説明

トンネル接続構造およびトンネル施工方法

【課題】トンネル接続部の上部の地盤沈下抑制効果を維持しつつ、地盤改良あるいは地盤凍結範囲を抑制して工事費を削減することができるトンネル接続構造およびトンネル施工方法を提供すること。
【解決手段】トンネル接続部3における上部接続覆工4のライズ形状および第1および第2覆工11,21との接続位置を適宜に設定することで、上部地盤からの鉛直荷重に対して上部接続覆工4の鉛直変位量を抑えることができるため、この変形に伴う上部地盤の沈下量を適宜に抑制することができる。従って、トンネル変形を抑制するために桁高や板厚を上げて断面剛性を高める必要がなく、トンネル上部の地盤変位を低コストで抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向に隣り合う一対のトンネルを接続して1つのトンネル断面を構築するトンネル接続構造およびトンネル施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路トンネル等のシールドトンネル覆工を用いたトンネルにおいて、本線トンネルと支線トンネルとを接続して合流部を構成する接続構造として、本線用の覆工と支線用の覆工とに渡って上下に接続覆工を架設した構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載された接続構造は、トンネル合流部の断面が全体楕円形(長円形あるいは玉子形)となるように、本線用および支線用の覆工と上下の接続覆工とが接続され、これらの接続部にて覆工同士が連続した滑らかな曲面となるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−248478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された従来の接続構造は、本線用および支線用の覆工と上下の接続覆工とが滑らかな曲面となるように接続されているため、接続覆工が比較的直線形状に近く、このためトンネル覆工のアーチ効果が小さくなり、トンネルが鉛直方向に変形しやすい形状になっている。ここで、例えば、アーチ効果を高めるために、トンネル全体が滑らかな曲面となるよう鉛直方向に大きなライズを有するトンネル覆工形状を構築することが考えられるが、この場合、地盤改良範囲が大きくなることや、接続覆工が多くなることがあり、工事費の増大につながりやすいという問題が生じる。
【0005】
本発明の目的は、トンネル接続部の上部の地盤沈下抑制効果を維持しつつ工事費を削減することができるトンネル接続構造およびトンネル施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のトンネル接続構造は、略水平方向に隣り合う第1および第2のトンネルを接続して1つのトンネル断面を構成するトンネル接続構造であって、前記トンネルは、前記第1トンネルの覆工の外側部からなる第1覆工と、前記第2トンネルの覆工の外側部からなる第2覆工と、前記第1および第2の覆工の上部間を接続する上部接続覆工と、前記第1および第2の覆工の下部間を接続する下部接続覆工とを有して構成され、少なくとも前記上部接続覆工は、前記第1覆工に接続される第1接続部と前記第2覆工に接続される第2接続部とに渡って上方に凸な円弧状に形成され、前記第1接続部および第2接続部の各位置において前記上部接続覆工に沿った接線と前記第1覆工および第2覆工のそれぞれに沿った接線とが一致しないことを特徴とする。
【0007】
以上の本発明によれば、地盤改良範囲を大きくすることなく第1および第2のトンネル間距離に応じた適宜なライズを確保することができ、上部接続覆工に対して上方から作用する上部地盤からの土圧に対して上部接続覆工の変形を抑えることができ、この変形に伴う上部地盤の沈下量を適宜に抑制することができる。
【0008】
この際、本発明のトンネル接続構造では、少なくとも前記上部接続覆工の形状は、前記第1接続部と第2接続部とを結ぶ直線からの当該上部接続覆工の頂点高さが、前記第1接続部と第2接続部との離間距離に対して8%程度以上40%程度以下に設定され、前記第1接続部は、前記第1トンネルの中心を通る鉛直線から外側に向かって0°程度以上45°程度以下の範囲に設けられ、前記第2接続部は、前記第2トンネルの中心を通る鉛直線から外側に向かって0°程度以上45°程度以下の範囲に設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、前記上部接続覆工のライズによるアーチ効果が発揮されるとともに、前記上部接続覆工に作用する軸圧縮力が前記第1および第2覆工に作用することに伴いトンネル外側部の鉛直方向のつぶれ変形が生じるが、上部接続覆工の接続位置、接続角度を適切に設定することによって、つぶれ変形が最小限に抑えることができ、この変形に伴う上部地盤の沈下量を適宜に抑制することができる。従って、トンネル施工に際して上部地盤上に位置する既存建物や設備等への沈下の影響を最小化して、沈下を防止するための仮設工事や、既存建物や設備等への対処工事などを省略または削減することができ、周辺工事を含めたトンネル工事全体の施工コスト低減や工期短縮を図ることができる。
【0009】
また、本発明のトンネル接続構造では、少なくとも前記上部接続覆工の外周側に曲線パイプルーフが上に凸で位置し、この曲線パイプルーフと前記第1覆工および第2覆工との接続位置が前記第1接続部および第2接続部からそれぞれ離れて設けられていることが好ましい。
このような構成によれば、パイプルーフの剛性を活用して地盤を支えることが可能となるため、上部接続覆工の仕様低減を図ることができるとともに、施工時の地盤改良範囲を小さくできることや、地山の崩落に対する安全性を高めることができる。
【0010】
さらに、本発明のトンネル接続構造では、前記曲線パイプルーフに加え、当該曲線パイプルーフのトンネル内空側から地盤に放射状にロックボルトが設けられ、当該曲線パイプルーフと接続されていることが好ましい。
このような構成によれば、ロックボルトによってパイプルーフが周辺地盤に支えられることによって、パイプルーフに作用する土圧を低減できるため、周辺地盤の変形をさらに抑制でき、部材仕様の低減による工事費削減や、施工時の安全性向上を図ることができる。
【0011】
また、本発明のトンネル接続構造では、前記第1覆工および第2覆工と前記上部接続覆工および下部接続覆工とは、それぞれ鉄筋コンクリートから形成されるRC造、鋼殻を有した鋼構造、または鋼殻とコンクリートからなる合成構造、のいずれかの構造もしくはそれらの組合せからなる複数のセグメントで構成されていることが好ましい。
このような構成によれば、トンネル覆工に要求される性能に応じてセグメントの構造を使い分けることができるとともに、各種のセグメントに対応した接続部を介して上部および下部の接続覆工を接続するだけで、トンネル合流部を構築することができる。
【0012】
一方、本発明のトンネル施工方法は、前記いずれかのトンネル接続構造を用いたトンネル施工方法であって、前記第1および第2のトンネル施工後に、場合によっていずれかのトンネル内空側から反対側のトンネルまでパイプルーフを施工し、トンネル内から上部接続覆工および下部接続覆工を設置する位置の周囲を地盤改良して周辺地盤を安定化させ、その後、支保工を設置して前記第1覆工および第2覆工を支持し、トンネル内空の地盤を部分的に掘削してから、場合によって前記パイプルーフのトンネル内空側から地盤に放射状にロックボルトを施工し、前記上部接続覆工および下部接続覆工を構築し、撤去部覆工および支保工を撤去することを特徴とする。
ここで、支保工はH鋼等の鋼製部材をボルト等の部材で固定する形式であれば施工時間が短縮できるため好ましい。
この際、上部接続覆工の設置位置周辺の地盤改良範囲を小さくするために、予め前記第1および第2トンネル施工後に、両トンネル内からそれらの断面を結ぶように曲線パイプルーフを施工し、その周囲のみ地盤改良を実施してもよいし、上部接続覆工の設置位置の周辺の地山の崩落防止のために、地盤改良に加えロックボルトを施工してもよい。さらに、曲線パイプルーフを設置する場合は、上部接続覆工設置後に、パイプルーフと上部接続覆工で構成される空間に埋め戻しを行うことが好ましい。
このような施工方法によれば、パイプループの剛性を活用して周辺地盤を支えることができるため、地盤改良範囲や掘削範囲を最小化でき、工事コストの削減につながるとともに、施工時の地山崩落に対する安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上のような本発明のトンネル接続構造およびトンネル施工方法によれば、トンネルの離間距離に応じて接続覆工に適宜なライズを確保することで、作用する土圧に対してアーチ効果を活用しトンネルの変形を抑制することができるため、トンネル上部の地盤沈下量を小さくすることができる。これによって、トンネル覆工厚を増加させず、また、既存建物や設備等への対処工事などが不要になることから、周辺工事を含めたトンネル工事全体の施工コスト低減や工期短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の接続構造を用いたトンネル合流部を示す断面図である。
【図2】前記トンネル合流部の他の形状を示す図である。
【図3】前記トンネル合流部のさらに他の形状を示す図である。
【図4】前記トンネルのさらに他の形状を示す図である。
【図5】前記トンネルのさらに他の形状を示す図である。
【図6】前記トンネルのさらに他の形状を示す図である。
【図7】前記トンネル合流部の実施例に係る解析モデルを示す図である。
【図8】前記実施例におけるライズ比と鉛直変位の関係を示すグラフである。
【図9】前記実施例におけるライズ比と変位剛性の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本発明のトンネル接続構造は、水平方向左右に隣り合う第1トンネルとしての本線トンネル1と第2トンネルとしての支線トンネル2とを接続してトンネル合流部3を構築するものである。本線トンネル1および支線トンネル2は、それぞれ図1の紙面奥行き方向であるトンネル前後方向に延びて構築されたシールドトンネルであって、本実施形態では、本線トンネル1および支線トンネル2の各中心O1,O2が距離(中心間距離)Lだけ離れて隣り合う位置における接続構造に関して説明する。なお、中心間距離Lは、トンネル前後方向の位置に応じて変動してもよい。
【0016】
また、本線トンネル1および支線トンネル2は、各々複数のセグメントをトンネル前後方向およびトンネル周方向に連結することで構成されている。すなわち、本線トンネル1および支線トンネル2は、シールドマシン(掘削機)で地山を掘削して形成される空間にセグメントを組み立てるとともに、組み立てたセグメントに反力をとってジャッキでシールドマシンを前進させ、さらに地山を掘削するという手順を繰り返して構築されるようになっている。ここで、各セグメントは、鉄筋コンクリートから形成されるRC造であってもよいし、鋼殻を有した鋼構造であってもよいし、さらには鋼殻の内部にコンクリートを中詰めした合成構造であってもよい。
【0017】
トンネル合流部3は、前述のようにして予め構築しておいた本線トンネル1および支線トンネル2の間に構築されるものであって、本線トンネル1の覆工の外側部からなる第1覆工11と、支線トンネル2の覆工の外側部からなる第2覆工21と、第1覆工11および第2覆工21の上端部間を接続する上部接続覆工4と、第1覆工11および第2覆工21の下端部間を接続する下部接続覆工5とを有して構成されている。また、第1覆工11以外の本線トンネル1の内側部分の覆工12および第2覆工21以外の支線トンネル2の内側部分の覆工22は、トンネル合流部3の構築後に除去されることで、トンネル合流部3の内部に大空間が形成されるようになっている。
【0018】
上部接続覆工4は、第1覆工11と接続される第1接続部41と第2覆工21と接続される第2接続部42とに渡って上方に凸な円弧状に形成されている。一方、下部接続覆工5は、上部接続覆工4と上下対称に形成されており、つまり第1覆工11と接続される第3接続部51と第2覆工21と接続される第4接続部52とに渡って下方に凸な円弧状に形成されている。そして、各接続部41,42,51,52の構造としては、各セグメントの材質や構造に応じて適宜な接続構造が選択可能であり、例えば、各接続部41,42,51,52を適宜なセグメントピースで構成して第1および第2覆工11,21に組み合わせてもよく、その場合には、適宜なアンカー材や機械式継手などを用いた接続構造が採用可能である。また、第1および第2覆工11,21や上部および下部接続覆工4,5が鋼製の場合には、これらと溶接接合によって接合される接続部41,42,51,52を用いてもよいし、第1および第2覆工11,21や上部および下部接続覆工4,5がRC造の場合には、現場打ちRC造やプレキャストRC造(PCa)の接続部41,42,51,52を用いてもよい。
【0019】
このような上部接続覆工4の形状は、以下のように設定されている。ここで、各部寸法の基準とするのは、本線トンネル1および支線トンネル2の各中心O1,O2を通る鉛直線である中心線P1,P2、第1および第2覆工11,21の断面(板厚)の中心線Q1,Q2、上部接続覆工4の断面(板厚)の中心線Rであり、中心線Q1,Q2と中心線Rとの交点を各々第1交点X1および第2交点X2とし、これらの交点X1,X2同士を結ぶ直線をライズ基準線Yとする。なお、下部接続覆工5は、上部接続覆工4と上下対称形状としているため、その形状の説明を省略する。
【0020】
上部接続覆工4の上方に凸な円弧形状つまりライズ形状は、第1接続部41の第1交点X1と第2接続部42の第2交点X2との離間距離aと、交点X1,X2を結ぶライズ基準線Yから上部接続覆工4の頂点Tまでの高さ寸法bとの関係、すなわちライズ比(b/a)で規定される。そして、本実施形態のトンネル合流部3において、上部接続覆工4(および下部接続覆工5)のライズ比(b/a)は、8%以上40%以下に設定されている。すなわち、ライズ比(b/a)は、以下の式(1)を満足するように設定されている。
0.08≦b/a≦0.4 …(1)
【0021】
また、上部接続覆工4と第1覆工11との接続位置は、第1接続部41の第1交点X1の位置で規定され、具体的には、第1交点X1と本線トンネル1の中心O1とを通る直線S1と、本線トンネル1の中心線P1との交差角度θ1によって規定される。一方、上部接続覆工4と第2覆工21との接続位置は、第2接続部42の第2交点X2の位置で規定され、具体的には、第2交点X2と支線トンネル2の中心O2とを通る直線S2と、支線トンネル2の中心線P2との交差角度θ2によって規定される。ここで、交差角度θ1,θ2は、各中心線P1,P2から外側に向かって正となるように設定する。そして、本実施形態のトンネル合流部3において、上部接続覆工4(および下部接続覆工5)の接続位置である交差角度θ1,θ2は、0°以上45°以下の範囲に設定されている。すなわち、交差角度θ1は、以下の式(2)を満足するように設定され、交差角度θ2は、以下の式(3)を満足するように設定されている。
0°≦θ1≦45° …(2)
0°≦θ2≦45° …(3)
【0022】
以上のように形状および接続位置を規定したトンネル合流部3の一例として、図1に示す上部接続覆工4(および下部接続覆工5)は、ライズ比(b/a)が25%に設定され、交差角度θ1が22.5°に設定され、交差角度θ2が22.5°に設定されている。また、図2に示すものでは、ライズ比(b/a)が8%に設定され、交差角度θ1が0°に設定され、交差角度θ2が0°に設定されている。さらに、図3に示すものでは、ライズ比(b/a)が40%に設定され、交差角度θ1が45°に設定され、交差角度θ2が45°に設定されている。
【0023】
図5に示すトンネルの施工手順は、本線トンネル1および支線トンネル2の施工後、いずれか一方のトンネル内から反対側のトンネルに向けて曲線パイプルーフ6を施工し、曲線パイプルーフ6から地盤改良材あるいは凍結材を地盤に注入して改良地盤7を形成する。さらにトンネル内から下部接続覆工を設置する位置の周辺地盤を地盤改良して安定化させて、支保工9を設置し、本線トンネル1および支線トンネル2の間の地盤を掘削する。次に、第1覆工11と第2覆工21間に各接続部41,42および上部接続覆工4を構築する。これと同様に、第1覆工11と第2覆工21間に各接続部51,52および下部接続覆工5を構築する。その後、撤去部覆工12,22および支保工9を撤去する。
また、図6に示すトンネルの施工手順は、基本的に図5のものと同様であるが、曲線パイプルーフ6の施工後に、曲線パイプルーフ6内から曲線パイプルーフ6に穿孔しロックボルト13を施工することが追加される。もしくはトンネル内から地山を削孔してロックボルト13を施工し、曲線パイプルーフ6と接続材(図示しない)を介して結合してもよい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明の実施例について、前記本線トンネル1、支線トンネル2およびトンネル合流部3をモデル化したFEM解析モデルを用い、ライズ比(b/a)および交差角度θ1,θ2をパラメータとして、周辺地盤からの荷重を作用させて上部接続覆工4の頂点Tの沈下量(鉛直変位)を検討した結果について説明する。
上部接続覆工4と第1および第2覆工11,21との接続位置である交差角度θ1,θ2のパラメータとして、それぞれ0°、22.5°、45°の3種類と−22.5°(比較例)とに設定するとともに、ライズ比(b/a)のパラメータとして、0%から40%までの範囲を設定した。
本実施例の解析モデルを図7に示す。解析モデルは、1リングの剛性一様モデルを用い、地盤を適宜なばねで評価する(図7(B) 参照)とともに、地盤側からの土圧および水圧を荷重として加えた(図7(A) 参照)。解析モデルにおける第1覆工11、第2覆工21、上部接続覆工4および下部接続覆工5は、鋼殻を有した鋼製セグメントで構成され、その断面は、図7(C)に示すように、桁高1000mm×板厚90mmの一対の主桁と、これらの主桁を地山側で連結する板厚6mmのスキンプレートとを有したものである。この解析モデルの諸元を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
図8および図9に解析結果に基づくライズ比と鉛直変位量およびライズ比と変位剛性の関係を表すグラフを示す。ここで、図9では、ライズ比(b/a)が0%の場合の鉛直変位量に対する他のモデルの鉛直変位量の比の逆数を変位剛性として表す。
図8に示すように、鉛直変位量は、交差角度θ1,θ2が0°、22.5°、45°のいずれの場合もライズ比(b/a)が0%から大きくなるに従って低下し、ライズ比(b/a)が20%程度で最小値となり、ライズ比(b/a)が20%から40%にかけて最小値を維持するか、若干増加する程度となっている。そして、図9に示すように、変位剛性は、交差角度θ1,θ2が0°、22.5°、45°のいずれの場合もライズ比(b/a)が8%程度から40%程度の範囲において、ライズ比(b/a)が0%の場合の2倍以上の曲げ剛性が確保されていることが解る。
【0027】
以上の実施例によれば、トンネル合流部3における上部接続覆工4のライズ形状および第1および第2覆工11,21との接続位置として、前記式(1)〜式(3)を満足していれば、上部地盤からの鉛直荷重に対して上部接続覆工4の鉛直変位量を抑えることができ、この変形に伴う上部地盤の沈下量を適宜に抑制することができる。従って、トンネル施工に際して上部地盤上に位置する既存建物や設備等への沈下の影響を最小化して、沈下を防止するための仮設工事や、既存建物や設備等への対処工事などを省略または削減することができ、周辺工事を含めたトンネル工事全体の施工コスト低減や工期短縮を図ることができる。
【0028】
また、図5に示すように、パイプルーフ6を上部接続覆工4の外側に施工し、地盤を凍結させた後に上部接続覆工4を施工することによって、地盤改良範囲を抑制できる。また、図6に示すように、パイプルーフ施工後にパイプルーフ6内から外側の周辺地盤にロックボルト13を施工することで、施工時の地山崩落への安全性を高めることができる。さらに、パイプルーフ6と本線トンネル1および支線トンネル2との接続部を剛結またはピン結合としてみなせる接続構造にすることにより、パイプルーフ6の本体剛性が活用できるため、上部接続覆工4の仕様を低減できる。また、パイプルーフ6の周囲を地盤改良する場合、施工時の止水を確実に実施するため、その材料は止水性の高いものあるいは止水性を高めることができるものが望ましい。また、下部接続覆工5の外側を地盤改良する際、施工時の止水を確実に実施するため、その材料は止水性の高いものが望ましい。なお、図4は完成時、図5は施工時のトンネル断面を示している。
【0029】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、下部接続覆工5を上部接続覆工4と上下対称に形成するものとしたが、これに限らず、上部接続覆工4と下部接続覆工5とで互いに異なるライズ形状や接続位置としてもよい。
さらに、前記実施形態では、本線トンネル(第1トンネル)1および支線トンネル(第2トンネル)2を複数のセグメントを組み合わせて構築されるシールドトンネルとしたが、これに限らず、第1および第2トンネルの構造および工法は適宜に選択した任意のものが適用可能である。
【0030】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0031】
1…本線トンネル(第1トンネル)、2…支線トンネル(第2トンネル)、3…トンネル合流部、4…上部接続覆工、5…下部接続覆工、6…曲線パイプルーフ、7,8…改良地盤、9…支保工、11…第1覆工、12…撤去部覆工、13…ロックボルト、21…第2覆工、22…撤去部覆工、41…第1接続部、42…第2接続部、51…第3接続部、52…第4接続部、a…接続覆工の接続部の離間距離、L…トンネル中心間距離、b…頂点高さ寸法、T…頂点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平方向に隣り合う第1および第2のトンネルを接続して1つのトンネル断面を構成するトンネル接続構造であって、
前記トンネルは、前記第1トンネルの覆工の外側部からなる第1覆工と、前記第2トンネルの覆工の外側部からなる第2覆工と、前記第1および第2の覆工の上部間を接続する上部接続覆工と、前記第1および第2の覆工の下部間を接続する下部接続覆工とを有して構成され、
少なくとも前記上部接続覆工は、前記第1覆工に接続される第1接続部と前記第2覆工に接続される第2接続部とに渡って上方に凸な円弧状に形成され、前記第1接続部および第2接続部の各位置において前記上部接続覆工に沿った接線と前記第1覆工および第2覆工のそれぞれに沿った接線とが一致しないことを特徴とするトンネル接続構造。
【請求項2】
請求項1に記載のトンネル接続構造において、
少なくとも前記上部接続覆工の形状は、前記第1接続部と第2接続部とを結ぶ直線からの当該上部接続覆工の頂点高さが、前記第1接続部と第2接続部との離間距離に対して8%程度以上40%程度以下に設定され、
前記第1接続部は、前記第1トンネルの中心を通る鉛直線から外側に向かって0°程度以上45°程度以下の範囲に設けられ、前記第2接続部は、前記第2トンネルの中心を通る鉛直線から外側に向かって0°程度以上45°程度以下の範囲に設けられていることを特徴とするトンネル接続構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のトンネル接続構造において、
少なくとも前記上部接続覆工の外周側に曲線パイプルーフが上に凸で位置し、この曲線パイプルーフと前記第1覆工および第2覆工との接続位置が前記第1接続部および第2接続部からそれぞれ離れて設けられていることを特徴とするトンネル接続構造。
【請求項4】
請求項3に記載のトンネル接続構造において、
前記曲線パイプルーフに加え、当該曲線パイプルーフのトンネル内空側から地盤に放射状にロックボルトが設けられ、当該曲線パイプルーフと接続されていることを特徴とするトンネル接続構造。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のトンネル接続構造において、
前記第1覆工および第2覆工と前記上部接続覆工および下部接続覆工とは、それぞれ鉄筋コンクリートから形成されるRC造、鋼殻を有した鋼構造、または鋼殻とコンクリートからなる合成構造、のいずれかの構造もしくはそれらの組合せからなる複数のセグメントで構成されていることを特徴とするトンネル接続構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載のトンネル接続構造を用いたトンネル施工方法であって、
前記第1および第2のトンネル施工後に、場合によっていずれかのトンネル内空側から反対側のトンネルまでパイプルーフを施工し、トンネル内から上部接続覆工および下部接続覆工を設置する位置の周囲を地盤改良して周辺地盤を安定化させ、その後、支保工を設置して前記第1覆工および第2覆工を支持し、トンネル内空の地盤を部分的に掘削してから、場合によって前記パイプルーフのトンネル内空側から地盤に放射状にロックボルトを施工し、前記上部接続覆工および下部接続覆工を構築し、撤去部覆工および支保工を撤去することを特徴とするトンネル施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−77447(P2012−77447A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220656(P2010−220656)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】