説明

その場で硬化されるパイプライナー

損傷したパイプ(例えば、地下の下水道パイプもしくはガスパイプ)を補修するためのライナーが開示される。蒸気ライナーは、不織布の繊維質マット上にTPUコーティングを含む。上記TPUコーティングは、エポキシ樹脂/アミンが上記不織布中に浸漬され、その硬化が、蒸気もしくは熱水の使用によって開始することが可能である、高い耐熱性ポリエステルTPUである。上記硬化されたエポキシ樹脂は、上記ライナーを、上記ライナーが上記パイプ内部でその場で硬化されたときに可撓性状態から剛性状態へ変換する。上記TPU含有ライナーはまた、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂(例えば、ポリエステル樹脂およびビニルエステル樹脂)とともに使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、パイプもしくは種々の他の通路のためのライナーに関する。より具体的には、本発明は、壊れた、穴の開いた、もしくは漏出している主要下水道パイプ、支流下水道パイプおよびガスパイプを補修するために使用される、地下下水設備(underground sewers)のためのライナーに関する。本発明は、その場で硬化されるライナーに関する。すなわち、上記ライナーは、補修されるべき上記パイプの内部で硬化される。本発明はまた、上記熱硬化性樹脂が熱の使用によって硬化される(固められる)熱硬化性樹脂浸漬ファブリックを使用する、その場で硬化されるライナーに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
損傷したもしくは壊れたパイプ(例えば、下水道パイプおよびガスパイプ)を補強するためのその場で硬化する方法は、地下パイプを補修するための非常に成功裏の方法になった。上記方法は、上記地下パイプを掘り出す必要性、および地表の構造基盤(例えば、舗装された通りおよび建築物)に対して生じる損傷を回避する。上記その場で硬化する方法は、最初に、上記ライナーを、上記パイプの中に配置する一方で、上記ライナーは、可撓性状態にある工程、次いで、上記ライナーを上記損傷したパイプの内部に対して押しつけると同時に、上記ライナーを上記パイプ内で硬化状態へと硬化する工程を包含する。以前の方法は、空気もしくは水を使用して、上記ライナーを加圧して、上記ライナーを、上記パイプの内部に対する加圧によって保持しながら、上記可撓性ライナーを上記パイプの内部に適合させ、上記ライナーを硬化状態へと硬化させる。
【0003】
先行技術のライナーは、上記ライナーの一方の側面の上のファブリックおよび他方の側面の上のポリマーシートを使用することによって作製された。上記ファブリックは、硬化されていない熱硬化性物質に浸漬される。上記硬化する工程、すなわち、上記熱硬化性物質を剛性状態へと変換させるプロセスは、上記ライナーが上記パイプの内部に配置された後に、行われる。上記ライナーは、特許文献1に記載されるような引き込み法(dragged−in method)もしくは特許文献2に記載されるような反転法(inversion method)のいずれかによって、補修されるべきパイプの中に配置され得る(これら特許はともに、本明細書に参考として援用される)。上記ファブリック上に配置されるポリマーシートは、上記使用される熱硬化性物質に対して耐性でなければならず、そしてまた、上記熱硬化性物質を硬化するために使用される熱に耐えることができなければならない。種々の熱可塑性物質およびエラストマーは、上記ファブリックをコーティングするために使用されてきており、ポリウレタンが頻繁に使用されている。
【0004】
熱可塑性ポリウレタンは、その耐摩耗性、引き裂き抵抗性および弾性特性から、特に望ましい。しかし、パイプライナーの近年の取り付け作業員は、上記ライナーにおける熱硬化性物質としてアミン硬化剤(amine curative)とともにエポキシ樹脂を使用し、上記硬化を開始し、上記ライナーを上記パイプの内部に対して押しつけるために熱水を使用するのではなく、蒸気を使用することを望んでいることを示した。エポキシ樹脂の使用は、上記取り付け作業員のためにいくつかの環境的利益を有し、蒸気は、熱水よりも、上記膨張したライナーから速く抜ける。
【0005】
パイプライナーにおいて以前使用された上記熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、エポキシ樹脂とアミン硬化剤とを使用して、上記不織布を浸漬し、蒸気を使用して、上記ライナーを取り付ける場合に、許容されない。上記エポキシ/アミン反応は発熱性であり、そしてこの反応からの熱およびその蒸気は、先行技術のTPUに、上記エポキシ樹脂を含有するファブリックを通じて吹き込んでしまい、上記ライナーにおいて穴を形成させてしまう。
【0006】
その場で硬化されるライナーにおいて使用され得るTPUを有することが有益であり得、ここでエポキシ樹脂とアミン硬化剤が使用され、蒸気は、上記ライナーを取り付けるために使用される。その場で硬化されるライナーにおいて使用され得るTPUを有することもまた有益であり得、ここで蒸気もしくは熱水のいずれかが上記熱硬化性樹脂を硬化するために使用され、そして上記熱硬化性樹脂がエポキシ、ビニルエステル樹脂もしくはポリエステル樹脂であり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第4,009,063号明細書
【特許文献2】米国特許第4,064,211号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
通路もしくはパイプラインのためのライナーが提供され、このライナーは、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)を許容することができる、樹脂吸収性物質(例えば、不織布)の層を有する。上記ライナーはまた、樹脂吸収性物質の層の一方の表面に取り付けられた熱可塑性ポリウレタン(TPU)の層を有する。上記TPUは、ポリエステルTPUであり、これは、ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体と、グリコール鎖伸長剤およびジイソシアネートとを反応させることによって作製される。上記TPUは、高熱TPU(high heat TPU)である、すなわち、これは、高融解点を、示差走査熱量測定(DSC)によって表される場合、140℃より高い、好ましくは、160℃より高い、より好ましくは、170℃より高い二次熱融解吸熱ピーク温度を有する。上記TPUはまた、約85A〜約98AのShore A硬度を有しなければならない。
【0009】
本発明において使用されるTPUは、エポキシ樹脂/アミン硬化剤発熱および上記ライナーの取り付けにおいて使用される蒸気温度に耐えることができる十分な耐熱性を有する。上記TPUは、当該分野において「吹き込み(blow through)」といわれる、上記ライナーにおいて穴を形成することなく、高温に耐えることができる。上記TPUはまた、熱水が上記ライナーの取り付けにおいて使用されるべき場合、上記熱水に耐えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(発明の詳細な説明)
(TPU)
本発明において使用される熱可塑性ポリウレタン(TPU)ポリマーは、3種の反応物の反応によって作製される。第1の反応物は、ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体であり、第2の反応物は、グリコール鎖伸長剤であり、第3の反応物は、ジイソシアネートである。3種の反応物の各々は、以下で議論される。
【0011】
上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、一般に、約2000〜約10,000、望ましくは、約2000〜約5000、および好ましくは、約2000〜約3000の数平均分子量(Mn)を有する直線状ポリマーである。上記分子量は、上記末端官能基のアッセイによって決定され、そして上記数平均分子量に関する。上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、好ましくは、低酸価(例えば1.5未満、好ましくは1.0未満、およびより好ましくは0.8未満)を有する。上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体の低酸価は、水分と接触するライナーにとって好ましい。なぜなら、低酸価は、上記TPUポリマーの加水分解安定性を改善する。酸価は、ASTM D−4662に従って決定され、そしてサンプル1.0g中の酸性構成要素を滴定することが必要とされる水酸化カリウムのミリグラムで表される塩基の量として定義される。加水分解安定性はまた、TPUポリマーを処方する当業者にとって公知である上記TPUに対して加水分解安定化剤を添加することによって改善され得る。上記ポリマーは、(1)1種以上のグリコールと1種以上のジカルボン酸もしくは無水物とのエステル化反応、または(2)トランスエステル化反応、すなわち、1種以上のグリコールと、ジカルボン酸のエステルとの反応によって、生成される。グリコール 対 酸の、1モルより多い、概して過剰のモル比は、末端ヒドロキシル基の優位を有する直鎖を得るために好ましい。適切なポリエステル中間体としてはまた、ε−カプロラクトンおよび二官能性開始剤(例えば、ジエチレングリコール)から代表的には作製される種々のラクトン(例えば、ポリカプロラクトン)が挙げられる。望ましいポリエステルのジカルボン酸は、脂肪族、シクロ脂肪族、芳香族、またはこれらの組み合わせであり得る。単独でもしくは混合物で使用され得る適切なジカルボン酸は、一般に、合計4〜15個の炭素原子を有し、そしてこれらとしては以下が挙げられる:コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸など。上記ジカルボン酸の無水物(例えば、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物など)がまた、使用され得る。アジピン酸は、好ましい酸である。望ましいポリエステル中間体を形成するために反応させられるグリコールは、脂肪族、芳香族、またはこれらの組み合わせであり得、合計2〜12個の炭素原子を有し、これらとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコールなどが挙げられ、1,4−ブタンジオールは、好ましいグリコールである。2種以上のグリコールのブレンドが、使用され得る。耐微生物性が必要とされるパイプ(例えば、ガスパイプ)を補強するために使用されるべきライナーについて、ジエチレングリコールは、好ましいグリコールである。
【0012】
上記TPUを作製するために第2の反応物として使用される適切なグリコール鎖伸長剤は、脂肪族、芳香族もしくはこれらの組み合わせであり得、2〜約12個の炭素原子を有する。好ましくは、上記グリコール鎖伸長剤は、約2〜約10個の炭素原子を有する低級脂肪族もしくは短鎖グリコールであり、これらとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールヒドロキノン、ジ(ヒドロキシエチル)エーテル、ネオペンチルグリコール(neopentyglycol)などが挙げられ、1,4−ブタンジオールが好ましい。芳香族グリコールは、ベンゼングリコールおよびキシレングリコールを含むTPUを作製するために、上記鎖伸長剤として使用され得る。キシレングリコールは、1,4−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンおよび1,2−ジ(ヒドロキシメチル)ベンゼンの混合物である。ベンゼングリコールは、具体的には、ヒドロキノン(すなわち、1,4−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとしても公知であるビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル);レゾルシノール(すなわち、1,3−ジ(2−ヒドロキシエチル)ベンゼンとしても公知であるビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル);カテコール(すなわち、1,2−ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンとしても公知であるビス(β−ヒドロキシエチル)エーテル);およびこれらの組み合わせが挙げられる。2種以上のグリコールの混合物は、本発明のTPUにおいて上記鎖伸長剤として使用され得る。1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールの混合物は、好ましい混合物である。
【0013】
本発明のTPUを作製するための第3の反応物は、ジイソシアネートである。適切なジイソシアネートとしては、芳香族ジイソシアネート(例えば、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)(MDI));m−キシレンジイソシアネート(XDI)、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアネート(TODI)およびトルエンジイソシアネート(TDI);ならびに脂肪族ジイソシアネート(例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、デカン−1,10−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、およびジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート)が挙げられる。最も好ましいジイソシアネートは、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)、すなわち、MDIである。2種以上のジイソシアネートの混合物が使用され得る。また、少量の、2つより多い官能基を有するイソシアネート(例えば、トリイソシアネート)は、上記ジイソシアネートといっしょに使用され得る。3つ以上の官能基を有する大量のイソシアネートは、それらが、TPUポリマーが架橋されるべきである場合に回避されるべきである。
【0014】
上記3種の反応物(ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体、グリコール鎖伸長剤、およびジイソシアネート)は、いっしょに反応させられて、本発明のライナー(linear)において使用される高分子量TPUを形成する。上記3種の反応物を反応させるための任意の公知のプロセスは、上記TPUを作製するために使用され得る。好ましいプロセスは、いわゆる1回で完全な(one−shot)プロセスであり、ここで3種すべての反応物が、押し出し反応器(extruder reactor)に添加され、そして反応させられる。上記ヒドロキシル含有成分(すなわち、上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体および上記鎖伸長剤グリコール)の総当量(total equivalent weight amount)に対する上記ジイソシアネートの当量は、約0.95〜約1.10、望ましくは、約0.96〜約1.02、および好ましくは、約0.97〜約1.005である。ウレタン触媒を利用する反応温度は、一般に、約175℃〜約245℃であり、好ましくは、180℃〜220℃である。
【0015】
一般には、任意の従来の触媒は、上記ジイソシアネートと、上記ポリエステル中間体もしくは上記鎖伸長剤とを反応させるために利用され得、そして上記触媒は、当該分野および文献で周知である。適切な触媒の例としては、ビスマスもしくはスズの種々のアルキルエーテルもしくはアルキルチオールエーテルが挙げられ、ここで上記アルキル部分は、1〜約20個の炭素原子を有し、具体例としては、オクチル酸ビスマス、ラウリン酸ビスマスなどが挙げられる。好ましい触媒としては、種々のスズ触媒(例えば、オクチル酸スズ、ジオクチル酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジブチルスズなど)が挙げられる。このような触媒の量は、一般に、上記ポリウレタン形成反応物の総重量に基づいて、約20〜約200ppmのような少量である。
【0016】
上記熱可塑性ポリウレタンはまた、プレ−ポリマープロセスを利用して調製され得る。上記プレ−ポリマー経路において、上記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、一般に当量過剰の1種以上のジイソシアネートと反応させられて、そこに遊離もしくは反応していないジイソシアネートを有するプレ−ポリマー溶液を形成する。反応は、一般に、適切なウレタン触媒の存在下で、約80℃〜約220℃および好ましくは約150℃〜約200℃の温度で行われる。その後、上記のように鎖伸長剤の選択されるタイプは、上記イソシアネート末端基に対して、および任意の遊離もしくは反応していないジイソシアネート化合物に対してほぼ等しい当量で添加される。総ジイソシアネート 対 上記ヒドロキシル末端を有するポリエステルおよび上記鎖伸長剤の総量の全体の当量比(equivalent ratio)は、従って、約0.95〜約1.10、望ましくは、約0.96〜約1.02、および好ましくは、約0.97〜約1.05である。上記ヒドロキシル末端を有するポリエステル 対 上記鎖伸長剤の当量比は、望ましいshore硬度を与えるように適合される。上記鎖伸長反応温度は、一般に、約180℃〜約250℃であり、約200℃〜約240℃が好ましい。代表的には、上記プレ−ポリマー経路は、任意の従来のデバイスにおいて行われ得、押し出し器が好ましい。従って、上記ポリエステル中間体は、当量過剰(equivalent excess)のジイソシアネートと、上記押し出し器の第1の部分において反応させられて、プレ−ポリマー溶液を形成し、その後、上記鎖伸長剤は、下流部分において添加され、そして上記プレ−ポリマー溶液と反応させられる。任意の従来の押し出し器は、少なくとも20および好ましくは少なくとも25の長さ 対 直径比を有するバリアスクリューを備えた押し出し器とともに利用され得る。
【0017】
有用な添加剤は、適切な量で利用され得、不透明化顔料、着色剤、鉱物充填剤、安定化剤、滑沢剤、UV吸収剤、処理補助物、および望ましい場合には他の添加剤が挙げられる。有用な不透明化顔料としては、二酸化チタン、酸化亜鉛、およびチタネートイエロー(titanate yellow)が挙げられる一方で、有用な着色顔料としては、カーボンブラック、イエローオキシド(yellow oxide)、ブラウンオキシド(brown oxide)、生シエナ土および代赭、もしくは生アンバーおよび焼きアンバー、酸化クロムグリーン、カドミウム顔料、クロム顔料、および他の混合金属オキシドならびに有機性顔料が挙げられる。有用な充填剤としては、珪藻土(superfloss)粘土、シリカ、タルク、マイカ、ワラストナイト(wallostonite)、硫酸バリウム、および炭酸カルシウムが挙げられる。望ましい場合、有用な安定化剤(例えば、抗酸化剤)が使用され得、そしてフェノール酸抗酸化剤が挙げられる一方で、有用な光安定化剤としては、有機性ホスフェートおよび有機スズチオレート(メルカペプチド)が挙げられる。有用な滑沢剤としては、金属ステアレート、パラフィン油、およびアミドワックスが挙げられる。有用なUV吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシフェノール)ベンゾトリアゾールおよび2−ヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。添加剤はまた、上記TPUポリマーの加水分解安定性を改善するために使用され得る。
【0018】
上記TPUポリマーの重量平均分子量(M)は、一般に、約60,000〜約500,000ダルトン、および好ましくは、約80,000〜約300,000ダルトンである。上記TPUポリマーはまた、約140℃より高い、好ましくは、約160℃より高い、およびより好ましくは、約170℃より高いDSC二次熱融解吸熱ピーク温度によって示されるような高温性能特性を有さなければならない。この高温性能は、上記その場での硬化の取り付けの間に、上記ライナーにおいて穴が形成することを予防するために必要である。上記温度性能特性は、10℃/分の加熱/冷却/加熱モードにおいて、−100℃〜230℃の走査条件を使用する示差走査熱量測定(DSC)を使用して測定される。ASTM D−3418−03標準は、上記DSC試験を記載する。上記二次熱融解吸熱ピーク温度は、上記サンプル中で任意の分散を較正するために使用される。
【0019】
最も好ましいTPUポリマーは、約85A〜約98A、好ましくは、85A〜90AのShore A硬度を有し、210℃および3.8Kgの負荷において40g/10分以下、好ましくは、35g/10分未満、より好ましくは、30g/10分未満のメルトフローインデックスを有する。これらの要件を満たす市販のTPUポリマーは、are known as Estane(登録商標)58437、58447、54605、54777、T5630、T5620、58605およびX−1351として公知であり、Lubrizol Advanced Materials,Incから市販されている。98 Shore Aより高い硬度を有するTPUポリマーは、特に、本発明の方法によって、上記ライナーを上記損傷したパイプの中に挿入するのを容易にするには硬すぎる。
【0020】
上記TPUが、ガスパイプを補強するために使用されるべきである場合、低酸価ポリエステル中間体から作製され、上記ポリエステル中間体がアジピン酸とジエチレングリコールとを反応させることによって作製されるTPUを使用することが好ましい。なぜなら、このタイプのTPUは、より耐微生物性であると考えられるからである。耐微生物性は、ガスパイプにとって望ましい。
【0021】
上記TPUはまた、良好な耐溶媒性を有するべきである。溶媒は、上記熱硬化性樹脂を上記樹脂吸収性層の中に入れるのを容易にされている上記ライナーに開いた穴を覆うTPU片を溶媒溶接(solvent−weld)するために使用され得る。溶媒はまた、元の平坦な矩形シートから閉じたチューブを作製するために、上記ライナーの縦の継ぎ目の上にTPUテープを溶媒溶接するために使用され得る。
【0022】
上記TPUはまた、スチレンに対して良好な耐性を有し、そしてスチレンにバリア特性を提供するべきである。なぜなら、スチレンは、上記熱硬化性樹脂(例えば、スチレンベースのポリエステル樹脂)のいくつかに存在するからである。上記ライナーの上のTPUコーティング層は、スチレンが、上記熱硬化性樹脂を硬化するために使用される流体(水もしくは蒸気)に移動するのを防止もしくは低下させ得る。水中に非常に多くのスチレンが存在する場合、その水は、地方自治体の排水システムに排出されるよりも高コストの手段によって処理されなければならない。
【0023】
(樹脂吸収性物質)
樹脂吸収性物質は、上記ライナーの1つの層として使用される。上記樹脂吸収性物質は、上記熱硬化性樹脂を吸収する任意の物質である。上記樹脂吸収性層は、0.1〜20cmの厚み、好ましくは、0.2〜15cmの厚み、およびより好ましくは、0.3〜10cmの厚みであり得る。適切な樹脂吸収性物質としては、織られる繊維(woven fiber)もしくは不織繊維(non−woven fiber)であり得る有機繊維もしくは無機繊維の繊維状物質であり得る。好ましくは、上記樹脂吸収性物質は、下水設備(主要もしくは支流)を補強する場合、針で穴を開けた不織材料(例えば、ポリエステル不織マット)である。ガスパイプを補強する場合、ガラス繊維材料が、代表的には好ましい。
【0024】
上記TPUポリマーは、上記樹脂吸収性物質の一方の側面の上にコーティングされる。溶融処理装置は、上記樹脂吸収性物質の上に上記TPUをコーティングするために使用され得る。適切な溶融処理装置としては、カレンダー処理および押し出しプロセスが挙げられる。上記ライナー上の上記TPUコーティング層の好ましい厚みは、約100〜約1000ミクロン、好ましくは、約200〜約800ミクロン、およびより好ましくは、約300〜約500ミクロンの厚みである。上記TPUコーティング層は、ポリエステル不織マットに非常によく接着するので、上記ポリエステル不織マットは、本発明のTPUに対して好ましい。
【0025】
(ライナー)
本発明のライナーを作製するために、上記TPUは、上記樹脂吸収性物質の上に溶融コーティングされる(melt coated)かまたは押し出しコーティングされる(extrusion coated)。熱硬化性樹脂(例えば、ビニルエステル樹脂、ポリエステル樹脂、もしくはエポキシ樹脂)にすることができる樹脂は、上記樹脂吸収性物質に添加される。任意のエポキシ樹脂が使用される場合、アミン硬化剤(amine curing agent)は、上記エポキシ樹脂を熱硬化性物質へと硬化するために、上記エポキシ樹脂に添加される。この段階(硬化前に)において、上記ライナーは可撓性であり、空洞の上記通路(例えば、下水道パイプ)の中に配置され得る。上記可撓性ライナーは、上記引き込み法もしくは反転法(これらは、当該分野で公知である)のいずれかによって挿入され得る。一旦上記空洞の中に挿入されると、熱は、蒸気および/もしくは熱水を注入することによって添加されて、上記ライナーを上記パイプの内部に対して押しつけ、上記熱硬化性樹脂をその場で硬化させる。上記ライナーはまた、圧力下で熱水を使用することによって、上記空洞の中に挿入され得る。一旦樹脂が硬化されると、樹脂は熱硬化され、上記ライナーは、パイプ内で剛性パイプを形成するために剛性になる。
【0026】
上記ライナーは、上記パイプを補修することが必要とされる所望の長さに対して作製され得、好ましくは、それは連続管状ライナーである。上記ライナーは、より短い小片からいっしょに重ね継がれることを必要としない1つの連続した長さで、上記パイプを補修するために十分な長さを有するべきである。上記ライナーは、代表的には、少なくとも50mの長さであり、5000m程度の長さであり得る。より代表的には、上記ライナーは、200〜1000mの長さである。
【0027】
上記ライナーの直径は、一旦閉じたチューブに形成されると、補修を必要とするパイプの直径に依存して変動する。代表的な直径は、約5cm〜約250cmであるが、より一般には、上記直径は、20cm〜約150cmである。
【0028】
上記ライナーは、補修を必要とする上記パイプの内部の形状に適合され得る。上記パイプの形状は、完全に円形である必要はないが、むしろ、非円形(例えば、卵形もしくは楕円形)であり得る。上記ライナーはまた、上記パイプにおける彎曲をうまく通り抜け(negotiate)得る。
【0029】
上記樹脂吸収性ファブリックが熱硬化性樹脂で含浸され、上記ライナーが作製された後、代表的には、氷浴もしくは冷蔵トラックのいずれかにおいて、上記ライナーが低温で保管される。この低温保管は、上記熱硬化性樹脂を取り付ける前に、上記熱硬化性樹脂の時期尚早の硬化を防止するために必要である。上記ライナーは、上記樹脂の時期尚早の硬化を防止するために、上記冷蔵トラックに入れて現場に持ち込まれ得る。エポキシ樹脂を使用するようないくつかの場合において、上記樹脂吸収性層は、上記現場において、上記樹脂で含浸され得る。
【0030】
上記ライナーが上記損傷したパイプの中に挿入された後、上記樹脂は、上記ライナーを、通常約80℃〜100℃の高温に、3〜12時間曝すことによって硬化される。蒸気硬化は、通常8〜12時間かかる熱水と比較して、それほど時間を要しない(通常3〜5時間)。従って、上記蒸気硬化プロセスに耐えることができるTPUを使用することによって、おびただしい時間の短縮が提供される。
【0031】
本発明は、以下の実施例を参照することによってよりよく理解される。
【実施例】
【0032】
(実施例1)
針で穴を開けたポリエステル繊維不織マット(約0.6cm厚であった)を、ポリエステルTPUで一方の側面をコーティングした。上記TPUコーティングの厚みは、450ミクロンであった。上記ポリエステルTPUを、2500M ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体、1,4−ブタンジオール(BDO)鎖伸長剤および4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)を反応させることによって作製した。上記2500M ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体を、アジピン酸と、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールのブレンドとを反応させることによって作製した。上記TPUポリマーは、約87AのShore A硬度を有し、180℃のDSC二次熱融解吸熱ピーク温度および210℃/3.8Kgで25g/10分のメルトフローインデックスを有した。エポキシ樹脂を、上記不織繊維層に添加し、アミン硬化剤(amine curing agent)を添加した。上記ライナーは、反転法を使用して、下水道パイプに挿入した。85℃の蒸気を添加して、上記エポキシ樹脂の硬化を活性化し、上記パイプ内部で剛性のライナーを形成した。その硬化時間は5時間であった。
【0033】
特許法に従って、ベストモードおよび好ましい実施形態を記載してきたが、本発明の範囲は、ベストモードおよび好ましい実施形態に限定されず、むしろ添付の特許請求の範囲によって限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通路もしくはパイプのための、その場で硬化されるライナーであって、該ライナーは、
(a)樹脂吸収性物質層;
(b)該樹脂吸収性物質層に吸収される、熱硬化性樹脂;および
(c)該樹脂吸収性物質層のうちの少なくとも一方の側面上にある、ポリエステル熱可塑性ポリウレタンコーティング層であって、ここで該熱可塑性ポリウレタンコーティング層は、約140℃より高いDCS二次吸熱ピーク温度を有する、ポリエステル熱可塑性ポリウレタンコーティング層;
を含む、ライナー。
【請求項2】
前記ポリエステル熱可塑性ポリウレタンコーティング層は、約160℃より高いDCS二次吸熱ピーク温度を有する、請求項1に記載のライナー。
【請求項3】
前記ポリエステル熱可塑性ポリウレタンコーティング層は、約85A〜約98AのShore A硬度を有する、請求項2に記載のライナー。
【請求項4】
前記樹脂吸収性物質層は針で穴を開けた不織布である、請求項1に記載のライナー。
【請求項5】
前記針で穴を開けた不織布は、ポリエステルファブリックである、請求項4に記載のライナー。
【請求項6】
前記ポリエステル熱可塑性ポリウレタンコーティング層は、約85A〜約90AのShore A硬度を有する、請求項1に記載のライナー。
【請求項7】
前記ポリエステル熱可塑性ポリウレタンコーティング層は、約100〜約1000ミクロンの厚みを有する、請求項1に記載のライナー。
【請求項8】
前記ポリエステル熱可塑性ポリウレタンコーティング層は、約300〜約500ミクロンの厚みを有する、請求項7に記載のライナー。
【請求項9】
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択される、請求項1に記載のライナー。
【請求項10】
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂であり、該エポキシ樹脂のためのアミン硬化剤が、該エポキシ樹脂と混合される、請求項9に記載のライナー。
【請求項11】
前記ポリエステル熱可塑性ポリウレタンコーティング層は、
(a)ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体;
(b)グリコール鎖伸長剤;および
(c)ジイソシアネート、
の反応から作製される、
請求項1に記載のライナー。
【請求項12】
前記グリコール鎖伸長剤は、1,4−ブタンジオールおよび1,6−ヘキサンジオールのブレンドである、請求項11に記載のライナー。
【請求項13】
前記ジイソシアネートは、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)である、請求項11に記載のライナー。
【請求項14】
前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、ASTM D−4662に従って測定される場合に、約1.5未満の酸価を有する、請求項13に記載のライナー。
【請求項15】
前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、アジピン酸とジエチレングリコールとの反応から作製される、請求項14に記載のライナー。
【請求項16】
前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、ASTM D−4662に従って測定される場合に、約1.0未満の酸価を有する、請求項15に記載のライナー。
【請求項17】
前記ポリエステル熱可塑性ポリウレタンコーティング層は、60,000〜500,000ダルトンの重量平均分子量、170℃より高いDCS二次吸熱ピーク温度、および210℃/3.8Kgにおいて30g/10分未満のメルトフローインデックスを有する、請求項1に記載のライナー。
【請求項18】
通路もしくはパイプの空洞を補強するための方法であって、該方法は、
該空洞の中にライナーを導入する工程であって、該ライナーは、
(a)樹脂吸収性物質層;
(b)該樹脂吸収性物質層に浸漬される、熱硬化性樹脂;
(c)ポリエステル熱可塑性ポリウレタンコーティング層であって、ここで該熱可塑性ポリウレタンコーティング層は、約140℃より高いDCS二次熱融解吸熱ピーク温度を有する、ポリエステル熱可塑性ポリウレタンコーティング層;
を含む、工程;
該ライナーの内部開口部の中に蒸気もしくは水を導入して、該ライナーを該通路もしくは該パイプの内表面に対して押しつけ、該熱硬化性樹脂の硬化を活性化する工程、
を包含する、方法。
【請求項19】
前記ポリエステル熱可塑性ポリウレタンコーティング層は、約160℃より高いDSC二次融解吸熱ピーク温度を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ポリエステル熱可塑性ポリウレタンコーティング層は、約85A〜約98AのShore A硬度を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記樹脂吸収性物質層は、針で穴を開けたポリエステル不織布である、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記ポリエステル熱可塑性ポリウレタンコーティング層は、約100〜約1000ミクロンの厚みを有する、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記ポリエステル熱可塑性ポリウレタンコーティング層は、約300〜約500ミクロンの厚みを有する、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、およびポリエステル樹脂からなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂であり、該エポキシ樹脂のためのアミン硬化剤は、該エポキシ樹脂と混合され;そして蒸気を使用して、前記ライナーを前記通路もしくは前記パイプの内表面に対して押しつけ、該エポキシ樹脂の硬化を活性化する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記パイプは、主要下水道パイプ、支流下水道パイプ、およびガスパイプからなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項27】
前記ポリエステル熱可塑性ポリウレタンコーティング層は、
(a)ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体;
(b)グリコール鎖伸長剤;および
(c)ジイソシアネート
の反応から作製される、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、2000〜約3000ダルトンの数平均分子量を有する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、アジピン酸とジエチレングリコールとの反応から作製される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ヒドロキシル末端化ポリエステル中間体は、ASTM D−4662に従って測定される場合に、約1.5未満の酸価を有する、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記グリコール鎖伸長剤は、1,4−ブタンジオールと1,6−ヘキサンジオールとのブレンドであり、前記ジイソシアネートは、4,4’−メチレンビス−(フェニルイソシアネート)である、請求項18に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリエステル熱可塑性ポリウレタンコーティング層は、60,000〜500,000ダルトンの重量平均分子量、170℃より高いDSC二次吸熱ピーク温度、および210℃/3.8Kgにおいて30g/10分未満のメルトフローインデックスを有する、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2010−516840(P2010−516840A)
【公表日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546473(P2009−546473)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/051050
【国際公開番号】WO2008/089167
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(506347528)ルブリゾル アドバンスド マテリアルズ, インコーポレイテッド (74)
【Fターム(参考)】