説明

はんだ付け装置、及び、はんだ付け方法

【課題】ブリッジやはんだボール等の不具合の発生を抑制する、はんだ付け装置及びはんだ付け方法を提案する。
【解決手段】本加熱用こて21と、該本加熱用こて21によって溶融したはんだを加熱し、該はんだを任意の時間だけ溶融した状態に保持するための後加熱用こて31と、を備え、該後加熱用こて31は、前記本加熱用こて21が第1のターミナル12aを通過した直後に、該第1のターミナル12aでの加熱を開始し、該後加熱用こて31が第1のターミナル12aの配設部分で溶融したはんだと、前記本加熱用こて21が第2のターミナル12bの配設部分で溶融したはんだと、が表面張力によって分断された後に、前記後加熱用こて31が前記第1のターミナル12aを離脱して、加熱を終了するように制御されることで、前記本加熱用こて21に追従して、連続してターミナル12a・12b・12c・12d・・を加熱する、はんだ付け装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、はんだ付け装置、及び、はんだ付け方法に関し、詳細には、基板に配設された複数のターミナルを、該基板に連続して引きはんだ付けする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基板に配設された複数のターミナルを、該基板に連続して引きはんだ付けするはんだ付け装置においては、隣接して配設されるターミナル間で、はんだが残存する不具合が発生する場合があった。
【0003】
以下、図8及び図9を用いて、前記従来技術における不具合を具体的に説明する。図8(a)、(b)及び図9(a)、(b)はそれぞれ、従来技術における不具合である「ブリッジ」、及び「はんだボール」を示した平面図並びに側面図である。
【0004】
図8(b)に示す基板には、はんだ付けの対象となる複数のターミナルが連続して配設されている。そして、図8(a)、(b)に示すように、各ターミナルの配設部分ではんだごてに溶融されたはんだは、はんだ自身の表面張力によって分断し、それぞれのターミナル側に収縮しようとする。
しかし、はんだの温度低下によって凝固する時間が、はんだの表面張力によって分断する時間よりも短い場合は、粘性の上昇したはんだが隣接するターミナル間を連結する状態(以下、「ブリッジ」という)が発生し、該ブリッジが電気的ショートの要因となるのである。
一方、図9(a)、(b)に示すように、はんだが表面張力によって分断した際に、はんだの温度低下によって粘性が高くなっている場合は、はんだの一部が収縮しきれずに残留したもの(以下、「はんだボール」という)が発生し、該はんだボールが隣接するターミナル間に異物として残存することになるのである。
【0005】
上記の課題を解決するために、従来、基板に連続して配設されたターミナルを、該基板にはんだ付けするはんだ付け装置において、はんだの粘性の上昇を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
前記従来技術によれば、非酸化性ガスを供給することによって、前記粘性上昇の一因であるはんだの表面酸化を防止する構成とされている。しかし、該粘性上昇に与える影響は、上記のような温度低下の方がはんだの表面酸化より大きく、前記従来技術においては温度低下についての対策は開示されていない。
【特許文献1】特開平6−315766号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に鑑み、本発明では、ブリッジやはんだボール等の不具合の発生を抑制する、はんだ付け装置、及び、はんだ付け方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、複数のターミナルが配設された基板のターミナル配設部分にはんだを供給し、はんだごてにより前記はんだを加熱して溶融させることで、前記複数のターミナルを基板に対して連続して引きはんだ付けするはんだ付け装置であって、前記はんだを溶融するための本加熱用こてと、該本加熱用こてによって溶融したはんだを加熱し、該はんだを任意の時間だけ溶融した状態に保持するための後加熱手段と、を備え、該後加熱手段は、前記本加熱用こてが第1のターミナルを通過した直後に、該第1のターミナルの加熱を開始し、該後加熱手段により第1のターミナルの配設部分で溶融した状態に保持されるはんだと、前記本加熱用こてにより第1のターミナルに隣接する第2のターミナルの配設部分で溶融されたはんだと、が表面張力によって分断された後に、前記後加熱手段による前記第1のターミナルの加熱が終了するように制御されることで、前記本加熱用こてに追従して、連続してターミナルを加熱するものである。
【0010】
請求項2においては、前記後加熱手段は、はんだこて、熱風ヒータ、又はレーザー照射機のいずれかで構成されるものである。
【0011】
請求項3においては、前記後加熱手段は、はんだこてにて構成され、前記本加熱用こてが第2のターミナルの配設部分ではんだを溶融する間に、前記後加熱手段が、前記第1のターミナルの配設部分において前記本加熱用こての進行方向と逆方向に移動することにより、前記後加熱手段により第1のターミナルの配設部分で溶融した状態に保持されるはんだと、前記本加熱用こてにより第2のターミナルの配設部分で溶融されたはんだと、を分断するように制御されるものである。
【0012】
請求項4においては、前記後加熱手段は、はんだこてにて構成され、前記本加熱用こてが第2のターミナルの配設部分ではんだを溶融する間に、前記後加熱手段が前記第1のターミナルの配設部分で回転することにより、前記後加熱手段により第1のターミナルの配設部分で溶融した状態に保持されるはんだと、前記本加熱用こてにより第2のターミナルの配設部分で溶融されたはんだと、を分断するように制御されるものである。
【0013】
請求項5においては、複数のターミナルが配設された基板のターミナル配設部分にはんだを供給し、はんだごてにより前記はんだを加熱して溶融させることで、前記複数のターミナルを基板に対して連続して引きはんだ付けするはんだ付け方法であって、本加熱用のはんだごてが前記各ターミナルの配設部分にて前記はんだを溶融する溶融工程と、後加熱手段が、前記本加熱用のはんだごてによって溶融されたはんだを加熱し、該はんだを任意の時間だけ溶融した状態に保持する後加熱工程と、を備え、該後加熱工程は、前記本加熱用のはんだごてが第1のターミナルを通過した直後に該第1のターミナルにて開始され、前記後加熱手段により該第1のターミナルの配設部分で溶融した状態に保持されるはんだと、前記本加熱用のはんだごてにより第1のターミナルに隣接する第2のターミナルの配設部分で溶融されたはんだと、が表面張力によって分断されるまで継続するものである。
【0014】
請求項6においては、前記後加熱手段は、はんだこて、熱風ヒータ、又はレーザー照射機のいずれかで構成されるものである。
【0015】
請求項7においては、前記後加熱手段は、はんだこてにて構成され、前記本加熱用こてが第2のターミナルの配設部分ではんだを溶融する間に、前記後加熱手段が、前記第1のターミナルの配設部分において前記本加熱用こての進行方向と逆方向に移動することにより、前記後加熱手段により第1のターミナルの配設部分で溶融した状態に保持されるはんだと、前記本加熱用こてにより第2のターミナルの配設部分で溶融されたはんだと、を分断する、後進分断工程をさらに備えるものである。
【0016】
請求項8においては、前記後加熱手段は、はんだこてにて構成され、前記本加熱用こてが第2のターミナルの配設部分ではんだを溶融する間に、前記後加熱手段が前記第1のターミナルの配設部分で回転することにより、前記後加熱手段により第1のターミナルの配設部分で溶融した状態に保持されるはんだと、前記本加熱用こてにより第2のターミナルの配設部分で溶融されたはんだと、を分断する、回転分断工程をさらに備えるものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
本発明によれば、引きはんだ付けを行うはんだ付け装置の、隣接して配設されるターミナル間において、はんだ粘性を低く維持することで、両ターミナルの配設部分で溶融されるはんだを表面張力によって収縮させて分断することができ、これによってブリッジやはんだボール等の不具合の発生を抑止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の第1実施例に係るはんだ付け装置を示す概略側面図である。
図2は同じく第1実施例に係るはんだ付け装置のタイムチャート図である。
図3は同じく第1実施例に係るはんだ付け装置の拡大側面図である。
図4は本発明の第2実施例に係るはんだ付け装置のタイムチャート図である。
図5は同じく第2実施例に係るはんだ付け装置の拡大側面図である。
図6は(a)は本発明の第3実施例に係るはんだ付け装置の拡大平面図、(b)は同じく拡大側面図である。
図7は本発明の第4実施例に係るはんだ付け装置の拡大側面図である。
図8は(a)は従来技術における不具合であるブリッジを示した平面図、(b)は同じく側面図である。
図9は(a)は従来技術における不具合であるはんだボールを示した平面図、(b)は同じく側面図である。
なお、本発明の技術的範囲は以下の実施例に限定されるものではなく、本明細書及び図面に記載した事項から明らかになる本発明が真に意図する技術的思想の範囲全体に、広く及ぶものである。
【0020】
以下に、本発明に係るはんだ付け装置について説明する。
【0021】
[はんだ付け装置10の第1実施例に係る構成]
まず、本発明の第1実施例に係るはんだ付け装置10の構成について、図1を用いて説明する。本明細書では便宜上、図1における右側(矢印Aの方向)を前方、左側を後方とし、紙面手前側を右側方、奥側を左側方として説明する。即ち、図1ははんだ付け装置10を右側方から見た側面図である。
【0022】
図1に示すように、本実施例に係るはんだ付け装置10は、第1X−Y−Zロボット20と、該第1X−Y−Zロボット20に配設された本加熱用こてホルダー23と、該本加熱用こてホルダー23に配設され、ヒータ22を内蔵したはんだごてである本加熱用こて21と、糸はんだ41が巻きつけられたはんだリール42と、該糸はんだ41を前記はんだリール42から前記本加熱用こて21の先端部分へと供給するはんだフィーダ43と、を備える。前記第1X−Y−Zロボット20は、図示しない制御装置に接続され、該制御装置によって上下方向(Y方向)及び水平方向(X−Z方向)の駆動が制御される。
【0023】
前記はんだ付け装置10ではんだ付けが行われる際は、前記ヒータ22の発熱により高温となった本加熱用こて21が、第1X−Y−Zロボット20の駆動によって、基板11に摺接しながら該基板11に配設された複数のターミナル12a・12b・12c・12d・・・に沿って前方向、即ち図1中の矢印Aの方向に水平移動する。さらに該本加熱用こて21の水平移動に連動して、前記はんだフィーダ43から糸はんだ41が該本加熱用こて21の先端部分(即ち基板11における各ターミナル12a・12b・12c・12d・・・の配設部分)に供給され、溶融されることにより、前記ターミナル12a・12b・12c・12d・・・が連続して順に基板11に引きはんだ付けされるのである。
【0024】
本実施例においては、前記はんだ付け装置10は、前記本加熱用こて21によって溶融したはんだを加熱し、該はんだを任意の時間だけ溶融した状態に保持するための後加熱手段をさらに備える。本実施例における該後加熱手段としては、はんだこてにて構成される後加熱用こて31が配設されている。
【0025】
具体的には、前記第1X−Y−Zロボット20に第2X−Y−Zロボット34が配設され、該第2X−Y−Zロボット34には、後加熱用こてホルダー33と、該後加熱用こてホルダー33に配設され、ヒータ32を内蔵した後加熱用こて31と、が配設されるのである。前記第2X−Y−Zロボット34は、第1X−Y−Zロボット20と同様に図示しない該制御装置によって上下方向及び水平方向の駆動が制御される。
【0026】
なお、本実施例においては、該第2X−Y−Zロボット34は第1X−Y−Zロボット20に配設され、該第1X−Y−Zロボット20と連動して駆動する構成としているが、該第2X−Y−Zロボット34ははんだ付け装置10に対して第1X−Y−Zロボット20と別々に配設され、それぞれ独立して駆動する構成にすることも可能である。
【0027】
[はんだ付け装置10の第1実施例に係るはんだ付け方法]
次に、本実施例に係るはんだ付け方法について、図2及び図3を用いて説明する。
本実施例においては、前記後加熱用こて31は、前記本加熱用こて21が第1のターミナル12aの配設部分を通過した直後に、該第1のターミナル12aの加熱を開始し、該後加熱用こて31が第1のターミナル12aの配設部分で溶融した状態を保持するはんだと、前記本加熱用こて21が第2のターミナル12bの配設部分で溶融したはんだと、が表面張力によって分断された後に、前記後加熱用こて31が前記第1のターミナル12aの配設部分を離脱して、加熱が終了するように制御されることで、前記本加熱用こて21に追従して、連続してターミナル12a・12b・12c・12d・・・を加熱する。
【0028】
具体的には、図2のタイムチャート図に示すように、まず、はんだリール42から本加熱用こて21の先端部に対する糸はんだ41の供給が開始される。そして、それと同時に発熱した本加熱用こて21が下降して基板11に接触し、前記糸はんだ41を溶融して引きはんだ付けを行いながら前進を開始する(溶融工程)。この状態では、後加熱用こて31は基盤11に未だ非接触状態で停止している(a1:図2中のa1区間、以下同じ)。
そして、本加熱用こて21に遅れて後加熱用こて31が前進し、第1のターミナル12aの上方まで移動して停止する(b1)。
【0029】
さらに、本加熱用こて21が第1のターミナル12aの配設部分を通過した直後に、後加熱用こて31が下降して基板11に接触することで、該第1のターミナル12aの配設部分の加熱を開始する(後加熱工程)。
これにより、第1のターミナル12aの配設部分で溶融したはんだは、後加熱用こて31の加熱によってその溶融した状態が維持される。即ち、はんだ粘性を低く維持することとなり、第1のターミナル12aの配設部分と第2のターミナル12bの配設部分との間で溶融されるはんだを表面張力によって収縮させて、それぞれのターミナル12a・12b側に分断することができる。
【0030】
換言すれば、図3の実線矢印B1に示すように、後加熱用こて31が第1のターミナル12a配設部分に移動し、本加熱用こて21が通過した後の該第1のターミナル12aを加熱するのである。これにより、溶融した状態に維持されたはんだを、温度低下によって粘度を上昇させることなく、表面張力によって矢印αの方向に収縮させ、ブリッジやはんだボール等の不具合の発生を抑止することができるのである。
さらに、溶融されたはんだは高温の後加熱用こて31に吸着しようとするため、該はんだが該後加熱用こて31に集まることで、ターミナル12a・12b間における分断の効果はより高まるのである。
【0031】
このように、後加熱用こて31の加熱によって、第1のターミナル12aの配設部分で溶融した状態を保持されるはんだと、前記本加熱用こて21により第2のターミナル12bの配設部分で溶融されたはんだと、が表面張力によって分断された後に、前記後加熱用こて31が前記第1のターミナル12aを離脱して、加熱を終了するのである(c1)。
【0032】
前記後加熱用こて31は、上昇によって基板11から離脱した後、暫時停止した(a2)後、図3の破線矢印B2に示すように、前記同様に前進(b2)、下降・基板11に接触(c2)をすることにより、第2のターミナル12b以降のターミナル12c・12d・・・についても順に連続して加熱していくのである。
【0033】
上記のように、はんだリール42からの糸はんだ41の供給、及び本加熱用こて21による加熱・前進が継続している状態で、後加熱用こて31の停止(a1・a2・a3・・・)と、前進(b1・b2・b3・・・)と、基板11への接触及びターミナル12a・12b・12c・・・の加熱(c1・c2・c3・・・)と、が連続して順に繰り返されることにより、それぞれのターミナル12a・12b・12c・・・においてブリッジやはんだボール等の不具合の発生を抑止することが可能となるのである。
【0034】
以上のように、本発明に係るはんだ付け方法は、複数のターミナル12a・12b・12c・・・が配設された基板11のターミナル12a・12b・12c・・・配設部分にはんだを供給し、本加熱用こて21によりはんだを加熱して溶融させることで、前記複数のターミナル12a・12b・12c・・・を基板11に対して連続して引きはんだ付けするはんだ付け方法であって、本加熱用こて21が前記はんだを溶融する溶融工程と、後加熱手段(本実施例においては後加熱用こて31)が、前記本加熱用こて21によって溶融されたはんだを加熱し、該はんだを任意の時間だけ溶融した状態に保持する後加熱工程と、を備え、該後加熱工程は、前記本加熱用こて21が第1のターミナル12aを通過した直後に第1のターミナル12aにて開始され、後加熱手段により該第1のターミナル12aの配設部分で溶融した状態に保持されるはんだと、前記本加熱用こて21により第2のターミナル12bの配設部分で溶融されたはんだと、が表面張力によって分断されるまで継続するものである。
【0035】
上記の如く構成することにより、引きはんだ付けを行うはんだ付け装置10の、隣接して配設されるターミナル12a・12b・12c・・・間において、はんだ粘性を低く維持することができ、それぞれのターミナル12a・12b・12c・・・間で溶融されるはんだを表面張力によって収縮させて分断することができ、ブリッジやはんだボール等の不具合の発生を抑止することができるのである。
【0036】
なお、本実施例においては、前記後加熱手段として後加熱用こて31を用いたが、該後加熱手段として熱風ヒータにて構成される後加熱用熱風ヒータ、又はレーザー照射機にて構成される後加熱用レーザー照射機のいずれかを配設する構成にすることも可能である。
即ち、本実施例の後加熱用こて31に代えて後加熱用熱風ヒータ、又は後加熱用レーザー照射機のいずれかを配設し、制御装置で駆動制御することにより、後加熱用熱風ヒータから放出される熱風、若しくは後加熱用レーザー照射機から照射されるレーザーで後加熱工程を行う構成にすることができるのである。
【0037】
[第2実施例に係るはんだ付け方法]
次に、本発明の第2実施例に係るはんだ付け方法について、図4及び図5を用いて説明する。なお、以下に説明するはんだ付け方法の各実施例に関して、上述の実施例と共通する部分については、同符号を付してその説明を省略する。
【0038】
本実施例においては、図4のタイムチャート図に示すように、前記実施例と同様に、はんだリール42からの糸はんだ41の供給と、本加熱用こて21による糸はんだ41の溶融によって、引きはんだ付けを開始する(溶融工程)。この状態では、後加熱用こて31は基盤11に未だ非接触状態で停止している(a1:図4中のa1区間、以下同じ)。
そして、本加熱用こて21に遅れて後加熱用こて31が前進し、第1のターミナル12aの上方まで移動して停止する(b1)。
【0039】
さらに、本加熱用こて21が第1のターミナル12aを通過した直後に、後加熱用こて31が下降して基板11に接触することで、該第1のターミナル12aの加熱を開始する(後加熱工程・c1)。
これにより、第1のターミナル12aの配設部分で溶融したはんだは、後加熱用こて31の加熱によってその溶融した状態が維持される。即ち、はんだ粘性を低く維持することとなり、第1のターミナル12aの配設部分と第2のターミナル12bの配設部分との間で溶融されるはんだを表面張力によって収縮させて、それぞれのターミナル12a・12bに分断することができる。
【0040】
ここで、本実施例においては、上述の構成に加え、前記本加熱用こて21が第2のターミナル12bの配設部分ではんだを溶融する間に、前記後加熱用こて31が、前記第1のターミナル12aの配設部分において前記本加熱用こて21の進行方向と逆方向に移動することにより、前記後加熱用こて31により該第1のターミナル12aの配設部分で溶融した状態が保持されるはんだと、前記本加熱用こて21により第2のターミナル12bの配設部分で溶融されたはんだとを分断するように制御される。
【0041】
具体的には、前記後加熱用こて31が、前記第1のターミナル12aの配設部分において基板11に摺接した状態で、前記本加熱用こて21の進行方向である矢印Aと逆の方向、即ち後方に移動するのである(後進分断工程・d1)。
【0042】
即ち、図5の実線矢印C1及び実線矢印C´1に示すように、後加熱用こて31が第1のターミナル12aの配設部分に移動して、第1のターミナル12aの配設部分で溶融されたはんだを加熱した状態で後方に移動するのである。
これにより、溶融した状態に維持されたはんだを、温度低下によって粘度を上昇させないとともに、該はんだに物理的な移動・変形を与えて表面張力によって矢印βの方向に収縮させることにより、ブリッジやはんだボール等の不具合の発生をさらに抑止することが可能となるのである。
さらに、溶融されたはんだは高温の後加熱用こて31に吸着しようとするため、該はんだが該後加熱用こて31に引き寄せられて移動することで、ターミナル12a・12b間における分断の効果はより高まるのである。
【0043】
このように、後加熱用こて31の加熱によって、第1のターミナル12aの配設部分で溶融したはんだと、前記本加熱用こて21が第2のターミナル12bの配設部分で溶融したはんだと、が表面張力によって分断された後に、前記後加熱用こて31が前記第1のターミナル12aを離脱して、加熱を終了するのである。
【0044】
前記後加熱用こて31は、上昇によって基板11から離脱した後、暫時停止した(a2)後、図5の破線矢印C2及び破線矢印C´2に示すように、前記同様に前進(b2)、下降・基板11に接触(c2)、後退(d2)をすることにより、第2のターミナル12b以降のターミナル12c・12d・・・についても順に連続して加熱していくのである。
【0045】
上記のように、はんだリール42からの糸はんだ41の供給、及び本加熱用こて21による加熱・前進が継続している状態で、後加熱用こて31の停止(a1・a2・a3・・・)と、前進(b1・b2・b3・・・)と、基板11への接触及びターミナル12a・12b・12c・・・の加熱(c1・c2・c3・・・)と、後退(d1・d2・d3・・・)が連続して順に繰り返されることにより、それぞれのターミナル12a・12b・12c・・・においてブリッジやはんだボール等の不具合の発生を抑止することが可能となるのである。
【0046】
以上のように、本発明に係るはんだ付け方法は、本加熱用こて21が第2のターミナル12bの配設部分ではんだを溶融する間に、後加熱手段(本実施例においては後加熱用こて31)が、前記第1のターミナル12aの配設部分において、前記本加熱用こて21の進行方向と逆方向に移動することにより、前記後加熱手段により該第1のターミナル12aの配設部分で溶融した状態が保持されるはんだと、前記本加熱用こて21により第2のターミナル12bの配設部分で溶融されたはんだとを分断する、後進分断工程をさらに備えるものである。
【0047】
上記の如く構成することにより、引きはんだ付けを行うはんだ付け装置10の、隣接して配設されるターミナル12a・12b・12c・・・間において、はんだ粘性を低く維持することで、さらにはんだに物理的な移動・変形を与えることで、それぞれのターミナル12a・12b・12c・・・間で溶融されるはんだを表面張力によって収縮させて分断することができ、ブリッジやはんだボール等の不具合の発生を抑止することができるのである。
【0048】
[第3実施例に係るはんだ付け方法]
次に、本発明の第3実施例に係るはんだ付け方法およびそれに用いられるはんだ付け装置10について、図6を用いて説明する。
【0049】
本実施例においては、前記実施例1の構成に加え、前記本加熱用こて21が第2のターミナル12bの配設部分ではんだを溶融する間に、後加熱用こて51が前記第1のターミナル12aの配設部分で回転することにより、前記後加熱用こて51により第1のターミナル12aの配設部分で溶融した状態が保持されるはんだと、前記本加熱用こて21により第2のターミナル12bの配設部分で溶融されたはんだとを分断するように制御される。
【0050】
即ち、前記実施例1における後加熱工程の際に、図6の実線矢印Dに示すように、後加熱用こて51が第1のターミナル12aの配設部分で回転し、溶融されたはんだを巻き取るようにして引き寄せるのである(回転分断工程)。
【0051】
これにより、溶融した状態に維持されたはんだを、温度低下によって粘度を上昇させないとともに、該はんだに物理的な移動・変形を与えて表面張力によって矢印γの方向に収縮させることにより、ブリッジやはんだボール等の不具合の発生をさらに抑止することが可能となるのである。
さらに、溶融されたはんだは高温の後加熱用こて51に吸着しようとするため、該はんだが該後加熱用こて51に引き寄せられて移動することで、ターミナル12a・12b間における分断の効果はより高まるのである。
【0052】
以上のように、本発明に係るはんだ付け方法は、前記本加熱用こて21が第2のターミナル12bの配設部分ではんだを溶融する間に、後加熱手段(本実施例においては後加熱用こて51)が前記第1のターミナル12aの配設部分で回転することにより、前記後加熱手段により第1のターミナル12aの配設部分で溶融した状態を保持されるはんだと、前記本加熱用こて21により第2のターミナル12bの配設部分で溶融されたはんだとを分断する、回転分断工程をさらに備えるものである。
【0053】
上記の如く構成することにより、引きはんだ付けを行うはんだ付け装置10の、隣接して配設されるターミナル12a・12b・12c・・・間において、はんだ粘性を低く維持することで、さらにはんだに物理的な移動・変形を与えることで、それぞれのターミナル12a・12b・12c・・・間で溶融されるはんだを表面張力によって収縮させて分断することができ、ブリッジやはんだボール等の不具合の発生を抑止することができるのである。
【0054】
なお、本実施例において、後加熱用こて51の先端部には分岐部51a・51aが突出して形成されており、前記のはんだを引き寄せる効果をより向上させているが、該分岐部51a・51aは形成しない構成にすることも可能である。
又、該後加熱用こて51の形状は本実施例に限定されるものではなく、例えば2枚の平行な板状部分が下方に突出したような形状でもよい。即ち、前記後加熱用こて51が各ターミナル12a・12b・12c・・・に接触しない程度に平面視で回転可能であればよい。
【0055】
さらに、はんだ付け装置10に係るはんだ付け方法を、本実施例における回転分断工程と、前記実施例2における後進分断工程との双方を備える構成にすることも可能である。即ち、前記後加熱工程後において、前記回転分断工程によって後加熱用こて51が回転した後、後進分断工程によって後加熱用こて51が後退するのである。このような構成にすることにより、前記のブリッジやはんだボール等の不具合の発生を抑止する効果をさらに向上させることが可能となる。
【0056】
[第4実施例に係るはんだ付け方法]
次に、本発明の第4実施例に係るはんだ付け方法およびそれに用いられるはんだ付け装置10について、図7を用いて説明する。
本実施例においては、本加熱用こて21によって引きはんだ付けの際に、はんだ付け作業の雰囲気温度をはんだ融点以上として行うものである。
【0057】
これにより、それぞれのターミナル12a・12b・12c・・・の配設部分で溶融したはんだは、雰囲気温度によって高温で維持される。即ち、はんだ粘性を低く維持することとなり、各ターミナル12a・12b・12c・・・間で溶融されるはんだを表面張力によって収縮させることができるため、それぞれのターミナル12a・12b側に分断することができる。これにより、溶融した状態に維持されたはんだを、温度低下によって粘度を上昇させることなく、表面張力によって矢印αの方向に収縮させ、ブリッジやはんだボール等の不具合の発生を抑止することができるのである。
【0058】
さらに、本実施例4の構成を前記実施例1〜3の構成と同時に行うことにより、即ち、前記実施例1〜3におけるはんだ付け方法をはんだ付け作業の雰囲気温度をはんだ融点以上として行うことにより、前記のブリッジやはんだボール等の不具合の発生を抑止する効果をさらに向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1実施例に係るはんだ付け装置を示す概略側面図。
【図2】同じく第1実施例に係るはんだ付け装置のタイムチャート図。
【図3】同じく第1実施例に係るはんだ付け装置の拡大側面図。
【図4】本発明の第2実施例に係るはんだ付け装置のタイムチャート図。
【図5】同じく第2実施例に係るはんだ付け装置の拡大側面図。
【図6】(a)は本発明の第3実施例に係るはんだ付け装置の拡大平面図、(b)は同じく拡大側面図。
【図7】本発明の第4実施例に係るはんだ付け装置の拡大側面図。
【図8】(a)は従来技術における不具合であるブリッジを示した平面図、(b)は同じく側面図。
【図9】(a)は従来技術における不具合であるはんだボールを示した平面図、(b)は同じく側面図。
【符号の説明】
【0060】
10 はんだ付け装置
12 ターミナル
21 本加熱用こて
31 後加熱用こて

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のターミナルが配設された基板のターミナル配設部分にはんだを供給し、はんだごてにより前記はんだを加熱して溶融させることで、前記複数のターミナルを基板に対して連続して引きはんだ付けするはんだ付け装置であって、
前記はんだを溶融するための本加熱用こてと、
該本加熱用こてによって溶融したはんだを加熱し、該はんだを任意の時間だけ溶融した状態に保持するための後加熱手段と、を備え、
該後加熱手段は、前記本加熱用こてが第1のターミナルを通過した直後に、該第1のターミナルの加熱を開始し、該後加熱手段により第1のターミナルの配設部分で溶融した状態に保持されるはんだと、前記本加熱用こてにより第1のターミナルに隣接する第2のターミナルの配設部分で溶融されたはんだと、が表面張力によって分断された後に、前記後加熱手段による前記第1のターミナルの加熱が終了するように制御されることで、前記本加熱用こてに追従して、連続してターミナルを加熱する、
ことを特徴とする、はんだ付け装置。
【請求項2】
前記後加熱手段は、
はんだこて、熱風ヒータ、又はレーザー照射機のいずれかで構成される、
ことを特徴とする、請求項1に記載のはんだ付け装置。
【請求項3】
前記後加熱手段は、はんだこてにて構成され、
前記本加熱用こてが第2のターミナルの配設部分ではんだを溶融する間に、
前記後加熱手段が、前記第1のターミナルの配設部分において前記本加熱用こての進行方向と逆方向に移動することにより、
前記後加熱手段により第1のターミナルの配設部分で溶融した状態に保持されるはんだと、前記本加熱用こてにより第2のターミナルの配設部分で溶融されたはんだと、を分断するように制御される、
ことを特徴とする、請求項1に記載のはんだ付け装置。
【請求項4】
前記後加熱手段は、はんだこてにて構成され、
前記本加熱用こてが第2のターミナルの配設部分ではんだを溶融する間に、前記後加熱手段が前記第1のターミナルの配設部分で回転することにより、
前記後加熱手段により第1のターミナルの配設部分で溶融した状態に保持されるはんだと、前記本加熱用こてにより第2のターミナルの配設部分で溶融されたはんだと、を分断するように制御される、
ことを特徴とする、請求項1又は請求項3に記載のはんだ付け装置。
【請求項5】
複数のターミナルが配設された基板のターミナル配設部分にはんだを供給し、はんだごてにより前記はんだを加熱して溶融させることで、前記複数のターミナルを基板に対して連続して引きはんだ付けするはんだ付け方法であって、
本加熱用のはんだごてが前記各ターミナルの配設部分にて前記はんだを溶融する溶融工程と、
後加熱手段が、前記本加熱用のはんだごてによって溶融されたはんだを加熱し、該はんだを任意の時間だけ溶融した状態に保持する後加熱工程と、を備え、
該後加熱工程は、前記本加熱用のはんだごてが第1のターミナルを通過した直後に該第1のターミナルにて開始され、
前記後加熱手段により該第1のターミナルの配設部分で溶融した状態に保持されるはんだと、前記本加熱用のはんだごてにより第1のターミナルに隣接する第2のターミナルの配設部分で溶融されたはんだと、が表面張力によって分断されるまで継続する、
ことを特徴とする、はんだ付け方法。
【請求項6】
前記後加熱手段は、
はんだこて、熱風ヒータ、又はレーザー照射機のいずれかで構成される、
ことを特徴とする、請求項5に記載のはんだ付け方法。
【請求項7】
前記後加熱手段は、はんだこてにて構成され、
前記本加熱用こてが第2のターミナルの配設部分ではんだを溶融する間に、
前記後加熱手段が、前記第1のターミナルの配設部分において前記本加熱用こての進行方向と逆方向に移動することにより、
前記後加熱手段により第1のターミナルの配設部分で溶融した状態に保持されるはんだと、前記本加熱用こてにより第2のターミナルの配設部分で溶融されたはんだと、を分断する、後進分断工程をさらに備える、
ことを特徴とする、請求項5に記載のはんだ付け方法。
【請求項8】
前記後加熱手段は、はんだこてにて構成され、
前記本加熱用こてが第2のターミナルの配設部分ではんだを溶融する間に、前記後加熱手段が前記第1のターミナルの配設部分で回転することにより、
前記後加熱手段により第1のターミナルの配設部分で溶融した状態に保持されるはんだと、前記本加熱用こてにより第2のターミナルの配設部分で溶融されたはんだと、を分断する、回転分断工程をさらに備える、
ことを特徴とする、請求項5又は請求項7に記載のはんだ付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−283623(P2009−283623A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133235(P2008−133235)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】