説明

Webアプリケーション脆弱性動的検査方法およびシステム

【課題】Webアプリケーションソフトウェアに含まれる脆弱性を検出する際に、ソースコード中に記述された実行されないコードが原因の誤った検出が生じることがなく、プログラマが脆弱性の対策を行いやすいように脆弱性の原因となるコードのソースコード中での位置を指摘でき、検査データを対象Webアプリケーションに送信する回数が少なく効率的にすることを目的とする。
【解決手段】Webアプリケーションが提供するWebページへの検査要求を受け、Webアプリケーションを供給するサーバにおいて検査対象ページに対応するコードの中のWebアプリケーション外部からのデータを取得するメソッド呼び出し箇所を検査用コードに変更し脆弱性の検査用Webアプリケーションを構築する。検査対象ページに対してリクエストデータを送付し、そのレスポンスデータと予め登録してある脆弱性判定コードとを比較し脆弱性が含まれるかを判定し結果を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Webアプリケーションソフトウェアを検査し、取り扱いに注意が必要なメソッド呼び出しによって生じる脆弱性の有無とそのソースコード内での位置および実行時にそのメソッドに渡されるデータの情報を提供する脆弱性検査の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ソフトウェアに含まれる脆弱性を検査する方法には、ソフトウェアのソースコードを調べるソースコード静的解析方法と稼動中のソフトウェアを調べる稼動検査方法の2つがある。
【0003】
ソースコード静的解析方法とは、ソースコードを検査してソースコード中に含まれる危険なコードを検出する技術である。このような技術の1つに、例えばRATSがある。これはあらかじめ用意した危険な関数データベースとソースコード中に含まれる関数呼び出しの比較を行い、一致した箇所を検出するというものである。RATSについては、下記非特許文献1の2章に詳しく述べられている。
【0004】
稼動検査方法は、稼動しているソフトウェアに対して検査用のデータを入力した結果起こる動作から脆弱性が含まれるかどうか判断するという技術である。例えば、OWASPで公開されているWebScarabのManual Interceptプラグインを利用した検査が挙げられる。これは、稼動しているソフトウェアに対して送信されるデータをインターセプトし、そのデータに攻撃コードを含ませた後、当該ソフトウェアに対し送付し、その応答から、脆弱性の有無を判断するという検査方法である。
【0005】
本発明は、ソフトウェアのうち、特にネットワーク上のWebサーバで用いられるWebアプリケーションソフトウェアの脆弱性を検査する技術に関するものである。Webアプリケーションソフトウェアに含まれる代表的な脆弱性には、クロスサイトスクリプティング脆弱性やSQLインジェクション脆弱性がある。これらは、それぞれ、HTMLに出力するメソッド呼び出しとSQL文を実行するメソッド呼び出し箇所で生じる。これらのメソッドに渡されるデータにソフトウェア外部からのデータが含まれる場合、該メソッドに渡される前に、該データに対し悪意のある者が攻撃を行うときに利用する特殊文字を無害化する処理を行うことが必要とされる。該無害化処理を行っていない場合、前記メソッド呼び出し箇所に脆弱性が存在する。以下の説明では、これらの脆弱性が生じる可能性のあるメソッドを脆弱メソッド、ソフトウェア外部からのデータを外部データ、外部データを受け取るためのメソッドを外部データ取得メソッドと呼ぶ。該外部データとは、例えば、クライアントからWebアプリケーションに対して送信されるリクエストデータ内のリクエストパラメータやヘッダフィールドの値がWebアプリケーションのソースコード内で利用されている場合の該リクエストパラメータと該ヘッダフィールドの値などである。
【非特許文献1】情報処理振興事業協会セキュリティセンター:オープンソース・ソフトウェアのセキュリティ確保に関する調査報告書 第II部 オープンソース・ソフトウェアの効率的な検査技術の調査:平成15年2月
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記脆弱性を含むWebアプリケーションソフトウェアの検査をソースコード静的解析方法により行った場合、ソースコードだけから判断するため、例えば実際には実行されない箇所が原因で誤った検出が生じてしまうことがある。
【0007】
一方、稼動検査方法により検査した場合、実行されない箇所が原因の誤った検出が生じることはないものの、プログラマが検査の後に脆弱性を修正する際に有効な、ソースコード内での脆弱性の原因となるコードの位置の情報は提供されない。そのため、プログラマがソースコード内で原因となる箇所を探す際の負担が大きい。また、稼動検査方法の場合、Webアプリケーションに対して送信されるリクエストデータに含まれるパラメータおよびヘッダフィールドのうち、どの値がWebアプリケーションのソースコード内で利用されているか分からないため、すべてのパラメータおよびヘッダフィールドについて、各値に擬似的な攻撃コードを設定して検査する必要がある。このように検査不要なパラメータやヘッダフィールドについても検査をするため、検査用のリクエストデータをWebアプリケーションに対し送信する回数が多く、効率が悪い。
【0008】
本発明の目的は、ソースコード中に記述された実行されないコードが原因の誤った検出が生じることがなく、かつプログラマが脆弱性の対策を行いやすいように脆弱性の原因となるコードのソースコード中での位置を指摘でき、検査データを対象Webアプリケーションに送信する回数が少ない効率的な脆弱性検出方法およびシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、サーバ上で稼働するWebアプリケーションの脆弱性を検査するため、所定の検査要求発行手段からサーバのWebアプリケーションが提供するWebページへ送信される検査要求を受け、該Webアプリケーションを供給するサーバにおいて該検査対象ページに対応するコードの中のWebアプリケーション外部からのデータを取得するメソッド呼び出し箇所を検査用のコードに変更し、脆弱性を検査するための検査用Webアプリケーションを構築し、該検査用Webアプリケーションの該検査ページに対して検査のためのリクエストデータを送付し、該リクエストデータに応じて出力されるレスポンスデータとあらかじめ登録してある脆弱性判定コードとを比較することにより、該Webアプリケーションに脆弱性が含まれるかどうかを判定し、その判定結果を出力することを特徴とするものである。
【0010】
Webアプリケーション外部からのデータを取得するメソッドのソースコード中での位置に関する情報と、脆弱性を生じる可能性のあるメソッドのソースコード中での位置に関する情報と、実行時に該脆弱性を生じる可能性のあるメソッドに渡されるデータ値とを、取得し、一時結果レポートとして出力するメソッドを、前記Webアプリケーションのコード中に追加し、前記検査のためのリクエストに応じた処理の過程で前記メソッドにより前記一時結果レポートを出力する処理を行うようにしてもよい。
【0011】
また、(1)前記Webアプリケーションにすべての検査用コードの定義を追加し、(2)前記Webアプリケーションの検査対象ページに、受信したリクエストデータに含まれるパラメータから動的にデータを取得するコードを、追加し、(3)前記Webアプリケーション外部からのデータを取得するメソッド呼び出し箇所を、前記リクエストデータに含まれるパラメータから動的に取得したデータに基づいて前記追加したすべての検査用コードの中から指定された、検査用コードを取得するコードに、変更する処理を行い、前記検査のためのリクエストデータのパラメータに、前記検査用コードを動的に指定するデータを含めて、リクエストデータを送付するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、Webアプリケーションソフトウェアに含まれる脆弱性の検査において、実行されない箇所が原因の誤った検出が生じることなく、かつ脆弱性の対策を行いやすいようにソースコード内での脆弱性の原因となるコードの位置の情報を提供することができる。また、検査データを対象Webアプリケーションに送信する回数が少なくて済む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面により詳細に説明する。ここでは、Webアプリケーションが提供するある一つのWebページについて、そのページに入力されたデータが原因でWebアプリケーションのコード内のいずれかの場所で発生する脆弱性が存在するどうか検査する手法について説明する。
【0014】
また以下の説明では、Java(登録商標)言語により記述されたWebアプリケーションを例として挙げるが、本処理手順は他のプログラミング言語で記述されたソースコードにも適用可能である。また以下の説明では検査対象のページに対応する中間コードを編集しているが、中間コードではなくソースコードを編集してもよい。一般的にソースコード中にその内容と直接関係のない脆弱性検知を目的とした情報を記述することは敬遠されるが、中間コードを編集した場合、ソースコードには変更を加えないという利点がある。Java(登録商標)の中間コードを編集する手段としてJakarta Projectが公開しているBCELを利用する方法などがある。
【0015】
図1は、本発明の一実施の形態を表すシステム構成図である。
【0016】
図1において、サーバ1とクライアント2は、ネットワーク3によって接続されている。サーバ1は、CPU11Aおよびメモリ11Bを備えた端末装置11、外部記憶装置12、および通信ポート13を備える。外部記憶装置12には、Webアプリケーションを記述したソースコードをコンパイルした結果生成される中間コード群12Aと、そのWebアプリケーションの中間コードを編集する手段であるWebアプリケーション管理手段12Bと、APIとして提供されている外部データ取得メソッドを登録した外部データ取得メソッドDB12Cと、APIとして提供されている脆弱メソッドを登録した脆弱メソッドDB12Dと、脆弱性の検査のための攻撃コードを登録した擬似攻撃コードDB12Eと、検査によって得られた脆弱性を生じる可能性のあるコードに関する情報を一時的に記録するための一時結果レポート12Fと、Webアプリケーションの稼動環境であるWebアプリケーション供給手段12Gとが格納されている。ここで、Webアプリケーション供給手段12Gとは、Jakarta Projectが公開しているTomcatなどを指す。外部データ取得メソッドDB12Cの例は図5で、脆弱メソッドDB12Dの例は図6で、擬似攻撃コードDB12Eの例は図7(a)で、それぞれ説明する。
【0017】
クライアント2は、CPU21Aおよびメモリ21Bを備えた端末装置21、外部記憶装置22、および通信ポート23を備える。外部記憶装置22には、脆弱性を判定するための手段である脆弱性判定手段22Aと、クライアントからWebアプリケーションに対し入力される、Webアプリケーション開発者が想定する正常なパラメータ値を登録したリクエストパラメータDB22Bと、脆弱性判定手段が利用するための判断基準であるレスポンス脆弱性判定DB22Cと、脆弱性検査の結果を記述する結果レポート22Dとが格納されている。リクエストパラメータDB22Bの例は図8(a)で、レスポンス脆弱性判定DB22Cの例は図11で、それぞれ説明する。
【0018】
図1にはサーバ1とクライアント2の二台の装置を例示したが、外部記憶装置12および外部記憶装置22の両方に格納された手段およびデータを併せ持つ外部記憶装置を有する一台の装置で実現することもできる。
【0019】
図2は、クライアント端末2の脆弱性判定手段22A、サーバ1のWebアプリケーション管理手段12B、およびサーバ1のWebアプリケーション供給手段12Gの間でやりとりされる命令およびデータの流れを示した図である。なお、Webアプリケーションの中間コード群12Aは適切な場所に配置されており、Webアプリケーション供給手段12Gによりサービスを提供可能な状態にあるとする。
【0020】
まず始めに、脆弱性判定手段22Aは、リクエストパラメータDB22B(例えば図8(a))から検査対象ページに対するリクエストパラメータの情報を取得する(手順200)。そして、検査対象のページ名称をWebアプリケーション管理手段12Bに伝える(手順201)。
【0021】
Webアプリケーション管理手段12Bは、外部データ取得メソッドDB12C、脆弱メソッドDB12D、および擬似攻撃コードDB12Eを読み込む(手順202)。検査対象ページに対応する中間コード内から脆弱メソッド呼び出し(脆弱メソッドDB12Dに登録されているもの)をすべて探し、その呼び出し箇所の前に、呼び出しが行われたクラスと行番号、脆弱メソッド名、および実行時に脆弱メソッドの脆弱性の原因となる引数に渡されるデータ値を一時結果レポート12Fに出力するメソッドを、追加する。行番号の代わりに呼び出しが行われたメソッド定義を出力してもよい(手順203)。次に、Webアプリケーション管理手段12Bは、擬似攻撃コードDB12E(例えば図7(a))から取得した攻撃コードのリストとその各要素を取得するメソッドが定義された中間コード(例えば図7(b)のソースの中間コード)を生成し、対象Webアプリケーションの中間コード群12Aに追加する(手順204)。
【0022】
次に、Webアプリケーション管理手段12Bは、検査対象ページに対応する中間コード内の外部データ取得メソッド呼び出し(外部データ取得メソッドDB12Cに登録されているもの)を探す。見つからない場合は、検査を終了し、脆弱性判定手段22Aに対し終了を通知する(手順215)。一方、外部データ取得メソッド呼び出しが見つかった場合、そのメソッド呼び出しを、攻撃コードのリストの一要素を取得するメソッドに、変更する。また、その外部データ取得メソッド呼び出しが行われたクラスと行番号、該当メソッド名、および攻撃コードを一時結果レポート12Fに出力するメソッドを追加する。行番号の代わりに呼び出しが行われたメソッド定義を出力してもよい(手順205)。そして、検査用Webアプリケーション構築完了通知を脆弱性判定手段22Aに送付する(手順206)。
【0023】
クライアント2の脆弱性判定手段22Aは、前記手順200により取得したリクエストパラメータの情報を元にして当該検査対象ページに対するリクエスト(例えば図8(b))を送る(手順207)。Webアプリケーション供給手段12Gにより供給されているWebアプリケーションは、そのリクエストを処理し、脆弱性判定手段22Aに対しレスポンス(例えば図9または図10)を送付する。このリクエスト処理の過程で、一時結果レポート12Fへの出力が行われる(手順208、209)。
【0024】
クライアント2の脆弱性判定手段22Aは、受信したレスポンスとレスポンス脆弱性判定DB22C(例えば図11)から脆弱性かどうかを判断する(手順210)。脆弱性である場合、Webアプリケーション管理手段12Bに対し、一時結果レポート要求を送る(手順211)。Webアプリケーション管理手段12Bは、一時結果レポート12Fを脆弱性判定手段22Aに送付する(手順212)。そして、脆弱性判定手段22Aは、当該一時結果レポート12Fの内容を結果レポート22Dに出力する。一方、手順210の判断で脆弱性ではないと判断した場合、脆弱性判定手段22Aは、結果レポート22Dに何も出力しない(手順213)。
【0025】
次に、脆弱性判定手段22Aは、Webアプリケーション管理手段12Bに対して判定終了通知を送付する(手順214)。
【0026】
手順205から手順214までは、外部データ取得メソッド呼び出しの数および攻撃コードの要素数だけ繰り返し行う。すなわち、手順214を終えたとき、先の手順205で使った攻撃コードのリストの一要素が該リストに登録された最後の要素でない場合には、同じ外部データ取得メソッド呼び出し箇所に対して、次の攻撃コード要素を用いて、手順205からの処理に移る。一方、攻撃コードリストの最後の要素である場合には、検査対象ページの中間コード中の次の外部データ取得メソッド呼び出しを検索する。見つからない場合は検査を終了し、脆弱性判定手段22Aに対し終了を通知する(手順215)。見つかった場合、その外部データ取得メソッド呼び出しに対して手順205からの処理を続行する。
【0027】
図3は、サーバ1のWebアプリケーション管理手段12Bの詳細な動作を示すフローチャートである。
【0028】
Webアプリケーション管理手段12Bは、脆弱性判定手段22Aより検査対象ページ名を取得する(手順301)。次に、Webアプリケーション管理手段12Bは、外部データ取得メソッドDB12C、脆弱メソッドDB12D、および擬似攻撃コードDB12Eを読み込む(手順302:図2の手順202に対応)。
【0029】
検査対象ページに対応する中間コード内の脆弱メソッド呼び出しをすべて探し、その呼び出しと同じ行の直前箇所に、呼び出しが行われたクラスと行番号、脆弱メソッド名、および実行時に脆弱メソッドの脆弱性の原因となる引数に渡されるデータ値を一時結果レポート12Fに出力するメソッドを、追加する。行番号の代わりに、呼び出しが行われたメソッド定義を出力してもよい(手順303:図2の手順203に対応)。次に、Webアプリケーション管理手段12Bは、擬似攻撃コードDB12Eから取得した攻撃コードのリストとその各要素を取得するメソッドが定義された中間コードを生成し、対象Webアプリケーションの中間コード群12Aに追加する(手順304:図2の手順204に対応)。
【0030】
次に、攻撃コードリストの各要素を識別するためのインデックスであるiに1を代入する。また、コード中の外部データ取得メソッド呼び出しを識別するためのインデックスであるjに1を代入する(手順305)。検査対象ページの中間コードから、j番目の外部データ取得メソッド呼び出しを探す(手順306)。該メソッドが見つからない場合(手順307)、すなわち当該中間コード内に存在する全ての外部データ取得メソッドについて処理を終えている場合は、検査を終了し、脆弱性判定手段22Aに対し終了を通知する(手順314:図2の手順215に対応)。
【0031】
一方、j番目の外部データ取得メソッド呼び出しが見つかった場合、該メソッド呼び出しを攻撃コードリストの一要素を取得するメソッドに変更する。また、呼び出しが行われたクラスと行番号、該当メソッド名、および攻撃コードを一時結果レポート12Fに出力するメソッドを、追加する。行番号の代わりに、呼び出しが行われたメソッド定義を出力してもよい(手順308:図2の手順205に対応)。そして、検査用Webアプリ構築完了通知を脆弱性判定手段22Aに送付し(手順309:図2の手順206に対応)、待ち状態となる。
【0032】
脆弱性判定手段22Aから一時結果レポート要求(図2の手順211で発行されたもの)を受信すると、一時結果レポート12Fを脆弱性判定手段22Aに送付する。送付後、一時結果レポート12Fを初期化する(手順310:図2の手順212に対応)。次に、iにi+1を代入する(手順311)。iと攻撃コード総数を比較し、両者が等しいか、または攻撃コード総数の方が大きい場合、次の攻撃コード要素を用いて処理を続行するため、手順308の処理に移る。そうでない場合、以下の手順313に移る(手順312)。次に、iに1を代入し、jにj+1を代入する(手順313)。手順313の後、手順306に戻る。
【0033】
図3の手順308では、変数iの値を用いて攻撃コードi番目要素取得メソッドに変更しているが、このiの部分をクライアントから与えられる動的な値とし、検査対象コードにその値をクライアントからのリクエストパラメータ値として受信するためのコードを追加するという方法もある。この場合、検査対象コードを編集する回数が少なくて済む。
【0034】
図4は、クライアント2の脆弱性判定手段22Aの詳細な動作を示すフローチャートである。まず始めに、脆弱性判定手段22Aは、リクエストパラメータDB22Bから検査対象ページに対するリクエストパラメータの情報を取得する(手順401:図2の手順200に対応)。そして、検査対象のページ名称をWebアプリケーション管理手段12Bに伝える(手順402:図2の手順201に対応)。その後、一旦、待ち状態となる。
【0035】
Webアプリケーション管理手段12Bは、図2で説明したように手順202〜206を経て検査用Webアプリケーション構築完了通知を脆弱性判定手段22Aへ送る。該検査用Webアプリケーション構築完了通知を受けとった脆弱性判定手段22Aは、前記手順401により取得したリクエストパラメータの情報を元にして検査対象ページに対してリクエストを送る(手順403:図2の手順207に対応)。そして、待ち状態となる。当該リクエストは、図2の手順208でWebアプリケーション供給手段12Gにより処理され、レスポンスが送信される(図2の手順209)。
【0036】
当該レスポンスを受信した脆弱性判定手段22Aは、そのレスポンスとレスポンス脆弱性判定DB22Cから脆弱性かどうかを判断し(手順406:図2の手順210)、脆弱性である場合、Webアプリケーション管理手段12Bから一時結果レポート12Fを取得する(手順407:図2の手順211,212に対応)。その内容を結果レポート22Dに出力し(手順408:図2の手順213に対応)、手順409に移る。そうでない場合、結果レポート22Dには何も出力せず、手順409に移る。最後に、判定終了通知をWebアプリケーション管理手段12Bに送付する(手順409:図2の手順214に対応)。そして、待ち状態となる。
【0037】
なお、図2でも説明した通り、検査用Webアプリケーション構築完了通知は、外部データ取得メソッド呼び出しの数および攻撃コードの要素数だけ繰り返し出力されるから、引き続き、検査用Webアプリケーション構築完了通知を受信した場合は、手順403に移るものとする。一方、終了通知を受け取った場合は検査を終了する。
【0038】
図5は、外部データ取得メソッドDB12Cの例である。本DBは、サーバ1において、APIで提供されている外部データ取得メソッドの名前501を登録しておくDBである。
【0039】
図6は、脆弱メソッドDB12Dの例である。本DBは、サーバ1において、APIで提供されている脆弱メソッドについての情報を登録しておくDBである。本DBには、脆弱メソッド名601と、脆弱性の原因となる引数の位置を表す引数番号602との組データを登録しておく。
【0040】
図7(a)は、擬似攻撃コードDB12Eの例である。本DBは、サーバ1において、検査をするために用いる攻撃コード701を登録するDBである。ここでは、攻撃コード要素を1つだけ図示した。
【0041】
図7(b)は、攻撃コードリストとその各要素を取得するためのメソッドを定義したソースコードの例である。図3の手順304(図2の手順204)で、このソースコードに対応する中間コードを中間コード群12Aに追加する。
【0042】
図8(a)は、クライアントからWebアプリケーションに対し入力される、Webアプリケーション開発者が想定する正常なリクエストパラメータ値を登録したリクエストパラメータDB22Bの例である。本DBには、検査対象ページのURL801、パラメータ名802、およびパラメータ値803の組データを登録しておく。この例では一つの検査対象ページに対して一つのパラメータしか示していないが、複数のパラメータがあっても良く、その場合、同じURLでパラメータ名が異なる複数のレコードが登録される。ヘッダフィールドについては、通常のHTTPのリクエスト発行時に設定されるため、特に登録する必要はない。
【0043】
図8(b)は、図8(a)に対応するリクエストデータの例である。このようなリクエストデータが、手順403(図2の手順207)で脆弱性判定手段22AからWebアプリケーション供給手段12Gに対して送信される。前記WebScarabなどを使用した従来の稼動検査方式では、リクエストデータ内のどのリクエストパラメータとヘッダフィールドの値がWebアプリケーションで利用されているか分からないため、すべてについて検査をする必要があった。例えば、図8(b)の場合、リクエストパラメータnameとヘッダフィールドHostの両方に、攻撃コードを含ませて検査していた。一方、本発明では、Webアプリケーション内の外部データ取得メソッド箇所に攻撃コードを含ませて検査する。
【0044】
図9は、図8(b)のリクエストデータを送付した場合のレスポンスの例である。これは、手順406(図2の手順210)で脆弱ではないと判断されるものの一例である。
【0045】
図10は、攻撃コードを検査対象コードに埋め込み検査した結果、その攻撃が成功した場合のレスポンスデータの例である。図8(b)のパラメータnameの値を取得するメソッドの代わりに、図7(a)に登録の攻撃コードに変更した場合のレスポンスを示している。これは、手順406で脆弱であると判断されるものの一例である。
【0046】
図11は、レスポンス脆弱性判定DB22Cの例である。本DBは、レスポンス脆弱性判定コード801を登録するDBである。このDBに登録されたコードがレスポンスデータに含まれていた場合に、脆弱性であると判断する。この例以外に、レスポンス脆弱性判定コード801に想定されるレスポンスデータをすべて登録しておき、それ以外のレスポンスデータが得られた場合に脆弱性であると判定するというような使用方法が考えられる。
【0047】
図12は、脆弱性検査の結果が記述された結果レポート22Dの例である。この結果レポート22Dは、外部データ取得メソッドの呼び出しが行われたクラス名121および呼び出し行番号122と、外部データ取得メソッド名123と、攻撃コード124と、脆弱メソッドの呼び出しが行われたクラス名125および呼び出し行番号126と、脆弱メソッド名127と、実行時に脆弱性の原因となる脆弱メソッドの引数箇所に与えられた実行時引数データ値128との組データからなる。この引数箇所は、脆弱メソッドDB12Dの引数番号602に登録されている値から決まる。行番号の代わりに呼び出しが行われたメソッド定義としてもよい。
【0048】
この結果レポート22Dの例では、検査対象Webアプリケーションに脆弱性が含まれていることと、その原因となる外部データ取得箇所、および脆弱性が生じている脆弱メソッド呼び出し箇所の候補が分かる。実行時引数データ値より二つの脆弱メソッド呼び出し箇所のうち21行目が原因であると判断できる。この脆弱メソッド呼び出し箇所の候補をあらかじめ絞る方法として、手順303において実行時引数データ値の中に擬似攻撃コードDB12Eに登録された攻撃コードが含まれたもののみ、一時結果レポート12Fに出力するという方法がある。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施の形態を表すシステム構成図である。
【図2】クライアント端末の脆弱性判定手段、サーバのWebアプリケーション管理手段、サーバのWebアプリケーション供給手段の間でやりとりされる命令およびデータの流れを示した図である。
【図3】Webアプリケーション管理手段の動作を示すフローチャートである。
【図4】脆弱性判定手段の動作を示すフローチャートである。
【図5】APIで提供されている外部データ取得メソッドについての情報を登録しておくための外部データ取得メソッドDBの例である。
【図6】APIで提供されている脆弱メソッドについての情報を登録しておくための脆弱メソッドDBの例である。
【図7】擬似攻撃コードDBの例、および攻撃コードリストとその各要素を取得するためのメソッドを定義したソースコードの例である。
【図8】Webアプリケーションに対してクライアントから入力される、Webアプリケーション開発者が想定する正常なパラメータ値を登録したリクエストパラメータDBの例、およびリクエストデータの例である。
【図9】リクエストデータを送付した場合のレスポンスの例であり、脆弱ではないと判断されるものの一例である。
【図10】攻撃コードを検査対象コードに埋め込み検査した結果、その攻撃が成功した場合のレスポンスデータの例であり、脆弱であると判断されるものの一例である。
【図11】レスポンス脆弱性判定DBの例である。
【図12】脆弱性検査の結果が記述された結果レポートの例である。
【符号の説明】
【0050】
11A、21A…CPU、11B、21B…メモリ、13、23…通信ポート、11、21…端末装置、12、22…外部記憶装置、3…ネットワーク、12A…Webアプリケーション中間コード群、12B…Webアプリケーション管理手段、12C…外部データ取得メソッドDB、12D…脆弱メソッドDB、12E…擬似攻撃コードDB、12F…一時結果レポート、12G…Webアプリケーション供給手段、22A…脆弱性判定手段、22B…リクエストパラメータDB、22C…レスポンス脆弱性判定DB、22D…結果レポート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サーバ上で稼働するWebアプリケーションの脆弱性を検査するWebアプリケーション脆弱性動的検査方法であって、
所定の検査要求発行手段から前記サーバのWebアプリケーションが提供するWebページへ送信される検査要求を受け、該Webアプリケーションを供給するサーバにおいて該検査対象ページに対応するコードの中のWebアプリケーション外部からのデータを取得するメソッド呼び出し箇所を検査用のコードに変更し、脆弱性を検査するための検査用Webアプリケーションを構築する第一のステップと、
該検査用Webアプリケーションの該検査ページに対して検査のためのリクエストデータを送付し、該リクエストデータに応じて出力されるレスポンスデータとあらかじめ登録してある脆弱性判定コードとを比較することにより、該Webアプリケーションに脆弱性が含まれるかどうかを判定し、その判定結果を出力する第二のステップと
を備えることを特徴とするWebアプリケーション脆弱性動的検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載のWebアプリケーション脆弱性動的検査方法において、
前記第一のステップは、Webアプリケーション外部からのデータを取得するメソッドのソースコード中での位置に関する情報と、脆弱性を生じる可能性のあるメソッドのソースコード中での位置に関する情報と、実行時に該脆弱性を生じる可能性のあるメソッドに渡されるデータ値とを、取得し、一時結果レポートとして出力するメソッドを、前記Webアプリケーションのコード中に追加する処理を含み、
前記第二のステップは、前記検査のためのリクエストに応じた処理の過程で前記メソッドにより前記一時結果レポートを出力する処理を含む
ことを特徴とするWebアプリケーション脆弱性動的検査方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のWebアプリケーション脆弱性動的検査方法において、
前記第一のステップは、
(1)前記Webアプリケーションにすべての検査用コードの定義を追加し、
(2)前記Webアプリケーションの検査対象ページに、受信したリクエストデータに含まれるパラメータから動的にデータを取得するコードを、追加し、
(3)前記Webアプリケーション外部からのデータを取得するメソッド呼び出し箇所を、前記リクエストデータに含まれるパラメータから動的に取得したデータに基づいて前記追加したすべての検査用コードの中から指定された、検査用コードを取得するコードに、変更する
処理を含み、
前記第二のステップは、前記検査のためのリクエストデータのパラメータに、前記検査用コードを動的に指定するデータを含めて、リクエストデータを送付する処理を含む
ことを特徴とするWebアプリケーション脆弱性動的検査方法。
【請求項4】
Webアプリケーションが稼働するサーバと該サーバ上で稼働するWebアプリケーションに対してリクエストデータを送信しそのレスポンスデータを受信するクライアント端末とが接続されたシステムにおいて、前記Webアプリケーションの脆弱性を検査するWebアプリケーション脆弱性動的検査方法であって、
前記クライアント端末から前記サーバのWebアプリケーションが提供するWebページへ検査要求を送信するステップと、
前記検査要求を受信した、前記Webアプリケーションを供給するサーバが、該検査対象ページに対応するコードの中のWebアプリケーション外部からのデータを取得するメソッド呼び出し箇所を、検査用のコードに変更し、脆弱性を検査するための検査用Webアプリケーションを構築するステップと、
前記クライアント端末から前記サーバの検査用Webアプリケーションの該検査対象ページに対して検査のためのリクエストデータを送付するステップと、
該リクエストデータを受信した前記サーバが、該リクエストに応じて前記検査用Webアプリケーションを動作させ、レスポンスデータを返信するステップと、
該レスポンスデータを受信した前記クライアント端末が、該レスポンスデータとあらかじめ登録してある脆弱性判定コードとを比較し、該比較の結果に基づいて前記Webアプリケーションに脆弱性が含まれるかどうかを判定し、その結果を出力するステップと
を備えることを特徴とするWebアプリケーション脆弱性動的検査方法。
【請求項5】
サーバ上で稼働するWebアプリケーションの脆弱性を検査するWebアプリケーション脆弱性動的検査システムであって、
所定の検査要求発行手段から前記サーバのWebアプリケーションが提供するWebページへ送信される検査要求を受け、該Webアプリケーションを供給するサーバにおいて該検査対象ページに対応するコードの中のWebアプリケーション外部からのデータを取得するメソッド呼び出し箇所を検査用のコードに変更し、脆弱性を検査するための検査用Webアプリケーションを構築する第一の手段と、
該検査用Webアプリケーションの該検査ページに対して検査のためのリクエストデータを送付し、該リクエストデータに応じて出力されるレスポンスデータとあらかじめ登録してある脆弱性判定コードとを比較することにより、該Webアプリケーションに脆弱性が含まれるかどうかを判定し、その判定結果を出力する第二の手段と
を備えることを特徴とするWebアプリケーション脆弱性動的検査システム。
【請求項6】
請求項5に記載のWebアプリケーション脆弱性動的検査システムにおいて、
前記第一の手段は、Webアプリケーション外部からのデータを取得するメソッドのソースコード中での位置に関する情報と、脆弱性を生じる可能性のあるメソッドのソースコード中での位置に関する情報と、実行時に該脆弱性を生じる可能性のあるメソッドに渡されるデータ値とを、取得し、一時結果レポートとして出力するメソッドを、前記Webアプリケーションのコード中に追加する処理を含み、
前記第二の手段は、前記検査のためのリクエストに応じた処理の過程で前記メソッドにより前記一時結果レポートを出力する処理を含む
ことを特徴とするWebアプリケーション脆弱性動的検査システム。
【請求項7】
請求項5または6に記載のWebアプリケーション脆弱性動的検査システムにおいて、
前記第一の手段は、
(1)前記Webアプリケーションにすべての検査用コードの定義を追加し、
(2)前記Webアプリケーションの検査対象ページに、受信したリクエストデータに含まれるパラメータから動的にデータを取得するコードを、追加し、
(3)前記Webアプリケーション外部からのデータを取得するメソッド呼び出し箇所を、前記リクエストデータに含まれるパラメータから動的に取得したデータに基づいて前記追加したすべての検査用コードの中から指定された、検査用コードを取得するコードに、変更する
処理を含み、
前記第二の手段は、前記検査のためのリクエストデータのパラメータに、前記検査用コードを動的に指定するデータを含めて、リクエストデータを送付する処理を含む
ことを特徴とするWebアプリケーション脆弱性動的検査システム。
【請求項8】
Webアプリケーションが稼働するサーバと該サーバ上で稼働するWebアプリケーションに対してリクエストデータを送信しそのレスポンスデータを受信するクライアント端末とが接続されたシステムにおいて、前記Webアプリケーションの脆弱性を検査するWebアプリケーション脆弱性動的検査システムであって、
前記クライアント端末は、
前記サーバのWebアプリケーションが提供するWebページへ検査要求を送信する手段と、
前記サーバから送信された検査用Webアプリケーション構築完了通知を受信したとき、前記サーバの検査用Webアプリケーションの該検査対象ページに対して検査のためのリクエストデータを送付する手段と、
前記リクエストデータに応じて前記サーバから送信されたレスポンスデータを受信したとき、該レスポンスデータとあらかじめ登録してある脆弱性判定コードとを比較し、該比較の結果に基づいて前記Webアプリケーションに脆弱性が含まれるかどうかを判定し、その結果を出力する手段と
を備え、
前記Webアプリケーションを供給するサーバは、
前記クライアント端末から送信される検査要求を受信したとき、検査対象ページに対応するコードの中のWebアプリケーション外部からのデータを取得するメソッド呼び出し箇所を、検査用のコードに変更し、脆弱性を検査するための検査用Webアプリケーションを構築する手段と、
前記クライアント端末に、該検査用Webアプリケーションの構築が完了したことを通知する検査用Webアプリケーション構築完了通知を、送信する手段と、
前記クライアント端末から送信されたリクエストデータに応じて前記検査用Webアプリケーションを動作させ、レスポンスデータを返信するステップと
を備えることを特徴とするWebアプリケーション脆弱性動的検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−241906(P2007−241906A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66822(P2006−66822)
【出願日】平成18年3月11日(2006.3.11)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】