説明

X線撮影装置およびそのキャリブレーション方法

【課題】X線検出器に対してX線源の移動軸がずれて設置されていても、そのずれを補正でき、被写体の所定の位置の断面について、高精度な合成画像(トモシンセシス画像)を得ることができるX線撮影装置およびそのキャリブレーション方法を提供する。
【解決手段】本発明のX線撮影装置は、所定の移動経路で移動可能なX線源と、X線源を所定の移動経路で移動させる移動手段と、X線源に対向して設けられた撮影台と、撮影台に設けられた平板状のX線検出器と、マーカと、X線源を移動させて少なくとも2つの位置から、それぞれ前記マーカを含む画像を撮影させる制御部と、撮影された各画像についてマーカ像の位置を求め、このマーカ像の位置の相対関係に基づいてX線源の移動軸の、X線検出器に対する傾きを求める画像処理部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、臥位、立位、マンモ等で撮影を行うX線撮影装置およびそのキャリブレーション方法に関し、特に、X線検出器に対してX線源の移動軸がずれて設置されていても、そのずれを補正でき、被写体の所定の位置の断面について、高精度な合成画像(トモシンセシス画像)を得ることができるX線撮影装置およびそのキャリブレーション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、患部をより詳しく観察するために、X線源を移動させて異なる角度から被写体にX線を照射して撮影を行い、得た画像を加算して所望の断層面を強調した画像を得ることができるトモシンセシス撮影が可能なX線撮影装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
トモシンセシス撮影では、例えば、X線源をX線検出器と平行に移動させたり、円、楕円等の弧を描くように移動させて、異なる照射角で被写体を撮影した複数の撮影画像を取得して、これらの撮影画像を再構成して断層画像を作成する。
【0003】
特許文献1には、トモシンセシス撮影の際に、放射線源のみを移動させる第1のモードと、放射線源および検出手段の双方を移動させる第2のモードとのいずれかを撮影条件に応じて選択することができ、選択されたモードにしたがって複数の撮影画像を取得する放射線撮影装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−67503号公報
【特許文献2】特開2000−278606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、トモシンセシス撮影には、X線検出器(X線画像センサ)とX線源の移動軸のアライメントに高い精度が要求されている。特に、天井走行型のX線源を用いたX線撮影装置では、X線源とX線検出器(X線画像センサ)が一体化されておらず、高い精度でアライメントが取れるように設置するのは容易ではない。
従来、トモシンセシス撮影においては、既定のマーカーアッセンブリを用いてキャリブレーションデータを生成する方法が知られている。しかし、この方法では、マーカの精度管理を要する点、SID(X線管焦点・受像面間距離)、X線源の角度、ショット数等の撮影条件毎にキャリブレーションデータを生成する必要がある点等の難点がある。
【0006】
また、上述のもの以外にも、マーカを用いて画像の位置ずれを検出して、X線画像を補正することがなされている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2には、被検体の撮影部位にマーカを有するサポータを装着し、この撮影部位のマスク像とライブ像とを撮影し、マスク像のマーカの位置とライブ像のマーカの位置との誤差を計算してこれが一致するようにしてサブトラクションを行い、カテタリゼーションテーブルの位置ずれにより生じるサブトラクション画像のノイズ発生を防止するX線画像撮影装置が開示されている。
この場合においても、キャリブレーションデータを生成するために、マーカの精度管理を要する点、SID(X線管焦点・受像面間距離)、X線源の角度、ショット数等の撮影条件毎にキャリブレーションデータを生成する必要がある点等の難点がある。
【0007】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、X線検出器に対してX線源の移動軸がずれて設置されていても、そのずれを補正でき、被写体の所定の位置の断面について、高精度な合成画像(トモシンセシス画像)を得ることができるX線撮影装置およびそのキャリブレーション方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、所定の移動経路で移動可能なX線源と、前記X線源を所定の移動経路で移動させる移動手段と、X線源に対向して設けられた撮影台と、前記撮影台に設けられた平板状のX線検出器と、前記撮影台に設けられるマーカと、前記移動手段により前記X線源を移動させて、少なくとも2つの位置から、それぞれ前記マーカを含む画像を撮影させる制御部と、前記撮影された各画像についてマーカ像の位置を求め、このマーカ像の位置の相対関係に基づいて、前記X線源の移動軸の、前記X線検出器に対する傾きを求める画像処理部とを有することを特徴とするX線撮影装置を提供するものである。
前記画像処理部は、前記X線源の撮影位置毎に、前記X線検出器に対する前記傾きを求めることが好ましい。また、前記画像処理部は、前記X線検出器に対する前記傾きを、前記断層画像の再構成に用いることが好ましい。
【0009】
前記X線検出器に対する傾きは、例えば、前記X線検出器の表面と平行な面内での第1の傾きである。
前記画像処理部は、さらに前記撮影された各画像についてマーカ像の大きさの変動を算出し、この変動を用いて前記X線源と前記X線検出器との距離を求めて、前記X線検出器に対する傾きとして、前記X線検出器の表面と直交する面内での第2の傾きを求めることが好ましい。
【0010】
本発明の第2の態様は、X線撮影装置のキャリブレーション方法であって、前記X線撮影装置は、所定の移動経路で移動可能なX線源に対向して設けられた撮影台と、前記撮影台に設けられた平板状のX線検出器と、マーカとを備えており、前記X線源を移動させて、少なくとも2つの位置から、それぞれ前記マーカを含む画像を撮影させる工程と、前記撮影された各画像についてマーカ像の位置を求め、このマーカ像の位置の相対関係に基づいて、前記X線源の移動軸の、前記X線検出器に対する傾きを求める工程を有することを特徴とするキャリブレーション方法を提供するものである。
前記X線源の撮影位置毎に、前記X線検出器に対する前記傾きを求めることが好ましい。
【0011】
また、前記X線検出器に対する前記傾きは、例えば、前記X線検出器の表面と平行な面内での第1の傾きである。
さらに前記撮影された各画像についてマーカ像の大きさの変動を算出し、この変動を用いて前記X線源と前記X線検出器との距離を求めて、前記X線検出器に対する傾きとして、前記X線検出器の表面と直交する面内での第2の傾きを求める工程を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、X線検出器に対してX線源の移動軸がずれて設置されていても、そのずれを補正することができる。このため、トモシンセシスの再構成の際に、高い精度で各画像を用いた再構成をすることができる。これにより、被写体の所定の位置の断面について、高精度な合成画像(トモシンセシス画像)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態に係るX線撮影装置を示す模式図である。
【図2】本発明の実施形態に係るX線撮影装置のX線源とX線検出器との配置状態を示す模式図である。
【図3】本発明の実施形態に係るX線撮影装置で撮影された2つの画像を示す模式図である。
【図4】本発明の実施形態に係るX線撮影装置で撮影された2つの画像の合成画像を示す模式図である。
【図5】(a)および(b)は、本発明の実施形態に係るX線撮影装置で撮影されたマーカのマーカ像の変動を示す模式図である。
【図6】(a)および(b)は、トモシンセシス撮影によるX線断層画像の再構成時の様子を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明のX線撮影装置およびそのキャリブレーション方法を詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るX線撮影装置を示す模式図である。
【0015】
図1に示すX線撮影装置10は、人体等の被写体30をトモシンセシス撮影して、被写体30の任意高さの断面におけるX線断層画像を得るものである。
X線撮影装置10は、例えば、臥位、立位、マンモのトモシンセシス撮影に用いることができる。
X線撮影装置10は、X線検出器18は、ビルトインを用いることができる。また、X線撮影装置10は、カセッテの位置がキャリブレーション前後で変わらなければ、カセッテタイプのX線検出器18を用いることができる。
【0016】
X線撮影装置10は、天井走行型のX線源12、移動部14、X線源制御部15、撮影台16、X線検出器18、マーカ20、画像処理部22、表示部24、出力部26および制御部30を有する。制御部30は、移動部14、X線源制御部15、X線検出器18、画像処理部22、表示部24、出力部26および入力部28に接続されている。
制御部30は、入力部28から入力される指示入力信号に従って、X線源12、移動部14およびX線源制御部15によるX線画像撮影、画像処理部22における画像処理、表示部24における画面表示、および出力部26における出力処理等、X線撮影装置10の動作を制御するものである。
【0017】
入力部28は、撮影開始の指示や後述する切替指示等を含む、各種の指示を入力するための部位であり、例えば、マウスやキーボード等を例示することができる。入力部28を介して指示入力が制御部30に入力されて、X線撮影装置10の各種の動作が制御部30によりなされる。なお、入力部28を介して入力される指示入力は、例えば、表示部24に表示される。
【0018】
X線源12は、撮影台16に対向して天井Hに設けられたレール13に、移動可能に取り付けられている。
なお、レール13は、図2に示すように、X線源12の移動方向(y方向)とX線検出器18の長手方向(Y方向)とが一致するように、すなわち、X線源12の移動方向(y方向)とX線検出器18の長手方向(Y方向)とが平行に配置されている。
【0019】
図1に示すように、レール13には移動部14が設けられている。この移動部14は、例えば、X線源12にベルト(図示せず)、プーリ(図示せず)を介して接続されたステッピングモータ等の駆動部(図示せず)を備える。この移動部14により、X線源12は、レール13に沿って直線移動が可能であり、レール13上の所定の位置に停止することもできる。
なお、移動部14は、X線源12をレール13に沿って直線移動させることができ、かつ所定の撮影位置にX線源12を停止させることができれば、その構成は特に限定されるものではない。
また、X線源12の移動経路は、直線に限定されるものではなく、円弧状であってもよく、この場合、レール13が円弧状に設けられる。
【0020】
X線源12は、撮影台16の表面16a上の被写体MにX線(放射線)を照射するものであり、被写体Mの方向にX線の照射角度を変えることができるものである。X線源12には、一般的なX線撮影装置に用いられる、X線の照射角度を変えることができるX線源を用いることができる。X線源12には、例えば、図示はしないがコリメータ(照射野絞り)が設けられている。
X線源12は、X線源制御部15に接続されている。このX線源制御部15により、X線源12によるX線の照射およびX線の照射角度が制御される。撮影条件に応じて、移動部14によりX線源12が所定の撮影位置に移動された後、X線源制御部15により、被写体Mの方向にX線の照射角度を変えられた後、X線源12から所定強度のX線を所定の時間だけ照射させる。すなわち、X線源12から、所定の照射量(線量)のX線を被写体Mに向けて照射させる。
【0021】
撮影台16は、表面16aに、人、動物などの被写体Mが載るものである。被写体Mとして、例えば、人が臥位でこの撮影台16の表面16aに載る。
また、撮影台16の裏面16bにフラットタイプ(平板状)のX線検出器18(以下、FPD18という)が、レール13に対向して設けられている。本実施形態においては、上述のように、FPD18の長手方向(Y方向、図2参照)と、レール13の長手方向、すなわち、X線源12の移動方向(y方向)とが平行になるように設置される。
【0022】
FPD18は、X線の受光面を上向きにして撮影台16の裏面16bに配設されている。FPD18は、被写体Mを透過したX線を検出して光電変換し、撮影された被写体MのX線画像に対応するデジタル画像データ(投影データ)を取得するものであり、検出器筐体の中に複数の画素が2次元マトリックス状に配置されてなる撮像面がある。FPD18から画像処理部22にデジタル画像データが出力される。なお、上述のようにX線源12の移動方向(y方向)とFPD18の長手方向(Y方向)とが平行になるように配置されており、X線源12の移動方向(y方向)は、FPD18の画素配列方向と一致するように配置される。
【0023】
ここで、本発明において、“傾き”とは、複数の画素の並び(2次元マトリックスの配列方向)に対する傾きのことである。
FPD18としては、X線(放射線)を電荷に直接変換する直接方式、X線(放射線)を一旦光に変換し、変換された光をさらに電気信号に変換する間接方式等、各種方式のものが利用可能である。また、X線源12の移動方向に対してFPD18を移動可能に構成してもよい。
【0024】
また、撮影台16には、FPD18が設けられている範囲内にマーカ20が、例えば、1個設けられている。このマーカ20は、FPD18の表面18aに対して隙間をあけて撮影台16に設けられている。
マーカ20は、被写体Mのトモシンセシス撮影を行う前、例えば、装置起動時に撮影され、撮影された複数枚の投影データ(X線画像)のキャリブレーションのために用いられるものである。
【0025】
マーカ20は、例えば、金属、好ましくは原子番号の大きい金属であって、放射線を透過しにくい材質のものである。マーカ20の形状は、十字穴付き形状のように、マーカ20の中心が分かりやすいものが望ましい。マーカ20の数は、特に限定されるものではないが、複数あってもよい。複数の場合、各マーカの識別を容易にするために、マーカはそれぞれ異なることが好ましい。さらには、マーカ20が複数の場合、例えば、4個設ける。なお、マーカ20が複数の場合、その配置パターンは何ら限定されないが、例えば、矩形状に配置する。
また、マーカ20は、撮影台16に対して着脱自在であってもよい。この場合、キャリブレーションのときにだけ、例えば、装置起動時等に、マーカ20を撮影台16上に適当に設置して撮影すれば、キャリブレーションすることができる。このように、マーカ20を着脱自在にすることにより、容易にキャリブレーションすることができる。
【0026】
本実施形態のX線撮影装置10において、トモシンセシス撮影を行う場合、移動部14により、X線源12をy方向に移動しつつ、所定の撮影位置で、被写体Mの方向にX線の照射角度を変えて、異なる撮影角度(一定の時間間隔)で被写体MにX線が照射される。X線源12から照射されたX線は、被写体Mを透過してFPD18の受光面に入射され、FPD18により検出されて光電変換され、撮影された被写体MのX線画像に対応する投影データ(デジタル画像データ)が取得される。
【0027】
トモシンセシス撮影の場合、1回の撮影操作により、被写体Mの、撮影角度の異なる複数枚(例えば、20〜80枚)のX線画像が撮影され、FPD18から、撮影された複数枚のX線画像に対応する投影データ(デジタル画像データ)が順次画像処理部22(記憶部22a)に出力される。
【0028】
画像処理部22は、FPD18で取得された複数枚のX線画像の投影データが入力されて、これら複数枚のX線画像の投影データを用いて画像処理(補正処理、画像合成処理等を含む)を行って、被写体Mの任意高さの断面におけるX線断層画像を再構成する部位である。画像処理部22は、記憶部22a、補正部22b(キャリブレーション部)および再構成部22cを有する。
【0029】
記憶部22aは、FPD18で取得されたX線画像の複数枚の投影データが入力されて、これらのX線画像の投影データを記憶するものである。
また、記憶部22aには、後述するように、投影データにおけるマーカ20の設計上の大きさ、ならびにずれ量(シフト量δ)の閾値等も記憶される。
【0030】
補正部22bは、X線源12の各撮影位置における位置のずれ量(X線源12の位置情報)を算出し、その位置のずれ量が所定の値(例えば、閾値)よりも大きい場合、ずれ量が大きい撮影位置で撮影された投影データのX線源12の位置情報(X線管球位置情報)を補正するものである。すなわち、トモシンセシス撮影で得られたX線画像の投影データの全てについて、ずれ量を算出し、その位置のずれ量が所定の値(例えば、閾値)よりも大きい場合、ずれ量が大きい撮影位置で撮影された投影データのX線源12の位置情報(X線管球位置情報)を補正するものである。
【0031】
なお、ずれ量に対して、閾値を設定することなく、全ての投影データをずれ量に基づいてのX線源12の位置情報(X線管球位置情報)を補正するようにしてもよい。
なお、X線源12の位置情報(X線管球位置情報)は、設計値(複数の画像をそれぞれどの位置で撮るかの目標値)をベースにしてX線源12の移動軸が傾いている分を補正することによって、真のX線源12の位置に近い情報に補正して、再構成演算に利用される。また、補正部22bは、マーカ20の画像認識機能を有するものである。
【0032】
本実施形態において、X線源12の移動軸のFPD18(X線検出器)に対する傾きとは、X線源12の撮影位置における位置のずれ量のことである。例えば、図2に示すFPD18の長手方向(Y方向)に対するX線源12の移動方向(yθ方向)のずれ量である。更には、X線源12の撮影位置における位置のずれ量には、図1に示すようにX線源12とFPD18の表面18aとの距離(X線源−FPD間の距離L)のずれ量も含まれる。
【0033】
補正部22bでは、所定の値(例えば、閾値)よりもずれ量が大きい場合、位置のずれ量に基づいて、例えば、FPD18の長手方向(Y方向)に対するずれの場合には、ずれ量に応じた分だけ、X線源12の撮影位置を補正する。
【0034】
また、補正部22bでは、X線源12とFPD18の表面18aとの距離(X線源−FPD間の距離L)のずれ量に対しては、X線源−FPD間の距離Lが設定された距離から変化すると、撮影画像におけるマーク20の大きさが変わる。このため、X線源−FPD間の距離Lのずれ量に対して、マーカ20の変化率、すなわち、拡大率または縮小率を求めておき、これを、例えば、記憶部22aに記憶させておく。この拡大率または縮小率に応じて、投影データを拡大または縮小することにより、図1に示すz方向におけるずれを補正することができる。
なお、補正部22bにおいて、上述の位置のずれ量および距離のずれ量の両方に対して補正をしてもよいことはもちろんである。
【0035】
再構成部22cは、必要に応じてなされた補正部22bによる補正処理後の投影データを含む、複数枚のX線画像の投影データを、必要に応じて補正されたX線源12の位置情報(X線管球位置情報)を用いて画像合成処理を施し、被写体Mの任意高さの断面におけるX線断層画像を再構成するものである。
【0036】
なお、画像処理部22(記憶部22a、補正部22b(キャリブレーション部)および再構成部22c)は、ハードウェア(装置)で構成することに限定されるものではない。例えば、記憶部22aに記憶された投影データに対して、画像処理部22の補正部22b(キャリブレーション部)および再構成部22cによる処理を、コンピュータに実行させるためのプログラムとすることもできる。
【0037】
表示部24は、入力部28から制御部30に入力される指示入力信号の内容、およびこの指示入力信号に従って、画像処理部22により再構成されたX線断層画像等を表示する部位であり、例えば、液晶ディスプレイ等のようなフラットパネル型ディスプレイを例示することができる。
【0038】
出力部26は、入力部28から制御部30に入力される指示入力信号に従って、画像処理部22により再構成されたX線断層画像を出力する部位であり、例えば、X線断層画像をプリント出力する各種のプリンタ、X線断層画像のデジタル画像データを各種の記録媒体に保存する記憶装置等を例示することができる。
【0039】
本実施形態のX線撮影装置10を用いたトモシンセシス撮影においては、上述のように、FPD18(X線検出器18)とX線源12の移動軸のアライメントに高い精度が要求されている。本実施形態のように、天井走行型のX線源12を用いたX線撮影装置10では、X線源12とFPD18が一体化していないため、X線源12とFPD18とを高い精度で設置することが難しい。このため、X線源12を移動させた場合、図2に示すように、X線源12がFPD18の長手方向(Y方向)に対して、ずれてyθ方向に移動し、その状態で得られた撮影画像を用いて再構成されることがある。この場合、高精度な合成画像(トモシンセシス画像)を得ることができない。
そこで、本実施形態においては、以下のようにしてキャリブレーションを行い、X線源12のFPD18に対する移動方向のずれを補正することができる。
【0040】
以下、本実施形態のX線撮影装置10のキャリブレーション方法について説明する。
まず、被写体Mのトモシンセシス撮影を行う前、例えば、装置起動時に、X線源12を、移動部14により、移動方向(y方向)に移動させつつ、少なくとも2つの画像を、それぞれマーカ20を含むようにして撮影する。この場合、例えば、図3に示すように、第1の画像40と第2の画像42が得られる。
この場合、X線源12の移動方向(y方向)と、FPD18の長さ方向(Y方向)とが平行であれば、マーカ20の位置は、FPD18の長さ方向(Y方向)と直交するX方向における位置が第1の画像40と第2の画像42とで同じである。一方、X線源12の移動方向(y方向)が、FPD18の長さ方向に対してずれていれば、X方向における位置が第1の画像40と第2の画像42とで、例えば、δだけずれる。すなわち、δだけシフトする。
【0041】
このシフト量δと、第1の画像40と第2の画像42の撮影位置間の距離dとにより、X線源12のずれ角θを求めることができる。すなわち、ずれ角θは、θ=tan−1(δ/d)により算出することができる。
なお、図4に示すように、第1の画像40と第2の画像42とを、撮影画像のX方向の端を合わせて合成して合成画像44を得て、シフト量δを求め、このシフト量δと、第1の画像40と第2の画像42の撮影位置間の距離dとにより、X線源12のずれ角θを求めることもできる。このように、マーカ20の撮影画像の位置の相対関係を用いてX線源12のずれ角θ(第1の傾き)を求めることができる。
ここで、ずれ角θ(第1の傾き)とは、上述の傾きのことから、複数の画素の並び(2次元マトリックスの配列方向)に対するものである。
【0042】
X線源12のシフト量δ、ずれ角θを用いて、トモシンセシス画像を得る際に、各撮影画像の撮影位置(X線源12の位置情報(X線管球位置情報))を調整した後、再構成する。これにより、高精度なトモシンセシス画像を得ることができる。なお、X線源12のシフト量δ、ずれ角θを用いて各撮影画像の位置を調整した後ではなく、X線源12のシフト量δ、ずれ角θを用いて再構成してもよい。
【0043】
また、上述のように、撮影画像におけるマーカ20の大きさの変動率とX線源−FPD間の距離Lとの関係が予め求められており、例えば、記憶部22aに記憶されている。これにより、図5(a)に示すマーカ20が図5(b)に示すマーカ21のように大きさが変動した場合でも、X線源−FPD間の距離Lが得られる。この場合、X線源12のFPD18の表面に対して直交する面におけるずれ量およびずれ角、すなわち、図1に示すz方向におけるずれ量およびずれ角を求めることができる。このように、マーカ20の撮影画像の位置の相対関係を用いてX線源12のz方向におけるずれ角(第2の傾き)を求めることができる。
【0044】
X線源12のFPD18の表面に対するずれ量およびずれ角を用いて、トモシンセシス画像を得る際に、各画像の撮影位置(X線源12の位置情報(X線管球位置情報))での大きさを調整した後、再構成する。これにより、高精度なトモシンセシス画像を得ることができる。なお、FPD18の表面に対するずれ量およびずれ角を用いて各画像での撮影物の大きさを調整した後ではなく、FPD18の表面に対するずれ量およびずれ角を用いて再構成してもよい。
本実施形態においては、以上のようにして、キャリブレーションを行うことができる。
【0045】
なお、上記X線源12のシフト量δおよびずれ角θ、ならびにz方向におけるずれ量およびずれ角の算出、すなわち、キャリブレーションは、撮影台16の表面16a上に被写体M(患者)がいない状態で行うことが好ましいが、被写体M(患者)の撮影状態で行ってもよい。
また、X線源12の移動軸が真直でない場合、すなわち、レール13がFPD18の長手方向(Y方向)と平行でない場合の補正を可能にするため、上記X線源12のシフト量δ、ずれ角θならびにz方向におけるずれ量およびずれ角は、X線源12の位置毎に求めておき、記憶部22aに、例えば、テーブルの形式で記憶しておいて、トモシンセシス撮影の際に利用してもよい。
【0046】
次に、X線撮影装置10のトモシンセシス撮影について説明する。
まず、被写体Mが撮影台16の表面16aに位置決めされた後、入力部28から撮影開始の指示が与えられると、制御部30の制御によりトモシンセシス撮影が開始される。
【0047】
撮影が開始されると、移動機部14により、X線源12をy方向に移動しつつ、所定の撮影位置で、被写体Mの方向にX線源12の照射角度を変えて、異なる照射角度でX線が被写体Mに照射され、1回の撮影操作で撮影角度の異なる複数枚の投影データ(X線画像)が得られる。そして、被写体MのX線画像の撮影が行われる度に、FPD18から、撮影されたX線画像に対応する投影データが画像処理部22の記憶部22aに出力され、FPD18で取得された複数枚のX線画像の投影データが記憶部32に記憶される。
【0048】
次に、予め補正部22bには、各撮影位置毎に、位置ずれがあれば、そのずれ量が算出されている。補正部22bにより、位置ずれがあるものについては、投影データの撮影位置(X線源12の位置情報(X線管球位置情報))が補正される。補正された撮影位置(X線源12の位置情報(X線管球位置情報))が再構成部22cに出力される。
次に、再構成部22cにおいて、投影データおよび補正された撮影位置(X線源12の位置情報(X線管球位置情報))を用いて、被写体Mの任意高さの断面におけるX線断層画像が再構成される。このようにして、撮影位置の位置ずれを補正しているため、被写体Mの所定の位置の断面について、高精度な合成画像(トモシンセシス画像)を得ることができる。
【0049】
例えば、得られたトモシンセシス画像(X線断層画像)は、例えば、表示部24に表示される。また、トモシンセシス画像(X線断層画像)は出力部26に出力され、出力部26において、例えば、トモシンセシス画像(X線断層画像)がプリント出力され、X線断層画像のデジタル画像データが記録媒体に保存される。
【0050】
次に、トモシンセシス撮影のX線断層画像の再構成について説明する。
図6(a)および(b)は、トモシンセシス撮影によるX線断層画像の再構成時の様子を示す概念図である。
トモシンセシス撮影時に、図6(a)に示すようにX線源12が位置S1からスタートしてS3まで移動し、S1、S2、S3の各線源位置において被写体Mに放射線が照射され、それぞれ、被写体MのX線画像P1、P2、P3が得られるものとする。
【0051】
ここで、図6(a)に示すように、被写体Mの高さの異なる2つの位置に撮影対象物A、Bが存在するとする。各撮影位置(撮影時のX線源12の位置)S1、S2、S3において、X線源12から照射されたX線は、被写体Mを透過してFPD18に入射される。その結果、各撮影位置S1、S2、S3に対応するX線画像P1、P2、P3において、2つの撮影対象物A、Bは、それぞれ異なる位置関係で投影される。
【0052】
例えば、X線画像P1の場合、X線源12の位置S1が、X線源12の移動方向に対して、撮影対象物A、Bよりも左側に位置するため、撮影対象物A、Bは、それぞれ、撮影対象物A、Bよりも右側にずれたP1A、P1Bの位置に投影される。同様に、X線画像P2の場合には、ほぼ直下のP2A、P2Bの位置に、X線画像P3の場合には、左側にずれたP3A、P3Bの位置に投影される。
【0053】
撮影対象物Aが存在する高さの断面におけるX線断層画像を再構成する場合、X線源12の位置に基づいて、撮影対象物Aの投影位置P1A、P2A、P3Aが一致するように、例えば、図6(b)に示すように、X線画像P1を左へ、X線画像P3を右にシフトさせて合成する。これにより、撮影対象物Aが存在する高さのX線断層画像が再構成される。同様にして、任意高さの断面におけるX線断層画像も再構成することができる。
【0054】
なお、X線断層画像の再構成方法としては、代表的にシフト加算法が利用される。シフト加算法は、それぞれのX線画像の撮影時におけるX線源12の位置に基づいて、撮影した複数枚の投影データ(X線画像)の位置を順次シフトして加算するものである。
【0055】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明のX線撮影装置およびそのキャリブレーション方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0056】
10 X線撮影装置
12 X線源
13 レール
14 移動部
15 X線源制御部
16 撮影台
18 X線検出器(FPD)
20 マーカ
22 画像処理部
24 表示部
26 出力部
28 入力部
30 制御部
M 被写体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の移動経路で移動可能なX線源と、
前記X線源を所定の移動経路で移動させる移動手段と、
X線源に対向して設けられた撮影台と、
前記撮影台に設けられた平板状のX線検出器と、
前記撮影台に設けられるマーカと、
前記移動手段により前記X線源を移動させて、少なくとも2つの位置から、それぞれ前記マーカを含む画像を撮影させる制御部と、
前記撮影された各画像についてマーカ像の位置を求め、このマーカ像の位置の相対関係に基づいて、前記X線源の移動軸の、前記X線検出器に対する傾きを求める画像処理部とを有することを特徴とするX線撮影装置。
【請求項2】
前記X線検出器に対する傾きは、前記X線検出器の表面と平行な面内での第1の傾きである請求項1に記載のX線撮影装置。
【請求項3】
前記画像処理部は、さらに前記撮影された各画像についてマーカ像の大きさの変動を算出し、この変動を用いて前記X線源と前記X線検出器との距離を求めて、前記X線検出器に対する傾きとして、前記X線検出器の表面と直交する面内での第2の傾きを求める請求項1または2に記載のX線撮影装置。
【請求項4】
前記画像処理部は、前記X線源の撮影位置毎に、前記X線検出器に対する前記傾きを求める請求項1〜3のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項5】
前記画像処理部は、前記移動手段により前記X線源が所定の撮影位置に移動されトモシンセシス撮影されて得られた複数の画像を用いて断層画像を再構成する機能を有し、
前記画像処理部は、前記X線検出器に対する前記傾きを、前記断層画像の再構成に用いる請求項1〜4のいずれか1項に記載のX線撮影装置。
【請求項6】
X線撮影装置のキャリブレーション方法であって、
前記X線撮影装置は、所定の移動経路で移動可能なX線源に対向して設けられた撮影台と、前記撮影台に設けられた平板状のX線検出器と、マーカとを備えており、
前記X線源を移動させて、少なくとも2つの位置から、それぞれ前記マーカを含む画像を撮影させる工程と、
前記撮影された各画像についてマーカ像の位置を求め、このマーカ像の位置の相対関係に基づいて、前記X線源の移動軸の、前記X線検出器に対する傾きを求める工程を有することを特徴とするキャリブレーション方法。
【請求項7】
前記X線検出器に対する前記傾きは、前記X線検出器の表面と平行な面内での第1の傾きである請求項6に記載のキャリブレーション方法。
【請求項8】
さらに前記撮影された各画像についてマーカ像の大きさの変動を算出し、この変動を用いて前記X線源と前記X線検出器との距離を求めて、前記X線検出器に対する傾きとして、前記X線検出器の表面と直交する面内での第2の傾きを求める工程を有する請求項6または7に記載のキャリブレーション方法。
【請求項9】
前記X線源の撮影位置毎に、前記X線検出器に対する前記傾きを求める請求項6〜8のいずれか1項に記載のキャリブレーション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−13651(P2013−13651A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149912(P2011−149912)
【出願日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】