説明

X線発生装置のアノード電位の切り替え

本発明は、X線発生技術に関する。複数の光子エネルギーを有するX線放射を供給することは、X線画像を生成するときに、組織の構造を識別するのに役立つ。結果的に、異なるエネルギーモードを提供するため、電子を収集する素子に対する電子を放出する素子の電位の切り替えを可能にするX線発生装置が提供される。本発明によれば、X線発生装置が提供され、電子を放出する素子16と電子を収集する素子20を備える。電子を放出する素子16と電子を収集する素子20は、X線放射14の発生のための作用的に結合される。電子を放出する素子16から電子を収集する素子20への電子の加速のため、電子を放出する素子16と電子を収集する素子20との間に電位が形成され、電子は電子ビーム7を構成する。電子ビーム17は、電位に影響を及ぼすために調節される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線発生装置技術に関し、より詳細には、本発明は、X線発生装置、X線システム、X線システム及びCTシステムの少なくとも1つにおけるX線発生装置の使用、電子収集素子の電位を切り替える方法に関する。特に、本発明は、電子の加速のために切り替え可能な電位を有するX線発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばX線管としても知られているX線発生装置は、医用画像形成の応用、検査画像形成の応用又はセキュリティ画像形成の応用のために使用される電磁放射線を発生するために使用される。
【0003】
X線発生装置は、たとえばカソードエレメントと呼ばれる電子を放出する素子と、例えばアノードエレメントと呼ばれる電子を収集する素子とを有する。電子は、電子を放出する素子から電子を収集する素子に、X線放射を発生する2つの素子間の電位により加速される。
【0004】
電子を放出する素子から発生する電子は、電子を収集する素子に進み、焦点と呼ばれる領域に到達し、電子を収集する素子の例えばディスクエレメントである電子ボンバードメントにより電磁放射が形成される。電子を収集する素子又はアノードエレメントは、静止した性質からなるか、回転素子として実現される場合がある。
【0005】
例えばX線の1つの応用は、コンピュータ断層撮影又はCTシステムである。X線管は、X線のファンビームを発生している間、例えば患者である被検体に関して回転する。X線間の反対側に、ガントリ上にX線管と共に位置されて、X線検出器エレメントが配置され、このX線検出器エレメントは、被検体に関してX線管と共に回転する。この検出器は、X線、特に被検体により減衰されるX線放射を、例えばコンピュータシステムにより被検体内部の形態の画像のその後の再構成及び表示のための電気信号に変換する。
【0006】
多数のX線の光子エネルギーは、例えば患者の個々の組織を識別するX線画像を生成するときに利益がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、複数の、個々の異なる光子エネルギーを有するX線放射を発生可能なX線発生装置を提供する必要がある。X線の光子エネルギーは、電子を加速するために使用される電子を放出する素子と電子を収集する素子との間の電圧又は電位差に依存するものと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下では、独立の請求項に係るX線発生装置、X線システム、X線システムとCTシステムの少なくとも1つにおけるX線発生装置の使用、及び、電子を収集する素子の電位を切り替える方法が提供される。
【0009】
本発明の例示的な実施の形態によれば、電子を放出する素子と電子を収集する素子とを備えるX線発生装置が提供される。電子を放出する素子と電子を収集する素子とは、X線放射の発生のために作用的に結合される。電子を放出する素子から電子を収集する素子への電子の加速のための電位は、電子を放出する素子と電子を収集する素子との間に形成される。このように加速された電子は、電子ビームを構成する。さらに、電子ビームは、電位に影響を及ぼすように適合される。
【0010】
本発明の更なる例示的な実施の形態によれば、本発明に係るX線発生装置とX線検出器とを備えるX線システムが提供される。被検体は、X線発生装置とX線検出器との間で配置され、X線発生装置とX線検出器は、被検体のX線画像が取得可能であるように作用可能なように結合される。
【0011】
本発明の更なる例示的な実施の形態によれば、本発明に係るX線発生装置は、X線システムとCTシステムの少なくとも1つで使用される。
【0012】
本発明の更なる例示的な実施の形態によれば、電子を収集する素子の電位を切り替える方法が提供され、本方法は、X線放射のため、電子を放出する素子から電子を収集する素子の第一の衝突領域に電子ビームを提供し、電子ビームは、電子を放出する素子と電子を収集する素子との間の電位を切り替えるため、第二の衝突領域に少なくとも部分的に提供される。
【0013】
既に指摘したように、画像の生成のために複数のX線放射の光子エネルギーを採用することは、例えば患者の組織の個々のタイプといった、検査されるべき被検体の内部構造を識別するのに役立つ。高いエネルギーをもつ期間と低いエネルギーをもつ期間とのパルス期間は、X線検出器の積分期間未満であることが要求され、例えばCTスキャナの場合において例えば200μsecである。高いエネルギーと低いエネルギーとの間の遷移時間は、更に短くなることが要求される。
【0014】
例えばX線管であるX線発生器が接続される高電圧発生器は、管電圧、すなわちカソード電圧とアノード電圧との間の電位を変更するために採用される。しかし、発生器の出力、高電圧ケーブル及び/アノードでキャパシティが存在する場合があり、電圧発生器内で又は電圧発生器により高いエネルギー期間と低いエネルギー期間との間の好適な切り替えを可能にする速度での放電を妨げる。
【0015】
高いエネルギー期間と低いエネルギー期間との間の遷移時間を減少する1つの解決策は、電位、従って電子を放出する素子と電子を収集する素子との間の電圧差を変化することとして見られる。
【0016】
X線発生装置は、ユニポーラ型又はバイポーラ型のX線発生装置として実現される。ユニポーラ型の構成では、負の電圧が電子を放出する素子に提供され、電子を収集する素子は、グランド電位に接続される。バイポーラ型の構成では、電子を収集するエレメントは、正の電圧が提供される。
【0017】
本発明の1つの態様は、グランド電位と電子を収集する素子の正の電位との間の切り替えを提供することとして見られる。電子を放出する素子に提供される電圧を実質的に一定のままにして、電子を放出する素子と電子を収集する素子との間の電圧差、従って電位が影響され、例えば、電子を収集する素子に提供される正電圧をもつ高いエネルギー期間、及び電子を収集する素子がグランド電位に実質的に接続される場合に低いエネルギー期間において、増加された光子のエネルギーを提供するために増加される。
【0018】
電子を収集する素子の電位の係る迅速な調節を可能にするため、グランド電位に通常は接続される電子を収集する素子は、グランド電位、高電圧電源又は高電圧発生器のキャパシタンスから電気的に接続解除される必要がある。
【0019】
係る接続の解除は、電子を収集する素子とグランド電位との間の抵抗、インダクタ又はダイオードを接続することで実行される。電子を収集する素子の寄生容量である場合もある専用のキャパシタンスは、接続解除の前記素子に並列に接続される場合がある。
【0020】
従って、電子を収集する素子は、例えば浮遊電極である浮遊電位を有する素子であると考えられる。浮遊電極の電位は、制御された電子の衝突により正及び/又は負に帯電される。電子を収集する素子の電位、及び従ってX線放射の光子のエネルギーを制御するため、例えば補助的なアノードエレメントといった補助的な電子を収集する素子が設けられる場合があり、この素子は、グランド電位にダイレクトに接続される。
【0021】
回転する電子を収集する素子の場合に焦点又は焦点軌道に規則的に衝突する電子ビームは、例えば電磁レンズといった偏向素子により少なくとも部分的に偏光され、補助的な電子を収集する素子に配置される補助的な焦点又は焦点軌道に衝突する場合がある。
【0022】
補助となる焦点軌道への電子の衝突により発生されるX線放射は、例えばアパーチャエレメント又はコリメーションエレメントにより、X線発生装置内に保持される。従って、補助的な電子を収集する素子は、ビームダンプであると考えられる。
【0023】
電子を収集する素子に衝突する最初の電子ビームのほんの一部のため、電子を収集する素子とグランド電位との間の抵抗又は誘導素子を流れる電流における変化が生じる場合があり、これにより、電子を収集する素子の電位及び従ってX線放射のビームエネルギーを変化させるか又は影響を及ぼす場合がある。
【0024】
X線発生装置が単一のエネルギーモードのみで動作することが要求される場合、電子ビームは、X線発生装置から離れるX線ビームの形成のために補助的な焦点軌道に対応するために移動されているX線発生装置のアパーチャエレメントにより補助的な焦点軌道に向かって完全に偏向され、従ってX線画像の生成に寄与する。抵抗素子又は誘導素子は、バイパスされるか、又は単一のエネルギーモードにおける動作から脱する。
【0025】
例えば電子を収集する素子が例えばダイオードによりグランド電位か接続解除される場合、電子を収集する素子の電位における変化を提供する更なる可能性は、補助的な電子コレクタ又は散乱された電子を収集する素子を設けることであり、例えば正の電圧、従ってグランド電位に比較して正の電位にダイレクトに接続される。
【0026】
焦点又は焦点軌道以外に電子を収集する素子の更なる衝突領域が設けられる場合がある。第二の衝突領域は、電子の散乱を提供するために適合される。散乱される電子は、散乱される電子を収集する素子に向けられ、結果的に、電子を収集する素子は、正に帯電又はイオン化され、従って散乱される電子を収集する素子に似た電位が取得される。結果的に、電子を収集する素子の電位は、グランド電位から正の電位に変化され、電子を放出する素子と電子を収集する素子との間の全体の電位又は電圧差が増加される。
【0027】
電子の散乱により正電位を取得することは、電子の後方散乱比>1により特に都合よく提供される。例えば2〜10の電子の後方散乱比を取得することは、酸化ベリリウム、酸化アルミニウム又は酸化マグネシウムで更にコートされる、例えばひれを持つ表面又はほひげをもつ表面といった散乱表面への斜入射を有する電子により提供される場合がある。係るコーティングは、例えば二次電子倍増管のダイノードについて採用される場合がある。
【0028】
さらに、浮遊電極素子として実現される電子を収集する素子の電位は、制御される電子の衝突により正及び/又は負に変化される。
【0029】
本発明に係る電子を収集する素子の電位における変化により、約10〜20μsecの遷移時間が達成可能である。最大の管電力は、例えば80kVで120kWの低い管電圧で利用可能である。光子束は、X線放射を生成するためではなく電子を収集する素子の電位を変えるために採用される電子ビームの一部により、高いエネルギーモードでさえ十分であると考えられる。
【0030】
X線発生装置の筐体へのフィードスルー、特に正及び負の高電圧又はグランド電位を除く更なるフィードスルーが必要とされない。高電圧の外部切り替えは、X線発生装置の固有の切り替えのために必要ではない。パルス系列は、任意に選択される場合がある。焦点のサイズ及び/又は寸法は、異なるアノード電位でさえ維持される。
【0031】
散乱素子は、ワイヤグリッドとして実現されるか、例えば酸化ベリリウム、酸化アルミニウム及び酸化マグネシウムのような二次電子増倍管のダイノードについて使用される酸化物でコートされるか、又は化学式xCl,xBrの塩、金属元素U,Nb,W,Ta,Mo,Rh,Tiを含む金属表面、ダイアモンド結晶、ドープされたダイアモンド結晶、ダイアモンドホイル、ドープされたダイアモンドホイル、カーボンナノチューブ及び/又はフラーレンのような構造又はコーティングを有する場合がある。酸化物コーティングは、平均の電子エネルギーが10keV以下である領域にのみ適用される。例えばひれ、ワイヤ又はひげを含む散乱構造は、衝突する電子を減速させるために減速構造又は減速要素として採用される。
【0032】
ダイオードエレメントの場合、エレメントは、例えば真空中の半導体又はフィードスルーといった半導体、例えば補助的な電子を収集する素子に隣接して配置される熱イオン電子放出体として実現される。真空ダイオードは、例えば加熱のためにX線発生装置の筐体の真空内に変換器を有する、エネルギー変換を必要とする。また、ダイオードエレメントは、隣接して配置されるか又は補助的な電子を収集する素子の前に配置される、カーボンナノチューブのような電子源としてフィールドエミッタをもつカソードとして実現され、おそらく電源及び更なるフィードスルーを必要としない。
【0033】
抵抗素子が採用される場合、抵抗素子は、X線発生装置の筐体の外部に配置される。しかし、抵抗素子は、例えばドープ炭化ケイ素のような抵抗性のアノード材料を使用することで、電子を収集する素子に統合され、おそらく更なるフィードスルーを必要としない。誘導素子が採用される場合、誘導素子は、例えば電子を収集する素子の絶縁部分又は本体の螺旋のようなワイヤ構造又はプリント回路ボードといったアノードの統合された部分である。
【0034】
以下では、本発明の更なる実施の形態は、特にX線発生装置を参照して記載される。しかし、これらの説明は、X線システム、X線システム及びCTシステムの少なくとも1つにおけるX線発生装置の使用、及び電子を収集する素子の電位を切り替える方法にも適用される。
【0035】
請求項と特許請求されたエンティティとの間の1つ又は複数の特徴の任意の変形及び交換が本出願の開示の範囲において考えられることを留意されたい。
【0036】
本発明の更なる例示的な実施の形態によれば、電子を収集する素子への電子ビームが衝突する第一の領域は焦点を構成し、焦点のサイズ及び/又は位置は、電子ビームにより影響される。
【0037】
電子を収集する素子に電子ビームを向ける及び/又は焦点を合わせることで、第一の衝突領域又は焦点は、影響され、特に制御される。
【0038】
本発明の更なる例示的な実施の形態によれば、X線発生装置は、第二の衝突領域を更に備え、第一の電子ビームの部分は、第二の衝突領域に衝突可能であり、第二の電子ビームの部分は、電位に影響を及ぼすために適合される。
【0039】
従って、第二の衝突領域に電子ビームの一部を向けることで、電位及び/又は電位における変化を制御可能である。
【0040】
本発明の更なる例示的な実施の形態によれば、X線発生装置は、第二の衝突領域と、少なくとも第二の電子を放出する素子とを更に備え、第二の電子を放出する素子は、第二の衝突領域への衝突のために第二の電子ビームを提供するために適合される。
【0041】
異なる電子を放出する素子、X線放射の発生及び電子を収集する素子の電位の変化を提供する異なる電子ビームを採用することで、第一の電子ビームを偏向、従って分割する必要がない。従って、完全な第一の電子ビームは、焦点に衝突する電子の量を減少する必要なしに、X線放射の発生のために採用される。異なる電子ビームが強度変調されるか、及び/又は個々に切り替えられる。
【0042】
本発明の更なる例示的な実施の形態によれば、第二の衝突の領域は、電子を収集する素子と補助的な電子を収集する素子とから構成されるグループのうちの1つのエレメントに配置される。
【0043】
電子ビームの一部を、補助的な電子を収集する素子又は、第一の衝突領域も配置される電子を収集する素子の異なる部分の何れかに向け直すことで、電子ビームのその部分は、電子を放出する素子と電子を収集する素子との間の電位を変えるために採用されている間、有効なX線放射を生成する有効な電子ビームから分岐される。
【0044】
本発明の更なる例示的な実施の形態によれば、第二の衝突領域は、電子の散乱のために適合され、特に電子の散乱素子を含み、この電子の散乱要素は、減速要素、ひれ要素、ひげ要素、グリッドワイヤ、及び、ダイノードコーティング、酸化ベリリウム(BeO)、参加アルミニウム(Al2O3)、酸化マグネシウム(MgO)、化学式xCl,xBrの塩、金属元素U,Nb,W,Ta,Mo,Rh,Tiを含む金属表面、ダイアモンド結晶、ドープされたダイアモンド結晶、ダイアモンドホイル、ドープされたダイアモンドホイル、カーボンナノチューブ及び/又はフラーレンを含む金属表面のうちの1つを含むエレメント、の少なくとも1つを含む。
【0045】
この散乱素子は、特に表面又は表面のエレメントである場合がある。係る電子散乱素子又は電子散乱表面は、第二の衝突領域に衝突する電子ビームの1つの電子から多数の散乱電子を提供するのを可能にする。
【0046】
本発明の更なる例示的な実施の形態によれば、X線発生装置は、散乱電子を収集する素子を更に含み、散乱電子を収集する素子は、電子の散乱表面から散乱される電子を収集するために適合される。電子を収集する素子は、第二の衝突領域への電子の衝突により正に帯電可能であるか又はイオン化される。
【0047】
電子を散乱させることで、電子ビームの一部は、例えば電子を収集する素子と更なる素子との間のX線発生装置のシンクの筐体内で導電性接続を構成するために採用され、更なる素子は、例えば散乱電子を収集する素子であり、散乱された電子のストリームを介して電子を収集する素子に異なる電位を提供するのを可能にするため、例えばグランド電位といった電子を収集する素子の最初の電位とは異なる電位を有する。
【0048】
散乱電子を収集する素子は、電子を受けるドレインとして見られ、電子は、電子を散乱する素子の表面から散乱電子を収集する素子までの電位差のため、散乱素子と散乱電子を収集する素子との間で加速され、おそらく、電子を散乱する素子、おそらく散乱電子を収集する素子の電子を収集する素子への実質的に同様の電位を提供する導電性リンクを提供する。電子の後方散乱比は、例えば2と10との間であり、特に1よりも大きい。従って、電子散乱表面に衝突するそれぞれの電子について、2〜10の散乱電子が生成される。
【0049】
本発明の更なる例示的な実施の形態によれば、X線発生装置に供給される電圧は、電子を放出する素子と電子を収集する素子との間の電位を変えるときに実質的に変化しないままである。
【0050】
従って、X線画像の有益な取得のために、例えばキャパシタンスの作用のために余りに低速である外部の電圧切替が必要とされない。
【0051】
本発明の更なる例示的な実施の形態によれば、X線発生装置は、容量素子、挿入(parenthetic)キャパシタンス、ダイオード素子、誘導素子及び抵抗素子のからなるグループのうちの少なくとも1つの素子を含み、少なくとも1つの素子は、電子を収集する素子と、最も正の電位と特にグランド電位である最も負の供給電位との間の電位との間に配置される。
【0052】
係る素子を採用することで、電子を収集する素子は、浮遊電極を得るために、例えばグランド電位から接続解除され、この浮遊電極は、グランド電位以外の異なる電位を外部からその後に受けるのを可能にする。
【0053】
本発明のこれらの他の態様は、以下に記載される実施の形態を参照して明らかとなるであろう。本発明の例示的な実施の形態は、以下の図面を参照して以下に記載される。図面における説明は、概略的である。異なる図面では、類似又は同じエレメントは類似又は同じ参照符号で提供される。図面は、スケーリングするために描かれていないが、質的な釣り合いを示している。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明に係るX線システムの例示的な実施の形態を示す図である。
【図2】本発明の第一の実施の形態に係る電子を収集する素子の電位を変える回路図の例示的な実施の形態を示す図である。
【図3】本発明の第二の実施の形態に係る電子を収集する素子の電位を変える回路図の例示的な実施の形態を示す図である。
【図4】本発明に係る電位スイッチの例示的なタイムダイアグラムを示す図である。
【図5a】本発明に係る図4のタイムラインダイアグラムにおける図3の概念的な回路の例示的な状態を示す図である。
【図5b】本発明に係る図4のタイムラインダイアグラムにおける図3の概念的な回路の例示的な状態を示す図である。
【図5c】本発明に係る図4のタイムラインダイアグラムにおける図3の概念的な回路の例示的な状態を示す図である。
【図5d】本発明に係る図4のタイムラインダイアグラムにおける図3の概念的な回路の例示的な状態を示す図である。
【図5e】本発明に係る図4のタイムラインダイアグラムにおける図3の概念的な回路の例示的な状態を示す図である。
【図6】本発明に係る電子を収集するディスクエレメントの例示的な実施の形態を示す図である。
【図7】本発明の例示的な実施の形態に係る例示的なX線ビームの幾何学的形状を示す図である。
【図8a】電子の後方散乱の例示的な実施の形態を示す図である。
【図8b】電子の後方散乱の例示的な実施の形態を示す図である。
【図9a】電子の後方散乱の例示的な実施の形態を示す図である。
【図9b】電子の後方散乱の例示的な実施の形態を示す図である。
【図10a】本発明に係る例示的な電子の後方散乱係数値を示す図である。
【図10b】本発明に係る例示的な電子の後方散乱係数値を示す図である。
【図10c】本発明に係る例示的な電子の後方散乱係数値を示す図である。
【図11】本発明に係る電子を収集する素子の電位を切り替える方法の例示的な実施の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
図1を参照して、本発明に係るX線システムの例示的な実施の形態が記載される。
図1のX線システム2は、X線発生装置4とX線検出器6とを備えており、ここではラインアレイとして例示的に示されている。X線発生装置4とX線検出器6の両者は、ガントリ7に互いに対向して設けられている。X線14は、X線発生装置4からX線検出器6の方向で放出される。支持体10上に位置されて、被験者8は、X線14の経路に配置される。X線発生装置4とX線検出器6とを有するガントリ7は、X線画像の取得のため、例えば患者である被検体8に関して回転される。コンピュータシステム12は、X線システム2を制御するために、及び/又は取得されたX線画像を評価するために設けられる。
【0056】
ここで図2を参照して、本発明の第一の実施の形態に係る電子を収集する素子の電位を変える回路図の例示的な実施の形態が示される。
【0057】
図2では、X線発生装置4は、電子を放出する素子16に対して‐140kV 32を有するユニポーラ型のX線発生装置4として例示的に示される。X線発生装置4は、電子を収集する素子20及び補助的な電子を収集する素子22を有する。補助的な電子を収集する素子22は、0Vを有するグランド電位34にダイレクトに接続され、電子を収集する素子20は、抵抗素子26に並列に寄生キャパシタンス29を場合により有する、抵抗素子26によりグランド電位34に接続される。
【0058】
電子を放出する素子16と電子を収集する素子20,22との間の電位又は電圧差のため、電子を放出する素子16から電子を収集する素子20,22に電子が加速され、電子ビーム17が形成される。
【0059】
偏向素子18は、電子ビーム17を電子を収集する素子20,22に向けるために採用される。従って、偏向素子18により、電子ビーム17は、電子を収集する素子20と補助的な電子を収集する素子22の何れか1つに向けられる。電子を収集する素子20,22の両者間の電子の遷移は、偏向素子18により達成可能である。
【0060】
アパーチャエレメント又はコリメーションエレメント24は、被検体8の方向においてX線放射14を形成及び/又は成形するために配置される。アパーチャエレメント24の開口は、アクティブ又は使用されるX線放射14aが通過、従って被検体8とX線検出器6の方向において、X線発生装置4から離れるのを可能にし、アパーチャエレメント24自身は、非アクティブ又は使用されていないX線放射14bがX線発生装置4から離れるのを妨げる。アパーチャエレメント24は、移動され、その開口は、所望の形状のX線放射14を決定するために調節される。
【0061】
電子を収集する素子20上に、焦点38又は第一の衝突領域38が配置され、補助的な電子を収集する素子22上に、第二の衝突領域40が配置される。また、電子ビーム17は、電子を放出する素子16から放出されて電子を収集する素子20,22に流れる電流として解釈される場合もある。電子ビーム17が、電子を収集する素子20にのみ衝突する位置から、補助的な電子を収集する素子22の第二の衝突領域40に衝突する位置に偏向素子18により移動又は変位される場合、受信される電流は、電子を収集する素子20及び補助的な電子を収集する素子22により分割される。補助的な電子を収集するエレメント22に電子ビーム17の少なくとも1部を向け直すことで、抵抗素子26を通して導通する電流が変化する。従って、抵抗素子26間の電圧は、これに応じて調節される場合がある。言い換えれば、補助的な電子を収集する素子22に電子ビーム17の少なくとも1部を向け直すことで、電子を放出する素子16と電子を収集する素子20との間の電位が影響される。
【0062】
従って、偏向素子18がシームレスな遷移を提供しないが、電子を収集する素子20のみへの衝突から電子を収集する素子20,22の両者への衝突への電子ビーム17の切り替えをむしろ提供する場合、電子を放出する素子16と電子を収集する素子20との間の電位、従って加速電圧も同様に切り替えられる。アパーチャエレメント24の開口の位置及びサイズは、電子を収集する素子20の第一の衝突領域38に従って調節される。
【0063】
単一のエネルギーのX線放射14のみが望まれる場合、電子ビーム17は、X線放射14を生成するために偏向素子18により補助的な電子を収集する素子22に完全に向けられる。この場合、アパーチャエレメント24は、X線放射ビーム14bがX線発生装置4の筐体を離れるのを可能にする位置に位置される。
【0064】
キャパシタンス28は、例えば150pFであり、抵抗性結合又は抵抗素子26は、例えば100kΩを有する。X線放射のエネルギーの時定数τは、例えば15μsecである。X線14は、例えば60〜140keVのエネルギーを有する。
【0065】
ここで図3を参照して、本発明の第二の実施の形態に係る電子を収集する素子の電位を変える回路図の例示的な実施の形態が示される。
【0066】
図3では、散乱素子42を有する、電子を収集する素子20を備えるX線発生装置4の回路図が示される。
【0067】
さらに、電子ビーム17は、電子を収集する素子20に電子を放出する素子16から放出される。電子を収集する素子自身は、焦点又は第一の焦点領域38と、散乱素子42を有する第二の衝突領域40とを有する。図3に示されない偏向素子18は、電子ビーム17を第一の衝突領域38又は第二の衝突領域40の何れかに向け、少なくとも部分的に、電子を収集する素子20での電子ビーム17の位置の連続的な遷移と同様に実質的に切り替えるのを可能にする。
【0068】
電子を収集する素子20には、ダイオードエレメント30が設けられ、ダイオードエレメント30によりグランド電位34に接続される。高電圧発生器の負の高電圧供給は、電子を放出する素子16に接続される負の電位32に供給される。高電圧発生器の正の高電圧供給は、正の電位36に接続され、この正の電位36に、散乱電子を収集する素子44が接続される。更なる散乱電子を収集する素子48は、電子を収集する素子20の寄生容量28と同様にダイオード素子30により電子を収集するエレメント48に接続される、グランド電位34に配置される。
【0069】
更なる散乱電子を収集する素子48は、アノードから電子を引き抜くために採用され、電子は焦点から散乱され、使用されるX線が形成される。これら散乱される電子の集合は、アノードの熱負荷を低減するのを助ける。さもなければ、特に管フレームがアノードに関して負に帯電される場合、又はカソードが焦点の近くに配置される場合に、カソードがエレクトロンミラーとしての役割を果たす場合、これら散乱される電子の集合は、アノードに戻る。
【0070】
電子ビーム17の一部は、第二の衝突領域40に衝突し、従って散乱素子42により、後方散乱電子56が形成され、後方散乱電子は、電子を収集する素子20と散乱電子を収集する素子44との間の電位、従ってグランド電位34と正電位36との間の電位により散乱電子を収集する素子44に向けられる。
【0071】
図3から与えられるように、散乱素子42は、例えばη=2〜10である後方散乱係数ηを提供する平坦な入射角度の下で電子ビーム17により衝突される。
【0072】
例として、負の電圧は、−80kVに選択され、正の電位は、+40kVに選択される。グランド電位は、0kVであると考えられる。80keVのX線放射を発生するため、完全な一次の電子ビーム17は、第一の衝突領域、電子を収集する素子20の焦点軌道38に向けられ、完全な電力、従って電子ビーム17の電子の完全な電流は、導通状態であるダイオード素子30によりX線放射14を発生するために利用可能である。
【0073】
増加されるエネルギーを有するX線放射14を発生するため、電子を収集する素子20、特にその電位は、+40kVに増加される。従って、電子を放出する素子16と電子を収集する素子20との間の電位も同様に増加している。+40kVに向けて電子を収集する素子20の電位を駆動するため、一次の電子ビーム17の一部は、偏向素子18により散乱表面42に向けられる。次いで、散乱された電子46は、+40kVの電位を有する散乱電子を収集する素子44に引き抜かれる。散乱係数η>1により、電子を収集する素子20は、正に帯電、従って正にイオン化すると考えられ、この電位は、散乱プロセスが続く限り、言い換えれば一次の電子ビーム17の一部が散乱素子42に向けられる限り維持される。
【0074】
電子ビーム17の残りの部分は、電子を放出する素子16と電子を収集する素子20との間の増加される電位のため、この場合およそ120keVのX線放射14を発生するため、焦点38に向けられる。電位の遷移を加速するため、完全な一次の電子ビーム17は、遷移期間について散乱表面42に向けられる。正規の電位、従って例えば80kVに帯電するため、電子ビーム17は、散乱表面42から離れる方に向かう。
【0075】
ここで図4を参照して、本発明の第二の実施の形態に係る電子を収集する素子の電位を変える回路図の例示的な実施の形態が示される。
【0076】
図4では、時間ポイントAと次の時間ポイントA’との間の完全な遷移期間が示される。ポイントAでは、電子を放出する素子16と電子を収集する素子20との間の電位は、80kVである。遷移時間τ1の間、電子ビーム17の一部は、散乱素子42に向けられる。従って、電子を収集する素子20は、約+40kVに正に帯電され、約140kVの電子を放出する素子16と電子を収集する素子20との間の全体の電位に到達する。
【0077】
この高電位の動作モードは、時間期間CによるT1の持続期間について、時間ポイントBと時間ポイントDとの間で続く。高電位のモードでは、アクティブなX線14aの全体のモード電力は、低電位モードにおける120kWから高電位モードにおける40〜60kWに低減される。
【0078】
時間ポイントDで、電子ビーム17は、焦点38にのみ向けられ、従ってこれ以上散乱素子42に衝突しない。遷移時間τ2の間、電子を放出する素子16と電子を収集する素子20との間の電位は、約120kV〜80kVに戻り、この電位は、X線放射を発生するために時間T2について期間Eの間に採用され、再び120kWの絶対電力に戻る。時間Tの後、時間ポイントA’で、示されたサイクルが繰り返される。
【0079】
ここで図5a〜図5eを参照して、本発明に係る図4のタイムラインにおける図3の概念的な回路の例示的な状態が示される。
【0080】
図5aにおいて、時間期間E/E’の間にX線発生装置4の動作が示される。X線ビーム17は、電子を収集する素子20の焦点38に、図5a〜図5eに示されない変位素子18により向けられる。電子を収集する素子20の電位は、実質的にグランド電位34である。ここでは例示的に‐1000mAの電流である焦点38に衝突する電子は、例えば‐400mAである更なる散乱電子を収集する素子48に向けられる散乱部分46と、ダイオード素子30を介して例えば‐600mAであるグランド電位に向けられる部分とに分割される。
【0081】
電子を放出する素子16により提供されるように、両方の値−400mAと‐600mAを合計すると‐1000mAとなる。時間期間Eの間、80keVを有するX線放射が発生される。
【0082】
図5bに関して、時間ポイントA/A’が示される。時間ポイントAにおいて、完全な電子ビーム17は、散乱素子42に偏向素子18により向けられる。さらに、−1000mAの例示的な電流は、電子を収集する素子20に供給され、この素子は、時間ポイントAと時間ポイントBとの間の遷移期間の開始で、グランド電位に実質的に接続される。散乱素子42に衝突する電子ビーム17は、散乱電子46を生成し、散乱電子は、+40kVの電位36に接続される散乱電子を収集する素子44に向けられる。
【0083】
図5bでは、例示的な散乱比2が想定され、従って、−1000mAの電流は、散乱素子42と散乱電子を収集する素子44との間に‐2000mAの電流を生成する。時間ポイントaが遷移フェーズτ1の開始時間ポイントであるので、電子を収集するエレメント20の電位は、0ボルトから約39kVに上昇し始める。
【0084】
図5cにおいて、時間ポイントBにおけるX線発生装置4が示される、電子ビーム17は、散乱エレメント42に向けられる。時間ポイントBにおいて、電子を収集する素子20の電位は、約+39kVに上昇され、従って正電位36に近似的に等しい。この場合、散乱素子42と散乱電子を収集する素子44との間のプルフィールド(pull field)は、例として2.0〜1.8に低下する散乱係数ηにより、ほぼ同一の電位のために0に近づき、従って散乱素子42から散乱電子を収集する素子44に−1800mAの散乱電子の電流が得られる。
【0085】
この場合ダイオード素子は逆方向にあるので、グランド電位に向けてダイオード素子30を電流が流れない。この特定の例では、時間ポイントAと時間ポイントBとの間の遷移時間において、τ1を例示的に6μsとして、有効なX線が発生されない。
【0086】
図5dに関して、時間期間C,T1において、電子ビーム17の一部は、1.8の例示的な散乱係数を有する散乱素子42に連続して向けられ、従って散乱素子42での‐500mAの衝突電流により‐900mAが生成される。電子ビーム17の電流の更なる部分は、有効なX線放射14を発生するため、焦点38に向けられる。この場合、119keVのエネルギーを有するX線放射14が形成されるが、500mAの電流のみによる。
【0087】
焦点軌道38からの電子は、例えば0.2の後方散乱係数ηを有して、反発の場(repelling field)と同様に後方散乱され、グランド電位に向けて−100mAの電流が生じる。低速に散乱された電子は、アノードに戻る。
【0088】
図5eに関して、時間ポイントDにおいて、τ2の期間を有する後方遷移(back transition)は、焦点38のみに電子ビーム17を向けることで開始される。電子を収集する素子20は、約+39kVから0kVにその電位を戻す間、発生されたX線14は、119keVから80keVへの減少するエネルギーを有する。焦点軌道38からの後方散乱されら電子46は、約0.4の後方散乱係数ηを有する更なる散乱電子を収集する素子48により収集され、従って‐400mAの電流が生じる。
【0089】
ここで図6を参照して、本発明に係る電子を収集するディスクエレメントの例示的な実施の形態が示される。
【0090】
図6では、低エネルギーモードから開始して、第一の電子ビーム17,17aは、焦点軌道38bに向けられ、X線発生装置4又はX線管の実質的にフルパワーでX線放射14を発生する低エネルギーモードでメインの焦点軌道が形成される。
【0091】
高エネルギーモードへの高速な遷移のため、電子ビーム17は、散乱素子42に向けて半径方向に掃引される。平坦な入射角度のため、物理的な焦点の長さは延長される。従って、セラミックの表面であっても衝突する電子ビーム17cにより発生される熱負荷に耐えることができることが想像できる。散乱素子42から、散乱電子46が発生され、発生された散乱電子は、散乱電子を収集する素子44に向けられる。従って、散乱された電子46は、高エネルギーモードに到達するまで、電子を収集する素子20を再帯電することが考えられる。
【0092】
電子ビーム17は、この場合、遷移がτ1の後に終了されるまで、有効なX線放射14を発生するため、高エネルギーモードにおいて焦点軌道38aを採用して、電子ビーム17bを形成するために戻って掃引される。
【0093】
電子を放出する素子16の一次電流が変化しないままであるとき、X線発生装置4の電力出力は、例えば80kVから約120kVまで150%だけ、電子を放出する素子16と電子を収集する素子20との間の電圧又は電位差に従って上昇する。高エネルギーモードにおける異なる焦点軌道38は、偏向素子18によるビームフォーカスが変化しないままである場合、電力密度における増加のために必要とされ、焦点の長さ又は幅或いは両者は、低エネルギーモード38bにおける焦点軌道に比較して増加される必要がある。例えば150%といった電位における増加と同じ割合だけ遷移期間において焦点の長さを増やすことは特に有利である。
【0094】
焦点軌道のX線発生部分での焦点電力密度を一定に保持するため、焦点パラメータは電圧又は電位における増加に適合される必要がある。従って、高エネルギーモードでは、有効なX線が発生される焦点のその部分の長さは、低エネルギーモードにおけるよりも短く、この場合、焦点のフルレングスは、X線を発生している表面38a上に位置される。
【0095】
例えば、焦点の半分が表面38に位置される場合、この場合、有効なX線が発生されており、その半分は散乱表面42に位置されており、高エネルギーモードにおいて、焦点の全体の長さが低エネルギーモードにおける長さの150%に増加される必要がある場合、電力密度を一定に保持するため、有効なX線を発生する焦点の部分の長さは、低エネルギーモードにおいて有効なX線を発生する長さの150%:2=75%である。言い換えれば、X線の光学的な焦点は、低エネルギーモードから高エネルギーモードに進むときに25%だけ収縮する。この例では、高エネルギーモードでは、アノードに衝突する電子の半分のみが有効なX線を発生する。これは、単位電流当たりの高エネルギーモードで発生されるX線束は高電圧電位による公知の2乗検波に従って増加し、従って絶対のX線束はこの例では約一定であるので、主要な欠点ではない。X線の光学特性は、より小さな焦点サイズ(長さ)のために更に改善される。
【0096】
使用されるX線ビーム14に入力する幾つかの集約的でないX線は、散乱素子42のエッジにより放出される。高エネルギーモードと低エネルギーモードとの間の遷移は、焦点軌道38又は散乱表面42の過熱を回避するため、焦点の幅及び長さが同時に変化する場合に加速される。
【0097】
低エネルギーモードへの後方遷移について、電子ビーム17は、焦点軌道38bに完全に向けられる。従って、散乱素子42は、これ以上電子を受けない。従って、電子を収集する素子20の電位は、ダイオード素子が開き、グランド電位34に接続するまで、更に負になる。偏向素子18の焦点パラメータは、前に高いエネルギーの設定に比較して低いエネルギーの設定に戻る。従って、遷移は、期間τ2の後に終了されることが考えられる。
【0098】
ここで図7を参照して、本発明の例示的な実施の形態に係る例示的なX線ビームの幾何学的形状が示される。
【0099】
図6を参照して前に記載されたように、X線が使用されるX線のファンビームに入るアクティブ領域50は、散乱素子42の小さな部分と同様に、焦点軌道38上に位置される。しかし、散乱素子42に衝突する電子は、経路を阻止している調節された開口を有するアパーチャエレメント24のため、使用されるX線ビーム24に大きく寄与しないと考えられる。従って、実質的に焦点38で発生されるX線放射14のみが、X線画像を生成するためにX線発生装置4から離れる。
【0100】
ここで図8a〜図9cを参照して、電子の後方散乱の例示的な実施の形態が示される。
【0101】
図8aでは、約1の散乱比ηが示される。斜入射、従って小さな入射角度による電子は、例えば金又はタングステンのような電子的に透明な表面に入射する。しかし、この構造を進行するが、例えばタングステンのボディの表面の下に近い電子は、電子と相互作用する。散乱電子の50%は、X線発生装置4の真空の領域に解放され、従って約1の散乱比を構成する。残りの50%は、ボディ内の多数の散乱のためにボディ内で失われる。これらは、同様に解放するために少なくとも部分的に利用可能である。
【0102】
図8bに関して、図8aのボディがホイル(foil)、ひれ(finned)構造又はひげ(whiskered)構造の種類であると考えられる場合、ボディにおいてさもなければ失われた電子の少なくとも1部は、電子がボディに入射する反対側で特に、真空に解放される。これは、フォイルの厚さが衝突する電子の侵入深さの範囲内にある場合に特に当てはまる。従って、散乱比η>1は、η=ηtop+ηbottom>1により達成可能である。
【0103】
図9に関して、後方散乱比ηは、対エネルギーで示されてる。
【0104】
例えば酸化ベリリウム、酸化マグネシウム及び酸化アルミニウムのようなダイノードコーティングは、2〜10の電子散乱係数ηを提供する。高エネルギー電子を効率的に散乱する、最下層としてタングステンのような高いzの材料を利用したサンドイッチ構造を採用すること、及び二次電子放出を改善するために係るダイノードコーティング又は上述されたコーティングの混成により最下層の上に更にコーティングすることは、特に有益である。
【0105】
図9cに関して、後方散乱された電子56を発生するひれ構造又はひげ構造を採用することが示される。斜入射下での後方散乱は、特にひれ又はひげを有する表面構造といった起伏のある構造により更に改善される。突き出ているエレメントは、時に、衝突する電子46の平均の侵入深さよりも薄い。従って、後方散乱された電子56は、個々のひれの上側及び後側の両者から開放され、従って散乱利得>2が得られ、これにより例えば80〜150keVを有するタングステンについて散乱比η≧2.0が得られる。
【0106】
散乱電子46は、個々のひげ又はひれ52を有する散乱素子42の櫛状構造に入射する。電子は、個々に複数のひげに侵入する間、1つのひれ又はひげ52に入るときと出るときの両者で、後方散乱電子56を生成する。後方散乱電子56は、散乱電子を収集する阻止44に向けて電場54により加速される。従って、1つの散乱電子56は、例えば10である複数の後方散乱電子56を生成し、従って後方散乱比η=10となる。
【0107】
ここで図10a〜図10cを参照して、本発明に係る例示的な電子の後方散乱係数の値が示される。
【0108】
図10aは、60keVの電子ビームについての電子の後方散乱係数η対入射角度αを示す。
【0109】
図10bに関して、半無限のタングステンのターゲットから後方散乱された65keVの電子の全体のエネルギースペクトルが示される。図10bから、多数の電子がほぼ弾性的に後方散乱され、散乱された電子の平均エネルギーは、一次エネルギーよりもかなり低いことが分かる。例えばW表面からの複数の散乱イベントの後、散乱された電子は減速される。係る構成は、減速素子として使用され、この素子は、平均の電子のエネルギーをある範囲にし、この場合、他の材料は、高い散乱率ηを有する。
【0110】
図10cに関して、30keVの入射運動エネルギーをもつ電子について、電子の後方散乱係数η対サンプル材料Zの原子番号が示される。特に、高いZ元素は、高い散乱係数ηを提供し、減速要素として有効である。
【0111】
図11に関して、電子を収集する素子の電位を切り替える方法が示される。
電子を収集する素子の電位を切り替える本方法58は、X線放射14を発生するため、電子を放出する素子16から、電子を収集するエレメント38の第一の衝突領域38に電子ビーム17を供給するステップ60を含み、電子ビーム17は、電子を放出する素子16と電子を収集する素子38との間の電位を変えるため、第二の衝突領域40に少なくとも部分的に供給される。
【0112】
用語「備える“comprising”」は、他のエレメント又はステップを排除するものではなく、冠詞“a”又は“an”は複数であることを排除しないことに留意されたい。また、異なる実施の形態に関連して記載されるエレメントが結合される場合がある。また、請求項における参照符号は、請求項の範囲を限定するものとして解釈されるべきではないことに留意されたい。
【符号の説明】
【0113】
2:X線システム
4:X線発生装置
6:X線検出器
7:ガントリ
8:被検体
10:支持体
12:X線放射
16:電子放出素子
17a,17b,17c:電子ビーム
18:偏向素子
20:電子収集素子
22:補助的な電子収集素子
24:アパーチャエレメント/コリメーションエレメント
26:抵抗素子/誘導素子
28:寄生容量/キャパシタンス
30:ダイオード素子
32:負電位
34:グランド電位
36:正電位
38a,38b:焦点/第一の衝突領域
40:第二の衝突領域
42:散乱素子
44:散乱素子収集素子
46:散乱電子
48:更なる散乱電子収集素子
50:アクティブ領域
52:ひれ/ひげ
54:電場
56:後方散乱電子
58:電子収集素子の電位を切り替える方法
60:電子ビームを提供するステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電子を放出する素子と、
少なくとも1つの電子を収集する素子とを備え、
前記電子を放出する素子と前記電子を収集する素子とは、X線放射の発生のために結合され、
前記電子を放出する素子から前記電子を収集する素子への電子の加速のため、前記電子を放出する素子と前記電子を収集する素子との間に電位が形成され、前記電子は少なくとも1つの電子ビームを構成し、
前記電子ビームは、前記電位に影響を及ぼす、
X線発生装置。
【請求項2】
前記電子を収集する素子の上の前記電子ビームの第一の衝突領域は焦点を構成し、
前記焦点のサイズ及び/又は位置は、前記電子ビームにより影響される、
請求項1記載のX線発生装置。
【請求項3】
偏向素子を更に備え、
前記偏向素子は、前記電子を収集する素子への前記電子ビームのサイズ及び/又は位置に影響を及ぼす、
請求項1又は2記載のX線発生装置。
【請求項4】
第二の衝突領域を更に備え、
前記電子ビームの第一の部分は、前記焦点に衝突可能であり、
前記電子ビームの第二の部分は、前記第二の衝突領域に衝突可能である、
前記電子ビームの前記第二の部分は、前記電位に影響を及ぼす、
請求項1乃至3の何れか記載のX線発生装置。
【請求項5】
少なくとも第二の電子を放出する素子と、
少なくとも第二の衝突領域とを更に備え、
前記第二の電子を放出する素子は、前記第二の衝突領域への衝突のために第二の電子ビームを供給する、
請求項1乃至3の何れか記載のX線発生装置。
【請求項6】
前記第二の衝突領域は、前記電子を収集する素子と補助的な電子を収集する素子とから構成されるグループのなかの1つの素子上に設けられる、
請求項4又は5記載のX線発生装置。
【請求項7】
前記第二の衝突領域は、電子を散乱し、電子を散乱する素子を有する、
請求項4又は5記載のX線発生装置。
【請求項8】
前記電子を散乱する素子は、表面、表面要素、減速要素、ひれ要素、ひげ要素、ワイヤグリッド、及び、ダイノードコーティング、酸化ベリリウム(BeO)、酸化アルミニウム(Al2O3)、化学式xCl,xBrの塩、金属元素U, Nb, Ta, Mo, Rh, Ti, ダイアモンド結晶、ドープされたダイアモンド検証、ダイアモンドホイル、ドープされたダイアモンドホイル、カーボンナノチューブ、フラーレンを含む金属表面のうちの1つを含むエレメント、のうちの少なくとも1つを有する、
請求項7記載のX線発生装置。
【請求項9】
少なくとも1つの散乱電子を収集する素子を更に備え、
前記散乱電子を収集する素子は、電子を散乱する表面から散乱される電子を収集する、
請求項4乃至8の何れか記載のX線発生装置。
【請求項10】
前記電子を収集する素子は、前記第二の衝突領域への電子の衝突により正に帯電可能であるか又は正にイオン化可能である、
請求項4乃至9の何れか記載のX線発生装置。
【請求項11】
当該X線発生装置に供給される電圧は、前記電子を放出する素子と前記電子を収集する素子との間の電位が変化するときに、実質的に変化されないままである、
請求項4乃至10の何れか記載のX線発生装置。
【請求項12】
寄生容量、ダイオード素子、誘導素子及び抵抗素子から構成されるグループのうちの少なくとも1つの素子を更に備え、
前記電子を収集する素子と、最も正の電位と最も負の電位との間の電位との間に前記少なくとも1つの素子が配置される、
請求項1乃至11の何れか記載のX線発生装置。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか記載のX線発生装置と、
X線検出器とを備え、
前記X線発生装置と前記X線検出器との間に被検体が配置され、
前記X線発生装置と前記X線検出器は、前記被検体のX線画像が取得可能であるように結合される、X線システム。
【請求項14】
X線システム及びCTシステムの少なくとも1つにおける、請求項1乃至12の何れか記載のX線発生装置の使用。
【請求項15】
電子を収集する素子の電位を切り替える方法であって、
X線放射を発生するため、電子を放出する素子から電子を収集する素子の第一の衝突領域に電子ビームを供給するステップを含み、
前記電子ビームは、前記電子を放出する素子と前記電子を収集する素子との間の電位を変えるため、第二の衝突領域に少なくとも部分的に供給される、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図5c】
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【図5d】
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【図5e】
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【図6】
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【図7】
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【図8a】
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【図8b】
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【図9a】
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【図9b】
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【図9c】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−509684(P2013−509684A)
【公表日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−535980(P2012−535980)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際出願番号】PCT/IB2010/054762
【国際公開番号】WO2011/051860
【国際公開日】平成23年5月5日(2011.5.5)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】