説明

ねじ山検査装置

【課題】同軸上に通りゲージと止まりゲージとを連続的に備えた限界ゲージによる検査を合理的に行うことができるねじ山検査装置の提供。
【解決手段】
本発明は、同軸上に先端側から通りゲージと止まりゲージを順に形成して成る限界ゲージ13を往復移動手段20の作動で軸方向に移動させるとともにゲージ回転用モータ11の駆動により回転させて被検査ねじ部にねじ込み、その過程で限界ゲージ13に作用する回転負荷トルクが予め設定された限界トルクを超えた時のねじ込み位置が通り検査合否判定の境界位置と止まり検査合否判定の境界位置とによって規定される範囲に収まっているか否かに応じて通り検査の合否または止まり検査の合否を判断することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めねじあるいは雄ねじにおいて、これらのねじ山の精度を検査するためのねじ山検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ねじ山の精度を検査するものとしては、特許文献1に示す精度検査装置が知られている。この精度検査装置は、通りねじゲージ(以下、通りゲージという)と止まりねじゲージ(以下、止まりゲージという)とを先端から順に同軸上に形成した限界ゲージをナットネジ等のめねじに螺合させて、その精度を検査するものである。具体的には、まず、通りゲージが所定のトルク範囲内で所定位置までめねじに螺合されるかどうかを検査し、これでOKであれば、続いて止まりゲージをめねじに螺合し、これがNG位置に到達するまでに所定の上限トルクに達するかどうかを検査するものである。
【0003】
【特許文献1】特許第3491843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の精度検査装置においては、通りゲージによる検査(以下、必要に応じて通り検査ともいう)においては、螺入時のトルクの上限値と下限値および通り検査をパスするための螺入位置を判定パラメータとし、続く止まりゲージによる検査(以下、必要に応じて止まり検査ともいう)では、トルクの上限値と止まり検査の合否の境界となる螺入位置とを判定パラメータとして設定して検査を行うように構成されている。このため、検査を行うためにはこれらの各判定パラメータを予め設定しておく必要があるが、判定パラメータが多く、通り検査と止まり検査でパラメータを混同して設定値を間違える等の問題や、判定パラメータの設定に時間がかかる等の問題が発生していた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて創成されたものであり、同軸上に通りゲージと止まりゲージとを連続的に備えた限界ゲージによるねじ山検査を合理的に行うねじ山検査装置の提供を目的とする。この目的を達成するために本発明は、同軸上に先端側から通りゲージと止まりゲージを順に形成して成る限界ゲージを回転駆動源の駆動を受けて回転可能に構成したゲージツールと、このゲージツールを往復移動操作する往復移動手段とを有するねじ山検査装置であって、通り検査合否判定の境界位置と止まり検査合否判定の境界位置と通り検査および止まり検査に共通の限界トルクとを予め設定し、前記往復移動手段によりゲージツールを移動させながら限界ゲージを回転させて被検査部品のねじ部にねじ込み、その過程で限界ゲージに作用する回転負荷トルクを検出し、この回転負荷トルクが予め定められた限界トルクを超えた時の限界ゲージのねじ込み位置が前記各境界位置によって規定される範囲内に収まっているか否かに応じて通り検査の合否または止まり検査の合否を判断する制御手段を備えていることを特徴とする。
【0006】
なお、前記制御手段は、往復移動手段を制御してゲージツールを被検査部品に押圧する推力を調節するものであることが好ましい。また、前記ゲージツールには、限界ゲージをその往復移動方向に直交する方向に所定量移動可能に支持するフローティング機構を設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明のねじ山検査装置は、止まり検査合否判定の境界位置を目標位置として限界ゲージを被検査部品のねじ部にねじ込み、回転負荷トルクが通り検査と止まり検査に共通の限界トルクを超えた時の限界ゲージのねじ込み位置が通り検査合否判定の境界位置と止まり検査合否判定の境界位置とによって規定される範囲に収まっているか否かに応じて通り検査の合否または止まり検査の合否を判断するものである。このため、ねじ部の成形合否を判定するためのパラメータとして通り検査と止まり検査の各合否判定境界位置と限界トルクとだけを設定しておけばよく、パラメータの設定ミスによる検査ミスの防止、パラメータの設定時間短縮等の効果が得られる。また、通り検査と止まり検査とで共通の限界トルクによって検査を行うため、同軸上に通りゲージと止まりゲージとが一体に形成された限界ゲージを用いる検査を極めて合理的に行うことが可能になる等の利点がある。さらに、パラメータが少なくなる結果、装置の制御自体も簡素化でき、制御手段におけるハードウェア資源やソフトウェア資源の節減を果たすことができる等の利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1において、1はねじ山検査装置であり、回転駆動用モータ11(以下、回転用モータ11という)の出力軸11aにフローティング機構12を連結し、このフローティング機構12に限界ゲージ13(以下、単にゲージ13という)を連結して成るゲージツール10と、このゲージツール10を前記ゲージ13の軸方向に往復移動させるとともに、これによりゲージ13が被検査部品のねじ部に螺合した時には当該ねじ部にゲージ13から所定の押圧力(以下、これを推力と称する)を作用させ得る往復移動手段20と、これらの制御手段30とを備えている。
【0009】
前記ゲージツール10においては、回転用モータ11の出力軸11aないしゲージ13が直結されている。このため、ゲージ13は回転用モータ11やフローティング機構12に対して軸方向に移動できず、往復移動手段20による推力がゲージ13から被検査部品にダイレクトに作用するように構成されている。また、フローティング機構12は、エアの吸排によってゲージ13の保持具合を調整可能に構成されており、フローティング機構12内にエアが吸引された場合(ロック時)にはゲージ13が拘持され、エアが排出された場合(ロック解除時)には、ゲージ13がその往復移動方向に直交する方向に所定量移動自在になるように構成されている。このフローティング機構12は後述の早送り時および早戻り時にはゲージ13を拘持し、ゲージ13を所定の位置に保つ。また、後述の検査時および検査穴抜け時にはゲージ13のロックを解除し、万一、芯がずれた状態でゲージ13の先端が被検査部品のねじ部との螺合位置まで下降したとしても、ゲージ13をねじ部に位置合わせし、正確に螺合させることができる。
【0010】
前記ゲージ13は、背景技術で説明したのと同様、同軸上に先端から通りゲージ13a、止まりゲージ13bを順に形成し、これにより被検査部品に形成されためねじ(ねじ部)の通り検査と止まり検査とを連続的に検査できるものである。なお、本発明のねじ山検査装置1においては、前記めねじ検査用のゲージ13(プラグゲージ)に換えて、雄ねじ検査用のリングゲージ(図示せず)であって、前記ゲージ13同様に通りゲージと止まりゲージが同軸上に連続的に形成された限界ゲージにより雄ねじの検査を行うことも可能である。
【0011】
前記往復移動手段20は、サーボモータである移動用モータ21と、この移動用モータ21の出力軸21aの回転量を検出可能なロータリエンコーダ22(以下、エンコーダ22という)と、前記移動用モータ21の駆動を受けて作動するボールねじ機構23と、このボールねじ機構23の軸受け部23bに連結されたテーブル24とを有して成る。この往復移動手段20におけるボールねじ機構23は、ボールねじ軸23aに軸受け部23bを螺合させて成る一般的なものであり、移動用モータ21の駆動を受けてボールねじ軸23aが回転することにより、軸受部23bと前記テーブル24とをボールねじ軸23aの延びる方向に一体に移動させるように構成されている。前記ゲージツール10は、テーブル24に一体に取り付けられており、これにより往復移動手段20の作動によりゲージ13の軸線方向に移動可能に構成されている。
【0012】
前記制御手段30は、前記回転用モータ11の駆動を制御するツールコントローラ40と、前記移動用モータ21の駆動を制御するサーボコントローラ50と、これらコントローラ40,50からの信号に基づいて演算処理を行う制御部60とを備えている。
【0013】
前記ツールコントローラ40は、回転用モータ11に接続されており、この回転用モータ11の負荷電流値に応じて制御部60から送られる指令に対応して、回転用モータ11の正転駆動/逆転駆動/停止を切り換えるように構成されている。つまり、制御部60には判定パラメータの一つである限界トルク値が予め設定されており、この限界トルクを超えるトルクに相当する負荷電流が回転用モータ11に流れた場合、回転用モータ11の駆動が停止するように構成されている。
【0014】
前記サーボコントローラ50は、往復移動手段20における移動用モータ21およびエンコーダ22と接続されており、エンコーダ22の出力するパルス信号(移動用モータの回転角度)とボールねじ軸23aのリードとから軸受け部23bの移動量、すなわち、ゲージツール10の移動位置を検出し、これを制御部60に送るようになっている。そして、ゲージツール10の移動位置に応じて制御部60から送られる指令に対応して、移動用モータ21の回転速度または駆動トルクを制御し、これによってゲージ13から被検査部品に負荷される推力を調節するように構成されている。
【0015】
前述の推力を調整するためのゲージツール10の移動位置(以下、推力切換ポイントという)には、図2に示すように、ゲージ13の先端を基準として、
A点:ゲージ13先端が被検査部材から離れて待機する位置
B点:ゲージ13の通りゲージ13a先端がめねじに螺合する手前の位置
C点:ゲージ13の止まりゲージ13bが正しく螺入された場合にその先端が到達すべき限界位置=止まり検査合否の境界となるゲージ13の螺入位置
D点:めねじに螺合したゲージ13をねじ戻し、該ゲージ13の通りゲージ13aがめねじから外れて少し離れた位置。前記B点と同位置。
E点:ゲージ13が最終的に待機位置に復帰した位置。前記A点と同位置。
の5つの位置がある。これら推力切換ポイントおよびゲージ13の寸法に応じて必要な制御パラメータを設定してめねじ検査を行う。なお、以下の説明では、A点(待機位置)にあるゲージ13がB点まで下降する段階を「早送り時」、ゲージ13がめねじに螺入する段階を「検査時」、めねじに螺合したゲージ13がD点までねじ戻されて復帰させる段階を「検査穴抜け時」、ゲージ13がD点からE点まで復帰(上昇)する段階を「早戻り時」として、めねじ精度検査の説明を行う。
【0016】
前記制御パラメータは、制御部60における例えばハードディスク装置、メモリ装置等の記憶部(図示せず)に備えられたゲージ13のサイズ毎の設定テーブルに設定される。この設定テーブルは、図3に示すようにメインテーブルと推力テーブルと速度テーブルとから構成される。メインテーブルには、ポイント、限界トルク、通りNG距離、止まりNG距離、推力CODE、速度CODEを設定するためのフィールドが設けられている。また推力テーブルには、推力CODE、早送り、検査、検査穴抜け、早戻りの各フィールドが設けられており、推力CODE毎に早送り時、検査時、検査穴抜け時、早戻り時の各推力パラメータを複数設定できるように構成されている。さらに速度テーブルには、速度CODE、早送り、検査、検査穴抜け、早戻りの各フィールドが設けられており、速度CODE毎に早送り時、検査時、検査穴抜け時、早戻り時の各速度パラメータを複数設定できるように構成されている。これらのテーブルは、メインテーブルの推力CODEと推力テーブルの推力CODE、メインテーブルの速度CODEと速度テーブルの速度CODEがそれぞれリレーションシップで関連付けられている。これにより、メインテーブルの推力CODEに設定された値と同じ値を持つ推力テーブルの推力CODEのレコードの設定値が参照され、またメインテーブルの速度CODEの設定値と同じ値を持つ速度テーブルの速度CODEのレコードの設定値が参照されるように構成されている。
【0017】
前記限界トルクは、通り検査および止まり検査において回転用モータ11のトルクアップの判定基準とするトルク値を示す。めねじについての通り検査は、めねじの有効径の最小限界を検査するものである。また、同じく止まり検査は、めねじの有効径の最大限界を検査するものである。通り検査では有効径が最小公差以下(異常)であれば、通りゲージ13aがねじ山に干渉してトルクアップし、止まり検査では有効径が最大公差以内(正常)であれば、止まりゲージ13bがねじ山と干渉してトルクアップする。よって、基本的に両検査を通じて限界トルクは同じ値を使用することができる。より具体的には、通り検査において不良と判断する基準となる回転負荷トルク値が限界トルクとして設定される。
【0018】
前記NG距離は、通り検査および止まり検査に用いる各々の不良検出距離を示す。通りNG距離は、めねじに螺入される通りゲージ13aの回転負荷トルクが限界トルクを超えることなく通りゲージ13aが達しなければならない螺入位置(通り検査合否判定の境界位置)を示す。具体的には、図4に示すように止まりゲージ13bがめねじの入口に螺合する直前の位置とするのが最も効果的である。また、止まりNG距離は、めねじに螺入される止まりゲージ13bの回転負荷トルクが限界トルクに達した時に止まりゲージ13bが超えていてはならない螺入位置(止まり検査合否判定の境界位置)を示す。この止まりNG距離は、前記B点からC点までの距離を示し、後述のC点到達の判定基準値としても用いられるものである。なお、A点からB点の間の距離(=D点からE点の間の距離)は、別途制御部60に設定される。制御部60は、ゲージ13螺入時の回転負荷トルクが限界トルクに達した時のゲージ13のB点からのねじ込み位置が、通りNG距離以上で、かつ止まりNG距離以下になっているか否かを確認する。
【0019】
前記推力パラメータは、早送り時、検査時、検査穴抜け時、早戻り時における移動用モータ21の駆動トルクを示す。これらの推力パラメータ(駆動トルク)を切り換えて移動用モータ21を駆動制御することにより、ゲージツール10に付与される推力(めねじへの螺入中にあっては、ゲージ13をめねじに押圧する力)を適正に加減することができる。また、前記速度パラメータは、早送り時、検査時、検査穴抜け時、早戻り時における移動用モータ21の回転駆動速度を表すものである。この速度パラメータで移動用モータ21の回転速度が制御されることにより、ゲージツール10の移動速度が変更される。
【0020】
前記制御部60は、図5に示すように、
S001:検査スタート信号を待つ。
S002:スタート信号に応じた制御パラメータを読み込み、その内の限界トルクをツールコントローラ40のメモリ領域に書き込むとともに、他のパラメータをサーボコントローラ50のメモリ領域に書き込む。
S003:ツールコントローラ40、サーボコントローラ50へそれぞれスタート信号を出力する。
S004:ツールコントローラ40からトルクアップ信号が入力されたか否か確認する。入力されていない場合は、S020にジャンプする。
S005:サーボコントローラ50へ割込停止信号を出力する。(これにより移動用モータ21が停止)
S006:ゲージツール10の移動位置(ゲージ13先端の移動位置)が通り検査用のNG検出位置以上、止まり検査用のNG検出位置以下であるか確認する。この範囲から外れている場合はS008にジャンプする。
S007:表示部に検査合格表示指令信号を出力しS011へジャンプする。
S008:ゲージツール10の移動位置(ゲージ13先端の移動位置)が通り検査用のNG検出位置以下である場合は、S010へジャンプする。
S009:表示部に止まり検査不合格表示指令信号を出力し、S011へジャンプする。
S010:表示部に通り検査不合格表示指令信号を出力する。
S011:ツールコントローラ40とサーボコントローラ50に復帰信号を出力する。
S012:サーボコントローラ50から復帰完了信号が入力されるのを待つ。
S013:エンド。
S020:サーボコントローラ50からC点到達信号(止まりNG距離に到達したことを示す信号)が入力されたか否か確認する。入力されていない場合はS004にジャンプする。
S021:ツールコントローラ40へ割込停止信号を出力し(これにより回転用モータ11が停止)、S009へジャンプする。
の各ステップで成るメイン制御処理を実行する。
【0021】
また、ツールコントローラ40は、図6に示すように、
S101:制御部60からスタート信号が入力されるのを待つ。
S102:メモリ領域に書き込まれた限界トルクを読み込む。
S103:回転用モータ11に正駆動信号を出力する。(回転用モータ11がゲージ13を螺入する方向に回転駆動)
S104:回転用モータ11の負荷電流値を取得し、これが限界トルクに相当する電流値に達したか(トルクアップしたか)否かを確認する。トルクアップしていない場合は、S112へジャンプする。
S105:制御部60にトルクアップ信号を出力する。
S106:回転用モータ11に停止信号を出力する。(回転用モータ11が駆動停止)
S107:制御部60から復帰信号が入力されるのを待つ。
S108:回転用モータ11に逆駆動信号を出力する。(回転用モータ11がゲージ13をめねじから抜き取る方向に回転駆動)
S109:サーボコントローラ50からD点復帰信号が入力されるのを待つ。
S110:回転用モータ11に停止信号を出力する。
S111:エンド
S112:制御部60から割込停止信号が入力されたか否かを確認し、入力された場合はS106にジャンプし、入力されていない場合はS104にジャンプする。
の各ステップで成るツールコントローラ制御処理を実行する。
【0022】
また、サーボコントローラ50は、図7に示すように、
S201:制御部60からスタート信号が入力されるのを待つ。
S202:メモリ領域に書き込まれた制御パラメータを読み込む。
S203:「早送り」の推力パラメータおよび速度パラメータで移動用モータ21を駆動する。
S204:エンコーダ22からのパルス信号を監視してB点に到達するのを待つ。
S205:「検査」の推力パラメータおよび速度パラメータで移動用モータ21を駆動する。
S206:エンコーダ22からのパルス信号によりC点に到達したか否かを確認する。到達していない場合はS218にジャンプする。
S207:制御部60にC点到達信号を出力する。
S208:移動用モータ21に停止信号を出力する。
S209:制御部60から復帰信号が入力されるのを待つ。
S210:「検査穴抜け」の推力パラメータおよび速度パラメータで移動用モータ21を駆動する。
S211:エンコーダ22からのパルス信号を監視してD点に到達するのを待つ。
S212:ツールコントローラ40にD点到達信号を出力する。(回転用モータ11の逆転駆動が停止する)
S213:「早戻り」の推力パラメータおよび速度パラメータで移動用モータ21を駆動する。
S214:エンコーダ22からのパルス信号を監視してE点に到達するのを待つ。
S215:移動用モータ21に停止信号を出力する。
S216:制御部60に復帰完了信号を出力する。
S217:エンド
S218:制御部60から割込停止信号が入力されたか否かを確認し、入力された場合はS208へジャンプし、入力されていない場合はS206へジャンプする。
の各ステップで成るサーボコントローラ制御処理を実行する。
【0023】
次に、本ねじ山検査装置1によるめねじ検査作業を説明する。本ねじ山検査装置1により被検査部品に形成されためねじの検査を行う場合、予め制御部60の設定テーブルに必要な制御パラメータを設定する。この制御パラメータの入力設定は、制御手段30に備えられたテンキー等の操作部(図示せず)から行う。
【0024】
締め付けるゲージ13のサイズに対応した制御パラメータを設定した後、制御手段30の検査スタートスイッチ(図示せず)が押され、これにより制御部60に検査スタート信号が入力される。これに応じてツールコントローラ40には限界トルク、サーボコントローラ50には制御パラメータの設定値がそれぞれ指定されるとともに、ツールコントローラ40、サーボコントローラ50にそれぞれスタート信号が出力される。
【0025】
前述のように各コントローラ40,50にスタート信号が入力されると、まず移動用モータ21が早送り時における推力パラメータと速度パラメータで回転駆動される。これによりボールねじ機構23が作動し、ゲージ13の先端前方方向へテーブル24およびゲージツール10を高速で前進移動させる。この時、前記フローティング機構12はロックされており、前記ゲージ13を安定して下降させることができる。また、移動用モータ21の駆動開始とほぼ同時に回転用モータ11も駆動を開始し、これによりゲージ13がめねじに螺入する方向に回転を始める。
【0026】
ゲージツール10が前進してゲージ13の先端がB点に到達すると、これを受けて移動用モータ21が検査時の推力パラメータおよび速度パラメータで駆動する。これによりゲージツール10は、ゲージ13の回転数とめねじのリードとで決まるゲージ13のめねじへのねじ込み速度と同じ速度に速度を制限されて下降する。また、これによってゲージ13に付与される推力は、ゲージツール10の自重のみによってかかる推力よりも低い所定の推力に制限される。さらに、この時フローティング機構12のロックは解除される。これらの相乗効果により、ゲージ13をめねじ入口に緩やかに到達させつつ芯合わせをして確実に螺合させることができ、しかも、めねじと過剰な摩擦を生じない適度な推力でもってめねじにねじ込むことが可能になる。
【0027】
前述の検査時の推力パラメータによる推力の制限は、ゲージ13をめねじに押圧する上で極めて重要な要素である。つまり、ゲージ13をめねじにねじ込んで検査を行う場合には、精度のよい検査を行うためのみならず、ゲージ13の損耗を抑えるためにも、できるだけ推力は小さくしてゲージ13とめねじとの摩擦を減らした方がよい。そこで、検査時の推力パラメータは、ゲージツール10の自重による推力をさらに減らすべく設定される。この推力パラメータにより、移動用モータ21は、ゲージツール10が下降する方向にボールねじ軸23aを回転させるよう駆動するのではなく、それとは逆方向に、かつゲージツール10の自重による下降を適度の抑制しつつ、これを妨げない程度の回転トルクでボールねじ軸23aを回転させるよう駆動する。換言すれば、移動用モータ21は、ゲージツール10を上昇させる方向であって、かつこれを上昇させられない弱い回転トルクでボールねじ軸23aが回転するよう駆動する。つまり、ゲージツール10が自重で下降するにともなって回転するボールねじ軸23aを適度に制動する訳である。この結果、ゲージツール10は、その自重が移動用モータ21の駆動による力に打ち勝つことで下降するため、ゲージ13をめねじに押圧する推力がゲージツール10の自重による推力より低く制限される。実際には、ゲージツール10がゲージ13のねじ込み速度で下降していくことになるため、ゲージ13はほとんどめねじに押圧されない。これによりゲージ13とめねじとの摩擦を極力減じて、ゲージ13の損耗を抑えることができるとともに、精度のよい検査を行うことが可能になる。
【0028】
なお、前記検査時の推力パラメータは、前述以外にもゲージツール10を積極的に下降させるように、すなわちゲージ13をめねじ押圧する推力がゲージツール10の自重による推力より大きくなるように移動用モータ21を駆動制御する設定値とすることもできる。このように推力パラメータの設定値に応じてゲージ13をめねじに螺入する時の推力を自在に変更することができ、様々な条件での検査が可能となる。
【0029】
ゲージ13は、先端側から軸方向に通りゲージ13a、止まりゲージ13bが順に形成されたものである。よって、まずはめねじに通りゲージ13aが螺入され、通り検査が行われ、続いて止まりゲージ13bがめねじに螺入されて止まり検査が行われる。この一連の検査において制御部60は、通り検査と止まり検査を区別することはない。つまり、制御部60はゲージ13に作用する回転負荷トルクが両検査で共通の限界トルクに達した時点で、B点からのゲージ13の軸方向の移動量(螺入量)が、通りNG距離以上で、かつ止まりNG距離以下であるかどうかを判定する。これにより通りゲージ13aと止まりゲージ13bが同軸上に形成されたゲージ13による検査を合理的な制御で行えるとともに、制御に必要なパラメータの設定も必要最小限とすることができる。
【0030】
ゲージ13の回転負荷トルクが限界トルクに達した時、B点からのゲージ13の移動位置が通りNG距離以上で、かつ止まりNG距離以下なら、そのめねじを検査合格とし、表示部には検査合格表示がなされる。また、通りNG距離に達していない時には、、そのめねじを通り検査不合格とし、表示部には通り検査不合格表示がなされる。また、限界トルクが発生せずにゲージ13の移動位置が止まりNG距離=C点に達してこれを超えた時は、そのめねじを止まり検査不合格とし、表示部には止まり検査不合格表示がなされる。
【0031】
回転用モータ11と移動用モータ21とは、ゲージツール10がC点を超えるか、限界トルクが発生するかすると共に駆動を一旦停止し、制御部60による検査合否判定が終了した後にそれぞれ再駆動される。これら各モータ11,21の再駆動により、ゲージ13がめねじから抜け出る方向に回転するとともに、ゲージツール10がD点に向かって上昇するようボールねじ軸23aが回転する。この時、移動用モータ21は検査穴抜け時の推力パラメータと速度パラメータで駆動される。この結果、ボールねじ軸23aの回転トルクは、ゲージツール10の自重によってボールねじ軸23aにかかる回転トルクよりも若干大きいものとなる。よって、ゲージ13の上昇方向の推力は、めねじにゲージ13が僅かに押圧される程度の力に制限される。また、ゲージツール10の上昇速度は、ゲージ13の回転数とめねじのリードで決まるゲージ13のねじ戻し速度と同じ速度に制御される。この結果、実際にはゲージ13はめねじにほとんど押圧されることなく、D点まで上昇し、めねじから抜け出ることができる。
【0032】
前記検査穴抜けが完了してゲージ13がD点まで上昇復帰すると、回転用モータ11の逆転駆動は停止される。また、移動用モータ21は早戻り時における推力パラメータと速度パラメータによって駆動制御され、これによってゲージツール10は待機位置まで高速で上昇復帰する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るねじ山検査装置の概略構成図である。
【図2】移動用モータの駆動切換の関係を示す説明図である。
【図3】制御パラメータの設定テーブルの一例を示す説明図である。
【図4】限界ゲージのねじ込み位置の説明図である。
【図5】制御部のメイン制御処理を示すフローチャートである。
【図6】ツールコントローラの制御処理を示すフローチャートである。
【図7】サーボコントローラの制御処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0034】
1 ねじ山検査装置
10 ゲージツール
11 ゲージ回転用モータ
11a ゲージ回転用モータ出力軸
12 フローティング機構
13 限界ゲージ
20 往復移動手段
21 移動用モータ
22 エンコーダ
23 ボールねじ機構
23a ボールねじ軸
23b 軸受け部
24 テーブル
30 制御手段
40 ツールコントローラ
50 サーボコントローラ
60 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸上に先端側から通りゲージと止まりゲージを順に形成して成る限界ゲージを回転駆動源の駆動を受けて回転可能に構成したゲージツールと、このゲージツールを往復移動操作する往復移動手段とを有するねじ山検査装置であって、
通り検査合否判定の境界位置と止まり検査合否判定の境界位置と通り検査および止まり検査に共通の限界トルクとを予め設定し、前記往復移動手段によりゲージツールを移動させながら限界ゲージを回転させて被検査部品のねじ部にねじ込み、その過程で限界ゲージに作用する回転負荷トルクを検出し、この回転負荷トルクが予め定められた限界トルクを超えた時の限界ゲージのねじ込み位置が前記各境界位置によって規定される範囲内に収まっているか否かに応じて通り検査の合否または止まり検査の合否を判断する制御手段を備えていることを特徴とするねじ山検査装置。
【請求項2】
制御手段は、往復移動手段を制御してゲージツールを被検査部品に押圧する推力を調節することを特徴とする請求項1に記載のねじ山検査装置。
【請求項3】
ゲージツールには、限界ゲージをその往復移動方向に直交する方向に所定量移動可能に支持するフローティング機構を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のねじ山検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−261801(P2008−261801A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106285(P2007−106285)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【出願人】(000227467)日東精工株式会社 (263)
【Fターム(参考)】