説明

はんだ付け用治具

【課題】はんだ付けされた第1の部品と第2の部品に第3の部品をはんだ付けする際に、第1の部品と第2の部品とを接続するはんだの再溶融を防止することができるはんだ付け用治具を提供する。
【解決手段】加熱ビーム発射器31,32により上部電極54が加熱される。加熱用プレート30と下治具21により、半導体素子51およびヒートスプレッダ52が、半導体素子51とヒートスプレッダ52とを接続するはんだ53が再溶融しない温度で加熱される。そして、はんだ付けされた半導体素子51とヒートスプレッダ52に、上部電極54がはんだ付けされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付け用治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
2つの部品をはんだ付けすべく溶融したはんだをはんだ付けしたい部分に落下させてはんだ付けすることが行われている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−134445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
はんだ付けの際に、はんだの濡れ性をよくするためには、はんだ付けしようとする部品を加熱する必要がある。しかし、はんだ付けされた第1の部品と第2の部品に第3の部品をはんだ付けする際には、第1の部品と第2の部品とを接続するはんだが再溶融してしまう虞があった。
【0005】
本発明は、このような背景の下になされたものであり、その目的は、はんだ付けされた第1の部品と第2の部品に第3の部品をはんだ付けする際に、第1の部品と第2の部品とを接続するはんだの再溶融を防止することができるはんだ付け用治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明では、はんだ付けされた第1の部品と第2の部品に、第3の部品をはんだ付けするためのはんだ付け用治具であって、前記第3の部品を加熱する第1の加熱手段と、前記第1の部品および第2の部品を、前記第1の部品と前記第2の部品とを接続するはんだが再溶融しない温度で加熱する第2の加熱手段と、を備えたことを要旨とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、第1の加熱手段により、第3の部品が加熱される。第2の加熱手段により、第1の部品および第2の部品が、第1の部品と第2の部品とを接続するはんだが再溶融しない温度で加熱される。
【0008】
よって、はんだ付けされた第1の部品と第2の部品に第3の部品をはんだ付けする際に、第1の部品と第2の部品とを接続するはんだの再溶融を防止することができる。
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のはんだ付け用治具において、前記第1の加熱手段は、前記第3の部品を局所的に加熱することを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、第1の加熱手段が第3の部品を局所的に加熱することにより、第3の部品における加熱が必要な箇所を局所的に加熱することが可能となる。
請求項3に記載の発明のように、請求項1または2に記載のはんだ付け用治具において、前記第1の部品は半導体素子であり、前記第2の部品は基板であり、前記第3の部品は上部電極であるとよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、はんだ付けされた第1の部品と第2の部品に第3の部品をはんだ付けする際に、第1の部品と第2の部品とを接続するはんだの再溶融を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は実施形態におけるはんだ付け装置の平面図、(b)ははんだ付け装置の正面図、(c)は(a)のA−A線での縦断面図。
【図2】(a)ははんだ付け後の半導体装置の平面図、(b)ははんだ付け後の半導体装置の正面図、(c)は(a)のA−A線での縦断面図。
【図3】(a)は実施形態におけるはんだ付け装置の作用を説明するためのはんだ付け装置の平面図、(b)ははんだ付け装置の正面図、(c)は(a)のA−A線での縦断面図。
【図4】(a)は実施形態におけるはんだ付け装置の作用を説明するためのはんだ付け装置の平面図、(b)ははんだ付け装置の正面図、(c)は(a)のA−A線での縦断面図。
【図5】(a)は実施形態におけるはんだ付け装置の作用を説明するためのはんだ付け装置の平面図、(b)ははんだ付け装置の正面図、(c)は(a)のA−A線での縦断面図。
【図6】温度の推移および放熱プレートの動作を説明するためのタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
図1には、本実施形態におけるはんだ付け装置10を示す。当該はんだ付け装置10によりはんだ付けされた半導体装置50を図2に示す。
【0013】
図2において、第1の部品としての半導体素子(チップ)51の下面には第2の部品としてのヒートスプレッダ52がはんだ53により接合されている。基板としてのヒートスプレッダ52は四角の金属板よりなり、水平に配置されている。
【0014】
そして、半導体素子51の通電により半導体素子51で発生する熱がヒートスプレッダ52を通して逃がされるようになっている。
半導体素子51の上面においては、図1のはんだ付け装置10により第3の部品としての上部電極54がはんだ付けされる。上部電極54は金属の帯板よりなり、水平に配置されている。上部電極54の一端が半導体素子51の上方に位置し、上部電極54の一端部において、はんだ55により半導体素子51の上面と接合されている。
【0015】
図1において、はんだ付け装置10は、治具20を備えている。治具20は、下治具21と、上治具22,23と、加熱用プレート30と、加熱ビーム発生器31,32を備えている。下治具21は伝熱性に優れた材料で構成されており、例えば金属やカーボン等で形成される。一方、上治具22,23は下治具21を構成する材料より低い伝熱性を有する材料、例えば、シリコン系材料よりなる。
【0016】
下治具21は四角板状をなし、加熱用プレート30の上に固定されている。そして、加熱用プレート30において発生した熱が下治具21に伝わる。
下治具21の上面には凹部21aが形成され、凹部21aにヒートスプレッダ52が嵌合することにより、はんだ付け対象の部品としてのヒートスプレッダ52および半導体素子51を位置決めした状態で配置することができる。
【0017】
下治具21の上面には上治具22,23が離間して固定されている。上治具22,23の上面に切り欠き22a,23aが形成され、切り欠き22a,23aに上部電極54を位置決めした状態で配置することができる。
【0018】
このように本実施形態においては、下治具21と上治具22,23により、ヒートスプレッダ52(半導体素子51)と上部電極54を位置決めすることができるようになっている。
【0019】
そして、加熱用プレート30において発生した熱が下治具21を介してヒートスプレッダ52および半導体素子51に伝わる。加熱用プレート30は、半導体素子51およびヒートスプレッダ52を、はんだ53が再溶融しない温度で加熱するために設けられたものである。
【0020】
図1(b)に示すように、加熱ビーム発生器31,32は上治具22,23の上方に配置され、加熱ビーム発生器31,32からレーザビームLbが、セットされた上部電極54におけるはんだ付けのために加熱が必要な先端部分に向かって発射される。レーザビームLbの照射により上部電極54の先端部分が加熱される。このように、加熱ビーム発生器31,32は上部電極54を局所的に加熱するために設けられたものである。
【0021】
治具20の上治具22,23の上方、即ち、はんだ付けを行う箇所の上方には、溶融したはんだを滴下するはんだ滴下装置40が配置されている。はんだ滴下装置40により部品(上部電極54、半導体素子51)に溶融したはんだを供給することができるようになっている。
【0022】
また、上治具23の上方には放熱プレート35が配置され、放熱プレート35は水平状態を保持したまま上下に移動可能に設けられている。放熱プレート35は図示しない移動機構により上下に移動できるようになっている。そして、放熱プレート35の下動により放熱プレート35の下面が上部電極54の上面と接触する。また、放熱プレート35の上動により放熱プレート35の下面が上部電極54の上面と離間する。
【0023】
次に、はんだ付け装置10の作用について説明する。
まず、半導体素子51の下面にヒートスプレッダ52をはんだ付けしたものを用意する。また、上部電極54を用意する。
【0024】
そして、図3に示すように、はんだ付け装置10の治具20の下治具21にヒートスプレッダ52をセットする。また、治具20の上治具22,23に上部電極54をセットする。
【0025】
このようにして、治具20に対して、半導体素子51がはんだ付けされたヒートスプレッダ52と、上部電極54をセットする。この状態においては、放熱プレート35は、その下面が上部電極54の上面と離間している。
【0026】
また、ヒートスプレッダ52と上部電極54とが別々に温度調節できるように、ヒートスプレッダ52と上部電極54とが、断熱性を有する上治具22,23により熱的に分離された状態になっている。そして、それぞれ個別に加熱源(加熱用プレート30、加熱ビーム発生器31,32)が用意されている。
【0027】
この状態から、加熱用プレート30を駆動して加熱用プレート30を発熱させる。加熱用プレート30の発する熱は下治具21を介してヒートスプレッダ52および半導体素子51に伝わり、ヒートスプレッダ52および半導体素子51の温度が上昇していく。また、加熱ビーム発生器31,32からレーザビームLbが上部電極54に照射され、上部電極54の温度が上昇していく。
【0028】
このように加熱ビーム発生器31,32からレーザビームLbが上部電極54に照射され、一方、下治具21を加熱用プレート30で加熱することにより伝熱部分である下治具21に接しているヒートスプレッダ52は昇温されて上部電極54の温度よりも低く、はんだ53が再溶融しない温度にされる。
【0029】
よって、図6に示すように、上部電極54がはんだ付け可能温度(230℃以上)に達した状態においてヒートスプレッダ52および半導体素子51はそれよりも低い温度(例えば180℃〜200℃程度)となっている。そのため、ヒートスプレッダ52に半導体素子51をはんだ付けしているはんだ53が再溶融しない温度に保つことができる。
【0030】
この状態で、はんだ滴下装置40により上部電極54の先端部に液体状態の溶融はんだを滴下する。この溶融はんだは、図4に示すように、上部電極54の先端部に落下して半導体素子51の上面において半円弧状となる。これにより、半導体素子51をはんだ付けしているはんだ53が再溶融しないまま上部電極54と半導体素子51とをはんだ付けすることができる。
【0031】
つまり、予めヒートスプレッダ52に半導体素子51がはんだ付けされており、そのはんだ53が再溶融しない程度に高い温度にヒートスプレッダ52および半導体素子51を昇温した状態で、上部電極54をはんだ付け可能温度まで昇温する。この状態で溶融はんだをはんだ滴下装置40から滴下し、上部電極54と半導体素子51のはんだ付けを行うことにより、ヒートスプレッダ52に半導体素子51をはんだ付けしているはんだ53が再溶融することなく上部電極54と半導体素子51のはんだ付けを行うことができる。
【0032】
一方、上部電極54が上限温度以上にならないように、上部電極54の温度が閾値になると(図6のt1のタイミング)、図5に示すように、放熱プレート35を上部電極54に接触させる。これにより、上部電極54の熱は放熱プレート35に伝わり、放熱プレート35から大気中に逃がされる。このように、上部電極54に放熱プレート35を接触させることにより冷却される。
【0033】
はんだ付けが完了すると、はんだ付け装置10の治具20から、はんだ付けが完了した半導体装置50を取り出す。
なお、上部電極54と半導体素子51がはんだ55により接合されることにより半導体素子51およびヒートスプレッダ52の温度が大きく上昇しようとすることを考慮して、次のようにするとよりよい。半導体素子51およびヒートスプレッダ52の温度が半導体素子51をはんだ付けしているはんだ53の融点に近づかないように予めヒートスプレッダ52および上部電極54の熱容量を大きく設計しておく。
【0034】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)はんだ付け用治具の構成として、次のようにした。第1の加熱手段としての加熱ビーム発生器31,32により上部電極54を加熱する。また、加熱用プレート30と下治具21により第2の加熱手段を構成し、第2の加熱手段(加熱用プレート30、下治具21)により、半導体素子51およびヒートスプレッダ52を、半導体素子51とヒートスプレッダ52とを接続するはんだ53が再溶融しない温度で加熱する。よって、独立して温度調整可能な2つの加熱手段を用いることにより、はんだ付けされた半導体素子51とヒートスプレッダ52に、上部電極54をはんだ付けする際に、半導体素子51とヒートスプレッダ52とを接続するはんだ53の再溶融を防止することができる。
【0035】
(2)加熱ビーム発生器31,32は、上部電極54を局所的に加熱するので、上部電極54における加熱が必要な箇所(先端部分)を局所的に加熱することができる。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
【0036】
・ヒートスプレッダ(金属板)に代わり回路基板等の他の基板を用いてもよい。要は、第1の部品と第2の部品と第3の部品は、その種類等は限定されない。
・下治具21をなくして、加熱用プレート30で直接、ヒートスプレッダ52を加熱してもよい。この場合、加熱用プレート30が第2の加熱手段となる。
【0037】
・加熱源として加熱ビーム発生器(レーザビーム発生器)31,32を用いたがこれに限るものではない。例えば、非接触加熱方式においては、レーザビーム発生器以外にも、例えば、誘導加熱器、ハロゲンランプ等を用いることができる。また、接触加熱においては、例えば、上部電極54のみを加熱する方式でもよい。
【0038】
・第1の加熱手段と第2の加熱手段は、温度調節可能な独立した2つの加熱手段であれば上述した以外の他の構成でもよい。
・放熱プレート35はなくてもよい。
【符号の説明】
【0039】
10…はんだ付け装置、20…治具、21…下治具、22…上治具、23…上治具、30…加熱用プレート、31…加熱ビーム発生器、32…加熱ビーム発生器、51…半導体素子、52…ヒートスプレッダ、53…はんだ、54…上部電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
はんだ付けされた第1の部品と第2の部品に、第3の部品をはんだ付けするためのはんだ付け用治具であって、
前記第3の部品を加熱する第1の加熱手段と、
前記第1の部品および第2の部品を、前記第1の部品と前記第2の部品とを接続するはんだが再溶融しない温度で加熱する第2の加熱手段と、
を備えたことを特徴とするはんだ付け用治具。
【請求項2】
前記第1の加熱手段は、前記第3の部品を局所的に加熱することを特徴とする請求項1に記載のはんだ付け用治具。
【請求項3】
前記第1の部品は半導体素子であり、前記第2の部品は基板であり、前記第3の部品は上部電極であることを特徴とする請求項1または2に記載のはんだ付け用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−19033(P2012−19033A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−154979(P2010−154979)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】