、一の(二物質ノズル(dual substance nozzle))または二以上のダブルノズルを通じて同時に、または同時に二つまたはグループのノズルによって、または、一またはそれ以上のノズルによって連続的にスプレーされることで行われる。
【0087】
すばやい前駆体化合物の金属成分のシェルへの固定化(固定)と、および関連する短縮したPdとAuの分散のため、不相溶液の含浸は従来の相溶液の使用よりも、シェルを薄くさせることができる。
不相溶液の使用によって、薄いシェル中の貴金属の高い含有、改善された金属維持力、より早くより完全な貴金属の沈殿、担体の分解性の残留Na成分の減少、ひとつの固定ステップにおけるPdとAuの同時の固定、NaOHコストの不要およびNaOH処理および担体の余分なNaOHとの接触を通じた機械的疲労の回避などが実現されうる。
【0088】
不相溶液との含浸によって、二つの不相溶な溶液の適用のみを含む単一の固定化ステップがより多くの貴金属含有が触媒担体上に沈殿することを可能にし、それは従来の塩基(NaOH)固定化による場合よりも多い。
特に、不溶性溶液の原則的な使用が、Au/Pd原子比率0.5以上の高いAuの含有を可能にし、それは、VAM選択性に関しては極めて望ましい。
【0089】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態によれば、触媒担体は、一旦、PdおよびAu前駆体化合物が触媒担体上に前駆体化合物の貴金属化合物の固定のために堆積され、触媒担体は固定化ステップに付される。
固定化ステップは、前駆体化合物が酸か塩基かによって、アルカリまたは酸による担体の処理を含みうる、または、貴金属成分の水酸化物または酸化物へ変換するための担体のか焼がなされる。
固定化ステップは省略可能であり、そして、貴金属成分は、たとえばエチレンなどのガス相における20℃から200℃の加熱条件下での還元反応処理によって、直接還元されうる。中間的なか焼ステップによって、Pdおよび/またはAu前駆体化合物は、酸化物に変換され、そして固定される。
【0090】
粉状で、および金属の前駆体を奥まで完全に含浸されたものとして、層状珪酸塩ベースの担体材料の製造もまた可能である。
予備的処理がなされた粉状体は、そこで、ウオッシュコートの形で適切な担体構造上に適用されうるが、その構造とは例えば、球状のステアタイト、またはKA−160担体などであり、そして、好ましくはコーティングドラムが使用され、およびさらなるか焼処理と触媒の形にする還元処理がなされる。
【0091】
従って、本発明はシェル触媒、特に下記のステップを含む本発明のシェル触媒、の製造のための二番目の方法について言及する。
(a) 天然層状珪酸塩、特に酸処理か焼ベントナイト、をベースとする粉砕(pulverant)多孔担体材料であって、その担体材料はPdおよびAu前駆体化合物で、またはPdおよびAu粒子を担持し、比表面積が130 m2/g未満である、を供給するステップ。
(b) 担持された担体材料をシェルの形の担体構造に適用するステップ、
(c) ステップ(b)で得られた担持された担体構造をか焼するステップ、および
(d) 選択的に、前記PdおよびAu前駆体化合物の前記PdおよびAu化合物を金属の形に変換するステップ。
【0092】
また、そのかわりに、上記方法は、粉状の担体材料(貴金属によって担持されていない)を担体構造へ最初に適用することで実行され、その後にのみ貴金属を適応してもよい。
【0093】
前駆体化合物の担持後に直接的に、あるいは、貴金属化合物の固定後、担体は対応する酸化物への変換のためにか焼されうる。
か焼は、好ましくは700℃より低温で行われる。特に好ましいのは、エアを供給しながら300から450℃の間で行うことである。
か焼時間はか焼温度により、好ましくは、0.5から6時間の間である。約400℃のか焼温度においては、か焼時間は好ましくは1から2時間である。約300℃のか焼温度においては、か焼時間は6時間までが好ましい。
沈殿物の固定化は省略可能でもあり、および含浸された塩類を直接金属組成物から酸化物へ変換するためにか焼することも可能である。
好ましい一実施形態は、Pd担持担体(先の沈殿物の固定を伴うあるいは伴わない)の約400℃でPdOの形にするための(中間の)か焼、続いて、Auか焼が回避できるAuの適用と還元が続く。
【0094】
貴金属組成物は触媒の使用前にさらに還元され、そこでは、還元はもとの位置(in situ)、すなわち、プロセス反応装置や、または実験設備内(ex situ)において、特に還元反応装置においてなどで行われる。
元の位置における還元は、エチレン(5体積%)とともに窒素の中で、150℃で、例えば5時間以上で行われることが好ましい。
実験設備での還元は、窒素中の5体積%の水素とともに、例えば、混合ガスを使用して、好ましくは150から500℃の範囲の温度において、5時間を越える時間、実行される。
【0095】
ガス状の、または、揮発可能な還元剤としては、例えば、CO、NH3、ホルムアルデヒド、メタノール、および炭化水素類が同様に使用しうる。そこでは、ガス状の還元剤が、例えば、二酸化炭素、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスで希釈されうる。
不活性ガスで希釈された還元剤が使用されることが好ましい。
水素と窒素またはアルゴンの混合が好ましく、水素の含有量が1体積%と15体積%の間であることが好ましい。
【0096】
貴金属の還元は、液相中でも行われ、好ましくは、還元剤として、ヒドラジン、ギ酸K、ギ酸Na、ギ酸アンモニウム、ギ酸、H22または、次亜リン酸K、次亜リン酸、H2O2または次亜リン酸Naを使用して行われることが好ましい。
【0097】
還元剤の量は、好ましくは、処理時間の間に、少なくとも貴金属成分の完全な還元のために触媒上を通過するのに必要な量と等しい量が選択される。
好ましくは、しかし、余剰な還元剤は、迅速なおよび完全な還元を保障するために、触媒上を通過する。
【0098】
還元は好ましくは常圧、すなわち絶対圧力約1バールで行われることが好ましい。産業的な生成のためには、回転炉または流動床反応装置が使われることが、触媒の還元の均一性を確実にするために好ましい。
【0099】
本発明は本発明の触媒の使用について言及する。
その触媒の使用とは、酸化触媒として、水酸化/脱水素化触媒として、水酸化脱硫化触媒(hydrogenating desulphurization)として、水酸化脱窒化触媒(hydrodenitrification)として、水酸化脱酸化触媒(hydrodeoxidation)またはアルケニルアルカノーテス(alkenylalkanoates)の生成における触媒として、特に、酢酸ビニルモノマー(VAM)生成、特に、ガス相におけるエチレンおよび酢酸を酢酸ビニルモノマーへ形成する、ための触媒としての使用である。
【0100】
本発明の触媒は好ましくはVAM生成に使用される。通常これは、酢酸、エチレンおよび酸素または酸素を含むガスを、本発明の触媒に、100から200℃、好ましくは120から200℃の温度にて、および1から25バール、好ましくは1から20バールの圧力で通すことで実施されるが、そこでの未反応の抽出物はリサイクル可能である。
便宜上には、酸素濃度は10体積%より低く維持される。特定の状況下で、しかしながら、窒素または二酸化炭素のような不活性ガスによる希釈は有利にもなる。二酸化炭素はVAM生成の過程において、少量で形成されるため特に希釈に適している。結果物である酢酸ビニルは、例えば、US5066365中に記載されている適切な方法で分離される。
【実施例】
【0101】
下記の実施例は、比較例とあわせて本発明の説明を提供する。
【0102】
実施例1
225gの、天然層状ケイ酸塩としての酸処理か焼ベントナイトから形成された、球状触媒担体成形体、Sud Chemie AG社(Munich, Germany)の商品名:KA-0、の特性を表3に示した。
【0103】
【表3】

【0104】
流動床装置Innojet(登録商標) Aircoater(Innojet Technologies 社製 Lorrach, Germany)に、上記225gの球状触媒担体成形体を充填し、圧縮エアが温度80℃(6バール)流動床ステートに吹き込まれ、そこでは成形体がトロイダルコースで循環される。すなわち、鉛直方向の楕円パスと、これと垂直にまじわる水平循環パスの方向において移送される。
【0105】
一旦、成形体は約75℃に移送され、7.5gの通常取引されているNa2PdCl4 (テトラクロロパラデイトナトリウム)および4.6gの通常取引されているNaAuCl4(テトラクロロアウレイトナトリウム)の混合貴金属水溶液300mlを流動床の上の成形体に40分を超える時間スプレーされる。
【0106】
触媒担体は貴金属混合溶液で含浸された後、担体球体は0.05モル濃度のNaOH溶液が流動床ステート上の成形体の上に30分を超える時間スプレーされる。この間、NaOHの大部分がシェル内部に堆積され、過剰の高濃度NaOH濃縮液に担体がさらされることなく、PdおよびAu金属成分を固定する。
【0107】
NaOHが作用されたあと、担体は流動床装置内で多量の水でおおかたのアルカリ金属と、貴金属化合物とNaOHを介して担体上に導入された塩化物を除去するために洗浄する。
【0108】
洗浄後、成形体は、流動床装置内のホットプロセスエア(100℃)の中を移動されながら乾燥される。
【0109】
成形体が乾燥された後、それらは、エチレン(5体積%)混合ガスと共に窒素中で約150℃の温度の流動床装置内でPd/Auシェル触媒の形へ還元される。
【0110】
その結果、シェル触媒は1.2質量%のPdを含有し、約0.5のAu/Pd 原子比率を有し、約160μmのシェル厚みと38Nの硬度を有する。
【0111】
シェル厚の90%の領域で且つ外殻及び内殻の各シェル厚みから5%の境界にて区画される領域における触媒の貴金属濃度は、この領域に於ける平均貴金属濃度から最大で+/−20%、好ましくは最大で+/−15%、より好ましくは最大で+/−10%異なっている。
貴金属の分散は、エネルギー分散解析分光器を備えたLEO 430VP スキャニング エレクトロン マイクロスコープ(Bruker AXS社製)で決定される。
シェル厚みにわたる貴金属濃度を測定するために、触媒球体は半分にカットされ、アルミニウムのサンプルホルダーに付着され、そこでカーボンが蒸着される。
窒素フリー シリコンドリフト検出器(XFlash(登録商標) 410)を、マンガン K alpha ライン 125eVの分解能エネルギーで検出に使用した。
【0112】
実施例2
実施例1に規定されたように65.02gの触媒担体成形体「KA-0」を、1.568gのNa2PdCl4と0.367gのHAuCl4 を含んだ43.8mlの水溶液に細孔充填法(ore−filling method:incipient wetness method)に従い含浸し、
その中で担体はその細孔容積に対応した容積の溶液を含浸される。
含浸後、89.17gの0.35モルのNaOH溶液が触媒担体成形体に添加され、後者は22時間、室温で一晩放置される。
固定溶液を除去した後、このような処理をされて触媒前駆体は73.65 g の 10% NaH2PO2 溶液(Fluka)で二時間還元される。
還元溶液を排出したあと、触媒は蒸留水で8時間、室温で洗浄される。
水はCl残渣を除去するために常に入れ替える(流速(throughflow)=140rpm)。最終の洗浄溶液の伝導度は1.2μSであった。
【0113】
その後、触媒は流動床で90℃、50分間乾燥される。乾燥された球体は、2molのKOAc溶液27.29gと、18.55gの水を混合したものを担持させて室温で一時間放置する。最終的に、流動層で40分、90℃での乾燥が行われた。
【0114】
理論的な金属担持はPdの0.8重量%とAuの0.3重量%となるが、実験的に決定されるこの値は、ICP元素分析(Inductively Coupled Plasma)によってPdの0.77重量%とAuの0.27重量%となる
【0115】
シェル厚みは312μmとなった。
【0116】
比較例1
実施例2と同様に準備された触媒であって(Sud−Chemie AG社(Munich, Germany) KA−160)からなる担体を有するものであり表4に示す特性を有するものを、触媒担体成形体として使用した。
【0117】
【表4】

【0118】
実施例2とは違い、含浸は39.1 mlの水溶液1.568gのNa2PdCl4 と0.367gのHAuCを含む39.1 mlの水溶液で行われた。
【0119】
理論的な金属担持はPdの0.8重量%とAuの0.3重量%となるが、実験的に決定されるこの値は、ICP元素分析(Inductively Coupled Plasma)によってPdの0.78重量%とAuの0.27重量%となる
【0120】
シェル厚みは280μmとなった。
【0121】
実施例3
反応装置テスト
実施例2と比較例1の触媒球体の6gを、各例を、15%のHOAc、6 %の O2、中の39%の C2H4 N2から構成されるフィードガス550Nml/minに流動床チューブ反応装置に150℃、10バールで作用されるようにした。反応装置からの排出ガスをガスクロマトグラフィーで分析した。
【0122】
選択性(エチレンからVAMへ)は以下の式に従って計算される。
S(C2H4) = mole VAM / (mole VAM + mole CO2/2)
空間回収率(The space/time yield)はVAMg/触媒(リットル)/時間で得られる。
酸素置換は、(モル O2 in- モル O2 out)÷ モルO2 inで計算される。
【0123】
本発明の実施例2の触媒は選択性92.3%のS(C2H4) および空間回収率(ガスクロマトグラフィーによる決定)は615g VAM/触媒(リットル)/時間、酸素置換率36.5%を示した。
【0124】
比較例1の触媒は選択性91.0%のS(C2H4) および空間回収率(ガスクロマトグラフィーによる決定)は576gVAM/触媒(リットル)/時間、酸素置換率36.1%を示した。
【0125】
本発明の実施例2は、選択性もVAM合成における活性も先行技術の比較例1の触媒に比べて高いことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビニル酢酸モノマーの合成のためのシェル触媒であって、
天然層状珪酸塩、特に、酸処理されたか焼ベントナイトをベースとする多孔質触媒担体を含有し、
前記触媒担体は、パラジウム及び金を担持し且つ成形体として形成されてなり、
前記触媒担体は、130m2/g未満の比表面積を有していることを特徴とするシェル触媒。
【請求項2】
前記触媒担体が125m2/g未満の比表面積を有すること、好ましくは120m2/g未満の比表面積を有すること、より好ましくは100m2/g未満の比表面積を有すること、更に好ましくは80m2/g未満の比表面積を有すること、特に好ましくは65m2/g未満の比表面積を有することを特徴とする請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
前記触媒担体は、130〜40m2/gの比表面積を有し、好ましくは、128〜50m2/gの比表面積を有し、より好ましくは、126〜50m2/gの比表面積を有し、更に好ましくは125〜50m2/gの比表面積を有し、更により好ましくは120〜50m2/gの比表面積を有し、そして最も好ましくは100〜60m2/gの比表面積を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の触媒。
【請求項4】
前記触媒担体は、酸性度が1〜150μeq/g、好ましくは、酸性度が5〜130μeq/g、より好ましくは、酸性度が10〜100μeq/g、そして、特に好ましくは10〜60μeq/gであることを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の触媒。
【請求項5】
前記触媒担体は、平均孔径が8〜50nm、好ましくは10〜35nm、より好ましくは11〜30nmであることを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の触媒。
【請求項6】
前記触媒担体の硬度が20N以上、好ましくは30N以上、より好ましくは40N以上、更に好ましくは50N以上であることを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の触媒。
【請求項7】
前記触媒担体の重量に対する天然層状珪酸塩、特に、酸処理されたか焼ベントナイトの割合が、50重量%以上、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、更に好ましくは80重量%以上、更により好ましくは90重量%以上、そして最も好ましくは95重量%以上であることを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の触媒。
【請求項8】
前記触媒担体は、BJH法による全細孔容積が0.25〜0.7ml/g、好ましくは0.3〜0.6ml/g、より好ましくは0.35〜0.5mg/gであることを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の触媒。
【請求項9】
前記触媒担体の全細孔容積の少なくとも80%、好ましくは85%、より好ましくは90%が、メソ細孔とマクロ細孔であることを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の触媒。
【請求項10】
前記触媒担体は、カサ密度が0.3g/ml以上、好ましくは0.35g/ml以上、更に好ましくは0.35〜0.6g/mlであることを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の触媒。
【請求項11】
前記触媒担体に含まれる前記層状珪酸塩は、少なくとも65重量%、好ましくは少なくとも80重量%、より好ましくは95〜99.5重量%のSiO2を含有していることを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の触媒。
【請求項12】
前記触媒担体に含有されている層状珪酸塩は、AlO3を10重量%未満、好ましくは0.1〜3重量%、より好ましくは0.3〜1.0重量%含有している含有していることを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の触媒。
【請求項13】
前記触媒担体は、球状、円筒状、開口を有する円筒状、三葉状(trilobe)、リング状、星状、またはらせん状として、好ましくはうねりのあるらせん状(ribbed strand)またはらせん状に連なった星状(star strand)として形成されており、好ましくは球状に形成されていることを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の触媒。
【請求項14】
前記触媒担体は、直径が2mm以上、好ましくは3mm以上、より好ましくは4mm以上の球状に形成されていることを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の触媒。
【請求項15】
前記触媒担体は、Zr、Hf、Ti、Nb、Ta、W、Mg、Re、Y及びFeからなる群から選ばれた少なくとも1つの金属酸化物、好ましくはZrO2、HfO2又はFe2O3がドープされていることを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の触媒.
【請求項16】
前記触媒担体へ添加する酸化物の量が、0.01〜20重量%、好ましくは1.0〜10重量%、より好ましくは3〜8重量%であることを特徴とする請求項15に記載の触媒。
【請求項17】
前記触媒のシェルの厚みが、300μm未満であり、好ましくは200μm未満であり、より好ましくは150μm未満であり、更に好ましくは100μm未満であり、更により好ましくは80μm未満であることを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の触媒。
【請求項18】
前記触媒のシェルの厚みが、200〜2000μm、好ましくは250〜1800μm、より好ましくは300〜1500μm、更に好ましくは400〜1200μmであることを特徴とする前記請求項1から16のいずれかに記載のシェル触媒。
【請求項19】
貴金属の担持された触媒担体の重量に対して、前記Pdの含有量が0.6重量%から2.5重量%、好ましくは0.7〜2.3重量%、より好ましくは0.8〜2重量%であることを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の触媒。
【請求項20】
前記触媒のAu/Pdの原子比率が0〜1.2、好ましくは0.1〜1、より好ましくは0.3〜0.9、更に好ましくは0.4〜0.8であることを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の触媒。
【請求項21】
外殻と内殻の境界からそれぞれシェルの厚みの5%の距離にある前記シェルの厚みの90%にわたる領域において、この領域の平均貴金属濃度から最大±20%、好ましくは最大±15%、およびできれば+/−10%変化することを特徴とする何れか一項に記載の触媒。
【請求項22】
塩化物の含有量が250ppm未満、好ましくは150ppm未満であることを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の触媒。
【請求項23】
アルカリ金属酢酸塩、好ましくは酢酸カリウムを含有することを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の触媒。
【請求項24】
該触媒中の前記アルカリ金属酢酸塩の含有量が、0.1から0.7モル/リットルであることを特徴とする請求項23に記載の触媒。
【請求項25】
前記アルカリ金属/Pdの原子比率が、1〜12、好ましくは2〜10、より好ましくは4〜9であることを特徴とする請求項23又は24に記載の触媒。
【請求項26】
シェル触媒を製造する方法、特に上記請求項の何れか一項に記載のシェル触媒を製造する方法であって、
下記のステップを備えるシェル触媒を製造する方法、
(a)天然層状珪酸塩、特に酸処理されたか焼ベントナイトに基づいた多孔質触媒担体で、成形体として設計されてなるものであって、130m2/g未満の比表面積を有している触媒担体を供給するステップ、
(b) 前記触媒担体にPd前駆体化合物の溶液を添加するステップ、
(c) 前記触媒担体にAu前駆体化合物の溶液を添加するステップ、
(d) 前記Pd前駆体化合物のPd成分を金属へ変換するステップ、
(e) 前記Au前駆体化合物のAu成分を金属へ変換するステップ。
【請求項27】
前記PdおよびAu前駆体化合物が、これらの金属のハロゲン化合物(特に塩化物)、酸化物、硝酸塩、亜硝酸塩、蟻酸塩、プロピオン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、水酸化化合物、炭酸水素塩、アミノ錯体または有機錯体(例えば、トリフェニルリンホスフィン錯体またはアセチルアセトネート錯体)から選択されることを特徴とする請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記Pd前駆体化合物が、Pd(NH3)4(OH)2、Pd(NH3)4(OAc)2、H2PdCl4、Pd(NH3)4(HCO3)2、Pd(NH3)4(HPO4)、Pd(NH3)4Cl2、シュウ酸Pd(NH3)4 、Pd(NO3)2、Pd(NH3)4(NO3)2、K2Pd(OAc)2(OH)2、Pd(NH3)2(NO2)2、K2Pd(NO2)4、Na2Pd(NO2)4、Pd(OAc)2、PdCl2及びNa2PdCl4からなる群から選択されるものであることを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記Au前駆体化合物が、KAuO2、HAuCl4、KAu(NO2)4、AuCl3、NaAuCl4、KAu(OAc)3(OH)、HAu(NO3)4、NaAuO2、NMe4AuO2、RbAuO2、CsAuO2、NaAu(OAc)3(OH)、RbAu(OAc)3OH、CsAu(OAc)3OH、NMe4Au(OAc)3OH及びAu(OAc)3からなる群から選択されるものである特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記Pd前駆体化合物の溶液、Au前駆体化合物の溶液、或いは、前記Pd前駆体化合物とAu前駆体化合物を両方含む溶液を前記触媒担体に含浸させることにより、前記Pd前駆体化合物および前記Au前駆体化合物が、前記触媒担体に添加されることを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記触媒担体の流動床或いは流動層上にスプレーすることにより、好ましくは噴霧することにより、前記Pd前駆体化合物の溶液および前記Au前駆体化合物の溶液が触媒担体に添加されることを特徴とする請求項26〜30の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
上記請求項の何れか一項に記載の方法であって、
前記溶液が添加される間、前記触媒担体が加熱されることを特徴とする方法。
【請求項33】
上記請求項の何れか一項に記載の方法であって、下記のステップを備えることを特徴とする方法、
(a) Pd及び/又はAu前駆体化合物を含む第一溶液が供給されるステップ、
(b) Pd及び/又はAu前駆体化合物を含む第二溶液であって、前記第一溶液が前記第二溶液中の前駆体化合物の貴金属の析出を起こさせ、且つ逆も同様となる第二溶液が供給されるステップ、
(c) 前記第一および第二溶液が前記触媒担体に添加されるステップ。
【請求項34】
一の溶液の前駆体化合物が酸性であり、他の溶液の前駆体化合物が塩基性であることを特徴とする請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記触媒担体は、一旦Pd及び/又はAu前駆体化合物が添加されて、固定するステップに供されることを特徴とする上記請求項の何れか一項に記載の方法。
【請求項36】
シェル触媒、特に、上記請求項の何れか一項に記載のシェル触媒を製造する方法であって、
下記のステップを備える方法。
(a) 天然層状珪酸塩上、特に、酸処理されたか焼ベントナイト上に、粉状の多孔担体原料であって、PdおよびAu前駆体化合物又はPdおよびAu粒子が付着されている多孔担体原料を供給するステップ、
(b)これらが添加された多孔質担体原料を、シェルの形状に形成された担体構造物に添加するステップ、
(c)前記(b)のステップにより、原料添加された担体構造物をか焼するステップ、
(d)選択的に、前記Pd及びAu前駆体化合物のPd及びAu成分を金属の形に変換するステップ。
【請求項37】
上記請求項の何れか一項の触媒を、酸化触媒、水素化触媒/脱水素化触媒、水素化脱硫触媒、水素化脱酸素触媒、水素化脱窒素触媒、又はアルケニルアルカネートの合成、特に、ビニルアセテートモノマーの合成(特に、エチレンと酢酸をビニルアセテートモノマーとする気相酸化)に用いる触媒として使用する方法。

【公表番号】特表2010−527778(P2010−527778A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509741(P2010−509741)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004329
【国際公開番号】WO2008/145389
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(508131358)ズード−ケミー アーゲー (30)
【Fターム(参考)】