説明

X線・ガンマ線撮像装置

【課題】ガンマ線による機能情報とX線による形態情報とを位置合わせをすることなく確実に得ることができる、X線及びガンマ線を用いたX線・ガンマ線撮像装置を提供する。
【解決手段】X線・ガンマ線撮像装置は、画素を2次元的に配置した検出器13を有する。この検出器13は、放射線エネルギーのディスクリミネータを2本以上有する光子計数形放射線検出回路を画素毎に有し、かつ各画素の信号検出情報とディスクリミネータによるエネルギー所属情報を画素単位で独立に出力する出力構造を有する。この検出器13に対向して設置されたX線管12からのX線ビームのみに指向させるコーンビーム状のコリメータ14を検出器13の前面に配置し、当該コリメータ14が視野内の物体から放射され検出器13に入射するガンマ線を同時にコリメートするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線とガンマ線とを併用して被検体の内部の画像を撮影するX線・ガンマ線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療の分野では、2次元のX線検出器として入射X線のフルエンスを計測するエネルギー信号積分形の検出器が一般に用いられている。これは、X線の場合、検出器に入射する光子数が1M〜2Gcps/mm2と大変に多く、核医学などで用いられている個々の光子をそのエネルギー毎に計数する光子計数技術を適用することが困難なためである。例としては、核医学診断の分野で用いられているシンチレーションカメラでは、ガンマ線の光子数が検出器当たり200〜300kcps程度であり、医療用のX線検出で求められるカウンティング能力の1/10,000の計数能力にも満たない。この結果、医療用X線フラットパネルやX線CTスキャナで光子計数技術を用いるのは極めて困難であり、X線とガンマ線を同時に計数する能力を有する検出器は存在していない。
【0003】
また、体内の臓器の機能を映像化するSPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)で行われている光子検出技術は、ヨウ化ナトリウムなどのシンチレータと光電子像倍管を用いたものであるが、このような光子検出方法は、光の拡散や光子エネルギーの揺らぎ、光電子増倍管の位置特定などにより検出器の固有空間分解能が低くなり、この結果、SPECT画像の空間分解能は臨床用で5mmから8mmとなっており、小さな病変部への放射性医薬品の検出を不可能にしているばかりでなく、SPECT画像単独からでは集積位置の同定は非常に困難なものとなっている。正確な定量ができず、治療計画や治療効果判定に用いるには支障を来すものとなっている。
【0004】
このようなSPECT画像の低い空間分解能を補うためSPECT装置に併設してX線CT装置を設置し、SPECTによる機能情報とX線CTによる形態情報を重ね合わせた一枚の画像を作成することが行われている。しかし、これらの装置は単に2種類のモダリティを隣接させたに過ぎず、異なるジオメトリで再構成される画像の位置合わせが煩雑なものとなっている。また、このようなSPECT/CT一体型装置を用いて、SPECT画像の定量性を向上させるには、ガンマ線の正確な減衰補正が必要となるが、現行の入射X線のエネルギー全体を積分する信号処理方式で得られたX線CT画像を用いても、正確な線減衰係数を求めることができないという問題もあり、単に従来のX線CT装置を用いても真の定量的SPECT画像を得ることもできないのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、モノクロナール抗体にイメージング用核種(ガンマ線放出核種)と治療用核種(ベータ線放出核種)をそれぞれ標識し、最初にイメージング用核種を標識した抗体で腫瘍の大きさやその広がりを正確に把握し正常臓器への集積が行われていないことを確認した後に、治療用核種を標識した抗体を投与するアイソトープ内用療法が使用されてきている。これは、低侵襲かつ特定のがんをその細胞レベルで特異的に破壊することが可能なため今後のがんの治療において最も注目されている技術である。そして、このようなイメージング核種は陽電子放出核種では実現できないためPET(Positron Emission Tomography)の使用は不可能であり、SPECT技術に頼らざるをえない。一方、前述したようにSPECT画像は現行の光子検出方式による画像では空間分解能も低く、また、X線CTを利用したガンマ線の減衰補正で定量化をはかろうとしても、X線CTにおける現行の光子計測方式では正確な線減衰係数の分布を求めることができないので、モノクロナール抗体の正確な位置を同定できず、治療計画や治療効果の判定に十分ではない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、とくに、同一被検体に対する、ガンマ線による機能情報とX線による形態情報とを位置合わせをすることなく確実に得ることができる、X線及びガンマ線を用いたX線・ガンマ線撮像装置と呼ぶべき新規なモダリティを提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るX線・ガンマ線撮像装置は、画素を2次元的に配置した放射線検出器において放射線エネルギーのディスクリミネータを二本以上有する光子計数形放射線検出回路を画素毎に有し、かつ各画素の信号検出情報とディスクリミネータによるエネルギー所属情報を画素単位で独立に出力する出力構造を有し、この検出器に対向して設置されたX線管からのX線ビームのみに指向させるコーンビーム状のコリメータを前記検出器の前面に配置し、当該コリメータが視野内の物体から放射され前記検出器に入射するガンマ線を同時にコリメートするようにしたことを基本的な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上のように、X線及びガンマ線をそれぞれ用いた単独の撮像装置の不都合を解消し、画像計測の定量性を実現できる従来にない画期的な画像と使用法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の一つの実施形態に係るX線・ガンマ線撮影装置の構成の概要を示す図。
【図2】図2は、実施形態の変形例を示すX線管及び検出器の配置のジオメトリを説明する図。
【図3】図3は、X線とガンマ線のエネルギースペクトルの一例を示すグラフ。
【図4】図4は、X線とガンマ線のエネルギースペクトルの別の一例を示すグラフ。
【図5】図5は、X線とガンマ線のエネルギースペクトルが図3に示す場合に好適なデータ収集シーケンスの一例を示す図。
【図6】図6は、X線とガンマ線のエネルギースペクトルが図4に示す場合に好適なデータ収集シーケンスの一例を示す図。
【図7】図7は、前記実施形態に係るX線・ガンマ線撮影装置が搭載した検出器の概略構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の添付図面を参照して、本発明に係るX線・ガンマ線撮像装置の一つの実施形態を説明する。
【0011】
図1に、この実施形態に係るX線・ガンマ線撮像装置の概要を示す。このX線・ガンマ線撮像装置は、X線を用いたX線CTスキャナとガンマカメラを用いたSPECT装置とを一体化した複合形の撮像装置である。ここで、一体化とは、両方のモダリティを単に一つの架台に収めたという意味ではなく、「X線及びガンマ線の収集系の一体化、及び、それら異なる種類の放射線の収集データの処理系を一体化(一部の一体化も含む)若しくは互いに利用可能な状態で併設した」ことを言う。
【0012】
図1に示ように、このX線・ガンマ線撮像装置は、ガントリ1を備え、このガントリ1を貫通する状態で形成される撮像空間Sに寝台2の天板2Aが進退可能に遊挿されるようになっている。天板2Aには、被検体Pが載置され、この被検体Pの断層像を撮像したり、及び/又は、SPECT像を撮像したりすることになる。
【0013】
さらに、このX線・ガンマ線撮像装置には、ガントリ1の内部に支持体11により互いに対向して設置されるX線管12(X線源)と検出器13とを備える。支持体11が回転すると、かかる対向した幾何学的関係を保持した状態で、X線管12と検出器13との対が被検体Pの体軸方向の周りを回転することができる。検出器13の放射線(X線、ガンマ線)の入射面に、X線管のX線曝射位置に収束する幾何学形状を有するコーンビーム形コリメータ14が配設されている。
【0014】
この他に、X線・ガンマ線撮像装置は、架台1に設置されたX線管用高電圧発生器15、寝台駆動器16、検出系駆動器17、及びデータ収集器18を備える。さらに、X線・ガンマ線撮像装置は、架台1の外部にX線制御器21、CPUによるプログラム演算のもとで動作するコンピュータ22、このコンピュータ22と操作者との間のインターフェースとしてのコンソール23(入力器24及び表示器25を備える)と、画像記憶装置26とを備える。
【0015】
上述した構成要素のうち、X線管12は、高電圧発生器13から供給されるパルス状又は連続波の高電圧信号に応答してX線を曝射する。高電圧発生器13は、X線制御器21からの所定のパルスシーケンスに基づくX線制御信号を生成し、この信号を高電圧発生器13に送る。このため、高電圧発生器13は、X線制御信号に応じて高電圧信号をX線管2に供給するので、上述したX線曝射が可能になる。コンピュータ22は、X線曝射のための上記パルスシーケンスを起動させて、そのシーケンス情報をX線制御装置21に送るようになっており、これにより、X線制御器21が動作する。
【0016】
架台駆動器16は、コンピュータ22から与えられる制御信号に応答して動作し、その結果、架台2の天板2Aをその上下又はその長手方向に移動させることができる。検出系駆動器17は、コンピュータ22から与えられる制御信号に応答して動作し、支持体11を回転駆動させることができる。
【0017】
データ収集器18は、検出器13で検出されたX線及びガンマ線の光子数に応じたデータを収集し、このデータをコンピュータ22に送る。
【0018】
コンピュータ22は、CPUの他、メモリなどのコンピュータとして動作するための構成要素を備え、CPUがメモリに予め格納されているプログラムを起動させて、データ収集器18を介して収集されたX線及びガンマ線の光子数に応じたデータに基づいて断層像を再構成又は作成するとともに、X線制御器21、架台駆動器16、及び検出系駆動器17の動作を制御する。そのための各種のプログラムが予め、一例として、コンピュータ22のメモリに格納されている。コンソール23の表示器25には、コンピュータ22に制御下において、再構成又は作成された断層像や必要な情報が表示される。入力器24はオペレータが操作上の指示や被検体情報を入力するためにオペレータによって使用される。画像記憶装置26はコンピュータ22の外部記憶手段として機能するもので、再構成又は作成された画像のデータなどが格納される。
【0019】
なお、図1に示す装置構成の場合、X線管12及び検出器13の対は一つであるが、必ずしもこれ限定されることはなく、例えば図3に示ように、X線管12A(12B,12C)と検出器13A(13B,13C)の対を3つ、ガントリ1の撮像空間Sの周囲に等角度間隔で配置するようにしてもよい。これにより、X線管12及び検出器13の移動量を少なくして短時間のうちにデータ収集を行うことができる。
【0020】
前述した図1のX線・ガンマ線撮像装置の構成要素のうち、検出器13について更に詳しく説明する。
【0021】
検出器13は、被検体Pを透過してきたX線を入射させ、その入射光子の数に応答した電気信号を出力する。その一方で、この検出器13は、被検体に投与される99mTc, 201Tl, 123I, 133Xeなどのガンマ線放出核種から放出される単一光子(シングルフォトン)を計数し、その計数結果に応じた電気信号を出力する。
【0022】
つまり、この検出器13は、画素を2次元的に配置した放射線検出器として構成されている。この検出器13は、放射線エネルギーのディスクリミネータTH1,TH2,…(図4、図6参照)を2本以上有する光子計数形放射線検出回路を画素毎に有し、かつ各画素の信号検出情報とディスクリミネータによるエネルギー所属情報を画素単位で独立に出力する出力構造を有する。
【0023】
ここで図7を参照して、この検出器13の電気的な概略構成をブロック図として説明する。
【0024】
この検出器13は、X線及びガンマ線を受けるシンチレータ121、FOS(Fiber Optics Plate)122、CMOS形の光電変換器123、及びCMOS形のプリアンプを含む処理回路124から成る4つの要素及び電気回路をプレート状または層状に形成し、相互に積層した構造を採用している。このシンチレータ121から処理回路124までのブロック図を図7に示す。
【0025】
シンチレータ121は、放射線を光に変換するCsI材料をプレート状に形成したもので、放射線を入射させる入射面と光を出射する出射面と互いに背中合わせの状態で有する。FOS122は、径の細い(直径5〜10μm)光ファイバを束ね且つ面状に直立して敷き詰めた束体であり、この束体を、各光ファイバの軸方向が放射線の入射方向となるように、シンチレータ121及び光電変換器123の間に介在させている。
【0026】
光電変換器123は、FOS22を通して入射する光を電気信号に変換する半導体層であり、基板上にCMOSで光電変換素子が各画素に作り込まれる。つまり、作り込まれる個々の光電変換素子の大きさが画素に対応しており、画素のサイズは例えば200μm×200μmになっている。なお、各画素の縦、横のサイズは互いに異なっていてもよい。
【0027】
さらに、処理回路124も、基板上にCMOSで形成され、光電変換器123から出力される画素毎の電気信号を増幅する。この画素毎の電気信号は、次いで、図7に示す如く、6種類の比較器125〜125の比較入力端に並列に入力する。これらの比較器125〜25の基準入力端には、エネルギー弁別のための互いに異なる閾値DC1〜DC6(例えばDC1<DC2、…、DC5<DC6)が与えられている。このため、ある画素に入力したX線の光子のエネルギーレベルに応じた6個のディスクリミネータが形成される。比較器125〜125の出力端はカウンタ126〜126に夫々接続され、それらのカウンタ126〜126の計数値はシリアルフォーマットで読み出される。したがって、上記ディスクリミネータで画素毎のX線(光子)のエネルギーが弁別され、各エネルギー領域に属するエネルギーを有するX線の光子数が次段のカウンタ126(〜126)で計測され、デジタル量の計測値としてシリアルに出力される。
【0028】
この検出器13の前面、すなわち放射線入射面には前述したようにコリメータ14が配設されている。このコリメータ14は、検出器13に対向して設置されたX線管12からのX線ビームのみに指向させるコーンビーム状のコリメータとして構成されている。これにより、X線は勿論のこと、検出器13、すなわちコリメータ14の視野内の物体から放射され検出器13に入射するガンマ線を並行して(同時に)コリメートすることができる。
【0029】
ここで、X線と使用するガンマ線放出核種とのエネルギースペクトルの典型例を挙げると図3,4のようになる。これらの図において、横軸は放射線のエネルギーであり、縦軸は光子数(計数値)を示す。これらから分かるように、X線の光子数はガンマ線のそれに比べて圧倒的に多い。その次の傾向として、図3に示すように「X線とガンマ線のスペクトル分布がエネルギーを表す軸上で互いにオーバーラップする」と言える場合と、図4に示ように「オーバーラップせずに互いに分離していると言える」場合とがある。本実施形態の場合、図3に示ように、「X線とガンマ線のスペクトル分布が互いにオーバーラップする」場合には、収集シーケンスは図5のものが使用される。また、図4に示ように、「X線とガンマ線のスペクトル分布が互いにオーバーラップしていない」場合には、収集シーケンスは図6のものが使用される。
【0030】
図5の収集シーケンスの場合、X線曝射とガンマ線の収集とを交互に時分割で実行する。X線の曝射はX線管12にパルス状の高電圧を供給すればよく、被検体Pを透過したときX線の光子がほぼ粒子と見做されて検出器13により検出される。一方、被検体Pに投与されたガンマ線放出核種からはガンマ線が常に放出されているので、このガンマ線の光子も検出器13によりほぼ粒子と見做されて検出器13により検出される。しかしながら、X線光子はガンマ線のそれに比べて圧倒的に多いため、X線光子の収集中にガンマ線の光子が検出器13に入射しても、その影響は無視できる。このため、X線曝射期間TxがX線管へパルス高電圧の印加期間として設定され、このX線曝射期間Txが終わると一定期間のガンマ線収集期間Tγが設定される。検出器13はかかる両期間Tx及びTγの区別は無く継続して収集する。両期間Tx及びTγはコンピュータ22で識別するようになっているから、それぞれの期間Tx及びTγにおいて収集されたデータをX線及びガンマ線の光子数を表す情報として認識できる。
【0031】
反対に、図6の収集シーケンスの場合、X線曝射とガンマ線の収集とが並行して実行される。X線の収集時にガンマ線の収集も行われており、X線光子の収集データにガンマ線の光子もノイズとして入り込むこともあるが、その量は無視できるので、このように並行収集を行うことができるのである。なお、図6に示す放射エネルギーのディスクリミネータTH1,TH2,…の場合、X線とガンマ線のエネルギースペクトルが分離しているため、例えばエネルギーが下側のディスクリミネータTH1,TH2,TH3、TH4によりX線エネルギーの弁別を画素毎に行なうことができ、上側のディスクリミネータTH4,TH5,TH6によりガンマ線エネルギーの弁別を画素毎に行なうことができる。なお、ディスクリミネータTH1,TH2,…の数や値、すなわちエネルギーウィンドウの幅は任意である。
【0032】
このようにして、図5の収集シーケンスのように、X線は間欠照射されて検出器13で検出され、ガンマ線は常時物体から放出され検出器13で検出され、ほぼ数え落しによる計数特性の劣化がなく、かつX線撮像時はほぼX線透過画像とみなせ、ガンマ線のみの撮像時はガンマ線の放射画像とみなせ、X線とガンマ線とをディスクリミネータで分離し収集できる。
【0033】
また、検出器13とX線管12が物体に対向して設置され、回転データ収集機構、すなわち支持体11、検出系駆動系17、コンピュータ22)によりX線CTとSPECTの同時断層撮影が可能になる。この場合、X線CT画像とSPECT画像とを画像の拡大や縮小、位置あわせなどの処理を行うことなしに重ね合わせ表示することができる。
【0034】
また、当該のSPECT画像の対象が、モノクロナール抗体をイメージング用ガンマ線放出核種で標識し、その集積量と部位をSPECT画像から定量的に把握し、同一抗体を治療用放射線放出核種で標識したアイソトープ内用療法において、その治療計画並びに治療効果判定を当該SPECT画像およびX線CT画像から行うことも可能になる。
【0035】
また、本実施形態では、エネルギーディスクリミネータをSPECT収集における使用核種のエネルギーウィンドウ設定と同様に設定し、別途、X線データ収集において設定されたエネルギーウィンドウ情報から得られたX線CTの画像から、当該核種のエネルギーの線減衰係数を算出し、SPECT画像の定量化を行うことができる。
【0036】
なお、前述した検出器に使用するX線やガンマ線などの放射線を検出する検出素子として、CdTe, CdZnTe, TlBr, HgI2などの直接変換型の半導体検出素子を用いることができる。勿論、このような直接変換型のものに代えて、CsIなどのシンチレータと光電変換素子を組み合わせた放射線検出器を用いてもよい。さらには、シンチレータと光電変換素子の間にFOS(ファイバーオプティックプレート)を介在させることで集光効率のアップや散乱光を防止を図ることもできる。
【0037】
また、放射線検出素子は、柱状に加工されたZnO、GOSなどのシンチレータであり、かつこの柱状シンチレータを光学的に分離し二次元状に配置したものに光電変換素子を組み合わせたものであってもよい。光電変換素子としては、CMOSまたはCCDなどの2次元素子を用いることができる。さらに、光電変換素子は、フォトダイオードから構成された2次元素子であってもよい。
【0038】
さらに、本実施形態に係るX線・ガンマ線撮像装置によれば、X線管12と検出器13の位置を固定し、撮像物体のみを相対的にその体軸方向に動かすことによって得られたX線画像、あるいはX線の照射を行わずに検出器13の位置を固定して撮像物体のみを相対的にその体軸方向に動かすことによって得られるガンマ線のプラナー画像を用いた診断も可能である。さらには、X線の照射を行わずに、検出器13の位置を固定し、かつ、撮像物体を動かさないで固定した状態で撮影する静止画像を取得することもできる。これらの種々の撮像法は、コンピュータ22が予め有する撮影シーケンスの元で実行される。この診断の場合、X線画像およびガンマ線のプラナー画像を同時に撮影し、拡大・縮小や位置あわせの処理を行わずに、これらの2種類の画像を重ね合わせて診断することもできる。また、この重ね合わせ診断に代えて、X線画像あるいはガンマ線のプラナー画像ならびに本X線・ガンマ線撮像装置によって得られたX線CT画像あるいはSPECT画像を組み合わせた診断も可能である。
【0039】
さらに本実施形態によれば、ガンマ線のデータを収集する際に、複数のエネルギーウィンドウを指定し、このデータからSPECT画像における散乱線補正を行なうことができる。
【0040】
また、X線およびガンマ線の光子を収集する際に、これらを同時に収集し、かつX線の照射時以外に当該のウィンドウを用いて、SPECT画像の散乱補正のためのデータ収集を例えばTEW法:Triple Energy Window法)で行うこともできる。
【0041】
さらに、設定したエネルギーウィンドウ内のX線およびガンマ線の光子数を計測する代わりに、光子エネルギーの積分値を計測して、このデータを活用することもできる。
【0042】
さらには、X線のデータを収集する際に複数のエネルギーウィンドウを設け、これらのデータからX線画像におけるビームハードニングの影響、低コントラスト部のコントラスト強調、石灰化の強調やその程度を表す指標の算出に活用することもできる。
【0043】
以上を要約すると、以下のようになる。本発明では検出器系を一新し、放射線検出器を、ピクセル構造を有する微細画素(50μm×50μm〜1000μm×1000μm)で構成し、画素毎にプリアンプと2本以上のディスクリミネータを実装し、各画素が独立にエネルギー情報とカウント値を出力できると共に、各画素の計数率特性で1M〜2Gcps/mm2を実現する。このことによって、光子計数形でありながら医療用X線計測にも十分に耐えられる計数率特性を持ち、X線とガンマ線のどちらも対応できる検出器を実現する。同時にX線の発生位置を焦点とするコーンビーム状のコリメータを検出器の前面に配置することで、映像化の対象となる物体から発生する散乱線を除去し、さらにこのコリメータがガンマ線計測時には体内からのガンマ線の画像化に必要なガンマ線にげ限定する働きを併せ持つものとする。コリメータの孔の大きさ、長さ、隔壁厚などは、画像化したいガンマ線の検出感度並びに分解能、さらには、X線の散乱線除去の効果などを鑑みてさまざまに用意される。
【0044】
例えば医療用途では、このような検出器を用いてX線CTとSPECTにおける同一断面に対するデータ収集を同時に、あるいは時分割で行うことが可能となり、患者の移動がないので2種の再構成画像の重ね合わせにおける位置合わせが不要となる。この際、X線エネルギーとSPECTの核種のエネルギーが類似する場合は、時分割でX線を照射し、X線を照射していない時にSPECTデータ収集を、X線を照射している時には光子の量が支配的なX線のデータ収集を行うことになる。これは、投与される放射性医薬品の放射能が決まっており、その放射能から発せられる光子の数は、通常のX線撮影の光子の数の1/10000程度であるため、同時収集を行ってもガンマ線の影響は無視できるからである。もしも、X線エネルギー領域とガンマ線の光電ピークエネルギーが異なれば、収集のためのエネルギーウィンドウを区別することで同時に種類のデータ収集が可能になる。このような場合でも、たとえば、X線収集用のエネルギーウィンドウで、X線照射時以外でガンマ線のデータを収集して、ガンマ線の散乱線補正などに活用することもできる。
【0045】
また、エネルギーディスクリミネータをX線とガンマ線とで類似に設定すればX線CT画像から得られた線減衰計数の値をSPECT画像の補正に利用することができ、かりに、同様に設定できない場合であっても、エネルギーウィンドウを複数設定し、計測されたX線データから媒質の同定を行い、その媒質に対する当該ガンマ線エネルギーの値を参照することで線減衰係数の分布を求めることも可能である。これにより、真のSPECT画像の定量化が実現できることになり、診断や治療の領域においても画期的な効果が予想される。
【0046】
さらに、このようなX線光子をエネルギー毎に弁別して収集できる特徴を利用して、X線CT画像に発生する、ビームハードニングアーチファクトの低減、軟部組織などの低コントラスト部のコントラスト強調、血管内などの石灰化の度合いを表示するための指標などの算出に用いることも可能である。
【0047】
また、一般的な光子計数手法によるX線画像は、処理回路系に起因するノイズの混入を抑えられることや、X線強度がカウント値として表現できるという効果により、照射X線の量を数分の一に減らせる効果もあり、患者の被ばく線量も抑えることも期待できる。また画素が微細であることで、高い空間分解能を実現できることも特徴である。
【0048】
このような特徴は、放射線源とモノクロナール抗体を組み合わせたアイソトープ内用療法の適用において今までにない特徴を発揮し、治療部位を高分解能画像として映像化しながら、投与線量も定量的に把握できることから、正確な治療計画からフォローアップまでを実現することができる。このように、診断画像として機能・形態情報の同時映像化を可能とするのみならず、治療までも同時に行える装置は存在しておらず、新たなアイソトープ内用製剤の開発を促すことにもつながると考えられる。
【0049】
このX線・ガンマ線撮像装置は医学面で活用できるのは当然のこととして、この検出器は工業応用、リバースエンジニアリングの領域でも利用価値がある。その一例は、X線をエネルギー毎に弁別して収集できる能力をもつ検出器をつかった、非破壊定量分析装置としての位置付けである。さまざまなエネルギー領域の線減衰係数を、この検出器はCT画像として表現でき、これらの値から媒質を構成している元素や化合物を特定することができる。この点に関しても、今まで全く存在していなかった計測器の一種としてこの検出器を利用した装置を位置づけることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明に係るX線・ガンマ線撮像装置は、医療分野のみならず産業用においても、X線及びガンマ線をそれぞれ用いた単独の撮像装置の不都合を解消し、極めて有用な機器とである。
【符号の説明】
【0051】
1 ガントリ
2 寝台
12 X線管(放射線源)
13 検出器(放射線検出器)
14 コリメータ
15 高電圧発生器
16 架台駆動器
17 検出系駆動器
18 データ収集器
21 X線制御器
22 コンピュータ
23 コンソール
P 被検体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
画素を2次元的に配置した放射線検出器において放射線エネルギーのディスクリミネータを2本以上有する光子計数形放射線検出回路を画素毎に有し、かつ各画素の信号検出情報とディスクリミネータによるエネルギー所属情報を画素単位で独立に出力する出力構造を有し、この検出器に対向して設置されたX線管からのX線ビームのみに指向させるコーンビーム状のコリメータを前記検出器の前面に配置し、当該コリメータが視野内の物体から放射され前記検出器に入射するガンマ線を同時にコリメートするようにしたことを特徴とするX線・ガンマ線撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線・ガンマ線撮像装置において、
前記X線と前記ガンマ線は同時に入射し、ほぼ数え落としによる計数特性劣化がなく、かつ当該X線と当該ガンマ線をディスクリミネータで分離し収集するようにしたことを特徴とするX線・ガンマ線撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載のX線・ガンマ線撮像装置において、
前記X線は間欠照射して前記検出器で検出され、前記ガンマ線は常時被検体から放出され前記検出器で検出され、ほぼ数え落しによる計数特性の劣化がなく、かつX線撮像時はほぼX線透過画像とみなせ、ガンマ線のみの撮像時はガンマ線の放射画像とみなせ、X線とガンマ線とをディスクリミネータで分離し収集するようにしたことを特徴とするX線・ガンマ線撮像装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のX線・ガンマ線撮像装置において、
前記検出器と前記X線管が被検体に対向して設置され、回転データ収集機構によりX線CTとSPECTの同時断層撮影を行うようにしたことを特徴とするX線・ガンマ線撮像装置。
【請求項5】
請求項3に記載のX線・ガンマ線撮像装置において、
前記X線管と前記検出器の位置を固定し、前記被検体のみをその体軸方向に動かすことによって得られたX線画像、あるいはX線の照射を行わずに前記検出器の位置を固定して前記被検体のみをその体軸方向に動かすことによって得られるガンマ線のプラナー画像を得るようにしたことを特徴とするX線・ガンマ線撮像装置。
【請求項6】
請求項3に記載のX線・ガンマ線撮像装置において、
前記X線の照射を行わずに前記検出器の位置を固定して前記被検体を動かさない得られるガンマ線のプラナー画像を得るようにしたことを特徴とするX線・ガンマ線撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−243395(P2010−243395A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−93920(P2009−93920)
【出願日】平成21年4月8日(2009.4.8)
【出願人】(591193211)株式会社テレシステムズ (5)
【Fターム(参考)】