説明

p70S6キナーゼの阻害剤としての置換ベンゾトリアジン類およびキノキサリン類

本発明は、式(1)の化合物またはその塩もしくは互変異性体を提供する:


式中、Xは、NまたはN(O)であり;Xは、NまたはCHであり;Qは、C1−3アルキレン基であり;Rは、水素、C1−4ヒドロカルビル、およびヒドロキシ−C2−4ヒドロカルビルから選ばれ;R、R、およびRは、同一または異なって、それぞれ、水素、フッ素、塩素、およびメチルから選ばれ;Arは、O、N、およびSから選ばれる0、1、または2個のヘテロ原子環員を含む任意に置換されていてよい単環式5もしくは6員アリールまたはヘテロアリール環、あるいはナフチル環であり、Arは、O、N、およびSから選ばれる1、2、または3個のヘテロ原子環員を含む、任意に置換されていてよい単環式5または6員ヘテロアリール環である。式(1)の化合物は、p70S6キナーゼの阻害剤であり、増殖性疾患の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、p70S6キナーゼの活性を阻害または修飾する化合物、当該化合物を含む医薬組成物、および当該化合物の治療上の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素であるp70S6キナーゼ(p70S6K)は、セリン−トレオニンキナーゼであり、AGCファミリーのメンバーである。p70S6キナーゼは、ホスファチジルイノシトール3キナーゼ(PI3K)/AKT/哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)シグナル伝達経路の下流エフェクターであり、p70S6は、IGF−I、EGF、TGF−[アルファ]、およびHGFなどの増殖因子に応答してリン酸化および活性化する。
【0003】
p70S6Kが活性化されると、今度は、翻訳を促進するS6リボソームタンパク質がリン酸化され、細胞におけるタンパク質合成の増加をもたらす。高度のタンパク質合成が細胞増殖には必要である。p70S6Kが細胞の有糸分裂周期に不可欠な役割を有していることも示されている(Laneら、「Nature」、1993、363(6425):170〜2)。
【0004】
キナーゼp70S6Kは、ヒト腫瘍細胞において構成的に活性化されることが示されており、腫瘍細胞の増殖をもたらす。p70S6K/mTOR経路の阻害が、腫瘍細胞の増殖の減少および腫瘍細胞アポトーシスの増加をもたらすことが示されている(Peneら(2002)「Oncogene」21、6587、およびLeら(2003)「Oncogene」22、484)。したがって、p70S6K活性の阻害は、癌の治療にとって魅力的な手法を提供することになる。
【0005】
mTOR/p70S6K経路は、腎細胞癌において活性化されることが示されており、CCI−779により阻害される(Robb,V.A.;Karbowniczek,M.;Klein−Szanto,A.J.;Henske,E.P.「J Urol」2007、177、346〜52)。さらに、リン酸化p70S6Kを高度に発現する腫瘍を有する多形性神経膠芽腫の患者は、CCI−779を用いた治療から恩恵をうけることが分かっている(Galanis,E.;Buckner,J.C.;Maurer,M.J.;Kreisberg,J.I.;Ballman,K.;Boni,J.;Peralba,J.M.;Jenkins,R.B.;Dakhil,S.R.;Morton,R.F.;Jaeckle,K.A.;Scheithauer,B.W.;Dancey,J.;Hidalgo,M.;Walsh,D.J.「J Clin Oncol」2005、23、5294〜304)。
【0006】
Peralbaらにより、疾患進行とp70S6K活性の阻害との間に著しい線形の関係が報告されている[(2003)「Clinical Cancer Research」9、2887]。したがって、p70S6キナーゼ阻害能を有する化合物を開発することが有益である。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、p70S6キナーゼの阻害剤として新規なクラスのアリールアルキルアミノ置換ベンゾトリアジンおよびキノキサリンを提供する。
【0008】
本発明の一実施態様(実施態様1.1)では、式(1)の化合物
【化1】


またはその塩、溶媒和物、もしくは互変異性体が提供される。
式中:
は、NまたはN(O)であり;
は、NまたはCHであり;
Qは、C1−3アルキレン基であり;
は、水素、C1−4アルキル、およびヒドロキシ−C2−4アルキルから選ばれ;
、R、およびRは、同一または異なって、それぞれ、水素、フッ素、塩素、およびメチルから選ばれ;
Arは、O、N、およびSから選ばれる0、1、または2個のヘテロ原子環員を含む単環式5もしくは6員アリールまたはヘテロアリール環、あるいはナフチル環であり、当該アリールまたはヘテロアリールまたはナフチル環は、フッ素;塩素;臭素;C1−4ヒドロカルビル;C1−4ヒドロカルビルオキシ;トリフルオロメチル;ジフルオロメチル;ヒドロキシ;シアノ;トリフルオロメトキシ;ジフルオロメトキシ;アミノ;モノ−C1−4ヒドロカルビルアミノ;ジ−C1−4ヒドロカルビルアミノ;C1−4ヒドロカルビル−C(O)−;C1−4ヒドロカルビル−C(O)−アミノ;C1−4ヒドロカルビルスルホニルアミノ;C1−4ヒドロカルビルウレイド;スルファモイル;モノ−C1−4ヒドロカルビルスルファモイル;ジ−C1−4ヒドロカルビルスルファモイル;カルバモイル;モノ−C1−4ヒドロカルビルカルバモイル;ジ−C1−4ヒドロカルビルカルバモイル;基O−(CH−OR;および基O−(CH−NRから選ばれる1、2、または3個の置換基で任意に置換されていてもよく:
kは、2〜4であり;
mは0または1であり、nは0、1、2、3または4であるが、ただしmが1のとき、nは少なくとも2であり;
は、水素またはC1−4ヒドロカルビルであり;
は、水素またはC1−4ヒドロカルビルであり;
は、水素またはC1−4ヒドロカルビルであり;
あるいは、NRは、O、N、およびSから選ばれるさらなるヘテロ原子を任意で含んでいてもよい、飽和5もしくは6員ヘテロ環またはその酸化形態を形成し、当該ヘテロ環は、1〜4個のC1−4ヒドロカルビル基またはヒドロキシで任意に置換されていてもよく;
Arは、O、N、およびSから選ばれる1、2、または3個のヘテロ原子環員を含み、フッ素;塩素;臭素;C1−4ヒドロカルビル;C1−4アルコキシ;トリフルオロメチル;ジフルオロメチル;ヒドロキシ;シアノ;トリフルオロメトキシ;ジフルオロメトキシ;アミノ;モノ−C1−4ヒドロカルビルアミノ;ジ−C1−4ヒドロカルビルアミノ;C1−4ヒドロカルビル−C(O)−;C1−4ヒドロカルビル−C(O)−アミノ;C1−4ヒドロカルビルスルホニルアミノ;C1−4ヒドロカルビルウレイド;スルファモイル;モノ−C1−4ヒドロカルビルスルファモイル;ジ−C1−4ヒドロカルビルスルファモイル;カルバモイル;モノ−C1−4ヒドロカルビルカルバモイル;およびジ−C1−4ヒドロカルビルカルバモイルから選ばれる1、2、または3個の置換基で任意に置換されていてもよい単環式5または6員ヘテロアリール環であり:
ここで、C1−4ヒドロカルビルからなるあるいはC1−4ヒドロカルビルを含む各置換基において、C1−4ヒドロカルビルは、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、シクロプロピル、およびシクロプロピルメチルから選ばれる。
【0009】
具体的かつ好ましい式(1)の化合物は、次の実施態様で規定のとおりである。
実施態様1a:Xが、NまたはN(O)であり;
が、NまたはCHであり;
Qが、C1−3アルキレン基であり;
が、水素、C1−4アルキル、およびヒドロキシ−C2−4アルキルから選ばれ;
、R、およびRが、同一または異なって、それぞれ、水素、フッ素、塩素、およびメチルから選ばれ;
Arが、O、N、およびSから選ばれる0、1、または2個のヘテロ原子環員を含む単環式5もしくは6員アリールまたはヘテロアリール環、あるいはナフチル環であり、当該アリールまたはヘテロアリールまたはナフチル環は、フッ素;塩素;臭素;C1−4アルキル;C2−4アルケニル;C2−4アルキニル;C1−4アルコキシ;トリフルオロメチル;ジフルオロメチル;ヒドロキシ;シアノ;トリフルオロメトキシ;ジフルオロメトキシ;アミノ;モノ−C1−4アルキルアミノ;ジ−C1−4アルキルアミノ;C1−4アルカノイル;C1−4アルカノイルアミノ;C1−4アルキルスルホニルアミノ;C1−4アルキルウレイド、スルファモイル;モノ−C1−4アルキルスルファモイル;ジ−C1−4アルキルスルファモイル;カルバモイル;モノ−C1−4アルキルカルバモイル;ジ−C1−4アルキルカルバモイル;基O−(CH−OR;および基O−(CH−NR;から選ばれる1、2、または3個の置換基で任意に置換されていてもよく;
kが、2〜4であり;
mが0または1であり、nが0、1、2、3または4であるが、ただしmが1のとき、nは少なくとも2であり;
が、水素またはC1−4アルキルであり;
が、水素またはC1−4アルキルであり;
が、水素またはC1−4アルキルであり;
あるいは、NRが、O、N、およびSから選ばれるさらなるヘテロ原子を任意で含んでいてもよい、飽和5もしくは6員ヘテロ環またはその酸化形態を形成し、当該ヘテロ環は、1〜4個のC1−4アルキル基またはヒドロキシと任意で置換されていてもよく;
Arが、O、N、およびSから選ばれる1、2、または3個のヘテロ原子環員を含み、フッ素;塩素;臭素;C1−4アルキル;C2−4アルケニル;C2−4アルキニル;C1−4アルコキシ;トリフルオロメチル;ジフルオロメチル;ヒドロキシ;シアノ;トリフルオロメトキシ;ジフルオロメトキシ;アミノ;モノ−C1−4アルキルアミノ;ジ−C1−4アルキルアミノC1−4アルカノイル、C1−4アルカノイルアミノ、C1−4アルキルスルホニルアミノ、C1−4アルキルウレイド、スルファモイル;モノ−C1−4アルキルスルファモイル;ジ−C1−4アルキルスルファモイル;カルバモイル;モノ−C1−4アルキルカルバモイル;およびジ−C1−4アルキルカルバモイルから選ばれる1、2、または3個の置換基で任意に置換されていてもよい単環式5または6員ヘテロアリール環である、実施態様1.1の化合物。
【0010】
実施態様1.1b:Xが、NまたはN(O)であり;
が、NまたはCHであり;
Qが、C1−3アルキレン基であり;
が、水素、C1−4アルキル、およびヒドロキシ−C2−4アルキルから選ばれ;
、R、およびRは、同一または異なって、それぞれ、水素、フッ素、塩素、およびメチルから選ばれ;
Arが、O、N、およびSから選ばれる0、1、または2個のヘテロ原子環員を含み、フッ素;塩素;臭素;C1−4アルキル;C1−4アルコキシ;トリフルオロメチル;ジフルオロメチル;ヒドロキシ;シアノ;トリフルオロメトキシ;ジフルオロメトキシ;アミノ;モノ−C1−4アルキルアミノ;ジ−C1−4アルキルアミノ;C1−4アルカノイル;C1−4アルカノイルアミノ;C1−4アルキルスルホニルアミノ;C1−4アルキルウレイド;スルファモイル;モノ−C1−4アルキルスルファモイル;ジ−C1−4アルキルスルファモイル;カルバモイル;モノ−C1−4アルキルカルバモイル;およびジ−C1−4アルキルカルバモイルから選ばれる1、2、または3個の置換基で任意に置換されていてもよい単環式5または6員ヘテロアリール環であり:ならびに
Arが、O、N、およびSから選ばれる1、2、または3個のヘテロ原子環員を含み、フッ素;塩素;臭素;C1−4アルキル;C1−4アルコキシ;トリフルオロメチル;ジフルオロメチル;ヒドロキシ;シアノ;トリフルオロメトキシ;ジフルオロメトキシ;アミノ;モノ−C1−4アルキルアミノ;ジ−C1−4アルキルアミノ;C1−4アルカノイル;C1−4アルカノイルアミノ;C1−4アルキルスルホニルアミノ;C1−4アルキルウレイド;スルファモイル;モノ−C1−4アルキルスルファモイル;ジ−C1−4アルキルスルファモイル;カルバモイル;モノ−C1−4アルキルカルバモイル;およびジ−C1−4アルキルカルバモイルから選ばれる1、2、または3個の置換基で任意に置換されていてもよい単環式5または6員ヘテロアリール環である、実施態様1.1の化合物。
【0011】
実施態様1.2:QがC1−2アルキレンである、実施態様1.1の化合物。
実施態様1.2a:QがCHまたはCH(CH)である、実施態様1.1の化合物。
実施態様1.2b:QがCHまたはCHCHである、実施態様1.1の化合物。
実施態様1.3:QがCHである、実施態様1.2aの化合物。
実施態様1.3a;QがCH(CH)である、実施態様1.2aの化合物。
実施態様1.3b:Qが、Rの立体化学配置である実施態様1.3aの化合物。
実施態様1.3c:QがCHCHである、実施態様1.2bの化合物。
実施態様1.4:XがNである、実施態様1.1〜1.3cのいずれか1つの化合物。
実施態様1.5:XがN(O)である、実施態様1.1〜1.3cのいずれか1つの化合物。
実施態様1.6:XがNである、実施態様1.1〜1.5のいずれか1つの化合物。
実施態様1.7:XがCHである、実施態様1.1〜1.5のいずれか1つの化合物。
実施態様1.8:Rが、水素、メチル、エチル、ヒドロキシエチル、およびヒドロキシプロピルから選ばれる、実施態様1.1〜1.7のいずれか1つの化合物。
実施態様1.9:Rが、水素、メチル、およびヒドロキシエチルから選ばれる、実施態様1.8の化合物。
実施態様1.9a:Rが、水素およびメチルから選ばれる、実施態様1.9の化合物。
【0012】
実施態様1.10:Rが水素である、実施態様1.9の化合物。
実施態様1.10a:Rがメチルである、実施態様1.9の化合物。
実施態様1.10b:Rがヒドロキシエチルである、実施態様1.9の化合物。
実施態様1.11:Arが、それぞれ実施態様1.1に規定のように任意に置換されていてもよいフェニル、フリル、チエニル、ピリジル、およびナフチルから選ばれる、実施態様1.1〜1.10bのいずれか1つの化合物。
実施態様1.11a:Arが、それぞれ実施態様1.1に規定のように任意に置換されていてもよいフェニル、チエニル、ピリジル、およびナフチルから選ばれる、実施態様1.1〜1.10bのいずれか1つの化合物。
実施態様1.11b:Arが、それぞれ実施態様1.1に規定のように任意に置換されていてもよいフェニル、フリル、チエニル、およびピリジルから選ばれる、単環式アリールまたはヘテロアリール環である、実施態様1.1〜1.10bのいずれか1つの化合物。
実施態様1.12:Arが、実施態様1.1に規定のように任意に置換されていてもよいフェニル環である、実施態様1.11の化合物。
実施態様1.13:Arが、非置換であるか、フッ素;塩素;臭素;C1−3アルキル;C1−3アルコキシ;トリフルオロメチル;ジフルオロメチル;ヒドロキシ;シアノ;トリフルオロメトキシ;ジフルオロメトキシ;アミノ;モノ−C1−3アルキルアミノ;ジ−C1−3アルキルアミノ;C1−3アルカノイル;C1−3アルカノイルアミノ;カルバモイル;モノ−C1−3アルキルカルバモイル;ジ−C1−3アルキルカルバモイル;基O−(CH−OR;および基O−(CH−NRから選ばれる1、2、または3個の置換基で置換され;Rが、水素またはC1−3アルキルであり;Rが、水素またはC1−3アルキルであり;Rが、水素またはC1−3アルキルであり;あるいは、NRは、O、N、およびSから選ばれるさらなるヘテロ原子を含む飽和6員ヘテロ環であり、当該ヘテロ環は、1〜4個のC1−3アルキル基またはヒドロキシで任意に置換されていてもよく;かつk、m、およびnが実施態様1.1で規定のとおりである、実施態様1.1〜1.12のいずれか1つの化合物。
【0013】
実施態様1.13a:Arが、非置換であるか、フッ素;塩素;臭素;C1−2アルキル;C1−2アルコキシ;トリフルオロメチル;ジフルオロメチル;ヒドロキシ;シアノ;トリフルオロメトキシ;ジフルオロメトキシ;アミノ;モノ−C1−2アルキルアミノ;ジ−C1−2アルキルアミノ;アセチル;アセチルアミノ;カルバモイル;モノ−C1−2アルキルカルバモイル;ジ−C1−2アルキルカルバモイル;モルホリニル、ピペラジニル、N−メチルピペラジニル、およびジメチルアミノエトキシから選ばれる1、2、または3個の置換基で置換されている、実施態様1.13の化合物。
実施態様1.13b:Arが、非置換であるか、フッ素、塩素、臭素、メチル、ヒドロキシ、メトキシ、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、シアノ、トリフルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、モルホリニル、ピペラジニル、N−メチルピペラジニル、およびジメチルアミノエトキシから選ばれる1、2、または3個の置換基で置換されている、実施態様1.1〜1.12のいずれか1つの化合物。
実施態様1.13c:Arが、非置換であるか、フッ素、塩素、メチル、ヒドロキシ、メトキシ、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、モルホリニル、ピペラジニル、N−メチルピペラジニル、およびジメチルアミノエトキシから選ばれる1、2、または3個の置換基で置換されている、実施態様1.1〜1.12のいずれか1つの化合物。
実施態様1.13d:Arに対する任意の置換基が、フッ素、塩素、臭素、メチル、メトキシ、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、シアノ、トリフルオロメトキシ、およびジフルオロメトキシから選ばれる、実施態様1.1〜1.12のいずれか1つの化合物。
【0014】
実施態様1.13e:Arに対する任意の置換基が、フッ素、塩素、メチル、メトキシ、トリフルオロメチル、およびトリフルオロメトキシから選ばれる、実施態様1.1〜1.12のいずれか1つの化合物。
実施態様1.13f:Arが、非置換であるかまたは1もしくは2個の置換基で置換されている、実施態様1.13〜1.13eのいずれか1つの化合物。
実施態様1.13g:Arが1または2個の置換基で置換されたフェニル環であり、少なくとも1個の置換基がフェニル環のメタまたはパラ位に存在する、実施態様1.13〜1.13fのいずれか1つの化合物。
実施態様1.13h:Arが1個の置換基で置換されたフェニル環であり、当該置換基がフェニル環のメタ位に存在する、実施態様1.13〜1.13gのいずれか1つの化合物。
実施態様1.13i:Arが1個の置換基で置換されたフェニル環であり、当該置換基がフェニル環のパラ位に存在する、実施態様1.13〜1.13gのいずれか1つの化合物。
実施態様1.13j:Arが、3−クロロ、4−クロロ、3−フルオロ、4−フルオロ、3−メトキシ、4−メトキシ、および3−メチルから選ばれる1個の置換基で置換されたフェニル環である、実施態様1.13〜1.13gのいずれか1つの化合物。
【0015】
実施態様1.14:フェニル環が非置換であるか、または一置換であり、置換基が塩素である、実施態様1.12の化合物。
実施態様1.15:フェニル環が塩素で一置換されている、実施態様1.14の化合物。
実施態様1.16:塩素原子が、フェニル環のメタまたはパラ位に位置する、実施態様1.15の化合物。
実施態様1.17:塩素原子が、フェニル環のパラ位に位置する、実施態様1.16の化合物。
実施態様1.17a:塩素原子が、フェニル環のメタ位に位置する、実施態様1.16の化合物。
実施態様1.18:Rが水素である、実施態様1.1〜1.17aのいずれか1つの化合物。
実施態様1.19:Rが水素である、実施態様1.1〜1.18のいずれか1つの化合物。
実施態様1.20:Rが水素である、実施態様1.1〜1.19のいずれか1つの化合物。
実施態様1.21:Arが、実施態様1.1に規定のようにそれぞれ任意に置換されていてもよいピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、フラン、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、チアジアゾール、フラザン、およびオキサジアゾール環から選ばれる、実施態様1.1〜1.20のいずれか1つの化合物。
実施態様1.21a:Arが、実施態様1.1に規定のようにそれぞれ任意に置換されていてもよいピラゾール、ピリジン、およびピリミジン環から選ばれる、実施態様1.21の化合物。
実施態様1.22:Arが、実施態様1.1に規定のようにそれぞれ任意に置換されていてもよいピラゾール、イミダゾ−ル、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、およびピリジン環から選ばれる、実施態様1.21の化合物。
【0016】
実施態様1.23:Arが、実施態様1.1に規定のようにそれぞれ任意に置換されていてもよいピラゾール、イミダゾ−ル、およびピリジン環から選ばれる、実施態様1.22の化合物。
実施態様1.24:Arが、実施態様1.1に規定のようにそれぞれ任意に置換されていてもよいピラゾールおよびピリジン環から選ばれる、実施態様1.23の化合物。
実施態様1.24a:Arが、任意に置換されていてもよいピラゾール環である、実施態様1.24の化合物。
実施態様1.25:Arが、非置換であるか、あるいはメチル、アミノ、ヒドロキシ、およびシアノから選ばれる1または2個の置換基で置換されている、実施態様1.1〜1.24aのいずれか1つに規定の化合物。
実施態様1.25a:Arが非置換であるか一置換である、実施態様1.25aに規定の化合物。
実施態様1.25b:Arが非置換であるか、またはメチルおよびアミノから選ばれる置換基で一置換された、実施態様1.25aに規定の化合物。
実施態様1.25c:Arが非置換であるか、またはメチル基で一置換された、実施態様1.25bに規定の化合物。
実施態様1.25d:Arが非置換である、実施態様1.25cで規定の化合物。
実施態様1.26:Arが非置換ピラゾール環である、実施態様1.25の化合物。
【0017】
実施態様1.27:ベンジル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
ベンジル−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
2−{ベンジル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミノ}−エタノール;
(4−モルホリン−4−イル−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[4−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(3−モルホリン−4−イル−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(4−クロロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(3−クロロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(2−クロロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(4−フルオロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(3−フルオロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(2−フルオロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−ピリジン−4−イルメチル−アミン;
[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−ピリジン−3−イルメチル−アミン;
[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−ピリジン−2−イルメチル−アミン;
(4−メトキシ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(3−メトキシ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(2−メトキシ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
【0018】
ベンジル−メチル−(6−ピリジン−4−イル−キノキサリン−2−イル)−アミン;
ベンジル−メチル−(6−ピリミジン−4−イル−キノキサリン−2−イル)−アミン;
((S)−1−フェニル−エチル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
フェネチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]アミン;
ベンジル−エチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(3−メトキシ−ベンジル)−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(3−フルオロ−ベンジル)−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−(3−トリフルオロメトキシ−ベンジル)−アミン;
[3−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−ベンジル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(3,4−ジフルオロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
((R)−1−フェニル−エチル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
ベンジル−メチル−[7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン;
ベンジル−メチル−[1−オキシ−7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン;
(3−メトキシ−ベンジル)−[1−オキシ−7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン;
(3−メトキシ−ベンジル)−[7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン;
[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−チオフェン−3−イルメチル−アミン;
ナフタレン−2−イルメチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)−アミン;
(3−メチル−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(2−メチル−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
ベンジル−メチル−(6−ピリミジン−5−イル−キノキサリン−2−イル)−アミン;
(4−メチル−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(2−クロロ−ベンジル)−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
ベンジル−[6−(5−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
{(R)−1−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル]−エチル}−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
メチル−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[(R)−1−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[(R)−1−(3−メトキシ−フェニル)−エチル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
メチル−((R)−1−フェニル−エチル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
【0019】
[(R)−1−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[(R)−1−(3−メトキシ−フェニル)−エチル]−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
3−{[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イルアミノ]−メチル}−フェノール;
[(R)−1−(3−クロロ−フェニル)−エチル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[(R)−1−(3−クロロ−フェニル)−エチル]−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
メチル−((S)−1−フェニル−エチル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−((R)−1−m−トリル−エチル)−アミン;
[(S)−1−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;および
[(S)−1−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン、から選ばれる実施態様1.1の化合物ならびにその塩および互変異性体。
【0020】
実施態様1.27a:ベンジル−[1−オキシ−7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン;
(4−クロロ−ベンジル)−[1−オキシ−7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン;
(3−クロロ−ベンジル)−[1−オキシ−7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン;
ベンジル−[7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン;
ベンジル−[4−オキシ−6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
ベンジル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン、から選ばれる実施態様1.27の化合物ならびにその塩および互変異性体。
【0021】
実施態様1.27b:(3−クロロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(4−フルオロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(3−フルオロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(4−メトキシ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(3−メトキシ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
フェネチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(3−フルオロ−ベンジル)−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(3,4−ジフルオロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
((R)−1−フェニル−エチル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−チオフェン−3−イルメチル−アミン;
(3−メチル−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
ベンジル−メチル−(6−ピリミジン−5−イル−キノキサリン−2−イル)−アミン;
(4−メチル−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[(R)−1−(3−メトキシ−フェニル)−エチル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
メチル−((R)−1−フェニル−エチル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[(R)−1−(3−メトキシ−フェニル)−エチル]−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[(R)−1−(3−クロロ−フェニル)−エチル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[(R)−1−(3−クロロ−フェニル)−エチル]−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン、から選ばれる実施態様1.27の化合物ならびにその塩および互変異性体。
【0022】
実施態様1.28:塩の形態である、実施態様1.1〜1.27のいずれか1つの化合物。
実施態様1.29:塩が酸付加塩である、実施態様1.28の化合物。
実施態様1.30:溶媒和物の形態である、実施態様1.1〜1.29のいずれか1つの化合物。
実施態様1.31:溶媒和物が水和物である、実施態様1.30の化合物。
【0023】

実施態様1.1〜1.31で規定の本発明の化合物は、塩の形態で存在してもよい。
上で言及する(また実施態様1.28で規定の)塩は、典型的には酸付加塩である。
本発明の塩は、「Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use」、P.Heinrich Stahl(編者)、Camille G.Wermuth(編者)、ISBN:3−90639−026−8、ハードカバー、388ページ、2002年8月、に記載の方法のような従来の化学的方法により親化合物から合成することができる。一般的に、かかる塩は、水、有機溶媒、またはそれら2つの混合物(一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、またはアセトニトリルなどの非水性媒体を使用する)中で遊離塩基形態の化合物と酸とを反応させることにより調製することができる。
【0024】
酸付加塩(実施態様1.29に規定のような)は、無機および有機双方の多様な酸で形成できる。酸付加塩の例としては、酢酸、2,2−ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸(例えば、L−アスコルビン酸)、L−アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4−アセトアミド安息香酸、ブタン酸、(+)ショウノウ酸、ショウノウスルホン酸、(+)−(1S)−ショウノウ−10−スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、ケイ皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチシン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、グルクロン酸(例えば、D−グルクロン酸)、グルタミン酸(例えば、L−グルタミン酸)、α−オキソグルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、ヨウ化水素酸、イセチオン酸、(+)−L−乳酸、(±)−DL−乳酸、ラクトビオン酸、マレイン酸、リンゴ酸、(−)−L−リンゴ酸、マロン酸、(±)−DL−マンデル酸、メタンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロピオン酸、L−ピログルタミン酸、サリチル酸、4−アミノ−サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)−L−酒石酸、チオシアン酸、p−トルエンスルホン酸、ウンデシレン酸、および吉草酸からなる群から選ばれる酸や、アシル化アミノ酸およびカチオン交換樹脂で形成される塩が挙げられる。
【0025】
本発明の塩形態の化合物は、典型的には薬学上許容される塩であり、薬学上許容される塩の例は、Bergeら、1977年、「Pharmaceutically Acceptable Salts」、J.Pharm.Sci.、Vol.66、pp.1〜19に記載されている。しかしながら、医薬上許容されない塩も中間体として製造してもよく、これをその後薬学上許容される塩に変換してもよい。このような薬学上許容されない塩の形態も、例えば、化合物の精製または分離において有用なことがあり、本発明の一部分を成す。
【0026】
幾何異性体および互変異性体
本発明の化合物は、いくつもの異なる幾何異性体および互変異性体形態で存在してもよく、実施態様1.1〜1.31で規定の式(1)の化合物に対する言及は、かかる形態をすべて包含する。誤解を避けるために記載すると、化合物がいくつかの幾何異性体または互変異性体のうち1種で存在し、1種のみが特に記載または示されていたとしても、他の全てが式(1)またはそのサブグループ、サブセット、好ましい選択肢、例に包含される。
【0027】
光学異性体
上記式の化合物が1個以上のキラル中心を含み、2種以上の光学異性体の形態で存在し得る場合、当該化合物に対する言及は、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、個別の光学異性体または2種以上の光学異性体の混合物(例えば、ラセミ混合物)として、その全ての光学異性体形態(例えば、エナンチオマー、エピマー、およびジアステレオアイソマー)を含む。
【0028】
光学異性体はその光学活性により(すなわち、+および−異性体、またはdおよびl異性体として)特性決定および同定されるか、あるいはCahn、IngoldおよびPrelogにより開発された「RおよびS」命名法を用いて絶対立体化学に基づき特性決定されてもよい、「Advanced Organic Chemistry」、Jerry March、第4版、John Wiley&Sons、New York、1992、109〜114ページ参照、およびCahn、Ingold&Prelog、「Angew.Chem.Int.Ed.,Engl.」、1966、5、385〜415も参照されたい。
【0029】
光学異性体はキラルクロマトグラフィー(キラル担体上のクロマトグラフィー)を含めた多くの技術により分離でき、このような技術は当業者に周知である。
【0030】
キラルクロマトグラフィーの代わりに、(+)−酒石酸、(−)−ピログルタミン酸、(−)−ジ−トルオイル−L−酒石酸、(+)−マンデル酸、(−)−リンゴ酸、および(−)−ショウノウスルホン酸などのキラル酸でジアステレオアイソマー塩を形成し、優先晶出法によりジアステレオアイソマーを分離し、次いで塩を解離させて、遊離塩基の個々のエナンチオマーを得ることによって、光学異性体を分離することができる。
【0031】
本発明の化合物が2種以上の光学異性体として存在する場合、一対のエナンチオマーのうち一方のエナンチオマーは、例えば、生物活性に関して、他方のエナンチオマーより有益であることがある。したがって、特定の状況下では、一対のエナンチオマーのうち一方のみ、または複数のジアステレオアイソマーのうち1種のみを治療剤として用いることが望ましい。したがって、本発明は、化合物の少なくとも55%(例えば、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%)が単一の光学異性体(例えば、エナンチオマーまたはジアステレオアイソマー)として存在している1個以上のキラル中心を有する式(1)の化合物を含有する組成物を提供する。1つの一般的な実施態様において、式(1)の化合物の総量の99%以上(例えば、実質的に全て)が、単一の光学異性体(例えば、エナンチオマーまたはジアステレオアイソマー)として存在していてもよい。
【0032】
同位体
実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の本発明の化合物は、1個以上の同位体置換を含んでもよく、特定の元素に対する言及はその範囲内にその元素の全ての同位体を包含する。例えば、水素に対する言及はその範囲内にH、H(D)、およびH(T)を包含する。同様に、炭素および酸素に対する言及はそれらの範囲内にそれぞれ12C、13Cおよび14Cならびに16Oおよび18Oを包含する。
【0033】
同位体は放射性であってもよいし非放射性であってもよい。本発明の一実施態様では、上記化合物は放射性同位体を含まない。そのような化合物は治療上の使用に好ましい。他の実施態様では、しかしながら、上記化合物は、1種以上の放射性同位体を含んでもよい。そのような放射性同位体を含む化合物は診断の場合に役立つ場合がある。
【0034】
溶媒和物
実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物は、溶媒和物を形成し得る。
【0035】
好ましい溶媒和物は、無毒で薬学的に許容される溶媒(以下、溶媒和溶媒と呼ぶ)の分子の、本発明の化合物の固体構造(例えば、結晶構造)への取り込みにより形成される溶媒和物である。かかる溶媒の例としては、水、アルコール(エタノール、イソプロパノール、およびブタノールなど)、およびジメチルスルホキシドが挙げられる。溶媒和物は、溶媒和溶媒を含む溶媒または溶媒の混合物で本発明の化合物を再結晶化させることにより調製することができる。溶媒和物が任意の時点で形成されているかどうかは、化合物の結晶を、熱重量分析(TGE)、示差走査熱分析(DSC)、およびX線結晶分析などの周知および標準的な技術を用いた分析に供することにより決定することができる。
【0036】
溶媒和物は、化学量論または非化学量論溶媒和物であってもよい。
特に好ましい溶媒和物は水和物であり、水和物の例としては、半水和物、一水和物、および二水和物が挙げられる。
溶媒和物のより詳細な記載、ならびに溶媒和物の調製および特性決定に使用される方法は、Brynら、「Solid−State Chemistry of Drugs」、第2版、published by SSCI,Inc of West Lafayette、IN、USA、1999、ISBN 0−967−06710−3を参照されたい。
【0037】
プロドラッグ
実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物は、プロドラッグの形態で提供してもよい。
「プロドラッグ」により、例えば、実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の生物活性化合物にインビボで変換される任意の化合物を意味する。
【0038】
例えば、いくつかのプロドラッグは活性化合物のエステル(例えば、生理学上許容される易代謝性エステル)である。代謝に際して、エステル基(−C(=O)OR)は開裂されて活性薬物を生じる。かかるエステルは、例えば、親化合物中に存在する任意の水酸基のエステル化により形成されるが、適宜に、親化合物に存在する他の反応基を予め保護しておき、次いで必要であれば脱保護する。
【0039】
また、プロドラッグのいくつかは、酵素的に活性化されて活性化合物を生じ、またある化合物はさらなる化学反応により活性化合物(例えば、ADEPT、GDEPT、LIDEPT等の場合)を生じる。例えば、プロドラッグは糖誘導体または他のグリコシド複合体でもよく、またはアミノ酸エステル誘導体でもよい。
【0040】
錯体および包接化合物
また、式(1)またはそのサブグループ、サブセット、好ましい選択肢、および例には、上記化合物の錯体(例えば、シクロデキストリンなどの化合物との包接錯体もしくは包接化合物、または金属との錯体)が包含される。
【0041】
生物学的活性
実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物は、p70S6キナーゼの阻害剤としての活性を有する。それゆえ、式(1)の化合物は、p70S6キナーゼまたはその変異型が積極的な役割を果たす病態および症状の予防または治療に有用であり得る。
【0042】
例えば、実施態様1.1〜1.31の化合物が、癌などの様々な増殖性疾患の治療に有用となることが想定される。
【0043】
したがって、さらなる実施態様では、本発明はつぎのものを提供する。
実施態様2.1:医薬または治療で使用するための実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物。
実施態様2.2:p70S6キナーゼまたはその変異型により仲介される病態および症状の予防または治療する際に使用するための、実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物。
実施態様2.3:p70S6キナーゼの異常な発現(例えば、過剰発現または変異型p70S6キナーゼの発現)を特徴とする病態および症状の予防または治療する際に使用するための、実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物。
実施態様2.4:抗癌剤として使用するための、実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物。
実施態様2.5:癌の治療用薬剤の製造のための、実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物の使用。
【0044】
実施態様2.6:癌の治療方法であって、治療上有効な量の実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物を、任意で別の抗癌剤または放射線治療と共に、その必要のある被験体に投与することを含む方法。
実施態様2.7:癌などの増殖性疾患の治療における放射線治療または化学療法の治療効果を向上させる際に使用するための、実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物。
実施態様2.8:癌などの増殖性疾患の治療における放射線治療または化学療法の治療効果を向上させるための薬剤の製造のための、実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物の使用。
実施態様2.9:癌などの増殖性疾患の予防または治療方法であって、実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物を、放射線治療または化学療法と組み合わせて、患者に投与することを含む方法。
【0045】
実施態様2.4〜2.9に規定の増殖性疾患の例としては、例えば、膀胱、乳房、結腸、腎臓、表皮、肝臓、肺、食道、胆嚢、卵巣、膵臓、胃、子宮頚、甲状腺、前立腺、消化管系、または皮膚の癌、白血病、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、有毛細胞リンパ腫、またはバーケットリンパ腫などの造血系腫瘍;骨髄系の造血系腫瘍、例えば、急性および慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、または前骨髄球性白血病;甲状腺瀘胞癌;間葉由来の腫瘍、例えば、線維肉腫または横紋筋肉種;中枢または末梢神経系の腫瘍、例えば、星状細胞腫、神経芽細胞腫、グリオーマ、または神経鞘腫;メラノーマ;精上皮腫;奇形腫;骨肉種;色素性乾皮症;角化棘細胞種;甲状腺瀘胞癌;またはカポジ肉腫が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0046】
実施態様1.1〜1.31の化合物が特に活性があることを示すはずである癌の具体的な1サブセットは、P70S6の過剰発現、または高度なP70S6の発現、または変異型P70S6の存在を特徴とする癌である。
【0047】
本発明の化合物のP70S6キナーゼ阻害能は、下記実施例部分に記載のプロトコルによって測定することができる。
【0048】
実施態様1.1〜1.31の化合物が特に活性があること示すはずである癌のさらなる具体例は次のとおりである。
・乳癌(過剰発現は、予後不良および転移に関連している(「Mol.Can.Ther」、2010参照))
・びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫:(「Expert Opin Ther Targets」2009年9月;13(9):1085〜93参照)
・多形性神経膠芽腫(P70S6K量の増加と関連する(「J Clin Oncol」2005年8月10;23(23):5294〜304参照))
・ヒト結腸直腸癌(この癌ではmtor経路およびp70S6Kが高度に活性化される(「Ann.Surg.Oncol.」2009年9月;16(9):2617〜28。「Epub」2009年6月11参照))。
【0049】
実施態様1.1〜1.31の化合物が特に活性があること示すはずである癌の別のサブセットとしては次のものが挙げられる。
・多形性神経膠芽腫;
・結腸腺癌;
・非小細胞肺癌;
・肺小細胞癌;
・シスプラチン耐性肺小細胞癌;
・卵巣癌;
・白血病;
・膵臓癌;
・前立腺癌;
・乳癌;
・腎細胞癌;
・多発性骨髄腫;
・カポジ肉腫;
・ホジキンリンパ腫;
・リンパ管平滑筋腫症;および
・非ホジキンリンパ腫または肉腫。
【0050】
実施例1.1〜1.31の化合物の細胞増殖阻害能は、下記実施例部分に記載のプロトコルを用いて測定することもできる。
式(1)の化合物の1つの利点は、式(1)の化合物が選択的キナーゼ阻害剤であるということである。
【0051】
好ましい式(1)の化合物は、p70S6キナーゼに対するIC50が、5μM未満、1μM未満、好ましくは0.1μM未満のものである。
例えば、式(1)の化合物は、AKT(2)キナーゼに対する活性と比べると、p70S6キナーゼの選択的阻害剤である。好ましい式(1)の化合物は、p70S6キナーゼに対する活性が、AKT(2)キナーゼに対する活性の少なくとも5倍であり、より好ましい式(1)の化合物は、p70S6キナーゼに対する活性が、AKT(2)キナーゼに対する活性の少なくとも10倍または少なくとも20倍である。特に好ましい化合物は、p70S6キナーゼに対する活性が、AKT(2)キナーゼに対する活性の少なくとも100倍である。
【0052】
さらに、式(1)の化合物は、オーロラキナーゼに対する活性と比べると、p70S6キナーゼの選択的阻害剤である。好ましい式(1)の化合物は、p70S6キナーゼに対する活性が、オーロラAおよび/またはBキナーゼに対する活性の少なくとも5倍であり、より好ましい式(1)の化合物は、p70S6キナーゼに対する活性が、オーロラAおよび/またはBキナーゼに対する活性の少なくとも10倍である。
【0053】
オーロラAおよび/またはオーロラBキナーゼおよび/またはAktキナーゼと比べるとp70S6キナーゼに対して大きな選択性を有する式(1)の化合物は、オーロラキナーゼおよびAktキナーゼ阻害に起因する副作用に関して、向上した副作用プロフィールを示すと期待される。
【0054】
したがって、さらなる実施態様では、本発明は次のものを提供する。
実施態様2.10:p70S6キナーゼに対して5μM未満のIC50を有する、実施態様1.1〜1.31のいずれか1つの化合物。
実施態様2.11:p70S6キナーゼに対して1μM未満のIC50を有する、実施態様1.1〜1.31のいずれか1つの化合物。
実施態様2.12:p70S6キナーゼに対して0.1μM未満のIC50を有する、実施態様1.1〜1.31のいずれか1つの化合物。
実施態様2.13:実施態様2.1〜2.9のいずれか1つの療法、治療、方法、または使用で用いるための実施態様2.10〜2.12のいずれか1つの化合物。
【0055】
本発明の化合物の調製方法
本発明はまた、式(1)の化合物の調製方法を提供する。
したがって、別の実施態様(実施態様3.1)では、本発明は、実施態様1.1〜1.31のいずれか1つで規定の化合物の調製方法を提供し、当該方法は、次の工程を含む。
【0056】
(a)パラジウム触媒の存在下での、式(10)の化合物:
【化2】


またはそのN−オキシドとボロン酸または式Ar−Borのボロネート試薬との反応(式中、Borは、ボロネートまたはボロン酸の残基である);あるいは
(b)式(11)の化合物:
【化3】


またはその保護形態と式Ar−Q−NRHの化合物との反応。
【0057】
上記反応(a)は、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(0)などのパラジウム触媒および塩基(例えば、炭酸カリウムなど炭酸塩)の存在下で、スズキカップリング条件下で行われてもよい。反応は、ジメチルホルムアミド(DMF)などの極性溶媒中で行われてもよく、反応混合物は、典型的には、例えば100℃を越える温度の加熱に供される。
【0058】
上記反応(b)は、室温で、ジメチルスルホキシドまたはジメチルホルムアミドなどの極性溶媒中で行われてもよい。
式(1)の化合物の調製の反応スキームの例を、下記に示す。
【化4】

【0059】
スキーム1は、XがNおよびそのN−オキシドである式(1)のベンゾトリアジン化合物を調製するために使用されてもよい。
スキーム1では、出発物質は、市販で入手可能であり、当業者に周知の方法により調製することができるクロロニトロアニリン(15)である。
【0060】
クロロニトロアニリン(15)は加熱(例えば、約100℃までの温度)しながらシアナミドと反応され、アミノ−ベンゾトリアジンN−オキシド(16)が得られる。
アミノ−ベンゾトリアジンN−オキシド(16)は、NaNO/HClでジアゾ化され、ジアゾニウム塩中間体(図示せず)を加水分解して、ヒドロキシベンゾトリアジンN−オキシド化合物(17)が形成される。N,N−ジメチルアニリンなどの不干渉塩基の存在下でのオキシ塩化リンとのヒドロキシベンゾトリアジンN−オキシド化合物(17)の反応により、クロロベンゾトリアジンN−オキシド化合物(18)が得られる。この塩素化反応は、典型的には、例えば還流温度で加熱しながら行われる。
【0061】
次いで、ベンゾトリアジン環の3位の塩素原子が、式Ar−Q−NRHのアミン化合物との反応によって基Ar−Q−NRにより置換されて、式(19)の化合物が得られる。この置換反応は、典型的には室温で、DMFまたはDMSOなどの極性溶媒中で行われてもよい。
次いで、式(19)の化合物は、スズキカップリング条件下で、ボロネートまたは式Ar−Borのボロン酸誘導体(Borは、ボロネートまたはボロン酸の残基である)と反応させてもよい。スキーム1では、Ar−Borを、ボロン酸ピナコールエステル(20)として例示する。この反応は、典型的には、DMFなどの極性溶媒中、Fu触媒(Fu's catalyst)(ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(0))などのパラジウム触媒および炭酸カリウムまたはセシウム炭酸塩などの塩基の存在下で、加熱(例えば、60〜100℃の範囲の温度まで)しながら行われる。
【0062】
式Ar−Borのボロネートおよびボロン酸は広く市販されており、また、例えば、N.MiyauraおよびA.Suzuki、「Chem.Rev.」1995、95、2457による総説に記載のように調製することができる。このように、対応するブロモ化合物をブチルリチウムなどのアルキルリチウムと反応させ、次いでホウ酸エステルと反応させることにより、ボロネートが調製できる。得られるボロン酸エステル誘導体を、所望であれば、加水分解して対応するボロン酸を得ることができる。
【0063】
スズキカップリング反応は、XがN(O)でありXがNである式(1)に対応するN−オキシド化合物を生じさせる。このN−オキシドは、亜ジチオン酸ナトリウム(Na)などの還元剤を用いて、XがNでありXがNである式(1)に相当する、対応する非N−オキシドに還元されてもよい。還元は、例えば、還流状態で、通常加熱しながら、水性エタノールなどの水性溶媒中で行われてもよい。
【化5】


式(1)の化合物およびそのN−オキシドは、上のスキーム2に示す一連の反応により調製されてもよい。
【0064】
スキーム2の出発物質は、2,6−ジクロロキノキサリン(21)であり、これは市販(R、R、およびRがすべて水素である場合)されているか、あるいは、当業者に周知の方法またはそれに類似の方法により調製することができる。
【0065】
一連の反応の第一工程は、式Ar−Q−NRHのアミン化合物との反応により、Ar−Q−NRによって2,6−ジクロロキノキサリン(21)の2−塩素原子を置換することを含み、6−クロロキノキサリン(22)が得られる。この置換反応は、典型的には室温で、DMFまたはDMSOなどの極性溶媒中で行われてもよい。
【0066】
次いで、6−クロロキノキサリン(22)は、スキーム1に関して上に記載した条件下で、ボロネートまたは式Ar−Borのボロン酸誘導体とのスズキカップリング反応に供され、XがNでありXがCHである式(1)の化合物が得られる。スキーム2では、Ar−Borを、ボロン酸ピナコールエステル(20)として例示する。
【0067】
次いで、所望であれば、式(1)の化合物を、過酸化水素(例えば、酢酸中のH)などの酸化剤との反応によりN−オキシドまで酸化してもよく、XがNでありXがCHである対応する式(1)のN−オキシドが得られる。
【0068】
式(1)の化合物への合成経路の他の例は、下記実施例部分に記載する。
一旦形成すると、ある式(1)の化合物またはその保護誘導体は、当業者に周知の方法により、式(1)の別の化合物に変換することができる。ある官能基から別の官能基への変換のための合成手法は標準的な文献、例えば、「Advanced Organic Chemistry」、Jerry March、第4版、119、Wiley Interscience、New York;「Fiesers’Reagents for Organic Synthesis」、第1〜17巻、John Wiley、Mary Fieser編(ISBN:0−471−58283−2);および「Organic Syntheses」、第1〜8巻、John Wiley、Jeremiah P.Freeman編(ISBN:0−471−31192−8)に記載されている。
【0069】
上に記載の反応の多くでは、分子の望まない位置で反応が起こらないように1つまたは複数の基を保護する必要のある場合がある。保護基の例ならびに官能基を保護および脱保護する方法は、「Protective Groups in Organic Synthesis」(T.GreenおよびP.Wuts;第3版、John Wiley and Sons、1999)に見出すことができる。
【0070】
前述の方法により調製された化合物は、当業者に周知の種々様々な方法のいずれかにより単離精製されてもよく、かかる方法の例としては、再結晶、ならびにカラムクロマトグラフィー(例えば、フラッシュクロマトグラフィー)およびHPLCなどのクロマトグラフ法が挙げられる。
【0071】
医薬製剤
活性化合物を単独で投与することもできるが、医薬組成物(例えば、製剤)として提供することが好ましい。
したがって、本発明の別の実施態様(実施態様4.1)では、薬学的に許容される賦形剤と共に実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物の少なくとも1つを含む医薬組成物を提供する。
【0072】
薬学的に許容される賦形剤の例としては、担体(例えば、固体、液体、もしくは半固体担体)、希釈または増量剤、造粒剤、コーティング剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、防腐剤、抗酸化剤、緩衝剤、懸濁化剤、増粘剤、香味剤、甘味剤、矯味剤、あるいは医薬組成物において通常使用される任意の他の賦形剤が挙げられる。様々な種類の医薬組成物用の賦形剤の例を下により詳細に示す。
【0073】
医薬組成物は、経口、非経口、局所、鼻腔内、点眼、点耳、直腸、膣内、または経皮投与に適したいずれの形態であってもよい。上記組成物が非経口投与を意図したものである場合、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下投与用に製剤化することもできるし、あるいは注射、点滴(infusion)、または他の送達手段により標的臓器または組織に直接送達するために製剤化することもできる。送達は、ボーラス注射、短時間点滴、または長時間点滴によってもよく、受動的送達であっても、または適切な点滴ポンプの利用を介したものであってもよい。
【0074】
非経口投与に適した医薬製剤としては、水性および非水性の無菌注射液が挙げられ、これは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、共溶媒、有機溶媒混合物、シクロデキストリン複合体形成剤、乳化剤(エマルション製剤を形成および安定化するため)、リポソーム形成のためのリポソーム成分、高分子ゲルを形成するためのゲル化ポリマー、凍結乾燥保護剤、ならびに、とりわけ有効成分を可溶形態で安定化させたり、製剤を意図するレシピエントの血液と等張化したりする薬剤の組み合わせを含んでもよい。非経口投与用の医薬製剤はまた、懸濁化剤および増粘剤を含んでもよい水性および非水性無菌懸濁液の形態であってもよい(R.G.Strickly、Solubilizing Excipients in oral and injectable formulations、「Pharmaceutical Research」、Vol21(2)2004、p201〜230)。
【0075】
イオン性の薬剤分子は、その薬剤のpKaが製剤のpH値と十分に離れている場合には、pH調整により所望の濃度まで可溶化させることができる。許容される範囲は、静脈内投与および筋肉内投与ではpH2〜12であるが、皮下ではpH2.7〜9.0である。溶液のpHは塩形態の薬剤、塩酸もしくは水酸化ナトリウムなどの強酸/強塩基、または緩衝剤溶液(グリシン、クエン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、ヒスチジン、リン酸塩、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン(TRIS)、または炭酸塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない)のいずれかによって制御される。
【0076】
注射製剤では多くの場合、水溶液と水溶性有機溶媒/界面活性剤(すなわち、共溶媒)との組み合わせが用いられる。注射製剤に用いられる水溶性有機溶媒および界面活性剤としては、プロピレングリコール、エタノール、ポリエチレングリコール300、ポリエチレングリコール400、グリセリン、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP;ファーマソルブ(Pharmasolve))、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ソルトール(Solutol)HS15、クレモホールEL、クレモホールRH60およびポリソルベート80が挙げられるが、これらに限定されるものではない。このような製剤は、必ずというわけではないが、通常、注射前に希釈してもよい。
【0077】
プロピレングリコール、PEG300、エタノール、クレモホールEL、クレモホールRH60、およびポリソルベート80は、市販の注射製剤に用いられている完全に有機性の水混和性溶媒および界面活性剤であり、互いに組み合わせて使用できる。得られる有機注射製剤は、通常、静脈内ボーラスまたは静脈内点滴前に少なくとも2倍希釈される。
あるいは、水に対する溶解度の上昇はシクロデキストリンとの分子複合体形成によっても達成することができる。
【0078】
上記製剤は、単回用量容器または複数回用量容器、例えば、密閉アンプルおよびバイアルで提供してもよいし、使用直前に無菌液体担体、例えば、注射水を加えるだけのフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存してもよい。
【0079】
上記医薬製剤は、式(1)の化合物またはその酸付加塩を凍結乾燥することにより調製することができる。凍結乾燥とは、組成物をフリーズドライする手順を指す。したがって、本明細書においてフリーズドライと凍結乾燥は同義語として用いられる。典型的な方法としては、化合物を可溶化させることであり、得られた製剤は、明澄化され、ろ過除菌し、凍結乾燥に適した容器(例えば、バイアル)に無菌的に移される。バイアルの場合には、リオストッパー(lyo-stopper)で軽く栓をする。製剤は標準条件下で凍結するまで冷却し、凍結乾燥を行った後に密閉キャップをしてもよく、安定な凍結乾燥製剤が形成される。この組成物は典型的には残留含水量が低く、例えば、凍結乾燥物の重量の5重量%未満、例えば1重量%未満である。
【0080】
凍結乾燥製剤は、他の賦形剤、例えば、増粘剤、分散剤、緩衝剤、酸化防止剤、保存剤、および等張化剤を含んでもよい。典型的な緩衝剤としては、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、およびグリシンが挙げられる。酸化防止剤の例としては、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、モノチオグリセロール、チオ尿素、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシルアニソール、およびエチレンジアミン四酢酸塩が挙げられる。保存剤としては、安息香酸およびその塩、ソルビン酸およびその塩、パラ−ヒドロキシ安息香酸のアルキルエステル、フェノール、クロロブタノール、ベンジルアルコール、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、および塩化セチルピリジニウムが挙げられる。必要に応じて等張化のために、上述の緩衝剤ならびにデキストロースおよび塩化ナトリウムを使用することができる。
【0081】
凍結乾燥技術では、プロセスを容易にするため、かつ/または凍結乾燥塊に嵩および/または機械的強度をもたせるために増量剤が一般に用いられる。増量剤は、上記化合物またはその塩とともに凍結乾燥した際に、物理的に安定な凍結乾燥塊を生じ、より好適な凍結乾燥プロセスとし、さらに、迅速かつ完全な再構成をもたらす、水溶性の高い固体粒子希釈剤を意味する。増量剤はまた、溶液を等張とするためにも利用してもよい。
【0082】
水溶性増量剤は、凍結乾燥に典型的に用いられる任意の薬学上許容される不活性の固体材料であってもよい。かかる増量剤としては、例えば、グルコース、マルトース、スクロース、およびラクトースなどの糖;ソルビトールまたはマンニトールなどのポリアルコール;グリシンなどのアミノ酸;ポリビニルピロリジンなどのポリマー;ならびにデキストランなどの多糖類が挙げられる。
活性化合物の重量に対する増量剤の重量比は、典型的には、約1〜約5の範囲、例えば、約1〜約3、例えば、約1〜2の範囲である。
【0083】
あるいは、濃縮および適当なバイアルへの密封が可能な溶液の形態で提供することができる。投与形態の滅菌は、製剤過程の適切な段階で、ろ過によるか、またはバイアルとその内容物とをオートクレーブ処理することにより行われてもよい。供給された製剤は、例えば、適切な無菌点滴パック中に希釈するなど、送達前にさらなる希釈または調製が必要な場合がある。
【0084】
即時調合注射液および懸濁液は、無菌粉末、顆粒、および錠剤から調製してもよい。
本発明の好ましい一実施態様では、医薬組成物は、例えば、注射または点滴による静脈内投与に適した形態である。
他の好ましい実施態様では、医薬組成物は、皮下(s.c.)投与に適した形態である。
【0085】
経口投与に適した医薬投与形としては、錠剤、カプセル剤、カプレット剤、丸剤、トローチ剤、シロップ剤、液剤、散剤、顆粒剤、エリキシル剤および懸濁剤、舌下錠、ウエハー剤またはパッチ剤、ならびにバッカルパッチ剤が挙げられる。
【0086】
式(1)の化合物を含む医薬組成物は、公知の技術にしたがって製剤化することができる。例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、Mach Publishing Company、Easton、PA、USAを参照されたい。
【0087】
したがって、錠剤組成物は、単位用量の活性化合物を、不活性希釈剤または担体、例えば、ラクトース、スクロース、ソルビトール、もしくはマンニトールなどの糖または糖アルコール;および/あるいは炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウムなどの非糖由来希釈剤、またはセルロースやメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースの誘導体、およびコーンスターチなどのデンプンなどと共に含んでもよい。錠剤はまた、標準的な成分、例えば、結合剤および造粒剤、例えば、ポリビニルピロリドン、崩壊剤(例えば、架橋カルボキシメチルセルロースなどの膨潤性架橋ポリマー)、滑沢剤(例えば、ステアリン酸塩)、保存剤(例えば、パラベン)、酸化防止剤(例えば、BHT)、緩衝剤(例えば、リン酸緩衝液またはクエン酸緩衝液)、および発泡剤(例えば、クエン酸塩/重炭酸塩混合物)を含んでもよい。かかる賦形剤は公知であり、ここでは詳細に記載する必要はない。
【0088】
カプセル製剤は、硬質ゼラチンの種類であっても軟質ゼラチンの種類であってもよく、固体、半固体、または液体状の活性成分を含むことができる。ゼラチンカプセルは、動物ゼラチンまたはその合成もしくは植物由来の均等物から形成することができる。
【0089】
固形投与形態(例えば、錠剤、カプセル剤など)はコーティングを施しても施さなくともよいが、典型的には、例えば、保護フィルムコーティング(例えば、ワックスまたはワニス)または放出制御コーティングを有する。コーティング(例えば、オイドラギット(Eudragit)(商標)型ポリマー)は、胃腸管内の所望の位置で活性成分を放出するように設計することができる。したがって、コーティングは、胃腸管内の特定のpH条件下で分解するように選択することができ、これにより選択的に胃でまたは回腸もしくは十二指腸で化合物を放出する。
【0090】
コーティングの代わりにまたはコーティングに加えて、放出制御剤、例えば、胃腸管において酸性度またはアルカリ性度が変化する条件下で化合物を選択的に放出するようにすることができる放出遅延剤を含んでなる固体マトリックス中に薬剤を提供してもよい。あるいは、マトリックス材料または放出遅延コーティングは、投与形態が胃腸管を通過するにつれて実質的に連続的に崩壊する崩壊性ポリマー(例えば、無水マレイン酸ポリマー)の形態をとることができる。さらなる別法としては、活性化合物を、化合物の放出の浸透圧制御をもたらす送達系に処方することもできる。浸透圧放出性および他の遅延放出性または徐放性製剤は、当業者に周知の方法にしたがって製造してもよい。
【0091】
実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物またはそのプロドラッグは、担体と共に製剤化され、ナノ粒子の形態で投与されてもよい。ナノ粒子は、細胞への直接的な浸透の可能性を提供する。ナノ粒子薬物送達システムは、Nanoparticle Technology for Drug Delivery、Ram B GuptaおよびUday B.Kompella編、「Informa Healthcare」、ISBN9781574448573、2006年3月13日出版、に記載されている。ナノ粒子薬物送達システムはまた、「J.Control.Release」、2003、91(1−2)、167〜172、およびSinhaら、「Mol.Cancer Ther.」8月1日、(2006)5、1909に記載されている。
【0092】
医薬製剤は単一のパッケージ、通常はブリスターパック中に全コースの治療薬を含んだ「患者パック」として患者に提供することができる。患者パックは、調剤師がバルク供給から患者分の医薬を分配する従来の処方箋調剤に優る利点があり、患者は患者パックに入っている、患者の処方箋調剤では見ることができない添付文書をいつでも見ることができる。添付文書を包含しておけば、患者が医師の指示をよりよく遵守することが示されている。
【0093】
局所使用のための組成物としては、軟膏、クリーム、スプレー、パッチ、ゲル、液滴および挿入物(例えば、眼内挿入物)が挙げられる。かかる組成物は、公知の方法にしたがって処方することができる。
【0094】
非経口投与用の組成物は典型的には無菌水性もしくは油性溶液または微細懸濁液として提供されるか、あるいは注射用無菌水で即時構成できる微細無菌粉末の形態で提供されてもよい。
【0095】
直腸投与または膣内投与用の製剤の例としては、ペッサリーおよび坐剤が挙げられ、これらは、例えば、活性化合物を含有する付形成形材またはワックス材から形成することができる。
【0096】
吸入投与用組成物は、吸入可能な粉末組成物または液状もしくは粉末スプレーの形態をとってもよく、粉末吸入装置またはエアゾールディスペンシング装置を用いた標準的な形態で投与することができる。かかる装置は周知である。吸入投与用の粉末製剤は、典型的には活性化合物をラクトースなどの不活性固体粉末希釈剤と共に含む。
【0097】
式(1)の化合物は、一般的には単位投与形態で提供され、それ自体、典型的には、所望の生物活性レベルを与えるのに十分な化合物を含んでいる。例えば、製剤は、1ナノグラム〜2グラムの活性成分、例えば、1ナノグラム〜2ミリグラムの活性成分を含んでいてもよい。この範囲内での化合物の具体的な部分範囲(sub-ranges)としては、0.1ミリグラム〜2グラムの活性成分(より通常は、10ミリグラム〜1グラム、例えば、50ミリグラム〜500ミリグラム)、または1マイクログラム〜20ミリグラム(例えば、1マイクログラム〜10ミリグラム、例えば、0.1ミリグラム〜2ミリグラムの活性成分)である。
【0098】
経口投与用の組成物に関しては、単位投与形態は、1ミリグラム〜2グラム、より典型的には、10ミリグラム〜1グラム、例えば、50ミリグラム〜1グラム、例えば、100ミリグラム〜1グラムの活性化合物を含んでいてもよい。
【0099】
活性化合物は、投与を必要とする患者(例えば、ヒトまたは動物患者)に、所望の治療効果を達成するのに十分な量で投与されることになる。
【0100】
治療方法
本明細書で規定の式(1)化合物およびサブグループは、広範な増殖性の病態もしくは症状の予防または治療において、化学療法剤として単独で、あるいは、より通常は、化学療法剤または放射線治療との併用療法で有用であると想定される。かかる病態および症状の例は上述している。
【0101】
式(1)の化合物と共投与してもよい化学療法剤の具体例としては、次のものが挙げられる。
・トポイソメラーゼI阻害剤
・抗代謝剤
・チューブリン標的化薬剤
・DNA結合剤およびトポイソメラーゼII阻害剤
・EGFR阻害剤および他のPI3K経路阻害剤
・アルキル化剤(例えば、テモゾロミド)
・モノクローナル抗体
・抗ホルモン剤
・シグナル伝達阻害剤
・プロテアソーム阻害剤
・DNAメチルトランスフェラーゼ
・サイトカインおよびレチノイド
・低酸素誘発性DNA損傷剤(例えば、チラパザミン)。
【0102】
式(1)の化合物と共投与してもよい化学療法剤のさらなる例としては、次のものが挙げられる。
−Torc1阻害剤
−アロマターゼ阻害薬
−抗Her2抗体(例えば、http://www.wipo.int/pctdb/en/wo.jsp?wo=2007056118を参照)、ラパチニブ
−抗cd20抗体
−血管形成の阻害剤
−HDAC阻害剤
−mTOR阻害剤&EGFR
−他のPI3K経路阻害剤(例えば、PI3K、PDK1)
−MEK阻害剤
−EGFR(例えば、エベロリムス&ゲフィチニブ、「Biochemical Pharmacology」78、2009、460〜468を参照)。
【0103】
ある具体的な組み合わせは、実施態様1.1〜1.31のいずれか1つの化合物を、エベロリムス&ゲフィチニブなどのEGFR阻害剤と共に含む。
【0104】
化合物はまた、放射線治療と併用投与してもよい。
化合物は、有益な治療上の効果を維持するために長期間にわたって投与されてもよいし、または短期間のみ投与されてもよい。あるいは、化合物はパルス的投与または継続的投与されてもよい。
【0105】
本発明の化合物は、有効量すなわち所望の治療効果をもたらすのに効果的な量で投与される。例えば、「有効量」とは、癌に罹患した被験体に投与すると、腫瘍の増殖を遅らせる、疾患の症状を改善する、かつ/または寿命を伸ばす化合物の量であり得る。
【0106】
被験体に投与された本発明のP70S6阻害剤化合物の量は、疾患または症状の種類および重症度、ならびに全身の健康状態、年齢、性別、体重、および薬剤に対する耐性などの被験体の特徴に応じて決まる。当業者であれば、これらや他の要因に応じて適切な用量を決定することができる。
【0107】
化合物は、一般的にこのような投与を必要とする被験体、例えば、ヒトまたは動物患者、好ましくはヒト、に対して投与される。
【0108】
式(1)の化合物の典型的な1日量は、体重1キログラムあたり100ピコグラム〜100ミリグラム、より典型的には体重1キログラムあたり5ナノグラム〜25ミリグラム、およびより通常には体重1キログラムあたり10ナノグラム〜15ミリグラム(例えば、10ナノグラム〜10ミリグラム、およびより典型的には1キログラムあたり1マイクログラム〜1キログラムあたり20ミリグラム、例えば、1キログラムあたり1マイクログラム〜10ミリグラム)の範囲であり得るが、必要な場合はより高用量またはより低用量で投与されてもよい。化合物は、例えば、毎日、または2もしくは3もしくは4もしくは5もしくは6もしくは7もしくは10もしくは14もしくは21もしくは28日ごとに繰り返し投与することができる。
【0109】
一つの具体的な投薬スケジュールでは、患者に1日に1時間を10日間まで、特に1週間に5日間まで化合物の点滴を施し、この治療を所望の間隔、例えば、2〜4週間、特に3週間毎に繰り返す。
【0110】
より具体的には、患者に5日間毎日1時間化合物の点滴を施し、この治療を3週間毎に繰り返す。
【0111】
他の具体的な投薬スケジュールでは、患者に30分〜1時間にわたって点滴を施し、続いて様々な長さ、例えば、1〜5時間、例えば、3時間、の維持点滴を施す。
【0112】
さらなる具体的な投薬スケジュールでは、患者は、12時間〜5日間の持続点滴、特に24時間〜72時間の持続点滴を受ける。
【0113】
しかしながら、最終的には、投与される化合物の量および使用される組成物のタイプは、治療されている疾患または生理的状態の性質に相応し、医師の裁量によることとなる。
【0114】
診断方法
式(1)の化合物の投与前に、患者が罹患している、もしくは罹患している可能性のある疾患または症状が、p70S6キナーゼに対する活性を有する化合物による治療に対して感受性のある疾患または症状であるかどうかを決定するために患者をスクリーニングしてもよい。
【0115】
例えば、患者が罹患している、もしくは罹患している可能性のある癌などの症状または疾患がp70S6キナーゼのアップレギュレーションまたは通常のp70S6キナーゼ活性への経路の感作またはリン酸化p70S6キナーゼの過剰発現をもたらす遺伝的異常または異常なタンパク質発現を特徴とするものかどうかを判定するために、患者から採取した生体試料を分析してもよい。アップレギュレーションなる語は、遺伝子増幅(すなわち複数の遺伝子コピー)および転写効果による発現増加を含む高発現または過剰発現、ならびに変異による活性化を含む過活性および活性化を含む。よって、患者をp70S6キナーゼのアップレギュレーションに特徴的なマーカーを検出するための診断試験に供してもよい。診断なる語はスクリーニングも含む。本発明者らはマーカーに、例えば、p70S6の変異を同定するためのDNA組成の測定に関する遺伝マーカーも含める。マーカーなる語はまた、p70S6の酵素活性、酵素レベル、酵素状態(例えば、リン酸化の有無)およびmRNAレベルを含むp70S6のアップレギュレーションに特徴的なマーカーを含む。
【0116】
p70S6キナーゼのアップレギュレーションを伴う腫瘍は、特にp70S6阻害剤に対して感受性がある可能性がある。腫瘍は、p70S6のアップレギュレーションに対して優先的にスクリーニングしてもよい。よって、患者をp70S6のアップレギュレーションに特徴的なマーカーを検出するための診断試験に供してもよい。診断試験は、典型的には、腫瘍生検試料、血液試料(脱落した腫瘍細胞の単離および濃縮)、糞便生検、痰、染色体分析、胸膜液、腹水から選ばれる生体試料に対して行う。
【0117】
タンパク質の変異およびアップレギュレーションの同定および分析方法は当業者に公知である。スクリーニング方法としては、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)またはin situハイブリダイゼーションなどの標準的な方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
RT−PCRによるスクリーニングでは、腫瘍におけるmRNAのレベルは、mRNAのcDNAコピーを作成した後、当該cDNAをPCRで増幅することにより評価する。PCR増幅の方法、プライマーの選択、および増幅条件は当業者に公知である。核酸の操作およびPCRは、例えば、Ausubel,F.M.ら編集「Current Protocols in Molecular Biology」、2004、John Wiley&Sons Inc.、またはInnis,M.A.ら編集「PCR Protocols:a guide to methods and applications」、1990、Academic Press、San Diegoに記載のような標準的な方法により行う。核酸技術に関する反応および操作はまた、Sambrookら、2001、第三版、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載されている。あるいは、RT−PCR用の市販キット(例えば、Roche Molecular Biochemicals)、または米国特許第4,666,828号;第4,683,202号;第4,801,531号;第5,192,659号;第5,272,057号;第5,882,864号および第6,218,529号に開示の方法が使用でき、これらは参照により本書に援用される。
【0119】
mRNAの発現を評価するためのin situハイブリダイゼーション技術の例として、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)がある(Angerer、1987「Meth.Enzymol.」、152:649参照)。
【0120】
一般に、in situハイブリダイゼーションは次の主要な工程を含む:(1)分析する組織の固定;(2)標的核酸の接触性を高めるためそして非特異的結合を軽減するための試料のプレハイブリダイゼーション処理;(3)核酸混合物と生物学的構造または組織中の核酸とのハイブリダイゼーション;(4)ハイブリダイゼーションにおいて結合しなかった核酸断片を除去するためのハイブリダイゼーション後の洗浄;ならびに(5)ハイブリダイズした核酸断片の検出。かかる用途に用いるプローブは、典型的には、例えば、放射性同位元素または蛍光リポーターで標識化される。好ましいプローブは、ストリンジェントな条件下で標的核酸との特異的ハイブリダイゼーションを可能とするに十分な長さ、例えば、約50、100、または200ヌクレオチド〜約1000以上のヌクレオチドである。FISHを行うための標準的な方法は、Ausubel,F.M.ら編集「Current Protocols in Molecular Biology」、2004、John Wiley&Sons IncおよびFluorescence In Situ Hybridization:Technical Overview by John M.S.Bartlett in「Molecular Diagnosis of Cancer,Methods and Protocols」,第二版;ISBN:1−59259−760−2;(2004月3月)、077〜088ページ;Series:Methods in Molecular Medicineに記載されている。
【0121】
あるいは、mRNAから発現したタンパク質産物を、腫瘍試料の免疫組織化学、マイクロタイタープレートを用いる固相イムノアッセイ、ウエスタンブロット、二次元SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、ELISA、フローサイトメトリー、および特定のタンパク質を検出するための当技術分野で公知の他の方法により評価することができる。検出方法には、部位特異的抗体の使用が含まれことになる。当業者であれば、p70S6キナーゼのアップレギュレーションの検出のためのかかる周知技術がいずれもこの場合に適用可能であることを認識しているものである。
【0122】
したがって、本発明の別の実施態様(実施態様5.1)では、(i)患者が罹患している、または罹患している可能性のある疾患または症状がp70S6キナーゼに対して活性を有する化合物による治療に感受性があるものかどうかを判定すべく患者をスクリーニングすること、および(ii)患者の疾患または症状がそのような感受性を有することが示された場合に、その後、患者に実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の化合物を投与することを含む、p70S6キナーゼが仲介する病態もしくは症状の診断および治療方法が提供される。
【0123】
別の実施態様(実施態様5.2)では、スクリーニングされ、p70S6に対して活性を有する化合物による治療に感受性のある疾患もしくは症状に罹患している、または罹患するリスクがあると判定された患者における病態もしくは症状の治療または予防用薬剤の製造のための実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の化合物の使用を提供する。
【0124】
さらなるの実施態様(実施態様5.3)では、スクリーニングされ、p70S6に対して活性を有する化合物による治療に感受性のある疾患もしくは症状に罹患している、または罹患するリスクがあると判定された患者における病態もしくは症状の治療または予防で使用するための実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の化合物を提供する。
【0125】
本発明の別の実施態様(実施態様5.4)では、(i)患者が罹患している、もしくは罹患している可能性のある疾患または症状がp70S6キナーゼに対して活性を有する化合物による治療に感受性があるものかどうかを判定すべく患者をスクリーニングすること、および(ii)患者の疾患または症状がそのような感受性を有することが示された場合に、その後、患者に実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の化合物を投与することを含む、p70S6キナーゼのアップレギュレーションもしくは変異型p70S6の存在を特徴とする病態もしくは症状の診断および治療方法が提供される。
【実施例】
【0126】
実施例
次の実施例では、NMR実験はいずれもd6−DMSO中で行った。
LCMS条件
次の方法を使用して、下記実施例1〜60の化合物を分析した。
方法A
LC−MSは、X−bridge C18 150×4.6mm 5ミクロンを用いて行った。カラム流量は1mL/分であり、使用した溶媒は100%HPLCグレード水(A)および100%ACNグラジエントグレード(B)であり、注入容量は10μLであった。方法を下に記載する。
【表1】

【0127】
方法B
LC−MSは、X−bridge C18 250×4.6mm 5ミクロンを用いて行った。カラム流量は1mL/分であり、使用した溶媒は100%HPLCグレード水(A)および100%ACNグラジエントグレード(B)であり、注入容量は10μLであった。方法を下に記載する。
【表2】

【0128】
方法C
LC−MSは、X−bridge C18 250×4.6mm 5ミクロンを用いて行った。カラム流量は1mL/分であり、使用した溶媒は0.05%CHCOONH水溶液HPLCグレード(A)および0.05%CHCOONHメタノール溶液グラジエントグレード(B)であり、注入容量は5μLであった。方法を下に記載する。
【表3】

【0129】
方法D
LC−MSは、265nmで、X−bridge C18 150×4.6mm 5ミクロンを用いて行った。カラム流量は1mL/分であり、使用した溶媒は100%HPLCグレード水(A)および100%ACNグラジエントグレード(B)であり、注入容量は10μLであった。方法を下に記載する。
【表4】

【0130】
方法E
LC−MSは、X−bridge C18 150×4.6mm 5ミクロンを用いて行った。カラム流量は1mL/分であり、使用した溶媒は0.05%CHCOONHの水:メタノール溶液であり、注入容量は10μLであった。方法を下に記載する。
【表5】

【0131】
方法F
LC−MSは、X−bridge C18 150×4.6mm 5ミクロンを用いて行った。カラム流量は1mL/分であり、使用した溶媒は0.1%TFAの水:ACN溶液であり、注入容量は10μLであった。方法を下に記載する。
【表6】

【0132】
方法G
LC−MSは、X−bridge C18 150×4.6mm 5ミクロンを用いて行った。カラム流量は1mL/分であり、使用した溶媒は0.1%ギ酸の水:ACN溶液であり、注入容量は10μLであった。方法を下に記載する。
【表7】

【0133】
方法H
LC−MSは、X−bridge C18 150×4.6mm 5ミクロンを用いて行った。カラム流量は1mL/分であり、使用した溶媒は0.05%CHCOONHの水:メタノール溶液であり、注入容量は10μLであった。方法を下に記載する。
【表8】

【0134】
次の方法を使用して、下記実施例61〜65の化合物を分析した。
試料は、Waters2795 Alliance HT HPLC、Micromass ZQ質量分析計およびWaters996フォトダイオードアレイUV検出器を用いて、逆相HPLC−MSにより分析した。LC−MSは、エレクトロスプレーイオン化を使用し、2種類の異なるクロマトグラフィー系を選ぶことができる。
【0135】
溶媒
C=2.5Lの水中の1.58gのギ酸アンモニウム+2.5mLのアンモニア溶液
D=2.5Lのアセトニトリル+132mLの(5%)の溶媒C+2.5mLのアンモニア溶液。
【0136】
クロマトグラフィー
カラム:Phenomenex Gemini C18、5um、4.6×30mm
注入容量:5μL
UV検出:220〜400nm
カラム温度:35℃。
【表9】

【0137】
質量分析計
【表10】

【0138】
略語
次の略語を下記実施例で使用する。
【表11】

【0139】
実施例1
ベンジル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン
【化6】


標題化合物を下記スキームAに示す合成経路により調製した。
【化7】

【0140】
工程A
ベンジル−(6−クロロ−キノキサリン−2−イル)−アミン
2,6−ジクロロキノキサリン(0.500g、2.5mmol)を室温でDMSO(10mL)に溶解し、フェニルメタンアミン(1.3g、12.56mmol)を加えた。この反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応終了後(TLCにより確認)、反応混合物に水(100mL)加え、この層を酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。有機層を水(15mL)、ブライン(15mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させた。有機層を真空下で濃縮し、粗生成物を得た。
【0141】
粗生成物をシリカゲルに吸着させ、60〜120のメッシュサイズの中性シリカゲルを用いて、カラムクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン中で5〜15%の酢酸エチルの勾配を用いて、標題化合物を溶出した(0.490g、72%)。
【0142】
工程B
4−(2−ベンジルアミノ−キノキサリン−6−イル)−ピラゾール−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
ベンジル−(6−クロロ−キノキサリン−2−イル)−アミン(0.250g、0.92mmol、1eq)と、N−Boc−4−ピラゾールボロン酸ピナコールエステル(0.328g、1.1mmol、1.2eq)と、炭酸セシウム(1.2g、3.71mmol、4.03eq)と、ヨウ化カリウム(0.015g、0.09mmol、0.1eq)との1,4−ジオキサン(12mL)中の混合物を室温にて真空下で脱気し、窒素雰囲気下に置いた。このプロセスを2回繰り返し、室温でFu触媒(Fu's catalyst)(ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)−パラジウム(0))(0.023g、0.046mmol)を加えた。反応混合物を180分間のマイクロ波照射により100℃まで加熱した。有機混合物を酢酸エチル(150)で希釈し、水(20mL×2)およびブライン(20mL)で洗浄した。有機溶媒を真空下で蒸発させ、粗生成物を得た。粗生成物を、60〜120のメッシュサイズの中性シリカゲルを用いて、カラムクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン中で25〜35%の酢酸エチルの勾配を用いて、標題化合物を溶出した(157mg、43%)。
【0143】
工程C
ベンジル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン
1,4−ジオキサン(3mL)中の4−(2−ベンジルアミノ−キノキサリン−6−イル)−ピラゾール−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(157mg、0.39mmol)の氷冷溶液にジオキサン(2mL)中の14%HClを加えた。得られた混合物を室温で2時間撹拌した。反応終了後、揮発性物質を真空下で蒸発除去し、HCl塩をDCMでトリチュレーションして、粗生成物を得た。粗生成物を分取HPLCによりさらに精製して、標題化合物(32mg、27%)を得た。
【0144】
実施例2
ベンジル−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]アミン塩酸塩
【化8】


下記スキームBに示す一連の反応により標題化合物を調製した。
【化9】

【0145】
工程A
ベンジル−(6−クロロ−キノキサリン−2−イル)−メチル−アミン
2,6−ジクロロキノキサリン(0.500g、2.5mmol)を室温でDMSO(10mL)に溶解し、N−メチル−1−フェニルメタンアミン(1.53g、12.56mmol)を反応混合物に加えた。この反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応終了後(TLCにより確認)、反応混合物に水(100mL)加え、これを酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。有機層を水(10mL)、ブライン(10mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させた。有機層を真空下で濃縮し、粗生成物を得た。
【0146】
粗生成物を、60〜120のメッシュサイズの中性シリカゲルを用いて、カラムクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン中で5〜15%の酢酸エチルの勾配を用いて、標題化合物を溶出した(0.550g、93%)。
【0147】
工程B
4−[2−(ベンジル−メチル−アミノ)−キノキサリン−6−イル]−ピラゾール−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
N−ベンジル−6−クロロ−N−メチルキノキサリン−2−アミン(0.250g、0.88mmol)と、N−Boc−4−ピラゾールボロン酸ピナコールエステル(0.310g、1.05mmol)と、炭酸セシウム(1.14g、3.52mmol)と、ヨウ化カリウム(0.014g、0.088mmol)とを室温で1,4−ジオキサン(12mL)に加えた。この混合物を真空下で脱気し、窒素雰囲気下に置いた(このプロセスを2回繰り返した)。室温でFu触媒(Fu's catalyst)(ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0))(0.022g、0.04mmol)を加えた。180分間マイクロ波反応器中で照射して反応混合物を100℃で加熱した。有機混合物を酢酸エチル(150mL)で希釈し、水(20mL×3)に続きブライン(20mL)で洗浄した。有機溶媒を真空下で蒸留し、粗化合物を得た。
【0148】
粗生成物を、60〜120のメッシュサイズの中性シリカゲルを用いて、カラムクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン中で25〜35%の酢酸エチルの勾配を用いて、標題化合物を溶出した。最終化合物をジエチルエーテルでさらにトリチュレーションして、精製化合物を得た(0.011g、5%)。
【0149】
工程C
ベンジル−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン塩酸塩
1,4−ジオキサン(3mL)中の4−[2−(ベンジル−メチル−アミノ)−キノキサリン−6−イル]−ピラゾール−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(250mg)の氷冷溶液にHCl(1,4−ジオキサン中)を加えた。得られた混合物を室温まで温め、さらに2時間撹拌した。反応終了後、揮発性物質を真空下で蒸発させ、最終化合物のHCl塩をDCMでトリチュレーションした。生成物を分取HPLC(0.009g、3%)でさらに精製した。
【0150】
実施例1〜8
上記の合成法にしたがって実施例3〜8の化合物を調製した(下記表に示すように変更した)。
【化10】

【化11】

【0151】
実施例9
(3−クロロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン
【化12】

【0152】
下記スキームCに示す一連の反応により標題化合物を調製した。
【化13】

【0153】
工程A
6−ブロモキノキサリン−2(1H)−オン
キノキサリン−2(1H)−オン(14.6g、0.1mol、アルドリッチカタログ番号260517)および硫酸銀(15.6g、0.05mol)を20℃で濃硫酸(100ml)に溶解した。臭素(5.2ml、0.1mol)を加え、反応混合物を24時間激しく撹拌した。次いで、反応塊状物を四塩化炭素(100mL)で希釈し、これを50℃で加熱した。次いで、反応塊状物をろ過し、ろ液を氷冷水へ注ぎ、30分間撹拌して、析出物を得た。析出物をろ過し、固形物を真空下で乾燥させ、標題生成物を得た(9.0g、40%)。
【0154】
工程B
6−ブロモ−2−クロロ−キノキサリン
6−ブロモキノキサリン−2(1H)−オン(9.0g、40mmol)をPOCl(50mL)に溶解し、DMF(2mL)を室温で加えた。この混合物を50℃で2時間加熱した。反応終了後、室温まで冷却し、ゆっくりと氷冷水に注いだ。この混合物を30分間撹拌し、次いで、ろ過して粗生成物を得た。
【0155】
粗生成物を、60〜120のメッシュサイズの中性シリカゲルを用いて、カラムクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン中で8〜9%のDCMの勾配を用いて、標題化合物を溶出した(5.0g、51%)。
H NMR(d6−DMSO)□9.03(s、1H)、8.42(d、1H)、8.08(dd、1H)、7.98(d、1H).
【0156】
工程C
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−(3−クロロ−ベンジル)−アミン
DMSO(9mL)中の6−ブロモ−2−クロロ−キノキサリン(0.3g、1eq、1.23mmol)の溶液に、室温で3−クロロベンジルアミン(0.87g、5eq、6.2mmol)を加えた。この反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応終了後、水(60mL)を加え、反応混合物を酢酸エチル(30mL×3)で抽出した。有機層を水(60mL)およびブライン(60mL)で洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。有機層を真空下で濃縮し、粗生成物を得た。
【0157】
最終精製のため、ヘキサン中で0〜1%のメタノールの勾配を用いた、60〜120メッシュサイズの中性シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーを使用して、標題化合物を溶出した(0.39g、90%)。
【0158】
工程D
4−[2−(3−クロロ−ベンジルアミノ)−キノキサリン−6−イル]−ピラゾール−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−(3−クロロ−ベンジル)−アミン(0.4g、1eq、1.15mmol)と、1−Boc−4−ピラゾールボロン酸ピナコールエステル(0.4g、1.2eq、1.37mmol)と、炭酸セシウム(1.5g、4.0eq、4.6mmol)と、ヨウ化カリウム(0.019g、0.1eq、0.11mmol)との1,4−ジオキサン(22mL)中の混合物を室温にて真空下で脱気し、次いで、窒素雰囲気下に置いた。このプロセスを2回繰り返し、Fu触媒(Fu's catalyst)(ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0))(0.058g、0.1eq、0.1mmol)を室温で加えた。反応混合物を180分間のマイクロ波反応器中で110℃まで加熱した。反応終了(TLCにより確認)後、有機混合物を酢酸エチル(200mL)で希釈し、水(75mL×3)次いでブライン(75mL)で洗浄した。有機層を乾燥させて濃縮し、粗生成物を得た。
【0159】
最終精製のため、DCM中で2〜5%のメタノールの勾配を用いた、60〜120メッシュサイズの中性シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーを使用して、標題化合物を溶出した(0.150g、30%)。
【0160】
工程E
(3−クロロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン
DCM(4mL)中の4−[2−(3−クロロ−ベンジルアミノ)−キノキサリン−6−イル]−ピラゾール−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(0.35g、0.80mmol)の溶液に、ジオキサン(0.4mL)中のHClを室温で加えた。反応終了後、反応混合物を濃縮し、DCM(4mL)で洗浄して、標題化合物(0.06g、22%)を得た。
【0161】
実施例10〜20
上記の方法にしたがって実施例10〜20の化合物を調製した(示すように変更を加えた)。
【化14】


【化15】


【化16】


【化17】


【化18】

【0162】
実施例21
(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン
【化19】


【0163】
下記スキームDに示す合成経路により標題化合物を調製した。
【化20】

【0164】
工程A
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−(4−フルオロ−ベンジル)−アミン
6−ブロモ,2−クロロキノキサリン(0.25g、1.02mmol)を室温でDMSO(8mL)に溶解し、4−フルオロベンジルアミン(0.64g、5.1mmol)を加えた。この反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応終了後、反応混合物を、30分間撹拌しながら氷水(100mL)に注いだ。析出物をろ去し、水で洗浄し、真空下で乾燥させて、固体の粗生成物を得た。
生成物を、60〜120のメッシュサイズの中性シリカゲルを用いて、カラムクロマトグラフィーにより精製した。DCM中で1〜2%のメタノールの勾配を用いて、標題化合物を溶出した(0.35g、100%)。
【0165】
工程B
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−アミン
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−(4−フルオロ−ベンジル)−アミン(0.35g、1.0mmol)を室温でDMF(5mL)中の水素化ナトリウム(0.037g、1.5mmol)の懸濁液に加え、15分間撹拌した。反応混合物を、5〜10℃まで冷却し、ヨウ化メチル(0.17g、1.2mmol)を5〜10℃で加え、これを30分間維持した。反応終了後、反応混合物を、氷冷水(30mL)へ徐々に注ぎ、さらに30分間撹拌した。析出物をろ過し、水で洗浄し、真空下で乾燥させて、標題化合物(0.4g)を得、これを次の工程で直接使用した。
【0166】
工程C
(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−アミン(0.4g、1.1mmol)と、1−Boc−4−ピラゾールボロン酸ピナコールエステル(0.4g、1.3mmol)と、炭酸セシウム(1.5g、4.6mmol)と、ヨウ化カリウム(0.018g、0.1mmol)とを室温で1,4−ジオキサン(20mL)に溶解した。反応混合物を室温にて真空下で脱気し、窒素雰囲気下に置いた。このプロセスを2回繰り返し、室温でゆっくりとビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)−パラジウム(0)(0.059g、0.1mmol)を加えた。反応混合物をマイクロ波照射により110℃で180分間加熱した。反応終了後、反応混合物を酢酸エチル(150mL)で希釈し、水(3×20mL)次いでブライン(20mL)で洗浄した。有機揮発性物質を真空下で除去し、残留固形物を得た。
【0167】
生成物を、60〜120のメッシュサイズの中性シリカゲルを用いて、カラムクロマトグラフィーにより精製した。DCM中で1〜4%のメタノールの勾配を用いて、標題化合物とBoc保護誘導体(混合物に対して0.2g)との混合物を溶出した。混合物を、分取TLCおよび分取HPLCによりさらに精製し、標題化合物を得た(0.015g、4%)。
【0168】
実施例22〜28
上記の方法にしたがって実施例22〜28の化合物を調製した(示すように変更を加えた)。
【化21】


【化22】


【化23】

【0169】
実施例29
(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン
【化24】

【0170】
下記スキームEに示す一連の反応により標題化合物を調製した。
【化25】

【0171】
工程A
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−メチル−アミン
THF(6mL)中の6−ブロモ−2−クロロ−キノキサリン(0.7g、1eq、2.87mmol)の溶液に、室温でTHF(3mL)中のメチルアミンの溶液を加えた。この混合物を室温で2時間撹拌した。反応終了後、揮発性物質を真空下で除去し、反応混合物に水(20mL)を加えた。水層を酢酸エチル(15mL×3)で抽出した。有機層を水(20mL)およびブライン(20mL)で洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。有機層を真空下で濃縮し、粗生成物を得た。
【0172】
最終精製のため、ヘキサン中で3〜5%の酢酸エチルの勾配を用いた、60〜120メッシュサイズの中性シリカゲル上でカラムクロマトグラフィーを使用して、標題化合物を溶出した(0.6g、87%)。
【0173】
工程B
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−メチル−アミン
DMF(15mL)中の水素化ナトリウム(0.08g、1.5eq、3.37mmol)の懸濁液に、0℃で(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−メチル−アミン(0.6g、1.0eq、2.51mmol)を加えた。この反応混合物を0℃で15分間撹拌した。DMF(15mL)中の4−(ブロモメチル)−1−フルオロ−2−(トリフルオロメチル)ベンゼン(0.7g、1.2eq、2.72mmol)の混合物を室温で加え、反応混合物を0℃で2.0時間撹拌した。反応終了後、冷水(180mL)を加え、反応混合物を15分間撹拌し、次いでろ過した。固形物を真空下で乾燥させ、標題化合物(0.7g、67%)を得た。
【0174】
工程C
4−{2−[(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−メチル−アミノ]−キノキサリン−6−イル}−ピラゾール−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−メチル−アミン(0.35g、1eq、0.84mmol)と、1−Boc−4−ピラゾールボロン酸ピナコールエステル(0.3g、1.2eq、1.01mmol)と、炭酸セシウム(1.1g、4.0eq、3.3mmol)と、ヨウ化カリウム(0.014g、0.1eq、0.84mmol)との1,4−ジオキサン(15mL)中の混合物を室温にて真空下で脱気し、次いで、窒素雰囲気下に置いた。このプロセスを2回繰り返し、Fu触媒(Fu's catalyst)(ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0))(0.02g、0.05eq、0.04mmol)を室温で加えた。反応混合物を180分間のマイクロ波反応器中で108℃まで加熱した。反応終了(TLCにより確認)後、有機混合物を酢酸エチル(325mL)で希釈し、水(100mL×3)次いでブライン(100mL)で洗浄した。有機溶媒を乾燥させ濃縮して、固体残渣を得た。
【0175】
最終精製のため、DCM中で1〜2%のメタノールの勾配を用いた、60〜120メッシュサイズの中性シリカゲル上でカラムクロマトグラフィーを使用して、標題化合物を溶出した(0.15g、35%)。
【0176】
工程D
(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン
DCM(1.5mL)中の、4−{2−[(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−メチル−アミノ]−キノキサリン−6−イル}−ピラゾール−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(0.15g、0.299mmol)の溶液に、室温でジオキサン(1.0mL)中のHClを加えた。この反応混合物を2時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を濃縮し、ジエチルエーテル(5.0mL)で洗浄して、HCl塩(75mg)を得た。この化合物をTHF中のアンモニアで塩基性化し、分取TLCによりさらに精製して、標題化合物を得た(0.035g、29%)。
【0177】
分取TLCに使用した移動相は、DCM:メタノール(9:1)であった。
【0178】
実施例30および31
上記の方法にしたがって実施例30および31の化合物を調製した(示すように変更を加えた)。
【化26】

【0179】
[2−(3−アミノメチル−フェノキシ)−エチル]−ジメチル−アミンの調製
【化27】

【0180】
標題化合物を下記スキームFに示す合成経路により調製した。
【化28】

【0181】
工程A
3−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−ベンゾニトリル
DMF(30mL)中の水素化ナトリウム(0.84g、2.5eq、21mmol)の撹拌懸濁液を0℃まで冷却し、DMF(30mL)中の3−シアノフェノール(1.0g、1.0eq、8.4mmol)の溶液を0℃でゆっくりと加えた。この反応混合物を30分間撹拌し、2−(クロロ−エチル)−ジメチル−アミン(1.44g、1.2eq、10.0mmol)を0℃で加えた。反応混合物を80℃まで一晩加熱した。反応終了後に、反応塊状物を水(300ml)に注ぎ、酢酸エチル(3×50ml)を用いて抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮して、粗生成物を得た。
【0182】
粗生成物を、60〜120のメッシュサイズの中性シリカゲルを用いて、カラムクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン中で25%の酢酸エチルの勾配を用いて、標題化合物を溶出した(0.5g、13%)。
【0183】
工程B
2−(3−アミノメチル−フェノキシ)−エチル]−ジメチルアミン
3−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−ベンゾニトリル(0.8g、1eq、4.1mmol)をTHF(80mL)に溶解し、0〜5℃まで冷却した。THF(0.47g、3.0eq、12.3mmol)中の水素化アルミニウムリチウムの1.0M溶液を0〜5℃で加えた。反応混合物を室温まで温め4時間撹拌した。反応終了(TLCにより確認)後、0〜5℃の酢酸エチルをゆっくりと加えて、反応混合物中の過剰な水素化アルミニウムリチウムをすべてクエンチし、続いて飽和硫酸ナトリウム溶液(2mL)を加えた。反応塊状物をハイフロ床(hy-flow bed)に通してろ過し、ろ液を真空下で濃縮して、粗生成物を得た。
【0184】
粗生成物を、60〜120のメッシュサイズの中性シリカゲルを用いて、カラムクロマトグラフィーにより精製した。DCM中で3〜4%のメタノールの勾配を用いて、標題化合物を溶出した(0.5g、63%)。
【0185】
実施例32
3,4−ジフルオロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン
【化29】


工程Aでベンジルアミンの代わりに3,4−ジフルオロ−ベンジルアミンを使用した以外は実施例1で使用したのと同じ方法により標題化合物を調製した。
【0186】
実施例33
((R)−1−フェニル−エチル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン
【化30】

【0187】
下記スキームGに示す一連の反応により標題化合物を調製した。
【化31】

【0188】
工程A
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−((R)−1−フェニル−エチル)−アミン
DMSO(6mL)中の6−ブロモ−2−クロロ−キノキサリン(0.45g、1eq、1.85mmol)の溶液に、室温で(R)−1−フェニルエタンアミン(0.67g、3eq、5.55mmol)を加えた。この混合物を一晩撹拌した。反応終了(TLCにより確認)後、冷水(40mL)を反応混合物に加え、これを1時間室温で撹拌した。析出物をろ去し、水(10mL)で洗浄し、次いで真空下で乾燥させて、標題化合物(0.48g、79%)を得た。
【0189】
工程B
4−[2−((R)−1−フェニル−エチルアミノ)−キノキサリン−6−イル]−ピラゾール−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−((R)−1−フェニル−エチル)−アミン(0.42g、1eq、1.28mmol)と、1−boc−4−ピラゾールボロン酸ピナコールエステル(0.45g、1.2eq、1.53mmol)と、炭酸セシウム(1.66g、4.0eq、5.1mmol)と、ヨウ化カリウム(0.021g、0.1eq、0.13mmol)との1,4−ジオキサン(20mL)中の混合物を室温にて真空下で脱気し、次いで、窒素雰囲気下に置いた。このプロセスを2回繰り返し、Fu触媒(Fu's catalyst)(ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0))(0.033g、0.05eq、0.06mmol)を室温で加えた。反応混合物を180分間のマイクロ波反応器中で108℃まで加熱した。反応終了(TLCにより確認)後、反応混合物を酢酸エチル(200mL)で希釈し、次いで水(50mL×3)およびブライン(50mL)で洗浄した。有機層を乾燥させて濃縮し、粗生成物を得た。
【0190】
最終精製のため、DCM中で1〜3%のメタノールの勾配を用いた、60〜120メッシュサイズの中性シリカゲル上でカラムクロマトグラフィーを使用して、標題化合物を溶出した(0.25g、47%)。
【0191】
工程C
((R)−1−フェニル−エチル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン
DCM(4mL)中の4−[2−((R)−1−フェニル−エチルアミノ)−キノキサリン−6−イル]−ピラゾール−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(0.25g、0.602mmol)の溶液に、室温でジオキサン(1.0mL)中の4M HClを加えた。この混合物を2時間撹拌した。反応終了後、反応塊状物を真空下で濃縮して、粗HCl塩(0.2g)を得た。
【0192】
この粗HCl塩をTHF中のアンモニアで塩基性化し、分取TLCにより精製して、標題化合物を得た(0.030g、16%)。
分取TLCに使用した移動相はDCM:メタノール(9:1)であった。
【0193】
実施例34
ベンジル−メチル−[1−オキシ−7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン
【化32】

【0194】
下記スキームHに示す一連の反応により標題化合物を調製した。
【化33】

【0195】
工程A
7−ブロモ−1−オキシ−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イルアミン
4−ブロモ−2−ニトロ−フェニルアミン(10g、46mmol、市販:ABCR、AB145585)とシアナミド(2g、30mmol)との混合物を100℃で加熱し、50℃まで冷却した。これにゆっくりとHCl(20mL)を加え、この混合物を100℃で3時間加熱した。この混合物を室温まで冷却し、NaOH(7.5M、50mL)を加えた。この混合物を100℃で1時間加熱し、室温まで冷却し、水で希釈した。この混合物をろ過し、エーテルで洗浄して、標題化合物(11g、99%)を黄色の固形物として得た。
【0196】
工程B
7−ブロモ−1−オキシ−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−オール
0℃のTFA(100mL)中の7−ブロモ−1−オキシ−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イルアミンの溶液にゆっくりとNaNO(5g、73mmol)を加えた。この反応混合物を室温で2時間撹拌し、氷水に注いだ。この混合物を30分で撹拌し、ろ過した。固形物を水で洗浄し、乾燥させて、7−ブロモ−1−オキシ−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−オール(11g、100%)を黄色の固形物として得た。
【0197】
工程C
7−ブロモ−3−クロロ−ベンゾ[1,2,4]トリアジン1−オキシド
POCl(50mL)中の7−ブロモ−1−オキシ−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−オール(11g、46mmol)の溶液を還流状態で16時間加熱し、室温まで冷却し、氷水へ注ぎ、30分間撹拌した。混合物をろ過し、水で洗浄し、乾燥させて、7−ブロモ−3−クロロ−ベンゾ[1,2,4]トリアジン1−オキシド(5g、42%)を黄色の固形物として得た。
【0198】
工程D
ベンジル−(7−ブロモ−1−オキシ−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル)−アミン
DMSO(10mL)中の7−ブロモ−3−クロロ−ベンゾ[1,2,4]トリアジン1−オキシド(1.1g、1eq、4.22mmol)の溶液に室温でベンジルアミン(1.13g、2.5eq、10.5mmol)を加えた。反応混合物を3時間室温で撹拌した。反応終了後、冷水(70mL)を反応混合物に加え、これを1時間室温で撹拌した。析出物をろ過し、水(10mL)で洗浄し、次いで真空下で乾燥させて、標題化合物(1.1g、78%)を得た。
【0199】
工程E
ベンジル−(7−ブロモ−1−オキシ−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル)−メチル−アミン
0℃のDMF(5mL)中の水素化ナトリウム(0.14g、1.6eq、5.83mmol)の懸濁液に、DMF(25mL)中のベンジル−(7−ブロモ−1−オキシ−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル)−アミン(1.2g、1.0eq、3.62mmol)の氷冷溶液を加えた。この反応混合物を0℃で15分間撹拌した。次いで、DMF(25mL)中のヨウ化メチル(0.67g、1.3eq、4.7mmol)の溶液を0℃で加え、反応混合物を2.0時間0℃で撹拌した。反応終了後、水(150mL)を反応混合物に加え、酢酸エチル(25mL×3)で水層を抽出した。有機層を水(100mL)およびブライン(100mL)で洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。有機層を真空下で濃縮し、粗生成物を得た。
【0200】
最終精製のため、ヘキサン中で5〜10%の酢酸エチルの勾配を用いた中性シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーを使用して、標題化合物を溶出した(1.0g、80%)。
【0201】
工程F
ベンジル−メチル−[1−オキシ−7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン
ベンジル−(7−ブロモ−1−オキシ−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル)−メチル−アミン(0.6g、1eq、1.7mmol)と、1−Boc−4−ピラゾールボロン酸ピナコールエステル(0.51g、1.0eq、1.7mmol)と、炭酸セシウム(2.26g、4.0eq、6.95mmol)と、ヨウ化カリウム(0.029g、0.1eq、0.17mmol)との1,4−ジオキサン(30mL)中の混合物を室温にて真空下で脱気し、次いで、窒素雰囲気下に置いた。このプロセスを2回繰り返し、室温でFu触媒(Fu's catalyst)(ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0))(0.045g、0.05eq、0.09mmol)を加えた。反応混合物を180分間のマイクロ波反応器中で108℃まで加熱した。反応終了(TLCにより確認)後、混合物を酢酸エチル(300mL)で希釈し、水(100mL×3)およびブライン(100mL)で洗浄した。有機溶媒をNaSOで乾燥させ濃縮して、粗残渣を得た。
【0202】
最終精製には、DCM中での0〜3%のメタノールの勾配を用いた中性シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーを使用して、標題化合物を溶出した(0.15g)。この化合物を分取TLCによりさらに精製し、純生成物(0.019g、3%)を得た。
【0203】
実施例35
ベンジル−メチル−[7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン
【化34】

【0204】
エタノール(12mL)中のベンジル−メチル−[1−オキシ−7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン(1.0eq、0.15mg、0.45mol、調製は実施例34を参照されたい)の溶液に、室温で水(3mL)に続いて亜ジチオン酸ナトリウム(4eq、0.32g、1.8mmol)を加えた。反応物を1.0時間70℃で撹拌した。反応終了後、反応物を室温まで冷却し、反応混合物を真空下で40℃にて濃縮した。酢酸エチル(3×50mL)を用いて生成物を残渣から抽出し、酢酸エチル層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、次いで、減圧下で濃縮させて、黄色の固形物(0.13g)を得た。
【0205】
この化合物を分取TLCによりさらに精製し、標題化合物(0.030g、21%)を得た。
分取TLCに使用した移動相は、DCM:メタノール(9.5:0.5)であった。
【0206】
実施例36〜39
上記の方法にしたがって実施例36〜39の化合物を調製した(示すように変更を加えた)。
【化35】

【0207】
C−ナフタレン−2−イル−メチルアミン
【化36】

【0208】
下記スキームIに示す合成経路により標題化合物を調製した。
【化37】

【0209】
工程A
塩化ナフタレン−2−カルボニル
2−ナフトエ酸(2.0g、1.0eq、11.62mmol)を室温でDCM(30mL)に溶解し、DMFを2〜3滴加えた。反応液を0〜5℃まで冷却し、ゆっくりと塩化オキサリル(2.95g、2.0eq、23.23mmol)を0〜5℃の反応塊状物に加えた。反応混合物を室温で窒素下にて3〜4時間撹拌した。反応終了(TLCにより確認)後、反応混合物を真空したで濃縮し、粗酸クロリドを得、これを次の工程で直接使用した。
【0210】
工程B
ナフタレン−2−カルボン酸アミド
工程Aから得た塩化ナフタレン−2−カルボニルの溶液をTHF(30mL)に溶解し、これを0℃まで冷却した。この溶液にアンモニアガスをほぼ1.5時間通し、反応物を室温にて密閉系で4時間撹拌した。白色の固形析出物が反応混合物中で観察された。反応混合物を酢酸エチルに溶解し、水に続いてブライン溶液で洗浄した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、揮発性物質を真空下で蒸発除去して、粗生成物を得た。
【0211】
生成物を、60〜120のメッシュサイズの中性シリカゲルを用いて、カラムクロマトグラフィーにより精製した。ヘキサン中で50〜60%の酢酸エチルの勾配を用いて、標題化合物(0.8g)を溶出した。
【0212】
工程C
C−ナフタレン−2−イル−メチルアミン
ナフタレン−2−カルボン酸アミド(0.8g、1eq、4.678mmol)をTHF(80mL)に溶解し、この溶液を0〜5℃まで冷却した。THF(1.42g、8.0eq、37.0mmol)中の水素化アルミニウムリチウム(LAH)の1.0M溶液を0〜5℃で滴下した。この反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応終了(TLCにより確認)後、0〜5℃の酢酸エチルをゆっくりと加えて、反応混合物中の過剰なLAHをクエンチし、続いて飽和硫酸ナトリウム溶液(2mL)を加えた。反応塊状物をハイフロ床(hy-flow bed)に通してろ過し、ろ液を真空下で濃縮して、粗生成物を得た。
【0213】
粗生成物を、60〜120のメッシュサイズの中性シリカゲルを用いて、カラムクロマトグラフィーにより精製した。DCM中で3〜4%のメタノールの勾配を用いて、標題化合物を溶出した(0.43g、58%)。
【0214】
実施例40〜46
上記の方法にしたがって実施例40〜46の化合物を調製した(示すように変更を加えた)。
【化38】


【化39】

【0215】
実施例47
{(R)−1−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル]−エチル}−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン
【化40】

【0216】
下記スキームJに示す一連の反応により標題化合物を調製した。
【化41】


【化42】

【0217】
工程A
3−((R)−1−アミノ−エチル)−フェノール
−78℃のDCM(25mL)中の(R)−1−(3−メトキシ−フェニル)−エチルアミン(0.5g、3.31mmol)の溶液に、DCM(6.6mL、6.62mmol)中の1.0M BBr溶液を滴下した。この溶液を室温まで温め、反応混合物をメタノール(100mL)でクエンチし、次いで、真空下で濃縮した。このプロセスを、メタノールの添加の際に白色のフュームが観察されなくなるまで繰り返し、3−((R)−1−アミノ−エチル)−フェノールを淡黄色の油状物(0.51g)として得、これをさらなる精製をせずに次の工程で使用した。
【0218】
工程B
[(R)−1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル
3−((R)−1−アミノ−エチル)−フェノール(0.5g、3.60mmol)と、ニ炭酸ジ−tert−ブチル(0.337g、1.55mmol)と、トリエチルアミン(0.783mL、5.6mmol)とのDCM(30mL)中の溶液を室温で30分間撹拌した。反応終了後、反応混合物を飽和重炭酸ナトリウム溶液(10mL)で洗浄し、水層をDCM(2×15mL)で抽出した。合わせた有機層を酢酸エチル(325mL)でさらに希釈し、水(100mL×3)次いでブライン(100mL)で洗浄した。有機層をNaSOで乾燥させ、真空下で濃縮して、標題化合物を淡黄色の固形物(2.73g)として得た。
【0219】
最終精製には、DCM中での0〜0.5%メタノールの勾配を用いた中性シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーを使用して、標題化合物(0.57g、66%)を溶出した。
【0220】
工程C
トリフルオロ−メタンスルホン酸3−((R)−1−tert−ブトキシカルボニルアミノ−エチル)−フェニルエステル
DCM(20mL)中の[(R)−1−(3−ヒドロキシ−フェニル)−エチル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル(1.2g、5.38mmol)の溶液に、0℃でトリエチルアミン(1.4mL、10.16mmol)次いでトリフルオロメチルスルホニル無水物(1.6g、5.65mmol)を加えた。この溶液を室温で30分間撹拌し、反応終了後、反応混合物を水(10mL)でクエンチした。水層をDCM(2×15mL)で抽出し、合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮した。粗生成物を、ヘキサン中の10%酢酸エチルで溶離するシリカゲルフラッシュクロマトグラフィーで精製して、標題化合物(0.34g、16%)を得た。
【0221】
工程D
{(R)−1−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル]−エチル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル
トリフルオロ−メタンスルホン酸3−((R)−1−tert−ブトキシカルボニルアミノ−エチル)−フェニルエステル(0.340g、0.921mmol)と、1−メチルピペラジン(0.37g、3.68mmol)と、Pd(dba)(0.042g、0.046mmol)と、2−(ジ−tert−ブチルホスフィノ)−ビフェニル(0.054g、0.184mmol)と、リン酸カリウム(0.273g、1.29mmol)との1,4−ジオキサン20mLの混合物を80℃にてシールドチューブ中で12時間加熱した。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(100mL)で希釈し、水(20mL)で洗浄した。水層を酢酸エチル(2×50mL)で抽出し、合わせた有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、真空下で濃縮して、粗標題化合物を得た。
【0222】
粗生成物を60〜120メッシュのシリカゲルを用いてカラムクロマトグラフィーにより精製し、この化合物をヘキサン中の25%酢酸エチルの勾配により溶離して、標題化合物(0.6g、20%)を得、これを次の工程で使用した。
【0223】
工程E
(R)−1−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル]−エチルアミン
1,4−ジオキサン(1.5mL)中の{(R)−1−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル]−エチル}−カルバミン酸tert−ブチルエステル(0.6g、1.87mmol)の溶液に、4N HCl(aq)(2mL)を室温で加えた。得られた混合物を50℃で5時間加熱した。反応終了後、反応混合物を濃縮し、ジエチルエーテル(5.0mL)で洗浄して、標題化合物(0.330g)を得た。
【0224】
工程F
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−{(R)−1−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル]−エチル}−アミン
6−ブロモ−2−クロロキノキサリン(0.365g、1.5mmol)を室温でDMSO(10mL)に溶解し、(R)−1−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル]−エチルアミン(0.33g、1.5mmol)およびトリエチルアミン(0.626mL、4.50mmol)を溶液に加えた。この反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応終了後、水(100mL)を加え、生成物を酢酸エチル(3×50mL)で抽出した。有機層を水(10mL)に続いてブライン溶液(10mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させた。有機層を真空下で濃縮し、粗生成物を得た。
【0225】
この生成物を、60〜120のメッシュサイズの中性シリカゲルを用いてカラムクロマトグラフィーにより精製し、ヘキサン中の5〜15%酢酸エチルの勾配により溶離して、標題化合物を固形物(0.250g、47%)として得た。
【0226】
工程G
4−(2−{(R)−1−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル]−エチルアミノ}−キノキサリン−6−イル)−ピラゾール−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−{(R)−1−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル]−エチル}−アミン(0.250g、1eq、0.588mmol)と、1−Boc−4−ピラゾールボロン酸ピナコールエステル(0.190g、1.1eq、0.647mmol)と、炭酸セシウム(0.764g、4.0eq、2.35mmol)と、ヨウ化カリウム(0.010g、0.1eq、0.00588mmol)との1,4−ジオキサン(15mL)中の混合物を室温にて真空下で脱気し、窒素雰囲気下に置いた。このプロセスを2回繰り返し、室温でFu触媒(Fu's catalyst)(ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0))(0.015g、0.05eq、0.029mmol)を加えた。反応混合物を180分間のマイクロ波反応器中で105℃まで加熱した。反応終了(TLCにより確認)後、有機混合物を酢酸エチル(325mL)で希釈し、水(100mL×3)次いでブライン(100mL)で洗浄した。有機層を真空下で乾燥および濃縮して、粗残渣を得た。
【0227】
生成物を、60〜120のメッシュサイズの中性シリカゲルを用いて、カラムクロマトグラフィーにより精製した。DCM中でメタノール(1〜3%)を勾配で使用して標題化合物(0.035g、14%)を溶離した。
【0228】
実施例48
メチル−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン
【化43】

【0229】
下記スキームAに示す合成経路により標題化合物を調製した。
【化44】

【0230】
工程A
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−メチル−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−アミン
実施例6の調製から得た(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−アミン(0.4g、0.97mmol)を用いて、標題化合物を、実施例21の工程Bで詳述した方法を用いて調製した(0.35g、84%)。
【0231】
工程B
4−(2−{メチル−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−アミノ}−キノキサリン−6−イル)−ピラゾール−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−メチル−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−アミン(0.3g、0.704mmol)を出発物質として用い、実施例1の工程Bで詳述した方法を用いて、標題化合物を調製した(0.110g、30%)。
【0232】
工程C
メチル−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン
1,4−ジオキサン(1.5mL)中の4−(2−{メチル−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−アミノ}−キノキサリン−6−イル)−ピラゾール−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(0.110g、0.000214mmol)の溶液に、ジオキサン(1.0ml)中のHClを室温で加えた。この混合物を1時間撹拌した。反応終了後、反応混合物を濃縮し、ジエチルエーテル(5.0mL)で洗浄して、粗化合物(0.075g)を得た。この化合物をTHF中のアンモニアで塩基性化し、次いで分取TLCによりさらに精製して、標題化合物を得た(0.050g、54%)。分取TLCに使用した移動相は、DCM:メタノール(9:1)であった。
【0233】
実施例49
[(R)−1−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン塩酸塩
【化45】

【0234】
下記スキームLに示す合成経路により標題化合物を調製した。
【化46】

【0235】
工程A
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−[(R)−1−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−アミン
6−ブロモ,2−クロロキノキサリン(0.700g、2.8mmol)およびトリエチルアミン(0.87g、8.6mmol)を室温でDMSO(15mL)に溶解し、(R)−1−(3−フルオロ−フェニル)−エチルアミン塩酸塩(0.400g、2.8mmol)を加えた。この反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応終了後(TLCにより確認)、反応混合物に水(100mL)加え、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。有機層を水(15mL)およびブライン(15mL)で洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。有機層を真空下で濃縮し、粗生成物を得た。
【0236】
粗生成物をシリカゲルに吸着させ、60〜120のメッシュサイズの中性シリカゲルを用いて、カラムクロマトグラフィーにより精製した。DCM中でメタノール(1〜1.5%)を勾配で使用して標題化合物を固形物として溶出した(0.35g、36%)。
【0237】
工程B
[(R)−1−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン塩酸塩
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−[(R)−1−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−アミン(0.15g、0.43mmol)と、N−Boc−4−ピラゾールボロン酸ピナコールエステル(0.14g、0.47mmol)と、炭酸セシウム(0.56g、1.73mmol)と、ヨウ化カリウム(0.007g、0.043)とを1,4−ジオキサン(5mL)に加えた。反応混合物を室温にて真空下で脱気し、窒素雰囲気下に置いた。このプロセスを2回繰り返し、Fu触媒(Fu's catalyst)(ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0))(0.011g、0.021mmol)を室温で加えた。反応混合物を180分間のマイクロ波反応器中で110℃にて加熱した。有機混合物を酢酸エチル(150mL)で希釈し、水(15mL×2)およびブライン(15mL)で洗浄した。有機溶媒を真空下で蒸発させ、粗生成物を得た。
【0238】
粗生成物を、60〜120のメッシュサイズの中性シリカゲル上でカラムクロマトグラフィーにより精製した。DCM中で2〜3%のメタノールの勾配を用いて、標題化合物(0.06g)を溶出した。さらに精製するため、IPA中の飽和HClで処理して塩酸塩を形成し、続いてアセトン中でトリチュレーションして、標題化合物(0.015g、9%)を得た。
【0239】
実施例50
[(R)−1−(3−メトキシ−フェニル)−エチル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン塩酸塩
【化47】

【0240】
下記スキームMに示す合成経路により標題化合物を調製した。
【化48】

【0241】
工程A
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−[(R)−1−(3−メトキシ−フェニル)−エチル]−アミン
6−ブロモ,2−クロロキノキサリン(0.300g、1.2mmol)を室温でDMSO(15mL)に溶解し、(R)−1−(3−メトキシ−フェニル)−エチルアミン(0.85g、6.1mmol)を加えた。この反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応終了後(TLCにより確認)、反応混合物に水(100mL)加え、これを酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。有機層を水(15mL)およびブライン(15mL)で洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。有機層を真空下で濃縮し、粗生成物を得た。
【0242】
粗生成物をシリカゲルに吸着させ、60〜120のメッシュサイズの中性シリカゲルを用いて、カラムクロマトグラフィーにより精製した。DCM中で1〜1.5%のメタノールの勾配を用いて、標題化合物を固形物(0.35g、82%)として溶出した。
【0243】
工程B
4−{2−[(R)−1−(3−メトキシ−フェニル)−エチルアミノ]−キノキサリン−6−イル}−ピラゾール−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−[(R)−1−(3−メトキシ−フェニル)−エチル]−アミン(0.3g、0.83mmol)と、N−Boc−4−ピラゾールボロン酸ピナコールエステル(0.27g、0.92mmol)と、炭酸セシウム(1.08g、3.34mmol)と、ヨウ化カリウム(0.014g、0.083)とを1,4−ジオキサン(15mL)に溶解した。反応混合物を室温にて真空下で脱気し、窒素雰囲気下に置いた。このプロセスを2回繰り返し、室温でFu触媒(Fu's catalyst)(ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0))(0.021g、0.041mmol)を加えた。反応混合物を180分間のマイクロ波反応器中にて110℃で加熱した。有機混合物を酢酸エチル(150mL)で希釈し、水(15mL×2)およびブライン(15mL)で洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。有機揮発性物質を真空下で蒸発させ、粗生成物を得た。
【0244】
粗生成物を、60〜120のメッシュサイズの中性シリカゲル上でカラムクロマトグラフィーにより精製した。DCM中で2〜3%のメタノールの勾配を用いて、標題化合物と[(R)−1−(3−メトキシ−フェニル)−エチル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン(0.12g)との混合物を溶出した。この混合物を工程Cに供した。
【0245】
工程C
[(R)−1−(3−メトキシ−フェニル)−エチル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン塩酸塩
4−{2−[(R)−1−(3−メトキシ−フェニル)−エチルアミノ]−キノキサリン−6−イル}−ピラゾール−1−カルボン酸tert−ブチルエステルと[(R)−1−(3−メトキシ−フェニル)−エチル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン(混合物の0.12g)との1,4−ジオキサン中の混合物に室温で1,4−ジオキサン中の4M HClを加えた。この混合物を1時間撹拌した。反応終了後、反応塊状物を真空下で濃縮し、THF中のアンモニアを用いて塩基性化した。遊離塩基をIPA中の飽和HClで処理し、続いてアセトン中でトリチュレーションして、標題化合物をHCl塩(0.020g)として得た。
【0246】
実施例51〜54
上記の方法にしたがって実施例51〜54の化合物を調製した(示すように変更を加えた)。
【化49】

【0247】
実施例55
[(R)−1−(3−メトキシ−フェニル)−エチル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン塩酸塩
【化50】

【0248】
下記スキームMに示す合成経路により標題化合物を調製した。
【化51】

【0249】
工程A
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−[(R)−1−(3−クロロ−フェニル)−エチル]−アミン
6−ブロモ,2−クロロキノキサリン(0.35g、1.4mmol)を室温でDMSO(12mL)に溶解し、(R)−1−(3−クロロ−フェニル)−エチルアミン(0.44g、2.8mmol)を加えた。この反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応終了後(TLCにより確認)、反応混合物に水(100mL)加え、酢酸エチル(50mL×3)で抽出した。有機層を水(15mL)およびブライン(15mL)で洗浄し、次いでNaSOで乾燥させた。有機層を真空下で濃縮し、粗生成物を得た。
【0250】
粗生成物を60〜120メッシュシリカゲルに吸着させ、60〜120メッシュサイズの中性シリカゲルを用いて、カラムクロマトグラフィーにより精製した。DCM中で0.5%のメタノールの勾配を用いて、標題化合物(0.380g、72%)を溶出した。
【0251】
工程B
4−{2−[(R)−1−(3−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−キノキサリン−6−イル}−ピラゾール−1−カルボン酸tert−ブチルエステル
(6−ブロモ−キノキサリン−2−イル)−[(R)−1−(3−クロロ−フェニル)−エチル]−アミン(0.38g、1.0mmol)と、N−Boc−4−ピラゾールボロン酸ピナコールエステル(0.37g、1.2mmol)と、炭酸セシウム(1.36g、4.1mmol)と、ヨウ化カリウム(0.017g、0.1)との1,4−ジオキサン(20mL)中の混合物を室温で真空下にて脱気し、窒素雰囲気下に置いた。このプロセスを2回繰り返し、室温でFu触媒(Fu's catalyst)(ビス(トリ−tert−ブチルホスフィン)パラジウム(0))(0.053g、0.1mmol)を加えた。反応混合物を180分間のマイクロ波反応器中で110℃まで加熱した。有機混合物を酢酸エチル(150mL)で希釈し、水(20mL×2)およびブライン(20mL)で洗浄した。有機溶媒を真空下で蒸発させ、粗生成物を得た。
【0252】
粗生成物を、60〜120のメッシュサイズの中性シリカゲル上でカラムクロマトグラフィーにより精製した。DCM中で3〜4%のメタノールの勾配を用いて、標題化合物(0.100g、19%)を溶出した。
【0253】
工程C
[(R)−1−(3−クロロ−フェニル)−エチル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン塩酸塩
1,4−ジオキサン(3mL)中の4−{2−[(R)−1−(3−クロロ−フェニル)−エチルアミノ]−キノキサリン−6−イル}−ピラゾール−1−カルボン酸tert−ブチルエステル(0.1g)の氷冷溶液にジオキサン(2mL)中の14%HClを加えた。得られた混合物を室温で2時間撹拌した。反応終了後、揮発性物質を完全に蒸発除去し、固形物をアセトンでトリチュレーションして、標題化合物をHCl塩(0.017g、20%)として得た。
【0254】
実施例56〜60
上記の方法にしたがって実施例56〜60の化合物を調製した(示すように変更を加えた)。
【化52】

【0255】
特性評価および分析データ
実施例1〜60の化合物の特性評価および分析データを下記表に示す。
【化53】


【化54】


【化55】

【0256】
【化56】


【化57】

【0257】
【化58】


【化59】

【0258】
【化60】


【化61】

【0259】
【化62】


【化63】

【0260】
【化64】


【化65】

【0261】
【化66】


【化67】


【化68】

【0262】
【化69】


【化70】


【化71】

【0263】
実施例61
ベンジル−[1−オキシ−7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン
【化72】

【0264】
この実施例に記載の一連の反応は、上記スキーム1に示す合成経路に従う。
工程A
4−クロロ−2−ニトロ−フェニルアミン(72.4mmol)とシアナミド(476mmol)との混合物を100℃で5分間加熱した。この混合物を冷却し、25mLの濃HClを注意深く加え、混合物を70℃まで加熱した。この混合物を激しく撹拌し、ガスの発生が終わった後に、混合物を室温まで冷却した。50%NaOH(50mL)溶液を混合物に滴下し、この混合物を100℃で30分間加熱した。得られた析出物をろ過し、ろ過ケーキを熱酢酸で洗浄し、次いで乾燥させて、[7−クロロ−1−オキシ−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミンを黄色の固形物として得た。
【0265】
工程B
工程Aの生成物(61.1mmol)を2M HCl(300mL)に溶解した。この混合物を5℃まで冷却し、水(100mL)中のNaNO(10g、145mmol)の溶液を滴下した。得られた析出物をろ去した。ろ過ケーキをNH希釈液に溶解し、濃HClで酸性化した。得られた析出物をろ過し、水で洗浄し、乾燥させて、7−クロロ−3−ヒドロキシ−1−オキシ−ベンゾ[1,2,4]トリアジンを黄色の固形物として得た。
【0266】
工程C
工程Bの生成物(17.2mmol)と、N,N−ジメチルベンゼンアミン(5.5ml、37.4mmol)と、POCl(11.5ml、0.1234mol)との混合物を1時間還流するまで加熱した。次いでこの混合物を氷へ注いだ。得られた固形物をろ過し、水で洗浄して、粗生成物を得、これは酢酸エチルで結晶化させてもよく、3,7−ジクロロ−1−オキシ−ベンゾ[1,2,4]トリアジンが淡黄色の固形物として得られる。
【0267】
工程D
工程Cからの3,7−ジクロロ−1−オキシ−ベンゾ[1,2,4]トリアジン(1.0mmol)をDMF(5ml)に溶解し、KCO(1.1mmol)を加え、続いてベンジルアミン(1.1mmol)を加えた。この混合物を室温で一晩撹拌した。生成物を水から析出させ、ろ過し、水で洗浄し、乾燥させて、3−ベンジルアミノ−7−ジクロロ−1−オキシ−ベンゾ[1,2,4]トリアジンを得た。
【0268】
工程E − ベンジル−[1−オキシ−7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン
3−ベンジルアミノ−7−ジクロロ−1−オキシ−ベンゾ[1,2,4]トリアジン(1.0mmol)を5mlのDMF中に懸濁させた。これにCsCO(1.1mmol)およびFu触媒(Fu's catalyst)(10mol%)を加え、続いて1−tert−ブチルオキシカルボニル−(4−(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−1H−ピラゾール(1.0mmol)を加えた。この混合物を、排気/N充填により3回脱気し、80℃で一晩加熱した。この混合物を濃縮し、シリカゲルカラムに充填し、0〜10%の7N NH/MeOHの勾配およびDCMを用いて、カラムクロマトグラフィーにより精製して、標題化合物を得た。
H NMR:δ13.10(br s,1H)、8.44(br s,1H)、8.39(br t,1H)、8.30(d,1H)、8.14−8.07(m,2H)、7.58(d,1H)、7.39(br d,2H)、7.33(br t,2H)、7.25(br t,1H)、4.60(br d,2H)
LCMS:RT 2.41、m/z 319.3。
【0269】
実施例62
(4−クロロ−ベンジル)−[1−オキシ−7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン
【化73】


ベンジルアミンの代わりに4−クロロベンジルアミンを工程Dで使用した以外は、実施例61に記載と同じ方法および条件を用いて標題化合物を調製した。
H NMR δ 8.48−8.36(m,1H)、8.31(s,1H)、8.10(d,2H)、7.58(d,1H)、7.42−7.39(m,4H)、4.58(d,2H)
LCMS:RT 2.65、m/z 353.4。
【0270】
実施例63
(3−クロロ−ベンジル)−[1−オキシ−7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン
【化74】


ベンジルアミンの代わりに3−クロロベンジルアミンを工程Dで使用した以外は、実施例61に記載と同じ方法および条件を用いて標題化合物を調製した。この場合、工程Eでは、N−Boc保護化合物(3−クロロ−ベンジル)−[1−オキシ−7−(1−tert−ブトキシカルボニル−1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミンが得られた。したがって、さらなる工程FがBoc基を除去するために必要であった。
【0271】
工程F
(3−クロロ−ベンジル)−[1−オキシ−7−(1−tert−ブトキシカルボニル−1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン(100mg)をジオキサン(5ml)中の4N HClに懸濁し、一晩撹拌した。析出物をろ過し、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥させて、(3−クロロ−ベンジル)−[1−オキシ−7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン(60mg、収率61%)を得た。
H NMR δ 13.10(br s,1H)、8.44(br s,1H)、8.39(br m,1H)、8.31(s,1H)、8.16−8.06(m,2H)、7.58(d,1H)、7.45(s,1H)、7.39−7.24(m,4H)、4.60(d,2H)
LCMS:RT 2.66、m/z 353.4。
【0272】
実施例64
ベンジル−[7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン
【化75】


実施例61からのベンジル−[1−オキシ−7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン(200mg、0.628mmol)を70%エタノール/水(10ml)に溶解し、Na(3.14mmol)を加えた。この混合物を還流状態で2時間加熱した。次いで、反応混合物を水で希釈し、ろ過し、水で洗浄した。粗固形物をDCM中で0〜100%7N NH/MeOHを用いたカラムにより精製した。生成物を、ジエチルエーテルでトリチュレーションし、ろ過し、乾燥させて、標題化合物を黄色の固形物として得た。
H NMR δ 13.07(br s,1H)、8.98−8.78(br s,1H)、8.44(br s,2H)、8.20−8.09(m,2H)、7.57(d,1H)、7.41(d,2H)、7.33(t,2H)、7.24(t,1H)、4.71−4.60(br m,2H)
LCMS:RT 2.43、m/z 303.4。
【0273】
実施例65
ベンジル−[4−オキシ−6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミンの別の合成法
【化76】

【0274】
この実施例に記載の一連の反応は、上記スキーム2に示す合成経路に従う。
工程A
DMSO(25mL)中の2,6−ジクロロキノキサリン(2.0g、10.0mmol)の溶液に、ベンジルアミン(5.5mL、50.0mmol)を加えた。この混合物を室温で72時間撹拌した。水(100mL)を反応混合物に加えた。この混合物をEtOAc(3×50mL)で抽出し、有機層を水(2×50mL)で洗浄し、MgSOで乾燥させた。有機溶液を、シリカゲル上のクロマトグラフィー(石油エーテル/EtOAc/NEt=10/1/0.1)により濃縮および精製し、ベンジル−[4−オキシ−6−クロロ−キノキサリン−2−イル]アミンを黄色の固形物(2.8g、収率:100%)として得た。
【0275】
工程B:ベンジル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミンの製剤
【化77】


ベンジル−[4−オキシ−6−クロロ−キノキサリン−2−イル]−アミン(270mg、1.0mmol)と、1−Boc−ピラゾール−4−ボロン酸ピナコールエステル(353mg、1.2mmol)と、KCO(553mg、4mmol)と、ビス(トリ−t−ブチルホスフィン)パラジウム(0)(26mg、0.05mmol)とのDMF(8mL)中の混合物(アルゴンで3回脱気)を80℃まで3分間、次いで135℃まで30分間マイクロ波を照射した。反応混合物を酢酸エチル(150mL)で希釈し、水(20mL×3)およびブライン(20mL)で洗浄した。有機溶媒を乾燥させ濃縮して、固体残渣(280mg)を得た。残渣を、メタノール(20mL)とHCl(36%v/v、4mL)との混合物に溶解し、得られた混合物を室温で16時間撹拌した。水(10mL)を加え、混合物をNaHCOで中和した。水相を酢酸エチル(30mL×4)で抽出し、合わせた有機相をブライン(20mL)で洗浄し、減圧下で乾燥および濃縮した。粗生成物をシリカゲル上のクロマトグラフィー(CHOH中のCHCl/1M NHの比は30:1)により精製し、標題化合物を淡黄色の固形物(140mg、収率:47%)として得た。
H NMR δ 12.90(br s,1H)、8.37(s,1H)、8.34−8.24(br s,1H)、8.09−8.01(m,2H)、8.00(d,1H)、7.84(dd,1H)、7.53(d,1H)、7.42(br d,2H)、7.35(br t,2H)、7.27(br t,1H)、4.63(br d,2H)
LCMS:RT 2.36、m/z 302.4。
【0276】
工程C:ベンジル−[4−オキシ−6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミンの調製
過酸化水素(30%、2mL)を、酢酸(4mL)中のベンジル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン(180mg、0.6mmol)の溶液に滴下し、この混合物を45〜50℃で4時間撹拌した。この溶液を水(10mL)で希釈し、固体のNaHCOで注意深く中和した。次いで、この溶液を酢酸エチル(20mL×30)および15%n−BuOHを含む酢酸エチル(20mL×5)で抽出した。次いで、合わせた有機相を飽和Na水溶液(40mL×3)およびブライン(40mL×3)で洗浄した。有機溶媒を減圧下で乾燥および濃縮して、黄色の固形物(145mg)を得た。この黄色の固形物を少量のDMSOで溶解し、DCM/MeOH(40/1〜20/1までの勾配)で溶離するシリカゲル上のクロマトグラフィーで精製して、標題化合物を黄色の固形物(32mg)として得、これを酢酸エチル中の再結晶によりさらに精製して、黄色の固形物(23mg)を得た。
H NMR δ 12.88(br s,1H)、12.08(br s,1H)、8.03(br s,1H)、7.95(t,1H)、7.73(br s,1H)、7.34−7.11(m,8H)、4.53(d,2H)
LCMS:RT 2.27、m/z 318.4。
【0277】
生物学的活性
実施例66
p70S6阻害活性の測定
本発明の化合物のP70S6キナーゼ阻害能を下記プロトコルを用いて測定した。
緩衝液の組成:
20mM MOPS、1mM EDTA、0.01%Brij−35、5%グリセロール、0.1%b−メルカプトエタノール、1mg/mL BSA
方法:
p70S6K(h)
25μLの最終反応体積で、p70S6K(h)(5〜10mU)を8mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、100μM KKRNRTLTV、10mM 酢酸Mg、および[γ−33P−ATP](比活性約500cpm/pmol、必要に応じて濃縮)で培養する。MgATPミックスの添加により反応を開始する。室温で40分間インキュベーションした後、3%リン酸溶液を5μm添加することにより反応を停止させた。次いで、10μLの反応混合物でP30フィルターマット(filtermat)上に斑点を付け、75mMのリン酸中で5分間3回そしてメタノール中で1回洗浄し、乾燥およびシンチレーションカウントを行った。
【0278】
プロトコルBを用いて、実施例1、2、3、8、9、11、12、18、21、25、26、27、28、32、33、34、35、36、38、41、43、44、48、50、51、53、54、および55の化合物は、0.1μM未満のIC50値を有することが分かった。実施例6、10、13、15、17、19、20、22、23、29、30、37、39、40、45、57、60、61、62、63、64、65B、および65Cの化合物は、いずれも1μM未満のIC50値を有することが分かった。実施例7、14、16、24、31、および59の化合物は、5μM未満のIC50値を有することが分かった。
【0279】
実施例67
オーロラA、オーロラB、およびAkt2キナーゼと比較したp70S6に対する化合物の選択性の測定
オーロラA、オーロラB、およびAkt2キナーゼに対する本発明の化合物の阻害活性をp70S6に対する本発明の化合物の阻害活性を比較することによって本発明の化合物のキナーゼ選択性を測定した。
下記に記載または言及するアッセイを使用して、オーロラA、オーロラB、およびAkt2に対する阻害活性を測定した。
【0280】
オーロラA
緩衝液組成:
20mM MOPS、1mM EDTA、0.01%Brij−35、5%グリセロール、0.1%b−メルカプトエタノール、1mg/mL BSA
方法:
25μLの最終反応体積で、オーロラ−A(h)(5〜10mU)を8mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、200μM LRRASLG(Kemptide)、10mM 酢酸Mg、および[g−33P−ATP](比活性約500cpm/pmol、必要に応じて濃縮)で培養する。MgATPミックスの添加により反応を開始する。室温で40分間インキュベーションした後、3%リン酸溶液を5μL添加することにより反応を停止させた。10μLの反応物でP30フィルターマット(filtermat)上に斑点を付け、50mMのリン酸中で5分間3回そしてメタノール中で1回洗浄し、乾燥およびシンチレーションカウントを行った。
【0281】
結果:
アッセイの結果は、実施例1、2、3、8、9、11、12、18、25、28、32、33、38、41、43、44、48、50、51、53、および55の化合物が、オーロラA選択性の20倍のp70S6キナーゼ選択性を有することを示した。実施例17、21、および59の化合物は、オーロラA選択性の10倍のp70S6キナーゼ選択性を有していた。実施例6および9の化合物は、オーロラA選択性の5倍のp70S6キナーゼ選択性を有していた。実施例10、26、27、34、35、および60の化合物は、オーロラA選択性の2倍のp70S6キナーゼ選択性を有していた。
【0282】
オーロラB
オーロラBキナーゼに対する化合物の活性を測定するアッセイは、Millipore UK Ltd、Gemini Crescent、Dundee Technology Parkで行った(http://www.millipore.com/も参照されたい)。
【0283】
アッセイの結果は、実施例1、2、3、9、11、12、25、26、28、32、33、43、50、51、および55の化合物が、オーロラB選択性の20倍のp70S6キナーゼ選択性を有することを示した。実施例18、34、38、41、48、および53の化合物は、オーロラB選択性の10倍のp70S6キナーゼ選択性を有していた。実施例8、21、24、35、44、59、および60の化合物は、オーロラB選択性の5倍のp70S6キナーゼ選択性を有していた。実施例6、10、17、および27の化合物は、オーロラB選択性の2倍のp70S6キナーゼ選択性を有していた。
【0284】
Akt2キナーゼ(PKBβ(h))
緩衝液の組成:
20mM MOPS、1mM EDTA、0.01%Brij−35、5%グリセロール、0.1%b−メルカプトエタノール、1mg/mL BSA
25μLの最終反応体積で、Akt2(PKBβ(h))(5〜10mU)を、8mM MOPS pH7.0、0.2mM EDTA、30μM GRPRTSSFAEGKK、10mM 酢酸Mg、および[g−33P−ATP](比活性約500cpm/pmol、必要に応じて濃縮)で培養する。MgATPミックスの添加により反応を開始する。40分間の室温でのインキュベーション後、3%リン酸溶液を5μm添加することにより反応を停止させた。10μLの反応物でP30フィルターマット(filtermat)上に斑点を付け、75mMのリン酸中で5分間3回そしてメタノール中で1回洗浄し、乾燥およびシンチレーションカウントを行った。
【0285】
アッセイの結果は、実施例2、9、10、11、12、13、17、18、21、25、26、27、28、32、33、34、38、41、43、44、48、50、53、および55の化合物が、Akt2キナーゼ選択性の100倍のp70S6キナーゼ選択性を有することを示した。実施例1、3、6、7、8、24、59、および60の化合物は、Akt2キナーゼ選択性の20倍のp70S6キナーゼ選択性を有していた。
【0286】
上記のアッセイの結果は、本発明の多くの化合物が、オーロラA、オーロラB、およびAkt2キナーゼ選択性よりも優れたp70S6キナーゼ選択性を有することを示す。
【0287】
実施例68
pS6 ELISAによるMCF−7細胞におけるp70S6K阻害剤の作用機序の研究
次のアッセイは、ELISAによりMCF−7細胞におけるS6Ser235/236のリン酸化に対する効果を測定することにより、ホールセルアッセイにおけるP70S6K活性の阻害に対するIC50値を提供する。
【0288】
プロトコル:
次のプロトコルを使用した:
1)MCF−7細胞を1ウェル当たり7×103の細胞密度で96ウェルプレートに播種し、10%FBSを含む培地中で6時間接着させた。
2)完全血清培地(full serum medium)を交換し、1%FBSを含む培地中で細胞を一晩培養した後、試験化合物を加えた。
3)試験化合物を10mMまたは5mM(BEZ−235)DMSO原液から調製し、グラフに示す最終濃度範囲を得た。DMSOは1%の最終濃度で一定であった。
4)試験化合物を、加湿雰囲気下で37℃/5% CO2にて2時間、デュプリケートで細胞と共に培養した。
5)培地を除去し、細胞溶解緩衝液中で凍結融解により細胞を溶解した。
6)次いで、PathScan ELISAキット(Cell Signaling Technology #7205)を用いてリン酸化S6Ser235/236の検出を行った。
7)溶解物を試料希釈液で1:1に希釈した後、リン酸化−S6タンパク質に対する抗体でコーティングしたウェルに塗布した。
8)次いで、メーカーの使用説明書に記載のようにELISAを行った。
9)GraphPad Prism中で4パラメーターロジスティック方程式を用いて、生データを対照値に対して正規化し分析した。
上記アッセイでは、実施例9、18、27、28、33、41、50、53、55、および58の化合物が、1μM未満のIC50値を有することが分かった。実施例1、2、3、6、7、8、11、12、17、21、25、32、51、54、および56の化合物はいずれも、5μM未満のIC50値を有することが分かった。実施例43、59、および60の化合物は、20μM未満のIC50値を有することが分かった。
【0289】
実施例69
MCF−7増殖アッセイ
次のアッセイを使用して、試験化合物の細胞増殖阻害能を測定した。
プロトコル:
次のプロトコルを使用した:
1)MCF−7細胞を1ウェル当たり5000個の細胞で96ウェルプレートに播種し、一晩接着させた後、化合物またはビヒクル対照を加えた。
2)試験化合物を10mM DMSO原液から調製し、100μM、30μM、10μM、3μM、1μM、0.3μM、0.1μM、0.03μM、0.01μMの最終濃度範囲、およびビヒクル対照を得た。DMSO含有量は1%で一定であった。
3)試験化合物を、加湿雰囲気下で37℃ 5%CO2にて72時間細胞と共に培養した。
4)次いで、アラマーブルー10%(v/v)を加え、さらに6時間培養し、蛍光生成物をBMG FLUOstarプレートリーダーを用いて検出した。
5)データをGraphPad Prism中で4パラメーターロジスティック方程式を用いて分析した。
上記アッセイを用いて、実施例1、11、12、17、18、28、38、41、および50の化合物は、10μM未満のIC50値を有することが分かった。実施例2、3、6、7、8、9、13、25、31、および33の化合物はいずれも、20μM未満のIC50値を有することが分かった。実施例21、26、27、および32の化合物は、50μM未満のIC50値を有する。
【0290】
実施例70
医薬製剤
(i)錠剤製剤
実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物を含む錠剤組成物は、化合物50mgと、希釈剤としてのラクトース(BP)197mgと、滑沢剤としてのステアリン酸マグネシウム3mgとを混合し、公知の方法で打錠することにより製造してもよい。
【0291】
(ii)カプセル製剤
カプセル製剤は、実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物100mgとラクトース100mgとを混合し、得られる混合物を標準的な不透明硬ゼラチンカプセルに充填することにより製造される。
【0292】
(iii)注射製剤I
注射投与用の非経口組成物は、活性化合物の濃度が1.5重量%となるように、10%プロピレングリコールを含む水に実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物を溶解することにより調製することができる。次いで、この溶液をろ過滅菌し、アンプルに充填し、密封する。
【0293】
(iv)注射製剤II
注射用の非経口組成物は、実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物(2mg/ml)およびマンニトール(50mg/ml)を水に溶解し、溶液をろ過滅菌し、密封可能な1mLバイアルまたはアンプルに充填することにより製造される。
【0294】
v)注射製剤III
注射または点滴による静脈内送達用の製剤は、水に実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物(例えば、塩形態で)を20mg/mlで溶解することにより製造することができる。次いで、バイアルを密封し、オートクレーブ処理により滅菌する。
【0295】
vi)注射製剤IV
注射または点滴による静脈内送達用の製剤は、緩衝液(例えば、0.2M酢酸 pH4.6)を含む水に実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物(例えば、塩形態で)を20mg/mLで溶解することにより製造できる。次いで、バイアルを密封し、オートクレーブ処理により滅菌する。
【0296】
(vii)皮下注射製剤
皮下投与用組成物は、濃度が5mg/mlとなるように、実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物を医薬グレードのコーン油と混合することにより製造される。この組成物を滅菌し、適切な容器に充填する。
【0297】
viii)凍結乾燥製剤
製剤化された実施態様1.1〜1.31のいずれか1つに規定の式(1)の化合物のアリコートを、50mlのバイアルに入れ、凍結乾燥する。凍結乾燥の際、−45℃でワンステップ凍結プロトコルを用いて組成物を凍結する。温度をアニーリングのために−10℃まで上げ、次いで低下させて−45℃で凍結させ、その後ほぼ3400分間、+25℃で一次乾燥させ、その後徐々に50℃まで昇温して二次乾燥を行う。一次乾燥および二次乾燥の際の圧力は80ミリトルに設定する。
【0298】
均等物
上記の実施例は、本発明を説明する目的で記載したものであり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。上記に記載し、また、実施例で示す本発明の特定の実施態様に対して、本発明の原理から逸脱することなく、多くの改変および変更をなし得ることは容易に明らかである。このような改変および変更は総て本願に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離形またはその塩形もしくは互変異性体形の、式(1)
【化1】


[式中:
は、NまたはN(O)であり;
は、NまたはCHであり;
Qは、C1−3アルキレン基であり;
は、水素、C1−4ヒドロカルビル、およびヒドロキシ−C2−4ヒドロカルビルから選ばれ;
、R、およびRは、同一または異なって、それぞれ、水素、フッ素、塩素、およびメチルから選ばれ;
Arは、O、N、およびSから選ばれる0、1、または2個のヘテロ原子環員を含む単環式5もしくは6員アリールまたはヘテロアリール環、あるいはナフチル環であり、当該アリールまたはヘテロアリールまたはナフチル環は、所望により、フッ素;塩素;臭素;C1−4ヒドロカルビル;C1−4ヒドロカルビルオキシ;トリフルオロメチル;ジフルオロメチル;ヒドロキシ;シアノ;トリフルオロメトキシ;ジフルオロメトキシ;アミノ;モノ−C1−4ヒドロカルビルアミノ;ジ−C1−4ヒドロカルビルアミノ;C1−4ヒドロカルビル−C(O)−;C1−4ヒドロカルビル−C(O)−アミノ;C1−4ヒドロカルビルスルホニルアミノ;C1−4ヒドロカルビルウレイド;スルファモイル;モノ−C1−4ヒドロカルビルスルファモイル;ジ−C1−4ヒドロカルビルスルファモイル;カルバモイル;モノ−C1−4ヒドロカルビルカルバモイル;ジ−C1−4ヒドロカルビルカルバモイル;基O−(CH−OR;および基O−(CH−NRから選ばれる1、2、または3個の置換基で置換されていてよく:
kは、2〜4であり;
mは0または1であり、nは0、1、2、3または4であるが、ただしmが1のとき、nは少なくとも2であり;
は、水素またはC1−4ヒドロカルビルであり;
は、水素またはC1−4ヒドロカルビルであり;
は、水素またはC1−4ヒドロカルビルであり;
あるいは、NRは、所望により、O、N、およびSから選ばれるさらなるヘテロ原子を含んでいてよい飽和5もしくは6員ヘテロ環またはその酸化形態を形成し、当該ヘテロ環は、所望により、1〜4個のC1−4ヒドロカルビル基またはヒドロキシで置換されていてよく;
Arは、O、N、およびSから選ばれる1、2、または3個のヘテロ原子環員を含み、所望により、フッ素;塩素;臭素;C1−4ヒドロカルビル;C1−4アルコキシ;トリフルオロメチル;ジフルオロメチル;ヒドロキシ;シアノ;トリフルオロメトキシ;ジフルオロメトキシ;アミノ;モノ−C1−4ヒドロカルビルアミノ;ジ−C1−4ヒドロカルビルアミノ;C1−4ヒドロカルビル−C(O)−;C1−4ヒドロカルビル−C(O)−アミノ;C1−4ヒドロカルビルスルホニルアミノ;C1−4ヒドロカルビルウレイド;スルファモイル;モノ−C1−4ヒドロカルビルスルファモイル;ジ−C1−4ヒドロカルビルスルファモイル;カルバモイル;モノ−C1−4ヒドロカルビルカルバモイル;およびジ−C1−4ヒドロカルビルカルバモイルから選ばれる1、2、または3個の置換基で置換されていてよい単環式5または6員ヘテロアリール環であり;
ここで、C1−4ヒドロカルビルからなるあるいはC1−4ヒドロカルビルを含む各置換基において、C1−4ヒドロカルビルは、C1−4アルキル、C2−4アルケニル、C2−4アルキニル、シクロプロピル、およびシクロプロピルメチルから選ばれる。]
で示される化合物。
【請求項2】
が、NまたはN(O)であり;
が、NまたはCHであり;
Qが、C1−3アルキレン基であり;
が、水素、C1−4アルキル、およびヒドロキシ−C2−4アルキルから選ばれ;
、R、およびRが、同一または異なって、それぞれ、水素、フッ素、塩素、およびメチルから選ばれ;
Arが、O、N、およびSから選ばれる0、1、または2個のヘテロ原子環員を含み、所望により、フッ素;塩素;臭素;C1−4アルキル;C1−4アルコキシ;トリフルオロメチル;ジフルオロメチル;ヒドロキシ;シアノ;トリフルオロメトキシ;ジフルオロメトキシ;アミノ;モノ−C1−4アルキルアミノ;ジ−C1−4アルキルアミノC1−4アルカノイル;C1−4アルカノイルアミノ;C1−4アルキルスルホニルアミノ;C1−4アルキルウレイド;スルファモイル;モノ−C1−4アルキルスルファモイル;ジ−C1−4アルキルスルファモイル;カルバモイル;モノ−C1−4アルキルカルバモイル;およびジ−C1−4アルキルカルバモイルから選ばれる、1、2または3個の置換基で置換されていてよい単環式5または6員ヘテロアリール環であり;
Arが、O、N、およびSから選ばれる1、2、または3個のヘテロ原子環員を含み、所望により、フッ素;塩素;臭素;C1−4アルキル;C1−4アルコキシ;トリフルオロメチル;ジフルオロメチル;ヒドロキシ;シアノ;トリフルオロメトキシ;ジフルオロメトキシ;アミノ;モノ−C1−4アルキルアミノ;ジ−C1−4アルキルアミノ;C1−4アルカノイル;C1−4アルカノイルアミノ;C1−4アルキルスルホニルアミノ;C1−4アルキルウレイド;スルファモイル;モノ−C1−4アルキルスルファモイル;ジ−C1−4アルキルスルファモイル;カルバモイル;モノ−C1−4アルキルカルバモイル;およびジ−C1−4アルキルカルバモイルから選ばれる1、2、または3個の置換基で置換されていてよい単環式5または6員ヘテロアリール環である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
QがC1−2アルキレンである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
QがCHまたはCH(CH)である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
がNである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
がN(O)である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
がNである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
がCHである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
が水素である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
Arが、それぞれ請求項1に記載の所望により置換されていてよいフェニル、チエニル、ピリジル、およびナフチルから選ばれる、単環式アリールまたはヘテロアリール環である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
Arが、請求項1に記載の所望により置換されていてよいフェニル環である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
Arが、非置換であるか、またはフッ素、塩素、メチル、ヒドロキシ、メトキシ、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、モルホリニル、ピペラジニル、N−メチルピペラジニル、およびジメチルアミノエトキシから選ばれる1、2、または3個の置換基で置換されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
Arが、非置換であるか、またはフッ素、塩素、メチル、メトキシ、トリフルオロメチル、およびトリフルオロメトキシから選ばれる1、2、または3個の置換基で置換されている、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
Arが、非置換であるか、または1もしくは2個の置換基で置換されている、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
が水素である、請求項1〜14のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
が水素である、請求項1〜15のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項17】
が水素である。請求項1〜16のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項18】
Arが、それぞれ請求項1に記載の通り所望により置換されていてよいピラゾール、イミダゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、フラン、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、チアジアゾール、フラザン、およびオキサジアゾール環から選ばれる、請求項1〜17のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項19】
Arが、所望により置換されていてよいピラゾール環である、請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
Arが非置換である、請求項1〜19のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項21】
ベンジル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
ベンジル−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
2−{ベンジル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミノ}−エタノール;
(4−モルホリン−4−イル−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[4−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(3−モルホリン−4−イル−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(4−クロロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(3−クロロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(2−クロロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(4−フルオロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(3−フルオロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(2−フルオロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−ピリジン−4−イルメチル−アミン;
[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−ピリジン−3−イルメチル−アミン;
[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−ピリジン−2−イルメチル−アミン;
(4−メトキシ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(3−メトキシ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(2−メトキシ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(4−フルオロ−ベンジル)−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
ベンジル−メチル−(6−ピリジン−4−イル−キノキサリン−2−イル)−アミン;
ベンジル−メチル−(6−ピリミジン−4−イル−キノキサリン−2−イル)−アミン;
((S)−1−フェニル−エチル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
フェネチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]アミン;
ベンジル−エチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(3−メトキシ−ベンジル)−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(3−フルオロ−ベンジル)−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(4−フルオロ−3−トリフルオロメチル−ベンジル)−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−(3−トリフルオロメトキシ−ベンジル)−アミン;
[3−(2−ジメチルアミノ−エトキシ)−ベンジル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(3,4−ジフルオロ−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
((R)−1−フェニル−エチル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
ベンジル−メチル−[7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン;
ベンジル−メチル−[1−オキシ−7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン;
(3−メトキシ−ベンジル)−[1−オキシ−7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン;
(3−メトキシ−ベンジル)−[7−(1H−ピラゾール−4−イル)−ベンゾ[1,2,4]トリアジン−3−イル]−アミン;
[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−チオフェン−3−イルメチル−アミン;
ナフタレン−2−イルメチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−(4−トリフルオロメチル−ベンジル)−アミン;
(3−メチル−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(2−メチル−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
ベンジル−メチル−(6−ピリミジン−5−イル−キノキサリン−2−イル)−アミン;
(4−メチル−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(2−クロロ−ベンジル)−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
ベンジル−[6−(5−メチル−1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
{(R)−1−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−フェニル]−エチル}−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
メチル−[3−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−ベンジル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[(R)−1−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[(R)−1−(3−メトキシ−フェニル)−エチル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
(3−ピペラジン−1−イル−ベンジル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
メチル−((R)−1−フェニル−エチル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[(R)−1−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[(R)−1−(3−メトキシ−フェニル)−エチル]−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
3−{[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イルアミノ]−メチル}−フェノール;
[(R)−1−(3−クロロ−フェニル)−エチル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[(R)−1−(3−クロロ−フェニル)−エチル]−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
メチル−((S)−1−フェニル−エチル)−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;
[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−((R)−1−m−トリル−エチル)−アミン;
[(S)−1−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン;および
[(S)−1−(3−フルオロ−フェニル)−エチル]−メチル−[6−(1H−ピラゾール−4−イル)−キノキサリン−2−イル]−アミン
から選ばれる請求項1に記載の化合物ならびにその塩および互変異性体。
【請求項22】
本明細書に記載の実施態様1.1〜1.31のいずれか1つの化合物。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の化合物を、薬学的に許容される賦形剤と共に含む、医薬組成物。
【請求項24】
増殖性疾患の治療に使用するための、請求項1〜22のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項25】
本明細書に記載の実施態様2.1〜2.13、3.1および5.1〜5.4のいずれか1つに記載の発明。

【公表番号】特表2012−528136(P2012−528136A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512446(P2012−512446)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/GB2010/001036
【国際公開番号】WO2010/136755
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(511288038)センティネル・オンコロジー・リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】Sentinel Oncology Limited
【Fターム(参考)】