説明

X線検査装置

【課題】 被検査物を移動させながら行う検査において、被検査物中の異物を正確に検出することができるX線検査装置を提供する。
【解決手段】 X線を照射するX線源1と、X線源1と対向配置され、X線を検出して検出信号を出力するX線検出器3と、X線源1とX線検出器3との間で、被検査物7を載置し移動させるための被検査物載置部5と、X線検出器3のキャリブレーションデータを作成して記憶させるキャリブレーションデータ作成部31と、キャリブレーションデータに基づいて、被検査物7のX線透過像データを作成するX線透過像データ作成部33とを備えるX線検査装置80であって、キャリブレーションデータ作成部31は、被検査物載置部5を所定の時間駆動しながら取得した複数の検出信号に基づいて、キャリブレーションデータを作成することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、生肉、魚、加工食品、医薬等の被検査物に対し、X線を照射したときのX線の透過量から被検査物中の異物を検出するX線検査装置に関し、特に、被検査物を移動させながら被検査物中の異物を検出するX線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば、生肉、魚、加工食品、医薬等の被検査物中(表面も含む)の異物(金属、骨、ガラス、石、合成樹脂材等)を検出するためにX線検査装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。図6は、X線検査装置の一部の構成を示す図である。このようなX線検査装置110においては、ベルトコンベア5の上方に配置されたX線管1でX線を発生させ、そのX線をスリット等からなるコリメータ(図示せず)を用いて扇状に広がるX線ビームとして形成し、そのX線ビームを、上側になっている搬送ベルト5bの下方に配置された多数のX線検出素子からなる直線状のX線検出器3で検出する。
【0003】
ベルトコンベア5は、2個のローラ5aと、2個のローラ5a間に掛け回された搬送ベルト5bとを有する。そして、上側になっている搬送ベルト5bの上面に、被検査物7は載置されることになる。よって、モータ等の駆動手段(図示せず)によっていずれかのローラ5aが駆動することにより、搬送ベルト5bが循環して移動して、被検査物7が移動することになる。
なお、コリメータは、ベルトコンベア5が移動させる被検査物7の移動方向と直交するように、扇状に広がるX線ビームを形成し、直線状のX線検出器3は、扇状に広がるX線ビームを検出できるように、ベルトコンベア5が移動させる被検査物7の移動方向と直交するように配置されている。
【0004】
これにより、X線検査装置110では、ベルトコンベア5に載置されて移動してくる被検査物7にX線を照射し、コンピュータ109で被検査物7のX線透過像データを作成して、そのX線透過像データを収集して時間軸に沿って並べると、2次元的なX線透過画像を得ることができる。このとき、被検査物7中に異物が存在し、その異物のX線吸収率が被検査物7自体のX線吸収率と異なれば、X線透過画像に異物が陰として表れることになる。
【0005】
ここで、多数のX線検出素子からなる直線状のX線検出器の一例について説明する。図3は、X線検出器の平面図であり、図4は、図3に示すA−A線の断面図である。X線検出器3は、X線を光に変換する蛍光体91と光ダイオード列92と支持体93とからなる。光ダイオード列92は、1画素(1チャンネル)を構成する光ダイオード(92a、92b、・・)を多数個直線状に並べてなるものであって、蛍光体91からの光を電気信号(検出信号)に変換するものである。この電気信号が、コンピュータ109に出力される。
【0006】
このとき、通常、光ダイオードの感受性は、ばらつきがある。よって、光ダイオードからの電気信号の値をX線透過像データとしてそのまま用いるのではなく、予め、搬送ベルト5bを移動させない状態で、被検査物7がないときの各光ダイオードからの電気信号をそれぞれ得て、補正するための定数をそれぞれ決定するキャリブレーションデータを作成している。例えば、光ダイオード92aからの電気信号の値がXCであるならば、光ダイオード92aの定数をXCとし、光ダイオード92bからの電気信号の値がYCであるならば、光ダイオード92bの定数をYCとする。これにより、被検査物7の検査時、X線透過像データとして、光ダイオード92aからの電気信号の値がX’であるならば、値((LEBEL ×X’)/XC)を、光ダイオード92bからの電気信号の値がY’であるならば、値((LEBEL ×Y’) /YC)を用いている。なお、「LEBEL=X線照射時、X線発生器とセンサの間に検査物がない時のX線透過像データとしたいレベル」である。
【特許文献1】特開2006−275853号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、搬送ベルト5bが、図5に示すような、樹脂層95と帆布98とが積層されたものであるときに、帆布98は縦糸97と横糸96とにより形成されている。ここで、近年のX線検出器は、分解能を決定する光ダイオードの微細化に伴い、検出強度が向上し、糸の直径レベルでの分解能が得られるようになった。よって、搬送ベルト5bを移動させない状態で、各光ダイオードからの電気信号を得ると、糸が存在する箇所に対応する光ダイオードと糸が存在しない箇所に対応する光ダイオードとの2種類の状態が存在することになるが、キャリブレーションデータとして、上述したように定数をそれぞれ決定していた。そのため、キャリブレーションデータの作成時に、糸が存在する箇所に対応していた光ダイオードが、被検査物7の検査時に、糸が存在しない箇所に対応したとき、被検査物7中に異物が存在していても、X線透過画像に異物が表れていないように見えることがあった。一方、キャリブレーションデータの作成時に、糸が存在しない箇所に対応していた光ダイオードが、被検査物7の検査時に、糸が存在する箇所に対応したとき、被検査物7中に異物が存在しなくていても、X線透過画像に異物が表れているように見えることがあった。
【0008】
また、搬送ベルトの材質がゴムであるときにも、場所によって密度差は存在するので、上述したような問題があることがあった。
さらに、汚れやすい所で搬送ベルトを用いる場合にも、搬送ベルトに汚れが付着している箇所が存在するので、上述したような問題があることがあった。
【0009】
そこで、本発明は、被検査物を移動させながら行う検査において、被検査物中の異物を正確に検出することができるX線検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するためになされた本発明のX線検査装置は、X線を照射するX線源と、前記X線源と対向配置され、前記X線を検出して検出信号を出力するX線検出器と、前記X線源とX線検出器との間で、前記被検査物を載置し移動させるための被検査物載置部と、前記X線検出器のキャリブレーションデータを作成して記憶させるキャリブレーションデータ作成部と、前記キャリブレーションデータに基づいて、前記被検査物のX線透過像データを作成するX線透過像データ作成部とを備えるX線検査装置であって、前記キャリブレーションデータ作成部は、前記被検査物載置部を駆動しながら取得した複数の検出信号に基づいて、前記キャリブレーションデータを作成するようにしている。
【発明の効果】
【0011】
本発明のX線検査装置によれば、キャリブレーションデータ作成部が、被検査物載置部を一定の時間駆動したときに取得した検出信号に基づいて、キャリブレーションデータを作成するので、例えば、被検査物載置部が縦糸と横糸とにより構成されていても、キャリブレーションデータの作成時に、X線検出器は、糸が存在する箇所と糸が存在しない箇所とに対応する両方の検出信号の値を検出することができる。これにより、例えば、X線検出器により一定の時間で取得した検出信号の値の平均値を算出して、その平均値から補正するための定数を決定するキャリブレーションデータを作成することができる。よって、平均値を算出するので、糸が存在する箇所に対応する検出信号の値と糸が存在しない箇所に対応する検出信号の値との差が大きくなることもなく、被検査物を移動させながら検査を行っても、被検査物中の異物を正確に検出することができる。
また、被検査物載置部に汚れが付着しても、キャリブレーションデータの作成時に、X線検出器により一定の時間で取得した検出信号の値の平均値を算出して、その平均値から補正するための定数を決定するキャリブレーションデータを作成することができる。よって、平均値を算出するので、汚れが付着する箇所に対応する検出信号の値のみを基準とすることもなく、被検査物を移動させながら検査を行っても、被検査物中の異物を正確に検出することができる。
【0012】
(その他の課題を解決するための手段および効果)
また、本発明のX線検査装置においては、前記キャリブレーションデータは、取得した検出信号の値を、平均することにより算出されるものであるようにしてもよい。
また、本発明のX線検査装置においては、前記被検査物載置部は、帆布を有する搬送ベルトを備えるベルトコンベアであるようにしてもよい。
【0013】
そして、本発明のX線検査装置においては、前記X線検出器は、多数のX線検出素子を直線状に配置してなるようにしてもよい。
このような本発明のX線検査装置によれば、例えば、被検査物載置部が縦糸と横糸とにより構成されていても、キャリブレーションデータの作成時に、各X線検出素子は、糸が存在する箇所と糸が存在しない箇所とに対応する両方の検出信号の値を検出することができる。これにより、例えば、各X線検出素子により一定の時間で取得した検出信号の値の平均値を算出して、各平均値から補正するための定数をそれぞれ決定するキャリブレーションデータを作成することができる。よって、各X線検出素子について、それぞれの平均値を算出するので、糸が存在する箇所に対応する検出信号の値と糸が存在しない箇所に対応する検出信号の値との差が大きくなることもなく、全てのX線検出素子が、被検査物を移動させながら検査を行っても、被検査物中の異物を正確に検出することができる。
【0014】
さらに、本発明のX線検査装置においては、前記キャリブレーションデータ作成部は、前記被検査物載置部を任意の移動速度で駆動したときに取得した検出信号に基づいて、前記キャリブレーションデータを作成するようにしてもよい。
このような本発明のX線検査装置によれば、例えば、被検査物載置部が縦糸と横糸とにより構成されている場合に、キャリブレーションデータの作成時に、X線検出器が、糸が存在する箇所と糸が存在しない箇所とに対応する両方の検出信号の値のみを検出すればいいので、被検査物載置部を糸のピッチ(短い距離)移動させるように、被検査物載置部の移動速度を遅くしてもよい。一方、被検査物載置部を長い距離移動させるために、被検査物載置部の移動速度を速くしてもよい。
【0015】
また、本発明のX線検査装置においては、前記被検査物載置部は、カーボン繊維を有するカーボン板を備えるステージであるようにしてもよい。
このような本発明のX線検査装置によれば、キャリブレーションデータ作成部が、被検査物載置部を一定の時間駆動したときに取得した検出信号に基づいて、キャリブレーションデータを作成するので、例えば、被検査物載置部がカーボン繊維を有するカーボン板を備えるステージであっても、X線検出器は、キャリブレーションデータの作成時に、カーボン繊維が存在する箇所とカーボン繊維が存在しない箇所とに対応する両方の検出信号の値を検出することができる。これにより、例えば、X線検出器により一定の時間で取得した検出信号の値の平均値を算出して、その平均値から補正するための定数を決定するキャリブレーションデータを作成することができる。よって、平均値を算出するので、カーボン繊維が存在する箇所に対応する検出信号の値とカーボン繊維が存在しない箇所に対応する検出信号の値との差が大きくなることもなく、被検査物を移動させながら検査を行っても、被検査物中を正確に検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態であるX線検査装置の外観を示す斜視図であり、図2は、X線検査装置の一部の構成を示すブロック図である。X線検査装置80は、本体70と、入口ベルトコンベア60と、出口ベルトコンベア50と、X線検査装置80全体の制御を行う制御系(コンピュータ)20とにより構成される。
入口ベルトコンベア60は、本体70の入口部に設けられるとともに、出口ベルトコンベア50は、本体70の出口部6bに設けられる。
【0018】
本体70は、入口部6aと出口部とを有する箱形の防護箱6と、X線を発生するX線管1と、X線管1からのX線を検出するX線検出器3と、X線管1とX線検出器3との間を被検査物7が通過するように被検査物7を搬送するためのベルトコンベア5と、ベルトコンベア5を駆動する駆動機構(図示せず)とを備える。
【0019】
防護箱6は、全体の構造を支えるフレームであり、入口部から被検査物7を入れるとともに、出口部6bから被検査物7を出すものである。また、防護箱6の内部から有害な量のX線が防護箱6の外部に漏洩しないように、放射線防護材料を用いて形成されている。さらに、入口部と出口部6bとには、防護箱6の内部から有害な量のX線が防護箱6の外部に漏洩しないように、防護のれん8が下げられている。
【0020】
ベルトコンベア5は、2個のローラ5aと、2個のローラ5a間に掛け回された搬送ベルト5bとを有する。そして、上側になっている搬送ベルト5bの上面に、被検査物7は載置されることになる。よって、駆動機構でいずれかのローラ5aが駆動することにより、搬送ベルト5bが循環して移動して、被検査物7が、入口部から出口部6bに移動することになる。
搬送ベルト5bは、図5に示すように、ポリウレタン樹脂層95と帆布98とが積層されたものである。さらに、帆布98は、ポリエステル繊維からなる縦糸97と、ポリエステル繊維からなる横糸96とにより形成されている。
【0021】
駆動機構は、例えば、回転駆動用モータを有する。なお、駆動機構の制御は、コンピュータ20の駆動信号発生部36から出力された駆動信号が与えられることによって実行される。
【0022】
X線管1は、防護箱6の上部に配置され、防護箱6の下部に配置されるX線検出器3に向けてX線を照射するものである。このとき、発生させたX線を、スリット等からなるコリメータ(図示せず)を用いて、ベルトコンベア5が移動させる被検査物7の移動方向と直交するように、扇状に広がるX線ビームとして形成する。
【0023】
X線検出器3は、X線を光に変換する蛍光体91と光ダイオード列92と支持体93とからなる(図3及び図4参照)。また、X線検出器3は、上側になっている搬送ベルト5bの下方に配置されるとともに、下側になっている搬送ベルト5bの上方に配置されるように、上側になっている搬送ベルト5bのすぐ下方に配置される。光ダイオード列92は、1画素(1チャンネル)を構成する光ダイオード(92a、92b、・・)を多数個(例えば、256)直線状に並べてなるものであって、蛍光体91からの光を電気信号(検出信号)に変換するものである。この電気信号が、コンピュータ20に出力される。
このとき、X線検出器3は、X線管からの扇状に広がるX線ビームを検出できるように、ベルトコンベア5が移動させる被検査物7の移動方向と直交するように配置されている。
【0024】
コンピュータ20においては、CPU21を備え、さらに、キャリブレーションデータ等を記憶するメモリ25と、モニタ画面23a等を有する表示装置23と、入力装置であるキーボード22aやマウス22bとが連結されている。
また、CPU21が処理する機能をブロック化して説明すると、X線透過像データ作成部31と、検出信号収得部32と、X線透過像データ表示部33と、駆動信号発生部36と、キャリブレーションデータ作成部38とを有する。また、メモリ25は、キャリブレーションデータ記憶領域41と、検出信号記憶領域42とを有する。
【0025】
駆動信号発生部36は、キーボード22aやマウス22bの種々の操作によって出力されるキャリブレーション信号又は検査信号を受信することによって、ベルトコンベア5を設定速度で駆動する駆動信号を駆動機構に出力する制御を行うものである。例えば、被検査物7の検査時に、キーボード22aやマウス22bの種々の操作によって検出信号を出力することにより、ベルトコンベア5を移動速度10〜60m/minで駆動させ、一方、キャリブレーションデータの作成時に、キーボード22aやマウス22bの種々の操作によってキャリブレーション信号を出力することにより、ベルトコンベア5を移動速度1〜3m/minで駆動させることができる。
【0026】
検出信号収得部32は、X線検出器12の各光ダイオードから出力された電気信号(アナログ信号)から変換されたそれぞれのデジタル信号を収得して、収得した時間とともに検出信号記憶領域42に記憶させる制御を行うものである。例えば、時間t1のときに、光ダイオード92aからのデジタル信号の値X1を記憶させ、光ダイオード92bからのデジタル信号の値Y1を記憶させるように、各光ダイオードからのデジタル信号の値をそれぞれ記憶させ、時間t2のときにも、光ダイオード92aからのデジタル信号の値X2を記憶させ、光ダイオード92bからのデジタル信号の値Y2を記憶させるように、各光ダイオードからのデジタル信号の値をそれぞれ記憶させる。
【0027】
キャリブレーションデータ作成部38は、キャリブレーション信号を受信することによって、検出信号記憶領域42に記憶されたデジタル信号に基づいて、X線検出器3のキャリブレーションデータを作成して、キャリブレーションデータ記憶領域41に記憶させる制御を行うものである。
ここで、X線検出器3のキャリブレーションデータを作成する方法の一例について説明する。
まず、キーボード22aやマウス22bの種々の操作によって出力されるキャリブレーション信号を受信することによって、駆動信号発生部36は、一定の時間、ベルトコンベア5を設定速度で駆動する駆動信号を出力する。このとき、検出信号収得部32は、X線検出器12の各光ダイオードから出力された電気信号(アナログ信号)から変換されたそれぞれのデジタル信号を収得して、収得した時間とともに検出信号記憶領域42に記憶させることを、一定の時間の間、繰り返す。
【0028】
その一定の時間の後に、キャリブレーションデータ作成部38は、時間t1のときに記憶された光ダイオード92aからのデジタル信号の値X1、時間t2のときに記憶された光ダイオード92aからのデジタル信号の値X2、・・・、時間tnのときに記憶された光ダイオード92aからのデジタル信号の値Xnに基づいて、下記の式(1)によりXC(光ダイオード92aのキャリブレーションデータ)を算出して、キャリブレーションデータ記憶領域41に記憶させる。同様に、時間t1のときに記憶された光ダイオード92bからのデジタル信号の値Y1、時間t2のときに記憶された光ダイオード92bからのデジタル信号の値Y2、・・・、時間tnのときに記憶された光ダイオード92bからのデジタル信号の値Ynに基づいて、下記の式(2)によりYC(光ダイオード92bのキャリブレーションデータ)を算出して、キャリブレーションデータ記憶領域41に記憶させる。このように、検出信号記憶領域42に記憶されたデジタル信号に基づいて、各光ダイオードのキャリブレーションデータをそれぞれ作成して、キャリブレーションデータ記憶領域41に記憶させる。
XC=(X1+X2+・・・+Xn)/n・・・(1)
YC=(Y1+Y2+・・・+Yn)/n・・・(2)



【0029】
X線透過像データ作成部31は、キャリブレーションデータに基づいて、被検査物7のX線透過像データを作成する制御を行うものである。
ここで、被検査物7のX線透過像データを作成する方法の一例について説明する。
まず、ベルトコンベア5に被検査物7を載置する。次に、キーボード22aやマウス22bの種々の操作によって出力される検査信号を受信することによって、駆動信号発生部36は、ベルトコンベア5を設定速度で駆動する駆動信号を出力する。
このとき、検出信号収得部32は、X線検出器12の各光ダイオードから出力された電気信号(アナログ信号)から変換されたそれぞれのデジタル信号を収得して、収得した時間とともに検出信号記憶領域42に記憶させる。
さらに、X線透過像データ作成部31は、時間t1のときに記憶された光ダイオード92aからのデジタル信号の値X1’、光ダイオード92bからのデジタル信号の値Y1’、・・・等に基づいて、下記の式(3)、(4)等によりX線透過像データ(X、Y、・・・等)を作成する。
X=(LEBEL × X1’)/XC・・・(3)
Y=(LEBEL × Y1’)/YC・・・(4)



LEBEL=X線照射時、X線発生器とセンサの間に検査物がない時のX線透過像データと したいレベル。
【0030】
X線透過像データ表示部33は、X線透過像データに基づいて、モニタ画面23aにX線透過画像の画像表示を行う制御を行うものである。X線透過像データは、ある瞬間の一次元的なものであるので、X線透過像データを時間軸に沿って並べると、被検査物7の二次元的なX線透視画像が得られる。このとき、被検査物7中に異物が存在し、その異物のX線吸収率が被検査物7自体のX線吸収率と異なれば、X線透過画像に異物が陰として表れることになる。
【0031】
以上のように、X線検査装置80によれば、キャリブレーションデータ作成部38が、ベルトコンベア5を一定の時間駆動したときに取得した検出信号に基づいて、キャリブレーションデータを作成するので、キャリブレーションデータの作成時に、各光ダイオードは、糸が存在する箇所と糸が存在しない箇所とに対応する両方の検出信号の値を検出することができる。これにより、各光ダイオードにより一定の時間で取得した検出信号の値の平均値を算出して、各平均値から補正するための定数をそれぞれ決定するキャリブレーションデータを作成することができる。よって、各光ダイオードについて、それぞれの平均値を算出するので、糸が存在する箇所に対応する検出信号の値と糸が存在しない箇所に対応する検出信号の値との差が大きくなることもなく、全ての光ダイオードが、被検査物7を移動させながら検査を行っても、被検査物7中の異物を正確に検出することができる。
【0032】
(他の実施形態)
(1)上述したX線検査装置80において、モニタ画面23aにX線透過画像の画像表示を行う構成としたが、X線透過像データの閾値を記憶させ、算出されたX線透過像データがX線透過像データの閾値を超えたときには、警告音を出力するような構成としてもよい。
(2)上述したX線検査装置80において、被検査物載置部として、ベルトコンベアを用い、X線検出器として、多数のX線検出素子を直線状に配置してなるものを用いる構成としたが、被検査物載置部として、カーボン繊維を有するカーボン板を備えるステージを用い、X線検出器として、イメージインテンシファイアと当該イメージインテンシファイアの裏面に一体的に取り付けられたCCDカメラとを有するような構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、生肉、魚、加工食品、医薬等の被検査物に対し、X線を照射したときのX線の透過量から被検査物中の異物を検出するX線検査装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態であるX線検査装置の外観を示す斜視図である。
【図2】X線検査装置の一部の構成を示すブロック図である。
【図3】X線検出器の平面図である。
【図4】図3に示すA−A線の断面図である。
【図5】搬送ベルトの構造を示す断面図である。
【図6】従来のX線検査装置の一部の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0035】
1: X線源
3: X線検出器
5: 被検査物載置部
7: 被検査物
20: 制御系(コンピュータ)
22: 入力装置
23: 表示装置
25: メモリ
31: キャリブレーションデータ作成部
33: X線透過像データ作成部
80: X線検査装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を照射するX線源と、
前記X線源と対向配置され、前記X線を検出して検出信号を出力するX線検出器と、
前記X線源とX線検出器との間で、前記被検査物を載置し移動させるための被検査物載置部と、
前記X線検出器のキャリブレーションデータを作成して記憶させるキャリブレーションデータ作成部と、
前記キャリブレーションデータに基づいて、前記被検査物のX線透過像データを作成するX線透過像データ作成部とを備えるX線検査装置であって、
前記キャリブレーションデータ作成部は、前記被検査物載置部を駆動しながら取得した複数の検出信号に基づいて、前記キャリブレーションデータを作成することを特徴とするX線検査装置。
【請求項2】
前記キャリブレーションデータは、取得した検出信号の値を、平均することにより算出されるものであることを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記被検査物載置部は、帆布を有する搬送ベルトを備えるベルトコンベアであることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線検査装置。
【請求項4】
前記X線検出器は、多数のX線検出素子を直線状に配置してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項5】
前記キャリブレーションデータ作成部は、前記被検査物載置部を任意の移動速度で駆動したときに取得した検出信号に基づいて、前記キャリブレーションデータを作成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のX線検査装置。
【請求項6】
前記被検査物載置部は、カーボン繊維を有するカーボン板を備えるステージであることを特徴とする請求項1又は2に記載のX線検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−122184(P2008−122184A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−305286(P2006−305286)
【出願日】平成18年11月10日(2006.11.10)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】