説明

[(1R),2S]−2−アミノプロピオン酸2−[4−(4−フルオロ−2−メチル−1H−インドール−5−イルオキシ)−5−メチルピロロ[2,1−f][1,2,4]トリアジン−6−イルオキシ]−1−メチルエチルエステルの結晶形

[(1R),2S]−2−アミノプロピオン酸 2−[4−(4−フルオロ−2−メチル−1H−インドール−5−イルオキシ)−5−メチルピロロ[2,1−f][1,2,4]トリアジン−6−イルオキシ]−1−メチルエチルエステル(化合物I)の結晶形、N−1型が提供される。癌および他の増殖性疾患の治療における、化合物IのN−1型を含む医薬組成物および経口製剤、並びに化合物IのN−1型の使用方法もまた提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、米国特許法第119条(e)の下で、2005年9月27日に出願され、その内容が本明細書に引用される米国仮出願番号第60/721,021の優先権の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は一般に、[(1R),2S]−2−アミノプロピオン酸 2−[4−(4−フルオロ−2−メチル−1H−インドール−5−イルオキシ)−5−メチルピロロ[2,1−f][1,2,4]トリアジン−6−イルオキシ]−1−メチルエチルエステルの結晶形に関する。本発明はまた、癌および他の増殖性疾患の治療における、[(1R),2S]−2−アミノプロピオン酸 2−[4−(4−フルオロ−2−メチル−1H−インドール−5−イルオキシ)−5−メチルピロロ[2,1−f][1,2,4]トリアジン−6−イルオキシ]−1−メチルエチルエステルの結晶形を含む医薬組成物および経口製剤、並びに[(1R),2S]−2−アミノプロピオン酸 2−[4−(4−フルオロ−2−メチル−1H−インドール−5−イルオキシ)−5−メチルピロロ[2,1−f][1,2,4]トリアジン−6−イルオキシ]−1−メチルエチルエステルの結晶形の使用方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
[(1R),2S]−2−アミノプロピオン酸 2−[4−(4−フルオロ−2−メチル−1H−インドール−5−イルオキシ)−5−メチルピロロ[2,1−f][1,2,4]トリアジン−6−イルオキシ]−1−メチルエチルエステルは、式I:
【化1】

(I)
の構造を有し、本明細書で「化合物I」と呼ばれる。化合物I、化合物Iを含む組成物、および化合物Iの使用方法は、本譲受人に譲渡されて、その全体が本明細書に引用される、米国特許番号6,869,952 B2に開示されている。
【0004】
化合物I、プロドラッグは、増殖因子受容体、例えばVEGFR−2およびFGFR−1のチロシンキナーゼ活性を阻害するのに適しており、癌の治療に有用である。化合物Iはまた、増殖因子および抗血管新生受容体、例えばVEGFR−2を通して作用するシグナル伝達経路に関連する、癌以外の疾患の治療にも有用である。
【0005】
典型的には、医薬組成物の製造において、目的の特性、例えば溶解速度、溶解度、バイオアベイラビリティ、および/または保管の安定性を有する活性成分の形態が求められる。例えば、目的の溶解度およびバイオアベイラビリティを有する活性成分の形態は、医薬組成物の製造または保管の間に、別の溶解度および/またはバイオアベイラビリティを有する別の形態に変換されない、十分な安定性を有する。化合物Iの形態は、癌のような疾患の治療に適した医薬組成物の製造を可能にする特性および安定性を有するのが望ましい。
【0006】
発明の概要
本発明の第一の態様は、N−1型を含む化合物I:
【化2】

(I)
の結晶形を提供する。
【0007】
本発明の第二の態様は、化合物IのN−1結晶形および医薬的に許容される担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物を提供する。
【0008】
本発明の第三の態様は、化合物IがN−1型を含む結晶形で提供される、化合物Iを含む経口製剤を提供する。
【0009】
本発明の第四の態様は、化合物IがN−1型を含む結晶形で提供される、化合物Iの治療上の有効量を治療が必要な哺乳類種に投与することを特徴とする、増殖性疾患の治療方法を提供する。
【0010】
特定の形態を評価する(characterize)のに本明細書で用いられる名前、例えば「N−1」などは、類似または同一の物理的および化学的特徴を有するいずれかの他の物質に限定するものと意図されるべきではなく、むしろこれらの命名は、本明細書にもまた与えられる特徴情報に従って解釈されるべき識別子に過ぎないことが理解されるべきである。
【0011】
発明の詳細な説明
本明細書中で用いられるように、「多形」とは、同一の化学組成を有するが、結晶を形成する分子および/またはイオンの異なった空間配置を有する結晶形をいう。
【0012】
本明細書で用いられるように、「非結晶の」とは、結晶性ではない分子および/またはイオンの固形をいう。非結晶固形物は、鋭い極大を有する明確な(definitive)X線回折パターンを示さない。
【0013】
本明細書中で用いられるように、「実質的に純粋」は、結晶形に関連して用いられる場合に、化合物の重量に基づいて、化合物の90重量パーセント超、例えば90、91、92、93、94、95、96、97、98、および99重量パーセント超、また例えば約100重量パーセントと同等の純度を有する化合物の結晶形のサンプルを意味する。残りの物質には、化合物の他の形態、並びに/あるいは反応不純物および/またはその製造で生じる製造不純物が含まれる。例えば、化合物Iの結晶形は、化合物Iの結晶形の90重量パーセント以上の純度を有する場合に実質的に純粋であると見なされうるが、それは残りの10重量パーセントより少ない物質には、化合物Iの他の形態および/または反応不純物および/または製造不純物が含まれるという、当該技術分野において現時点で公知であり一般に受け入れられている方法によって測定されるからである。反応不純物および/または製造不純物の存在は、当該技術分野で公知の分析技術によって決定され、それは例えば、クロマトグラフィー、核磁気共鳴法、質量分析、または赤外分光法でありうる。
【0014】
本明細書中で用いられるように、単位格子パラメータ「分子/単位格子」とは、単位格子中の化合物Iの分子数をいう。
【0015】
溶解する場合、化合物Iの結晶形はその結晶構造を失い、それゆえ化合物Iの溶液と呼ばれる。化合物IのN−1結晶形は、該化合物が溶解または懸濁される液体製剤の製造に用いられうる。また、化合物IのN−1結晶形は、固形製剤に組み入れられてもよい。
【0016】
化合物IのN−1結晶形の治療上の有効量は、医薬的に許容される担体または希釈剤と組み合わされて、本発明の医薬組成物を提供しうる。「治療上の有効量」によって、単独で投与されるか、または別の治療剤と共に投与される場合、疾患もしくは症状または疾患もしくは症状の進行を予防し、抑制し、もしくは寛解させるのに有効な量が意図される。
【0017】
本発明は、化合物I:
【化3】

(I)
の結晶形を提供する。該結晶形は、化合物Iの無溶媒の結晶形であり、本明細書で「N−1型」と呼ばれる。
【0018】
一つの態様において、N−1型の化合物Iは、結晶形の測定が約25℃の温度で行われ、下表:

におおよそ等しい単位格子パラメータの特徴を有する。
【0019】
別の態様において、N−1型の化合物Iは、実質的に表1に記載される部分原子座標(fractional atomic coordinate)の特徴を有する。
表1
N−1型の化合物Iについての位置パラメータおよび等方性温度因子(isotropic temperature factor)
【表1】

【表2】

【0020】
さらに別の態様において、N−1型の化合物Iは、図1に示されるものに実質的に従った粉末X線回折パターンの特徴を有する。
【0021】
更なる態様において、N−1型の化合物Iは、図2に示されるものに実質的に従った示差走査熱量測定のサーモグラムの特徴を有する。N−1型は、約138℃から約144℃の範囲にある融点の特徴を有していてもよい。
【0022】
更なる態様において、N−1型の化合物Iは、9.4±0.2、12.6±0.2、13.2±0.2、14.5±0.2、16.6±0.2、17.2±0.2、18.2±0.2、18.8±0.2、21.3±0.2、21.6±0.2、および22.1±0.2からなる群より選択される4つまたはそれ以上の2θ値を含み、好ましくは5つまたはそれ以上の2θ値を含む粉末X線回折パターン(約25℃の温度でCuKα λ=1.5418Å)の特徴を有する。
【0023】
別の態様において、N−1型は実質的に純粋な形態である。実質的に純粋な形態の化合物Iのこの結晶形は、例えば、賦形剤および担体から選択される一つまたはそれ以上の他の成分;並びに適宜、異なる分子構造の活性な化学物質を有する一つまたはそれ以上の他の活性な医薬成分を適宜含みうる医薬組成物に用いられてもよい。
【0024】
好ましくは、N−1結晶形は、シミュレーションされた粉末X線回折(PXRD)パターンにはない余分なピークから生じる実験で測定されたPXRDパターンが、全ピーク面積の10%より小さく、好ましくは5%より小さく、より好ましくは2%より小さく示される実質的に純粋な均一相を有する。最も好ましいのは、シミュレーションされたPXRDパターンにはない余分なピークから生じる実験で測定されたPXRDパターンが、全ピーク面積の1%より小さい実質的に純粋な均一相を有する結晶形である。
【0025】
一つの態様において、N−1型は実質的に純粋な形態であり、その中で実質的に純粋とは、純度90重量%超、好ましくは純度95重量%超、より好ましくは純度99重量%超である。
【0026】
別の態様において、本質的に化合物IのN−1結晶形からなる組成物が提供される。この態様の組成物には、組成物中の化合物Iの重量に基づいて、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも99重量%の化合物IのN−1結晶形が含まれうる。
【0027】
さらに別の態様において、化合物IのN−1結晶形は、無溶媒型に従った最小の重量減少を有する熱重量分析(TGA)サーモグラムの特徴を有していてもよい。本発明はまた、図3に示されるものと実質的に同一のTGAサーモグラムを示すN−1型結晶も提供する。
【0028】
本発明はまた、化合物I(化合物IはN−1型である)の結晶形;並びに医薬的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物も提供する。医薬組成物には、実質的に純粋な形態のN−1型が含まれていてもよい。
【0029】
一つの態様において、化合物IがN−1型を含む結晶形である化合物Iを含む経口製剤が提供される。経口製剤は、化合物Iが本質的にN−1型からなる化合物Iを含みうる。あるいは、経口製剤は、化合物Iが実質的に純粋な形態である化合物Iを含みうる。経口製剤中の化合物Iの適当な量は、例えば、約1から500mgの範囲にある。
【0030】
本発明はさらに、化合物IがN−1型を含む結晶形で提供される、化合物Iの治療上の有効量を治療が必要な哺乳類種に投与することを特徴とする、増殖性疾患の治療方法を提供する。好ましくは、化合物Iは本質的にN−1型からなる。好ましくは、哺乳類種はヒトである。
【0031】
使用および有用性
化合物Iは、タンパク質キナーゼ、例えばVEGFを阻害するのに有用である。より具体的には、化合物IはVEGFの作用を阻害し、癌のような、血管形成および/または増加した血管透過性に関連する病状の治療に有用性(property of value)がある。本発明はまた、化合物I(化合物IはN−1結晶形である)、および医薬的に許容される担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物;並びに哺乳類の過剰増殖障害の治療におけるこの医薬組成物の使用にも関する。特に、該医薬組成物は、VEGFと関連している原発性および再発性固形腫瘍、特にその増殖および拡散(spread)のためにVEGFに著しく依存する腫瘍、例えば、膀胱、扁平細胞、頭、結腸直腸、食道、婦人科(gynecological)(例えば卵巣)、膵臓、乳房、前立腺、肺、産卵口、皮膚、脳、尿路、非小細胞肺癌(NSCLC)、リンパ系(例えば甲状腺)、胃、喉頭、および肺の癌の増殖を阻害するのに用いられうる。別の態様において、化合物Iはまた、非癌性障害、例えば糖尿病、糖尿病性網膜症、乾癬、関節リウマチ、肥満症、カポジ肉腫、血管腫、急性および慢性腎症(例えば増殖性糸球体腎炎および糖尿病誘発性腎疾患)、アテローム、動脈再狭窄、自己免疫疾患、急性炎症、並びに網膜血管増殖、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症および黄斑変性症による視覚疾患の治療にも有用である。化合物Iは、哺乳類における胚盤胞の着床(blastocyte implantation)の予防、またはアテローム性動脈硬化症、湿疹、強皮症、もしくは血管腫の治療に用いられうる。化合物Iは、VEGF受容体チロシンキナーゼに対して優れた活性を有し、一方、他のチロシンキナーゼに対して多少の活性を有する。
【0032】
そのため本発明の更なる態様によれば、哺乳類動物、例えば人間における抗血管新生および/または血管透過性減少効果(antiangiogenic and/or vascular permeability reducing effect)を生み出すのに用いる薬物の製造における、化合物I(化合物IはN−1型である)の使用が提供される。
【0033】
本発明の更なる特徴によれば、上記で定義したN−1型の化合物Iの有効量を前記動物に投与することを特徴とする治療が必要な哺乳類動物、例えば人間における抗血管新生および/または血管透過性減少効果を生み出す方法が提供される。
【0034】
化合物Iはまた、他の受容体チロシンキナーゼ、例えばHER1およびHER2も阻害し、そのため増殖性障害、例えば乾癬および癌の治療に有用でありうる。HER1受容体キナーゼが、多くの固形腫瘍、例えば非小細胞肺癌、結腸直腸癌、および乳癌において発現および活性化されることが示されている。同様に、HER2受容体キナーゼが、乳癌、卵巣癌、肺癌、および胃癌において過剰発現されることが示されている。HER2受容体の存在量(aboundance)をダウンレギュレートするか、またはHER1受容体によるシグナル伝達を阻害するモノクローナル抗体は、前臨床試験および臨床試験において抗腫瘍効果が示されている。そのため、HER1および/またはHER2キナーゼの阻害剤が、いずれの2つの受容体からのシグナル伝達に依存する腫瘍の治療にも効果があることが期待される。HER1を阻害する化合物Iの能力によって、抗血管新生薬としてのその使用がさらに加えられる。本明細書に引用される以下の文書および引用文献を参照せよ:Cobleigh, M. A., Vogel, C. L., Tripathy, D., Robert, N. J., Scholl, S., Fehrenbacher, L., Wolter, J. M., Paton, V., Shak, S., Lieberman, G., and Slamon, D. J., 「Multinational study of the efficacy and safety of humanized anti-HER2 monoclonal antibody in women who have HER2-overexpressing metastatic breast cancer that has progressed after chemotherapy for metastatic disease」, J. of Clin. Oncol. 17(9), pp. 2639-2648 (1999); Baselga, J., Pfister, D., Cooper, M. R., Cohen, R., Burtness, B., Bos, M., D'Andrea, G., Seidman, A., Norton, L., Gunnett, K., Falcey, J., Anderson, V., Waksal, H., and Mendelsohn, J., 「Phase I studies of anti-epidermal growth factor receptor chimeric antibody C225 alone and in combination with cisplatin」, J. Clin. Oncol. 18(4), pp. 904-914 (2000).
【0035】
上記で定義した抗増殖性、抗血管新生、および/または血管透過性減少治療(reducing treatment)は、単独療法として適用されるか、あるいは化合物Iに加えて、一つまたはそれ以上の他の物質および/または処置を含みうる。このような結合治療(conjoint treatment)は、治療の個々の構成要素の同時の、連続の、または別々の投与によって遂行されうる。化合物Iはまた、公知の抗癌剤および細胞傷害性薬物並びに処置、例えば照射と併用しても有用でありうる。固定用量として製剤化される場合、このような併用製品には、以下に記載する用量の範囲内で化合物Iが用いられ、その認められた用量の範囲内で他の医薬的に活性な薬剤が用いられる。組合せ製剤が不適当である場合は、化合物Iは、公知の抗癌剤および細胞傷害性薬物並びに処置、例えば照射と連続して用いられうる。
【0036】
腫瘍内科学の分野において、異なった形態の処置の組合せを使用して、癌を有する各患者を治療することは通常の慣行である。腫瘍内科学において、上記で定義した抗増殖性、抗血管新生、および/または血管透過性減少治療に加えて、このような結合治療の他の構成要素は、手術、放射線療法、または化学療法でありうる。このような化学療法には、3つの主要なカテゴリーの治療剤が含まれうる:
(i) 上記で定義したものと異なる機序で作用する抗血管新生薬(例えば、リノマイド(linomide)、インテグリンαvβ3機能の阻害剤、アンジオスタチン、およびラゾキサン);
(ii) 抗エストロゲン剤のような細胞分裂阻害剤(例えばタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、およびヨードキシフェン(iodoxifene))、プロゲストーゲン(例えば酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えばアナストロゾール、レトロゾール、ボラゾール(borazole)、およびエキセメスタン)、抗ホルモン、抗プロゲストーゲン、抗アンドロゲン(例えばフルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、および酢酸シプロテロン)、LHRHアゴニストおよびアンタゴニスト(例えば酢酸ゴセレリンおよびロイプロリド)、テストステロン 5α−ジヒドロリダクターゼの阻害剤(例えばフィナステリド)、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、抗侵襲剤(anti-invasion agent)(例えばマリマスタットのようなメタロプロテイナーゼ阻害剤およびウロキナーゼプラスミノーゲンアクチベーター受容体機能の阻害剤)および増殖因子機能(増殖因子、例えばEGF、FGF、血小板由来増殖因子および肝細胞増殖因子)の阻害剤、例えば増殖因子抗体、増殖因子受容体抗体、例えばアバスチン(登録商標)(ベバシズマブ)およびエルビタックス(登録商標)(セツキシマブ);
チロシンキナーゼ阻害剤、およびセリン/スレオニンキナーゼ阻害剤);並びに
(iii) 腫瘍内科学に用いられる抗増殖性/抗悪性腫瘍薬およびその組合せ、例えば代謝拮抗剤(例えばメトトレキセートのような葉酸代謝拮抗薬、5−フルオロウラシルのようなフルオロピリミジン、プリンおよびアデノシン類縁体、シトシンアラビノシド);
挿入抗腫瘍抗生物質(intercalating antitumor antibiotics)(例えばアントラサイクリン、例えばドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン−C、ダクチノマイシン、およびミトラマイシン);
白金誘導体(例えばシスプラチンおよびカルボプラチン);
アルキル化剤(例えばナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロランブシル、ブスルファン、シクロホスファミド、イホスファミドニトロソ尿素、チオテパ;
有糸分裂阻害剤(例えばビンカアルカロイド、例えばビンクリスチンおよびタキソイド系、例えばタキソール(登録商標)(パクリタキセル)、タキソテール(登録商標)(ドセタキセル)および最近の微小管剤(microbtubule agent)、例えばエポシロン類縁体、ディスコデルモリド類縁体、およびエリュテロビン類縁体);
トポイソメラーゼ阻害剤(例えばエピポドフィロトキシン、例えばエトポシド、テニポシド、アムサクリン、およびトポテカン);
細胞周期阻害剤(例えばフラボピリドール);
生物学的応答調節物質、およびプロテアソーム阻害剤、例えばベルケード(登録商標)(ボルテゾミブ)。
【0037】
上記のように、化合物Iは、その抗血管新生および/または血管透過性減少効果のため興味深い。この化合物Iは、広範囲の病状、例えば癌、糖尿病、乾癬、関節リウマチ、カポジ肉腫、血管腫、肥満症、急性および慢性腎症、アテローム、動脈再狭窄、自己免疫疾患、急性炎症、並びに網膜血管増殖関連の視覚疾患、例えば糖尿病性網膜症に有用であることが期待される。
【0038】
より具体的には、化合物Iは、様々な癌、例えば(これらに限らないが)以下:
− 癌腫、例えば膀胱癌、乳癌、大腸癌、腎臓癌、肝臓癌、肺癌(例えば小細胞肺癌)、食道癌、胆嚢癌、卵巣癌、膵臓癌、胃癌、子宮頚癌、甲状腺癌、前立腺癌、および皮膚癌(例えば扁平上皮癌);
− リンパ系の造血性腫瘍、例えば白血病、急性リンパ性白血病、急性リンパ芽球性白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫、およびバーキットリンパ腫;
− 骨髄系の造血性腫瘍、例えば急性および慢性骨髄性白血病、骨髄異形性症候群、および前骨髄球性白血病;
− 間葉に由来する腫瘍、例えば線維肉腫および横紋筋肉腫;
− 中枢および末梢神経系の腫瘍、例えば星細胞腫、神経芽細胞腫、神経膠腫、およびシュワン腫;並びに
− 他の腫瘍、例えばメラノーマ、精上皮腫、奇形癌腫、骨肉腫、色素性乾皮症、ケラトアカントーマ、濾胞性甲状腺癌、およびカポジ肉腫の治療に有用である。
【0039】
一般に、細胞増殖の制御におけるキナーゼの重要な役割のため、阻害剤は、異常細胞増殖、例えば、良性前立腺肥大症、家族性大腸ポリープ症、神経線維腫症、アテローム性動脈硬化症、肺線維症、関節炎、乾癬、糸球体腎炎、血管形成または血管手術後の再狭窄、肥大性瘢痕形成、炎症性腸疾患、移植拒絶反応、エンドトキシンショック、および真菌感染を特徴とするいずれの疾患過程の治療にも有用でありうる可逆性細胞分裂阻害剤として作用しうる。
【0040】
化合物Iは、アポトーシスを誘導または阻害しうる。様々なヒト疾患において、アポトーシス応答は異常である。アポトーシスの修飾因子として、化合物Iは、癌(例えばこれらに限らないが、上記で言及した型)、ウイルス感染(例えばこれらに限らないが、ヘルペスウイルス、ポックスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、シンドビスウイルスおよびアデノウイルス)、HIV感染個体におけるエイズの進行の予防、自己免疫疾患(例えばこれらに限らないが、全身性ループス、エリテマトーデス、自己免疫媒介性糸球体腎炎、関節リウマチ、乾癬、炎症性腸疾患、および自己免疫性糖尿病)、神経変性障害(例えばこれらに限らないが、アルツハイマー病、エイズ関連認知症、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、網膜色素変性症、脊髄性筋萎縮症および小脳変性)、骨髄異形性症候群、再生不良性貧血、心筋梗塞関連虚血傷害、脳卒中および再灌流傷害、不整脈、アテローム性動脈硬化症、毒素誘発性またはアルコール関連肝疾患、血液病(例えばこれらに限らないが、慢性貧血および再生不良性貧血)、筋骨格系の変性疾患(例えばこれらに限らないが、骨粗鬆症および関節炎)アスピリン感受性鼻副鼻腔炎、嚢胞性線維症、多発性硬化症、腎疾患、および癌疼痛の治療に有用である。
【0041】
化合物Iは特に、チロシンキナーゼ活性の高い発現率を有する腫瘍、例えば結腸腫瘍、肺腫瘍、および膵腫瘍の治療に有用である。化合物Iを含む組成物(または組合せ)の投与によって、哺乳類宿主における腫瘍の進行は弱まる。
【0042】
化合物Iはまた、増殖因子受容体、例えばVEGFR−2およびFGFR−1を通して作用するシグナル伝達経路に関連しうる、癌以外の疾患の治療にも有用でありうる。
【0043】
N−1型の化合物Iは、経口、静脈内、または皮下投与のための医薬的なベヒクルまたは希釈剤で製剤化されうる。該医薬組成物は、目的の投与方法に適した固形もしくは液体ベヒクル、希釈剤、および/または添加剤を用いた古典的な方法で製剤化されうる。経口的に、N−1型の化合物Iは、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤などの形態で投与されうる。化合物IのN−1結晶形はまた、この投与方法に適した担体を用いた懸濁液としても投与されうる。
【0044】
化合物Iの有効量は当業者によって決定されてもよく、それには、1回の用量で、または2回から4回の分割用量で、哺乳類について、約0.05から約300mg/kg/日、好ましくは約200mg/kg/日未満の例示的な投与量が含まれる。いずれの特定の患者に対しても、特定の服用量および服用の頻度は変化しうるし、それは様々な要因、N−1型の化合物Iのバイオアベイラビリティ、化合物Iの代謝的安定性および作用時間、患者の生物種、年齢、体重、全般の健康状態、性別、および食事、投与の方法および時間、排泄速度、混合薬、並びに特定の症状の重症度に依存することが理解される。治療のために好ましい対象には、動物、最も好ましくは哺乳類種、例えばヒトおよび家畜(例えば犬、猫、馬など)が含まれる。
【0045】
経口投与のための例示的な組成物には、液体媒質に分散したN−1型の化合物Iの粒子を含む懸濁液が含まれる。該懸濁液にはさらに、例えば、容積を分け与えるための微結晶性セルロース、懸濁剤としてのアルギン酸またはアルギン酸ナトリウム、増粘剤としてのメチルセルロース、および当該技術分野で公知の甘味料または香料を含みうる懸濁剤が含まれてもよく;例えば、微結晶性セルロース、第二リン酸カルシウム、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、および/または乳糖、並びに/あるいは当該技術分野で公知の他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈剤、および滑沢剤を含みうる即時放出錠剤が含まれてもよい。N−1型の化合物Iはまた、例えば、成形され、圧縮され、または凍結乾燥された錠剤で、舌下および/またはバッカルの投与によっても送達されうる。例示的な組成物には、マンニトール、乳糖、ショ糖、および/またはシクロデキストリンのような速溶性の希釈剤が含まれうる。また、このような製剤には、セルロース(アビセル(登録商標))またはポリエチレングリコール(PEG)のような高分子量の賦形剤;ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(SCMC)、および/または無水マレイン酸共重合体(例えば、ガントレッツ(登録商標))のような粘膜付着を促進する賦形剤;並びにポリアクリル酸共重合体(例えば、カルボポール934(登録商標))のような放出を調節する薬剤も含まれうる。滑沢剤、流動促進剤、香料、着色料、および安定剤もまた、製造および使用を容易にするために加えられうる。
【0046】
経口投与のための組成物の例は、N−1結晶形の化合物I、乳糖一水和物(顆粒内相(intra-granular phase))、微結晶セルロース(顆粒内相)、クロスカルメロースナトリウム(顆粒内相)、ヒドロキシプロピルセルロース(顆粒内相)、微結晶セルロース(顆粒外相(extra-granular phase))、クロスカルメロースナトリウム(顆粒外相)、およびステアリン酸マグネシウム(顆粒外相)である。
【0047】
医薬的に活性な物質の製造、安定性、および/または性能はその固形に依存しうるので、典型的には、医薬的に活性な物質の固形は、固形製剤、例えば錠剤またはカプセル剤の製造において重要である。一般に、結晶形は、均一特性、例えば、溶解度、密度、溶解速度、および安定性を有する医薬的に活性な物質を提供する。本発明において、N−1結晶形の化合物Iは、錠剤またはカプセル剤の製造、安定な経口製剤の提供、および/または治療が必要な患者への化合物Iの送達に適した特性を有する。
【0048】
製造方法および評価
結晶形は様々な方法によって製造されうるが、それには、例えば、適当な溶媒からの結晶化または再結晶化、昇華、融解からの成長、固体以外から固体への状態変換、超臨界流体からの結晶化、および噴射スプレーが含まれる。溶媒混合物からの結晶形の結晶化または再結晶化のための技術には、例えば、溶媒の蒸発、溶媒混合物の温度の低下、分子および/または塩の過飽和溶媒混合物への種晶の付加、溶媒混合物の凍結乾燥、および溶媒混合物への貧溶媒(逆溶媒(countersolvent))の付加が含まれる。ハイスループット結晶化技術は、多形を含む結晶形の製造に用いられうる。
【0049】
多形を含む薬物の結晶、製造方法、および薬物の結晶の評価は、Solid-State Chemistry of Drugs, S. R. Byrn, R.R. Pfeiffer, and J.G. Stowell, 2nd Edition, SSCI, West Lafayette, Indiana (1999)において議論される。
【0050】
溶媒を用いる結晶化技術のために、溶媒の選択は一般に一つまたはそれ以上の因子に依存し、その因子は例えば、化合物の溶解度、結晶化技術、および溶媒の蒸気圧である。溶媒は組み合わせて用いてもよく、例えば、化合物は第一の溶媒の中に可溶化されて溶液を得、続いて貧溶媒の付加によって溶液中の化合物の溶解度を減少させ、結晶の形成が得られうる。貧溶媒は、化合物が低溶解度を有する溶媒である。
【0051】
結晶を製造するための一つの方法において、化合物は適当な溶媒の中で懸濁および/または撹拌されてスラリーを得るが、それは加熱されて溶解を促進しうる。用語「スラリー」は、本明細書中で用いられるように、化合物の飽和溶液を意味し、それはまた化合物の付加的な量を含み、所定の温度で化合物および溶媒の不均一な混合物が得られうる。
【0052】
種晶はいずれの結晶化混合物にも加えられ、結晶化を促進しうる。種晶の添加は、特定の多形の成長を調節し、または結晶性生成物の粒子サイズ分布を調節するのに用いてもよい。したがって、必要な種晶の量の計算は、利用できる種晶のサイズおよび平均的な生成物粒子の目的のサイズに依存し、これは例えば、「Programmed Cooling of Batch Crystallizers」, J. W. Mullin and J. Nyvlt, Chemical Engineering Science, 1971, 26, pp. 369-377に記載されている。一般に、小さなサイズの種晶は、バッチにおける結晶の成長を効果的に調節するのに必要である。小さなサイズの種晶は、大きな結晶のふるい分け、粉砕、または微粉化、あるいは溶液の微結晶化によって生成しうる。結晶の粉砕または微粉化は、目的の結晶形からの結晶化度においていずれの変化(すなわち、アモルファスまたは別の多形への変化)ももたらさないことに注意を払うべきである。
【0053】
冷却された結晶化混合物は真空下でろ過されてもよく、単離された固体は適当な溶媒、例えば冷却した再結晶溶媒で洗浄してもよく、窒素でパージしながら乾燥して目的の結晶形を得てもよい。単離された固体は、適当な分光学的技術または分析技術、例えば、固体核磁気共鳴法、示差走査熱量測定、粉末X線回折などによって分析し、生成物の好ましい結晶形の形成を確かめてもよい。生じた結晶形を、本来結晶化の手順において用いられる化合物の重量に基づいて、単離収率約70重量パーセント、好ましくは単離収率90重量パーセント以上の量で製造してもよい。生成物は、必要であればともに粉砕され、または網目スクリーンを通過して生成物を粉々にしてもよい。
【0054】
結晶形は、化合物Iを製造するための最終段階の反応系から直接製造されうる。これは、例えば化合物Iが結晶化されうる溶媒または溶媒混合物を、本方法の最終段階で用いることによって達成されうる。もう一つの方法として、結晶形は蒸留または溶媒付加技術によって得られうる。この目的のための適当な溶媒には、例えば前述の非極性溶媒および極性溶媒、並びにアルコールのようなプロトン性極性溶媒、およびケトンのような非プロトン性極性溶媒が含まれる。
【0055】
サンプル中の一つより多い結晶形および/または多形の存在は、粉末X線回折(PXRD)または固体核磁気共鳴法のような技術によって決定されうる。例えば、実験で測定されたPXRDパターンとシミュレーションされたPXRDパターンの比較において、余分なピークの存在によって、サンプル中の一つより多くの結晶形および/または多形の存在が示唆されうる。シミュレーションされたPXRDは、単一の結晶X線データから計算されうる。Smith, D.K., 「A FORTRAN Program for Calculating X-Ray Powder Diffraction Patterns」, Lawrence Radiation Laboratory, Livermore, California, UCRL-7196 (April 1963)を参照せよ。
【0056】
本発明のN−1型の化合物Iを、その操作が当業者に周知である様々な技術を用いて評価してもよい。N−1型の化合物Iは、標準化された操作条件下および温度で行われる単結晶X線回折を用いて評価および識別してもよく、それは一定の分析温度での単結晶の形態の単位格子測定に基づいている。オングストローム(Å)でのおおよその単位格子定数、並びに結晶格子の体積、空間群、格子あたりの分子、および結晶密度を、例えば25℃のサンプル温度で測定してもよい。単位格子の詳細な記載は、Stout & Jensen, X-Ray Structure Determination: A Practical Guide, Macmillan Co., New York (1968), Chapter 3 において与えられ、それは本明細書に引用される。
【0057】
あるいは、結晶格子内の空間関係における固有の原子配置を、測定された部分原子座標に従って評価してもよい。結晶構造を評価する別の方法は、回折プロファイルが、純粋な粉末物質を表すシミュレーションされたプロファイルと比較される(両者は同一の分析温度で行われる)粉末X線回折解析による方法、および一連の2θ値(通常は4つまたはそれ以上)を特徴とする対象の形態(subject form)についての測定による方法である。
【0058】
形態を評価する他の方法、例えば、固体核磁気共鳴(NMR)、示差走査熱量測定、サーモグラフィ、および結晶もしくは非結晶の形態の肉眼的検査が用いられうる。またこれらのパラメータを組み合わせて用いて、対象の形態を評価してもよい。
【0059】
結晶形を、以下に記載する試験方法の一つまたはそれ以上を用いて解析した。
【0060】
単結晶X線測定
実施例1についての単結晶X線データを収集した。この解析については、ブルッカー−ノニウスCAD4連続回折計(Bruker-Nonius CAD4 serial diffractometer)(Bruker Axs, Inc., Madison WI);または交互に、CuKα照射(λ=1.5418Å)を用いたブルッカー−ノニウスカッパCCD2000システム(Bruker-Nonius Kappa CCD 2000 system)を用いた。25高角反射の実験用回折計の調節の最小二乗解析を通して、単位格子パラメータを得た。θ−2θ可変走査法による恒温でのCuKα照射(λ=1.5418Å)を用いて強度を測定し、ローレンツ偏光因子についてのみ補正した。バックグラウンド計数を、走査時間の半分について走査の先端で収集した。測定した強度データの索引付けおよび加工を、集積プログラムスイート(Collect program suite)(R. Hooft, Nonius B.V. (1998))におけるHKL2000ソフトウェアパッケージで行った。必要であれば、データ収集の間、オックスフォード極低温システムの冷却流の中で結晶を冷却した。
【0061】
構造を直接的な方法によって解析し、マイナー部分の改良を施したSDPソフトウェアパッケージ(SDP, Strucuture Determination Package, Enraf-Nonius, Bohemia, N. Y.)または結晶学パッケージ,MAXUS(maXus solution and refinement software suit: S. Mackay, CJ. Gilmore, C. Edwards, M. Tremayne, N. Stewart, and K. Shankland.)を用いて、観測した反射に基づいて精密化した。maXusは、回折データから結晶構造を解析し、精密化するためのコンピュータプログラムである。
【0062】
粉末X線回折
粉末X線回折(PXRD)データを、ブルッカーGADDS(General Area Detector Diffraction System)マニュアルカイプラットフォームゴニオメーター(manual chi platform goniometer)を用いて得た。粉末サンプルを、直径1mmまたはそれ以下の薄肉ガラスキャピラリーの中に置き;キャピラリーをデータ収集の間回転した。サンプル−検出器間距離は17cmであった。放射線はCuKα(λ=1.5418Å)であった。データを、少なくとも300秒のサンプル照射時間で3<2θ<35°について収集した。
【0063】
導かれた原子パラメータ(座標および温度因子)を、完全行列最小二乗法を通して精密化した。精密化において最小化した関数は、Σw(|Fo|−|Fc|)2であった。RをΣ||F|−|F||/Σ|Fo|として定義し、一方、Rw=[Σw(|Fo|−|Fc|)2/Σw|Fo21/2であり、ここでwは観測強度における誤差に基づく適当な重み関数である。距離マップを、精密化の全段階で調査した。水素原子を、等方性温度因子を用いて理想的な位置に導入したが、水素パラメータは変えなかった。
【0064】
融点
N−1型の化合物1についての融点を、高温顕微鏡によって決定した。結晶をスライドガラスの上に置き、カバーガラスで覆い、顕微鏡に取り付けられたリンカムLTS350高温ステージの上で加熱した(Linkham Scientific Instruments Ltd, Tadworth, U.K.)。加熱速度を、外界温度から300℃の温度領域について10℃/分で調節した。相変態の痕跡、複屈折の変化、乳白度、融解、および/または分解について、結晶を視覚的に観察した。
【0065】
示差走査熱量測定
ティー・エイ・インスツルメント(登録商標)Ql000モデルを用いて、各結晶形について示差走査熱量測定(DSC)を行った。各分析について、DSCセル/サンプル室を、100mL/分の超高純度窒素ガスでパージした。その装置を高純度インジウムでキャリブレートした。加熱速度は、25℃から300℃の間の温度範囲で10℃/分であった。サンプル重量によって標準化した熱流量を、測定したサンプル温度に対してプロットした。データをワット/グラム(「W/g」)の単位で報告した。下方を向いている吸熱ピークでプロットを行った。吸熱融解ピーク(endothermic melt peak)(融点)を、外挿した開始温度について評価した。
【0066】
実施例
実施例1
N−1型の化合物Iの製造
丸底フラスコ(100mL)に、化合物I(8.6g)、N,N−ジメチルホルムアミド(60mL)、およびギ酸アンモニウム(4.94g)を加えた。混合物を窒素雰囲気下に置き、次いでPd/C触媒(5%、636mg)を加えた。45℃で4時間20分後、薄層クロマトグラフィーによる測定で、反応の程度が約50%であることを測定した。別の触媒(200mg)およびギ酸アンモニウム(1g)を加え、フラスコの内容物を45℃でさらに4時間反応させた。セライトを通して反応混合物を濾過し、酢酸エチル(50mL)で3回洗い流した。濾液を合わせて、水(150mL)で洗浄し、生じた水相を別の酢酸エチル(50mL)で逆抽出した。水相をアンモニア水で塩基性化し、次いで酢酸エチル(50mL)で再び逆抽出した。有機溶液を合わせて、水(100mL)で3回洗浄し、食塩水(100mL)で一度洗浄し、次いで硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧蒸留で留去して、残渣(6.5g)を得た。残渣を、次いでシリカゲル60、酢酸エチル:イソプロピルアルコール:トリエチルアミン(88:10:2)を用いたカラムクロマトグラフィーによって精製した。精製した画分を合わせて、溶媒を取り除き、再びカラムクロマトグラフィーを行って、残渣(4.1g)を得た。トルエンによる非結晶残渣のトリチュレーションによって、白色の固形物沈殿物を生じた。結晶性固形物を濾過し、トルエンで洗浄し、真空オーブン中、周囲温度で3日間乾燥した。99%のHPLC純度で、結晶性固形物として化合物I(2.3g)を生じた。元素分析;C 59.81%(59.85)、H 5.30%(5.48)、N 15.72%(15.86)、F 4.52(4.30)(括弧内の数字は理論値である)。次いで単結晶X線解析および粉末X線回折を更なる評価に用い、表記N−1の結晶形が得られた。
【0067】
実施例2
N−1型の化合物Iの製造
1キログラムの化合物Iを固形物として反応器(20L)に加え、続いて酢酸エチル(4L)を加えた。生じたスラリーを、透明な溶液が得られるまで、50℃まで加熱した。次に、n−ヘプタン(4L)を、約30分かけて滴下漏斗を通して加えた。次いで、約10g(1重量%)の化合物IのN1種晶を反応器に加えた。固形物がバッチから結晶化し始めるのが観察された。反応器の内容物を50℃の温度で30分間維持し、次いで40℃まで冷却した。次に、別のヘプタン(4L)を30分かけて加えた。反応器の内容物を40℃でさらに30分間維持し、次いで1時間かけて20℃まで冷却した。生じたスラリーを濾過し(ブフナー漏斗および濾紙で)、酢酸エチル/ヘプタン(5L、1:4 混合物)で洗浄し、続いてヘプタン(3L)で洗浄し、一定重量が得られるまで、真空オーブン中、40〜50℃で乾燥した。収率は、85〜90%の範囲であった。
【0068】
実施例3
I型の化合物Iを含む錠剤の製造
高剪断攪拌型造粒機(high shear mixer granulator)中で15分間、顆粒内物質の化合物I、微結晶セルロース NF(PH 102)、およびクロスポビドンを混合して組み合わせることによって、錠剤のための顆粒を製造した。次いで、顆粒内ステアリン酸マグネシウムを混合物に加え、高剪断攪拌型造粒機中でさらに5分間混合した。生じた粉末を造粒し、またはスラッギング工程(slugging process)で圧縮(densify)し、0.9から1.1グラムの範囲の重量および7SCUから13SCU(ストロングコブ単位(Strong Cobb Unit))の範囲の硬度を有するスラッグ(slug)を生じた。スラッグを、次いで#18網目スクリーンを通してふるいにかけた。タンブラーブレンダー中で、二つ目(second portion)のクロスポビドン(顆粒外)をふるい分けした顆粒に加え、15分間混合した。ステアリン酸マグネシウム(顆粒外)を、次いでタンブラーブレンダー中で混合物に加え、5分間混合して、最終混合物を得た。最終混合物を、18SCU(ストロングコブ単位)の標的硬度まで、用量60mgの錠剤(錠剤重量240mg)および用量200mgの錠剤(錠剤重量800mg)に錠剤プレス(tablet press)上で圧縮した。
表2

【図面の簡単な説明】
【0069】
本発明は、以下に記載した添付図面への引用によって説明される。
【0070】
【図1】図1は、[(1R),2S]−2−アミノプロピオン酸 2−[4−(4−フルオロ−2−メチル−1H−インドール−5−イルオキシ)−5−メチルピロロ[2,1−f][1,2,4]トリアジン−6−イルオキシ]−1−メチルエチルエステルのN−1結晶形の観測およびシミュレーションされた粉末X線回折パターン(T=25℃でCuKα λ=1.5418Å)を示す。
【0071】
【図2】図2は、[(1R),2S]−2−アミノプロピオン酸 2−[4−(4−フルオロ−2−メチル−1H−インドール−5−イルオキシ)−5−メチルピロロ[2,1−f][1,2,4]トリアジン−6−イルオキシ]−1−メチルエチルエステルのN−1結晶形の示差走査熱量測定のサーモグラムを示す。
【0072】
【図3】図3は、[(1R),2S]−2−アミノプロピオン酸 2−[4−(4−フルオロ−2−メチル−1H−インドール−5−イルオキシ)−5−メチルピロロ[2,1−f][1,2,4]トリアジン−6−イルオキシ]−1−メチルエチルエステルのN−1結晶形の熱重量分析(TGA)のサーモグラムを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
N−1型を含む、化合物I:
【化1】

(I)
の結晶形。
【請求項2】
実質的に前記N−1型からなる、請求項1の結晶形。
【請求項3】
前記N−1型が実質的に純粋な形態である、請求項1の結晶形。
【請求項4】
結晶形の測定が約25℃の温度で行われ、下表:

に実質的に等しい単位格子パラメータの特徴を有する、請求項1の結晶形。
【請求項5】
実質的に表1に記載される部分原子座標の特徴を有する、請求項1の結晶形。
【請求項6】
前記結晶形の測定が約25℃の温度で行われ、9.4±0.2、12.6±0.2、13.2±0.2、14.5±0.2、16.6±0.2、17.2±0.2、18.2±0.2、18.8±0.2、21.3±0.2、21.6±0.2、および22.1±0.2からなる群より選択される4つまたはそれ以上の2θ値(CuKα λ=1.5418Å)を含む粉末X線回折パターンの特徴を有する、請求項1の結晶形。
【請求項7】
前記結晶形の測定が約25℃の温度で行われ、9.4±0.2、12.6±0.2、13.2±0.2、14.5±0.2、16.6±0.2、17.2±0.2、18.2±0.2、18.8±0.2、21.3±0.2、21.6±0.2、および22.1±0.2からなる群より選択される5つまたはそれ以上の2θ値(CuKα λ=1.5418Å)を含む粉末X線回折パターンの特徴を有する、請求項1の結晶形。
【請求項8】
a) 結晶形の測定が約25℃の温度で行われ、下表:

に実質的に等しい単位格子パラメータ;
b) 前記結晶形の測定が約25℃の温度で行われ、9.4±0.2、12.6±0.2、13.2±0.2、14.5±0.2、16.6±0.2、17.2±0.2、18.2±0.2、18.8±0.2、21.3±0.2、21.6±0.2、および22.1±0.2からなる群より選択される5つまたはそれ以上の2θ値(CuKα λ=1.5418Å)を含む粉末X線回折パターン;および/または
c) 約138℃から約144℃の範囲にある融点
のa)〜c)のいずれか一つまたはそれ以上の特徴を有する、請求項1の結晶形。
【請求項9】
請求項1の結晶形および医薬的に許容される担体もしくは希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項10】
前記N−1型が実質的に純粋な形態である、請求項9の医薬組成物。
【請求項11】
化合物I:
【化2】

(I)
[式中、化合物IはN−1型を含む結晶形である]
を含む経口製剤。
【請求項12】
前記化合物Iが実質的に前記N−1型からなる、請求項11の経口製剤。
【請求項13】
前記N−1型が実質的に純粋な形態である、請求項11の経口製剤。
【請求項14】
約1から約500mgの前記化合物Iを含む、請求項11の経口製剤。
【請求項15】
前記N−1型が実質的に純粋な形態である、請求項14の経口製剤。
【請求項16】
化合物I:
【化3】

(I)
[式中、前記化合物IはN−1型を含む結晶形で提供される]
の治療上の有効量を治療が必要な哺乳類種に投与することを特徴とする、増殖性疾患の治療方法。
【請求項17】
前記哺乳類種がヒトである、請求項16の方法。
【請求項18】
前記増殖性疾患が、乳癌、結腸直腸癌、肝細胞癌、非小細胞肺癌、および前立腺癌からなる群より選択される、請求項16の方法。

【公表番号】特表2009−511440(P2009−511440A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533589(P2008−533589)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【国際出願番号】PCT/US2006/037777
【国際公開番号】WO2007/038648
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】