説明

X線構造解析における回折X線の検出器への斜め入射時の強度補正

【課題】
新たな斜め入射補正式を考案し、従来の補正精度を上回る精度を得る。
【解決手段】
X線構造解析における回折X線の検出器への斜め入射時の強度を、cosνに加えてf(0)/f(ν)を乗ずることにより補正する斜め入射強度補正法であって、f(ν)が所定の式で表される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線構造解析における回折X線の検出器への斜め入射時の強度補正に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回折X線が検出器に入射するとき、検出器への入射角νに依存して読み取り強度が変化することが知られている。正確な回折強度を知るためにはこの斜め入射時に強度を補正する必要がある。
【0003】
従来、読取強度にcosνを乗じることによる斜め入射補正が行われていた。
【非特許文献1】Acta Cryst. (1999). B55, 917-922
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記非特許文献1の補正方法は、全体としてはある程度良い信頼度因子が得られたものの、νが大きな反射ほどその補正精度が悪くなることが次第に明らかになった。
本発明は、新たな斜め入射補正式を考案し、従来の補正精度を上回る精度を得ることを目的とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、もとより本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0006】
69mmに球形整形したCeB6結晶を、真空カメラを用いてX線回折強度を測定した。波長l=0.71073AのX線を使用し、回転幅16o、0o~16o,10o~26oのように両端を6oずつ重ねて0o~186oまでの18枚を、露光時間12分および128分で計36枚を測定し斜め入射補正を行った。
従来のcosνによる補正では信頼度因子R=2.928%であったのに対し、


【0007】
による補正では信頼度因子R=1.891%であった。このことを図3及び図4を用いて以下に説明する。
【0008】
図3は測定したすべての反射について、cosν補正を適用し、図4は測定したすべての反射について、


【0009】
補正を適用し、それぞれ計算強度に対する観測強度と計算強度の差


【0010】
を計算したものである。 図3は、グラフ両端においてdI/Iの値が大きくなっているのに対し、図4は、グラフ全域にわたって低いdI/I値を表示している。両図の比較からも上記信頼性の向上がわかる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】イメージングプレートと入射X線との関係を示した説明図である。
【図2】イメージングプレートの読取装置概念図である。
【図3】cosν補正を適用したdI/I散布図である。
【図4】f(0)/f(ν)cosν補正を適用したdI/I散布図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線構造解析における回折X線の検出器への斜め入射時の強度を、cosνに加えて


を乗ずることにより補正する斜め入射強度補正法であって、f(ν)が以下の式で表される斜め入射時の強度補正。




μp:X線の吸収係数、μE:読取用レーザー光の吸収係数、μp:発光の吸収係数
(式中の記号は、図1及び図2を参照)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−214728(P2006−214728A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−24730(P2005−24730)
【出願日】平成17年2月1日(2005.2.1)
【出願人】(304021277)国立大学法人 名古屋工業大学 (784)
【Fターム(参考)】