説明

[6,7−ジヒドロ−5H−イミダゾ[1,2−a]イミダゾール−3−スルホニルアミノ]−プロピオンアミド誘導体

細胞接着分子(CAM)と白血球インテグリンとの相互作用に良好な阻害効果を示し、そのため炎症性疾患の治療に有用である、[6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-プロピオンアミドの誘導体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、[6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-プロピオンアミドの誘導体、これらの化合物の合成、炎症性疾患の治療へのこれらの化合物の使用、及びこれらの化合物を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
過去10年間にわたる研究によって、体内における細胞間相互作用を伴う分子的事象、特に、免疫系における細胞の移動及び活性化を伴う分子的事象が解明されてきた。Springer, Tの「Nature」346巻、425-434ページ(1990)が概ね参照できる。細胞表面タンパク質、とりわけ細胞接着分子(「CAM」)ならびにLFA-1、MAC-1及びgp150.95をはじめとする「白血球インテグリン(Leukointegrins)」(これらは、WHOの命名法によると、それぞれCD18/CD11a、CD18/CD11b及びCD18/CD11cと称する)は、それぞれを対応させて医薬分野の研究開発課題となってきたが、その目的は、白血球が炎症局所へ遊出し別のターゲットまで移動する過程に介入することであった。例えば、白血球の血管外浸潤は炎症反応の必須な構成成分であるが、この浸潤が起きる前に白血球上に構造的に発現されたインテグリンが活性化し、その後、このインテグリン(例えばLFA-1)は、ICAM-1、ICAM-2、ICAM-3又はICAM-4と呼ばれ、血管内皮細胞表面や別の白血球上に発現される1個又は数個の別の細胞間接着分子(ICAM)との間で緊密なリガンド/レセプター相互作用を起こす、と現在のところ考えられている。細胞接着分子と白血球インテグリンとの相互作用は、免疫系が正常に機能するのに極めて重要なステップである。免疫の過程、即ち、抗原提示、T-細胞を介する細胞障害、さらには白血球の血管外浸潤といった過程は、すべて、白血球インテグリンと相互に作用し合う細胞間接着分子を媒介とする細胞接着が必要である。Kishimoto, T. K.; Rothlein; R. R. の「Adv. Pharmacol.」25巻、117-138ページ(1994)及びDiamond, M.; Springer, T. の「Current Biology」4巻、506-517ページ(1994)が概ね参照できる。
【0003】
白血球インテグリンが適切に発現されない人のグループは、「白血球接着不全症」と呼ばれる症状であると認識されてきた(Anderson, D. C.等の「Fed. Proc.」44巻、2671-2677ページ(1985)及びAnderson, D. C.等の「J. Infect. Dis.」152巻、668-689ページ(1985))。これらの患者は、細胞を細胞基質に接着させることができないことから、正常な炎症応答及び/又は免疫応答を展開することができない。これらのデータから、CD18ファミリーの機能的接着分子の欠如によりリンパ球の正常な接着ができないと、免疫反応が弱められることがわかる。CD18が欠如している白血球接着不全症患者が炎症応答を展開することができないという事実から、CD18,CD11/ICAM間の相互作用の拮抗が炎症応答を阻害するとも考えられる。
細胞接着分子と白血球インテグリンのどちらかの成分に対して作られた薬剤によって、両者間の相互作用の拮抗を認識できることが証明された。具体的には、例えばICAM-1等の細胞接着分子、又は、例えばLFA-1等の白血球インテグリンを、これらの分子のいずれか又は両方に対して作られた抗体でブロックすると、炎症応答が効果的に阻止される。細胞接着分子又は白血球インテグリンに対する抗体によって阻止された炎症応答及び免疫応答の生体外モデルとしては、抗原又はマイトジェンに誘発されたリンパ球の増殖、リンパ球の同種細胞間の凝集、T-細胞を介する細胞崩壊、及び、抗原に特異的な寛容状態が挙げられる。この生体外研究は、ICAM-1又はLFA-1に対して作られた抗体についての生体内研究によってその妥当性が認められる。例えば、LFA-1に対して作られた抗体によって、甲状腺移植の拒絶現象を防ぐことが可能であり、また心臓の同種移植片が長期間耐えられることがマウスで明らかになった((Gorski, A.の「Immunology Today」15巻、251-255ページ(1994)。より重要なことは、ICAM-1に対して作られた抗体が、腎臓同種移植片拒絶や慢性関節リューマチ等のヒトの疾病において抗炎症剤として生体内で効力を示したことである(Rothlein, R. R.; Scharschmidt, L.の「Adhesion Molecules」;Wegner, C. D. Ed.;1-8ページ(1994)、Cosimi, C. B.等の「J. Immunol.」144巻、4604-4612ページ(1990)及びKavanaugh, A.等の「Arthritis Rheum.」37巻、992-1004ページ(1994))。ならびに、LFA-1に対して作られた抗体は、骨髄移植において、また、腎臓同種移植片の早期段階での拒絶を防ぐことにおいて免疫抑制効果を示した(Fischer, A.等の「Lancet」2巻、1058-1060ページ(1989)及びLe Mauff, B.等の「Transplantation」52巻、291-295ページ(1991))。
【0004】
また、ICAM-1の可溶性組み換え体が、ICAM-1のLFA-1との相互作用の阻害剤として作用することもわかった。可溶性ICAM-1は、細胞上でのCD18,CD11/ICAM-1相互作用の直接的な拮抗薬として作用し、入り組んだヒトのリンパ球反応、細胞障害性T細胞応答、及び糖尿病患者の島細胞に応答したT細胞の増殖といった免疫応答の生体外モデルにおいて阻害作用を示す(Becker, J. C.等の「J. Immunol.」151巻、7224ページ(1993)及びRoep, B. O.等の「Lancet」343巻、1590ページ(1994))。
このように、細胞接着分子と白血球インテグリンとの結合を弱める巨大なタンパク質分子が、多数の自己免疫性疾患又は炎症性疾患の病因と関連していることが多い炎症応答及び免疫応答の軽減において治療的可能性を有していることが、従来技術によって明らかになった。しかしながら、タンパク質は治療薬として重大な欠点がある。即ち、経口による送達ができないことや、潜在的な免疫反応性によりこれらの分子の実用性が常習的な投与に関して制限されることである。さらには、タンパク質をベースにした治療薬は、一般的に、製造するのにコストがかかることである。
つまり、巨大なタンパク質分子と同様に、細胞接着分子と白血球インテグリンとの結合を直接的かつ選択的に弱めることができる機能を有する小さな分子があれば、より好ましい治療剤を作ることができる、ということになる。
細胞接着分子と白血球インテグリンとの相互作用に影響を与える小さな分子については、文献にいくつか記載されている。例えば、米国特許第6,355,664号及び対応のWO 98/39303は、中心にヒダントインを有する小分子を開示しているが、この類は、LFA-1とICAM-1間の相互作用の阻害剤である。本発明により関連があるのがWO 01/07440 A1であるが、こちらの方は中心に6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾールを有する化合物を開示している。WO 01/07440 A1に具体的に記載されている化合物は、米国特許第6,355,664号及び対応のWO9839303のヒダントイン類に比べて、細胞接着分子と白血球インテグリンとの相互作用への阻害効果においてはより効力があるが、残念ながら代謝速度が速いために理想的な治療剤ではない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、本発明が解決すべき課題は、細胞接着分子と白血球インテグリンとの相互作用に対して良好な阻害効果を有しているだけでなく、代謝速度が過度に速すぎない小さな分子を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、WO 01/07440 A1に包括的には記載されているが具体的には示されていない6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール類の特定のサブセット又は選択されたものである。非常に驚くべきことに、本発明の範囲に含まれる化合物は、細胞接着分子と白血球インテグリンとの相互作用に対して良好な阻害効果を示すだけでなく、WO 01/07440 A1に具体的に記載されている化合物に比べるとかなりゆっくりと代謝される。本発明の化合物によって、過度に速い代謝速度の問題が解決される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明には式Iの化合物が含まれる。
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、
1は、炭素原子1〜3個を有する直鎖又は分岐のアルキルであり、
(i)オキソ及び
(ii)モルホリノ
からなる群から独立して選択される基によって任意にモノ又はジ置換されていてもよく、
2及びR3は、
(A)水素、及び
(B)炭素原子1〜4個を有する直鎖又は分岐のアルキルであって、
(i)CONH2及び
(ii)OHからなる群から独立して選択される基によってモノ又はジ置換されているアルキル、
からなる群からそれぞれ独立して選択されるか、あるいは、
2及びR3は、間にある窒素原子と一緒になってピペラジン環を形成し、
4は、
(A)シアノ、
(B)NH2でモノ又はジ置換されているピリミジン、又は
(C)トリフルオロメトキシ
を表す。)
【0010】
式Iで表される本発明の好ましい化合物は、式中、
1がメチル基であり、
2及びR3が、
(A)水素、及び
(B)炭素原子1〜4個を有する直鎖又は分岐のアルキルであって、
(i)CONH2及び
(ii)OHからなる群から独立して選択される基によってモノ又はジ置換されているアルキル、
からなる群からそれぞれ独立して選択され、
4が、
(A)シアノ又は
(B)トリフルオロメトキシを表す。
式Iの化合物のなかで、より好ましくは、式中、
1がメチル基であり、
2及びR3が、
(A)水素、及び
(B)炭素原子1〜4個を有する直鎖又は分岐のアルキルであって、
(i)CONH2及び
(ii)OHからなる群から独立して選択される基によってモノ又はジ置換されているアルキル、
からなる群からそれぞれ独立して選択され、
4がトリフルオロメトキシを表す化合物である。
【0011】
式Iの化合物が少なくとも2個のキラル中心を有していると好ましい。最も好ましい包括的態様として、本発明は、下記式I*に示される絶対立体配置を有する式Iの化合物が挙げられる。
【0012】
【化2】

【0013】
以下からなる群から選択される式Iの化合物が、とりわけ好ましい。
(S)-2-[(R)-5-(4-シアノ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-プロピオンアミド、
(S)-2-[(R)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-5-(4-トリフルオロメトキシ-ベンジル)-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-N-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)-プロピオンアミド、
(S)-2-[(R)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-5-(4-トリフルオロメトキシ-ベンジル)-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-プロピオンアミド及び
(S)-N-カルバモイルメチル-2-[(R)-5-(4-シアノ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-プロピオンアミド。
また、本発明には、式Iの化合物の製薬学的に許容される塩も含まれる。
さらに、本発明には、式Iの化合物と、製薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤の少なくとも1種とを含有する医薬組成物が含まれる。
また、本発明には、医薬品として使用するための式Iの化合物、及び、患者の炎症又は炎症性の症状の治療用医薬組成物を調製するための、式Iの化合物の使用が含まれる。治療可能な炎症性の症状の具体例は、本願明細書記載のとおりである。
【0014】
一般的な合成方法
本発明の化合物は、下記に記載の総括的な方法によって調製することができる。通常、反応の進行は、所望であれば薄層クロマトグラフィー(TLC)で監視すればよい。所望であれば、中間体及び生成物はシリカゲルによるクロマトグラフィー及び/又は再結晶化により精製すればよく、NMR、質量分光法及び融点測定のうちの1つ以上の方法を用いて特性を決定すればよい。出発物質及び試薬類は市販品を利用してもよいし、あるいは化学文献に記載の方法を用いて当業者が調製してもよい。
式Iの化合物は中間体IIから調製できる。中間体IIの合成については、Wu等の米国特許本出願第09/604,312号及びFrutos等の米国特許第6,441,183号に報告されており、これら両方は引用により本願明細の記載に含まれるものとする。
【0015】
【化3】

【0016】
中間体IIは、反応スキームIに示す手順で調製することができる。
反応スキームI













【0017】
【化4】

【0018】
上記に示すように、中間体IIIを、約-20〜-30℃でリチウムビス(トリメチルシリル)アミド等の好適な塩基を用いて脱プロトン化した後、置換ハロゲン化ベンジル、好ましくは臭化ベンジル(IV)でアルキル化を行い、Vを生成させる。Vのトリフルオロアセトアミド基を、例えば、ジオキサン中の水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム40%水溶液/50%NaOHによる処理で加水分解し、さらに塩酸等の酸で処理を行いVIを得る。4-(N,N-ジメチルアミノ)ピリジン等の塩基の存在下、チオカルボニルジイミダゾールでVIを処理してVIIを得る。アミノアセトアルデヒドジメチルアセタール及びt-ブチルヒドロペルオキシド溶液でVIIを処理した後、p-トルエンスルホン酸等の酸で中間体アセタールを処理して、VIIIを得る。N-ヨードコハク酸アミド等のヨウ素化剤による処理で、VIIIをヨウ素化してIIを得る。
【0019】
中間体IIIの調製、N-Boc-D-アラニンと3,5-ジクロロアニリンとで形成されるアミドからBoc基を取り除くためのトリフルオロ酢酸による処理、それに続くピバルアルデヒドでの処理、及び、生成されたイミダゾロドンの無水トリフルオロ酢酸によるアシル化に用いる方法は、上記に記載の米国特許第6,414,161号及び化学文献(N.Yeeの「Org Lett.」2巻、2781ページ(2000))に記載されている。
中間体IIからの式Iの化合物の合成を反応スキームIIに示す。
反応スキームII
【0020】
【化5】

【0021】
上記に示したように、シクロペンチル臭化マグネシウム又は塩化マグネシウム等のグリニャール試薬でIIを処理した後、生成されたマグネシウム塩をSO2さらにN-クロロコハク酸イミドで処理し、塩化スルホニルIXを生成する。トリエチルアミン等の好適な塩基の存在下、IXを所望のアミン(X)で処理し、式(I)で表される所望の生成物を得る。中間体Xは市販品を利用してもよいし、あるいは、この分野で公知の方法で市販の出発物質から容易に調製することもできる。式Iの最初に得られた生成物は、この分野で公知の方法でさらに変性させて、本発明の化合物に追加してもよい。合成例の項で実施例をいくつか示す。
反応スキームIにおいて適切に置換された中間体IVを選択することによって、式Iの化合物において所望のR4を得ることができる。また、反応スキームIIIに示すように、中間体VIIIにおいてR4がBrの中間体(VIIIa)を、R4がCN又は置換5-ピリミジル基である中間体に変換させることもできる。
反応スキームIII
【0022】
【化6】

【0023】
上記に示したように、臭化アリール(VIIIa)をシアニド塩、好ましくはCuCNで処理してDMF等の好適な溶媒中で加熱し、シアノ中間体VIIIbを得る。5-(4,4,5,5,-テトラメチル-[1,3,2]ジオキサボロラン-2-イル)-ピリミジン等のピリミジンボロン酸エステルを用いて、[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロパラジウム(II)・CH2Cl2(PdCl2(dppf)・CH2Cl2)等のパラジウム触媒と、炭酸カリウム等の塩基との存在下、例えばジメトキシエタン等の好適な溶媒中でVIIIaを処理する(鈴木反応)ことによって、ピリミジン中間体VIIIcを得る。その後、中間体VIIIb及びVIIIcを、反応スキームIとIIに記載の手順にしたがって式Iの所望の化合物に変換させることができる。R4がBrのものからR4が任意に置換されたピリミジンを示すものへ変換させる鈴木反応を、式Iの化合物に施すこともできる。さらに、逆方法で鈴木反応を行うこともできる。臭化物VIIIa(又はR4がBrである式Iの化合物)を、例えば、PdCl2(dppf)等のパラジウム触媒の存在下、ビス(ピナコラート)ジボロンを用いて処理を行いボロン酸エステルに変換し、その後所望のピリミジル臭化物と反応させてもよい。
以下の合成例を参照して本発明をさらに説明する。
【0024】
合成例
実施例1
(R)-5-(4-ブロモ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-塩化スルホニルの合成
【0025】
【化7】

【0026】
(R)-3-(4-ブロモ-ベンジル)-1-(3,5-ジクロロ-フェニル)-3-メチル-1H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-2-オンのTHF(0.12M)溶液を、N-ヨードコハク酸イミド(1.05当量)及びp-トルエンスルホン酸ピリジニウム(0.1当量)で処理した。混合物を室温で17時間攪拌した後、EtOAcで希釈し、10%Na2S2O3溶液及び水で順次洗浄した。水性層を合わせてEtOAcで抽出した。有機相を合わせて塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ濾過、濃縮を行った。粗生成物のオイルをシリカゲルクロマトグラフィーで精製し、所望のヨウ化物を得た。
上記ヨウ化物のTHF(0.12M)溶液を-40℃で冷却しながら、c-ペンチル塩化マグネシウム(1.05当量)を10分間かけて滴下した。-40℃で1時間攪拌した後、注入針を反応混合物の表面のすぐ上に1.5分間置いてSO2(g)を添加した。明るい黄色の混合物の温度を1時間かけて-20℃に上昇させ、室温で1時間攪拌した。混合物にN2(g)を20分間吹き込んだ後、濃縮及び高真空下で12時間ポンピングを行った。得られた黄色の気泡体をTHF(0.1M)に溶解させ、この溶液を-20℃で冷却しながらN-クロロコハク酸イミド(1.2当量)のTHF(0.3M)溶液を5分間かけて滴下した。-20℃で1時間攪拌した後、混合物を氷の上に注ぎ、2回に分けてEtOAcで抽出した。有機層を合わせて氷入りの冷たい塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過と濃縮を行った。シリカゲルクロマトグラフィーによる精製で、固体の(R)-5-(4-ブロモ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-塩化スルホニルを得た。
【0027】
実施例2
(S)-2-[(R)-5-[4-(4-アミノ-ピリミジン-5-イル)-ベンジル]-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-N-(2-ヒドロキシ-エチル)-プロピオンアミド(660.4、M+1)








【0028】
【化8】

【0029】
(S)-2-アミノ-N-(2-ヒドロキシ-エチル)-プロピオンアミド(0.53g、3.2mmol、3当量)の塩酸塩を10mLのDMFに懸濁させた懸濁液に、DMAP(4当量)を添加し、得られた混合物を室温で1時間攪拌した。この溶液に、(R)-5-(4-ブロモ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-塩化スルホニル(0.580mg、1.06mmol)を含む2mLのDMFを室温で添加した。室温で15分間攪拌した後、混合物をEtOAcに溶解し、希釈用の水、塩酸、飽和NaHCO3、塩水で順次洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過と濃縮を行った。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製したところ、0.305mfの所望の生成物を得た。
(S)-2-[(R)-5-(4-ブロモ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-N-(2-ヒドロキシ-エチル)-プロピオンアミド(0.310g、0.473mmol)と、ビス(ピナコラート)ジボロン(0.240g、0.946mmol)と、KOAc(0.140g、1.419mmol)との混合物を含む29mLのジオキサンに、N2を15分間流し込んだ。PdCl2(dppf)(0.039g、0.047mmol)を添加し、反応混合物を80℃で36時間加熱した。室温まで冷却した後、混合物を濃縮し、残渣を150mLのEtOAcで希釈し、水及び塩水で順次洗浄しMgSO4で乾燥させて濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製したところ、0.204g(収率62%)のボロナートを得た。
【0030】
8mLのジメトキシエタン及び1.2mLの水に含まれた、上記ボロナート(0.204g、0.295mmol)と、5-ブロモ-2-アミノ-ピリミジン(0.078g、0.443mmol)と、K2CO3(0.122g、0.885mmol)の混合物に、N2を20分間流し込んだ。PdCl2(dppf)(0.025g、0.030mmol)を添加し、反応混合物を80℃で2時間加熱した。室温に冷却した後、混合物をEtOAcで希釈し、水及び塩水で順次洗浄し濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー及び分取薄層クロマトグラフィーで精製したところ、0.062g(収率32%)の標記化合物(660.4、M+1)が得られた。以下の化合物は実施例2に記載の手順と同様にして調製した。
(S)-2-[(R)-5-[4-(4-アミノ-ピリミジン-5-イル)-ベンジル]-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-N-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)-プロピオンアミド((687.1、M+1)
【0031】
【化9】

【0032】
実施例3
(S)-2-[(R)-5-(4-シアノ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-プロピオンアミドの合成











【0033】
【化10】

【0034】
(R)-3-(4-ブロモ-ベンジル)-1-(3,5-ジクロロ-フェニル)-3-メチル-1H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-2-オン(3.0g、6.6mmol)のDMF(60mL)溶液に、Zn(CN2)(0.47g、4.0mmol)を添加した。得られた溶液の脱泡をN2の強い気流で行った。Pd2dba3及びdppfを添加し、反応混合物を120℃で2時間加熱した。溶媒を蒸発させ、残渣をEtOAcに溶解させた後、水及び塩水で順次洗浄し、その後、乾燥させて濾過し、残渣を「フロリジル(Florisil)」で精製したところ、所望の生成物が2.42g得られた。その後、この生成物を実施例1に記載の方法と同様にして処理し、(R)-5-(4-シアノ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-塩化スルホニルが得られた。
L-アラニンアミド塩酸塩(0.151g、1.209mmol)を無水DMFに溶解させ、DMAP(0.197g、1.612mmol)を上記の溶液に添加した。反応混合物を室温で1時間攪拌した。その後、(R)-5-(4-シアノ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-塩化スルホニル(0.24g、0.484mmol)を含む無水DMFを反応混合物に添加し、さらに10分間攪拌した。反応溶液をEtOAcで希釈し、水、1N塩酸、さらに水で順次洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製したところ、標記化合物0.211gを鱗状の白色固体で得た(M+1、547.2)。
【0035】
実施例4
(S)-N-カルバモイルメチル-2-[(R)-5-(4-シアノ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-プロピオンアミドの合成
【0036】
【化11】

【0037】
L-アラニンt-ブチルエステル塩酸塩(0.88g、4.84mmol)を無水DMF(10mL)に溶解させDMAP(0.79g、6.46mmol)を上記の溶液に添加した。反応混合物を室温で1時間攪拌し、(R)-5-(4-シアノ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-塩化スルホニル(0.80g、1.61mmol)を含むDMFを反応混合物に添加した。反応混合物を室温でさらに10分間攪拌した。反応混合物を、水(3回)、1N塩酸、さらに飽和NaHCO3で順次洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ濃縮した。CH2Cl2-MeOH(98:2)を溶離剤としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーで、粗生成物を精製したところ、0.94gのスルホンアミドt-ブチルエステルを得た。CH2Cl2(10mL)中、得られた生成物をトリフルオロ酢酸(5mL)で3時間室温で処理した。反応溶液を、CH2Cl2で希釈し水で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させた後濃縮し、白色気泡体の(S)-2-[(R)-5-(4-シアノ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-プロピオン酸を0.67g得た。
上記カルボン酸(0.05g、0.091mmol)を無水DMF(2mL)に溶解させ、この反応溶液にベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ピロリジノ)ホスフォニウムヘキサフルオロホスファート(PyBOP)(0.071g、0.137mmol)を添加した。反応混合物を室温で10分間攪拌し、グリシンアミド塩酸塩(0.015g、0.137mmol)を混合物に添加し、引き続き、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.039mL、0.227mmol)を添加した。反応混合物を室温でさらに15分間攪拌した。その後、混合物をEtOAc(10mL)で希釈し、水(2回)、1N塩酸、飽和NaHCO3、さらに水(1回)で順次洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ濃縮した。粗生成物を、CH2Cl2-MeOH(95:5)を溶離剤としたシリカゲル分取薄層クロマトグラフィーで精製したところ、標記化合物を白色気泡体で0.043g得た(M+1、604.2)。
以下の化合物は上記実施例に記載した手順と同様にして製造した。
(S)-2-[(R)-5-(4-シアノ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-N-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)-プロピオンアミド(M+1、619)
【0038】
【化12】

【0039】
実施例5
(S)-N-((R)-1-カルバモイル-エチル)-2-[(R)-5-(4-シアノ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-プロピオンアミドの合成
【0040】
【化13】

【0041】
(S)-2-[(R)-5-(4-シアノ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-プロピオン酸(実施例14参照)(0.05g、0.091mmol)を無水DMF(2mL)に溶解させ、TBTU(0.044g、0.137mmol)を上記反応溶液に添加した。反応混合物を室温で10分間攪拌し、D-アラニンアミド塩酸塩(0.017g、0.137mmol)を混合物に添加し、さらにN,N-ジイソプロピルエチルアミン(0.039mL、0.227mmol)を添加した。反応混合物を室温でさらに15分間攪拌した。その後、混合物をEtOAc(10mL)で希釈し、水、1N塩酸、飽和NaHCO3、さらに水で順次洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ濃縮した。粗生成物をシリカゲル分取薄層クロマトグラフィーで精製したところ、標記化合物を白色気泡体で0.035g得た(M+1、618.2)。
【0042】
実施例6
(S)-2-[(R)-5-(4-シアノ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-N-(2-ヒドロキシ-エチル)-プロピオンアミド
【0043】
【化14】

【0044】
L-Boc-アラニン(0.40g、2.11mmol)と、エタノールアミン(0.15mL、2.54mmol)とHOBt(0.29g、2.11mmol)の混合物を含む無水CH3CN(9mL)を0℃に冷却し、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(0.49g、2.54mmol)を上記反応混合物に添加した。反応混合物を放置して室温に戻し、19時間攪拌した。反応混合物をEtOAcで希釈し、5%クエン酸で洗浄した。水性層をEtOAcで抽出した。有機相を合わせて飽和NaHCO3と塩水で順次洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ濃縮し、無色油状の結合した生成物を0.38g得た。
上記アルコール(0.34g、1.45mmol)をCH2Cl2(3mL)に溶解させ、4N塩酸を含むジオキサン(3ml)を上記溶液に添加した。この反応溶液を室温で2時間攪拌した後、濃縮したところ、(S)-2-アミノ-N-(2-ヒドロキシ-エチル)-プロピオンアミド塩酸塩を得た。
上記アミン塩(0.043g、0.254mmol)の無水DMF溶液に、DMAP(0.037g、0.303mmol)を添加した。反応混合物を室温で1時間攪拌した。その後、(R)-5-(4-シアノ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-塩化スルホニル(0.036g、0.073mmol)を反応混合物に添加し、さらに2時間攪拌した。反応混合物をEtOAcで希釈し、1N塩酸及び飽和NaHCO3で順次洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥させ濃縮した。残渣をシリカゲル分取薄層クロマトグラフィーで精製したところ、0.035gの標記化合物を白色気泡体で得た(M+1、591.1)。
【0045】
実施例7
(S)-2-[(R)-5-(4-シアノ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-5-モルホリン-4-yl-5-オキソ-吉草酸アミド




【0046】
【化15】

【0047】
(S)-2-t-ブトキシカルボニルアミノ-ペンタン2酸1-ベンジルエステル(4.5g、13.4mmol)と、モルホリン(1.29mL、14.8mmol)と、HOBt(1.89g、14.0mmol)の混合物を含むCH2Cl2(18mL)に、DCC(2.89g、14.0mmol)のCH2Cl2(18mL)溶液を0℃でゆっくりと添加した。得られた混合物を放置して室温に戻し、一晩攪拌した。析出物を濾取し、濾液をCH2Cl2で希釈した。溶液を、飽和NaHCO3、1N塩酸、最後に塩水で順次洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させて濾過を行った。溶媒分を蒸発させたところ、所望のアミドが白色固体(5.42g)で得られた。
上記アミド(6.17g、152mmol)と10%Pd/C(0.52g)の混合物を含むEtOAc(50mL)を常圧で24時間水素添加した。この混合物を濾過し濃縮したところ、気泡体の(S)-2-t-ブトキシカルボニルアミノ-5-モルホリン-4-イル-5-オキソ-吉草酸(3.12g)が得られ、これはさらに精製をせずに用いた。
上記で得られたカルボン酸(3.12g、9.86mmol)とO-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N',N',-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HATU)(5.25g、13.8 mmol)とを含むDMF(30mL)溶液に、攪拌しながら20分間アンモニアガスを吹き込んだ。得られた黄色の懸濁液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(5.15mL、29.5mmol)をシリンジで添加した。混合物を窒素雰囲気下で一晩攪拌した。反応物を濾過し、真空下で濃縮した。得られた残渣をCH2Cl2に溶解させ、飽和NaHCO3、1N塩酸、最後に塩水で順次洗浄した。有機層をNa2SO4で乾燥させ、濾過、濃縮を行った。得られた残渣をEtOAcで再結晶させ、白色固体状のアミド(1.16g)を得た。
EtOAc中、HClでBoc基を取り除き、得られた(S)-2-アミノ-5-モルホリン-4-イル-5-オキソ-吉草酸アミド塩酸塩を真空濾過によって回収し、さらに精製をせずに用いた。攪拌した(R)-5-(4-シアノ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-塩化スルホニル(76mg、0.13mmol)のDMF(4mL)溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(60μL、0.39mmol)を添加し、さらにアミン塩酸塩(100mg、0.4mmol)を添加した。一晩攪拌した後、DMFを真空下で取り除き、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにかけた。さらに生成物をセミ分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で精製したところ、32mgの標記化合物が白色固体で得られた(M+1、674.04)。
【0048】
実施例8
(S)-2-[(R)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-5-(4-トリフルオロメトキシ-ベンジル)-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-プロピオンアミドの合成
【0049】
【化16】

【0050】
リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(LiHMDS)(38.0mL、THF中1Mで含まれる)を、(2S,5R)-2-t-ブチル-3-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-1-(2,2,2-トリフルオロ-アセチル)-イミダゾリジン-4-オン(10.0g、25.17mmol)のTHF(60mL)溶液に、-20℃で25分間かけてゆっくりと滴下した。-20℃で20分間攪拌した後、臭化4-トリフルオロメトキシベンジル(6.04mL、37.76mmol)のTHF(30mL)溶液を20分間かけて滴下した。この混合物を-20℃で45分間攪拌し、1時間かけて-5℃にした後、50mLの氷入り飽和NH4Cl溶液に投入した。得られた混合物をEtOAcで抽出した。有機相を合わせて塩水で洗い、Na2SO4で乾燥させてから濾過、濃縮を行った。粗生成物をヘキサンと粉砕し、オフホワイト色の固体の(2R,5R)-2-t-ブチル-3-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-1-(2,2,2-トリフルオロ-アセチル)-5-(4-トリフルオロメトキシ-ベンジル)-イミダゾリジン-4-オンを12.5g(87%)得た。
上記イミダゾリジノン(6.0g、10.5mmol)のジオキサン(40mL)溶液に、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム(6.59g、15.75mmol)40%水溶液を室温で添加した。この混合物を40℃に加熱しながら、水酸化ナトリウム(1.68g、21.0mmol)50%水溶液を5分間かけてゆっくり滴下した。混合物を40℃で18時間攪拌した後、6.4gの濃塩酸を3.3mLの水に溶解させた溶液を10分かけてゆっくり滴下した。混合物を50℃に加熱し、さらに5時間攪拌した後、室温に冷却して濃縮した。50mLのトルエンを残渣に加え、二相性の混合物を激しく攪拌しながら水酸化ナトリウム(3.0g)50%水溶液をゆっくりと滴下した(水性相のpH値は10以上)。水性層をトルエンで抽出し、有機相を合わせて水、塩水で順次洗い、Na2SO4で乾燥させて濾過、濃縮を行ったところ、4.24gの(R)-2-アミノ-N-(3,5-ジクロロ-フェニル)-2-メチル-3-(4-トリフルオロメトキシ-フェニル)-プロピオンアミドを淡い茶色の油状物質として得た。
【0051】
上記プロピオンアミド(4.24g、10.41mmol)のTHF(30mL)溶液に、チオカルボニルジイミダゾール(2.81g、15.77mmol)及び4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)(0.127g、1.04mmol)を添加した。この混合物を加熱し17時間還流した後、室温に冷却して濃縮した。オレンジ色の油状の残渣を50mLのトルエンに溶解させ、20mLの5%HCl水溶液をゆっくりと滴下して処理した。この混合物を10分間攪拌した後、水性層を分離させトルエンで抽出した。有機相を合わせて、水、塩水で順次洗い、Na2SO4で乾燥させ、濾過、濃縮を行ったところ、4.48gの(R)-3-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-2-チオキソ-5-(4-トリフルオロメトキシ-ベンジル)-イミダゾリジン-4-オンをオレンジ色の気泡体で得た。
上記チオヒダントイン(4.47g、9.95mmol)とアミノアセトアルデヒドジメチルアセタール(6.50mL、59.7mmol)とを含む20mLのMeOH溶液に、7.69mL(59.7mmol、水中70%濃度)のt-ブチルヒドロペルオキシド溶液を25分間にわたって滴下した。添加中およびその後約1時間にわたり、氷水浴を用いて混合物の内部温度を20℃より低く保った。この混合物を室温で86時間攪拌し、氷水浴で内部温度を20℃未満に保ちながら25mLの飽和NaHSO3溶液をゆっくりと滴下した。得られた白濁混合物を濃縮した。残渣にEtOAcを加え、この混合物を再度濃縮した。油状の残渣をEtOAcと水とに分けて、水性相を分離しEtOAcで抽出した。有機層を合わせて、水、塩水で順次洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過、濃縮を行ったところ、5.21gの(R)-3-(3,5-ジクロロ-フェニル)-2-[(E)-2,2-ジメトキシ-エチルイミノ]-5-メチル-5-(4-トリフルオロメトキシ-ベンジル)-イミダゾリジン-4-オンを黄色の濃厚な油状物質として得た。
上記の粗生成アセタール(5.20g、9.95mmol)のアセトン(30mL)溶液を、p-トルエンスルホン酸(1.89g、9.96mmol)で処理した。この混合物を加熱し2時間還流した後、室温に冷却して濃縮した。得られた暗いオレンジ色の油状物質を40mLのEtOAcに溶解させ、2.3gのNaHCO3を23mLの水に溶解させた水溶液で慎重に処理した。ガス発生がしずまった後、水性相を分離し2回にわけてEtOAcで抽出した。有機層を合わせて、飽和NaHCO3溶液、水(2回)、塩水で順次洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過、濃縮を行った。油状の残渣をシリカゲルクロマトグラフィーで精製したところ、1.58gの(R)-1-(3,5-ジクロロ-フェニル)-3-メチル-3-(4-トリフルオロメトキシ-ベンジル)-1H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-2-オン(456.2、M+1)を得た。
【0052】
(R)-1-(3,5-ジクロロ-フェニル)-3-メチル-3-(4-トリフルオロメトキシ-ベンジル)-1H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-2-オン(実施例1)(1.54g、3.38mmol)のTHF(30mL)溶液を、N-ヨードコハク酸イミド(0.846g、3.76mmol)及びp-トルエンスルホン酸ピリジニウム(0.086g、3.76mmol)で処理した。この混合物を室温で17時間攪拌した後、EtOAcで希釈し、10%Na2S2O3溶液及び水で順次洗浄した。水性層を合わせて、10mLのEtOAcで抽出した。有機相を合わせて、25mLの塩水で洗浄しNa2SO4で乾燥させ、濾過、濃縮を行った。粗生成物のオレンジ色の油状物質をシリカゲルクロマトグラフィーで精製したところ、1.27g(65%)の(R)-1-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-ヨード-3-メチル-3-(4-トリフルオロメトキシ-ベンジル)-1H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-2-オンをオフホワイト色の油状物質で得た(582.0、M+1)。
上記ヨウ化物(1.24g、2.13mmol)のTHF(16mL)溶液を-40℃に冷却し、シクロペンチル塩化マグネシウム(1.17mL、ジエチルエーテル中で2M)を10分間かけて滴下した。-40℃で1時間攪拌した後、注入針を反応混合物の表面のすぐ上に1.5分間置いてSO2(g)を添加した。明るい黄色の混合物の温度を1時間かけて-20℃に上昇させた後、室温で1時間攪拌した。N2(g)を20分間混合物に吹き込んだ後、濃縮及び高真空下で12時間ポンピングを行った。得られた黄色の気泡体を16mLのTHFに溶解させ、この溶液を-20℃に冷却し、N-クロロコハク酸イミド(0.341g、2.56mmol)のTHF(8mL)溶液を5分間かけて滴下した。-20℃で1時間攪拌した後、混合物を氷の上に注ぎ、2回に分けてEtOAcで抽出した。有機層を合わせて氷入りの冷たい塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過と濃縮を行った。シリカゲルクロマトグラフィーによる精製により、0.975g(83%)の(R)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-5-(4-トリフルオロメトキシ-ベンジル)-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-塩化スルホニルが濃厚な油状物質で得られた(554.2、M+1)。
L-アラニンアミド塩酸塩(0.097g、0.782mmol)のDMF(6.5mL)溶液を、室温でトリエチルアミン(0.163mL、1.17mmol)を用いて処理した。10分間攪拌した後、上記塩化スルホニル(0.217g、0.391mmol)のCH2Cl2(1mL)溶液を速やかに滴下し、濁った混合物を室温で5時間攪拌した。EtOAcを加え、有機層を水、塩水で順次洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過、濃縮を行った。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィーで精製したところ、0.193g(81%)の標記化合物を白色固体で得た(606.3、M+1)。
以下の化合物は実施例8と同様の手順で調製した。
(R)-2-[(R)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-5-(4-トリフルオロメトキシ-ベンジル)-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-プロピオンアミド(606.4、M+1)
【0053】
【化17】

【0054】
実施例9
(S)-2-[(R)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-5-(4-トリフルオロメトキシ-ベンジル)-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]- N-(2-ヒドロキシ-エチル)-プロピオンアミドの合成










【0055】
【化18】

【0056】
N-Boc-L-(N'-ヒドロキシエチル)アラニンアミド(0.188g、0.809mmol)を1mLのジオキサンに懸濁させた懸濁液に、HCl(2.0mL、ジオキサン中4M)を加え、濁った混合物を室温で2.5時間攪拌した。CH2Cl2を添加して混合物を濃縮する工程を2回繰り返した。高真空下で12時間行った最後のポンピングにより、無色の油状物質を得た。この粗生成アミン塩酸塩を1.5mLのDMFに溶解させ、トリエチルアミン(0.157mL、1.13mmol)で処理した。室温で10分間攪拌した後、(R)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-5-(4-トリフルオロメトキシ-ベンジル)-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-塩化スルホニル(0.125g、0.225mmol)のCH2Cl2(3mL)溶液をカニューレで速やかに滴下した。反応混合物を室温で4時間攪拌した。EtOAcを加えて、有機層を3回に分けて5%NaCl溶液で洗浄した後、塩水で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過、濃縮を行った。粗生成物を分取薄層クロマトグラフィーで精製したところ、0.118g(81%)の標記化合物を白色気泡体で得た(649.9、M+1)。
以下の化合物は実施例8と同様の手順で調製した。
(S)-2-[(R)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-5-(4-トリフルオロメトキシ-ベンジル)-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-N-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)-プロピオンアミド(678.3、M+1)






【0057】
【化19】

【0058】
生物学的特性の説明
式Iで表される代表的な化合物の生物学的特性を、下記の実験プロトコールによって調べた。
LFA-1とICAM-1の結合への阻害の定量化
定量化の目的:
この定量プロトコールは、細胞接着分子ICAM-1と白血球インテグリンCD18/CD11a(LFA-1)との相互作用に対するテスト化合物による直接的拮抗作用を調べることを目的としている。
定量プロトコールの詳細:
先に報告済みのプロトコール(Dustin, M. J.等の「J. Immunol.」148巻、2654-2660ページ(1992))により、TS2/4抗体を用いてヒトのJY又はSKW3細胞のペレット(20g)からLFA-1を免疫精製した。TS2/4 LFA-1 mAb セファロースのイムノアフィニティークロマトグラフィーによってSKW3溶解物からLFA-1を精製し、2mMのMgCl2及び1%オクチルグルコシドの存在下、pH値11.5で溶出させた。TS2/4カラムから画分を回収して中和させた後、試料をプールしプロテインGアガロースでプレクリアした。
ICAM-1の可溶体を、先に報告ずみの記載にしたがい作成、発現、精製させ、特徴づけた。(Marlin, S.等の「Nature」344巻、70-72ページ(1990)及びArruda, A.等の「Antimicrob. Agents Chemother」36巻、1186-1192ページ(1992))参照)。手短に言えば、細胞外ドメインのドメイン5と膜貫通ドメインとの推定境界線に位置するイソロイシン454が、オリゴヌクレオチドを標的とした標準的な突然変異誘発によって終止コドンに変えられる。この構造によって、膜結合ICAM-1の第1の453アミノ酸と同一の分子が得られる。発現ベクターは、ハムスターのジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、ネオマイシン耐性マーカー及び上記記載のsICAM-1構造物のコード領域を用いて、プロモーター、スプライスシグナル及びSV40初期領域のポリアデニレーション化シグナルとともに作成する。標準的な燐酸カルシウム法により、組み換え型プラスミドをCHO DUX細胞へ感染させる。細胞を選択培地(G418)に継代し、sICAM-1を分泌するコロニーをメトトレキサートで増幅させる。イオン交換クロマトグラフィーやサイズ排除クロマトグラフィーをはじめとする従来のノンアフィニティークロマトグラフィー技術を用いて、無血清培地からsICAM-1を精製する。
【0059】
LFA-1のICAM-1への接着を観察するのに、まず最初に、カルシウム及びマグネシウム、さらに2mMのMgCl2と0.1mMのPMSF(希釈液)を含むダルベッコ燐酸緩衝生理食塩水中、40μg/mLのsICAM-1を96穴プレートで30分間室温で培養した。その後、2%(w/v)のウシ血清アルブミンンの希釈液を添加して、プレートを37℃で1時間ブロックする。ブロッキング液を穴から取り除き、試料化合物を希釈して添加した後、イムノアフィニティークロマトグラフィーで精製した約25ngのLFA-1を加える。試料化合物とICAM-1の存在下、37℃で1時間LFA-1を培養する。穴を希釈液で3回洗浄する。希釈液及び1%ウシ血清アルブミン(BSA)の1:100希釈液中で、CD18細胞質尾部に相当するペプチドに対して作られたポリクローナル抗体を添加して、結合しているLFA-1を検出し、37℃で45分間培養する。穴を希釈液で3回洗浄し、ウサギ免疫グロブリンに対して作られたヤギ免疫グロブリンに共役したホースラディッシュペルオキシダーゼの1:4000希釈液を添加することによって、結合しているポリクローナル抗体を検出する。この試薬を37℃で20分間培養させ、穴を上記のごとく洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼの基質を各穴に加え、sICAM-1に結合するLFA-1の量に比例する比色定量シグナルを発生させる。LFA-1/ICAM-1相互作用の阻害に関しての陽性コントロールとして、可溶性ICAM-1(60μg/mL)を用いる。すべての試料のバックグラウンドコントロールとして、結合アッセイにLFA-1の添加を行わないものを用いる。全試料化合物の用量作用曲線を得る。
上記の実施例において作製されたすべての化合物をこのアッセイでテストしたところ、各化合物がKd<10μMであることがわかった。
【0060】
ヒト肝臓ミクロソーム酵素による代謝の定量化
定量化の目的:
この定量プロトコールは、ヒト肝臓ミクロソーム酵素による試料化合物の生体外代謝を測定することを目的とする。集めたデータを分析し、試料化合物の半減期(t1/2、分)を求める。
定量プロトコールの詳細:
pH値7.4の50mM燐酸カリウム緩衝剤と2.5mMのNADPHの中でアッセイを行う。最終アッセイ濃度が1〜10μMになるように試料をアセトニトリルに溶解させる。ヒト肝臓ミクロソームを最終アッセイ濃度が1mgタンパク質/mLとなるようにアッセイ緩衝液に希釈する。アッセイ緩衝液825μLに、25μLの化合物溶液と50μLのミクロソーム懸濁液とを添加する。調製したものを37℃の水浴中で5分間培養する。100μLのNADPHを添加することにより反応が開始される。反応開始後、0、3、6、10、15、20、40及び60分後の時点で培養混合物から80μL分を取り出し、160μLのアセトニトリルに添加する。試料を20秒間振動させた後、3000rpmで3分間遠心分離にかける。上清液200μLを0.25mmのガラス繊維フィルタープレートに移し、3000rpmで5分間遠心分離にかける。注入量の10μLを通常ゾルバックス社製SB C8 HPLCカラムに、ギ酸水溶液又はギ酸アセトニトリル溶液とともに流速1.5mL/分で添加する。親化合物の損失率をそれぞれの時点での面積から計算して、半減期を求める。
上記の実施例において作製された化合物をこのアッセイでテストしたところ、概して、半減期t1/2≧50分であることがわかった。
【0061】
治療用途の説明
本発明により提供される式Iの新規な小分子は、ICAM-1/LFA-1依存性のヒトリンパ球の同種細胞間の凝集やヒトリンパ球のICAM-1への接着を阻害する。免疫細胞の活性化/増殖という変調において、前記化合物は、例えば、細胞接着分子と白血球インテグリンが関与する細胞内のリガンド/レセプター結合反応の競合阻害物質として治療に使用することができる。より詳細には、本発明の化合物は、哺乳動物における非特異的免疫系の応答に起因する症状(例えば、成人呼吸窮迫症候群、ショック、酸素毒性、敗血症に付随する多臓器障害症候群、精神的外傷に付随する多臓器障害症候群、心肺バイパス又は心筋梗塞又は血栓溶解剤の使用による組織の再潅流障害、急性糸球体腎炎、血管炎、反応性関節炎、急性炎症性のコンポーネントを有する皮膚病、卒中、熱的障害、血液透析、血液アフェレーシス、潰瘍性大腸炎、壊死性腸炎及び顆粒球輸血に付随する症候群)、ならびに哺乳動物における特異的免疫系の応答に起因する症状(例えば、乾癬、臓器/組織移植拒絶、移植片対宿主反応、および、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、インシュリン依存性糖尿病、ブトウ膜炎、クローン病や潰瘍性大腸炎をはじめとする炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデスを含む自己免疫疾患)などを含む特定の炎症性症状の治療に使用できる。また、本発明の化合物は、喘息の治療への使用、または癌治療におけるサイトカイン療法での毒性を最小限にする補助的薬剤として使用することもできる。一般に、現在のところステロイド療法で治療可能な上記の疾病の治療にこれらの化合物を用いることができる。
そこで、本発明のもう1つの態様は、式Iで表される1種以上の化合物を治療又は予防のための量で投与することによる、上記記載の症状の治療又は予防方法を提供することである。
【0062】
本発明が提供する方法によると、式Iの新規化合物は、単独で又は他の免疫抑制剤もしくは抗炎症剤とともに、予防あるいは治療のいずれかの目的のために投与することができる。予防用として提供される場合は、いずれの炎症性応答又は徴候の場合であってもそれに先立って(例えば、臓器もしくは組織移植の事前又は同時又は直後でよいが、臓器拒絶のいずれの徴候が出る前)にこの免疫抑制化合物が供される。式Iの化合物の予防的な投与は、後から起きる炎症性応答(例えば、移植した臓器又は組織の拒絶等)を予防又は軽減する働きをする。式Iの化合物を治療で投与すると、実際の炎症(例えば、移植した臓器又は組織の拒絶等)を軽減する働きをする。このように、本発明によると式Iの化合物は、炎症が出る前に(予想される炎症を抑制するために)、又は炎症の開始後のいずれかに投与することができる。
本発明によると、式Iの新規化合物は、経口、非経口又は局所的経路により単回又は複数回に分けて投与することができる。経口投与の場合、式Iの化合物の好適な投与量は1日あたり約0.1mg〜10gとなろう。非経口処方では、適切な投与単位中に該化合物が0.1〜250mg含まれているとよく、局所的投与では、0.01〜1%の有効成分を含む処方が好ましい。しかしながら、投与量は患者によって異なり、かつ、いずれの患者個人の投与量も、医師が、適切な投与量を決める基準として患者の背格好や症状ならびに薬物に対する患者の反応を用いて出した判断によると理解すべきである。
本発明の化合物を経口投与する場合、この化合物は、適合する製薬上の担体物質と一緒に包含された医薬製剤の形状を有する医薬品として投与することができる。このような担体物質としては、経口投与に適した有機又は無機の不活性担体物質が挙げられる。この担体物質の例としては、水、ゼラチン、タルク、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、アラビアゴム、植物油、ポリアルキレングリコール類、ワセリン等が挙げられる。
【0063】
この医薬製剤は従来の方法で調製することができ、最終的な投与形態としては、例えば錠剤、糖衣錠、カプセル剤等の固形の投薬形態、又は、例えば溶液、懸濁液、乳濁液等の液体の投薬形態とすることができる。医薬製剤は、滅菌等といった従来からの製薬上の操作を施すことができる。さらに、この医薬製剤は、防腐剤、安定剤、乳化剤、風味改良剤、湿潤剤、緩衝剤、浸透圧を変えるための塩類等、従来からの補助物質を含有してもよい。使用可能な固体の担体物質としては、例えば、デンプン、ラクトース、マンニトール、メチルセルロース、微結晶性セルロース、タルク、シリカ、第二リン酸カルシウム及び高分子ポリマー(ポリエチレングリコール等)が挙げられる。
非経口用の場合、式Iの化合物は、水性もしくは非水性の溶液、製薬的に許容される油中の懸濁液又はエマルジョン、あるいは液混合物として投与でき、細菌発育阻止剤、酸化防止剤、防腐剤、緩衝剤もしくは血液と浸透圧が等しい溶液にするための他の溶質、増粘剤、懸濁化剤又は製薬学的に許容される他の添加剤を含有することができる。この種の添加剤としては、例えば、酒石酸塩、クエン酸塩及び酢酸塩緩衝剤、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、複合体形成剤(EDTA等)、酸化防止剤(重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸等)、粘度調整用の高分子ポリマー(液状ポリエチレンオキシド等)及びソルビトール無水物のポリエチレン誘導体が挙げられる。必要に応じて防腐剤を添加してもよく、例えば、安息香酸、メチル又はプロピルパラベン、塩化ベンザルコニウム及び他の第四アンモニウム化合物が挙げられる。
また、本発明の化合物は、溶液にして鼻から投与することもでき、水性賦形剤中に本発明の化合物の他に好適な緩衝剤、張度調整剤、微生物抑制剤、酸化防止剤及び増粘剤を含有することができる。粘度を上げるのに使用される物質の例としては、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリソルベート又はグリセリンが挙げられる。添加される微生物抑制剤としては、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール又はフェニルエチルアルコールが挙げられる。
さらに、本発明が提供する化合物は、局所的な投与又は座薬による投与も可能である。
【0064】
処方
式Iの化合物は、非常に多くのやり方で治療的投与のために処方することができる。いくつかの処方例を以下に記載する。
実施例A
カプセル又は錠剤
【0065】
【表1】

【0066】
潤滑剤を除いて、あらかじめ混合しておいた上記記載の賦形剤材料と一緒に式Iの化合物を混和させて粉体混合物とする。この後、潤滑剤を混合し、できた混合物を圧縮して錠剤とするか、あるいは、ゼラチンのハードカプセルに充填する。
実施例B
非経口液
【0067】
【表2】

【0068】
賦形剤材料を混合した後、溶解に必要な分の式Iで表される化合物の1種に添加する。溶液が透明になるまで混合を続ける。その後、溶液を適切な水薬瓶又はアンプルに濾過して挿入し、オートクレービングによって滅菌する。
実施例C
懸濁液


【0069】
【表3】

【0070】
賦形剤材料を水と混合した後、式Iで表される化合物の1種を添加して懸濁液が均一となるまで混合を続ける。さらに、懸濁液を適切な水薬瓶又はアンプルに移す。
実施例D
局所用処方
【0071】
【表4】

【0072】
「Tefose 63」、「Labrafil M 1944CS」、パラフィン油及び水それぞれの適切な量を混合し、すべての成分が溶融するまで75℃で加熱する。その後、混合物の攪拌を続けながら50℃まで冷却する。メチルパラベン及びプロピルパラベンを混合しながら添加し、得られた混合物を周囲温度まで冷却する。式Iの化合物を混合物に加え、十分に混和させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iで表される化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【化1】

(式中、
1は、炭素原子1〜3個を有する直鎖又は分岐のアルキルであり、
(i)オキソ、及び
(ii)モルホリノ
からなる群から独立して選択される基によって任意にモノ又はジ置換されていてもよく、
2及びR3は、
(A)水素、及び
(B)炭素原子1〜4個を有する直鎖又は分岐のアルキルであって、
(i)CONH2及び
(ii)OHからなる群から独立して選択される基によってモノ又はジ置換されているアルキル、
からなる群からそれぞれ独立して選択されるか、あるいは、
2及びR3は、間にある窒素原子と一緒になってピペラジン環を形成し、
4は、
(A)シアノ、
(B)NH2でモノ又はジ置換されているピリミジン、又は
(C)トリフルオロメトキシ
を表す。)
【請求項2】
前記式中、
1がメチル基であり、
2及びR3が、
(A)水素、及び
(B)炭素原子1〜4個を有する直鎖又は分岐のアルキルであって、
(i)CONH2及び
(ii)OHからなる群から独立して選択される基によってモノ又はジ置換されているアルキル、
からなる群からそれぞれ独立して選択され、
4が、
(A)シアノ又は
(B)トリフルオロメトキシ
を表す、請求項1に記載の式Iで表される化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項3】
前記式中、
1がメチル基であり、
2及びR3が、
(A)水素、及び
(B)炭素原子1〜4個を有する直鎖又は分岐のアルキルであって、
(i)CONH2及び
(ii)OHからなる群から独立して選択される基によってモノ又はジ置換されているアルキル、
からなる群からそれぞれ独立して選択され、
4がトリフルオロメトキシを表す、請求項1又は2に記載の式Iで表される化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項4】
式I*で示される絶対立体配置を有する、請求項1、2又は3に記載の式Iで表される化合物。
【化2】

【請求項5】
以下からなる群、
(a) (S)-2-[(R)-5-(4-シアノ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-プロピオンアミド、
(b) (S)-2-[(R)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-5-(4-トリフルオロメトキシ-ベンジル)-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-N-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピル)-プロピオンアミド、
(c) (S)-2-[(R)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-5-(4-トリフルオロメトキシ-ベンジル)-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-プロピオンアミド及び
(d) (S)-N-カルバモイルメチル-2-[(R)-5-(4-シアノ-ベンジル)-7-(3,5-ジクロロ-フェニル)-5-メチル-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-5H-イミダゾ[1,2-a]イミダゾール-3-スルホニルアミノ]-プロピオンアミド、から選択される請求項1、2、3又は4に記載の化合物又はその製薬学的に許容される塩。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5に記載の化合物と、製薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤の少なくとも1種とを含む医薬組成物。
【請求項7】
医薬品として使用するための請求項1、2、3、4又は5に記載の化合物。
【請求項8】
患者の炎症又は炎症性の症状の治療用医薬組成物を調製するための、請求項1、2、3、4又は5に記載の化合物の使用。
【請求項9】
前記治療の対象となる症状が、成人呼吸窮迫症候群、ショック、酸素毒性、敗血症に付随する多臓器障害症候群、精神的外傷に付随する多臓器障害症候群、心肺バイパス又は心筋梗塞又は血栓溶解剤の使用による組織の再潅流障害、急性糸球体腎炎、血管炎、反応性関節炎、急性炎症性コンポーネントを有する皮膚病、卒中、熱的障害、血液透析、血液アフェレーシス、潰瘍性大腸炎、壊死性腸炎又は顆粒球輸血に付随する症候群である、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記治療の対象となる症状が、乾癬、臓器/組織移植拒絶、移植片対宿主反応、あるいはレイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、皮膚炎、多発性硬化症、慢性関節リウマチ、インシュリン依存性糖尿病、ブトウ膜炎、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎又は全身性エリテマトーデスを含む自己免疫疾患である、請求項8に記載の使用。
【請求項11】
前記治療の対象となる症状が喘息である、請求項8に記載の使用。
【請求項12】
前記治療の対象となる症状が、サイトカイン療法による毒性作用である、請求項8に記載の使用。
【請求項13】
請求項1に記載の式Iで表される化合物の製造方法であって、
式IXの下記化合物を、
【化3】

(式中、R4は請求項1に定義したとおりである。)
式Xの下記化合物、
【化4】

(式中、R1、R2及びR3は請求項1に定義したとおりである。)
と反応させて、式Iの化合物を得ることを含む製造方法。
【請求項14】
前記式IXの化合物が、式IIで表される下記化合物を、
【化5】

(式中、R4は請求項13に定義したとおりである。)
グリニャール試薬と反応させた後、SO2及びN-クロロコハク酸イミドで処理することを含む方法によって得られる、請求項13に記載の方法。

【公表番号】特表2006−508947(P2006−508947A)
【公表日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−550109(P2004−550109)
【出願日】平成15年10月27日(2003.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2003/033865
【国際公開番号】WO2004/041827
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(500091335)ベーリンガー インゲルハイム ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (55)
【Fターム(参考)】