説明

ずれ測定方法、ずれ補正装置、およびずれ補正プログラム

【課題】用紙の表裏面に出力される画像のずれを精度良く簡単に測定することができるずれ測定方法、用紙の表裏面に出力される画像のずれを精度良く補正することができるずれ補正装置、およびずれ補正プログラムを提供する。
【解決手段】両面印刷の際の両面でのずれを測定するずれ測定方法において、画像出力装置によって、用紙の両面のうちの第1面とその裏面の第2面とのそれぞれに、既知の曲率を有する基準曲線と、その基準曲線上の位置を読むための目盛りとを有するチャートを出力するチャート出力過程と、第1面および第2面に出力された各基準曲線のうち、湾曲の内側に存在する方の基準曲線に対する接線が他方の基準曲線に交わる交点の位置を目盛りによって読む交点位置読取過程と、読み取られた位置に基づいて、第1面および第2面に出力された基準曲線相互の、接線に垂直な方向の距離を算出する曲線距離算出過程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙の両面それぞれに出力される画像のずれを測定するずれ測定方法、用紙の両面それぞれに出力される予定の画像のずれを補正するずれ補正装置、および、コンピュータをそのようなずれ補正装置として動作させるためのずれ補正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印刷の分野においては、用紙の両面に画像を出力する両面印刷が広く行われている。両面印刷用の画像出力装置としては、用紙の両面に同時に画像を出力する両面同時型のものや、用紙の表面に画像を出力した後に、用紙の裏面に画像を出力する片面逐一型のものなどが知られている。また、冊子や名刺などのように複数枚の印刷物を作成する際には、オペレータが一枚の大きな用紙上に複数の画像が配置されたレイアウトを編集し、そのようなレイアウトに従って画像が出力された用紙を仕上がりサイズに合わせて断裁することが行われている。
【0003】
ここで、縁取りが施された両面印刷の名刺などを作成する際に、表面と裏面とで画像がずれていると、片面上の画像に合わせて用紙を断裁したときに、もう片面上では縁が欠けてしまうなどという不具合が生じる恐れがある。通常は、表面と裏面の画像の位置がぴったりと合うようにレイアウトが編集されるが、実際に画像が出力される位置は、画像出力装置の癖などによって、レイアウト上の位置から微妙にずれてしまうことがある。このような不具合を未然に防ぐため、画像出力装置の癖等の特性を考慮して、レイアウト上では画像を本来の書き出し位置からあえてずらして配置しておくことによって、実際に画像が出力されるときのオフセット(書き出し位置のずれ)を補正するオフセット調整が知られている。
【0004】
近年では、印刷の分野においても、用紙上にトナー像を定着させる電子写真方式の画像出力装置が広く用いられてきており、この電子写真方式を採用した画像出力装置においては、画像を用紙上に形成する際に、用紙に熱や圧力が印加されるために用紙が変形してしまうことがある。特に、上述した片面逐一型の画像出力装置で両面出力が行われる際には、表面の画像が出力された後、用紙が変形をきたした状態で裏面の画像が出力される。このため、用紙の表裏面に同じ大きさの画像を出力する場合であっても、結果として、表裏面それぞれに出力された画像の大きさが相互に異なってしまい、上述したオフセット調整だけでは、それらの画像のずれを防ぐことができないという問題がある。
【0005】
表裏面それぞれに出力される画像の大きさを合わせる方法として、用紙の表面と裏面に同じ大きさの枠などをそれぞれ出力し、それらの枠の寸法を測定することによって寸法ずれ量を算出しておき、実際に所望の画像を出力する際には、その寸法ずれ量に基づいて大きさが補正された画像を出力する方法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【特許文献1】特開2004−54802号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、寸法ずれ量を算出するための測定に手間がかかり、このため補正作業全体が面倒なものになる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑み、用紙の表裏面に出力される画像のずれを精度良く簡単に測定することができるずれ測定方法、用紙の表裏面に出力される画像のずれを精度良く補正することができるずれ補正装置、およびずれ補正プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明のずれ測定方法は、
用紙の両面のうちの第1面には第1の画像を出力し、該第1面の裏面の第2面には第2の画像を出力することによって該用紙の両面に画像を出力する画像出力装置によって出力される該第1の画像と該第2の画像とのずれを測定するずれ測定方法において、
上記画像出力装置によって、上記第1面と上記第2面とのそれぞれに、既知の曲率を有する基準曲線と、該基準曲線上の位置を読むための目盛りとを有するチャートを出力するチャート出力過程と、
上記チャート出力過程で上記第1面および上記第2面に出力された各基準曲線のうち、湾曲の内側に存在する方の基準曲線に対する接線が他方の基準曲線に交わる交点の位置を上記目盛りによって読む交点位置読取過程と、
上記交点位置読取過程で読み取られた位置に基づいて、上記第1面および上記第2面に出力された基準曲線相互の、上記接線に垂直な方向の距離を算出する曲線距離算出過程とを有することを特徴とする。
【0009】
ここで、第1面に出力された「既知の曲率を有する基準曲線」と第2面に出力された「既知の曲率を有する基準曲線」とは、曲率が既知である限り、同一の曲線であってもよいし、あるいは異なる曲線であってもよい。
【0010】
上述した片面逐一型の画像出力装置を用いる場合、用紙の第1面に画像が出力されるときに印加される熱や圧力、画像を形成する際に用いられたトナーなどの影響によって用紙が変形し、用紙が変形した状態で第2面に画像が出力されることによって、用紙の両面それぞれに出力される画像の位置や、画像の大きさが相対的にずれてしまう恐れがある。
【0011】
本発明のずれ測定方法によると、こうしたずれを測定するのに定規などの測定器具を用いる必要がなく手間がかからないため、用紙の表裏面に出力される画像のずれを、簡単に測定することができる。また、基準曲線と接線との交点を目盛りで読むので、わずかなズレが目盛り上で拡大された状態となり、精度良く測定することができる。
【0012】
また、本発明のずれ測定方法において、「上記チャートが、上記用紙上の複数箇所それぞれに対応する位置に上記基準曲線を有するものであり、上記交点位置読取過程が、上記複数箇所それぞれで上記交点の位置を読む過程であり、上記曲線距離算出過程が、上記複数箇所それぞれにおける距離を算出する過程であり、上記曲線ずれ算出過程で算出された距離に基づいて、上記第1の画像と上記第2の画像との寸法ずれを算出する寸法ずれ算出過程を有する」という形態は好ましい形態である。
【0013】
このような形態により、用紙の両面に画像を出力した際の大きさの相対的なずれを精度良く簡単に測定することができる。
【0014】
また、本発明のずれ測定方法において、「上記チャートが、上記用紙上の複数箇所それぞれに対応する位置に上記基準曲線を有するものであり、
上記交点位置読取過程が、上記複数箇所それぞれで上記交点の位置を読む過程であり、
上記曲線距離算出過程が、上記複数箇所それぞれにおける距離を算出する過程であり、
上記曲線距離算出過程で算出された距離に基づいて、上記第1の画像と上記第2の画像との位置ずれを算出する位置ずれ算出過程を有する」という形態も好ましい形態である。
【0015】
このような形態により、用紙の両面に画像を出力した際の位置の相対的なずれを精度良く簡単に測定することができる。
【0016】
また、本発明のずれ測定方法において、「上記チャートが、上記基準曲線として、上記用紙の縁に平行な部分が存在する基準曲線を有するものであり、上記交点位置読取過程が、上記用紙の縁に平行な接線について上記交点の位置を読む過程である」という形態も好ましい形態である。
【0017】
このような形態により、上記用紙の縦方向や横方向についてのずれを測定することができる。
【0018】
また、本発明のずれ測定方法において、「上記接線の位置で上記用紙を切断する切断過程を有し、上記交点位置読取過程が、上記切断過程で切断されてなる用紙の縁と上記基準曲線との交点の位置を上記目盛りによって読む過程である」という形態も好ましい形態である。
【0019】
接線の位置で用紙を切断することにより、用紙の一方の面における基準曲線の接線を、用紙の他方の面から容易に認識することができ、ずれを測定することができる。
【0020】
また、本発明のずれ測定方法において、「上記チャートが、上記基準曲線として中心を共有する複数の円弧を有し、上記目盛りとして該中心から延びた放射線状の角度目盛りを有するものである」という形態は好ましい形態である。
【0021】
「接線に垂直な方向の距離」が微小で読み取るのが困難な場合は、上記の交点の位置を角度で読み取り、読み取った角度から換算して接線に垂直な方向の距離を求めることで、直接接線に垂直な方向の距離を読み取るよりもずれの測定が容易に行える。
【0022】
また、上記目的を達成する本発明のずれ補正装置は、
用紙の両面のうちの第1面には第1の画像を出力し、該第1面の裏面の第2面には第2の画像を出力することによって該用紙の両面に画像を出力する画像出力装置によって出力される該第1の画像と該第2の画像とのずれを補正するずれ補正装置において、
上記画像出力装置によって、上記第1面と上記第2面とのそれぞれに、既知の曲率を有する基準曲線と、該基準曲線上の位置を読むための目盛りとを有するチャートを出力するチャート出力部と、
上記第1面および上記第2面に出力された各基準曲線のうち、湾曲の内側に存在する方の基準曲線に対する接線が他方の基準曲線に交わる交点の位置が上記目盛りによって読まれてなる読取値から、該読取値に基づいて最終的に導き出される、上記第1の画像と上記第2の画像とのずれを表すずれ値に至るまでのいずれかの段階の値を取得する値取得部と、
上記値取得部で取得された値に基づいたずれ補正を上記第2の画像に施し、そのずれ補正が施された第2の画像を上記画像出力装置に出力させるずれ補正部とを備えたことを特徴とする。
【0023】
本発明のずれ補正装置によると、用紙の表裏面それぞれに出力される予定の画像のずれが精度良く補正される。また、位置ずれ量がずれ補正量に換算されることによって、オペレータが手動でずれの補正量を算出する手間が省かれる。
【0024】
また、本発明のずれ補正装置において、「上記チャートが、上記基準曲線として中心を共有する複数の円弧を有し、上記目盛りとして該中心から延びた放射線状の角度目盛りを有するものであり、上記読取値が、上記円弧に対する接線が上記他方の円弧に交わる交点の位置が上記角度目盛りによって読まれてなる値であり、上記値取得部が、該読取値そのものを取得する」という形態は好ましい形態である。
【0025】
このような形態により、オペレータは、角度目盛りを読み取って入力するだけで、用紙の表裏面における画像のずれの補正を容易に行うことができる。
【0026】
また、本発明のずれ補正プログラムは、コンピュータシステム内で実行され、コンピュータシステムに、
用紙の両面のうちの第1面には第1の画像を出力し、該第1面の裏面の第2面には第2の画像を出力することによって、用紙の両面に画像を出力する画像出力装置によって出力される第1の画像と第2の画像とのずれを補正させるずれ補正プログラムにおいて、
コンピュータシステム上に、
上記画像出力装置によって、上記第1面と上記第2面とのそれぞれに、既知の曲率を有する基準曲線と、該基準曲線上の位置を読むための目盛りとを有するチャートを出力するチャート出力部と、
上記第1面および上記第2面に出力された各基準曲線のうち、湾曲の内側に存在する方の基準曲線に対する接線が他方の基準曲線に交わる交点の位置が上記目盛りによって読まれてなる読取部から、該読取値に基づいて最終的に導き出される、上記第1の画像と上記第2の画像とのずれを表すずれ値に至るまでのいずれかの段階の値を取得する値取得部と、
上記値取得部で取得された値に基づいたずれ補正を上記第2の画像に施し、そのずれ補正が施された第2の画像を上記画像出力装置に出力させるずれ補正部とを構成することを特徴とする。
【0027】
尚、本発明にいうずれ補正装置やずれ補正プログラムについては、ここではその基本形態のみを示すのにとどめるが、これは単に重複を避けるためであり、本発明にいうずれ補正装置やずれ補正プログラムには、上記の基本形態のみではなく、前述したずれ測定方法の各形態に対応する各種の形態が含まれる。
【0028】
また、上記本発明のずれ補正装置と、上記ずれ補正プログラムとでは、それらを構成する構成要素名として、チャート出力部といった互いに同一の名称を付しているが、ずれ補正プログラムの場合は、そのような作用をなすソフトウェアを指し、ずれ補正装置の場合は、ハードウェアを含んだものを指している。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、用紙の表裏面に出力される画像のずれを精度良く簡単に測定することができるずれ測定方法、用紙の表裏面に出力される画像のずれを精度良く補正することができるずれ補正装置、およびずれ補正プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0031】
図1は、本発明の一実施形態が適用された画像出力システムの全体構成図である。
【0032】
ここには、編集用ワークステーション101,102,103と、画像処理装置200と、プリンタ300とが示されている。
【0033】
編集用ワークステーション101,102,103では、編集用ソフトウェアが用いられ、画像を構成するオブジェクト(絵柄、テキスト、および線画)のレイアウトを決める編集作業が行われる。その結果、PS(Post Script:登録商標)データやPDF(Portable Document Format)データなどといったページデータが生成され、生成されたページデータが画像処理装置200に出力される。
【0034】
画像処理装置200は、本発明のずれ補正装置の一実施形態として動作する。画像処理装置200では、編集用ワークステーション101,102,103から送られてきたページデータに、ページデータが表わす画像の大きさや色を補正するための画像補正処理が施される。また、このページデータは、このままではプリンタ300で出力することができないため、画像処理装置200では、ページデータがプリンタ300に適した画像出力用のラスタデータに変換され、ラスタデータがプリンタ300に送られる。
【0035】
プリンタ300は、画像処理装置200から送られてきたラスタデータが表わす画像を指定された用紙の両面あるいは片面に出力する。ここで、本実施形態では、プリンタ300は、用紙に熱や圧力を印加しながら、トナーを使って画像を形成する電子写真方式が採用されたプリンタであり、さらに、用紙の表面に画像を出力した後に、裏面に画像を出力する片面逐一型のプリンタである。したがって、仮に画像処理装置200における画像補正処理を介さずに、用紙の両面それぞれに画像を出力しようとすると、表面に画像が出力されるときに、使用されるトナーによって用紙が反ってしまったり、熱や圧力によって用紙が変形してしまい、その状態で裏面に画像が出力されるため、表面と裏面の画像の大きさや書き出し位置がずれてしまうという不具合が生じる。このような不具合を未然に防ぐため、本実施形態では、画像処理装置200において、表面に出力される表用画像に合わせて、裏用画像の大きさと書き出し位置を補正する処理が行われる。
【0036】
ここで、図1に示す画像出力システムにおける本発明の一実施形態としての特徴は、画像処理装置200で実行される処理内容にある。まずは、画像処理装置200の内部構造について説明する。
【0037】
図2は、図1に示す画像処理装置200のハードウェア構成図である。
【0038】
この画像処理装置200の内部には、図2に示すように、各種プログラムを実行するCPU211、ハードディスク装置213に格納されたプログラムが読み出されCPU211での実行のために展開される主メモリ212、各種プログラムやデータ等が保存されたハードディスク装置213、表示画面上に画像を表示する画像表示装置214、編集用ワークステーション101,102,103(図1参照)と接続されてページデータを受け取る入力インタフェース215、キー操作に応じた各種の情報を入力するキーボード216、表示画面上の任意の位置を指定することにより、その位置に表示されたアイコン等に応じた指示を入力するマウス217、フレキシブルディスク(以下、FDと称する)400が装填されその装填されたFD400にアクセスするFDドライブ218、CD−ROM410が装填され、その装填されたCD−ROM410にアクセスするCD−ROMドライブ219、プリンタ300にラスタデータを送る出力インタフェース220が内蔵されており、これらの各種要素は、バス221を介して相互に接続されている。
【0039】
ここで、CD−ROM410には、本発明のずれ補正プログラムの一実施形態が適用された、図1に示す画像処理装置200を本発明のずれ補正装置の一実施形態として動作させるための画像補正プログラムが記憶されている。そのCD−ROM410はCD−ROMドライブ219に装填され、そのCD−ROM410に記憶された画像補正プログラムがこの画像処理装置200にアップロードされてハードディスク装置213に記憶される。そして、この画像補正プログラムが起動されて実行されることにより、画像処理装置200は、本発明のずれ補正装置の一実施形態として動作する。
【0040】
次に、この画像処理装置200内で実行される画像補正プログラムについて説明する。
【0041】
図3は、本発明のずれ測定プログラムの一実施形態である画像補正プログラムが記憶されたCD−ROM410を示す概念図である。
【0042】
画像補正プログラム500は、データ入力部510、補正量算出部570、測定値取得部560、画像補正部540、およびラスタライズ部550で構成されている。画像補正プログラム500の各部の詳細については、本発明のずれ補正装置の一実施形態として動作する画像処理装置200の各部の作用と一緒に説明する。
【0043】
図4は、この画像補正プログラム500を図1に示す画像処理装置200にインストールし、画像処理装置200を本発明のずれ補正装置の一実施形態として動作させるときの画像処理装置200の機能ブロック図である。
【0044】
図4に示す画像処理装置200は、データ入力部610、ラスタライズ部640、画像補正部650、補正量算出部680、および測定値取得部670を備えている。図4に示す画像補正プログラム500を図1に示す画像処理装置200にインストールすると、画像補正プログラム500のデータ入力部510は図4のデータ入力部610を構成し、以下同様に、補正量算出部570は補正量算出部680を構成し、、測定値取得部560は測定値取得部670を構成し、画像補正部540は画像補正部650を構成し、およびラスタライズ部550はラスタライズ部640を構成する。
【0045】
データ入力部610には、図1に示す編集用ワークステーション101,102,103で生成された、例えばPSデータ(登録商標)などといったページデータが入力される。図1に示すプリンタ300は、片面逐一型の両面プリンタであり、両面プリントが行われる場合には、用紙の表面に出力される表面画像を表わす表用データに加えて、用紙の裏面に出力される裏面画像を表わす裏用データも入力される。以下では、プリンタ300を使って両面プリントを行う場合について説明する。
【0046】
ここで、本実施形態の画像処理装置200では、実際に所望の画像をプリント出力する前に、両面プリントにおける表面画像と裏面画像との書き出し位置のずれや寸法のずれを補正するために「試しプリント」が実行される。オペレータが図2に示すマウス217やキーボード216を使って「試しプリント」の実行を指示すると、「試しプリント」モードが設定されて、「試しプリント」用のページデータがデータ入力部610からラスタライズ部640に送られる。このラスタライズ部640でプリンタ300に合った形式のラスタデータに変換された後、ラスタデータがプリンタ300に送られ、「試しプリント」の両面画像700がプリンタ300から両面出力される。
【0047】
オペレータは、「試しプリント」の両面画像700の出力結果を用いて、その両面画像700において、表面画像と裏面画像との書き出し位置のずれ量と寸法ずれ量を算出する上で必要な数種類のパラメータを測定し、予め用意されている設定画面にマウス217等を使ってその測定値を入力する。オペレータによって入力された各種パラメータの測定値は測定値取得部670で取得され、さらに補正量算出部680が、取得された測定値に基づいて後述する所定の手順に従って、表面画像と裏面画像との書き出し位置のずれ、および寸法ずれを補正するための補正量の算出を行う。
【0048】
「試しプリント」が終了し、オペレータが、今度は本番の出力対象となる画像の両面出力を指示すると、「通常プリント」モードが設定され、その画像を表すページデータがデータ入力部610から画像補正部650に送られ、この画像補正部650で「試しプリント」の結果に基づき両面プリントにおける表面画像と裏面画像との書き出し位置のずれ、および寸法ずれの補正が行われた後、補正後のページデータがラスタライズ部640でラスタデータに変換されてプリンタ300から「通常プリント」の両面画像730が両面出力される。
【0049】
画像処理装置200は、基本的には以上のように構成されている。
【0050】
図5は、用紙の両面に出力される画像の寸法ずれと書き出しの位置ずれを補正する際の、画像処理装置200が行う一連の作業手順を示すフローチャートである。
【0051】
以下では、このフローチャートを使って、本発明のずれ測定方法の一実施形態を適用して、用紙の両面に出力される予定の画像のずれの測定や補正を行ってから、用紙の両面に画像を出力するまでの一連の処理について説明する。
【0052】
まず、図3に示す画像補正プログラム500によって提供されるパラメータ設定画面に従い、オペレータにより「試しプリント」の両面画像700を出力するための各種パラーメータが設定される(図5のステップS1)。
【0053】
図6は、図1に示す画像処理装置200の表示画面に表示されたパラメータ設定画面を示す図である。
【0054】
図6のパート(A)に示す設定画面800には、画像の出力枚数を設定するためのコピー部数設定部810、片面/両面印刷などのような出力形式を設定するための印刷パターン設定部820、表面および裏面それぞれのページの向きを設定するためのページ方向設定部830、複数のページからなる一連の画像データが送られてきたときに、プリント出力するページ範囲を設定するための印刷範囲設定部840、用紙のサイズを設定するための用紙設定部850、画像の形成に用いられるトナーの色を設定するための印刷色版設定部860、後述する印刷モード設定部870が備えられており、さらに、設定内容を確定するOKボタン881と、設定内容を中止するキャンセルボタン882とが備えられている。印刷モード設定部870には、さらに、ページデータ(PSデータやPDFデータ)に含まれる、画像や線画オブジェクトのうち用紙上に出力するオブジェクトを指定する印刷対象設定部871と、裏面寸法/位置補正ボタン872とが備えられている。
【0055】
オペレータにより、裏面寸法/位置補正ボタン872がマウス217等で選択されると、図6のパート(B)に示すようなポップアップ画面873が表示される。ポップアップ画面873では、裏面に印刷が行われる際に、表面に対する寸法ずれや位置ずれの補正量
を算出するために必要な測定値の入力が行われる。後述するように、この測定値は、角度と円の指定とで表される。
【0056】
「試しプリント」の両面画像700の出力の際には、図6のパート(A)に示す、「コピー部数設定部810」では、コピー部数は1枚に設定され、「印刷パターン設定部820」で両面印刷を行う第5の選択番号の設定が行われ、それ以外の、「表裏ページ方向設定部830」、「印刷範囲設定部840」、「用紙選択設定部850」、「印刷色版設定部860」「印刷モード設定部870」の各欄内の選択肢については、図に示す初期状態(デフォルト)の状態に設定される。この初期状態(デフォルト)の状態では、「印刷モード設定部870」の、裏面寸法/位置補正ボタン872が選択されて現れるポップアップ画面873では、図6のパート(B)に示すように、「主走査方向の上流側測定値入力部874a」、「主走査方向の下流側測定値入力部874b」、「副走査方向の上流側測定値入力部874a」、「副走査方向の下流側測定値入力部874b」のどの測定値入力部でも、「角度」の値として「0.00」が入力されており、円の指定する4つの欄ではどの欄にもチェック(指定)が入っていない状態となっている。このような、「角度」が「0.00」であって円の指定する4つの欄ではどの欄にもチェック(指定)が入っていない状態とは、表用画像に対する裏用画像の寸法ずれと書き出しの位置ずれを補正せずにそのまま出力することに対応する。
【0057】
「試しプリント」の両面画像700の出力の際には、以上のように選択が行われて、図6のパート(A)に示すOKボタン881が押されて、これらの選択が確定する。
【0058】
このとき、図4に示す画像処理装置200の内部では、ポップアップ画面873で入力されている値が測定値取得部660で取得される。-
続いて、予め用意された「試しプリント指示ボタン」(図示しない)を用いて、図4に示す「試しプリント」の両面画像700の出力の指示が行われて、プリンタ300から「試しプリント」の両面画像700が両面出力される(図5のステップS2)。
このステップS2の過程が本発明のずれ測定方法におけるチャ−ト出力過程の一例に相当する。「試しプリント」で出力される画像は、所定の基準位置を中心として半径の異なる4つの同心円で表された動径方向目盛りと、上記基準位置を中心とする角度目盛りとが描かれたチャートであり、このチャートが、用紙の表面および裏面それぞれに出力される。
【0059】
図7は、「試しプリント」の両面画像700の表面を示す図である。
【0060】
図に示すように、表面710には、原点Oを中心とした半径の異なる4つの同心円11,12,13,14と、原点Oを中心とした0.5°刻みの角度目盛りとが描かれたチャートが出力される。このプリンタ300では、その機能上、表面710の全域にわたって画像を出力することができず、表面710上に実際に印刷されるのは、図の4本の一点鎖線S1〜S4で囲まれた印字可能領域に限られる。図では、4つの同心円11,12,13,14を明示するため、この印字可能領域外の各円についても点線で表されている。ここで、これら半径の異なる4つの同心円11,12,13,14の半径の比のデータはあらかじめ図4に示す補正量算出部680に記憶されている。このような4つの同心円で表された動径方向目盛りと0.5°刻みの角度目盛りが、用紙上の位置を表すための2次元極座標系を構成することとなる。また、この用紙の表面710に向かって右から左の向きが副走査方向(用紙がプリンタ300に送られる方向)であり、上から下の向きが主走査方向である。
【0061】
4つの同心円のうち、第1の同心円11は、それぞれ印字可能領域の境界となっている副走査方向に延びた2本の一点鎖線S1,S2と、それぞれ接点P1,P2でほぼ接しており、また、第3の同心円13は、それぞれ印字可能領域の境界となっている主走査方向に延びた2本の一点鎖線S3,S4と、それぞれ接点P3,P4でほぼ接している。オペレータは、「試しプリント」の両面画像700を、副走査方向に延びた、接点P1,P2でのそれぞれの接線(ほぼ2本の一点鎖線S1,S2)に沿ってこの「試しプリント」の両面画像700を裁断し、さらに裁断後の「試しプリント」の両面画像700を、今度は主走査方向に延びた、接点P3,P4でのそれぞれの接線(ほぼ2本の一点鎖線S3,S4)に沿ってこの裁断する。出力された際に裏面と表面とで印字可能領域の位置のずれがあっても、裁断後の用紙の裏面と表面の両方がそれぞれ印字可能領域内に収まっているように、第1の同心円11は、2本の一点鎖線S1,S2ではさまれた領域よりわずかに内側に印刷され、また第3の同心円13は、2本の一点鎖線S3,S4ではさまれた領域よりわずかに内側に印刷されている。
【0062】
以上の裁断の結果、第1の同心円11の半径、第3の同心円11の半径をそれぞれ半径R1,R3としたとき、副走査方向の幅が第1の同心円11の直径「2×R3」であって、主走査方向の幅が第3の同心円11の直径「2×R1」となっている長方形部分が、「試しプリント」の両面画像700から切り出されたことになる。
【0063】
図8は、図7において「試しプリント」の両面画像700から切り出された長方形部分を裏側から見た図である。
【0064】
「試しプリント」の両面画像700の裏面にも、図7と同じチャートがプリント出力されている。本来ならば、図7に示す表面710のチャートの原点Oと、図8の裏面720のチャートの原点O’はぴったり一致し、また、表面710の4つの同心円11,12,13,14の各半径と、裏面720の4つの同心円21,22,23,24のの各半径は、ぴったり一致するはずである。しかし、表面710をプリント出力するときに印加される熱や圧力、表面710にプリント出力が行われた際に使用されたトナーによる用紙の反りの影響、あるいはプリンタ300の癖などにより、裏面720にプリント出力が行われる際に、表面710のチャートの原点Oの位置や同心円の半径の寸法に対して裏面720のチャートの原点O’の位置や同心円の半径の寸法がずれてしまうことがある。このため、図8に示すように、裏面の第1の同心円21が図で上側(主走査方向上流側)に移動して長方形の上側の辺からはみ出したり、裏面の第3の同心円23が図で左側(副走査方向下流側)に移動して、長方形の左側の辺からはみ出すという状態が起こり得る。また、図に示すように、主走査方向と副走査方向とでは、寸法のずれ(すなわち表面710に対する倍率)が異なり、円からわずかにずれて楕円になってしまうこともある。そこで、表面710のチャートと、裏面720のチャートとの位置のずれや寸法のずれを算出し、その結果を、オペレータの所望する本番の画像を出力する際のずれの補正量に反映させることが必要になる。以下、このずれの算出を行う上で必要なデータを与える測定について説明する。この測定は、裏面のチャート上において行われる。
【0065】
図8に示すように、裏面の第1の同心円21は、長方形の上側(主走査方向上流側)の辺と交わり、同様に、裏面720の第2の同心円22は、長方形の下側(主走査方向下流側)の辺と交わり、裏面720の第3の同心円23は、長方形の左側(副走査方向下流側)の辺と交わり、裏面720の第4の同心円24は、長方形の右側(副走査方向上流側)の辺と交わっている。これら各同心円が各辺と交わることによって、各同心円の一部の円弧が切り取られることとなる。以下では、長方形の上側(主走査方向上流側)の辺と交わる裏面720の第1の同心円21を例として、説明する。
【0066】
図9は、「試しプリント」の両面画像700から切り出された長方形部分の4つの辺のうち、主走査方向上流側の辺と、裏面720の第1の同心円とが交わる交点付近を表した図である。
【0067】
図に示すように、裏面720の第1の同心円21は、図8の長方形部分の4つの辺のうち主走査方向上流側の辺と第1の交点A1,第2の交点A2で交わっている。このことは、図7ではこの長方形部分の主走査方向上流側の辺と接点P1で接していた同心円11が図で上側に移動し、この結果、表面710上の接点P1に対応する裏面720上の点は、この長方形部分の外にはみ出して図9に示す裏面720上の点P1’に移動したことを表している。ここで、オペレータは、チャート上の角度目盛りを用いて、裏面720上の原点O’から線分A12上に下ろした垂線O’A3と、裏面720上の原点O’と第1の交点A1とを結ぶ線分O’A1とがなす角度を測定する。チャート上の角度目盛りが0.5°刻みであるので、図9では、この角度は、図に示すように「2.5°」であることがわかる。この角度は、裏面720の第1の同心円21の円弧A12を原点O’から見込む角度(いわゆる欠損角)の半分となっている。オペレータは、以上説明したのと同様の欠損角(の半分)の測定を、図7に示す長方形部分の他の3つの辺についても、各辺で切り取られる同心円の円弧B12,C12,D12に対して行い、測定された欠損角の半分の値を、図6のパート(B)に示すポップアップ画面873上で、対応する同心円のチェックとともに入力する(図5のステップS3)。このステップS3の過程が本発明のずれ測定方法の交点位置読取過程の一例に相当する。この入力によって、図4に示す測定値取得部670が、両面印刷の際の寸法のずれや位置のずれの補正量算出に必要となるデータを取得することになる。次に、取得された欠損角(の半分)のデータを用いて行われる、寸法のずれや位置のずれの補正量の算出について説明する。この算出は、図4に示す補正量算出部680によって行われる。
【0068】
まず、寸法のずれについて説明する。
【0069】
図9で取得された欠損角(の半分)のデータ(図9では、2.5°)から、裏面720上の原点O’から線分A12上に下ろした垂線O’A3の長さは、裏面720の第1の同心円21の半径R1’を用いて、
線分O’A3=R1’×cos(裏面720の第1の同心円21の欠損角/2)
として求めることができる。図9では、上式の「裏面720の第1の同心円21の欠損角/2」は、2.5°である。
【0070】
以上説明したのと同様の測定を、図8の裏面720の第2の同心円22および、長方形の下側(主走査方向下流側)の辺に対して行うことにより、裏面720上の原点O’から、2つの交点B1,B2を結ぶ線分B12上に下ろした垂線O’B3の長さは、裏面720の第1の同心円21の半径R2’を用いて
線分O’B3=R2’×cos(裏面720の第2の同心円22の欠損角/2)
と表される。
【0071】
線分O’A3と線分O’B3の和である線分A33は、図8の長方形部分の主走査方向の長さとなっており、この長さは、図7の表面710の第1の同心円11の直径「2×R1」と同じである。従って、
2×R1=R1’×cos(裏面720の第1の同心円21の欠損角/2)
+R2’×cos(裏面720の第2の同心円22の欠損角/2)・・・(1)
という式が成立する。ここで、裏面720の第1の同心円21の半径R1’と裏面720の第2の同心円22の半径R2’との比は、表面710の第1の同心円11の半径R1と裏面720の第2の同心円12の半径R2との比K12と同一であると近似することができる。この表面710の第1の同心円11の半径R1と裏面720の第2の同心円12の半径R2との比K12は、あらかじめ把握されているため、この比K12を用いて、上式(1)から、
2×R1=R1’×cos(裏面720の第1の同心円21の欠損角/2)
+R1’×K12×cos(裏面720の第2の同心円22の欠損角/2)
という関係式が得られ、さらにこの式から、表面710と、裏面720との主走査方向の倍率比、すなわち寸法比Tm
m=R1’/R1=2/{cos(裏面720の第1の同心円21の欠損角/2)
+K12×cos(裏面720の第2の同心円22の欠損角/2)} ・・・(2)
として決定される。このような寸法比Tmを算出する過程が、本発明のずれ測定方法における寸法ずれ算出過程の一例に相当する。そして、この寸法比Tmから、表面710に寸法(倍率)を合わせるために裏面720に出力するときに補正すべき主走査方向の寸法ずれ補正量が、主走査方向の寸法比Tmの逆数1/Tmとして算出されることとなる。
【0072】
同様の寸法比の計算を、図8の裏面720の2つの同心円23,24の円弧D12,C12に対して測定された欠損角(の半分)の値、表面710の第3の同心円13の半径R3と裏面720の第4の同心円14の半径R4との比K34を用いて、今度は図8の副走査方向について行う。この結果、表面710の第3の同心円13の半径R3と、裏面720の第3の同心円23の半径R3’との比で与えられる副走査方向の寸法比Tsが、
s=R3’/R3=2/{cos(裏面720の第3の同心円23の欠損角/2)
+K34×cos(裏面720の第4の同心円24の欠損角/2)} ・・・(3)
として決定される。そして、この寸法比Tsから、表面710に寸法(倍率)を合わせるために裏面720に出力するときに補正すべき副走査方向の寸法ずれ補正量が、副走査方向の寸法比Tsの逆数1/Tsとして算出されることとなる。
【0073】
主走査方向の寸法比Tmと副走査方向の寸法比Tsが異なる場合は、裏面720の同心円が完全には円(真円)ではなく、楕円となっていることを意味する。従って、上述のような欠損角の角度測定や、図8の裏面720の4つの「同心円」が完全な円(真円)であるという前提に基づく計算は、厳密には正しくないが、完全な円(真円)からのずれは極めて小さいため、ここでは、図8の裏面720の4つの「同心円」が完全な円(真円)であるという前提に基づき、欠損角等から寸法比を計算することで十分な精度の近似値が得られる。
【0074】
次に、位置のずれについて説明する。このプリンタ300では、寸法のずれや位置のずれを補正して出力する際に、図7に示す印字可能領域を表す長方形の右上の頂点(一点鎖線S1,S3の交点)が印刷を行う上での原点となる。従って、主走査方向についてのずれに対しては、この長方形の主走査方向上流側の辺を基準線としてこの基準線からの距離に応じた補正が施され、同様に副走査方向についてのずれに対しては、副走査方向上流側の辺を基準線としてこの基準線からの距離に応じた補正が施されることとなる。
【0075】
以下,主走査方向についての位置のずれを例として説明する。
【0076】
図7に示す、「試しプリント」の両面画像700から切り出された長方形部分の4つの辺のうち、表面710において、主走査方向上流側の辺から距離xの位置にある点に対し、裏面720に出力が行われた際に、裏面720上で主走査方向上流側の辺から距離x’の位置に出力されたとする。表面710と裏面720との間の寸法ずれの効果と位置ずれ(平行移動)の効果のため、2つの点x’,xの間には、
x’=Tm×x+x0 ・・・・・・・・・・(5)
という関係が成立する。ここで、上式(5)中のTmは、前述の寸法ずれで計算した寸法比であり、上式(5)のx0は、位置ずれ(平行移動)の効果を表す位置ずれ量である。このx0を求めることで、位置ずれ(平行移動)を把握することができる。このような位置ずれを算出する過程が、本発明のずれ測定方法における位置ずれ算出過程の一例に相当する。この位置ずれ量x0は、表面710において基準線である主走査方向上流側の辺上に位置する点(すなわち(5)式でx=0)での変化量に対応し、この量は、図7に示す表面710の接点P1と、図8に示す裏面720の接点P1’との差として求められる。従って、この位置ずれ量x0は、図8において線分O’A3−線分O’P1’で与えられることとなる。この量は、前述の、図8の同心円21の円弧A12を原点O’から見込む欠損角(の半分)のデータを用いて、
0=Tm×R1×{cos(裏面720の第1の同心円21の欠損角/2)−1}
・・・(6)
と表される。ここで、図9では、上式(6)の「裏面720の第1の同心円21の欠損角/2」は、2.5°である。
この位置ずれ量x0の符号を反転させた−x0が、位置ずれの効果を打ち消すための位置ずれ補正量(いわゆるオフセット)となる。
【0077】
以上説明した算出方法により、図4の補正量算出部680において寸法ずれ補正量および位置ずれ補正量が算出され(図5のステップS4)、「試しプリント」の次に行われる、「通常プリント」によるプリント出力のために、これら寸法ずれ補正量および位置ずれ補正量が設定される(図5のステップS5)。
【0078】
以上で説明した、図5のステップS1からステップS5の作業に基づいて行われる一連の処理が、画像の寸法ずれ補正量と位置ずれ補正量を設定するための処理である。
【0079】
図4に示す、オペレータが実際に出力したい「通常プリント」の両面画像730のプリント出力の際には、これら設定された寸法ずれ補正量および位置ずれ補正量が反映された出力方式でプリント出力される(図5のステップS6)。
【0080】
このように、最初に出力されるために設定された位置や寸法からずれにくい表面の画像を基準として、裏面の画像の位置ずれや寸法ずれを補正することで、例えば、縁取りが施された両面印刷の名刺を作成する場合に、表面画像と裏面画像の大きさおよび書き出し位置がそれぞれぴったりと合った名刺を作成することができ、表面画像に合わせて用紙を断裁したときに、裏面画像の縁が欠けてしまうなどという不具合を抑えることができる。しかも、この方式では、オペレータは、チャート上の角度目盛りを読み取ってその値を画像処理装置200に入力するだけで位置ずれや寸法ずれの補正が行われるため、定規などの測定器具を用いてずれを測る必要性がなく、補正のための作業が簡便になる。
【0081】
以上の説明において、データ入力部610とラスタライズ部550を合わせたものが本発明のずれ補正装置のチャート出力部の一例に相当し、測定値取得部670が本発明のずれ補正装置の値取得部の一例に相当し、画像補正部650部が本発明のずれ補正装置の値取得部の一例に相当する。
【0082】
以上が、本実施形態の説明である。
【0083】
本実施形態では、「試しプリント」の両面画像700の出力の際に、図6のパート(A)に示す、「コピー部数設定部810」において、コピー部数は1枚に設定して出力された1枚の「試しプリント」の両面画像700を用いて位置ずれや寸法ずれの補正を行ったが、本発明は、コピー部数は2枚以上の枚数、例えば10枚に設定して、出力された10枚の「試しプリント」の両面画像700それぞれについて位置ずれ補正量および寸法ずれ補正量の算出を行い、それら10枚分についての位置ずれ補正量および寸法ずれ補正量
の平均をとることで、補正量の精度を上げる工夫を備えたものでもよい。
【0084】
また、本実施形態では、オペレータが裏面720上の同心円の欠損角(の半分)の測定値を画像処理装置200に入力して、画像処理装置200が入力された測定値から位置ずれ補正量および寸法ずれ補正量の算出を行い、所望の両面画像を出力する際にそれらの補正量を設定値として使用するものであるが、本発明は、オペレータが測定値から位置ずれ補正量および寸法ずれ補正量の算出を行って画像処理装置に入力し、画像処理装置の方は、所望の両面画像を出力する際にそれらの補正量を設定値として使用するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一実施形態が適用された画像出力システムの全体構成図である。
【図2】図1に示す画像処理装置200のハードウェア構成図である。
【図3】本発明のずれ測定プログラムの一実施形態である画像補正プログラムが記憶されたCD−ROM410を示す概念図である。
【図4】画像処理装置200の機能ブロック図である。
【図5】用紙の両面に出力される画像の寸法ずれと書き出しの位置ずれを補正する際の、画像処理装置200が行う一連の作業手順を示すフローチャートである。
【図6】図1に示す画像処理装置200の表示画面に表示されたパラメータ設定画面を示す図である。
【図7】「試しプリント」の両面画像700を示す図である。
【図8】図7において「試しプリント」の両面画像700から切り出された長方形部分を裏側から見た図である。
【図9】「試しプリント」の両面画像700から切り出された長方形部分の4つの辺のうち、主走査方向上流側の辺と、裏面720の第1の同心円とが交わる交点付近を表した図である。
【符号の説明】
【0086】
101,102,103 編集用ワークステーション
200 画像処理装置
211 CPU
212 主メモリ
213 ハードディスク装置
214 画像表示装置
215 入力インタフェース
216 キーボード
217 マウス
218 FDドライブ
219 CD−ROMドライブ
220 出力インタフェース
221 バス
300 プリンタ
400 フレキシブルディスク
410 CD−ROM
500 画像補正プログラム
510 データ入力部
540 画像補正部
550 ラスタライズ部
560 測定値取得部
570 補正量算出部
610 データ入力部
640 ラスタライズ部
650 画像補正部
670 測定値取得部
680 補正量算出部
700 「試しプリント」の両面画像
710 表面
720 裏面
730 「通常プリント」の両面画像
800 設定画面
810 コピー部数設定部
820 印刷パターン設定部
830 ページ方向設定部
840 印刷範囲設定部
850 印刷色版設定部
860 用紙設定部
870 印刷モード設定部
871 印刷対象設定部
872 裏面寸法/位置補正ボタン
873 ポップアップ画面
874a 主走査方向の上流側測定値入力部
874b 主走査方向の下流側測定値入力部
875a 副走査方向の上流側測定値入力部
875b 副走査方向の下流側測定値入力部
881 OKボタン
882 キャンセルボタン
11 表面の第1の同心円
12 表面の第2の同心円
13 表面の第3の同心円
14 表面の第4の同心円
21 裏面の第1の同心円
22 裏面の第2の同心円
23 裏面の第3の同心円
24 裏面の第4の同心円

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙の両面のうちの第1面には第1の画像を出力し、該第1面の裏面の第2面には第2の画像を出力することによって該用紙の両面に画像を出力する画像出力装置によって出力される該第1の画像と該第2の画像とのずれを測定するずれ測定方法において、
前記画像出力装置によって、前記第1面と前記第2面とのそれぞれに、既知の曲率を有する基準曲線と、該基準曲線上の位置を読むための目盛りとを有するチャートを出力するチャート出力過程と、
前記チャート出力過程で前記第1面および前記第2面に出力された各基準曲線のうち、湾曲の内側に存在する方の基準曲線に対する接線が他方の基準曲線に交わる交点の位置を前記目盛りによって読む交点位置読取過程と、
前記交点位置読取過程で読み取られた位置に基づいて、前記第1面および前記第2面に出力された基準曲線相互の、前記接線に垂直な方向の距離を算出する曲線距離算出過程とを有することを特徴とするずれ測定方法。
【請求項2】
前記チャートが、前記用紙上の複数箇所それぞれに対応する位置に前記基準曲線を有するものであり、
前記交点位置読取過程が、前記複数箇所それぞれで前記交点の位置を読む過程であり、
前記曲線距離算出過程が、前記複数箇所それぞれにおける距離を算出する過程であり、
前記曲線ずれ算出過程で算出された距離に基づいて、前記第1の画像と前記第2の画像との寸法ずれを算出する寸法ずれ算出過程を有することを特徴とする請求項1記載のずれ測定方法。
【請求項3】
前記チャートが、前記用紙上の複数箇所それぞれに対応する位置に前記基準曲線を有するものであり、
前記交点位置読取過程が、前記複数箇所それぞれで前記交点の位置を読む過程であり、
前記曲線距離算出過程が、前記複数箇所それぞれにおける距離を算出する過程であり、
前記曲線距離算出過程で算出された距離に基づいて、前記第1の画像と前記第2の画像との位置ずれを算出する位置ずれ算出過程を有することを特徴とする請求項1記載のずれ測定方法。
【請求項4】
前記チャートが、前記基準曲線として、前記用紙の縁に平行な部分が存在する基準曲線を有するものであり、
前記交点位置読取過程が、前記用紙の縁に平行な接線について前記交点の位置を読む過程であることを特徴とする請求項1記載のずれ測定方法。
【請求項5】
前記接線の位置で前記用紙を切断する切断過程を有し、
前記交点位置読取過程が、前記切断過程で切断されてなる用紙の縁と前記基準曲線との交点の位置を前記目盛りによって読む過程であることを特徴とする請求項1記載のずれ測定方法。
【請求項6】
前記チャートが、前記基準曲線として中心を共有する複数の円弧を有し、前記目盛りとして該中心から延びた放射線状の角度目盛りを有するものであることを特徴とする請求項1記載のずれ測定方法。
【請求項7】
用紙の両面のうちの第1面には第1の画像を出力し、該第1面の裏面の第2面には第2の画像を出力することによって該用紙の両面に画像を出力する画像出力装置によって出力される該第1の画像と該第2の画像とのずれを補正するずれ補正装置において、
前記画像出力装置によって、前記第1面と前記第2面とのそれぞれに、既知の曲率を有する基準曲線と、該基準曲線上の位置を読むための目盛りとを有するチャートを出力するチャート出力部と、
前記第1面および前記第2面に出力された各基準曲線のうち、湾曲の内側に存在する方の基準曲線に対する接線が他方の基準曲線に交わる交点の位置が前記目盛りによって読まれてなる読取値から、該読取値に基づいて最終的に導き出される、前記第1の画像と前記第2の画像とのずれを表すずれ値に至るまでのいずれかの段階の値を取得する値取得部と、
前記値取得部で取得された値に基づいたずれ補正を前記第2の画像に施し、そのずれ補正が施された第2の画像を前記画像出力装置に出力させるずれ補正部とを備えたことを特徴とするずれ補正装置。
【請求項8】
前記チャートが、前記基準曲線として中心を共有する複数の円弧を有し、前記目盛りとして該中心から延びた放射線状の角度目盛りを有するものであり、
前記読取値が、前記円弧に対する接線が前記他方の円弧に交わる交点の位置が前記角度目盛りによって読まれてなる値であり、
前記値取得部が、該読取値そのものを取得することを特徴とする請求項7記載のずれ補正装置。
【請求項9】
コンピュータシステム内で実行され、該コンピュータシステムに、
用紙の両面のうちの第1面には第1の画像を出力し、該第1面の裏面の第2面には第2の画像を出力することによって該用紙の両面に画像を出力する画像出力装置によって出力される該第1の画像と該第2の画像とのずれを補正させるずれ補正プログラムにおいて、
該コンピュータシステム上に、
前記画像出力装置によって、前記第1面と前記第2面とのそれぞれに、既知の曲率を有する基準曲線と、該基準曲線上の位置を読むための目盛りとを有するチャートを出力するチャート出力部と、
前記第1面および前記第2面に出力された各基準曲線のうち、湾曲の内側に存在する方の基準曲線に対する接線が他方の基準曲線に交わる交点の位置が前記目盛りによって読まれてなる読取部から、該読取値に基づいて最終的に導き出される、前記第1の画像と前記第2の画像とのずれを表すずれ値に至るまでのいずれかの段階の値を取得する値取得部と、
前記値取得部で取得された値に基づいたずれ補正を前記第2の画像に施し、そのずれ補正が施された第2の画像を前記画像出力装置に出力させるずれ補正部とを構成することを特徴とするずれ補正プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−60551(P2007−60551A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−246396(P2005−246396)
【出願日】平成17年8月26日(2005.8.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】