説明

π共役ポリマー

【課題】高いホール輸送性を有すると共に耐久性に優れた光電変換素子用の高分子材料として、優れた発光特性を有すると共に耐久性に優れた発光素子用の高分子材料として、また薄膜トランジスタの活性層用高分子材料として有用なπ共役ポリマーを提供すること。
【解決手段】下記一般式(I)で表わされる構成単位を含有することを特徴とするπ共役ポリマー。


(式中Arは置換を有しても良い芳香族炭化水素基もしくは複素環基の二価基を、Arは置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、複素環基の二価基もしくは単結合を表わし、mは0または1の整数を表わす。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なπ共役ポリマーに関し、このπ共役ポリマーは、光電変換素子、薄膜トランジスタ素子、発光素子など種々の有機エレクトロニクス用素材として有用である。
【背景技術】
【0002】
有機材料の発光特性や電荷輸送特性を利用して、光電変換素子、薄膜トランジスタ素子、発光素子など種々の機能素子が提案されている。これらの素子に有機材料を用いることにより、軽量、安価、低製造コスト、フレキシブル等有機材料の最大の利点が期待される。
これら機能素子のなかで、光電変換素子とりわけ太陽電池および電子写真感光体用ホール輸送材としてこれまで低分子系および高分子系の様々な材料が報告されているが、前者においてはさらなる高効率化、後者においてはプリントの高速化ならびに耐久性が求められている。
【0003】
発光素子用の材料としては、低分子系および高分子系の様々な材料が報告されている。低分子系においては、種々の積層構造の採用により高効率化の実現が、またドーピング法をうまくコントロールすることにより耐久性の向上が報告されている。しかし、低分子集合体の場合には、長時間における経時での膜状態の変化が生じることが報告されており、膜の安定性に関して本質的な問題点を抱えている。一方、高分子系材料においては、これまで、主にPPV(poly-p-phenylenevinylene)系列やpoly-thiophene等について精力的に検討が行なわれてきた。しかしながら、これらの材料系は純度を上げることが困難であることや、本質的に蛍光量子収率が低いことが問題点として挙げられ、高性能な発光素子は得られていないのが現状である。
しかし、高分子材料は本質的にガラス状態で安定であることを考慮すると、高蛍光量子効率を付与することができれば優れた発光素子の構築が可能となるため、この分野でさらなる改良が行なわれている。たとえば、一例として繰り返し単位としてアリールアミンユニットを含む高分子材料を挙げることができる(特許文献1:米国特許第5777070号明細書、特許文献2:特開平10−310635号公報、特許文献3:特開平8−157575号公報、特許文献4:特表2002−515078号公報、特許文献5:WO97/09394号公報、非特許文献1等参照)。
【0004】
一方、有機薄膜トランジスタ(TFT)素子においても、低分子系および高分子系の様々な材料が報告されている。例えば、低分子材料ではペンタセン、フタロシアニン、フラーレン、アントラジチオフェン、チオフェンオリゴマ、ビスジチエノチオフェンなどが、また高分子材料ではポリチオフェン、ポリチエニレンビニレンまた繰り返し単位としてアリールアミンユニットを含む高分子材料も検討されている(特許文献6:特願2004−174088号明細書参照)。
【0005】
また、炭素−炭素三重結合を繰り返し単位中に含むポリマーも検討されている(特許文献7:米国特許第5876864号明細書、非特許文献2等参照)。
【0006】
これら従来技術に示される高分子材料において、有機エレクトロニクス用素材における特性値であるホール移動度の向上は目覚しいが、有機エレクトロニクス用素材とりわけ有機FET素子への応用を考慮すると、さらに高移動度の素材が望まれている。
また、安価に製造でき、充分な柔軟性と強度をもちかつ軽量であること、大面積化が可能であるという有機材料を用いた素子としての最大の特徴を活かすためには有機溶剤に対する充分な溶解性が必要になる。一般的に共役が伸張された構造を特徴とするπ共役ポリマーでは構造が剛直である場合が多く、このことが溶解性を低下させる原因になる。上記従来技術においても溶解性に難点を有する高分子材料が多く、これを回避すべく様々な分子設計が行なわれているのが現状である。
【0007】
【特許文献1】米国特許第5777070号明細書
【特許文献2】特開平10−310635号公報
【特許文献3】特開平8−157575号公報
【特許文献4】特表2002−515078号公報
【特許文献5】WO97/09394号公報
【特許文献6】特願2004−174088号明細書
【特許文献7】米国特許第5876864号明細書
【非特許文献1】Synth.Met.,84,269(1997)
【非特許文献2】Macromolecules 35、587(2002)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来技術の現状に鑑みてなされたものであり、高いホール輸送性を有すると共に耐久性に優れた光電変換素子用の高分子材料として、優れた発光特性を有すると共に耐久性に優れた発光素子用の高分子材料として、また薄膜トランジスタの活性層用高分子材料として有用なπ共役ポリマーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定の構成単位を含有するπ共役ポリマーにより上記課題が解決されることを見出し、本発明に至った。
即ち、上記課題は、本発明の以下の(1)〜(3)によって解決される。
(1)「下記一般式(I)で表わされる構成単位を含有することを特徴とするπ共役ポリマー;
【0010】
【化1】

(式中Arは置換を有しても良い芳香族炭化水素基もしくは複素環基の二価基を、Arは置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、複素環基の二価基もしくは単結合を表わし、mは0または1の整数を表わす。)」、
(2)「前記一般式(I)におけるArが、単結合である下記一般式(II)で表わされることを特徴とする前記第(1)項に記載のπ共役ポリマー;
【0011】
【化2】

(式中Arは置換を有しても良い芳香族炭化水素基もしくは複素環基の二価基を表わす。)」、
(3)「前記一般式(I)におけるArまたはArが、置換または無置換のトリアリールアミン、置換または無置換のチオフェン、置換または無置換のフルオレンもしくはプソイド[2,2]−パラシクロファンの二価基、もしくは置換または無置換のフェニレン基であることを特徴とする前記第(1)項に記載のπ共役ポリマー」
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、新規なπ共役ポリマーが提供され、このπ共役ポリマーは、優れた電荷(ホールキャリア)移動性を示し、かつ、高分子材料特有の被膜形成能を有し、光電変換素子、薄膜トランジスタ素子、発光素子など種々の有機エレクトロニクス用素材として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
本発明の一般式(I)で表わされるπ共役ポリマーは、パラジウム触媒を用い、アミン存在下銅塩(CuI、CuBr、CuClなど)を用いるクロスカップリング反応(一般に薗頭反応と呼ばれる)により得られる。(K.Sonogashira,J.Organomet.Chem.,653,46(2002))
具体的には、たとえば下記一般式(III)で示されるジハロゲン化合物と、下記一般式(IV)で示されるエチニル化合物とを反応させることにより本発明の一般式(I)で表わされるπ共役ポリマーを得ることができる。
【0014】
【化3】

(式中Arは置換を有しても良い芳香族炭化水素もしくは複素環由来の二価基を、Xは塩素原子、臭素原子あるいはヨウ素原子を表わす。)
【0015】
【化4】

(式中Arは置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、複素環基由来の二価基もしくは単結合を表わし、Rは水素原子あるいはトリメチルシリル基を表わす。mは0または1の整数を表わす。)
【0016】
ここでパラジウム触媒として例えば、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、塩化ビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、塩化ビス(ベンゾニトリル)パラジウム、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム、塩化パラジウム、酢酸パラジウムなどが挙げられる。ホスフィン配位子も反応に著しい影響を与えることが明らかになっており、例えば、トリ(t−ブチル)ホスフィン、トリ(オルトトリル)ホスフィン等も用いることができる。
アミンとしては例えば、n−BuNH、EtNH、EtNまたはピペリジンなどが用いられる。
なお、反応の際の雰囲気は、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
前記一般式(III)で示されるジハロゲン化合物の反応性は、ハロゲン原子がよう素>臭素>塩素の順であり、用いるジハロゲン化合物の反応性に応じて反応温度、反応時間および反応濃度等が設定される。
【0017】
本クロスカップリング反応では、前記一般式(IV)で示されるエチニル化合物においてRが水素である場合が一般的であるが、Rがトリメチルシリル基である場合も反応の活性化剤として酸化銀を用いることで、一般式(I)で表わされるπ共役ポリマーを得ることができる。(A.Mori et al.Chmistry Letters 286(2001))
【0018】
また、以上の重合操作において分子量を調節するために分子量調節剤、または末端修飾基として重合体の末端を封止するための封止剤を反応途中または反応後に添加することも可能であり、反応開始時に添加しておくことも可能である。従って、本発明におけるπ共役ポリマーの末端には停止剤に基づく置換基が結合してもよい。
【0019】
本発明の重合体の好ましい分子量はポリスチレン換算数平均分子量で1000〜1000000であり、より好ましくは2000〜500000である。分子量が小さすぎる場合にはクラックの発生等成膜性が悪化し実用性に乏しくなる。また分子量が大きすぎる場合には、一般の有機溶媒への溶解性が悪くなり、溶液の粘度が高くなって塗工が困難になり、やはり実用性上問題になる。また、このような分子量の調節は、例えば、前記分子量調節剤または封止剤の添加量(特に反応途中、反応開始時添加の場合)及び添加時期を調節することにより達成できる。
【0020】
以上のようにして得られたπ共役ポリマーは、重合に使用した触媒、未反応モノマー、末端停止剤、また、重合時に副生するアンモニウム塩等の不純物を除去して使用される。これら精製操作は再沈澱、カラムクロマト法、吸着法、抽出、ソックスレー抽出、限外濾過、透析、触媒を除くためのスカベンジャーの使用等をはじめとする従来公知の方法を使用できる。
【0021】
上記製造方法により得られた本発明の重合体は、スピンコート法、キャスト法、ディップ法、インクジェット法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法等の公知の成膜方法により、クラックのない強度、靭性、耐久性等に優れた良好な薄膜を作製することが可能であり、光電変換素子、薄膜トランジスタ素子、発光素子など種々の機能素子用材料として好適に用いることができる。
【0022】
このようにして得られる一般式(I)で表わされるπ共役ポリマーの具体例を以下に示す。
前記一般式(I)中、Ar及びArが置換または無置換の芳香族炭素水素基あるいは複素環基の2価基を表わす場合、以下のものを挙げることができる。
ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ターフェニル、ピレン、フルオレン、9,9−ジメチルフルオレン、アズレン、アントラセン、トリフェニレン、クリセン、9−ベンジリデンフルオレン、5H−ジベンゾ[a,d]シクロヘプテン、[2,2]−パラシクロファン、トリフェニルアミン、チオフェン、ベンゾチオフェン、ジチエニルベンゼン、フラン、ベンゾフラン、カルバゾール等の2価基が挙げられ、これらは置換もしくは無置換のアルキル基およびアルコキシ基、を置換基として有していてもよい。置換もしくは無置換のアルキル基としては、炭素数が1〜25の直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基であり、これらのアルキル基は更にフッ素原子、シアノ基、フェニル基又はハロゲン原子もしくは直鎖又は分岐鎖のアルキル基で置換されたフェニル基を含有してもよい。
【0023】
具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、3,7−ジメチルオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−シアノエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
また置換もしくは無置換のアルコキシ基である場合は、上記アルキル基の結合位に酸素原子を挿入してアルコキシ基としたものが具体例として挙げられる。
上記一般式(III)で表わされるジハロゲン化合物のさらに好ましい具体例を以下に示す。
このようなジハロゲン化合物は、臭素、よう素あるいはN−ハロゲン化サクシイミド等を用いる一般的なハロゲン化反応によって得られる。
【0024】
【化5】

【0025】
【化6】

【0026】
本発明の重合体は、アルキル基やアルコキシ基、アルキルチオ基の存在により、溶媒への溶解性が向上する。これらの材質において溶解性を向上させることは、光電変換素子、薄膜トランジスタ素子、発光素子など製造の際、湿式成膜過程の製造許容範囲が大きくなることから重要である。例えば塗工溶媒の選択肢の拡大、溶液調製時の温度範囲の拡大、溶媒の乾燥時の温度及び圧力範囲の拡大となり、これらプロセッシビリティーの高さにより高純度で均一性の高い高品質な薄膜が得られる。
【実施例】
【0027】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これら実施例によって制限されるものではない。
(実施例1)
下記の(式1)で示される2,5−ジ−n−ヘキシル−1,4−ジエチニルベンゼン0.92g(3.1mmol)、(式2)で示される4−(2−エチルヘキシルオキシ)−4’、4”−ジヨードトリフェニルアミン1.95g(3.1mmol)、
【0028】
【化7】

テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム33mg(0.03mmol)、ヨウ化銅12mg(0.06mmol)にトルエン20mlとトリエチルアミン2.8mlを加え、アルゴン気流下で60℃で4.5時間加熱攪拌した。その後フェニルアセチレン数滴を加え60℃で1時間、さらにヨードベンゼン数滴を加え60℃で1時間加熱攪拌した。
室温まで放冷したのち内容物を90%メタノール水溶液に滴下し淡褐色のポリマーを得た。これを塩化メチレンに溶解し、5%塩酸水溶液で洗浄後水洗し、メタノール中に滴下してポリマーをろ取した。これを塩化メチレンを用いショートカラム処理(シリカゲルと少量のフロリジル)したのち、メタノール中に滴下して下式で表わされるπ共役ポリマーNo.1::1.13gを得た。
【0029】
【化8】

元素分析値(計算値)は、C:86.40%(86.81%)、H:8.33%(8.67%)、N:2.29%(2.11%)。
赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)を図2に示したが、2207cm−1に炭素―炭素三重結合にもとづく伸縮振動が観察された。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量は、数平均分子量:8704、重量平均分子量:21845であった。
【0030】
(実施例2)
下記(式3)で示されるプソイド−p−ジエチニル[2,2]−パラシクロファン0.769g(3mmol)、
【0031】
【化9】

前記(式2)で示されるジヨード化合物1.816g(3mmol)、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム33mg(0.03mmol)、ヨウ化銅12mg(0.06mmol)にトルエン20mlとトリエチルアミン2.8mlを加え窒素気流下で60℃で3時間加熱攪拌した。その後ヨードベンゼン数滴を加え60℃で1時間、さらにフェニルアセチレン数滴を加え60℃で1時間加熱攪拌した。
室温まで放冷したのち内容物をメタノールに滴下し淡褐色のポリマーを得た。これを塩化メチレンに溶解し、5%塩酸水溶液で振とう器を用いて洗浄した。ついでイオン交換水で洗浄液の伝導度がイオン交換水の値と同等になるまで水洗を繰り返したのち、メタノール中に滴下してポリマーをろ取した。これを塩化メチレンを用いショートカラム処理(シリカゲルと少量のフロリジル)したのち、メタノール中に滴下して下式で表わされるπ共役ポリマーNo.2:1.0gを得た。
【0032】
【化10】

元素分析値(計算値)は、C:88.28%(88.27%)、H:6.65%(6.94%)、N:2.46%(2.24%)。
赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)を図3に示したが、2201cm−1に炭素―炭素三重結合にもとづく伸縮振動が観察された。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量は、数平均分子量:20464、重量平均分子量:67790であった。
【0033】
(実施例3)
下記(式4)で示される1,4−ビス(トリメチルシリル)−1,3−ブタジイン0.402g(2.07mmol)、
【0034】
【化11】

および前記(式2)で示されるジヨード化合物1.293g(2.07mmol)を、脱水テトラヒドロフラン(THF)16mlに溶解し、これに酸化銀0.92g(4.0mmol)とテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.232g(0.2mmol)を加え窒素気流下で60℃で4時間加熱攪拌した。その後ヨードベンゼン数滴を加え60℃で1時間、さらにフェニルアセチレン数滴を加え60℃で1時間加熱攪拌した。
室温まで放冷したのち内容物をTHFで希釈し、セライトを用いてろ過し、メタノールに滴下し暗褐色のポリマーを得た。これを塩化メチレンに溶解し、5%アンモニア水溶液で洗浄後、5%塩酸水溶液で振とう器を用いて洗浄した。ついでイオン交換水で洗浄液の伝導度がイオン交換水の値と同等になるまで水洗を繰り返したのち、メタノール中に滴下して下式で表わされるπ共役ポリマーNo.3:0.50gを得た。
【0035】
【化12】

元素分析値(計算値)は、C:85.79%(85.87%)、H:7.06%(6.98%)、N:3.20%(3.34%)。
赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)を図4に示したが、2201cm−1に炭素―炭素三重結合にもとづく伸縮振動が観察された。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量は、数平均分子量:11709、重量平均分子量:45317であった。
【0036】
(実施例4)
下記(式5)で示されるビス(トリメチルシリル)アセチレン0.187g(1.1mmol)、
【0037】
【化13】

および前記(式2)で示されるジヨード化合物0.688g(1.1mmol)を脱水テトラヒドロフラン(THF)5mlに溶解し、これに酸化銀0.51g(2.2mmol)とテトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.130g(0.11mmol)を加え窒素気流下で60℃で4時間加熱還流した。その後ヨードベンゼン数滴を加え1時間、さらにフェニルアセチレン数滴を加え1時間加熱還流した。
室温まで放冷したのち内容物をTHFで希釈し、セライトを用いてろ過し、ろ液を濃縮後、トルエンに溶解しパラジウムスカベンジャー(3−メルカプトプロピル基で修飾されたシリカゲル)で処理した。これを5%塩酸水溶液で振とう器を用いて洗浄し、ついでイオン交換水で洗浄液の伝導度がイオン交換水の値と同等になるまで水洗を繰り返したのち、メタノール中に滴下して下式で表わされるπ共役ポリマーNo.4:0.30gを得た。
【0038】
【化14】

元素分析値(計算値)は、C:84.11%(85.01%)、H:7.21%(7.40%)、N:3.22%(3.54%)。
赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)を図5に示したが、2211cm−1に炭素―炭素三重結合にもとづく伸縮振動が観察された。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量は、数平均分子量:6454、重量平均分子量:15819であった。
【0039】
(実施例5)
前記(式3)で示されるプソイド−p−ジエチニル[2,2]−パラシクロファン0.513g(2.0mmol)、および下記(式6)で示される2,5−ジヨード−3−ヘキシルチオフェン0.841g(2.0mmol)
【0040】
【化15】

をトルエン15mlに採り、60℃で加熱溶解した後50℃まで冷却し、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム22mg(0.02mmol)、ヨウ化銅8mg(0.04mmol)およびトリエチルアミン1.9mlを加え窒素気流下で60℃で4時間加熱攪拌した。その後フェニルアセチレン数滴を加え60℃で1時間、さらにヨードベンゼン数滴を加え60℃で1時間加熱攪拌した。
室温まで放冷したのちトルエンで希釈し、セライトでろ過したのち、5%塩酸水溶液で洗浄後水洗した。これを濃縮し、ショートカラム処理(シリカゲル)したのち、イオン交換水で洗浄液の伝導度がイオン交換水の値と同等になるまで水洗を繰り返したのち、エタノール中に滴下して下式で表わされるπ共役ポリマーNo.5:0.52gを得た。
【0041】
【化16】

元素分析値(計算値)は、C:84.94%(85.66%)、H:6.33%(6.72%)、S:7.32%(7.62%)。
赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)を図6に示したが、2193cm−1に炭素―炭素三重結合にもとづく伸縮振動が観察された。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量は、数平均分子量:11185、重量平均分子量:101577であった。
【0042】
(実施例6)
前記(式3)で示されるプソイド−p−ジエチニル[2,2]−パラシクロファン0.513g(2.0mmol)、および下記(式7)で示される2,7−ジヨード−9,9−ジオクチルフルオレン1.285g(2.0mmol)を、
【0043】
【化17】

トルエン15mlに採り、60℃で加熱溶解した後50℃まで冷却し、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム22mg(0.02mmol)、ヨウ化銅8mg(0.04mmol)およびトリエチルアミン1.9mlを加え窒素気流下で60℃で4時間加熱攪拌した。その後フェニルアセチレン数滴を加え60℃で1時間、さらにヨードベンゼン数滴を加え60℃で1時間加熱攪拌した。
室温まで放冷したのちトルエンで希釈し、セライトでろ過したのち、5%塩酸水溶液で洗浄後水洗した。これをトルエンに溶解しパラジウムスカベンジャー(3−メルカプトプロピル基で修飾されたシリカゲル)で処理したのち濃縮し、ショートカラム処理(シリカゲル)した。つづいてイオン交換水で洗浄液の伝導度がイオン交換水の値と同等になるまで水洗を繰り返したのち、エタノール中に滴下して下式で表わされるπ共役ポリマーNo.6:0.84gを得た。
【0044】
【化18】

元素分析値(計算値)は、C:90.64%(91.52%)、H:8.54%(8.48%)。
赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)を図7に示したが、2199cm−1に炭素―炭素三重結合にもとづく伸縮振動が観察された。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量は、数平均分子量:17777、重量平均分子量:53488であった。
【0045】
(実施例7)
前記(式3)で示されるプソイド−p−ジエチニル[2,2]−パラシクロファン0.513g(2.0mmol)、および下記(式8)で示される2,5−ジヘキシル−1,4−ジヨードベンゼン0.996g(2.0mmol)を
【0046】
【化19】

トルエン15mlに採り、60℃で加熱溶解した後50℃まで冷却し、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム22mg(0.02mmol)、ヨウ化銅8mg(0.04mmol)およびトリエチルアミン1.9mlを加え窒素気流下で60℃で3時間加熱攪拌した。その後フェニルアセチレン数滴を加え60℃で1時間、さらにヨードベンゼン数滴を加え60℃で1時間加熱攪拌した。
室温まで放冷したのちトルエンで希釈し、セライトでろ過したのち、5%塩酸水溶液で洗浄後水洗したのち、エタノール中に滴下して得られたポリマーをろ取した。これをトルエンに溶解し、ショートカラム処理(シリカゲル)したのち、イオン交換水で洗浄液の伝導度がイオン交換水の値と同等になるまで水洗を繰り返したのち、エタノール中に滴下して下式で表わされるπ共役ポリマーNo.7:0.67gを得た。
【0047】
【化20】

元素分析値(計算値)は、C:91.02%(91.50%)、H:8.41%(8.50%)。
赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)を図8に示したが、2199cm−1に炭素―炭素三重結合にもとづく伸縮振動が観察された。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算分子量は、数平均分子量:9076、重量平均分子量:27005であった。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】実施例1で得られた本発明のポリマーの赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)図である。
【図2】実施例2で得られた本発明のポリマーの赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)図である。
【図3】実施例3で得られた本発明のポリマーの赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)図である。
【図4】実施例4で得られた本発明のポリマーの赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)図である。
【図5】実施例5で得られた本発明のポリマーの赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)図である。
【図6】実施例6で得られた本発明のポリマーの赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)図である。
【図7】実施例7で得られた本発明のポリマーの赤外吸収スペクトル(NaClキャスト膜)図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表わされる構成単位を含有することを特徴とするπ共役ポリマー。
【化1】

(式中Arは置換を有しても良い芳香族炭化水素基もしくは複素環基の二価基を、Arは置換基を有してもよい芳香族炭化水素基、複素環基の二価基もしくは単結合を表わし、mは0または1の整数を表わす。)
【請求項2】
前記一般式(I)におけるArが、単結合である下記一般式(II)で表わされることを特徴とする請求項1に記載のπ共役ポリマー。
【化2】

(式中Arは置換を有しても良い芳香族炭化水素基もしくは複素環基の二価基を表わす。)
【請求項3】
前記一般式(I)におけるArまたはArが、置換または無置換のトリアリールアミン、置換または無置換のチオフェン、置換または無置換のフルオレンもしくはプソイド[2,2]−パラシクロファンの二価基、もしくは置換または無置換のフェニレン基であることを特徴とする請求項1に記載のπ共役ポリマー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−238866(P2007−238866A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66201(P2006−66201)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】