説明

酸化ストレスを用いるレトロウイルスレゼルボアの処置

HIV−1複製の活性化は、酸化ストレスを誘発し、次いでHIV−1複製を増強する。本発明の化合物における共通の基盤は、A)HIV−1を潜伏から再活性化する能力、およびB)酸化ストレスの効果を制限するように活性化する細胞機構に対抗する能力である。この方法においては、酸化ストレスを増強することが可能であり、かつ「連鎖反応」が誘発される。この「連鎖反応」は、HIV−1の潜伏からのより効率的な再活性化を誘発し、いくつかの場合、感染細胞の選択的殺滅を誘発する。作用A)およびB)は、両方の効果を発揮する1つの薬剤によって行われ得るか、あるいは異なる薬剤の併用によって得られる。酸化ストレスに対抗する2つの主要な細胞機構、すなわちチオレドキシン(Trx)、チオレドキシンレダクターゼ(TrxR)系およびグルタチオンが存在する。本明細書中では、2つの機構のいずれかを遮断することによって作用B)を発揮する能力がある薬剤戦略について提示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、潜伏ウイルスレゼルボア、特にHIV−1の処置における特定の化合物または化合物の組み合わせの使用に関する。ウイルスレゼルボアの処置は、酸化ストレスの利用、すなわち薬剤リポジショニングアプローチによるものである。化合物は、金含有化合物、例えばオーラノフィン、ヒ素含有化合物、例えば三酸化ヒ素、およびBSOと併用されるHDAC阻害剤を含む。
【背景技術】
【0002】
序論
身体からのHIV−1感染の根絶は、現行の抗レトロウイルス療法(ART)によって標的化されることも免疫系によって認識される可能性もない、主にメモリーCD4Tリンパ球によって表される潜伏ウイルスレゼルボアの存在下で、極めて困難な状況に直面している。このため、いわゆる「ショックおよび殺滅(shock and kill)」戦略が、a)ウイルス発現に起因するウイルス拡散を抑制するための、増強されたARTの存在下での潜伏感染細胞内でのウイルス抗原発現の刺激(すなわち「ショック」段階)と、b)免疫系または他の手段による潜伏感染細胞の殺滅(すなわち「殺滅」段階)とに基づいて提起されている[Hamer、2004年]。これらの段階の各々においては、有効な薬剤が広く探索されている。
【0003】
従来の薬剤発見は、標的の発見および検証、ハイスループットスクリーニングによるリードの同定、ならびに医薬品化学によるリードの最適化を含む。他の薬剤開発戦略は、非感染性疾患の治療用に既に認可されており、かつ、その標的が特に治療法の探索過程にある疾患に興味深い、確立された薬剤の利用である[Duenas-Gonzalezら、2008年]。この戦略は、薬剤リポジショニング(drug repositioning)、または適応変更(indication switch)とも称される[Duenas-Gonzalezら、2008年]。薬剤リポジショニングの1つの成功例が、クロロキンによって示される。クロロキンは、抗マラリア剤としての使用に加え、関節リウマチなどの自己免疫疾患の処置において使用されており、現在、特定のタイプの癌およびウイルス感染の処置における有望な薬剤として臨床試験中である[Savarinoら、2006年;Savarinoら、2007年]。
【0004】
HIV−1根絶戦略の「ショック」段階に関し、現在抗癌剤として臨床試験中であるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACI)が提案されている[Demonteら、2004年;Maiら、2009年]。残念ながら、静止状態からのHIV−1活性化に対して現在使用可能な化合物の効果は毒性と関連している[Duvergerら、2009年]。最近、クラスおよびアイソフォームに特異的なものである、潜伏からのHIV−1回避を誘発するエピジェネティック薬である新HDACI)が発見されている[Maiら、2009年]。これらの化合物は、クラスI群に属するヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)を特異的に阻害し、HIV−1潜伏の維持に特異的に関与する。しかし、毒性は大きな懸念として残る。さらに、これらの薬剤は、クラスに非特異的な前の世代のHDACiと同様、潜伏感染細胞集団内の細胞のすべてにおいて、HIV−1活性化を誘発することができるわけではない。これは、異なる細胞内でHIV−1潜伏を維持する異なるクロマチン環境が存在することを示唆している。したがって、HIV−1をレゼルボアから効率的に除去するために、様々な刺激が必要となる。
【0005】
これに関して、酸化ストレスは、ウイルス/宿主相互作用における重要な領域であると考えられる。金属イオン、および他のチオール−反応性化学種は、酸化ストレスの発生において重要な役割を果たし得る。フェントン反応を通じてヒドロキシルラジカルを生成することが示されている金属イオンの鉄は、生産的HIV−1感染細胞内で増加し、インビトロでHIV−1複製を促進することが見出された[Savarinoら、1999年]。しかし現在、この金属は、インビボでのその投与の副作用および複雑性に起因し、HIV−1再活性化戦略において場を見出す可能性は低い。この金属は、鉄担体の吸着および生体内分布が少ないことを考慮すると、潜伏レゼルボアからの効率的なHIV−1活性化にとって十分な血漿レベルに達する可能性は低い。
【0006】
鉄以外の金属が酸化ストレスを誘発することがある。かかる金属の1つが金である[Sannellaら、2009年]。金含有化合物は、関節リウマチの処置において有用であることが示されており[Patai、1999年]、また抗癌戦略において検討されている。抗癌治療におけるそれらの提示された有用性は、それらの抗増殖特性に起因する。抗腫瘍活性のある金錯体におけるリード構造は、オーラノフィンであり(図1)、その金(I)中心原子ならびにトリエチルホスフィンおよび炭水化物リガンドによって特徴づけられる。しかし、オーラノフィンは、HIV活性化を休止させること、すなわち潜伏性を維持することが示されている(Jeonら、2000年;Traberら、1999年)。
【発明の概要】
【0007】
HIV−1複製の活性化は、酸化ストレスを誘発し、次いでHIV−1複製を増強することは周知である。本発明の化合物における共通の基盤は、A)HIV−1を潜伏から再活性化する能力、およびB)酸化ストレスの効果を制限するように活性化する細胞機構に対抗する能力である。この方法では、酸化ストレスを増強することが可能であり、ある種の「連鎖反応」が引き起こされる。この「連鎖反応」はHIV−1の潜伏からのより効率的な再活性化を誘発し、いくつかの場合、感染細胞の選択的殺滅を誘発する。作用A)およびB)は、両方の効果を発揮する1つの薬剤によってなされ得るか、あるいは異なる薬剤の併用によって得られる。酸化ストレスに対抗する2つの主要な細胞機構、すなわちチオレドキシン(Trx)チオレドキシンレダクターゼ(TrxR)系およびグルタチオンが存在する。本明細書中では、2つの機構のいずれかを遮断することによって作用B)を発揮する能力がある薬剤戦略について示す。
【0008】
オーラノフィンが、HIV−1静止の細胞系モデルにおいて、HIV−1を活性化し得るか否か、またそれをいかにして活性化し得るかを試験するために実験を行った。驚くべきことに、金(I)含有化合物オーラノフィンが静止状態からのHIV−1活性化の強力な誘発剤であり、それ故にHIV−1根絶にとって有用であることを示している。オーラノフィンは、潜伏レトロウイルスのレゼルボアの活性化において顕著な活性を示す。そこで、これは、レトロウイルス感染を低減または除去するための治療法において、既知の抗レトロウイルス療法または治療(ART)と併用し得る。オーラノフィンのHIV−1再活性化に対する効果は、別の個所で考察されるように、この薬剤が逆に作用する(HIVを休止させる)と考えられていたことから、特に驚くべきことである。
【0009】
詳細には、オーラノフィンは、(前記レトロウイルスの)潜伏レゼルボアからのレトロウイルスの複製を刺激することが見出されており、従来の抗レトロウイルス療法と併用して、これらのレゼルボアを低減または除去することが可能である。さらに、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)、鉄ニトリロアセテートおよびブチオニンスルホキシミンはそれぞれ、オーラノフィンのHIV−1潜伏に対抗する能力を実質的に増強することが見出されている。
【0010】
驚くべきことに、ヒ素含有化合物と、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤とブチオニンスルホキシミン(BSO)などのグルタチオン合成阻害剤との併用が、潜伏感染細胞の処置においても有効であることも見出している。特に、該活性剤は、非感染細胞ではなく感染細胞を標的化し、選択的に殺滅することが可能である。
【0011】
したがって、特定の酸化ストレス誘導剤は、レトロウイルスレゼルボアの処置において有用である。
【0012】
したがって、第1の態様では、レトロウイルスレゼルボアの処置における酸化ストレス誘発剤の使用が提供され、ここでの酸化ストレス誘発剤は、非鉄金属薬であるエピジェネティック調節剤(epigeneitic modulator)である。
【0013】
誘発剤は、非鉄金属薬のエピジェネティック(epigeneitic)調節剤、例えば金含有化合物、例えばオーラノフィン、またはヒ素含有化合物、例えば三酸化ヒ素、またはヒストン脱アセチル化酵素阻害剤とブチオニンスルホキシミンなどのグルタチオン合成阻害剤との併用である。例えば、シスプラチンは、金属薬であるが、エピジェネティック特性を有しない。酸化ストレス誘発剤は、酸化促進剤分子であってもよい。
【0014】
本金属薬は、金属イオンを含み、かつ、生物学的活性を有する化合物である。これらの金属薬は、細胞内部での遺伝子発現特性の再編成を誘発することが可能な金属を含む。これを利用し、潜伏からのHIV−1活性化を誘発することが可能である。本金属薬は、特定の化学特性も有し得る。一般に、それらは1価の正電荷を有するイオンを放出できることが好ましい。任意選択により、それらは特定のステアリン酸の要件も満たし得る。
【0015】
例えば、金(I)含有化合物は、これらの基準を十分に満たす。これらの化合物は、放出される、有機担体および金(I)イオンから構成され得る。本発明は任意の特定の機序に関連しないが、金の原子サイズ(約174pm)は、このタンパク質の生物学的活性にとって基本的なシステイン/セレノシステインとの複合体を形成するためのTrxRの活性部位における挿入を可能にする。三次元構造は、Protein Data Bank内に認められ得る(登録番号:3H4K)。このようにして、TrxRの活性が阻害される。
【0016】
本金属薬の活性イオンは、金(I)イオンを再現することができる非金属イオンであってもよい。これに関連して、いくつかの半金属を含有する薬剤、例えば三酸化ヒ素(As)は、エピジェネティック金属薬として考慮してもよい。三酸化ヒ素は、1価の正電荷を有する一酸化ヒ素イオンを放出し、レダクターゼ中に存在するシステインまたはセレノシステインと共有結合付加体を形成するための構造的要件を満たす(ヒ素の原子サイズ:115pm;酸素の原子サイズ:60pm)。Trxスーパーファミリーメンバーとの複合体における酸化ヒ素の構造は、Protein Data Bankにおいて見ることができる(登録:1J9B)。この構造は、1つの類似する付加体がチオレドキシンレダクターゼで形成されることを強く示唆している。
【0017】
したがって、本金属薬によって放出されるイオンは、酸化によって専らPt(II)もしくはOpt(IV)イオンが得られることとなる白金、またはFe(II)もしくはFe(III)イオンが得られる鉄に由来しなくてもよく、金に対してより小さい原子サイズを有してもよい。したがって、鉄イオンまたは白金イオンを含む金属薬は、本発明から除外され、本発明の上記の金属薬のうち1つと組み合わされる場合に限って検討される。特に好ましい例が、金、好ましくは金(I)、またはヒ素イオンを含む化合物である。好ましい金含有化合物は、金塩または金誘導体を含む。オーラノフィンは特に好ましい。好ましいヒ素含有化合物は、酸化ヒ素などのヒ素を含み、白色ヒ素(Asであるが、Asとしても見出され得る)を含む。三酸化ヒ素(As)は特に好ましい。金(I)含有化合物および三酸化ヒ素によって共有される別の一般的活性は、スーパーオキシドジスムターゼ模倣体として作用する能力であり、それによってラジカル酸素種(ROS)の細胞内生成を促進する。ROSは、HIV−1を潜伏から活性化することで広く知られている。
【0018】
エピジェネティック調節剤は、DNAメチル化およびクロマチン再構成、すなわちDNA巻き込み(winding)および/または巻き戻し(unwinding)の役割を発揮し、それにより遺伝子発現を調節することは当該技術分野で既知である。
【0019】
非鉄金属薬のエピジェネティック調節剤は、酸化ストレスを誘発する能力がある。それはまた、好ましくは、チオレドキシンレダクターゼ(TrxR)を阻害し、および/またはスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)模倣体として作用する能力がある。金属薬は、好ましくは、チオレドキシンレダクターゼをその活性部位を遮断することによって阻害する。これは、これらのタンパク質の還元活性にとって重要であることが知られるセレノシステイン残基と直接複合化することによって達成できる。金属薬は、TrxRの合成をも抑制し得る。
【0020】
酸化促進剤分子、特にグルタチオン合成経路における制限酵素であるγ−グルタミルシステインシンテターゼの阻害剤も企図される[Anderson、1998年]。この酵素の好ましい阻害剤は、不可逆阻害剤であるブチオニンスルホキシミン(BSO)を含む。したがって、BSOはグルタチオン合成阻害剤であり、このような阻害剤も好ましい。阻害剤は、最も好ましくはヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)との併用で提供される。
【0021】
本発明の化合物(グルタチオン合成阻害剤とHDACiなどの併用を含んでもよい)は、選択的殺滅を行う能力がある。これは、非感染細胞ではなく潜伏感染細胞を標的化し、破壊する能力である。換言すれば、ウイルスレゼルボアを含む細胞は標的化されるが、非感染細胞は破壊されず、有利にも副作用の低下がもたらされる。標的細胞が移行性(transitional)メモリーT−CD4細胞(TTMs)またはセントラルメモリーT−CD4細胞(TCMS)であることは好ましい。これらは、抗レトロウイルス療法(ART)下でありかつ低いCD4カウントを示す個体における、HIV−1潜伏における主要なレゼルボアである[Chomontら、2009年]。セントラルメモリーT CD4細胞(TCMS)は、TTMSの前駆体であり、より安定したHIV−1レゼルボアを示す。したがって、本発明は、ウイルスレゼルボアを有する患者、特に低いCD4カウントを示す患者の処置において特に有用である。抗レトロウイルス療法(ART)は、これが他の細胞に感染する新たに形成されるウイルスの阻止に役立ち得ることから、前記患者であれば、これを受診中であるか、または受診したことがあるはずである。
【0022】
レトロウイルスレゼルボアを有すると疑われる患者を処置する方法であって、前記患者に、本明細書中に規定される酸化ストレス誘発剤(非鉄金属薬のエピジェネティック調節剤またはHDACiとグルタチオン合成阻害剤、例えばブチオニンスルホキシミンとの併用を含み得る)を投与する工程を含む方法も提供する。本方法は、(さらなる)ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)、BSO、金含有化合物、例えばオーラノフィン、ヒ素含有化合物、例えば三酸化ヒ素(As)および/または鉄ニトリロアセテートもしくは硫酸第一鉄のうち少なくとも1つを投与する工程をさらに含んでもよい。
【0023】
本発明はまた、レトロウイルスによって潜伏感染される細胞を選択的に標的化する方法であって、細胞を前記酸化ストレス誘発剤と接触させる工程を含む方法を提供する。
【0024】
したがって、HIV−1を潜伏から活性化させるだけでなく、HIV−1を静止状態で維持する細胞の抗酸化機構に対抗することが可能な戦略を提供する。エピジェネティック金属薬の場合、両活性は、同じ薬剤によって発揮される(HIV−1複製を活性化するROSの誘導および細胞の抗酸化剤タンパク質TrxRの阻害)。HDACIとBSOの併用の場合、これらの効果は、別々の薬剤(エピジェネティックHIV−1再活性化を誘発するHDACiと、細胞の還元ペプチドであるグルタチオンの合成を阻害するBSO)によって発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】オーラノフィン[金(1+);3,4,5−トリアセチルオキシ−6−(アセチルオキシメチル)オキサン−2−チオラート;トリエチルホスファニウム]の構造。
【図2】ACH−2細胞内でのオーラノフィンによるHIV−1複製の用量依存性刺激。グラフは、薬剤とのインキュベーションの3日目の、ACH−2細胞内でのHIV−1 p24生成の濃度依存性刺激を示す。x軸:薬剤濃度;y軸:HIV−1 p24における増加倍数(非処置培養物でのベースラインレベルの百分率の対数変換)。直線または曲線、データ点の最適なフィッティングが示される。
【図3】U1細胞内でのHIV−1複製に対するオーラノフィン(0.25μM)とMC2113(1μM)の併用効果。U1細胞は、単独薬剤または併用薬剤のいずれかとともにインキュベートされ、p24生成は治療の24時間後に評価した。この場合、相乗効果が明らかであったので、それは相乗作用表面の百分率を用いる分析を必要としなかった。
【図4】オーラノフィンによる緑色蛍光タンパク質(GFP)のLTR制御発現の用量依存性誘発。Jordanら(2003年)によって確立された、静止感染Tリンパ球性Jurkat細胞クローンを使用した。このクローン(すなわち8.4)は、LTRの制御下でありかつGFP遺伝子置換(GFP gene replacing)nefを示す全HIV−1ゲノムを有する。8.4細胞は、GFP発現の非有意な基礎レベルを示す。細胞は、異なる治療薬とともにインキュベートされ、72時間後、標準のフローサイトメトリー技術により、開口型(gated)生細胞内でのGFP発現を監視した。結果は、蛍光ヒストグラムとして示される。各ヒストグラムは、非感染Jurkat細胞を用いて確立された閾値を超える蛍光細胞の百分率を報告する。
【図5】オーラノフィンおよびクラスIヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(MC2113)による緑色蛍光タンパク質(GFP)のLTR制御発現の誘発。静止感染Jurkat8.4細胞は、臨床的に意義のある濃度のオーラノフィン(0.25μM)もしくは1μMのMC2113またはその双方で処置された。データは図4などにおいて示される。
【図6】異なるインキュベーション時間でのオーラノフィンによるNF−κB(p65/p50)核輸送の誘発。静止感染Jurkat8.4細胞は、オーラノフィン、すなわち臨床的に意義のある濃度のオーラノフィン(0.25μM)とともにインキュベートされ、核抽出物中でのp65の存在が、核因子比色分析アッセイによって定量された。結果は、TNF−αとともに1.5時間インキュベートされた細胞に由来する核抽出物中で得られるシグナルの百分率として示される。
【図7】ACH−2細胞内でのHIV−1複製の相乗刺激をもたらすオーラノフィンおよびFeNTAの併用効果。3D表面は、薬剤間の相乗作用を示す(x、y軸:薬剤濃度;z軸:2つの薬剤間の相乗作用の百分率)。相乗作用値の百分率は、次のように計算される、薬剤併用の効果と同等の濃度で個別投与されるオーラノフィンおよびFeNTAの効果の合計との間のパーセント差異を表す。PS=100・[EdrugA+drugB−(EdrugA+EdrugB)]/(EdrugA+EdrugB)(式中、PSは相乗作用の百分率でありかつEは薬剤濃度の効果であり、p24生成における増加倍数として表される)
【図8】ACH−2細胞内でHIV−1複製の相乗刺激をもたらす、オーラノフィンとブチオニンスルホキシミン(BSO)の併用効果。図面の解釈においては、読者は図7の説明に注意されたい。
【図9】ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)による細胞殺滅。パネルA〜B:HDACiで処置された潜伏感染ACH−2(パネルA)およびU1(パネルB)細胞におけるHIV−1 p24生成と、感染細胞生存度の阻害との間の相関。細胞は試験化合物(1μM)とともにインキュベートされ、細胞培養上清中でのp24生成がELISAによって測定された。上清の回収後、細胞生存度が高度に標準化されたメチルテトラゾリウム(MTT)法によって測定された。x軸:HIV−1 p24における増加倍数;データは非処置培養物中のベースラインレベルの百分率の対数変換として示された。y軸:同様の条件下でインキュベートされた非処置対照に対する、細胞生存度における百分率の減少。パネルC〜D:MC1855によるHIV−1に感染されたリンパ球性(パネルC)および単球性(パネルD)細胞培養物の選択的殺滅。非感染H9、およびU937、およびHIV−1感染H9IIIB、ACH−2、およびU1細胞は、試験化合物とともに数日間インキュベートされ、細胞生存度が上記のように測定された。x軸:薬剤濃度、y軸:非処置対照に対する、細胞生存度における百分率の減少。
【図10】ACH−2細胞内でのMS275によるHIV−1複製の用量依存性刺激。グラフは、薬剤とのインキュベーションの3日目におけるACH−2細胞内でのHIV−1 p24生成の濃度依存性刺激を示す。x軸:薬剤濃度;y軸:HIV−1 p24における増加倍数(非処置培養物中でのベースラインレベルの百分率の対数変換)。必要な場合、適切な変換を行い、データを正規化した。直線または曲線、データ点の最適なフィッティングが示される。
【図11】ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)とブチオニンスルホキシミン(BSO)との相乗作用。三次元(3D)グラフは、HDACiおよびBSOのそれぞれの間の相乗作用の3D表面を示す。x、y軸:薬剤濃度;z軸:2つの薬剤の間の相乗作用の百分率。相乗作用値の百分率は、次のように計算される、薬剤併用の効果と同等の濃度で個別投与されるMS275およびBSOの効果の合計との間のパーセント差異を表す。PS=100・[EdrugA+drugB−(EdrugA+EdrugB)]/(EdrugA+EdrugB)(式中、PSは相乗作用の百分率でありかつEは薬剤濃度の効果であり、p24生成における増加倍数として表される)
【図12】ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)とブチオニンスルホキシミン(BSO)との相乗作用。三次元(3D)グラフは、HDACiおよびBSOのそれぞれの間の相乗作用の3D表面を示す。x、y軸:薬剤濃度;z軸:2つの薬剤の間の相乗作用の百分率。相乗作用値の百分率は、次のように計算される、薬剤併用の効果と同等の濃度で個別投与されるMS275およびBSOの効果の合計との間のパーセント差異を表す。PS=100・[EdrugA+drugB−(EdrugA+EdrugB)]/(EdrugA+EdrugB)(式中、PSは相乗作用の百分率でありかつEは薬剤濃度の効果であり、p24生成における増加倍数として表される)
【図13】単独のまたはJurkat細胞クローン(A1)と併用される、MS−275およびブチオニンスルホキシミン(BSO)による緑色蛍光タンパク質(GFP)のHIV−1 LTR制御発現の刺激。潜伏HIV−1感染のためのモデルとしてJordanらによって確立された、Tリンパ球性Jurkat細胞由来のA1細胞クローン。このクローンは、HIV−1 LTRの制御下で組み込まれたGFP/Tatコンストラクトを有し、HIV−1プロモーターを活性化する刺激の後に増加するGFP発現細胞の基本的比例を示す。A1細胞を異なる治療薬とともに72時間インキュベートし、GFP発現を標準のフローサイトメトリー技術によって監視し、対照非形質移入Jurkat細胞を使用して確立された閾値を超える(各ヒストグラムにおいて示される)蛍光細胞の百分率として評価した。3つのうち1つの実験で同様の結果が得られた。二重薬剤(double-drug)治療から得られたヒストグラムは、同等の濃度での単一薬剤による処置から得られたものとは有意に異なる(P<0.01)ことが見出された(コルモゴロフ−スミルノフ統計)。
【図14】単独のまたは併用される、HDAC阻害剤、MS−275およびブチオニンスルホキシミン(BSO)の効果。細胞生存度値は、メチルテトラゾリウム(MTT)法による測定として、インキュベーションの72時間後に示される。ACH−2細胞(A)、Jurkat6.3細胞(B)、非感染Jurkat細胞(C)。結果は、バックグラウンドを差し引いた非処置対照における吸光度の百分率(λ=550)として示される(平均±SEM;3つの実験)。アスタリスクは、BSO処置と、BSOの不在下での同等の処置との間で見出される有意な差異を示す(P<0.05;**P<0.01;***P<0.001)。反復測定、two−way ANOVAおよびボンフェローニのポストテストを使用し、必要な場合、正規性を回復するための適切な変換に従って、統計的有意性を計算した。
【図15】三酸化ヒ素による緑色蛍光タンパク質(GFP)のLTR制御発現の用量依存性誘発。この実験では、HIV−1 LTRの制御下で組み込まれたGFP/Tatコンストラクトを有するTリンパ球性Jurkat細胞クローンA1を使用した。細胞を異なる治療薬とともにインキュベートし、72時間後、標準のフローサイトメトリー技術により、ゲート生細胞内でのGFP発現を監視した。結果は、蛍光ヒストグラムとして示される。各ヒストグラムは、非感染Jurkat細胞を使用して確立された閾値を超える蛍光細胞の百分率を報告する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
一態様では、レトロウイルスレゼルボアの処置における金含有化合物の使用が提供される。
【0027】
金含有化合物は、前記レトロウイルスのレゼルボアの認定されたモデルにおいてレトロウイルス複製を誘発する能力があることが好ましい。HIV−1の場合、このモデルは、例えばU1およびACH−2から選択してもよい。本発明の化合物は、約500%の増加倍数(%)に関する添付の実験セクションにおける下記のU1アッセイにおいて最小の活性を有することがさらに好ましい。
【0028】
好ましいレトロウイルスは、サルまたはヒトレンチウイルス、例えばHIVであり、例えばHIV−1は本発明の好ましい標的である。
【0029】
好ましくは、金含有化合物はオーラノフィンであり(図1)、これは、その金(I)中心原子ならびにトリエチルホスフィンおよび炭水化物リガンドによって特徴づけられる。他の関連の好ましい金錯体は、例えばクロロ類似体のEt3PAuClおよび金チオマレートを含む。これらは、いまだに研究中である複数の作用形式を有してもよい。オーラノフィンは最近、細胞内レドックス電位の酸化促進剤側への変化を誘発することが示された[Sannellaら、2008年]。活性種は、金イオン自体であることが多く、リガンドは、作用剤の生体内分布および動力学的特性に対してより関連性がある。HIV−1根絶戦略にとっての理想的な候補は、(HIV−1感染個体にとって有害な[Savarinoら、2000年])免疫活性化を誘発しないものである。したがって、有機金塩に抗炎症特性が与えられることは有利である。
【0030】
したがって、金(I)もしくは(II)イオンは生物学的利用が可能である。金含有化合物は錯体とも称され得ることは理解されるであろう。金含有化合物は、金をその(I)もしくは(II)酸化状態で含む場合があり、(I)が特に好ましい。本発明の金含有化合物は、金のイオン化合物または有機金化合物である。
【0031】
好ましくは、金含有化合物は、単独使用するか、またはHDACi、BSOおよび/または鉄ニトリロアセテート(iron nitoloacetate)の少なくとも1つと併用してもよい。BSOとの併用は好ましく、少なくとも1つのHDACiとの併用は特に好ましい。
【0032】
本発明はまた、レトロウイルスレゼルボアの処置において、非鉄金属薬エピジェネティック調節剤である酸化ストレス誘発剤と少なくとも1つのHDACiとの併用を提供する。酸化ストレス誘発剤は、最も好ましくは、金もしくはヒ素含有化合物、例えばオーラノフィンもしくは三酸化ヒ素、またはグルタチオン合成阻害剤、例えばBSOである。鉄ニトリロアセテートは、HDACiとの併用も企図される。
【0033】
HDACiが酸化ストレス誘導剤と考え得る限りでは、上述の酸化ストレス誘発剤は非HDACi酸化ストレス誘発剤である。換言すれば、本発明は、レトロウイルスレゼルボアの処置において、少なくとも1つのHDACと少なくとも1つの他の(非HDACi)酸化ストレス誘発剤との併用を提供することが可能である。他の(非HDACi)酸化ストレス誘発剤は、例えば、オーラノフィンまたはBSO、鉄ニトリロアセテートまたは硫酸第一鉄であってもよい。
【0034】
本使用に対応する治療の方法も企図される。
【0035】
鉄ニトリロアセテートに対する本明細書中での参照が、インビトロまたはインビボで同様の活性を有する鉄含有化合物の範囲にまで適用されることは理解されるであろう。別の好適な例が硫酸第一鉄である。したがって、同用語は、特に明確でない場合、交換可能である。
【0036】
酸化ストレスは、酸化ストレスを誘発するHIV−1複製およびHIV−1を静止状態から活性化する酸化ストレスとの二元相互作用により、HIV−1複製に関連することが示された[IsraelおよびGougerot-Pocidalo、1997年]。酸化ストレスに誘発される静止状態からのHIV−1活性化の背後にある機序は極めて多く、いまだにあまり検討されていない。酸化ストレスは、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)とヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)の活性の間のバランスをHAT活性の増大に向かわせることが示された[Rahmanら、2004年]。これは、DNA巻き戻しおよびHIV−1プロウイルスを含む数種の遺伝子の転写を支持する。それに対し、酸化ストレス誘導剤とHDACiの併用については検討されていない。
【0037】
オーラノフィンは、酸化ストレスを介してHIV−1の再活性化を必ずしも誘発することはなく、他の機序を介して作用し得る。本発明者らは、オーラノフィンがおそらくは新規機序によって静止状態からのHIV−1活性化を誘発することを示している。この薬剤がHIV−1を静止状態から活性化するという証拠は、LTR駆動性遺伝子発現が誘発可能な4つの異なる細胞系におけるその再現可能な効果から得られる。オーラノフィンが新規機序によってHIV−1遺伝子発現を活性化するという見解は、十分に特徴づけられた異なる機序によってHIV−1遺伝子転写を活性化することで知られる薬剤と組み合わされるその効果によって示唆され、その細胞内標的に対する現存する文献によって支持されている[Rigobelloら、2002年;Rigobelloら、2005年;Omataら、2006年;Talbotら、2008年]。
【0038】
オーラノフィンは、細胞内レドックスのホメオスタシスの維持に関与するセレノプロテインであるTrxRの阻害剤であることが示された[Rigobelloら、2002年;Rigobelloら、2005年;Omataら、2006年]。オーラノフィンはまた、TrxRの合成を阻害することが示された[Talbotら、2008年]。TrxRは、2つの主なアイソフォームである細胞質(TrxR1)およびミトコンドリア(TrxR2)の中に見出される[LuおよびHolmgren、2009年]。TrxRは、チオレドキシンを主とする数種類の物質を有する(Trx1は細胞アイソフォーム;Trx2はミトコンドリアアイソフォーム)。TrxRは、Trxを還元状態で維持し、次いで数種類の細胞内タンパク質を還元する。Trxは別として、TrxRは、TrxRの作用によって不活性化されるHIV−1 Tatを含む他の標的も還元する(Kalantariら、2008年)。
【0039】
この証拠に照らして、HIV−1再活性化に対するオーラノフィンの効果がTatによって媒介され得ることを推測することができるであろう。しかし、オーラノフィンは、不完全なTat/TAR軸を有するACH−2およびU1などの細胞系においてHIV−1誘発効果を発揮し、したがって、このことは他の標的がオーラノフィンのHIV−1誘発効果に関与することを示唆している。事実、オーラノフィンは、複数の細胞内標的に対して作用することが示された。この薬剤は、セレノプロテインに対するその効果以外に、タンパク質キナーゼC[Danielら、1995年]、カテプシン[ChircorianおよびBarrios、2004年]などのいくつかのキナーゼを阻害することが見出された。
【0040】
本発明者らの研究では、オーラノフィンは、フェントン反応を通じて反応性酸素種(ROI)を生成するFeNTAのHIV−1活性化効果を強力に促進した。さらに、オーラノフィンの効果は、グルタチオンの減少を誘発し、それ故に細胞が酸化ストレスに対抗する能力を低下させる化合物であるBSOによって促進された。他の筆者(Sannellaら、2009年)が報告するように、オーラノフィンが酸化促進剤効果を誘発する場合、その機序は、FeNTAおよびBSOなどの他の酸化促進剤分子の場合と異なる可能性がある。オーラノフィン単独のHIV−1活性化効果は、本明細書中でそのNF−κB活性化効果によって支持されている。酸化ストレスは、NF−κB(p65/p50)核転座を誘発することが示された[Rahmanら、2004年]。この核因子は、HIV−1 LTR上の特定の部位に結合し、プロウイルスゲノムの転写を促進する[Williamsら、2007年]。
【0041】
これに関連し、本発明者らは本試験において、オーラノフィンが、HIV−1複製を誘発する場合と同様の条件下でNF−κB核転座およびDNA結合を誘発することを見出している。これは、前報[Jeonら、2000年;Traberら、1999年]を踏まえると、実に驚くべき実験結果であった。本発明者らの結果と、NF−κB活性化に対するオーラノフィンおよび他の金含有化合物の阻害効果を示す先の試験の結果との明らかな差異[Jeonら、2000年;Traberら、1999年]は、採用された異なる薬剤濃度を考慮することによって調整することが可能である。NF−κB阻害を示すための先の試験において採用されたオーラノフィン濃度は、本試験において採用された濃度よりも約2桁高かった。関節リウマチの処置における臨床的に実現可能な濃度より高いかかる薬剤濃度は、本発明者らの細胞系に対して毒性があった(データは示さず)。代わりに、本発明者らは、オーラノフィンがHIVのサイレンシング、すなわち活性化に対して逆の効果を有することができることを示した。これは特に、当業者によって容易に決定されることになる好適な濃度での場合である。しかし、指針によると、関節リウマチの処置の間に認められる平均血漿レベルに近似する0.125〜0.5μMの濃度範囲を使用することが好ましい[Bennら、1991年、参照により本明細書中に援用される]。他の好ましい範囲は、0.1〜0.6、0.125〜0.3、0.2〜0.6、0.2〜0.7、0.125〜0.2および0.125〜0.175μMを含む。
【0042】
当業者は、これらをヒト用量にまで拡大してもよいが、次の範囲、すなわち0.025〜0.2mg/kg/日、0.02〜0.3mg/kg/日、0.01〜0.3mg/kg/日、0.005〜0.3mg/kg/日、0.03〜0.2mg/kg/日、0.03〜0.4mg/kg/日、0.025〜0.4mg/kg/日および0.02〜0.5mg/kg/日の任意の1つが好ましいことを理解するであろう。0.025〜02mg/kg/日の用量範囲が特に好ましい。
【0043】
オーラノフィン誘発性NF−κBの核転座は、オーラノフィンが酸化ストレスの誘発によってHIV−1を静止状態から活性化するという見解をさらに支持するが、NF−κBを、HIV−1複製に対するオーラノフィンの効果における主要なエフェクターとして示す証拠として把握することはできない。HIV−1 LTR上で潜在的に活性を示すいくつかの他の転写因子が、酸化ストレスによって活性化される[Wuら、2004年]。さらに、酸化ストレスは、HATの活性を増大させる方向でHDACおよびHATの活性の間のバランスを変化させる。これに関連して、オーラノフィンとHDACIとの相乗効果を見出している。
【0044】
金イオン(IおよびII)単独は弱いフェントン触媒であるが、金の有機複合体は、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)模倣体として作用することによりFe2+によって触媒されるフェントン反応を促進し得る[Huangら、2005年]。SOD模倣体は、超酸化物/過酸化物変換を触媒することにより、フェントン触媒によって消費される細胞内過酸化水素プールを補充し、それにより新しい基質をフェントン反応に提供し得る。SOD模倣およびTrxR阻害は、必ずしも互いに排他的ではなく、共通のバックグラウンドを有し得る。したがって、両方の機序が連携してHIV−1を静止状態から活性化させると仮定することは可能である。最後に、いまだ探索されていない機序として他のものがオーラノフィンのHIV−1活性化効果の基盤となり得ることを除外することはできない。
【0045】
本試験の結果は、静止状態からのHIV−1活性化の誘発における既存の薬剤に対する新たな用途を示唆する。それはまた、非毒性薬剤濃度でHIV−1を活性化する2薬併用に基づく新規の戦略を示唆する。オーラノフィンは、関節リウマチおよび白血病の処置に有効に使用される薬剤であり、本試験において、十分に特徴づけられ、ヒトの健康を脅かさないことが示されている毒性特性を有する臨床的に実現可能な濃度で静止状態からのHIV−1活性化を誘発することが見出された。さらに、有効なオーラノフィン濃度を、異なる機序によって作用するHDACIなどの他のHIV−1活性化剤の併用により、さらに減少させることが可能であることを示す。
【0046】
本発明者らの結果は、オーラノフィンが、関節リウマチの処置の間に認められる平均血漿レベルに近似する0.125〜0.5μMの濃度範囲内で、時間および用量依存性のHIV−1再活性化を誘発することを示した(P=0.0295、回帰におけるt検定;図5B)[Bennら、1991年]。HIV−1活性化を誘発するその能力と一致して、オーラノフィンは、HIV−1における重要な転写因子であるNF−κBの核転座を誘発した。静止状態からのHIV−1活性化に対するオーラノフィンの効果は、HIV−1複製を促進する他の化合物の効果に相加的または相乗的であった。これらは、DNA巻き戻しのエピジェネティック調節によってHIV−1転写を支持するヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACI)、反応性酸素種(ROI)の細胞内生成によってHIV−1転写を促進する鉄ニトリロアセテート、および細胞の酸化ストレスに対抗する能力を低下させるグルタチオン合成阻害剤であるブチオニンスルホキシミンを含む。これらの併用効果は、非感染細胞に対して毒性を示さない濃度での両オーラノフィンと上記薬剤の各々との併用を可能にする。
【0047】
ウイルスを身体から根絶できるHIV−1/AIDSに対する有望な治療を見出すことは、21世紀における主要な科学的課題である。本発明者らのさらなる検討手段は、抗レトロウイルス療法(ART)にもかかわらず存続する潜伏HIV−1レゼルボアの除去に有用な、有望な薬剤および薬剤の組み合わせを検討することを目的とする。これは、潜伏感染T細胞内でのHIV複製を誘発する一方、同時にARTを施すことによって非感染細胞に対する新規に生成されるビリオンの拡散を阻止することによって潜伏障壁を克服することを含む。ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)は、HIV−1根絶戦略における潜在的に有用なツールであることが仮定されており[Demonteら、2004年]、また、相対的に弱いHDACiであるバルプロ酸(VA)が、抗レトロウイルス療法と組み合わせて、インビトロで潜伏からのHIV−1回避を促進し、インビボで潜伏感染メモリーCD4細胞の数を減少させることが示された[Lehrmanら、2005年;Smith、2005年]。かかる戦略は「ショックおよび殺滅」と称されている[Hamer、2004年]。VA(ミリモル範囲内でのEC50)の低い効力は、HIV−1根絶を誘発できないことに寄与している可能性が高い。
【0048】
新規でより強力なHDACiは、腫瘍における分化を誘発することを目的として開発されている[MottetおよびCastronovo、2008年]。しかし、新しい作用剤の多くは、細胞周期において重要な役割を様々に発揮するHDACのあらゆるタイプに対する非特定の阻害剤である[Dokmanovicら、2007年]。クラスIのHDACは、HDAC1〜3および8を含み、主に核酵素であり、かつ偏在的に発現される[Annemiekeら、2003年]。クラスII HDACは、HDAC4〜7,9および10を含み、かつ核と細胞質の間を往復する[Annemiekeら、2003年]。HDAC1は、c−MycとLTRとの多重分子複合体中で作用することにより、HIV−1潜伏を維持する可能性が高い[Williamsら、2006年;Jiangら、2007年]。
【0049】
T細胞活性化に対抗する天然物質のプロストラチン(その機構はこれまで広く探索されていない)およびジアシルグリセロールラクトンの使用を含む、潜伏からのHIV−1回避を誘発するための他の戦略が探索されている[Hezareth、2005年;Hamer;2004年]。
【0050】
酸化ストレスは、HIV−1複製を促進する別の強力な手段である[Hulganら、2003年;Savarinoら;1999年;Garaciら、1997年;Palamaraら、1996年]。反応性酸素中間体は、高濃度のグルタチオンおよび他の抗酸化剤によって阻害され得る[Palamaraら1996年]、HIV−1転写および複製を促進する転写因子である核因子−κB(NF−κB)の活性化および核転座を促進する[BowieおよびO’Neill、2000年]。小分子のレドックス状態調節剤はこれまで、そのHIV−1根絶の可能性についてはあまり探索されていない。
【0051】
驚くべきことに、今や、HDACi阻害剤の2つのタイプであるベンズアミドおよびヒドロキサム酸が、好ましくはグルタチオン合成阻害剤、ブチオニンスルホキシミン(BSO)と併用して、潜伏レトロウイルスのレゼルボアの活性化において顕著な活性を示すことを見出している。これを治療において既知の抗レトロウイルス療法または治療(ART)と併用することで、レトロウイルス感染を低下または除去することが可能である。
【0052】
詳細には、ヒストン脱アセチル化酵素のベンズアミドおよびヒドロキサム酸阻害剤は、その潜伏レゼルボアからレトロウイルスの複製を刺激することが見出されており、これを従来の抗レトロウイルス療法と併用することで、これらのレゼルボアを低下または除去し得る。さらに、ブチオニンスルホキシミン(BSO)は、ベンズアミドHDACiの抗レトロウイルス活性を実質的に増強することが見出されている。BSOの類似体も好ましい。
【0053】
本発明の一態様では、レトロウイルスレゼルボアの処置において、ベンズアミドまたはヒドロキサム酸種のいずれかのヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)の使用が提供される。HDACiはBSOと併用されるのが特に好ましい。
【0054】
阻害剤が、前記レトロウイルスのレゼルボアの認定されたモデルにおいてレトロウイルス複製を誘発する能力があることは好ましい。HIV−1の場合、このモデルは、例えばU1およびACH−2から選択してもよい。本発明の化合物が、添付の実験セクションにおける下記のU1アッセイにおける800倍増加(%)の最小の活性を有することがさらに好ましい。
【0055】
金含有化合物のように、好ましいレトロウイルスは、例えばHIV−1などのサルまたはヒトレンチウイルスであり、HIV−1は好ましい標的である。
【0056】
したがって、HDACiは、本発明の多くの態様においては、例えば酸化ストレス誘導剤と併用し得る。酸化ストレス誘発剤は、金含有化合物、例えばオーラノフィン、ヒ素化合物、例えば三酸化ヒ素、またはグルタチオン合成阻害剤、例えばBSOを含んでもよい。本発明のすべての態様における使用を目的とする好ましいHDACiは下記に示される。
【0057】
いわゆる「古典的(classical)」HDIは、クラスIおよびクラスIIヒストン脱アセチル化酵素に対して作用する。古典的HDACiは、HDACの亜鉛含有触媒ドメインに結合する。これらの古典的HDIは、いくつかの集団に分類される。これらは、ヒドロキサム酸、例えばトリコスタチンA;環状テトラペプチド(トラポキシンBなど)、およびデプシペプチド;ベンズアミド;求電子性ケトン;ならびにフェニル酪酸およびバルプロ酸などの脂肪族酸化合物を含む。いわゆる「第2世代」HDIは、SAHA/ボリノスタット、ベリノスタット/PXD101、MS275、LAQ824/LBH589、CI994、およびMGCD0103を含む。サーチュインクラスIII HDACは、NAD+依存性であり、それ故、NAD、ジヒドロクマリン、ナフトピラノン、および2−ヒドロキシナフトアルデヒドの誘導体と同様、ニコチンアミドによって阻害される。特に、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)、特にオーラノフィンなどの金含有化合物との併用が好ましい。
【0058】
特に好ましいHDACiは、ベンズアミドHDACiである。これらは、式
【化1】

(式中、Yは、各々が不飽和または部分不飽和で、かつ、複素環式または単環式であり、2〜8個の連結原子を有する、1つもしくは2つの6員環を含み、連結原子または環のいずれかはアミノ基およびカルボニル基を含む。)
を有してもよい。
【0059】
より好ましいベンズアミドは、MC2211として同定される化合物の類似体であり、下記のMC2113およびMS275は特に好ましく、MS2113は最も好ましい。
【0060】
MC2211は、
【化2】

である。
【0061】
MC2113は、
【化3】

である。
【0062】
MS275すなわちN−(2−アミノフェニル)−4−[N−(ピリジン−3−イルメトキシカルボニル)アミノメチル]−ベンズアミド)は、EP1626719号に開示されており、構造
【化4】

を有する。
【0063】
好ましいヒドロキサム酸HDACiは、
【化5】

を有し、式中、Rは、直接結合またはエチレンもしくはエテニレン基、Xは、=CH−もしくは=N−、Rは、アリールまたはヘテロアリールであり、かつ、単環式もしくは二環式であり、Rは、直鎖もしくは分枝鎖アルキルであって、任意選択により単環式もしくは二環式アリールまたはヘテロアリール基によって置換されている。好ましくは、Rは、非置換のアルキル、好ましくはメチル、エチル、またはイソプロピルである。Rは、好ましくはフェニルまたはナフチルである。Rは、好ましくはエテニレンである。Xは、好ましくは=CH−である。好ましいHDACiは、クラスIのHDACiである。
【0064】
スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)などのヒドロキサム酸HDACiも好ましい。これはヒドロキサム酸を含有するハイブリッド極性分子であり、ヒストン脱アセチル化酵素に特異的に結合し、その活性を阻害する。SAHAは、腫瘍の生存を調節する遺伝子の発現を増大させることによって抗腫瘍効果を示し、かつインビボおよびインビトロで炎症誘発性サイトカインの産生を低下させるものとして当該技術分野で既知である(Mascagniら、"The antitumor histone deacetylase inhibitor suberoylanilide hydroxamic acid exhibits antiinflammatory properties via suppression of cytokines" PNAS March 5, 2002 vol. 99 no. 5 2995-3000)。
【0065】
レトロウイルスレゼルボアの処置におけるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)の使用も企図される。阻害剤は、本明細書中に開示されるHDACi、および好ましくは、
a)式
【化6】

(式中、Yは、各々が不飽和または部分不飽和で、かつ、複素環式または単環式であり、2〜8個の連結原子を有する、1つもしくは2つの6員環を含み、該連結原子または環のいずれかはアミノ基およびカルボニル基を含む。)
を有するベンズアミドHDAC阻害剤、または
b)式
【化7】

(式中、Rは、直接結合またはエチレンもしくはエテニレン基、Xは、=CH−もしくは=N−、Rは、アリールまたはヘテロアリールでありかつ単環式もしくは二環式であり、Rは、直鎖もしくは分枝鎖アルキルであって、任意選択により単環式もしくは二環式アリールまたはヘテロアリール基によって置換されている。)
を有するヒドロキサム酸HDAC阻害剤から選択してもよい。好ましくは、HDACiは、クラスIのHDACiである。
【0066】
好ましくは、阻害剤は、前記レトロウイルスのレゼルボアの認定されたモデルにおいて、レトロウイルス複製を誘発する能力がある。レトロウイルスは、HIVウイルス、好ましくはHIV−1であってもよく、モデルはU1およびACH−2細胞モデルから選択してもよい。
【0067】
好ましくは、ベンズアミドは、本明細書中のMC2211およびMS275として同定された化合物のうちの1つの類似体である。阻害剤は、式
【化8】

を有する化合物であってもよい。
【0068】
好ましくは、Rは、非置換のアルキル、好ましくはメチル、エチル、またはイソプロピルである。好ましくは、Rは、フェニルまたはナフチルである。Rは、好ましくはエテニレンである。Xは、好ましくは=CH−である。
【0069】
阻害剤はクラスI阻害剤であり、非特異的でないことが好ましい。好ましくは、処置は抗レトロウイルス療法をさらに含む。
【0070】
レトロウイルスレゼルボアの処置においては、特にベンズアミド種のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACI)とグルタチオン合成阻害剤、例えばBSO(ブチオニンスルホキシミン)との併用も提供される。好ましくは、阻害剤は、N−(2−アミノフェニル)−4−[N−(ピリジン−3−イルメトキシカルボニル)アミノメチル]−ベンズアミド)である。BSOおよびベンズアミドHDACiは併用投与されることが好ましい。
【0071】
添付の実施例2は、本発明のHDAC化合物のいずれのクラスが阻害するかを確立するための好適な技術を提供する。本発明のHDACiは非特異的なHDACiでないことが特に好ましい。
【0072】
本発明のHDACiは、レトロウイルスの潜伏レゼルボアを有すると疑われる患者の処置において使用することは可能である。かかるレトロウイルスは、本明細書中でHIV−1と称されることになるが、これは便宜上であって、すべてのかかる参照は、文脈から特に明確でない場合、他のレトロウイルスに対する参照を含むことは理解されるであろう。
【0073】
処置は、好ましくはレトロウイルスの任意の潜伏レゼルボアを除去するように意図される。しかし、あまり好ましくないが、かかる処置が潜伏レトロウイルスを制御するために使用可能であることは理解されるであろう。個体が、例えばレゼルボアからの感染を特に繰り返し受けやすい場合、これは有利であり得る。
【0074】
潜伏レゼルボアは、静止状態にあるか、または低速で、例えば通常速度の5%未満で複製するレトロウイルスを有する1つまたは複数の細胞であって、細胞は、ある期間ウイルスを保護するように作用可能であり、かつ通常の抗レトロウイルス処置の終了後の数週間から数か月間、しばしば生存ビリオンを放出するだけであり、したがって、このようなレゼルボアを介して感染が再発する場合、個体の継続的処置が必要となる。
【0075】
上述の「通常の」抗レトロウイルス処置は、HIV−1感染個体に投与され、一般に、異なるクラスに属する少なくとも3つの異なる薬剤の組み合わせからなり、それらは一般に、ヌクレオシド系/ヌクレオチド系逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、およびプロテアーゼ阻害剤(PI)から選択される。融合阻害剤も、処置の一部を形成し得る。最近、さらなる薬剤クラスであるインテグラーゼ阻害剤が、抗レトロウイルス薬に加えられている。一般に、抗レトロウイルス薬の併用は進行中のウイルス複製を遮断する能力を示すが、ウイルスを身体から根絶する潜在可能性を有していない。
【0076】
レトロウイルスレゼルボアの除去においては、現行の戦略は、例えば、当該技術分野で周知のように、また上記のように、HDACi、特にクラスIのHDACiと、従来の抗レトロウイルス療法との併用を前提とする[Savarinoら、2009年]。
【0077】
国際公開第2007/121429号(Gladstone Institute)、国際公開第03/053468号(Univ Libre Bruxelles)は、HDACiの使用に関する。様々なHDACi構造が、国際公開第2004/069823号(Methylgene,Inc)および国際公開第2004/103369号(Schering AG)において開示されている。Munier Sら(Retrovirology、23、2005年11月、2:73)は、2つの候補遺伝子NCoA3およびIRF8の特徴づけ(HIV−1潜伏の制御に関与し得る)について述べている。Garaciら(Journal of Leukocyte Biology, July 1997, VoI 62, No.1 , pp 54-59)は、BSOの特定の使用について述べている。
【0078】
HDACiは、当業者または医師によって決定し得る、任意の好適な医薬的に許容できる媒体で、かつ、任意の好適な経路により、患者に直接投与してもよい。HDACiは、例えば注射または経皮パッチとして投与してもよく、遊離溶液であってもよく、または担体に結合してもよい。他の製剤、例えば錠剤、坐剤、クリームおよびスプレーは、一般にあまり有用でないが、適切であると見なされる場合には使用してもよい。
【0079】
好適な媒体は、好適な抗体を担持する標的化されたリポソームを含んでよいが、感染潜伏細胞は主に循環に関連することから、静脈内注射による投与が特に好ましい経路である。
【0080】
本発明はまた、表1の新規化合物と、独立して、添付の実験セクションで例示されるように、これを作製するための方法を提供する。
【0081】
本発明は、本発明の新規化合物の医薬的に許容できる製剤をさらに提供する。
【0082】
本発明は、潜伏感染細胞の選択的除去のための方法をさらに提供し、ここで、細胞は、レンチウイルス、特にHIV−1による潜伏的感染を受けており、前記処置は、抗レトロウイルス療法と組み合わせて、前記細胞を本発明のHDACiと接触させる工程を含む。
【0083】
特に驚くべきことは、本発明の好ましいベンズアミドHDACiが、ブチオニンスルホキシミン(BSO)によって最大800%のレベルで増強されることが見出されていることである。BSOとしてのこの特に驚くべきことは、抗HIV−1活性はあまり有しないが、例えばMS275と、潜伏HIV−1感染を有する細胞を殺滅するその能力を極めて実質的に増強するまで相乗作用を発揮できる。
【0084】
この増強は、患者の処置において必要とされるHDACiおよびBSOの量を低減するという更なる利点を有する。例えば、MS275およびBSOの双方は、ヒトにおける安全性について既に試験されており、癌治療用に使用されるMS275の量は、一般に本発明によって提供される処置に必要な場合より多い。MS275にとって好ましい用量範囲は、週1回で約0.05〜0.1mg/kgの範囲内であるか、または医師によって処方されるものである。BSOは、0.1〜0.3mg/kgの好ましい用量でMS275と同時投与してもよく、継続投与(好ましくは合計で3〜5)は、1日に1回もしくは2回、好ましくは12時間ごとに投与してもよい。
【0085】
したがって、本発明は、レトロウイルスレゼルボアの処置における、好ましくはベンズアミド種のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤とブチオニンスルホキシミンとの併用をさらに提供する。
【0086】
潜伏感染細胞の選択的除去のための上記の方法は、さらに好ましくは、前記細胞を、前記HDACiと併用されるBSOと、好ましくは本明細書中に記載のタイミングで接触させる工程を含む。
【0087】
BSOおよびHDACiは、相乗効果を発揮するがいずれも毒性がなく、二者は、双方がインビボで、特に好ましくは相乗作用量で存在することを条件に、併用してまたは個別投与してもよい。BSOは、ベンズアミドとともに製剤化してもよく、あるいは、例えば、2つの活性成分を製剤化することに何らかの問題がある場合または一方における安定条件が他方と合致しない場合には、個別投与してもよい。
【0088】
上記のように、一般に、クラスI選択的HDACiが非選択的化合物より低い毒性を示し、HIV−1感染U1、ACH−2、およびH9IIIB細胞の、それらの感染を受けていない対応物に対する選択的殺滅を誘発することが見出されている(P<0.01、傾きに対するt検定)。
【0089】
非感染細胞系及び潜伏感染細胞系におけるBSO+HDACiの併用での毒性を比較した。結果は、BSOとHDACiを併用すると、インキュベーションの72時間後、非感染細胞培養物中ではなく潜伏感染細胞内で著明な細胞毒性が認められることを示した(図14)。ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の効果を高めることは別として、本試験の結果は、BSOなどの酸化促進剤をHDACiと併用する本発明者らの戦略により、潜伏感染細胞の選択的殺滅を誘発することが可能であるという仮説を立てることができる。
【0090】
この戦略は、念願であった「ショックおよび殺滅」戦略の1つであると考えられる。これらの戦略は、(ウイルスの拡散を遮断するための)ARTの存在下での薬剤による静止状態からのHIV−1活性化の誘発(すなわち「ショック」段階)と、その後の、自然的手段(例えば、免疫応答、ウイルス細胞病原性)または人工的手段(例えば、薬剤、モノクローナル抗体など)のいずれかによる感染細胞の除去(すなわち「殺滅」段階)からなる[Hamer DH、2004年]。当然、本発明者らの戦略は、潜伏感染細胞内でHIV−1複製を活性化する(すなわち「ショック」段階)HDACiと、HDCAi応答を高め、かつ還元グルタチオンの細胞内レベルでのHIV−1誘発性破壊に起因する細胞傷害を誘発する(すなわち「殺滅」段階)BSOなどの酸化促進剤との併用に基づく。かかる効果を発揮可能な薬剤併用の探索は、これまでAIDS研究における「聖杯(Holy Grail)」であった。
【0091】
金含有化合物が本発明の処置において有用であることを本明細書中で示している。驚くべきことに、ヒ素含有化合物が同様に有用であることも見出している。
【0092】
したがって、本発明はまた、レトロウイルスレゼルボアの処置におけるヒ素含有化合物の使用を提供する。好ましくは、本化合物は、前記レトロウイルスのレゼルボアの認定されたモデルにおいて、レトロウイルス複製を誘発する能力がある。レトロウイルスはHIV−1であってもよく、モデルはU1およびACH−2細胞モデルから選択してもよい。レトロウイルスは、好ましくはHIVウイルスである。好ましくは、ヒ素含有化合物は、酸化ヒ素、例えばAsであるが、三酸化ヒ素(As)が特に好ましい。
【0093】
好ましくは、本使用は、少なくとも1つのさらなる酸化ストレス誘発剤、例えば非鉄金属薬エピジェネティック調節剤、例えば金含有化合物、例えばオーラノフィン;ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi);酸化促進剤分子、例えばBSOなどのグルタチオン合成阻害剤;および/あるいは鉄ニトリロアセテートまたは硫酸第一鉄の使用をさらに含んでもよい。HDACiは、好ましくは、上で規定される任意のもの、特にクラスIのHDACiに由来するものである。
【0094】
HDACiは、式
【化9】

(式中、Yは、各々が不飽和または部分不飽和で、かつ、複素環式または単環式であり、2〜8個の連結原子を有する、1つもしくは2つの6員環を含み、該連結原子または環のいずれかはアミノ基およびカルボニル基を含む。)
を有するベンズアミドHDACi;または式
【化10】

(式中、Rは、直接結合またはエチレンもしくはエテニレン基、Xは、=CH−もしくは=N−、Rは、アリールまたはヘテロアリールであり、かつ、単環式もしくは二環式であり、Rは、直鎖もしくは分枝鎖アルキルであって、任意選択により単環式もしくは二環式アリールまたはヘテロアリール基によって置換されている。)
を有するヒドロキサム酸HDACiであってもよい。
【0095】
また、レトロウイルスレゼルボアを有すると疑われる患者を処置する方法であって、前記患者にヒ素含有化合物を投与する工程を含む方法が提供され、少なくとも1つのさらなる酸化ストレス誘発剤、例えば非鉄金属薬エピジェネティック調節剤、例えば金含有化合物、例えばオーラノフィン;ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi);酸化促進剤分子、例えばBSOなどのグルタチオン合成阻害剤;および/あるいは鉄ニトリロアセテートまたは硫酸第一鉄の投与を含んでもよい。低いCD4カウントを示す患者は好ましい。患者は、抗レトロウイルス療法(ART)を受けている最中であるか、既に受けていてもよい。
【0096】
本発明のすべての態様は、すべてのレトロウイルス感染において存在するレトロウイルスの潜伏レゼルボアの処置において用いてもよい。本発明は、レトロウイルスの潜伏レゼルボアを有すると疑われる患者の処置に用いてもよい。かかるレトロウイルスは、本明細書中でHIV−1と称されることになるが、これは便宜上であって、すべてのかかる参照は、文脈から特に明確でない場合、他のレトロウイルスに対する参照を含むことは理解されるであろう。
【0097】
処置は、好ましくはレトロウイルスの任意の潜伏レゼルボアを除去するように意図される。しかし、あまり好ましくないが、かかる処置が潜伏レトロウイルスを制御するためにも使用可能であることは理解されるであろう。個体が、例えばレゼルボアからの感染を特に繰り返し受けやすい場合、これは有利であり得る。上記の潜伏感染細胞の選択的殺滅は、特に有利である。
【0098】
潜伏レゼルボアは、静止状態にあるか、または低速で、例えば通常速度の5%未満で複製するレトロウイルスを有する1つまたは複数の細胞であり、細胞は、ある期間、ウイルスを保護するように作用可能であり、かつ通常の抗レトロウイルス処置の終了後の数週間から数か月間、しばしば生存ビリオンを放出するだけであり、したがって、かかるレゼルボアを介して感染が再発する場合、個体の継続的処置が必要となる。
【0099】
上述の「通常の」抗レトロウイルス処置は、HIV−1感染個体に投与され、一般に、異なるクラスに属する少なくとも3つの異なる薬剤の組み合わせからなり、一般に、ヌクレオシド系/ヌクレオチド系逆転写酵素阻害剤(NRTI)、非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NNRTI)、およびプロテアーゼ阻害剤(PI)から選択される。融合阻害剤またはケモカイン受容体遮断剤も、処置の一部を形成し得る。最近、さらなる薬剤クラスであるインテグラーゼ阻害剤が抗レトロウイルス薬に加えられている。一般に、抗レトロウイルス薬の併用は進行中のウイルス複製を遮断する能力を示すが、ウイルスを身体から根絶する潜在可能性を有していない。
【0100】
本明細書中では、活性剤に対する参照がなされる。本明細書で考察されるように、これが酸化ストレス誘導剤を示すことは理解されるであろう。
【0101】
レトロウイルスレゼルボアの除去においては、本発明の処置では、例えば、当該技術分野で周知のように、また上記のように、本活性剤が従来の抗レトロウイルス療法と併用される。
【0102】
活性剤は、当業者または医師によって決定し得る、任意の好適な医薬的に許容できる媒体で、かつ、任意の好適な経路により、患者に直接投与してもよい。活性剤は、例えば、経口的に、あるいは注射としてまたは経皮パッチによって投与してもよく、遊離溶液であっても、または担体に結合してもよい。他の製剤、例えば錠剤、坐剤、クリームおよびスプレーは、一般にあまり有用でないが、適切であると見なされる場合には使用してもよい。
【0103】
好適な投与は、同時送達によるかまたは個別送達によるものであってもよい。好適な媒体は、好適な抗体を担持する標的化されたリポソームを含んでよいが、感染潜伏細胞は主に循環に関連することから静脈内注射による投与も考えられる。しかし、本発明のすべての化合物における好ましい投与経路は経口である。
【0104】
本発明は、潜伏感染細胞の選択的除去のための方法をさらに提供し、ここで、細胞は、レンチウイルス、特にHIV−1による潜伏的感染を受けており、前記処置は、抗レトロウイルス療法と組み合わせて、前記細胞を本発明のHDACiと接触させる工程を含む。
【0105】
増強(相乗効果)は、本発明の化合物の多くとHDACiとの間で示されている。これは、患者の処置において必要とされる活性剤の量を減少させるというさらなる利点を有する。
【0106】
さらに、これらの活性剤の多くが、ヒト投与を目的として既に認可されているか、または安全性について第1相臨床試験を通過している。
【0107】
したがって、本発明は、レトロウイルスレゼルボアの処置における潜伏感染細胞の選択的除去を目的とした本活性剤の使用をさらに提供する。
【0108】
本明細書中でのBSO、オーラノフィン、または三酸化ヒ素に対する参照は、その任意の類似体を含む。
【0109】
ブチオニンスルホキシミン(BSO)などのグルタチオン合成阻害剤は、レトロウイルスレゼルボアの処置、すなわち潜伏感染細胞の処置において、好ましくは非感染細胞ではなく感染細胞を標的化し、選択的に殺滅することにより、単独で使用可能であると企図される。
【0110】
本明細書中に記載の酸化ストレス誘導剤(非鉄金属薬エピジェネティック調節剤)、グルタチオン合成阻害剤またはHDACiのいずれかの組み合わせを使用してもよい。
【0111】
HDACiは、最も好ましくはクラスIのHDACiである。Maiら2009年において記載のものも好ましく、その開示内容は参照により本明細書中に援用される。
【0112】
以下の実験セクションは、あくまで例示目的とし、本発明に対して制限するものではない。
【0113】
本明細書中に引用されるすべての参考文献は、それらが本発明の教示内容に抵触しない程度まで、参照により本明細書中に援用される。
【実施例】
【0114】
実施例1−オーラノフィン
方法
ACH−2およびU1細胞内でのHIV−1の誘発。HIV−1潜伏感染ACH−2細胞を、標準の培養条件(RPMI培地、10%胎児ウシ血清/FBS、および適切な抗生物質、これらは薬剤耐性汚染細菌の選択を回避するように時々交換した)下、96ウェルプレート内で化合物とともにインキュベートし、上清中のHIV−1 p24コア抗原の内容物を、インキュベーションの24および72時間後、HIV−1 p24 ELISAキット(Perkin Elmers(Boston,MA))により、製造業者の使用説明書に従って測定した。各処置において、上清の回収後、細胞生存度を次のように試験した。
【0115】
細胞生存度アッセイ。細胞生存度を、メチルテトラゾリウム(MTT)法を用いて定量した。96ウェルELISAリーダーを使用して、550nmの波長で吸光度値を生成し、細胞の不在下で細胞培地を使用してブランク値を差し引いた。試験化合物の存在下での細胞生存度を、非処置対照細胞培養物の細胞生存度の百分率として表した。
【0116】
2つの薬剤の併用効果を検出するための試験。相乗作用/拮抗作用/加算性の検出のため、細胞を異なる濃度の薬剤単独または併用される両薬剤のいずれかとともにインキュベートし、インキュベーションの3日目に再び、ウイルス複製をELISA試験によって定量した。
【0117】
フローサイトメトリー。Jurkat細胞クローンにおける緑色蛍光タンパク質(GFP)のHIV−1 LTR制御発現を測定するため、細胞をプールし、NaN(0.02%)およびウシ血清アルブミン(2%;PBS A/A)を有する氷冷PBSで3回洗浄した。次いで、細胞を1%パラホルムアルデヒド中で20分間固定し、洗浄し、PBS A/A中に再懸濁した。次いで、蛍光をフローサイトメーター(FACScalibur、Becton−Dickinson(Mountain View,CA))によって取得した。蛍光データを4ディケード対数目盛上で収集し、相対蛍光強度を、非形質移入Jurkat細胞を使用して確立された閾値を超える蛍光細胞の百分率として示した。
【0118】
NF−κB核転座の検出。対照Jurkat8.4細胞およびオーラノフィンで様々なインキュベーション時間で処置した細胞に由来する核抽出物を、核抽出キット(Chemicon International)を製造業者の使用説明書に従って使用することで得た。NF−κB核転座を、p65サブユニットに対する比色分析転写因子アッセイ(Millipore)を使用して検出した。結果を、強力なNF−κB刺激性サイトカインTNF−α(5ng/ml)とともに(NF−κBの核転座がピークに達する)1.5時間インキュベートした細胞内で得られるシグナルの百分率として表した。
【0119】
データ分析。少なくとも2つの異なる場合に実験を行い、同様の結果を得て、結果を平均として示した。GraphPadソフトウェアを使用して分析を行った。濃度依存性曲線においては、対照値の百分率を異なる薬剤濃度に対してプロットした。必要な場合、適切な変換を適用し、正規性を回復させた。直線または曲線、データ点の最適なフィッティングを最小二乗法によって生成した。有意性における閾値は、線形回帰の場合、P=0.05であり、非線形回帰の場合、R=0.7であると考えられた。非線形回帰は、Rがより大きい場合、線形回帰よりも(後者が有意であった場合についても)好ましかった。薬剤濃度応答間の差異を、傾きに対するt検定を用いて分析した。
【0120】
相乗作用を、次のように計算される、薬剤併用の効果と同等の濃度で個別投与されるいずれかの薬剤の効果の合計との間のパーセント差異を表す相乗作用値の百分率によって分析した。
PS=100・[EdrugA+drugB−(EdrugA+EdrugB)]/(EdrugA+EdrugB
(式中、PSは相乗作用の百分率であり、Eは、p24生成における増加倍数として表される薬剤の効果である)
【0121】
三次元(3D)x、y、zグラフを、(xおよびy軸における)使用される同等の薬剤濃度に対して相乗作用値の百分率(z軸)をプロットすることによって生成した。Microsoft Excelを使用して3D表面を生成した。高い凸面は相乗作用を示す。平面は相加効果を示す一方、凹面は拮抗作用を示す。
【0122】
結果
U1およびACH−2細胞内でのオーラノフィンによるHIV−1活性化
HIV−1複製の組み込み後段階(post-integrational stage)が誘発可能である細胞系でのオーラノフィンのHIV−1活性化効果を予め評価するため、HIV−1に感染されたTリンパ球性ACH−2および単球性U1細胞を高濃度の化合物とともにインキュベートし、HIV−1複製を、インキュベーションの24時間後(データは示さず)および72時間後に測定した(図2はACH−2細胞からのデータを示す)。HIV−1複製をNF−κB(p65/p50)活性化によって強力に促進するサイトカインである5ng/mlのTNF−αを、陽性対照として使用した。結果は、オーラノフィンがHIV−1複製を、関節リウマチの処置の間に認められる平均血漿レベルに近似する0.125〜0.5μMの濃度範囲内で、時間および用量依存性に増強することを示した(P=0.0295、回帰におけるt検定;図5B)[Bennら、1991年]。
【0123】
注目すべきことに、オーラノフィンのHIV−1活性化効果は、低毒性が与えられた本発明者らの機関のライブラリー由来のクラスIのHDACIであるMC2113の場合に対して相乗的であった[Rotiliら、2009年]。これを、オーラノフィンをU1細胞にMC2113と同時投与する実験において示した(図3)。効果は、インキュベーションの24時間後すぐに見ることができた。
【0124】
オーラノフィン応答における細胞基盤
細胞集団内部のオーラノフィン応答を評価するため、Jordanらによって確立された潜伏感染Tリンパ球のJurkat細胞クローン8.4を使用した[Jordanら、2003年]。この細胞クローンは、LTRの制御下の、GFP遺伝子置換nefを示す全HIV−1ゲノムを有する。U1細胞と異なり、これらの細胞は、HIV−1発現の非有意な基礎レベルを示し、機能的Tat/TAR軸を有する。8.4細胞において、オーラノフィンは蛍光中に用量依存性変化を誘発し(図4)、それはほとんどの場合、採用した最高濃度で明らかであった。HDACI/オーラノフィンの併用での相加効果における細胞基盤についても探求した。本発明者らは、オーラノフィンの添加が、HDACI非応答性細胞を応答性細胞集団に動員することを見出した(図5)。
【0125】
同様の結果が、HIV−1 LTRの制御下でGFPを発現し、かつ、スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)などの他のHDACiを使用する他の細胞系において得られた。Jurkat A1細胞は、HIV−1 LTRの制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を有し、それは一部の細胞集団内で静止している。これらの細胞を、臨床的に意義のある濃度のオーラノフィン(0.25μM)または1μMのMC2113あるいはその双方で処置した。データを、非GFP発現Jurkat細胞を使用して確立された閾値を超える蛍光細胞の百分率として示した。このデータは、オーラノフィンおよびクラスに非特異的なヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(SAHA)による緑色蛍光タンパク質(GFP)のLTR制御発現の誘発を示した。
【0126】
オーラノフィン誘発性NF−κB核転座
酸化ストレスが、HIV−1転写および複製にとって重要である[Williamsら、2007年]、NF−κBヘテロダイマーRel A(p65)/p50の活性化および核局在化を誘発する[Rahmanら、2004年]ことは周知である。オーラノフィンが、標的細胞内で酸化ストレスを誘発することによってHIV−1を静止状態から活性化する場合、NF−κB(p65/p50)の核転座が現れるはずである。この仮説を試験するため、オーラノフィン(250μM)で処置したJurkat8.4細胞由来の一定分量の核抽出物を、NF−κBのp65(RelA)サブユニットについて、比色分析アッセイを施した。結果は、核内部で時間依存性のNF−κBの蓄積を示した(図6)。オーラノフィンは、それがHIV−1を静止状態から活性化する場合と同様の条件下で、NF−κB(p65/p50)の活性化を誘発することを結論づける。
【0127】
オーラノフィンと他の酸化促進剤戦略との相乗効果
オーラノフィン誘発性の静止状態からのHIV−1活性化への洞察をいくらか得るため、薬剤の効果をいくつかの十分に特徴づけられた酸化促進剤分子、すなわち鉄ニトリロアセテート(FeNTA)[Savarinoら、1999年](フェントン反応を通じて酸化ストレスを促進する)、およびブチオニンスルホキシミン(BSO)、グルタチオン合成経路における制限酵素であるγ−グルタミルシステインシンテターゼの不可逆阻害剤[Anderson、1998年]の存在下で試験した。結果は、オーラノフィンと同様、FeNTAがACH−2細胞内でHIV−1複製を用量依存性に誘発する(データは示さず)一方、BSO単独が最大500μMの濃度でHIV−1誘発効果に対して全く効果を有しない(データは示さず)ことを示した。オーラノフィンは、2つの薬剤のいずれかとの同時投与時、相乗作用の百分率のグラフにおいて高い凸面によって示されるように、相乗的なHIV−1活性化効果を発揮した(図7および8)。オーラノフィンは鉄誘発性HIV−1活性化を増強し、この薬剤の効果はグルタチオンの減少によって促進されることを結論づける。
【0128】
参考文献(本明細書中に引用されるすべての参考文献は、本発明に抵触しない程度に本明細書中に援用される)。
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【0129】
実施例2−HDACi
HIV−1に感染されたリンパ球性ACH−2および単球様U1細胞(双方ともHIV−1複製の低いベースラインレベルを示す)は、HIV−1潜伏における十分に確立された細胞系モデルである[Munierら、2005年]。それらを、標準培養条件下、96ウェルプレート内で、試験化合物とともにインキュベートし、インキュベーションの72時間後、ELISA試験によってHIV−1複製を測定した。HIV−1誘発に対する化合物の効力を、非処置対照において認められるベースラインレベルに対して、標準濃度1μMの試験化合物(この濃度は一般にリード化合物の選択のための閾値として用いられる)の存在下で、HIV−1複製における増加倍数として評価した。潜伏感染細胞内でHIV−1複製を誘発可能な数種の化合物が見出され、一般にACH−2およびU1細胞における結果間で良好な一致があった。
【0130】
数種の化合物(クラスI選択的または非選択的HDACi)は、顕著なHIV−1刺激活性を示し(表1)、それは感染細胞殺滅(U1細胞:P=0.0378;ACH−2細胞:P=0.0017;スピアマンのノンパラメトリック検定(図9A、B))と相関した。クラスI選択的化合物は、一般に非選択的化合物より低い毒性を示した(データは示さず)。さらに、HIV−1再活性化を促進するいくつかのクラスI選択的HDACiは、HIV−1感染細胞の選択的殺滅を誘発した。これは、MC1855を使用するデータによって図示される(P<0.01;傾きにおけるt検定;図9C、D)。
【0131】
構造/活性の関係から、特定の要件が、潜伏からのHIV−1回避の効率的誘発について出現する。一般に、HDACiは、一般的なファーマコフォアモデルを示し、触媒トンネルの縁、しばしばCAPを疎水性スペーサー(HS)に連結する極性連結ユニット(polar connection unit)(CU)と相互作用可能なキャップ基(CAP)を含み、それは分子をトンネル内部に位置づけさせる[Maiら、2005b]。最終的に、HSは、空洞の底部でZn2+と複合化可能なZn2+結合基(ZBG)を末端に有する[Maiら、2005b]。一般に、ZBGは、ヒドロキサム酸塩、カルボン酸塩、またはベンズアミドからなる。
【0132】
MS275は、癌治療のための臨床試験におけるクラスI選択的HDACiである[Nishiokaら、2008年;Hauschildら、2008年]。この化合物は、試験化合物の中で潜伏からのHIV−1回避の最も強力な誘発剤であることが判明し、それはACH−2(図10)およびU1細胞(図示せず)においてナノモル範囲内(十分にインビボで実現可能な血漿濃度の範囲内)で活性を示した[Zhaoら、2007年]。本発明者らのSAR試験は、ブチオニンスルホキシミン(BSO)とともに投与可能なHDACiの化学種を制限することを意図しておらず、HDACiとBSOとの相乗効果(下記参照)は全HDACiクラスに拡張可能である。
【0133】
酸化ストレスを誘発するBSOについても試験を行った。γグルタミルシステインシンテターゼ[Garaciら、1996年](グルタチオン合成における制限酵素)の阻害剤であるBSOは、細胞抗酸化剤の防御を低下させることにより、酸化ストレスを間接的に促進する[Anderson、1998年]。この化合物を、それが酸化環境内で促進されるNF−κBの活性化にとって好ましい可能性があることが理由で試験した。結果は、BSOがACH−2またはU1細胞のいずれかにおいてHIV−1複製を有意に誘発しないことを示した(データは示さず)。これにもかかわらず、BSOを試験し、HDACiの効果を増強し得るか否かを判定した。結果は、図11および12に示されるように、BSOが、2つのベンズアミドHDACi、すなわちMS275およびMC2211のHIV−1促進効果を顕著に増強することを示した。ACH−2細胞内での相乗作用の百分率グラフの鋭い凸型3D表面は、薬剤併用の相乗効果を示す。相乗効果を示すBSO濃度は、治療的に得られる[Lacretaら、1994年]。同様な効果がU1細胞において得られた(データは示さず)。
【0134】
クラスIのHDAC阻害がそれ自体でHIV−1再活性化にとって十分であるという実験結果は、特に有利である。
【0135】
方法
化学。融点をBuchi530融点装置で測定し、校正していない。赤外線(IR)スペクトル(KBr)をPerkin-Elmer Spectrum One装置で記録した。400MHzでのH NMRスペクトルをBruker AC 400分光計で記録し、内部参照のテトラメチルシラン(MeSi)に対するδ(ppm)単位での化学シフトを報告する。すべての化合物を、TLCおよびH NMRによって定期的に点検した。TLCを、UV光によって可視化されたスポットを有するアルミニウム裏打ち(aluminium backed)シリカゲルプレート(Merck DC、Alufolien Kieselgel 60 F254)で行った。すべての溶媒は試薬グレードであり、必要な場合、標準的方法によって精製し、乾燥させた。反応および抽出後の溶液の濃縮は、約20トールの減圧下で作動するロータリーエバポレーターの使用を含んだ。有機溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。分析結果は、理論値の±0.40%以内である。生物学的アッセイ用のSAHA試料を、標準的方法に従って同様に調製した。すべての化学物質は、Aldrich Chimica(Milan(Italy))またはLancaster Synthesis GmbH(Milan(Italy))から購入し、それらは最高純度であった[Maiら、2006年]。
【0136】
4−(3,4−ジヒドロ−4−オキソ−6−置換−2−ピリミジニルチオ)ケイ皮酸メチルのエチルエステルの合成における一般的手順。例:4−(3,4−ジヒドロ−4−オキソ−6−ベンジル−2−ピリミジニルチオ)ケイ皮酸メチルのエチルエステル。3mlの無水DMF中、6−ベンジル−4−ヒドロキシ−2−メルカプトピリミジン(6.87mmol、1.5g)、粗エチル4−ブロモケイ皮酸メチル(7.56mmol、2.2g)、および無水炭酸カリウム(7.56mmol、1.0g)の混合物を、室温で1時間撹拌した。冷水(100mL)での処理後、水相を酢酸エチル(340mL)で抽出した。有機相を塩水(340mL)で洗浄し、乾燥させ、乾燥するまで蒸発させ、所望される粗化合物を得て、それをシリカゲルカラム上のクロマトグラフィーによって精製し、酢酸エチル/ヘキサン(1:1)混合物で溶出し、所望される生成物を白色固体(1.2g)として得た。H NMR(CDCl)δ1.33(t,3H,CHCH)、3.83(s,2H,PhCH)、4.26(q,2H,CHCH)、4.38(s,2H,CHS)、5.98(s,1H,C−H)、6.40(d,1H,CH=CHCO)、7.33(m,9H,2つのベンゼン環)、7.61(d,1H,CH=CHCO)、13.20(s,1H,NH)。Anal.C,H,N,S[Maiら、2006年]。
【0137】
6−(3,4−ジヒドロ−4−オキソ−6−(非)置換−2−ピリミジニルチオ)−ヘキサン酸および4−(3,4−ジヒドロ−6−置換−4−オキソピリミジン−2−イルチオ)ケイ皮酸メチルの合成における一般的手順。例:6−(3,4−ジヒドロ−4−オキソピリミジン−2−イルチオ)ヘキサン酸。適切なエチルエステル(1.1mmol、0.3g)、2N KOH(8.8mmol、0.49g)、およびEtOH(5mL)の混合物を、室温で18時間撹拌した。溶液を、水(50mL)中に注ぎ、酢酸エチル(220mL)で抽出した。HCl(2N)をpH5になるまで水層に添加し、沈殿物を濾過し、再結晶化し、表題化合物(0.23g)を純固体として得た。H NMR(DMSO−d)δ1.32(m,2H,CHCHCHS)、1.49(m,2H,CHCHCO)、1.61(m,2H,CHCHS)、1.93(t,2H,CHCO)、3.06(t,2H,CHS)、6.07(s,1H,C−H)、7.83(s,1H,C−H)、12.2(s,1H,COOH)。Anal.C,H,N,S[Maiら、2006年]。
【0138】
N−ヒドロキシ−6−(3,4−ジヒドロ−4−オキソ−6−(非)置換−2−ピリミジニルチオ)ヘキサンアミドおよび/N−ヒドロキシ−4−(3,4−ジヒドロ−6−置換−4−オキソピリミジン−2−イルチオ)−メチルシンナミルアミドの合成における一般的手順。例:N−ヒドロキシ−6−(3,4−ジヒドロ−4−オキソピリミジン−2−イルチオ)ヘキサンアミド。乾燥テトラヒドロフラン(5mL)中、適切なカルボキシル酸(0.9mmol、0.22g)の0℃に冷却した溶液に対して、クロロギ酸エチル(2.2mmol、0.21mL)およびトリエチルアミン(2.3mmol、0.33mL)を添加し、混合物を10分間撹拌した。固体を濾過分離し、濾過物に対してO−(2−メトキシ−2−プロピル)ヒドロキシルアミン(5.4mmol、0.4mL)を添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し、次いでそれを減圧下で蒸発させ、残留物をMeOH(5mL)で希釈した。Amberlyst15イオン交換樹脂(0.18g)をO−保護ヒドロキサム酸の溶液に添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。その後、反応物を濾過し、濾過物を真空中で濃縮し、最終の粗生成物を得て、それを結晶化によって精製した。H NMR(DMSO−d)δ1.30(m,2H,CHCHCHS)、1.46(m,2H,CHCHCO)、1.60(m,2H,CHCHS)、1.90(t,2H,CHCO)、3.02(t,2H,CHS)、6.10(s,1H,C−H)、7.85(s,1H,C−H)、8.66(s,1H,NHOH)、10.33(s,1H,NHOH)、12.5(s,1H,ウラシルNH)。Anal.C,H,N,S[Maiら、2006年]。
【0139】
3−(4−アシルアミノフェニル)−N−ヒドロキシ−2−プロペンアミドの合成における一般的手順。例:3−[4−(2,3−ジフェニルプロピオニルアミノ)フェニル]−N−ヒドロキシ−2−プロペンアミド(MC1895)。
クロロギ酸エチル(1.26mmol、0.12mL)およびトリエチルアミン(1.37mmol、0.19mL)を、乾燥THF(10mL)中、3−[4−(2,3−ジフェニルプロピオニルアミノ)フェニル]−2−プロペン酸(1.05mmol、0.39g)の冷却(0℃)溶液に添加し、混合物を10分間撹拌した。固体を濾過分離し、O−(2−メトキシ−2−プロピル)ヒドロキシルアミン(3.15mmol、0.23mL)を濾過物に添加した。溶液を0℃で15分間撹拌し、次いで減圧下で蒸発させ、残留物をメタノール(10mL)で希釈した。Amberlyst(登録商標)15イオン交換樹脂(105mg)を、O−保護ヒドロキサム酸の溶液に添加し、混合物を室温で1時間撹拌した。その後、反応物を濾過し、濾過物を真空中で濃縮し、粗MC1895を得て、それを結晶化によって精製した。H NMR(DMSO−d)δ3.05(m,1H,PhCH)、δ3.60(m,1H,PhCH)、δ3.75(m,1H,PhCHCO)、δ6.36(d,1H,PhCH=CHCOOEt)、δ7.15〜7.70(m,15H,ベンゼンプロトンおよびPhCH=CHCOOEt)、δ9.00(s,1H,OH)、δ10.23(s,1H,CONHPh)、δ10.85(s,1H,NHOH)。Anal.C,H,N,O。
【0140】
インビトロでのトウモロコシHD2、HD1−B、およびHD1−A酵素阻害。放射性標識したニワトリコアヒストンを、確立された手順に従い、酵素基質として使用した[Maiら、2006年において参照]。酵素は基質からトリチウム化酢酸を遊離させ、それをシンチレーション計数によって定量した。IC50値は3通りの測定の結果である。(30℃での)トウモロコシ酵素の50μLの試料を、10μLの[H]酢酸塩で予備標識したニワトリ全網状赤血球ヒストン(2mg/mL)とともにインキュベートした(30分)。反応を、36μLの1M HCl/0.4M酢酸塩および800μLの酢酸エチルの添加によって停止させた。遠心分離(10000g、5分)後、600μLの一定分量の上層を、3mLの液体シンチレーションカクテル中の放射能について計数した。化合物を40μMの初期濃度で試験し、活性物質をさらに希釈した。TSAおよびSAHAを参照化合物として使用し、ブランク溶媒を陰性対照として使用した[Maiら、2006年]。
【0141】
マウスHDAC1酵素アッセイ。阻害アッセイにおいては、マウス肝臓由来の部分精製HDAC1(アニオン交換クロマトグラフィー)を酵素源として使用した。HDAC活性を、基質として[H]酢酸塩で予め標識したニワトリ網状赤血球ヒストンを使用して測定した。マウスHDAC1(50μL)を、氷上で異なる濃度の化合物とともに15分間インキュベートし、[H]酢酸塩で予め標識したニワトリ全網状赤血球ヒストン(2mg/mL)の10μLを添加し、41μMの濃度を得た。混合物を37℃で1時間インキュベートした。反応を、50μLの1M HCl/0.4Mアセチル酢酸塩および1mLの酢酸エチルの添加によって停止させた。10000gで5分間遠心分離後、上層の600μLの一定分量を、3mLの液体シンチレーションカクテル中の放射能について計数した[Maiら、2006年]。
【0142】
細胞アッセイ。細胞系および培養物。U937細胞系を、10%胎児牛血清、100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、および250ng/mLのアンフォテリシンB、10mMのHEPESおよび2mMグルタミンを有するRPMI中で培養した。U937細胞を、200000個の細胞/mLの一定濃度の培地で保持した。ヒト乳癌ZR−75.1細胞を、10%胎児牛血清および抗生物質(100U/mLのペニシリン、100μg/mLのストレプトマイシン、および250ng/mLのアンフォテリシンB)を補充したDMEM培地中で増殖させた。
【0143】
リガンドおよび材料。SAHAを、DMSO中に溶解し、1もしくは5μMで使用した。MS−275(Schering AGからの贈呈)を、エタノール中に溶解し、5μMで使用した。UBHA化合物1dおよび1jを、DMSO中に溶解し、1もしくは5μMで使用した。
【0144】
細胞に基づくヒトHDAC1およびHDAC4アッセイ。細胞(HDAC1アッセイ用のU937細胞およびHDAC4アッセイ用のZR75.1細胞)を、氷中、プロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma)、1mM DTT、および0.2mM PMSFを有するIP緩衝液(pH7.0での50mMトリス−HCl、180mM NaCl、0.15% NP−40、10%グリセリン、1.5mM MgCL、1mM NaMO、および0.5mM NaF)中に10分間で溶解し、13000rpmで30分間遠心分離した。次いで、1000μgの抽出物を、IP緩衝液で1mLまで希釈し、ロッキングテーブルで20μLのA/G+アガロース(Santa Cruz)とともに4℃で30分間〜1時間インキュベートすることによって予備洗浄した。上清を新しい管に移し、抗体(約3〜4μg)を加え、IPをロッキングテーブル上で、4℃で一晩展開させておいた。使用した抗体は、HDAC1(Abcam)およびHDAC4(Sigma)であった。陰性対照として、同量のタンパク質抽出物を、対応する精製IgG(Santa Cruz)で免疫沈降させた。翌日、20μLのA/Gおよびアガロース(Santa Cruz)を各IPに添加し、インキュベーションを2時間継続した。ビーズを、短時間の遠心分離によって回収し、冷却IP緩衝液で数回洗浄した。次いで、試料をPBSで2回洗浄し、20μLの無菌PBSで再懸濁した。HDACアッセイを、供給業者の使用説明書(Upstate)に従って実施した。つまり、HDAC4およびHDAC1または精製IgGで免疫沈降させた試料を、別々にプールし、すべての試料を均質化した。次いで、10μLのIPを、ストレプトアビジンアガロースビーズと結合させた予め標識したH−ヒストンH4ペプチド(Upstate)とともにインキュベートした。具体的には、120000CPMのH4−H−アセチル−ペプチドを各管において使用し、200μLの最終容量の場合、HDAC阻害剤の存在下または不在下で、10μLの試料を有する1つのHDAC緩衝液中でインキュベートした。それらの試料を、低速で回転させて、37℃で一晩インキュベートした。翌日、50μLの急冷溶液を添加し、短時間の遠心分離後、100μLの試料をシンチレーション計数管で2通りに計数した。実験は4通りに実施している[Maiら、2006年]。
【0145】
化合物の保存。化合物を乾燥粉末として保存し、使用時にジメチルスルホキシド(DMSO)で再懸濁した。最終細胞培地中、2/1000未満のDMSO(v/v)で適切な薬剤濃度を得るため、DMSO溶液中の初期濃度を調節した。
【0146】
HIV−1再活性化スクリーニング試験。潜伏HIV−1感染ACH−2細胞を、標準培養条件下(RPMI培地、10%胎児ウシ血清/FBS、および適切な抗生物質、薬剤耐性汚染菌の選択を回避するために時々交換)、96ウェルプレート内で化合物とともにインキュベートし、インキュベーションの72時間後、上清中のHIV−1 p24コア抗原の内容物を、HIV−1 p24 ELISAキット(Perkin Elmer製)により、製造業者の使用説明書に従って測定した。潜伏からのHIV−1回避の誘発に対する化合物の効力を、非処置対照において認められるベースラインレベルに対する、1μMの標準濃度の存在下でのHIV−1複製における増加倍数(%)として評価した。1μMの濃度を、それがリード化合物の選択のための閾値であると一般に考えられることから選択した。上清の回収後、各処置における細胞生存度を以下のように試験した。
【0147】
細胞生存度アッセイ。細胞生存度を、高度に標準化されたメチルテトラゾリウム(MTT)法(Savarino A, Calosso L, Piragino A, Martini C, Gennero L, Pescarmona GP, Pugliese A. Modulation of surface transferrin receptors in lymphoid cells de novo infected with human immunodeficiency virus type-1.Cell Biochem Funct. 1999 Mar;17(1):47-55に詳述)を用いて定量した。96ウェルELISAリーダーを使用して、450nmの波長での吸光度値を生成し、細胞の不在下で細胞培地を使用してブランク値を差し引いた。試験化合物の存在下での細胞生存度を、非処置対照細胞培養物の細胞生存度の百分率として表した。選択的殺滅の試験のため、非感染H9、およびU937、およびHIV−1感染H9IIIB、ACH−2、およびU1細胞を、試験化合物とともに7日間インキュベートし、細胞生存度を上記のように測定した。
【0148】
濃度−応答曲線。最適な活性を有する化合物について、細胞を減少濃度の化合物(0.001〜1μM)とともにインキュベートすることにより、濃度−応答曲線を生成した。
【0149】
併用薬剤効果の検出についての試験。相乗/拮抗作用の検出については、細胞を、BSO単独、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤単独、またはその双方の異なる組み合わせとともにインキュベートし、インキュベーションの3日後、再び、ウイルス複製をELISA試験によって定量した。
【0150】
データ分析。少なくとも2つの異なる場合に実験を行い、同様の結果を得て、結果を平均として示した。GraphPadソフトウェアを使用して分析を行った。細胞死/HIV−1再活性化の間の相関を、各化合物についてHIV−1複製における増加倍数に対する細胞生存度の阻害の百分率をプロットすることによって評価した。相関の有意性を、P=0.05の有意性閾値を用いるスピアマンの相関係数を用いて評価した。濃度依存性曲線においては、増加倍数値を異なる濃度に対してプロットした。必要な場合、適切な変換を適用し、正規性を回復した。直線または曲線、データ点の最適なフィッティングを最小二乗法によって生成した。有意性の閾値は、線形回帰の場合、P=0.05であり、非線形回帰の場合、R=0.7であると考えられた。相乗作用を、次のように計算される、薬剤併用の効果と同等の濃度で個別投与されるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤および酸化促進剤の効果の合計との間のパーセント差異を表す、相乗作用値の百分率によって分析した。
PS=100・[EdrugA+drugB−(EdrugA+EdrugB)]/(EdrugA+EdrugB
(式中、PSは相乗作用の百分率でありかつEは薬剤濃度の効果であり、p24生成における増加倍数として表される)
【0151】
三次元(3D)x、y、zグラフを、(xおよびy軸における)使用される同等の薬剤濃度に対して相乗作用値の百分率(z軸)をプロットすることによって生成した。Microsoft Excelを使用して3D表面を生成した。高い凸面は相乗作用を示す。平面は相加効果を示す一方、凹面は拮抗作用を示す。
【0152】
【表1】

【0153】
【表2】

【0154】
【表3】

【0155】
HDACiにおける参考文献
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【0156】
1. 実施例3−HDACI+BSOに対するさらなる研究
HDACiとBSOとの間の相乗作用の細胞基盤を検討するため、HIV−1静止のためのJurkatモデルを使用した。これらの結果は、HIV−1 LTRの制御下で組み込まれたGFP/Tatコンストラクトを有するA1 Jurkat細胞クローンから得られ、それは大部分の細胞内で静止することから、フローサイトメトリーにより、単一の細胞レベルでのLTRプロモーターの活性化を試験することを可能にする、[Jordan Aら、2003年]。本発明者らの結果は、BSOがHDACI感受性細胞を応答細胞集団に動員することを示した(図13)。BSO単独は、ACH−2およびU1細胞内でのp24の測定値から得られた結果と異なり、少数の細胞内でLTR活性化を誘発した。
【0157】
HIV−1を複製する細胞培養物は、還元グルタチオンのレベルの低下を示す[Simon Gら、1994年]。非感染細胞系および潜伏感染細胞系において、BSO+HDACi併用の毒性を比較した。結果は、BSOとHDACiの併用により、インキュベーションの72時間後、非感染細胞培養物でなく潜伏感染細胞培養物中で著明な細胞毒性が認められることを示した(図14)。
【0158】
これは、非感染Jurkat細胞およびJurkat細胞クローン(6.3および8.4)(LTRの制御下で静止HIV−1ゲノム(GFP遺伝子を有する)を有する)における実験によって支持される[Jordan A、2003年、下記]。6.3細胞クローンが、MS−275/BSOの併用に対して、その非感染対応物より容易に死滅することを見出した(図14)。8.4クローンの場合、同様の結果が得られた(データは示さず)。
【0159】
要するに、BSOの効果は、HDACiに基づくHIV−1再活性化処置に対して応答する細胞の割合を高めることを可能にする。一般に、酸化ストレスは、増強されたHAT活性およびDNA巻き戻しへのHAT/HDAC活性のバランスを崩すことから、いくつかの転写因子の結合を促進する[Rahman Iら、2004年]。これは、わずかな細胞集団だけが全体的シグナルに応答して活性化された活性化後の多様な表現が、Jordanら、2004年[下記]によって示された(彼らはこの現象を異なる局所クロマチン環境に起因すると考えた)ことから、重要な臨床用途を示唆している。
【0160】
本試験の結果は、BSOなどの酸化促進剤をHDACiと併用するという本発明者らの戦略が、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の効果を高めること以外に、潜伏感染細胞の選択的殺滅を誘発可能であるという仮説を立てることを可能にする。この戦略は、念願の「ショックおよび殺滅」戦略の1つであると考えることができる。これらの戦略は、(ウイルス拡散を遮断するための)ARTの存在下での薬剤による静止状態からのHIV−1活性化の誘発(すなわち「ショック」段階)と、その後の自然的手段(例えば、免疫応答、ウイルス細胞病原性)または人工的手段(例えば、薬剤、モノクローナル抗体など)のいずれかによる感染細胞の除去(すなわち「殺滅」段階)からなる[Hamer DH、2004年]。当然、本発明者らの戦略は、潜伏感染細胞内でHIV−1複製を活性化する(すなわち「ショック」段階)HDACiと、還元グルタチオンの細胞内レベルでのHIV−1誘発性破壊に起因する細胞傷害を拡大する(すなわち「殺滅」段階)BSOなどの酸化促進剤との併用に基づく。かかる効果を発揮可能な薬剤併用の探索は、これまでAIDS研究における「聖杯」であった。
【0161】
実施例3における参考文献
Jordan A, Bisgrove D, Verdin E: HIV reproducibly establishes a latent infection after acute infection of T cells in vitro. EMBO J 2003, 22:1868-1877.
Simon G, Moog C, Obert G: Valproic acid reduces the intracellular level of glutathione and stimulates human immunodeficiency virus. Chem Biol Interact 1994, 91:111-121.
Rahman I, Marwick J, Kirkham P: Redox modulation of chromatin remodeling: impact on histone acetylation and deacetylation, NF-kappaB and pro-inflammatory gene expression. Biochem Pharmacol 2004, 68:1255-1267.
Hamer DH: Can HIV be Cured? Mechanisms of HIV persistence and strategies to combat it. Curr HIV Res 2004, 2:99-111.
【0162】
実施例4−三酸化ヒ素
金塩およびヒ素は、多数の生物学的効果を共有し、今や、いくつかの医療用途を有する潜在的に有望なエピジェネティック金属薬として新たな展望を提示している。他の病状におけるそれらの治療用途は、当然ながら古くからの伝統を有する。ヒ素は金属および非金属特性の双方を示す元素であると考えられるが、それは多くの局面において金属として振る舞う。その最も一般的な元素形態(灰色ヒ素)において、それは金属様の性質を有し、電気を通す。金塩と同様、ヒ素は、紀元前5世紀以来、治療で用いられている。ヒポクラテスは、潰瘍に対する治療薬として鶏冠石(As)および石黄(As)を使用した。伝統的中国医学では、ヒ素と金を併用することで、様々な症状が処置された。テーベのOlympiodorus(紀元5世紀)は、硫化ヒ素を焙焼し、白色ヒ素(As3であるが、As43としても見出され得る)を得た。金塩およびヒ素の双方は、後に、数ある用途の中でも、抗リウマチ、抗梅毒、および抗腫瘍における用途があることが見出された[Eisler、2003年、Giordano、1844年、ChristisonおよびGriffith、1848年、CutlerおよびBradford、1878年、Waxmanら、2001年、Parkら、2008年]。ヒ素は、高用量で使用される場合には、毒薬としても知られている。
【0163】
三酸化ヒ素および金塩の使用は、前世紀には徐々に少なくなり、三酸化ヒ素の慢性前骨髄球性白血病への使用および金塩の関節リウマチへの使用が制限された。しかし、この10年にわたり、これらのタイプの薬剤への関心は、それらのエピジェネティック効果、すなわちDNA構造の修飾を塩基の配列を改変することなく誘発する能力の発見のおかげで再燃している。巻き込み/巻き戻しなどのDNAの構造的修飾は遺伝子発現を調節する。さらなる研究によると、三酸化ヒ素および金塩が、細胞レベルでのそれらの効果において重要な類似性を共有し、それは、両タイプの薬剤における、それらの歴史を通じて見出されてきた類似の治療用途を明らかにし得ることが示された。三酸化ヒ素と金塩の双方は、反応性酸素種(ROS)を誘導する。
【0164】
酸化ストレスは、増強されるHAT活性およびDNA巻き戻しへのHAT/HDAC活性のバランスを崩すことから、いくつかの転写因子の結合を促進することが知られている[Rahmanら、2004年]。興味深いことに、三酸化ヒ素および金含有化合物の双方は、チオレドキシンレダクターゼを阻害し、かつスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)模倣体として作用する。したがって、金化合物およびヒ素は、これらの効果およびHAT活性の誘発などの共通のエピジェネティック効果を踏まえ、独特な薬剤クラスとして検討され始めている[Talbotら、2008年]。
【0165】
ヒ素および金含有化合物を含むこの薬剤クラスは、以降「エピジェネティック金属薬」(すなわちエピジェネティック効果を有する金属薬)と称されることになる。HIV−1を潜伏から活性化することで知られる他の金属薬、例えば鉄含有化合物およびシスプラチン[Savarinoら、1998年;Spandidosら、1990年]は、金化合物およびヒ素の向分化(pro-differentiating)効果を示さない。
【0166】
さらに、金およびヒ素イオンは、チオレドキシンレダクターゼ(TrxR)の活性部位を、これらのタンパク質の還元活性にとって重要なセレノシステイン残基と直接複合化することによって遮断する能力を共有する。オーラノフィンのこの活性は、三酸化ヒ素と共有される[Liuら、2007年]。金(I)誘導体および三酸化ヒ素は、チオレドキシンレダクターゼの極めて優れた阻害剤のように見られ、ナノモル範囲内のIC50値を示す(IC50<300nM)一方、金属イオンおよび金属複合体はマイクロモル範囲内で活性がある(19〜80μM)[Bragadinら、2004年;Luら、2007年]。三酸化ヒ素およびオーラノフィンなどの金(I)誘導体によって共有される別の活性は、TrxRの合成を抑制する独特の能力である[Talbotら、2008年]。
【0167】
実施例1において、金含有化合物のオーラノフィンが、関節リウマチを有するヒトの血漿中に見出される場合を再現する濃度で、インビトロで潜伏からのHIV−1回避を誘発可能であることを示している。本発明者らの理論が正しい場合、潜伏からのHIV−1回避に対する金含有化合物オーラノフィンの効果はまた、ヒ素によって発揮されるものである。
【0168】
三酸化ヒ素は、文書で十分に立証されたエピジェネティックの潜在性、すなわち十分に記載された毒性特性を有し、またその臨床使用は、特定用量で比較的安全である。
【0169】
最初に、HIV−1 LTRの制御下で組み込まれた緑色蛍光タンパク質(GFP)コード遺伝子を有するJurkat細胞クローンにおける三酸化ヒ素に対する応答性を試験した[Jordanら、2003年]。
【0170】
実施例1において詳述された技術に従って実験を行った。これらのJurkat細胞クローンでは、HDACIによるGFPの誘導は、わずかな細胞においてのみ明らかであり、三酸化ヒ素に応答して濃度依存性に増大した(図15)。
【0171】
全HIV−1ゲノムを有する細胞集団内部での三酸化ヒ素に対する応答を評価するため、Jordanらによって確立された、潜伏感染Tリンパ球Jurkat細胞クローン6.3および8.4を使用した[Jordanら、2003年]。この細胞クローンは、LTRの制御下の、GFP遺伝子置換nefを示す全HIV−1ゲノムを有する。これらの細胞は、U1細胞に対して、非有意な基礎レベルのHIV−1発現を示し、機能的なTat/TAR軸を有する。8.4細胞においては、三酸化ヒ素は、蛍光における用量依存性変化を誘発し(データは示さず)、それはほとんどの場合、採用した最高濃度で明らかであった。
【0172】
三酸化ヒ素の効果が、HIV−1潜伏のための細胞系モデルにおけるオーラノフィンの効果を再現することを結論づける。オーラノフィンと同様、シスプラチンは、ナノモル範囲内の濃度で潜伏HIV−1を活性化する能力があった。オーラノフィンおよび三酸化ヒ素は、濃度のナノモル範囲内ではなくマイクロモル内で静止HIV−1を活性化する、シスプラチンなどの他の金属薬とそれらの効果を共有しない[Spandidosら、1990年]。したがって、本発明者らの結果は、金(I)誘導体および三酸化ヒ素が、エピジェネティック調節剤の独特の薬剤クラスに属するものとして見なされるべきであるという見解を支持する。三酸化ヒ素であれば、オーラノフィンと同様、HIV−1をレゼルボアから除去するための「追い出し(smoking out)」戦略において用途が見出され得る。
【0173】
実施例2および3において、「ショックおよび殺滅」効果が、HIV−1潜伏のための細胞系モデルにおいて、クラスIヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACI)をブチオニンスルホキシミン(γ−グルタミルシステインシンテターゼ、すなわちグルタチオン合成用の制限酵素の阻害剤)と併用することによって得られることを示している[Savarinoら、2009年]。
【0174】
グルタチオンは、疑いなく1つの重要な抗酸化防御であるが、BSO単独は、潜伏からのHIV−1回避をわずかしか誘発することができなかった。これは、BSOは本質的に酸化ストレスを誘発しないが、その代わり、HDACIによって誘発される酸化ストレスに対抗する細胞集団の能力を損なうという事実によって説明可能である[Palamaraら、未公開データ]。これに関連して、オーラノフィンおよび三酸化ヒ素は、おそらくそれらのスーパーオキシドジスムターゼ模倣効果を通じて本質的に酸化ストレスを誘発する能力があり、かつ、TrxRを阻害することによって抗酸化防御に対抗する能力がある。これらの効果であれば、HIV−1潜伏に対抗するための手段としての酸化ストレスの利用における先進の工程を示し得る。
【0175】
最近、Chomontらは、抗レトロウイルス療法(ART)下でありかつ低いCD4カウントを示す個体におけるHIV−1潜伏における主要なレゼルボアとして、移行性メモリーT−CD4細胞(TTMs)を同定した[Chomontら、2009年]。TTMsは、セントラルメモリーT−CD4細胞(TCMs)の前駆体であり、それはより安定なHIV−1レゼルボアを示し、長年にわたって生存する。TTMsは、TCMsに対し、あまり分化していない表現型を示し、幹細胞増殖を誘発するサイトカインであるIL−7に応答して増殖する。低いCD4カウントを有するARTで処置された個体からのHIV−1根絶を得るため、Chomontらは、ARTと併用して長期持続型TCMレゼルボアの生成を回避するため、T細胞増殖を阻害しかつ幹細胞性を低下させることが可能な「インテリジェント標的化(intelligent-targeted)化学療法」での処置を提唱している。しかし、筆者らは、好適な薬剤候補を同定することができなかった。しかし、(ウイルスの細胞病原性または免疫系によって感染細胞の除去を可能にする)三酸化ヒ素のHIV−1誘発効果であれば、リンパ球に対するその周知の抗芽球効果とその著明な向分化活性に加えて、この薬剤がHIV−1根絶の臨床試験における理想的な候補となる。
【0176】
実施例4における参考文献
Bragadin M, Scutari G, Folda A, Bindoli A, Rigobello MP. Effect of metal complexes on thioredoxin reductase and the regulation of mitochondrial permeability conditions. Ann N Y Acad Sci. 2004 Dec; 1030:348-54.
Chomont N, El-Far M, Ancuta P, Trautmann L, Procopio FA, Yassine-Diab B, Boucher G, Boulassel MR, Ghattas G, Brenchley JM, Schacker TW, Hill BJ, Douek DC, Routy JP, Haddad EK, Sekaly RP. HIV reservoir size and persistence are driven by T cell survival and homeostatic proliferation. Nat Med. 2009 Aug;15(8):893-900.
Cutler EG, Bradford EH. Action of iron, cod-lived oil and arsenic on the globular richness of the blood. Am J Med Sci 1878; 75:74-84.
Christison and Griffith's Dispensatory 1848 (A Dispensatory or Commentary on the Pharmacopeias of Great Britan and the United States). Lea and Blanchard publishers of Philadelphia.
Eisler R. Chrysotherapy: a synoptic review. lnflamm Res. 2003 Dec;52(12):487-501.
Giordano A. Farmacologia, ossia trattato di farmacia teorico e pratico. Torino, 1844 Ed.
Zecchi e Bona, Contrada Carlo Alberto.
Jordan A, Bisgrove D, Verdin E. HIV reproducibly establishes a latent infection after acute infection of T cells in vitro. EMBO J. 2003;22: 1868-1877.
Lu J, Chew EH, Holmgren A. Targeting thioredoxin reductase is a basis for cancer therapy by arsenic trioxide. Proc Natl Acad Sci U S A. 2007 Jul 24; 104(30): 12288- 93.
Park SJ, Kim M, Kim NH, Oh MK, Cho JK, Jin JY, Kim IS. Auranofin promotes retinoic acid- or dihydroxyvitamin D3-mediated cell differentiation of promyelocyte leukaemia cells by increasing histone acetylation. Br J Pharmacol. 2008 Jul; 154(6): 1196-205.
Rahman I, Marwick J, Kirkham P: Redox modulation of chromatin remodelling: impact on histone acetylation and deacetylation, NF-kappaB and pro-inflammatory gene expression. Biochem Pharmacol 2004, 68:1255-1267
Savarino A, Mai A, Norelli S, El Daker S, Valente S, Rotili D, Altucci L, Palamara AT, Garaci E. "Shock and kill" effects of class I-selective histone deacetylase inhibitors in combination with the glutathione synthesis inhibitor buthionine sulfoximine in cell line models for HIV-1 quiescence. Retrovirology. 2009 Jun 2;6:52.
Spandidos DA, Zoumpourlis V, Kotsinas A, Maurer HR, Patsilinacos P. Transcriptional activation of the human immunodeficiency virus long terminal repeat sequences by cis-platin. Genet Anal Tech Appl. 1990 Sep;7(5):138-41.
Talbot S, Nelson R, Self WT. Arsenic trioxide and auranofin inhibit selenoprotein synthesis: implications for chemotherapy for acute promyelocyte leukaemia. Br J Pharmacol. 2008 Jul;154(5):940-8.
Waxman S1 Anderson KC. History of the development of arsenic derivatives in cancer therapy. The Oncologist, Vol. 6, Suppl 2, 3-10, April 2001.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レトロウイルスレゼルボアの処置における酸化ストレス誘発剤の使用であって、前記酸化ストレス誘発剤は非鉄金属薬であり、前記金属薬はエピジェネティック調節剤である、使用。
【請求項2】
前記エピジェネティック調節剤は、金含有化合物である、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記金含有化合物は、オーラノフィンであり、任意選択によりスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)と併用される、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
前記エピジェネティック調節剤は、ヒ素含有化合物である、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
前記ヒ素含有化合物は、酸化ヒ素、例えば三酸化ヒ素(As)である、請求項4に記載の使用。
【請求項6】
レトロウイルスレゼルボアの処置における酸化ストレス誘発剤の使用であって、前記酸化ストレス誘発剤は、グルタチオン合成阻害剤、例えばブチオニンスルホキシミンと併用されるヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)である、使用。
【請求項7】
前記化合物は、前記レトロウイルスのレゼルボアの認定されたモデルにおいてレトロウイルス複製を誘発する能力がある、請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
前記レトロウイルスは、HIV−1であり、前記モデルは、U1およびACH−2細胞モデルから選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記レトロウイルスは、HIVウイルスである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)、BSOおよび/または鉄ニトリロアセテートまたは硫酸第一鉄のうちの少なくとも1つの使用をさらに含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記HDACiは、
a)式
【化1】

(式中、Yは、各々が不飽和または部分不飽和で、かつ、複素環式または単環式であり、2〜8個の連結原子を有する、1つまたは2つの6員環を含み、前記連結原子または環のいずれかは、アミノ基およびカルボニル基を含む。)
を有するベンズアミドHDAC阻害剤、または
b)式
【化2】

(式中、Rは、直接結合またはエチレンもしくはエテニレン基、Xは=CH−もしくは=N−であり、Rは、アリールまたはヘテロアリールであり、かつ単環式もしくは二環式であり、Rは直鎖もしくは分枝鎖アルキルであり、任意選択により単環式もしくは二環式アリールまたはヘテロアリール基によって置換されている。)
を有するヒドロキサム酸HDACi
から選択される、請求項5または請求項5に従属する請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記ベンズアミドは、添付の表1中のMC2211およびMS275として同定された化合物の1つに近似の類似体である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記阻害剤は、式
【化3】

を有する化合物である、請求項11または12に記載の使用。
【請求項14】
前記処置は、抗レトロウイルス療法をさらに含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の使用
【請求項15】
前記阻害剤は、N−(2−アミノフェニル)−4−[N−(ピリジン−3−イルメトキシカルボニル)アミノメチル]−ベンズアミド)である、請求項11〜15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
BSOおよびベンズアミドHDACiは併用投与される、請求項14または15に記載の使用。
【請求項17】
レトロウイルスレゼルボアを有すると疑われる患者を処置する方法であって、請求項1〜16のいずれか一項に規定される酸化ストレス誘発剤を前記患者に投与する工程を含む、方法。
【請求項18】
ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤(HDACi)、BSO、金含有化合物、例えばオーラノフィン、ヒ素含有化合物、例えば三酸化ヒ素(As)および/または鉄ニトリロアセテートまたは硫酸第一鉄のうちの少なくとも1つを投与する工程をさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
レトロウイルスが潜伏感染した細胞を選択的に標的化する方法であって、前記細胞を請求項1〜16のいずれか一項に規定される酸化ストレス誘発剤と接触させる工程を含む、方法。
【請求項20】
レトロウイルスレゼルボアの処置における使用を目的とした、請求項1〜16のいずれか一項に記載される酸化ストレス誘発剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2012−506884(P2012−506884A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533630(P2011−533630)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007958
【国際公開番号】WO2010/049182
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(506119132)
【Fターム(参考)】