説明

d,l−メントールの製造方法

【課題】再処理可能な触媒を用いたd,l−メントールの製造方法。
【解決手段】二重結合を少なくとも1つ含むp−メンタンの炭素骨格を有していて酸素で三置換されている化合物の水素使用触媒水添そして/または水素存在下におけるメントール立体異性体の転位を、コバルトの(水)酸化物、マンガンの(水)酸化物、アルカリ土類金属の(水)酸化物および任意の元素周期律表のVおよび/またはVI亜族元素の(水)酸化物の粉末をプレス加工して還元を受けさせた成形体から支持体なしに作られる固定床触媒を用いて25から350バールの圧力下150から230℃の温度で行うことによりd,l−メントールの連続製造方法を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C=C二重結合を少なくとも1つ含むメンタンの炭素骨格を有していて酸素で三置換されている化合物からそして/メントールの立体異性体からd,l−メントールを水素および触媒の存在下で製造する方法に関する。
【0002】
l−メントールは、冷却して爽快にする作用を有することから、天然に存在する環状テルペンアルコール類の中で特別な地位にある。l−メントールは、ペパーミントオイルの主要成分であり、香料、風味および薬学産業で用いられている。
【0003】
C=C二重結合を少なくとも1つ含むメンタンの炭素骨格を有していて酸素で三置換されている化合物(例えばチモールなど)の触媒水添でメントールを製造すると、d,l−ラセミ化合物がもたらされるが、これは光学対掌体に分離可能である。メントールが示す官能的特性の点で8種の光学活性メントールに分けらる。l−メントールは特徴的なペパーミント香を有しかつ既に述べた爽快にする作用を有し、従ってこれがメントール立体異性体の中で最も価値ある異性体である。従って、生じるd,l−メントール(このラセミ化合物の分離でl−メントールを入手することができる)の量をできるだけ多くするような様式で水添を実施するか、或は例えばチモールの水添などで起こる如きメントール立体異性体の転位をできるだけ有効に進行させる試みが成されている。
【背景技術】
【0004】
特許文献1および特許文献2には、C=C二重結合を少なくとも1つ含むメンタンの炭素骨格を有していて酸素で三置換されている芳香族または部分水添環状化合物の水添を水素を用いて行いそして/またはメントール立体異性体の転位を水素の存在下で行うことができることが開示されており、ここでは、希土類金属とマンガンでドープ処理した(doped)支持体に支持させたパラジウム、ルテニウム、ロジウムまたは上記元素の混合物を活性成分として含有しそしてアルカリ金属水酸化物および/またはアルカリ金属硫酸塩を助触媒として含有する固定床触媒またはコバルト/マンガン触媒が用いられている。
【0005】
特許文献3には、亜クロム酸銅触媒の存在下で水素を用いてメントール立体異性体の異性化を行ってd,l−メントールを生じさせることが記述されている。
【0006】
上記従来技術の方法はいずれも、副生成物の量があまりにも多すぎる(これは、特に連続方法の場合、蓄積による障害として重大事項になる)か、或はその使用触媒が初期活性をあまりにも早く失い、物理的安定性が制限されており、充填量が限定された度合のみである可能性があり、そして/または使用済み触媒の再処理がより困難である。
【0007】
従って、d−メントールからのd,l−メントール製造で充填容量(loading capacity)が高くかつ寿命が長くそして複雑な支持体系を含まない、従って再処理可能な触媒を提供することが望まれている。
【0008】
金属(水)酸化物の粉末をプレス加工することで作られる成形体の還元を行うことで入手可能であって支持体を含まない固定床触媒を用いると、驚くべきことに、上記問題を解決することができる。本発明の文脈で言葉「金属(水)酸化物」は金属の酸化物および/または金属の水酸化物を意味する。
【0009】
従って、本発明は、C=C二重結合を少なくとも1つ含むメンタンの炭素骨格を有していて酸素で三置換されている化合物の触媒水添を水素を用いて行いそして/またはメントール立体異性体の触媒転位を水素の存在下で行うことによりd,l−メントールを製造する連続方法に関し、この方法は、コバルトの(水)酸化物、マンガンの(水)酸化物およびアルカリ土類金属の(水)酸化物の粉末を元素周期律表のVおよび/またはVI亜族金属の(水)酸化物1種以上の有り無しでプレス加工することで作られる成形体の還元を行うことで入手可能であって支持体を含まない触媒として働く成形体を用いることを特徴とする。
【0010】
本発明の方法で用いる出発化合物は公知である(非特許文献1;特許文献4)。挙げることができる例はチモール、メントン、メテノン、d−およびl−メントール、d−およびl−ネオメントール、d−およびl−イソメントール、d,l−ネオメントール、d,l−イソメントールである。上記化合物は単独か或はいずれかの所望混合物で使用可能である。
【0011】
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第A 2 314 813号
【特許文献2】ヨーロッパ特許出願公開第563 611号
【特許文献3】米国特許第2 843 636号
【特許文献4】米国特許第2 843 636号
【非特許文献1】「ウルマンの産業化学百科事典」(Ullmanns Encyclopaedie der technischen Chemie)、第3版、Munich、1966、17巻、24、25頁
【発明の開示】
【0012】
本発明に従って用いるべき触媒では、(各場合とも金属として計算して)Co含有量を40から65重量%にし、Mn含有量を10から20重量%にし、アルカリ土類金属含有量を0.2から5重量%にし、そして元素周期律表(メンデレエフ)のVおよび/またはVI亜族の金属を存在させる場合、これの含有量を全体で全(水)酸化物粉末の7重量%以下、好適には0.5から7重量%、特に1.0から3.0重量%にする。100重量%に対する残りは酸化物形態で存在する化合物の酸素である。この種類の触媒は元素周期律表のVおよび/またはVI亜族の(水)酸化物を含有させなくても本発明の水添段階で使用可能であるが、好適には、元素周期律表のVおよび/またはVI亜族金属の(水)酸化物を少なくとも1種追加的に含有させる。この元素周期律表のVおよび/またはVI亜族元素の(水)酸化物を複数用いる場合、この(水)酸化物の各々を、上記0.5から7重量%全範囲の20%以上から80%以下の量で存在させる。
【0013】
適切なアルカリ土類金属は特にマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウム、好適にはストロンチウムおよびバリウムである。適切なV亜族元素は、好適にはバナジウム、ニオブおよびタンタルであり、そしてVI亜族の元素は、好適にはクロム、モリブデンおよびタングステンである。助触媒として働くこのV亜族およびVI亜族の元素は、個別にか或は上記元素複数の混合物として使用可能である。
【0014】
この支持体を含まない成形体は、例えば製錠機またはペレット製造機などを用いて金属(水)酸化物粉末混合物を高圧でプレス加工する(任意に高温に予め加熱した後)ことによる通常方法で製造可能であり、ここでは、この金属(水)酸化物粒子の接着を改良する目的でグラファイトおよび/または接着剤をこのプレス加工すべき全成分重量を基準にして0.5から3重量%の量で用いることができる。成形体の例は錠剤、ビードまたは顆粒であり、3から7mmの直径を持たせる。更に、錠剤状成形体に軸方向のせん孔を与えることで外側表面積を高めることも可能である。肉眼で見ると、この種類の成形体は滑らかな表面を有する。
【0015】
このプレス加工した金属(水)酸化物成形体は、この成形体の平らな面上で、300から800N/cm、好適には400から600N/cmの高圧縮強度を示しそしてこの成形体の湾曲した表面上で50から200N、好適には80から140Nの高圧縮強度を示す。この金属(水)酸化物粉末のプレス加工品が示す内部表面積は30から200m/g、好適には80から160m/gである。この支持体を含まない成形体の圧縮強度はDIN 50 106に従って測定可能であり、そして内部表面積はF.M.NelsenおよびF.T.Eggertsen、Analyt.Chem.30(1958)、1387−1392またはS.J.GreggおよびS.W.Sing、Adsorption、Surface Area and Porosity、London 1982、2章および6章に従って測定可能である。
【0016】
この(水)酸化物粉末をプレス加工することで作られる成形体を用いる前に、これに注意深く還元を受けさせる必要がある。好適には、不活性ガス/水素混合物(これの水素含有量を最初10から15体積%にする)から成る還元ガスを用いてこの還元を達成する。不活性ガスとして好適には窒素を用いる。この還元を例えば180から220℃の還元温度で約24時間進行させるが、ここでは、この還元の最終段階でそのガス混合物内に存在させる窒素の比率を次第に下げて行ってこのガス混合物が水素のみから成るようにする。水素がもはや消費されなくなり、その結果として反応水がもはや生成しなくなった時点で還元が完了する。
【0017】
反応槽は、鋼または鋼合金で出来ている個別の高圧管であってもよく、この管を本成形体で完全もしくは部分的に満たすが、管の断面積が比較的大きい場合、この支持体を含まない成形体をトレー(例えばワイヤー製バスケットなど)の上で用いるのが有効であり得るが、しかしながら、集合シェル内で高圧管束を用いることも可能であり、ここでも再び、これらの個々の管をこの支持体を含まない成形体で完全もしくは部分的に満たす。
【0018】
本発明の方法で、固定床内に配置させて本触媒を用いる場合、これは気相中または散水相で実施可能であり、この方法の過程中、出発材料1モル当たり少なくとも10倍モルの量で水素を反応槽に通す。150から230℃、好適には160から210℃の温度および25から350バール、好適には100から300バールの圧力を用いる。
【0019】
本発明の方法は溶媒の有り無しで実施可能である。適切な溶媒は、反応条件下で不活性な溶媒であり、例えばメタノール、エタノールおよびイソプロパノールなどである。
【0020】
1時間当たりの触媒充填量は、触媒1リットル当たり400から1000gの反応混合物の範囲であってもよい。
【0021】
本発明に従う方法に関連して、20,000から25,000時間に及ぶ非常に長い触媒運転寿命を達成する。このような運転寿命は以前の出版物(例えばドイツ特許出願公開第A 2 314 813号など)の中に記述されている寿命より数倍長い。
【0022】
本発明の方法で進行させる水添、ラセミ化および異性化では、驚くべきことに、使用不能な副生成物、例えば望まれない炭化水素などの生成はほとんどもたらされない。
【0023】
この得られる反応混合物は、単純な蒸留で処理して所望生成物を得ることができるに充分な量でd,l−メントンを含有する。本発明の方法を用いると、チモールの水添で優れた結果が得られるばかりでなく、上述した他の出発化合物の変換でも優れた収率が得られる。
【0024】
この望まれるd,l−メントールを蒸留で分離した後、この蒸留の初溜を釜残生成物と一緒にし、新鮮な出発生成物を添加、例えば上記蒸留残渣を基準にして10から80重量%の量でチモールを添加して、反応に戻すことができる。この蒸留で取り出したd,l−メントールに相当する量で出発材料を再び入れる。本発明の方法で消費されなかった水素を再循環させることができる。
【0025】
この蒸留の初溜および釜残生成物を取り出した後に生じるd,l−メントールは≧99.9重量%の純度で得られ、従ってさらなる精製を行うことなく全てのさらなる加工で使用可能である。
【0026】
蒸留後に得られる、ガラスのように透明な無色生成物は、41℃の融点を示し、通常型の晶析装置内で晶析可能である。
【0027】
以下に示す実施例において、記号m(S.T.P.)は標準状態(1バール、25℃)に換算した後の立方メートルを表す。
【実施例】
【0028】
実施例1
予め窒素を用いてフラッシュ洗浄することで酸素を除去しておいた内径が45mmで長さが1mの耐酸性ステンレス鋼製直立断熱高圧管に、(水)酸化コバルト、(水)酸化マンガン、(水)酸化バリウムおよび(水)酸化バナジウムの粉末を錠剤状にすることで製造した成形体を1.4リットル充填した。この錠剤のコバルト含有量は53重量%であり、マンガンの含有量は14重量%であり、バリウムの含有量は1.1重量%でありそしてバナジウムの含有量は1.2重量%であった。この錠剤は、高さが5mmで直径が5mmの円柱形であり、円柱形の平らな表面上で420N/cmの圧縮強度およびこの成形体の湾曲表面上で125Nの圧縮強度を示し、そして168m/gの内部表面積を有していた。
【0029】
この錠剤を最初に窒素流下で6時間乾燥させた(温度:最大200℃、流量:1時間当たり5m(S.T.P.)のN)。活性化を200バールの窒素圧下180から220℃の温度で実施したが、この場合、窒素に水素を徐々に混合して、この混合する窒素の比率を最初10から15体積%にした。このガス混合物内の窒素の比率を24時間かけて徐々に下げ、最終的に純粋な水素をその反応槽の中に流した。下流に位置させた分離装置内に反応水がもはや集められなくなって直ぐ活性化が終了した。
【0030】
触媒活性化後、反応槽系内の水素圧を高くして300バールにした。次に、1時間当たり15m(S.T.P.)の水素と一緒に700gのチモール(純度:99.9重量%)を300バールの圧力下ポンプ輸送して、上記高圧管の中を上から下に向かって流したが、ここでは、このチモールを高圧管に入れる前に、これを、上流に位置させた電気加熱熱交換器内で170℃の温度に加熱しておいた。
【0031】
この反応管を出る反応生成物を2番目の熱交換器(水冷媒)内で300バールの水素圧下で冷却して<60℃の温度にした後、気体分離装置内で過剰量の水素から分離し、そしてこの過剰量の水素を反応系に循環させた。
【0032】
チモールの処理量は、触媒1リットルx時当たり0.5kgから成る触媒充填量に相当していた。この触媒は7400時間の運転時間後でも高い活性を示した。
【0033】
この水添生成物内にチモールは全く確認されなかった。
【0034】
低沸点物および高沸点物を蒸留で除去した後、99.9重量%の純度でd,l−メントール生成物を得た。
【0035】
実施例2
実施例1と同様な高圧管に、不活性ガス下、(水)酸化コバルト、(水)酸化マンガン、(水)酸化バリウム、(水)酸化バナジウムおよび(水)酸化タングステンの粉末を錠剤状にすることで製造した成形体を1.4リットル充填した。この錠剤のコバルト含有量は47重量%であり、マンガンの含有量は15重量%であり、バリウムの含有量は1.0重量%であり、バナジウムの含有量は0.8重量%でありそしてタングステンの含有量は0.6重量%であった。この錠剤は、高さが5mmで直径が5mmの円柱形であり、円柱形の平らな表面上で545N/cmの圧縮強度およびこの円柱形の湾曲表面上で110Nの圧縮強度を示し、そして117m/gの内部表面積を有していた。
【0036】
このプレス加工した金属(水)酸化物粉末混合物の活性化を実施例1と同様に行った後、水素圧を高くして300バールにした。
【0037】
次に、1時間当たり10m(S.T.P.)の水素と一緒に560gのチモール(純度:99.9重量%)を300バールの圧力下連続的にポンプ輸送して、上記高圧管の中を上から下に向かって流したが、ここでは、このチモールを高圧管に入れる前に、これを175℃の温度に加熱しておいた。
【0038】
チモールの処理量は、触媒1リットルx時当たり0.4kgから成る触媒充填量に相当していた。この触媒は6000時間の運転時間後でも高い活性を示した。
【0039】
この水添生成物内にチモールは全く確認されなかった。
【0040】
実施例3
実施例1と同様な高圧管に、不活性ガス下、(水)酸化コバルト、(水)酸化マンガン、(水)酸化バリウムおよび(水)酸化モリブデンの粉末を錠剤状にすることで製造した成形体を1.4リットル充填した。この錠剤のコバルト含有量は60重量%であり、マンガンの含有量は18重量%であり、バリウムの含有量は1.5重量%でありそしてモリブデンの含有量は1.0重量%であった。この錠剤は、高さが5mmで直径が5mmの円柱形であり、円柱形の平らな表面上で736N/cmの圧縮強度およびこの円柱形の湾曲表面上で105Nの圧縮強度を示し、そして148m/gの内部表面積を有していた。
【0041】
このプレス加工した金属(水)酸化物粉末混合物の活性化を実施例1と同様に行った後、水素圧を200バールのままにした。
【0042】
次に、1時間当たり15m(S.T.P.)の水素と一緒に、d,l−ネオメントールを75重量%、d,l−イソメントールを22重量%およびd,l−ネオイソメントールを3重量%含むメントール異性体混合物840gを、200バールの圧力下連続的にポンプ輸送して、上記高圧管の中を上から下に向かって流したが、ここでは、この異性体混合物と水素を高圧管に入れる前に、これらを165℃の温度に加熱しておいた。
【0043】
異性体混合物の処理量は、触媒1リットルx時当たり0.6kgから成る触媒充填量に相当していた。この触媒は7600時間の運転時間後でも高い活性を示した。
【0044】
実施例4
実施例1と同様な高圧管に、不活性ガス下、(水)酸化コバルト、(水)酸化マンガン、(水)酸化ストロンチウムおよび(水)酸化クロムの粉末を錠剤状にすることで製造した成形体を1.4リットル充填した。この錠剤のコバルト含有量は53重量%であり、マンガンの含有量は16重量%であり、ストロンチウムの含有量は0.9重量%でありそしてクロムの含有量は1.4重量%であった。この錠剤は、高さが5mmで直径が5mmの円柱形であり、円柱形の平らな表面上で594N/cmの圧縮強度およびこの円柱形の湾曲表面上で125Nの圧縮強度を示し、そして154m/gの内部表面積を有していた。
【0045】
この触媒の活性化を実施例1と同様に行った後、水素圧を高くして250バールにした。
【0046】
1時間当たり15m(S.T.P.)の水素と一緒に、チモールを60重量%、ネオメントールを25重量%およびイソメントールを15重量%含むチモール/メントール異性体混合物840gを、250バールの圧力下連続的にポンプ輸送して、上記高圧管の中を上から下に向かって流したが、ここでは、この反応混合物を高圧管に入れる前に、これを180℃の温度に加熱しておいた。
【0047】
この反応管を出る生成物を冷却して<60℃の温度にした後、気体分離装置内で過剰量の水素から分離し、そしてこの過剰量の水素を反応系に循環させた。
【0048】
この反応混合物の処理量は、触媒1リットルx時当たり0.6kgから成る触媒充填量に相当していた。この触媒は1900時間の運転時間後でも高い活性を示した。
【0049】
この水添生成物内にチモールは全く確認されなかった。
【0050】
実施例5
実施例1と同様な高圧管に、不活性ガス下、(水)酸化コバルト、(水)酸化マンガン、(水)酸化バリウムおよび(水)酸化モリブデンの粉末を錠剤状にすることで製造した成形体を1.4リットル充填した。この錠剤のコバルト含有量は53重量%であり、マンガンの含有量は14重量%であり、バリウムの含有量は1.5重量%でありそしてモリブデンの含有量は1.1重量%であった。この錠剤は、高さが5mmで直径が5mmの円柱形であり、円柱形の平らな表面上で760N/cmの圧縮強度およびこの円柱形の湾曲表面上で125Nの圧縮強度を示し、そして149m/gの内部表面積を有していた。
【0051】
この触媒の活性化を実施例1と同様に行った後、水素圧を高くして300バールにした。
【0052】
次に、チモール/メントール異性体混合物を1時間当たり700gの量で300バールの圧力下連続的にポンプ輸送して、上記高圧管の中を上から下に向かって流したが、ここでは、この出発生成物を高圧管に入れる前に、これを175℃の温度に加熱しておいた。
【0053】
上記チモール/メントール異性体混合物を60重量%のチモールと40重量%のメントール異性体混合物(実施例1に従って製造したd,l−メントールの精留で生じる如き)で構成させ、この蒸留の低沸点物および高沸点物と一緒にした後、実施例5で生じる反応生成物を蒸留で処理することで得た。この反応混合物の処理量は、触媒1リットルx時当たり0.5kgから成る触媒充填量に相当していた。この触媒は3000時間の運転時間後でも高い活性を示した。
【0054】
この水添生成物内にチモールは全く確認されなかった。
【0055】
低沸点物および高沸点物を蒸留で除去した後に生じるd,l−メントールを99.9重量%の純度で得た。
【0056】
この反応過程に循環させる最初の留出物および最後の留出物内に、障害となる少量成分は全く蓄積せず、その結果として、最初に出て来る溜分も最後に出て来る溜分も廃棄する必要はなかった。
【0057】
本発明の特徴および態様は以下のとうりである。
【0058】
1. C=C二重結合を少なくとも1つ含むメンタンの炭素骨格を有していて酸素で三置換されている化合物の触媒水添を水素を用いて行いそして/またはメントール立体異性体の触媒転位を水素の存在下で行うことによりd,l−メントールを製造する連続方法であって、コバルトの(水)酸化物、マンガンの(水)酸化物およびアルカリ土類金属の(水)酸化物の粉末を元素周期律表のVおよび/またはVI亜族金属の(水)酸化物1種以上の有り無しでプレス加工することで作られる成形体の還元を行うことで入手可能であって支持体を含まない触媒として働く成形体を用いることを特徴とする方法。
【0059】
2. 該還元で用いるべき金属(水)酸化物粉末をプレス加工することで作られる成形体に、コバルトを40から65重量%、マンガンを10から20重量%、アルカリ土類金属を0.2から5重量%、そして元素周期律表のVおよび/またはVI亜族金属を0から7重量%(各々金属として計算)含め、ここで、このパーセントが金属(水)酸化物粉末混合物の全量を基準にしたパーセントであり、そして100重量%に対する残りが酸素である第1項記載の方法。
【0060】
3. 元素周期律表(メンデレエフ)のVおよび/またはVI族金属の(水)酸化物1種以上を、その全量を金属として計算して、プレス加工(水)酸化物粉末内に全酸化物粉末の0.5から7重量%存在させることを特徴とする第1項記載の方法。
【0061】
4. 該金属(水)酸化物粉末をプレス加工することで作られる成形体がこの成形体の平らな面上で300から800N/cmの圧縮強度を示しそしてこの成形体の湾曲した表面上で50から200Nの圧縮強度を示す(DIN 50 106に従って測定)第1項記載の方法。
【0062】
5. 該金属(水)酸化物粉末をプレス加工することで作られる成形体に30から200m/gの内部表面積を持たせる第1項記載の方法。
【0063】
6. 該水素圧を25から350バールにする第1項記載の方法。
【0064】
7. 該転位温度を150から230℃にする第1項記載の方法。
【0065】
8. この過程中、出発材料1モル当たり少なくとも10倍モル量の水素を反応槽の中に通すことを特徴とする第1項記載の方法。
【0066】
9. チモールの水添またはメントール立体異性体の転位で生じる反応生成物からd,l−メントールを蒸留で取り出し、そしてその残りの反応生成物を、該残りの反応生成物を基準にして10から80重量%の量でチモールを添加して、該反応に戻すことを特徴とする第1項記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
C=C二重結合を少なくとも1つ含むメンタンの炭素骨格を有していて酸素で三置換されている化合物の触媒水添を水素を用いて行いそして/またはメントール立体異性体の触媒転位を水素の存在下で行うことによりd,l−メントールを製造する連続方法であって、コバルトの(水)酸化物、マンガンの(水)酸化物およびアルカリ土類金属の(水)酸化物の粉末を元素周期律表のVおよび/またはVI亜族金属の(水)酸化物1種以上の有り無しでプレス加工することで作られる成形体の還元を行うことで入手可能であって支持体を含まない触媒として働く成形体を用いることを特徴とする方法。

【公開番号】特開2009−108073(P2009−108073A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−284880(P2008−284880)
【出願日】平成20年11月5日(2008.11.5)
【分割の表示】特願平8−137723の分割
【原出願日】平成8年5月9日(1996.5.9)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】