X線検査装置
【課題】本発明の課題は、被検査対象物の各部の厚みや密度の違いによってX線透過率に大きな差が出るような場合であっても高X線透過率部分での異物検出感度と低X線透過率部分での異物検出感度とを良好に保つX線検査装置を提供することにある。
【解決手段】本発明に係るX線検査装置10では、X線照射部13がX線を照射し、X線検出部14が被検査対象物Gの各部分を通過してきたX線を受光してそれらの透過X線の強さに応じたアナログ信号AS0を出力する。A/D変換部41A,41Bは、アナログ信号AS1,AS2をデジタル信号DS1,DS2に変換する。判定処理部20は、デジタル信号からX線画像を生成して被検査対象物の良否判定を行う。アナログ信号処理部43A,43Bは、被検査対象物の各部分について、A/D変換部から異なる2以上のデジタル信号DS1,DS2が出るように、アナログ信号AS0を処理する。
【解決手段】本発明に係るX線検査装置10では、X線照射部13がX線を照射し、X線検出部14が被検査対象物Gの各部分を通過してきたX線を受光してそれらの透過X線の強さに応じたアナログ信号AS0を出力する。A/D変換部41A,41Bは、アナログ信号AS1,AS2をデジタル信号DS1,DS2に変換する。判定処理部20は、デジタル信号からX線画像を生成して被検査対象物の良否判定を行う。アナログ信号処理部43A,43Bは、被検査対象物の各部分について、A/D変換部から異なる2以上のデジタル信号DS1,DS2が出るように、アナログ信号AS0を処理する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被検査対象物の各部の厚みや密度の違いによってX線透過率に大きな差が出るような場合においてX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを良好に保つことのできるX線検査装置が待ち望まれていた。そして、この要望に応じて、過去に、「画素値(デジタル信号)群を閾値を使って2つのデータに分け、これらに強調処理などを施した後に合算してX線画像を作成するX線検査装置」が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−216116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、A/D変換された後のデジタル信号群に強調処理等を施してX線画像を作成する場合、強調処理前のデジタル信号群の時点で異物が明確に把握できるだけの明度差が確保された信号群になっていなければ、異物検出感度が著しく低下するおそれがある。
【0004】
本発明の課題は、被検査対象物の各部の厚みや密度の違いによってX線透過率に大きな差が出るような場合においてX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを著しく低下させることなく良好に保つことのできるX線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明に係るX線検査装置は、X線照射部、X線検出部、A/D変換部、判定処理部及びアナログ信号処理部を備える。X線照射部は、X線を照射する。X線検出部は、被検査対象物の各部分を通過してきたX線を受光して、それらの透過X線の強さに応じたアナログ信号を出力する。A/D変換部は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。判定処理部は、デジタル信号からX線画像を生成して被検査対象物の良否判定を行う。アナログ信号処理部は、被検査対象物の各部分について、A/D変換部から異なる2以上のデジタル信号が出るように、アナログ信号を処理する。
【0006】
このX線検査装置では、アナログ信号処理部が、被検査対象物の各部分について、A/D変換部から異なる2以上のデジタル信号が出るように、アナログ信号を処理する。このため、このX線検査装置では、アナログ信号処理部が、被検査対象物の支配的明度が異なる2以上の領域それぞれについて異物が明確に把握できるだけの明度差が確保されるデジタル信号が生成されるようにアナログ信号を処理すれば、被検査対象物の各部において厚みや密度の違いによってX線透過率に大きな差が出るような場合においてX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを著しく低下させることなく良好に保つことができる。なお、被検査対象物の支配的明度が異なる2以上の領域それぞれについて異物が明確に把握できるだけの明度差が確保されるデジタル信号が生成されるようにアナログ信号を処理するには、アナログ信号に、被検査対象物の支配的明度が異なる2以上の領域それぞれに適した2以上の異なる増幅処理やオフセット調整処理を施せばよい。
【0007】
第2発明に係るX線検査装置は、第1発明に係るX線検査装置であって、A/D変換部は、少なくとも、第1A/Dコンバータと第2A/Dコンバータとを有している。また、アナログ信号処理部は、少なくとも、アナログ信号を増幅して第1A/Dコンバータに送る第1OPアンプと、アナログ信号を増幅して第2A/Dコンバータに送る第2OPアンプとを有している。そして、第1OPアンプと第2OPアンプとは、ゲイン及び/又はオフセット調整量が異なる。
【0008】
このX線検査装置では、第1OPアンプがアナログ信号を増幅して第1A/Dコンバータに送り、第2OPアンプがアナログ信号を増幅して第2A/Dコンバータに送る。そして、このとき、第1OPアンプのゲイン及び/又はオフセット調整量と、第2OPアンプのゲイン及び/又はオフセット調整量とが異なっている。このため、このX線検査装置では、被検査対象物の支配的明度が異なる2以上の領域それぞれについて同時にアナログ信号を処理することができる。したがって、このX線検査装置では、処理速度を低下させることなくX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを良好に保つことができる。
【0009】
第3発明に係るX線検査装置は、第1発明に係るX線検査装置であって、アナログ信号処理部は、アナログ信号を増幅してA/D変換部に送るOPアンプを有しており、被検査対象物の各部分についての少なくとも2つのアナログ信号を、時間差をつけてOPアンプに入力させ、OPアンプにおいて異なるゲイン及び/又はオフセット調整量を用いて増幅させる。そして、A/D変換部は、OPアンプから時間差をつけて出てくる少なくとも2つの異なる増幅済みアナログ信号を、順番にデジタル信号に変換する。
【0010】
このX線検査装置では、アナログ信号処理部が、被検査対象物の各部分についての少なくとも2つのアナログ信号を、時間差をつけてOPアンプに入力させ、OPアンプにおいて異なるゲイン及び/又はオフセット調整量を用いて増幅させる。そして、A/D変換部が、OPアンプから時間差をつけて出てくる少なくとも2つの異なる増幅済みアナログ信号を、順番にデジタル信号に変換する。このため、このX線検査装置では、A/Dコンバータ及びOPアンプを増設することなくX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを良好に保つことができる。
【発明の効果】
【0011】
第1発明に係るX線検査装置では、アナログ信号処理部が、被検査対象物の支配的明度が異なる2以上の領域それぞれについて異物が明確に把握できるだけの明度差が確保されるデジタル信号が生成されるようにアナログ信号を処理すれば、被検査対象物の各部において厚みや密度の違いによってX線透過率に大きな差が出るような場合においてX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを著しく低下させることなく良好に保つことができる。なお、被検査対象物の支配的明度が異なる2以上の領域それぞれについて異物が明確に把握できるだけの明度差が確保されるデジタル信号が生成されるようにアナログ信号を処理するには、アナログ信号に、被検査対象物の支配的明度が異なる2以上の領域それぞれに適した2以上の異なる増幅処理やオフセット調整処理を施せばよい。
【0012】
第2発明に係るX線検査装置では、被検査対象物の支配的明度が異なる2以上の領域それぞれについて同時にアナログ信号を処理することができる。したがって、このX線検査装置では、処理速度を低下させることなくX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを良好に保つことができる。
【0013】
第3発明に係るX線検査装置では、A/Dコンバータ及びOPアンプを増設することなくX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを良好に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
−第1実施形態−
本発明の第1実施形態に係るX線異物検査装置の外観を図1に示す。このX線異物検査装置10は、食品等の商品の生産ラインにおいて異物検出検査を行う装置であって、連続的に搬送されてくる商品に対してX線を照射して、商品を透過したX線量を基に商品に異物が含まれているか否かの判断を行う。なお、検出対象異物は、金属に限られず、ゴムなども含まれる。
【0015】
X線異物検査装置10の被検査物品である商品Gは、X線異物検査装置10において異物の有無を判断され、商品Gが異物を含んでいるとX線異物検査装置10で判断された場合には、X線異物検査装置10の下流側に配置される振分装置70(図5参照)によって不良品として振り分けられる。
【0016】
<X線異物検査装置の構成>
X線異物検査装置10は、図1、図2及び図5に示されるように、主に、シールドボックス11、コンベア12、X線照射器13、X線ラインセンサモジュール14、OPアンプ43A,43B、D/Aコンバータ42A,42B、A/Dコンバータ41A,41B、タッチパネル機能付きのLCDモニタ30及び制御コンピュータ20から構成されている。なお、本実施の形態において、図5から明らかなように、OPアンプ43A,43B、D/Aコンバータ42A,42B及びA/Dコンバータ41A,41Bはそれぞれ2つずつ設けられている。以下、説明の便宜上、符号43Aで示されるOPアンプを「第1OPアンプ」と称し、符号41Bで示されるOPアンプを「第2OPアンプ」と称し、符号42Aで示されるD/Aコンバータを「第1D/Aコンバータ」と称し、符号42Bで示されるD/Aコンバータを「第2D/Aコンバータ」と称し、符号41Aで示されるA/Dコンバータを「第1A/Dコンバータ」と称し、符号41Bで示されるA/Dコンバータを「第2A/Dコンバータ」と称する。
【0017】
(1)シールドボックス
シールドボックス11は、図1に示されるように、両側面に開口11aが形成されている。開口11aは、商品Gを搬出入するための開口となる。なお、この開口11aは、シールドボックス11の外部へのX線漏洩を抑えるための遮蔽ノレン16により塞がれている。この遮蔽ノレン16は、鉛を含むゴムから成形されるもので、商品Gが搬出入されるときには商品Gにより押しのけられる。
【0018】
また、このシールドボックス11の正面上部には、LCDモニタ30の他、キーの差し込み口や電源スイッチ等が配置されている。そして、このシールドボックス11には、コンベア12の一部、X線照射器13、X線ラインセンサモジュール14及び制御コンピュータ20等が収容されている。
【0019】
(2)コンベア
コンベア12は、シールドボックス11内において商品Gを搬送するものであって、図5に示されるコンベアモータ12aにより駆動される。このコンベア12の搬送速度は、制御コンピュータ20によるコンベアモータ12aのインバータ制御によって緻密に制御される。
【0020】
(3)X線照射器
X線照射器13は、図2及び図4に示されるように、コンベア12の中央部の上方に配置されているX線源であり、下方のX線ラインセンサモジュール14に向けてX線(図2および図4の符号Xを参照)を照射する。
【0021】
(4)X線ラインセンサモジュール
X線ラインセンサモジュール14は、図2に示されるようにコンベア12の下方に配置されており商品Gやコンベア12を透過してくるX線を検出するものであって、図2及び図3に示されるようにX線検出部81を有している。このX線検出部81には、コンベア12の搬送方向に直交する方向(以下「第1方向」という)に一直線に配置された多数のフォトダイオード14a(画素)が含まれている。このフォトダイオード14aは、基板に実装されている。また、このX線検出部81では、フォトダイオード14a上にシンチレータ14bが設けられている。なお、本実施の携帯ではシンチレータ14bとして蛍光紙が用いられる。シンチレータ14bは、上から入射してくるX線(透過X線)を光に変換し、その光を各フォトダイオード14aに入射させる。そして、フォトダイオード14aは、その光の強さを電気信号に変換し、アナログ検出信号としてOPアンプ43A,43Bに出力する。
【0022】
(5)LCDモニタ
LCDモニタ30は、フルドット表示の液晶ディスプレイであって、X線画像や異物有無の判断結果を表示する。また、LCDモニタ30は、タッチパネル機能も有しており、初期設定や異物検査に関するパラメータ入力などを促す画面の表示も行う。
【0023】
(6)OPアンプ
OPアンプ43A,43Bには、図5に示されるようにX線ラインセンサモジュール14が接続されている。そして、これらのOPアンプ43A,43Bには、X線ラインセンサモジュール14から送信される同一のアナログ検出信号AS0が入力される。なお、アナログ検出信号AS0は、商品GがX線照射領域(図2のハッチング部分を参照)を通過するときに、X線ラインセンサモジュール14の各フォトダイオード14aから一定時間間隔で出力されている。そして、このOPアンプ43A,43Bでは、アナログ検出信号AS0の振幅がA/Dコンバータ41A,41Bに適した振幅に変換処理される(ゲイン調整)。
【0024】
また、第1OPアンプ43Aには第1D/Aコンバータ42Aが接続されており、第2OPアンプ43Bには第2D/Aコンバータ42Bが接続されている。そして、第1OPアンプ43Aには第1D/Aコンバータ42Aによって生成されたアナログ調整信号が入力され、第2OPアンプ43Bには第2D/Aコンバータ42Bによって生成されたアナログ調整信号が入力される。そして、これらのOPアンプ43A,43Bでは、アナログ調整信号によってアナログ検出信号AS0がオフセット調整処理される。なお、本実施の形態において、第1OPアンプ43Aではラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施され、第2OPアンプ43Bではラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施される。なお、振幅調整値やオフセット調整値については商品Gの形態等が考慮されて予め設定されている。この結果、第1A/Dコンバータ41Aから出力されるデジタル信号(カウント値)DS1とラインセンサ出力値との相関は図6(A)に示されるようになり、第2A/Dコンバータ41Bから出力されるデジタル信号(カウント値)DS2とラインセンサ出力値との相関は図6(B)に示されるようになる。つまり、第1OPアンプ43Aでは、ラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号が強調されるように増幅処理され、ラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号が飽和した状態となるようにオフセット調整処理される。一方、第2OPアンプ43Bでは、ラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号が無視されるようにオフセット調整処理され、ラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号が強調されるように減幅処理される。なお、第2OPアンプ43Bにおいて無視されたラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号は、第2A/Dコンバータ41Bによってデジタル信号に変換された後に、後述される制御コンピュータ20の異物有無判断の対象から除外されることになる。
【0025】
また、加えて、別の観点からこのアナログ検出信号処理について説明する。例えば、商品Gが図10に示されるような凸型の形状を有しており、突起部の上と、図10の向かって左側の基板部との上に異物が付着しているとすると、基点からの距離とラインセンサ出力値との関係は図11に示されるようになる。そして、第1OPアンプ43Aにおいてラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施されると、基点からの距離とA/Dコンバータ入力信号強度との関係が図12に示されるようになる。一方、第2OPアンプ43Bにおいてラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施されると、基点からの距離とA/Dコンバータ入力信号強度との関係が図13に示されるようになる。なお、図13における中央部分は、後述する制御コンピュータ20の異物有無判断において異物と判定されないように異物有無判断の対象から除外される。
【0026】
そして、第1OPアンプ43Aから出力されるアナログ出力信号AS1は第1A/Dコンバータ41Aに送られ、第2OPアンプ43Bから出力されるアナログ出力信号AS2は第2A/Dコンバータ41Bに送られる。
【0027】
(7)D/Aコンバータ
D/Aコンバータ42A,42Bには、CPU21(後述)によって生成されたデジタル信号が入力される。なお、このデジタル信号は、CPU21において、アナログ検出信号AS0のオフセットを、A/Dコンバータ41A,41Bに適したオフセットにシフトさせるように生成される。そして、これらのD/Aコンバータ42A,42Bは、そのデジタル信号を一定の規則に従ってアナログ調整信号に変換する。
【0028】
なお、本実施の形態において、第1D/Aコンバータ42Aでは、ラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号のオフセットを、第1A/Dコンバータ41Aに適したオフセットにシフトさせるためのアナログ調整信号が生成される。また、第2D/Aコンバータ42Bでは、ラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号のオフセットを、第2A/Dコンバータ41Bに適したオフセットにシフトさせるためのアナログ調整信号が生成される。
【0029】
(8)A/Dコンバータ
第1A/Dコンバータ41Aは第1OPアンプ43Aから出力されたアナログ出力信号AS1を、CPU21が読み取り可能なデジタル信号DS1に変換し、第2A/Dコンバータ41Bは第2OPアンプ43Bから出力されたアナログ出力信号AS2を、CPU21が読み取り可能なデジタル信号DS1に変換する。そして、これらのA/Dコンバータ41A,41Bから出力されるデジタル信号DS1,DS2は、制御コンピュータ20に送られ、CPU21の異物有無判断処理において利用される。
【0030】
(9)制御コンピュータ
制御コンピュータ20は、図5に示されるようにCPU21を搭載するとともに、このCPU21が制御する主記憶部としてROM22及びRAM23を、副記憶部としてHDD(ハードディスクドライブ)25を搭載している。
【0031】
さらに、制御コンピュータ20は、LCDモニタ30に対するデータ表示を制御する表示制御回路、LCDモニタ30のタッチパネルからのキー入力データを取り込むキー入力回路、図示しないプリンタにおけるデータ印字の制御等を行うためのI/Oポート等を備えている。
【0032】
そして、CPU21、ROM22、RAM23、HDD25等は、アドレスバス,データバス等のバスラインを介して相互に接続されている。
【0033】
また、この制御コンピュータ20は、振分装置70や、コンベアモータ12a、X線照射器13、A/Dコンバータ41A,41B及びD/Aコンバータ42A,42B等と接続されている。
【0034】
<制御コンピュータによる異物有無の判断>
(1)X線画像作成
制御コンピュータ20は、第1A/Dコンバータ41Aから出力されるデジタル信号DS1を基に商品Gの一部のX線画像を作成し、また、第2A/Dコンバータ41Bから出力されるデジタル信号DS2を基に商品Gの他部のX線画像を作成する。
【0035】
(2)暗部マスク処理
制御コンピュータ20は、第2OPアンプ43Bにおいて無視されたラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号に対応するデジタル信号に暗部マスク処理を行い、異物有無判断の対象から除外する。
【0036】
(3)異物有無判断
制御コンピュータ20は、得られた2種のX線画像それぞれから物品Gへの異物混入の有無を判断する。3つの判断方式は、トレース検出方式、2値化検出方式、及びマスク2値化検出方式である。これらの判断方式で判断した結果、1つでも不良と判断するものがあれば、その商品Gは不良品と判断される。なお、これらの判断方式のうち、マスク2値化方式は、X線画像のマスクされていない領域に対して判断を行う。マスクは、商品Gの容器部分などに対して設定される。
【0037】
トレース検出方式は、被検出物の大まかな厚さに沿って基準レベル(しきい値)を設定し、像がそれよりも暗くなったときに商品G内に異物が混入していると判断する方式である。ここでは、2つのトレース基準レベルを設定し、それぞれをX線画像と対比して判断を行っている。
【0038】
2値化検出方式及びマスク2値化方式は、一定の明るさに基準レベルを設定し、像がそれよりも暗くなったときに商品G内に異物が混入していると判断する方式である。なお、2値化検出方式及びマスク2値化方式には、それぞれ異なる基準レベルが設定される。
【0039】
なお、制御コンピュータ20は、上記各判断方式で判断した結果、いずれかの方式での判断において異物混入有りと判断されれば、その商品Gに異物が混入していると判断する。この場合には、制御コンピュータ20は、LCDモニタ30に不良品表示を行うとともに、振分装置70に振り分けの指示を送る。
【0040】
<X線異物検査装置の特徴>
(1)
本実施の形態に係るX線異物検査装置10では、X線ラインセンサモジュール14から出力される同一のアナログ検出信号AS0が第1OPアンプ43A及び第2OPアンプ43Bに入力され、第1OPアンプ43Aにおいてラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施され、第2OPアンプ43Bにおいてラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施される。このため、このX線異物検査装置10では、商品Gの各部において厚みや密度の違いによってX線透過率に大きな差が出るような場合においてX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを著しく低下させることなく良好に保つことができる。
【0041】
(2)
本実施の形態に係るX線異物検査装置10では、OPアンプ43A,43B、D/Aコンバータ42A,42B及びA/Dコンバータ41A,41Bがそれぞれ2つずつ設けられる。このため、このX線異物検査装置10では、商品Gの支配的明度が異なる2以上の領域それぞれについて同時にアナログ信号を処理することができる。したがって、このX線異物検査装置10では、処理速度を低下させることなくX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを良好に保つことができる。
【0042】
<変形例>
(A)
先の実施形態に係るX線異物検査装置10ではOPアンプ43A,43B、D/Aコンバータ42A,42B及びA/Dコンバータ41A,41Bがそれぞれ2つずつ設けられたが、A/Dコンバータ、OPアンプ及びD/Aコンバータはそれぞれ3つ以上設けられてもよい。
【0043】
(B)
先の実施形態に係るX線異物検査装置10では第1OPアンプ43Aにおいてラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施され、第2OPアンプ43Bにおいてラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施されたが、各OPアンプ43A,43Bにおいて任意の2つの領域のアナログ検出信号が振幅調整処理やオフセット調整処理されてもかまわない。
【0044】
(C)
先の実施形態に係るX線異物検査装置10は商品数量検査装置等として応用することもできる。かかる場合、検査対象を異物から内容物に変更すればよい。
【0045】
(D)
先の実施形態に係るX線異物検査装置10では制御コンピュータ20は、得られた2種のX線画像それぞれから物品Gへの異物混入の有無を判断したが、制御コンピュータ20は、得られた2種のX線画像を合成(加算処理)した後に、その合成画像に基づいて商品Gへの異物混入の有無を判断してもよい。なお、図6を利用して合算後のX線画像を想定すると、第1OPアンプ43Aの増幅処理によって強調された部分(図6(A)の傾斜部分)に、第2OPアンプ43Bの減幅処理によって強調された部分(図6(B)の傾斜部分)を継ぎ足すようなかたちになる。
【0046】
(E)
先の実施形態に係るX線異物検査装置10ではOPアンプ43A,43Bにおいて振幅調整処理及びオフセット調整処理が行われたが、振幅調整処理及びオフセット調整処理は商品Gの形態等によっていずれか一方が行われるように設定されてもかまわない。
【0047】
(F)
先の実施形態に係るX線異物検査装置10ではOPアンプ43A,43Bにおける振幅調整値やオフセット調整値については商品Gの形態等が考慮されて予め設定されていたが、OPアンプ43A,43Bにおける振幅調整値やオフセット調整値は商品Gを予め流してみて映像を見ながら手動で決めてもよいし、商品Gを予め流してみた時に得られるX線の透過度やX線ラインセンサ出力値等のヒストグラムから決めてもよい。また、振幅調整値についてはオフセット調整値を決定した後にそのオフセット調整値に適した値に決定してもよい。
【0048】
−第2実施形態−
本発明の第2実施形態に係るX線異物検査装置は、X線ラインセンサモジュール、OPアンプ、D/Aコンバータ及びA/Dコンバータを除く他の構成については、第1実施形態のX線異物検査装置10と概ね同じである。なお、第2実施形態に係るX線異物検査装置には、図7に示されるようにOPアンプ、D/Aコンバータ及びA/Dコンバータがそれぞれ1つずつしか設けられていない。
【0049】
<X線異物検査装置の構成>
第1実施形態のX線異物検査装置10と同様の構成になっているシールドボックス11、コンベア12及びX線照射器13等については説明を省略し、以下では、X線ラインセンサモジュール14a、OPアンプ43、D/Aコンバータ42、A/Dコンバータ41及び制御コンピュータ20aについて説明する。
【0050】
(1)X線ラインセンサモジュール
X線ラインセンサモジュール14aは、ライン電荷蓄積時間の設定を除いて第1実施形態に係るX線ラインセンサ14と同一である。このX線ラインセンサモジュール14aでは、図8に示されるように第1実施形態に係るX線ラインセンサモジュールのライン電荷蓄積時間が2分割されている。つまり、このX線ラインセンサモジュール14aからは、第1実施形態に係るX線ラインセンサモジュール14から1つのアナログ検出信号AS0が出力される間に2つのアナログ検出信号AS10,AS10’が出力されることになる。
【0051】
(2)OPアンプ
第2実施形態に係るOPアンプ43は、X線ラインセンサモジュール14aから出力されるアナログ検出信号AS10,AS10’に対してラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号が最適となるような振幅調整処理やオフセット調整処理と、ラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号が最適となるような振幅調整処理やオフセット調整処理とを交互に施す点で第1実施形態に係るOPアンプ43A,43Bと相違する。
【0052】
(3)D/Aコンバータ
D/Aコンバータ42には、CPU21によって生成されたデジタル信号が入力される。なお、このデジタル信号は、CPU21において、アナログ検出信号AS10,AS10’のオフセットを、A/Dコンバータ41に適したオフセットにシフトさせるように生成される。そして、これらのD/Aコンバータ42は、そのデジタル信号を一定の規則に従ってアナログ調整信号に変換する。
【0053】
なお、本実施の形態において、D/Aコンバータ42では、ラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号のオフセットをA/Dコンバータ41Aに適したオフセットにシフトさせるためのアナログ調整信号と、ラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号のオフセットをA/Dコンバータ41に適したオフセットにシフトさせるためのアナログ調整信号とがOPアンプ43の処理に同期して交互に生成される。
【0054】
(4)A/Dコンバータ
A/Dコンバータ41は、OPアンプ43から出力されたアナログ出力信号AS11,AS12を、CPUが読み取り可能なデジタル信号DS11,DS12に変換する。そして、このA/Dコンバータ41から出力されるデジタル信号DS11,DS12は、制御コンピュータ20aに送られ、CPU21の異物有無判断処理において利用される。
【0055】
(5)制御コンピュータ
第2実施形態に係る制御コンピュータ20aは、第1実施形態に係る制御コンピュータ20と同様の構成を有するが、画像形成処理を実行する点で第1実施形態に係る制御コンピュータ20と相違する。この制御コンピュータ20aは、A/Dコンバータ41から出力されるデジタル信号DS1,DS2を交互に振り分けて2つのX線画像データを形成する。この2つのX線画像データは、第1実施形態に係る制御コンピュータ20においても行われた異物検出判断処理に用いられる。
【0056】
<第2実施形態に係るX線異物検査装置の特徴>
本実施の形態に係るX線異物検査装置では、OPアンプ43が、X線ラインセンサモジュール14aから出力されるアナログ検出信号AS10,AS10’に対してラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号が最適となるような振幅調整処理やオフセット調整処理と、ラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号が最適となるような振幅調整処理やオフセット調整処理とを交互に施す。このため、このX線異物検査装置10では、商品Gの各部において厚みや密度の違いによってX線透過率に大きな差が出るような場合においてX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを著しく低下させることなく良好に保つことができる。
【0057】
また、このX線異物検査装置は、上記のように設定されているため、OPアンプ43、D/Aコンバータ42、A/Dコンバータ41はそれぞれ1つしか必要とされない。このため、このX線異物検査装置では、A/Dコンバータ及びOPアンプを増設することなくX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを良好に保つことができる。
【0058】
<変形例>
第2実施形態ではX線ラインセンサモジュール14aのライン電荷蓄積時間が、第1実施形態に係るX線ラインセンサモジュール10のライン電荷蓄積時間が2分割されたものになっていた。しかし、ライン第1電荷蓄積時間及びライン第2電荷蓄積時間は任意に決定することができ、例えば、ライン第1電荷蓄積時間及びライン第2電荷蓄積時間が第1実施形態に係るX線異物検査装置10で設定されているライン電荷蓄積時間と同じ長さに設定されてもよい。
【0059】
また、例えば、図9に示されるように、ライン第1電荷蓄積時間を、図6(A)に示されるような相関関係が得られるように第1実施形態に係るX線ラインセンサモジュールのライン電荷蓄積時間よりも長く設定し、ライン第2電荷蓄積時間を第1実施形態に係るX線ラインセンサモジュールのライン電荷蓄積時間よりも短くするようにしてもよい。かかる場合、このOPアンプ43は、ライン第1電荷蓄積時間に対応するアナログ検出信号には処理を施さないかオフセット調整処理のみを行い、ライン第2電荷蓄積時間に対応するアナログ検出信号には図6(B)に示されるような相関関係を得られるような振幅調整処理やオフセット調整処理を施す。
【0060】
また、第2実施形態ではX線ラインセンサモジュール14aのライン電荷蓄積時間が2分割されていたが、X線ラインセンサモジュール14aのライン電荷蓄積時間が3つ以上に分割されてもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係るX線検査装置は、被検査対象物の各部において厚みや密度の違いによってX線透過率に大きな差が出るような場合においてX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを著しく低下させることなく良好に保つことができるという特徴を有し、X線異物検査装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】第1実施形態に係るX線異物検査装置の外観斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るX線異物検査装置のシールドボックス内部の簡易構成図である。
【図3】第1実施形態に係るX線ラインセンサモジュールの構成図である。
【図4】X線を用いた検査の原理を示す模式図である。
【図5】第1実施形態に係るX線異物検査装置の制御ブロック図である。
【図6】(A)第1A/Dコンバータから出力されるデジタル信号(カウント値)とラインセンサ出力値との相関を表すグラフ図である。(B)第2A/Dコンバータから出力されるデジタル信号(カウント値)とラインセンサ出力値との相関を表すグラフ図である。
【図7】第2実施形態に係るX線異物検査装置の制御ブロック図である。
【図8】(A)第1実施形態に係るX線異物検査装置における電荷蓄積時間を示す図である。(B)第2実施形態に係るX線異物検査装置における電荷蓄積時間を示す図である。
【図9】(A)第1実施形態に係るX線異物検査装置における電荷蓄積時間を示す図である。(B)第2実施形態の変形例に係るX線異物検査装置における電荷蓄積時間を示す図である。
【図10】商品形状と異物の付着位置とを示す図である。
【図11】図10の商品を被検査物としたときの基点からの距離とラインセンサ出力値との関係を表すグラフ図である。
【図12】第1OPアンプにおいてラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施された場合の基点からの距離とA/Dコンバータ入力信号強度との関係を表すグラフ図である。
【図13】第2OPアンプにおいてラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施された場合の基点からの距離とA/Dコンバータ入力信号強度との関係を表すグラフ図である。
【符号の説明】
【0063】
10 X線異物検査装置
12 コンベア
13 X線照射器
14,14a X線ラインセンサモジュール
14a フォトダイオード
14b シンチレータ
20,20a 制御コンピュータ
41,41A,41B A/Dコンバータ
42,42A,42B D/Aコンバータ
43,43A,43B OPアンプ
AS0,AS10,AS10‘ アナログ検出信号
AS1,AS2,AS11,AS12 アナログ出力信号
GS1,GS2,DS11,DS12 デジタル信号
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、被検査対象物の各部の厚みや密度の違いによってX線透過率に大きな差が出るような場合においてX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを良好に保つことのできるX線検査装置が待ち望まれていた。そして、この要望に応じて、過去に、「画素値(デジタル信号)群を閾値を使って2つのデータに分け、これらに強調処理などを施した後に合算してX線画像を作成するX線検査装置」が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−216116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、A/D変換された後のデジタル信号群に強調処理等を施してX線画像を作成する場合、強調処理前のデジタル信号群の時点で異物が明確に把握できるだけの明度差が確保された信号群になっていなければ、異物検出感度が著しく低下するおそれがある。
【0004】
本発明の課題は、被検査対象物の各部の厚みや密度の違いによってX線透過率に大きな差が出るような場合においてX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを著しく低下させることなく良好に保つことのできるX線検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1発明に係るX線検査装置は、X線照射部、X線検出部、A/D変換部、判定処理部及びアナログ信号処理部を備える。X線照射部は、X線を照射する。X線検出部は、被検査対象物の各部分を通過してきたX線を受光して、それらの透過X線の強さに応じたアナログ信号を出力する。A/D変換部は、アナログ信号をデジタル信号に変換する。判定処理部は、デジタル信号からX線画像を生成して被検査対象物の良否判定を行う。アナログ信号処理部は、被検査対象物の各部分について、A/D変換部から異なる2以上のデジタル信号が出るように、アナログ信号を処理する。
【0006】
このX線検査装置では、アナログ信号処理部が、被検査対象物の各部分について、A/D変換部から異なる2以上のデジタル信号が出るように、アナログ信号を処理する。このため、このX線検査装置では、アナログ信号処理部が、被検査対象物の支配的明度が異なる2以上の領域それぞれについて異物が明確に把握できるだけの明度差が確保されるデジタル信号が生成されるようにアナログ信号を処理すれば、被検査対象物の各部において厚みや密度の違いによってX線透過率に大きな差が出るような場合においてX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを著しく低下させることなく良好に保つことができる。なお、被検査対象物の支配的明度が異なる2以上の領域それぞれについて異物が明確に把握できるだけの明度差が確保されるデジタル信号が生成されるようにアナログ信号を処理するには、アナログ信号に、被検査対象物の支配的明度が異なる2以上の領域それぞれに適した2以上の異なる増幅処理やオフセット調整処理を施せばよい。
【0007】
第2発明に係るX線検査装置は、第1発明に係るX線検査装置であって、A/D変換部は、少なくとも、第1A/Dコンバータと第2A/Dコンバータとを有している。また、アナログ信号処理部は、少なくとも、アナログ信号を増幅して第1A/Dコンバータに送る第1OPアンプと、アナログ信号を増幅して第2A/Dコンバータに送る第2OPアンプとを有している。そして、第1OPアンプと第2OPアンプとは、ゲイン及び/又はオフセット調整量が異なる。
【0008】
このX線検査装置では、第1OPアンプがアナログ信号を増幅して第1A/Dコンバータに送り、第2OPアンプがアナログ信号を増幅して第2A/Dコンバータに送る。そして、このとき、第1OPアンプのゲイン及び/又はオフセット調整量と、第2OPアンプのゲイン及び/又はオフセット調整量とが異なっている。このため、このX線検査装置では、被検査対象物の支配的明度が異なる2以上の領域それぞれについて同時にアナログ信号を処理することができる。したがって、このX線検査装置では、処理速度を低下させることなくX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを良好に保つことができる。
【0009】
第3発明に係るX線検査装置は、第1発明に係るX線検査装置であって、アナログ信号処理部は、アナログ信号を増幅してA/D変換部に送るOPアンプを有しており、被検査対象物の各部分についての少なくとも2つのアナログ信号を、時間差をつけてOPアンプに入力させ、OPアンプにおいて異なるゲイン及び/又はオフセット調整量を用いて増幅させる。そして、A/D変換部は、OPアンプから時間差をつけて出てくる少なくとも2つの異なる増幅済みアナログ信号を、順番にデジタル信号に変換する。
【0010】
このX線検査装置では、アナログ信号処理部が、被検査対象物の各部分についての少なくとも2つのアナログ信号を、時間差をつけてOPアンプに入力させ、OPアンプにおいて異なるゲイン及び/又はオフセット調整量を用いて増幅させる。そして、A/D変換部が、OPアンプから時間差をつけて出てくる少なくとも2つの異なる増幅済みアナログ信号を、順番にデジタル信号に変換する。このため、このX線検査装置では、A/Dコンバータ及びOPアンプを増設することなくX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを良好に保つことができる。
【発明の効果】
【0011】
第1発明に係るX線検査装置では、アナログ信号処理部が、被検査対象物の支配的明度が異なる2以上の領域それぞれについて異物が明確に把握できるだけの明度差が確保されるデジタル信号が生成されるようにアナログ信号を処理すれば、被検査対象物の各部において厚みや密度の違いによってX線透過率に大きな差が出るような場合においてX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを著しく低下させることなく良好に保つことができる。なお、被検査対象物の支配的明度が異なる2以上の領域それぞれについて異物が明確に把握できるだけの明度差が確保されるデジタル信号が生成されるようにアナログ信号を処理するには、アナログ信号に、被検査対象物の支配的明度が異なる2以上の領域それぞれに適した2以上の異なる増幅処理やオフセット調整処理を施せばよい。
【0012】
第2発明に係るX線検査装置では、被検査対象物の支配的明度が異なる2以上の領域それぞれについて同時にアナログ信号を処理することができる。したがって、このX線検査装置では、処理速度を低下させることなくX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを良好に保つことができる。
【0013】
第3発明に係るX線検査装置では、A/Dコンバータ及びOPアンプを増設することなくX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを良好に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
−第1実施形態−
本発明の第1実施形態に係るX線異物検査装置の外観を図1に示す。このX線異物検査装置10は、食品等の商品の生産ラインにおいて異物検出検査を行う装置であって、連続的に搬送されてくる商品に対してX線を照射して、商品を透過したX線量を基に商品に異物が含まれているか否かの判断を行う。なお、検出対象異物は、金属に限られず、ゴムなども含まれる。
【0015】
X線異物検査装置10の被検査物品である商品Gは、X線異物検査装置10において異物の有無を判断され、商品Gが異物を含んでいるとX線異物検査装置10で判断された場合には、X線異物検査装置10の下流側に配置される振分装置70(図5参照)によって不良品として振り分けられる。
【0016】
<X線異物検査装置の構成>
X線異物検査装置10は、図1、図2及び図5に示されるように、主に、シールドボックス11、コンベア12、X線照射器13、X線ラインセンサモジュール14、OPアンプ43A,43B、D/Aコンバータ42A,42B、A/Dコンバータ41A,41B、タッチパネル機能付きのLCDモニタ30及び制御コンピュータ20から構成されている。なお、本実施の形態において、図5から明らかなように、OPアンプ43A,43B、D/Aコンバータ42A,42B及びA/Dコンバータ41A,41Bはそれぞれ2つずつ設けられている。以下、説明の便宜上、符号43Aで示されるOPアンプを「第1OPアンプ」と称し、符号41Bで示されるOPアンプを「第2OPアンプ」と称し、符号42Aで示されるD/Aコンバータを「第1D/Aコンバータ」と称し、符号42Bで示されるD/Aコンバータを「第2D/Aコンバータ」と称し、符号41Aで示されるA/Dコンバータを「第1A/Dコンバータ」と称し、符号41Bで示されるA/Dコンバータを「第2A/Dコンバータ」と称する。
【0017】
(1)シールドボックス
シールドボックス11は、図1に示されるように、両側面に開口11aが形成されている。開口11aは、商品Gを搬出入するための開口となる。なお、この開口11aは、シールドボックス11の外部へのX線漏洩を抑えるための遮蔽ノレン16により塞がれている。この遮蔽ノレン16は、鉛を含むゴムから成形されるもので、商品Gが搬出入されるときには商品Gにより押しのけられる。
【0018】
また、このシールドボックス11の正面上部には、LCDモニタ30の他、キーの差し込み口や電源スイッチ等が配置されている。そして、このシールドボックス11には、コンベア12の一部、X線照射器13、X線ラインセンサモジュール14及び制御コンピュータ20等が収容されている。
【0019】
(2)コンベア
コンベア12は、シールドボックス11内において商品Gを搬送するものであって、図5に示されるコンベアモータ12aにより駆動される。このコンベア12の搬送速度は、制御コンピュータ20によるコンベアモータ12aのインバータ制御によって緻密に制御される。
【0020】
(3)X線照射器
X線照射器13は、図2及び図4に示されるように、コンベア12の中央部の上方に配置されているX線源であり、下方のX線ラインセンサモジュール14に向けてX線(図2および図4の符号Xを参照)を照射する。
【0021】
(4)X線ラインセンサモジュール
X線ラインセンサモジュール14は、図2に示されるようにコンベア12の下方に配置されており商品Gやコンベア12を透過してくるX線を検出するものであって、図2及び図3に示されるようにX線検出部81を有している。このX線検出部81には、コンベア12の搬送方向に直交する方向(以下「第1方向」という)に一直線に配置された多数のフォトダイオード14a(画素)が含まれている。このフォトダイオード14aは、基板に実装されている。また、このX線検出部81では、フォトダイオード14a上にシンチレータ14bが設けられている。なお、本実施の携帯ではシンチレータ14bとして蛍光紙が用いられる。シンチレータ14bは、上から入射してくるX線(透過X線)を光に変換し、その光を各フォトダイオード14aに入射させる。そして、フォトダイオード14aは、その光の強さを電気信号に変換し、アナログ検出信号としてOPアンプ43A,43Bに出力する。
【0022】
(5)LCDモニタ
LCDモニタ30は、フルドット表示の液晶ディスプレイであって、X線画像や異物有無の判断結果を表示する。また、LCDモニタ30は、タッチパネル機能も有しており、初期設定や異物検査に関するパラメータ入力などを促す画面の表示も行う。
【0023】
(6)OPアンプ
OPアンプ43A,43Bには、図5に示されるようにX線ラインセンサモジュール14が接続されている。そして、これらのOPアンプ43A,43Bには、X線ラインセンサモジュール14から送信される同一のアナログ検出信号AS0が入力される。なお、アナログ検出信号AS0は、商品GがX線照射領域(図2のハッチング部分を参照)を通過するときに、X線ラインセンサモジュール14の各フォトダイオード14aから一定時間間隔で出力されている。そして、このOPアンプ43A,43Bでは、アナログ検出信号AS0の振幅がA/Dコンバータ41A,41Bに適した振幅に変換処理される(ゲイン調整)。
【0024】
また、第1OPアンプ43Aには第1D/Aコンバータ42Aが接続されており、第2OPアンプ43Bには第2D/Aコンバータ42Bが接続されている。そして、第1OPアンプ43Aには第1D/Aコンバータ42Aによって生成されたアナログ調整信号が入力され、第2OPアンプ43Bには第2D/Aコンバータ42Bによって生成されたアナログ調整信号が入力される。そして、これらのOPアンプ43A,43Bでは、アナログ調整信号によってアナログ検出信号AS0がオフセット調整処理される。なお、本実施の形態において、第1OPアンプ43Aではラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施され、第2OPアンプ43Bではラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施される。なお、振幅調整値やオフセット調整値については商品Gの形態等が考慮されて予め設定されている。この結果、第1A/Dコンバータ41Aから出力されるデジタル信号(カウント値)DS1とラインセンサ出力値との相関は図6(A)に示されるようになり、第2A/Dコンバータ41Bから出力されるデジタル信号(カウント値)DS2とラインセンサ出力値との相関は図6(B)に示されるようになる。つまり、第1OPアンプ43Aでは、ラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号が強調されるように増幅処理され、ラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号が飽和した状態となるようにオフセット調整処理される。一方、第2OPアンプ43Bでは、ラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号が無視されるようにオフセット調整処理され、ラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号が強調されるように減幅処理される。なお、第2OPアンプ43Bにおいて無視されたラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号は、第2A/Dコンバータ41Bによってデジタル信号に変換された後に、後述される制御コンピュータ20の異物有無判断の対象から除外されることになる。
【0025】
また、加えて、別の観点からこのアナログ検出信号処理について説明する。例えば、商品Gが図10に示されるような凸型の形状を有しており、突起部の上と、図10の向かって左側の基板部との上に異物が付着しているとすると、基点からの距離とラインセンサ出力値との関係は図11に示されるようになる。そして、第1OPアンプ43Aにおいてラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施されると、基点からの距離とA/Dコンバータ入力信号強度との関係が図12に示されるようになる。一方、第2OPアンプ43Bにおいてラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施されると、基点からの距離とA/Dコンバータ入力信号強度との関係が図13に示されるようになる。なお、図13における中央部分は、後述する制御コンピュータ20の異物有無判断において異物と判定されないように異物有無判断の対象から除外される。
【0026】
そして、第1OPアンプ43Aから出力されるアナログ出力信号AS1は第1A/Dコンバータ41Aに送られ、第2OPアンプ43Bから出力されるアナログ出力信号AS2は第2A/Dコンバータ41Bに送られる。
【0027】
(7)D/Aコンバータ
D/Aコンバータ42A,42Bには、CPU21(後述)によって生成されたデジタル信号が入力される。なお、このデジタル信号は、CPU21において、アナログ検出信号AS0のオフセットを、A/Dコンバータ41A,41Bに適したオフセットにシフトさせるように生成される。そして、これらのD/Aコンバータ42A,42Bは、そのデジタル信号を一定の規則に従ってアナログ調整信号に変換する。
【0028】
なお、本実施の形態において、第1D/Aコンバータ42Aでは、ラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号のオフセットを、第1A/Dコンバータ41Aに適したオフセットにシフトさせるためのアナログ調整信号が生成される。また、第2D/Aコンバータ42Bでは、ラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号のオフセットを、第2A/Dコンバータ41Bに適したオフセットにシフトさせるためのアナログ調整信号が生成される。
【0029】
(8)A/Dコンバータ
第1A/Dコンバータ41Aは第1OPアンプ43Aから出力されたアナログ出力信号AS1を、CPU21が読み取り可能なデジタル信号DS1に変換し、第2A/Dコンバータ41Bは第2OPアンプ43Bから出力されたアナログ出力信号AS2を、CPU21が読み取り可能なデジタル信号DS1に変換する。そして、これらのA/Dコンバータ41A,41Bから出力されるデジタル信号DS1,DS2は、制御コンピュータ20に送られ、CPU21の異物有無判断処理において利用される。
【0030】
(9)制御コンピュータ
制御コンピュータ20は、図5に示されるようにCPU21を搭載するとともに、このCPU21が制御する主記憶部としてROM22及びRAM23を、副記憶部としてHDD(ハードディスクドライブ)25を搭載している。
【0031】
さらに、制御コンピュータ20は、LCDモニタ30に対するデータ表示を制御する表示制御回路、LCDモニタ30のタッチパネルからのキー入力データを取り込むキー入力回路、図示しないプリンタにおけるデータ印字の制御等を行うためのI/Oポート等を備えている。
【0032】
そして、CPU21、ROM22、RAM23、HDD25等は、アドレスバス,データバス等のバスラインを介して相互に接続されている。
【0033】
また、この制御コンピュータ20は、振分装置70や、コンベアモータ12a、X線照射器13、A/Dコンバータ41A,41B及びD/Aコンバータ42A,42B等と接続されている。
【0034】
<制御コンピュータによる異物有無の判断>
(1)X線画像作成
制御コンピュータ20は、第1A/Dコンバータ41Aから出力されるデジタル信号DS1を基に商品Gの一部のX線画像を作成し、また、第2A/Dコンバータ41Bから出力されるデジタル信号DS2を基に商品Gの他部のX線画像を作成する。
【0035】
(2)暗部マスク処理
制御コンピュータ20は、第2OPアンプ43Bにおいて無視されたラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号に対応するデジタル信号に暗部マスク処理を行い、異物有無判断の対象から除外する。
【0036】
(3)異物有無判断
制御コンピュータ20は、得られた2種のX線画像それぞれから物品Gへの異物混入の有無を判断する。3つの判断方式は、トレース検出方式、2値化検出方式、及びマスク2値化検出方式である。これらの判断方式で判断した結果、1つでも不良と判断するものがあれば、その商品Gは不良品と判断される。なお、これらの判断方式のうち、マスク2値化方式は、X線画像のマスクされていない領域に対して判断を行う。マスクは、商品Gの容器部分などに対して設定される。
【0037】
トレース検出方式は、被検出物の大まかな厚さに沿って基準レベル(しきい値)を設定し、像がそれよりも暗くなったときに商品G内に異物が混入していると判断する方式である。ここでは、2つのトレース基準レベルを設定し、それぞれをX線画像と対比して判断を行っている。
【0038】
2値化検出方式及びマスク2値化方式は、一定の明るさに基準レベルを設定し、像がそれよりも暗くなったときに商品G内に異物が混入していると判断する方式である。なお、2値化検出方式及びマスク2値化方式には、それぞれ異なる基準レベルが設定される。
【0039】
なお、制御コンピュータ20は、上記各判断方式で判断した結果、いずれかの方式での判断において異物混入有りと判断されれば、その商品Gに異物が混入していると判断する。この場合には、制御コンピュータ20は、LCDモニタ30に不良品表示を行うとともに、振分装置70に振り分けの指示を送る。
【0040】
<X線異物検査装置の特徴>
(1)
本実施の形態に係るX線異物検査装置10では、X線ラインセンサモジュール14から出力される同一のアナログ検出信号AS0が第1OPアンプ43A及び第2OPアンプ43Bに入力され、第1OPアンプ43Aにおいてラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施され、第2OPアンプ43Bにおいてラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施される。このため、このX線異物検査装置10では、商品Gの各部において厚みや密度の違いによってX線透過率に大きな差が出るような場合においてX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを著しく低下させることなく良好に保つことができる。
【0041】
(2)
本実施の形態に係るX線異物検査装置10では、OPアンプ43A,43B、D/Aコンバータ42A,42B及びA/Dコンバータ41A,41Bがそれぞれ2つずつ設けられる。このため、このX線異物検査装置10では、商品Gの支配的明度が異なる2以上の領域それぞれについて同時にアナログ信号を処理することができる。したがって、このX線異物検査装置10では、処理速度を低下させることなくX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを良好に保つことができる。
【0042】
<変形例>
(A)
先の実施形態に係るX線異物検査装置10ではOPアンプ43A,43B、D/Aコンバータ42A,42B及びA/Dコンバータ41A,41Bがそれぞれ2つずつ設けられたが、A/Dコンバータ、OPアンプ及びD/Aコンバータはそれぞれ3つ以上設けられてもよい。
【0043】
(B)
先の実施形態に係るX線異物検査装置10では第1OPアンプ43Aにおいてラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施され、第2OPアンプ43Bにおいてラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施されたが、各OPアンプ43A,43Bにおいて任意の2つの領域のアナログ検出信号が振幅調整処理やオフセット調整処理されてもかまわない。
【0044】
(C)
先の実施形態に係るX線異物検査装置10は商品数量検査装置等として応用することもできる。かかる場合、検査対象を異物から内容物に変更すればよい。
【0045】
(D)
先の実施形態に係るX線異物検査装置10では制御コンピュータ20は、得られた2種のX線画像それぞれから物品Gへの異物混入の有無を判断したが、制御コンピュータ20は、得られた2種のX線画像を合成(加算処理)した後に、その合成画像に基づいて商品Gへの異物混入の有無を判断してもよい。なお、図6を利用して合算後のX線画像を想定すると、第1OPアンプ43Aの増幅処理によって強調された部分(図6(A)の傾斜部分)に、第2OPアンプ43Bの減幅処理によって強調された部分(図6(B)の傾斜部分)を継ぎ足すようなかたちになる。
【0046】
(E)
先の実施形態に係るX線異物検査装置10ではOPアンプ43A,43Bにおいて振幅調整処理及びオフセット調整処理が行われたが、振幅調整処理及びオフセット調整処理は商品Gの形態等によっていずれか一方が行われるように設定されてもかまわない。
【0047】
(F)
先の実施形態に係るX線異物検査装置10ではOPアンプ43A,43Bにおける振幅調整値やオフセット調整値については商品Gの形態等が考慮されて予め設定されていたが、OPアンプ43A,43Bにおける振幅調整値やオフセット調整値は商品Gを予め流してみて映像を見ながら手動で決めてもよいし、商品Gを予め流してみた時に得られるX線の透過度やX線ラインセンサ出力値等のヒストグラムから決めてもよい。また、振幅調整値についてはオフセット調整値を決定した後にそのオフセット調整値に適した値に決定してもよい。
【0048】
−第2実施形態−
本発明の第2実施形態に係るX線異物検査装置は、X線ラインセンサモジュール、OPアンプ、D/Aコンバータ及びA/Dコンバータを除く他の構成については、第1実施形態のX線異物検査装置10と概ね同じである。なお、第2実施形態に係るX線異物検査装置には、図7に示されるようにOPアンプ、D/Aコンバータ及びA/Dコンバータがそれぞれ1つずつしか設けられていない。
【0049】
<X線異物検査装置の構成>
第1実施形態のX線異物検査装置10と同様の構成になっているシールドボックス11、コンベア12及びX線照射器13等については説明を省略し、以下では、X線ラインセンサモジュール14a、OPアンプ43、D/Aコンバータ42、A/Dコンバータ41及び制御コンピュータ20aについて説明する。
【0050】
(1)X線ラインセンサモジュール
X線ラインセンサモジュール14aは、ライン電荷蓄積時間の設定を除いて第1実施形態に係るX線ラインセンサ14と同一である。このX線ラインセンサモジュール14aでは、図8に示されるように第1実施形態に係るX線ラインセンサモジュールのライン電荷蓄積時間が2分割されている。つまり、このX線ラインセンサモジュール14aからは、第1実施形態に係るX線ラインセンサモジュール14から1つのアナログ検出信号AS0が出力される間に2つのアナログ検出信号AS10,AS10’が出力されることになる。
【0051】
(2)OPアンプ
第2実施形態に係るOPアンプ43は、X線ラインセンサモジュール14aから出力されるアナログ検出信号AS10,AS10’に対してラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号が最適となるような振幅調整処理やオフセット調整処理と、ラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号が最適となるような振幅調整処理やオフセット調整処理とを交互に施す点で第1実施形態に係るOPアンプ43A,43Bと相違する。
【0052】
(3)D/Aコンバータ
D/Aコンバータ42には、CPU21によって生成されたデジタル信号が入力される。なお、このデジタル信号は、CPU21において、アナログ検出信号AS10,AS10’のオフセットを、A/Dコンバータ41に適したオフセットにシフトさせるように生成される。そして、これらのD/Aコンバータ42は、そのデジタル信号を一定の規則に従ってアナログ調整信号に変換する。
【0053】
なお、本実施の形態において、D/Aコンバータ42では、ラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号のオフセットをA/Dコンバータ41Aに適したオフセットにシフトさせるためのアナログ調整信号と、ラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号のオフセットをA/Dコンバータ41に適したオフセットにシフトさせるためのアナログ調整信号とがOPアンプ43の処理に同期して交互に生成される。
【0054】
(4)A/Dコンバータ
A/Dコンバータ41は、OPアンプ43から出力されたアナログ出力信号AS11,AS12を、CPUが読み取り可能なデジタル信号DS11,DS12に変換する。そして、このA/Dコンバータ41から出力されるデジタル信号DS11,DS12は、制御コンピュータ20aに送られ、CPU21の異物有無判断処理において利用される。
【0055】
(5)制御コンピュータ
第2実施形態に係る制御コンピュータ20aは、第1実施形態に係る制御コンピュータ20と同様の構成を有するが、画像形成処理を実行する点で第1実施形態に係る制御コンピュータ20と相違する。この制御コンピュータ20aは、A/Dコンバータ41から出力されるデジタル信号DS1,DS2を交互に振り分けて2つのX線画像データを形成する。この2つのX線画像データは、第1実施形態に係る制御コンピュータ20においても行われた異物検出判断処理に用いられる。
【0056】
<第2実施形態に係るX線異物検査装置の特徴>
本実施の形態に係るX線異物検査装置では、OPアンプ43が、X線ラインセンサモジュール14aから出力されるアナログ検出信号AS10,AS10’に対してラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号が最適となるような振幅調整処理やオフセット調整処理と、ラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号が最適となるような振幅調整処理やオフセット調整処理とを交互に施す。このため、このX線異物検査装置10では、商品Gの各部において厚みや密度の違いによってX線透過率に大きな差が出るような場合においてX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを著しく低下させることなく良好に保つことができる。
【0057】
また、このX線異物検査装置は、上記のように設定されているため、OPアンプ43、D/Aコンバータ42、A/Dコンバータ41はそれぞれ1つしか必要とされない。このため、このX線異物検査装置では、A/Dコンバータ及びOPアンプを増設することなくX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを良好に保つことができる。
【0058】
<変形例>
第2実施形態ではX線ラインセンサモジュール14aのライン電荷蓄積時間が、第1実施形態に係るX線ラインセンサモジュール10のライン電荷蓄積時間が2分割されたものになっていた。しかし、ライン第1電荷蓄積時間及びライン第2電荷蓄積時間は任意に決定することができ、例えば、ライン第1電荷蓄積時間及びライン第2電荷蓄積時間が第1実施形態に係るX線異物検査装置10で設定されているライン電荷蓄積時間と同じ長さに設定されてもよい。
【0059】
また、例えば、図9に示されるように、ライン第1電荷蓄積時間を、図6(A)に示されるような相関関係が得られるように第1実施形態に係るX線ラインセンサモジュールのライン電荷蓄積時間よりも長く設定し、ライン第2電荷蓄積時間を第1実施形態に係るX線ラインセンサモジュールのライン電荷蓄積時間よりも短くするようにしてもよい。かかる場合、このOPアンプ43は、ライン第1電荷蓄積時間に対応するアナログ検出信号には処理を施さないかオフセット調整処理のみを行い、ライン第2電荷蓄積時間に対応するアナログ検出信号には図6(B)に示されるような相関関係を得られるような振幅調整処理やオフセット調整処理を施す。
【0060】
また、第2実施形態ではX線ラインセンサモジュール14aのライン電荷蓄積時間が2分割されていたが、X線ラインセンサモジュール14aのライン電荷蓄積時間が3つ以上に分割されてもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明に係るX線検査装置は、被検査対象物の各部において厚みや密度の違いによってX線透過率に大きな差が出るような場合においてX線透過率の大きい部分での異物検出感度とX線透過率の小さい部分での異物検出感度とを著しく低下させることなく良好に保つことができるという特徴を有し、X線異物検査装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】第1実施形態に係るX線異物検査装置の外観斜視図である。
【図2】第1実施形態に係るX線異物検査装置のシールドボックス内部の簡易構成図である。
【図3】第1実施形態に係るX線ラインセンサモジュールの構成図である。
【図4】X線を用いた検査の原理を示す模式図である。
【図5】第1実施形態に係るX線異物検査装置の制御ブロック図である。
【図6】(A)第1A/Dコンバータから出力されるデジタル信号(カウント値)とラインセンサ出力値との相関を表すグラフ図である。(B)第2A/Dコンバータから出力されるデジタル信号(カウント値)とラインセンサ出力値との相関を表すグラフ図である。
【図7】第2実施形態に係るX線異物検査装置の制御ブロック図である。
【図8】(A)第1実施形態に係るX線異物検査装置における電荷蓄積時間を示す図である。(B)第2実施形態に係るX線異物検査装置における電荷蓄積時間を示す図である。
【図9】(A)第1実施形態に係るX線異物検査装置における電荷蓄積時間を示す図である。(B)第2実施形態の変形例に係るX線異物検査装置における電荷蓄積時間を示す図である。
【図10】商品形状と異物の付着位置とを示す図である。
【図11】図10の商品を被検査物としたときの基点からの距離とラインセンサ出力値との関係を表すグラフ図である。
【図12】第1OPアンプにおいてラインセンサ出力値の低い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施された場合の基点からの距離とA/Dコンバータ入力信号強度との関係を表すグラフ図である。
【図13】第2OPアンプにおいてラインセンサ出力値の高い領域のアナログ検出信号が最適となるように振幅調整処理やオフセット調整処理が施された場合の基点からの距離とA/Dコンバータ入力信号強度との関係を表すグラフ図である。
【符号の説明】
【0063】
10 X線異物検査装置
12 コンベア
13 X線照射器
14,14a X線ラインセンサモジュール
14a フォトダイオード
14b シンチレータ
20,20a 制御コンピュータ
41,41A,41B A/Dコンバータ
42,42A,42B D/Aコンバータ
43,43A,43B OPアンプ
AS0,AS10,AS10‘ アナログ検出信号
AS1,AS2,AS11,AS12 アナログ出力信号
GS1,GS2,DS11,DS12 デジタル信号
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を照射するX線照射部と、
被検査対象物の各部分を通過してきたX線を受光して、それらの透過X線の強さに応じたアナログ信号を出力するX線検出部と、
前記アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、
前記デジタル信号からX線画像を生成して被検査対象物の良否判定を行う判定処理部と、
被検査対象物の各部分について、前記A/D変換部から異なる2以上のデジタル信号が出るように、前記アナログ信号を処理するアナログ信号処理部と、
を備えたX線検査装置。
【請求項2】
前記A/D変換部は、少なくとも、第1A/Dコンバータと第2A/Dコンバータとを有しており、
前記アナログ信号処理部は、少なくとも、前記アナログ信号を増幅して前記第1A/Dコンバータに送る第1OPアンプと、前記アナログ信号を増幅して前記第2A/Dコンバータに送る第2OPアンプとを有しており、
前記第1OPアンプと前記第2OPアンプとは、ゲイン及び/又はオフセット調整量が異なる、
請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記アナログ信号処理部は、前記アナログ信号を増幅して前記A/D変換部に送るOPアンプを有しており、被検査対象物の各部分についての少なくとも2つの前記アナログ信号を、時間差をつけて前記OPアンプに入力させ、前記OPアンプにおいて異なるゲイン及び/又はオフセット調整量を用いて増幅させ、
前記A/D変換部は、前記OPアンプから時間差をつけて出てくる少なくとも2つの異なる増幅済みアナログ信号を、順番に前記デジタル信号に変換する、
請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項1】
X線を照射するX線照射部と、
被検査対象物の各部分を通過してきたX線を受光して、それらの透過X線の強さに応じたアナログ信号を出力するX線検出部と、
前記アナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換部と、
前記デジタル信号からX線画像を生成して被検査対象物の良否判定を行う判定処理部と、
被検査対象物の各部分について、前記A/D変換部から異なる2以上のデジタル信号が出るように、前記アナログ信号を処理するアナログ信号処理部と、
を備えたX線検査装置。
【請求項2】
前記A/D変換部は、少なくとも、第1A/Dコンバータと第2A/Dコンバータとを有しており、
前記アナログ信号処理部は、少なくとも、前記アナログ信号を増幅して前記第1A/Dコンバータに送る第1OPアンプと、前記アナログ信号を増幅して前記第2A/Dコンバータに送る第2OPアンプとを有しており、
前記第1OPアンプと前記第2OPアンプとは、ゲイン及び/又はオフセット調整量が異なる、
請求項1に記載のX線検査装置。
【請求項3】
前記アナログ信号処理部は、前記アナログ信号を増幅して前記A/D変換部に送るOPアンプを有しており、被検査対象物の各部分についての少なくとも2つの前記アナログ信号を、時間差をつけて前記OPアンプに入力させ、前記OPアンプにおいて異なるゲイン及び/又はオフセット調整量を用いて増幅させ、
前記A/D変換部は、前記OPアンプから時間差をつけて出てくる少なくとも2つの異なる増幅済みアナログ信号を、順番に前記デジタル信号に変換する、
請求項1に記載のX線検査装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−80028(P2009−80028A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−249901(P2007−249901)
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月26日(2007.9.26)
【出願人】(000147833)株式会社イシダ (859)
【Fターム(参考)】
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