説明

X線CT装置

【課題】X線受光面の大きさの互いに異なる複数のX線検出器を設け、被検査物の全体像の把握を可能とし、かつ、拡大断層像を高分解能のもとに得ることのできるX線CT装置でありながら、CT撮影範囲の設定を容易化することのできるX線CT装置を提供する。
【解決手段】一つのX線検出器2aでCT撮影した基準画像を表示するとともに、そのときの回転テーブル3,xyテーブル5の位置を記憶しておき、他のX線検出器2bを選択した状態では、回転テーブル3,xyテーブル5の位置と、基準画像の撮影時における回転テーブル3,xyテーブル5の位置情報とから、当該他のX線検出器2bによる視野の位置と大きさに係る情報を、基準画像上に重畳表示することで、例えばX線受光面の小さいX線検出器2bを用いて被検査物Wの局部を高拡大率でCT撮影する際に、被検査物W上のどの部位を撮影しようとしているのかを直感的に把握することを可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はX線CT装置に関し、更に詳しくは、各種工業製品等を高倍率・高分解能のもとに撮影することのできるX線CT装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品をはじめとする各種工業製品の内部欠陥の有無等の検査や、内部寸法の調査等を行う手法として、従来、X線CTを用いて被検査物の断層像を撮影する手法が多用されている。この種のX線CT装置においては、一般に、X線発生装置とX線検出器の間に被検査物を搭載して鉛直の回転軸の回りに回転させる回転テーブルを設けた構造が採用されている。
【0003】
近年、X線発生装置からコーンビーム状のX線を発生して被検査物に照射するとともに、X線検出器を2次元検出器とし、一度の撮影により被検査物の3次元データを得て、被検査物の3次元画像表示や、互いに異なる複数の面に沿った断層像を表示するMPR表示を行えるようにしたものが多い。
【0004】
また、この種のX線CT装置においては、撮影倍率を変更するためにX線発生装置(X線焦点)に対して回転テーブルを接近/離隔させる機構と、撮影範囲を変更するために回転テーブルを上下動させる機構、および、回転テーブル上で被検査物をそのテーブル面に沿う方向に移動させる機構(xyテーブル)を設けた構成が主として採用されている。
【0005】
すなわち、撮影倍率は、X線発生装置(X線焦点)とX線検出器との距離SIDが一定であれば、X線発生装置に対する被検査物(回転テーブル)の距離SODが短くなるほど大きくなり、一方、撮影範囲は回転軸を中心とする円柱形となり、回転軸に沿って被検査物を上下動させたり、あるいは回転軸に直交する方向に被検査物を移動させることにより、例えば拡大撮影時において被検査物内での撮影範囲を変化させることができる。
【0006】
ここで、以上のような撮影範囲の設定は、従来、被検査物のX線透視像を見ながら適宜に上記の各機構を調整して行うのが一般的であり、また、比較的低倍率で撮影したX線透過データを用いて予備的に断層像を再構成して表示し、その断層像を見ながら各機構を調整するなど、必要とする拡大率・撮影範囲のもとに断層像を得るまでに手間が掛かるという問題があった。
【0007】
そこで、従来、例えば被検査物の全景が含まれるような比較的低倍率でCT撮影し、その撮影により得られたX線透過データを用いた再構成演算により、被検査物の3次元情報を表すMPR表示等を行うとともに、その撮影時における回転テーブルやその上のxyテーブルの位置情報を記憶し、その状態から回転テーブルをX線発生装置側に接近させたり、xyテーブルを移動させたとき、移動後の位置情報に基づいて、先の撮影に基づくMPR表示上に撮影範囲を表す領域を重畳表示する技術と、そのMPR表示上に領域を設定することにより、その領域が撮影範囲と一致するように回転テーブルやxyテーブルを自動的に移動させる技術が実現化されている(例えば特許文献1参照)。この技術により、X線CTの撮影視野の設定作業が大幅に簡略化されるようになった。
【0008】
ところで、この種のX線CT装置では、通常はX線検出器を1つだけ備えているのであるが、近年においてX線検出器として多用されている固体撮像素子を用いたX線検出器等においては、X線検出器の受光部の大きさと空間分解能は実質的に反比例の関係にある。すなわち、X線受光部が大きいX線検出器ほど、画素の配列ピッチが大となり、空間分解能は低下する。そのため、分解能を上げるためには、受光部の小さい検出器を使うか、あるいはX線発生装置とX線検出器との距離SIDを大きくすることが有効である。
【0009】
しかしながら、分解能を上げるために受光部の小さい検出器では、被検査物の全体像が得られないという問題がある。すなわち、例えば検出器とX線発生装置の焦点との距離が250mmである場合、X線の焦点と回転テーブルの回転軸との距離が10mmのときに撮影倍率25倍が得られ、受光部の大きさが5mm角の検出器であれば、視野は0.2mm角となり、25倍の倍率のもとに高分解能の断層像を得ることができる。しかし、このような大きさの受光部の検出器では、被検査物の大きさが5mm以上である場合、その全体像を確認することはできない。
【0010】
このような観点からすると、X線受光部が大きく視野を広く取れるX線検出器と、X線受光部が小さく視野は狭いが高分解能のX線検出器を備えることが有効であり、全体像はX線受光部の大きなX線検出器で撮影し、局所的な高倍率の撮影はX線受光部の小さいX線検出器で行って高分解能の断層像を得ることが可能となる。
【特許文献1】特開2008−188279号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、X線受光部の大きさが互いに異なる2つのX線検出器を備えたX線CT装置は、他の目的のために既に実用化されているが、上記した被検査物の全体像と、高倍率で高分解能の断層像を得るべく2つのX線検出器を設けた場合、特にX線受光面の小さいX線検出器による撮影範囲を従来の手法で設定することは困難となる。ここで、前記した特許文献1の技術は、X線受光部の大きさ互いに異なる複数のX線検出器を設ける構成については想定しておらず、また、この技術を直ちに適用することはできない。
【0012】
そこで本発明の課題は、X線受光面の大きさの互いに異なる複数のX線検出器を設け、被検査物の全体像の把握を可能とし、しかもその被検査物中の局部の断層像を高倍率で高分解能のもとに得ることのできるX線CT装置であっても、特に高倍率での撮影範囲を所要の範囲に容易に設定することのできるX線CT装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明のX線CT装置は、X線発生装置とX線検出器の間に回転テーブルを配置し、その回転テーブル上に被検査物を載せて回転を与えつつ、上記X線発生装置からのX線を照射することにより、複数の方向から被検査物を透過したX線透過データを上記X線検出器で検出して収集するCT撮影動作により得られたX線透過データを用いて再構成演算を行うことにより、被検査物の断層像を構築するとともに、上記回転テーブルをX線発生装置に対して接近/離隔する方向と当該回転テーブルの回転軸方向に移動させる回転テーブル移動機構と、その回転テーブル上に配置され、被検査物を搭載して当該回転テーブルの表面に沿って移動させるxyテーブルを備えたX線CT装置において、X線受光部の面積が互いに異なる少なくとも2つのX線検出器を備えるとともに、これらの各X線検出器のうち、任意のものを上記X線発生装置の焦点と上記回転軸とを結ぶ線上に選択的に移動させる検出器移動機構と、上記各X線検出器のうちの一つを用いて収集した被検査物のX線像を基準画像として記憶し、表示器に表示する表示手段と、その基準画像を構築するためのX線透過データを収集したときの回転テーブルおよびxyテーブルの位置を記憶する位置記憶手段と、上記各X線検出器のうちの他の一つがX線発生装置を上記焦点と上記回転軸とを結ぶ線上に移動させた状態では、その状態における上記回転テーブルおよびxyテーブルの位置と、上記位置記憶手段の内容に基づき、当該他のX線検出器による視野の位置と大きさに係る情報を上記表示器の基準画像上に重畳表示する視野表示手段を備えていることによって特徴づけられる。
【0014】
また、同じ課題を解決するため、請求項2に係る発明のX線CT装置は、X線発生装置とX線検出器の間に回転テーブルを配置し、その回転テーブル上に被検査物を載せて回転を与えつつ、上記X線発生装置からのX線を照射することにより、複数の方向から被検査物を透過したX線透過データを上記X線検出器で検出して収集する撮影動作により得られたX線透過データを用いて再構成演算を行うことにより、被検査物の断層像を構築するとともに、上記回転テーブルをX線発生装置に対して接近/離隔する方向と当該回転テーブルの回転軸方向に移動させる回転テーブル移動機構と、その回転テーブル上に配置され、被検査物を搭載して当該回転テーブルの表面に沿って移動させるxyテーブルを備えたX線CT装置において、X線受光部の面積が互いに異なる少なくとも2つのX線検出器を備えるとともに、これらの各X線検出器のうち、任意のものを上記X線発生装置の焦点と上記回転軸とを結ぶ線上に選択的に移動させる検出器移動機構と、上記各X線検出器のうちの一つを用いて収集した被検査物のX線像を基準画像として記憶し、表示器に表示する表示手段と、その基準画像を構築するためのX線透過データを収集したときの回転テーブルおよびxyテーブルの位置を記憶する位置記憶手段と、上記表示器に表示されている基準画像上でX線検出器の視野の位置と大きさに係る情報を入力する視野入力手段と、その視野入力手段により入力された視野に基づき、上記各X線検出器のうち、当該視野を得ることのできる最もX線受光部の小さいX線検出器を選択してX線発生装置の焦点と上記回転軸を結ぶ線上に移動させるとともに、そのX線検出器の視野が上記視野入力手段により入力された視野と一致するよう、上記回転テーブルおよびxyテーブルを自動的に移動させる制御手段を備えていることによって特徴づけられる。
【0015】
ここで、請求項1および2に係る発明においては、上記基準画像を、被検査物の3次元情報を表す像とし、上記視野の位置と大きさに係る情報を、CT撮影範囲を表す円柱形の領域情報とする構成(請求項3)を好適に採用することができる。
【0016】
また、請求項1および2に係る発明においては、X線受光部の大きさが互いに異なる2つのX線検出器を備え、上記基準画像はX線受光部の大きい方のX線検出器により収集したX線透過データを用いて構築する構成を採用することができる。
【0017】
本発明は、前記した特許文献1に記載の技術を発展させたものであり、X線受光部の大きさが異なる複数のX線検出器を備え、これらを選択的にX線焦点と回転軸とを結ぶ線上に位置決めして、これらのいずれか一つをCT撮影に用いることができるようにしたものにおいて、請求項1に係る発明では、一つのX線検出器でCT撮影したX線透過データを用いて、被検査物の基準画像を構築して表示し、上記とは別のX線検出器を選択してX線焦点と回転軸とを結ぶ線上に配置した状態では、そのX線検出器による視野の位置と大きさに係る情報を基準画像上に重畳表示する。その表示情報は、基準画像を構築するためのX線透過データを収集したときの回転テーブルおよびxyテーブルの位置を位置記憶手段に記憶しておき、X線検出器の変更後の回転テーブルおよびxyテーブルの位置情報、および各X線検出器のX線受光面の大きさから算出することができる。
【0018】
このような視野情報を被検査物の基準画像上に重畳表示することにより、被検査物の所要部位を、X線受光部の小さいX線検出器により高い分解能のもとに拡大撮影して断層像を得ようとするときに、どの位置をズームすればよいのかを簡単に把握することができ、その設定作業を大幅に容易化することができる。
【0019】
また、請求項2に係る発明では、上記と同様に一つのX線検出器でCT撮影したX線透過データを用いて、被検査物の基準画像を構築して表示し、その基準画像上で、X線検出器の視野の位置と大きさに係る情報を入力することにより、各X線検出器のうち、入力された視野を得ることのできる最もX線受像部の小さいX線検出器を自動的に選択して、X線焦点と回転軸とを結ぶ線上に移動させるとともに、そのX線検出器の視野が入力された視野と一致するように、回転テーブルおよびxyテーブルを自動的に位置決めする。この回転テーブルおよびxyテーブルの位置は、上記した計算を逆算することにより求めることができる。
【0020】
このような視野情報の入力によって、設定されたCT撮影範囲が得られる検出器のうち、最小受光部のX線検出器を自動選択して、入力された視野を得るようにそのX線検出器を自動的に位置決めすることにより、オペレータは基準画像上で拡大CT撮影すべき領域を入力するだけで、その撮影に対して最も高い分解能のもとに所要の部位の撮影が行われることになり、上記と同様に撮影範囲の設定作業を大幅に容易化することができる。
【0021】
以上の請求項1および2に係る発明における基準画像を、例えばMPR表示など、被検査物の3次元情報を表す画像とするとともに、その画像に重畳表示するX線検出器の視野の位置と大きさに係る情報として、CT撮影範囲を表す円柱形の領域表示とする請求項3に係る発明の採用によことにより、CT撮影領域が正しく注目領域を捉えているか否かを直観的に素早く把握することができる。
【0022】
上記のような基準画像を撮影するためのX線検出器は、X線受光面が大きいX線検出器として、被検査物の全景もしくはほぼ全景が納まる画像とすることが望ましく、その基準画像を得るために用いるX線検出器よりもX線受光面が小さいもう一つのX線検出器を設ける請求項4に係る発明の構成は最も基本的な構成であり、比較的簡単な構成のもとに、簡単な撮影範囲の設定作業により、高拡大率で高分解能の断層像を得ることができる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1に係る発明によれば、例えば比較的X線受光部の大きなX線検出器を用いて撮影された被検査物の全景を表す画像情報からなる基準画像が表示器に表示され、別のX線検出器を選択したときに、その視野の位置と大きさが基準画像上に重複して表示されるので、例えば被検査物の局所を拡大して高分解能のCT撮影を行うべく、比較的X線受光部の小さなX線検出器を選択したとき、そのX線検出器が被検査物の所要部位を視野に入れているか否かが一目で判り、CT撮影範囲を設定すべく回転テーブルやxyテーブルの位置決めを行う作業が極めて容易となる。
【0024】
また、請求項2に係る発明によれば、上記と同様にX線受光部の大きなX線検出器を用いて撮影された被検査物の全景を表す画像情報からなる基準画像が表示器に表示され、その基準画像上に、被検査物の局部を拡大撮影すべき領域を設定すべくX線検出器の視野の位置と大きさに係る情報を入力することにより、複数のX線検出器のうち、その視野が得られる最も受光部の小さなX線検出器が自動的に選択され、かつ、そのX線検出器の視野が入力された視野と一致するように、回転テーブルおよびxyテーブルが自動的に位置決めされるので、オペレータはX線検出器の選択作業や、回転テーブルやxyテーブルの位置決め作業を全く行うことなく、常に最も高い分解能が得られる撮影条件のもとに、正確に必要な撮影範囲のもとにCT撮影を行うことが可能となる。
【0025】
そして、請求項3に係る発明のように、基準画像を被検査物の3次元情報を表すMPR表示等の表示として、その画像上に重複表示すべきX線検出器の視野の位置と大きさを、CT撮影範囲を表す円柱形の領域表示とすれば、注目領域がCT撮影範囲に入っているか否かを直感的に把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態の構成図で、機械的構成を表す模式的平面図と機能的構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【0027】
X線発生装置1は水平方向の光軸(x方向)に沿ってコーンビーム状のX線を発生し、そのX線発生装置1にx方向に対向して2つのX線検出器2a,2bが設けられている。各X線検出器2a,2bはそれぞれ2次元検出器であって、かつ、X線受光部の大きさが互いに相違する。この例では、一方のX線検出器2aのX線受光部は50mm角であり、他方のX線検出器2bのX線受光部は5mmである。また、これらのX線検出器2a,2bの画素数は同一であり、従って小さい方のX線検出器2bは大きい方のX線検出器2aよりも空間分解能は高い。
【0028】
2つのX線検出器2a,2bは、ともに検出器台2c上に載せられており、この検出器台2cは、後述する駆動信号が供給されることによって、X線光軸方向であるx方向と、水平面上でそのx方向に直交するy方向に移動する。
【0029】
X線発生装置1と検出器台2cの間には、回転テーブル3が配置されている。この回転テーブル3は鉛直のz方向に沿った回転軸Rの回りに回転する。また、この回転テーブル3はテーブル移動機構4の上に載せられており、このテーブル移動機構4の駆動によりx方向とz方向に移動する。
【0030】
前記した検出器台2cのy方向への移動は、X線発生装置1のX線焦点と回転軸Rを水平に結ぶ線の延長上に、X線検出器2aと2bのいずれかの中心を位置させることを主たる目的とするものであり、このy方向への移動により、CT撮影に用いるべき検出器をX線検出器2aと2bのいずれか一方に選択する。
【0031】
また、回転テーブル3の上には、x,y方向に移動するxyテーブル5が載せられている。被検査物Wはこのxyテーブル5の上に載せられた状態でCT撮影に供される。CT撮影に先立ち、xyテーブル5を移動させることにより、被検査物Wの任意の部位を回転軸R上に位置させることができ、これによってX線検出器2aまたは2bの視野の位置を変更することができ、ひいてはCT撮影範囲を変更することができる。
【0032】
CT撮影は、xyテーブル5上に被検査物Wを載せた状態で回転テーブル3を駆動することにより、被検査物Wを回転軸Rの回りに回転させながらX線発生装置1からのX線を照射し、被検査物Wが所定の微小角度だけ回転するごとに、選択されているX線検出器2aまたは2bの出力を収集することによって行われる。
【0033】
選択されているX線検出器2aまたは2bの出力は画像データ取り込み回路10を介して透過データ記憶部11に記憶される。CT撮影の完了後、つまり360°分のX線透過データを収集し終えた後、透過データ記憶部11に記憶しているX線透過データは再構成演算部12による再構成演算に供され、被検査物Wの3次元画像情報が求められる。この3次元画像情報をもとに、被検査物Wの任意の断面に沿った断層像や、3次元像が構築される。この再構成演算により得られた被検査物Wの3次元画像情報は、断層像データ記憶部13に記憶される。
【0034】
画像データ取り込み回路10により取り込まれたX線透過データは、透過像形成部14にも送られ、この透過像形成部14は、その時点におけるX線透過データを用いて、被検査物WのX線透過像をリアルタイムで構築し、後述する表示制御部18を通じて表示器19に表示することができる。
【0035】
前記した検出器台2cのx,y方向への移動、回転テーブル3のx方向への移動とz方向への移動および回転、xyテーブル5x,y方向への移動は、それぞれ軸制御部15から供給される信号XDとYD、XTとZTとθ、およびx,yにより駆動制御される。
【0036】
位置情報記憶部16は、後述する基準画像の撮影時における検出器台2c,回転テーブル3、およびxyテーブル5の位置を記憶するものであり、また、CT撮影範囲演算部17は、位置情報記憶部16の記憶内容と、現時点における検出器台2c、回転テーブル3、およびxyテーブル5の位置とから、基準画像上でのその時点におけるCT撮影範囲を算出する。このCT撮影範囲の求め方については後で詳述する。
【0037】
表示制御部18は表示器19による表示内容の制御を行うものであり、この表示制御部18のほか、前記した軸制御部15、透過データ記憶部11、再構成演算部12、断層像データ記憶部13、透過像形成部14、位置情報記憶部16およびCT撮影範囲演算部17は、システム制御部20の制御下に置かれている。このシステム制御部20には、オペレータにより各種操作や各種指令等を入力するためのキーボード、マウス、あるいはジョイスティック等からなる操作部21が接続されている。ここで、これらは実際にはコンピュータとその周辺機器によって構成され、コンピュータにインストールされているプログラムに従って各機能を実現するのであるが、図1では説明の便宜上、その機能ごとのブロック図で表している。
【0038】
さて、この実施の形態の最大の特徴は、被検査物Wの局部的な拡大断層像を高分解能のもとに得ることができ、しかも、その拡大撮影部位が被検査物Wのどの位置を拡大撮影したものであるのかを直感的に把握することができる点であり、以下、その使用方法について、装置の動作とともに図2に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
【0039】
まず、被検査物Wを回転テーブル3上のxyテーブル5の上に載せた後、基準画像のCT撮影を行う。ここで、前記したようにX線受光面の大きい方のX線検出器2aは受光面の大きさが50mm角、小さい方のX線検出器2bは5mm角であり、X線発生装置1の焦点と検出器2aまたは2bまでの距離SIDを最大400mmとすると、大きい方のX線検出器2aは最大視野40mm程度が得られ、小さい方のX線検出器2bは同じく最大4mm程度の視野が得られる。基準画像のCT撮影に際しては、被検査物Wの全体が視野に納まるようにすることが望ましく、4mmを越える大きさの被検査物WにあってはX線受光面の大きい方のX線検出器2aを選択する。すなわち、基準画像の撮影に先立ち、X線検出器2aがX線発生装置1の焦点と回転テーブル3の回転軸Rとを結ぶ線の延長上に位置するように検出器台2cの位置を設定するとともに、被検査物Wの全体を視野内に納め、かつ、その中心が視野中心に位置するように撮影をする。この撮影ポジションの設定は画像データ取り込み回路10から取り込んだX線透過データを用いて透過像形成部14により構築されて表示器18に表示されるリアルタイムのX線透視像を見ながら行うことができる。そして、この基準画像の撮影時におけるSIDとSOD、およびxyテーブル5の位置は、位置情報記憶部15に記憶される。
【0040】
以上の基準画像の撮影を終了すると、透過データ記憶部11に蓄積したX線透過データを用いた再構成演算部12による演算により、被検査物Wの3次元画像情報が求められ、断層像データ記憶部13に記憶され、表示器19にMPR表示により被検査物Wの像が基準画像として表示される。
【0041】
次に、被検査物Wの局部を拡大してCT撮影を行うための各部材の位置を設定する。拡大撮影に際しては、空間分解能を高くするためにX線受光面の小さい方のX線検出器2bを用いる。そこで、検出器台2cを移動y方向に移動させ、X線発生装置1の焦点と回転軸Rを結ぶ線上にX線検出器2bを位置させる。このとき、選択されたX線検出器2bのX線受光面の大きさと、刻々のSIDとSOD、xyテーブル5の位置は、前記した位置情報記憶部16に記憶されている基準画像の撮影時でのこれらの各位置とともに、CT撮影範囲演算部17に送られる。CT撮影範囲演算部17では、これらの情報を用いて、X線検出器2bによるCT撮影範囲を算出する。算出されたCT撮影範囲は、表示制御部18を通じて表示器19に表示されている基準画像上に重畳表示される。
【0042】
図3に表示器19の表示例を示す。この例では、X線受光面の大きい方のX線検出器2aで撮影した被検査物Wの全体の断層像をMPR表示する基準画像表示領域Sと、現時点におけるX線透視像、つまりX線受光面の小さい方のX線検出器2bによる被検査物WのX線透視像を表示する領域Tとが隣接して表示されている。基準画像のMPR表示は、この例では水平の断層像S1と2つの位置における垂直の断層像S2,S3を表示した例を示し、これらの各図において現れているC1〜C3は、断層像S1〜S3のスライス面を表すカーソルであり、これらのカーソルC1〜C3を移動ないしは回転させることによって、各断層像S1〜S3のスライス面を自由に変更することができるようになっている。そして、基準画像のMPR表示上に、X線検出器2bによる現時点におけるCT撮影範囲Aが円柱形で重畳表示されている。
【0043】
ここで、CT撮影範囲は、図4(A),(B)にそれぞれ装置を上から見た図、および横から見た図を模式的に示すように、回転テーブル3の回転軸Rを中心とする円筒形で表される範囲であり、その直径および高さの実寸法は、X線焦点FとX線検出器2bとの距離SIDと、X線焦点Fと回転軸Rとの距離SOD、およびX線検出器2bの有効受光面の大きさDによって決まる。基準画像の倍率は、X線検出器2aを用いて撮影したときのSIDとSODによって判明しているので、上記の実寸法と基準画像の表示倍率とから、当該基準画像上に表示すべきCT撮影範囲Aを表す円柱形の大きさを決定することができる。
【0044】
以上のCT撮影範囲Aは、X線検出器2bを選択してSODやSIDを変化させ、あるいはxyテーブル5を移動させ、更には回転テーブル3をz方向に移動させることに追随して、大きさが変化し、あるいは移動する。オペレータは、従って、基準画像上のCT撮影範囲Aの表示を見ながら、加えてリアルタイムのX線透視像を見ながら、CT撮影範囲Aが注目領域を含むようにxyテーブル5を適宜に移動させ、また、回転テーブル3をx方向に移動させて拡大率を適宜に変更することで、被検査物W上の注目領域を確実に視野に入れた拡大CT撮影を行うことができ、その設定作業は極めて容易なものとなる。
【0045】
なお、拡大CT撮影時において、その撮影範囲が4mmを越える場合には、X線受光面の大きい方のX線検出器2aを選択するが、この場合にも、上記の手法によりCT撮影範囲Aを表示することは勿論である。
【0046】
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。図5はその構成図で、機械的構成を表す模式図と機能的構成を表すブロック図とを併記して示す図である。なお、この図5においては、図1に示すものと同じ部材、機能について同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
この例の特徴は、オペレータが基準画像上に設定したCT撮影範囲に応じて、自動的にX線検出器を選択するとともに、設定されたCT撮影範囲が得られるように、回転テーブル3やxyテーブル5を自動的に移動させる点にある。
【0048】
すなわち、この例における機能の特徴は、操作部20のマウス等を用いて、先の例と同様の基準画像のMPR表示上にオペレータが希望するCT撮影範囲Aを入力したときに、その入力内容、つまり設定されたCT撮影範囲Aの位置と大きさを認識する設定CT範囲認識部30と、その設定CT範囲認識部30により認識されたCT撮影範囲Aと、位置情報記憶部16に記憶されている基準画像の撮影時における回転テーブル3およびxyテーブル5等の位置情報とから、設定されたCT撮影範囲Aを満足する回転テーブル3の位置とxyテーブル5の位置を算出するテーブル位置演算部31を有している点にある。
【0049】
以上の実施の形態の使用方法と装置動作を図6に示すフローチャートを参照しつつ説明する。
まず、X線受光面の大きい方のX線検出器2aを用いて、被検査物Wの全体が納まる基準画像を得るためのCT撮影を行い、再構成演算により得られた3次元画像情報を基にMPR表示を行うまでは先の例と同じである。
【0050】
次に、MPR表示画面上に、オペレータが希望するCT撮影範囲Aを操作部21のマウス等を用いて入力する。このCT撮影範囲Aは、先の例における図3に示したCT撮影範囲Aと同様に円柱形で入力される。この入力は、例えばCT撮影範囲Aの円柱形の位置と直径を設定することにより、自動的に円柱形の画像として表示することができ、所望の位置に所望の大きさのCT撮影範囲Aが設定できれば、例えば確定の旨の指令を与える。この設定されたCT撮影範囲Aは、設定CT撮影範囲認識部30で認識され、システム制御部20を介してテーブル位置演算部31に送られ、テーブル位置演算部31では、その設定されたCT撮影範囲Aと、基準画像の撮影時のテーブル位置情報を位置情報記憶部16から読み出し、まず、設定されたCT撮影範囲Aを満足するために、X線受光面が4mm角以下でよいか否かを装置が判断し、4mmを越えるX線受光面が必要な場合を除いて、X線受光面が小さい方のX線検出器2bを自動的に選択する。
【0051】
次に、選択されたX線検出器2bにより、設定されたCT撮影範囲Aと同じCT撮影範囲が得るための回転テーブル3のx方向位置とz方向位置、およびxyテーブル5のx,y方向位置を算出する。この回転テーブル3およびxyテーブル5の各方向への位置は、先の例におけるCT撮影範囲演算部16と逆の計算を行うことによって求めることができる。その後、以上のテーブル位置演算部31による演算結果に基づき、回転テーブル3およびxyテーブル5を所要位置に自動的に移動させる。
【0052】
以上の実施の形態によると、オペレータは基準画像上で拡大撮影したいCT撮影範囲Aを入力するだけで、X線検出器の選択から回転テーブル3やxyテーブル5の位置決めまで、装置が自動的に行うので、従来の拡大CT撮影に比してその設定作業が大幅に簡単となる。
【0053】
ここで、以上の各実施の形態において、基準画像のMPR表示と、それに重畳表示されるCT撮影範囲Aは、拡大断層像の表示に際しても表示を続行することが望ましい。このような基準画像とCT撮影範囲Aの表示を拡大断層像の表示とを並べることにより、拡大断層像により観察している位置が被検査物Wの全体のどの位置であるかを容易に把握することができる。
【0054】
また、以上の各実施の形態においては、X線検出器を2つ用いた例を示したが、3個以上としてもよいことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態の構成図で、機械的構成を表す模式的平面図と機能的構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【図2】本発明の実施の形態の使用方法と装置動作の例を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態における表示器の表示態様の例の説明図である。
【図4】X線の焦点とX線検出器および回転軸の位置とCT撮影範囲との関係の説明図である。
【図5】本発明の他の実施の形態の構成図で、機械的構成を表す模式的平面図と機能的構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【図6】本発明の他の実施の形態の使用方法と装置動作の例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
1 X線発生装置
2a 受光面の大きいX線検出器
2b 受光面の小さいX線検出器
2c 検出器台
3 回転テーブル
4 テーブル移動機構
5 xyテーブル
10 画像データ取り込み回路
11 透過データ記憶部
12 再構成演算部
13 断層像データ記憶部
14 透過像形成部
15 軸制御部
16 位置情報記憶部
17 CT撮影範囲演算部
18 表示制御部
19 表示器
20 システム制御部
21 操作部
30 設定CT撮影範囲認識部
31 テーブル位置演算部
R 回転軸
W 被検査物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線発生装置とX線検出器の間に回転テーブルを配置し、その回転テーブル上に被検査物を載せて回転を与えつつ、上記X線発生装置からのX線を照射することにより、複数の方向から被検査物を透過したX線透過データを上記X線検出器で検出して収集するCT撮影動作により得られたX線透過データを用いて再構成演算を行うことにより、被検査物の断層像を構築するとともに、上記回転テーブルをX線発生装置に対して接近/離隔する方向と当該回転テーブルの回転軸方向に移動させる回転テーブル移動機構と、その回転テーブル上に配置され、被検査物を搭載して当該回転テーブルの表面に沿って移動させるxyテーブルを備えたX線CT装置において、
X線受光部の面積が互いに異なる少なくとも2つのX線検出器を備えるとともに、これらの各X線検出器のうち、任意のものを上記X線発生装置の焦点と上記回転軸とを結ぶ線上に選択的に移動させる検出器移動機構と、上記各X線検出器のうちの一つを用いて収集した被検査物のX線像を基準画像として記憶し、表示器に表示する表示手段と、その基準画像を構築するためのX線透過データを収集したときの回転テーブルおよびxyテーブルの位置を記憶する位置記憶手段と、上記各X線検出器のうちの他の一つがX線発生装置を上記焦点と上記回転軸とを結ぶ線上に移動させた状態では、その状態における上記回転テーブルおよびxyテーブルの位置と、上記位置記憶手段の内容に基づき、当該他のX線検出器による視野の位置と大きさに係る情報を上記表示器の基準画像上に重畳表示する視野表示手段を備えていることを特徴とするX線CT装置。
【請求項2】
X線発生装置とX線検出器の間に回転テーブルを配置し、その回転テーブル上に被検査物を載せて回転を与えつつ、上記X線発生装置からのX線を照射することにより、複数の方向から被検査物を透過したX線透過データを上記X線検出器で検出して収集する撮影動作により得られたX線透過データを用いて再構成演算を行うことにより、被検査物の断層像を構築するとともに、上記回転テーブルをX線発生装置に対して接近/離隔する方向と当該回転テーブルの回転軸方向に移動させる回転テーブル移動機構と、その回転テーブル上に配置され、被検査物を搭載して当該回転テーブルの表面に沿って移動させるxyテーブルを備えたX線CT装置において、
X線受光部の面積が互いに異なる少なくとも2つのX線検出器を備えるとともに、これらの各X線検出器のうち、任意のものを上記X線発生装置の焦点と上記回転軸とを結ぶ線上に選択的に移動させる検出器移動機構と、上記各X線検出器のうちの一つを用いて収集した被検査物のX線像を基準画像として記憶し、表示器に表示する表示手段と、その基準画像を構築するためのX線透過データを収集したときの回転テーブルおよびxyテーブルの位置を記憶する位置記憶手段と、上記表示器に表示されている基準画像上でX線検出器の視野の位置と大きさに係る情報を入力する視野入力手段と、その視野入力手段により設入力された視野に基づき、上記各X線検出器のうち、当該視野を得ることのできる最もX線受光部の小さいX線検出器を選択してX線発生装置の焦点と上記回転軸を結ぶ線上に移動させるとともに、そのX線検出器の視野が上記視野入力手段により入力された視野と一致するよう、上記回転テーブルおよびxyテーブルを自動的に移動させる制御手段を備えていることを特徴とするX線CT装置。
【請求項3】
上記基準画像は、被検査物の3次元情報を表す像であり、上記視野の位置と大きさに係る情報は、CT撮影範囲を表す円柱形の領域情報であることを特徴とする請求項1または2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
X線受光部の大きさが互いに異なる2つのX線検出器を備え、上記基準画像はX線受光部の大きい方のX線検出器により収集したX線透過データを用いて構築することを特徴とする請求項1、2または3のいずれか1項に記載のX線CT装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−139454(P2010−139454A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317866(P2008−317866)
【出願日】平成20年12月15日(2008.12.15)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】