説明

YBCO系超伝導体のための前駆組成

【課題】長期間の貯蔵性を有して、更なる事前処理無しに被覆溶液を調製するために直ちに使用され得るYBCO系超伝導体の調製のための前駆原料として適合する事前混合された粉末状前駆組成物の提供。
【解決手段】RE:Ba:Cu= 1:2:3の原子比を伴った各元素の塩からなる混合物を含む粉末状の前駆原料組成物からなり、その粉末前駆組成は、構成要素の適切な塩、特にトリフルオロ酢酸塩、酢酸塩またはそれらの混合物の形態で存在する。好ましくは、事前混合された粉末状前駆組成物内の含水量は1.5wt%未満であり、より好ましくは1wt%未満である。より少ない含水量は長期の貯蔵性を支援すると考えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、YBCO系超伝導体または一般的にはREBCO系超伝導体を調製するための粉末状前駆組成に関する。特に本発明は被覆技術において使用される被覆溶液を調製するための粉末状前駆組成に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムを調製するための被覆技術や所望の超伝導体の被覆において、YBCO系超伝導体、即ち、約1:2:3の原子比でのイットリウム、バリウム、および、銅のYBCO系超伝導体の構成要素の適切な塩の溶液を使用することが一般的に知られている。
【0003】
1つのアプローチに従えば、トリフルオロ酢酸金属塩の混合物が各酢酸塩から調製されてきた。しかしながらその結果としてのトリフルオロ酢酸金属塩において、結合状態にある何等かの酢酸塩と水が、被覆方法や結果としての超伝導体フィルムの特性に有害である旨が証明された。
【0004】
この問題を克服するために、特許文献1は、結合された水と酢酸塩との低減された量を有する被覆溶液を調製する精製出発原料を用いることを提案している。即ち、この特許文献1によれば、トリフルオロ酢酸金属塩の混合物は、被覆溶液を調製するために使用される適切な原子比である1:2:3のY、Ba、および、Cuで調製される。第1ステップで金属酢酸塩溶液は、トリフルオロ酢酸を付与して、蒸留によって溶媒、水、および、酢酸を除去することによって対応するトリフルオロ酢酸金属塩に変換される。しかしながら幾分かの水及び酢酸は遊離ではなく、トリフルオロ酢酸金属塩と結合しているので、約2から8%の水及び酢酸は結果としての金属原料中に残存し、それはトリフルオロ酢酸金属塩の得られた混合物の半透明で青色のゲルまたはゾルになると記載されている。
第2精製ステップで、第1ステップの得られたゾル状またはゲル状の原料は、メタノールまたはエタノール等の低級アルコールに溶解されて、水/酢酸を置換することによって、蒸留後に低減された水/酢酸含有量を伴うトリフルオロ酢酸金属塩の混合物が得られ、それは半透明青色のゲル状またはゾル状の物質である。この精製された物質は被覆を実行するための被覆溶液を調製するために使用される。
【0005】
この特許文献1によると、被覆溶液を調製するための出発原料は、水/酢酸含有量を低減するために、被覆溶液を調製する前に精製プロセスを被る必要性がある。それ故に、この先行技術に開示される被覆プロセスは、被覆前に時間を要する精製ステップのためにむしろ冗長である。
【0006】
特許文献2には、被覆技術によるYBa2Cu3O系超伝導体フィルムを調製するための前駆溶液が開示されている。酢酸及びトリフルオロ酢酸等の有機金属塩を被覆溶液を調製するための適切な溶媒内に溶解することが提案されており、その被覆溶液内の金属Y:Ba:Cuの各々のモル量の比は1:2:3である。この特許文献2に従った方法において、使用される塩は個別の実行毎に新たに計量され、直ちに溶媒内に溶解される。各実行に先行しての計量の必要性無しに、即時使用の調製が既にできている貯蔵の利く事前混合物の示唆は全くない。各実行に対する構成要素の個別の計量は、実行毎の重量不具合のために最終超伝導体に関する品質の相違に至り得る。更に特にほんの少量の塩を伴う小規模プロセスにおいて、小さな重量の不具合でさえ、金属に対する望まれる理想の1:2:3比からの大幅な逸脱に至り得る。
【0007】
精製または計量等々の事前処理無しに要求に応じて直ちに使用可能であり、長期間にわたってさえ貯蔵され得て、時間のかかる事前処理ステップ無しに被覆溶液の使用に調製ができており、そして、重量不具合による品質のばらつきの危険性を低減する、望まれる原子比での構成要素から成る塩を含む調製ができた前駆原料であることが望ましい。
【0008】
イットリウム、バリウム、および、銅から成るトリフルオロ酢酸金属塩のメタノール溶液は商業的に入手可能である。しかしながら基本的なトリフルオロ酢酸銅の沈殿が一週間以内に観測され、その溶液が使用不可能となった。
【特許文献1】EP1 187 231
【特許文献2】US2004/0071882
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
こうして、長期間の貯蔵性を有して、更なる事前処理無しに被覆溶液を調製するために直ちに使用され得る、YBCO系超伝導体の調製のための被覆溶液の調製用の事前混合された前駆原料の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、この問題は、RE:Ba:Cu=1:2:3の原子比を伴ったイットリウム、バリウム、および、銅を含む希土類元素から成る塩の混合物を含む粉末状の前駆組成によって解決され、そこでは、少なくともバリウムがフッ素を含有する化合物を伴う塩の形態で存在し、その粉末状前駆原料は長期貯蔵に適合する事前混合物の形態である。
【0011】
本発明の粉末状前駆組成は、REが少なくとも1つの希土類元素、特にY、または、元素Y、La、Sc、Sm、Nd、若しくは、Ybの内の2つまたはそれ以上のから成る組み合わせであって、REBaCuO系超伝導体に基づく超伝導体の被覆またはフィルムを調製するための通常の被覆技術用の溶液を調製する前駆原料として有用である。本発明の粉末状前駆組成は長期貯蔵性を有すると共に、更なる事前処理無しに使用の調製ができている。
【0012】
特に本発明は、REが上記と同一の意味を有すると共にxが各化合物が超伝導性を表す適切な酸素含有量を表す場合、タイプREBaCuの超伝導体の調製のために有用である。以下において簡略化のため、YBCOだけを本発明の好適実施例として参照する。ここで理解して頂きたいことは、Yは部分的または全体的に上述した他の希土類元素と置き換え可能である。
【0013】
本発明の組成は、所望された1:2:3超伝導体となる原子比でのY、Ba、および、Cuの元素を含有する粉末状、結晶質、または、微晶質の混合物である。即ち、約1:2:3の原子比で、この比から僅かな逸脱は許容される。
【0014】
この組成において、構成要素の内の1つ又はそれ以上は、フッ素を含有する化合物、好ましくはトリフルオロ酢酸塩等の有機化合物又はフッ素を含有する同様の有機化合物の塩の形態で存在する。
【0015】
好ましくは、イットリウム(及び/又は他の任意のRE)はトリフルオロ酢酸、フッ素を含有する同様の有機化合物、酢酸塩、または、同様の有機化合物の形態で存在する。銅は、フッ素を含有する化合物、好ましくは、トリフルオロ酢酸塩等の有機化合物、または、フッ素を含有する同様の有機化合物の塩の形態を、酢酸塩、または、フッ素が無いことが可能な同様の有機化合物の形態で存在し得る。バリウムは、フッ素を含有する化合物、好ましくはトリフルオロ酢酸バリウム等の有機化合物、または、フッ素を含有する同様の有機化合物の塩の形態で存在し得る。しかしながら好ましくは、本組成において少なくともバリウムがトリフルオロ酢酸塩の形態で存在する。
【0016】
他の化合物の適切な例は、Ba-Bis(6,6,7,7,8,8,8-ヘプタフルオロ-2,2-ジメチル-3,5-オクタンジオナート)、または、同様のフッ化β-ジケトナートである。他の有機化合物に対する適切な例は、フッ化β-ジケトナート、例えば、6,6,7,7,8,8,8-ヘプタフルオロ-2,2-ジメチル-3,5-オクタンジオン(ここでは「フォド(fod)」とも称される)である。
【0017】
好ましくは、イットリウム及びバリウムはそれらのトリフルオロ酢酸塩の形態で存在し、銅はそのトリフルオロ酢酸塩、酢酸塩、または、それらの混合物の形態で存在する。より好ましくは、全ての構成要素、即ち、イットリウム、バリウム、および、銅はそれらのトリフルオロ酢酸塩の形態で存在する。好ましくは、事前混合された粉末状前駆組成内の含水量は1.5%w/w未満であり、より好ましくは1%w/w未満である。より多くの含水量によって最終超伝導体の性能は影響され得る。更に、より少ない含水量は長期の貯蔵性を支援することが考えられる。
【0018】
本発明の粉末状の前駆組成は、1:2:3のY:Ba:Cuの組成比を有する構成要素の前記塩の混合物を適切な溶媒内に溶解することによって獲得され得る。以下において、塩のその混合物は「出発混合物」と称される。適切な溶媒の例は、水、メタノール、アセトン等のアルコール、または、比肩し得る極性を有する同様の溶媒である。例えばフッ化βジケトナートを使用する場合、適切な溶媒は低級エーテル、即ち、ジエチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、芳香同族体、二酸化炭素若しくはジメチルエーテル等の超臨界流体である。好適な溶媒はメタノールである。構成要素の塩と有機化合物はその溶媒に完全に可溶性である。
【0019】
例えば、トリフルオロ酢酸及び/または酢酸の塩の出発混合物は、41から約65.3キロカロリー/モルであるET30の範囲内の極性を有する溶媒中に完全に可溶性である。ET30は有機溶媒の極性を決定する標準として使用されるベタイン色素である。その様な溶媒の例は上述したものである。
【0020】
もし望まれればまたは要望に応じて、出発混合物は、ジエタノールアミン、エタノールジアミン、ポリエチレン・グリコール、プロパンジオール、プロパントリオール等々の更なる適切な添加物を含有し得る。これら添加物は、前駆粉末に基づき10重量パーセント、好ましくは0.1〜5重量パーセントまでの量が添加され得る。
【0021】
この前駆組成を得るため、溶媒は除去されて、本発明の前駆組成は粉末原料として得られる。この粉末原料は、結晶質または微晶質の性質である。
【0022】
溶媒内に前駆組成を溶解して、その溶媒を除去して乾燥粉末を得る諸ステップは反復され得る。これら諸ステップを反復することによって、残留水及び余剰トリフルオロ酢酸の含有量は一層低減され得る。
【0023】
本発明の粉末前駆組成は、ゲル状またはゾル状物質とは識別され得る結晶質または微晶質の構造を有する固体原料であり、X線回折パターンが獲得可能であり、それは粉末X線回折によって確認され得る。
【0024】
各塩の溶液からの沈殿及び/または結晶化によって得られたそうした事前混合粉末前駆組成は、等質性に関して、例えば、単に各塩を混合することによって得られた混合物と比較して改良され、等質性が塩粒子の粒度によって制限される。
【0025】
本発明の粉末前駆組成はそのようなものとして用いることが可能である。しかしながら、それをタブレットにプレスするか、それらをガラスビンに貯蔵するか、または、適用及び/または貯蔵に適合した他の任意の形態にプレスすることも可能である。本発明の粉末前駆組成がガラスビンに入れられた場合、適切な溶媒をそのガラスビンに単純に注入することによって、所望の被覆溶液を調製することができる。
【0026】
この事前混合物は無水大気中に貯蔵すべきであって、その原料の水揚げを回避する。
【0027】
貯蔵性は、粉末混合物が窒素等の不活性大気下に維持された場合に改善され得る。
【0028】
本発明の粉末前駆組成は長期にわたって貯蔵可能であると共に、被覆溶液の調製のために所望の被覆技術に適合した溶媒内にその組成を単純に溶解することによって直接的に使用され得る。
【0029】
結果としての被覆溶液は任意の既知の被覆技術、例えば、スピン・コーティング、浸漬被覆、スリット・コーティング、インク・ジェット印刷法と共にロール塗布法に対して使用され得る。特に、本発明の粉末前駆組成によって有益的に薄いフィルム超伝導体が、例えば先に言及したように被覆技術によって調製できる。
【0030】
この粉末前駆原料は事前混合物の形態で提供されているので、最終的な超伝導体の一定品質は達成される。例えば、この事前混合物を使用することによって、各実行に対して別々に金属塩成分を計量する際に生じ得るような重量不具合は回避され得る。本発明によれば、引き続く実行に対して使用される事前混合された前駆原料は同等の組成を有するので、一定特性及び化学量論を伴う高性能超伝導体が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下において、本発明は特定の例によって説明される。以下の各種例の各々では、無水溶媒が使用された。
【0032】
実施例1:
66.42グラム(1/10モル)のYBCO1:2:3を含む、還流冷却器、滴下漏斗、温度計、ポリテトラフルオロエチレン磁気スターバーが具備された500ミリリットルの3つ口フラスコに、150グラム(1.16モル;101ミリリットル)のトリフルオロ酢酸塩(約1%の酸の超過量と対応)が添加された。その反応混合物は、室温で約2時間の攪拌が許容された。次いで50ミリリットルの脱イオン水が滴下漏斗を介して添加された。次いでその反応混合物は水槽で沸点まで加熱されてから、湯浴で約2時間攪拌された。次いで、その反応混合物は60℃まで冷却され、200ミリリットルのメタノールが添加された。室温まで冷却された後、結果としての紺青色溶液を、Sartorius社加圧濾過キットを用いて濾過した。
【0033】
得られた濾過済み溶液を、次いで、ロータリ・エバポレータで乾燥した。次いでその得られた反応生成物を200ミリリットルのメタノール(無水)中に再び溶解し、引き続いてロータリ・エバポレータで再度乾燥した。この溶解及び乾燥手続きは合計で4回まで反復された。最終生成物として、水結合及び/またはメタノール結合された結晶質を含むトリフルオロ酢酸イットリウム、トリフルオロ酢酸バリウム、および、トリフルオロ酢酸銅から成るアクアマリン色の粉末が得られた。
【0034】
この粉末の結晶質の性質は、図4に示された粉末X線回折パターンによって確認された。このX線回折パターンは、回折計X-Pert MPD with Cu-Kα(フィリップス社製)を用いて得られた。
【0035】
実施例2:
1. 元素としてのイットリウム、バリウム、および、銅の単一トリフルオロ酢酸塩の製造:
1.1 トリフルオロ酢酸イットリウム:
112.9グラム(1/2モル)のイットリウム酸化物を含む、還流冷却器、滴下漏斗、温度計、ポリテトラフルオロエチレン磁気スターバーが具備された500ミリリットルの3つ口フラスコに、100ミリリットルのメタノールが添加された。次いで116グラム(1.01モル;79ミリリットル)のトリフルオロ酢酸が、それに急激に滴下された(約1%の酸の超過量と対応)。
【0036】
次いで、50ミリリットルの水が滴下漏斗を介して添加された。その反応混合物は攪拌されながら水槽内で沸点まで加熱された。その混合物は澄んで無色となって、もはや白い沈殿物が約3時間見られなくなるまで還流された。次いでその反応混合物は60℃まで冷却され、200ミリリットルのメタノールが添加された。
【0037】
室温まで冷却された後、結果としての澄んだ無色の溶液を、Sartorius社加圧濾過キットを用いて濾過した。次いでその濾過済み溶液をロータリ・エバポレータで乾燥した。
【0038】
この反応は図1に付与された式によって提供される。
【0039】
1.2 トリフルオロ酢酸バリウム:
315.33グラム(1モル)のバリウム水酸化八水和物を伴う、還流冷却器、滴下漏斗、温度計、ポリテトラフルオロエチレン磁気スターバーが具備された1000ミリリットルの3つ口フラスコに、100ミリリットルのメタノールが添加された。次いで230グラム(2.02モル;155ミリリットル)のトリフルオロ酢酸がそれに急激に滴下された(約1%の酸の超過量と対応)。
【0040】
その反応混合物は攪拌されながら水槽内で沸点まで加熱された。その混合物は澄んで無色となって、もはや白い沈殿物が約3時間見られなくなるまで還流された。次いでその反応混合物は60℃まで冷却され、300ミリリットルのメタノールが添加された。
【0041】
室温まで冷却された後、結果としての澄んだ無色の溶液を、Sartorius社加圧濾過キットを用いて加圧濾過した。次いでその濾過済み溶液をロータリ・エバポレータで乾燥した。最終生成物として、トリフルオロ酢酸バリウムと水結合及び/またはメタノール結合された結晶質とを含む白い粉末が得られた。この反応は図2の式によって示される。
【0042】
1.3 トリフルオロ酢酸銅:
166.5グラム(3/4モル)の銅ヒドロキシ・カルボネート(1.5モルの銅に対応)を伴う、還流冷却器、滴下漏斗、温度計、ポリテトラフルオロエチレン磁気スターバーが具備された1000ミリリットルの3つ口フラスコに、150ミリリットルのメタノールが添加された。次いで345グラム(3.03モル;233ミリリットル)のトリフルオロ酢酸がそれに急激に滴下された(約1%の酸の超過量と対応)。
【0043】
その反応混合物は室温で夜通し攪拌されてから、水槽内で沸点まで加熱された。
【0044】
その混合物は深緑色となって、もはや薄緑色または薄青色の沈殿物が見られなくなるまで還流された。次いでその反応混合物は60℃まで冷却され、200ミリリットルのメタノールが添加された。
【0045】
室温まで冷却された後、結果としての深緑色の溶液を、Sartorius社加圧濾過キットを用いて加圧濾過した。次いでその濾過済み溶液をロータリ・エバポレータで乾燥した。
【0046】
最終生成物として、トリフルオロ酢酸銅と水結合及び/またはメタノール結合された結晶質とから成るアクアマリン色の粉末が得られた。この反応は図3の式によって示される。
【0047】
本発明の粉末前駆組成の製造
上述した1.1乃至1.3で得られたトリフルオロ酢酸塩は、イットリウム:バリウム:銅=1:2:3の原子比で混合され、メタノール中に溶解された。その溶液をロータリ・エバポレータで乾燥した。最終生成物として、トリフルオロ酢酸イットリウム、トリフルオロ酢酸バリウム、トリフルオロ酢酸銅、水結合及び/またはメタノール結合された結晶質から成るアクアマリン色の粉末が得られた。
【0048】
実施例3:
1モルのトリフルオロ酢酸イットリウムを、2モルのトリフルオロ酢酸バリウムと3モルのトリフルオロ酢酸銅とに混合し、メタノール中に溶解した。その溶液をロータリ・エバポレータで乾燥した。最終生成物として、トリフルオロ酢酸イットリウム、トリフルオロ酢酸バリウム、酢酸銅、水結合及び/またはメタノール結合された結晶質から成るアクアマリン色の粉末が得られた。
【0049】
実施例4:
1モルの酢酸イットリウムを、2モルのトリフルオロ酢酸バリウムと3モルの酢酸銅とに混合し、メタノール中に溶解した。その溶液をロータリ・エバポレータで乾燥した。最終生成物として、酢酸イットリウム、トリフルオロ酢酸バリウム、酢酸銅、水結合及び/またはメタノール結合された結晶質から成るアクアマリン色の粉末が得られた。
【0050】
上述した各種例の最終的な事前混合された粉末前駆組成内における含水量は、プローブ内の含水量を決定するために一般的に使用される周知のカール-フィッシャー法によって決定され、これら事前混合物に対する上述の例の各々における含水量は1%w/w未満であることが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は、反応式を示す。
【図2】図2は、反応式を示す。
【図3】図3は、反応式を示す。
【図4】図4は、粉末X線回折パターンを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末前駆組成であって、前記粉末組成が有機化合物を伴うRE、Ba、および、Cuの塩の混合物であり、前記REがイットリウムを含む少なくとも1つの希土類元素であり、RE、Ba、および、Cuの原子比が1:2:3であり、少なくともBaの場合、前記有機化合物がフッ素を含有し、前記粉末前駆組成が貯蔵に適合できることを特徴とする粉末前駆組成。
【請求項2】
前記RE及びCuが、トリフルオロ酢酸塩、6,6,7,7,8,8,8-ヘプタフルオロ-2,2-ジメチル-3,5-オクタンジオナート(fod)、または、酢酸塩の形態で前記組成中に存在することを特徴とする、請求項1に記載の粉末前駆組成。
【請求項3】
Baが、トリフルオロ酢酸塩またはfodの形態で前記組成中に存在することを特徴とする、請求項1または2に記載の粉末前駆組成。
【請求項4】
RE、Ba、および、Cuが、トリフルオロ酢酸塩またはfodの形態で前記組成中に存在することを特徴とする、請求項1乃至3の内の何れか一項に記載の粉末前駆組成。
【請求項5】
REがイットリウムであることを特徴とする、請求項1乃至4の内の何れか一項に記載の粉末前駆組成。
【請求項6】
前記組成内の含水量が1.5%w/w未満であることを特徴とする、請求項1乃至5の内の何れか一項に記載の粉末前駆組成。
【請求項7】
前記組成が貯蔵用にガラスビン内に含まれていることを特徴とする、請求項1乃至6の内の何れか一項に記載の粉末前駆組成。
【請求項8】
前記粉末が結晶質または微晶質であることを特徴とする、請求項1乃至7の内の何れか一項に記載の粉末前駆組成。
【請求項9】
前記粉末前駆組成がタブレットにプレスされることを特徴とする、請求項1乃至8の内の何れか一項に記載の粉末前駆組成。
【請求項10】
請求項1乃至9の内の何れか一項に記載の粉末前駆組成を調製する方法であって、有機化合物を伴うRE、Ba、および、Cuの塩から成る混合物と溶媒とを含む溶液が調製され、REがイットリウムを含む少なくとも1つの希土類元素であり、前記混合物中におけるRE、Ba、および、Cuの原子比が1:2:3であり、前記溶媒を除去することで、前記粉末組成を得ることを特徴とする方法。
【請求項11】
RE及びCuが、トリフルオロ酢酸塩、fod、または、酢酸塩の形態で前記組成中に存在することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
Baがトリフルオロ酢酸塩の形態で存在することを特徴とする、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
Baがfodの形態で存在することを特徴とする、請求項10乃至12の内の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
結果としての粉末前駆組成が貯蔵用に形成されることを特徴とする、請求項10乃至13の内の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記粉末前駆組成がガラスビン内に詰められることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記粉末前駆組成がタブレットにプレスされることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
被覆技術によってRE1Ba2Cu3O系超伝導体原料を調製するための被覆溶液の調製に用意された事前混合物として、請求項1乃至16の内の何れか一項に記載の事前混合された粉末前駆組成の用途であって、REがイットリウムを含む少なくとも1つの希土類元素であることから成る用途。
【請求項18】
前記粉末前駆組成がYBaCuO系超伝導体原料の調製のための前駆原料として使用されることを特徴とする、請求項17に記載の用途。
【請求項19】
被覆技術によってRE1Ba2Cu3O系超伝導体原料を調製するための被覆溶液の調製のための貯蔵可能な事前混合物として、請求項1乃至16の内の何れか一項に記載の事前混合された粉末前駆組成の用途であって、REがイットリウムを含む少なくとも1つの希土類元素であることから成る用途。
【請求項20】
前記事前混合物がガラスビン内に貯蔵されるか、または、タブレットにプレスされる、請求項19に記載の用途。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−199572(P2006−199572A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−318014(P2005−318014)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(501044725)ネクサン (81)
【Fターム(参考)】