{[(2S,5R,8S,11S)−5−ベンジル−11−(3−グアニジノ−プロピル)−8−イソプロピル−7−メチル−3,6,9,12,15−ペンタオキソ−1,4,7,10,13−ペンタアザ−シクロペンタデカ−2−イル]−酢酸}の新規な固体物質およびそれらを得るための方法
本発明は、{[(2S,5R,8S,11S)−5−ベンジル−11−(3−グアニジノ−プロピル)−8−イソプロピル−7−メチル−3,6,9,12,15−ペンタオキソ−1,4,7,10,13−ペンタアザ−シクロペンタデカ−2−イル]−酢酸}の新規な固体物質、それらを生成するための方法、および医薬品における前記固体物質の使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、{[(2S,5R,8S,11S)−5−ベンジル−11−(3−グアニジノ−プロピル)−8−イソプロピル−7−メチル−3,6,9,12,15−ペンタオキソ−1,4,7,10,13−ペンタアザ−シクロペンタデカ−2−イル]−酢酸}の新規な固体物質、それらを生成するための方法、および医薬品における前記固体物質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
{[(2S,5R,8S,11S)−5−ベンジル−11−(3−グアニジノ−プロピル)−8−イソプロピル−7−メチル−3,6,9,12,15−ペンタオキソ−1,4,7,10,13−ペンタアザ−シクロペンタデカ−2−イル]−酢酸}またはシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)は、特許/特許出願US 6,001,961およびEP 0 770 622(特許文献1)において最初に記載され、これらは1997年に最初に公開された。前記特許において、前記化合物の種々の塩形態、例えば、塩酸塩、酢酸塩およびメタンスルホン酸塩(methansulfonate)が記載された。後に、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の内塩を導く改良された製造方法がWO00/53627(特許文献2)において記載された。しかしながら、記載された手順に従って得られた固体は、非晶質材料のようであった。
【0003】
薬学的活性は、当然ながら、薬学的活性剤、薬学的活性成分または活性医薬品原料(API)が、市場に出る薬剤として承認される前に満たすべき基本的な必須条件である。しかしながら、薬学的活性剤が準拠しなくてはならない様々な追加要件がある。これらの要件は、活性物質自体の性質と関連がある種々のパラメーターに基づく。制限するものではないが、これらのパラメーターの例は、種々の環境条件下における活性剤または活性原料の安定性、医薬製剤の生成中におけるその安定性、および最終薬剤組成物中における活性剤または活性原料の安定性である。医薬組成物を調製するために使用される薬学的活性物質は、可能な限り純粋であるべきであり、長期保存中におけるその安定性は、種々の環境条件下で保証されなくてはならない。これは、実際の活性物質に加えて、例えばその崩壊または分解生成物を含有する医薬組成物の使用を防止するために、絶対的に不可欠である。そのような事例では、薬剤中における活性物質の含有量は、指定されたもの未満となる恐れがあり、かつ/または薬剤の品質管理に失敗する恐れがある。
【0004】
製剤中における活性成分または活性原料の粒径または均一分布のような技術的要因は、特に薬剤が錯体製剤であり、かつ/または薬剤が低用量で与えられなくてはならない場合、決定的要因となり得る。錯体製剤系を可能にするため、および/または均一分布を確実にするために、活性物質の粒径は、例えば研磨によって適切なレベルに調整され得る。前記処理ステップ中に必要とされる厳しい条件にもかかわらず、精製、溶解、融解、研磨、微粉化、混合および/または押出等、処理ステップの副作用としての薬学的活性物質の崩壊は最小化しなくてはならないため、活性物質が前記処理ステップの全体を通して高度に安定であることが絶対的に不可欠である。活性物質が処理ステップ中において十分に安定な場合のみ、品質要件を常に満たし、かつ指定量の活性物質を再現可能な様式で含有する、均質な医薬製剤を生成することが可能である。
【0005】
所望の医薬製剤を調製するための研磨プロセスにおいて生じ得るもう1つの問題は、それが非晶質または結晶性のいずれであろうと、APIの粒子表面への応力等、処理ステップによって引き起こされるエネルギーおよび/または圧力の供給である。これは、ある特定の状況においては、処理ステップにおいて用いられる固体物質または形態に応じて、多形変化、非晶質構成の変化、または結晶格子の変化を導き得る。医薬品質の医薬製剤は、活性物質が同じ形態、好ましくは同じ結晶形態を常に有するべきことを必要とするため、固体APIの安定性および特性は、この観点からの厳密な要件にも依存する。故に、API自体の安定性、また長期保存期間は、本当に重要なものである。
【0006】
多くの医薬固体が異なる物理的形態で存在し得る。多形は、好ましくは、結晶格子中における分子の異なる配置および/または配座を有する2つ以上の結晶変態で存在するための、薬物物質等の化合物の能力と特徴付けられる(D.J.W.Grant、Theory and origin of polymorphism、H.G.Brittain(編)Polymorphism in Pharmaceutical Solids、Marcel Dekker, Inc.、New York、1999、1〜34頁、その開示は、参照によりその全体が本出願に組み込まれる)。非晶質固体は、無秩序配置の分子からなり、結晶格子および/または長距離秩序を保有しない。溶媒和物は、結晶構造内に組み込まれた化学量論量または非化学量論量いずれかの溶媒を含有する結晶性固体である。組み込まれた溶媒が水であれば、該溶媒和物は一般に水和物としても公知である。多形は、同じ化合物または薬物物質の異なる結晶変態の発生を指す。この解説における多形は、日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)ガイドラインQ6A(International Conference on Harmonization Q6A Guideline:Specifications for New Drug Substances and Products:Chemical Substances、1999年10月、その開示は、参照によりその全体が本出願に組み込まれる)において、溶媒和物および非晶質形態を含むこととして定義される。
【0007】
化学量論溶媒和物は、好ましくは分子化合物とみなされる。該用語は、好ましくは、固定であるが必ずしも整数とは限らない、溶媒対化合物の比率を暗示する。非化学量論溶媒和物は、好ましくは包接化合物の一種である。このクラスの溶媒和物の最も重要な特色は、構造を保持しながら、溶媒含有量が、おそらくゼロから多様なモル配合比の間のすべての値を潜在的に取り得ることである。構造中における溶媒の量は、固体および温度の環境における溶媒の分圧によって決まる(UJ.Griesser、「The Importance of Solvates」、R.Hilfiker(編)「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley VCH、2006を参照されたく、その開示は、その全体が本出願に組み込まれる)。
【0008】
医薬固体の多形および/または溶媒和物は、融点、吸湿性、化学反応性、見かけの溶解度、溶解速度、光学および電気特性、蒸気圧、ならびに/または密度等、異なる化学的および物理学的特性を有し得る。これらの特性は、薬物物質の処理可能性、ならびに安定性、溶解および/またはバイオアベイラビリティー等、薬物製品の品質/性能に対して直接的影響を有し得る。準安定性の医薬固体状態形態は、環境条件、処理または経時の変化に応答して結晶構造または溶媒和物/脱溶媒和物を変化させ得る。
【0009】
APIの安定性は、特定の薬剤の保存期間を決定するために医薬組成物においても重要であり、保存期間は、規定条件下で保存される限り、薬物製品が承認された規格内で残存すると予想される期間である。規定の保存期間内ならば、薬剤は、患者にいかなるリスクもなく投与され得る。したがって、種々の保存状態下における上述の医薬組成物中の薬剤の高い安定性は、患者および製造業者の両方にとって付加的利点である。
【0010】
上記で示した要件以外に、概して、その物理的および化学的安定性を改良することができる固体状態形態の医薬組成物のあらゆる変化が、安定性の低い形態の同じ薬剤よりも有意な利点を与えることを念頭に入れておくべきである。本発明の目的は、上述した通りの薬学的活性物質に課せられた厳密な要件を満足させる化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の新しい安定な固体物質を提供することである。故に、本発明の1つの目標は、固体状態特性が改良されたシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の新規な固体物質または形態の提供である。
【0011】
今や、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)、とりわけその内塩が、結晶性材料として、また特殊な結晶形態で得られることが分かっている。驚くべきことに、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の同様の構造型の新規な結晶形態(さらに疑似多形形態、PPとも命名されている)が全クラス見出されており、これらが実際に有益な固体状態特性を呈し、好ましくは、有益な固体状態特性の有利な組合せ、例えば、公知の材料の有益な特性と本発明による新しい材料の有益な特性とを組み合わせたものも保有する。
【0012】
加えて、驚くべきことに、新規な結晶性材料を得るための異なる方法は、好ましくは、結晶形態の前記クラス内の異なる結晶形態または変態を導くことが分かった。化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)、とりわけその内塩の、これらの結晶形態または変態、ならびにそれらを作製する方法は、本出願の好ましい主題である。
【0013】
前記新規な固体物質および前記結晶形態または変態は、より高い熱力学的安定性、吸湿性の低減、より高い結晶化度、取扱特性の改良、有利な溶解特性および/または保存安定性の改良を含むがこれらに限定されない、既に公知の非晶質材料と比較して価値のある特性および利点を示す。
【0014】
化合物{[(2S,5R,8S,11S)−5−ベンジル−11−(3−グアニジノ−プロピル)−8−イソプロピル−7−メチル−3,6,9,12,15−ペンタオキソ−1,4,7,10,13−ペンタアザ−シクロペンタデカ−2−イル]−酢酸}またはINN(国際一般的名称)シレンジタイド(Cilengitide)でも公知であるシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)は、そのインテグリン阻害活性、抗血管新生活性および放射線治療増強活性を示すがこれらに限定されない有利な生物学的活性を示し、薬学的用途において活性成分として広く用いられている。
【0015】
薬学的用途における活性成分としての使用、つまり略してAPIとしての使用のためには、高純度、優れた取扱特性、十分な安定性および信頼できる製造プロセス等の要因が重大である。加えて、塩基性および酸性両方の中心または部分を有するそのようなペプチド性化合物について、塩形成中の正確な化学量論はもう1つの重大な要因であり、したがって、APIの生成のための役割である。シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の酸性塩は、容易に生成されることが分かっているが、酸触媒分解により安定性が低いことも分かっている。塩基性塩は、概して、望ましくない溶解および取扱特性を保有することが分かっている。シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の既に公知かつ記載されている非晶質形態は、剤形の生成において、および適切な医薬製剤の開発においても、不都合に吸湿性であることが分かっており、1つの大きな欠点である。
【0016】
故に、APIの安定性の改良、取扱の改良、より高い純度および/またはより高い精製率を有する固体形態は、公知の非晶質形態と比較して、概して極めて望ましく、信頼できる技術的に大規模なAPIの製造が真に求められている。APIの固体剤形製剤または懸濁製剤が提供されなくてはならない場合にはなおさらである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許第0770622号明細書
【特許文献2】国際公開第00/53627号パンフレット
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】結晶形態A1のDSCスキャンを示す図である。
【図2】結晶形態A1のTGAスキャンを示す図である。
【図3】結晶形態A1の粉末X線ディフラクトグラムを示す図である。
【図4】結晶形態A1の単結晶構造を示す図である。
【図5】結晶形態A1のFTIRスペクトルを示す図である。
【図6】結晶形態A1のFT−ラマンスペクトルを示す図である。
【図7】結晶形態A1の水蒸気収着等温線(25℃)を示す図である。
【図8】結晶形態S1のDSCスキャンを示す図である。
【図9】結晶形態S1のTGAスキャンを示す図である。
【図10】結晶形態S1の粉末X線ディフラクトグラムを示す図である。
【図11】結晶形態S1のFTIRスペクトルを示す図である。
【図12】結晶形態S1のFT−ラマンスペクトルを示す図である。
【図13】結晶形態S1の水蒸気収着等温線(25℃)を示す図である。
【図14】水和物形態から結晶形態S1へのメタノール蒸気収着等温線(25℃)を示す図である。
【図15】結晶形態S2のDSCスキャンを示す図である。
【図16】結晶形態S2のTGAスキャンを示す図である。
【図17】結晶形態S2の粉末X線ディフラクトグラムを示す図である。
【図18】結晶形態S2のFTIRスペクトルを示す図である。
【図19】結晶形態S2のFT−ラマンスペクトルを示す図である。
【図20】結晶形態S2の水蒸気収着等温線(25℃)を示す図である。
【図21】水和物形態から結晶形態S2へのメタノール蒸気収着等温線(25℃)を示す図である。
【図22】疑似多形S1、S2およびS3のPXRD比較を示す図である。
【図23】結晶形態S3のDSCスキャンを示す図である。
【図24】結晶形態S3のTGAスキャンを示す図である。
【図25】結晶形態S3の粉末X線ディフラクトグラムを示す図である。
【図26−1】結晶形態S3の単結晶構造を示す図である。
【図26−2】形態S3の格子中におけるシレンジタイド分子のジグザグ鎖形成を示す図である。
【図26−3】シレンジタイド、形態S3のAPI分子間に空隙(緑色)を有する結晶構造を示す図である。
【図26−4】シレンジタイド、形態S3の結晶格子中における空隙の構造を示す図である。
【図27】結晶形態S3のFTIRスペクトルを示す図である。
【図28】結晶形態S3のFT−ラマンスペクトルを示す図である。
【図29】結晶形態S3の水蒸気収着等温線(25℃)を示す図である。
【図30】水−エタノール混合雰囲気下での、式Iによる化合物の非晶質材料または水和物形態の調節実験から得られた試料の化学量論を示す図である。
【図31】形態S2−ジ−エタノール溶媒和物またはジエタノレートの粉末パターン構造解を示す図である。
【図32】形態S2−モノ−エタノール溶媒和物ジヒドレートの単結晶構造解を示す図である。
【図33】形態H1−七水和物の単結晶構造解を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
故に、本発明の主題は、
式Iによる化合物
シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(I)
の固体物質であって、格子定数
a=9.5±0.5Å、
b=23.0±5.0Å、および
c=14.7±1.0Å
を有する単位セルを特徴とする該式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む固体物質である。
【0020】
前記単位セルは、好ましくは、結晶学的単位セルまたは結晶学的に決定された単位セルである。
【0021】
前記単位セルにおいて、角度αは好ましくは90°±2°であり、角度βは好ましくは90°±2°であり、かつ/または角度γは好ましくは90°±2°である。
【0022】
好ましくは、固体物質は、少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、より一層好ましくは60重量%、とりわけ少なくとも90重量%または少なくとも95重量%の、上記および/または下記において定義される通りの式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む。例えば、固体物質は、約25、約50、約75、約95、約99または約100重量%の、上記および/または下記において定義される通りの式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む。
【0023】
とりわけ好ましくは、固体物質は、少なくとも10モル%、より好ましくは少なくとも30モル%、より一層好ましくは60モル%、とりわけ少なくとも90モル%または少なくとも95モル%の、上記および/または下記において定義される通りの式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む。例えば、固体物質は、約25、約50、約75、約95、約99または約100モル%の、上記および/または下記において定義される通りの式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む。
【0024】
本発明による固体物質に付されている重量パーセンテージは、好ましくは、前記固体物質に含有されている上記/下記において定義される通りの1つまたは複数の結晶形態の重量と前記固体物質に含有されている式Iの化合物の重量での総量との間の比率に関係する。換言すると、付されている重量パーセンテージは、好ましくは、式Iの化合物の重量での総量に基づく、上記および/または下記において定義される通りの1つまたは複数の結晶形態の和の重量パーセンテージである。故に、本発明による固体物質内の1つまたは複数の結晶形態の含有量に付されている重量パーセンテージは、好ましくは、前記固体物質に含有されている式Iによる化合物以外の化合物または不純物の量または含有量とは無関係である。故に、固体物質に付されている重量パーセンテージは、好ましくは、含有されている溶媒分子について補正される、すなわち、固体物質に付されている重量パーセンテージは、好ましくは、前記固体物質中の溶媒分子とは無関係である、または該溶媒分子を除いて算出される。
【0025】
本発明による固体物質に付されているモルパーセンテージ(モル%)は、好ましくは、前記固体物質に含有されている上記/下記において定義される通りの1つまたは複数の結晶形態と前記固体物質に含有されている式Iの化合物の総モル量との間のモル比に関係する。換言すると、付されているモルパーセンテージは、好ましくは、式Iの化合物の総モル量に基づく、上記および/または下記において定義される通りの1つまたは複数の結晶形態の和のモルパーセンテージである。故に、本発明による固体物質内の1つまたは複数の結晶形態の含有量に付されたモルパーセンテージは、好ましくは、前記固体物質に含有されている式Iによる化合物以外の化合物または不純物の量または含有量とは無関係である。故に、固体物質に付されているモルパーセンテージ(モル%)は、好ましくは、含有されている溶媒分子について補正される、すなわち、固体物質に付されているモルパーセンテージ(モル%)は、好ましくは、前記固体物質中の溶媒分子とは無関係である、または該溶媒分子を除いて算出される。
【0026】
前記固体物質に関する1つまたは複数の結晶形態は、好ましくは、固体物質が、上記および/または下記において定義される通りの格子定数内の単位セルを有する式Iの化合物の少なくとも1つまたは複数の結晶形態または変態を含むこと、あるいは、固体物質が、上記および/または下記において定義される通りの格子定数内の単位セルをそれぞれ有する式Iの化合物の2つ以上、例えば2つまたは3つの結晶形態または変態の混合物を含むことを意味する。
【0027】
好ましくは、固体物質は、上記および/または下記において定義される通りの式Iの化合物の、1、2、3または4つの結晶形態を含む。
【0028】
より好ましくは、固体物質は、
ULP1:a1=9.5±0.5Å、
b1=26.0±1.5Å、および
c1=14.3±0.7Å,
ならびに
ULP2:a2=9.8±0.5Å、
b2=20.0±1.5Å、および
c2=15.4±0.7Å
からなる群から選択される格子定数(ULP)を有する単位セルをそれぞれ有する、式Iの化合物の、1つまたは複数の、好ましくは1、2、3または4つの、より一層好ましくは1または2つの結晶形態を含む。
【0029】
より好ましくは、固体物質は、
ULP1:a1=9.5±0.3Å、
b1=26.0±1.0Å、および
c1=14.3±0.5Å、
ならびに
ULP2:a2=9.8±0.3Å、
b2=20.0±1.0Å、および
c2=15.4±0.5Å
からなる群から選択される格子定数(ULP)を有する単位セルをそれぞれ有する、式Iの化合物の、1つまたは複数の、好ましくは1、2、3または4つの、より一層好ましくは1または2つの結晶形態を含む。
【0030】
格子定数ULP1および/またはULP2を有する単位セルにおいて、角度αは、好ましくは90°±2°であり、角度βは、好ましくは90°±2°であり、かつ/または角度γは、好ましくは90°±2°である。
【0031】
好ましくは、格子定数ULP1を有する単位セルは、代替的にまたは付加的に、好ましくは付加的に、前記単位セル内における約4分子の式Iの化合物の含有量を特徴とし得る。
【0032】
格子定数ULP2を有する単位セルにおいて、角度αは好ましくは90°±0.5°であり、角度βは好ましくは90°±0.5°であり、かつ/または角度γは好ましくは90°±0.5°である。格子定数ULP2を有する単位セルにおいて、角度α、βおよびγは、より好ましくは90°±0.1°である。
【0033】
好ましくは、格子定数ULP2を有する単位セルは、代替的にまたは付加的に、好ましくは付加的に、前記単位セル内における約4分子の式Iの化合物の含有量を特徴とし得る。
【0034】
より好ましくは、固体物質は、
格子定数a=9.8±0.1Å、b=19.5±0.5Å、およびc=15.4±0.1Åを有する単位セルを特徴とする結晶形態A1、
格子定数a=9.4±0.1Å、b=25.9±0.5Å、およびc=14.1±0.1Åを有する単位セルを特徴とする結晶形態S1、
格子定数a=9.3±0.1Å、b=26.6±0.5Å、およびc=14.7±0.1Åを有する単位セルを特徴とする結晶形態S2、ならびに
格子定数a=9.6±0.1Å、b=25.9±0.5Å、およびc=13.9±0.1Åを有する単位セルを特徴とする結晶形態S3
から選択される、式Iの化合物の、1つまたは複数の、好ましくは1、2、3または4つの、より一層好ましくは1または2つの結晶形態を含む。
【0035】
より好ましくは、固体物質は、
格子定数a=9.8±0.1Å、b=19.5±0.5Å、およびc=15.4±0.1Åを有する、好ましくはα=β=γ=90°±1°を有する、とりわけα=β=γ=90°を有する単位セルを特徴とする結晶形態A1、
格子定数a=9.4±0.1Å、b=25.9±0.5Å、およびc=14.1±0.1Åを有する、好ましくはα=β=γ=90°±2°を有する、とりわけα=90°±1°、β=91°±1、γ=90°±1°を有する、とりわけα=90°、β=91.2°、γ=90°を有する単位セルを特徴とする結晶形態S1、
格子定数a=9.3±0.1Å、b=26.6±0.5Å、およびc=14.7±0.1Åを有する、好ましくはα=β=γ=90°±1°を有する、とりわけα=β=γ=90°を有する単位セルを特徴とする結晶形態S2、ならびに
格子定数a=9.6±0.1Å、b=25.9±0.5Å、およびc=13.9±0.1Åを有する、好ましくはα=β=γ=90°±1°を有する、とりわけα=β=γ=90°を有する単位セルを特徴とする結晶形態S3
から選択される、式Iの化合物の、1つまたは複数の、好ましくは1、2、3または4つの、より一層好ましくは1または2つの結晶形態を含む。
【0036】
好ましくは、結晶形態S1、S2およびS3は、代替的にまたは付加的に、好ましくは付加的に、前記単位セル内における約4分子の式Iの化合物の含有量を特徴とし得る。
【0037】
結晶形態S1、S2およびS3は、好ましくはさらに溶媒和物と特徴付けられる。
【0038】
本発明の文脈において、溶媒和物は、好ましくは、結晶構造内に組み込まれた化学量論量または非化学量論量いずれかの溶媒を含有する結晶性固体付加物であり、すなわち、溶媒分子は、好ましくは結晶構造の一部を形成する。組み込まれた溶媒が水であれば、該溶媒和物は一般に水和物としても公知である。
【0039】
結果として、溶媒和物中の溶媒は、好ましくは結晶構造の一部を形成し、故に、概してX線法によって検出可能であり、好ましくは本明細書において記載されている通りのX線法によって検出可能である。
【0040】
概して、所与の結晶構造について、(別の結晶構造への転移を誘発することなく)前記構造に組み込まれる溶媒の量には上限がある。しかしながら、いくつかの事例において、結晶構造の物理的処理によって、例えば乾燥処置によって、例えば昇温(ではあるが好ましくは融点または他の相転移点未満)における保存、ならびに/または、好ましくは真空および部分減圧を印加することを含む減圧によって、組み込まれた溶媒の少なくとも一部を除去することが可能である。そのような事例では基本的に、溶媒は結晶構造から部分的にまたは完全に除去され得るため、前記結晶構造中に空隙を導入することができる。相転移および/または多形転移、例えば異なる多形形態への転移、あるいは、とりわけ、非晶質形態、より少ない溶媒もしくは水分子を含有する溶媒和物もしくは水和物、または無水物形態への転移の可能性は、組み込まれた溶媒の量がゼロに収束するとともに増加する。
【0041】
そのような事例では、含有されている溶媒および/またはその量、故に各溶媒和物または溶媒和物構造の組成は、好ましくは、調節および/または再結晶化を含むがこれらに限定されない適切な処理によって変動し得る。例えば、ある溶媒は、そのような溶媒和物から部分的にまたは完全に除去され得、ある溶媒は、そのような溶媒和物中の異なる溶媒および/またはそのような溶媒和物が中で増加もしくは減少し得るような量の溶媒によって部分的にまたは完全に置換され得る。故に、特定溶媒を含有する溶媒和物は、潜在的に、溶媒和物混合物を含有する溶媒和物に転換され得、逆もまた同様である。
【0042】
これに関連する調節は、好ましくは物理的処理に関係し、ここで、各溶媒和物の元の結晶構造は本質的に保持される。溶媒和物を調節するのに適した方法、ならびに手段および/またはパラメーターは、原則的に当業者に公知である。適切な調節方法の例は本出願において開示されており、好ましくは、溶媒蒸気への暴露、熱的条件(例えば、特定温度または温度勾配における示差走査熱量測定、熱重量測定および/または保存によるもの)への暴露、スラリー化(例えば、1種または複数の溶媒を含む液体中で溶媒和物の懸濁液を形成および/または処理すること)、1種または複数の溶媒の可変分圧への暴露、1種または複数の溶媒の特定分圧および/または特定分圧勾配への暴露、ならびにそれらの組合せを含むがこれらに限定されない。例えば、スラリー化および/または1種もしくは複数の溶媒の可変分圧への暴露は、特定温度または温度勾配で実現され得る。調節の好ましい形態は、溶媒和または脱溶媒和である。スラリー、およびスラリーまたはスラリー化のための作業技術は、例えば、Martyn D. Ticehurst、*Richard A. Storey、Claire Watt、International Journal of Pharmaceutics 247(2002)1〜10から、当技術分野において公知であり、その開示は、その全体が本出願に組み込まれる。
【0043】
付加的にまたは代替的に、含有されている溶媒および/またはその量、故に各溶媒和物または溶媒和物構造の組成は、好ましくは再結晶化によって、とりわけ、異なる溶媒または溶媒混合物からの再結晶化によっても変動し得、但し、該溶媒和物の元の結晶構造は、再現される、または本質的に再現される。
【0044】
これに関連して、溶媒和物は、好ましくは、単位セルまたは結晶学的単位セルが、前記単位セルに含有されている式Iの化合物1分子当たり約化学量論(整数または非整数)量の、1種または複数の溶媒の溶媒分子を含有することを意味する。前記単位セルに含有されている式Iの化合物1分子当たり、前記単位セル内の約化学量論量の溶媒分子は、好ましくは、式Iによる化合物1分子当たり、約0.01個の溶媒分子から約8個の溶媒分子の範囲内、より好ましくは、約0.1個の溶媒分子から約7個の溶媒分子の範囲内、より一層好ましくは、約1.5個の溶媒分子から最大約4.5個の溶媒分子、例えば、約0.1個の溶媒分子、約0.5個の溶媒分子、約1.5個の溶媒分子、約3個の溶媒分子、約4個の溶媒分子または約7個の溶媒分子の範囲内にある。とりわけ好ましいのは、前記単位セルに含有されている式Iによる化合物1分子当たり、約4個の溶媒分子を有する溶媒和物である。単位セルまたは結晶学的単位セルが、前記単位セルに含有されている式Iの化合物1分子当たり、1種または複数の溶媒の約4個の溶媒分子を含有するのであれば、四溶媒和物とみなすのが好ましく、前記単位セルに含有されている式Iの化合物1分子当たり、1種または複数の溶媒の約7個の溶媒分子を含有するのであれば、七溶媒和物とみなすのが好ましい。
【0045】
これに関連して、溶媒和物は、好ましくは、単位セルまたは結晶学的単位セルが、前記単位セルに含有されている式Iの化合物1分子当たり、約化学量論(好ましくは整数または非整数、より好ましくはほぼ整数)量の、1種または複数の溶媒の溶媒分子を含有することを意味する。前記単位セルに含有されている式Iの化合物1分子当たり、前記単位セル内の約化学量論量の溶媒分子は、好ましくは、前記単位セル内に含有されている式Iによる化合物1分子当たり、約0.5個の溶媒分子から約6個の溶媒分子の範囲内、より好ましくは約0.5個の溶媒分子から約4.5個の溶媒分子の範囲内、より一層好ましくは約1.5個の溶媒分子から最大約4個の溶媒分子、例えば、前記単位セル内に含有されている式Iによる化合物1分子当たり、約0.5個の溶媒分子、約1.5個の溶媒分子、約4個の溶媒分子または約6個の溶媒分子の範囲内にある。とりわけ好ましいのは、前記単位セルに含有されている式Iによる化合物1分子当たり、約4個の溶媒分子を有する溶媒和物である。単位セルまたは結晶学的単位セルが、前記単位セルに含有されている式Iの化合物1分子当たり、1種または複数の溶媒の約4個の溶媒分子を含有するのであれば、四溶媒和物とみなすのが好ましい。
【0046】
これに関連して好ましい溶媒または溶媒分子は、水およびアルコールからなる群から、より好ましくは、水、メタノールおよびエタノールからなる群から選択される。
【0047】
例えば、結晶形態の単位セルが、1分子の式Iによる化合物および約4個の溶媒分子を含有するのであれば、前記形態は四溶媒和物とみなすのが好ましい。結晶形態の単位セルが、2分子の式Iの化合物および約8個の溶媒分子を含有するのであれば、前記形態も四溶媒和物とみなすのが好ましい。結晶形態の単位セルが、4分子の式Iの化合物および約16個の溶媒分子を含有するのであれば、前記形態も四溶媒和物とみなすのが好ましい。結晶形態の単位セルが、2.5分子の式Iによる化合物および約10個の溶媒分子を含有する場合も同じことが言える。
【0048】
故に、溶媒和物は、より好ましくは、各結晶形態が、式Iの化合物1分子当たり、約化学量論(整数または非整数)量の、1種または複数の溶媒の溶媒分子を含有することを意味する。前記溶媒和物中の約化学量論量の(1個または複数の)溶媒分子は、好ましくは、式Iによる化合物1分子当たり、約0.1個の溶媒分子から約7個の溶媒分子の範囲内、より好ましくは、式Iによる化合物1分子当たり約0.5個の溶媒分子から式Iによる化合物1分子当たり最大約4.5個の溶媒分子の範囲内、より一層好ましくは、式Iによる化合物1分子当たり約1.5個の溶媒分子から式Iによる化合物1分子当たり最大約4個の溶媒分子、例えば、前記単位セルに含有されている式Iによる化合物1分子当たり、約0.5個の溶媒分子、約1.5個の溶媒分子、約3個の溶媒分子、約4個の溶媒分子または約7個の溶媒分子の範囲内にある。とりわけ好ましいのは、式Iによる化合物1分子当たり、約4個の溶媒分子を有する溶媒和物である。
【0049】
故に、溶媒和物は、より好ましくは、各結晶形態が、式Iの化合物1分子当たり、約化学量論量の、1種または複数の溶媒の溶媒分子を含有することを意味する。前記溶媒和物中の約化学量論量の(1個または複数の)溶媒分子は、好ましくは、式Iによる化合物1分子当たり、約0.5個の溶媒分子から約6個の溶媒分子の範囲内、より好ましくは、式Iによる化合物1分子当たり、約0.5個の溶媒分子から最大約4.5個の溶媒分子の範囲内、より一層好ましくは、式Iによる化合物1分子当たり約1.5個の溶媒分子から式Iによる化合物1分子当たり最大約4個の溶媒分子、例えば、式Iによる化合物1分子当たり、約0.5個の溶媒分子、約1.5個の溶媒分子、約4個の溶媒分子または約6個の溶媒分子の範囲内にある。とりわけ好ましいのは、式Iによる化合物1分子当たり、約4個の溶媒分子を有する溶媒和物である。
【0050】
溶媒和物のより好ましい化学量論は、下記のグラフ(グラフI)の灰色で陰影をつけた領域に描写される通りに定義される。
【0051】
【表1】
【0052】
このグラフにおいて、xは、式Iによる化合物1分子当たりの水分子の数(整数であっても非整数であってもよい)であり、yは、アルコール、好ましくはメタノールもしくはエタノールのいずれかまたはそれらの混合物の分子の数であり、整数であっても非整数であってもよい。したがって、好ましくは、式Iによる化合物1分子当たりのアルコール分子の数は、0から約4の間、好ましくは0.1から4の間であり、水分子の数は、0から約4の間、好ましくは0.1から4の間である。
【0053】
溶媒和物のより一層好ましい化学量論は、下記のグラフ(グラフII)の灰色で陰影をつけた領域に描写される通りに定義される。
【0054】
【表2】
【0055】
このグラフにおいて、xは、式Iによる化合物1分子当たりの水分子の数(整数であっても非整数であってもよい)であり、yは、アルコール、好ましくはメタノールもしくはエタノールのいずれかまたはそれらの混合物の分子の数であり、整数であっても非整数であってもよい。したがって、好ましくは、式Iによる化合物1分子当たりのアルコール分子の数は、0から約2の間、好ましくは0.1から2の間であり、水分子の数は、0から約4の間、好ましくは0.1から4の間である。
【0056】
溶媒和物のなお一層好ましい化学量論は、下記のグラフ(グラフIII)の灰色で陰影をつけた領域に描写される通りに定義される。
【0057】
【表3】
【0058】
このグラフにおいて、xは、式Iによる化合物1分子当たりの水分子の数(整数であっても非整数であってもよい)であり、yは、アルコール、好ましくはメタノールもしくはエタノールのいずれかまたはそれらの混合物の分子の数であり、整数であっても非整数であってもよい。したがって、好ましくは、式Iによる化合物1分子当たりのアルコール分子の数は、0から約1の間、より好ましくは0.1から1の間であり、水分子の数は、0から約4の間、より好ましくは0.1から4の間である。
【0059】
これに関連してとりわけ好ましい溶媒または溶媒分子は、水およびアルコールからなる群から、より好ましくは、水、メタノールおよびエタノールからなる群から選択される。
【0060】
グラフI、グラフIIおよび/またはグラフIIIに記載されている通り、ならびに好ましくはそれに関係する項にも記載されている通りの組成または化学量論を有する式Iによる化合物の溶媒和物は、それぞれ、本発明のとりわけ好ましい主題である。上記および/または下記の溶媒和物は、グラフI、グラフIIおよび/またはグラフIIIにおいて記載されている通りの範囲内の組成または化学量論を有する前記溶媒和物のとりわけ好ましい例であり、故に、本発明のとりわけ好ましい主題でもある。
【0061】
上記および/もしくは下記の記述、ならびに好ましくは溶媒和物または結晶形態S1、S2および/もしくはS3の記述にも基づいて、単位セルパラメーターULP1を有する単位セルを特徴とする溶媒和物または結晶形態は、前記単位セル内に式Iの化合物1分子当たり0から約4個の溶媒分子、より好ましくは、前記単位セル内に式Iの化合物1分子当たり0.01から約4個の溶媒分子、とりわけ、前記単位セル内に式Iの化合物1分子当たり0.5から4個の溶媒分子を含み得ることが明らかになる。
【0062】
故に、単位セルパラメーターULP1を有する単位セルを特徴とする溶媒和物または結晶形態の共通の特色または特徴は、式Iによる化合物1分子当たり、約4分子の1種または複数の溶媒、好ましくは本明細書において記載されている通りの溶媒という溶媒含有量の上限である。従来技術に従って、前記単位セル中、式Iの化合物1分子当たり約4分子の1種または複数の溶媒という溶媒含有量の上限を特徴とする溶媒和物または結晶形態は、好ましくは四溶媒和物と称される。
【0063】
しかしながら、本明細書において広範囲にわたって記載されているように、単位セルパラメーターULP1を有する単位セルを特徴とする前記溶媒和物または結晶形態を、前記単位セル内の式Iの化合物1分子当たり約3個以下の溶媒分子の溶媒含有量に、前記単位セル内の式Iの化合物1分子当たり約2個以下の溶媒分子の溶媒含有量に、前記単位セル内の式Iの化合物1分子当たり約1個以下の溶媒分子の溶媒含有量に、またはさらに前記単位セル内の式Iの化合物1分子当たり、0.5、0.1もしくは0個近くの溶媒分子の溶媒含有量に脱溶媒和してよい。単位セルパラメーターULP1を有する単位セルを特徴とする溶媒和物または結晶形態のこれらの脱溶媒和物も、本発明の好ましい主題である。
【0064】
結果として、用語「四溶媒和物」および/または「四水和物」は、本明細書において使用される場合、好ましくは、前記四溶媒和物および/または四水和物の部分的にまたは全体的に脱溶媒和した形態も含み、好ましくは、元の四溶媒和物または四水和物の各結晶構造が保持される、または本質的に保持される場合に限る。
【0065】
さらなる結果として、用語「四溶媒和物」は、本明細書において使用される場合、好ましくは、ジハイドレート(dehydrate)−ジアルコレート、ジハイレート−アルコレートおよびジハイレート−モノアルコレートを好ましくは含むがこれらに限定されないアルコール溶媒和物(つまりアルコレート)もしくは水−アルコール混合溶媒和物、および/またはそれらの部分的にもしくは全体的に脱溶媒和した形態も含み、好ましくは元の四溶媒和物の各結晶構造、とりわけ好ましくは四水和物S3の元の結晶構造が保持される、または本質的に保持される場合に限る。
【0066】
さらなる結果として、用語「四溶媒和物」は、本明細書において使用される場合、好ましくは、ジハイドレート−ジアルコレート、ジハイドレート−アルコレート、ジハイドレート−モノアルコレートおよびジアルコレート(好ましくは、式(Cil)1(アルコール)2(H2O)0によって示されるもの)を好ましくは含むがこれらに限定されないアルコール溶媒和物(つまりアルコレート)もしくは水−アルコール混合溶媒和物、および/またはそれらの部分的にもしくは全体的に脱溶媒和した形態も含み、好ましくは元の四溶媒和物の各結晶構造、とりわけ好ましくは四水和物S3の元の結晶構造が保持される、または本質的に保持される場合に限る。故に、本明細書において定義されている通りのULP1による単位セルパラメーター内のすべての結晶形態は、好ましくは、本発明による四溶媒和物とみなされる。
【0067】
好ましくは、本発明によるジアルコレートは、四溶媒和物および/またはその脱溶媒和物とみなされ、これは、好ましくは、式Iの化合物1分子当たり約2個のアルコール分子を含有するが、好ましくは、式Iの化合物1分子当たり、1個未満の分子、より好ましくは0.5個未満の分子、とりわけ0.1個未満の水分子を含有する。故に、本発明による好ましいジアルコレートは、単位セル中に、約4分子の式Iの化合物および約8分子のアルコールを含有するが、好ましくは1分子未満の水を含有する。好ましくは、前記ジアルコレート中のアルコールは、メタノールおよびエタノールならびにそれらの混合物から選択される。故に、本発明によるジアルコレートは、好ましくは脱溶媒和物、またはより具体的には本発明によるジヒドレート−ジアルコレートの脱水和物ともみなされる。
【0068】
結晶形態A1は、好ましくは、無水物または非溶媒和物(ansolvate)としてさらに特徴付けられる。
【0069】
これに関連して、無水物または非溶媒和物は、好ましくは、単位セルに、約化学量論量の、1種または複数の溶媒の溶媒分子がない、または本質的にないことを意味する。これに関連して、無水物または非溶媒和物は、より好ましくは、単位セルに、水および溶媒分子が本質的にないことを意味する。これに関連して、溶媒分子が本質的にないとは、好ましくは、単位セル中の溶媒分子の量が、0.5未満、より好ましくは0.1未満、より一層好ましくは0.01未満、とりわけ0.001未満であることを意味する。
【0070】
非溶媒和物および無水物は、いずれも各溶媒が存在しないことを特徴とし、故にいかなる溶媒も存在しないことを特徴とするため、無水物および非溶媒和物という用語は、好ましくは、本発明の文脈においては同義語とみなすべきである。
【0071】
単位セル中の分子の量は、好ましくは結晶学的方法によって、より好ましくは単結晶X線回折および/または粉末X線回折によって決定される。
【0072】
代替として、前記結晶形態、前記溶媒和物中および/または各単位セル中の溶媒の量は、元素分析、ガスクロマトグラフィーまたはカールフィッシャー滴定によって決定または推定できる。この文脈において、溶媒分子が本質的にないというのは、好ましくは5%未満、より一層好ましくは2%未満、より一層好ましくは1%未満、とりわけ0.1%未満、例えば、5%から0.1%または2%から0.01%の溶媒含有量を意味する。これに関連して、付されるパーセンテージ(%)は、好ましくはモル%および重量%から選択され、とりわけ好ましくは重量%である。
【0073】
結晶形態A1、S2および/またはS3は、好ましくは斜方晶系単位セルをさらに特徴とする。
【0074】
結晶形態S1は、好ましくは単斜晶系単位セルをさらに特徴とする。
【0075】
好ましくは、a、b、c、α、βおよび/またはγを含むがこれらに限定されない単位セルおよび格子定数は、当業者に公知の結晶学的パラメーターである。それ故、それらは当技術分野において公知の方法に従って決定できる。好ましくは、単位セルの斜方晶系および/または単斜晶系形態についても同じことが言える。
【0076】
上記に示した単位セルおよびそれに関係する格子定数は、好ましくはX線回折、より好ましくは単結晶X線回折および/または粉末X線回折により、標準的方法、例えば、European Pharmacopeia第6版2.9.33章において記載されている通りの、ならびに/またはRolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley−VCH. Weinheim 2006(6章:X−Ray Diffraction)、および/もしくはH.G.Brittain、「Polymorphism in Pharmaceutical Solids」、95巻、Marcel Dekker Inc.、New York 1999(6章およびその中の参考文献)において記載されている通りの方法または技術に従って決定される。
【0077】
代替として、好ましくは、上記に示した単位セルおよびそれに関係する格子定数は、好ましくは
グラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、好ましくは298K±5Kの温度でMoKα放射線を使用する、Oxford Diffraction製のエクスカリバー回折計、および/または
グラファイトモノクロメーターおよびシンチレーションカウンターを備えた、好ましくは298K±5Kの温度でMoKα放射線を使用する、Nonius製のCAD4四軸回折計
で行われる単結晶X線によって、場合により追加の構造データと一緒に得ることができる。
【0078】
上記に示した単位セルおよびそれに関係する格子定数は、好ましくはX線回折、より好ましくは粉末X線回折により、標準的方法、例えば、European Pharmacopeia第6版2.9.33章において記載されている通りの、ならびに/またはRolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH. Weinheim 2006(6章:X-Ray Diffraction)、および/もしくはH.G.Brittain、「Polymorphism in Pharmaceutical Solids」、95巻、Marcel Dekker Inc.、New York 1999(6章およびその中の参考文献)において記載されている通りの方法または技術に従って決定される。
【0079】
上記および/または下記において定義されている通りの1種または複数の結晶形態の、上記および/または下記の固体物質中におけるより高い含有量が、概して好ましい。
【0080】
式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態から本質的になる、上記および/または下記の固体物質は、格子定数
a=9.5±0.5Å、
b=23.0±5.0Å、および
c=14.7±1.0Å
を有する単位セルを特徴とし、
とりわけ、上記および/または下記に特徴付けられる。
【0081】
式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態から本質的になるというのは、好ましくは、前記固体物質に含有されている式Iの化合物が、式Iの化合物の前記1つまたは複数の結晶形態から本質的に選択されること、あるいは換言すると、前記固体形態中の1つまたは複数の結晶形態が、前記固体形態中において必要量の式Iの化合物を提供することを意味する。より具体的には、とりわけこれに関連して、好ましくは、前記固体形態中の1つまたは複数の結晶形態が、前記固体形態中において90%以上、好ましくは95%以上、より一層好ましくは99%以上、とりわけ99.9%以上の量の式Iの化合物を提供することを意味する。これに関連して、付されるパーセンテージ(%)は、好ましくはモル%および重量%から選択され、とりわけ好ましくはモル%である。
【0082】
前記量は、本明細書において記載されている通りの単一の結晶形態によって、または本明細書において記載されている通りの2つ以上の結晶形態の混合物によって提供され得る。好ましくは、前記量は、本明細書において記載されている通りの単一の結晶形態によって提供される。より好ましくは、前記量は、本明細書において記載されている通りの結晶形態A1、結晶形態S1、結晶形態S2および結晶形態S3から選択される単一の結晶形態によって提供される。
【0083】
固体物質が、本明細書において記載されている通りの結晶形態の2つ以上を含むのであれば、これらの結晶形態の1つは好ましくは主要の結晶形態であり、存在する1つまたは複数のさらなる結晶形態は、少量で存在する。主要の結晶形態は、好ましくは60重量%以上、より好ましくは75%以上、より一層好ましくは90%以上、とりわけ95または99%以上の総量の、存在する結晶形態を提供する。これに関連して、付されるパーセンテージ(%)は、好ましくはモル%および重量%から選択され、とりわけ好ましくはモル%である。
【0084】
別段の規定がなければ、本明細書において化合物および/または溶媒に付されているパーセンテージ(または%)は、好ましくは重量パーセンテージまたはモルパーセントのいずれかであり、好ましくはモルパーセントである。本発明による固体物質中の1つまたは複数の結晶形態の含有量、および妥当な場合、本発明による固体物質中の2つ以上の結晶形態の比率は、粉末X線回折、ラマン分光法および赤外線分光法を含むがこれらに限定されない方法によって有利に決定でき、より好ましくは、粉末X線回折、ラマン分光法および/または赤外線分光法によって決定されるため、それに関係するパーセント値は、別段明記されていなければ、とりわけ好ましくはモルパーセント値である。
【0085】
好ましくは、別段の規定がなければ、本明細書において
i)伝送、とりわけIR伝送、ラマン強度等のスペクトルデータ、
ii)粉末X線回折強度(PXRD強度)、および/または
iii)相対湿度(rhまたはr.h.)等の分析パラメーター等
に付されているパーセンテージ(または%)は、好ましくは相対的パーセンテージ(すなわち、各最大値のパーセント)である。
【0086】
本発明の好ましい主題は、本明細書において記載されている通りの、とりわけ上記および/または下記の式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態である。
【0087】
好ましくは、式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態は、単斜晶系単位セルまたは斜方晶系単位セルを有する上記および/または下記の結晶形態から選択される。
【0088】
好ましくは、式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態は、無水物または非溶媒和物および溶媒和物から選択される。
【0089】
好ましくは、溶媒和物は、水和物、メタノレート(メタノール溶媒和物)およびエタノレート(エタノール溶媒和物)、ならびにそれらの混合物から選択される。前記混合物は、好ましくは、水−メタノール混合溶媒和物、水エタノール混合溶媒和物、メタノール−エタノール混合溶媒和物、およびメタノール−エタノール−水混合溶媒和物から選択される。
【0090】
好ましくは、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、>282℃、より好ましくは288±5℃以上、とりわけ288±5℃の融解/分解温度を特徴とし得る。
【0091】
本明細書において記載されている融解/分解温度および/または熱挙動は、好ましくは、DSC(示差走査熱量測定)およびTGA(熱重量分析)によって決定される。DSCおよび/もしくはTGA法、または概して熱分析法およびそれらを決定するのに適したデバイスは、当技術分野において、例えば、適切な標準的技術が記載されているEuropean Pharmacopeia第6版2.02.34章から、公知である。より好ましくは、融解/分解温度もしくは挙動および/または熱分析については、概して、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.34章において記載されている通り、Mettler Toledo DSC821および/またはMettler Toledo TGA851が使用される。
【0092】
熱分析を示すDSCおよびTGA計測(Mettler−Toledo DSC821、5K/分、窒素パージガス50ml/分;Mettler−Toledo TGA851、5K/分、窒素パージガス50ml/分)ならびに上記に示した融解/分解温度を、図1および図2に示す。
【0093】
好ましくは、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの6つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの8つ以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0094】
【表4】
【0095】
またはより好ましくは
【0096】
【表5】
【0097】
好ましくは、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0098】
【表6】
【0099】
またはより好ましくは
【0100】
【表7−1】
【0101】
【表7−2】
【0102】
好ましくは、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの10以上、より一層好ましくは、下記に示す粉末X線ピークの12以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0103】
【表8−1】
【0104】
【表8−2】
【0105】
またはより好ましくは
【0106】
【表9−1】
【0107】
【表9−2】
【0108】
粉末X線回折、より好ましくは粉末X線回折パターンは、好ましくは本明細書において記載されている通りに実施または決定され、とりわけ、European Pharmacopeia第6版2.9.33章において記載されている通りの標準的技術によって実施または決定され、かつ、より一層好ましくは、好ましくはStoe StadiP 611KL回折計において、パラメーターCu−Kα1放射線および/またはλ=1.5406Åで得られる。
【0109】
図3は、結晶形態A1の粉末X線ディフラクトグラムを示す。
【0110】
好ましくは、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、単結晶X線構造データ、例えば、好ましくはグラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、好ましくは298K±5Kの温度でMoKα放射線を使用する回折計で、ならびに、より一層好ましくは、グラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、約298KでMoKα放射線を使用する、Oxford Diffraction製のエクスカリバー回折計で得られた単結晶X線構造データによって特徴付けできる。
【0111】
得られた単結晶X線構造データによれば、式Iの化合物の無水物、とりわけ結晶形態A1は、格子定数a=9.8Å、b=15.4Å、c=19.5Å(±0.1Å)を有する斜方晶系空間群P212121中で結晶化し、単位セル体積は、好ましくは2940(±10)Å3である。
【0112】
単結晶構造から、形態A1が無水物または非溶媒和物を表すことが明白である。
【0113】
単結晶X線構造を図4に描写する。
【0114】
好ましくは、本発明による無水物および非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の6つ以上を含む、より一層好ましくは、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、赤外線分光データを特徴とし得る。
3431cm−1(s)、3339cm−1(s)、3189cm−1(s)、2962cm−1(m)、2872cm−1(m)、1676cm−1(s)、1660cm−1(s)、1617cm−1(s)、1407cm−1(s)、1316cm−1(m)、1224cm−1(m)、1186cm−1(m)、711cm−1(m)。
【0115】
より好ましくは、本発明による無水物および非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、より一層好ましくは、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の12以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、赤外線分光データを特徴とし得る。
3431cm−1(s)、3339cm−1(s)、3189cm−1(s)、3031cm−1(m)、2962cm−1(m)、2872cm−1(m)、1676cm−1(s)、1660cm−1(s)、1617cm−1(s)、1539cm−1(s)、1493cm−1(s)、1407cm−1(s)、1358cm−1(m)、1316cm−1(m)、1247cm−1(m)、1224cm−1(m)、1186cm−1(m)、994cm−1(w)、921cm−1(w)、711cm−1(m)、599cm−1(m)。
【0116】
括弧内に示される相対強度は、好ましくは次の通りに定義される:
*「s」=強(好ましくは透過率≦50%)、「m」=中(好ましくは50%<透過率≦70%)、「w」=弱(好ましくは透過率>70%)
IRまたはFT−IRスペクトルは、好ましくは、試料調製技術としてKBrペレットを使用して得られる。
【0117】
IR分光データは、好ましくはFT−IR分光法によって得られ、IR分光データまたはFT−IR分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.24章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。FT−IRスペクトルの計測には、好ましくはBrukerベクター22分光計が使用される。FT−IRスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0118】
本発明による無水物、とりわけ結晶形態A1のFT−IRスペクトルを、図5に示す。
【0119】
好ましくは、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、ラマン分光データを特徴とし得る。
3064cm−1(w)、2976cm−1(m)、2934cm−1(m)、2912cm−1(m)、2881cm−1(m)、1603cm−1(w)、1209cm−1(w)、1029cm−1(w)、1003cm−1(m)、852cm−1(w)。
【0120】
より好ましくは、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の12以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の18以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、ラマン分光データを特徴とし得る。
3064cm−1(w)、2976cm−1(m)、2934cm−1(m)、2912cm−1(m)、2881cm−1(m)、1677cm−1(w)、1648cm−1(w)、1603cm−1(w)、1584cm−1(w)、1465cm−1(w)、1407cm−1(w)、1314cm−1(w)、1242cm−1(w)、1209cm−1(w)、1129cm−1(w)、1029cm−1(w)、1003cm−1(m)、943cm−1(w)、901cm−1(w)、852cm−1(w)、623cm−1(w)、589cm−1(w)。
【0121】
括弧内に示される相対強度は、好ましくは次の通りに定義される:
「s」=強(好ましくは相対ラマン強度≧0.04)、「m」=中(好ましくは0.04>相対ラマン強度≧0.02)、「w」=弱(好ましくは相対ラマン強度<0.02)。
【0122】
ラマンまたはFT−ラマンスペクトルは、好ましくは、各固体物質用の試料ホルダーとしてアルミニウムカップを使用して得られる。
【0123】
ラマン分光データは、好ましくはFT−ラマン分光法によって得られ、ラマン分光データまたはFT−ラマン分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.48章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。FT−ラマンスペクトルの計測には、好ましくはBruker RFS100分光計が使用される。FT−ラマンスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0124】
本発明による無水物、とりわけ結晶形態A1のFT−ラマンスペクトルを、図6に示す。
【0125】
好ましくは、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、動的蒸気収着実験によって特徴付けできる。結果は、Rolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH. Weinheim 2006(9章:Water Vapour Sorptionおよびその中の参考文献)において記載されている通りの標準的技術によって得ることができる。水蒸気収着挙動は、最大98%相対湿度(rhまたはr.h.)の少ない水取り込みレベル(water uptake levels)を示し、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、非吸湿性の欧州薬局方基準として分類され得る。水和物への形成も変換も観察されない。結晶形態A1の水蒸気収着等温線(25℃)(SMS DVSイントリンシック)を、図7に示す。
【0126】
本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、上記で論じた有利な特性から選択される1つまたは複数の特性を示す。より具体的には、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、熱力学的に安定な非溶媒和形態および/または熱力学的安定形態であり、驚くべきことに、好ましくは懸濁液および湿潤材料を含むがこれらに限定されない水性溶媒の存在下、とりわけ塩水(懸濁液および湿潤材料等であるがこれらに限定されない)等の本質的に水性の系中、とりわけ、メタノールおよび/またはエタノールの不在下におけるそのような水性系中で、熱力学的に安定な形態であることが分かる。これに関連して、湿潤材料は、好ましくは、各無水物または非溶媒和物と、少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、とりわけ20重量%の各水性系との混合物である。
【0127】
より具体的には、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、熱力学的に安定な非溶媒和形態および/または熱力学的安定形態であり、驚くべきことに、高い相対湿度の存在下でさえも熱力学的に安定な形態であることが分かる。
【0128】
さらに、本発明による無水物、とりわけ結晶形態A1は、吸湿性挙動の観点で、全相対湿度範囲(0〜98%)の全体にわたって結晶形態の物理的安定性を有する優位な特性を示し、かつ/または結晶化度および熱挙動が優れている。
【0129】
これは、処理(例えば、濾過による相分離、乾燥、摩砕、微粒子化)および保存のための優れた特性をもたらし、故に、とりわけ懸濁液の製剤に優位である。本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、構造的に関係する不純物、イオン性化合物および残留溶媒の還元が容易に達成され得るため、式Iの化合物の精製に優位な特性を呈する。故に、精製は1ステップで達成され得、ここで、固体形態、例えば従来の先に公知のプロセスによる非晶質形態および/または他の非無水物多形結晶形態は、GMP標準に沿った純度にするためのはるかに大きい努力、例えば、3つ以上の後続精製手順を必要とする。
【0130】
式Iの化合物は、異なる溶媒を可変量および/または比率で、好ましくは比率で組み込んでおり、故に溶媒和物である疑似多形のクラスも形成する。これらの溶媒和物は、例えば、同様の単位セルを導く形態の指数付けを含む粉末X線回折データによって示される通り、構造的に密接に関係する。また、単結晶構造に基づき構造の、および粉末データに基づき構造解の選択例について論じる。最後に、この疑似多形クラスの特定の有益な特性についての議論を示す。以下に、式Iによる化合物の疑似多形形態について3つの好ましい例を記載する:
S1(好ましくは、メタノール−水溶媒和物および/またはメタノール溶媒和物とも称される)、
S2(好ましくは、エタノール−水溶媒和物および/またはエタノール溶媒和物とも称される)、および
S3(好ましくは、無水物および/または四水和物とも称される)。これらの好ましい例は、四溶媒和物としてさらに特徴付けされ得る。
【0131】
故に、先に定義した通りの格子定数ULP1を有する単位セルを有する固体結晶形態は、本明細書において、好ましくは溶媒和物として、より好ましくは四溶媒和物としてさらに特徴付けられる。溶媒和物および/または四溶媒和物は、好ましくは、本明細書において定義されている通りのS1、S2およびS3から選択される1つまたは複数の結晶形態を、ならびに好ましくはそれらの混合物も含む。
【0132】
結晶形態S1、S2および/またはS3は、好ましくは溶媒和物として、とりわけ四溶媒和物としてさらに特徴付けられる、すなわち、これらの形態は、好ましくは各単位セル中約化学量論量の溶媒分子を示し、これは、単位セル当たりおよび式Iによる化合物1分子当たり、最大約4個の溶媒分子である。
【0133】
これらの溶媒和物において、より好ましくはこれらの四溶媒和物において、溶媒分子は、好ましくは水およびアルコールの分子から選択され、より好ましくは、水、メタノールおよびエタノール、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0134】
したがって、溶媒和物は、好ましくは、水和物、アルコール溶媒和物(つまりアルコレート)または水−アルコール混合溶媒和物として、より好ましくは、水和物、メタノール溶媒和物(つまりメタノレート)、エタノール溶媒和物(つまりエタノレート)、水−メタノール混合溶媒和物、水−エタノール混合溶媒和物または水−メタノール−エタノール混合溶媒和物としてさらに特徴付けされ得る。より具体的には、前記溶媒和物が溶媒の混合物から生成されるまたはそれらと接触している、例えば溶媒の混合物から再結晶されるまたはそれらで調節されるのであれば、混合溶媒和物を得ることができる。とりわけ好ましくは、水アルコール混合溶媒和物、とりわけ水メタノール混合溶媒和物、水エタノール混合溶媒和物および/または水−メタノール−エタノール混合溶媒和物をこのようにして得ることができる。加えて、1つの溶媒和物内の溶媒分子は、別の溶媒の溶媒分子と部分的にまたは完全に交換可能である。故に、溶媒和物、より好ましくは四溶媒和物、とりわけ結晶形態S1、S2およびS3は、いずれも固体結晶形態の特定クラスに属することが明らかである。
【0135】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、>210℃の融解/分解温度、より好ましくは217±5℃以上の融解/分解、とりわけ217±5℃の融解/分解を特徴とし得る。好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物について得られる、とりわけ結晶形態S3について得られる融解/分解温度は、<250℃である。
【0136】
本明細書において記載されている融解/分解温度および/または熱挙動は、好ましくは、DSC(示差走査熱量測定)およびTGA(熱重量分析)によって決定される。DSCおよび/もしくはTGA法、または概して熱分析法およびそれらを決定するのに適したデバイスは、当技術分野において、例えば、適切な標準的技術が記載されているEuropean Pharmacopeia第6版2.02.34章から、公知である。より好ましくは、融解/分解温度もしくは挙動および/または熱分析については、概して、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.34章において記載されている通り、Mettler Toledo DSC821および/またはMettler Toledo TGA851が使用される。
【0137】
熱分析を示すDSCおよびTGA計測(Mettler−Toledo DSC821、5K/分、窒素パージガス50ml/分;Mettler−Toledo TGA851、5K/分、窒素パージガス50ml/分)ならびに上記に示した融解/分解温度を、図23および図24に示す。
【0138】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの3つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの6つ以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0139】
【表10】
【0140】
またはより好ましくは
【0141】
【表11−1】
【0142】
【表11−2】
【0143】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは、下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの9つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの12以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって、特徴付けできる。
【0144】
【表12】
【0145】
またはより好ましくは
【0146】
【表13−1】
【0147】
【表13−2】
【0148】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは、下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの10以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの13以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0149】
【表14】
【0150】
またはより好ましくは
【0151】
【表15−1】
【0152】
【表15−2】
【0153】
図25は、結晶形態S3の粉末X線ディフラクトグラムを示す。
【0154】
粉末X線回折、より好ましくは粉末X線回折パターンは、好ましくは本明細書において記載されている通りに実施または決定され、とりわけ、European Pharmacopeia第6版2.9.33章において記載されている通りの標準的技術によって実施または決定され、かつ、より一層好ましくは、好ましくはStoe StadiP 611KL回折計において、パラメーターCu−Kα1放射線および/またはλ=1.5406Åで得られる。
【0155】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、単結晶X線構造データ、例えば、好ましくはグラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、好ましくは298K±5Kの温度でMoKα放射線を使用する回折計で、ならびに、より一層好ましくはグラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、約298KでMoKα放射線を使用する、Oxford Diffraction製のエクスカリバー回折計で得られた単結晶X線構造データによって特徴付けできる。
【0156】
得られた単結晶X線構造データによれば、本発明による式Iの化合物の四水和物、とりわけ結晶形態S3は、格子定数a=9.6Å、b=25.9Å、c=13.9Å(±0.1Å)を有する斜方晶系空間群P212121中で結晶化し、単位セル体積は、好ましくは3396(±10)Å3である。
【0157】
単結晶構造から、形態S3が四溶媒和物、より具体的には四水和物を表すことが明白である。
【0158】
単結晶X線構造を図26に描写する。前記単結晶X線構造データに基づくさらなる構造情報を、図26a、26bおよび26cに示す。
【0159】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の3つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の6つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、赤外線分光データを特徴とし得る。
3319cm−1(s)、3067cm−1(s)、2966cm−1(s)、1668cm−1(s)、1541cm−1(s)、1395cm−1(s)、704cm−1(m)。
【0160】
より好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の6つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、赤外線分光データを特徴とし得る。
3428cm−1(s)、3319cm−1(s)、3067cm−1(s)、2966cm−1(s)、2874cm−1(m)、1668cm−1(s)、1541cm−1(s)、1455cm−1(s)、1395cm−1(s)、1232cm−1(m)、704cm−1(m)。
【0161】
括弧内に示される相対強度は、好ましくは次の通りに定義される:
*「s」=強(好ましくは透過率≦50%)、「m」=中(好ましくは50%<透過率≦70%)、「w」=弱(好ましくは透過率>70%)。
【0162】
IRまたはFT−IRスペクトルは、好ましくは、試料調製技術としてKBrペレットを使用して得られる。
【0163】
IR分光データは、好ましくはFT−IR分光法によって得られ、IR分光データまたはFT−IR分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.24章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。FT−IRスペクトルの計測には、好ましくはBrukerベクター22分光計が使用される。FT−IRスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0164】
本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3のFT−IRスペクトルを、図27に示す。
【0165】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の4つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の7つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、ラマン分光データを特徴とし得る。
3069cm−1(m)、2931cm−1(s)、1666cm−1(m)、1607cm−1(w)、1443cm−1(w)、1339cm−1(w)、1205cm−1(w)、1004cm−1(s)、911cm−1(m)。
【0166】
より好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の12以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、ラマン分光データを特徴とし得る。
3069cm−1(m)、2931cm−1(s)、1666cm−1(m)、1607cm−1(w)、1585cm−1(w)、1443cm−1(w)、1339cm−1(w)、1205cm−1(w)、1122cm−1(w)、1033cm−1(w)、1004cm−1(s)、936cm−1(w)、911cm−1(m)、825cm−1(w)、624cm−1(w)、519cm−1(w)。
【0167】
括弧内に示される相対強度は、好ましくは次の通りに定義される:
「s」=強(好ましくは相対ラマン強度≧0.04)、「m」=中(好ましくは0.04>相対ラマン強度≧0.02)、「w」=弱(好ましくは相対ラマン強度<0.02)
ラマンまたはFT−ラマンスペクトルは、好ましくは、各固体物質用の試料ホルダーとしてアルミニウムカップを使用して得られる。
【0168】
ラマン分光データは、好ましくはFT−ラマン分光法によって得られ、ラマン分光データまたはFT−ラマン分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.24および/または2.02.48章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。FT−ラマンスペクトルの計測には、好ましくはBruker RFS100分光計が使用される。FT−ラマンスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0169】
本発明による四溶媒和物、とりわけ結晶形態S3のFT−ラマンスペクトルを、図28に示す。
【0170】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、動的蒸気収着実験によって特徴付けできる。結果は、Rolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH. Weinheim 2006(9章:Water Vapour Sorptionおよびその中の参考文献)において記載されている通りの標準的技術によって得ることができる。
【0171】
水蒸気収着挙動は、初期乾燥ステップ(0%相対湿度(rh))内での水分子(およそ9重量%)の損失を示す。水吸着サイクル中に、上昇したrhで、格子中における水分子の集合が示され得る(およそ10重量%)。第二の脱着サイクルにおいてこの量の水の損失が示され得る。形態S3の水蒸気収着等温線(25℃)を図29に示す。
【0172】
全体として、本明細書において示される熱分析データは、四水和物構造に昇温で完全脱水が観察される(四水和物について算出される含水量が10.9wt%である)ことをTGAにおいて立証している。水蒸気収着データは、25℃で乾燥条件(0%rh)下であっても約9wt%の水しか分離されないことを示し、好ましくは構造の完全脱水が発生しないことを示している。結晶形態S3の水蒸気収着等温線(25℃)(SMS DVSイントリンシック)を図29に示す。
【0173】
驚くべきことに、本発明による水和物内の水分子、とりわけ本発明による四水和物内の水分子は、アルコール分子によって、好ましくは、1から6個の炭素原子を有するモノオール、ジオールまたはトリオールからなる群から選択されるアルコール分子、より好ましくは1から4個の炭素原子を有するモノオール、とりわけメタノールおよびエタノール、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるモノオールによって、部分的にまたは完全に置換され得ることが分かった。
【0174】
動的蒸気収着/脱着実験、単結晶X線実験および/または粉末X線実験等の実験方法は、例えば結晶形態S3と特徴付けられる四水和物から出発して、前記四水和物の水分子は、前記四水和物から部分的におよび/もしくはほぼ完全に除去され得、かつ/またはメタノールおよび/もしくはエタノールによって置換され得ることを示す。
【0175】
例えば、有機溶媒および/または水の蒸気、好ましくは、本明細書において定義されている通りの1種もしくは複数のアルコール、および/または水から選択される有機溶媒の蒸気、とりわけメタノール、エタノールおよび/または水の蒸気を好ましくは使用する動的蒸気収着/脱着実験は、前記四水和物からの水分子が、アルコール分子、とりわけメタノールおよび/またはエタノール分子によって、潜在的にテトラアルコール溶媒和物またはアルコール−水混合溶媒和物もしくは四溶媒和物が形成されるまで連続的に置換され得ることを示す。
【0176】
別の例として、
異なる水およびアルコール分圧を表す水−アルコール混合雰囲気、好ましくは水−エタノール雰囲気下における、
a)式Iによる化合物の非晶質材料、または
b)水和物形態
の調節は、両方の事例において、使用される各条件に応じて、式Iによる化合物1分子当たり最大4分子の水または最大2分子のエタノールを有し異なる化学量論を呈する結晶性溶媒和物、例えば、四水和物S3(4分子の水)またはジエタノレートS2(2分子のエタノール、例えば図31を参照))を生じた。水の定量化についてカールフィッシャー滴定によって、およびエタノールの定量化についてHS−GCによって測定した際の化学量論を、図30に描写する。該図表には、式Iによる化合物1分子当たり4分子を超える水を有する化学量論(stochiometries)を表す点も描写されている。四水和物の結晶格子中には4分子を超える水のためのスペースはないため、過剰量の4分子を超える水は吸着した水分を表す。
【0177】
結果(例13も参照)は、エタノール蒸気圧が上昇するとともに、水和物形態S3から水−エタノール混合または水なしエタノール溶媒和形態S2への流動転移があることを示す。すべての溶媒和物(水和物を含む)は同様の格子定数を有し、該定数は、エタノール分子の集合とともにわずかに増加するに過ぎない。
【0178】
また別の例として、メタノール雰囲気下における式Iによる化合物の非晶質材料または水和物形態の調節は、式Iによる化合物1分子当たり2分子のメタノールを有する結晶性溶媒和物を生じた。
【0179】
このようにして、最大約100%の水(式Iによる化合物1分子当たり4分子の水を指す、すなわち四水和物を指す)と最大約100%のアルコール(式Iによる化合物1分子当たり4分子のアルコールを指す、すなわちテトラアルコレートを指す)の溶媒含有量との間の溶媒含有量を有する四溶媒和物、好ましくは間の中間体として特徴付けされ得る結晶形態が取得可能である。
【0180】
結果については上記および/または下記でさらに論じられており、とりわけ下記に示す表1および2において論じられている。例えば、後にジヒドレート−ジメタノレートおよび結晶形態S1として、ならびにジヒドレート−ジエタノレートおよび結晶形態S2として詳細に特徴付けられる、ジヒドレート−ジアルコレートの混合である準安定性の結晶性溶媒和物(式Iによる化合物1分子当たり2分子の水および2分子のアルコールを指す)をそれぞれ得ることができ、上記および/または下記で詳細に論じられている。これらの化学量論は、本明細書において記載されている動的蒸気収着実験から導出され、かつ/または外挿されたものである。新しいX線実験は、準安定性の結晶性溶媒和物が、後にジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノメタノレートおよび/または結晶形態S1の別の具現として、ならびにジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレートおよび/または結晶形態S2の別の具現として詳細に特徴付けられるこれらの非化学量論クラスの疑似多形のさらなる具現としての、ジヒドレート−アルコレート混合またはより具体的にはジヒドレート−モノアルコレート混合(式Iによる化合物1分子当たり2分子の水および1分子のアルコールを指す)としても存在し得、それぞれ得ることができることを証明するものであり、上記および/または下記で詳細に論じられている。
【0181】
これに関連して、下記に示す表1および2ならびにそれに関係する項を特に参照する。
【0182】
以下の表は、四水和物からテトラアルコレートまでの範囲にある四溶媒和物について各算出される重量含水量および/またはメタノール含有量を示し、この算出においては、1分子の式Iによる化合物および前記四溶媒和物中の計4分子の各溶媒または溶媒混合物に基づき、溶媒和物化学量論における整数ステップを使用した。これは、好ましくは、以下の式によって表現され得る:
[シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)]・[アルコール]x・[H2O](y)(ここで、0≦x≦4かつ0≦y≦4)、
より具体的には:
[シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)]・[アルコール]x・[H2O](4−x)ここで、0≦x≦4)(四水和物とテトラアルコレートとの間の相互変換について)
または
[シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)]・[アルコール]x・[H2O](y)ここで、0≦y≦4かつx≦2−0.5*yかつx≦1)(四水和物とジヒドレート−アルコレート、より具体的にはジヒドレート−モノアルコレートとの間の相互変換について)。(「*」=乗算記号)。
【0183】
【表16】
【0184】
【表17】
【0185】
本明細書においてさらに詳細に論じられる各動的蒸気収着実験において、四水和物から出発し、ジヒドレート−ジメタノレート/結晶形態S1について98%相対飽和のメタノール蒸気を25℃で使用して、9%の質量増加が得られた。これは、テトラメタノレートについて上記で示された結果(算出値108.5%、すなわち8.5%の質量増加)と十分一致している。
【0186】
本明細書においてさらに詳細に論じられる各動的蒸気収着実験において、四水和物から出発し、ジヒドレート−ジエタノレート/結晶形態S2について98%相対飽和のエタノール蒸気を25℃で使用して、17%の質量増加が得られた。これは、テトラエタノレートについて上記で示された結果(算出値117.0%、すなわち17.0%の質量増加)と十分一致している。
【0187】
上記および/または下記に示すように、本発明による四溶媒和物は、好ましくは変換可能であり、より好ましくは、本質的に純粋な四水和物と本質的に純粋なテトラアルコレート、および潜在的に間の中間体すべて、ならびに、好ましくは
上記および/または下記で詳細に論じられているジヒドレート−ジアルコレート混合、および
ジヒドレート−アルコレートまたはジヒドレート−モノアルコレート(式[シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)]・[アルコール]x・[H2O](y)ここで、0≦y≦4かつx≦2−0.5*yかつx≦1によって記載される通り)、より具体的にはS1および/またはS2によって例示される、好ましくはそれらの脱溶媒和物(より低い水および/またはアルコール含有量を呈するもの)との間で変換可能である。
【0188】
それらの四溶媒和物は、極めて類似する構造的特色、例えば結晶学的パラメーター、分析データおよび/または物理学的特性を有し、加えて変換可能であるため、四溶媒和物は、本発明による結晶形態および/または本発明による固体物質のクラスまたはサブクラスを形成することが明らかである。
【0189】
したがって、四溶媒和物、好ましくは本明細書において特徴付けされる通りの四溶媒和物が、本発明の好ましい主題である。
【0190】
明瞭化のために、3当量以上の水を含有し(すなわち、各結晶形態に含有されている溶媒の総量に基づき、>75モル%の含水量を有する)、かつ1当量未満の水以外の1種または複数の溶媒、好ましくは1当量未満の1種または複数の、好ましくはメタノールおよびエタノールから選択されるアルコールを含有する四溶媒和物は、好ましくは、水和物、本発明による水和物、または水和物−四溶媒和物と称される。
【0191】
明瞭化のために、4当量近くの水を含有する(すなわち、各結晶形態に含有されている溶媒の総量に基づき、>90モル%、好ましくは>95モル%の含水量を有する)四溶媒和物は、好ましくは、四水和物または本発明による四水和物と称される。
【0192】
明瞭化のために、1または複数当量のアルコールを含有する(すなわち、各結晶形態に含有されている溶媒の総量に基づき、25モル%以上のアルコール含有量を有する)四溶媒和物は、好ましくは、アルコレート、本発明によるアルコレート、またはアルコレート−四溶媒和物と称される。そのようなアルコレートまたはアルコレート−四溶媒和物の例は、本発明によるメタノレートおよび/もしくはエタノレート(またはメタノレート−四溶媒和物および/もしくはエタノレート−四溶媒和物)である。
【0193】
明瞭化のために、4当量近くの1種または複数のアルコールを含有する(すなわち、各結晶形態に含有されている溶媒の総量に基づき、>90モル%、好ましくは>95モル%の総アルコール含有量を有する)四溶媒和物は、好ましくは、テトラアルコレートまたは本発明によるテトラアルコレートと称される。そのようなテトラアルコレートの例は、テトラメタノレートおよび/もしくはテトラエタノレート、または本発明によるテトラメタノレートおよび/もしくはテトラエタノレートである。
【0194】
アルコール溶媒和物、アルコレート−四溶媒和物もしくはそれらの脱溶媒和物として記載され得、または、より好ましくは、ジヒドレート−ジアルコレート、ジヒドレート−アルコレートもしくはジヒドレート−モノアルコレートとして記載され得る2つ以上の四溶媒和物について下記に記載する。
【0195】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、>205℃の融解/分解温度、より好ましくは210±5℃以上の融解/分解、とりわけ210±5℃の融解/分解を特徴とし得る。好ましくは、本発明による四溶媒和物について得られた、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物について得られた、とりわけ結晶形態S1について得られた前記融解/分解温度は、<250℃である。
【0196】
本明細書において記載されている融解/分解温度および/または熱挙動は、好ましくは、DSC(示差走査熱量測定)およびTGA(熱重量分析)によって決定される。DSCおよび/もしくはTGA法、または概して熱分析法およびそれらを決定するのに適したデバイスは、当技術分野において、例えば、適切な標準的技術が記載されているEuropean Pharmacopeia第6版2.02.34章から、公知である。より好ましくは、融解/分解温度もしくは挙動および/または熱分析については、概して、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.34章において記載されている通り、Mettler Toledo DSC821および/またはMettler Toledo TGA851が使用される。
【0197】
熱分析を示すDSCおよびTGA計測(Mettler−Toledo DSC821、5K/分、窒素パージガス50ml/分;Mettler−Toledo TGA851、5K/分、窒素パージガス50ml/分)ならびに上記に示した融解/分解温度を、図8および図9に示す。
【0198】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの6つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの9つ以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0199】
【表18】
【0200】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの8つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの12以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0201】
【表19】
【0202】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの10以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの12以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0203】
【表20】
【0204】
結晶形態S1の粉末X線ディフラクトグラムを、図10に示す。
【0205】
PXRDパターンは、以下の単斜晶系単位セル(空間群P21)で首尾よく指数付けできる。
a=9.4Å、b=25.9Å、c=14.1Å(±0.1Å)、β=91.2°(±0.1)、V約3430(±10)Å3。
【0206】
粉末X線回折、より好ましくは粉末X線回折パターンは、好ましくは本明細書において記載されている通りに実施または決定され、とりわけEuropean Pharmacopeia第6版2.9.33章において記載されている通りの標準的技術によって実施または決定され、かつ、より一層好ましくは、好ましくはStoe StadiP 611KL回折計において、パラメーターCu−Kα1放射線および/またはλ=1.5406Åで得られる。
【0207】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、単結晶X線構造データ、例えば、好ましくはグラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、好ましくは298K±5Kの温度でMoKα放射線を使用する回折計で、ならびに、より一層好ましくはグラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、約298KでMoKα放射線を使用する、Oxford Diffraction製のエクスカリバー回折計で得られた単結晶X線構造データによって特徴付けできる。
【0208】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の3つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の6つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、赤外線分光データを特徴とし得る。
3311cm−1(s)、2965cm−1(m)、2875cm−1(w)、1668cm−1(s)、1542cm−1(s)、1396cm−1(m)、1028cm−1(w)、707cm−1(m)。
【0209】
より好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の6つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、赤外線分光データを特徴とし得る。
3311cm−1(s)、3067cm−1(m)、2965cm−1(m)、2937cm−1(m)、2875cm−1(w)、1668cm−1(s)、1542cm−1(s)、1456cm−1(m)、1396cm−1(m)、1028cm−1(w)、707cm−1(m)。
【0210】
括弧内に示される相対強度は、好ましくは次の通りに定義される:
*「s」=強(好ましくは透過率≦50%)、「m」=中(好ましくは50%<透過率≦70%)、「w」=弱(好ましくは透過率>70%)。
【0211】
IRまたはFT−IRスペクトルは、好ましくは、試料調製技術としてKBrペレットを使用して得られる。
【0212】
IR分光データは、好ましくはFT−IR分光法によって得られ、IR分光データまたはFT−IR分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.24章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。FT−IRスペクトルの計測には、好ましくはBrukerベクター22分光計が使用される。FT−IRスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0213】
本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1のFT−IRスペクトルを、図11に示す。
【0214】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の5つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の8つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、ラマン分光データを特徴とし得る。
3067cm−1(w)、2936cm−1(s)、1668cm−1(m)、1606cm−1(w)、1446cm−1(w)、1338cm−1(w)、1203cm−1(w)、1033cm−1(w)、1004cm−1(s)、904cm−1(m)、624cm−1(w)。
【0215】
より好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の12以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、ラマン分光データを特徴とし得る。
3067cm−1(w)、2936cm−1(s)、1668cm−1(m)、1606cm−1(w)、1585cm−1(w)、1446cm−1(w)、1338cm−1(w)、1203cm−1(w)、1123cm−1(w)、1033cm−1(w)、1004cm−1(s)、904cm−1(m)、824cm−1(w)、624cm−1(w)、523cm−1(w)。
【0216】
括弧内に示される相対強度は、好ましくは次の通りに定義される:
「s」=強(好ましくは相対ラマン強度≧0.04)、「m」=中(好ましくは0.04>相対ラマン強度≧0.02)、「w」=弱(好ましくは相対ラマン強度<0.02)。
【0217】
ラマンまたはFT−ラマンスペクトルは、好ましくは、各固体物質用の試料ホルダーとしてアルミニウムカップを使用して得られる。
【0218】
ラマン分光データは、好ましくはFT−ラマン分光法によって得られ、ラマン分光データまたはFT−ラマン分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.48章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。FT−ラマンスペクトルの計測には、好ましくはBruker RFS100分光計が使用される。FT−ラマンスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0219】
本発明による四溶媒和物、とりわけ結晶形態S1のFT−ラマンスペクトルを、図12に示す。
【0220】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、水蒸気および/またはメタノール蒸気を使用する動的蒸気実験によって特徴付けできる。結果は、Rolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH.Weinheim 2006(9章:Water Vapour Sorptionおよびその中の参考文献)において記載されている通りの標準的技術によって得ることができる。
【0221】
本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1の水蒸気収着挙動は、第一の脱着サイクルにおいて約8wt%の質量損失(メタノール蒸気収着実験において観察されるメタノール質量増加よりもわずかに低い)を示す。水蒸気吸着時、上昇したrhで約8wt%の最大重量増加とともに、格子中における水分子の集合が観察される。第二の脱着サイクルにおいては、約9.9wt%の総質量損失が観察される。式Iの化合物のジヒドレートジ−メタノレートについて、算出されるメタノール含有量は9.3wt%に等しい。形態S1は、100%メタノール蒸気の雰囲気において熱力学的に安定な形態であることが分かる。結晶形態S1の水蒸気収着等温線(25℃)(SMS DVSイントリンシック)を、図13に示す。水和物形態から形態S1のメタノール蒸気収着等温線(25℃)(SMS DVSアドバンテージ)を、図14に示す。
【0222】
故に、結晶形態S1は、例えばメタノール蒸気収着を介して、好ましくは、本発明による水和物、とりわけ本発明による四水和物、すなわち結晶形態S3等の水和物構造から出発し、メタノール蒸気収着を介して得ることができるジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物から好ましくは選択される、結晶性メタノール溶媒和形態または水/メタノール混合溶媒和形態である。図13に示される通りかつ上記で論じた通りのメタノール蒸気収着曲線から、メタノール分圧を上昇させると、約9wt%のメタノールが試料によって取り込まれることが分かる。
【0223】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、>205℃の融解/分解温度、より好ましくは210±5℃以上の融解/分解、とりわけ210±5℃の融解/分解を特徴とし得る。好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物について得られた、とりわけ結晶形態S2について得られた前記融解/分解温度は、<250℃である。
【0224】
本明細書において記載されている融解/分解温度および/または熱挙動は、好ましくは、DSC(示差走査熱量測定)およびTGA(熱重量分析)によって決定される。DSCおよび/もしくはTGA法、または概して熱分析法およびそれらを決定するのに適したデバイスは、当技術分野において、例えば、適切な標準的技術が記載されているEuropean Pharmacopeia第6版2.02.34章から公知である。より好ましくは、融解/分解温度もしくは挙動および/または熱分析については、概して、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.34章において記載されている通り、Mettler Toledo DSC821および/またはMettler Toledo TGA851が使用される。
【0225】
熱分析を示すDSCおよびTGA計測(Mettler−Toledo DSC821、5K/分、窒素パージガス50ml/分;Mettler−Toledo TGA851、5K/分、窒素パージガス50ml/分)ならびに上記に示した融解/分解温度を、図15および図16に示す。
【0226】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの3つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの5つ以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0227】
【表21】
【0228】
またはより好ましくは
【0229】
【表22】
【0230】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの4つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの6つ以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0231】
【表23】
【0232】
またはより好ましくは
【0233】
【表24−1】
【0234】
【表24−2】
【0235】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの10以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの12以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0236】
【表25−1】
【0237】
【表25−2】
【0238】
またはより好ましくは
【0239】
【表26−1】
【0240】
【表26−2】
【0241】
結晶形態S2の粉末X線ディフラクトグラムを、図17に示す。
【0242】
PXRDパターンは、以下の斜方晶系単位セル(空間群P212121)で首尾よく指数付けできる。
a=9.3Å、b=26.6Å、c=14.7Å(±0.1Å)、V約3600(±10)Å3。
【0243】
粉末X線回折、より好ましくは粉末X線回折パターンは、好ましくは本明細書において記載されている通りに実施または決定され、とりわけ、European Pharmacopeia第6版2.9.33章において記載されている通りの標準的技術によって実施または決定され、かつ、より一層好ましくは、好ましくはStoe StadiP 611KL回折計において、パラメーターCu−Kα1放射線および/またはλ=1.5406Åで得られる。
【0244】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、単結晶X線構造データ、例えば、好ましくはグラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、好ましくは298K±5Kの温度でMoKα放射線を使用する回折計で、ならびに、より一層好ましくはグラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、約298KでMoKα放射線を使用する、Oxford Diffraction製のエクスカリバー回折計で得られた単結晶X線構造データによって特徴付けできる。
【0245】
得られた単結晶X線構造データによれば、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、格子定数a=9.3Å、b=26.3Å、c=13.7Å(±0.1Å)を有する斜方晶系空間群P212121中で結晶化し、単位セル体積は好ましくは3351(±10)Å3である。
【0246】
単結晶構造から、形態S2が、本発明による四溶媒和物、より具体的にはエタノール−水混合溶媒和物、より一層具体的にはジヒドレート−モノエタノレートを表すことが明白である。
【0247】
単結晶X線構造を図32に描写する。
【0248】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の3つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の6つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、赤外線分光データを特徴とし得る。
3306cm−1(s)、2968cm−1(m)、1668cm−1(s)、1546cm−1(s)、1395cm−1(m)、1223cm−1(w)、1049cm−1(w)、705cm−1(w)。
【0249】
より好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の6つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、赤外線分光データを特徴とし得る。
3306cm−1(s)、2968cm−1(m)、2872cm−1(m)、1668cm−1(s)、1546cm−1(s)、1452cm−1(w)、1395cm−1(m)、1223cm−1(w)、1086cm−1(w)、1049cm−1(w)、746cm−1(w)、705cm−1(w)。
【0250】
括弧内に示される相対強度は、好ましくは次の通りに定義される:
*「s」=強(好ましくは透過率≦50%)、「m」=中(好ましくは50%<透過率≦70%)、「w」=弱(好ましくは透過率>70%)。
【0251】
IRまたはFT−IRスペクトルは、好ましくは、試料調製技術としてKBrペレットを使用して得られる。
【0252】
IR分光データは、好ましくはFT−IR分光法によって得られ、IR分光データまたはFT−IR分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.24章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。FT−IRスペクトルの計測には、好ましくはBrukerベクター22分光計が使用される。FT−IRスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0253】
本発明による四溶媒和物、とりわけ結晶形態S2のFT−IRスペクトルを、図18に示す。
【0254】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の5つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の8つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、ラマン分光データを特徴とし得る。
3068cm−1(w)、2934cm−1(s)、1668cm−1(w)、1606cm−1(w)、1449cm−1(w)、1337cm−1(w)、1204cm−1(w)、1120cm−1(w)、1004cm−1(m)、904cm−1(w)、825cm−1(w)、624cm−1(w)、521cm−1(w)。
【0255】
より好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の12以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、ラマン分光データを特徴とし得る。
3068cm−1(w)、2934cm−1(s)、1668cm−1(w)、1606cm−1(w)、1586cm−1(w)、1449cm−1(w)、1337cm−1(w)、1204cm−1(w)、1120cm−1(w)、1033cm−1(w)、1004cm−1(m)、904cm−1(w)、825cm−1(w)、624cm−1(w)、521cm−1(w)。
【0256】
括弧内に示される相対強度は、好ましくは次の通りに定義される:
「s」=強(好ましくは相対ラマン強度≧0.04)、「m」=中(好ましくは0.04>相対ラマン強度≧0.02)、「w」=弱(好ましくは相対ラマン強度<0.02)。
【0257】
ラマンまたはFT−ラマンスペクトルは、好ましくは、各固体物質用の試料ホルダーとしてアルミニウムカップを使用して得られる。
【0258】
ラマン分光データは、好ましくはFT−ラマン分光法によって得られ、ラマン分光データまたはFT−ラマン分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.48章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。FT−ラマンスペクトルの計測には、好ましくはBruker RFS100分光計が使用される。FT−ラマンスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0259】
本発明による四水和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2のFT−ラマンスペクトルを、図19に示す。
【0260】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、水蒸気および/またはメタノール蒸気を使用する動的蒸気実験によって特徴付けできる。結果は、Rolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH. Weinheim 2006(9章:Water Vapour Sorptionおよびその中の参考文献)において記載されている通りの標準的技術によって得ることができる。
【0261】
本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2の水蒸気収着挙動は、第一の脱着サイクルにおいて約6.5wt%の質量損失(エタノール蒸気収着実験において観察されるエタノール質量増加よりも低い)を示す。水蒸気吸着時、上昇したrhで約6.4wt%の最大重量増加とともに、格子中における水分子の集合が観察される。第二の脱着サイクルにおいては、約9.2wt%の総質量損失が観察される。式Iの化合物のジヒドレートジ−エタノレートについて、算出されるエタノール含有量は12.5wt%に等しい。形態S2は、100%エタノール蒸気の雰囲気において熱力学的に安定な形態であることが分かる。結晶形態S2の水蒸気収着等温線(25℃)(SMS DVSイントリンシック)を、図20に示す。水和物形態から形態S2のエタノール蒸気収着等温線(25℃)(SMS DVSアドバンテージ)を、図21に示す。
【0262】
故に、結晶形態S2は、例えばエタノール蒸気収着を介して、好ましくは本発明による水和物、とりわけ本発明による四水和物、すなわち結晶形態S3等の水和物構造から出発し、エタノール蒸気収着を介して得ることができるジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物から好ましくは選択される、結晶性エタノール溶媒和形態または水/エタノール混合溶媒和形態である。図21に示される通りかつ上記で論じた通りのエタノール蒸気収着曲線から、エタノール分圧を上昇させると、約17wt%のエタノールが試料によって取り込まれることが分かる。
【0263】
本明細書において示され論じられているデータから分かるように、溶媒和物、とりわけ式Iの化合物の四溶媒和物は、同じ構造型に基づいて、非常に類似する物理学的特性を有し、かつ容易に変換可能な、好ましくは潜在的にすべての転移形態が導出可能であり、とりわけ本明細書において記載されている疑似多形形態間のすべての転移形態が潜在的に導出可能である、新規な結晶形態のクラス(さらに疑似多形形態または略してPPとも命名されている)を形成する。
【0264】
加えて、構造型の類似性は、図22において示される3つの選択された疑似多形(pseudopolymophs)S1、S2およびS3のPXRDパターンの多重プロットによって示されている。3つの選択された疑似多形はすべて、極めて類似するPXRDパターンを呈し、その上、メタノールまたはエタノールによる水の置き換えが単位セルのわずかな膨張を、故に単位セル体積のわずかな増加を導くため、基本的に同じ単位セルを導くことが分かる。溶媒のモル体積から予想される通り、これは、メタノール溶媒和物についてよりもエタノール溶媒和物についてより顕著である。
【0265】
アルコール、好ましくはメタノールおよび/もしくはエタノール、ならびに/または異なる濃度もしくは分圧で存在する水の存在下において、溶媒和物、とりわけ本発明による四溶媒和物を含む疑似多形クラス内での相互変換は、容易に発生する。アルコール、好ましくはメタノールおよび/またはエタノールは製造プロセスにおいて有用な溶媒であるため、疑似多形の利用は、好ましくは、良好な結晶化度と合わせて有利に高い溶解度を呈する結晶性固体状態変態で式Iの化合物を得るために有益である。
【0266】
疑似多形クラスまたは系内の溶媒和物、とりわけ四溶媒和物は、結晶性であり、好ましくは、シレンジタイドホスト構造の損失なく、前述の非晶質固体物質と比較して有利な固体状態安定性を呈する。本明細書において記載されている前記クラスの疑似多形形態は、とりわけ水性媒体中において驚くほど高い溶解度を呈し、このことが、該形態を液体製剤の調製にとりわけ有用なものとしている。加えて、前記クラスの疑似多形形態は、既に公知の非晶質材料と比較して、有利に低減した吸湿性を示す。
異なる溶媒中における四水和物形態S3の溶解度:
【0267】
【表27】
【0268】
吸湿性の低減、良好な溶解度および良好な結晶化度の組合せは、非晶質相と比較して優位な特性を導く。比較において、例えば非晶質固体物質の極めて高い吸湿性および低い安定性により、非晶質材料の精製、取扱および処理は極めて困難である。
【0269】
さらに、本発明による疑似多形形態ならびに/または無水物もしくは非溶媒和物は、非晶質相と比較して改良された物理的および/または化学的安定性を示し、好ましくは、例えば加水分解によって、保存中における分解生成物の形成低減を導く。本発明による固体物質、とりわけ本発明による結晶形態の、この加水分解安定性の改良は、先行技術の非晶質材料中に通常存在する微量のイオン性不純物の低減によって引き起こされると考えられている。
【0270】
結果として、本明細書において論じられているすべての要因は、本発明による固体物質、本発明による結晶形態、とりわけ本発明による溶媒和物および/または無水物もしくは非溶媒和物の、有利に改良された固体状態安定性の原因になると考えられている。
【0271】
加えて、本明細書において論じられているすべての要因は、例えばより高い熱安定性および/または保存安定性によってより長い保存期間を導く、本発明による固体物質、好ましくは本発明による結晶形態、とりわけ本発明による溶媒和物および/または無水物もしくは非溶媒和物を含有する本発明による薬剤の、有利に改良された安定性の原因になると考えられている。
【0272】
本発明の好ましい主題は、障害の治療のための、上記および/または下記の固体物質である。
【0273】
これに関連して、障害は、好ましくは、癌性障害、血管新生または血管新生障害、自己免疫障害、炎症性障害および眼障害からなる群から、より好ましくは、脳腫瘍、肺癌、頭頸部癌、乳癌および前立腺癌、ならびにそれらの転移、関節炎、関節リウマチ、乾癬、網膜症、糖尿病性網膜症、アテローム性動脈硬化症、黄斑変性症ならびに加齢性黄斑変性症からなる群から選択される。
【0274】
とりわけ好ましいのは、癌性障害から選択される障害の治療のための、上記および/または下記の固体物質である。
【0275】
とりわけ好ましいのは、癌性障害の治療のための、上記および/または下記の固体物質であり、ここで、該癌性障害は、脳腫瘍、肺癌、頭頸部癌、乳癌および前立腺癌、ならびにそれらの転移からなる群から選択される。
【0276】
本発明の好ましい主題は、患者における癌性障害を治療する方法であって、前記患者に、上記および/または下記の固体物質を投与するステップを含む方法である。
【0277】
とりわけ好ましいのは、癌性障害が、上記の障害の群の1つまたは複数から選択される、上記の通りの方法である。
【0278】
本発明の好ましい主題は、障害の治療用薬剤の製造のための、本発明による固体物質の使用である。好ましくは、該障害は上記障害の群の1つまたは複数から選択される。
【0279】
故に、本発明の好ましい主題は、障害、好ましくは本明細書において記載されている通りの障害の治療用薬剤の製造のための、1つまたは複数の本発明による結晶形態から本質的になる、またはそれらからなる、固体物質の使用である。
【0280】
本発明のより一層好ましい主題は、障害、好ましくは本明細書において記載されている通りの障害の治療用薬剤の製造のための、結晶形態A1、結晶形態S1、結晶形態S2および結晶形態S3、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される1つまたは複数の結晶形態から本質的になる、またはそれらからなる、固体物質の使用である。
【0281】
本発明のとりわけ好ましい主題は、障害、好ましくは本明細書において記載されている通りの障害の治療用薬剤の製造のための、結晶形態A1もしくは結晶形態S3、またはそれらの混合物から本質的になる、またはそれらからなる、固体物質の使用である。
【0282】
驚くべきことに、本発明による固体物質、とりわけ1つまたは複数の本発明による結晶形態は、式Iによる化合物を、溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と接触させることによって調製できる。
【0283】
故に、本発明の好ましい主題は、本発明による固体物質の調製または製造のための、とりわけ本発明による結晶形態の1つまたは複数の調製または製造のためのプロセスであって、式Iによる化合物を、溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と接触させるステップと、前記接触させるステップによって得られた本発明による固体物質を、前記溶媒または溶媒混合物から単離するステップとを含むプロセスである。
【0284】
前記溶媒または溶媒からの前記単離は、好ましくは、
i)本発明による固体物質の、前記溶媒または溶媒混合物からの結晶化および/または析出、ならびに/あるいは
ii)好ましくは濾過もしくは遠心分離等の物理的手段によって、または沈降および/もしくはデカントによって、前記溶媒から本発明による固体物質を分離すること
によって達成される。
【0285】
しかしながら、固体/流体分離を達成するための複数の分離技術が当技術分野において公知である。好ましくは、それらのいずれか1つが前記分離に首尾よく適用され得る。
【0286】
好ましくは、本発明による固体物質、とりわけ1つまたは複数の本発明による結晶形態は、本発明による結晶形態の1つまたは複数が本質的にない、または好ましくはそれらがない、式Iによる化合物の固体物質から出発し、次いでそれを、溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と接触させることによって調製できる。
【0287】
代替として、好ましくは、本発明による固体物質、とりわけ1つまたは複数の本発明による結晶形態は、本発明による結晶形態の1つまたは複数が本質的にない、または好ましくはそれらがない、式Iによる化合物の溶液から出発し、次いでそれを、溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と接触させること、あるいは、本発明による結晶形態の1つまたは複数が本質的にない、または好ましくはそれらがない、前記式Iによる化合物の溶液を、前記溶媒または溶媒混合物、好ましくは前記極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物中に移動させることによって調製できる。
【0288】
概して、本発明による固体形態および/または本発明による結晶形態の1つもしくは複数を得るためには、前記溶媒または溶媒混合物、好ましくは前記極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と接触させること、あるいは前記溶媒または溶媒混合物、好ましくは前記極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物との接触、続いて単離ステップを行い、ここで、本発明による固体物質および/または本発明による結晶形態の1つまたは複数は、固体状態で得られる。
【0289】
これに関連して、接触させることまたは接触は、好ましくは、「の存在下にある」等の最も広い意味で接触していることを意味する。したがって、前記溶媒または溶媒混合物と接触させることまたは接触の例は、前記溶媒または溶媒混合物に溶解するまたは部分的に溶解すること、前記溶媒または溶媒混合物に懸濁させること、前記溶媒または溶媒混合物の存在下で撹拌すること、前記溶媒または溶媒混合物を用いてまたはその存在下で粉砕すること、前記溶媒または溶媒混合物の存在下で静置させること、前記溶媒または溶媒混合物の存在下で加熱すること、前記溶媒または溶媒混合物の存在下で冷却すること、前記溶媒または溶媒混合物から結晶化または再結晶化させること、および/あるいは前記溶媒または溶媒混合物から析出させることを含むがこれらに限定されない。
【0290】
これに関連して、接触させることまたは接触の好ましい手法は、好ましくは、前記溶媒または溶媒混合物に溶解するまたは部分的に溶解すること、前記溶媒または溶媒混合物の存在下で撹拌すること、前記溶媒または溶媒混合物を用いてまたはその存在下で粉砕すること、前記溶媒または溶媒混合物の存在下で加熱または冷却、好ましくは加熱すること、前記溶媒または溶媒混合物から結晶化または再結晶化させること、および/あるいは前記溶媒または溶媒混合物から析出させることからなる群から選択される。
【0291】
これに関連して、接触させることのとりわけ好ましい手法は、式Iの化合物および/またはその塩の出発材料を、(第一の)極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物に溶解する、本質的に溶解するまたは懸濁させること、好ましくは、続いて、好ましくは本発明による固体物質である、前記溶媒または溶媒混合物から形成された生成物の再結晶化、結晶化および/または析出を含む。好ましくは、形成された生成物の再結晶化、結晶化および/または析出は、冷却、ならびに/あるいは、さらなる(または第二の)溶媒または溶媒混合物、好ましくは異なる極性を有する、より好ましくはその中で接触が開始された(第一の)溶媒または溶媒混合物よりも低い極性を有する、さらなる溶媒または溶媒混合物の添加によって、誘発または促進される。
【0292】
これに関連して、接触させることの別のとりわけ好ましい手法は、上記および/または下記の式Iの化合物の出発材料と極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物とのスラリーの形成、ならびに、前記スラリーを、好ましくは本明細書において記載されている通りの反応時間および本明細書において記載されている通りの反応温度または処理温度で、撹拌しかつ/またはかき混ぜることを含む。これは、好ましくは「スラリー変換」とも称される。
【0293】
本発明による方法および/またはプロセスにおいて使用するための適切な溶媒および溶媒混合物は、当技術分野において公知である。好ましい溶媒および溶媒混合物は、好ましくは、有機溶媒、水、生理食塩水、緩衝溶液、およびそれらの混合物からなる群から選択される。用語「極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物」は公知であり、当業者には明らかである。
【0294】
極性および/またはプロトン性溶媒の例は、水、生理食塩水または生理NaCl溶液、リン酸緩衝溶液、1から6個の炭素原子を有するモノオール、ジオールまたはトリオール等の低級アルコール、アセトンまたはメチルエチル(ethly)ケトン等の低級ケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、DMF、DMSO等を含むがこれらに限定されない。好ましい極性および/またはプロトン性溶媒は、水、生理食塩水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、DMFおよびDMSOからなる群から選択される。
【0295】
極性および/またはプロトン性溶媒混合物の例は、上記に示した極性および/またはプロトン性溶媒の混合物、より好ましくは、水と、水以外の上記に示した極性および/またはプロトン性溶媒の1つまたは複数との混合物、生理食塩水または生理NaCl溶液またはリン酸緩衝溶液と、上記に示した極性および/またはプロトン性溶媒の1つまたは複数との混合物を含むがこれらに限定されない。
【0296】
好ましい極性および/またはプロトン性溶媒混合物は、水と、メタノール、エタノールおよび/またはイソプロパノールとの混合物;メタノール、エタノールおよび/またはイソプロパノールの混合物;アセトンと、水および/またはアセトニトリルとの混合物;メタノールと、アセトン、アセトニトリルおよび/または水との混合物;ならびにエタノールと、アセトン、アセトニトリルとの混合物からなる群から選択され、好ましくは上記に示した混合物からも選択され、ここで、水が、生理食塩水、生理NaCl溶液またはリン酸緩衝溶液の代用とされる。前記混合物の中で好ましいのは、好ましくは示した溶媒のうち2、3または4種から本質的になるすべてを含む混合物である。前記混合物の中でとりわけ好ましいのは、混合物に含有されている溶媒のそれぞれの少なくとも5%、とりわけ少なくとも10%を含む混合物である。
【0297】
これに関連して、好ましい溶媒および/または溶媒混合物の例は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、水、メタノール、エタノール、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0298】
本発明による固体物質の製造の前記方法において、式Iの化合物の出発材料は、好ましくは、
a)式Iの化合物の非晶質または本質的に非晶質の材料、
b)式Iの化合物の酸付加または塩基付加塩、
c)式Iの化合物の酸付加または塩基付加塩の非晶質または本質的に非晶質の固体物質、ならびに
b)好ましくは、前記化合物および/またはその塩の合成から得られる通りの、粗製の式Iの化合物および/またはその酸付加もしくは塩基付加塩の溶液
ならびにそれらの混合物
からなる群から選択される。
【0299】
加えて、驚くべきことに、1つの本発明による第一の結晶形態は、1つまたは複数の本発明による他の結晶形態に、好ましくは可逆的に転換され得ることが分かった。さらに、1つまたは複数の本発明による結晶形態の1つの第一の混合物は、前記第一の混合物とは異なる本発明による結晶形態の第二の混合物、または本発明による純粋もしくは本質的に純粋な単結晶形態のいずれかに転換され得ることが分かった。
【0300】
したがって、本発明は、1つまたは複数の第一の結晶形態を含む1つの本発明による第一の固体物質を、1つまたは複数の第二の結晶形態を含む本発明による第二の固体物質に転換するためのプロセスも提供する。この方法は、好ましくは、上記および/または下記の製造の方法と同じ手法で、好ましくは同じ溶媒および/または溶媒混合物を使用して為され得るが、該方法の出発材料として本発明による(第一の)固体物質を使用している。
【0301】
故に、本発明の好ましい主題は、本発明による固体物質の製造または転換、好ましくは製造のためのプロセスであって、
a)シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)および/またはその酸付加もしくは塩基付加塩を、溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と接触させるステップと、
b)シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の分子内塩を、極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物から析出させ、かつ/または結晶化するステップと、
c)本発明による固体物質を場合により単離するステップと、
を含むプロセスである。
【0302】
転換のための前記のプロセスにおいて、ステップa)で用いられる出発材料は、好ましくは、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)を内塩として含有する本発明による(第一の)固体形態であり、ステップb)で得られ、ステップc)によって場合により単離される本発明による固体物質は、本発明による(第二の)異なる固体物質である。好ましくは、本発明による第一の固体物質と本発明による第二の異なる固体物質との差異は、前記第二の固体形態に含有されている結晶形態の量、前記固体形態に含有されている結晶形態の選択、または前記固体形態に含有されている結晶形態の比率である。
【0303】
製造のための前記プロセスにおいて、ステップa)で用いられる出発材料は、好ましくは、
i)本発明による固体形態とは異なる式Iの化合物の固体形態、
ii)シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)および/またはその酸付加もしくは塩基付加塩の溶液[ここで、該溶液は、好ましくは粗製溶液であるか、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の合成から得られる、より好ましくは直接得られるもののいずれかである]、ならびに/あるいは
iii)本発明による固体形態とは異なる式Iの化合物の固体形態を溶解して得られるもの
から選択される。
【0304】
故に、本発明の好ましい主題は、本発明による固体物質の製造のためのプロセスであって、
a)シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の酸付加または塩基付加塩を、極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と接触させるステップと、
b)シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の分子内塩を、極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物から析出させ、かつ/または結晶化するステップと、
c)本発明による固体物質を場合により単離するステップと
を含むプロセスである。
【0305】
製造および/または転換のための前記プロセスにおいて、ステップa)、b)および/またはc)は、好ましくは5.5から8の範囲内のpH値で、より好ましくは6から7.5の範囲内のpH値で、より好ましくは6.5から7.2の範囲内のpH値で、とりわけ6.7から6.9の範囲内のpH値、例えば約6.8のpH値で実施される。より好ましくは、a)、b)およびc)から選択されるステップの2つ以上が、上記に示したpH値で実施され、とりわけ、ステップa)、b)およびc)のすべてが上記に示したpH値で実施される。a)、b)およびc)から選択されるステップの1つまたは複数を上記に示したpH値で実施することは、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の酸付加もしくは塩基付加塩をシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の内塩に変換するのに、または前記プロセスにおいてシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の内塩を維持するもしくは安定させるのに有利である。
【0306】
製造および/または転換のための前記プロセスにおいて、ステップa)、b)および/またはc)は、好ましくはほぼ等電条件下で実施される。より好ましくは、a)、b)およびc)から選択されるステップの2つ以上がほぼ等電条件下で実施され、とりわけ、ステップa)、b)およびc)のすべてがほぼ等電条件下で実施される。a)、b)およびc)から選択されるステップの1つまたは複数をほぼ等電条件下で実施することは、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の酸付加もしくは塩基付加塩をシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の内塩に変換するのに、または前記プロセスにおいてシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の内塩を維持するもしくは安定させるのにも有利である。
【0307】
製造および/または転換のための前記プロセスにおいて、ステップa)、b)および/またはc)は、好ましくは−20℃から+200℃の間の範囲内の、より好ましくは−5℃から+150℃の間の範囲内の、より一層好ましくは+5℃から+110℃の間の範囲内の、とりわけ+10℃から+100℃の間の範囲内の温度で、例えば、ほぼ室温(約25℃)で、約50℃で、または約75℃で、または約100℃で実施される。
【0308】
概して、温度が高くなるほど、本明細書において記載されている通りの製造のためのプロセスおよび/または転換のためのプロセスを加速させる傾向がある
概して、示されている温度範囲の高い方の端における温度は、本発明による無水物または非溶媒和物の形成を助長する傾向がある
概して、示されている温度範囲の低い方の端における温度は、本発明による溶媒和物の形成を助長する傾向がある。
【0309】
本発明による固体物質の製造のためのプロセスにおいて、ならびに/または本発明による固体物質の変換もしくは転換のための、および/もしくは本発明による形態を結晶化するためのプロセスにおいて、処理時間または「反応時間」、すなわち、接触、析出、結晶化および/または単離が起こるのに好ましい時間は、概して5分間から4週間の間である。前記処理時間は、好ましくは、上記に示した時間中は、式Iによる化合物の分解が、とりわけ本明細書において記載されている好ましい処理パラメーターまたは処理条件内ではほとんどまたはまったく起こらないため、本発明によるプロセスにとって極めて重大な要因というわけではない。加えて、該プロセスの生成物、すなわち、本発明による固体物質は、それが形成される条件下では概して安定である。
【0310】
したがって、処理時間は、好ましくは10分間から3週間、より好ましくは15分間から1週間、より好ましくは30分間から72時間、とりわけ1時間から48時間の範囲である。
【0311】
本発明による無水物または非溶媒和物の形成または変換、好ましくは形成のための、とりわけ結晶形態A1の形成のための処理時間は、好ましくは1時間から3週間の範囲内、より好ましくは1時間から2週間の範囲内、とりわけ1時間から72時間の範囲内である。
【0312】
本発明による溶媒和物、より好ましくは本発明による四溶媒和物、より一層好ましくは1つまたは複数の結晶形態S1、S2および/またはS3の形成または変換、好ましくは形成のための、とりわけ結晶形態S1の形成のための処理時間は、好ましくは5分間から3週間の範囲内、より好ましくは5分間から1週間の範囲内、より一層好ましくは5分間から48時間の範囲内、とりわけ10分間から24時間の範囲内である。
【0313】
概して、当技術分野において公知のように、前記プロセス中で低温であるほど、長い処理時間を導く。
【0314】
概して、水、メタノールおよび/またはエタノール、ならびにそれらの混合物は、ステップa)、b)および/またはc)において使用するための、とりわけステップa)、b)およびc)において使用するための、好ましい極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物である。
【0315】
製造および/または転換のための前記プロセスにおいて、ステップa)、b)および/またはc)、好ましくはa)、b)およびc)の溶媒は、水、メタノールまたはエタノールから本質的になる。
【0316】
好ましくは、同じまたは本質的に同じ溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物が、処理ステップa)、b)およびc)において使用される。
【0317】
概して、ステップa)、b)および/またはc)における、少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、とりわけ少なくとも20重量%の、好ましくはメタノール、エタノールおよびイソプロパノールから選択される、より好ましくはメタノールおよびエタノールから選択される1種または複数のアルコールを含有する溶媒または溶媒混合物の使用は、本発明による溶媒和物の形成を助長する。
【0318】
より具体的には、ステップa)、b)および/またはc)における、
i)5から90重量%のメタノールおよびエタノールからなる群から選択される少なくとも1種のアルコールと、
ii)10から95重量%の水と
を含む溶媒混合物の使用は、好ましくは、本発明による溶媒和物の形成を助長する。
【0319】
より一層具体的には、ステップa)、b)および/またはc)における、
i)5から50重量%、とりわけ10から60重量%の、好ましくはメタノールおよびエタノールからなる群から選択される少なくとも1種のアルコールと、
ii)50から95重量%、とりわけ40から90重量%の水と
を含む溶媒混合物の使用は、好ましくは、本発明による溶媒和物の形成を助長する。
【0320】
故に、好ましいのは、本発明による固体物質、好ましくは本発明による溶媒和物の、とりわけ本発明による1種または複数の四溶媒和物(tetrasovates)の製造のための、上記および/または下記のプロセスであり、ここで、ステップa)、b)および/またはc)の溶媒または溶媒混合物は、
i)5から90重量%、好ましくは5から50重量%の、メタノールおよびエタノールからなる群から選択される少なくとも1種のアルコールと、
ii)10から95重量%、好ましくは50から95重量%の水と
を含む。
【0321】
故に、好ましいのは、本発明による固体物質、好ましくは本発明による無水物または非溶媒和物の、とりわけ結晶形態A1の製造のための、上記および/または下記のプロセスであり、ここで、ステップa)、b)および/またはc)の溶媒は、水、メタノールおよびエタノールから本質的になり、より好ましくは水から本質的になる。
【0322】
故に、好ましいのは、本発明による固体物質、好ましくは本発明による無水物または非溶媒和物の、とりわけ結晶形態A1の製造のための、上記および/または下記のプロセスであり、ここで、ステップa)、b)および/またはc)は、+40℃超の温度で、より好ましくは+50°以上の温度で、とりわけ+60°以上の温度で実施される。
【0323】
本発明による溶媒和物、とりわけ四溶媒和物の形成のために好ましい処理パラメーター内では、示されている範囲の低い方の端におけるアルコール含有量および/または示されている範囲の高い方の端における含水量は、本発明による水和物の形成を助長する。代替として、示されている範囲の高い方の端におけるアルコール含有量および/または示されている範囲の低い方の端における含水量は、アルコール溶媒和物の形成を助長する。
【0324】
これに関連して、とりわけ好ましい溶媒和物は、好ましくは、四水和物、メタノール溶媒和物およびエタノール溶媒和物、ならびにそれらの混合形態から選択される、より一層好ましくは、四水和物、メタノール溶媒和物S1およびエタノール溶媒和物S2、とりわけ四水和物S3から選択される、四溶媒和物である。
【0325】
故に、本発明による固体物質の製造のための1つの好ましいプロセスは、
i)式I化合物の非晶質材料または本質的に非晶質の材料を、溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物、好ましくは本明細書において記載されている通りの溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物から結晶化または再結晶化するステップと、場合により、
ii)このようにして得られた本発明による固体物質を、固体/流体分離技術、好ましくは本明細書において記載されている通りの固体/流体分離技術によって、とりわけ濾過によって、前記溶媒または溶媒混合物から単離するステップと
を含む、または好ましくはこれらから本質的になる。
【0326】
故に、本発明による第一の固体物質から本発明による第二の固体物質への転換のための1つの好ましいプロセスは、
a)本発明による第一の固体物質を、溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物、好ましくは本明細書において記載されている通りの溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物から析出させ、結晶化し、かつ/または再結晶化するステップと、場合により、
b)このようにして得られた本発明による第二の固体物質を、固体/流体分離技術、好ましくは本明細書において記載されている通りの固体/流体分離技術によって、とりわけ濾過によって、前記溶媒または溶媒混合物から単離するステップと
を含む、または好ましくはこれらから本質的になる。
【0327】
化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の合成において、前記合成の最終生成物または粗生成物は、多くの事例において、化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の酸付加または塩基付加塩、好ましくは化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の酸付加塩、例えば、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の塩酸塩(=シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)×HCl)、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)のトリフルオロ酢酸塩(=シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)×TFA)、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の硫酸塩(=シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)×SO4、またはより具体的にはシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)×0.5SO4)、あるいはそれらの混合物である。
【0328】
故に、本発明による固体物質の製造のためのプロセスの好ましい例は、酸付加または塩基付加塩、好ましくは酸付加塩の形態の前記粗生成物から出発する。
【0329】
故に、本発明の好ましい主題は、本発明による固体物質の製造のためのプロセスであって、
a)化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の酸付加または塩基付加塩、好ましくは酸付加塩を、好ましくは本明細書において定義されている通りの、極性および/またはプロトン性溶媒または固体混合物と、好ましくは前記塩を前記溶媒に溶解し、かつ/または懸濁させることによって接触させるステップと、
b)好ましくはpH値を調整することにより、前記塩を化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の遊離塩基または好ましくは分子内塩に変換するステップと、
c)このようにして得られた本発明による固体物質を、前記溶媒または溶媒混合物から結晶化し、かつ/または析出させ、場合により単離するステップと
を含むプロセスである。
【0330】
故に、本発明のより好ましい主題は、本発明による固体物質の製造のためのプロセスであって、
a)化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の酸付加または塩基付加塩、好ましくは酸付加塩を、溶媒または溶媒混合物、好ましくは水から本質的になる、またはそれからなる極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と、好ましくは前記塩を前記溶媒に溶解し、かつ/または懸濁させることによって接触させるステップと、
b)好ましくはpH値を調整することにより、前記塩を化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の遊離塩基または好ましくは分子内塩に変換するステップと、
c)このようにして得られた本発明による固体物質を、前記溶媒または溶媒混合物から好ましくは結晶化し、かつ/または析出させ、場合により単離するステップと
を含むプロセスである。
【0331】
このプロセスは、本発明による無水物または非溶媒和物から本質的になる、または好ましくはそれらからなる、とりわけ結晶形態A1から本質的になる、または好ましくはそれからなる、本発明による固体物質の製造に有利である。
【0332】
故に、本発明の別のより好ましい主題は、本発明による固体物質の製造のためのプロセスであって、
a)化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の酸付加または塩基付加塩、好ましくは酸付加塩を極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物
[ここで、前記溶媒または溶媒混合物は、
水、ならびに60から99.9重量%の水と0.1から40重量%の、好ましくはメタノールおよびエタノールから選択される少なくとも1種のアルコールとの混合物から選択され、
より好ましくは、前記溶媒または溶媒混合物は水である]
と、好ましくは前記塩を前記溶媒または溶媒混合物に溶解し、かつ/または懸濁させることによって接触させるステップと、
b)好ましくはpH値を調整することにより、前記塩を化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の遊離塩基または好ましくは分子内塩に変換するステップと、
c)このようにして得られた本発明による固体物質を、好ましくは、前記溶媒または溶媒混合物にアルコール、好ましくはメタノールおよび/またはエタノールを、得られた溶媒混合物中の水とアルコールとの重量比が約1:1から約1:9の間になるまで添加することによって、結晶化し、かつ/または析出させ、場合により前記得られた溶媒混合物から前記固体物質を単離するステップと
を含むプロセスである。
【0333】
このプロセスは、本発明による溶媒和物から本質的になる、または好ましくはそれからなる、とりわけ結晶形態S1、S2およびS3の1つまたは複数から本質的になる、または好ましくはそれからなる、好ましくは種々の化学量論の水−アルコール混合溶媒和物を含む、本発明による固体物質の製造に有利である。
【0334】
上記プロセスのための、好ましい溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または固体混合物、調整されるpH値、ならびに温度が、本明細書において示され論じられている。
【0335】
処理ステップa)、b)および/またはc)の好ましい例または実施形態は、本明細書において記載されている通りの調節を含む。より好ましくは、接触させるステップおよび/または変換するステップは、本明細書において記載されている通りの調節または調節するステップとみなされ得る。
【0336】
上記のプロセスの好ましい形態は、本明細書において記載されている通りの調節または1つもしくは複数の調節するステップを含む。
【0337】
上記のプロセスの好ましい形態は、本明細書において記載されている通りの調節または1つもしくは複数の調節するステップから本質的になる。
【0338】
本発明による固体の製造のためのプロセス、または1つもしくは複数の本発明による結晶形態の転換変換のためのプロセスについて好ましいパラメーターを、以下のスラリー変換実験の結果を下記にグラフ描写したものによって提示する。
【0339】
下記に示す2つの図表の第一のセットは、各混合物中、各処理時間、すなわち1日後および3週間後におけるメタノール含有量の関数として、室温(25℃)のMeOH/水混合物中における競合スラリーのパラメーターおよび結果を示す。
【0340】
【表28】
【0341】
追加のPXRD検査に基づき、競合スラリーから得られた残留物は、水およびメタノールを含む溶媒和物を表すことが示された。したがって、後に該残留物をS3(第一の図表に示す)の代わりにS1(第二の図表に示す)と表記した。
【0342】
下記に示す2つの図表の第二のセットは、各混合物中、各処理時間、すなわち1日後および3週間後におけるエタノール含有量の関数として、室温(25℃)のEtOH/水混合物中における競合スラリーのパラメーターおよび結果を示す。
【0343】
【表29】
【0344】
追加のPXRD検査に基づき、競合スラリーから得られた残留物は、水およびエタノールを含む溶媒和物を表すことが示された。したがって、後に該残留物をS3(第一の図表に示す)の代わりにS2(第二の図表に示す)と表記した。
【0345】
とりわけ好ましい製造のためのプロセス、転換または変換のためのプロセス、加えて、好ましい温度、溶媒、溶媒混合物、反応時間、出発材料および/または追加の処理パラメーターを例に示す。故に、例は、本発明を存分に実行するために十分なガイダンスを本発明の明細書および/または請求項と一緒に提供する。しかしながら、プロセス、とりわけ処理パラメーターは、個々にだけでなくそれらのプロセスおよび/またはパラメーターの1つまたは複数の組合せで、例から取り出すことができ、明細書および/または請求項における開示と一緒に使用することができる。
【0346】
加えて、各単位セル中に、式Iの化合物1分子当たり最大約7個の溶媒分子、好ましくはその脱溶媒和物を含有する高結晶性溶媒和形態を得ることができる。これらの高結晶性溶媒和形態は、好ましくは七溶媒和物と称される。これらの七溶媒和物の単位セルは、好ましくは約4分子の式Iの化合物を含有する。好ましくは、これらの七溶媒和物に含有される溶媒分子は、水およびアルコールから選択され、より好ましくは、水、メタノールおよびエタノール、ならびにそれらの混合物から選択される。とりわけ好ましくは、前記七溶媒和物中の溶媒分子は水から本質的になる。
【0347】
故に、これらの高結晶性溶媒和形態は、好ましくは(本発明による)七溶媒和物、より好ましくは(本発明による)七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1と称される。本発明による七溶媒和物は、好ましくは式Iの化合物1分子当たり約4分子の式Iによる化合物および最大約7個の溶媒分子を含む単位セルを特徴とする。本発明による七溶媒和物は、より好ましくは式Iの化合物1分子当たり約4分子の式Iによる化合物および上限約7個の溶媒分子を含む、または好ましくはそれらから本質的になる、単位セルによって表される。本発明による七溶媒和物または七水和物は、各七溶媒和物の元の結晶構造が本質的に保持されている場合に限り、好ましくはその脱溶媒和物でもある。
【0348】
本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、好ましくは、代替的にまたは付加的に、単位セル格子定数(ULP)ULP3:
a1=8.1±0.5Å、
b1=12.9±0.7Å、および
c1=35.4±1.5Å
を有する単位セルを、より好ましくは、単位セル格子定数(ULP)ULP3:
a1=8.1±0.3Å、
b1=12.9±0.5Å、および
c1=35.4±1.0Å,
を有する単位セルを、とりわけ、単位セル格子定数(ULP)ULP3:
a1=8.1±0.1Å、
b1=12.9±0.1Å、および
c1=35.4±0.1Å
を有する単位セルを特徴とする。
【0349】
格子定数ULP3を有する単位セルにおいて、角度αは好ましくは90°±2°であり、角度βは好ましくは90°±2°であり、かつ/または角度γは好ましくは90°±2°である。
【0350】
好ましくは、格子定数ULP3を有する単位セルは、代替的にまたは付加的に、好ましくは付加的に前記単位セル内における約4分子の式Iの化合物の含有量を特徴とし得る。
【0351】
好ましくは、格子定数ULP3を有する単位セルは、代替的にまたは付加的に、好ましくは付加的に、前記単位セル内における、式Iの化合物1分子当たり、溶媒分子、好ましくは水分子の含有量について、上限約7個の溶媒分子、好ましくは水分子を特徴とし得る。
【0352】
故に、前記単位セルは、好ましくは、代替的にまたは付加的に、総含有量約4分子の式Iの化合物、および総含有量または上限28個の溶媒分子、好ましくは水分子を特徴とし得る。
【0353】
格子定数ULP3を有する単位セルにおいて、角度αは好ましくは90°±0.5°であり、角度βは好ましくは90°±0.5°であり、かつ/または角度γは好ましくは90°±0.5°である。格子定数ULP3を有する単位セルにおいて、角度α、βおよびγは、より好ましくは90°±0.1°である。
【0354】
本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、代替的にまたは付加的に、融解/分解温度によって特徴付けできる。
【0355】
融解/分解温度および/または熱挙動は、好ましくは、DSC(示差走査熱量測定)およびTGA(熱重量分析)によって決定され得る。DSCおよび/もしくはTGA法、または概して熱分析法およびそれらを決定するのに適したデバイスは、当技術分野において、例えば、適切な標準的技術が記載されているEuropean Pharmacopeia第6版2.02.34章から、公知である。より好ましくは、融解/分解温度もしくは挙動および/または熱分析については、概して、European Pharmacopeia第6版2.02.34章において記載されている通り、Mettler Toledo DSC821および/またはMettler Toledo TGA851が使用され得る。
【0356】
好ましくは、本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、代替的にまたは付加的に、単結晶X線構造データ、例えば、好ましくはグラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、好ましくは302K±5Kの温度で好ましくはMoKα放射線を使用する回折計で、ならびに、より一層好ましくはグラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、約302KでMoKα放射線を使用する、Oxford Diffraction製のエクスカリバー回折計で得られた単結晶X線構造データによって特徴付けできる。
【0357】
得られた単結晶X線構造データによれば、本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、格子定数a=8.1±0.1Å、b=12.9±0.1Å、c=35.4±0.1Åを有する斜方晶系空間群P212121中で結晶化し、単位セル体積は好ましくは3728(±50)Å3である。
【0358】
より一層好ましくは、a=8.135±0.001Å、b=12.936±0.001Å、およびc=35.435±0.001Åである。
【0359】
単結晶構造から、形態H1が七溶媒和物、より具体的には七水和物を表すことが明白である。
【0360】
単結晶X線構造を図33に描写する。
【0361】
本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって特徴付けできる。
【0362】
好ましくは、本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの3つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの6つ以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0363】
【表30−1】
【0364】
【表30−2】
【0365】
より好ましくは、本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの5つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの9つ以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0366】
【表31−1】
【0367】
【表31−2】
【0368】
より一層好ましくは、本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの8つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの10以上を含む、とりわけ下記に示す単結晶X線ピークの12すべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0369】
【表32−1】
【0370】
【表32−2】
【0371】
粉末X線回折、より好ましくは粉末X線回折パターンは、好ましくは本明細書において記載されている通りに実施または決定され、とりわけ、European Pharmacopeia第6版2.9.33章において記載されている通りの標準的技術によって実施または決定され、かつ、より一層好ましくは、Stoe StadiP 611KL回折計において、パラメーターCu−Kα1放射線および/またはλ=1.5406Åで得られる。
【0372】
好ましくは、本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、代替的にまたは付加的に、赤外線分光データによって特徴付けできる。IR分光データは、好ましくはFT−IR分光法によって得られ、IR分光データまたはFT−IR分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.24章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。FT−IRスペクトルの計測には、好ましくはBrukerベクター22分光計が使用され得る。FT−IRスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0373】
好ましくは、本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、代替的にまたは付加的に、ラマン分光データによって特徴付けできる。
【0374】
ラマンまたはFT−ラマンスペクトルは、好ましくは、各固体物質用の試料ホルダーとしてアルミニウムカップを使用して得られる。
【0375】
ラマン分光データは、好ましくはFT−ラマン分光法によって得られ、ラマン分光データまたはFT−ラマン分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.48章において記載されている通りの標準的手順によって得られる。FT−ラマンスペクトルの計測には、好ましくはBruker RFS100分光計が使用され得る。FT−ラマンスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0376】
好ましくは、本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、代替的にまたは付加的に、動的蒸気収着実験によって特徴付けできる。結果は、Rolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH. Weinheim 2006(9章:Water Vapour Sorptionおよびその中の参考文献)において記載されている通りの標準的技術によって得ることができる。
【0377】
故に、本発明の好ましい主題は、式Iによる化合物
シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(I)
の固体物質であって、前記固体物質は、格子定数(ULP)ULP3:
a1=8.1±0.5Å、
b1=12.9±0.7Å、および
c1=35.4±1.5Å
を有する単位セル、
より好ましくは、単位セル格子定数(ULP)ULP3:
a1=8.1±0.3Å、
b1=12.9±0.5Å、および
c1=35.4±1.0Å
を有する単位セル、
とりわけ、単位セル格子定数(ULP)ULP3:
a1=8.1±0.1Å、
b1=12.9±0.1Å、および
c1=35.4±0.1Å
を有する単位セルを特徴とする式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む。
【0378】
前記単位セルは、好ましくは、結晶学的単位セルまたは結晶学的に決定された単位セルである。
【0379】
前記単位セルにおいて、角度αは好ましくは90°±2°であり、角度βは好ましくは90°±2°であり、かつ/または角度γは好ましくは90°±2°である。
【0380】
好ましくは、固体物質は、少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも30%重量%、より一層好ましくは60重量%、とりわけ少なくとも90重量%または少なくとも95重量%の、上記および/または下記において定義される通りの式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む。例えば、固体物質は、約25、約50、約75、約95、約99または約100重量%の、上記および/または下記において定義される通りの式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む。
【0381】
とりわけ好ましくは、固体物質は、少なくとも10モル%、より好ましくは少なくとも30モル%、より一層好ましくは60モル%、とりわけ少なくとも90モル%または少なくとも95モル%の、上記および/または下記において定義される通りの式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む。例えば、固体物質は、約25、約50、約75、約95、約99または約100モル%の、上記および/または下記において定義される通りの式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む。
【0382】
とりわけ好ましいのは、結晶形態H1またはその脱溶媒和物を含む上記で定義されている通りの固体物質であり、ここで、結晶形態H1は、本明細書において示されているパラメーターの1つまたは複数によって特徴付けられ、前記パラメーターは、好ましくは本明細書において示されている通りの単位セルパラメーターULP3を含む。
【0383】
とりわけ好ましいのは、結晶形態H1またはその脱溶媒和物から本質的になる上記で定義されている通りの固体物質であり、ここで、結晶形態H1は、本明細書において示されているパラメーターの1つまたは複数によって特徴付けられ、前記パラメーターは、好ましくは本明細書において示されている通りの単位セルパラメーターULP3を含む。
【0384】
故に、本発明の別の好ましい主題は、
ULP1:a1=9.5±0.5Å、
b1=26.0±1.5Å、および
c1=14.3±0.7Å、
ULP2:a2=9.8±0.5Å、
b2=20.0±1.5Å、および
c2=15.4±0.7Å、
ならびに
ULP3:a3=8.1±0.5Å、
b3=35.4±1.5Å、および
c3=12.9±0.7Å
からなる群から選択される格子定数(ULP)を有する単位セルをそれぞれ有する、式Iの化合物の、1つまたは複数の、好ましくは1、2、3または4つの、より一層好ましくは1または2つの結晶形態を含む固体物質である。
【0385】
より好ましくは、固体物質は、
ULP1:a1=9.5±0.3Å、
b1=26.0±1.0Å、および
c1=14.3±0.5Å、
ULP2:a2=9.8±0.3Å、
b2=20.0±1.0Å、および
c2=15.4±0.5Å
ならびに
ULP3:a3=8.1±0.5Å、
b3=35.4±1.5Å、および
c3=12.9±0.7Å
からなる群から選択される格子定数(ULP)を有する単位セルをそれぞれ有する、式Iの化合物の、1つまたは複数の、好ましくは1、2、3または4つの、より一層好ましくは1または2つの結晶形態を含む。
【0386】
格子定数ULP1、ULP2および/またはULP3を有する単位セルにおいて、角度αは好ましくは90°±2°であり、角度βは好ましくは90°±2°であり、かつ/または角度γは好ましくは90°±2°である。
【0387】
好ましくは、格子定数ULP1、ULP2および/またはULP3を有する単位セルは、代替的にまたは付加的に、好ましくは付加的に、前記単位セル内における約4分子の式Iの化合物の含有量を特徴とし得る。
【0388】
格子定数ULP2および/またはULP3を有する単位セルにおいて、角度αは好ましくは90°±0.5°であり、角度βは好ましくは90°±0.5°であり、かつ/または角度γは好ましくは90°±0.5°である。格子定数ULP2および/またはULP3を有する単位セルにおいて、角度α、βおよびγは、より好ましくは90°±0.1°である。
【0389】
好ましくは、格子定数ULP1、ULP2および/またはULP3を有する単位セルは、代替的にまたは付加的に、好ましくは付加的に、前記単位セル内における約4分子の式Iの化合物の含有量を特徴とし得る。
【0390】
好ましくは、格子定数ULP3を有する単位セルは、代替的にまたは付加的に、好ましくは付加的に、前記単位セル内における約4分子の式Iの化合物の含有量を特徴とし得る。
【0391】
より好ましくは、固体物質は、
格子定数a=9.8±0.1Å、b=19.5±0.5Å、およびc=15.4±0.1Åを有する単位セルを特徴とする結晶形態A1、
格子定数a=9.4±0.1Å、b=25.9±0.5Å、およびc=14.1±0.1Åを有する単位セルを特徴とする結晶形態S1、
格子定数a=9.3±0.1Å、b=26.6±0.5Å、およびc=14.7±0.1Åを有する単位セルを特徴とする結晶形態S2、
格子定数a=9.6±0.1Å、b=25.9±0.5Å、およびc=13.9±0.1Åを有する単位セルを特徴とする結晶形態S3、ならびに
格子定数a=8.1±0.3Å、b=35.4±1.0Å、およびc=12.9±0.5Åを有する単位セルを特徴とする結晶形態H1
から選択される、式Iの化合物の、1つまたは複数の、好ましくは1、2、3または4つの、より一層好ましくは1または2つの結晶形態を含む。
【0392】
より好ましくは、固体物質は、
格子定数a=9.8±0.1Å、b=19.5±0.5Å、およびc=15.4±0.1Åを有する、好ましくはα=β=γ=90°±1°を有する、とりわけα=β=γ=90°を有する単位セルを特徴とする結晶形態A1、
格子定数a=9.4±0.1Å、b=25.9±0.5Å、およびc=14.1±0.1Åを有する、好ましくはα=β=γ=90°±2°を有する、とりわけα=90°±1°、β=91°±1、γ=90°±1°を有する、とりわけα=90°、β=91.2°、γ=90°を有する単位セルを特徴とする結晶形態S1、
格子定数a=9.3±0.1Å、b=26.6±0.5Å、およびc=14.7±0.1Åを有する、好ましくはα=β=γ=90°±1°を有する、とりわけα=β=γ=90°を有する単位セルを特徴とする結晶形態S2、ならびに
格子定数a=9.6±0.1Å、b=25.9±0.5Å、およびc=13.9±0.1Åを有する、好ましくはα=β=γ=90°±1°を有する、とりわけα=β=γ=90°を有する単位セルを特徴とする結晶形態S3、ならびに
格子定数a=8.1±0.3Å、b=35.4±1.0Å、およびc=12.9±0.5Åを有する、好ましくはα=β=γ=90°±1°を有する、とりわけα=β=γ=90°を有する単位セルを特徴とする結晶形態H1
から選択される、式Iの化合物の、1つまたは複数の、好ましくは1、2、3または4つの、より一層好ましくは1または2つの結晶形態を含む。
【0393】
好ましくは、結晶形態S1、S2、S3および/またはH1は、代替的にまたは付加的に、好ましくは付加的に、前記単位セル内における約4分子の式Iの化合物の含有量を特徴とし得る。
【0394】
結晶形態S1、S2、S3および/またはH1は、好ましくはさらに溶媒和物と特徴付けられる。
【0395】
より好ましくは、結晶形態H1は、さらに七溶媒和物と特徴付けられる。
【0396】
本発明の文脈において、溶媒和物および/または七溶媒和物は、好ましくは、結晶構造内に組み込まれた化学量論量または非化学量論量いずれかの溶媒を含有する結晶性固体付加物であり、すなわち、溶媒分子は、好ましくは結晶構造の一部を形成する。組み込まれた溶媒が水であれば、該溶媒和物は一般に水和物としても公知である。
【0397】
結果として、溶媒和物中の溶媒は、好ましくは結晶構造の一部を形成し、故に、概してX線法によって検出可能であり、好ましくは本明細書において記載されている通りのX線法によって検出可能である。
【0398】
好ましくは、結晶形態H1以外の本明細書において記載されている通りのもう1つの結晶形態を含む固体物質について本明細書において記載されている通りの固体物質に関する請求項3から8の一項または複数項およびそれについての開示は、好ましくは、結晶形態H1、および/または結晶形態H1を含む固体物質にも適用可能である。これに関連して、とりわけ好ましい固体物質は、好ましくは、これに関連する記述において示されている好ましい実施形態を含む、本出願における請求項3から8の主題である。
【0399】
好ましくは、結晶形態H1以外の本明細書において記載されている通りのもう1つの結晶形態を含む固体物質について本明細書において記載されている通りの1つまたは複数の処理方法およびそれについての開示は、好ましくは、結晶形態H1、および/または結晶形態H1を含む固体物質にも適用可能である。これに関連して、とりわけ好ましい処理方法は、好ましくは、これに関連する記述において示されている好ましい実施形態を含む、本出願における処理方法の請求項の主題である。
【0400】
好ましくは、結晶形態H1以外の本明細書において記載されている通りのもう1つの結晶形態を含む固体物質について本明細書において記載されている通りの1つまたは複数のプロセスおよびそれについての開示は、好ましくは、結晶形態H1、および/または結晶形態H1を含む固体物質にも適用可能である。これに関連して、とりわけ好ましいプロセスは、好ましくはこれに関連する記述において示されている好ましい実施形態を含む、本出願におけるプロセスの請求項の主題である。
【0401】
好ましくは、結晶形態H1以外の本明細書において記載されている通りのもう1つの結晶形態を含む固体物質について本明細書において記載されている通りの1つまたは複数の使用およびそれについての開示は、好ましくは、結晶形態H1、および/または結晶形態H1を含む固体物質にも適用可能である。これに関連して、とりわけ好ましい使用は、好ましくはこれに関連する記述において示されている好ましい実施形態を含む、本出願における使用の請求項の主題である。
【0402】
式I(シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal))による化合物に関して、以下の種類の名称の表記法は、好ましくは同等物とみなされるべきである:
シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−[NMe]Val)=シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−[NMe]−Val)=シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)=シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)=シクロ(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)=シクロ(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)=cRGDfNMeV=c(RGDfNMeV)。
【0403】
好ましくは、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)は、シレンジタイド(Cilengitide)とも称され、これは前記化合物のINN(国際一般的(Non−propriety)名称)である。
【0404】
シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)は、本明細書において、好ましくは薬学的に許容される塩として、より好ましくは薬理学的に許容される塩酸塩として用いられ、とりわけ好ましくはそれ自体が化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)である内(または分子内)塩として用いられる。
【0405】
別段の指定がなければ、式Iの化合物への言及は、好ましくは前記化合物の内塩である化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)それ自体への言及を意味するのが好ましい。したがって、別段の指定がなければ、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)は、好ましくは、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の内塩であることも意味する。
【0406】
本発明により特に好ましいのは、本明細書において記載されている通りの主題であり、ここで、2つ以上の好ましい、より好ましい、および/またはとりわけ好ましい実施形態、態様および/または主題の特徴が、1つの実施形態、態様および/または主題と組み合わせられる。
【0407】
用語「約(about)」は、数、数字、範囲および/または量に関して本明細書において使用される場合、好ましくは、「およそ」および/または「約(approximately)」を意味するように意図されている。これらの用語の意味は当技術分野において周知であり、好ましくは、各数、数字、範囲および/または量のプラス/マイナス15%、とりわけプラス/マイナス10%の分散、偏差および/または変動を含む。
【0408】
本発明について、例を挙げて下記でさらに詳細に説明する。本発明は、特許請求されている範囲全体を通して実行され得、本明細書において示される例に制限されない。
【0409】
その上、以下の例は、例証(examplification)によって当業者が本発明をよりよく理解するのを支援するために示される。例は、請求項によって付与される保護の範囲を限定するように意図されるものではない。例において定義されている化合物、組成物、方法および/または使用について例証される特色、特性および利点は、例において具体的には記載および/または定義されていないが請求項において定義されているものの範囲に入る他の化合物、組成物、方法および/または使用に帰する。
【0410】
好ましくは、例および/または請求項において定義されている化合物、組成物、方法および/または使用について例証される特色、特性および利点は、例および/または請求項において具体的には記載および/または定義されていないが明細書および/または請求項において定義されているものの範囲に入る他の化合物、組成物、方法および/または使用に帰する。
【実施例】
【0411】
実験
分析法
IR分光法:
FT−IRスペクトルは、好ましくは、Brukerベクター22分光計で室温にて得られる。したがって、European Pharmacopeia第6版2.02.24章において記載されている通りの標準的技術を使用するのが好ましい。FT−IRスペクトルは、好ましくは、試料調製技術としてKBrペレットを使用して得られる。したがって、約3mgの試料を挽き、KBrと混合し、その結果、混合物を乳鉢中で挽く。スペクトル取得のために2cm−1のスペクトル分解能および32スキャンを選択する。FT−IRスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0412】
ラマン分光法:
FT−ラマンスペクトルは、好ましくは、NdYAGレーザー(波長1064nm)を備えたBruker RFS100分光計で室温にて得られる。したがって、European Pharmacopeia第6版2.02.48章において記載されている通りの標準的技術を使用するのが好ましい。FT−ラマンスペクトルは、好ましくは、試料ホルダーとしてアルミニウムカップを使用して得られる。約5mgの試料を試料ホルダーに機械的に詰める。ラマンスペクトル取得のために、好ましくは、1cm−1または2cm−1のスペクトル分解能、500スキャンおよび500mWのレーザー出力を選択する。
【0413】
TGまたはTGA:
TG計測は、好ましくは、Mettler Toledo TG851で実行される。計測は、好ましくは、European Pharmacopeia第6版2.02.34章において記載されている通りの標準的技術によって実現される。約10〜20mgの各試料を、好ましくは蓋のないアルミニウム100μL鍋中で調製する。計測は、好ましくは、窒素雰囲気(50mL/分)中、5K/分の加熱速度で実行される。
【0414】
DSC:
DSC計測は、好ましくは、Mettler Toledo DSC821で実行される。計測は、好ましくは、European Pharmacopeia第6版2.02.34章において記載されている通りの標準的技術によって実現される。約2〜10mgの各試料を、好ましくは、孔の開いた蓋付きのアルミニウム40μL鍋中で調製する。計測は、好ましくは、窒素雰囲気(50mL/分)中、5K/分の加熱速度で実行される。
【0415】
XRD:
粉末X線回折パターンは、好ましくは、線形PSD検出器を備えたStoe StadiP 611KLで室温にて、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.9.33章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。したがって、1.5406Å、1.7889Åの波長をそれぞれ有するCu−Ka1またはCo−Ka1放射線を使用するのが好ましい。約30mgの試料を、好ましくは毛細管中で調製する。スキャンは、好ましくは、刻み幅0.02°で5°から72°、150秒の積分時間で実行される。
【0416】
DVS:
動的蒸気収着計測は、好ましくは、SMS DVSイントリンシックシステムで得られる。結果は、好ましくは、Rolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH. Weinheim 2006(9章:Water Vapour Sorptionおよびその中の参考文献)において記載されている通りの標準的技術によって得られる。約2〜10mgの試料を、好ましくは、アルミニウム100μL鍋中に秤量し、微量天秤付きDVS機器の試料インキュベーターに入れる。加湿(humidifcation)には、好ましくは、200mL/分の窒素全流量(乾式流および湿式流を組み合わせたもの)を使用する。水蒸気収着等温線は、好ましくは、25℃にて、主として10%相対湿度ステップを用い、0%相対湿度から98%相対湿度の範囲内で取得する。すべての相対湿度ステップについて、好ましくはdm/dt≦0.0005wt%/分の平衡条件を、10分の最小相対湿度ステップ時間、および上述したdm/dt基準(criterai)に到達しない場合にタイムアウトとして使用するのが好ましい360分の最大相対湿度ステップ時間で使用する。
【0417】
例A)塩酸塩からの内塩の結晶化
1.25gのシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)×HClを10mlの水に溶解する。濃アンモニア水溶液の使用によって、pHを約6.8に調整する。4Cで終夜静置した後、結晶が現れ、これを濾過によって分離し、氷冷水で洗浄し、風乾させる。母液を濃縮して、追加の結晶性生成物を得る。
【0418】
例B)トリフルオロ酢酸塩からの内塩の結晶化
1.41gのシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)×TFAを10mlの水に溶解する。濃アンモニア水溶液の使用によって、pHを約6.8に調整する。周囲温度で終夜静置した後、結晶が現れ、これを濾過によって分離し、氷冷水で洗浄し、風乾させる。母液を濃縮して、追加の結晶性生成物を得る。
【0419】
例C)内塩のクロマトグラフィー生成
5.04gのシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)×TFAを100mlの水に溶解し、25%NH3水溶液でpHを約7.0に調整する。溶液を、ポンプAの力で2ポンプ勾配系RP−HPLCカラム(リクロソルブRP8(10um)50×250mm)に注入する。最初に、カラムを水で溶離し、第二に、化合物のクロマトグラフィー精製を、20ml/分で2時間、水中15〜25%の2−プロパノールの勾配での溶離によって行う。215/254nmで検出する。画分を収集し、プールする。プールからの2−プロパノールの蒸発中に、結晶性内塩シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)が析出し、濾過によって収集する。母液を濃縮して、追加の結晶性生成物を得る。
【0420】
例D)共溶媒混合物からの内塩の結晶の生成
1gのシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)を、20mlの水/2−プロパノール8:2体積に40℃で溶解する。室温(25℃)で2日後、結晶性化合物が析出した。
【0421】
例E)内塩のX線構造決定
結晶形態S3から、X線分析のために結晶を選択する。ペプチドの正確な共有構造および結晶性固体状態にある化合物の配座は、四水和物が、単位セル当たり4個の式Iによる分子を具備することを示す。
分子式 C27H40N8O7×4H2O
分子量 661.25g/mol
結晶サイズ (0.65×0.45×0.08)mm3
温度 298K
回折計 Nonius−CAD4
光線 MoKα
波長 0.71093Å
単色 グラファイト(graphit)
結晶 斜方晶系
空間群 P212121
格子a 9.460(2)Å
b 13.853(3)Å
c 25.910(6)Å
α=β=γ=90°
単位セル当たりの式Iの化合物の分子数 4。
【0422】
例F)無水物のX線構造決定
結晶形態A1から、X線分析のために結晶を選択する。ペプチドの正確な共有構造および結晶性固体状態にある化合物の配座は、無水物が、単位セル当たり4個の式Iによる分子を具備することを示す。
分子式 C27H40N8O7
分子量 588.67g/mol
結晶サイズ (0.30×0.24×0.24)mm3
温度 298K
回折計 エクスカリバー−Oxford Diffration
光線 MoKα
波長 0.71093Å
単色 グラファイト
結晶 斜方晶系
空間群 P212121
格子a 9.7944(5)Å
b 15.3877(7)Å
c 19.5090(2)Å
α=β=γ=90°
単位セル当たりの式Iの化合物の分子数 4。
【0423】
例G)ジヒドレート−モノエタノレートのX線構造決定
形態S2の一具体例を表す結晶から、X線分析のために結晶を選択する。ペプチドの正確な共有構造および結晶性固体状態にある化合物の配座は、ジヒドレート−モノエタノレートが、単位セル当たり4個の式Iによる分子を具備することを示す。
分子式 C27H40N8O7×C2H5OH×2H2O
分子量 669.75g/mol
結晶サイズ (0.24×0.16×0.04)mm3
温度 298K
回折計 エクスカリバー−Oxford Diffration
光線 MoKα
波長 0.71093Å
単色 グラファイト
結晶 斜方晶系
空間群 P212121
格子a 9.3212(4)Å
b 13.7377(7)Å
c 26.337(2)Å
α=β=γ=90°
単位セル当たりの式Iの化合物の分子数 4。
【0424】
例H)結晶形態H1の製造
結晶形態H1は、以下の手順に従って得られる。結晶形態S2を、式Iの化合物の濃度が15mg/mLである透明溶液が得られるまで、0.9%生理食塩水に溶解する。溶液を、4から9週間振とうし続けながら+5℃で保存し、それにより、小さい棒形状の結晶が析出する。このようにして得られた結晶の単結晶X線回折は、結晶形態H1であることを証明している。
【0425】
例I)結晶形態H1のX線構造決定
結晶形態H1から、X線分析のために結晶を選択する。ペプチドの正確な共有構造および結晶性固体状態にある生成物の配座は、水晶振動子当たり4個のシクロペプチドを有する七水和物が形成されたことを示す。
分子式 C27H40N8O7×7H2O
分子量 714.81
結晶サイズ (0.50×0.24×0.20)mm3
温度 298K
回折計 エクスカリバー−Oxford Diffration
光線 MoKα
長さ 0.71093Å
単色 グラファイト
結晶 斜方晶系
群 P212121
格子a 8.1349(3)Å
b 12.9357(4)Å
c 35.435(10)Å
α=β=γ=90°
単位セル当たりの式Iの化合物のモル数 4。
【0426】
1.メタノール/水およびエタノール/水混合物中で撹拌することにより疑似多形形態を得るための手順
a)本発明による結晶性四溶媒和物、とりわけ結晶形態S1およびS2は、メタノール/水混合物(70v%:30v%)中、25℃で2日間の撹拌時間、およびエタノール/水混合物(60v%:40v%)中、25℃で18日間の撹拌時間での、形態A1からのスラリー変換によってそれぞれ得ることができる。一般的手順:
約500mgのシレンジタイドの形態A1を、5mlの溶媒に室温で分散させる。分散液を磁気撹拌子により上述した時間にわたって撹拌し、最後に濾過する。
【0427】
b)加えて、本発明による結晶性四溶媒和物、とりわけ結晶形態S1およびS2は、異なる温度における、異なるアルコール含有量を有する水/メタノールおよび水/エタノール混合物中、疑似多形形態(例えば、S1、S2、S3またはこれらの混合物)と形態A1との混合物(1:1)を用いる競合スラリー変換実験によってそれぞれ製造することができる。
【0428】
一般的手順:
約20mgの疑似多形形態(例えば、S1、S2、S3またはこれらの混合物)および20mgのシレンジタイドの形態A1を、300μlの水/アルコール混合物に0℃または室温(25℃)で分散させる。分散液を磁気撹拌子により室温(25℃)で24時間および追加で3週間(長期実験)撹拌し、最後に濾過する。
【0429】
以下の表に、本発明による各四溶媒和物を導く実験のための条件を収載する。
i)S1:
【0430】
【表33】
【0431】
ii)S2:
【0432】
【表34】
【0433】
c)これらとは対照的に、以下の条件下では疑似多形形態のいずれも得ることができないが、代わりに本質的に純粋な無水物/非溶媒和物A1が形成される。
【0434】
約20mgの疑似多形形態(例えば、S1、S2、S3またはこれらの混合物)および20mgのシレンジタイドの形態A1を、300μlの水/アルコール混合物に50℃で分散させる。分散液を磁気撹拌子により24時間撹拌し、最後に濾過する。
【0435】
以下の表に、形態A1を導く実験のための条件を収載する。
【0436】
【表35】
【0437】
水を「100v%まで添加」は、好ましくは、事前に指定された量の水以外の溶媒(単位:体積パーセント(v%))に、各溶媒/水混合物の100v%までの不足分を補う量で水を添加することを意味する。
【0438】
2.乾燥器内、メタノール雰囲気下での調節実験により、形態S1を得るための手順
約1gの疑似多形形態(例えば、S2、S3またはこれらの混合物)を、乾燥器(dessicator)内シリカゲル上で乾燥させる。次いで、材料を、乾燥器内100%メタノール蒸気雰囲気で5日間保存する。
【0439】
3.乾燥器内、エタノール雰囲気下での調節実験により、形態S2を得るための手順
約1gの疑似多形形態(例えば、S3、S1またはこれらの混合物)を、乾燥器内シリカゲル上で乾燥させる。次いで、材料を、乾燥器内100%エタノール蒸気雰囲気で5日間保存する。
【0440】
4.エタノール/水混合物中で撹拌することにより、A1/S3多形混合物をS2に変換するための手順
シレンジタイド(多形A1およびS3の混合物、275,5g)を、脱イオン水(700ml)およびエタノール(700ml)の混合物に懸濁させる。懸濁液を室温で24時間撹拌し、次いで5℃に冷却する。生成物を吸引濾過によって単離し、冷エタノールで洗浄する。60℃での72時間の真空下乾燥により、270gのシレンジタイド(結晶形態S2)、3.6%のEtOH、HPLC純度:99.9%)を得る。
【0441】
5.スラリー変換による結晶形態A1の製造
シレンジタイドの形態A1は、水中25℃での疑似多形形態(例えば、S1、S2、S3またはこれらの混合物)からのスラリー変換によって得ることができる。温度上昇(50℃)は、形態A1への変換を加速させる。
【0442】
約10gのシレンジタイドの疑似多形形態(例えば、S1、S2、S3またはこれらの混合物)を、50mlの脱イオン水に室温で分散させる。分散液を磁気撹拌子により24時間撹拌し、最後に濾過する。
【0443】
6.競合スラリー変換による結晶形態A1の製造
純粋形態の形態A1も、アセトン、アセトニトリル、イソプロパノール、生理NaCl溶液、リン酸緩衝溶液(pH7.4)、およびアセトン、アセトニトリル、イソプロパノールと水との1:1(v:v)混合物中、疑似多形形態(例えば、S1、S2、S3またはこれらの混合物)とA1との(1:1)混合物を用いる室温(25℃)での競合スラリー変換実験によって製造することができる。
【0444】
約20mgの疑似多形形態(例えば、S1、S2、S3またはこれらの混合物)および20mgのシレンジタイドの形態A1を、200〜700μlの溶媒に室温で分散させる。分散液を磁気撹拌子により室温(25℃)で5日間および追加で26時間(長期実験)撹拌し、最後に濾過する。
【0445】
7.競合スラリー変換
加えて、形態A1は、異なる温度における、異なるアルコール含有量を有する水/メタノールおよび水/エタノール混合物中、疑似多形形態(例えば、S1、S2、S3またはこれらの混合物)と形態A1との(1:1)混合物を用いる競合スラリー変換実験によって製造することができる。以下の表に、純粋形態A1を導く実験のための条件を収載する。
【0446】
【表36】
【0447】
【表37】
【0448】
約20mgの疑似多形形態(例えば、S1、S2、S3またはこれらの混合物)および20mgのシレンジタイドの形態A1を、300μlの水/アルコール混合物に、0℃、室温および50℃で分散させる。分散液を磁気撹拌子により室温(25℃)で24時間および追加で3週間(長期実験)撹拌し、最後に濾過する。
【0449】
8.エタノール/水混合物からの結晶化を含む、結晶形態S2を得るための手順
シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)×TFA×H2SO4(400g)を、水(1600ml)に59℃で溶解する。アンモニア水溶液(30%)の添加によってpHをpH=6.8に調整する。メタノール(9600ml)を3時間かけて溶液に添加する。得られた混合物を3時間以内で23℃に冷却し、この温度で終夜撹拌する。次いで、混合物を5℃に冷却し、もう2時間撹拌する。析出した粗生成物を吸引濾過によって単離し、冷メタノールで洗浄する。50℃での48時間の真空下乾燥により、335gのシレンジタイド(結晶形態S2、HPLC:99.8%)を得る。
【0450】
原材料(335g)を水(1507g)に58℃で溶解する。メタノール(8040ml)を3時間かけて溶液に添加する。次いで、このようにして形成された懸濁液を3時間以内で23℃に冷却し、この温度で終夜撹拌する。次いで、懸濁液を5℃に冷却し、もう3時間撹拌する。生成物を吸引濾過によって単離し、メタノールで洗浄する。60℃での48時間の真空下乾燥により、309gのシレンジタイド(結晶形態S1、HPLC:99.9%、3.8%のMeOH、IC:<0.1%Cl−、0.0007%のTFAおよび10.3%のSO42−)を得る。
【0451】
150gの上記で得られた材料を、水(600ml)およびエタノール(600ml)に56℃で溶解する。混合物を3時間以内で23℃に冷却し、終夜撹拌する。混合物(懸濁液)を5℃に冷却し、この温度で2時間撹拌する。生成物を吸引濾過によって単離し、冷水で洗浄する。60℃での48時間の真空下乾燥により、115,4gのシレンジタイド(結晶形態S2、≦0.05%のメタノール、5.3%のEtOH IC:<0.01%Cl−、<0.0011%のTFA、0,34%のSO42−)を得る。
【0452】
9.水からの結晶化による結晶形態A1の製造
A1を得るための好ましくかつ極めて効率的な方法は、次の製造プロセスから発展するような、シレンジタイドの原材料から出発する水からの結晶化によるものである。
【0453】
未加工のシレンジタイド(300g、非晶質材料、形態S1(?)、形態S2、形態S3、またはそれらの混合物のいずれか)を、脱イオン水(1200ml)に58℃で溶解する。溶液を3時間以内で23℃に冷却し、この温度で終夜撹拌する。次いで、懸濁液を5℃に冷却し、この温度で2時間撹拌する。生成物を吸引濾過によって単離し、冷脱イオン水で洗浄する。50℃での48時間の真空下乾燥により、約230gのシレンジタイド(結晶形態A1、<0.001%のTFA、0.22%のSO42−、0.06%のアンモニウム、99%のHPLC純度、0.027%の水)を得る。
【0454】
10.結晶形態S3の動的蒸気収着実験
結晶形態S3に関する動的蒸気実験には、SMS DVS Iシステムを使用する。結果は、Rolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH. Weinheim 2006(9章:Water Vapour Sorptionおよびその中の参考文献)において記載されている通りの標準的技術によって得られた。水蒸気収着挙動は、初期乾燥ステップ(0%rh)内での水分子(およそ9wt%)の損失を示す。水吸着サイクル中に、上昇したrhで、格子中における水分子の集合が示される(およそ10重量%)。第二の脱着サイクルにおいて、この量の水の損失がある。形態S3の水蒸気収着等温線(25℃)を、図29に描写する。
【0455】
11.結晶形態S1の動的蒸気収着実験
動的蒸気実験には、SMS DVSイントリンシックを使用する。結果は、Rolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH. Weinheim 2006(9章:Water Vapour Sorptionおよびその中の参考文献)において記載されている通りの標準的技術によって得られる。水蒸気収着挙動は、第一の脱着サイクルにおいて約8wt%の質量損失を示し、これは、メタノール蒸気収着実験において観察されるメタノール質量増加よりもわずかに少ない。水蒸気吸着時、格子中における水分子の集合が観察され、上昇したrhで約8wt%の最大重量増加がある。第二の脱着サイクルにおいては、約9.9wt%の総質量損失が観察される。シレンジタイドジヒドレートジ−メタノレートについて、算出されるメタノール含有量は、9.3wt%に等しい。形態S1の水蒸気収着等温線(25℃)を、図13に表示する。
【0456】
12.結晶形態S2の動的蒸気収着実験
動的蒸気実験には、SMS DVSイントリンシックを使用する。結果は、Rolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH. Weinheim 2006(9章:Water Vapour Sorptionおよびその中の参考文献)において記載されている通りの標準的技術によって得られる。水蒸気収着挙動は、第一の脱着サイクルにおいて約6.5wt%の質量損失を示し、これは、エタノール蒸気収着実験において観察されるエタノール質量増加よりも少ない。水蒸気吸着時、格子中における水分子の集合が観察され、上昇したrhで約6.4wt%の最大重量増加がある。第二の脱着サイクルにおいては、約9.2wt%の総質量損失が観察される。シレンジタイドジヒドレートジ−エタノレートについて、算出されるエタノール含有量は、12.5wt%に等しい。形態2の水蒸気収着等温線(25℃)を、図20に表示する。
【0457】
13.調節(Conditoning)実験
a)
異なる水およびアルコール分圧を表す水−エタノール混合雰囲気(液相中の異なるEtOH含有量(体積%、v%)に合わせて調整したもの)下での非晶質シレンジタイド(略称:Cil;シレンジタイド=シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal))の調節により、シレンジタイド1分子当たり最大4分子の水および最大2分子のエタノールを有する異なる化学量論を呈する溶媒和物を生じた。水の定量化についてカールフィッシャー滴定(KF)によって、およびエタノールの定量化についてヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HS−GC)(および核磁気共鳴分光法(NMR))によって測定した際の化学量論を、表3に描写する。該表においては、シレンジタイド1分子当たり4分子を超える水を有する化学量論を表す点も可視である。結晶格子中には4分子を超える水のためのスペースはないため、過剰量の4分子を超える水は吸着した水分を表す。
【0458】
変態およびディフラクトグラムの指数付けからの格子定数も、表3にまとめる。
【0459】
【表38】
【0460】
表3において、エタノール蒸気圧が上昇するとともに、水和物形態S3から水−エタノール混合または水なしエタノール溶媒和形態S2への流動転移があることが示されている。各溶媒和物から得られたX線データによれば、すべての溶媒和物(水和物を含む)は同様の格子定数を有し、該定数は、エタノール分子の集合とともにほんのわずかにかつ連続的に増加する。
b)
メタノール雰囲気下での非晶質シレンジタイド(略称:Cil;シレンジタイド=シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の調節により、シレンジタイド1分子当たり2分子のメタノールを有する溶媒和物を生じた。
【0461】
【表39】
【技術分野】
【0001】
本発明は、{[(2S,5R,8S,11S)−5−ベンジル−11−(3−グアニジノ−プロピル)−8−イソプロピル−7−メチル−3,6,9,12,15−ペンタオキソ−1,4,7,10,13−ペンタアザ−シクロペンタデカ−2−イル]−酢酸}の新規な固体物質、それらを生成するための方法、および医薬品における前記固体物質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
{[(2S,5R,8S,11S)−5−ベンジル−11−(3−グアニジノ−プロピル)−8−イソプロピル−7−メチル−3,6,9,12,15−ペンタオキソ−1,4,7,10,13−ペンタアザ−シクロペンタデカ−2−イル]−酢酸}またはシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)は、特許/特許出願US 6,001,961およびEP 0 770 622(特許文献1)において最初に記載され、これらは1997年に最初に公開された。前記特許において、前記化合物の種々の塩形態、例えば、塩酸塩、酢酸塩およびメタンスルホン酸塩(methansulfonate)が記載された。後に、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の内塩を導く改良された製造方法がWO00/53627(特許文献2)において記載された。しかしながら、記載された手順に従って得られた固体は、非晶質材料のようであった。
【0003】
薬学的活性は、当然ながら、薬学的活性剤、薬学的活性成分または活性医薬品原料(API)が、市場に出る薬剤として承認される前に満たすべき基本的な必須条件である。しかしながら、薬学的活性剤が準拠しなくてはならない様々な追加要件がある。これらの要件は、活性物質自体の性質と関連がある種々のパラメーターに基づく。制限するものではないが、これらのパラメーターの例は、種々の環境条件下における活性剤または活性原料の安定性、医薬製剤の生成中におけるその安定性、および最終薬剤組成物中における活性剤または活性原料の安定性である。医薬組成物を調製するために使用される薬学的活性物質は、可能な限り純粋であるべきであり、長期保存中におけるその安定性は、種々の環境条件下で保証されなくてはならない。これは、実際の活性物質に加えて、例えばその崩壊または分解生成物を含有する医薬組成物の使用を防止するために、絶対的に不可欠である。そのような事例では、薬剤中における活性物質の含有量は、指定されたもの未満となる恐れがあり、かつ/または薬剤の品質管理に失敗する恐れがある。
【0004】
製剤中における活性成分または活性原料の粒径または均一分布のような技術的要因は、特に薬剤が錯体製剤であり、かつ/または薬剤が低用量で与えられなくてはならない場合、決定的要因となり得る。錯体製剤系を可能にするため、および/または均一分布を確実にするために、活性物質の粒径は、例えば研磨によって適切なレベルに調整され得る。前記処理ステップ中に必要とされる厳しい条件にもかかわらず、精製、溶解、融解、研磨、微粉化、混合および/または押出等、処理ステップの副作用としての薬学的活性物質の崩壊は最小化しなくてはならないため、活性物質が前記処理ステップの全体を通して高度に安定であることが絶対的に不可欠である。活性物質が処理ステップ中において十分に安定な場合のみ、品質要件を常に満たし、かつ指定量の活性物質を再現可能な様式で含有する、均質な医薬製剤を生成することが可能である。
【0005】
所望の医薬製剤を調製するための研磨プロセスにおいて生じ得るもう1つの問題は、それが非晶質または結晶性のいずれであろうと、APIの粒子表面への応力等、処理ステップによって引き起こされるエネルギーおよび/または圧力の供給である。これは、ある特定の状況においては、処理ステップにおいて用いられる固体物質または形態に応じて、多形変化、非晶質構成の変化、または結晶格子の変化を導き得る。医薬品質の医薬製剤は、活性物質が同じ形態、好ましくは同じ結晶形態を常に有するべきことを必要とするため、固体APIの安定性および特性は、この観点からの厳密な要件にも依存する。故に、API自体の安定性、また長期保存期間は、本当に重要なものである。
【0006】
多くの医薬固体が異なる物理的形態で存在し得る。多形は、好ましくは、結晶格子中における分子の異なる配置および/または配座を有する2つ以上の結晶変態で存在するための、薬物物質等の化合物の能力と特徴付けられる(D.J.W.Grant、Theory and origin of polymorphism、H.G.Brittain(編)Polymorphism in Pharmaceutical Solids、Marcel Dekker, Inc.、New York、1999、1〜34頁、その開示は、参照によりその全体が本出願に組み込まれる)。非晶質固体は、無秩序配置の分子からなり、結晶格子および/または長距離秩序を保有しない。溶媒和物は、結晶構造内に組み込まれた化学量論量または非化学量論量いずれかの溶媒を含有する結晶性固体である。組み込まれた溶媒が水であれば、該溶媒和物は一般に水和物としても公知である。多形は、同じ化合物または薬物物質の異なる結晶変態の発生を指す。この解説における多形は、日米EU医薬品規制調和国際会議(ICH)ガイドラインQ6A(International Conference on Harmonization Q6A Guideline:Specifications for New Drug Substances and Products:Chemical Substances、1999年10月、その開示は、参照によりその全体が本出願に組み込まれる)において、溶媒和物および非晶質形態を含むこととして定義される。
【0007】
化学量論溶媒和物は、好ましくは分子化合物とみなされる。該用語は、好ましくは、固定であるが必ずしも整数とは限らない、溶媒対化合物の比率を暗示する。非化学量論溶媒和物は、好ましくは包接化合物の一種である。このクラスの溶媒和物の最も重要な特色は、構造を保持しながら、溶媒含有量が、おそらくゼロから多様なモル配合比の間のすべての値を潜在的に取り得ることである。構造中における溶媒の量は、固体および温度の環境における溶媒の分圧によって決まる(UJ.Griesser、「The Importance of Solvates」、R.Hilfiker(編)「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley VCH、2006を参照されたく、その開示は、その全体が本出願に組み込まれる)。
【0008】
医薬固体の多形および/または溶媒和物は、融点、吸湿性、化学反応性、見かけの溶解度、溶解速度、光学および電気特性、蒸気圧、ならびに/または密度等、異なる化学的および物理学的特性を有し得る。これらの特性は、薬物物質の処理可能性、ならびに安定性、溶解および/またはバイオアベイラビリティー等、薬物製品の品質/性能に対して直接的影響を有し得る。準安定性の医薬固体状態形態は、環境条件、処理または経時の変化に応答して結晶構造または溶媒和物/脱溶媒和物を変化させ得る。
【0009】
APIの安定性は、特定の薬剤の保存期間を決定するために医薬組成物においても重要であり、保存期間は、規定条件下で保存される限り、薬物製品が承認された規格内で残存すると予想される期間である。規定の保存期間内ならば、薬剤は、患者にいかなるリスクもなく投与され得る。したがって、種々の保存状態下における上述の医薬組成物中の薬剤の高い安定性は、患者および製造業者の両方にとって付加的利点である。
【0010】
上記で示した要件以外に、概して、その物理的および化学的安定性を改良することができる固体状態形態の医薬組成物のあらゆる変化が、安定性の低い形態の同じ薬剤よりも有意な利点を与えることを念頭に入れておくべきである。本発明の目的は、上述した通りの薬学的活性物質に課せられた厳密な要件を満足させる化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の新しい安定な固体物質を提供することである。故に、本発明の1つの目標は、固体状態特性が改良されたシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の新規な固体物質または形態の提供である。
【0011】
今や、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)、とりわけその内塩が、結晶性材料として、また特殊な結晶形態で得られることが分かっている。驚くべきことに、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の同様の構造型の新規な結晶形態(さらに疑似多形形態、PPとも命名されている)が全クラス見出されており、これらが実際に有益な固体状態特性を呈し、好ましくは、有益な固体状態特性の有利な組合せ、例えば、公知の材料の有益な特性と本発明による新しい材料の有益な特性とを組み合わせたものも保有する。
【0012】
加えて、驚くべきことに、新規な結晶性材料を得るための異なる方法は、好ましくは、結晶形態の前記クラス内の異なる結晶形態または変態を導くことが分かった。化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)、とりわけその内塩の、これらの結晶形態または変態、ならびにそれらを作製する方法は、本出願の好ましい主題である。
【0013】
前記新規な固体物質および前記結晶形態または変態は、より高い熱力学的安定性、吸湿性の低減、より高い結晶化度、取扱特性の改良、有利な溶解特性および/または保存安定性の改良を含むがこれらに限定されない、既に公知の非晶質材料と比較して価値のある特性および利点を示す。
【0014】
化合物{[(2S,5R,8S,11S)−5−ベンジル−11−(3−グアニジノ−プロピル)−8−イソプロピル−7−メチル−3,6,9,12,15−ペンタオキソ−1,4,7,10,13−ペンタアザ−シクロペンタデカ−2−イル]−酢酸}またはINN(国際一般的名称)シレンジタイド(Cilengitide)でも公知であるシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)は、そのインテグリン阻害活性、抗血管新生活性および放射線治療増強活性を示すがこれらに限定されない有利な生物学的活性を示し、薬学的用途において活性成分として広く用いられている。
【0015】
薬学的用途における活性成分としての使用、つまり略してAPIとしての使用のためには、高純度、優れた取扱特性、十分な安定性および信頼できる製造プロセス等の要因が重大である。加えて、塩基性および酸性両方の中心または部分を有するそのようなペプチド性化合物について、塩形成中の正確な化学量論はもう1つの重大な要因であり、したがって、APIの生成のための役割である。シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の酸性塩は、容易に生成されることが分かっているが、酸触媒分解により安定性が低いことも分かっている。塩基性塩は、概して、望ましくない溶解および取扱特性を保有することが分かっている。シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の既に公知かつ記載されている非晶質形態は、剤形の生成において、および適切な医薬製剤の開発においても、不都合に吸湿性であることが分かっており、1つの大きな欠点である。
【0016】
故に、APIの安定性の改良、取扱の改良、より高い純度および/またはより高い精製率を有する固体形態は、公知の非晶質形態と比較して、概して極めて望ましく、信頼できる技術的に大規模なAPIの製造が真に求められている。APIの固体剤形製剤または懸濁製剤が提供されなくてはならない場合にはなおさらである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許第0770622号明細書
【特許文献2】国際公開第00/53627号パンフレット
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】結晶形態A1のDSCスキャンを示す図である。
【図2】結晶形態A1のTGAスキャンを示す図である。
【図3】結晶形態A1の粉末X線ディフラクトグラムを示す図である。
【図4】結晶形態A1の単結晶構造を示す図である。
【図5】結晶形態A1のFTIRスペクトルを示す図である。
【図6】結晶形態A1のFT−ラマンスペクトルを示す図である。
【図7】結晶形態A1の水蒸気収着等温線(25℃)を示す図である。
【図8】結晶形態S1のDSCスキャンを示す図である。
【図9】結晶形態S1のTGAスキャンを示す図である。
【図10】結晶形態S1の粉末X線ディフラクトグラムを示す図である。
【図11】結晶形態S1のFTIRスペクトルを示す図である。
【図12】結晶形態S1のFT−ラマンスペクトルを示す図である。
【図13】結晶形態S1の水蒸気収着等温線(25℃)を示す図である。
【図14】水和物形態から結晶形態S1へのメタノール蒸気収着等温線(25℃)を示す図である。
【図15】結晶形態S2のDSCスキャンを示す図である。
【図16】結晶形態S2のTGAスキャンを示す図である。
【図17】結晶形態S2の粉末X線ディフラクトグラムを示す図である。
【図18】結晶形態S2のFTIRスペクトルを示す図である。
【図19】結晶形態S2のFT−ラマンスペクトルを示す図である。
【図20】結晶形態S2の水蒸気収着等温線(25℃)を示す図である。
【図21】水和物形態から結晶形態S2へのメタノール蒸気収着等温線(25℃)を示す図である。
【図22】疑似多形S1、S2およびS3のPXRD比較を示す図である。
【図23】結晶形態S3のDSCスキャンを示す図である。
【図24】結晶形態S3のTGAスキャンを示す図である。
【図25】結晶形態S3の粉末X線ディフラクトグラムを示す図である。
【図26−1】結晶形態S3の単結晶構造を示す図である。
【図26−2】形態S3の格子中におけるシレンジタイド分子のジグザグ鎖形成を示す図である。
【図26−3】シレンジタイド、形態S3のAPI分子間に空隙(緑色)を有する結晶構造を示す図である。
【図26−4】シレンジタイド、形態S3の結晶格子中における空隙の構造を示す図である。
【図27】結晶形態S3のFTIRスペクトルを示す図である。
【図28】結晶形態S3のFT−ラマンスペクトルを示す図である。
【図29】結晶形態S3の水蒸気収着等温線(25℃)を示す図である。
【図30】水−エタノール混合雰囲気下での、式Iによる化合物の非晶質材料または水和物形態の調節実験から得られた試料の化学量論を示す図である。
【図31】形態S2−ジ−エタノール溶媒和物またはジエタノレートの粉末パターン構造解を示す図である。
【図32】形態S2−モノ−エタノール溶媒和物ジヒドレートの単結晶構造解を示す図である。
【図33】形態H1−七水和物の単結晶構造解を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
故に、本発明の主題は、
式Iによる化合物
シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(I)
の固体物質であって、格子定数
a=9.5±0.5Å、
b=23.0±5.0Å、および
c=14.7±1.0Å
を有する単位セルを特徴とする該式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む固体物質である。
【0020】
前記単位セルは、好ましくは、結晶学的単位セルまたは結晶学的に決定された単位セルである。
【0021】
前記単位セルにおいて、角度αは好ましくは90°±2°であり、角度βは好ましくは90°±2°であり、かつ/または角度γは好ましくは90°±2°である。
【0022】
好ましくは、固体物質は、少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも30重量%、より一層好ましくは60重量%、とりわけ少なくとも90重量%または少なくとも95重量%の、上記および/または下記において定義される通りの式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む。例えば、固体物質は、約25、約50、約75、約95、約99または約100重量%の、上記および/または下記において定義される通りの式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む。
【0023】
とりわけ好ましくは、固体物質は、少なくとも10モル%、より好ましくは少なくとも30モル%、より一層好ましくは60モル%、とりわけ少なくとも90モル%または少なくとも95モル%の、上記および/または下記において定義される通りの式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む。例えば、固体物質は、約25、約50、約75、約95、約99または約100モル%の、上記および/または下記において定義される通りの式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む。
【0024】
本発明による固体物質に付されている重量パーセンテージは、好ましくは、前記固体物質に含有されている上記/下記において定義される通りの1つまたは複数の結晶形態の重量と前記固体物質に含有されている式Iの化合物の重量での総量との間の比率に関係する。換言すると、付されている重量パーセンテージは、好ましくは、式Iの化合物の重量での総量に基づく、上記および/または下記において定義される通りの1つまたは複数の結晶形態の和の重量パーセンテージである。故に、本発明による固体物質内の1つまたは複数の結晶形態の含有量に付されている重量パーセンテージは、好ましくは、前記固体物質に含有されている式Iによる化合物以外の化合物または不純物の量または含有量とは無関係である。故に、固体物質に付されている重量パーセンテージは、好ましくは、含有されている溶媒分子について補正される、すなわち、固体物質に付されている重量パーセンテージは、好ましくは、前記固体物質中の溶媒分子とは無関係である、または該溶媒分子を除いて算出される。
【0025】
本発明による固体物質に付されているモルパーセンテージ(モル%)は、好ましくは、前記固体物質に含有されている上記/下記において定義される通りの1つまたは複数の結晶形態と前記固体物質に含有されている式Iの化合物の総モル量との間のモル比に関係する。換言すると、付されているモルパーセンテージは、好ましくは、式Iの化合物の総モル量に基づく、上記および/または下記において定義される通りの1つまたは複数の結晶形態の和のモルパーセンテージである。故に、本発明による固体物質内の1つまたは複数の結晶形態の含有量に付されたモルパーセンテージは、好ましくは、前記固体物質に含有されている式Iによる化合物以外の化合物または不純物の量または含有量とは無関係である。故に、固体物質に付されているモルパーセンテージ(モル%)は、好ましくは、含有されている溶媒分子について補正される、すなわち、固体物質に付されているモルパーセンテージ(モル%)は、好ましくは、前記固体物質中の溶媒分子とは無関係である、または該溶媒分子を除いて算出される。
【0026】
前記固体物質に関する1つまたは複数の結晶形態は、好ましくは、固体物質が、上記および/または下記において定義される通りの格子定数内の単位セルを有する式Iの化合物の少なくとも1つまたは複数の結晶形態または変態を含むこと、あるいは、固体物質が、上記および/または下記において定義される通りの格子定数内の単位セルをそれぞれ有する式Iの化合物の2つ以上、例えば2つまたは3つの結晶形態または変態の混合物を含むことを意味する。
【0027】
好ましくは、固体物質は、上記および/または下記において定義される通りの式Iの化合物の、1、2、3または4つの結晶形態を含む。
【0028】
より好ましくは、固体物質は、
ULP1:a1=9.5±0.5Å、
b1=26.0±1.5Å、および
c1=14.3±0.7Å,
ならびに
ULP2:a2=9.8±0.5Å、
b2=20.0±1.5Å、および
c2=15.4±0.7Å
からなる群から選択される格子定数(ULP)を有する単位セルをそれぞれ有する、式Iの化合物の、1つまたは複数の、好ましくは1、2、3または4つの、より一層好ましくは1または2つの結晶形態を含む。
【0029】
より好ましくは、固体物質は、
ULP1:a1=9.5±0.3Å、
b1=26.0±1.0Å、および
c1=14.3±0.5Å、
ならびに
ULP2:a2=9.8±0.3Å、
b2=20.0±1.0Å、および
c2=15.4±0.5Å
からなる群から選択される格子定数(ULP)を有する単位セルをそれぞれ有する、式Iの化合物の、1つまたは複数の、好ましくは1、2、3または4つの、より一層好ましくは1または2つの結晶形態を含む。
【0030】
格子定数ULP1および/またはULP2を有する単位セルにおいて、角度αは、好ましくは90°±2°であり、角度βは、好ましくは90°±2°であり、かつ/または角度γは、好ましくは90°±2°である。
【0031】
好ましくは、格子定数ULP1を有する単位セルは、代替的にまたは付加的に、好ましくは付加的に、前記単位セル内における約4分子の式Iの化合物の含有量を特徴とし得る。
【0032】
格子定数ULP2を有する単位セルにおいて、角度αは好ましくは90°±0.5°であり、角度βは好ましくは90°±0.5°であり、かつ/または角度γは好ましくは90°±0.5°である。格子定数ULP2を有する単位セルにおいて、角度α、βおよびγは、より好ましくは90°±0.1°である。
【0033】
好ましくは、格子定数ULP2を有する単位セルは、代替的にまたは付加的に、好ましくは付加的に、前記単位セル内における約4分子の式Iの化合物の含有量を特徴とし得る。
【0034】
より好ましくは、固体物質は、
格子定数a=9.8±0.1Å、b=19.5±0.5Å、およびc=15.4±0.1Åを有する単位セルを特徴とする結晶形態A1、
格子定数a=9.4±0.1Å、b=25.9±0.5Å、およびc=14.1±0.1Åを有する単位セルを特徴とする結晶形態S1、
格子定数a=9.3±0.1Å、b=26.6±0.5Å、およびc=14.7±0.1Åを有する単位セルを特徴とする結晶形態S2、ならびに
格子定数a=9.6±0.1Å、b=25.9±0.5Å、およびc=13.9±0.1Åを有する単位セルを特徴とする結晶形態S3
から選択される、式Iの化合物の、1つまたは複数の、好ましくは1、2、3または4つの、より一層好ましくは1または2つの結晶形態を含む。
【0035】
より好ましくは、固体物質は、
格子定数a=9.8±0.1Å、b=19.5±0.5Å、およびc=15.4±0.1Åを有する、好ましくはα=β=γ=90°±1°を有する、とりわけα=β=γ=90°を有する単位セルを特徴とする結晶形態A1、
格子定数a=9.4±0.1Å、b=25.9±0.5Å、およびc=14.1±0.1Åを有する、好ましくはα=β=γ=90°±2°を有する、とりわけα=90°±1°、β=91°±1、γ=90°±1°を有する、とりわけα=90°、β=91.2°、γ=90°を有する単位セルを特徴とする結晶形態S1、
格子定数a=9.3±0.1Å、b=26.6±0.5Å、およびc=14.7±0.1Åを有する、好ましくはα=β=γ=90°±1°を有する、とりわけα=β=γ=90°を有する単位セルを特徴とする結晶形態S2、ならびに
格子定数a=9.6±0.1Å、b=25.9±0.5Å、およびc=13.9±0.1Åを有する、好ましくはα=β=γ=90°±1°を有する、とりわけα=β=γ=90°を有する単位セルを特徴とする結晶形態S3
から選択される、式Iの化合物の、1つまたは複数の、好ましくは1、2、3または4つの、より一層好ましくは1または2つの結晶形態を含む。
【0036】
好ましくは、結晶形態S1、S2およびS3は、代替的にまたは付加的に、好ましくは付加的に、前記単位セル内における約4分子の式Iの化合物の含有量を特徴とし得る。
【0037】
結晶形態S1、S2およびS3は、好ましくはさらに溶媒和物と特徴付けられる。
【0038】
本発明の文脈において、溶媒和物は、好ましくは、結晶構造内に組み込まれた化学量論量または非化学量論量いずれかの溶媒を含有する結晶性固体付加物であり、すなわち、溶媒分子は、好ましくは結晶構造の一部を形成する。組み込まれた溶媒が水であれば、該溶媒和物は一般に水和物としても公知である。
【0039】
結果として、溶媒和物中の溶媒は、好ましくは結晶構造の一部を形成し、故に、概してX線法によって検出可能であり、好ましくは本明細書において記載されている通りのX線法によって検出可能である。
【0040】
概して、所与の結晶構造について、(別の結晶構造への転移を誘発することなく)前記構造に組み込まれる溶媒の量には上限がある。しかしながら、いくつかの事例において、結晶構造の物理的処理によって、例えば乾燥処置によって、例えば昇温(ではあるが好ましくは融点または他の相転移点未満)における保存、ならびに/または、好ましくは真空および部分減圧を印加することを含む減圧によって、組み込まれた溶媒の少なくとも一部を除去することが可能である。そのような事例では基本的に、溶媒は結晶構造から部分的にまたは完全に除去され得るため、前記結晶構造中に空隙を導入することができる。相転移および/または多形転移、例えば異なる多形形態への転移、あるいは、とりわけ、非晶質形態、より少ない溶媒もしくは水分子を含有する溶媒和物もしくは水和物、または無水物形態への転移の可能性は、組み込まれた溶媒の量がゼロに収束するとともに増加する。
【0041】
そのような事例では、含有されている溶媒および/またはその量、故に各溶媒和物または溶媒和物構造の組成は、好ましくは、調節および/または再結晶化を含むがこれらに限定されない適切な処理によって変動し得る。例えば、ある溶媒は、そのような溶媒和物から部分的にまたは完全に除去され得、ある溶媒は、そのような溶媒和物中の異なる溶媒および/またはそのような溶媒和物が中で増加もしくは減少し得るような量の溶媒によって部分的にまたは完全に置換され得る。故に、特定溶媒を含有する溶媒和物は、潜在的に、溶媒和物混合物を含有する溶媒和物に転換され得、逆もまた同様である。
【0042】
これに関連する調節は、好ましくは物理的処理に関係し、ここで、各溶媒和物の元の結晶構造は本質的に保持される。溶媒和物を調節するのに適した方法、ならびに手段および/またはパラメーターは、原則的に当業者に公知である。適切な調節方法の例は本出願において開示されており、好ましくは、溶媒蒸気への暴露、熱的条件(例えば、特定温度または温度勾配における示差走査熱量測定、熱重量測定および/または保存によるもの)への暴露、スラリー化(例えば、1種または複数の溶媒を含む液体中で溶媒和物の懸濁液を形成および/または処理すること)、1種または複数の溶媒の可変分圧への暴露、1種または複数の溶媒の特定分圧および/または特定分圧勾配への暴露、ならびにそれらの組合せを含むがこれらに限定されない。例えば、スラリー化および/または1種もしくは複数の溶媒の可変分圧への暴露は、特定温度または温度勾配で実現され得る。調節の好ましい形態は、溶媒和または脱溶媒和である。スラリー、およびスラリーまたはスラリー化のための作業技術は、例えば、Martyn D. Ticehurst、*Richard A. Storey、Claire Watt、International Journal of Pharmaceutics 247(2002)1〜10から、当技術分野において公知であり、その開示は、その全体が本出願に組み込まれる。
【0043】
付加的にまたは代替的に、含有されている溶媒および/またはその量、故に各溶媒和物または溶媒和物構造の組成は、好ましくは再結晶化によって、とりわけ、異なる溶媒または溶媒混合物からの再結晶化によっても変動し得、但し、該溶媒和物の元の結晶構造は、再現される、または本質的に再現される。
【0044】
これに関連して、溶媒和物は、好ましくは、単位セルまたは結晶学的単位セルが、前記単位セルに含有されている式Iの化合物1分子当たり約化学量論(整数または非整数)量の、1種または複数の溶媒の溶媒分子を含有することを意味する。前記単位セルに含有されている式Iの化合物1分子当たり、前記単位セル内の約化学量論量の溶媒分子は、好ましくは、式Iによる化合物1分子当たり、約0.01個の溶媒分子から約8個の溶媒分子の範囲内、より好ましくは、約0.1個の溶媒分子から約7個の溶媒分子の範囲内、より一層好ましくは、約1.5個の溶媒分子から最大約4.5個の溶媒分子、例えば、約0.1個の溶媒分子、約0.5個の溶媒分子、約1.5個の溶媒分子、約3個の溶媒分子、約4個の溶媒分子または約7個の溶媒分子の範囲内にある。とりわけ好ましいのは、前記単位セルに含有されている式Iによる化合物1分子当たり、約4個の溶媒分子を有する溶媒和物である。単位セルまたは結晶学的単位セルが、前記単位セルに含有されている式Iの化合物1分子当たり、1種または複数の溶媒の約4個の溶媒分子を含有するのであれば、四溶媒和物とみなすのが好ましく、前記単位セルに含有されている式Iの化合物1分子当たり、1種または複数の溶媒の約7個の溶媒分子を含有するのであれば、七溶媒和物とみなすのが好ましい。
【0045】
これに関連して、溶媒和物は、好ましくは、単位セルまたは結晶学的単位セルが、前記単位セルに含有されている式Iの化合物1分子当たり、約化学量論(好ましくは整数または非整数、より好ましくはほぼ整数)量の、1種または複数の溶媒の溶媒分子を含有することを意味する。前記単位セルに含有されている式Iの化合物1分子当たり、前記単位セル内の約化学量論量の溶媒分子は、好ましくは、前記単位セル内に含有されている式Iによる化合物1分子当たり、約0.5個の溶媒分子から約6個の溶媒分子の範囲内、より好ましくは約0.5個の溶媒分子から約4.5個の溶媒分子の範囲内、より一層好ましくは約1.5個の溶媒分子から最大約4個の溶媒分子、例えば、前記単位セル内に含有されている式Iによる化合物1分子当たり、約0.5個の溶媒分子、約1.5個の溶媒分子、約4個の溶媒分子または約6個の溶媒分子の範囲内にある。とりわけ好ましいのは、前記単位セルに含有されている式Iによる化合物1分子当たり、約4個の溶媒分子を有する溶媒和物である。単位セルまたは結晶学的単位セルが、前記単位セルに含有されている式Iの化合物1分子当たり、1種または複数の溶媒の約4個の溶媒分子を含有するのであれば、四溶媒和物とみなすのが好ましい。
【0046】
これに関連して好ましい溶媒または溶媒分子は、水およびアルコールからなる群から、より好ましくは、水、メタノールおよびエタノールからなる群から選択される。
【0047】
例えば、結晶形態の単位セルが、1分子の式Iによる化合物および約4個の溶媒分子を含有するのであれば、前記形態は四溶媒和物とみなすのが好ましい。結晶形態の単位セルが、2分子の式Iの化合物および約8個の溶媒分子を含有するのであれば、前記形態も四溶媒和物とみなすのが好ましい。結晶形態の単位セルが、4分子の式Iの化合物および約16個の溶媒分子を含有するのであれば、前記形態も四溶媒和物とみなすのが好ましい。結晶形態の単位セルが、2.5分子の式Iによる化合物および約10個の溶媒分子を含有する場合も同じことが言える。
【0048】
故に、溶媒和物は、より好ましくは、各結晶形態が、式Iの化合物1分子当たり、約化学量論(整数または非整数)量の、1種または複数の溶媒の溶媒分子を含有することを意味する。前記溶媒和物中の約化学量論量の(1個または複数の)溶媒分子は、好ましくは、式Iによる化合物1分子当たり、約0.1個の溶媒分子から約7個の溶媒分子の範囲内、より好ましくは、式Iによる化合物1分子当たり約0.5個の溶媒分子から式Iによる化合物1分子当たり最大約4.5個の溶媒分子の範囲内、より一層好ましくは、式Iによる化合物1分子当たり約1.5個の溶媒分子から式Iによる化合物1分子当たり最大約4個の溶媒分子、例えば、前記単位セルに含有されている式Iによる化合物1分子当たり、約0.5個の溶媒分子、約1.5個の溶媒分子、約3個の溶媒分子、約4個の溶媒分子または約7個の溶媒分子の範囲内にある。とりわけ好ましいのは、式Iによる化合物1分子当たり、約4個の溶媒分子を有する溶媒和物である。
【0049】
故に、溶媒和物は、より好ましくは、各結晶形態が、式Iの化合物1分子当たり、約化学量論量の、1種または複数の溶媒の溶媒分子を含有することを意味する。前記溶媒和物中の約化学量論量の(1個または複数の)溶媒分子は、好ましくは、式Iによる化合物1分子当たり、約0.5個の溶媒分子から約6個の溶媒分子の範囲内、より好ましくは、式Iによる化合物1分子当たり、約0.5個の溶媒分子から最大約4.5個の溶媒分子の範囲内、より一層好ましくは、式Iによる化合物1分子当たり約1.5個の溶媒分子から式Iによる化合物1分子当たり最大約4個の溶媒分子、例えば、式Iによる化合物1分子当たり、約0.5個の溶媒分子、約1.5個の溶媒分子、約4個の溶媒分子または約6個の溶媒分子の範囲内にある。とりわけ好ましいのは、式Iによる化合物1分子当たり、約4個の溶媒分子を有する溶媒和物である。
【0050】
溶媒和物のより好ましい化学量論は、下記のグラフ(グラフI)の灰色で陰影をつけた領域に描写される通りに定義される。
【0051】
【表1】
【0052】
このグラフにおいて、xは、式Iによる化合物1分子当たりの水分子の数(整数であっても非整数であってもよい)であり、yは、アルコール、好ましくはメタノールもしくはエタノールのいずれかまたはそれらの混合物の分子の数であり、整数であっても非整数であってもよい。したがって、好ましくは、式Iによる化合物1分子当たりのアルコール分子の数は、0から約4の間、好ましくは0.1から4の間であり、水分子の数は、0から約4の間、好ましくは0.1から4の間である。
【0053】
溶媒和物のより一層好ましい化学量論は、下記のグラフ(グラフII)の灰色で陰影をつけた領域に描写される通りに定義される。
【0054】
【表2】
【0055】
このグラフにおいて、xは、式Iによる化合物1分子当たりの水分子の数(整数であっても非整数であってもよい)であり、yは、アルコール、好ましくはメタノールもしくはエタノールのいずれかまたはそれらの混合物の分子の数であり、整数であっても非整数であってもよい。したがって、好ましくは、式Iによる化合物1分子当たりのアルコール分子の数は、0から約2の間、好ましくは0.1から2の間であり、水分子の数は、0から約4の間、好ましくは0.1から4の間である。
【0056】
溶媒和物のなお一層好ましい化学量論は、下記のグラフ(グラフIII)の灰色で陰影をつけた領域に描写される通りに定義される。
【0057】
【表3】
【0058】
このグラフにおいて、xは、式Iによる化合物1分子当たりの水分子の数(整数であっても非整数であってもよい)であり、yは、アルコール、好ましくはメタノールもしくはエタノールのいずれかまたはそれらの混合物の分子の数であり、整数であっても非整数であってもよい。したがって、好ましくは、式Iによる化合物1分子当たりのアルコール分子の数は、0から約1の間、より好ましくは0.1から1の間であり、水分子の数は、0から約4の間、より好ましくは0.1から4の間である。
【0059】
これに関連してとりわけ好ましい溶媒または溶媒分子は、水およびアルコールからなる群から、より好ましくは、水、メタノールおよびエタノールからなる群から選択される。
【0060】
グラフI、グラフIIおよび/またはグラフIIIに記載されている通り、ならびに好ましくはそれに関係する項にも記載されている通りの組成または化学量論を有する式Iによる化合物の溶媒和物は、それぞれ、本発明のとりわけ好ましい主題である。上記および/または下記の溶媒和物は、グラフI、グラフIIおよび/またはグラフIIIにおいて記載されている通りの範囲内の組成または化学量論を有する前記溶媒和物のとりわけ好ましい例であり、故に、本発明のとりわけ好ましい主題でもある。
【0061】
上記および/もしくは下記の記述、ならびに好ましくは溶媒和物または結晶形態S1、S2および/もしくはS3の記述にも基づいて、単位セルパラメーターULP1を有する単位セルを特徴とする溶媒和物または結晶形態は、前記単位セル内に式Iの化合物1分子当たり0から約4個の溶媒分子、より好ましくは、前記単位セル内に式Iの化合物1分子当たり0.01から約4個の溶媒分子、とりわけ、前記単位セル内に式Iの化合物1分子当たり0.5から4個の溶媒分子を含み得ることが明らかになる。
【0062】
故に、単位セルパラメーターULP1を有する単位セルを特徴とする溶媒和物または結晶形態の共通の特色または特徴は、式Iによる化合物1分子当たり、約4分子の1種または複数の溶媒、好ましくは本明細書において記載されている通りの溶媒という溶媒含有量の上限である。従来技術に従って、前記単位セル中、式Iの化合物1分子当たり約4分子の1種または複数の溶媒という溶媒含有量の上限を特徴とする溶媒和物または結晶形態は、好ましくは四溶媒和物と称される。
【0063】
しかしながら、本明細書において広範囲にわたって記載されているように、単位セルパラメーターULP1を有する単位セルを特徴とする前記溶媒和物または結晶形態を、前記単位セル内の式Iの化合物1分子当たり約3個以下の溶媒分子の溶媒含有量に、前記単位セル内の式Iの化合物1分子当たり約2個以下の溶媒分子の溶媒含有量に、前記単位セル内の式Iの化合物1分子当たり約1個以下の溶媒分子の溶媒含有量に、またはさらに前記単位セル内の式Iの化合物1分子当たり、0.5、0.1もしくは0個近くの溶媒分子の溶媒含有量に脱溶媒和してよい。単位セルパラメーターULP1を有する単位セルを特徴とする溶媒和物または結晶形態のこれらの脱溶媒和物も、本発明の好ましい主題である。
【0064】
結果として、用語「四溶媒和物」および/または「四水和物」は、本明細書において使用される場合、好ましくは、前記四溶媒和物および/または四水和物の部分的にまたは全体的に脱溶媒和した形態も含み、好ましくは、元の四溶媒和物または四水和物の各結晶構造が保持される、または本質的に保持される場合に限る。
【0065】
さらなる結果として、用語「四溶媒和物」は、本明細書において使用される場合、好ましくは、ジハイドレート(dehydrate)−ジアルコレート、ジハイレート−アルコレートおよびジハイレート−モノアルコレートを好ましくは含むがこれらに限定されないアルコール溶媒和物(つまりアルコレート)もしくは水−アルコール混合溶媒和物、および/またはそれらの部分的にもしくは全体的に脱溶媒和した形態も含み、好ましくは元の四溶媒和物の各結晶構造、とりわけ好ましくは四水和物S3の元の結晶構造が保持される、または本質的に保持される場合に限る。
【0066】
さらなる結果として、用語「四溶媒和物」は、本明細書において使用される場合、好ましくは、ジハイドレート−ジアルコレート、ジハイドレート−アルコレート、ジハイドレート−モノアルコレートおよびジアルコレート(好ましくは、式(Cil)1(アルコール)2(H2O)0によって示されるもの)を好ましくは含むがこれらに限定されないアルコール溶媒和物(つまりアルコレート)もしくは水−アルコール混合溶媒和物、および/またはそれらの部分的にもしくは全体的に脱溶媒和した形態も含み、好ましくは元の四溶媒和物の各結晶構造、とりわけ好ましくは四水和物S3の元の結晶構造が保持される、または本質的に保持される場合に限る。故に、本明細書において定義されている通りのULP1による単位セルパラメーター内のすべての結晶形態は、好ましくは、本発明による四溶媒和物とみなされる。
【0067】
好ましくは、本発明によるジアルコレートは、四溶媒和物および/またはその脱溶媒和物とみなされ、これは、好ましくは、式Iの化合物1分子当たり約2個のアルコール分子を含有するが、好ましくは、式Iの化合物1分子当たり、1個未満の分子、より好ましくは0.5個未満の分子、とりわけ0.1個未満の水分子を含有する。故に、本発明による好ましいジアルコレートは、単位セル中に、約4分子の式Iの化合物および約8分子のアルコールを含有するが、好ましくは1分子未満の水を含有する。好ましくは、前記ジアルコレート中のアルコールは、メタノールおよびエタノールならびにそれらの混合物から選択される。故に、本発明によるジアルコレートは、好ましくは脱溶媒和物、またはより具体的には本発明によるジヒドレート−ジアルコレートの脱水和物ともみなされる。
【0068】
結晶形態A1は、好ましくは、無水物または非溶媒和物(ansolvate)としてさらに特徴付けられる。
【0069】
これに関連して、無水物または非溶媒和物は、好ましくは、単位セルに、約化学量論量の、1種または複数の溶媒の溶媒分子がない、または本質的にないことを意味する。これに関連して、無水物または非溶媒和物は、より好ましくは、単位セルに、水および溶媒分子が本質的にないことを意味する。これに関連して、溶媒分子が本質的にないとは、好ましくは、単位セル中の溶媒分子の量が、0.5未満、より好ましくは0.1未満、より一層好ましくは0.01未満、とりわけ0.001未満であることを意味する。
【0070】
非溶媒和物および無水物は、いずれも各溶媒が存在しないことを特徴とし、故にいかなる溶媒も存在しないことを特徴とするため、無水物および非溶媒和物という用語は、好ましくは、本発明の文脈においては同義語とみなすべきである。
【0071】
単位セル中の分子の量は、好ましくは結晶学的方法によって、より好ましくは単結晶X線回折および/または粉末X線回折によって決定される。
【0072】
代替として、前記結晶形態、前記溶媒和物中および/または各単位セル中の溶媒の量は、元素分析、ガスクロマトグラフィーまたはカールフィッシャー滴定によって決定または推定できる。この文脈において、溶媒分子が本質的にないというのは、好ましくは5%未満、より一層好ましくは2%未満、より一層好ましくは1%未満、とりわけ0.1%未満、例えば、5%から0.1%または2%から0.01%の溶媒含有量を意味する。これに関連して、付されるパーセンテージ(%)は、好ましくはモル%および重量%から選択され、とりわけ好ましくは重量%である。
【0073】
結晶形態A1、S2および/またはS3は、好ましくは斜方晶系単位セルをさらに特徴とする。
【0074】
結晶形態S1は、好ましくは単斜晶系単位セルをさらに特徴とする。
【0075】
好ましくは、a、b、c、α、βおよび/またはγを含むがこれらに限定されない単位セルおよび格子定数は、当業者に公知の結晶学的パラメーターである。それ故、それらは当技術分野において公知の方法に従って決定できる。好ましくは、単位セルの斜方晶系および/または単斜晶系形態についても同じことが言える。
【0076】
上記に示した単位セルおよびそれに関係する格子定数は、好ましくはX線回折、より好ましくは単結晶X線回折および/または粉末X線回折により、標準的方法、例えば、European Pharmacopeia第6版2.9.33章において記載されている通りの、ならびに/またはRolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley−VCH. Weinheim 2006(6章:X−Ray Diffraction)、および/もしくはH.G.Brittain、「Polymorphism in Pharmaceutical Solids」、95巻、Marcel Dekker Inc.、New York 1999(6章およびその中の参考文献)において記載されている通りの方法または技術に従って決定される。
【0077】
代替として、好ましくは、上記に示した単位セルおよびそれに関係する格子定数は、好ましくは
グラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、好ましくは298K±5Kの温度でMoKα放射線を使用する、Oxford Diffraction製のエクスカリバー回折計、および/または
グラファイトモノクロメーターおよびシンチレーションカウンターを備えた、好ましくは298K±5Kの温度でMoKα放射線を使用する、Nonius製のCAD4四軸回折計
で行われる単結晶X線によって、場合により追加の構造データと一緒に得ることができる。
【0078】
上記に示した単位セルおよびそれに関係する格子定数は、好ましくはX線回折、より好ましくは粉末X線回折により、標準的方法、例えば、European Pharmacopeia第6版2.9.33章において記載されている通りの、ならびに/またはRolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH. Weinheim 2006(6章:X-Ray Diffraction)、および/もしくはH.G.Brittain、「Polymorphism in Pharmaceutical Solids」、95巻、Marcel Dekker Inc.、New York 1999(6章およびその中の参考文献)において記載されている通りの方法または技術に従って決定される。
【0079】
上記および/または下記において定義されている通りの1種または複数の結晶形態の、上記および/または下記の固体物質中におけるより高い含有量が、概して好ましい。
【0080】
式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態から本質的になる、上記および/または下記の固体物質は、格子定数
a=9.5±0.5Å、
b=23.0±5.0Å、および
c=14.7±1.0Å
を有する単位セルを特徴とし、
とりわけ、上記および/または下記に特徴付けられる。
【0081】
式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態から本質的になるというのは、好ましくは、前記固体物質に含有されている式Iの化合物が、式Iの化合物の前記1つまたは複数の結晶形態から本質的に選択されること、あるいは換言すると、前記固体形態中の1つまたは複数の結晶形態が、前記固体形態中において必要量の式Iの化合物を提供することを意味する。より具体的には、とりわけこれに関連して、好ましくは、前記固体形態中の1つまたは複数の結晶形態が、前記固体形態中において90%以上、好ましくは95%以上、より一層好ましくは99%以上、とりわけ99.9%以上の量の式Iの化合物を提供することを意味する。これに関連して、付されるパーセンテージ(%)は、好ましくはモル%および重量%から選択され、とりわけ好ましくはモル%である。
【0082】
前記量は、本明細書において記載されている通りの単一の結晶形態によって、または本明細書において記載されている通りの2つ以上の結晶形態の混合物によって提供され得る。好ましくは、前記量は、本明細書において記載されている通りの単一の結晶形態によって提供される。より好ましくは、前記量は、本明細書において記載されている通りの結晶形態A1、結晶形態S1、結晶形態S2および結晶形態S3から選択される単一の結晶形態によって提供される。
【0083】
固体物質が、本明細書において記載されている通りの結晶形態の2つ以上を含むのであれば、これらの結晶形態の1つは好ましくは主要の結晶形態であり、存在する1つまたは複数のさらなる結晶形態は、少量で存在する。主要の結晶形態は、好ましくは60重量%以上、より好ましくは75%以上、より一層好ましくは90%以上、とりわけ95または99%以上の総量の、存在する結晶形態を提供する。これに関連して、付されるパーセンテージ(%)は、好ましくはモル%および重量%から選択され、とりわけ好ましくはモル%である。
【0084】
別段の規定がなければ、本明細書において化合物および/または溶媒に付されているパーセンテージ(または%)は、好ましくは重量パーセンテージまたはモルパーセントのいずれかであり、好ましくはモルパーセントである。本発明による固体物質中の1つまたは複数の結晶形態の含有量、および妥当な場合、本発明による固体物質中の2つ以上の結晶形態の比率は、粉末X線回折、ラマン分光法および赤外線分光法を含むがこれらに限定されない方法によって有利に決定でき、より好ましくは、粉末X線回折、ラマン分光法および/または赤外線分光法によって決定されるため、それに関係するパーセント値は、別段明記されていなければ、とりわけ好ましくはモルパーセント値である。
【0085】
好ましくは、別段の規定がなければ、本明細書において
i)伝送、とりわけIR伝送、ラマン強度等のスペクトルデータ、
ii)粉末X線回折強度(PXRD強度)、および/または
iii)相対湿度(rhまたはr.h.)等の分析パラメーター等
に付されているパーセンテージ(または%)は、好ましくは相対的パーセンテージ(すなわち、各最大値のパーセント)である。
【0086】
本発明の好ましい主題は、本明細書において記載されている通りの、とりわけ上記および/または下記の式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態である。
【0087】
好ましくは、式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態は、単斜晶系単位セルまたは斜方晶系単位セルを有する上記および/または下記の結晶形態から選択される。
【0088】
好ましくは、式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態は、無水物または非溶媒和物および溶媒和物から選択される。
【0089】
好ましくは、溶媒和物は、水和物、メタノレート(メタノール溶媒和物)およびエタノレート(エタノール溶媒和物)、ならびにそれらの混合物から選択される。前記混合物は、好ましくは、水−メタノール混合溶媒和物、水エタノール混合溶媒和物、メタノール−エタノール混合溶媒和物、およびメタノール−エタノール−水混合溶媒和物から選択される。
【0090】
好ましくは、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、>282℃、より好ましくは288±5℃以上、とりわけ288±5℃の融解/分解温度を特徴とし得る。
【0091】
本明細書において記載されている融解/分解温度および/または熱挙動は、好ましくは、DSC(示差走査熱量測定)およびTGA(熱重量分析)によって決定される。DSCおよび/もしくはTGA法、または概して熱分析法およびそれらを決定するのに適したデバイスは、当技術分野において、例えば、適切な標準的技術が記載されているEuropean Pharmacopeia第6版2.02.34章から、公知である。より好ましくは、融解/分解温度もしくは挙動および/または熱分析については、概して、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.34章において記載されている通り、Mettler Toledo DSC821および/またはMettler Toledo TGA851が使用される。
【0092】
熱分析を示すDSCおよびTGA計測(Mettler−Toledo DSC821、5K/分、窒素パージガス50ml/分;Mettler−Toledo TGA851、5K/分、窒素パージガス50ml/分)ならびに上記に示した融解/分解温度を、図1および図2に示す。
【0093】
好ましくは、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの6つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの8つ以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0094】
【表4】
【0095】
またはより好ましくは
【0096】
【表5】
【0097】
好ましくは、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0098】
【表6】
【0099】
またはより好ましくは
【0100】
【表7−1】
【0101】
【表7−2】
【0102】
好ましくは、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの10以上、より一層好ましくは、下記に示す粉末X線ピークの12以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0103】
【表8−1】
【0104】
【表8−2】
【0105】
またはより好ましくは
【0106】
【表9−1】
【0107】
【表9−2】
【0108】
粉末X線回折、より好ましくは粉末X線回折パターンは、好ましくは本明細書において記載されている通りに実施または決定され、とりわけ、European Pharmacopeia第6版2.9.33章において記載されている通りの標準的技術によって実施または決定され、かつ、より一層好ましくは、好ましくはStoe StadiP 611KL回折計において、パラメーターCu−Kα1放射線および/またはλ=1.5406Åで得られる。
【0109】
図3は、結晶形態A1の粉末X線ディフラクトグラムを示す。
【0110】
好ましくは、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、単結晶X線構造データ、例えば、好ましくはグラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、好ましくは298K±5Kの温度でMoKα放射線を使用する回折計で、ならびに、より一層好ましくは、グラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、約298KでMoKα放射線を使用する、Oxford Diffraction製のエクスカリバー回折計で得られた単結晶X線構造データによって特徴付けできる。
【0111】
得られた単結晶X線構造データによれば、式Iの化合物の無水物、とりわけ結晶形態A1は、格子定数a=9.8Å、b=15.4Å、c=19.5Å(±0.1Å)を有する斜方晶系空間群P212121中で結晶化し、単位セル体積は、好ましくは2940(±10)Å3である。
【0112】
単結晶構造から、形態A1が無水物または非溶媒和物を表すことが明白である。
【0113】
単結晶X線構造を図4に描写する。
【0114】
好ましくは、本発明による無水物および非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の6つ以上を含む、より一層好ましくは、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、赤外線分光データを特徴とし得る。
3431cm−1(s)、3339cm−1(s)、3189cm−1(s)、2962cm−1(m)、2872cm−1(m)、1676cm−1(s)、1660cm−1(s)、1617cm−1(s)、1407cm−1(s)、1316cm−1(m)、1224cm−1(m)、1186cm−1(m)、711cm−1(m)。
【0115】
より好ましくは、本発明による無水物および非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、より一層好ましくは、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の12以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、赤外線分光データを特徴とし得る。
3431cm−1(s)、3339cm−1(s)、3189cm−1(s)、3031cm−1(m)、2962cm−1(m)、2872cm−1(m)、1676cm−1(s)、1660cm−1(s)、1617cm−1(s)、1539cm−1(s)、1493cm−1(s)、1407cm−1(s)、1358cm−1(m)、1316cm−1(m)、1247cm−1(m)、1224cm−1(m)、1186cm−1(m)、994cm−1(w)、921cm−1(w)、711cm−1(m)、599cm−1(m)。
【0116】
括弧内に示される相対強度は、好ましくは次の通りに定義される:
*「s」=強(好ましくは透過率≦50%)、「m」=中(好ましくは50%<透過率≦70%)、「w」=弱(好ましくは透過率>70%)
IRまたはFT−IRスペクトルは、好ましくは、試料調製技術としてKBrペレットを使用して得られる。
【0117】
IR分光データは、好ましくはFT−IR分光法によって得られ、IR分光データまたはFT−IR分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.24章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。FT−IRスペクトルの計測には、好ましくはBrukerベクター22分光計が使用される。FT−IRスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0118】
本発明による無水物、とりわけ結晶形態A1のFT−IRスペクトルを、図5に示す。
【0119】
好ましくは、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、ラマン分光データを特徴とし得る。
3064cm−1(w)、2976cm−1(m)、2934cm−1(m)、2912cm−1(m)、2881cm−1(m)、1603cm−1(w)、1209cm−1(w)、1029cm−1(w)、1003cm−1(m)、852cm−1(w)。
【0120】
より好ましくは、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の12以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の18以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、ラマン分光データを特徴とし得る。
3064cm−1(w)、2976cm−1(m)、2934cm−1(m)、2912cm−1(m)、2881cm−1(m)、1677cm−1(w)、1648cm−1(w)、1603cm−1(w)、1584cm−1(w)、1465cm−1(w)、1407cm−1(w)、1314cm−1(w)、1242cm−1(w)、1209cm−1(w)、1129cm−1(w)、1029cm−1(w)、1003cm−1(m)、943cm−1(w)、901cm−1(w)、852cm−1(w)、623cm−1(w)、589cm−1(w)。
【0121】
括弧内に示される相対強度は、好ましくは次の通りに定義される:
「s」=強(好ましくは相対ラマン強度≧0.04)、「m」=中(好ましくは0.04>相対ラマン強度≧0.02)、「w」=弱(好ましくは相対ラマン強度<0.02)。
【0122】
ラマンまたはFT−ラマンスペクトルは、好ましくは、各固体物質用の試料ホルダーとしてアルミニウムカップを使用して得られる。
【0123】
ラマン分光データは、好ましくはFT−ラマン分光法によって得られ、ラマン分光データまたはFT−ラマン分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.48章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。FT−ラマンスペクトルの計測には、好ましくはBruker RFS100分光計が使用される。FT−ラマンスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0124】
本発明による無水物、とりわけ結晶形態A1のFT−ラマンスペクトルを、図6に示す。
【0125】
好ましくは、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、代替的にまたは付加的に、動的蒸気収着実験によって特徴付けできる。結果は、Rolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH. Weinheim 2006(9章:Water Vapour Sorptionおよびその中の参考文献)において記載されている通りの標準的技術によって得ることができる。水蒸気収着挙動は、最大98%相対湿度(rhまたはr.h.)の少ない水取り込みレベル(water uptake levels)を示し、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、非吸湿性の欧州薬局方基準として分類され得る。水和物への形成も変換も観察されない。結晶形態A1の水蒸気収着等温線(25℃)(SMS DVSイントリンシック)を、図7に示す。
【0126】
本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、上記で論じた有利な特性から選択される1つまたは複数の特性を示す。より具体的には、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、熱力学的に安定な非溶媒和形態および/または熱力学的安定形態であり、驚くべきことに、好ましくは懸濁液および湿潤材料を含むがこれらに限定されない水性溶媒の存在下、とりわけ塩水(懸濁液および湿潤材料等であるがこれらに限定されない)等の本質的に水性の系中、とりわけ、メタノールおよび/またはエタノールの不在下におけるそのような水性系中で、熱力学的に安定な形態であることが分かる。これに関連して、湿潤材料は、好ましくは、各無水物または非溶媒和物と、少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、とりわけ20重量%の各水性系との混合物である。
【0127】
より具体的には、本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、熱力学的に安定な非溶媒和形態および/または熱力学的安定形態であり、驚くべきことに、高い相対湿度の存在下でさえも熱力学的に安定な形態であることが分かる。
【0128】
さらに、本発明による無水物、とりわけ結晶形態A1は、吸湿性挙動の観点で、全相対湿度範囲(0〜98%)の全体にわたって結晶形態の物理的安定性を有する優位な特性を示し、かつ/または結晶化度および熱挙動が優れている。
【0129】
これは、処理(例えば、濾過による相分離、乾燥、摩砕、微粒子化)および保存のための優れた特性をもたらし、故に、とりわけ懸濁液の製剤に優位である。本発明による無水物または非溶媒和物、とりわけ結晶形態A1は、構造的に関係する不純物、イオン性化合物および残留溶媒の還元が容易に達成され得るため、式Iの化合物の精製に優位な特性を呈する。故に、精製は1ステップで達成され得、ここで、固体形態、例えば従来の先に公知のプロセスによる非晶質形態および/または他の非無水物多形結晶形態は、GMP標準に沿った純度にするためのはるかに大きい努力、例えば、3つ以上の後続精製手順を必要とする。
【0130】
式Iの化合物は、異なる溶媒を可変量および/または比率で、好ましくは比率で組み込んでおり、故に溶媒和物である疑似多形のクラスも形成する。これらの溶媒和物は、例えば、同様の単位セルを導く形態の指数付けを含む粉末X線回折データによって示される通り、構造的に密接に関係する。また、単結晶構造に基づき構造の、および粉末データに基づき構造解の選択例について論じる。最後に、この疑似多形クラスの特定の有益な特性についての議論を示す。以下に、式Iによる化合物の疑似多形形態について3つの好ましい例を記載する:
S1(好ましくは、メタノール−水溶媒和物および/またはメタノール溶媒和物とも称される)、
S2(好ましくは、エタノール−水溶媒和物および/またはエタノール溶媒和物とも称される)、および
S3(好ましくは、無水物および/または四水和物とも称される)。これらの好ましい例は、四溶媒和物としてさらに特徴付けされ得る。
【0131】
故に、先に定義した通りの格子定数ULP1を有する単位セルを有する固体結晶形態は、本明細書において、好ましくは溶媒和物として、より好ましくは四溶媒和物としてさらに特徴付けられる。溶媒和物および/または四溶媒和物は、好ましくは、本明細書において定義されている通りのS1、S2およびS3から選択される1つまたは複数の結晶形態を、ならびに好ましくはそれらの混合物も含む。
【0132】
結晶形態S1、S2および/またはS3は、好ましくは溶媒和物として、とりわけ四溶媒和物としてさらに特徴付けられる、すなわち、これらの形態は、好ましくは各単位セル中約化学量論量の溶媒分子を示し、これは、単位セル当たりおよび式Iによる化合物1分子当たり、最大約4個の溶媒分子である。
【0133】
これらの溶媒和物において、より好ましくはこれらの四溶媒和物において、溶媒分子は、好ましくは水およびアルコールの分子から選択され、より好ましくは、水、メタノールおよびエタノール、ならびにそれらの混合物から選択される。
【0134】
したがって、溶媒和物は、好ましくは、水和物、アルコール溶媒和物(つまりアルコレート)または水−アルコール混合溶媒和物として、より好ましくは、水和物、メタノール溶媒和物(つまりメタノレート)、エタノール溶媒和物(つまりエタノレート)、水−メタノール混合溶媒和物、水−エタノール混合溶媒和物または水−メタノール−エタノール混合溶媒和物としてさらに特徴付けされ得る。より具体的には、前記溶媒和物が溶媒の混合物から生成されるまたはそれらと接触している、例えば溶媒の混合物から再結晶されるまたはそれらで調節されるのであれば、混合溶媒和物を得ることができる。とりわけ好ましくは、水アルコール混合溶媒和物、とりわけ水メタノール混合溶媒和物、水エタノール混合溶媒和物および/または水−メタノール−エタノール混合溶媒和物をこのようにして得ることができる。加えて、1つの溶媒和物内の溶媒分子は、別の溶媒の溶媒分子と部分的にまたは完全に交換可能である。故に、溶媒和物、より好ましくは四溶媒和物、とりわけ結晶形態S1、S2およびS3は、いずれも固体結晶形態の特定クラスに属することが明らかである。
【0135】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、>210℃の融解/分解温度、より好ましくは217±5℃以上の融解/分解、とりわけ217±5℃の融解/分解を特徴とし得る。好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物について得られる、とりわけ結晶形態S3について得られる融解/分解温度は、<250℃である。
【0136】
本明細書において記載されている融解/分解温度および/または熱挙動は、好ましくは、DSC(示差走査熱量測定)およびTGA(熱重量分析)によって決定される。DSCおよび/もしくはTGA法、または概して熱分析法およびそれらを決定するのに適したデバイスは、当技術分野において、例えば、適切な標準的技術が記載されているEuropean Pharmacopeia第6版2.02.34章から、公知である。より好ましくは、融解/分解温度もしくは挙動および/または熱分析については、概して、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.34章において記載されている通り、Mettler Toledo DSC821および/またはMettler Toledo TGA851が使用される。
【0137】
熱分析を示すDSCおよびTGA計測(Mettler−Toledo DSC821、5K/分、窒素パージガス50ml/分;Mettler−Toledo TGA851、5K/分、窒素パージガス50ml/分)ならびに上記に示した融解/分解温度を、図23および図24に示す。
【0138】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの3つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの6つ以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0139】
【表10】
【0140】
またはより好ましくは
【0141】
【表11−1】
【0142】
【表11−2】
【0143】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは、下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの9つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの12以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって、特徴付けできる。
【0144】
【表12】
【0145】
またはより好ましくは
【0146】
【表13−1】
【0147】
【表13−2】
【0148】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは、下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの10以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの13以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0149】
【表14】
【0150】
またはより好ましくは
【0151】
【表15−1】
【0152】
【表15−2】
【0153】
図25は、結晶形態S3の粉末X線ディフラクトグラムを示す。
【0154】
粉末X線回折、より好ましくは粉末X線回折パターンは、好ましくは本明細書において記載されている通りに実施または決定され、とりわけ、European Pharmacopeia第6版2.9.33章において記載されている通りの標準的技術によって実施または決定され、かつ、より一層好ましくは、好ましくはStoe StadiP 611KL回折計において、パラメーターCu−Kα1放射線および/またはλ=1.5406Åで得られる。
【0155】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、単結晶X線構造データ、例えば、好ましくはグラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、好ましくは298K±5Kの温度でMoKα放射線を使用する回折計で、ならびに、より一層好ましくはグラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、約298KでMoKα放射線を使用する、Oxford Diffraction製のエクスカリバー回折計で得られた単結晶X線構造データによって特徴付けできる。
【0156】
得られた単結晶X線構造データによれば、本発明による式Iの化合物の四水和物、とりわけ結晶形態S3は、格子定数a=9.6Å、b=25.9Å、c=13.9Å(±0.1Å)を有する斜方晶系空間群P212121中で結晶化し、単位セル体積は、好ましくは3396(±10)Å3である。
【0157】
単結晶構造から、形態S3が四溶媒和物、より具体的には四水和物を表すことが明白である。
【0158】
単結晶X線構造を図26に描写する。前記単結晶X線構造データに基づくさらなる構造情報を、図26a、26bおよび26cに示す。
【0159】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の3つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の6つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、赤外線分光データを特徴とし得る。
3319cm−1(s)、3067cm−1(s)、2966cm−1(s)、1668cm−1(s)、1541cm−1(s)、1395cm−1(s)、704cm−1(m)。
【0160】
より好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の6つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、赤外線分光データを特徴とし得る。
3428cm−1(s)、3319cm−1(s)、3067cm−1(s)、2966cm−1(s)、2874cm−1(m)、1668cm−1(s)、1541cm−1(s)、1455cm−1(s)、1395cm−1(s)、1232cm−1(m)、704cm−1(m)。
【0161】
括弧内に示される相対強度は、好ましくは次の通りに定義される:
*「s」=強(好ましくは透過率≦50%)、「m」=中(好ましくは50%<透過率≦70%)、「w」=弱(好ましくは透過率>70%)。
【0162】
IRまたはFT−IRスペクトルは、好ましくは、試料調製技術としてKBrペレットを使用して得られる。
【0163】
IR分光データは、好ましくはFT−IR分光法によって得られ、IR分光データまたはFT−IR分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.24章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。FT−IRスペクトルの計測には、好ましくはBrukerベクター22分光計が使用される。FT−IRスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0164】
本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3のFT−IRスペクトルを、図27に示す。
【0165】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の4つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の7つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、ラマン分光データを特徴とし得る。
3069cm−1(m)、2931cm−1(s)、1666cm−1(m)、1607cm−1(w)、1443cm−1(w)、1339cm−1(w)、1205cm−1(w)、1004cm−1(s)、911cm−1(m)。
【0166】
より好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の12以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、ラマン分光データを特徴とし得る。
3069cm−1(m)、2931cm−1(s)、1666cm−1(m)、1607cm−1(w)、1585cm−1(w)、1443cm−1(w)、1339cm−1(w)、1205cm−1(w)、1122cm−1(w)、1033cm−1(w)、1004cm−1(s)、936cm−1(w)、911cm−1(m)、825cm−1(w)、624cm−1(w)、519cm−1(w)。
【0167】
括弧内に示される相対強度は、好ましくは次の通りに定義される:
「s」=強(好ましくは相対ラマン強度≧0.04)、「m」=中(好ましくは0.04>相対ラマン強度≧0.02)、「w」=弱(好ましくは相対ラマン強度<0.02)
ラマンまたはFT−ラマンスペクトルは、好ましくは、各固体物質用の試料ホルダーとしてアルミニウムカップを使用して得られる。
【0168】
ラマン分光データは、好ましくはFT−ラマン分光法によって得られ、ラマン分光データまたはFT−ラマン分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.24および/または2.02.48章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。FT−ラマンスペクトルの計測には、好ましくはBruker RFS100分光計が使用される。FT−ラマンスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0169】
本発明による四溶媒和物、とりわけ結晶形態S3のFT−ラマンスペクトルを、図28に示す。
【0170】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは本発明による四水和物、とりわけ結晶形態S3は、代替的にまたは付加的に、動的蒸気収着実験によって特徴付けできる。結果は、Rolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH. Weinheim 2006(9章:Water Vapour Sorptionおよびその中の参考文献)において記載されている通りの標準的技術によって得ることができる。
【0171】
水蒸気収着挙動は、初期乾燥ステップ(0%相対湿度(rh))内での水分子(およそ9重量%)の損失を示す。水吸着サイクル中に、上昇したrhで、格子中における水分子の集合が示され得る(およそ10重量%)。第二の脱着サイクルにおいてこの量の水の損失が示され得る。形態S3の水蒸気収着等温線(25℃)を図29に示す。
【0172】
全体として、本明細書において示される熱分析データは、四水和物構造に昇温で完全脱水が観察される(四水和物について算出される含水量が10.9wt%である)ことをTGAにおいて立証している。水蒸気収着データは、25℃で乾燥条件(0%rh)下であっても約9wt%の水しか分離されないことを示し、好ましくは構造の完全脱水が発生しないことを示している。結晶形態S3の水蒸気収着等温線(25℃)(SMS DVSイントリンシック)を図29に示す。
【0173】
驚くべきことに、本発明による水和物内の水分子、とりわけ本発明による四水和物内の水分子は、アルコール分子によって、好ましくは、1から6個の炭素原子を有するモノオール、ジオールまたはトリオールからなる群から選択されるアルコール分子、より好ましくは1から4個の炭素原子を有するモノオール、とりわけメタノールおよびエタノール、ならびにそれらの混合物からなる群から選択されるモノオールによって、部分的にまたは完全に置換され得ることが分かった。
【0174】
動的蒸気収着/脱着実験、単結晶X線実験および/または粉末X線実験等の実験方法は、例えば結晶形態S3と特徴付けられる四水和物から出発して、前記四水和物の水分子は、前記四水和物から部分的におよび/もしくはほぼ完全に除去され得、かつ/またはメタノールおよび/もしくはエタノールによって置換され得ることを示す。
【0175】
例えば、有機溶媒および/または水の蒸気、好ましくは、本明細書において定義されている通りの1種もしくは複数のアルコール、および/または水から選択される有機溶媒の蒸気、とりわけメタノール、エタノールおよび/または水の蒸気を好ましくは使用する動的蒸気収着/脱着実験は、前記四水和物からの水分子が、アルコール分子、とりわけメタノールおよび/またはエタノール分子によって、潜在的にテトラアルコール溶媒和物またはアルコール−水混合溶媒和物もしくは四溶媒和物が形成されるまで連続的に置換され得ることを示す。
【0176】
別の例として、
異なる水およびアルコール分圧を表す水−アルコール混合雰囲気、好ましくは水−エタノール雰囲気下における、
a)式Iによる化合物の非晶質材料、または
b)水和物形態
の調節は、両方の事例において、使用される各条件に応じて、式Iによる化合物1分子当たり最大4分子の水または最大2分子のエタノールを有し異なる化学量論を呈する結晶性溶媒和物、例えば、四水和物S3(4分子の水)またはジエタノレートS2(2分子のエタノール、例えば図31を参照))を生じた。水の定量化についてカールフィッシャー滴定によって、およびエタノールの定量化についてHS−GCによって測定した際の化学量論を、図30に描写する。該図表には、式Iによる化合物1分子当たり4分子を超える水を有する化学量論(stochiometries)を表す点も描写されている。四水和物の結晶格子中には4分子を超える水のためのスペースはないため、過剰量の4分子を超える水は吸着した水分を表す。
【0177】
結果(例13も参照)は、エタノール蒸気圧が上昇するとともに、水和物形態S3から水−エタノール混合または水なしエタノール溶媒和形態S2への流動転移があることを示す。すべての溶媒和物(水和物を含む)は同様の格子定数を有し、該定数は、エタノール分子の集合とともにわずかに増加するに過ぎない。
【0178】
また別の例として、メタノール雰囲気下における式Iによる化合物の非晶質材料または水和物形態の調節は、式Iによる化合物1分子当たり2分子のメタノールを有する結晶性溶媒和物を生じた。
【0179】
このようにして、最大約100%の水(式Iによる化合物1分子当たり4分子の水を指す、すなわち四水和物を指す)と最大約100%のアルコール(式Iによる化合物1分子当たり4分子のアルコールを指す、すなわちテトラアルコレートを指す)の溶媒含有量との間の溶媒含有量を有する四溶媒和物、好ましくは間の中間体として特徴付けされ得る結晶形態が取得可能である。
【0180】
結果については上記および/または下記でさらに論じられており、とりわけ下記に示す表1および2において論じられている。例えば、後にジヒドレート−ジメタノレートおよび結晶形態S1として、ならびにジヒドレート−ジエタノレートおよび結晶形態S2として詳細に特徴付けられる、ジヒドレート−ジアルコレートの混合である準安定性の結晶性溶媒和物(式Iによる化合物1分子当たり2分子の水および2分子のアルコールを指す)をそれぞれ得ることができ、上記および/または下記で詳細に論じられている。これらの化学量論は、本明細書において記載されている動的蒸気収着実験から導出され、かつ/または外挿されたものである。新しいX線実験は、準安定性の結晶性溶媒和物が、後にジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノメタノレートおよび/または結晶形態S1の別の具現として、ならびにジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレートおよび/または結晶形態S2の別の具現として詳細に特徴付けられるこれらの非化学量論クラスの疑似多形のさらなる具現としての、ジヒドレート−アルコレート混合またはより具体的にはジヒドレート−モノアルコレート混合(式Iによる化合物1分子当たり2分子の水および1分子のアルコールを指す)としても存在し得、それぞれ得ることができることを証明するものであり、上記および/または下記で詳細に論じられている。
【0181】
これに関連して、下記に示す表1および2ならびにそれに関係する項を特に参照する。
【0182】
以下の表は、四水和物からテトラアルコレートまでの範囲にある四溶媒和物について各算出される重量含水量および/またはメタノール含有量を示し、この算出においては、1分子の式Iによる化合物および前記四溶媒和物中の計4分子の各溶媒または溶媒混合物に基づき、溶媒和物化学量論における整数ステップを使用した。これは、好ましくは、以下の式によって表現され得る:
[シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)]・[アルコール]x・[H2O](y)(ここで、0≦x≦4かつ0≦y≦4)、
より具体的には:
[シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)]・[アルコール]x・[H2O](4−x)ここで、0≦x≦4)(四水和物とテトラアルコレートとの間の相互変換について)
または
[シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)]・[アルコール]x・[H2O](y)ここで、0≦y≦4かつx≦2−0.5*yかつx≦1)(四水和物とジヒドレート−アルコレート、より具体的にはジヒドレート−モノアルコレートとの間の相互変換について)。(「*」=乗算記号)。
【0183】
【表16】
【0184】
【表17】
【0185】
本明細書においてさらに詳細に論じられる各動的蒸気収着実験において、四水和物から出発し、ジヒドレート−ジメタノレート/結晶形態S1について98%相対飽和のメタノール蒸気を25℃で使用して、9%の質量増加が得られた。これは、テトラメタノレートについて上記で示された結果(算出値108.5%、すなわち8.5%の質量増加)と十分一致している。
【0186】
本明細書においてさらに詳細に論じられる各動的蒸気収着実験において、四水和物から出発し、ジヒドレート−ジエタノレート/結晶形態S2について98%相対飽和のエタノール蒸気を25℃で使用して、17%の質量増加が得られた。これは、テトラエタノレートについて上記で示された結果(算出値117.0%、すなわち17.0%の質量増加)と十分一致している。
【0187】
上記および/または下記に示すように、本発明による四溶媒和物は、好ましくは変換可能であり、より好ましくは、本質的に純粋な四水和物と本質的に純粋なテトラアルコレート、および潜在的に間の中間体すべて、ならびに、好ましくは
上記および/または下記で詳細に論じられているジヒドレート−ジアルコレート混合、および
ジヒドレート−アルコレートまたはジヒドレート−モノアルコレート(式[シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)]・[アルコール]x・[H2O](y)ここで、0≦y≦4かつx≦2−0.5*yかつx≦1によって記載される通り)、より具体的にはS1および/またはS2によって例示される、好ましくはそれらの脱溶媒和物(より低い水および/またはアルコール含有量を呈するもの)との間で変換可能である。
【0188】
それらの四溶媒和物は、極めて類似する構造的特色、例えば結晶学的パラメーター、分析データおよび/または物理学的特性を有し、加えて変換可能であるため、四溶媒和物は、本発明による結晶形態および/または本発明による固体物質のクラスまたはサブクラスを形成することが明らかである。
【0189】
したがって、四溶媒和物、好ましくは本明細書において特徴付けされる通りの四溶媒和物が、本発明の好ましい主題である。
【0190】
明瞭化のために、3当量以上の水を含有し(すなわち、各結晶形態に含有されている溶媒の総量に基づき、>75モル%の含水量を有する)、かつ1当量未満の水以外の1種または複数の溶媒、好ましくは1当量未満の1種または複数の、好ましくはメタノールおよびエタノールから選択されるアルコールを含有する四溶媒和物は、好ましくは、水和物、本発明による水和物、または水和物−四溶媒和物と称される。
【0191】
明瞭化のために、4当量近くの水を含有する(すなわち、各結晶形態に含有されている溶媒の総量に基づき、>90モル%、好ましくは>95モル%の含水量を有する)四溶媒和物は、好ましくは、四水和物または本発明による四水和物と称される。
【0192】
明瞭化のために、1または複数当量のアルコールを含有する(すなわち、各結晶形態に含有されている溶媒の総量に基づき、25モル%以上のアルコール含有量を有する)四溶媒和物は、好ましくは、アルコレート、本発明によるアルコレート、またはアルコレート−四溶媒和物と称される。そのようなアルコレートまたはアルコレート−四溶媒和物の例は、本発明によるメタノレートおよび/もしくはエタノレート(またはメタノレート−四溶媒和物および/もしくはエタノレート−四溶媒和物)である。
【0193】
明瞭化のために、4当量近くの1種または複数のアルコールを含有する(すなわち、各結晶形態に含有されている溶媒の総量に基づき、>90モル%、好ましくは>95モル%の総アルコール含有量を有する)四溶媒和物は、好ましくは、テトラアルコレートまたは本発明によるテトラアルコレートと称される。そのようなテトラアルコレートの例は、テトラメタノレートおよび/もしくはテトラエタノレート、または本発明によるテトラメタノレートおよび/もしくはテトラエタノレートである。
【0194】
アルコール溶媒和物、アルコレート−四溶媒和物もしくはそれらの脱溶媒和物として記載され得、または、より好ましくは、ジヒドレート−ジアルコレート、ジヒドレート−アルコレートもしくはジヒドレート−モノアルコレートとして記載され得る2つ以上の四溶媒和物について下記に記載する。
【0195】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、>205℃の融解/分解温度、より好ましくは210±5℃以上の融解/分解、とりわけ210±5℃の融解/分解を特徴とし得る。好ましくは、本発明による四溶媒和物について得られた、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物について得られた、とりわけ結晶形態S1について得られた前記融解/分解温度は、<250℃である。
【0196】
本明細書において記載されている融解/分解温度および/または熱挙動は、好ましくは、DSC(示差走査熱量測定)およびTGA(熱重量分析)によって決定される。DSCおよび/もしくはTGA法、または概して熱分析法およびそれらを決定するのに適したデバイスは、当技術分野において、例えば、適切な標準的技術が記載されているEuropean Pharmacopeia第6版2.02.34章から、公知である。より好ましくは、融解/分解温度もしくは挙動および/または熱分析については、概して、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.34章において記載されている通り、Mettler Toledo DSC821および/またはMettler Toledo TGA851が使用される。
【0197】
熱分析を示すDSCおよびTGA計測(Mettler−Toledo DSC821、5K/分、窒素パージガス50ml/分;Mettler−Toledo TGA851、5K/分、窒素パージガス50ml/分)ならびに上記に示した融解/分解温度を、図8および図9に示す。
【0198】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの6つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの9つ以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0199】
【表18】
【0200】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの8つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの12以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0201】
【表19】
【0202】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの10以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの12以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0203】
【表20】
【0204】
結晶形態S1の粉末X線ディフラクトグラムを、図10に示す。
【0205】
PXRDパターンは、以下の単斜晶系単位セル(空間群P21)で首尾よく指数付けできる。
a=9.4Å、b=25.9Å、c=14.1Å(±0.1Å)、β=91.2°(±0.1)、V約3430(±10)Å3。
【0206】
粉末X線回折、より好ましくは粉末X線回折パターンは、好ましくは本明細書において記載されている通りに実施または決定され、とりわけEuropean Pharmacopeia第6版2.9.33章において記載されている通りの標準的技術によって実施または決定され、かつ、より一層好ましくは、好ましくはStoe StadiP 611KL回折計において、パラメーターCu−Kα1放射線および/またはλ=1.5406Åで得られる。
【0207】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、単結晶X線構造データ、例えば、好ましくはグラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、好ましくは298K±5Kの温度でMoKα放射線を使用する回折計で、ならびに、より一層好ましくはグラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、約298KでMoKα放射線を使用する、Oxford Diffraction製のエクスカリバー回折計で得られた単結晶X線構造データによって特徴付けできる。
【0208】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の3つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の6つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、赤外線分光データを特徴とし得る。
3311cm−1(s)、2965cm−1(m)、2875cm−1(w)、1668cm−1(s)、1542cm−1(s)、1396cm−1(m)、1028cm−1(w)、707cm−1(m)。
【0209】
より好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の6つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、赤外線分光データを特徴とし得る。
3311cm−1(s)、3067cm−1(m)、2965cm−1(m)、2937cm−1(m)、2875cm−1(w)、1668cm−1(s)、1542cm−1(s)、1456cm−1(m)、1396cm−1(m)、1028cm−1(w)、707cm−1(m)。
【0210】
括弧内に示される相対強度は、好ましくは次の通りに定義される:
*「s」=強(好ましくは透過率≦50%)、「m」=中(好ましくは50%<透過率≦70%)、「w」=弱(好ましくは透過率>70%)。
【0211】
IRまたはFT−IRスペクトルは、好ましくは、試料調製技術としてKBrペレットを使用して得られる。
【0212】
IR分光データは、好ましくはFT−IR分光法によって得られ、IR分光データまたはFT−IR分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.24章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。FT−IRスペクトルの計測には、好ましくはBrukerベクター22分光計が使用される。FT−IRスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0213】
本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1のFT−IRスペクトルを、図11に示す。
【0214】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の5つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の8つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、ラマン分光データを特徴とし得る。
3067cm−1(w)、2936cm−1(s)、1668cm−1(m)、1606cm−1(w)、1446cm−1(w)、1338cm−1(w)、1203cm−1(w)、1033cm−1(w)、1004cm−1(s)、904cm−1(m)、624cm−1(w)。
【0215】
より好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の12以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、ラマン分光データを特徴とし得る。
3067cm−1(w)、2936cm−1(s)、1668cm−1(m)、1606cm−1(w)、1585cm−1(w)、1446cm−1(w)、1338cm−1(w)、1203cm−1(w)、1123cm−1(w)、1033cm−1(w)、1004cm−1(s)、904cm−1(m)、824cm−1(w)、624cm−1(w)、523cm−1(w)。
【0216】
括弧内に示される相対強度は、好ましくは次の通りに定義される:
「s」=強(好ましくは相対ラマン強度≧0.04)、「m」=中(好ましくは0.04>相対ラマン強度≧0.02)、「w」=弱(好ましくは相対ラマン強度<0.02)。
【0217】
ラマンまたはFT−ラマンスペクトルは、好ましくは、各固体物質用の試料ホルダーとしてアルミニウムカップを使用して得られる。
【0218】
ラマン分光データは、好ましくはFT−ラマン分光法によって得られ、ラマン分光データまたはFT−ラマン分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.48章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。FT−ラマンスペクトルの計測には、好ましくはBruker RFS100分光計が使用される。FT−ラマンスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0219】
本発明による四溶媒和物、とりわけ結晶形態S1のFT−ラマンスペクトルを、図12に示す。
【0220】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1は、代替的にまたは付加的に、水蒸気および/またはメタノール蒸気を使用する動的蒸気実験によって特徴付けできる。結果は、Rolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH.Weinheim 2006(9章:Water Vapour Sorptionおよびその中の参考文献)において記載されている通りの標準的技術によって得ることができる。
【0221】
本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジメタノレート、ジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S1の水蒸気収着挙動は、第一の脱着サイクルにおいて約8wt%の質量損失(メタノール蒸気収着実験において観察されるメタノール質量増加よりもわずかに低い)を示す。水蒸気吸着時、上昇したrhで約8wt%の最大重量増加とともに、格子中における水分子の集合が観察される。第二の脱着サイクルにおいては、約9.9wt%の総質量損失が観察される。式Iの化合物のジヒドレートジ−メタノレートについて、算出されるメタノール含有量は9.3wt%に等しい。形態S1は、100%メタノール蒸気の雰囲気において熱力学的に安定な形態であることが分かる。結晶形態S1の水蒸気収着等温線(25℃)(SMS DVSイントリンシック)を、図13に示す。水和物形態から形態S1のメタノール蒸気収着等温線(25℃)(SMS DVSアドバンテージ)を、図14に示す。
【0222】
故に、結晶形態S1は、例えばメタノール蒸気収着を介して、好ましくは、本発明による水和物、とりわけ本発明による四水和物、すなわち結晶形態S3等の水和物構造から出発し、メタノール蒸気収着を介して得ることができるジヒドレート−メタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジメタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物から好ましくは選択される、結晶性メタノール溶媒和形態または水/メタノール混合溶媒和形態である。図13に示される通りかつ上記で論じた通りのメタノール蒸気収着曲線から、メタノール分圧を上昇させると、約9wt%のメタノールが試料によって取り込まれることが分かる。
【0223】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、>205℃の融解/分解温度、より好ましくは210±5℃以上の融解/分解、とりわけ210±5℃の融解/分解を特徴とし得る。好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物について得られた、とりわけ結晶形態S2について得られた前記融解/分解温度は、<250℃である。
【0224】
本明細書において記載されている融解/分解温度および/または熱挙動は、好ましくは、DSC(示差走査熱量測定)およびTGA(熱重量分析)によって決定される。DSCおよび/もしくはTGA法、または概して熱分析法およびそれらを決定するのに適したデバイスは、当技術分野において、例えば、適切な標準的技術が記載されているEuropean Pharmacopeia第6版2.02.34章から公知である。より好ましくは、融解/分解温度もしくは挙動および/または熱分析については、概して、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.34章において記載されている通り、Mettler Toledo DSC821および/またはMettler Toledo TGA851が使用される。
【0225】
熱分析を示すDSCおよびTGA計測(Mettler−Toledo DSC821、5K/分、窒素パージガス50ml/分;Mettler−Toledo TGA851、5K/分、窒素パージガス50ml/分)ならびに上記に示した融解/分解温度を、図15および図16に示す。
【0226】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの3つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの5つ以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0227】
【表21】
【0228】
またはより好ましくは
【0229】
【表22】
【0230】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの4つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの6つ以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0231】
【表23】
【0232】
またはより好ましくは
【0233】
【表24−1】
【0234】
【表24−2】
【0235】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの10以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの12以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0236】
【表25−1】
【0237】
【表25−2】
【0238】
またはより好ましくは
【0239】
【表26−1】
【0240】
【表26−2】
【0241】
結晶形態S2の粉末X線ディフラクトグラムを、図17に示す。
【0242】
PXRDパターンは、以下の斜方晶系単位セル(空間群P212121)で首尾よく指数付けできる。
a=9.3Å、b=26.6Å、c=14.7Å(±0.1Å)、V約3600(±10)Å3。
【0243】
粉末X線回折、より好ましくは粉末X線回折パターンは、好ましくは本明細書において記載されている通りに実施または決定され、とりわけ、European Pharmacopeia第6版2.9.33章において記載されている通りの標準的技術によって実施または決定され、かつ、より一層好ましくは、好ましくはStoe StadiP 611KL回折計において、パラメーターCu−Kα1放射線および/またはλ=1.5406Åで得られる。
【0244】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、単結晶X線構造データ、例えば、好ましくはグラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、好ましくは298K±5Kの温度でMoKα放射線を使用する回折計で、ならびに、より一層好ましくはグラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、約298KでMoKα放射線を使用する、Oxford Diffraction製のエクスカリバー回折計で得られた単結晶X線構造データによって特徴付けできる。
【0245】
得られた単結晶X線構造データによれば、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、格子定数a=9.3Å、b=26.3Å、c=13.7Å(±0.1Å)を有する斜方晶系空間群P212121中で結晶化し、単位セル体積は好ましくは3351(±10)Å3である。
【0246】
単結晶構造から、形態S2が、本発明による四溶媒和物、より具体的にはエタノール−水混合溶媒和物、より一層具体的にはジヒドレート−モノエタノレートを表すことが明白である。
【0247】
単結晶X線構造を図32に描写する。
【0248】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の3つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の6つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、赤外線分光データを特徴とし得る。
3306cm−1(s)、2968cm−1(m)、1668cm−1(s)、1546cm−1(s)、1395cm−1(m)、1223cm−1(w)、1049cm−1(w)、705cm−1(w)。
【0249】
より好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の6つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、赤外線分光データを特徴とし得る。
3306cm−1(s)、2968cm−1(m)、2872cm−1(m)、1668cm−1(s)、1546cm−1(s)、1452cm−1(w)、1395cm−1(m)、1223cm−1(w)、1086cm−1(w)、1049cm−1(w)、746cm−1(w)、705cm−1(w)。
【0250】
括弧内に示される相対強度は、好ましくは次の通りに定義される:
*「s」=強(好ましくは透過率≦50%)、「m」=中(好ましくは50%<透過率≦70%)、「w」=弱(好ましくは透過率>70%)。
【0251】
IRまたはFT−IRスペクトルは、好ましくは、試料調製技術としてKBrペレットを使用して得られる。
【0252】
IR分光データは、好ましくはFT−IR分光法によって得られ、IR分光データまたはFT−IR分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.24章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。FT−IRスペクトルの計測には、好ましくはBrukerベクター22分光計が使用される。FT−IRスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0253】
本発明による四溶媒和物、とりわけ結晶形態S2のFT−IRスペクトルを、図18に示す。
【0254】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の5つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の8つ以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、ラマン分光データを特徴とし得る。
3068cm−1(w)、2934cm−1(s)、1668cm−1(w)、1606cm−1(w)、1449cm−1(w)、1337cm−1(w)、1204cm−1(w)、1120cm−1(w)、1004cm−1(m)、904cm−1(w)、825cm−1(w)、624cm−1(w)、521cm−1(w)。
【0255】
より好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、好ましくは括弧内に示される相対強度と一緒に、下記に示すバンド位置(±2cm−1)の1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の9つ以上を含む、より一層好ましくは下記に示すバンド位置(±2cm−1)の12以上を含む、とりわけ下記に示すバンド位置(±2cm−1)のすべてを含む、ラマン分光データを特徴とし得る。
3068cm−1(w)、2934cm−1(s)、1668cm−1(w)、1606cm−1(w)、1586cm−1(w)、1449cm−1(w)、1337cm−1(w)、1204cm−1(w)、1120cm−1(w)、1033cm−1(w)、1004cm−1(m)、904cm−1(w)、825cm−1(w)、624cm−1(w)、521cm−1(w)。
【0256】
括弧内に示される相対強度は、好ましくは次の通りに定義される:
「s」=強(好ましくは相対ラマン強度≧0.04)、「m」=中(好ましくは0.04>相対ラマン強度≧0.02)、「w」=弱(好ましくは相対ラマン強度<0.02)。
【0257】
ラマンまたはFT−ラマンスペクトルは、好ましくは、各固体物質用の試料ホルダーとしてアルミニウムカップを使用して得られる。
【0258】
ラマン分光データは、好ましくはFT−ラマン分光法によって得られ、ラマン分光データまたはFT−ラマン分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.48章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。FT−ラマンスペクトルの計測には、好ましくはBruker RFS100分光計が使用される。FT−ラマンスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0259】
本発明による四水和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2のFT−ラマンスペクトルを、図19に示す。
【0260】
好ましくは、本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2は、代替的にまたは付加的に、水蒸気および/またはメタノール蒸気を使用する動的蒸気実験によって特徴付けできる。結果は、Rolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH. Weinheim 2006(9章:Water Vapour Sorptionおよびその中の参考文献)において記載されている通りの標準的技術によって得ることができる。
【0261】
本発明による四溶媒和物、より好ましくは、ジヒドレート−ジエタノレート、ジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物、とりわけ結晶形態S2の水蒸気収着挙動は、第一の脱着サイクルにおいて約6.5wt%の質量損失(エタノール蒸気収着実験において観察されるエタノール質量増加よりも低い)を示す。水蒸気吸着時、上昇したrhで約6.4wt%の最大重量増加とともに、格子中における水分子の集合が観察される。第二の脱着サイクルにおいては、約9.2wt%の総質量損失が観察される。式Iの化合物のジヒドレートジ−エタノレートについて、算出されるエタノール含有量は12.5wt%に等しい。形態S2は、100%エタノール蒸気の雰囲気において熱力学的に安定な形態であることが分かる。結晶形態S2の水蒸気収着等温線(25℃)(SMS DVSイントリンシック)を、図20に示す。水和物形態から形態S2のエタノール蒸気収着等温線(25℃)(SMS DVSアドバンテージ)を、図21に示す。
【0262】
故に、結晶形態S2は、例えばエタノール蒸気収着を介して、好ましくは本発明による水和物、とりわけ本発明による四水和物、すなわち結晶形態S3等の水和物構造から出発し、エタノール蒸気収着を介して得ることができるジヒドレート−エタノレート、ジヒドレート−モノエタノレート、ジエタノレートおよび/またはそれらの脱溶媒和物から好ましくは選択される、結晶性エタノール溶媒和形態または水/エタノール混合溶媒和形態である。図21に示される通りかつ上記で論じた通りのエタノール蒸気収着曲線から、エタノール分圧を上昇させると、約17wt%のエタノールが試料によって取り込まれることが分かる。
【0263】
本明細書において示され論じられているデータから分かるように、溶媒和物、とりわけ式Iの化合物の四溶媒和物は、同じ構造型に基づいて、非常に類似する物理学的特性を有し、かつ容易に変換可能な、好ましくは潜在的にすべての転移形態が導出可能であり、とりわけ本明細書において記載されている疑似多形形態間のすべての転移形態が潜在的に導出可能である、新規な結晶形態のクラス(さらに疑似多形形態または略してPPとも命名されている)を形成する。
【0264】
加えて、構造型の類似性は、図22において示される3つの選択された疑似多形(pseudopolymophs)S1、S2およびS3のPXRDパターンの多重プロットによって示されている。3つの選択された疑似多形はすべて、極めて類似するPXRDパターンを呈し、その上、メタノールまたはエタノールによる水の置き換えが単位セルのわずかな膨張を、故に単位セル体積のわずかな増加を導くため、基本的に同じ単位セルを導くことが分かる。溶媒のモル体積から予想される通り、これは、メタノール溶媒和物についてよりもエタノール溶媒和物についてより顕著である。
【0265】
アルコール、好ましくはメタノールおよび/もしくはエタノール、ならびに/または異なる濃度もしくは分圧で存在する水の存在下において、溶媒和物、とりわけ本発明による四溶媒和物を含む疑似多形クラス内での相互変換は、容易に発生する。アルコール、好ましくはメタノールおよび/またはエタノールは製造プロセスにおいて有用な溶媒であるため、疑似多形の利用は、好ましくは、良好な結晶化度と合わせて有利に高い溶解度を呈する結晶性固体状態変態で式Iの化合物を得るために有益である。
【0266】
疑似多形クラスまたは系内の溶媒和物、とりわけ四溶媒和物は、結晶性であり、好ましくは、シレンジタイドホスト構造の損失なく、前述の非晶質固体物質と比較して有利な固体状態安定性を呈する。本明細書において記載されている前記クラスの疑似多形形態は、とりわけ水性媒体中において驚くほど高い溶解度を呈し、このことが、該形態を液体製剤の調製にとりわけ有用なものとしている。加えて、前記クラスの疑似多形形態は、既に公知の非晶質材料と比較して、有利に低減した吸湿性を示す。
異なる溶媒中における四水和物形態S3の溶解度:
【0267】
【表27】
【0268】
吸湿性の低減、良好な溶解度および良好な結晶化度の組合せは、非晶質相と比較して優位な特性を導く。比較において、例えば非晶質固体物質の極めて高い吸湿性および低い安定性により、非晶質材料の精製、取扱および処理は極めて困難である。
【0269】
さらに、本発明による疑似多形形態ならびに/または無水物もしくは非溶媒和物は、非晶質相と比較して改良された物理的および/または化学的安定性を示し、好ましくは、例えば加水分解によって、保存中における分解生成物の形成低減を導く。本発明による固体物質、とりわけ本発明による結晶形態の、この加水分解安定性の改良は、先行技術の非晶質材料中に通常存在する微量のイオン性不純物の低減によって引き起こされると考えられている。
【0270】
結果として、本明細書において論じられているすべての要因は、本発明による固体物質、本発明による結晶形態、とりわけ本発明による溶媒和物および/または無水物もしくは非溶媒和物の、有利に改良された固体状態安定性の原因になると考えられている。
【0271】
加えて、本明細書において論じられているすべての要因は、例えばより高い熱安定性および/または保存安定性によってより長い保存期間を導く、本発明による固体物質、好ましくは本発明による結晶形態、とりわけ本発明による溶媒和物および/または無水物もしくは非溶媒和物を含有する本発明による薬剤の、有利に改良された安定性の原因になると考えられている。
【0272】
本発明の好ましい主題は、障害の治療のための、上記および/または下記の固体物質である。
【0273】
これに関連して、障害は、好ましくは、癌性障害、血管新生または血管新生障害、自己免疫障害、炎症性障害および眼障害からなる群から、より好ましくは、脳腫瘍、肺癌、頭頸部癌、乳癌および前立腺癌、ならびにそれらの転移、関節炎、関節リウマチ、乾癬、網膜症、糖尿病性網膜症、アテローム性動脈硬化症、黄斑変性症ならびに加齢性黄斑変性症からなる群から選択される。
【0274】
とりわけ好ましいのは、癌性障害から選択される障害の治療のための、上記および/または下記の固体物質である。
【0275】
とりわけ好ましいのは、癌性障害の治療のための、上記および/または下記の固体物質であり、ここで、該癌性障害は、脳腫瘍、肺癌、頭頸部癌、乳癌および前立腺癌、ならびにそれらの転移からなる群から選択される。
【0276】
本発明の好ましい主題は、患者における癌性障害を治療する方法であって、前記患者に、上記および/または下記の固体物質を投与するステップを含む方法である。
【0277】
とりわけ好ましいのは、癌性障害が、上記の障害の群の1つまたは複数から選択される、上記の通りの方法である。
【0278】
本発明の好ましい主題は、障害の治療用薬剤の製造のための、本発明による固体物質の使用である。好ましくは、該障害は上記障害の群の1つまたは複数から選択される。
【0279】
故に、本発明の好ましい主題は、障害、好ましくは本明細書において記載されている通りの障害の治療用薬剤の製造のための、1つまたは複数の本発明による結晶形態から本質的になる、またはそれらからなる、固体物質の使用である。
【0280】
本発明のより一層好ましい主題は、障害、好ましくは本明細書において記載されている通りの障害の治療用薬剤の製造のための、結晶形態A1、結晶形態S1、結晶形態S2および結晶形態S3、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される1つまたは複数の結晶形態から本質的になる、またはそれらからなる、固体物質の使用である。
【0281】
本発明のとりわけ好ましい主題は、障害、好ましくは本明細書において記載されている通りの障害の治療用薬剤の製造のための、結晶形態A1もしくは結晶形態S3、またはそれらの混合物から本質的になる、またはそれらからなる、固体物質の使用である。
【0282】
驚くべきことに、本発明による固体物質、とりわけ1つまたは複数の本発明による結晶形態は、式Iによる化合物を、溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と接触させることによって調製できる。
【0283】
故に、本発明の好ましい主題は、本発明による固体物質の調製または製造のための、とりわけ本発明による結晶形態の1つまたは複数の調製または製造のためのプロセスであって、式Iによる化合物を、溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と接触させるステップと、前記接触させるステップによって得られた本発明による固体物質を、前記溶媒または溶媒混合物から単離するステップとを含むプロセスである。
【0284】
前記溶媒または溶媒からの前記単離は、好ましくは、
i)本発明による固体物質の、前記溶媒または溶媒混合物からの結晶化および/または析出、ならびに/あるいは
ii)好ましくは濾過もしくは遠心分離等の物理的手段によって、または沈降および/もしくはデカントによって、前記溶媒から本発明による固体物質を分離すること
によって達成される。
【0285】
しかしながら、固体/流体分離を達成するための複数の分離技術が当技術分野において公知である。好ましくは、それらのいずれか1つが前記分離に首尾よく適用され得る。
【0286】
好ましくは、本発明による固体物質、とりわけ1つまたは複数の本発明による結晶形態は、本発明による結晶形態の1つまたは複数が本質的にない、または好ましくはそれらがない、式Iによる化合物の固体物質から出発し、次いでそれを、溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と接触させることによって調製できる。
【0287】
代替として、好ましくは、本発明による固体物質、とりわけ1つまたは複数の本発明による結晶形態は、本発明による結晶形態の1つまたは複数が本質的にない、または好ましくはそれらがない、式Iによる化合物の溶液から出発し、次いでそれを、溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と接触させること、あるいは、本発明による結晶形態の1つまたは複数が本質的にない、または好ましくはそれらがない、前記式Iによる化合物の溶液を、前記溶媒または溶媒混合物、好ましくは前記極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物中に移動させることによって調製できる。
【0288】
概して、本発明による固体形態および/または本発明による結晶形態の1つもしくは複数を得るためには、前記溶媒または溶媒混合物、好ましくは前記極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と接触させること、あるいは前記溶媒または溶媒混合物、好ましくは前記極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物との接触、続いて単離ステップを行い、ここで、本発明による固体物質および/または本発明による結晶形態の1つまたは複数は、固体状態で得られる。
【0289】
これに関連して、接触させることまたは接触は、好ましくは、「の存在下にある」等の最も広い意味で接触していることを意味する。したがって、前記溶媒または溶媒混合物と接触させることまたは接触の例は、前記溶媒または溶媒混合物に溶解するまたは部分的に溶解すること、前記溶媒または溶媒混合物に懸濁させること、前記溶媒または溶媒混合物の存在下で撹拌すること、前記溶媒または溶媒混合物を用いてまたはその存在下で粉砕すること、前記溶媒または溶媒混合物の存在下で静置させること、前記溶媒または溶媒混合物の存在下で加熱すること、前記溶媒または溶媒混合物の存在下で冷却すること、前記溶媒または溶媒混合物から結晶化または再結晶化させること、および/あるいは前記溶媒または溶媒混合物から析出させることを含むがこれらに限定されない。
【0290】
これに関連して、接触させることまたは接触の好ましい手法は、好ましくは、前記溶媒または溶媒混合物に溶解するまたは部分的に溶解すること、前記溶媒または溶媒混合物の存在下で撹拌すること、前記溶媒または溶媒混合物を用いてまたはその存在下で粉砕すること、前記溶媒または溶媒混合物の存在下で加熱または冷却、好ましくは加熱すること、前記溶媒または溶媒混合物から結晶化または再結晶化させること、および/あるいは前記溶媒または溶媒混合物から析出させることからなる群から選択される。
【0291】
これに関連して、接触させることのとりわけ好ましい手法は、式Iの化合物および/またはその塩の出発材料を、(第一の)極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物に溶解する、本質的に溶解するまたは懸濁させること、好ましくは、続いて、好ましくは本発明による固体物質である、前記溶媒または溶媒混合物から形成された生成物の再結晶化、結晶化および/または析出を含む。好ましくは、形成された生成物の再結晶化、結晶化および/または析出は、冷却、ならびに/あるいは、さらなる(または第二の)溶媒または溶媒混合物、好ましくは異なる極性を有する、より好ましくはその中で接触が開始された(第一の)溶媒または溶媒混合物よりも低い極性を有する、さらなる溶媒または溶媒混合物の添加によって、誘発または促進される。
【0292】
これに関連して、接触させることの別のとりわけ好ましい手法は、上記および/または下記の式Iの化合物の出発材料と極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物とのスラリーの形成、ならびに、前記スラリーを、好ましくは本明細書において記載されている通りの反応時間および本明細書において記載されている通りの反応温度または処理温度で、撹拌しかつ/またはかき混ぜることを含む。これは、好ましくは「スラリー変換」とも称される。
【0293】
本発明による方法および/またはプロセスにおいて使用するための適切な溶媒および溶媒混合物は、当技術分野において公知である。好ましい溶媒および溶媒混合物は、好ましくは、有機溶媒、水、生理食塩水、緩衝溶液、およびそれらの混合物からなる群から選択される。用語「極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物」は公知であり、当業者には明らかである。
【0294】
極性および/またはプロトン性溶媒の例は、水、生理食塩水または生理NaCl溶液、リン酸緩衝溶液、1から6個の炭素原子を有するモノオール、ジオールまたはトリオール等の低級アルコール、アセトンまたはメチルエチル(ethly)ケトン等の低級ケトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、DMF、DMSO等を含むがこれらに限定されない。好ましい極性および/またはプロトン性溶媒は、水、生理食塩水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトン、アセトニトリル、プロピオニトリル、DMFおよびDMSOからなる群から選択される。
【0295】
極性および/またはプロトン性溶媒混合物の例は、上記に示した極性および/またはプロトン性溶媒の混合物、より好ましくは、水と、水以外の上記に示した極性および/またはプロトン性溶媒の1つまたは複数との混合物、生理食塩水または生理NaCl溶液またはリン酸緩衝溶液と、上記に示した極性および/またはプロトン性溶媒の1つまたは複数との混合物を含むがこれらに限定されない。
【0296】
好ましい極性および/またはプロトン性溶媒混合物は、水と、メタノール、エタノールおよび/またはイソプロパノールとの混合物;メタノール、エタノールおよび/またはイソプロパノールの混合物;アセトンと、水および/またはアセトニトリルとの混合物;メタノールと、アセトン、アセトニトリルおよび/または水との混合物;ならびにエタノールと、アセトン、アセトニトリルとの混合物からなる群から選択され、好ましくは上記に示した混合物からも選択され、ここで、水が、生理食塩水、生理NaCl溶液またはリン酸緩衝溶液の代用とされる。前記混合物の中で好ましいのは、好ましくは示した溶媒のうち2、3または4種から本質的になるすべてを含む混合物である。前記混合物の中でとりわけ好ましいのは、混合物に含有されている溶媒のそれぞれの少なくとも5%、とりわけ少なくとも10%を含む混合物である。
【0297】
これに関連して、好ましい溶媒および/または溶媒混合物の例は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、およびそれらの混合物からなる群から選択され、より好ましくは、水、メタノール、エタノール、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0298】
本発明による固体物質の製造の前記方法において、式Iの化合物の出発材料は、好ましくは、
a)式Iの化合物の非晶質または本質的に非晶質の材料、
b)式Iの化合物の酸付加または塩基付加塩、
c)式Iの化合物の酸付加または塩基付加塩の非晶質または本質的に非晶質の固体物質、ならびに
b)好ましくは、前記化合物および/またはその塩の合成から得られる通りの、粗製の式Iの化合物および/またはその酸付加もしくは塩基付加塩の溶液
ならびにそれらの混合物
からなる群から選択される。
【0299】
加えて、驚くべきことに、1つの本発明による第一の結晶形態は、1つまたは複数の本発明による他の結晶形態に、好ましくは可逆的に転換され得ることが分かった。さらに、1つまたは複数の本発明による結晶形態の1つの第一の混合物は、前記第一の混合物とは異なる本発明による結晶形態の第二の混合物、または本発明による純粋もしくは本質的に純粋な単結晶形態のいずれかに転換され得ることが分かった。
【0300】
したがって、本発明は、1つまたは複数の第一の結晶形態を含む1つの本発明による第一の固体物質を、1つまたは複数の第二の結晶形態を含む本発明による第二の固体物質に転換するためのプロセスも提供する。この方法は、好ましくは、上記および/または下記の製造の方法と同じ手法で、好ましくは同じ溶媒および/または溶媒混合物を使用して為され得るが、該方法の出発材料として本発明による(第一の)固体物質を使用している。
【0301】
故に、本発明の好ましい主題は、本発明による固体物質の製造または転換、好ましくは製造のためのプロセスであって、
a)シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)および/またはその酸付加もしくは塩基付加塩を、溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と接触させるステップと、
b)シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の分子内塩を、極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物から析出させ、かつ/または結晶化するステップと、
c)本発明による固体物質を場合により単離するステップと、
を含むプロセスである。
【0302】
転換のための前記のプロセスにおいて、ステップa)で用いられる出発材料は、好ましくは、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)を内塩として含有する本発明による(第一の)固体形態であり、ステップb)で得られ、ステップc)によって場合により単離される本発明による固体物質は、本発明による(第二の)異なる固体物質である。好ましくは、本発明による第一の固体物質と本発明による第二の異なる固体物質との差異は、前記第二の固体形態に含有されている結晶形態の量、前記固体形態に含有されている結晶形態の選択、または前記固体形態に含有されている結晶形態の比率である。
【0303】
製造のための前記プロセスにおいて、ステップa)で用いられる出発材料は、好ましくは、
i)本発明による固体形態とは異なる式Iの化合物の固体形態、
ii)シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)および/またはその酸付加もしくは塩基付加塩の溶液[ここで、該溶液は、好ましくは粗製溶液であるか、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の合成から得られる、より好ましくは直接得られるもののいずれかである]、ならびに/あるいは
iii)本発明による固体形態とは異なる式Iの化合物の固体形態を溶解して得られるもの
から選択される。
【0304】
故に、本発明の好ましい主題は、本発明による固体物質の製造のためのプロセスであって、
a)シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の酸付加または塩基付加塩を、極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と接触させるステップと、
b)シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の分子内塩を、極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物から析出させ、かつ/または結晶化するステップと、
c)本発明による固体物質を場合により単離するステップと
を含むプロセスである。
【0305】
製造および/または転換のための前記プロセスにおいて、ステップa)、b)および/またはc)は、好ましくは5.5から8の範囲内のpH値で、より好ましくは6から7.5の範囲内のpH値で、より好ましくは6.5から7.2の範囲内のpH値で、とりわけ6.7から6.9の範囲内のpH値、例えば約6.8のpH値で実施される。より好ましくは、a)、b)およびc)から選択されるステップの2つ以上が、上記に示したpH値で実施され、とりわけ、ステップa)、b)およびc)のすべてが上記に示したpH値で実施される。a)、b)およびc)から選択されるステップの1つまたは複数を上記に示したpH値で実施することは、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の酸付加もしくは塩基付加塩をシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の内塩に変換するのに、または前記プロセスにおいてシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の内塩を維持するもしくは安定させるのに有利である。
【0306】
製造および/または転換のための前記プロセスにおいて、ステップa)、b)および/またはc)は、好ましくはほぼ等電条件下で実施される。より好ましくは、a)、b)およびc)から選択されるステップの2つ以上がほぼ等電条件下で実施され、とりわけ、ステップa)、b)およびc)のすべてがほぼ等電条件下で実施される。a)、b)およびc)から選択されるステップの1つまたは複数をほぼ等電条件下で実施することは、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の酸付加もしくは塩基付加塩をシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の内塩に変換するのに、または前記プロセスにおいてシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の内塩を維持するもしくは安定させるのにも有利である。
【0307】
製造および/または転換のための前記プロセスにおいて、ステップa)、b)および/またはc)は、好ましくは−20℃から+200℃の間の範囲内の、より好ましくは−5℃から+150℃の間の範囲内の、より一層好ましくは+5℃から+110℃の間の範囲内の、とりわけ+10℃から+100℃の間の範囲内の温度で、例えば、ほぼ室温(約25℃)で、約50℃で、または約75℃で、または約100℃で実施される。
【0308】
概して、温度が高くなるほど、本明細書において記載されている通りの製造のためのプロセスおよび/または転換のためのプロセスを加速させる傾向がある
概して、示されている温度範囲の高い方の端における温度は、本発明による無水物または非溶媒和物の形成を助長する傾向がある
概して、示されている温度範囲の低い方の端における温度は、本発明による溶媒和物の形成を助長する傾向がある。
【0309】
本発明による固体物質の製造のためのプロセスにおいて、ならびに/または本発明による固体物質の変換もしくは転換のための、および/もしくは本発明による形態を結晶化するためのプロセスにおいて、処理時間または「反応時間」、すなわち、接触、析出、結晶化および/または単離が起こるのに好ましい時間は、概して5分間から4週間の間である。前記処理時間は、好ましくは、上記に示した時間中は、式Iによる化合物の分解が、とりわけ本明細書において記載されている好ましい処理パラメーターまたは処理条件内ではほとんどまたはまったく起こらないため、本発明によるプロセスにとって極めて重大な要因というわけではない。加えて、該プロセスの生成物、すなわち、本発明による固体物質は、それが形成される条件下では概して安定である。
【0310】
したがって、処理時間は、好ましくは10分間から3週間、より好ましくは15分間から1週間、より好ましくは30分間から72時間、とりわけ1時間から48時間の範囲である。
【0311】
本発明による無水物または非溶媒和物の形成または変換、好ましくは形成のための、とりわけ結晶形態A1の形成のための処理時間は、好ましくは1時間から3週間の範囲内、より好ましくは1時間から2週間の範囲内、とりわけ1時間から72時間の範囲内である。
【0312】
本発明による溶媒和物、より好ましくは本発明による四溶媒和物、より一層好ましくは1つまたは複数の結晶形態S1、S2および/またはS3の形成または変換、好ましくは形成のための、とりわけ結晶形態S1の形成のための処理時間は、好ましくは5分間から3週間の範囲内、より好ましくは5分間から1週間の範囲内、より一層好ましくは5分間から48時間の範囲内、とりわけ10分間から24時間の範囲内である。
【0313】
概して、当技術分野において公知のように、前記プロセス中で低温であるほど、長い処理時間を導く。
【0314】
概して、水、メタノールおよび/またはエタノール、ならびにそれらの混合物は、ステップa)、b)および/またはc)において使用するための、とりわけステップa)、b)およびc)において使用するための、好ましい極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物である。
【0315】
製造および/または転換のための前記プロセスにおいて、ステップa)、b)および/またはc)、好ましくはa)、b)およびc)の溶媒は、水、メタノールまたはエタノールから本質的になる。
【0316】
好ましくは、同じまたは本質的に同じ溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物が、処理ステップa)、b)およびc)において使用される。
【0317】
概して、ステップa)、b)および/またはc)における、少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、とりわけ少なくとも20重量%の、好ましくはメタノール、エタノールおよびイソプロパノールから選択される、より好ましくはメタノールおよびエタノールから選択される1種または複数のアルコールを含有する溶媒または溶媒混合物の使用は、本発明による溶媒和物の形成を助長する。
【0318】
より具体的には、ステップa)、b)および/またはc)における、
i)5から90重量%のメタノールおよびエタノールからなる群から選択される少なくとも1種のアルコールと、
ii)10から95重量%の水と
を含む溶媒混合物の使用は、好ましくは、本発明による溶媒和物の形成を助長する。
【0319】
より一層具体的には、ステップa)、b)および/またはc)における、
i)5から50重量%、とりわけ10から60重量%の、好ましくはメタノールおよびエタノールからなる群から選択される少なくとも1種のアルコールと、
ii)50から95重量%、とりわけ40から90重量%の水と
を含む溶媒混合物の使用は、好ましくは、本発明による溶媒和物の形成を助長する。
【0320】
故に、好ましいのは、本発明による固体物質、好ましくは本発明による溶媒和物の、とりわけ本発明による1種または複数の四溶媒和物(tetrasovates)の製造のための、上記および/または下記のプロセスであり、ここで、ステップa)、b)および/またはc)の溶媒または溶媒混合物は、
i)5から90重量%、好ましくは5から50重量%の、メタノールおよびエタノールからなる群から選択される少なくとも1種のアルコールと、
ii)10から95重量%、好ましくは50から95重量%の水と
を含む。
【0321】
故に、好ましいのは、本発明による固体物質、好ましくは本発明による無水物または非溶媒和物の、とりわけ結晶形態A1の製造のための、上記および/または下記のプロセスであり、ここで、ステップa)、b)および/またはc)の溶媒は、水、メタノールおよびエタノールから本質的になり、より好ましくは水から本質的になる。
【0322】
故に、好ましいのは、本発明による固体物質、好ましくは本発明による無水物または非溶媒和物の、とりわけ結晶形態A1の製造のための、上記および/または下記のプロセスであり、ここで、ステップa)、b)および/またはc)は、+40℃超の温度で、より好ましくは+50°以上の温度で、とりわけ+60°以上の温度で実施される。
【0323】
本発明による溶媒和物、とりわけ四溶媒和物の形成のために好ましい処理パラメーター内では、示されている範囲の低い方の端におけるアルコール含有量および/または示されている範囲の高い方の端における含水量は、本発明による水和物の形成を助長する。代替として、示されている範囲の高い方の端におけるアルコール含有量および/または示されている範囲の低い方の端における含水量は、アルコール溶媒和物の形成を助長する。
【0324】
これに関連して、とりわけ好ましい溶媒和物は、好ましくは、四水和物、メタノール溶媒和物およびエタノール溶媒和物、ならびにそれらの混合形態から選択される、より一層好ましくは、四水和物、メタノール溶媒和物S1およびエタノール溶媒和物S2、とりわけ四水和物S3から選択される、四溶媒和物である。
【0325】
故に、本発明による固体物質の製造のための1つの好ましいプロセスは、
i)式I化合物の非晶質材料または本質的に非晶質の材料を、溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物、好ましくは本明細書において記載されている通りの溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物から結晶化または再結晶化するステップと、場合により、
ii)このようにして得られた本発明による固体物質を、固体/流体分離技術、好ましくは本明細書において記載されている通りの固体/流体分離技術によって、とりわけ濾過によって、前記溶媒または溶媒混合物から単離するステップと
を含む、または好ましくはこれらから本質的になる。
【0326】
故に、本発明による第一の固体物質から本発明による第二の固体物質への転換のための1つの好ましいプロセスは、
a)本発明による第一の固体物質を、溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物、好ましくは本明細書において記載されている通りの溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物から析出させ、結晶化し、かつ/または再結晶化するステップと、場合により、
b)このようにして得られた本発明による第二の固体物質を、固体/流体分離技術、好ましくは本明細書において記載されている通りの固体/流体分離技術によって、とりわけ濾過によって、前記溶媒または溶媒混合物から単離するステップと
を含む、または好ましくはこれらから本質的になる。
【0327】
化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の合成において、前記合成の最終生成物または粗生成物は、多くの事例において、化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の酸付加または塩基付加塩、好ましくは化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の酸付加塩、例えば、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の塩酸塩(=シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)×HCl)、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)のトリフルオロ酢酸塩(=シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)×TFA)、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の硫酸塩(=シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)×SO4、またはより具体的にはシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)×0.5SO4)、あるいはそれらの混合物である。
【0328】
故に、本発明による固体物質の製造のためのプロセスの好ましい例は、酸付加または塩基付加塩、好ましくは酸付加塩の形態の前記粗生成物から出発する。
【0329】
故に、本発明の好ましい主題は、本発明による固体物質の製造のためのプロセスであって、
a)化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の酸付加または塩基付加塩、好ましくは酸付加塩を、好ましくは本明細書において定義されている通りの、極性および/またはプロトン性溶媒または固体混合物と、好ましくは前記塩を前記溶媒に溶解し、かつ/または懸濁させることによって接触させるステップと、
b)好ましくはpH値を調整することにより、前記塩を化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の遊離塩基または好ましくは分子内塩に変換するステップと、
c)このようにして得られた本発明による固体物質を、前記溶媒または溶媒混合物から結晶化し、かつ/または析出させ、場合により単離するステップと
を含むプロセスである。
【0330】
故に、本発明のより好ましい主題は、本発明による固体物質の製造のためのプロセスであって、
a)化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の酸付加または塩基付加塩、好ましくは酸付加塩を、溶媒または溶媒混合物、好ましくは水から本質的になる、またはそれからなる極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と、好ましくは前記塩を前記溶媒に溶解し、かつ/または懸濁させることによって接触させるステップと、
b)好ましくはpH値を調整することにより、前記塩を化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の遊離塩基または好ましくは分子内塩に変換するステップと、
c)このようにして得られた本発明による固体物質を、前記溶媒または溶媒混合物から好ましくは結晶化し、かつ/または析出させ、場合により単離するステップと
を含むプロセスである。
【0331】
このプロセスは、本発明による無水物または非溶媒和物から本質的になる、または好ましくはそれらからなる、とりわけ結晶形態A1から本質的になる、または好ましくはそれからなる、本発明による固体物質の製造に有利である。
【0332】
故に、本発明の別のより好ましい主題は、本発明による固体物質の製造のためのプロセスであって、
a)化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の酸付加または塩基付加塩、好ましくは酸付加塩を極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物
[ここで、前記溶媒または溶媒混合物は、
水、ならびに60から99.9重量%の水と0.1から40重量%の、好ましくはメタノールおよびエタノールから選択される少なくとも1種のアルコールとの混合物から選択され、
より好ましくは、前記溶媒または溶媒混合物は水である]
と、好ましくは前記塩を前記溶媒または溶媒混合物に溶解し、かつ/または懸濁させることによって接触させるステップと、
b)好ましくはpH値を調整することにより、前記塩を化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の遊離塩基または好ましくは分子内塩に変換するステップと、
c)このようにして得られた本発明による固体物質を、好ましくは、前記溶媒または溶媒混合物にアルコール、好ましくはメタノールおよび/またはエタノールを、得られた溶媒混合物中の水とアルコールとの重量比が約1:1から約1:9の間になるまで添加することによって、結晶化し、かつ/または析出させ、場合により前記得られた溶媒混合物から前記固体物質を単離するステップと
を含むプロセスである。
【0333】
このプロセスは、本発明による溶媒和物から本質的になる、または好ましくはそれからなる、とりわけ結晶形態S1、S2およびS3の1つまたは複数から本質的になる、または好ましくはそれからなる、好ましくは種々の化学量論の水−アルコール混合溶媒和物を含む、本発明による固体物質の製造に有利である。
【0334】
上記プロセスのための、好ましい溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または固体混合物、調整されるpH値、ならびに温度が、本明細書において示され論じられている。
【0335】
処理ステップa)、b)および/またはc)の好ましい例または実施形態は、本明細書において記載されている通りの調節を含む。より好ましくは、接触させるステップおよび/または変換するステップは、本明細書において記載されている通りの調節または調節するステップとみなされ得る。
【0336】
上記のプロセスの好ましい形態は、本明細書において記載されている通りの調節または1つもしくは複数の調節するステップを含む。
【0337】
上記のプロセスの好ましい形態は、本明細書において記載されている通りの調節または1つもしくは複数の調節するステップから本質的になる。
【0338】
本発明による固体の製造のためのプロセス、または1つもしくは複数の本発明による結晶形態の転換変換のためのプロセスについて好ましいパラメーターを、以下のスラリー変換実験の結果を下記にグラフ描写したものによって提示する。
【0339】
下記に示す2つの図表の第一のセットは、各混合物中、各処理時間、すなわち1日後および3週間後におけるメタノール含有量の関数として、室温(25℃)のMeOH/水混合物中における競合スラリーのパラメーターおよび結果を示す。
【0340】
【表28】
【0341】
追加のPXRD検査に基づき、競合スラリーから得られた残留物は、水およびメタノールを含む溶媒和物を表すことが示された。したがって、後に該残留物をS3(第一の図表に示す)の代わりにS1(第二の図表に示す)と表記した。
【0342】
下記に示す2つの図表の第二のセットは、各混合物中、各処理時間、すなわち1日後および3週間後におけるエタノール含有量の関数として、室温(25℃)のEtOH/水混合物中における競合スラリーのパラメーターおよび結果を示す。
【0343】
【表29】
【0344】
追加のPXRD検査に基づき、競合スラリーから得られた残留物は、水およびエタノールを含む溶媒和物を表すことが示された。したがって、後に該残留物をS3(第一の図表に示す)の代わりにS2(第二の図表に示す)と表記した。
【0345】
とりわけ好ましい製造のためのプロセス、転換または変換のためのプロセス、加えて、好ましい温度、溶媒、溶媒混合物、反応時間、出発材料および/または追加の処理パラメーターを例に示す。故に、例は、本発明を存分に実行するために十分なガイダンスを本発明の明細書および/または請求項と一緒に提供する。しかしながら、プロセス、とりわけ処理パラメーターは、個々にだけでなくそれらのプロセスおよび/またはパラメーターの1つまたは複数の組合せで、例から取り出すことができ、明細書および/または請求項における開示と一緒に使用することができる。
【0346】
加えて、各単位セル中に、式Iの化合物1分子当たり最大約7個の溶媒分子、好ましくはその脱溶媒和物を含有する高結晶性溶媒和形態を得ることができる。これらの高結晶性溶媒和形態は、好ましくは七溶媒和物と称される。これらの七溶媒和物の単位セルは、好ましくは約4分子の式Iの化合物を含有する。好ましくは、これらの七溶媒和物に含有される溶媒分子は、水およびアルコールから選択され、より好ましくは、水、メタノールおよびエタノール、ならびにそれらの混合物から選択される。とりわけ好ましくは、前記七溶媒和物中の溶媒分子は水から本質的になる。
【0347】
故に、これらの高結晶性溶媒和形態は、好ましくは(本発明による)七溶媒和物、より好ましくは(本発明による)七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1と称される。本発明による七溶媒和物は、好ましくは式Iの化合物1分子当たり約4分子の式Iによる化合物および最大約7個の溶媒分子を含む単位セルを特徴とする。本発明による七溶媒和物は、より好ましくは式Iの化合物1分子当たり約4分子の式Iによる化合物および上限約7個の溶媒分子を含む、または好ましくはそれらから本質的になる、単位セルによって表される。本発明による七溶媒和物または七水和物は、各七溶媒和物の元の結晶構造が本質的に保持されている場合に限り、好ましくはその脱溶媒和物でもある。
【0348】
本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、好ましくは、代替的にまたは付加的に、単位セル格子定数(ULP)ULP3:
a1=8.1±0.5Å、
b1=12.9±0.7Å、および
c1=35.4±1.5Å
を有する単位セルを、より好ましくは、単位セル格子定数(ULP)ULP3:
a1=8.1±0.3Å、
b1=12.9±0.5Å、および
c1=35.4±1.0Å,
を有する単位セルを、とりわけ、単位セル格子定数(ULP)ULP3:
a1=8.1±0.1Å、
b1=12.9±0.1Å、および
c1=35.4±0.1Å
を有する単位セルを特徴とする。
【0349】
格子定数ULP3を有する単位セルにおいて、角度αは好ましくは90°±2°であり、角度βは好ましくは90°±2°であり、かつ/または角度γは好ましくは90°±2°である。
【0350】
好ましくは、格子定数ULP3を有する単位セルは、代替的にまたは付加的に、好ましくは付加的に前記単位セル内における約4分子の式Iの化合物の含有量を特徴とし得る。
【0351】
好ましくは、格子定数ULP3を有する単位セルは、代替的にまたは付加的に、好ましくは付加的に、前記単位セル内における、式Iの化合物1分子当たり、溶媒分子、好ましくは水分子の含有量について、上限約7個の溶媒分子、好ましくは水分子を特徴とし得る。
【0352】
故に、前記単位セルは、好ましくは、代替的にまたは付加的に、総含有量約4分子の式Iの化合物、および総含有量または上限28個の溶媒分子、好ましくは水分子を特徴とし得る。
【0353】
格子定数ULP3を有する単位セルにおいて、角度αは好ましくは90°±0.5°であり、角度βは好ましくは90°±0.5°であり、かつ/または角度γは好ましくは90°±0.5°である。格子定数ULP3を有する単位セルにおいて、角度α、βおよびγは、より好ましくは90°±0.1°である。
【0354】
本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、代替的にまたは付加的に、融解/分解温度によって特徴付けできる。
【0355】
融解/分解温度および/または熱挙動は、好ましくは、DSC(示差走査熱量測定)およびTGA(熱重量分析)によって決定され得る。DSCおよび/もしくはTGA法、または概して熱分析法およびそれらを決定するのに適したデバイスは、当技術分野において、例えば、適切な標準的技術が記載されているEuropean Pharmacopeia第6版2.02.34章から、公知である。より好ましくは、融解/分解温度もしくは挙動および/または熱分析については、概して、European Pharmacopeia第6版2.02.34章において記載されている通り、Mettler Toledo DSC821および/またはMettler Toledo TGA851が使用され得る。
【0356】
好ましくは、本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、代替的にまたは付加的に、単結晶X線構造データ、例えば、好ましくはグラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、好ましくは302K±5Kの温度で好ましくはMoKα放射線を使用する回折計で、ならびに、より一層好ましくはグラファイトモノクロメーターおよびCCD検出器を備えた、約302KでMoKα放射線を使用する、Oxford Diffraction製のエクスカリバー回折計で得られた単結晶X線構造データによって特徴付けできる。
【0357】
得られた単結晶X線構造データによれば、本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、格子定数a=8.1±0.1Å、b=12.9±0.1Å、c=35.4±0.1Åを有する斜方晶系空間群P212121中で結晶化し、単位セル体積は好ましくは3728(±50)Å3である。
【0358】
より一層好ましくは、a=8.135±0.001Å、b=12.936±0.001Å、およびc=35.435±0.001Åである。
【0359】
単結晶構造から、形態H1が七溶媒和物、より具体的には七水和物を表すことが明白である。
【0360】
単結晶X線構造を図33に描写する。
【0361】
本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって特徴付けできる。
【0362】
好ましくは、本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの3つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの6つ以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0363】
【表30−1】
【0364】
【表30−2】
【0365】
より好ましくは、本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの5つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの9つ以上を含む、とりわけ下記に示す粉末X線ピークのすべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0366】
【表31−1】
【0367】
【表31−2】
【0368】
より一層好ましくは、本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、代替的にまたは付加的に、粉末X線回折によって、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの1つまたは複数を含む、より好ましくは下記に示す粉末X線ピークの8つ以上、より一層好ましくは下記に示す粉末X線ピークの10以上を含む、とりわけ下記に示す単結晶X線ピークの12すべてを含む粉末X線回折パターンによって特徴付けできる。
【0369】
【表32−1】
【0370】
【表32−2】
【0371】
粉末X線回折、より好ましくは粉末X線回折パターンは、好ましくは本明細書において記載されている通りに実施または決定され、とりわけ、European Pharmacopeia第6版2.9.33章において記載されている通りの標準的技術によって実施または決定され、かつ、より一層好ましくは、Stoe StadiP 611KL回折計において、パラメーターCu−Kα1放射線および/またはλ=1.5406Åで得られる。
【0372】
好ましくは、本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、代替的にまたは付加的に、赤外線分光データによって特徴付けできる。IR分光データは、好ましくはFT−IR分光法によって得られ、IR分光データまたはFT−IR分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.24章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。FT−IRスペクトルの計測には、好ましくはBrukerベクター22分光計が使用され得る。FT−IRスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0373】
好ましくは、本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、代替的にまたは付加的に、ラマン分光データによって特徴付けできる。
【0374】
ラマンまたはFT−ラマンスペクトルは、好ましくは、各固体物質用の試料ホルダーとしてアルミニウムカップを使用して得られる。
【0375】
ラマン分光データは、好ましくはFT−ラマン分光法によって得られ、ラマン分光データまたはFT−ラマン分光データは、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.02.48章において記載されている通りの標準的手順によって得られる。FT−ラマンスペクトルの計測には、好ましくはBruker RFS100分光計が使用され得る。FT−ラマンスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0376】
好ましくは、本発明による七溶媒和物、より好ましくは本発明による七水和物およびその脱溶媒和物、とりわけ結晶形態H1は、代替的にまたは付加的に、動的蒸気収着実験によって特徴付けできる。結果は、Rolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH. Weinheim 2006(9章:Water Vapour Sorptionおよびその中の参考文献)において記載されている通りの標準的技術によって得ることができる。
【0377】
故に、本発明の好ましい主題は、式Iによる化合物
シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(I)
の固体物質であって、前記固体物質は、格子定数(ULP)ULP3:
a1=8.1±0.5Å、
b1=12.9±0.7Å、および
c1=35.4±1.5Å
を有する単位セル、
より好ましくは、単位セル格子定数(ULP)ULP3:
a1=8.1±0.3Å、
b1=12.9±0.5Å、および
c1=35.4±1.0Å
を有する単位セル、
とりわけ、単位セル格子定数(ULP)ULP3:
a1=8.1±0.1Å、
b1=12.9±0.1Å、および
c1=35.4±0.1Å
を有する単位セルを特徴とする式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む。
【0378】
前記単位セルは、好ましくは、結晶学的単位セルまたは結晶学的に決定された単位セルである。
【0379】
前記単位セルにおいて、角度αは好ましくは90°±2°であり、角度βは好ましくは90°±2°であり、かつ/または角度γは好ましくは90°±2°である。
【0380】
好ましくは、固体物質は、少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも30%重量%、より一層好ましくは60重量%、とりわけ少なくとも90重量%または少なくとも95重量%の、上記および/または下記において定義される通りの式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む。例えば、固体物質は、約25、約50、約75、約95、約99または約100重量%の、上記および/または下記において定義される通りの式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む。
【0381】
とりわけ好ましくは、固体物質は、少なくとも10モル%、より好ましくは少なくとも30モル%、より一層好ましくは60モル%、とりわけ少なくとも90モル%または少なくとも95モル%の、上記および/または下記において定義される通りの式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む。例えば、固体物質は、約25、約50、約75、約95、約99または約100モル%の、上記および/または下記において定義される通りの式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む。
【0382】
とりわけ好ましいのは、結晶形態H1またはその脱溶媒和物を含む上記で定義されている通りの固体物質であり、ここで、結晶形態H1は、本明細書において示されているパラメーターの1つまたは複数によって特徴付けられ、前記パラメーターは、好ましくは本明細書において示されている通りの単位セルパラメーターULP3を含む。
【0383】
とりわけ好ましいのは、結晶形態H1またはその脱溶媒和物から本質的になる上記で定義されている通りの固体物質であり、ここで、結晶形態H1は、本明細書において示されているパラメーターの1つまたは複数によって特徴付けられ、前記パラメーターは、好ましくは本明細書において示されている通りの単位セルパラメーターULP3を含む。
【0384】
故に、本発明の別の好ましい主題は、
ULP1:a1=9.5±0.5Å、
b1=26.0±1.5Å、および
c1=14.3±0.7Å、
ULP2:a2=9.8±0.5Å、
b2=20.0±1.5Å、および
c2=15.4±0.7Å、
ならびに
ULP3:a3=8.1±0.5Å、
b3=35.4±1.5Å、および
c3=12.9±0.7Å
からなる群から選択される格子定数(ULP)を有する単位セルをそれぞれ有する、式Iの化合物の、1つまたは複数の、好ましくは1、2、3または4つの、より一層好ましくは1または2つの結晶形態を含む固体物質である。
【0385】
より好ましくは、固体物質は、
ULP1:a1=9.5±0.3Å、
b1=26.0±1.0Å、および
c1=14.3±0.5Å、
ULP2:a2=9.8±0.3Å、
b2=20.0±1.0Å、および
c2=15.4±0.5Å
ならびに
ULP3:a3=8.1±0.5Å、
b3=35.4±1.5Å、および
c3=12.9±0.7Å
からなる群から選択される格子定数(ULP)を有する単位セルをそれぞれ有する、式Iの化合物の、1つまたは複数の、好ましくは1、2、3または4つの、より一層好ましくは1または2つの結晶形態を含む。
【0386】
格子定数ULP1、ULP2および/またはULP3を有する単位セルにおいて、角度αは好ましくは90°±2°であり、角度βは好ましくは90°±2°であり、かつ/または角度γは好ましくは90°±2°である。
【0387】
好ましくは、格子定数ULP1、ULP2および/またはULP3を有する単位セルは、代替的にまたは付加的に、好ましくは付加的に、前記単位セル内における約4分子の式Iの化合物の含有量を特徴とし得る。
【0388】
格子定数ULP2および/またはULP3を有する単位セルにおいて、角度αは好ましくは90°±0.5°であり、角度βは好ましくは90°±0.5°であり、かつ/または角度γは好ましくは90°±0.5°である。格子定数ULP2および/またはULP3を有する単位セルにおいて、角度α、βおよびγは、より好ましくは90°±0.1°である。
【0389】
好ましくは、格子定数ULP1、ULP2および/またはULP3を有する単位セルは、代替的にまたは付加的に、好ましくは付加的に、前記単位セル内における約4分子の式Iの化合物の含有量を特徴とし得る。
【0390】
好ましくは、格子定数ULP3を有する単位セルは、代替的にまたは付加的に、好ましくは付加的に、前記単位セル内における約4分子の式Iの化合物の含有量を特徴とし得る。
【0391】
より好ましくは、固体物質は、
格子定数a=9.8±0.1Å、b=19.5±0.5Å、およびc=15.4±0.1Åを有する単位セルを特徴とする結晶形態A1、
格子定数a=9.4±0.1Å、b=25.9±0.5Å、およびc=14.1±0.1Åを有する単位セルを特徴とする結晶形態S1、
格子定数a=9.3±0.1Å、b=26.6±0.5Å、およびc=14.7±0.1Åを有する単位セルを特徴とする結晶形態S2、
格子定数a=9.6±0.1Å、b=25.9±0.5Å、およびc=13.9±0.1Åを有する単位セルを特徴とする結晶形態S3、ならびに
格子定数a=8.1±0.3Å、b=35.4±1.0Å、およびc=12.9±0.5Åを有する単位セルを特徴とする結晶形態H1
から選択される、式Iの化合物の、1つまたは複数の、好ましくは1、2、3または4つの、より一層好ましくは1または2つの結晶形態を含む。
【0392】
より好ましくは、固体物質は、
格子定数a=9.8±0.1Å、b=19.5±0.5Å、およびc=15.4±0.1Åを有する、好ましくはα=β=γ=90°±1°を有する、とりわけα=β=γ=90°を有する単位セルを特徴とする結晶形態A1、
格子定数a=9.4±0.1Å、b=25.9±0.5Å、およびc=14.1±0.1Åを有する、好ましくはα=β=γ=90°±2°を有する、とりわけα=90°±1°、β=91°±1、γ=90°±1°を有する、とりわけα=90°、β=91.2°、γ=90°を有する単位セルを特徴とする結晶形態S1、
格子定数a=9.3±0.1Å、b=26.6±0.5Å、およびc=14.7±0.1Åを有する、好ましくはα=β=γ=90°±1°を有する、とりわけα=β=γ=90°を有する単位セルを特徴とする結晶形態S2、ならびに
格子定数a=9.6±0.1Å、b=25.9±0.5Å、およびc=13.9±0.1Åを有する、好ましくはα=β=γ=90°±1°を有する、とりわけα=β=γ=90°を有する単位セルを特徴とする結晶形態S3、ならびに
格子定数a=8.1±0.3Å、b=35.4±1.0Å、およびc=12.9±0.5Åを有する、好ましくはα=β=γ=90°±1°を有する、とりわけα=β=γ=90°を有する単位セルを特徴とする結晶形態H1
から選択される、式Iの化合物の、1つまたは複数の、好ましくは1、2、3または4つの、より一層好ましくは1または2つの結晶形態を含む。
【0393】
好ましくは、結晶形態S1、S2、S3および/またはH1は、代替的にまたは付加的に、好ましくは付加的に、前記単位セル内における約4分子の式Iの化合物の含有量を特徴とし得る。
【0394】
結晶形態S1、S2、S3および/またはH1は、好ましくはさらに溶媒和物と特徴付けられる。
【0395】
より好ましくは、結晶形態H1は、さらに七溶媒和物と特徴付けられる。
【0396】
本発明の文脈において、溶媒和物および/または七溶媒和物は、好ましくは、結晶構造内に組み込まれた化学量論量または非化学量論量いずれかの溶媒を含有する結晶性固体付加物であり、すなわち、溶媒分子は、好ましくは結晶構造の一部を形成する。組み込まれた溶媒が水であれば、該溶媒和物は一般に水和物としても公知である。
【0397】
結果として、溶媒和物中の溶媒は、好ましくは結晶構造の一部を形成し、故に、概してX線法によって検出可能であり、好ましくは本明細書において記載されている通りのX線法によって検出可能である。
【0398】
好ましくは、結晶形態H1以外の本明細書において記載されている通りのもう1つの結晶形態を含む固体物質について本明細書において記載されている通りの固体物質に関する請求項3から8の一項または複数項およびそれについての開示は、好ましくは、結晶形態H1、および/または結晶形態H1を含む固体物質にも適用可能である。これに関連して、とりわけ好ましい固体物質は、好ましくは、これに関連する記述において示されている好ましい実施形態を含む、本出願における請求項3から8の主題である。
【0399】
好ましくは、結晶形態H1以外の本明細書において記載されている通りのもう1つの結晶形態を含む固体物質について本明細書において記載されている通りの1つまたは複数の処理方法およびそれについての開示は、好ましくは、結晶形態H1、および/または結晶形態H1を含む固体物質にも適用可能である。これに関連して、とりわけ好ましい処理方法は、好ましくは、これに関連する記述において示されている好ましい実施形態を含む、本出願における処理方法の請求項の主題である。
【0400】
好ましくは、結晶形態H1以外の本明細書において記載されている通りのもう1つの結晶形態を含む固体物質について本明細書において記載されている通りの1つまたは複数のプロセスおよびそれについての開示は、好ましくは、結晶形態H1、および/または結晶形態H1を含む固体物質にも適用可能である。これに関連して、とりわけ好ましいプロセスは、好ましくはこれに関連する記述において示されている好ましい実施形態を含む、本出願におけるプロセスの請求項の主題である。
【0401】
好ましくは、結晶形態H1以外の本明細書において記載されている通りのもう1つの結晶形態を含む固体物質について本明細書において記載されている通りの1つまたは複数の使用およびそれについての開示は、好ましくは、結晶形態H1、および/または結晶形態H1を含む固体物質にも適用可能である。これに関連して、とりわけ好ましい使用は、好ましくはこれに関連する記述において示されている好ましい実施形態を含む、本出願における使用の請求項の主題である。
【0402】
式I(シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal))による化合物に関して、以下の種類の名称の表記法は、好ましくは同等物とみなされるべきである:
シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−[NMe]Val)=シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−[NMe]−Val)=シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)=シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)=シクロ(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)=シクロ(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)=cRGDfNMeV=c(RGDfNMeV)。
【0403】
好ましくは、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)は、シレンジタイド(Cilengitide)とも称され、これは前記化合物のINN(国際一般的(Non−propriety)名称)である。
【0404】
シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)は、本明細書において、好ましくは薬学的に許容される塩として、より好ましくは薬理学的に許容される塩酸塩として用いられ、とりわけ好ましくはそれ自体が化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)である内(または分子内)塩として用いられる。
【0405】
別段の指定がなければ、式Iの化合物への言及は、好ましくは前記化合物の内塩である化合物シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)それ自体への言及を意味するのが好ましい。したがって、別段の指定がなければ、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)は、好ましくは、シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMe−Val)の内塩であることも意味する。
【0406】
本発明により特に好ましいのは、本明細書において記載されている通りの主題であり、ここで、2つ以上の好ましい、より好ましい、および/またはとりわけ好ましい実施形態、態様および/または主題の特徴が、1つの実施形態、態様および/または主題と組み合わせられる。
【0407】
用語「約(about)」は、数、数字、範囲および/または量に関して本明細書において使用される場合、好ましくは、「およそ」および/または「約(approximately)」を意味するように意図されている。これらの用語の意味は当技術分野において周知であり、好ましくは、各数、数字、範囲および/または量のプラス/マイナス15%、とりわけプラス/マイナス10%の分散、偏差および/または変動を含む。
【0408】
本発明について、例を挙げて下記でさらに詳細に説明する。本発明は、特許請求されている範囲全体を通して実行され得、本明細書において示される例に制限されない。
【0409】
その上、以下の例は、例証(examplification)によって当業者が本発明をよりよく理解するのを支援するために示される。例は、請求項によって付与される保護の範囲を限定するように意図されるものではない。例において定義されている化合物、組成物、方法および/または使用について例証される特色、特性および利点は、例において具体的には記載および/または定義されていないが請求項において定義されているものの範囲に入る他の化合物、組成物、方法および/または使用に帰する。
【0410】
好ましくは、例および/または請求項において定義されている化合物、組成物、方法および/または使用について例証される特色、特性および利点は、例および/または請求項において具体的には記載および/または定義されていないが明細書および/または請求項において定義されているものの範囲に入る他の化合物、組成物、方法および/または使用に帰する。
【実施例】
【0411】
実験
分析法
IR分光法:
FT−IRスペクトルは、好ましくは、Brukerベクター22分光計で室温にて得られる。したがって、European Pharmacopeia第6版2.02.24章において記載されている通りの標準的技術を使用するのが好ましい。FT−IRスペクトルは、好ましくは、試料調製技術としてKBrペレットを使用して得られる。したがって、約3mgの試料を挽き、KBrと混合し、その結果、混合物を乳鉢中で挽く。スペクトル取得のために2cm−1のスペクトル分解能および32スキャンを選択する。FT−IRスペクトルは、好ましくはBruker OPUSソフトウェアを使用して、好ましくはベースライン補正される。
【0412】
ラマン分光法:
FT−ラマンスペクトルは、好ましくは、NdYAGレーザー(波長1064nm)を備えたBruker RFS100分光計で室温にて得られる。したがって、European Pharmacopeia第6版2.02.48章において記載されている通りの標準的技術を使用するのが好ましい。FT−ラマンスペクトルは、好ましくは、試料ホルダーとしてアルミニウムカップを使用して得られる。約5mgの試料を試料ホルダーに機械的に詰める。ラマンスペクトル取得のために、好ましくは、1cm−1または2cm−1のスペクトル分解能、500スキャンおよび500mWのレーザー出力を選択する。
【0413】
TGまたはTGA:
TG計測は、好ましくは、Mettler Toledo TG851で実行される。計測は、好ましくは、European Pharmacopeia第6版2.02.34章において記載されている通りの標準的技術によって実現される。約10〜20mgの各試料を、好ましくは蓋のないアルミニウム100μL鍋中で調製する。計測は、好ましくは、窒素雰囲気(50mL/分)中、5K/分の加熱速度で実行される。
【0414】
DSC:
DSC計測は、好ましくは、Mettler Toledo DSC821で実行される。計測は、好ましくは、European Pharmacopeia第6版2.02.34章において記載されている通りの標準的技術によって実現される。約2〜10mgの各試料を、好ましくは、孔の開いた蓋付きのアルミニウム40μL鍋中で調製する。計測は、好ましくは、窒素雰囲気(50mL/分)中、5K/分の加熱速度で実行される。
【0415】
XRD:
粉末X線回折パターンは、好ましくは、線形PSD検出器を備えたStoe StadiP 611KLで室温にて、好ましくはEuropean Pharmacopeia第6版2.9.33章において記載されている通りの標準的技術によって得られる。したがって、1.5406Å、1.7889Åの波長をそれぞれ有するCu−Ka1またはCo−Ka1放射線を使用するのが好ましい。約30mgの試料を、好ましくは毛細管中で調製する。スキャンは、好ましくは、刻み幅0.02°で5°から72°、150秒の積分時間で実行される。
【0416】
DVS:
動的蒸気収着計測は、好ましくは、SMS DVSイントリンシックシステムで得られる。結果は、好ましくは、Rolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH. Weinheim 2006(9章:Water Vapour Sorptionおよびその中の参考文献)において記載されている通りの標準的技術によって得られる。約2〜10mgの試料を、好ましくは、アルミニウム100μL鍋中に秤量し、微量天秤付きDVS機器の試料インキュベーターに入れる。加湿(humidifcation)には、好ましくは、200mL/分の窒素全流量(乾式流および湿式流を組み合わせたもの)を使用する。水蒸気収着等温線は、好ましくは、25℃にて、主として10%相対湿度ステップを用い、0%相対湿度から98%相対湿度の範囲内で取得する。すべての相対湿度ステップについて、好ましくはdm/dt≦0.0005wt%/分の平衡条件を、10分の最小相対湿度ステップ時間、および上述したdm/dt基準(criterai)に到達しない場合にタイムアウトとして使用するのが好ましい360分の最大相対湿度ステップ時間で使用する。
【0417】
例A)塩酸塩からの内塩の結晶化
1.25gのシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)×HClを10mlの水に溶解する。濃アンモニア水溶液の使用によって、pHを約6.8に調整する。4Cで終夜静置した後、結晶が現れ、これを濾過によって分離し、氷冷水で洗浄し、風乾させる。母液を濃縮して、追加の結晶性生成物を得る。
【0418】
例B)トリフルオロ酢酸塩からの内塩の結晶化
1.41gのシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)×TFAを10mlの水に溶解する。濃アンモニア水溶液の使用によって、pHを約6.8に調整する。周囲温度で終夜静置した後、結晶が現れ、これを濾過によって分離し、氷冷水で洗浄し、風乾させる。母液を濃縮して、追加の結晶性生成物を得る。
【0419】
例C)内塩のクロマトグラフィー生成
5.04gのシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)×TFAを100mlの水に溶解し、25%NH3水溶液でpHを約7.0に調整する。溶液を、ポンプAの力で2ポンプ勾配系RP−HPLCカラム(リクロソルブRP8(10um)50×250mm)に注入する。最初に、カラムを水で溶離し、第二に、化合物のクロマトグラフィー精製を、20ml/分で2時間、水中15〜25%の2−プロパノールの勾配での溶離によって行う。215/254nmで検出する。画分を収集し、プールする。プールからの2−プロパノールの蒸発中に、結晶性内塩シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)が析出し、濾過によって収集する。母液を濃縮して、追加の結晶性生成物を得る。
【0420】
例D)共溶媒混合物からの内塩の結晶の生成
1gのシクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)を、20mlの水/2−プロパノール8:2体積に40℃で溶解する。室温(25℃)で2日後、結晶性化合物が析出した。
【0421】
例E)内塩のX線構造決定
結晶形態S3から、X線分析のために結晶を選択する。ペプチドの正確な共有構造および結晶性固体状態にある化合物の配座は、四水和物が、単位セル当たり4個の式Iによる分子を具備することを示す。
分子式 C27H40N8O7×4H2O
分子量 661.25g/mol
結晶サイズ (0.65×0.45×0.08)mm3
温度 298K
回折計 Nonius−CAD4
光線 MoKα
波長 0.71093Å
単色 グラファイト(graphit)
結晶 斜方晶系
空間群 P212121
格子a 9.460(2)Å
b 13.853(3)Å
c 25.910(6)Å
α=β=γ=90°
単位セル当たりの式Iの化合物の分子数 4。
【0422】
例F)無水物のX線構造決定
結晶形態A1から、X線分析のために結晶を選択する。ペプチドの正確な共有構造および結晶性固体状態にある化合物の配座は、無水物が、単位セル当たり4個の式Iによる分子を具備することを示す。
分子式 C27H40N8O7
分子量 588.67g/mol
結晶サイズ (0.30×0.24×0.24)mm3
温度 298K
回折計 エクスカリバー−Oxford Diffration
光線 MoKα
波長 0.71093Å
単色 グラファイト
結晶 斜方晶系
空間群 P212121
格子a 9.7944(5)Å
b 15.3877(7)Å
c 19.5090(2)Å
α=β=γ=90°
単位セル当たりの式Iの化合物の分子数 4。
【0423】
例G)ジヒドレート−モノエタノレートのX線構造決定
形態S2の一具体例を表す結晶から、X線分析のために結晶を選択する。ペプチドの正確な共有構造および結晶性固体状態にある化合物の配座は、ジヒドレート−モノエタノレートが、単位セル当たり4個の式Iによる分子を具備することを示す。
分子式 C27H40N8O7×C2H5OH×2H2O
分子量 669.75g/mol
結晶サイズ (0.24×0.16×0.04)mm3
温度 298K
回折計 エクスカリバー−Oxford Diffration
光線 MoKα
波長 0.71093Å
単色 グラファイト
結晶 斜方晶系
空間群 P212121
格子a 9.3212(4)Å
b 13.7377(7)Å
c 26.337(2)Å
α=β=γ=90°
単位セル当たりの式Iの化合物の分子数 4。
【0424】
例H)結晶形態H1の製造
結晶形態H1は、以下の手順に従って得られる。結晶形態S2を、式Iの化合物の濃度が15mg/mLである透明溶液が得られるまで、0.9%生理食塩水に溶解する。溶液を、4から9週間振とうし続けながら+5℃で保存し、それにより、小さい棒形状の結晶が析出する。このようにして得られた結晶の単結晶X線回折は、結晶形態H1であることを証明している。
【0425】
例I)結晶形態H1のX線構造決定
結晶形態H1から、X線分析のために結晶を選択する。ペプチドの正確な共有構造および結晶性固体状態にある生成物の配座は、水晶振動子当たり4個のシクロペプチドを有する七水和物が形成されたことを示す。
分子式 C27H40N8O7×7H2O
分子量 714.81
結晶サイズ (0.50×0.24×0.20)mm3
温度 298K
回折計 エクスカリバー−Oxford Diffration
光線 MoKα
長さ 0.71093Å
単色 グラファイト
結晶 斜方晶系
群 P212121
格子a 8.1349(3)Å
b 12.9357(4)Å
c 35.435(10)Å
α=β=γ=90°
単位セル当たりの式Iの化合物のモル数 4。
【0426】
1.メタノール/水およびエタノール/水混合物中で撹拌することにより疑似多形形態を得るための手順
a)本発明による結晶性四溶媒和物、とりわけ結晶形態S1およびS2は、メタノール/水混合物(70v%:30v%)中、25℃で2日間の撹拌時間、およびエタノール/水混合物(60v%:40v%)中、25℃で18日間の撹拌時間での、形態A1からのスラリー変換によってそれぞれ得ることができる。一般的手順:
約500mgのシレンジタイドの形態A1を、5mlの溶媒に室温で分散させる。分散液を磁気撹拌子により上述した時間にわたって撹拌し、最後に濾過する。
【0427】
b)加えて、本発明による結晶性四溶媒和物、とりわけ結晶形態S1およびS2は、異なる温度における、異なるアルコール含有量を有する水/メタノールおよび水/エタノール混合物中、疑似多形形態(例えば、S1、S2、S3またはこれらの混合物)と形態A1との混合物(1:1)を用いる競合スラリー変換実験によってそれぞれ製造することができる。
【0428】
一般的手順:
約20mgの疑似多形形態(例えば、S1、S2、S3またはこれらの混合物)および20mgのシレンジタイドの形態A1を、300μlの水/アルコール混合物に0℃または室温(25℃)で分散させる。分散液を磁気撹拌子により室温(25℃)で24時間および追加で3週間(長期実験)撹拌し、最後に濾過する。
【0429】
以下の表に、本発明による各四溶媒和物を導く実験のための条件を収載する。
i)S1:
【0430】
【表33】
【0431】
ii)S2:
【0432】
【表34】
【0433】
c)これらとは対照的に、以下の条件下では疑似多形形態のいずれも得ることができないが、代わりに本質的に純粋な無水物/非溶媒和物A1が形成される。
【0434】
約20mgの疑似多形形態(例えば、S1、S2、S3またはこれらの混合物)および20mgのシレンジタイドの形態A1を、300μlの水/アルコール混合物に50℃で分散させる。分散液を磁気撹拌子により24時間撹拌し、最後に濾過する。
【0435】
以下の表に、形態A1を導く実験のための条件を収載する。
【0436】
【表35】
【0437】
水を「100v%まで添加」は、好ましくは、事前に指定された量の水以外の溶媒(単位:体積パーセント(v%))に、各溶媒/水混合物の100v%までの不足分を補う量で水を添加することを意味する。
【0438】
2.乾燥器内、メタノール雰囲気下での調節実験により、形態S1を得るための手順
約1gの疑似多形形態(例えば、S2、S3またはこれらの混合物)を、乾燥器(dessicator)内シリカゲル上で乾燥させる。次いで、材料を、乾燥器内100%メタノール蒸気雰囲気で5日間保存する。
【0439】
3.乾燥器内、エタノール雰囲気下での調節実験により、形態S2を得るための手順
約1gの疑似多形形態(例えば、S3、S1またはこれらの混合物)を、乾燥器内シリカゲル上で乾燥させる。次いで、材料を、乾燥器内100%エタノール蒸気雰囲気で5日間保存する。
【0440】
4.エタノール/水混合物中で撹拌することにより、A1/S3多形混合物をS2に変換するための手順
シレンジタイド(多形A1およびS3の混合物、275,5g)を、脱イオン水(700ml)およびエタノール(700ml)の混合物に懸濁させる。懸濁液を室温で24時間撹拌し、次いで5℃に冷却する。生成物を吸引濾過によって単離し、冷エタノールで洗浄する。60℃での72時間の真空下乾燥により、270gのシレンジタイド(結晶形態S2)、3.6%のEtOH、HPLC純度:99.9%)を得る。
【0441】
5.スラリー変換による結晶形態A1の製造
シレンジタイドの形態A1は、水中25℃での疑似多形形態(例えば、S1、S2、S3またはこれらの混合物)からのスラリー変換によって得ることができる。温度上昇(50℃)は、形態A1への変換を加速させる。
【0442】
約10gのシレンジタイドの疑似多形形態(例えば、S1、S2、S3またはこれらの混合物)を、50mlの脱イオン水に室温で分散させる。分散液を磁気撹拌子により24時間撹拌し、最後に濾過する。
【0443】
6.競合スラリー変換による結晶形態A1の製造
純粋形態の形態A1も、アセトン、アセトニトリル、イソプロパノール、生理NaCl溶液、リン酸緩衝溶液(pH7.4)、およびアセトン、アセトニトリル、イソプロパノールと水との1:1(v:v)混合物中、疑似多形形態(例えば、S1、S2、S3またはこれらの混合物)とA1との(1:1)混合物を用いる室温(25℃)での競合スラリー変換実験によって製造することができる。
【0444】
約20mgの疑似多形形態(例えば、S1、S2、S3またはこれらの混合物)および20mgのシレンジタイドの形態A1を、200〜700μlの溶媒に室温で分散させる。分散液を磁気撹拌子により室温(25℃)で5日間および追加で26時間(長期実験)撹拌し、最後に濾過する。
【0445】
7.競合スラリー変換
加えて、形態A1は、異なる温度における、異なるアルコール含有量を有する水/メタノールおよび水/エタノール混合物中、疑似多形形態(例えば、S1、S2、S3またはこれらの混合物)と形態A1との(1:1)混合物を用いる競合スラリー変換実験によって製造することができる。以下の表に、純粋形態A1を導く実験のための条件を収載する。
【0446】
【表36】
【0447】
【表37】
【0448】
約20mgの疑似多形形態(例えば、S1、S2、S3またはこれらの混合物)および20mgのシレンジタイドの形態A1を、300μlの水/アルコール混合物に、0℃、室温および50℃で分散させる。分散液を磁気撹拌子により室温(25℃)で24時間および追加で3週間(長期実験)撹拌し、最後に濾過する。
【0449】
8.エタノール/水混合物からの結晶化を含む、結晶形態S2を得るための手順
シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)×TFA×H2SO4(400g)を、水(1600ml)に59℃で溶解する。アンモニア水溶液(30%)の添加によってpHをpH=6.8に調整する。メタノール(9600ml)を3時間かけて溶液に添加する。得られた混合物を3時間以内で23℃に冷却し、この温度で終夜撹拌する。次いで、混合物を5℃に冷却し、もう2時間撹拌する。析出した粗生成物を吸引濾過によって単離し、冷メタノールで洗浄する。50℃での48時間の真空下乾燥により、335gのシレンジタイド(結晶形態S2、HPLC:99.8%)を得る。
【0450】
原材料(335g)を水(1507g)に58℃で溶解する。メタノール(8040ml)を3時間かけて溶液に添加する。次いで、このようにして形成された懸濁液を3時間以内で23℃に冷却し、この温度で終夜撹拌する。次いで、懸濁液を5℃に冷却し、もう3時間撹拌する。生成物を吸引濾過によって単離し、メタノールで洗浄する。60℃での48時間の真空下乾燥により、309gのシレンジタイド(結晶形態S1、HPLC:99.9%、3.8%のMeOH、IC:<0.1%Cl−、0.0007%のTFAおよび10.3%のSO42−)を得る。
【0451】
150gの上記で得られた材料を、水(600ml)およびエタノール(600ml)に56℃で溶解する。混合物を3時間以内で23℃に冷却し、終夜撹拌する。混合物(懸濁液)を5℃に冷却し、この温度で2時間撹拌する。生成物を吸引濾過によって単離し、冷水で洗浄する。60℃での48時間の真空下乾燥により、115,4gのシレンジタイド(結晶形態S2、≦0.05%のメタノール、5.3%のEtOH IC:<0.01%Cl−、<0.0011%のTFA、0,34%のSO42−)を得る。
【0452】
9.水からの結晶化による結晶形態A1の製造
A1を得るための好ましくかつ極めて効率的な方法は、次の製造プロセスから発展するような、シレンジタイドの原材料から出発する水からの結晶化によるものである。
【0453】
未加工のシレンジタイド(300g、非晶質材料、形態S1(?)、形態S2、形態S3、またはそれらの混合物のいずれか)を、脱イオン水(1200ml)に58℃で溶解する。溶液を3時間以内で23℃に冷却し、この温度で終夜撹拌する。次いで、懸濁液を5℃に冷却し、この温度で2時間撹拌する。生成物を吸引濾過によって単離し、冷脱イオン水で洗浄する。50℃での48時間の真空下乾燥により、約230gのシレンジタイド(結晶形態A1、<0.001%のTFA、0.22%のSO42−、0.06%のアンモニウム、99%のHPLC純度、0.027%の水)を得る。
【0454】
10.結晶形態S3の動的蒸気収着実験
結晶形態S3に関する動的蒸気実験には、SMS DVS Iシステムを使用する。結果は、Rolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH. Weinheim 2006(9章:Water Vapour Sorptionおよびその中の参考文献)において記載されている通りの標準的技術によって得られた。水蒸気収着挙動は、初期乾燥ステップ(0%rh)内での水分子(およそ9wt%)の損失を示す。水吸着サイクル中に、上昇したrhで、格子中における水分子の集合が示される(およそ10重量%)。第二の脱着サイクルにおいて、この量の水の損失がある。形態S3の水蒸気収着等温線(25℃)を、図29に描写する。
【0455】
11.結晶形態S1の動的蒸気収着実験
動的蒸気実験には、SMS DVSイントリンシックを使用する。結果は、Rolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH. Weinheim 2006(9章:Water Vapour Sorptionおよびその中の参考文献)において記載されている通りの標準的技術によって得られる。水蒸気収着挙動は、第一の脱着サイクルにおいて約8wt%の質量損失を示し、これは、メタノール蒸気収着実験において観察されるメタノール質量増加よりもわずかに少ない。水蒸気吸着時、格子中における水分子の集合が観察され、上昇したrhで約8wt%の最大重量増加がある。第二の脱着サイクルにおいては、約9.9wt%の総質量損失が観察される。シレンジタイドジヒドレートジ−メタノレートについて、算出されるメタノール含有量は、9.3wt%に等しい。形態S1の水蒸気収着等温線(25℃)を、図13に表示する。
【0456】
12.結晶形態S2の動的蒸気収着実験
動的蒸気実験には、SMS DVSイントリンシックを使用する。結果は、Rolf Hilfiker、「Polymorphism in the Pharmaceutical Industry」、Wiley-VCH. Weinheim 2006(9章:Water Vapour Sorptionおよびその中の参考文献)において記載されている通りの標準的技術によって得られる。水蒸気収着挙動は、第一の脱着サイクルにおいて約6.5wt%の質量損失を示し、これは、エタノール蒸気収着実験において観察されるエタノール質量増加よりも少ない。水蒸気吸着時、格子中における水分子の集合が観察され、上昇したrhで約6.4wt%の最大重量増加がある。第二の脱着サイクルにおいては、約9.2wt%の総質量損失が観察される。シレンジタイドジヒドレートジ−エタノレートについて、算出されるエタノール含有量は、12.5wt%に等しい。形態2の水蒸気収着等温線(25℃)を、図20に表示する。
【0457】
13.調節(Conditoning)実験
a)
異なる水およびアルコール分圧を表す水−エタノール混合雰囲気(液相中の異なるEtOH含有量(体積%、v%)に合わせて調整したもの)下での非晶質シレンジタイド(略称:Cil;シレンジタイド=シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal))の調節により、シレンジタイド1分子当たり最大4分子の水および最大2分子のエタノールを有する異なる化学量論を呈する溶媒和物を生じた。水の定量化についてカールフィッシャー滴定(KF)によって、およびエタノールの定量化についてヘッドスペースガスクロマトグラフィー(HS−GC)(および核磁気共鳴分光法(NMR))によって測定した際の化学量論を、表3に描写する。該表においては、シレンジタイド1分子当たり4分子を超える水を有する化学量論を表す点も可視である。結晶格子中には4分子を超える水のためのスペースはないため、過剰量の4分子を超える水は吸着した水分を表す。
【0458】
変態およびディフラクトグラムの指数付けからの格子定数も、表3にまとめる。
【0459】
【表38】
【0460】
表3において、エタノール蒸気圧が上昇するとともに、水和物形態S3から水−エタノール混合または水なしエタノール溶媒和形態S2への流動転移があることが示されている。各溶媒和物から得られたX線データによれば、すべての溶媒和物(水和物を含む)は同様の格子定数を有し、該定数は、エタノール分子の集合とともにほんのわずかにかつ連続的に増加する。
b)
メタノール雰囲気下での非晶質シレンジタイド(略称:Cil;シレンジタイド=シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の調節により、シレンジタイド1分子当たり2分子のメタノールを有する溶媒和物を生じた。
【0461】
【表39】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iによる化合物
シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(I)
の固体物質であって、格子定数
a=9.5±0.5Å、
b=23.0±5.0Å、および
c=14.7±1.0Å
を有する単位セルを特徴とする、前記式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む固体物質。
【請求項2】
格子定数
a=9.5±0.5Å、
b=23.0±5.0Å、および
c=14.7±1.0Å
を有する単位セルを特徴とする前記式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態から本質的になる、請求項1に記載の固体物質。
【請求項3】
前記単位セルが単斜晶系または斜方晶系である、請求項1および/または2に記載の固体物質。
【請求項4】
前記式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態が、無水物、非溶媒和物および溶媒和物から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の固体物質。
【請求項5】
前記溶媒和物が、水和物、メタノレートおよびエタノレート、ならびに/または水−メタノール混合溶媒和物、水−エタノール混合溶媒和物、水−メタノール−エタノール混合溶媒和物;ならびにそれらの混合物から選択される、請求項1から4のいずれかに記載の固体物質。
【請求項6】
障害の治療のための、前記請求項の一項または複数項に記載の固体物質。
【請求項7】
癌性障害から選択される障害の治療のための、前記請求項の一項または複数項に記載の固体物質。
【請求項8】
前記癌性障害が、脳腫瘍、肺癌、頭頸部癌、乳癌および前立腺癌、ならびにそれらの転移からなる群から選択される、請求項7に記載の固体物質。
【請求項9】
患者における癌性障害を治療する方法であって、前記患者に、請求項1から8の一項または複数項に記載の固体物質を投与するステップを含む方法。
【請求項10】
前記癌性障害が、請求項8に記載の群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
障害の治療用薬剤の製造のための、請求項1から8の一項または複数項に記載の固体物質の使用。
【請求項12】
前記障害が、請求項7および/または8に記載の障害から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
式Iによる化合物を、溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と接触させるステップと、前記接触させるステップによって得られた請求項1から5の一項または複数項に記載の固体物質を、前記溶媒または溶媒混合物から単離するステップとを含む、請求項1から5の一項または複数項に記載の固体物質の製造プロセス。
【請求項14】
a)シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)および/またはその酸付加もしくは塩基付加塩を、極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と接触させるステップと、
b)シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の分子内塩を、極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物から析出させ、かつ/または結晶化するステップと、
c)請求項1から5の一項または複数項に記載の固体物質を場合により単離するステップと
を含む、請求項1から5の一項または複数項に記載の固体物質の製造プロセス。
【請求項15】
前記接触させるステップならびに/またはステップa)、b)および/もしくはc)が、5.5から8の範囲内のpH値で実施される、請求項13および/または14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記接触させるステップならびに/またはステップa)、b)および/もしくはc)が、ほぼ等電条件下で実施される、請求項13および/または14に記載のプロセス。
【請求項17】
前記接触させるステップならびに/またはステップa)、b)および/もしくはc)が、−50℃から+200℃の間の温度範囲で実施される、請求項13から16の一項または複数項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記接触させるステップならびに/またはステップa)、b)および/もしくはc)の溶媒または溶媒混合物が、水、メタノールおよびエタノール、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項13から17の一項または複数項に記載のプロセス。
【請求項19】
ステップa)、b)および/またはc)の溶媒または溶媒混合物が、
i)5から90重量%の、メタノールおよびエタノールからなる群から選択される少なくとも1種のアルコールと、
ii)10から95重量%の水と
を含む、請求項1から5の一項または複数項に記載の固体物質の製造のための、請求項14から18の一項または複数項に記載のプロセス。
【請求項20】
ステップa)、b)および/またはc)の溶媒が、水、メタノールおよびエタノールから本質的になる、請求項1から4の一項または複数項に記載の固体物質の製造のための、請求項14から18の一項または複数項に記載のプロセス。
【請求項21】
ステップa)、b)および/またはc)が、約+60℃の温度で実施される、請求項2から4の一項または複数項に記載の無水物から本質的になる固体物質の製造のための、請求項14から18および20の一項または複数項に記載のプロセス。
【請求項22】
式Iによる化合物
シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(I)
の固体物質であって、前記形態が、請求項13から21の一項または複数項に記載のプロセスによって得られる式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む固体物質。
【請求項1】
式Iによる化合物
シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(I)
の固体物質であって、格子定数
a=9.5±0.5Å、
b=23.0±5.0Å、および
c=14.7±1.0Å
を有する単位セルを特徴とする、前記式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む固体物質。
【請求項2】
格子定数
a=9.5±0.5Å、
b=23.0±5.0Å、および
c=14.7±1.0Å
を有する単位セルを特徴とする前記式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態から本質的になる、請求項1に記載の固体物質。
【請求項3】
前記単位セルが単斜晶系または斜方晶系である、請求項1および/または2に記載の固体物質。
【請求項4】
前記式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態が、無水物、非溶媒和物および溶媒和物から選択される、請求項1から3のいずれかに記載の固体物質。
【請求項5】
前記溶媒和物が、水和物、メタノレートおよびエタノレート、ならびに/または水−メタノール混合溶媒和物、水−エタノール混合溶媒和物、水−メタノール−エタノール混合溶媒和物;ならびにそれらの混合物から選択される、請求項1から4のいずれかに記載の固体物質。
【請求項6】
障害の治療のための、前記請求項の一項または複数項に記載の固体物質。
【請求項7】
癌性障害から選択される障害の治療のための、前記請求項の一項または複数項に記載の固体物質。
【請求項8】
前記癌性障害が、脳腫瘍、肺癌、頭頸部癌、乳癌および前立腺癌、ならびにそれらの転移からなる群から選択される、請求項7に記載の固体物質。
【請求項9】
患者における癌性障害を治療する方法であって、前記患者に、請求項1から8の一項または複数項に記載の固体物質を投与するステップを含む方法。
【請求項10】
前記癌性障害が、請求項8に記載の群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
障害の治療用薬剤の製造のための、請求項1から8の一項または複数項に記載の固体物質の使用。
【請求項12】
前記障害が、請求項7および/または8に記載の障害から選択される、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
式Iによる化合物を、溶媒または溶媒混合物、好ましくは極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と接触させるステップと、前記接触させるステップによって得られた請求項1から5の一項または複数項に記載の固体物質を、前記溶媒または溶媒混合物から単離するステップとを含む、請求項1から5の一項または複数項に記載の固体物質の製造プロセス。
【請求項14】
a)シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)および/またはその酸付加もしくは塩基付加塩を、極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物と接触させるステップと、
b)シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)の分子内塩を、極性および/またはプロトン性溶媒または溶媒混合物から析出させ、かつ/または結晶化するステップと、
c)請求項1から5の一項または複数項に記載の固体物質を場合により単離するステップと
を含む、請求項1から5の一項または複数項に記載の固体物質の製造プロセス。
【請求項15】
前記接触させるステップならびに/またはステップa)、b)および/もしくはc)が、5.5から8の範囲内のpH値で実施される、請求項13および/または14に記載のプロセス。
【請求項16】
前記接触させるステップならびに/またはステップa)、b)および/もしくはc)が、ほぼ等電条件下で実施される、請求項13および/または14に記載のプロセス。
【請求項17】
前記接触させるステップならびに/またはステップa)、b)および/もしくはc)が、−50℃から+200℃の間の温度範囲で実施される、請求項13から16の一項または複数項に記載のプロセス。
【請求項18】
前記接触させるステップならびに/またはステップa)、b)および/もしくはc)の溶媒または溶媒混合物が、水、メタノールおよびエタノール、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、請求項13から17の一項または複数項に記載のプロセス。
【請求項19】
ステップa)、b)および/またはc)の溶媒または溶媒混合物が、
i)5から90重量%の、メタノールおよびエタノールからなる群から選択される少なくとも1種のアルコールと、
ii)10から95重量%の水と
を含む、請求項1から5の一項または複数項に記載の固体物質の製造のための、請求項14から18の一項または複数項に記載のプロセス。
【請求項20】
ステップa)、b)および/またはc)の溶媒が、水、メタノールおよびエタノールから本質的になる、請求項1から4の一項または複数項に記載の固体物質の製造のための、請求項14から18の一項または複数項に記載のプロセス。
【請求項21】
ステップa)、b)および/またはc)が、約+60℃の温度で実施される、請求項2から4の一項または複数項に記載の無水物から本質的になる固体物質の製造のための、請求項14から18および20の一項または複数項に記載のプロセス。
【請求項22】
式Iによる化合物
シクロ−(Arg−Gly−Asp−DPhe−NMeVal)(I)
の固体物質であって、前記形態が、請求項13から21の一項または複数項に記載のプロセスによって得られる式Iの化合物の1つまたは複数の結晶形態を含む固体物質。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26−1】
【図26−2】
【図26−3】
【図26−4】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26−1】
【図26−2】
【図26−3】
【図26−4】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【公表番号】特表2012−527417(P2012−527417A)
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511195(P2012−511195)
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003100
【国際公開番号】WO2010/133367
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際出願番号】PCT/EP2010/003100
【国際公開番号】WO2010/133367
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】
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