電子機器用筐体およびその製造方法
【課題】電子機器の薄型化、高い防水性、および表示部の良好な外観を両立するための電子機器用筐体を実現する。
【解決手段】電子機器1の外側を覆う電子機器用筐体2であって、筐体用のフレーム2aと、フレームを貫通する窓部9に配置される透明な表示板5と、窓部の内側端面と表示板とを連接する弾性部材6とを備え、表示板の裏面と窓部の外側に位置するフレームの裏面とを面一に形成し、弾性部材が表示板における表側の面の外周囲の少なくとも一部を覆うようにした。
【解決手段】電子機器1の外側を覆う電子機器用筐体2であって、筐体用のフレーム2aと、フレームを貫通する窓部9に配置される透明な表示板5と、窓部の内側端面と表示板とを連接する弾性部材6とを備え、表示板の裏面と窓部の外側に位置するフレームの裏面とを面一に形成し、弾性部材が表示板における表側の面の外周囲の少なくとも一部を覆うようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の外側を構成する電子機器用筐体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器は、一般的に、その外側を覆う筐体に窓部を形成し、当該窓部に表示部に相当する透明板を固定し、当該透明板を通じて様々な表示を実現する。電子機器に対する様々な要求が高まる中、電子機器の防水性および薄型化に対する要求も高くなってきている。電子機器の防水を図る場合、電子機器の表示部は、筐体と異なる材料を接続して構成されることから、少なくともその接続部分の防水を図る必要がある。表示部の防水を図る技術は、その一例として、特許文献1に開示されている。
【0003】
ここで、従来から公知の典型的な表示部の防水構造を説明する。図11は、従来の電子機器の外側を構成する筐体の斜視図を示す。図12は、そのL−L線断面図およびその一部Mの拡大図を示す。筐体20は、筐体20の主要構成体であるフレーム20aと、その表側の面を貫通して形成される表示用の窓部21の裏側から固定される透明な表示板22とを備える。表示板22は、窓部21より若干広い面積で形成されており、窓部21の外周囲の裏側に、弾性接着層23を介して接着固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−141210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、フレーム20aと表示板22とをその厚さ方向に重ねると、電子機器の総厚が増し、薄型化の障害になる。また、表示板22とフレーム20aの窓部21とを同一平面に配置して、両者21,22の端面同士を接着剤若しくは弾性部材にて接続する方法も考えられるが、端面同士の接続では接着強度が低くなり、表示板22が窓部21から脱落し、あるいは接着剤若しくは弾性部材の一部が剥がれることによって防水性の低下を招く危険性がある。
【0006】
本発明は、上記のような要求および問題に鑑みてなされたものであって、電子機器の薄型化お高い防水性を備える電子機器用筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一形態は、電子機器の外側を覆う電子機器用筐体であって、筐体用のフレームと、フレームを貫通する窓部に配置される透明な表示板と、窓部の内側端面と表示板とを連接する弾性部材とを備え、表示板の裏面と窓部の外側に位置するフレームの裏面とを面一に形成し、弾性部材によって表示板における表側の面の外周囲の少なくとも一部を覆っている電子機器用筐体である。
【0008】
また、本発明の別の形態は、さらに、表示板の裏面と、フレームの裏面と、弾性部材の裏面とを面一に形成している電子機器用筐体である。
【0009】
また、本発明の別の形態は、さらに、弾性部材がフレームの少なくとも表側の面を覆っている電子機器用筐体である。
【0010】
また、本発明の一形態は、電子機器の外側を構成し、筐体用のフレームと、フレームを貫通する窓部に配置される透明な表示板と、窓部の内側端面と表示板とを連接する弾性部材とを備える電子機器用筐体の製造方法であって、フレームを、弾性部材の成形用金型を構成する第一金型にセットするフレームセット工程と、表示板の裏面と窓部の外側に位置するフレームの裏面とを面一に保持するように、窓部の直下に位置する第一金型に表示板を配置する表示板配置工程と、フレームおよび表示板を配置した第一金型の上から、表示板の表側の面との間に空間を形成するための凹部を備える第二金型を配置する金型セット工程と、第一金型と第二金型との間に形成される空間であって、表示板と窓部との隙間および表示板の表側の面と凹部との隙間を少なくとも含む空間に、弾性部材を形成するためのエラストマー組成物を供給するエラストマー供給工程と、エラストマー組成物を硬化する硬化工程と、硬化工程後に、表示板の表側の面において、その外周囲の一部を残して、その外周囲より内方の弾性部材を取り除き、表示板の外周囲より内方を露出する露出工程と、を含む電子機器用筐体の製造方法である。
【0011】
また、本発明の別の形態は、さらに、エラストマー供給工程では、第一金型と第二金型との間に形成される空間であって、表示板と窓部との隙間、表示板の表側の面と凹部との隙間および第二金型とフレームの表側の面との隙間を少なくとも含む空間に、弾性部材を形成するためのエラストマー組成物を供給する電子機器用筐体の製造方法である。
【0012】
また、本発明の別の形態は、さらに、表示板配置工程の前若しくは後に、表示板の表側の面に、表側の面と弾性部材との間に介在する離型層を配置する離型層配置工程をさらに含み、露出工程では、外周囲より内方の弾性部材と共に離型層を取り除く電子機器用筐体の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電子機器の薄型化および高い防水性を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、電子機器の一部を構成する第一実施形態に係る電子機器用筺体と、それと組み合わせる電子機器本体とを分解した一部分解斜視図を示す。
【図2】図2は、図1に示す電子機器用筺体のA−A線断面図およびその一部Bの拡大断面図を示す。
【図3】図3は、図1に示す電子機器用筺体の製造工程の一部を示す。
【図4】図4は、図3に示す工程に続く工程および第一金型上のフレームのC−C線断面図を示す。
【図5】図5は、図4に示す工程に続く工程および金型内外のD−D線断面図を示す。
【図6】図6は、図5に示す工程に続く工程、成形後のE−E線断面図、当該E−E線断面図中の一部E’の拡大図および弾性部材の一部を除去後のF−F線断面図を示す。
【図7】図7は、電子機器の一部を構成する第二実施形態に係る電子機器用筺体の斜視図を示す。
【図8】図8は、図7に示す電子機器用筺体のG−G線断面図およびその一部Hの拡大断面図を示す。
【図9】図9は、第一金型と第二金型との間に配置したフレームに弾性部材を形成する工程を説明する図であり、成形直後の金型の斜視図および金型内外の一部のI−I線断面図を示す。
【図10】図10は、図9に示す工程に続く工程、成形後のJ−J線断面図および弾性部材の一部を除去後のK−K線断面図を示す。
【図11】図11は、従来の電子機器の表側を構成する筐体の斜視図を示す。
【図12】図12は、図11に示す筐体のL−L線断面図およびその一部Mの拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る電子機器用筐体およびその製造方法の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態では、電子機器として携帯通信端末を例に挙げて説明するが、電子機器はそれに限定されず、携帯型音楽再生装置、小型テレビ受像器、リモートコントローラなどでも良い。
【0016】
<第一実施形態>
1.電子機器用筺体の構造
図1は、電子機器の一部を構成する第一実施形態に係る電子機器用筺体と、それと組み合わせる電子機器本体とを分解した一部分解斜視図を示す。
【0017】
第一実施形態に係る電子機器用筺体(以後、単に「筺体」と称する)2は、電子機器1の外側を覆うトレイの形状を呈する。筺体2は、回路基板やバッテリーを備える電子機器本体3側の段差端面4で当接し、その厚さ方向にて電子機器本体3と嵌め込み可能に構成されている。筺体2は、その主要構成体である筺体2用のフレーム2aと、透明なガラス若しくは樹脂にて好適に構成される表示板5と、表示板5とフレーム2aとの隙間にあって両者5,2aを連接する弾性部材6とを備える。フレーム2aは、その表側の面を貫通する矩形形状の窓部9を備える。表示板5は、窓部9よりも僅かに小さく形成されている。
【0018】
フレーム2aは、樹脂、金属あるいはセラミックスから好適に製造できる。フレーム2aを樹脂にて製造する場合、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合(ABS)樹脂などを好適に用いることができる。フレーム2aに、無機フィラーあるいは有機フィラーを分散させても良い。表示板5は、透明であれば、ガラス以外に、透明性に優れるアクリル樹脂にて構成することもできる。ここで、「透明」とは、表示板5を通して筺体2の裏側の表示を視認できる程度以上の光透過性を意味しており、有色透明、無色透明の他、半透明をも含むように広義に解釈される。弾性部材6は、好適には、フレーム2aおよび表示板5よりも柔軟性に富むエラストマーから成り、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、天然ゴム等から好適に構成でき、特に、熱硬化性樹脂の一種であるシリコーン系エラストマーを好適に用いることができる。弾性部材6の別の材料としては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマーを用いることもできる。さらに、弾性部材6に、無機フィラーあるいは有機フィラーを分散させても良い。
【0019】
図2は、図1に示す電子機器用筺体のA−A線断面図およびその一部Bの拡大断面図を示す。
【0020】
表示板5は、好適には、フレーム2aの厚さよりも少し薄い厚さにて構成されている。筺体2を幅50〜70mm、長さ100〜120mm、高さ3〜8mmの薄厚の直方体の形状に構成する場合において、表示板5の好適な厚さは、一例として0.5〜1.0mmである。また、フレーム2aの好適な厚さは、0.6〜2.5mmである。なお、フレーム2aの厚さと表示板5の厚さを同一(例えば、両方とも0.5mm)とすることもできる。表示板5は、その裏面と、フレーム2aの窓部9の外周囲の裏面とが面一になるように、窓部9内に配置されている。弾性部材6は、窓部9と表示板5との隙間を充填し、かつ表示板5の外周囲を覆うように、フレーム2aに固着されている。弾性部材6の裏面を、表示板5の裏面およびフレーム2aの窓部9の外周囲の裏面と共に面一になるように形成される方が、筺体2の裏面を平面化してより薄型化を図る観点で、なお好ましい。弾性部材6は、表示板5の外周囲を、その全周に亘って被覆する被覆部7を備えているので、表示板5との接触面積を大きくすることができる。その結果、フレーム2aと表示板5とをより強固に接続することができる。また、表示板5と弾性部材6との間に、易接着性のプライマーを介在させることによって、さらに強固な接着を実現できる。被覆部7の厚さは、フレーム2aの厚さと表示部5の厚さの差とほぼ等しくなるようにすると、フレーム2aから弾性部材6の被覆部7までを平面にすることができ、電子機器1のユーザが使用する際に指を引っ掛けるのを防止できる。
【0021】
2.電子機器用筺体の製造方法
図3は、図1に示す電子機器用筺体の製造工程の一部を示す。図4は、図3に示す工程に続く工程および第一金型上のフレームのC−C線断面図を示す。図5は、図4に示す工程に続く工程および金型内外のD−D線断面図を示す。図6は、図5に示す工程に続く工程、成形後のE−E線断面図、当該E−E線断面図中の一部E’の拡大図および弾性部材の一部を除去後のF−F線断面図を示す。
【0022】
筺体2は、図3から図6までの各工程を順に実行することによって、好適に製造できる。ここでは、フレーム2aとしてPC樹脂を、弾性部材6としてシリコーンゴムを用いる例で説明する。まず、図3に示すように、表示板5の表側の面に、離型層の一例としての保護フィルム8を貼る(離型層配置工程)。保護フィルム8は、弾性部材6の硬化前の未加硫状態のシリコーンゴム組成物を表示板5上に供給した際に、表示板5と当該組成物とが固着するのを防止し、その後工程において当該組成物を表示板5から剥離しやすくするためのフィルムである。保護フィルム8は、好適には、成形時の加熱温度(100℃程度)に耐えられる材料、例えば、PET、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂から構成される。保護フィルム8は、表示板5の外周囲を全周に亘って露出可能なように、表示板5よりも小さく形成される。後の工程において、露出した部分に形成される弾性部材6をフレーム2a側に残す一方で、保護フィルム8上の弾性部材6をフレーム2aから除去するためである。
【0023】
溶融したPC樹脂を金型内に充填して、冷却による硬化後に金型を開き、PC樹脂製のフレーム2aを製造する。次に、成形用金型を構成する第一金型10上に形成された突出領域であって当該フレーム2aの内側の容積および形状にほぼ等しい突出領域に、フレーム2aを被せるようにセットする(フレームセット工程)。この状態において、フレーム2aの窓部9は、当該突出領域の天面上に開口している。次に、表示板5の裏面と窓部9の外側に位置するフレーム2aの裏面とを面一に保持するように、窓部9の直下に位置する第一金型10の突出領域上に表示板5を配置する(表示板配置工程)。保護フィルム8を貼った表示板5は、保護フィルム8側を上にして配置される。表示板5を窓部9内に置いた状態のフレーム2aおよび第一金型10は、図4に示す通りである。この状態にて、図5に示すように、フレーム2aの上から、第一金型10と同じく成形用金型を構成する第二金型11を被せる(金型セット工程)。第二金型11は、保護フィルム8とほぼ同じ形状および同じ大きさにて、下面から内方に向かって窪む凹部12を備える。第一金型10と第二金型11を型締めすると、表示板5とその外周を囲む窓部9との隙間、第二金型11の下面と表示板5との隙間、保護フィルム8と凹部12との隙間が生じる。これらの隙間から構成される空間に弾性部材6を形成できるように、その材料となるシリコーンゴム組成物を表示板5上に供給する(エラストマー供給工程)。次に、金型を加熱して、当該組成物を硬化させる(硬化工程)。その結果、金型を開くと、図6に示すように、保護フィルム8上に突出部13を有する弾性部材6にて表示部5とフレーム2aとを接続した成形体が得られる。
【0024】
次に、突出部13を表示板5から除去する。突出部13を除去しやすいように、図6のE−E断面図中の一部E’の拡大図に示すように、弾性部材6の突出部13の裾野部分に切り込みを形成して薄肉部13aを残すように成形しても良い。また、薄肉部13aの有無を問わず、当該除去は、手作業にて行う他、如何なるカッティングツールによって行っても良い。突出部13を除去すると、その裏側の保護フィルム8も突出部13と一体となって表示板5から剥がれる(露出工程)。その結果、保護フィルム8の領域を露出し、その外側から窓部9までを弾性部材6にて充填した状態の筺体2を得ることができる。
【0025】
筺体2は、上述のように、図3から図6までの各工程を順に実行することによって製造されるため、以下のメリットを有する。第一金型10の突出領域の上面と第二金型11の下面との間で表示板5を挟まずに、第二金型11と表示板5との間に隙間を確保して、弾性部材6形成用のシリコーンゴム組成物を当該隙間に供給するようにしているので、弾性部材6の成形工程において、表示板5を割ってしまう危険性を低減できる。特に、表示板5の厚さにバラツキがある場合にも、凹部12の深さを当該バラツキよりも大きく設計することにより、第二金型11の下面が表示板5を圧接して割ってしまうような事態を解消することができる。なお、第一金型10と第二金型11との型締め時の圧力を減らして、表示板5を割らないようにすることも考えられるが、その場合には、シリコーンゴム組成物が表示板5の外周囲から内部方向に流れ込み、表示板5の表側の面にバリが発生しやすくなり、当該バリの除去に労力を要する。上述の製造方法は、そのような労力を不要とする。また、弾性部材6は、一旦、表示板5と窓部9との隙間の他、表示板5の表側の面を覆うように形成され、その後、表示に必要な領域を覆う突出部13のみを除去して形成されるため、表示板5とフレーム2aとを確実にシールできる。特に、表示板5の表側の面の外周囲を覆う被覆部7の存在は、当該確実なシールを実現するのに寄与する。さらに、保護フィルム8を表示板5上に貼り、その上からシリコーンゴム組成物を供給し、その硬化後に、保護フィルム8と一緒に突出部13を除去するようにしているので、シリコーンゴム組成物から表示板5を適切に保護でき、かつ突出部13を除去しやすくなる。保護フィルム8を貼ることに代えて、離型剤を表示板5上に塗布するようにしても良い。加えて、表示板5を、弾性部材6を介してフレーム2aに一体化することによって、電子機器1の組立工程の簡素化、部品管理の効率化を図ることもできる。
【0026】
<第二実施形態>
次に、本発明に係る電子機器用筐体およびその製造方法の第二実施形態について説明する。第二実施形態において、第一実施形態にて説明した構成については、図面上において同一の符号を付し、適宜、その説明を省略する。
【0027】
1.電子機器用筺体の構造
図7は、電子機器の一部を構成する第二実施形態に係る電子機器用筺体の斜視図を示す。
【0028】
第二実施形態に係る筺体2が第一実施形態に係るそれと異なる点は、弾性部材6がフレーム2aの少なくとも表側の面を被覆する表面被覆部14を有することである。図7に示すように、筺体2は、表示板5の中央にある表示領域を除き、表面被覆部14にて覆われている。
【0029】
図8は、図7に示す電子機器用筺体のG−G線断面図およびその一部Hの拡大断面図を示す。
【0030】
弾性部材6は、表示板5と窓部9との隙間から表示板5の表側の面の外周囲を覆う被覆部7を形成する他、フレーム2aの少なくとも表側の面を覆う表面被覆部14を形成する。表面被覆部14は、電子機器1を使用するユーザに、持ちやすさを含み良好な触感を与えるのに有効に寄与する。また、被覆部7と表面被覆部14とは略面一となっているため、電子機器1の使用時に、指などが引っ掛かるのを防止できる。この実施形態では、表面被覆部14は、フレーム2aの表側の面および側面のみを覆っているが、フレーム2aの開口端、さらには開口端から内側の面まで延出して形成されていても良い。また、表面被覆部14は、フレーム2aの側面を覆わず、表側の面の大部分を占める天面のみを覆っていても良い。
【0031】
2.電子機器用筺体の製造方法
第二実施形態に係る筺体2は、第一実施形態と同様、図3および図4に基づいて説明した工程と同じ工程を経る。したがって、当該同じ工程の説明を省略し、第一実施形態と異なるその後の工程について説明する。
【0032】
図9は、第一金型と第二金型との間に配置したフレームに弾性部材を形成する工程を説明する図であり、成形直後の金型の斜視図および金型内外の一部のI−I線断面図を示す。図10は、図9に示す工程に続く工程、成形後のJ−J線断面図および弾性部材の一部を除去後のK−K線断面図を示す。
【0033】
第一実施形態に係る筺体2の製造方法と同様、表示板5に保護フィルム8を貼り、その表示板5を窓部9内の第一金型10上に配置した後(表示板配置工程)、図9に示すように、フレーム2aの上から、第一金型10と同じく金型を構成する第二金型11を被せる(金型セット工程)。第二金型11は、保護フィルム8とほぼ同じ形状および同じ大きさにて、下面から内方に向かって窪む凹部15を備えると共に、凹部15の外側の領域において、フレーム2aの表側の面との間にも隙間を有するように構成されている。第一金型10と第二金型11を型締めすると、表示板5とその外周を囲む窓部9との隙間、第二金型11の下面と表示板5との隙間、保護フィルム8と凹部15との隙間および第二金型11の下面とフレーム2aとの隙間が生じる。これらの隙間から構成される空間に弾性部材6を形成できるように、その材料となるシリコーンゴム組成物を表示板5上に供給する(エラストマー供給工程)。次に、金型を加熱して、当該組成物を硬化させる(硬化工程)。その結果、金型を開くと、図10に示すように、保護フィルム8上に突出部13を有すると共にフレーム2aの表側の面および側面を被覆する表面被覆部14を有する弾性部材6にて、表示部5とフレーム2aとを接続した成形体が得られる。
【0034】
次に、突出部13を表示板5から除去する。突出部13を除去しやすいように、第一実施形態と同様、弾性部材6の突出部13の裾野部分に切り込みを形成して薄肉部13aを残すように成形しても良い。突出部13を除去すると、その裏側の保護フィルム8も突出部13と一体となって表示板5から剥がれる(露出工程)。その結果、保護フィルム8の領域を露出し、その外側から窓部9までを覆い、さらにはそこから連続してフレーム2aの表側の面および側面をも弾性部材6にて被覆した状態の筺体2を得ることができる。
【0035】
<その他の実施形態>
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するように変更実施可能である。
【0036】
例えば、弾性部材6は、表示板5における表側の面の外周囲を全周に亘って覆っているが、当該外周囲の少なくとも一部を、例えば、表示板5の幅方向に位置する長辺側のみ、あるいは短辺側のみを覆っていても良い。また、弾性部材6の裏面は、表示板5の裏面およびフレーム2aの裏面に対して面一に形成されず、表示板5およびフレーム2aの各裏面よりも表側に向かって窪んでいても良い。また、露出工程では、突出部13と共に保護フィルム8を取り除かず、突出部13と保護フィルム8とを別々に取り除くようにしても良い。また、表示板5を第一金型10の突出領域上に配置した後に、表示板5の表側の面に、離型層の配置(保護フィルム8の貼付や離型剤の塗布)を行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えば、表示板の外周から防水を図ることのできる電子機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 電子機器
2 筺体(電子機器用筐体)
2a フレーム
8 保護フィルム(離型層の一例)
9 窓部
5 表示板
6 弾性部材
10 第一金型(成形用金型の一部)
11 第二金型(成形用金型の一部)
12 凹部
13 突出部(内方の弾性部材)
15 凹部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の外側を構成する電子機器用筐体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器は、一般的に、その外側を覆う筐体に窓部を形成し、当該窓部に表示部に相当する透明板を固定し、当該透明板を通じて様々な表示を実現する。電子機器に対する様々な要求が高まる中、電子機器の防水性および薄型化に対する要求も高くなってきている。電子機器の防水を図る場合、電子機器の表示部は、筐体と異なる材料を接続して構成されることから、少なくともその接続部分の防水を図る必要がある。表示部の防水を図る技術は、その一例として、特許文献1に開示されている。
【0003】
ここで、従来から公知の典型的な表示部の防水構造を説明する。図11は、従来の電子機器の外側を構成する筐体の斜視図を示す。図12は、そのL−L線断面図およびその一部Mの拡大図を示す。筐体20は、筐体20の主要構成体であるフレーム20aと、その表側の面を貫通して形成される表示用の窓部21の裏側から固定される透明な表示板22とを備える。表示板22は、窓部21より若干広い面積で形成されており、窓部21の外周囲の裏側に、弾性接着層23を介して接着固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−141210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、フレーム20aと表示板22とをその厚さ方向に重ねると、電子機器の総厚が増し、薄型化の障害になる。また、表示板22とフレーム20aの窓部21とを同一平面に配置して、両者21,22の端面同士を接着剤若しくは弾性部材にて接続する方法も考えられるが、端面同士の接続では接着強度が低くなり、表示板22が窓部21から脱落し、あるいは接着剤若しくは弾性部材の一部が剥がれることによって防水性の低下を招く危険性がある。
【0006】
本発明は、上記のような要求および問題に鑑みてなされたものであって、電子機器の薄型化お高い防水性を備える電子機器用筐体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の一形態は、電子機器の外側を覆う電子機器用筐体であって、筐体用のフレームと、フレームを貫通する窓部に配置される透明な表示板と、窓部の内側端面と表示板とを連接する弾性部材とを備え、表示板の裏面と窓部の外側に位置するフレームの裏面とを面一に形成し、弾性部材によって表示板における表側の面の外周囲の少なくとも一部を覆っている電子機器用筐体である。
【0008】
また、本発明の別の形態は、さらに、表示板の裏面と、フレームの裏面と、弾性部材の裏面とを面一に形成している電子機器用筐体である。
【0009】
また、本発明の別の形態は、さらに、弾性部材がフレームの少なくとも表側の面を覆っている電子機器用筐体である。
【0010】
また、本発明の一形態は、電子機器の外側を構成し、筐体用のフレームと、フレームを貫通する窓部に配置される透明な表示板と、窓部の内側端面と表示板とを連接する弾性部材とを備える電子機器用筐体の製造方法であって、フレームを、弾性部材の成形用金型を構成する第一金型にセットするフレームセット工程と、表示板の裏面と窓部の外側に位置するフレームの裏面とを面一に保持するように、窓部の直下に位置する第一金型に表示板を配置する表示板配置工程と、フレームおよび表示板を配置した第一金型の上から、表示板の表側の面との間に空間を形成するための凹部を備える第二金型を配置する金型セット工程と、第一金型と第二金型との間に形成される空間であって、表示板と窓部との隙間および表示板の表側の面と凹部との隙間を少なくとも含む空間に、弾性部材を形成するためのエラストマー組成物を供給するエラストマー供給工程と、エラストマー組成物を硬化する硬化工程と、硬化工程後に、表示板の表側の面において、その外周囲の一部を残して、その外周囲より内方の弾性部材を取り除き、表示板の外周囲より内方を露出する露出工程と、を含む電子機器用筐体の製造方法である。
【0011】
また、本発明の別の形態は、さらに、エラストマー供給工程では、第一金型と第二金型との間に形成される空間であって、表示板と窓部との隙間、表示板の表側の面と凹部との隙間および第二金型とフレームの表側の面との隙間を少なくとも含む空間に、弾性部材を形成するためのエラストマー組成物を供給する電子機器用筐体の製造方法である。
【0012】
また、本発明の別の形態は、さらに、表示板配置工程の前若しくは後に、表示板の表側の面に、表側の面と弾性部材との間に介在する離型層を配置する離型層配置工程をさらに含み、露出工程では、外周囲より内方の弾性部材と共に離型層を取り除く電子機器用筐体の製造方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電子機器の薄型化および高い防水性を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、電子機器の一部を構成する第一実施形態に係る電子機器用筺体と、それと組み合わせる電子機器本体とを分解した一部分解斜視図を示す。
【図2】図2は、図1に示す電子機器用筺体のA−A線断面図およびその一部Bの拡大断面図を示す。
【図3】図3は、図1に示す電子機器用筺体の製造工程の一部を示す。
【図4】図4は、図3に示す工程に続く工程および第一金型上のフレームのC−C線断面図を示す。
【図5】図5は、図4に示す工程に続く工程および金型内外のD−D線断面図を示す。
【図6】図6は、図5に示す工程に続く工程、成形後のE−E線断面図、当該E−E線断面図中の一部E’の拡大図および弾性部材の一部を除去後のF−F線断面図を示す。
【図7】図7は、電子機器の一部を構成する第二実施形態に係る電子機器用筺体の斜視図を示す。
【図8】図8は、図7に示す電子機器用筺体のG−G線断面図およびその一部Hの拡大断面図を示す。
【図9】図9は、第一金型と第二金型との間に配置したフレームに弾性部材を形成する工程を説明する図であり、成形直後の金型の斜視図および金型内外の一部のI−I線断面図を示す。
【図10】図10は、図9に示す工程に続く工程、成形後のJ−J線断面図および弾性部材の一部を除去後のK−K線断面図を示す。
【図11】図11は、従来の電子機器の表側を構成する筐体の斜視図を示す。
【図12】図12は、図11に示す筐体のL−L線断面図およびその一部Mの拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明に係る電子機器用筐体およびその製造方法の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下の実施の形態では、電子機器として携帯通信端末を例に挙げて説明するが、電子機器はそれに限定されず、携帯型音楽再生装置、小型テレビ受像器、リモートコントローラなどでも良い。
【0016】
<第一実施形態>
1.電子機器用筺体の構造
図1は、電子機器の一部を構成する第一実施形態に係る電子機器用筺体と、それと組み合わせる電子機器本体とを分解した一部分解斜視図を示す。
【0017】
第一実施形態に係る電子機器用筺体(以後、単に「筺体」と称する)2は、電子機器1の外側を覆うトレイの形状を呈する。筺体2は、回路基板やバッテリーを備える電子機器本体3側の段差端面4で当接し、その厚さ方向にて電子機器本体3と嵌め込み可能に構成されている。筺体2は、その主要構成体である筺体2用のフレーム2aと、透明なガラス若しくは樹脂にて好適に構成される表示板5と、表示板5とフレーム2aとの隙間にあって両者5,2aを連接する弾性部材6とを備える。フレーム2aは、その表側の面を貫通する矩形形状の窓部9を備える。表示板5は、窓部9よりも僅かに小さく形成されている。
【0018】
フレーム2aは、樹脂、金属あるいはセラミックスから好適に製造できる。フレーム2aを樹脂にて製造する場合、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合(ABS)樹脂などを好適に用いることができる。フレーム2aに、無機フィラーあるいは有機フィラーを分散させても良い。表示板5は、透明であれば、ガラス以外に、透明性に優れるアクリル樹脂にて構成することもできる。ここで、「透明」とは、表示板5を通して筺体2の裏側の表示を視認できる程度以上の光透過性を意味しており、有色透明、無色透明の他、半透明をも含むように広義に解釈される。弾性部材6は、好適には、フレーム2aおよび表示板5よりも柔軟性に富むエラストマーから成り、熱可塑性エラストマー、熱硬化性エラストマー、天然ゴム等から好適に構成でき、特に、熱硬化性樹脂の一種であるシリコーン系エラストマーを好適に用いることができる。弾性部材6の別の材料としては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマーを用いることもできる。さらに、弾性部材6に、無機フィラーあるいは有機フィラーを分散させても良い。
【0019】
図2は、図1に示す電子機器用筺体のA−A線断面図およびその一部Bの拡大断面図を示す。
【0020】
表示板5は、好適には、フレーム2aの厚さよりも少し薄い厚さにて構成されている。筺体2を幅50〜70mm、長さ100〜120mm、高さ3〜8mmの薄厚の直方体の形状に構成する場合において、表示板5の好適な厚さは、一例として0.5〜1.0mmである。また、フレーム2aの好適な厚さは、0.6〜2.5mmである。なお、フレーム2aの厚さと表示板5の厚さを同一(例えば、両方とも0.5mm)とすることもできる。表示板5は、その裏面と、フレーム2aの窓部9の外周囲の裏面とが面一になるように、窓部9内に配置されている。弾性部材6は、窓部9と表示板5との隙間を充填し、かつ表示板5の外周囲を覆うように、フレーム2aに固着されている。弾性部材6の裏面を、表示板5の裏面およびフレーム2aの窓部9の外周囲の裏面と共に面一になるように形成される方が、筺体2の裏面を平面化してより薄型化を図る観点で、なお好ましい。弾性部材6は、表示板5の外周囲を、その全周に亘って被覆する被覆部7を備えているので、表示板5との接触面積を大きくすることができる。その結果、フレーム2aと表示板5とをより強固に接続することができる。また、表示板5と弾性部材6との間に、易接着性のプライマーを介在させることによって、さらに強固な接着を実現できる。被覆部7の厚さは、フレーム2aの厚さと表示部5の厚さの差とほぼ等しくなるようにすると、フレーム2aから弾性部材6の被覆部7までを平面にすることができ、電子機器1のユーザが使用する際に指を引っ掛けるのを防止できる。
【0021】
2.電子機器用筺体の製造方法
図3は、図1に示す電子機器用筺体の製造工程の一部を示す。図4は、図3に示す工程に続く工程および第一金型上のフレームのC−C線断面図を示す。図5は、図4に示す工程に続く工程および金型内外のD−D線断面図を示す。図6は、図5に示す工程に続く工程、成形後のE−E線断面図、当該E−E線断面図中の一部E’の拡大図および弾性部材の一部を除去後のF−F線断面図を示す。
【0022】
筺体2は、図3から図6までの各工程を順に実行することによって、好適に製造できる。ここでは、フレーム2aとしてPC樹脂を、弾性部材6としてシリコーンゴムを用いる例で説明する。まず、図3に示すように、表示板5の表側の面に、離型層の一例としての保護フィルム8を貼る(離型層配置工程)。保護フィルム8は、弾性部材6の硬化前の未加硫状態のシリコーンゴム組成物を表示板5上に供給した際に、表示板5と当該組成物とが固着するのを防止し、その後工程において当該組成物を表示板5から剥離しやすくするためのフィルムである。保護フィルム8は、好適には、成形時の加熱温度(100℃程度)に耐えられる材料、例えば、PET、ポリイミド(PI)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂から構成される。保護フィルム8は、表示板5の外周囲を全周に亘って露出可能なように、表示板5よりも小さく形成される。後の工程において、露出した部分に形成される弾性部材6をフレーム2a側に残す一方で、保護フィルム8上の弾性部材6をフレーム2aから除去するためである。
【0023】
溶融したPC樹脂を金型内に充填して、冷却による硬化後に金型を開き、PC樹脂製のフレーム2aを製造する。次に、成形用金型を構成する第一金型10上に形成された突出領域であって当該フレーム2aの内側の容積および形状にほぼ等しい突出領域に、フレーム2aを被せるようにセットする(フレームセット工程)。この状態において、フレーム2aの窓部9は、当該突出領域の天面上に開口している。次に、表示板5の裏面と窓部9の外側に位置するフレーム2aの裏面とを面一に保持するように、窓部9の直下に位置する第一金型10の突出領域上に表示板5を配置する(表示板配置工程)。保護フィルム8を貼った表示板5は、保護フィルム8側を上にして配置される。表示板5を窓部9内に置いた状態のフレーム2aおよび第一金型10は、図4に示す通りである。この状態にて、図5に示すように、フレーム2aの上から、第一金型10と同じく成形用金型を構成する第二金型11を被せる(金型セット工程)。第二金型11は、保護フィルム8とほぼ同じ形状および同じ大きさにて、下面から内方に向かって窪む凹部12を備える。第一金型10と第二金型11を型締めすると、表示板5とその外周を囲む窓部9との隙間、第二金型11の下面と表示板5との隙間、保護フィルム8と凹部12との隙間が生じる。これらの隙間から構成される空間に弾性部材6を形成できるように、その材料となるシリコーンゴム組成物を表示板5上に供給する(エラストマー供給工程)。次に、金型を加熱して、当該組成物を硬化させる(硬化工程)。その結果、金型を開くと、図6に示すように、保護フィルム8上に突出部13を有する弾性部材6にて表示部5とフレーム2aとを接続した成形体が得られる。
【0024】
次に、突出部13を表示板5から除去する。突出部13を除去しやすいように、図6のE−E断面図中の一部E’の拡大図に示すように、弾性部材6の突出部13の裾野部分に切り込みを形成して薄肉部13aを残すように成形しても良い。また、薄肉部13aの有無を問わず、当該除去は、手作業にて行う他、如何なるカッティングツールによって行っても良い。突出部13を除去すると、その裏側の保護フィルム8も突出部13と一体となって表示板5から剥がれる(露出工程)。その結果、保護フィルム8の領域を露出し、その外側から窓部9までを弾性部材6にて充填した状態の筺体2を得ることができる。
【0025】
筺体2は、上述のように、図3から図6までの各工程を順に実行することによって製造されるため、以下のメリットを有する。第一金型10の突出領域の上面と第二金型11の下面との間で表示板5を挟まずに、第二金型11と表示板5との間に隙間を確保して、弾性部材6形成用のシリコーンゴム組成物を当該隙間に供給するようにしているので、弾性部材6の成形工程において、表示板5を割ってしまう危険性を低減できる。特に、表示板5の厚さにバラツキがある場合にも、凹部12の深さを当該バラツキよりも大きく設計することにより、第二金型11の下面が表示板5を圧接して割ってしまうような事態を解消することができる。なお、第一金型10と第二金型11との型締め時の圧力を減らして、表示板5を割らないようにすることも考えられるが、その場合には、シリコーンゴム組成物が表示板5の外周囲から内部方向に流れ込み、表示板5の表側の面にバリが発生しやすくなり、当該バリの除去に労力を要する。上述の製造方法は、そのような労力を不要とする。また、弾性部材6は、一旦、表示板5と窓部9との隙間の他、表示板5の表側の面を覆うように形成され、その後、表示に必要な領域を覆う突出部13のみを除去して形成されるため、表示板5とフレーム2aとを確実にシールできる。特に、表示板5の表側の面の外周囲を覆う被覆部7の存在は、当該確実なシールを実現するのに寄与する。さらに、保護フィルム8を表示板5上に貼り、その上からシリコーンゴム組成物を供給し、その硬化後に、保護フィルム8と一緒に突出部13を除去するようにしているので、シリコーンゴム組成物から表示板5を適切に保護でき、かつ突出部13を除去しやすくなる。保護フィルム8を貼ることに代えて、離型剤を表示板5上に塗布するようにしても良い。加えて、表示板5を、弾性部材6を介してフレーム2aに一体化することによって、電子機器1の組立工程の簡素化、部品管理の効率化を図ることもできる。
【0026】
<第二実施形態>
次に、本発明に係る電子機器用筐体およびその製造方法の第二実施形態について説明する。第二実施形態において、第一実施形態にて説明した構成については、図面上において同一の符号を付し、適宜、その説明を省略する。
【0027】
1.電子機器用筺体の構造
図7は、電子機器の一部を構成する第二実施形態に係る電子機器用筺体の斜視図を示す。
【0028】
第二実施形態に係る筺体2が第一実施形態に係るそれと異なる点は、弾性部材6がフレーム2aの少なくとも表側の面を被覆する表面被覆部14を有することである。図7に示すように、筺体2は、表示板5の中央にある表示領域を除き、表面被覆部14にて覆われている。
【0029】
図8は、図7に示す電子機器用筺体のG−G線断面図およびその一部Hの拡大断面図を示す。
【0030】
弾性部材6は、表示板5と窓部9との隙間から表示板5の表側の面の外周囲を覆う被覆部7を形成する他、フレーム2aの少なくとも表側の面を覆う表面被覆部14を形成する。表面被覆部14は、電子機器1を使用するユーザに、持ちやすさを含み良好な触感を与えるのに有効に寄与する。また、被覆部7と表面被覆部14とは略面一となっているため、電子機器1の使用時に、指などが引っ掛かるのを防止できる。この実施形態では、表面被覆部14は、フレーム2aの表側の面および側面のみを覆っているが、フレーム2aの開口端、さらには開口端から内側の面まで延出して形成されていても良い。また、表面被覆部14は、フレーム2aの側面を覆わず、表側の面の大部分を占める天面のみを覆っていても良い。
【0031】
2.電子機器用筺体の製造方法
第二実施形態に係る筺体2は、第一実施形態と同様、図3および図4に基づいて説明した工程と同じ工程を経る。したがって、当該同じ工程の説明を省略し、第一実施形態と異なるその後の工程について説明する。
【0032】
図9は、第一金型と第二金型との間に配置したフレームに弾性部材を形成する工程を説明する図であり、成形直後の金型の斜視図および金型内外の一部のI−I線断面図を示す。図10は、図9に示す工程に続く工程、成形後のJ−J線断面図および弾性部材の一部を除去後のK−K線断面図を示す。
【0033】
第一実施形態に係る筺体2の製造方法と同様、表示板5に保護フィルム8を貼り、その表示板5を窓部9内の第一金型10上に配置した後(表示板配置工程)、図9に示すように、フレーム2aの上から、第一金型10と同じく金型を構成する第二金型11を被せる(金型セット工程)。第二金型11は、保護フィルム8とほぼ同じ形状および同じ大きさにて、下面から内方に向かって窪む凹部15を備えると共に、凹部15の外側の領域において、フレーム2aの表側の面との間にも隙間を有するように構成されている。第一金型10と第二金型11を型締めすると、表示板5とその外周を囲む窓部9との隙間、第二金型11の下面と表示板5との隙間、保護フィルム8と凹部15との隙間および第二金型11の下面とフレーム2aとの隙間が生じる。これらの隙間から構成される空間に弾性部材6を形成できるように、その材料となるシリコーンゴム組成物を表示板5上に供給する(エラストマー供給工程)。次に、金型を加熱して、当該組成物を硬化させる(硬化工程)。その結果、金型を開くと、図10に示すように、保護フィルム8上に突出部13を有すると共にフレーム2aの表側の面および側面を被覆する表面被覆部14を有する弾性部材6にて、表示部5とフレーム2aとを接続した成形体が得られる。
【0034】
次に、突出部13を表示板5から除去する。突出部13を除去しやすいように、第一実施形態と同様、弾性部材6の突出部13の裾野部分に切り込みを形成して薄肉部13aを残すように成形しても良い。突出部13を除去すると、その裏側の保護フィルム8も突出部13と一体となって表示板5から剥がれる(露出工程)。その結果、保護フィルム8の領域を露出し、その外側から窓部9までを覆い、さらにはそこから連続してフレーム2aの表側の面および側面をも弾性部材6にて被覆した状態の筺体2を得ることができる。
【0035】
<その他の実施形態>
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するように変更実施可能である。
【0036】
例えば、弾性部材6は、表示板5における表側の面の外周囲を全周に亘って覆っているが、当該外周囲の少なくとも一部を、例えば、表示板5の幅方向に位置する長辺側のみ、あるいは短辺側のみを覆っていても良い。また、弾性部材6の裏面は、表示板5の裏面およびフレーム2aの裏面に対して面一に形成されず、表示板5およびフレーム2aの各裏面よりも表側に向かって窪んでいても良い。また、露出工程では、突出部13と共に保護フィルム8を取り除かず、突出部13と保護フィルム8とを別々に取り除くようにしても良い。また、表示板5を第一金型10の突出領域上に配置した後に、表示板5の表側の面に、離型層の配置(保護フィルム8の貼付や離型剤の塗布)を行っても良い。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、例えば、表示板の外周から防水を図ることのできる電子機器に利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 電子機器
2 筺体(電子機器用筐体)
2a フレーム
8 保護フィルム(離型層の一例)
9 窓部
5 表示板
6 弾性部材
10 第一金型(成形用金型の一部)
11 第二金型(成形用金型の一部)
12 凹部
13 突出部(内方の弾性部材)
15 凹部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の外側を覆う電子機器用筐体であって、
筐体用のフレームと、
上記フレームを貫通する窓部に配置される透明な表示板と、
上記窓部の内側端面と上記表示板とを連接する弾性部材と、
を備え、
上記表示板の裏面と上記窓部の外側に位置する上記フレームの裏面とを面一に形成し、
上記弾性部材は、上記表示板における表側の面の外周囲の少なくとも一部を覆っていることを特徴とする電子機器用筐体。
【請求項2】
前記表示板の裏面と、前記フレームの裏面と、前記弾性部材の裏面とを面一に形成していることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用筐体。
【請求項3】
前記弾性部材は、さらに、前記フレームの少なくとも表側の面を覆っていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子機器用筐体。
【請求項4】
電子機器の外側を構成し、筐体用のフレームと、上記フレームを貫通する窓部に配置される透明な表示板と、上記窓部の内側端面と上記表示板とを連接する弾性部材と、
を備える電子機器用筐体の製造方法であって、
上記フレームを、上記弾性部材の成形用金型を構成する第一金型にセットするフレームセット工程と、
上記表示板の裏面と上記窓部の外側に位置する上記フレームの裏面とを面一に保持するように、上記窓部の直下に位置する上記第一金型に上記表示板を配置する表示板配置工程と、
上記フレームおよび上記表示板を配置した上記第一金型の上から、上記表示板の表側の面との間に空間を形成するための凹部を備える第二金型を配置する金型セット工程と、
上記第一金型と上記第二金型との間に形成される空間であって、上記表示板と上記窓部との隙間および上記表示板の表側の面と上記凹部との隙間を少なくとも含む空間に、上記弾性部材を形成するためのエラストマー組成物を供給するエラストマー供給工程と、
上記エラストマー組成物を硬化する硬化工程と、
上記硬化工程後に、上記表示板の表側の面において、その外周囲の一部を残して、その外周囲より内方の上記弾性部材を取り除き、上記表示板の上記外周囲より内方を露出する露出工程と、
を含むことを特徴とする電子機器用筐体の製造方法。
【請求項5】
前記エラストマー供給工程では、前記第一金型と前記第二金型との間に形成される空間であって、前記表示板と前記窓部との隙間、前記表示板の表側の面と前記凹部との隙間および前記第二金型と前記フレームの表側の面との隙間を少なくとも含む空間に、上記弾性部材を形成するためのエラストマー組成物を供給することを特徴とする請求項4に記載の電子機器用筐体の製造方法。
【請求項6】
前記表示板配置工程の前若しくは後に、前記表示板の表側の面に、当該表側の面と前記弾性部材との間に介在する離型層を配置する離型層配置工程をさらに含み、
前記露出工程では、前記外周囲より内方の前記弾性部材と共に上記離型層を取り除くことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の電子機器用筐体の製造方法。
【請求項1】
電子機器の外側を覆う電子機器用筐体であって、
筐体用のフレームと、
上記フレームを貫通する窓部に配置される透明な表示板と、
上記窓部の内側端面と上記表示板とを連接する弾性部材と、
を備え、
上記表示板の裏面と上記窓部の外側に位置する上記フレームの裏面とを面一に形成し、
上記弾性部材は、上記表示板における表側の面の外周囲の少なくとも一部を覆っていることを特徴とする電子機器用筐体。
【請求項2】
前記表示板の裏面と、前記フレームの裏面と、前記弾性部材の裏面とを面一に形成していることを特徴とする請求項1に記載の電子機器用筐体。
【請求項3】
前記弾性部材は、さらに、前記フレームの少なくとも表側の面を覆っていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子機器用筐体。
【請求項4】
電子機器の外側を構成し、筐体用のフレームと、上記フレームを貫通する窓部に配置される透明な表示板と、上記窓部の内側端面と上記表示板とを連接する弾性部材と、
を備える電子機器用筐体の製造方法であって、
上記フレームを、上記弾性部材の成形用金型を構成する第一金型にセットするフレームセット工程と、
上記表示板の裏面と上記窓部の外側に位置する上記フレームの裏面とを面一に保持するように、上記窓部の直下に位置する上記第一金型に上記表示板を配置する表示板配置工程と、
上記フレームおよび上記表示板を配置した上記第一金型の上から、上記表示板の表側の面との間に空間を形成するための凹部を備える第二金型を配置する金型セット工程と、
上記第一金型と上記第二金型との間に形成される空間であって、上記表示板と上記窓部との隙間および上記表示板の表側の面と上記凹部との隙間を少なくとも含む空間に、上記弾性部材を形成するためのエラストマー組成物を供給するエラストマー供給工程と、
上記エラストマー組成物を硬化する硬化工程と、
上記硬化工程後に、上記表示板の表側の面において、その外周囲の一部を残して、その外周囲より内方の上記弾性部材を取り除き、上記表示板の上記外周囲より内方を露出する露出工程と、
を含むことを特徴とする電子機器用筐体の製造方法。
【請求項5】
前記エラストマー供給工程では、前記第一金型と前記第二金型との間に形成される空間であって、前記表示板と前記窓部との隙間、前記表示板の表側の面と前記凹部との隙間および前記第二金型と前記フレームの表側の面との隙間を少なくとも含む空間に、上記弾性部材を形成するためのエラストマー組成物を供給することを特徴とする請求項4に記載の電子機器用筐体の製造方法。
【請求項6】
前記表示板配置工程の前若しくは後に、前記表示板の表側の面に、当該表側の面と前記弾性部材との間に介在する離型層を配置する離型層配置工程をさらに含み、
前記露出工程では、前記外周囲より内方の前記弾性部材と共に上記離型層を取り除くことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の電子機器用筐体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−93398(P2013−93398A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−233600(P2011−233600)
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月25日(2011.10.25)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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