説明

WDM信号一括コヒーレント受信器及び方法

【課題】本発明は、波長チャネルを増設した場合であっても、受信器を追加する必要がなく、装置規模が大きくならないようなWDM信号一括コヒーレント受信器及びWDM信号一括コヒーレント受信方法の提供を目的とする。
【解決手段】本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信器は、複数の波長チャネルが多重化されたWDM信号光の総波長帯域にわたる波長掃引を行いながら出力する波長スイープ局発光生成部11と、WDM信号光と局発光とを合波する光合波部13と、光合波部13の合波した合波光を検波する光検波部14と、光検波部14からの出力信号を時間的に分離する時分割多重信号分離部18と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、WDM信号光をコヒーレント検波するWDM信号一括コヒーレント受信器及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ネットワークにおける伝送容量の拡大にあたり、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)技術の適用は有望である。コアネットワークにおいては、RZ−DQPSK(Differential Quadrature Phase−Shift−Keying)信号をWDMすることにより総容量1.6Tbit/s(40Gbit/s×40波)のシステムが既に実用化されている。アクセスネットワークにおいても、40〜100Gbit/sを狙いとしたアクセス方式の1つとして、WDM/TDM(Time Division Multiplexing)−PON(Passive Optical Network)(図1)などが検討されている。これは、波長チャネルの増設により、ラインレートを保ちつつシステム容量を拡大できるため、OLT154内のラインカードの段階的な追加により、帯域ニーズに応じた総システム容量の拡大が可能である(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
WDMネットワークでは、受信装置において光領域または電気領域で各信号成分を分離又は選択する必要がある。
各信号成分を分離する受信装置の構成例を図2及び図3に示す。図2に示す受信装置155は、アレイ導波路回折格子(AWG:Arrayed Waveguide Grating)や多層膜フィルタ等の波長分離部により各信号成分を分離する構成である。図3に示す受信装置156は、光スプリッタと中心透過波長が互いに異なる複数の波長フィルタとが接続された構成である。
各信号成分を選択する受信装置の構成例を図4に示す。図4に示す受信装置157は、BPF(Band Pass Filter)を用いて、WDM信号光をコヒーレント検波して生成した電気段の周波数多重(FDM:Frequency Division Multiplexing)信号から所望の信号成分を選択する構成も可能である(図4)。各コヒーレント受信器内の局発光の波長は、所望の信号成分を搬送する光キャリアの波長近傍に設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−103893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の受信装置を用いたWDMネットワークでは、波長チャネルを増設した際に、受信装置において受信器を追加する必要が生じ、装置規模が大きくなるという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、通信波長を増設した場合であっても、受信器を追加する必要がなく、装置規模が大きくならないようなWDM信号一括コヒーレント受信器及びWDM信号一括コヒーレント受信方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本願発明では、受信器に搭載するコヒーレント受信器の局発光素子に波長スイープ局発光素子を用い、追加した信号に対しても、波長スイープにより受信可能とすることで、受信器を追加することなく波長増設に対応可能とするものである。
【0008】
具体的には、n番目(n=1、2、・・・、N)の光キャリアがデータ#nを搬送するWDM信号光が入力され、出力光の波長が前記WDM信号光の総波長帯域以上の範囲を所定の繰り返し周波数で連続的に掃引する波長スイープ局発光生成部と、前記WDM信号光と前記波長スイープ局発光生成部が出力する局発光とを合波する光合波部と、前記光合波部の合波した合波光を検波する光検波部と、前記光検波部からの出力信号を時間的に分離する時分割多重信号分離部と、を備える。
【0009】
本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信器は、波長スイープ局発光生成部と、光合波部と、光検波部と、時分割多重信号分離部と、を備えるため、WDM信号光から各チャネルの信号を抽出することができる。ここで、スイープ範囲内に波長チャネルを増設すれば、受信器の変更なく、WDM信号光を一括コヒーレント検波することができる。このため、本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信器は、通信波長を増設した場合であっても、受信器の変更や追加をすることなく受信することができる。
【0010】
本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信器では、前記局発光の波長の繰り返し周期を1/F、n番目の波長成分のシンボルレートをBとすると、F>B(n=1、2、・・・、N)であることを特徴とする。
【0011】
本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信器では、前記WDM信号光と前記局発光の偏光状態が前記光合波部において一致するように、前記WDM信号光と前記局発光の少なくとも一方の偏光状態を調整する偏波調整部をさらに備えてもよい。
【0012】
この場合、本願発明のWDM伝送システムは、前記WDM信号光を出力するWDM信号送信器と、本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信器とが光ファイバを介して接続され、前記WDM信号送信器は、全波長成分の偏光状態が一致している前記WDM信号光を出力する。
または、本願発明のWDM伝送システムは、複数の光信号送信器と、光合波部と、本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信器とが光ファイバを介して接続され、前記光信号送信器は、波長がそれぞれ異なる信号光を出力し、前記光合波部は、前記複数の光信号送信器からの前記信号光を合波し、全波長成分の偏光状態が一致している前記WDM信号光を出力する。
本願発明のWDM伝送システムは、WDM信号送信器と、WDM信号一括コヒーレント受信器と、を備えるため、WDM信号光を伝送することができる。ここで、本願発明のWDM伝送システムは、WDM信号一括コヒーレント受信器を備えるため、通信波長を増設した場合であっても、受信器の変更や追加をすることなく受信することができる。
【0013】
本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信器では、前記WDM信号光の各波長成分が1シンボル時間内で異なった偏光状態をとるように偏波スクランブルする偏波スクランブラをさらに備えてもよい。
【0014】
この場合、本願発明のWDM伝送システムは、前記WDM信号光を出力するWDM信号送信器と、本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信器とが光ファイバを介して接続され、前記WDM信号送信器は、各波長成分が1シンボル時間内で異なった偏光状態をとるように偏波スクランブルされている前記WDM信号光を出力する。
または、本願発明のWDM伝送システムは、複数の光信号送信器と、光合波部と、本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信器とが光ファイバを介して接続され、前記光信号送信器は、波長がそれぞれ異なる信号光を出力し、前記光合波部は、前記複数の光信号送信器からの前記信号光を合波し、各波長成分が1シンボル時間内で異なった偏光状態をとるように偏波スクランブルされている前記WDM信号光を出力する。
本願発明のWDM伝送システムは、WDM信号送信器と、WDM信号一括コヒーレント受信器と、を備えるため、WDM信号光を伝送することができる。ここで、本願発明のWDM伝送システムは、WDM信号一括コヒーレント受信器を備えるため、通信波長を増設した場合であっても、受信器の変更や追加をすることなく受信することができる。
【0015】
本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信器では、前記WDM信号光と前記局発光とをそれぞれ2つに分離する光分離部を前記光合波部の前段に備え、前記光合波部は、分離された前記WDM信号光の一方と前記局発光の一方、前記WDM信号光のもう一方と前記局発光のもう一方とをそれぞれ合波し、前記WDM信号光と前記局発光の少なくとも一方は、偏光軸の相対角度が90°である2つの直線偏光成分に分離されていてもよい。
【0016】
この場合、本願発明のWDM伝送システムは、前記WDM信号光を出力するWDM信号送信器と、本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信器とが光ファイバを介して接続されている。
または、本願発明のWDM伝送システムは、複数の光信号送信器と、光合波部と、本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信器とが光ファイバを介して接続され、前記光信号送信器は、波長がそれぞれ異なる信号光を出力し、前記光合波部は、前記複数の光信号送信器からの前記信号光を合波して前記WDM信号光を出力する。
本願発明のWDM伝送システムは、WDM信号送信器と、WDM信号一括コヒーレント受信器と、を備えるため、WDM信号光を伝送することができる。ここで、本願発明のWDM伝送システムは、WDM信号一括コヒーレント受信器を備えるため、通信波長を増設した場合であっても、受信器の変更や追加をすることなく受信することができる。
【0017】
具体的には、本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信方法は、n番目(n=1、2、・・・、N)の光キャリアがデータ#nを搬送するWDM信号光が入力され、出力光の波長が前記WDM信号光の総波長帯域以上の範囲を所定の繰り返し周波数で連続的に掃引し、前記WDM信号光と前記波長スイープ局発光生成部が出力する局発光とを合波し、当該合波光を検波する光検波手順と、光検波部からの出力信号を時間的に分離する時分割多重信号分離手順と、を有する。
【0018】
本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信方法は、光検波手順と、時分割多重信号分離手順と、を有するため、WDM信号光から各チャネルの信号を抽出することができる。ここで、スイープ範囲内に波長チャネルを増設すれば、受信器の変更なくWDM信号光を一括コヒーレント検波することができる。このため、本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信方法は、通信波長を増設した場合であっても、受信器の変更や追加をすることなく受信することができる。
【0019】
本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信方法では、前記局発光の波長の繰り返し周期を1/F、n番目の波長成分のシンボルレートをBとすると、F>B(n=1、2、・・・、N)であることを特徴とする。
【0020】
本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信方法では、前記光検波手順において、前記WDM信号光と前記局発光の偏光状態が一致するように、前記WDM信号光と前記局発光の少なくとも一方の偏光状態を調整した後に、前記WDM信号光と前記局発光とを合波してもよい。
【0021】
この場合、本願発明のWDM伝送方法は、前記WDM信号光を出力する送信手順と、前記送信手順で出力した前記WDM信号光を、本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信方法を用いて受信する受信手順と、を順に有し、前記送信手順において、全波長成分の偏光状態が一致する前記WDM信号光を出力する。
または、本願発明のWDM伝送方法は、前記WDM信号光を出力する送信手順と、前記送信手順で出力した前記WDM信号光を、本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信方法を用いて受信する受信手順と、を順に有し、前記送信手順において、波長がそれぞれ異なる信号光を、全波長成分の偏光状態が一致するように合波し、全波長成分の偏光状態が一致する前記WDM信号光を出力する。
本願発明のWDM伝送方法は、送信手順と、受信手順と、を順に有するため、WDM信号光を伝送することができる。ここで、本願発明のWDM伝送方法は、受信手順においてWDM信号一括コヒーレント受信方法を用いるため、通信波長を増設した場合であっても、受信器の変更や追加をすることなく受信することができる。
【0022】
本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信方法では、前記光検波手順において、前記WDM信号光の各波長成分が1シンボル時間内で異なった偏光状態をとるように偏波スクランブルした後に、前記WDM信号光と前記局発光とを合波してもよい。
【0023】
この場合、本願発明のWDM伝送方法は、前記WDM信号光を出力する送信手順と、前記送信手順で出力した前記WDM信号光を、本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信方法を用いて受信する受信手順と、を順に有し、前記送信手順において、各波長成分が1シンボル時間内で異なった偏光状態をとるように偏波スクランブルされている前記WDM信号光を出力する。
または、本願発明のWDM伝送方法は、前記WDM信号光を出力する送信手順と、前記送信手順で出力した前記WDM信号光を、本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信方法を用いて受信する受信手順と、を順に有し、前記送信手順において、波長がそれぞれ異なる信号光を合波し、各波長成分が1シンボル時間内で異なった偏光状態をとるように偏波スクランブルされている前記WDM信号光を出力する。
本願発明のWDM伝送方法は、送信手順と、受信手順と、を順に有するため、WDM信号光を伝送することができる。ここで、本願発明のWDM伝送方法は、受信手順においてWDM信号一括コヒーレント受信方法を用いるため、通信波長を増設した場合であっても、受信器の変更や追加をすることなく受信することができる。
【0024】
本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信方法では、前記光検波手順において、前記WDM信号光及び前記局発光をそれぞれ2つに分離し、分離された前記WDM信号光の一方と前記局発光の一方、前記WDM信号光の他方と前記局発光の他方とをそれぞれ合波し、前記WDM信号光及び前記局発光の少なくとも一方は偏光軸の相対角度が90°である2つの直線偏光成分になるように分離してもよい。
【0025】
この場合、本願発明のWDM伝送方法は、前記WDM信号光を出力する送信手順と、前記送信手順で出力した前記WDM信号光を、本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信方法を用いて受信する受信手順と、を順に有する。
または、本願発明のWDM伝送方法は、前記WDM信号光を出力する送信手順と、前記送信手順で出力した前記WDM信号光を、本願発明のWDM信号一括コヒーレント受信方法を用いて受信する受信手順と、を順に有し、前記送信手順において、光信号送信器から波長がそれぞれ異なる信号光を出力し、前記信号光を合波して前記WDM信号光を出力する。
本願発明のWDM伝送方法は、送信手順と、受信手順と、を順に有するため、WDM信号光を伝送することができる。ここで、本願発明のWDM伝送方法は、受信手順においてWDM信号一括コヒーレント受信方法を用いるため、通信波長を増設した場合であっても、受信器の変更や追加をすることなく受信することができる。
【0026】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のWDM信号一括コヒーレント受信器及びWDM信号一括コヒーレント受信方法は、通信波長を増設した場合であっても、受信器を追加することなく受信することができる。したがって、通信波長を増設した場合であっても、装置規模が大きくならないWDM信号一括コヒーレント受信器及びWDM信号一括コヒーレント受信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来のWDM信号受信器を用いた通信システムの構成例を示す。
【図2】従来のWDM信号受信器の第1例を示す。
【図3】従来のWDM信号受信器の第2例を示す。
【図4】従来のWDM信号受信器の第3例を示す。
【図5】本実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信器を用いた通信システムの一例を示す。
【図6】第2の実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信器の第1例を示す。
【図7】本実施形態に係る波長スイープ局発光の第1例である。
【図8】本実施形態に係る波長スイープ局発光の第2例である。
【図9】本実施形態に係る時間軸上に多重された中間周波帯時分割多重信号の一例である。
【図10】本実施形態に係る時分割多重信号分離部18の構成の一例を示す。
【図11】第2の実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信器の第2例を示す。
【図12】第2の実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信器の第3例を示す。
【図13】第2の実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信器の第4例を示す。
【図14】第3の実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信器の一例を示す。
【図15】第4の実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信器の一例を示す。
【図16】第5の実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信器の第1例を示す。
【図17】第5の実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信器の第2例を示す。
【図18】第5の実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信器の第3例を示す。
【図19】第5の実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信器の第4例を示す。
【図20】第6の実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信器の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施の例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0030】
(第1の実施形態)
図5は、第1の実施形態に係る通信システムの一例を示す。本実施形態に係る通信システムは、複数のONU51−1〜51−NとOLTとの間で波長多重信号を送受信するPON構成となっている。本実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信器54は、OLTに設置される。ONU51−1〜51−Nは光信号送信器として機能し、カプラ52は、光信号送信器の後段に接続される光合波部として機能する。WDM信号送信器は、例えば、ONU51−1〜51−N及びカプラ52を備える。
【0031】
本実施形態に係る通信方法は、送信手順と、受信手順と、を順に有する。受信手順において、本実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信方法を実行する。送信手順では、WDM信号光を出力する。例えば、ONU51−1〜51−Nは、それぞれ波長λ〜λの異なるチャネルの光信号を送信する。カプラ52は、ONU51−1〜51−Nからの光信号を合波する。これにより、WDM信号光が生成される。受信手順では、送信手順で出力したWDM信号光を、WDM信号一括コヒーレント受信方法を用いて受信する。WDM信号一括コヒーレント受信方法では、WDM信号光がWDM信号一括コヒーレント受信器54に入力され、WDM信号一括コヒーレント受信器54がWDM信号を受信する。
【0032】
WDM信号一括コヒーレント受信器54は、波長スイープ局発光生成部11と、光合波部13と、光検波部14と、時分割多重信号分離部18と、を備える。WDM信号一括コヒーレント受信方法は、光検波手順と、時分割多重信号分離手順と、を順に有する。
【0033】
光検波手順では、WDM信号光の総波長帯域にわたる波長掃引を行いながら出力し、WDM信号光と局発光とを合波し、当該合波光を検波する。例えば、波長スイープ局発光生成部11は、複数の波長チャネルが多重化されたWDM信号の局発光を、WDM信号光の1シンボル時間内に、WDM信号光の総波長帯域である波長λ〜λにわたる波長掃引を行いながら出力する。光合波部13は、WDM信号光と局発光とを合波する。光検波部14は、光合波部13の合波した合波光を検波する。
【0034】
時分割多重信号分離手順では、時分割多重信号分離部18は、波長掃引に同期して、光検波部からの出力信号を時間的に分離する。これにより、各チャネルのデータ#1〜#Nを受信することができる。
【0035】
本実施形態に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器54では、単一の受信器でWDM信号光の全波長成分を一括受信するため、従来のWDM信号受信装置においてWDMネットワークの伝送容量拡大の際に必要であった増設波長チャネル数の受信器の追加が不要である。よって、柔軟にシステム容量を拡大することが可能となる。
【0036】
また、局発光波長に対する要求条件は、波長掃引範囲がWDM信号光の総波長帯域以上であることであり、コヒーレント受信器ごとに厳密な波長設定が要求される図4のWDM信号受信装置に比べ、要求条件が緩和される。
【0037】
(第2の実施形態)
本実施形態では、送信手順において、全波長成分の偏光状態が一致するWDM信号光を出力する。例えば、図5に示すONU51−1〜51−Nは、波長がそれぞれ異なる信号光を出力する。図5に示すカプラ52は、複数の光信号送信器からの信号光を合波し、全波長成分の偏光状態が一致しているWDM信号光を出力する。
【0038】
図6は、本実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信器54の構成例を示すブロック図である。本実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信器54は、波長スイープ局発光生成部11、偏波調整部12、光合波部13、光検波部14、帯域濾波部15、検波部16、低域濾波部17、時分割多重信号分離部18、積分部19−1〜19−Nを備え、波長が所定の波長範囲を一定の繰り返し周期1/F[s]で連続的に掃引する局発光を用いて、受信器への入力信号光をヘテロダイン検波する。
【0039】
WDM信号一括コヒーレント受信器54へは、n番目(n=1、2、・・・、N)の光キャリアがデータ#nを搬送するWDM信号光が入力される。ここで、WDM信号光の全波長成分の偏光状態は一致している。
【0040】
局発光の波長掃引範囲はWDM信号光の総波長帯域以上であり、WDM信号光のn番目の波長成分のシンボルレートをBn[Symbol/s]とすると、F/Bnは自然数であり、F>B[Hz](n=1、2、・・・、N)であることを特徴とする。図7は、全波長成分のシンボルレートが等しい場合であるが、波長成分ごとにシンボルレートが異なっていてもよい。また、波長成分間でシンボル同期がとれていなくてもよい。
【0041】
波長スイープ局発光生成部11としては、例えば、半導体レーザ(LD:Laser Diode)を直接変調した際に起こる周波数チャーピングを利用し、LDを繰り返し周波数F[Hz]ののこぎり波(図7)や正弦波(図8)で直接変調する構成がこれにあたる。局発光強度の時間変動が許容範囲以上である場合、利得が飽和した半導体光アンプ(SOA:Semiconductor Opitcal Amplifier)やエルビウム添加光ファイバアンプ(EDFA:Er−Doped Fiber Amplifer)などを波長スイープ局発光生成部11の出力側に配置し、光強度の時間変動を抑圧することが有効である。
【0042】
偏波調整部12は、WDM信号光と局発光の偏光状態が一致するように、WDM信号光と局発光の少なくとも一方の偏光状態を調整する。図6は局発光の偏光状態をWDM信号光にトラッキングさせる構成であるが、WDM信号光の偏光状態を調整する構成や、両光の偏光状態を調整する構成も可能である。
【0043】
光合波部13は、WDM信号光と局発光を合波して出力する。光合波部13としては、平面光波回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)や光ファイバで制作した光カプラなどがこれにあたる。
【0044】
光検波部14は、光合波部13からの合波光を2乗検波して、データ#1〜#Nが周波数軸上に多重された周波数多重信号を出力する。図6は、光合波部13の2出力がバランス・フォトダイオード(PD:Photo−Diode)に入力される構成であるが、光合波部13の2出力のうちの一方をpin−PDやAPD(Avalanche Photo−Diode)を用いて検波する構成も可能である。
【0045】
帯域濾波部15は、いわゆるBPF(Band Pass Filter)であり、光検波部14からの周波数多重信号を構成する各周波数成分のうち、局発光波長と所定の周波数差である光キャリアに搬送されるデータを含む中間周波(IF:Intermediate Frequency)信号を選択的に透過する。局発光の波長がWDM信号光の総波長帯域を掃引するため、どのデータを含むIF信号が帯域濾波部15の透過帯域内に落ち込んでくるかが時間的に変化し、帯域濾波部15の出力はデータ#1〜#Nが時間軸上に多重されたIF−TDM(Time Division Multiplexing)信号となる。局発光の波長が図7のように変化する場合、図9のようなIF−TDM信号が得られる。
【0046】
帯域濾波部15からのIF−TDM信号を検波部16で検波した後、低域濾波部17で低域濾波することにより、低域濾波部17からベースバンドTDM信号が出力される。低域濾波部17は、いわゆるLPF(Low Pass Filter)である。検波部16では、WDM信号光の各波長成分が振幅変調されている場合、包絡線検波または同期検波を行う。また、位相変調されている場合は、同期検波または遅延検波を行う。これにより、データ#1〜#Nが時間軸上に多重されたベースバンドTDM信号が得られる。
【0047】
時分割多重信号分離部18は、低域濾波部17からのベースバンドTDM信号をデータ成分ごとに分離し、N個のデータ列#1〜#Nを生成する。ベースバンドTDM信号を、波長掃引に同期した1/F[s]間隔でゲーティングすることにより所定のデータ成分のみを含むデータ列が生成され、ゲーティング位置の時間シフトにより抽出されるデータ成分が変更される。
【0048】
時分割多重信号分離部18の構成例を図10に示す。ベースバンドTDM信号に1/F[s]間隔のパルスを乗ずることで、パルス位置と重なるデータ成分を抽出する構成である。各乗算器へ入力するパルスに時間差n×ΔT[s](ただし、nは1以上N以下の任意の整数。)を与えることで、抽出されるデータ成分が変更される。n番目の積分部は、データ列#nを1/Bn[s]に渡って積分する。積分部19−1〜19−Nとしては、透過帯域がBn[Hz]であるLPFなどがこれにあたる。
【0049】
図6は、光検波部14以降をアナログ電気回路で構成しているが、図11〜図13のように、アナログ信号をディジタル信号に変換するADC21(Analog/Digital Converter)とディジタル信号処理(DSP:Digital Signal Processing)回路を縦列に接続し、ADC21以降の動作をDSP回路で実現することも可能である。
【0050】
例えば、図11に示すWDM信号一括コヒーレント受信器54の第2例では、図6に示す光検波部14と帯域濾波部15の間にADC21を備える。この場合、帯域濾波部15、検波部16、低域濾波部17、時分割多重信号分離部18及び積分部19−1〜19−NにDSP回路を用いることができる。
【0051】
図12に示すWDM信号一括コヒーレント受信器54の第3例では、図6に示す帯域濾波部15と検波部16の間にADC21を備える。この場合、検波部16、低域濾波部17、時分割多重信号分離部18及び積分部19−1〜19−NにDSP回路を用いることができる。
【0052】
図13に示すWDM信号一括コヒーレント受信器54の第4例では、図6に示す低域濾波部17と時分割多重信号分離部18の間にADC21を備える。この場合、時分割多重信号分離部18及び積分部19−1〜19−NにDSP回路を用いることができる。
【0053】
本実施形態に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器54では、単一の受信器でWDM信号光の全波長成分を一括受信するため、従来のWDM信号受信装置においてWDMネットワークの伝送容量拡大の際に必要であった増設波長チャネル数の受信器の追加が不要である。よって、柔軟にシステム容量を拡大することが可能となる。
【0054】
更には、局発光波長に対する要求条件は、波長掃引範囲がWDM信号光の総波長帯域以上であることであり、コヒーレント受信器ごとに厳密な波長設定が要求される図4のWDM信号受信装置に比べ、要求条件が緩和される。
【0055】
(第3の実施形態)
図14に、第3の実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信器の第1例を示す。第3の実施形態におけるWDM信号一括コヒーレント受信器54の第1例は、第2の実施形態に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器54において、時分割多重信号分離部18が検波部16の前に配置され、検波部16、低域濾波部17、積分部19がWDM信号光の波長成分の数だけ並列に配置された構成である。WDM信号一括コヒーレント受信器54へ入力されるWDM信号光の全波長成分の偏光状態は一致している。
【0056】
時分割多重信号分離部18は、データ#1〜#Nが時間軸上で多重されたIF−TDM信号をデータ成分ごとに分離し、N個のIFデータ列#1〜#Nを生成する。IF−TDM信号を、波長掃引に同期した1/F[s]間隔でゲーティングすることにより所定のデータ成分のみを含むIFデータ列が生成され、ゲーティング位置の時間シフトにより抽出されるデータ成分が変更される。
【0057】
時分割多重信号分離部18としては、例えば、第2の実施形態中の図10の構成がこれにあたる。IF−TDM信号に1/F[s]間隔のパルスを乗ずることで、パルス位置と重なるデータ成分を抽出する構成である。各乗算器へ入力するパルスに時間差n×ΔT[s]を与えることで、抽出されるデータ成分が変更される。
【0058】
各検波部16−1〜16−Nにおいて、時分割多重信号分離部18からのIFデータ列をチャネルごとに検波する。そして、各低域濾波部17−1〜17−NがIFデータ列をチャネルごとに低域濾波することによりベースバンドのデータ列が出力される。WDM信号光の各波長成分が振幅変調されている場合、検波部16−1〜16−Nは、包絡線検波または同期検波を行う。また、位相変調されている場合、検波部16−1〜16−Nは、同期検波または遅延検波を行う。
【0059】
1以上N以下の任意のn番目の積分部19−nは、ベースバンドのデータ列#nを1/Bn[s]に渡って積分する。積分部19−nとしては、透過帯域がBn[Hz]であるLPFなどがこれにあたる。検波部16−nの後段の低域濾波部17−nの透過帯域をBn[Hz]とすることにより、積分部19−nを不要化することも可能である。
【0060】
図14は、光検波部14以降をアナログ電気回路で構成しているが、ADCを配置し、ADC以降の動作をADCと縦列に接続したDSP回路を用いて実現することも可能である。
【0061】
本実施形態に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器54では、単一の受信器でWDM信号光の全波長成分を一括受信するため、従来のWDM信号受信装置においてWDMネットワークの伝送容量拡大の際に必要であった増設波長チャネル数の受信器の追加が不要である。よって、柔軟にシステム容量を拡大することが可能となる。
【0062】
更には、局発光波長に対する要求条件は、波長掃引範囲がWDM信号光の総波長帯域以上であることであり、コヒーレント受信器ごとに厳密な波長設定が要求される図4のWDM信号受信装置に比べ、要求条件が緩和される。
【0063】
(第4の実施形態)
図15に、第4の実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信器の第1例を示す。第4の実施形態におけるWDM信号一括コヒーレント受信器54の第1例は、第3の実施形態に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器54において、時分割多重信号分離部18が帯域濾波部15の前に配置され、帯域濾波部15、検波部16、低域濾波部17、積分部19がWDM信号光の波長成分の数だけ並列に配置された構成である。WDM信号一括コヒーレント受信器54へ入力されるWDM信号光の全波長成分の偏光状態は一致している。
【0064】
時分割多重信号分離部18としては、例えば、第2の実施形態中の図10の構成がこれにあたる。光検波部からの出力信号に1/F[s]間隔のパルスを乗ずることで、パルス位置と重なるデータ成分を抽出する構成である。各乗算器へ入力するパルスに時間差n×ΔT[s]を与えることで、抽出されるデータ成分が変更される。
【0065】
帯域濾波部15−1〜15−Nにおいて、時分割多重信号分離部18からの周波数多重信号を構成する各周波数成分のうち、局発光波長と所定の周波数差である光キャリアに搬送されるデータを含む中間周波信号を選択的に透過する。
【0066】
各検波部16−1〜16−Nにおいて、帯域濾波部15からのIFデータ列をチャネルごとに検波する。そして、各低域濾波部17−1〜17−NがIFデータ列をチャネルごとに低域濾波することによりベースバンドのデータ列が出力される。WDM信号光の各波長成分が振幅変調されている場合、検波部16−1〜16−Nは、包絡線検波または同期検波を行う。また、位相変調されている場合、検波部16−1〜16−Nは、同期検波または遅延検波を行う。
【0067】
1以上N以下の任意のn番目の積分部19−nは、ベースバンドのデータ列#nを1/Bn[s]に渡って積分する。積分部19−nとしては、透過帯域がBn[Hz]であるLPFなどがこれにあたる。検波部16−nの後段の低域濾波部17−nの透過帯域をBn[Hz]とすることにより、積分部19−nを不要化することも可能である。
【0068】
図15は、光検波部14以降をアナログ電気回路で構成しているが、ADCを配置し、ADC以降の動作をADCと縦列に接続したDSP回路を用いて実現することも可能である。
【0069】
本実施形態に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器54では、単一の受信器でWDM信号光の全波長成分を一括受信するため、従来のWDM信号受信装置においてWDMネットワークの伝送容量拡大の際に必要であった増設波長チャネル数の受信器の追加が不要である。よって、柔軟にシステム容量を拡大することが可能となる。
【0070】
また、波長フィルタを用いないために隣接波長間隔が波長フィルタの特性により制限されず、高い周波数利用効率を実現できる。
【0071】
更には、局発光波長に対する要求条件は、波長掃引範囲がWDM信号光の総波長帯域以上であることであり、コヒーレント受信器ごとに厳密な波長設定が要求される図4のWDM信号受信装置に比べ、要求条件が緩和される。
【0072】
(第5の実施形態)
図16及び図17は、それぞれ第5の実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信器の第1例及び第2例を示す。第5の実施形態におけるWDM信号一括コヒーレント受信器54は、第2又は第3の実施形態に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器54に偏波ダイバーシティを適用する。第2及び第3の実施形態ではWDM信号光の全波長成分の偏光状態が一致していることが要求されたが、第5の実施形態のWDM信号一括コヒーレント受信器54は、偏波ダイバーシティの適用により、各波長成分の偏光状態は必ずしも一致していなくてもよく、受信器内での偏波調整を不要化することができる。
【0073】
図16及び図17に示すWDM信号一括コヒーレント受信器の第1例及び第2例では、WDM信号光と局発光はそれぞれ2つに分岐され、分岐されたWDM信号光の一方と局発光の一方、WDM信号光のもう一方と局発光のもう一方とがそれぞれ合波される。ここで、分岐される際に、WDM信号光と局発光のうち、少なくとも一方は、偏波分離部により偏光軸の相対角度が90°である2つの直線偏光成分に分離される。偏波分離部として偏波ビームスプリッタ(PBS:Polarization Beam Splitter)を用い、入力光の偏光状態をPBSの偏光面に対して45°傾いた直線偏光に調整することで、入力光は、偏光軸の相対角度が90°であり光強度が等しい2つの直線偏光成分に分離される。PBSへの入力光の偏光状態は円偏光であってもよい。
【0074】
例えば、図16及び図17に示すWDM信号一括コヒーレント受信器の第1例及び第2例では、WDM信号光は光分岐部23Sを用いて2つに分岐され、局発光は偏波分離部22Lを用いてx軸偏光成分とy軸偏光成分に分離される。光合波部13xは、光分岐部23Sからの一方のWDM信号光と偏波分離部22Lからのx軸偏光成分の局発光を合波する。光合波部13yは、光分岐部23Sからの一方のWDM信号光と偏波分離部22Lからのy軸偏光成分の局発光を合波する。
【0075】
なお、図16及び図17は局発光が偏波分離されるのに対してWDM信号光はパワー分岐される構成であるが、WDM信号光のみを偏波分離する構成(図18)、両光を偏波分離する構成(図19)も可能である。
【0076】
例えば、図18に示すWDM信号一括コヒーレント受信器の第3例では、WDM信号光は偏波分離部22Sを用いてx軸偏光成分とy軸偏光成分に分離され、局発光は光分岐部23Lを用いて2つに分岐される。光合波部13xは、偏波分離部22Sからのx軸偏光成分のWDM信号光と光分岐部23Lからの一方の局発光を合波する。光合波部13yは、偏波分離部22Sからのy軸偏光成分のWDM信号光と光分岐部23Lからの他方の局発光を合波する。
【0077】
例えば図19に示すWDM信号一括コヒーレント受信器の第4例では、WDM信号光は偏波分離部22Sを用いてx軸偏光成分とy軸偏光成分に分離され、局発光は偏波分離部22Lを用いてx軸偏光成分とy軸偏光成分に分離される。光合波部13xは、偏波分離部22Sからのx軸偏光成分のWDM信号光と偏波分離部22Lからのx軸偏光成分の局発光を合波する。光合波部13yは、偏波分離部22Sからのy軸偏光成分のWDM信号光と偏波分離部22Lからのy軸偏光成分の局発光を合波する。
【0078】
図16〜図19に示す構成の場合、光合波部13x及び13yの出力は、光検波部14x及び14yにてそれぞれ検波され、データ#1〜#Nが周波数軸上に多重された周波数多重信号を出力する。ここで、偏波分離部22S又は22Lからの2つの直線偏光成分の偏光軸をそれぞれx、y軸とすると、x軸偏光成分が入力された光検波部14xではWDM信号光と局発光のx軸偏光成分同士が干渉し、y軸偏光成分が入力された光検波部14yではy軸偏光成分同士が干渉する。図16〜図19は、光合波部13x及び13yの2出力がバランスPDに入力される構成であるが、光合波部13x及び13yの2出力のうちの一方をpin−PDやAPDを用いて検波する構成も可能である。
【0079】
光検波部14x及び14y以降の構成および動作は、第2又は第3の実施形態に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器と同様である。WDM信号光と局発光のx軸偏光成分同士が干渉する光検波部14xにて生成された周波数多重信号からデータ列#n_xが復調される。また、もう一方の光検波部14yにて生成された周波数多重信号からデータ列#n_yが生成される。データ列#n_xとデータ列#n_yを合わせることで、WDM信号光の偏光状態によらず、WDM信号光の各キャリアが搬送する各データを復調可能である。
【0080】
図16〜図19は、光検波部14x及び14y以降をアナログ電気回路で構成しているが、第2又は第3の実施形態に記載のWDM信号一括コヒーレント受信装置54と同様、ADCを配置し、ADC以降の動作をADCと縦列に接続したDSP回路を用いて実現することも可能である。
【0081】
本実施形態に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器54では、単一の受信器でWDM信号光の全波長成分を一括受信するため、従来のWDM信号受信装置においてWDMネットワークの伝送容量拡大の際に必要であった増設波長チャネル数の受信器の追加が不要である。よって、柔軟にシステム容量を拡大することが可能となる。
【0082】
更には、局発光波長に対する要求条件は、波長掃引範囲がWDM信号光の総波長帯域以上であることであり、コヒーレント受信器ごとに厳密な波長設定が要求される図4のWDM信号受信装置に比べ、要求条件が緩和される。
【0083】
(第6の実施形態)
本実施形態では、送信手順において、各波長成分が1シンボル時間内で異なった偏光状態をとるように偏波スクランブルされているWDM信号光を出力する。例えば、図5に示すONU51−1〜51−Nは、波長がそれぞれ異なる信号光を出力する。図5に示すカプラ52は、複数の光信号送信器からの信号光を合波し、各波長成分が1シンボル時間内で異なった偏光状態をとるように偏波スクランブルされているWDM信号光を出力する。
【0084】
図20は、第6の実施形態に係るWDM信号一括コヒーレント受信器の一例を示す。第6の実施形態におけるWDM信号一括コヒーレント受信器54は偏波スクランブラ24を備える。偏波スクランブラ24は、WDM信号光の各波長成分が1シンボル時間内で異なった偏光状態をとるように偏波スクランブルする。
【0085】
偏波スクランブラ24の適用により、第2及び第3の実施形態に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器において必要であった偏波調整を不要化することができる。第2及び第3の実施形態では、WDM信号光の全波長成分の偏光状態が一致していることが要求されたが、本実施形態においては、各波長成分の偏光状態は必ずしも一致していなくてもよい。
【0086】
本実施形態に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器54では、単一の受信器でWDM信号光の全波長成分を一括受信するため、従来のWDM信号受信装置においてWDMネットワークの伝送容量拡大の際に必要であった増設波長チャネル数の受信器の追加が不要である。よって、柔軟にシステム容量を拡大することが可能となる。
【0087】
更には、局発光波長に対する要求条件は、波長掃引範囲がWDM信号光の総波長帯域以上であることであり、コヒーレント受信器ごとに厳密な波長設定が要求される図4のWDM信号受信装置に比べ、要求条件が緩和される。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0089】
11:波長スイープ局発光生成部
12:偏波調整部
13、13x、13y:光合波部
14、14x、14y:光検波部
15:帯域濾波部
16:検波部
17:低域濾波部
18:時分割多重信号分離部
19:積分部
21:ADC
22L、22S:偏波分離部
23L、23S:光分岐部
24:偏波スクランブラ
51−1〜51−N:ONU
52、152:カプラ
53:波長分離部
54:WDM信号一括コヒーレント受信器
154:OLT
155、156、157:受信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
n番目(n=1、2、・・・、N)の光キャリアがデータ#nを搬送するWDM(Wavelength Division Multiplexing)信号光が入力され、出力光の波長が前記WDM信号光の総波長帯域以上の範囲を所定の繰り返し周波数で連続的に掃引する波長スイープ局発光生成部と、
前記WDM信号光と前記波長スイープ局発光生成部が出力する局発光とを合波する光合波部と、
前記光合波部の合波した合波光を検波する光検波部と、
前記光検波部からの出力信号を時間的に分離する時分割多重信号分離部と、
を備えるWDM信号一括コヒーレント受信器。
【請求項2】
前記局発光の波長の繰り返し周期を1/F、n番目の波長成分のシンボルレートをBとすると、F>B(n=1、2、・・・、N)であることを特徴とする請求項1に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器。
【請求項3】
前記WDM信号光と前記局発光の偏光状態が前記光合波部において一致するように、前記WDM信号光と前記局発光の少なくとも一方の偏光状態を調整する偏波調整部を
さらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器。
【請求項4】
前記WDM信号光の各波長成分が1シンボル時間内で異なった偏光状態をとるように偏波スクランブルする偏波スクランブラを
さらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器。
【請求項5】
前記WDM信号光と前記局発光とをそれぞれ2つに分離する光分離部を前記光合波部の前段に備え、
前記光合波部は、分離された前記WDM信号光の一方と前記局発光の一方、前記WDM信号光のもう一方と前記局発光のもう一方とをそれぞれ合波し、
前記WDM信号光と前記局発光の少なくとも一方は、偏光軸の相対角度が90°である2つの直線偏光成分に分離されることを特徴とする請求項1又は2に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器。
【請求項6】
前記WDM信号光を出力するWDM信号送信器と、請求項3に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器とが光ファイバを介して接続され、
前記WDM信号送信器は、全波長成分の偏光状態が一致している前記WDM信号光を出力することを特徴とするWDM伝送システム。
【請求項7】
複数の光信号送信器と、光合波部と、請求項3に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器とが光ファイバを介して接続され、
前記光信号送信器は、波長がそれぞれ異なる信号光を出力し、
前記光合波部は、前記複数の光信号送信器からの前記信号光を合波し、全波長成分の偏光状態が一致している前記WDM信号光を出力することを特徴とするWDM伝送システム。
【請求項8】
前記WDM信号光を出力するWDM信号送信器と、請求項4に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器とが光ファイバを介して接続され、
前記WDM信号送信器は、各波長成分が1シンボル時間内で異なった偏光状態をとるように偏波スクランブルされている前記WDM信号光を出力することを特徴とするWDM伝送システム。
【請求項9】
複数の光信号送信器と、光合波部と、請求項4に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器とが光ファイバを介して接続され、
前記光信号送信器は、波長がそれぞれ異なる信号光を出力し、
前記光合波部は、前記複数の光信号送信器からの前記信号光を合波し、各波長成分が1シンボル時間内で異なった偏光状態をとるように偏波スクランブルされている前記WDM信号光を出力することを特徴とするWDM伝送システム。
【請求項10】
前記WDM信号光を出力するWDM信号送信器と、請求項5に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器とが光ファイバを介して接続されたことを特徴とするWDM伝送システム。
【請求項11】
複数の光信号送信器と、光合波部と、請求項5に記載のWDM信号一括コヒーレント受信器とが光ファイバを介して接続され、
前記光信号送信器は、波長がそれぞれ異なる信号光を出力し、
前記光合波部は、前記複数の光信号送信器からの前記信号光を合波して前記WDM信号光を出力することを特徴とするWDM伝送システム。
【請求項12】
n番目(n=1、2、・・・、N)の光キャリアがデータ#nを搬送するWDM信号光が入力され、出力光の波長が前記WDM信号光の総波長帯域以上の範囲を所定の繰り返し周波数で連続的に掃引し、前記WDM信号光と前記波長スイープ局発光生成部が出力する局発光とを合波し、当該合波光を検波する光検波手順と、
光検波部からの出力信号を時間的に分離する時分割多重信号分離手順と、
を有するWDM信号一括コヒーレント受信方法。
【請求項13】
前記局発光の波長の繰り返し周期を1/F、n番目の波長成分のシンボルレートをBとすると、F>B(n=1、2、・・・、N)であることを特徴とする請求項12に記載のWDM信号一括コヒーレント受信方法。
【請求項14】
前記WDM信号光と前記局発光の偏光状態が一致するように、前記WDM信号光と前記局発光の少なくとも一方の偏光状態を調整した後に、前記WDM信号光と前記局発光とを合波することを特徴とする請求項12又は13に記載のWDM信号一括コヒーレント受信方法。
【請求項15】
前記光検波手順において、前記WDM信号光の各波長成分が1シンボル時間内で異なった偏光状態をとるように偏波スクランブルした後に、前記WDM信号光と前記局発光とを合波することを特徴とする請求項12又は13に記載のWDM信号一括コヒーレント受信方法。
【請求項16】
前記光検波手順において、前記WDM信号光及び前記局発光をそれぞれ2つに分離し、分離された前記WDM信号光の一方と前記局発光の一方、前記WDM信号光の他方と前記局発光の他方とをそれぞれ合波し、
前記WDM信号光及び前記局発光の少なくとも一方は偏光軸の相対角度が90°である2つの直線偏光成分になるように分離されている
ことを特徴とする請求項12又は13に記載のWDM信号一括コヒーレント受信方法。
【請求項17】
前記WDM信号光を出力する送信手順と、
前記送信手順で出力した前記WDM信号光を、請求項14に記載のWDM信号一括コヒーレント受信方法を用いて受信する受信手順と、を順に有し、
前記送信手順において、全波長成分の偏光状態が一致する前記WDM信号光を出力する、WDM伝送方法。
【請求項18】
前記WDM信号光を出力する送信手順と、
前記送信手順で出力した前記WDM信号光を、請求項14に記載のWDM信号一括コヒーレント受信方法を用いて受信する受信手順と、を順に有し、
前記送信手順において、波長がそれぞれ異なる信号光を、全波長成分の偏光状態が一致するように合波し、全波長成分の偏光状態が一致する前記WDM信号光を出力する、WDM伝送方法。
【請求項19】
前記WDM信号光を出力する送信手順と、
前記送信手順で出力した前記WDM信号光を、請求項15に記載のWDM信号一括コヒーレント受信方法を用いて受信する受信手順と、を順に有し、
前記送信手順において、各波長成分が1シンボル時間内で異なった偏光状態をとるように偏波スクランブルされている前記WDM信号光を出力する、WDM伝送方法。
【請求項20】
前記WDM信号光を出力する送信手順と、
前記送信手順で出力した前記WDM信号光を、請求項15に記載のWDM信号一括コヒーレント受信方法を用いて受信する受信手順と、を順に有し、
前記送信手順において、波長がそれぞれ異なる信号光を合波し、各波長成分が1シンボル時間内で異なった偏光状態をとるように偏波スクランブルされている前記WDM信号光を出力する、WDM伝送方法。
【請求項21】
前記WDM信号光を出力する送信手順と、
前記送信手順で出力した前記WDM信号光を、請求項16に記載のWDM信号一括コヒーレント受信方法を用いて受信する受信手順と、を順に有する、WDM伝送方法。
【請求項22】
前記WDM信号光を出力する送信手順と、
前記送信手順で出力した前記WDM信号光を、請求項16に記載のWDM信号一括コヒーレント受信方法を用いて受信する受信手順と、を順に有し、
前記送信手順において、光信号送信器から波長がそれぞれ異なる信号光を出力し、前記信号光を合波して前記WDM信号光を出力する、WDM伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−175323(P2012−175323A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34303(P2011−34303)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】