説明

α−オレフィン重合用触媒成分、α−オレフィン重合用触媒、及びα−オレフィン重合体の製造方法

【課題】立体規則性、触媒活性などの触媒性能の全てにおいて充分な性能を示すα−オレフィン重合用触媒成分及び該触媒成分を用いたα−オレフィン重合体の製造方法の提供。
【解決手段】チタン、マグネシウム、ハロゲン、電子供与性化合物、及び下記の式(1)で表されるフラン化合物を含有し、電子供与性化合物とフラン化合物のモル比(電子供与性化合物のモル数/フラン化合物のモル数)が0.01から1.0の範囲であることを特徴とするα−オレフィン重合用触媒成分、α−オレフィン重合用触媒及びα−オレフィン重合体の製造方法。
【化1】


(式(1)中、RおよびRは炭素数1つ以上の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、α−オレフィン重合用触媒成分、α−オレフィン重合用触媒、及びそれを用いたα−オレフィン重合体の製造方法に関するものである。更に詳しくは、立体規則性が高く、極めて高い触媒活性を有するα−オレフィン重合用触媒成分、α−オレフィン重合用触媒、及びそれを用いたα−オレフィン重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンは、産業資材として最も重要なプラスチック材料であり、フィルムやシートとして包装材料及び電気材料などに、成形品として自動車部材や家電製品などの工業材料に、さらに繊維材料や建築材料などの各種の用途に広範に汎用されている。
このように利用用途が非常に広く多岐にわたるために、ポリオレフィンにおいては、それらの用途面から、多種の性質においての改良向上が求め続けられ、それらの要望に応じるために、主として重合触媒の改良による技術開発が展開されてきた。
【0003】
例えば、遷移金属化合物と有機金属化合物を利用したチーグラー系の触媒により、オレフィンの重合活性が非常に高められて工業生産が実現化されたが、その後に分子量分布による重合体の物性の改善やα−オレフィンの立体規則性の向上をはじめ、多種の性能の改良がなされている。
具体的には、マグネシウム化合物を触媒担持体としてチタン及びハロゲンを必須成分として含有する固体触媒成分を使用した触媒が開発され、さらに電子供与性化合物を使用して触媒活性と立体規則性を高めた触媒(例えば。特許文献1参照。)、その後には、各種の有機ケイ素化合物を新たに触媒成分に付加して、さらに触媒活性や立体規則性の向上をはかる提案もなされている(例えば、特許文献2及び3参照。)。
またケイ素化合物以外の電子供与性化合物を利用する提案としてジベンゾフラン及びその誘導体を共存させ、水素応答性を改良したり(例えば、特許文献4参照。)、特定の触媒系に対してエーテル化合物を電子供与性化合物として用いることで触媒活性を向上させる(例えば、特許文献5及び6参照。)など、多くの改良技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、本発明者等が知る限りでは、これらのいずれの触媒系においても生成するα−オレフィン重合体の立体規則性、触媒活性などの触媒性能の全てにおいて充分な性能を示すものはなく、更なる改良技術の開発が望まれている。
【特許文献1】特開昭58−138706号公報(特許請求の範囲、第2頁左下欄)
【特許文献2】特開昭62−187707号公報(特許請求の範囲、第1頁及び第1頁右下欄)
【特許文献3】特開平03−2234707号公報(特許請求の範囲、第1頁及び第2頁右上欄)
【特許文献4】特開2002−249507号公報(要約)
【特許文献5】特開2003−105019号公報(要約)
【特許文献6】特開2003−261612号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の状況において、立体規則性、触媒活性などの触媒性能の全てにおいて充分な性能を示す触媒及びその様な触媒成分を用いたα−オレフィン重合体の製造方法の実現を発明の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題を受けて、チーグラー系触媒における基本的かつ普遍的な上記の問題を解決するために、チーグラー触媒における各種の触媒成分の性質や化学的構造などについて全般的な思考及び探索を行い、多種の触媒成分について検討及び実験を重ね、触媒の活性点に関して立体規則性やモノマーの関与にかかわる触媒成分を探索した。その結果、特定のフラン系化合物を採用して、チーグラー系触媒の固体成分中に接触処理させると、重合体の立体規則性と触媒活性が著しく向上されることを新しく知見した。すなわち、基本的には4価のチタン化合物、マグネシウム化合物、ハロゲン及び電子供与性化合物からなるチーグラー系の固体成分中にフラン系化合物を接触させて触媒成分となし、必要に応じて任意に、ビニルシラン化合物、有機ケイ素化合物および有機アルミニウム化合物を接触させた固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物とを組み合わせてチーグラー系の触媒とし、さらに必要に応じて、この触媒にケイ素化合物を組み合わせて用いると、触媒活性の著しく高い触媒が得られ、該触媒の存在下にα―オレフィンを重合させると、立体規則性の非常に高い、すなわち結晶性の優れたα―オレフィン重合体を製造することができ、従来よりも生成するα−オレフィン重合体の結晶性が非常に高く、かつ重合効率も著しく向上した重合体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、チタン、マグネシウム、ハロゲン、電子供与性化合物、及び下記の式(1)で表されるフラン化合物を含有し、電子供与性化合物とフラン化合物のモル比(電子供与性化合物のモル数/フラン化合物のモル数)が0.05から1.0の範囲であることを特徴とするα−オレフィン重合用触媒成分が提供される。
【0008】
【化1】

(式(1)中、RおよびRは炭素数1つ以上の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明のα−オレフィン重合用触媒成分(A)に、下記成分(B)、(C)および(D)を接触させることを特徴とするα−オレフィン重合用触媒成分が提供される。
(B)ビニルシラン化合物
(C)有機ケイ素化合物
(D)有機アルミニウム化合物
【0010】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明のα−オレフィン重合用触媒成分(A)又は第2の発明のα−オレフィン重合用触媒成分(A’)及び下記成分(E)からなることを特徴とするα−オレフィン重合用触媒が提供される。
(E)有機アルミニウム化合物
【0011】
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明のα−オレフィン重合用触媒及び下記成分(F)からなることを特徴とするα−オレフィン重合用触媒が提供される。
(F)有機ケイ素化合物
【0012】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかのα−オレフィン重合用触媒成分またはα−オレフィン重合用触媒の存在下にα−オレフィンを重合することを特徴とするα−オレフィン重合体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のα−オレフィン重合用触媒成分、α−オレフィン重合用触媒は、触媒活性の著しく高い触媒であり、該触媒の存在下にα―オレフィンを重合させると、立体規則性の非常に高い、すなわち結晶性の優れたα―オレフィン重合体を製造することができる。
なお、本発明のα−オレフィン重合用触媒成分の最も特徴とするところは、特定のフラン系化合物を従来のチーグラー系触媒の固体成分中に接触させて得られるものであるが、最終のオレフィン重合触媒成分にフラン系化合物が必ずしも残存していることを意味していない。本発明において、特定のフラン系化合物を従来のチーグラー系触媒の固体成分に接触させ触媒成分とすることで、重合体の立体規則性と触媒活性の双方が向上したという、驚くべきかつ新しい触媒機能が発現する理由は未だに定かではないが、フラン系化合物の平面構造と、適度な大きさの置換基のバランスがMgClに担持された触媒の活性種となるチタン原子に直接または近傍に配位することで、チタン原子の担持状態及び電子状態を変化させたと考えられる。これにより立体規則性が影響を受け、また、結果として重合されるべきモノマーの活性点への挿入が容易となり、それにより重合反応がより起こりやすくなって、触媒活性の向上が図られていると推測される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は、チタン(A−1)、マグネシウム(A−2)、ハロゲン(A−3)、電子供与性化合物(A−4)、及びフラン化合物(A−5)を含有するα−オレフィン重合用触媒成分(A)、該α−オレフィン重合用触媒成分(A)に、(B)ビニルシラン化合物、(C)有機ケイ素化合物、及び(D)有機アルミニウム化合物、必要に応じて、(G)少なくともエーテル結合を有する化合物を接触させたα−オレフィン重合用触媒成分(A’)、該α−オレフィン重合用触媒成分(A)又は該α−オレフィン重合用触媒成分(A’)に(E)有機アルミニウム化合物、さらに必要に応じて、(F)有機ケイ素化合物、(H)少なくともエーテル結合を有する化合物等を配合したα−オレフィン重合用触媒、及び上記α−オレフィン重合用触媒成分またはα−オレフィン重合用触媒を用いたα−オレフィン重合体の製造方法である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
1.α−オレフィン重合用触媒成分(A)
(1)(A)の構成成分
(A−1)チタン
本発明のα−オレフィン重合用触媒成分で用いるチタンのチタン源となるチタン化合物としては、任意のものを用いることが出来る。代表的な例としては、特開平3−234707号公報に開示されている化合物を挙げることが出来る。チタンの価数に関しては、4価、3価、2価、0価の任意の価数を持つチタン化合物を用いることが出来るが、好ましくは4価および3価のチタン化合物、更に好ましくは4価のチタン化合物を用いることが望ましい。
4価のチタン化合物の具体例としては、四塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物類、テトラブトキシチタンに代表されるアルコキシチタン化合物類、テトラブトキシチタンダイマー(BuO)Ti−O−Ti(OBu)に代表されるTi−O−Ti結合を有するアルコキシチタンの縮合化合物類、ジシクロペンタジエニルチタニウムジクロライドに代表される有機金属チタン化合物類、などを挙げることが出来る。この中で、四塩化チタンとテトラブトキシチタンが特に好ましい
3価のチタン化合物の具体例としては、三塩化チタンに代表されるハロゲン化チタン化合物類を挙げることが出来る。三塩化チタンは、水素還元型、金属アルミニウム還元型、金属チタン還元型、有機アルミニウム還元型、など、公知の任意の方法で製造された化合物を用いることが出来る。
上記のチタン化合物類は単独で用いるだけではなく、複数の化合物を併用することも可能である。また、上記チタン化合物類の混合物や平均組成式がそれらの混合された式となる化合物(例えば、Ti(OBu)Cl4−m;0<m<4などの化合物)、また、フタル酸エステル等のその他の化合物との錯化物(例えば、Ph(COBu)・TiClなどの化合物)、などを用いることが出来る。
【0016】
(A−2)マグネシウム
マグネシウム源となるマグネシウム化合物としては、任意のものを用いることが出来る。代表的な例としては、特開平3−234707号公報に開示されている化合物を挙げることが出来る。一般的には、塩化マグネシウムに代表されるハロゲン化マグネシウム化合物類、ジエトキシマグネシウムに代表されるアルコキシマグネシウム化合物類、金属マグネシウム、酸化マグネシウムに代表されるオキシマグネシウム化合物類、水酸化マグネシウムに代表されるヒドロキシマグネシウム化合物類、ブチルマグネシウムクロライドに代表されるグリニャール化合物類、ブチルオクチルマグネシウムに代表される有機金属マグネシウム化合物類、炭酸マグネシウムやステアリン酸マグネシウムに代表される無機酸及び有機酸のマグネシウム塩化合物類、及びそれらの混合物や平均組成式がそれらの混合された式となる化合物(例えば、Mg(OEt)Cl2−m;0<m<2などの化合物)、などを用いることが出来る。この中で特に好ましいのは、塩化マグネシウム、ジエトキシマグネシウム、金属マグネシウム、ブチルマグネシウムクロライドである。
【0017】
(A−3)ハロゲン
ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、及びそれらの混合物を用いることが出来る。この中で塩素が特に好ましい。ハロゲンは上記のチタン化合物類及び/又はマグネシウム化合物から供給されるのが一般的であるが、その他の化合物より供給することも出来る。代表的な例としては、四塩化ケイ素に代表されるハロゲン化ケイ素化合物類、塩化アルミニウムに代表されるハロゲン化アルミニウム化合物類、1,2−ジクロロエタンやベンジルクロライドに代表されるハロゲン化有機化合物類、トリクロロボランに代表されるハロゲン化ボラン化合物類、五塩化リンに代表されるハロゲン化リン化合物類、六塩化タングステンに代表されるハロゲン化タングステン化合物類、五塩化モリブデンに代表されるハロゲン化モリブデン化合物類、などを挙げることが出来る。これらの化合物は単独で用いるだけでなく、併用することも可能である。この中で、四塩化ケイ素が特に好ましい。
【0018】
(A−4)電子供与性化合物
電子供与性化合物の代表的な例としては、特開2004−124090号公報に開示されている化合物を挙げることが出来る。一般的には、有機酸及び無機酸並びにそれらの誘導体(エステル、酸無水物、酸ハライド、アミド)化合物類、エーテル化合物類、ケトン化合物類、アルデヒド化合物類、アルコール化合物類、アミン化合物類、などを用いることが望ましい。
【0019】
電子供与性化合物として用いることの出来る有機酸化合物としては、フタル酸に代表される芳香族多価カルボン酸化合物類、安息香酸に代表される芳香族カルボン酸化合物類、2−n−ブチル−マロン酸の様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸や2−n−ブチル−コハク酸の様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸に代表される脂肪族多価カルボン酸化合物類、プロピオン酸に代表される脂肪族カルボン酸化合物類、ベンゼンスルホン酸やメタンスルホン酸に代表される芳香族及び脂肪族のスルホン酸化合物類、などを例示することが出来る。これらのカルボン酸化合物類及びスルホン酸化合物類は、芳香族・脂肪族に関わらず、マレイン酸の様に分子中の任意の場所に任意の数だけ不飽和結合を有しても良い。
【0020】
電子供与性化合物として用いることの出来る有機酸の誘導体化合物としては、上記有機酸のエステル、酸無水物、酸ハライド、アミド、などを例示することが出来る。
エステルの構成要素であるアルコールとしては、脂肪族及び芳香族アルコールを用いることが出来る。これらのアルコールの中でも、エチル基、ブチル基、イソブチル基、ヘプチル基、オクチル基、ドデシル基、等の炭素数1から20の脂肪族の遊離基からなるアルコールが好ましい。更に好ましくは炭素数2から12の脂肪族の遊離基からなるアルコールが望ましい。また、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、等の脂環式の遊離基からなるアルコールを用いることも出来る。
酸ハライドの構成要素であるハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、等を用いることが出来る。中でも、塩素が最も好ましい。多価有機酸のポリハライドの場合は複数のハロゲンが同一であっても異なっていても良い。
アミドの構成要素であるアミンとしては、脂肪族及び芳香族アミンを用いることが出来る。これらのアミンの中でも、アンモニア、エチルアミンやジブチルアミンに代表される脂肪族アミン、アニリンやベンジルアミンに代表される芳香族の遊離基を分子内に有するアミン、などを好ましい化合物として例示することが出来る。
【0021】
電子供与性化合物として用いることの出来る無機酸化合物としては、炭酸、リン酸、ケイ酸、硫酸、硝酸、などを例示することが出来る。これらの無機酸の誘導体化合物としては、エステルを用いることが望ましい。テトラエトキシシラン(ケイ酸エチル)、テトラブトキシシラン(ケイ酸ブチル)、リン酸トリブチルなどを具体例として挙げることが出来る。
【0022】
電子供与性化合物として用いることの出来るエーテル化合物としては、ジブチルエーテルに代表される脂肪族エーテル化合物類、ジフェニルエーテルに代表される芳香族エーテル化合物類、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパンや2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンの様な2位に一つ又は二つの置換基を有する1,3−ジメトキシプロパンに代表される脂肪族多価エーテル化合物類、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、に代表される芳香族の遊離基を分子内に有する多価エーテル化合物類、などを例示することが出来る。多価エーテル化合物類の好ましい例としては、後述の少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(G)の例示からから選ぶことが出来る。
なお、本発明に用いられる一般式(1)で表されるフラン化合物も広義のエーテル化合物に含まれるが、本発明は重合用触媒成分(A)として一般式(1)で表されるフラン化合物とその他の電子供与体とを併用することを要件としている。
【0023】
電子供与性化合物として用いることの出来るケトン化合物としては、メチルエチルケトンに代表される脂肪族ケトン化合物類、アセトフェノンに代表される芳香族ケトン化合物類、2,2,4,6,6−ペンタメチル−3,5−ヘプタンジオンに代表される多価ケトン化合物類、などを例示することが出来る。
電子供与性化合物として用いることの出来るアルデヒド化合物としては、プロピオンアルデヒドに代表される脂肪族アルデヒド化合物類、ベンズアルデヒドに代表される芳香族アルデヒド化合物類、などを例示することが出来る。
電子供与性化合物として用いることの出来るアルコール化合物としては、ブタノールや2−エチルヘキサノールに代表される脂肪族アルコール化合物類、フェノール、クレゾールに代表されるフェノール誘導体化合物類、グリセリンや1,1’−ビス−2−ナフトールに代表される脂肪族若しくは芳香族の多価アルコール化合物類、などを例示することが出来る。
電子供与性化合物として用いることの出来るアミン化合物としては、ジエチルアミンに代表される脂肪族アミン化合物類、2,2,6,6−テトラメチル−ピペリジンに代表される窒素含有脂環式化合物類、アニリンに代表される芳香族アミン化合物類、ピリジンに代表される窒素原子含有芳香族化合物類、1,3−ビス(ジメチルアミノ)−2,2−ジメチルプロパンに代表される多価アミン化合物類、などを例示することが出来る。
【0024】
電子供与性化合物として用いることの出来る化合物として、上記の複数の官能基を同一分子内に含有する化合物を用いることも出来る。その様な化合物の例として、酢酸−(2−エトキシエチル)や3−エトキシ−2−t−ブチルプロピオン酸エチルに代表されるアルコキシ基を分子内に有するエステル化合物類、2−ベンゾイル−安息香酸エチルに代表されるケトエステル化合物類、(1−t−ブチル−2−メトキシエチル)メチルケトンに代表されるケトエーテル化合物類、N,N−ジメチル−2,2−ジメチル−3−メトキシプロピルアミンに代表アミノエーテル化合物類、エポキシクロロプロパンに代表されるハロゲノエーテル化合物類、などを挙げることが出来る。
【0025】
これらの電子供与性化合物は単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。これらの中で好ましいのは、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジヘプチルに代表されるフタル酸エステル化合物類、フタロイルジクロライドに代表されるフタル酸ハライド化合物類、2−n−ブチル−マロン酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基を有するマロン酸エステル化合物類、2−n−ブチル−コハク酸ジエチルの様な2位に一つ又は二つの置換基若しくは2位と3位にそれぞれ一つ以上の置換基を有するコハク酸エステル化合物類、2−イソプロピル−2−イソブチル−1,3−ジメトキシプロパンや2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパンの様な2位に一つ又は二つの置換基を有する1,3−ジメトキシプロパンに代表される脂肪族多価エーテル化合物類、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレンに代表される芳香族の遊離基を分子内に有する多価エーテル化合物類などである。
【0026】
(A−5)フラン化合物
本発明で用いられるフラン化合物は、下記式(1)の化合物から選ばれる。
【0027】
【化2】

(式(1)中、RおよびRは炭素数1つ以上の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)
【0028】
式中、R、Rで表される脂肪族炭化水素基としては、炭素数1から20、より好ましくは1から10のアルキル基、シクロアルキル基などの構造的に嵩が小さい置換基であることが好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、ビニル基、アリル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、i−ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、シクロオクチル基が挙げられ、とりわけ、メチル基、エチル基、が好ましい。
、Rで表される芳香族炭化水素基としては、炭素数6から20、より好ましくは6から12の置換基のない芳香族炭化水素基などの置換基であることが好ましい。具体的には、フェニル基、ビフェニル基、インデニル基、フルオレニル基が挙げられ、とりわけ、フェニル基、ビフェニル基、インデニル基が好ましい。
及びRに含有可能なヘテロ原子としては窒素、酸素、ケイ素、リン、硫黄であり、窒素、酸素がより好ましい。ヘテロ原子を含む炭化水素基の具体例としてはたとえば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、フェノキシメチル基、ジメチルアミノメチル基等が挙げられる。
【0029】
具体的な化合物としては、2,5−ジメチルフラン、2,5−ジエチルフラン、2,5−ジプロピルフラン、2,5−ジイソプロピルフラン、2,5−ジシクロペンチルフラン、2,5−ジフェニルフランなどのフラン化合物などを挙げることができる。また、これらのフラン化合物は、二種類以上用いることもできる。
これらのフラン化合物の中で、2,5−ジメチルフラン、2−メチル−5−フェニルフラン、2,5−ジフェニルフランがとりわけ好ましく、2,5−ジメチルフランが最も好ましい。
【0030】
(2)α−オレフィン重合触媒成分(A)の調製方法
本発明におけるα−オレフィン重合触媒成分(A)を構成する各成分の使用量の量比は、次の範囲である。
チタン化合物類の使用量は、使用するマグネシウム化合物類の使用量に対してモル比(チタン化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.0001から1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.01から10の範囲内が望ましい。マグネシウム化合物類及びチタン化合物類以外にハロゲン源となる化合物を使用する場合は、その使用量はマグネシウム化合物類及びチタン化合物類の各々がハロゲンを含むか含まないかに関わらず、使用するマグネシウム化合物類の使用量に対してモル比(ハロゲン源となる化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.01から1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.1から100の範囲内が望ましい。
α−オレフィン重合触媒成分(A)を調製する際に用いる電子供与体の使用量は、使用するマグネシウム化合物の量に対してモル比(電子供与体のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.001から10の範囲内であり、特に好ましくは0.01から5の範囲内が望ましい。
α−オレフィン重合触媒成分(A)を調製する際に用いるフラン化合物の使用量は、使用するマグネシウム化合物の量に対してモル比(フラン化合物のモル数/マグネシウム化合物のモル数)で、好ましくは0.001から10の範囲内であり、特に好ましくは0.01から5の範囲内が望ましい。α−オレフィン重合触媒成分(A)を調製する際に用いる電子供与性化合物とフラン化合物のモル比(電子供与性化合物のモル数/フラン化合物のモル数)で、0.05から1.0の範囲であり、好ましくは0.1から0.7の範囲である。電子供与性化合物とフラン化合物のモル比が上記範囲より小さい場合、即ちフラン化合物が多すぎる場合は、触媒製造時の歩留まりが悪くなり、また、触媒活性が低下する傾向にある。一方、このモル比が上記範囲より大きい場合、即ちフラン化合物が少なすぎる場合は、フラン化合物による所望の効果が得られない。
【0031】
本発明におけるα−オレフィン重合触媒成分(A)を構成する上記各成分の接触条件は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の条件を用いることが出来、一般的には、次の条件が好ましい。
接触温度は、−50から200℃程度、好ましくは0から150℃である。接触方法としては、回転ボールミルや振動ミルなどによる機械的な方法、並びに、不活性溶媒の存在下に撹拌により接触させる方法、などを例示することが出来る。
【0032】
また、α−オレフィン重合触媒成分(A)の調製の際には、中間及び/又は最後に不活性溶媒で洗浄を行っても良い。好ましい溶媒種としては、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物、及び、1,2−ジクロロエチレンやクロロベンゼンなどのハロゲン含有炭化水素化合物、などを例示することが出来る。
【0033】
なお、本発明におけるα−オレフィン重合触媒成分(A)の調製方法としては任意の方法を用いることが出来るが、具体的には、下記の(i)〜(vii)として説明する方法を例示することが出来る。なお、本発明は下記例示により何ら制限されるものではない。
【0034】
(i)共粉砕法
塩化マグネシウムに代表されるハロゲンを含有するマグネシウム化合物をチタン化合物と共粉砕することにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する方法。必要に応じて電子供与体等の任意成分と同時に、又は、別工程で共粉砕しても良い。機械的粉砕方法としては、回転ボールミルや振動ミル等の任意の粉砕機を用いることが出来る。溶媒を用いない乾式粉砕法だけでなく、不活性溶媒共存下で共粉砕する湿式粉砕法を用いることも出来る。
【0035】
(ii)加熱処理法
塩化マグネシウムに代表されるハロゲンを含有するマグネシウム化合物とチタン化合物を不活性溶媒中で撹拌することにより接触処理を行い、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する方法。チタン化合物として四塩化チタンなどの液状の化合物を用いる場合は、不活性溶媒なしで接触処理することも出来る。必要に応じて電子供与体やハロゲン化ケイ素化合物等の任意成分を同時に、又は、別工程で接触させても良い。接触温度に特に制限はないが、90℃から130℃程度の比較的高い温度で接触処理する方が好ましい場合が多い。
【0036】
(iii)溶解析出法
塩化マグネシウムに代表されるハロゲンを含有するマグネシウム化合物を電子供与体と接触させることにより溶解し、生じた溶解液と析出剤を接触させて析出反応を起こすことにより粒子形成を行う方法。溶解に用いる電子供与体の例としては、アルコール化合物類、エポキシ化合物類、リン酸エステル化合物類、アルコキシ基を有するケイ素化合物類、アルコキシ基を有するチタン化合物類、エーテル化合物類などを挙げることが出来る。析出剤の例としては、ハロゲン化チタン化合物類、ハロゲン化ケイ素化合物類、塩化水素、ハロゲン含有炭化水素化合物類、Si−H結合を有するシロキサン化合物類(ポリシロキサン化合物類を含む)、アルミニウム化合物類、などを例示することが出来る。溶解液と析出剤の接触方法としては、溶解液に析出剤を添加しても良いし、析出剤に溶解液を添加しても良い。溶解、析出のどちらの工程でもチタン化合物を用いない場合は、析出反応により形成した粒子を更にチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。更に必要に応じて、こうして形成した粒子をハロゲン化チタン化合物類やハロゲン化ケイ素化合物類などの任意成分と接触させても良く、電子供与体と接触させても良い。この際、電子供与体は溶解に用いるものとは異なっていても良いし、同じであっても良い。これらの任意成分の接触順序については特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、溶解、析出、チタン化合物類との接触の際に一緒に接触させることも出来る。また、溶解、析出、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
【0037】
(iv)造粒法
溶解析出法と同様に塩化マグネシウムに代表されるハロゲンを含有するマグネシウム化合物を電子供与体と接触させることにより溶解し、生じた溶解液を主に物理的な手法により造粒する方法。溶解に用いる電子供与体の例は溶解析出法の例に同じ。造粒手法の例としては、高温の溶解液を低温の不活性溶媒中に滴下する方法、高温の気相部に向かって溶解液をノズルから噴き出して乾燥する方法、低温の気相部に向かって溶解液をノズルから噴き出して冷却する方法、などを挙げることが出来る。造粒により形成した粒子をチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。更に、必要に応じて、ハロゲン化ケイ素化合物類、電子供与体、などの任意成分と接触させても良い。この際、電子供与体は溶解に用いるものとは異なっていても良いし、同じであっても良い。これらの任意成分の接触順序については特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、溶解やチタン化合物との接触の際に一緒に接触させることも出来る。また、溶解、チタン化合物類との接触、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
【0038】
(v)Mg化合物のハロゲン化法
ハロゲンを含有しないマグネシウム化合物に対して、ハロゲン化剤を接触させてハロゲン化する方法。ハロゲンを含有しないマグネシウム化合物の例としては、ジアルコキシマグネシウム化合物類、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、脂肪酸のマグネシウム塩、などを挙げることが出来る。ジアルコキシマグネシウム化合物類を用いる場合は、金属マグネシウムとアルコールとの反応により系中で調製したものを用いることも出来る。この調製法を用いる場合は、出発原料であるハロゲンを含まないマグネシウム化合物の段階で造粒等により粒子形成を行うのが一般的である。ハロゲン化剤の例としては、ハロゲン化チタン化合物類、ハロゲン化ケイ素化合物類、ハロゲン化リン化合物類、などを挙げることが出来る。ハロゲン化剤としてハロゲン化チタン化合物類を用いない場合は、ハロゲン化により形成したハロゲン含有マグネシウム化合物を更にチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。更に必要に応じて、こうして形成した粒子をハロゲン化チタン化合物類やハロゲン化ケイ素化合物類などの任意成分と接触させても良く、電子供与体と接触させても良い。これらの任意成分の接触順序については特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、ハロゲンを含まないマグネシウム化合物のハロゲン化やチタン化合物類との接触の際に一緒に接触させることも出来る。また、ハロゲン化、チタン化合物類との接触、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
【0039】
(vi)有機マグネシウム化合物からの析出法
ブチルマグネシウムクロライドに代表されるグリニャール試薬、ジアルキルマグネシウム化合物、などの有機マグネシウム化合物類の溶液に析出剤を接触させる方法。析出剤の例としては、チタン化合物類、ケイ素化合物類、塩化水素、などを挙げることが出来る。析出剤としてチタン化合物を用いない場合は、析出反応により形成した粒子を更にチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。更に必要に応じて、こうして形成した粒子をハロゲン化チタン化合物類やハロゲン化ケイ素化合物類などの任意成分と接触させても良く、電子供与体と接触させても良い。これらの任意成分の接触順序については特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、析出やチタン化合物類との接触の際に一緒に接触させることも出来る。また、析出、チタン化合物類との接触、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
【0040】
(vii)含浸法
有機マグネシウム化合物類の溶液、若しくは、マグネシウム化合物を電子供与性化合物で溶解した溶液を、無機化合物の担体、若しくは、有機化合物の担体に含浸させる方法。有機マグネシウム化合物類の例は有機マグネシウム化合物からの析出法の例に同じ。マグネシウム化合物の溶解に用いるマグネシウム化合物は、ハロゲンを含んでいても含んでいなくても良く、電子供与体の例は溶解析出法の例に同じ。無機化合物の担体の例としては、シリカ、アルミナ、マグネシア、などを挙げることが出来る。有機化合物の担体の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、などを挙げることが出来る。含浸処理後の担体粒子は、析出剤との化学反応や乾燥等の物理的処理によりマグネシウム化合物を析出させて固定化する。析出剤の例は溶解析出法の例に同じ。析出剤としてチタン化合物を用いない場合は、こうして形成した粒子を更にチタン化合物と接触させることにより、マグネシウム化合物上にチタン化合物を担持する。更に必要に応じて、こうして形成した粒子をハロゲン化チタン化合物類やハロゲン化ケイ素化合物類などの任意成分と接触させても良く、電子供与体と接触させても良い。これらの任意成分の接触順序については特に制限はなく、独立工程として接触させても良いし、含浸、析出、乾燥、チタン化合物類との接触の際に一緒に接触させることも出来る。また、含浸、析出、チタン化合物類との接触、任意成分との接触、のいずれの工程においても、不活性溶媒が存在しても良い。
【0041】
(viii)複合法
上記(i)から(vii)に記載した方法を組み合わせて用いることも出来る。組み合わせの例としては、「塩化マグネシウムを電子供与性化合物と共粉砕した後にハロゲン化チタン化合物類と加熱処理する方法」、「塩化マグネシウム化合物を電子供与性化合物と共粉砕した後に別の電子供与性化合物を用いて溶解し、更に析出剤を用いて析出する方法」、「ジアルコキシマグネシウム化合物を電子供与性化合物により溶解し、ハロゲン化チタン化合物類と接触させることにより析出させると同時にマグネシウム化合物をハロゲン化する方法」、「ジアルコキシマグネシウム化合物に二酸化炭素を接触させることにより、炭酸エステルマグネシウム化合物類を生成すると同時に溶解し、形成した溶解液をシリカに含浸させ、その後塩化水素と接触させることによりマグネシウム化合物をハロゲン化すると同時に析出固定化し、更にハロゲン化チタン化合物類と接触させることによりチタン化合物を担持する方法」、などを挙げることが出来る。
【0042】
2.α−オレフィン重合用触媒成分(A’)
本発明のα−オレフィン重合用触媒成分(A’)は、上記α−オレフィン重合触媒成分(A)を、(B)ビニルシラン化合物、(C)有機ケイ素化合物、(D)有機アルミニウム化合物、必要に応じて、(G)少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物と接触させてなるものである。
【0043】
(1)構成成分
(B)ビニルシラン化合物
本発明に用いられるビニルシラン化合物(B)としては、モノシラン(SiH)の水素原子の少なくとも一つがビニル基に、そして残りの水素原子のうちのいくつかが、ハロゲン(好ましくはCl)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜12の炭化水素基)、アリール基(好ましくはフェニル基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜12のアルコキシ基)、その他で置き換えられた構造を示すものである。
より具体的には、CH=CH−SiH、CH=CH−SiH(CH)、CH=CH−SiH(CH、CH=CH−Si(CH、CH=CH−SiCl、CH=CH−SiCl(CH)、CH=CH−SiCl(CH、CH=CH−SiH(Cl)(CH)、CH=CH−Si(C、CH=CH−SiCl(C、CH=CH−SiCl(C)、CH=CH−Si(CH(C)、CH=CH−Si(CH)(C、CH=CH−Si(n−C、CH=CH−Si(C、CH=CH−Si(CH)(C、CH=CH−Si(CH(C)、CH=CH−Si(CH(CCH)、(CH=CH)(CHSi−O−Si(CH(CH=CH)、(CH=CH)SiH、(CH=CH)SiCl、(CH=CH)Si(CH、(CH=CH)Si(Cなどを例示することができる。
【0044】
(C)有機ケイ素化合物
本発明で用いることの出来る有機ケイ素化合物(C)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。一般的には、下記の式(2)にて表される化合物を用いることが望ましい。
Si(OR …(2)
(式中、Rは炭化水素基若しくはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。Rは水素、ハロゲン、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。Rは炭化水素基を表す。0≦a≦2,1≦b≦3,a+b=3である。)
【0045】
式(2)中、Rとして用いることの出来る炭化水素基は、一般に炭素数1から20、好ましくは炭素数3から10のものである。Rとして用いることの出来る炭化水素基の具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることが出来る。より好ましくは、Rとして分岐状脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を用いることが望ましく、とりわけ、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、テキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素から選ばれることが望ましく、とりわけ、窒素又は酸素であることが望ましい。Rのヘテロ原子含有炭化水素基の骨格構造としては、Rが炭化水素基である場合の例示から選ぶことが望ましい。とりわけ、N,N−ジエチルアミノ基、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
【0046】
式(2)中、Rは水素、ハロゲン、炭化水素基若しくはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。Rとして用いることの出来るハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することが出来る。Rが炭化水素基である場合は、一般に炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10のものである。Rとして用いることの出来る炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることが出来る。中でも、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、テキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
がヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、Rがヘテロ原子含有炭化水素基である場合の例示から選ぶことが望ましい。とりわけ、N,N−ジエチルアミノ基、キノリノ基、イソキノリノ基、などが好ましい。
式(2)中、aの値が2の場合、二つあるRは同一であっても異なっても良い。また、aの値に関わらず、RはRと同一であっても異なっても良い。
【0047】
式(2)中、Rは炭化水素基を表す。Rとして用いることの出来る炭化水素基は、一般に炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から5のものである。Rとして用いることの出来る炭化水素基の具体的な例としては、メチル基やエチル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、などを挙げることが出来る。中でも、メチル基とエチル基が最も好ましい。bの値が2以上である場合、複数存在するRは同一であっても異なっても良い。
【0048】
本発明で用いることの出来る有機ケイ素化合物(C)の好ましい例としては、t−Bu(Me)Si(OMe)、t−Bu(Me)Si(OEt)、t−Bu(Et)Si(OMe)、t−Bu(n−Pr)Si(OMe)、c−Hex(Me)Si(OMe)、c−Hex(Et)Si(OMe)、c−PenSi(OMe)、i−PrSi(OMe)、i−BuSi(OMe)、i−Pr(i−Bu)Si(OMe)、n−Pr(Me)Si(OMe)、ThexylSi(OMe)、t−BuSi(OEt)、(EtN)Si(OMe)、EtN−Si(OEt)
【0049】
【化3】

【0050】
などを挙げることが出来る。
これらの有機ケイ素化合物類は単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。
【0051】
(D)有機アルミニウム化合物
本発明で用いることの出来る有機アルミニウム化合物(D)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。一般的には、下記の式(3)にて表される化合物を用いることが望ましい。
AlX(OR …(3)
(式中、Rは炭化水素基を表す。Xはハロゲン若しくは水素を表す。Rは炭化水素基若しくはAlによる架橋基を表す。c≧1,0≦d≦2,0≦e≦2,c+d+e=3である。)
【0052】
式(3)中、Rは炭化水素基であり、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から8、特に好ましくは炭素数1から6、のものを用いることが望ましい。Rの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基、などを挙げることが出来る。この中で、メチル基、エチル基、イソブチル基、が最も好ましい。
式(3)中、Xはハロゲン若しくは水素である。Xとして用いることの出来るハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、沃素、などを例示することが出来る。この中で、塩素が特に好ましい。
式(3)中、Rは炭化水素基若しくはAlによる架橋基である。Rが炭化水素基である場合には、Rの炭化水素基の例示と同じ群からRを選択することが出来る。また、有機アルミニウム化合物(SD’)としてメチルアルモキサンに代表されるアルモキサン化合物類を用いることも可能であり、その場合RはAlによる架橋基を表す。
【0053】
有機アルミニウム化合物(D)として用いることの出来る化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムエトキサイド、メチルアルモキサン、などを挙げることが出来る。中でも、トリエチルアルミニウムとトリイソブチルアルミニウムが好ましい。
有機アルミニウム化合物(D)は単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。
【0054】
(G)少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物
本発明で用いることの出来る少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(G)としては、特開平3−294302号公報及び特開平8−333413号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。一般的には、下記の式(4)にて表される化合物を用いることが望ましい。
O−C(R−C(R−C(R−OR …(4)
(式中、R及びRは水素、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。Rは炭化水素基若しくはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)
【0055】
式(4)中、Rは水素、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。Rとして用いることの出来る炭化水素基は、一般に炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10のものである。Rとして用いることの出来る炭化水素基の具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることが出来る。より好ましくは、Rとして分岐状脂肪族炭化水素基若しくは脂環式炭化水素基を用いることが望ましく、とりわけ、i−プロピル基、i−ブチル基、i−ペンチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、などを用いることが望ましい。
二つのRは結合して一つ以上の環を形成しても良い。この際、環構造中に2個又は3個の不飽和結合を含むシクロポリエン系構造を取ることも出来る。また、他の環式構造と縮合していても良い。単環式、複環式、縮合の有無に関わらず、環上に炭化水素基を置換基として1つ以上有していても良い。環上の置換基は、一般に炭素数1から20、好ましくは炭素数1から10のものである。具体的な例としては、n−プロピル基に代表される直鎖状脂肪族炭化水素基、i−プロピル基やt−ブチル基に代表される分岐状脂肪族炭化水素基、シクロペンチル基やシクロヘキシル基に代表される脂環式炭化水素基、フェニル基に代表される芳香族炭化水素基、などを挙げることが出来る。
式(4)中、Rは水素、炭化水素基及びヘテロ原子含有炭化水素基から選ばれる任意の遊離基を表す。具体的には、RはRの例示から選ぶことが出来る。好ましくは水素である。
式(4)中、Rは炭化水素基若しくはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。具体的には、RはRが炭化水素基である場合の例示から選ぶことが出来る。好ましくは、炭素数1から6の炭化水素基であることが望ましく、更に好ましくはアルキル基であることが望ましい。最も好ましくはメチル基である。
からRがヘテロ原子含有炭化水素基である場合は、ヘテロ原子が、窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素から選ばれることが望ましい。また、RからRが炭化水素基であるかヘテロ原子含有炭化水素基であるかに関わらず、任意にハロゲンを含んでいても良い。RからRがヘテロ原子及び/又はハロゲンを含む場合、その骨格構造は炭化水素基である場合の例示から選ばれることが望ましい。また、RからRの八個の置換基はお互いに同一であっても異なっても良い。
【0056】
本発明で用いることの出来る少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(G)の好ましい例としては、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジエトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロヘキシル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−tert−ブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−メチル−2−フェニル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,8−ジクロロフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−2,7−ジシクロペンチルフルオレン、9,9−ビス(メトキシメチル)−1,2,3,4−テトラヒドロフルオレン、1,1−ビス(1’−ブトキシエチル)シクロペンタジエン、1,1−ビス(α−メトキシベンジル)インデン、1,1−ビス(フェノキシメチル)−3,6−ジシクロヘキシルインデン、1,1−ビス(メトキシメチル)ベンゾナフテン、7,7−ビス(メトキシメチル)−2,5−ノボルナジネン、などを挙げることが出来る。中でも、2,2−ジイソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジイソブチル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソブチル−2−イソプロピル−1,3−ジメトキシプロパン、2−イソプロピル−2−イソペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、2,2−ジシクロペンチル−1,3−ジメトキシプロパン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、が特に好ましい。
これらの少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(G)は単独で用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。また、α−オレフィン重合触媒成分(A)中の任意成分である電子供与性化合物として用いられる多価エーテル化合物と同一であっても異なっても良い。
【0057】
(2)α−オレフィン重合用触媒成分(A’)の調製方法
本発明で用いるα−オレフィン重合用触媒成分(A’)はα−オレフィン重合用触媒成分(A)、ビニルシラン化合物(B)、有機ケイ素化合物(C)、及び有機アルミニウム化合物(D)を接触させてなるものである。この際本発明の効果を損なわない範囲で、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(G)、の様な他の任意成分を任意の方法で接触させても良い。α−オレフィン重合用触媒成分(A’)の各構成成分の接触条件は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の条件を用いることが出来る。一般的には、次の条件が好ましい。
接触温度は、−50から200℃程度、好ましくは−10から100℃、更に好ましくは0から70℃、とりわけ好ましくは10℃から60℃である。接触方法としては、回転ボールミルや振動ミルなどによる機械的な方法、並びに、不活性希釈剤の存在下に撹拌により接触させる方法、などを例示することが出来る。好ましくは、不活性希釈剤の存在下に撹拌により接触させる方法を用いることが望ましい。
【0058】
本発明におけるα−オレフィン重合用触媒成分(A’)を構成する各成分の使用量の量比は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次の範囲内が好ましい。
ビニルシラン化合物(B)の使用量は、α−オレフィン重合用触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(ビニルシラン化合物(B)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.001から1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.01から100の範囲内が望ましい。
有機ケイ素化合物(C)の使用量は、α−オレフィン重合用触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比で(アルコキシ基を有する有機ケイ素化合物(C)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01から1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.1から100の範囲内が望ましい。
任意成分として有機アルミニウム化合物(D)を用いる場合の使用量は、α−オレフィン重合用触媒成分(A)を構成するチタン成分に対するアルミニウムの原子比(アルミニウム原子のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.1から100の範囲内であり、特に好ましくは1から50の範囲内が望ましい。
任意成分として少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(G)を用いる場合の使用量は、固体成分(A)を構成するチタン成分に対するモル比(少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(G)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01から1,000の範囲内であり、特に好ましくは0.1から100の範囲内が望ましい。
【0059】
固体成分(A)、ビニルシラン化合物(B)、並びに、有機ケイ素化合物(C)の接触手順に関しては、任意の手順を用いることが出来るが、具体的には下記の(i)〜(iii)の手順を挙げることができる。
手順(i):α−オレフィン重合用触媒成分(A)にビニルシラン化合物(B)を接触させた後、有機ケイ素化合物(C)を接触させる方法。
手順(ii):α−オレフィン重合用触媒成分(A)に有機ケイ素化合物(C)を接触させた後、ビニルシラン化合物(B)を接触させる方法。
手順(iii):全ての化合物を同時に接触させる方法。
この中でも、手順(i)及び手順(iii)が好ましい。
【0060】
また、α−オレフィン重合用触媒成分(A)に対して、ビニルシラン化合物(B)、有機ケイ素化合物(C)、のいずれも任意の回数接触させることも出来る。この際、ビニルシラン化合物(B)、有機ケイ素化合物(C)、のいずれも複数回の接触で用いる化合物がお互いに同一であっても異なっても良い。
【0061】
また、有機アルミニウム化合物(D)の接触に関しても、上記と同様に任意の順序で接触させることが出来るが、好ましい接触順序としては、下記の(iv)〜(vi)の手順を挙げることができる。
手順(iv):α−オレフィン重合用触媒成分(A)にビニルシラン化合物(B)を接触させた後、有機ケイ素化合物(C)を接触させ、更に有機アルミニウム化合物(D)を接触させる方法。
手順(v):α−オレフィン重合用触媒成分(A)にビニルシラン化合物(B)及び有機ケイ素化合物(C)を接触させ、その後に有機アルミニウム化合物(D)を接触させる方法。
手順(vi):全ての化合物を同時に接触させる方法。
有機アルミニウム化合物(D)についても上記と同様に複数回接触させることが出来る。この際、複数回用いる有機アルミニウム化合物(D)がお互いに同一であっても異なっても良い。
【0062】
任意成分として、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(G)、及び/又は、その他の化合物を用いる場合も、上記と同様に任意の順序で接触させることが出来る。
【0063】
α−オレフィン重合用触媒成分(A’)の調製の際には、中間及び/又は最後に不活性溶媒で洗浄を行っても良い。好ましい溶媒種としては、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素化合物、トルエンなどの芳香族炭化水素化合物、及び、1,2−ジクロロエチレンやクロロベンゼンなどのハロゲン含有炭化水素化合物、などを例示することが出来る。
【0064】
3.α−オレフィン重合用触媒
本発明のα−オレフィン重合用触媒は、α−オレフィン重合用触媒成分(A)またはα−オレフィン重合用触媒成分(A’)と、有機アルミニウム化合物(E)、必要に応じてさらに、有機ケイ素化合物(F)、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(H)とを併用することにより重合用触媒を形成する。
【0065】
(1)構成成分
(E)有機アルミニウム化合物
本発明のα−オレフィン重合用触媒において用いることの出来る有機アルミニウム化合物(E)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。好ましくは、α−オレフィン重合用触媒成分(A’)を調製する際の任意成分である有機アルミニウム化合物(D)における例示と同じ群から選択することが出来る。この際、α−オレフィン重合用触媒成分(A’)を調製する際に任意成分として用いることの出来る有機アルミニウム化合物(D)と触媒の必須成分として用いることの出来る有機アルミニウム化合物(E)が同一であっても異なっても良い。
有機アルミニウム化合物(E)は単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。
【0066】
α−オレフィン重合用触媒における有機アルミニウム化合物(E)の使用量は、α−オレフィン重合用触媒成分(A)または(A’)を構成するチタン成分に対するモル比(有機アルミニウム化合物(E)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは1から5,000の範囲内であり、特に好ましくは10から500の範囲内が望ましい。
【0067】
本発明において、α−オレフィン重合用触媒成分(A)または(A’)と、有機アルミニウム化合物(E)とを併用する態様については特に制限はないが、通常、重合反応層中にα−オレフィン重合用触媒成分(A)または(A’)と、有機アルミニウム化合物(E)とを共存させる。
【0068】
(F)有機ケイ素化合物
本発明のα−オレフィン重合用触媒において任意成分として用いることの出来る有機ケイ素化合物(F)としては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。好ましくは、α−オレフィン重合用触媒成分(A’)において用いることの出来る有機ケイ素化合物(C)における例示と同じ群から選択することが出来る。この際、α−オレフィン重合用触媒成分(A’)を調製する際に必須成分として用いることの出来る有機ケイ素化合物(C)と触媒の任意成分として用いることの出来る有機ケイ素化合物(F)が同一であっても異なっても良い。
有機ケイ素化合物(F)は単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。
【0069】
本発明において、有機ケイ素化合物(F)を用いる場合、通常、重合反応層中にα−オレフィン重合用触媒成分(A)または(A’)、有機アルミニウム化合物(E)、と共存させる。
【0070】
(H)少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物
本発明のα−オレフィン重合用触媒において任意成分として用いることの出来る少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(H)としては、特開平3−294302号公報及び特開平8−333413号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。好ましくは、α−オレフィン重合用触媒成分(A’)において用いられる少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(G)における例示と同じ群から選択することが出来る。この際、α−オレフィン重合用触媒成分(A’)を調製する際に任意成分として用いることの出来る少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(G)と触媒の任意成分として用いることの出来る少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(H)が同一であっても異なっても良い。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(H)は単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。
【0071】
本発明において、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(H)を用いる場合、通常、重合反応層中にα−オレフィン重合用触媒成分(A)または(A’)、有機アルミニウム化合物(E)、と共存させる。
【0072】
(I)その他の化合物
本発明の効果を損なわない限り、上記有機ケイ素化合物(F)、及び、少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(H)、以外の成分(I)を触媒の任意成分として用いることが出来る。例えば、特開2004−124090号公報に開示された様に、分子内にC(=O)N結合を有する化合物を用いることにより、冷キシレン可溶分(CXS)の様な非晶性成分の生成を抑制することが出来る。この場合、テトラメチルウレア、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、1−エチル−2−ピロリジノン、などを好まし例として挙げることが出来る。
分子内にC(=O)N結合を有する化合物は単独の化合を用いるだけでなく、複数の化合物を併用することも出来る。
また、ジエチル亜鉛の様なアルミニウム以外の金属原子を持つ有機金属化合物を用いることも出来る。
【0073】
本発明の触媒における任意成分の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で任意のものでありうるが、一般的には、次の範囲内が好ましい。
有機ケイ素化合物(F)を用いる場合の使用量は、α−オレフィン重合触媒成分(A)または(A’)構成するチタン成分に対するモル比(有機ケイ素化合物(F)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01から50,000の範囲内であり、特に好ましくは0.5から500の範囲内が望ましい。
少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(H)を用いる場合の使用量は、α−オレフィン重合触媒成分(A)または(A’)を構成するチタン成分に対するモル比(少なくとも二つのエーテル結合を有する化合物(H)のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.01から50,000の範囲内であり、特に好ましくは0.5から500の範囲内が望ましい。
分子内にC(=O)N結合を有する化合物を用いる場合の使用量は、α−オレフィン重合触媒成分(A)または(A’)を構成するチタン成分に対するモル比(分子内にC(=O)N結合を有する化合物のモル数/チタン原子のモル数)で、好ましくは0.001から5,000の範囲内であり、特に好ましくは0.05から500の範囲内が望ましい。
【0074】
(2)予備重合
本発明のα−オレフィン重合触媒は、α−オレフィン重合触媒成分(A)または(A’)を、本重合で使用する前に予備重合したものであっても良い。予備重合におけるモノマーとしては、特開2004−124090号公報に開示された化合物等を用いることが出来る。具体的な化合物の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、などに代表されるオレフィン類、スチレン、α−メチルスチレン、アリルベンゼン、クロロスチレン、などに代表されるスチレン類似化合物、及び、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、2,6−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,9−デカジエン、ジビニルベンゼン類、などに代表されるジエン化合物類、などを挙げることが出来る。中でも、エチレン、プロピレン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、スチレン、ジビニルベンゼン類、などが特に好ましい。
α−オレフィン重合触媒成分(A)または(A’)として、予備重合されたものを用いる場合には、α−オレフィン重合触媒成分(A’)の調製手順において任意の手順で予備重合を行うことが出来る。例えば、α−オレフィン重合触媒成分(A)を予備重合した後に、ビニルシラン化合物(B)、及び、有機ケイ素化合物(C)を接触させることが出来る。また、α−オレフィン重合触媒成分(A)、ビニルシラン化合物(B)、及び、有機ケイ素化合物(C)を接触させた後に予備重合を行うことも出来る。更に、α−オレフィン重合触媒成分(A)、ビニルシラン化合物(B)、及び、有機ケイ素化合物(C)を接触させる際に同時に予備重合を行っても良い。
【0075】
α−オレフィン重合触媒成分(A’)若しくはα−オレフィン重合触媒成分(A)と上記のモノマーとの反応条件は、本発明の効果を損なわない範囲で任意の条件を用いることが出来る。一般的には、以下の範囲内が好ましい。
α−オレフィン重合触媒成分(A’)若しくはα−オレフィン重合触媒成分(A)1グラムあたりの基準で、予備重合量は0.001から100gの範囲内であり、好ましくは0.1から50g、更に好ましくは0.5から10gの範囲内が望ましい。モノマーの供給方法は、モノマーを反応槽に定速的にあるいは定圧状態若しくは一定濃度になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。予備重合時の反応温度は−150から150℃、好ましくは0から100℃である。そして、予備重合時の反応温度は本重合のときの重合温度よりも低くすることが望ましい。予備重合の時間は、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。反応は、一般的に撹拌下に行うことが好ましく、そのときヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒を存在させることもできる。
予備重合は複数回行っても良く、この際用いるモノマーは同一であっても異なっても良い。また、予備重合後にヘキサン、ヘプタン等の不活性溶媒で洗浄を行うことも出来る。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行ってもよい。
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
【0076】
4.α−オレフィンの重合
本発明の新規な触媒を使用する、α−オレフィン重合は、炭化水素溶媒を用いるスラリー重合、実質的に溶媒を用いない液相無溶媒重合又は気相重合に適用される。スラリー重合の場合の重合溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の炭化水素溶媒が用いられる。採用される重合方法は、連続式重合、回分式重合又は多段式重合等いかなる方法でもよい。重合温度は、通常30〜200℃程度、好ましくは50〜150℃であり、そのとき分子量調節剤として水素を用いることができる。
【0077】
本発明の触媒系で重合するα−オレフィンは、一般式R−CH=CH(ここで、Rは炭素数1〜20の炭化水素基であり、分枝基を有してもよい。)で表されるものである。具体的には、プロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1等のα−オレフィン類である。これらのα−オレフィンの単独重合のほかに、α−オレフィンと共重合可能なモノマー(例えば、エチレン、α−オレフィン、ジエン類、スチレン類等)との共重合も行うことができる。これらの共重合性モノマーは、ランダム共重合においては15重量%まで、ブロック共重合においては50重量%まで使用することができる。
【0078】
5.α−オレフィン重合体
本発明により重合されるα−オレフィン重合体のインデックスについては特に制限はなく、各種用途に合わせて適宜調節することが出来る。一般的には、α−オレフィン重合体のMFRは0.01から10,000g/10分の範囲内であることが好ましく、特に好ましくは0.1から1,000g/10分の範囲内である。非晶性成分である冷キシレン可溶分(CXS)の量は、用途によって好ましい範囲が異なるのが一般的である。射出成形用途などの高い剛性が好まれる用途に対しては、CXSの量は0.01から3.0重量%の範囲内であることが好ましく、特に好ましくは0.05から1.5重量%の範囲内、とりわけ好ましくは0.1から1.0重量%の範囲内が望ましい。
ここで、MFR、CXSの値は下記実施例の中で定められた手法により測定した値である。
【0079】
また、本発明により得られるポリマー粒子は、優れた粒子性状を示す。一般的に、ポリマー粒子の粒子性状は、ポリマー嵩密度、粒径分布、粒子外観、などにより評価される。本発明により得られるポリマー粒子は、ポリマー嵩密度が、0.35から0.55g/mlの範囲内、好ましくは、0.40から0.50g/mlの範囲内である。
ここで、ポリマー嵩密度の値は下記実施例の中で定められた手法により測定した値である。
【実施例】
【0080】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。なお、実施例及び比較例で用いられる物性の測定方法は次の通りである。
【0081】
1.物性値の測定方法
(1)MFR
タカラ社製 メルトインデクサーを用い、JIS−K6921に基づき、230℃、21.18Nの条件で評価した。
(2)ポリマー嵩密度
ASTM D1895−69に準ずる装置を使用し測定した。
(3)CXS
試料(約5g)を140℃のp−キシレン(300ml)中に一度完全に溶解させた。その後23℃まで冷却し、23℃で12時間ポリマーを析出させた。析出したポリマーを濾別した後、濾液からp−キシレンを蒸発させた。p−キシレンを蒸発させた後に残ったポリマーを100℃で2時間減圧乾燥した。乾燥後のポリマーを秤量し、試料に対する重量%としてCXSの値を得た。
(4)密度
MFR測定時に得られた押出ストランドを用い、JIS−K7112 D法に準拠して密度勾配管法で行った。
【0082】
(実施例1)
(1)α−オレフィン重合触媒成分(A)の調製
充分に窒素置換したフラスコに、脱水及び脱酸素したn−ヘプタン200mlを導入し、次いでMgClを0.16モル、Ti(O−n−Cを0.3モル導入し、さらに2,5−ジメチルフランを0.03モル導入し、90℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)を23ml導入し、4時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
次いで、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製したn−ヘプタンを50ml導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で0.06モル導入した。次いでn−ヘプタン25mlにSiCl0.1モルを混合して30℃、30分間でフラスコへ導入し、90℃で2時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでn−ヘプタン25mlにフタル酸クロライド0.006モルを混合して、70℃、30分間でフラスコへ導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いで、TiCl2.5モルを導入して110℃で2時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄して、さらに、TiCl2.5モルを導入して90℃で2時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄してα−オレフィン重合触媒成分(A)を得た。
(2)α−オレフィン重合触媒成分(A’)の調製
充分に窒素置換したフラスコに、上記成分(A)のスラリーを成分(A)として4g導入した。その後、精製したn−ヘプタンを導入して、成分(A)の濃度が20g/Lとなる様に調整した。ここに、トリメチルビニルシランを1.0ml、有機ケイ素化合物(C)としてt−Bu(Me)Si(OMe)を1.2ml、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして1.5g添加し、30℃で2hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
次に、上記のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、成分(A)の濃度が20g/Lとなる様に調整した。スラリーを15℃に冷却した後、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして0.5g添加し、9gのプロピレンをゆっくりと供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に10min反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。その後、真空乾燥を行ってα−オレフィン重合触媒成分(A’)を得た。この成分(A’)は、固体成分1gあたり2.0gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、この成分(A’)のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.2wt%含まれていた。
(3)プロピレンの重合
撹拌及び温度制御装置を有する内容積3.0リットルのステンレス鋼製オートクレーブを充分に加熱乾燥した後、室温まで冷却した。プロピレンを用いてオートクレーブ内を充分に置換した後、有機アルミニウム化合物(E)としてEtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして550mg添加した。次に、水素を5,000ml、及び、プロピレンを1,000g、順次オートクレーブへ導入した。オートクレーブの内部温度を75℃に調整した後、上記で調製したα−オレフィン重合触媒成分(A’)を7mg(ただし、予備重合ポリマーは除く)圧入して重合を開始した。1時間後にエタノールを10ml圧入して重合を停止した。ポリマーを乾燥して秤量した。結果を表1に示す。
【0083】
(実施例2)
(1)α−オレフィン重合触媒成分(A)の調製
充分に窒素置換したフラスコに、脱水及び脱酸素したn−ヘプタン200mlを導入し、次いでMgClを0.16モル、Ti(O−n−Cを0.3モル導入し90℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)を23ml導入し、4時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
次いで、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製したn−ヘプタンを50ml導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で0.06モル導入した。次いでn−ヘプタン25mlにSiCl0.1モルを混合して30℃、30分間でフラスコへ導入し、90℃で2時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでn−ヘプタン25mlにフタル酸クロライド0.006モルを混合して、70℃、30分間でフラスコへ導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いで、2,5−ジメチルフラン0.04モルを導入して90℃で2時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いで、TiCl2.5モルを導入して110℃で2時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄して、さらに、TiCl2.5モルを導入して90℃で2時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄してα−オレフィン重合触媒成分(A)を得た。
(2)α−オレフィン重合触媒成分(A’)の調製
充分に窒素置換したフラスコに、上記成分(A)のスラリーを固体成分(A)として4g導入した。その後、精製したn−ヘプタンを導入して、固体成分(A)の濃度が20g/Lとなる様に調整した。ここに、トリメチルビニルシランを1.0ml、有機ケイ素化合物(C)としてt−Bu(Me)Si(OMe)を1.2ml、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして1.5g添加し、30℃で2hr反応を行った。反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。
次に、上記のスラリーに精製したn−ヘプタンを導入して、成分(A)の濃度が20g/Lとなる様に調整した。スラリーを15℃に冷却した後、EtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして0.5g添加し、9gのプロピレンをゆっくりと供給した。プロピレンの供給が終わった後、更に10min反応を継続した。次いで、気相部を窒素で充分に置換し、反応生成物を精製したn−ヘプタンで充分に洗浄した。その後、真空乾燥を行ってα−オレフィン重合触媒成分(A’)を得た。この成分(A’)は、固体成分1gあたり2.0gのポリプロピレンを含んでいた。分析したところ、この成分(A’)のポリプロピレンを除いた部分には、Tiが1.3wt%含まれていた。
(3)プロピレンの重合
撹拌及び温度制御装置を有する内容積3.0リットルのステンレス鋼製オートクレーブを充分に加熱乾燥した後、室温まで冷却した。プロピレンを用いてオートクレーブ内を充分に置換した後、有機アルミニウム化合物(E)としてEtAlのn−ヘプタン希釈液をEtAlとして550mg添加した。次に、水素を5,000ml、及び、プロピレンを1,000g、順次オートクレーブへ導入した。オートクレーブの内部温度を75℃に調整した後、上記で調製したα−オレフィン重合触媒成分(A’)を7mg(ただし、予備重合ポリマーは除く)圧入して重合を開始した。1時間後にエタノールを10ml圧入して重合を停止した。ポリマーを乾燥して秤量した。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例3)
実施例1で使用した2,5−ジメチルフランの代わりに2,5−ジフェニルフランを使用し、重合時に成分(F)としてt−Bu(Me)Si(OMe)を80mg導入した以外は実施例1と全く同様に行った。結果を表1に示す。
【0085】
(実施例4)
実施例2で使用した2,5−ジメチルフランの代わりに2,5−ジフェニルフランを使用し、重合時に成分(F)として(C11)CHSi(OCHを90mg導入した以外は実施例2と全く同様に行った。結果を表1に示す。
【0086】
(実施例5)
実施例2で調整したα−オレフィン重合触媒成分(A)をプロピレンの重合時に使用し、さらに重合時に成分(F)として(c−Pen)Si(OMe)を110mg導入した以外は実施例2と全く同様に行った。結果を表1に示す。
【0087】
(比較例1)
実施例1で使用した2,5−ジメチルフランを使用しなかった以外は実施例1と全く同様に行った。結果を表2に示す。
【0088】
(比較例2)
実施例1で使用した2,5−ジメチルフランの代わりにジブチルエーテルを使用した以外は実施例1と全く同様に行った。結果を表2に示す。
【0089】
(比較例3)
実施例1で使用した2,5−ジメチルフランの代わりにジベンゾフランを使用した以外は実施例1と全く同様に行った。結果を表2に示す。
【0090】
(比較例4)
実施例2で使用した2,5−ジメチルフランの代わりにフランを使用した以外は実施例2と全く同様に行った。結果を表2に示す。
【0091】
(比較例5)
実施例5で使用した2,5−ジメチルフランの代わりにジベンゾフランを使用した以外は実施例5と全く同様に行った。結果を表2に示す。
【0092】
(比較例6)
実施例2で使用した2,5−ジメチルフランの使用量を0.12モルとした以外は実施例2と全く同様に行なった。結果を表2に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
表1及び2の各実施例1〜5及び各比較例1〜6を対照検討することにより、本発明では、触媒活性、ポリマー嵩密度、冷キシレン可溶分(CXS)、密度等の全般にわたり比較例に比して優れた結果が得られていることが、明白である。
具体的には、実施例1及び2は比較例1〜4と比較して、触媒活性が高く、CXSが低い。ポリマー嵩密度及び密度は同等である。実施例3及び4では有機ケイ素化合物(F)を使用することにより、実施例1及び2より若干の活性の低下があるもののCXSを削減されている。実施例5は比較例5と比較して、触媒活性、ポリマー嵩密度が高く、CXS、密度は同等である。従って、実施例は、触媒活性、立体規則性、粒子性状、の触媒性能の全般にわたり、比較例に比して優れた結果が得られていると言える。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のα−オレフィン重合用触媒成分、α−オレフィン重合用触媒は、触媒活性が高く、またこの新規な触媒を用いて得られるα−オレフィン重合体は、立体規則性、粒子性状に優れ、様々な分野で使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の触媒についての理解を助け明確にするためのフローチャート図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チタン、マグネシウム、ハロゲン、電子供与性化合物、及び下記の式(1)で表されるフラン化合物を含有し、電子供与性化合物とフラン化合物のモル比(電子供与性化合物のモル数/フラン化合物のモル数)が0.05から1.0の範囲であることを特徴とするα−オレフィン重合用触媒成分。
【化1】

(式(1)中、RおよびRは炭素数1つ以上の脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはヘテロ原子含有炭化水素基を表す。)
【請求項2】
請求項1記載のα−オレフィン重合用触媒成分(A)に、下記成分(B)、(C)および(D)を接触させることを特徴とするα−オレフィン重合用触媒成分。
(B)ビニルシラン化合物
(C)有機ケイ素化合物
(D)有機アルミニウム化合物
【請求項3】
請求項1に記載のα−オレフィン重合用触媒成分(A)又は請求項2に記載のα−オレフィン重合用触媒成分(A’)及び下記成分(E)からなることを特徴とするα−オレフィン重合用触媒。
(E)有機アルミニウム化合物
【請求項4】
請求項3に記載のα−オレフィン重合用触媒及び下記成分(F)からなることを特徴とするα−オレフィン重合用触媒。
(F)有機ケイ素化合物
【請求項5】
請求項1〜4に記載のα−オレフィン重合用触媒成分またはα−オレフィン重合用触媒の存在下にα−オレフィンを重合することを特徴とするα−オレフィン重合体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−119514(P2007−119514A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−309453(P2005−309453)
【出願日】平成17年10月25日(2005.10.25)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】