説明

ブレーキキャリパー構造

【課題】キャリパーの振動防止およびブリードスクリューの保護が可能で、かつキャリパーの簡素化や、軽量化を図ることができるブレーキキャリパー構造を提供する。
【解決手段】 ブレーキキャリパー構造10は、キャリパー12にシリンダ21を形成し、シリンダ21内のピストン18でパッド16,17をディスクロータ11に押し付けるものである。このブレーキキャリパー構造10は、キャリパー12に、シリンダ21内の空気を外部に排出するブリードスクリュー41を設けるとともに、キャリパー12の振動を抑える別体のバランスウエイト45を配設し、バランスウエイト45の先端部47aと車輪20の回転中心20aとの間の距離L1を、ブリードスクリュー41の先端部41aと車輪20の回転中心20aとの間の距離L2より大きくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はブレーキキャリパー構造に係り、キャリパーにピストンを収容し、収容したピストンでパッドを押圧し、押圧したパッドをディスクロータに押し付けるブレーキキャリパー構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ブレーキキャリパー構造は、車輪とともに回転するディスクロータの外周側にキャリパーを配置し、キャリパーにピストンを収容するシリンダを形成するとともに、シリンダ内にピストンを押し出す液体を充填し、液体の液圧でピストンを押圧してディスクロータにパッドを押し付けるように構成されている。
【0003】
このブレーキキャリパー構造においては、回転中のディスクロータにパッドを押し付けた際に、ディスクロータとパッドとの摩擦によりキャリパーなどが振動して鳴き音が発生する虞がある。
この鳴き音を抑えるために、キャリパーの所定位置に錘取付部を設け、この錘取付部に、所定重量の錘部材を取り付け、所定位置に取り付けた錘部材の重量でキャリパーの振動を抑えることでブレーキの鳴き音を防止するものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−50316号公報
【0004】
一方、ブレーキキャリパー構造は、例えば、ブレーキ系にブレーキ油を充填する際に、シリンダ内の空気を外部に排出するためにブリードスクリューをキャリパーに備える。
ブリードスクリューは、一例として、キャリパーにシリンダに臨む取付孔を形成し、この取付孔にねじ込むことにより取付孔を閉塞し、ねじ込み状態を緩めることにより取付孔を開口させるものである。
【0005】
ブリードスクリューは、例えば、ブレーキ系にブレーキ油を充填する際に、ブリードスクリューの取付孔に対するねじ込み状態を緩めておき、シリンダ内の空気を取付孔から外部に排出するものである。
ブレーキ系へのブレーキ油の充填が完了した後、ブリードスクリューを取付孔にきつくねじ込むことにより取付孔を閉塞する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このブリードスクリューを取付孔にねじ込んだ状態で、ブリードスクリューの先端部がキャリパーから突出する。
通常、自動車が雪道などを走行すると、ホイール内面に雪や氷が付着し、付着した雪や氷が固まることが考えられる。
【0007】
ホイール内面に付着した雪や氷が固まると、固まった雪や氷がホイール内面とともに回転して、ブリードスクリューに対して力を及ぼす虞がある。
このため、固まった雪や氷からブリードスクリューを保護するために、キャリパーに保護部材を一体に形成している。
【0008】
しかし、上述したように、キャリパーには、ブレーキの鳴き音を抑えるために、錘部材を取り付ける錘取付部を設ける必要がある。このため、キャリパーにブリードスクリューの保護部材を設けると、錘取付部と保護部材との2部材をキャリパーに設ける必要があり、キャリパーの構造が複雑になっていた。
さらに、キャリパーに錘部材と保護部材との2部材を設けるために、キャリパーの軽量化が妨げられていた。
【0009】
本発明は、キャリパーの振動防止およびブリードスクリューの保護が可能で、かつキャリパーの簡素化や、軽量化を図ることができるブレーキキャリパー構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、車輪とともに回転するディスクロータの外周側にキャリパーを配置し、キャリパーにピストンを収容するシリンダを形成するとともに、シリンダ内にピストンを押し出す液体を充填し、液体の液圧でピストンを押圧してディスクロータにパッドを押し付けるブレーキキャリパー構造において、前記キャリパーに、シリンダ内の空気を外部に排出するブリードスクリューを設けるとともに、キャリパーの振動を抑える別体のバランスウエイトを配設したブレーキキャリパー構造であって、前記バランスウエイトの先端部と前記車輪の回転中心との間の距離を、前記ブリードスクリューの先端部と車輪の回転中心との間の距離より大きくしたことを特徴とする。
【0011】
バランスウエイトの先端部と車輪の回転中心との間の距離を、ブリードスクリューの先端部と車輪の回転中心との間の距離より大きくした。
よって、ホイール内面に固まった雪や氷をバランスウエイトで除去して、ホイール内面に固まった雪や氷が、ブリードスクリューに対して力を及ぼさないようにする。
これにより、固まった雪や氷からブリードスクリューを保護することが可能になる。
したがって、バランスウエイトを、ブリードスクリューの保護部材と兼用することができ、キャリパーから保護部材を除去することができる。
【0012】
請求項2は、バランスウエイトを、ブリードスクリューからディスクロータに沿って延びた直線上に配設したことを特徴とする。
【0013】
ここで、ホイール内面に固まった雪や氷は、車輪が回転した際に、ディスクロータに沿った方向からブリードスクリューに向かって移動する。
そこで、請求項2において、バランスウエイトを、ブリードスクリューからディスクロータに沿って延びた直線上に配設した。
これにより、車輪の回転により、ホイール内面に固まった雪や氷がブリードスクリューに向かって移動した際に、ブリードスクリューに向かって移動する雪や氷を、バランスウエイトで除去することが可能になる。
したがって、ホイール内面に固まった雪や氷が、ブリードスクリューに対して力を及ぼさないようにすることができる。
【0014】
請求項3は、バランスウエイトを、ブリードスクリューの一方側および他方側の2箇所に配設したことを特徴とする。
【0015】
よって、車輪が前進方向あるいは後進方向のいずれの方向に回転した場合において、ブリードスクリューに向かって移動する雪や氷を、バランスウエイトで除去することが可能になる。
したがって、ホイール内面に固まった雪や氷が、ブリードスクリューに対して、より確実に力を及ぼさないようにすることができる。
【0016】
請求項4において、バランスウエイトは、ディスクロータに直交する方向の幅を、ブリードスクリューより大きくしたことを特徴とする。
【0017】
バランスウエイトの幅を、ディスクロータに直交する方向において、ブリードスクリューの幅より大きくすることで、ブリードスクリューに向かって移動する雪や氷を、ブリードスクリューの幅より大きな幅で除去することが可能になる。
したがって、ホイール内面に固まった雪や氷が、ブリードスクリューの側部に対して力を及ぼさないようにすることができる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明では、バランスウエイトを、ブリードスクリューの保護部材と兼用することで、キャリパーから保護部材を除去し、キャリパーの簡素化や、軽量化を図ることができるという利点がある。
【0019】
請求項2に係る発明では、バランスウエイトを、ブリードスクリューからディスクロータに沿って延びた直線上に配設ことで、固まった雪や氷からブリードスクリューを保護することができるという利点がある。
【0020】
請求項3に係る発明では、バランスウエイトを、ブリードスクリューの一方側および他方側の2箇所に配設することで、固まった雪や氷からブリードスクリューをより確実に保護することができるという利点がある。
【0021】
請求項4に係る発明では、バランスウエイトの幅を、ディスクロータに直交する方向において、ブリードスクリューの幅より大きくすることで、固まった雪や氷からブリードスクリューをより確実に保護することができるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」は運転者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側を示す。
【0023】
図1は本発明に係る第1実施の形態のブレーキキャリパー構造のバランスウエイト装着状態を示す斜視図であり、図2は第1実施の形態に係るブレーキキャリパー構造のバランスウエイト未装着状態を示す斜視図である。
ブレーキキャリパー構造10は、ディスクロータ11の外周11a側の上部にキャリパー12を配置し、このキャリパー12をキャリパーブラケット13を介して車体側14に設け、このキャリパーブラケット13で内側パッド(パッド)16および外側パッド(パッド)17(図4も参照)を支え、内側パッド16をピストン18(図4参照)で押圧することにより、内側パッド16および外側パッド17をディスクロータ11に押し付けるものである。
【0024】
ディスクロータ11は、車輪20とともに回転する円板状の部材である。
ピストン18は、キャリパー12のシリンダ21(図4参照)内に摺動自在に設けられている部材である。
【0025】
キャリパーブラケット13は、ねじ孔23…(…は複数を示す)にボルト24…をねじ結合することにより車体側14にボルト24…で取り付けられた部材である。
このキャリパーブラケット13は、後部に後保持部25を設け、前部に前保持部26を設け、後保持部25の外側端部および前保持部26の外側端部を略U字形のU形連結部27で連結した部材である。
【0026】
さらに、キャリパーブラケット13は、後保持部25の内側端部および前保持部26の内側端部にスライドピン28,28およびボルト29,29を介してキャリパー12を矢印a−b方向に移動自在に取り付ける。
【0027】
キャリパー12は、キャリパー本体31の後部から後アーム部32を後方に延ばし、キャリパー本体31の前部から前アーム部33を前方に延ばし、後アーム部32および前アーム部33をボルト29,29およびスライドピン28,28を介してキャリパーブラケット13(後保持部25および前保持部26)に取り付けたものである。
【0028】
このキャリパー12は、キャリパー本体31の上端部から車体外側に向けて連結部34を延ばし、連結部34の端部34aからディスクロータ11の半径方向内側に向けてサポート部35を延ばすことにより、キャリパー本体31を内側パッド16に臨ませ、サポート部35を外側パッド17に臨ませたものである(図4も参照)。
【0029】
加えて、キャリパー12は、キャリパー本体31の上前部に第1ボス37を設けるとともに、キャリパー本体31の上後部に第2ボス38を設け、第1ボス37のねじ孔39にブリードスクリュー41のねじ部42(図4参照)をねじ結合することにより、第1ボス37にブリードスクリュー41を設け、第2ボス38のねじ孔44にバランスウエイト45のねじ部46をねじ結合することにより、第2ボス38にバランスウエイト45を設け、バランスウエイト45をブリードスクリュー41の後方に配置したものである。
【0030】
ブリードスクリュー41は、第1ボス37のねじ孔39にねじ部42(図4参照)をねじ結合することにより、第1ボス37から上方に突出させた状態に取り付けた部材である。
このブリードスクリュー41は、第1ボス37に対するねじ結合を緩めることにより、シリンダ21内の空気を外部に排出するものである。
ブリードスクリュー41については、図4で詳しく説明する。
【0031】
バランスウエイト45は、キャリパー12に配設された別体の部材で、ねじ部46(図2参照)とナット部47とからなり、ナット部47の先端部47aまでの高さH1を大きく確保したものである。
【0032】
さらに、バランスウエイト45は、バランスウエイト45の先端部47aと車輪20の回転中心20aとの間の距離L1が、ブリードスクリュー41の先端部41aと車輪20の回転中心20aとの間の距離L2より大きくなるように形成されている。
これにより、ナット部47の先端部47aを、ブリードスクリュー41の先端部41aより高さH2だけ上方に突出させる。
【0033】
加えて、バランスウエイト45は、ブリードスクリュー41からディスクロータ11に沿って延びた直線19(図3参照)上で、かつブリードスクリュー41の後側(他方側)12bに位置するように配置されている。
【0034】
このバランスウエイト45は、回転中のディスクロータ11に、内側パッド16および外側パッド17を押し付けた際に、ディスクロータ11と、内側パッド16および外側パッド17との摩擦でキャリパー12が振動することを抑え、鳴き音が発生することを防ぐための部材である。
【0035】
図3は第1実施の形態に係るブレーキキャリパー構造を示す正面図である。
バランスウエイト45をブリードスクリュー41の後側12bに配置し、バランスウエイト45の先端部47aをブリードスクリュー41の先端部41aより高さH2(図1参照)だけ上方に突出させた。
このバランスウエイト45は、ディスクロータ11に直交する方向の幅W1が、ブリードスクリュー41の幅W2より大きく形成されている。
【0036】
これにより、車輪20(図1参照)のホイール内面66aに固まった雪や氷68(図5参照)が、ブリードスクリュー41からディスクロータ11に沿って延びた直線19上で、かつバランスウエイト45の後側からバランスウエイト45やブリードスクリュー41に向かって矢印cの如く移動する場合に、移動する雪や氷68をバランスウエイト45で除去して、ブリードスクリュー41に対して力を及ぼさないようにする。
すなわち、バランスウエイト45は、キャリパー12の振動を抑えるとともに、ブリードスクリュー41の保護部材としての役割を果たす。
【0037】
図4は第1実施の形態に係るブレーキキャリパー構造を示す断面図である。
第1ボス37に設けたブリードスクリュー41は、エア抜き孔51を下端部近傍から上方に延ばし、このエア抜き孔51を先端部41aに開口し、エア抜き孔51に小孔を連通し、この小孔を下部の凸状テーパ面53に開口させたものである。
ブリードスクリュー41の凸状テーパ面53が当接する凹状テーパ面54を、第1ボス37のねじ孔39(図1、図2も参照)の下部に形成する。
第1ボス31のねじ孔39を、連通孔55を介してシリンダ21内に連通する。
【0038】
ブリードスクリュー41のねじ部42を、第1ボス37のねじ孔39にねじ結合することで、ブリードスクリュー41の凸状テーパ面53と、第1ボス37の凹状テーパ面54とが当接する。
これにより、前記小孔が、第1ボス37の凸状テーパ面53で閉じられ、エア抜き孔51をシリンダ21内から遮断する。
【0039】
ブリードスクリュー41のねじ部42を緩めることにより、ブリードスクリュー41の凸状テーパ面53を第1ボス37の凹状テーパ面54から離す。
これにより、前記小孔を介してエア抜き孔51をシリンダ21内に連通し、シリンダ21内の空気を、小孔およびエア抜き孔51を介して外部に排出する。
【0040】
シリンダ21は、キャリパー12のキャリパー本体31に形成されている。このシリンダ21内にピストン18が摺動自在に設けられている。
このピストン18で、外側パッド17および内側パッド16をディスクロータ11に押し付ける。
【0041】
ここで、外側パッド17を、外側裏板57および外側摩擦材58で構成し、外側摩擦材58をディスクロータ11の外面11bに臨ませる。
内側パッド16を、内側裏板61および内側摩擦材62で構成し、内側摩擦材62をディスクロータ11の内面11cに臨ませる。
【0042】
内側裏板61に臨ませてピストン18を配置し、ピストン18をシリンダ21内に摺動自在に設ける。シリンダ21内には配管64を経てブレーキ油(液体)が充填されている。
このブレーキ油に、ブレーキ作動圧(液圧)をかけることにより、ブレーキ作動圧でピストン18を押圧する。これにより、ピストン18で内側裏板61を押圧する。
内側裏板61を押圧することにより、内側摩擦材62をディスクロータ11の内面11cに矢印F1の如く押し付ける。
【0043】
内側摩擦材62をディスクロータ11に矢印F1の如く押し付けることにより、キャリパー12が矢印a方向に移動する。
キャリパー12が矢印a方向(図1も参照)に移動することで、キャリパー12のサポート部35で外側裏板57を押圧する。
【0044】
外側裏板57を押圧することにより、外側摩擦材58をディスクロータ11の外面11bに矢印F2の如く押し付ける。
ここで、矢印F1と矢印F2との押圧力は同一の大きさである。
【0045】
次に、ブレーキキャリパー構造10の作用を図5に基づいて説明する。
図5は第1実施の形態に係るブレーキキャリパー構造のバランスウエイトでブリードスクリューを保護する例を説明する図である。
車両(図示せず)が前進走行することにより、車輪20(図1参照)と一体にディスクロータ11が矢印dの如く回転する。
この状態において、ピストン18(図4参照)で内側裏板61を押圧して、内側摩擦材62を、回転中のディスクロータ11に押し付ける。
【0046】
同時に、キャリパー12が矢印aの如く移動してキャリパー12のサポート部35で外側裏板57を押圧する。
外側裏板57を押圧し、外側摩擦材58を、回転中のディスクロータ11に押し付ける。
【0047】
この際に、ディスクロータ11と内側摩擦材62との摩擦、およびディスクロータ11と外側摩擦材58との摩擦でキャリパー12が振動することが考えられる。
しかし、キャリパー12にバランスウエイト45を設けることで、ディスクロータ11と、内側パッド16および外側パッド17との摩擦でキャリパー12が振動することを抑える。これにより、制動の際に、ブレーキの鳴き音が発生することを防ぐ。
【0048】
ところで、車両(図示せず)が雪道などを走行すると、ホイール66の内面66aに雪や氷68が付着し、付着した雪や氷68が固まることが考えられる。
ホイール66は、車輪20(図1参照)のタイヤ(図示せず)を支える部材である。
【0049】
ホイール66の内面66aに雪や氷68が固まると、固まった雪や氷68がホイール66とともに矢印eの如く回転する。
これにより、固まった雪や氷68は、バランスウエイト45およびブリードスクリュー41に向けて、ブリードスクリュー41からディスクロータ11に沿って延びた直線19(図3参照)上で、かつブリードスクリュー41の後側から移動する。
ホイール内面66aに固まった雪や氷68が、バランスウエイト45に当たって、バランスウエイト45で除去される。
【0050】
ここで、バランスウエイト45を、ブリードスクリュー41からディスクロータ11に沿って延びた直線19(図3参照)上で、かつブリードスクリュー41の後側12bに配置した。
さらに、バランスウエイト45の先端部47aをブリードスクリュー41の先端部41aより高さH2だけ突出させた。
加えて、バランスウエイト45の幅W1(図3参照)を、ディスクロータ11に直交する方向において、ブリードスクリュー41の幅W2(図3参照)より大きく形成した。
【0051】
これにより、ホイール内面66aに固まった雪や氷68を、バランスウエイト45で除去することで、雪や氷68がブリードスクリュー41に干渉することを防ぐ。
したがって、ホイール内面66aに固まった雪や氷68が、ブリードスクリュー41に対して力を及ぼさないようにして、ブリードスクリュー41を、固まった雪や氷68から保護する。
【0052】
以上説明したように、バランスウエイト45は、キャリパー12の振動を抑えるとともに、ブリードスクリュー41を保護することができる。
【0053】
次に、第2実施の形態のブレーキキャリパー構造について説明する。なお、第2実施の形態のブレーキキャリパー構造において、第1実施の形態のブレーキキャリパー構造10と同一類似部材については同一符号を付して説明を省略する。
【0054】
図6は本発明に係る第2実施の形態のブレーキキャリパー構造を示す斜視図である。
第2実施の形態のブレーキキャリパー構造80は、キャリパー12のうち、ブリードスクリュー41からディスクロータ11に沿って延びた直線19(図3参照)上で、かつブリードスクリュー41の前側(一方側)12aに第3ボス81を設け、第3ボス81にバランスウエイト82を設けた点で第1実施の形態のブレーキキャリパー構造10と異なるだけで、その他の構成は第1実施の形態のブレーキキャリパー構造10と同じである。
【0055】
すなわち、ブレーキキャリパー構造80は、バランスウエイト45をブリードスクリュー41の後側(他方側)12bに配置するとともに、バランスウエイト82をブリードスクリュー41の前側(一方側)12aに配置することで、ブリードスクリュー41の後側12bおよび前側12aの2箇所にバランスウエイト45,82を配置したことを特徴とする。
【0056】
第3ボス81は、第2ボス38と同じ部材である。
バランスウエイト82は、バランスウエイト45と同じ部材である。
【0057】
第2実施の形態のブレーキキャリパー構造80によれば、第1実施の形態のブレーキキャリパー構造10と同様の効果を得ることができる。
【0058】
加えて、第2実施の形態のブレーキキャリパー構造80によれば、車輪20が前進方向あるいは後進方向のいずれの方向に回転した場合でも、ブリードスクリュー41に向かって移動する雪や氷68(図5参照)を、バランスウエイト45,82で除去することが可能になる。
したがって、図5に示すホイール内面66aに固まった雪や氷68が、ブリードスクリュー41に対して、より確実に力を及ぼさないようにすることができる。
【0059】
なお、前記第1実施の形態では、バランスウエイト45のねじ部46を、第2ボス38のねじ孔にねじ結合した例について説明したが、これに限らないで、バランスウエイト45を第2ボス38に圧入することや、接着剤で貼り付けることも可能である。
また、前記第2実施の形態で例示したバランスウエイト82も、バランスウエイト45と同様に、圧入や、接着剤による貼り付けで取り付けることも可能である。
【0060】
さらに、前記第1実施の形態では、ブリードスクリュー41の後側12bのみにバランスウエイト45を配設した例について説明したが、これに限らないで、ブリードスクリュー41の前側12aのみにバランスウエイト45を配設することも可能である。
【0061】
また、前記第1、第2の実施の形態では、理解を容易にするために、ブリードスクリュー41にゴムキャップ(図示せず)を被せない場合を例示したが、ブリードスクリュー41にゴムキャップを被せた場合でも、バランスウエイト45、82は高さ、幅ともにブリードスクリュー41のゴムキャップより大きく設定することで、第1、第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
ここで、ゴムキャップとは、ブリードスクリュー41のエア抜き孔51(図4参照)を保護するために、ブリードスクリュー41の先端部41aに被せる一般に用いられるキャップである。
【0062】
さらに、前記第1、第2の実施の形態では、バランスウエイト45の幅W1を、ディスクロータ11に直交する方向において、ブリードスクリュー41の幅W2より大きく形成した例について説明したが、これに限らないで、バランスウエイト45の幅W1と、ブリードスクリュー41の幅W2とを任意に設定することも可能である。
【0063】
また、前記第1、第2の実施の形態では、ディスクロータ11の外周11a側の上部にキャリパー12を略横置きに配置し、ブリードスクリュー41の前方にバランスウエイト45を配置した例について説明したが、これに限らないで、例えば、ディスクロータ11の外周11a側の前部にキャリパー12を縦置きに配置しても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、キャリパーにピストンを収容し、収容したピストンでパッドを押圧し、押圧したパッドをディスクロータに押し付けるブレーキキャリパー構造への適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明に係る第1実施の形態のブレーキキャリパー構造のバランスウエイト装着状態を示す斜視図である。
【図2】第1実施の形態に係るブレーキキャリパー構造のバランスウエイト未装着状態を示す斜視図である。
【図3】第1実施の形態に係るブレーキキャリパー構造を示す正面図である。
【図4】第1実施の形態に係るブレーキキャリパー構造を示す断面図である。
【図5】第1実施の形態に係るブレーキキャリパー構造のバランスウエイトでブリードスクリューを保護する例を説明する図である。
【図6】本発明に係る第2実施の形態のブレーキキャリパー構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0066】
10…ブレーキキャリパー構造、11…ディスクロータ、11a…外周、12…キャリパー、12a…前側(一方側)、12b…後側(他方側)、16…内側パッド(パッド)、17…外側パッド(パッド)、18…ピストン、19…ブリードスクリューからディスクロータ11に沿って延びた直線、20…車輪、21…シリンダ、41…ブリードスクリュー、41a…ブリードスクリューの先端部、45,82…バランスウエイト、47a…バランスウエイトの先端部、20…車輪、20a…車輪の回転中心、L1…バランスウエイトの先端部と車輪の回転中心との間の距離、L2…ブリードスクリューの先端部と車輪の回転中心との間の距離、W1…バランスウエイトの幅、W2…ブリードスクリューの幅。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪とともに回転するディスクロータの外周側にキャリパーを配置し、キャリパーにピストンを収容するシリンダを形成するとともに、シリンダ内にピストンを押し出す液体を充填し、液体の液圧でピストンを押圧してディスクロータにパッドを押し付けるブレーキキャリパー構造において、
前記キャリパーに、シリンダ内の空気を外部に排出するブリードスクリューを設けるとともに、キャリパーの振動を抑える別体のバランスウエイトを配設したブレーキキャリパー構造であって、
前記バランスウエイトの先端部と前記車輪の回転中心との間の距離を、前記ブリードスクリューの先端部と車輪の回転中心との間の距離より大きくしたことを特徴とするブレーキキャリパー構造。
【請求項2】
前記バランスウエイトを、前記ブリードスクリューから前記ディスクロータに沿って延びた直線上に配設したことを特徴とする請求項1記載のブレーキキャリパー構造。
【請求項3】
前記バランスウエイトを、前記ブリードスクリューの一方側および他方側の2箇所に配設したことを特徴とする請求項1または請求項2記載のブレーキキャリパー構造。
【請求項4】
前記バランスウエイトは、前記ディスクロータに直交する方向の幅を、前記ブリードスクリューより大きくしたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のブレーキキャリパー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−90341(P2006−90341A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272745(P2004−272745)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】