説明

はんだ、電子部品、及び電子部品の製造方法

【課題】はんだ付け後の再加熱によって溶融しにくく、機械的特性や耐食性に優れたはんだ材料を提供する。
【解決手段】はんだ材料は、7質量%以上、9質量%以下のCuと、0.001質量%以上、0.05質量%以下のSiと、0.001質量%以上、0.05質量%以下のTiとを含み、残部をSnとした第1のはんだ粉と、表面をAgで被覆したCu粉と、前記第1のはんだ粉及びCu粉と、これらの原料と混合されるフラックスと、を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板上に表面実装部品を実装した電子部品、特に表面実装部品を封止した電子部品に好適なはんだ材料、このはんだ材料を含んだ電子部品及びこのはんだ材料を用いた電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックコンデンサやSAW(Surface Acoustic Wave:表面弾性波)素子チップなどのような基板上に表面実装される小型の電子部品(以下、表面実装部品と呼ぶ)はプリント配線基板などの基板に実装された後、湿気や搬送時の衝撃などによる破壊などを防ぐために封止されて1つの電子部品ユニット(以下、このユニットを電子部品と呼ぶ)として取り扱われる場合がある。封止は、例えばエポキシ樹脂を主成分とした熱硬化性成形材料を基板上に供給し、表面実装部品群の表面全体を覆った後、当該成形材料を硬化させることなどにより行われる。
【0003】
基板に表面実装部品を実装する方法として、現在はリフロー法が広く用いられている。リフロー法は、はんだペースト、クリームはんだなどと呼ばれるペースト状のはんだ材料を基板のパターンに合わせてあらかじめ印刷、ディスペンスしておき、このはんだ材料上に表面実装部品を載置してから、リフロー炉と呼ばれる加熱炉内に当該基板を搬入することにより行われる。はんだ材料は、基板がリフロー炉内を通過する間に基板上で溶融し、これにより表面実装部品の基板へのはんだ付けが実行される。この方法によれば、一度のリフロー処理で複数の表面実装部品を同一の基板にはんだ付けすることができるため、基板上に高密度に表面実装部品を配置することが可能である。
【0004】
携帯電話などの電子機器の組み立て工程においては、上記のように作成された多数の電子部品(例えば複数の表面実装部品を実装して封止された電子部品)が基板に実装される。この組み立て工程における電子部品の実装においても上述のような利点があることからリフロー法が採用されることが多い。
【0005】
しかしながらリフロー法は、前述の通りリフロー炉を用いてはんだが溶ける程度の熱を基板周囲から与えることによってはんだ付けを行う方法であるため、電子部品が載置された基板が炉内を通過する際に基板上のはんだのみならず当該電子部品の内部のはんだまでもが溶けてしまう場合がある。
【0006】
電子部品内部のはんだが溶けた場合に発生する現象を図6(a)〜図6(c)を参照しながら説明する。図6(a)はリフロー炉内に搬入される前の電子部品内部の状態を示した拡大縦断面図であり、はんだ材料41は、表面実装部品3Aの両端に設けられた電極32と、基板21上に形成された電極であるマウントパッド22とを接合することで基板21上に表面実装部品3Aを固定すると共に、これらの電極32、22を電気的に接続している。図中51は、表面実装部品3Aを封止する封止材料である。
【0007】
このような構成を備えた電子部品をリフロー炉内に搬入すると、電子部品内部のはんだ材料41までもが加熱されて溶融を開始することがある。はんだなどの金属は、固体から液体になると体積が膨張するので、電子部品内部ではんだ材料41が溶融し、体積膨張すると、膨張したはんだ材料41が表面実装部品3A本体や基板21と封止材料51との間の界面を押し広げてしまうおそれがある(図6(b))。
【0008】
この結果、押し広げられた部材間3A、21、51の隙間内に、溶融したはんだ材料41が広がり、例えば図6(c)に示すように表面実装部品3Aの電極32、32間を短絡して故障を引き起こすおそれがある。
【0009】
ここで特許文献1には、電子部品を機器に実装するときにはんだ材料の再溶融が起こらないようにするために、はんだ材料の組成を工夫して溶融を開始する温度(固相線温度)を261℃以上に高める技術が記載されている。
【0010】
また特許文献2には、例えば鉛フリーはんだとして広く用いられているSn-3.0Ag-0.5Cuはんだ(はんだ合金に対してAgを3.0重量%、Cuを0.5重量%含み、残部をSnとしたはんだ)に、例えば表面をAgの金属膜で被覆したCu粉を分散させたはんだ材料が記載されている。
【0011】
なお特許文献3に記載の特許請求の範囲には、0.01重量%〜6.0重量%のCuと、0.001重量%〜1.0重量%のTiと、0.001重量%〜1.0%のSiとを含み、残部をSnとするはんだ材料が形式上含まれている。しかしながら、特許文献3の明細書中には当該はんだ材料に係る具体的な実施例の記載もなく、このはんだ材料がどの程度の溶融温度(液相線温度)を持ち、いかなる特性を備えているかについては明らかでない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2003−154485号公報:請求項1
【特許文献2】特開2006−102769号公報:0024段落
【特許文献3】特開2001−58287号公報:請求項1、5、6、10
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1に記載のはんだ材料によれば、従来のはんだ材料に比べて溶融温度が高いので、電子部品の表面実装時における当該はんだ材料の溶融、体積膨張に伴う故障を引き起こしにくい。しかしながら、例えば261℃以上にまで溶融温度が高くなると、1回目のリフロー処理を実施する際におけるリフロー炉の消耗が激しくなったり、加熱による部品の劣化を起こしたりする懸念がある。
【0014】
また特許文献2に記載のはんだ材料によれば、はんだ合金より融点の高いCu粉をはんだ材料中に分散させることにより、溶融するはんだ材料の割合を減らし、溶融時の体積膨張を抑制することができる。また、表面実装部品をはんだ付けする際の1回目のはんだ材料の溶融時に、Cu粉の表面の金属膜を構成するAgやCu粉本体を構成するCuをはんだ合金中に拡散させて、当該はんだ合金の液相線温度を上げることにより、電子部品の実装時における2回目以降のリフロー処理時に、電子部品内のはんだ材料が溶融しにくくなるようにしている。
【0015】
ところが例えばAgやCuの拡散が十分でなかった領域などでは、電子部品内のはんだ材料が溶融する可能性が残っている。また例えば、Cu粉の混合割合が少ない場合などには体積膨張を十分に抑制できない場合もあり、さらなる改善の余地がある。
【0016】
本発明はこのような背景に基づいてなされたものであり、その目的は、はんだ付け後の再加熱によって溶融しにくく、機械的特性や耐食性に優れたはんだ材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明に係るはんだ材料は、7質量%以上、9質量%以下のCuと、0.001質量%以上、0.05質量%以下のSiと、0.001質量%以上、0.05質量%以下のTiとを含み、残部をSnとした第1のはんだ粉と、
表面をAgで被覆したCu粉と、
前記第1のはんだ粉及びCu粉と混合されるフラックスと、を含むことを特徴とする。
【0018】
前記はんだ材料は、以下の特徴を備えていてもよい。
(a)前記第1のはんだ粉とCu粉との合計質量のうち、Cu粉の含有割合を10質量%以上、35質量%以下とし、残部を第1のはんだ粉としたこと。
(b)さらに、2.9質量%以上、3.1質量%以下のAgと、0.4質量%以上、0.6質量%以下のCuとを含み、残部をSnとした第2のはんだ粉を含むこと。
(c)(b)において前記第1のはんだ粉と第2のはんだ粉とCu粉との合計の質量中、Cu粉の含有割合を10質量%以上、35質量%以下とし、第2のはんだ粉の含有割合を0.1質量%以上、60質量%以下とし、残部を第1のはんだ粉としたこと。
【0019】
また他の発明に係るはんだ材料は、7質量%以上、9質量%以下のCuと、0.001質量%以上、0.05質量%以下のSiと、0.001質量%以上、0.05質量%以下のTiとを含み、残部をSnとしたはんだ組成物を含むことを特徴とする。
【0020】
さらに本発明に係る電子部品は、配線基板上に上述の各はんだ材料を用いて表面実装部品を実装したことを特徴とする。
また他の発明に係る電子部品は、配線基板上に上述の各はんだ材料を用いて表面実装部品を実装し、封止材料により封止して構成されたことを特徴とする。
【0021】
次いで、本発明に係る電子部品の製造方法は、配線基板の電極上に上述の各はんだ材料を供給する工程と、
このはんだ材料の上に表面実装部品を載せる工程と、
前記はんだ材料を加熱して溶融することにより表面実装部品の電極と配線基板の電極とを電気的に接続する工程と、
前記表面実装部品を封止材料により封止する工程と、
を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、Cuを7〜9質量%、Siを0.001〜0.05質量%、Tiを0.001〜0.05質量%含み、残部をSnとする第1のはんだ粉は、235℃程度の温度で溶融を開始する。このため、第1のはんだ粉を含むはんだ材料を用いて表面実装部品を実装、封止して得た電子部品を例えば一般的に用いられているSn-3.0Ag-0.5Cu(固相線温度が217℃程度)のはんだ材料にて機器に実装する場合にあっても電子部品内のはんだ材料が溶融しにくく、はんだ材料の溶融、体積膨張に伴う電子部品の故障の発生を抑制することができる。
【0023】
また、第1のはんだ粉は、微量添加成分としてSi及びTiを含んでいる。Siは、はんだ付けを行う際のはんだ材料の流動性を向上させ、また脱酸作用がありはんだ結晶組織を微細化させる一方、単独の添加でははんだ付け後の合金の引張強度を低下させる特徴を有しており、Tiは、はんだ付け後の合金の結晶組織を緻密にして機械的強度、耐熱性、耐食性を向上させる一方、単独の添加では急激に溶融温度が上がり結晶組織内、及びはんだ付け後のはんだ表面にドロス(酸化物)が発生する特徴を有している。こうした特性を持つSiとTiの双方を添加することにより、互いの元素の長所を発揮させつつ短所を補って、はんだ付けがしやすく、且つ、機械的強度や耐熱性、耐食性の高いはんだ材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施の形態に係るはんだ材料を用いて電子部品を作成する工程を示す説明図である。
【図2】前記電子部品に表面実装部品をはんだ付けするリフロー時の温度プロファイルの一例を示す説明図である。
【図3】前記基板と表面実装部品との接合部を示す拡大図である。
【図4】前記接合部における、はんだ材料の状態を示した模式図である。
【図5】参考例に係るはんだ合金の拡大写真である。
【図6】従来のはんだを用いてリフローを行った場合における電子部品内部のはんだの動態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に好ましい実施の形態を挙げて本発明に係るはんだ材料を詳細に説明する。本実施形態に係るはんだ材料は、7質量%以上、9質量%以下のCuと、0.001質量%以上、0.05質量%以下のSiと、0.001質量%以上、0.05質量%以下のTiとを含み、残部をSnとした第1のはんだ粉と、2.9質量%以上、3.1質量%以下のAgと、0.4質量%以上、0.6質量%以下のCuとを含み、残部をSnとした第2のはんだ粉と、表面をAgで被覆したCu粉と、フラックスとを混合してなるペースト状のはんだ材料(はんだペースト)として構成される。
【0026】
第1のはんだ粉を構成するはんだ合金において、Cuの含有量が7質量%未満であると、機器への電子部品の実装などに一般的に用いられるSn-3.0Ag-0.5Cuはんだなどと比較して、十分に高い固相線温度が得られない。一方でCuの含有量が9質量%を超えると、液相線温度が上昇し、例えば後述のアトマイズ法などによりはんだ粉を製造する際などに、製造装置の加熱炉の加熱性能の強化や耐熱性の向上などの特別な対策が必要となって製造コストが高くなるおそれがある。このため、第1のはんだ粉におけるCuの含有量は7質量%以上、9質量%以下が好ましく、8質量%がより好ましい。
【0027】
また微量添加元素であるSiの含有量が0.001質量%未満である場合には、はんだ付け時の十分な流動性が得られない一方、0.05質量%を越えると、はんだ合金の引張強度を低下させたり、はんだドロス(酸化物)が発生しやすくなる。また、Tiの含有量が0.001質量%未満である場合には、はんだ合金の機械的強度や耐熱性、耐食性を向上させる効果が不十分である一方、0.05質量%を超えると、ドロス(酸化物)が発生するおそれが高い。
【0028】
また微量添加元素のSi及びTiは、いずれか一方のみを添加した場合には、各元素の短所が発現しやすくなる。これに対して、SiとTiとの双方を添加した場合には、互いの元素の長所を発揮させつつ短所を補って、はんだ付けがしやすく、且つ、機械的強度や耐熱性、耐食性の高いはんだ材料を得ることができる。
【0029】
以上に説明した理由から、第1のはんだ粉は、Cuを7質量%〜9質量%、Siを0.001質量%〜0.05質量%、Tiを0.001質量%〜0.05質量%含み、残部をSnとした組成を持つことが好ましい。さらに好適な例としてはSn-8.0Cu-0.025Si-0.025Tiはんだ(はんだ合金に対してCuを8.0重量%、Siを0.025重量%、Tiを0.025重量%含み、残部をSnとしたはんだ)が挙げられる。但し、第1のはんだ粉には、例えばJIS−Z3282に定める程度の不純物成分を含んでいてもよい。
【0030】
第2のはんだ粉は、Agを2.9質量%〜3.1質量%、Cuを0.4質量%〜0.6質量%含み、残部をSnとした組成を持つことが好ましく、さらに好適な例としては、鉛フリーはんだとして一般的に利用されているSn-3.0Ag-0.5Cuはんだを挙げることができる。第2のはんだ粉についても、例えばJISのZ3282に定める不純物成分を含んでいてもよい。
【0031】
第1のはんだ粉の好適例であるSn-8.0Cu-0.025Si-0.025Tiはんだは、その固相線温度がおよそ235℃、液相線温度がおよそ288℃である。また第2のはんだ粉の好適例であるSn-3.0Ag-0.5Cuはんだは、固相線温度がおよそ217℃、液相線温度がおよそ220℃である。このように、第2のはんだ粉は第1のはんだ粉よりも溶融を開始する温度が低いので、はんだ付けの際に第1のはんだ粉より先に溶融を開始して、はんだ材料全体の濡れ性を高めたり、第1のはんだ粉の溶融を開始しやすくする呼び水的な役割を果たしたりする。
【0032】
また、はんだ付け後は、これら第1、第2のはんだを構成する金属が互いに交じり合って新たな組成のはんだ合金を形成することになる。そしてこの新たな組成のはんだ合金の固相線温度は、第1のはんだと第2のはんだの固相線温度の間に位置すると予想され、第2のはんだ粉に比べて溶融しにくくなる。そして、第2のはんだ粉の好適例であるSn-3.0Ag-0.5Cuはんだは既述のように鉛フリーはんだとして広く採用されているものであり、例えば本実施の形態のはんだ材料を用いて表面実装部品のはんだ付けを行った電子部品を機器に実装する際にも採用される可能性が高い。このような場合に、電子部品内部のはんだ合金が、Sn-3.0Ag-0.5Cuはんだよりも高い固相線を持っていることにより、電子部品内部のはんだ合金の再溶融を抑制し、背景技術にて図6(a)〜図6(c)を用いて説明した短絡などの故障の発生を抑えることができる。
【0033】
第1、第2のはんだ粉は、例えば加熱したるつぼ内ではんだ粉の原料となる金属を溶融して、窒素ガスなどの気流中に噴霧するガスアトマイズ法や、高速で回転する回転盤上に前記溶融金属を連続供給し、遠心力を利用して溶融金属を回転盤の周囲に噴霧する遠心アトマイズ法などにより製造することができるが、例えばターボミル、ローラミル、金属粉ミル、遠心力粉砕機、パルベライザーなどの公知の粉砕機を用いた粉砕法など、他の手法により製造してもよい。
【0034】
これらのはんだ粉の粒子径は、例えば粒子画像計測やゼータ電位測定などによる公知の粒度分布測定法を用いた球相当径で平均粒径5μm〜50μmの範囲が好ましく、5μm〜30μmの範囲がさらに好ましい。粒子が大きすぎるとはんだペーストの基板への印刷性が悪くなる一方で、粒子が小さすぎるとはんだペーストが加熱された際におけるはんだの濡れ性が悪くなる原因となる。また各はんだ粉の粒子形状は、はんだ材料中の分散性を向上させる目的から、球形または略球形であることが好ましいが、表面に凹凸を持った構造であってもよい。さらにまた粒子径の計測方法は、先に例示した方法に限定されるものではなく、電気的検知帯方式やレーザー回折式により粒径分布を求めてもよく、これらに加えて化学吸着法などにより粒子の比表面積や細孔分布を測定してもよい。
【0035】
本実施の形態に係るはんだ材料中に含まれるCu粉は、第1、第2のはんだ粉よりはるかに高い融点を持ち(銅の融点1083℃)、表面実装部品やこれを含む電子部品のはんだ付けの際に溶融しない。このためCu粉は、はんだ材料が溶融した場合であっても溶融はんだ中に固体のまま存在し、はんだ材料全体の体積膨張を抑える役割を果たしている。
【0036】
また、当該Cu粉は例えばAgによって被覆されており、表面実装部品のはんだ付けの際に、Cu粉表面に被覆されたAgがはんだ材料との界面における金属拡散の効果などによりはんだ材料中にわずかずつ溶出し、またAgの下層のCuも同様の理由によりはんだ材料中にわずかに溶出して、はんだ付け後のはんだ合金の液相線の温度を上昇させる機能を持っている。はんだ合金の液相温度が上昇すると、電子部品中のはんだ合金が溶融しにくくなり、また溶融したとしても固相線と液相線との間で液体と固体とが混在し、シャーベット状になっているはんだ中の液体の割合を減らして体積膨張を抑制することができる。
【0037】
またCu粉の表面に被覆されたAgは、第2のはんだ粉に含まれるAgと同一の金属であり、はんだ材料とCu粉との親和性(なじみ性)を向上させ、はんだ材料中におけるCu粉の分散性を向上させる役割も果たしている。この結果、はんだ付け後のはんだ合金内の不連続点の発生が抑えられ、はんだ材料中にCu粉を添加したとしてもはんだ材料全体のはんだ付け性を損なわない。ここで親和性が強いとは、はんだ付け後のはんだ合金との間で金属間化合物を生成する作用があることを意味し、より具体的にはCu粉がほとんど凝集せずにはんだ合金中に分散している状態が得られることをいう。
【0038】
Cu粉は、例えばガスアトマイズ法や水アトマイズ法により製造してもよいし、ボールミルを用いた粉砕法により製造してもよい。Ag被覆後のCu粉の粒径は、例えば既述の各はんだ粉と同程度に形成する場合が考えられ、例えば粒子画像計測で平均粒径5μm〜50μmの範囲が好ましく、5μm〜30μmの範囲がさらに好ましい。Agを被覆する前のCu粉は、はんだ材料中における分散性を向上させる目的から、球形又は略球形であることが好ましいが、表面に凹凸を持った構造であってもよい。
【0039】
Cu粉の表面にAgを被覆する手法としては、Cuの本体部にほぼ均一な膜厚を簡便に形成できる点からメッキ法を用いることが好ましい。メッキ法としては電解メッキ、無電解メッキなど、公知のメッキ法のいずれのであっても用いることができるが、メッキ法以外の手法で金属膜を形成するようにしてもよい。
【0040】
Cu粉に対するAgの被覆量は、特に制限されず、はんだ合金が溶融した際の体積膨張を抑制すると共に、はんだ材料との親和性を向上させるCu粉を添加する技術の趣旨が損なわれない範囲の量を用いることができ、例えば被覆されたAgを含むCu粉全体の質量に対するAgの質量が5〜20質量%であることが好ましく、さらに好ましくは8〜12質量%である。
【0041】
次に第1、第2のはんだ粉、Cu粉の合計質量に対する各構成材料の混合割合について説明すると、Cu粉は10質量%〜35重量%含まれていることが好ましい。はんだ材料中に加えるCu粉の量が多すぎると、生成するはんだ材料中のはんだ組成物の含有率が低くなり、はんだ材料としての機能が果たされなくなる。その一方で、Cu粉を加える量が少なすぎるとはんだ材料溶融時の体積膨張を抑制する効果やAgやCuをはんだ合金中に溶出させて液相線の温度を上昇させる効果が得られにくくなる。
【0042】
また第2のはんだ粉は、第1、第2のはんだ粉、Cu粉の合計質量に対して0.1質量%〜60質量%含まれていることが好ましい。はんだ材料中に加える第2のはんだ粉の含有量が多すぎると、第1のはんだ粉の含有量が少なくなり、固相線の温度が低下して電子部品内のはんだ合金が再溶融しやすくなる。その一方で、第2のはんだ粉の含有量が少なすぎると、第2のはんだ粉を添加することによって得られるはんだ材料全体の濡れ性の向上や、第1のはんだ粉の溶融を開始しやすくする効果が得られにくくなる。
【0043】
次に、第1、第2のはんだ粉及びCu粉と混合されてはんだ材料を構成するフラックスについて説明する。フラックスは例えばアミンハロゲン塩、多価アルコール、ロジンなどの高分子材料などを混合した公知のフラックスを使用することができ、各はんだ粉及びCu粉と混合されてペースト状になるものが用いられる。また、フラックスは活性度の違いに関わりなく使用することができるが、はんだ付け後にフラックスを除去する場合には、水洗可能な水溶性のフラックスが好ましい。フラックスは、例えばはんだ材料全体の5重量%〜20重量%程度含有される。
【0044】
上述のはんだ材料を構成する第1、第2のはんだ粉、Cu粉ならびにフラックスは、互いに混練することによりペースト状のはんだ材料が製造される。混練は、例えばバンバリーミキサー、ニーダーなどの公知の機器を用いて行うことができる。ただしはんだ材料内で例えば第1のはんだ粉や第2のはんだ粉が凝集すると、はんだ付けされにくくなったり、はんだ付け後に溶解しやすくなったりする領域が点在し、またCu粉が凝集すると、加熱時に良好な接合性が得られない領域が点在することになるので、Cu粉は略均一に分散していることが好ましい。
【0045】
また、最終的に生成するペースト状のはんだ材料の粘度が高すぎると当該はんだ材料を基板へ印刷する際にかすれが生じる。その一方で、粘度が低すぎると当該はんだ材料を基板へ印刷する際に印刷だれ、にじみが生じる。従って、ペースト状のはんだ材料の粘度は、25℃において例えば100〜300Pa・sであることが好ましく、より好ましくは、190〜230Pa・sである。
【0046】
次に、図1を参照しながら第1のはんだ粉(Sn-8.0Cu-0.025Si-0.025Ti)、第2のはんだ粉(Sn-3.0Ag-0.5Cu)及びAgにて被覆したCu粉を含むはんだ材料(はんだペースト)41を用いて電子部品を製造する実施の形態について具体的に説明する。
【0047】
以下に説明する電子部品の製造方法は、1個の電子部品中に多数の表面実装部品群を実装する場合にも適用することができるが、簡単のため各電子部品に2つの表面実装部品3A、3Bを実装する場合を例に挙げて説明する。ここで例えば表面実装部品3Aの32は電極、33はSAWチップ、34はボンディングワイヤ、35はSAWチップ33を支持する支持板、36はインターポーザー、37はカバー部材である。また表面実装部品3Bの31はチップ部品、32は電極である。
【0048】
図1(a)に示すように先ず、基板21上には、電極であるマウントパッド22に合わせた開口部を持つメタルマスク52が配置される。次いではんだ印刷機により基板21にはんだ材料41を供給しながら、スキージ61によってはんだ材料41を押し広げ、メタルマスク52の開口部を介して基板21上にはんだ材料41を塗布する。
【0049】
この結果、基板21にはマウントパッド22にあわせた形状のはんだ材料41が印刷される。なお、はんだ材料41を供給する手段としてはディスペンス方式もあるが生産効率の点から上記に説明した印刷方式を用いることが好ましい。また、はんだ印刷機としてはいずれの従来のはんだ印刷機であっても使用することができる。
【0050】
次いで基板21の表面からメタルマスク52を取り除き、表面実装部品3A、3Bの夫々の電極32がはんだ材料41と接触するように、基板21上の予め定められた位置にこれらの表面実装部品3A、3Bを載置する。
【0051】
しかる後、表面実装部品3A、3Bを配置した基板21をリフロー炉内に搬入して加熱を実行する。リフローの方式としては熱源として赤外線ヒーターを用いる赤外線リフロー、窒素ガス(N)雰囲気下で加熱を行うNリフローなどの様々な方式が適用できるが、表面実装部品の表面の温度を低くでき、さらにはんだの濡れ性を向上させるなどの利点を持つNリフローが好ましく用いられる。なお、リフロー炉内の酸素分圧は100ppm以下とすることが好ましい。
【0052】
図2は電子部品を搬入した後におけるリフロー炉内の温度の経時変化を示す温度プロファイル図の一例である。図2の横軸は加熱を開始してからの時間[秒]を示し、縦軸はリフロー炉内の温度[℃]を示している。また破線で示した温度プロファイルは、温度プロファイルの上限、下限を示す温度調節範囲であり、実線はこの温度調節範囲内で実行される温度プロファイルの典型例を示している。実線で示した温度プロファイル例によれば、まずリフロー炉内の温度を例えば130℃程度まで昇温し、例えば60秒〜90秒程度の時間をかけながら190℃程度までさらに昇温を行う。この期間中にはんだ材料41のプレヒートが行われ、フラックス内の多価アルコールなどの溶剤が蒸発すると共に、フラックスが活性化する。
【0053】
プレヒートを終えたら第2のはんだ粉の固相線温度を超える217℃以上の温度にリフロー炉内を昇温し本加熱を行う。リフロー炉内の温度が217℃を超えると、第2のはんだ粉が溶融を開始し、マウントパッド22やCu粉の表面ではんだ材料41が濡れ始め、当該はんだ材料内にCu粉の表面のAgやその下層のCuが溶出していく。
【0054】
さらにリフロー炉を昇温し、炉内の温度が235℃を超えたら、第1のはんだ粉の溶融が始まり、第1のはんだ粉、第2のはんだ粉及びCu粉から溶出したAgやCuが渾然一体となって新たな組成のSn、Cu、Ag、Si、Tiを含んだはんだ合金が形成される。本加熱は例えば235℃〜240℃の温度で60秒程度行われる。この加熱温度は一般的な鉛フリーはんだであるSn-3.0Ag-0.5Cuはんだの溶融温度(217℃〜218℃)との温度差が20℃以下であるので表面実装部品に与える影響が小さい。またこの温度範囲では、Cu粉は固体の状態で粉体形状を保ったままはんだ合金内に分散している。
【0055】
しかる後、リフロー炉内を冷却するとはんだ合金が固化し、表面実装部品3A、3Bの側の電極32と基板21側のマウントパッド22とが互いに固着され、これらの部品3A、3B、22が電気的に接続される。こうして表面実装部品3A、3Bは基板21に実装された状態となる(図1(b))。
【0056】
表面実装部品3A、3Bの実装を終えたら、基板をリフロー炉から搬出し、はんだ材料41及び各電子部品上に付着しているフラックスを水洗して除去する。
【0057】
フラックスの除去後、基板21上の各表面実装部品3A、3Bの表面を覆うように基板21上に封止材料を供給し、当該封止材料51を硬化させることで、基板21上の各表面実装部品3A、3Bを封止する(図1(c))。封止材料の供給はディスペンサーや印刷機などを用い、封止材料51の硬化には加熱炉などを用いるとよい。その他の方法として、基板21上の表面実装部品群を金型で覆い、金型内に液状の封止材料を圧入して、当該金型を加熱することで当該封止材料51を硬化させてもよい。
【0058】
封止材料51の硬化を終えたら図1(d)に示すように例えば表面実装部品3A、3Bを1つずつ含んだ単位領域ごとに封止材料51及び基板21を切断して電子部品が作成される。ただし電子部品内に含まれる表面実装部品は複数個に限らず、1つ以上の表面実装部品を含んでいれば本実施の形態の電子部品に含まれる。
【0059】
また上述した電子部品の製造方法では基板21の片面のみに表面実装部品3A、Bを実装した例を示したが、基板21の両面に表面実装部品を実装する構成としてもよい。例えば上述の実施形態と同様の工程により、基板21の片面に対して表面実装部品の実装を行った後に、他面側にも同様の手法を用いて他の表面実装部品の実装を行えばよい。このように基板21の両面に表面実装部品を実装する場合には、基板の片面のみに表面実装部品の実装が終了した直後に洗浄作業を行わず、基板の両面に表面実装部品が実装された後に、洗浄作業を行ってフラックスを除去してもよい。
【0060】
図3は、表面実装部品3Aの電極32とマウントパッド21との接合部を示した拡大図であり、はんだ材料41中にCu粉42が分散されている様子を模式的に示している。また図4は、前記はんだ材料41中におけるCu粉42の様子を示している。電子部品内においては、第1のはんだ粉、第2のはんだ粉が溶融し、さらにCu粉のAgやCuが溶出して形成されたはんだ合金41中にCu粉42が分散した状態のはんだ材料によって各表面実装部品3A、3Bの電極32と基板側21のマウントパッド22とが電気的に接続された状態となっている。
【0061】
このような電子部品を携帯電話などの機器に実装する際、鉛フリーはんだとして一般的なSn-3.0Ag-0.5Cuはんだを用いると、当該電子部品はリフロー炉内で例えば217℃〜245℃程度に加熱される。このとき、第1のはんだ粉、第2のはんだ粉が溶融し、ここにCu粉からAgやCuが溶出して形成されたはんだ合金41は、Sn-3.0Ag-0.5Cuはんだよりも高い溶融温度を持っており、当該温度領域では溶融しにくい。
【0062】
また例えば第1のはんだ粉と第2のはんだ粉とが十分に融合していなかったり、また第1のはんだ粉の混合割合が小さかったりしたことなどにより、はんだ合金41の一部が溶融したとしても、溶融したはんだ合金中に固体のCu粉が分散されていることによりその体積膨張を抑えることができる。この結果、背景技術にて説明した表面実装部品3A及び基板21と封止材料51との間の界面へのはんだ材料の侵入の程度が小さくなり、電極32、32間の短絡を引き起こして電子部品の故障に至るおそれが小さくなる。なお電子機器をリペアーするために電子部品を配線基板から取り外す場合でも同様な効果が得られる。
【0063】
ここで図4には表面に被覆したAgがはんだ合金41内にすべて溶出し、Cuからなる本体が剥き出しになったCu粉42を示してあるが、Cu粉42にはAgの被覆が残存していてもよい。Cu粉42の表面に被覆されたAgの一部が溶出するだけでもはんだ合金の液相線の温度を上昇させる効果が得られる。
【0064】
本実施の形態に係るはんだ材料によれば以下の効果がある。Cuを7〜9質量%、Siを0.001〜0.05質量%、Tiを0.001〜0.05質量%含み、残部をSnとする第1のはんだ粉は、235℃程度の温度で溶融を開始する。このため、第1のはんだ粉を含むはんだ材料を用いて表面実装部品を実装、封止して得た電子部品を例えば一般的に用いられているSn-3.0Ag-0.5Cu(固相線温度が217℃程度)のはんだ材料にて機器に実装する場合にあっても電子部品内のはんだ材料が溶融しにくく、はんだ材料の溶融、体積膨張に伴う電子部品の故障の発生を抑制することができる。
また第1のはんだ粉に微量添加元素としてSiとTiの双方を添加することにより、機械的強度や耐熱性、耐食性の高いはんだ材料を得ることができる。
【0065】
さらに第1のはんだ粉に第2のはんだ粉を加えることにより、はんだ付けの際に第2のはんだ粉が第1のはんだ粉より先に溶融を開始して、はんだ材料全体の濡れ性を高めたり、第1のはんだ粉の溶融を開始しやすくしたりすることができる。
【0066】
これらに加え、はんだ材料中にAgで被覆したCu粉を加えることにより、表面実装部品の実装時に用いたはんだ合金が、当該電子部品の電子機器側への実装時に溶融した場合であっても、溶融したはんだ合金内にCu粉が固体の状態で分散しているので、溶融部位の体積膨張を抑制することができる。またこのCu粉がAgにて被覆されていることにより、当該Agやその下層側のCuを表面実装部品のはんだ付け時にはんだ合金中に溶出させ、はんだ合金の液相線温度を上昇させて溶融するはんだの割合を低下させることによりその体積膨張を抑制する効果もある。
【0067】
以上に説明した実施の形態においては、第1のはんだ粉、第2のはんだ粉及びCu粉をフラックスと混合して得られたペースト状のはんだ材料について説明したが、第2のはんだ粉を含んでいないはんだ材料についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0068】
例えば第1のはんだ粉とAgで被覆したCu粉とにフラックスを混合して得られたペースト状のはんだ材料であっても一般的に用いられているSn-3.0Ag-0.5Cuはんだに比べて溶融しにくいという効果、溶融した場合であってもCu粉の存在やAgの拡散により体積膨張が抑えられるという効果を得ることができる。この場合には、第1のはんだ粉とCu粉との合計質量のうち、Cu粉の含有割合を10質量%〜35質量%とし、残部を第1のはんだ粉とすることが好適である。
【0069】
さらには、Cuを7〜9質量%、Siを0.001〜0.05質量%、Tiを0.001〜0.05質量%含み、残部をSnとしたはんだ組成物からなり、Cu粉を含まず、ペースト状ではないはんだ材料、例えば細線はんだや箔はんだであってもSn-3.0Ag-0.5Cuはんだに比べて溶融しにくいという効果がある。ここで本実施の形態における「はんだ組成物」とは、はんだとしての役割を果たす一定の組成を持った合金をいう。
【実施例】
【0070】
(実験1)
はんだ合金に微量元素を添加する効果を確認するため、Si及びTiを微量元素として含むはんだ合金、Siのみを微量元素として含むはんだ合金、これらの微量元素を含まないはんだ合金についての機械的特性を調べた。
【0071】
A.実験条件
以下の各参考例に示すはんだ合金について引張試験(引張強さ、破断伸び)を行うと共に線膨張係数を測定した。引張試験はJIS-Z3198−2に記載の引張試験方法に準じ、引張強さ及び破断伸びは以下の(1)式、(2)式に基づいて算出した。
(引張強さ)
σ=Fmax/A …(1)
ここでσ:引張強さ(MPa=N/mm
max:最大引張力(N)
A:断面積(mm
(破断伸び)
δ=(l−l)×100/l…(2)
ここでδ:破断伸び(%)
l:標点間長さ(mm)
:原標点距離(mm)
また線膨張係数は、熱膨張係数計測器(島津製作所製DSC−60、セイコーインスツルメンツ製TMA/SS6000)により、0℃〜100℃の範囲ので線膨張係数を測定した。
【0072】
(参考例1)
Ti及びSiを微量に含む以下の組成のはんだ合金について試験を行った。
はんだ合金組成:98.285Sn−1.0Ag−0.7Cu−0.01Si−0.005Ti
(参考例2)
Siを微量に含み、Tiを含まない以下の組成のはんだ合金について試験を行った。
はんだ合金組成:98.29Sn−1.0Ag−0.7Cu−0.01Si
(参考例3)
Ti及びSiを含まない以下の組成のはんだ合金について試験を行った。
はんだ合金組成:98.3Sn−1.0Ag−0.7Cu
【0073】
B.実験結果
各参考例のはんだ合金についての引張強さ、破断伸び、線膨張係数の値を(表1)に示す。各値は異なる試験片について2回〜3回行ったの試験の平均値を示している。
(表1)

【0074】
(表1)によれば、(参考例1〜3)の引張試験の結果を比べると、引張強さについては各参考例とも大きな差はないが、(参考例1)は(参考例2、3)に比べて約1.2倍〜1.6倍程度伸びが大きい。このように引張強さがほぼ同等で伸びが大きいことから、Ti及びSiの双方を微量成分として含む(参考例1)に係るはんだ合金は、他の参考例に比べて強靭な特性を持っていると言える。また(参考例1)に係るはんだ合金は、線膨張係数の値が最も小さいことから固体の状態においても膨張しにくい合金であるといえる。これらの結果より、Snを主成分として含むはんだ合金に微量成分としてTi及びSiを含有させることにより、はんだ合金の靭性を向上させ、膨張しにくいはんだ合金を得ることができたといえる。これらの結果は、実施の形態に係る第1のはんだ粉から得られるはんだ合金(第1のはんだ粉単独の場合、第2のはんだ粉や表面をAgで被覆されたCu粉と共に使用する場合の全ての場合)においても同様であり、Ti及びSiの微量添加ははんだ合金の特性を向上させる効果があることを示している。
【0075】
(実験2)
(参考例1)のはんだ合金を光学顕微鏡で拡大して合金の組織を観察した。その結果を図5に示す。
図5に示した拡大写真によれば、微量元素としてSi及びTiが添加されたはんだ合金には、Cuの針状結晶や巣、ボイドの存在は確認されず、耐食性が高いと予想される緻密な多結晶合金が得られた。
【符号の説明】
【0076】
21 基板
22 マウントパッド
3A 表面実装部品
3B 表面実装部品
41 はんだ合金
42 Cu粉
51 封止材料
52 メタルマスク
61 スキージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
7質量%以上、9質量%以下のCuと、0.001質量%以上、0.05質量%以下のSiと、0.001質量%以上、0.05質量%以下のTiとを含み、残部をSnとした第1のはんだ粉と、
表面をAgで被覆したCu粉と、
前記第1のはんだ粉及びCu粉と混合されるフラックスと、を含むことを特徴とするはんだ材料。
【請求項2】
前記第1のはんだ粉とCu粉との合計質量のうち、Cu粉の含有割合を10質量%以上、35質量%以下とし、残部を第1のはんだ粉としたことを特徴とするはんだ材料。
【請求項3】
さらに、2.9質量%以上、3.1質量%以下のAgと、0.4質量%以上、0.6質量%以下のCuとを含み、残部をSnとした第2のはんだ粉を含むことを特徴とする請求項1に記載のはんだ材料。
【請求項4】
前記第1のはんだ粉と第2のはんだ粉とCu粉との合計の質量中、Cu粉の含有割合を10質量%以上、35質量%以下とし、第2のはんだ粉の含有割合を1.0質量%以上、60質量%以下とし、残部を第1のはんだ粉としたことを特徴とする請求項3に記載のはんだ材料。
【請求項5】
7質量%以上、9質量%以下のCuと、0.001質量%以上、0.05質量%以下のSiと、0.001質量%以上、0.05質量%以下のTiとを含み、残部をSnとしたはんだ組成物を含むことを特徴とするはんだ材料。
【請求項6】
配線基板上に請求項1ないし5のいずれか一つに記載のはんだ材料を用いて表面実装部品を実装したことを特徴とする電子部品。
【請求項7】
配線基板上に請求項1ないし5のいずれか一つに記載のはんだ材料を用いて表面実装部品を実装し、封止材料により封止して構成されたことを特徴とする電子部品。
【請求項8】
配線基板の電極上に請求項1ないし5のいずれか一つに記載のはんだ材料を供給する工程と、
このはんだ材料の上に表面実装部品を載せる工程と、
前記はんだ材料を加熱して溶融することにより表面実装部品の電極と配線基板の電極とを電気的に接続する工程と、
前記表面実装部品を封止材料により封止する工程と、
を含むことを特徴とする電子部品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−147982(P2011−147982A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12423(P2010−12423)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000232483)日本電波工業株式会社 (1,148)
【出願人】(504452837)ナノジョイン株式会社 (11)
【Fターム(参考)】