説明

はんだ付け方法及びはんだ付け装置

【課題】はんだの融解点を検出することにより良好に温度制御を行うことができるはんだ付け方法及びはんだ付け装置を提供する。
【解決手段】はんだに対する加熱によりはんだの温度が上昇し、はんだの融解時に至ると、融解熱がはんだに吸収され、熱電対が検出するはんだ温度Tが時間経過に伴い低下する傾向を示し、はんだ温度微分値ΔTが負の値を示す。はんだ温度微分値ΔTが、加熱オフ閾値thより小さくなったと判定すると、コントローラは、加熱オフ制御信号を高周波電源に出力し、コイルへの電流供給を停止し、はんだに対する加熱をオフするように加熱条件を変更する。熱電対を用いても、はんだ融解点を精確に検出して、はんだ付けにおける温度制御を高精度で行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板への電子部品の装着等に用いられるはんだ付け方法及びはんだ付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のはんだ付け方法の一例について図3を参照して説明する。図3に示す例では、放熱板1の上部に絶縁基板2が配置され、はんだ箔として供給されるはんだ3を介して素子4を絶縁基板2にはんだ付けする場合に、熱電対5を用いて放熱板1の絶対温度を測定し、この測定した放熱板1の絶対温度に基づいて、はんだ3に対して加熱を行う誘導加熱装置6を制御してはんだ付け時の温度制御を行う(特許文献1参照)。
はんだ付け工程を良好に実行するためには、はんだ3そのものの温度を把握することが望ましいが、はんだ3そのものの温度を直接測定することは困難であり、図3に示す例では、間接的な測定を行っている。
【0003】
また、放熱板1を介してはんだ3を間接的に温度測定を行う熱電対5に代えて、図4に示すように、非接触温度計7を用い、はんだ3の温度を検出することが考えられる。
【特許文献1】特開2005−205418号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図3に示す方法では、はんだ3の温度について間接的に把握するため、はんだ付け時の温度制御の精度が劣ったものになる。
また、図4に示す方法では、絶縁基板2及び素子4にはんだ箔として供給されるはんだ3が挟まれることから、非接触温度計7を用いても、はんだ3の温度を精度高く検出することは難しかった。
また、はんだ付け時の温度制御は、特に、はんだ3が溶け始めたところで、高精度とされることが要求されている。これに対し、上述した図3、図4に示す方法では、はんだ付け時の温度制御の精度が劣っていることに加えて、はんだ3が溶け始めたところで、温度制御をより高精度で行うことが望まれるものの、何らの対処もなされておらず、改善が求められているというのが実情であった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、はんだの融解点を検出することにより良好に温度制御を行うことができるはんだ付け方法及びはんだ付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、第1、第2の接合部材をはんだを用いて接合するはんだ付け方法であって、前記はんだの融解点を検出する融解点検出工程と、該融解点検出工程で検出した前記はんだの融解点に基づいて、前記はんだに対する加熱条件を変更する加熱条件変更工程とを備えたことを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載のはんだ付け方法において、前記融解点検出工程での前記はんだの融解点検出は、前記はんだの融解熱に基づく温度変化を利用して行うことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載のはんだ付け方法において、前記加熱条件変更工程では、前記はんだの融解熱に基づくはんだ温度の低下をトリガとして、所定時間、前記はんだへの加熱をオフし、その後、再度、加熱を行うことを特徴とする。
【0007】
請求項4記載の発明は、第1、第2の接合部材を接合するためのはんだを加熱する加熱手段と、該加熱手段を制御して前記はんだに対する加熱調整を行う加熱手段調整手段とを備えたはんだ付け装置であって、前記はんだの融解点を検出する融解点検出手段を有し、前記加熱手段調整手段は、該融解点検出手段が検出した前記はんだの融解点に基づいて、前記はんだに対する加熱条件を変更するように前記加熱手段を調整することを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項4記載のはんだ付け装置において、前記融解点検出手段の前記はんだの融解点検出は、前記はんだの融解熱に基づく温度変化を利用して行うことを特徴とする。
請求項6記載の発明は、請求項4又は5記載のはんだ付け装置において、前記加熱手段調整手段は、前記はんだの融解熱に基づくはんだ温度の低下をトリガとして、所定時間、前記はんだへの加熱をオフし、その後、再度、加熱を行うように前記加熱手段を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1ないし6記載の発明によれば、はんだの融解点を検出し、検出したはんだの融解点に基づいて、はんだに対する加熱条件を変更するので、はんだの融解点に対応したはんだ付け処理を行え、これにより良好なはんだ付けを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
はんだ付けにおける温度制御は、上述したように、はんだが溶け始めたところで高精度の制御が要求される。本願発明者は、はんだ付けにおける温度制御に対する上述した要求に応えるべく、はんだの溶け始めたところと、はんだの融解熱との対応関係に着目し、本願発明に想到した。すなわち、本願発明では、はんだが溶け始めたところ(はんだ溶融による変化点)、すなわち、はんだの融解点を検出することにより、はんだ付けにおける温度制御を高精度で行えるようにしている。以下に、本発明の一実施の形態を、図1及び図2に基づいて説明する。なお、図3及び図4に示す部材と同等の部材には、同等の符号を付し、その説明は適宜、省略する。
【0010】
図1において、はんだ付け装置8は、加熱炉9内にて、プリント配線基板として用いられる絶縁基板2(第1の接合部材)及び素子4(第2の接合部材)について、はんだ3を用いて接合するようにしている。はんだ3は、はんだ箔として、絶縁基板2及び素子4間に配置され、この配置状態ではんだ付け処理が行われる。絶縁基板2における素子4と反対側の面部には、通電に伴う素子4の発熱分の放熱を行うための放熱板1が配置されている。放熱板1の図1下部側には、誘導加熱装置6(加熱手段)の高周波電源10に接続されたコイル11及び発熱部12が配置されている。誘導加熱装置6は、電流がコイル11に流れることにより発熱部12がその電流に応じて熱を発生する。
【0011】
放熱板1の図1上面部に接触して、絶縁基板2を介してはんだ3の温度を検出する熱電対5が配置されている。熱電対5及び高周波電源10には、予め定められた加熱パターンに従って高周波電源10を制御してコイル11への電流供給を行わせるコントローラ13(加熱手段調整手段)が接続されている。また、コントローラ13は、熱電対5が検出するはんだ3の温度(以下、はんだ温度Tという。)の入力を受け、はんだ温度Tの微分値(以下、はんだ温度微分値ΔTという。)を求める微分回路15と、予め定めた加熱オフ閾値thを格納するメモリ16と、を備えている。
【0012】
コントローラ13は、さらに、はんだ温度微分値ΔT及び加熱オフ閾値thの比較結果に基づいて高周波電源10に対する制御信号mを出力する判定回路17を備えている。本実施の形態では、加熱オフ閾値thは負の値とされている。判定回路17では、はんだ温度微分値ΔTが加熱オフ閾値thより小さい値(はんだ温度Tが負の値で、かつはんだ温度微分値ΔTの絶対値が加熱オフ閾値thの絶対値より大きい値)になったと判断すると、高周波電源10からのコイル11への電流供給を停止し、はんだ3への加熱をオフする旨の制御信号m(以下、オフ制御信号mtという。)を出力する。
本実施の形態では、熱電対5及びコントローラ13が融解点検出手段を構成している。
【0013】
上述したようにコイル11へ電流供給して発熱部12が熱を発生することにより、はんだ3は図2(A)に示すように、その温度が、はんだ3の融解時を除き、時間経過と共に上昇する。はんだ3の融解時(はんだ3が溶け始めたところに相当する。)には、発熱部12からの熱の一部がはんだ3の状態変化(融解)に用いられ、熱電対5が検出する温度、ひいては、はんだ温度Tは、時間経過に伴い低下する傾向を示すことになる。
【0014】
熱電対5が、図2(A)に示すはんだ温度Tを検出した場合、微分回路15は、図2(B)に示すはんだ温度微分値ΔTを算出することになる。上述したように、はんだ3の融解時には、はんだ温度Tは、時間経過に伴い低下する傾向を示すことから、はんだ温度微分値ΔTは、負の値を示すことになる。
図2(A)、(B)から明らかなように、はんだ3の融解時には、非融解時(はんだ3の融解時以外のとき)に比べ、温度の変化が大きく異なっている。
【0015】
そして、本実施の形態では、上述したように温度の変化が大きく異なる部分、ひいてははんだ3の融解点を、はんだ温度微分値ΔTを用いて検出し、後述するように、はんだ3に対する加熱条件を変更し(加熱をオフし)、これによりはんだ付けにおける温度制御を高精度に行うようにしている。
図2(A)、(B)に示すはんだ3の温度特性は、融解時を含めて、ある一定条件下で、はんだ3固有で定まっている。本実施の形態では、本実施の形態で用いるはんだ3の図2(B)に対応した温度特性に基づいて、前記加熱オフ閾値thを予め定めている。
【0016】
上述したように構成されたはんだ付け装置8の作用を以下に説明する。
コイル11へ電流供給して発熱部12が熱を発生することにより、熱電対5が検出するはんだ温度Tは、図2(A)に示すように、徐々に高くなる。熱電対5の検出データは、微分回路15に入力され、微分回路15ははんだ温度微分値ΔTを算出する。
【0017】
はんだ3の温度上昇がさらに進んで、はんだ3が溶け始める(すなわち、はんだ3の融解時に至る)と、発熱部12からの熱の一部がはんだ3の状態変化(融解)に用いられ(熱がはんだ3に吸収され)、熱電対5が検出するはんだ温度Tは、時間経過に伴い低下する傾向を示す。これに伴い、微分回路15が算出するはんだ温度微分値ΔTは、負の値を示す。そして、微分回路15が算出するはんだ温度微分値ΔTが、加熱オフ閾値thより小さくなったと判定する(融解点検出工程)と、コントローラ13は、加熱オフ制御信号mtを高周波電源10に出力し、コイル11への電流供給を停止し、はんだ3に対する加熱をオフする(加熱条件変更工程)。このようにしてはんだ3の融解点を検出して、はんだ付けにおける温度制御を高精度で行えるようにしている。
なお、上記実施の形態では、はんだ3の融解熱に基づくはんだ温度の低下をトリガとして(温度微分値ΔT<加熱オフ閾値thの判定に基づいて)、加熱オフ制御信号mtを出力して加熱をオフし、はんだ付けにおける温度制御を高精度で行える場合を例にしたが、これに代えて、次のように構成してもよい。すなわち、微分回路15が算出するはんだ温度微分値ΔTが、加熱オフ閾値thより小さくなったと判定すると(すなわち、はんだ3の融解熱に基づくはんだ温度の低下をトリガとして)〔ここまでは、上記実施の形態と同様である。〕、所定時間、はんだ3への加熱をオフし、その後、再度、加熱を行うようにしてもよい。このように構成することにより、はんだ3の状態をタイミング良く安定させることができ、ひいては良好にはんだ付けできる。
【0018】
本実施の形態では、はんだ3の融解点の検出は、はんだ温度微分値ΔTを用いて行っている。このため、本実施の形態では、熱電対5、すなわち温度測定精度が必ずしも高くない温度センサの検出値を用いているものの、はんだ3の融解点を適切に検出することができ、これにより、はんだ付けにおける温度制御を高精度で行え、ひいては良好なはんだ付け加工を実現することが可能となる。
【0019】
上記実施の形態では、素子4(第2の接合部材)が1個である場合を例にしたが、本発明はこれに限らず、素子4を2個以上、はんだ付けする場合にも用いることができる。
また、上記実施の形態では、第1の接合部材が絶縁基板2で、第2の接合部材が素子4である場合を例にしたが、第1の接合部材を放熱板1、第2の接合部材を絶縁基板2として、放熱板1及び絶縁基板2について、はんだ3により接合する場合に用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施の形態に係るはんだ付け装置を模式的に示す図である。
【図2】図1のはんだ付け装置のはんだ昇温時における作用を示すための図であり、(A)は、熱電対が検出するはんだの温度を示す図、(A)は、微分回路が算出するはんだ温度微分値を示す図である。
【図3】熱電対を用いたはんだ付け装置の従来の一例を示す図である。
【図4】非接触温度計を用いたはんだ付け装置の従来の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
2…絶縁基板(第1の接合部材)、3…はんだ、4…素子(第2の接合部材)、5…熱電対(融解点検出手段)、8…はんだ付け装置、13…コントローラ(加熱手段調整手段、融解点検出手段)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1、第2の接合部材をはんだを用いて接合するはんだ付け方法であって、
前記はんだの融解点を検出する融解点検出工程と、
該融解点検出工程で検出した前記はんだの融解点に基づいて、前記はんだに対する加熱条件を変更する加熱条件変更工程とを備えたことを特徴とするはんだ付け方法。
【請求項2】
前記融解点検出工程での前記はんだの融解点検出は、前記はんだの融解熱に基づく温度変化を利用して行うことを特徴とする請求項1記載のはんだ付け方法。
【請求項3】
前記加熱条件変更工程では、前記はんだの融解熱に基づくはんだ温度の低下をトリガとして、所定時間、前記はんだへの加熱をオフし、その後、再度、加熱を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載のはんだ付け方法。
【請求項4】
加熱条件変更工程第1、第2の接合部材を接合するためのはんだを加熱する加熱手段と、該加熱手段を制御して前記はんだに対する加熱調整を行う加熱手段調整手段とを備えたはんだ付け装置であって、
前記はんだの融解点を検出する融解点検出手段を有し、
前記加熱手段調整手段は、該融解点検出手段が検出した前記はんだの融解点に基づいて、前記はんだに対する加熱条件を変更するように前記加熱手段を調整することを特徴とするはんだ付け装置。
【請求項5】
前記融解点検出手段の前記はんだの融解点検出は、前記はんだの融解熱に基づく温度変化を利用して行うことを特徴とする請求項4記載のはんだ付け装置。
【請求項6】
前記加熱手段調整手段は、前記はんだの融解熱に基づくはんだ温度の低下をトリガとして、所定時間、前記はんだへの加熱をオフし、その後、再度、加熱を行うように前記加熱手段を調整することを特徴とする請求項4又は5記載のはんだ付け装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−294485(P2007−294485A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−117037(P2006−117037)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】