説明

しわの発生が少ない高度に曲線の付けられたスチフナの製造方法及び製造装置

【課題】曲線を有する繊維補強複合部材を製造方法において、レイアップ工程中に、しわが発生することを実質的に低減又は解消でき、且つプライの切り分け及び継ぎ合わせの必要としない、硬度に曲線の付けられた繊維補強複合部材を製造するための方法及び装置を提供する。
【解決手段】所望の面外湾曲及び対応するマンドレル面内形状変化を有するマンドレルを用いて、プライを面外湾曲に適合させること、すなわち、各プライの繊維を公称直線配向から面外湾曲により決定される変形配向へと全般的に変形せしめることを含む。レイアップの締め固めは、各プライを締め固めて、プライのしわを実質的に除去し、且つ変形された繊維配向をプライに設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、複合構造体の製造工程に関し、より特定すると、しわの発生が少ない、高度に曲線の付けられた繊維補強複合スチフナ(補剛材の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スチフナなどの複合積層体を形成するために一方向補強プリプレグのプライをレイアップ(積層)する工程の間、時に1つまたは複数のプライにしわが発生することがある。しわは、硬化された積層体に空隙又は切れ目を生じさせうるので望ましくない。しわは、限定するものではないが、レイアップ工程中にプライが変形されること、及び/又は未硬化樹脂の粘着性によって生じる一方向補強繊維間の比較的強い摩擦が原因で発生しうる。しわの発生は、高度に曲線の付けられたツール表面上に一方向プリプレグプライのスタック(積み重ね)が形成される場合、特に問題となりうる。
【0003】
従来、曲線の付けられた領域にしわができるのを防ぐために、プリプレグプライは複数の区分に切り分けられていた。その後、前記複数の区分は、所望の湾曲を達成するために、継ぎ合わされて、曲線の付けられた形成ツール上に個々に載置されていた。しかし、このようなプライの切り分け及び継ぎ合わせは、硬化された部分の特性に望ましくない影響を及ぼしうる。こういった特性が低下する可能性を補償するために、時に追加的なプライ又はダブラーが必要とされることがあるが、これはスチフナの厚さ及び重量の増加につながりうる。上述した切り分け及び継ぎ合わせ技術はまた、時間が掛かり且つ労働集約的であり、材料を浪費することになり、硬化された部分に望ましくない前負荷をもたらしうる。また、IML(内側モールドライン)にプライを追加する必要がある場合、IMLの輪郭曲線が急激にならないように、それらのプライは特定の割合で徐々に追加しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、レイアップ工程中にプライにしわが発生することを実質的に低減又は解消でき且つプライの切り分け及び継ぎ合わせの必要としない、スチフナなどの、高度に曲線の付けられた繊維補強複合材部分を製造するための方法及び装置が必要となっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
開示した実施形態によると、補強繊維がスチフナの湾曲領域全体に亘って連続し、且つプライのしわの発生が実質的に低減されるか又は解消された、ストリンガなどの、高度に曲線の付けられた繊維補強複合スチフナを製造するための方法及び装置が提供される。プライのしわの発生は、スチフナの材料特性に適応するようにレイアップマンドレルの形状を仕立てることによって回避される。材料特性への適応は、スチフナ部分の形状に応じてマンドレルの一部を選択的に広げたり狭めたりすることによってなされる。マンドレルにおけるこれらの形状変化によって、スチフナ部分の厚さを変更する必要なく、マンドレルの輪郭曲線が調整される。また、開示した方法によって、プライの追加が必要とされうる領域で許容可能な輪郭曲線を増やすことが可能となり、プライの割合を増加することができ、これは輪郭曲線に対する過去の制約によって生じていた寄生重量を低減しうる。
【0006】
マンドレルの仕立てられた形状により、連続的且つ実質的にしわを発生することなく高度に曲線の付けられた領域に繊維、特にゼロ度繊維を横渡しすることができる。より高剛性のプライ、つまり複合材のゼロ度プライは切り分け及び継ぎ合わせの必要がなく、むしろスチフナの湾曲の全長に亘って連続的に延びるので、硬化されたスチフナの構造特性は低下されない。レイアップの際にプライを改変(切り分け及び継ぎ合わせ)する必要がないので、開示した製造方法を用いてより高い生産速度が実現されうる。また、より変化に富んだスチフナの輪郭曲線が適応され、それにより、より複雑且つ重量効率の良いスチフナの設計が実現可能となる。
【0007】
開示した一実施形態によると、面外湾曲を有する、実質的にしわのない繊維補強複合スチフナの製造方法が提供される。前記方法は、所望の面外湾曲及び対応する面内湾曲を有するツールを提供することと、ツール上にレイアップを形成することと、レイアップを締め固めすることとを含む。レイアップの形成は、複数の繊維補強プライをツール上にレイアップすることと、プライをツールの面外湾曲及び対応する面内湾曲に適合させることとを含む。プライを面外湾曲に適合させることは、各プライの繊維を公称直線配向から面外湾曲により決定される変形配向へと全般的に変形せしめることを含む。レイアップの締め固めは、各プライを締め固めてプライのしわを実質的に除去し且つ前記変形された繊維配向をプライに設定することを含む。
【0008】
開示した別の実施形態によると、帽子型の断面及びその長さに沿って面外湾曲を有する、実質的にしわのない繊維補強複合スチフナの製造方法が提供される。前記方法は、繊維補強複合プライを形成ツール上にレイアップすることによってレイアップを組み立てることと、形成ツールを用いてレイアップに面外湾曲を形成することとを含む。前記方法はさらに、前記ツールを用いて対応する面内湾曲をレイアップに形成することを含む。一実施形態で、帽子型ストリンガはキャップ、側面及び底部フランジを含み、及び面外湾曲はストリンガのフランジに形成される。対応する面内湾曲はストリンガの側面に形成される。
【0009】
別の実施形態によると、面外湾曲を有する、実質的にしわのない繊維補強複合スチフナをレイアップするためのマンドレルの作成方法が提供される。前記方法は、マンドレル本体に少なくとも1つの面外湾曲を形成することと、マンドレル本体上にレイアップされた複合プライに対する面外湾曲の影響を補うように面外に実質的に対応する面内湾曲をマンドレルに形成することとを含む。少なくとも1つの面外湾曲はマンドレル本体上の第1ツール面に形成され、面内湾曲は第1ツール面に隣接した第2ツール面に形成される。
【0010】
さらなる実施形態によると、その長さに沿って面外曲り区分を有する、実質的にしわのない繊維補強複合スチフナを形成するための装置が提供される。前記装置は、繊維補強複合プライが形成されうるマンドレルを備える。マンドレルは、スチフナの面外曲り区分と実質的に一致する区分を含む第1ツール面と、第1ツール面の面外曲り区分に実質的に対応する面内曲り区分を有する区分を含む第2ツール面とを有する。第1及び第2ツール面は互いに横断して延び且つ互いに隣接する。
【0011】
さらに別の実施形態によると、面外湾曲を有する、実質的にしわのない繊維補強複合ストリンガを製造するための装置が提供される。前記装置は、面外湾曲及びマンドレルにそれに対応する面内形状変化を有するストリンガマンドレルを備える。
【0012】
本発明は、面外湾曲を有する、実質的にしわのない繊維補強複合スチフナの製造方法であって、
所望の面外湾曲及び対応する面内湾曲を有するツールを提供するステップと、
プライをツールの面外湾曲及び対応する面内湾曲に適合させることを含めて、複数の繊維補強複合プライをツール上にレイアップすることによって、ツール上にレイアップを形成するステップと、
レイアップを締め固めするステップと
を含む前記方法に関する。
【0013】
本発明はまた、各プライの補強繊維が実質的に一方向の繊維配向を有する、前記方法に関する。
【0014】
本発明はまた、プライを面外湾曲に適合させることが、各プライの繊維を公称直線配向から面外湾曲により決定される変形配向へと全般的に変形せしめることを含む、前記方法に関する。
【0015】
本発明はまた、プライをツールの面内湾曲に適合させることが、各プライの繊維を公称直線配向から面外湾曲により決定される変形配向へと全般的に変形せしめることを含む、前記方法に関する。
【0016】
本発明はまた、レイアップの締め固めが、各プライを締め固めてプライのしわを実質的に除去し且つ前記変形された繊維配向をプライに設定することを含む、前記方法に関する。
【0017】
本発明はまた、少なくとも特定のプライの繊維が、スチフナの全長に亘って実質的に連続的に延びる、前記方法に関する。
【0018】
本発明はまた、上述した方法によって製造される繊維補強複合スチフナに関する。
【0019】
本発明はまた、帽子型の断面及びその長さに沿って面外湾曲を有する、実質的にしわのない繊維補強複合スチフナの製造方法であって、
繊維補強複合プライを形成ツール上にレイアップすることによってレイアップを組み立てるステップと、
形成ツールを用いてレイアップに面外湾曲を形成するステップと、
前記ツールを用いて対応する面内形状変化をレイアップに形成するステップと、
を含む、前記方法に関する。
【0020】
本発明はまた、帽子型ストリンガがキャップ、側面及び底部フランジを含み、及び面外湾曲がストリンガのフランジに形成される、前記方法に関する。
【0021】
本発明はまた、対応する面内形状変化がストリンガの側面に形成される、前記方法に関する。
【0022】
本発明はまた、面外湾曲及び対応する面内形状変化をレイアップに形成するステップが、各プライの繊維を、公称直線配向から面外湾曲及び対応する面内形状変化により決定される変形配向へと全般的に変形せしめることを含む、前記方法に関する。
【0023】
本発明はまた、上述した方法によって製造されるストリンガに関する。
【0024】
本発明は、面外湾曲を有する、実質的にしわのない繊維補強複合スチフナをレイアップするためのマンドレルの作成方法であって、
マンドレル本体に少なくとも1つの面外湾曲を形成するステップと、
マンドレル本体上にレイアップされた複合プライに対する面外湾曲の影響を補うように面外に実質的に対応する面内湾曲をマンドレルに形成するステップと、
を含む、前記作成方法。
【0025】
本発明はまた、
少なくとも1つの面外湾曲がマンドレル本体上の第1ツール面に形成され、
面内湾曲が第1ツール面に隣接した第2ツール面に形成される、
前記方法に関する。
【0026】
本発明はまた、その長さに沿って面外曲り区分を有する、実質的にしわのない繊維補強複合スチフナを形成するための装置であって、
繊維補強複合プライが形成されうるマンドレルを備え、
前記マンドレルは、スチフナの面外曲り区分と実質的に一致する区分を含む第1ツール面を有し、
前記マンドレルは、第1ツール面の面外曲り区分に実質的に対応する面内曲り区分を有する区分を含む第2ツール面を有する、
前記装置に関する。
【0027】
本発明はまた、第1及び第2ツール面が互いに横断して延びる、前記装置に関する。
【0028】
本発明はまた、第1及び第2ツール面が互いに隣接する、前記装置に関する。
【0029】
本発明はまた、
プライを第1及び第2ツール面に対して締め固めするツールであって、前記ツールは第1ツール面の面外曲り区分と実質的に一致する曲面と、第2ツール面の面内形状変化を有する区分と実質的に一致する曲面とを有する、前記ツール
をさらに備える、前記装置に関する。
【0030】
本発明はまた、
面外湾曲を有する、実質的にしわのない繊維補強複合ストリンガと、
面外湾曲及びマンドレルにそれに対応する面内形状変化を有するストリンガマンドレルと、
を製造するための装置に関する。
【0031】
本発明はまた、ストリンガの断面が帽子型であって、マンドレルが、
ストリンガのキャップを形成するための上面と、
ストリンガの対向する両側をそれぞれ形成するための側面と、
反対方向に延びるストリンガのフランジを形成するための一対の底面と、
を含む、前記装置に関する。
【0032】
本発明はまた、
上面及び各側面が面外湾曲を有する区分を含み、
各側面が対応する面内形状変化を有する区分を含む、
前記装置に関する。
【0033】
本発明はまた、
マンドレルが上部、側部及び基部を含み、
面外湾曲がマンドレルの基部に画定され、
対応する面内形状変化がマンドレルの側部の拡幅として画定される、
前記装置に関する。
【0034】
本発明はまた、ストリンガマンドレルが、I、J、Z、L、C、及び帽子からなる群から選択されるストリンガ断面を形成するためのツール面を含む、前記装置に関する。
【0035】
本発明はまた、帽子型の断面及びその長さに沿って面外湾曲を有する、実質的にしわのない繊維補強複合ストリンガの製造方法であって、
一対のツール底面、一対のツール側面、及びツール上面を有するマンドレルツールを提供するステップであって、ツール底面が面外湾曲を有し、且つ各ツール側面及びツール上面が対応する形状変化を有する、前記ステップと、
プライを、ツール底面の面外湾曲とツール側面及びツール上面における対応する形状変化とに適合させることを含めて、一方向繊維補強複合プライをマンドレル上にドレープすることによって、レイアップを組み立てるステップと、
各プライの繊維を、公称直線配向から、ツール底面の面外湾曲とツール側面及びツール上面における対応する形状変化とによってそれぞれ決定される第1及び第2変形配向へと全般的に変形させることを含めて、マンドレルに対してレイアップを締め固めするステップと、
締め固めされたレイアップを硬化するステップと、
を含む、前記方法に関する。
【0036】
本発明はまた、その長さに沿って面外曲り区分を有する、実質的にしわのない繊維補強複合ストリンガを形成するための装置であって、
繊維補強複合プライが形成されうるマンドレルと、
スチフナの面外曲り区分と実質的に一致する区分を含む第1ツール面を有するマンドレルと、
第1ツール面に隣接し且つ前記面を横断して延びる第2ツール面を有するマンドレルであって、第2ツール面は、第1ツール面の面外曲り区分に実質的に対応する面内形状変化を有する区分を含む、前記マンドレルと、
プライを第1及び第2ツール面に対して締め固めするための一対の締め固めツールであって、それぞれが、第1ツール面の面外曲り区分と実質的に一致する曲面と、第2ツール面の面内形状変化を有する区分と実質的に一致する曲面とを含む、前記ツールと、
を備える、前記装置。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】航空機胴体の断面の斜視図である。
【図2】図1の胴体に使用されたストリンガの長手方向断面図であり、前記ストリンガは胴体スキンの湾曲に適合する面外湾曲を有する。
【図3】図2の線3−3に沿った断面図である。
【図4】図2及び図3に示されたストリンガの平面図である。
【図5】上にストリンガレイアップが形成されているマンドレルの斜視図である。
【図6】図5に示されたマンドレルの等角図である。
【図7】単一のプライの一部の斜視図であり、上にレイアップはされているが、図6に示されたマンドレルの形状にはまだ適合されていない繊維の位置を示す。
【図8】図7と同様の図であるが、締め固めに続いてマンドレルの形状に適合されたプライ繊維を示す。
【図9】開示された方法及び装置を用いて形成されうるスチフナの形態の例を示す斜視図である。
【図10】図5に示されたレイアップを締め固めするツールセットの斜視図である。
【図11】マンドレル及び図10に示された締め固めツールの1つの斜視図である。
【図12】面外湾曲を有するスチフナを形成する1つの方法のフロー図である。
【図13】面外湾曲を有するスチフナを形成する別の方法のフロー図である。
【図14】航空機製造及び実用稼動(サービス)手順のフロー図である。
【図15】航空機のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1−4を参照して、開示する実施形態は、複合輪郭曲線を有するスチフナ20を含む、長さに沿った1又は複数の区分40に沿って面外湾曲36を有する一方向繊維補強複合積層体スチフナ20を製造するための方法及び装置に関する。図1は、間隔の開いた樽型フレーム22に取り付けられた外側スキン24、及び長手方向に延びる円周方向に間隔の開いたスチフナ20を有する航空機胴体26を示し、スチフナはストリンガ20と呼ばれることもある。ストリンガ20はスキン24に取り付けられ、前記スキンを補剛する働きをする。後述されるように、スキン24は、ストリンガ20が適合する必要のある1又は複数の起伏又は湾曲34(図2及び3)を有しうる。
【0039】
特に図2、図3及び図4を参照すると、図示された例で、スキン24の補剛に用いられるストリンガ20は断面が帽子型であるが、後に詳述されるように他の断面形状も可能である。ストリンガ20は、スキン24の内側表面35と実質的に適合し且つ任意の適切な手段によって前記表面に固定される、横方向に延びるフランジ32に、側壁30によって接続される概ね平坦なキャップ28を備える。図示した実施形態で、側壁30はキャップ28及びフランジ32に実質的に垂直に延びるが、他の実施形態で、側壁30はキャップ28及び/又はフランジ32に対して傾斜していてよい。フランジ32は、ストリンガ20の区分40に沿って延びる面外湾曲36を含み、これは、フランジ32が湾曲区分40でスキン24と実質的に適合するように、スキン24の湾曲34と実質的に一致する。本明細書で使用される「面外湾曲」は、実質的にフランジ32のプライの面内にないか又はフランジ32のプライの面と平行に延びる面内にある湾曲を言う。
【0040】
プライレイアップ及び形成工程の間、フランジ32の面外湾曲36により、フランジ32のプライは区分40に沿って側壁30のプライに引張力を与える。通常この引張力により、側壁30のプライは、形成工程の間か又は硬化の前に、特にストリンガが曲線の付けられたツール(図示せず)上にプライの平坦なスタックを形成することによって製造される場合、1つにはプリプレグプライ間の摩擦によってプライを互いに対して移動させ且つツールの輪郭曲線に適合させることがより困難となる理由でプライにしわを生じさせる形成ツール(図示せず)から離れることになる傾向がある。
【0041】
プライのこういった材料特性に対応し且つプライのしわ発生(図2及び図3には図示せず)を解消するために、プライは、面外湾曲36に対応する面内形状変化を有するストリンガ20が得られるようにレイアップ及び形成される。図示した実施形態で、これらの面内形状変化は、面外湾曲36に隣接して、区分40内で側壁30の外方湾曲41を有する。側壁30の外方湾曲41は、面外湾曲36の曲率半径「R」(図2)と実質的に一致する曲率半径「R」(図4)を有し、よって本質的に側壁湾曲41はフランジ湾曲36の鏡像である。その結果、側壁30は、実質的なしわの発生なく、ストリンガ20の区分40を滑らかに延びる。
【0042】
面内側壁湾曲41の結果、キャップ28には半径「R」の下方湾曲38が与えられ、よってキャップ28の高さ「H」及び区分40に沿った曲線の付けられた拡幅「W」が減少する。キャップ28のこの曲線付けは、側壁30の面内変化を反映する。
【0043】
図5は、上に多重プライのプリプレグ積層体レイアップ44が、図2−4に示されたストリンガ20の製造工程の一部として形成されうるツールマンドレル42を示す。一方向繊維補強プライ45が、それらをマンドレル42上にドレープすることによってレイアップされ、レイアップ44が形成される。1つの実施形態では、プリプレグプライの順序付けされた平坦なスタック(図示せず)が、スタックのプライの数、順序、及び繊維配向を特定しうる所定のプライスケジュール(図示せず)にしたがってレイアップされる。平坦なプライスタックは次いで、図6の矢印60によって示される方向に、ツールマンドレル42上にドレープされ、マンドレル42の輪郭曲線に適合される。
【0044】
ツールマンドレル42は、硬化されたストリンガ20のフランジ32の面外湾曲36に長さ「L」及び半径「R」で対応する面外湾曲46を有するツール底面48を含む。図5はまた、側壁30の面内外方湾曲41を含むストリンガレイアップ44の対応する面内形状変化を示す。実際には、マンドレル42の内側モールドライン(IML)の輪郭曲線は、それがストリンガ20のキャップ28及び側壁30に反映されるように、+/−90度回転される(図2から図5)。
【0045】
次に図6を参照して、マンドレル40は、それぞれストリンガ20のキャップ28、側壁30及びフランジ32(図3)のIMLを成すツール上面58、ツール側面56及びツール底面48を有するマンドレル本体55を備える。ツール底面48のそれぞれは、図5と関連して前述したとおりの半径「R」及び長さ「L」の湾曲46を有する。マンドレル42はまた、面外湾曲46の長さ「L」に沿った面外湾曲46に対応する面内形状変化を有する。前記面内形状変化は、ツール底面48の面外湾曲の半径「R」及び長さ「L」と実質的に一致するツール側面56の外方湾曲49を含む。ツール上面58は、ツール底面48の面外湾曲の半径「R」及び長さ「L」と実質的に一致する下方曲り区分47を含む。ツール側面56の湾曲49によって、長さ「L」に沿ってツール上面の幅54が増加し、並びに符号51で示される高さが減少する。
【0046】
面外湾曲46によって生じるプライ材料への影響を補うために必要なマンドレル42の面内形状変化は、面外湾曲46の位置、形状及び寸法によって決定される。図示された実施形態では、面外湾曲46は半径「R」を有し、マンドレル42の長さ「L」に沿って延び、その結果、マンドレルのツール側面56を覆うプライ材料上の「引張」を補うように形成された、半径「R」及び長さ「L」をまた有するマンドレル形状の面内変化が必要となる。前記プライ材料上の引張は、形成工程中にプライ材料が隣接するツール底面48で湾曲46へと引き下げられることによって生じる。ツール側面56は、面外湾曲46へと引き下げられた結果材料が引張られる方向に曲げられる、つまりツール面56は、面外湾曲46によってツール底面48上に発生されるプライ材料の「引張」によって生じるプライ材料の外方変位と概ね一致するように図示した実施形態で外側に曲げられる。面外湾曲によって生じるプライ材料への影響を補うために必要な面内形状変化量はまた、一部には、形成ツールの2つの隣接する面、例えばマンドレル42上の隣接するツール面48及び56の間の角度θに依存しうる。
【0047】
次に図7及び図8を参照して、図7は、図5に示されたマンドレル42上にドレープされた後だがマンドレル42の特徴に適合するように締め固めされる前の、ゼロ度繊維配向を持つ一方向繊維66を有したプライ45の2つの部分67,69を示す。ゼロ度繊維66は、マンドレル42に押し付けられる前は互いに対して実質的に平行に延びる。この時点で、プライ45の一方の部分67はツール側面56の1つを覆い、もう一方の部分69はツール底面48の1つを覆う。図8を参照して、締め固めの間、繊維66は、ツール底面48の面外湾曲46(図6)に適合するように変形され、その結果、繊維66の区分70は52で示される下方湾曲の形を取り、これは図6に示したマンドレル42の面外湾曲46と実質的に一致する。同様に、プライ部分67の繊維66は、図6に示したマンドレル42のツール側面49の湾曲と実質的に一致する外方湾曲41の形を取るように締め固め中に変形される。締め固め工程の間、繊維66は、図7に示された公称直線配向から図8に示された変形された配向52,41へと全般的に変形し、これらの変形された配向はそれぞれ、図6のマンドレル42のツール底面48の面外湾曲と、マンドレル42のツール側面56での対応する形状変化49とによって決定される。
【0048】
上述の帽子型ストリンガ20は、開示した方法及び装置を用いて形成されうる様々なスチフナ構造の単なる例示である。例えば、図9に示されるように、開示した方法及び装置を用いて、傾斜した側壁54を有する変形した帽子形状20a、「I」形状20b、「C」形状20c、「Z」形状20d、「L」形状20e及び「J」形状20fに対応する断面を有するストリンガとして又は他の目的で使用されうる実質的にしわのないスチフナの少なくとも一部を製造することができる。
【0049】
図10及び図11は、ストリンガレイアップ44の形成及び締め固めに用いられるツール74の更なる詳細を示す。一対の締め固めツール76,78を用いて、レイアップ44をマンドレル42に対して締め固めする。締め固めは、例えば且つ限定するものではなく、従来の真空バッグを用いて及び/又はオートクレーブ処理によって行われうる。図11に最もよく見られるように、締め固めツール78のそれぞれは、フランジ80、側壁82、底部84を含み、これらはそれぞれストリンガレイアップ44のキャップ28、側壁30及びフランジ32(図3)を締め固め且つそれらの圧力を加える。フランジ80及び底部84はそれぞれ、ツール上面58及びマンドレル42のツール底面48の湾曲46にそれぞれ対応する面外湾曲46aを含む。同様に、締め固めツール78の側部82は、マンドレル42のツール側面56のものと実質的に一致する曲り区分47aを含む。
【0050】
次に、先述したストリンガ20といった、実質的にしわのない繊維強化複合スチフナの製造方法のステップを示した図12に注目する。ステップ86から始まり、所望の面外湾曲46及び対応する面内形状変化47を有するツール42が提供される。続いてステップ88で、所望のプライスケジュール(図示せず)に対応する繊維配向を有した一方向繊維強化プリプレグの連続したプライ45(図5)をレイアップすることによってツール42上にレイアップ44が形成される。或いは、レイアップ44は、順序付けされたプライ45の平坦なスタック(図示せず)として予め形成されうる。プライ45のそれぞれ、又はプライスタックは、マンドレル42上にプライ45(又はスタック)を図5に示した方向60にドレープすることによって敷設される。ステップ90で、各プライ45又はプライスタックは、面外湾曲46と、マンドレル42の面内形状変化47を表す対応する面内湾曲49とを含むマンドレル42のツール面に適合される。ステップ92で、レイアップ44は締め固めされ、これは締め固めツール76,78(図10及び図11)の使用及び真空バッグ処理を含みうる。最後に、ステップ94で、レイアップ44が硬化される。
【0051】
図13は、面外湾曲46を有するストリンガの製造方法の別の実施形態を示す。96から始まり、レイアップ44(図5)は、一方向繊維プリプレグのプライ45をマンドレル42などの適切な形成ツール上に連続的にレイアップすることによって、或いは、プライ45を順序付けされた平坦なプライのスタックとしてレイアップすることによって、組み立てられる。次に98で、ツール42を用いてレイアップ44の面外湾曲を形成し、そして100で、ツール42を用いてレイアップ44の対応する面内湾曲及び形状変化41を形成する。レイアップは、ステップ102で締め固めされ、ステップ104で硬化される。
【0052】
次に図14及び図15を参照して、開示した実施形態は、図14で示されたような航空機製造及び実用稼動(サービス)方法106、及び図15に示されたような航空機108との関連で用いられうる。製造前段階で、例示的な方法106は、航空機108の仕様及び設計110、及び資材調達112を含みうる。製造中、航空機108の部品及びサブアセンブリの製造114、及びシステム統合116が行われる。開示された方法及び装置を用いて、ステップ114で用いられたサブアセンブリに統合される高度に曲線の付けられたスチフナが製造されうる。その後、航空機108は、実用稼動120するために認証及び搬送118を経る。顧客による実用稼動中、航空機108は、日常保守及びアフターサービス122(改良、再構成、改修等も含みうる)が予定されうる。
【0053】
方法106の各工程は、システムインテグレータ、第三者、及び/又はオペレータ(例えば顧客)によって実行又は遂行されうる。本明細書において、システムインテグレータとは、限定するものではないが任意の数の航空機製造業者及び主要システム下請け業者を含んでよく、第三者とは、限定するものではないが任意の数のベンダー、下請け業者及びサプライヤーを含んでよく、そしてオペレータとは、航空会社、リース会社、軍事体、サービス組織等であってよい。
【0054】
図15に示されたように、例示的方法106によって製造された航空機108は、複数のシステム126を有した機体124及び内部128を含みうる。高レベルのシステム126の例には、1つ又は複数の推進システム130、電気システム(系統)132、油圧システム(系統)134、及び環境システム136が含まれる。任意の数の他のシステムも含まれうる。開示された方法及び装置によって製造されたスチフナ及び他の複合部品は、機体124か又は内部124で用いられうる。航空機の例が示されているが、本発明の原理は、自動車産業といった他の産業に適用可能である。
【0055】
本明細書で具体化された装置は、製造及び実用稼動方法106のいずれか1つ又は複数の段階中に使用されうる。例えば、製造工程114に対応する部品又はサブアセンブリは、航空機108が実用稼働中に製造される部品又はサブアセンブリと同様の方法で製作又は製造されうる。また、1つ又は複数の装置実施形態は、製造段階114及び116で、例えば実質的に航空機108の組み立てを促進するか又はコストを低減することに利用されうる。同様に、1つ又は複数の装置実施形態は、航空機108の実用稼働中に、例えば且つ限定するものではなく、保守及びアフターサービス122で利用されうる。
【0056】
本開示の実施形態は特定の例示的実施形態について説明したが、特定の実施形態は例示を目的としたものであり、限定するものではなく、当業者は他の変形も考えうることを理解されたい。
【符号の説明】
【0057】
20 スチフナ、ストリンガ
22 樽型フレーム
24 スキン
26 航空機胴体
28 キャップ
30 側壁
32 フランジ
34 スキン24の湾曲、起伏
35 スキン24の内側表面
36 フランジ32の面外湾曲
38 キャップ28の下方湾曲
40 長さに沿った部分
41 側壁30の外方湾曲、レイアップ44の対応する面内湾曲・形状変化
42 ツールマンドレル
44 積層体レイアップ、ストリンガレイアップ
45 一方向繊維補強プライ
46 ツール底面48の面外湾曲
47 面内形状変化
48 ツール底面
49 ツール側面56の外方湾曲
51 高さ
54 ツール上面の幅
55 マンドレル本体
56 ツール側面
58 ツール上面
67 プライ45の一部分
69 プライ45の一部分
74 ツール
76 締め固めツール
78 締め固めツール
80 フランジ
82 側壁
84 底部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面外湾曲を有する、実質的にしわのない繊維補強複合スチフナの製造方法であって、
所望の面外湾曲及び対応する面内湾曲を有するツールを提供するステップと、
複数の繊維補強複合プライをツール上にレイアップすることによって、ツール上にレイアップを形成するステップであって、プライをツールの面外湾曲及び対応する面内湾曲に適合させることを含むステップと、
レイアップを締め固めするステップと
を含む方法。
【請求項2】
各プライの補強繊維が実質的に一方向の繊維配向を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
プライを面外湾曲に適合させることが、各プライの繊維を、公称直線配向から、ツールの面外湾曲により決定される変形配向へと全般的に変形せしめることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
プライをツールの面内湾曲に適合させることが、各プライの繊維を公称直線配向からツールの面内湾曲により決定される変形配向へと全般的に変形せしめることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
レイアップの締め固めが、各プライを締め固めてプライのしわを実質的に除去し且つ前記変形された繊維配向をプライに設定することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも特定のプライの繊維が、スチフナの全長に亘って実質的に連続的に延びる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
面外湾曲を有する、実質的にしわのない繊維補強複合ストリンガを製造するための装置であって、
ストリンガマンドレルが、面外湾曲及びそれに対応するマンドレル形状の面内変化を有している、装置。
【請求項8】
ストリンガの断面が帽子型であって、マンドレルが、
ストリンガのキャップを形成するための上面と、
ストリンガの対向する両側をそれぞれ形成するための側面と、
反対方向に延びるストリンガのフランジを形成するための一対の底面と
を含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
上面及び各底面が面外湾曲を有する区分を含み、
各側面が対応する面内形状変化を有する区分を含む、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
マンドレルが上部、側部及び基部を含み、
面外湾曲がマンドレルの基部に画定され、且つ
対応する面内形状変化がマンドレルの側部の拡幅として画定される、
請求項7に記載の装置。
【請求項11】
ストリンガマンドレルが、I、J、Z、L、C、及び帽子からなる群から選択されるストリンガ断面を形成するためのツール面を含む、
請求項7に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−71600(P2012−71600A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−206287(P2011−206287)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】